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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107898
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】気密ラインの形成方法および建築物
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/62 20060101AFI20240802BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20240802BHJP
   E04B 1/682 20060101ALI20240802BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
E06B1/62 Z
E06B5/00 B
E04B1/682 A
E04B1/76 400G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012075
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】仲田 周平
(72)【発明者】
【氏名】小西 健夫
(72)【発明者】
【氏名】山中 みなみ
【テーマコード(参考)】
2E001
2E011
2E239
【Fターム(参考)】
2E001DC02
2E001GA07
2E001HD03
2E001MA02
2E001MA06
2E001MA08
2E011JA02
2E011LA02
2E011LB02
2E011LD01
2E011LD07
2E239AB00
(57)【要約】
【課題】第一部材と第二部材とに亘る気密ラインの形成効率を向上することができる気密ラインの形成方法を提供する。
【解決手段】気密ラインを形成するための方法は、前記第一部材と前記第二部材との間に隙間が形成されるように前記第一部材および前記第二部材を配置する工程と、所定の密封体によって密封された液体発泡剤を準備する工程と、前記隙間を通じて前記第一部材および前記第二部材の奥に前記密封体によって密封された前記液体発泡剤を挿入する工程と、前記密封体によって密封された前記液体発泡剤を手前から覆うように被覆部材を設置する工程と、前記密封体を破るための破り部材を、前記第一部材、前記第二部材、および前記被覆部材の手前から奥に挿入して前記密封体を破ることにより前記液体発泡剤により前記第一部材と前記第二部材との間の隙間を埋める工程と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とに亘って気密ラインを形成するための方法であって、
前記第一部材と前記第二部材との間に隙間が形成されるように前記第一部材および前記第二部材を配置する工程と、
所定の密封体によって密封された液体発泡剤を準備する工程と、
前記隙間を通じて前記第一部材および前記第二部材の奥に前記密封体によって密封された前記液体発泡剤を挿入する工程と、
前記密封体によって密封された前記液体発泡剤を手前から覆うように被覆部材を設置する工程と、
前記密封体を破るための破り部材を、前記第一部材、前記第二部材、および前記被覆部材の手前から奥に挿入して前記密封体を破ることにより前記液体発泡剤により前記第一部材と前記第二部材との間の隙間を埋める工程と、を含む、気密ラインの形成方法。
【請求項2】
前記液体発泡剤を挿入する工程の前において、前記被覆部材の奥を向く面においてあらかじめ設定された固定領域に前記密封体によって密封された前記液体発泡剤を固定する工程をさらに含み、
前記密封体を破ることにより前記隙間を埋める工程では、前記被覆部材の手前を向く面において前記固定領域と重なる刺込領域に対して前記破り部材を刺し込むことにより、前記被覆部材を貫いて前記密封体を破る、請求項1に記載の気密ラインの形成方法。
【請求項3】
前記被覆部材を設置する工程では、前記第一部材の被取付部が前記刺込領域の手前に位置するように前記被覆部材を設置し、
前記密封体を破ることにより前記隙間を埋める工程では、前記被取付部および前記被覆部材を貫くように前記破り部材を手前から刺し込むことにより、前記密封体を破るとともに、前記被取付部に対して前記被覆部材を取り付ける、請求項2に記載の気密ラインの形成方法。
【請求項4】
前記被覆部材を設置する工程では、前記固定領域と、前記第一部材を支持する支持部材とが対向するように前記支持部材の手前に前記被覆部材を設置する、請求項2または3に記載の気密ラインの形成方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法を用いて建設された建築物であって、
前記第一部材と、
前記第一部材に対して隙間を設けて配置された前記第二部材と、
前記第一部材と前記第二部材とに亘る気密ラインを形成する気密部材と、
前記気密部材を手前から覆うように設置された前記被覆部材と、を有する建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物における気密ラインの形成方法および気密ラインを有する建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示されているように、サッシを有する建築物において、室内の気密性を確保するために、サッシを支持するサッシ枠と、建物開口部の屋内側に形成される内壁枠との間に気密部材を設けて気密ラインを形成する方法が知られている。
【0003】
具体的に、特許文献1の方法では、サッシ枠の縦枠と横枠との角部に第一気密材を貼着し、内壁枠の縦枠と横枠との隅部に第二気密材を貼着し、第一気密材と第二気密材とを跨ぐように気密シートを貼着する。また、特許文献1には、第一気密材、第二気密材、および気密シートを覆うように額縁が設けられている。さらに、室外の気温による室内の温度環境の変動を抑制するためにサッシ枠と内壁枠との間には断熱材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6319639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の方法では、気密ラインを形成するためにサッシ枠と内壁枠との間に亘って第一気密材、第二気密材、および気密シートを貼着する必要があるため、気密ラインを形成するための作業効率が悪い。特に、サッシ枠と内壁枠との間で気密部材を貼着するための貼着面として平坦な面を確保できない場合、第一気密材、第二気密材、および気密シートの貼着が難しい。また、特許文献1では、第一気密材、第二気密材、および気密シートが貼着された後にこれらを被覆するように額縁が取り付けられる。したがって、第一気密材、第二気密材、および気密シートによって形成された気密ラインを破断することなく額縁を取り付けるために細心の注意が必要となり、この点においても気密ライン形成のための作業効率が低下する。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされものであり、その目的は、サッシ枠(第一部材)と内壁枠(第二部材)とに亘る気密ラインの形成効率を向上することができる気密ラインの形成方法を提供すること、およびこのような気密ラインを有する建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第一の発明は、第一部材と第二部材とに亘って気密ラインを形成するための方法であって、前記第一部材と前記第二部材との間に隙間が形成されるように前記第一部材および前記第二部材を配置する工程と、所定の密封体によって密封された液体発泡剤を準備する工程と、前記隙間を通じて前記第一部材および前記第二部材の奥に前記密封体によって密封された前記液体発泡剤を挿入する工程と、前記密封体によって密封された前記液体発泡剤を手前から覆うように被覆部材を設置する工程と、前記密封体を破るための破り部材を、前記第一部材、前記第二部材、および前記被覆部材の手前から奥に挿入して前記密封体を破ることにより前記液体発泡剤により前記第一部材と前記第二部材との間の隙間を埋める工程と、を含む、気密ラインの形成方法である。
【0008】
第一の発明によれば、密封体を破ることにより発泡した液体発泡材によって第一部材と第二部材との間の隙間を埋めることができるため、気密材を貼着する場合と比較して気密ライン形成の作業効率を向上することができる。さらに、上記のように被覆部材の設置後に気密ラインを形成するため、従来のように、被覆部材の設置時における気密ラインの破断を防止することができる。したがって、本発明によれば、第一部材と第二部材とに亘る気密ラインの形成効率を向上することができる。
【0009】
第二の発明は、第一の発明において、前記液体発泡剤を挿入する工程の前において、前記被覆部材の奥を向く面においてあらかじめ設定された固定領域に前記密封体によって密封された前記液体発泡剤を固定する工程をさらに含み、前記密封体を破ることにより前記隙間を埋める工程では、前記被覆部材の手前を向く面において前記固定領域と重なる刺込領域に対して前記破り部材を刺し込むことにより、前記被覆部材を貫いて前記密封体を破ることが好ましい。
【0010】
第二の発明によれば、密封体によって密封された液体発泡剤を被覆部材に固定しておくことにより、破り部材を刺し込むための刺込領域を被覆部材にあらかじめ設定することができる。そのため、被覆部材の奥にある液体発泡材の位置を予測して破り部材を刺し込む場合と比較して密封体を破るための作業効率を向上することができる。
【0011】
第三の発明は、第二の発明において、前記被覆部材を設置する工程では、前記第一部材の被取付部が前記刺込領域の手前に位置するように前記被覆部材を設置し、前記密封体を破ることにより前記隙間を埋める工程では、前記被取付部および前記被覆部材を貫くように前記破り部材を手前から刺し込むことにより、前記密封体を破るとともに、前記被取付部に対して前記被覆部材を取り付けることが好ましい。
【0012】
第三の発明によれば、密封体を破る作業と被覆部材の第一部材への取り付けとを同時に行うことができる。
【0013】
第四の発明は、第二の発明または第三の発明において、前記被覆部材を設置する工程では、前記固定領域と、前記第一部材を支持する支持部材とが対向するように前記支持部材の手前に前記被覆部材を設置することが好ましい。
【0014】
第四の発明によれば、支持部材により液体発泡材の奥への逃げ場を減らして液体発泡材により気密ラインを有効に形成することができる。
【0015】
第五の発明は、上記方法を用いて建設された建築物であって、前記第一部材と、前記第一部材に対して隙間を設けて配置された前記第二部材と、前記第一部材と前記第二部材とに亘る気密ラインを形成する気密部材と、前記気密部材を手前から覆うように設置された前記被覆部材と、を有する建築物である。
【0016】
第五の発明によれば、上記のように気密ラインの形成効率を向上した方法によって建設された建築物を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第一部材と第二部材とに亘る気密ラインの形成効率を向上することができる気密ラインの形成方法を提供すること、およびこのような気密ラインを有する建築物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態に係る建築物のサッシ周辺の正面図である。
図2図2は、図1のII-II線での平面断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線での側面断面図である。
図4図4は、図1のIV-IV線での側面断面図である。
図5図5は、図2に示す建築物において、額縁を設ける前の状態を示す平面断面図である。
図6図6は、図3に示す建築物において、額縁を設ける前の状態を示す側面断面図である。
図7図7は、図4に示す建築物において、額縁を設ける前の状態を示す側面断面図である。
図8図8は、図5に示す建築物において、密封体を固定した額縁を設けた状態を示す平面断面図である。
図9図9は、図6に示す建築物において、密封体を固定した額縁を設けた状態を示す側面断面図である。
図10図10は、図7に示す建築物において、密封体を固定した額縁を設けた状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る建築物および建築物における気密ラインの形成方法について図面に基づいて説明する。
【0020】
(建築物の構成)
図1は、本実施形態に係る建築物1のサッシ3周辺の正面図である。図2は、図1のII-II線での平面断面図である。図3は、図1のIII-III線での側面断面図である。図4は、図1のIV-IV線での側面断面図である。
【0021】
以下の説明では、図1の右方向を+X方向、左方向を-X方向、上方向を+Z方向(鉛直上向き方向)、下方向を-Z方向(鉛直下向き方向)とし、図1の紙面と直交する方向で、紙面奥行き方向を+Y方向、紙面手前方向を-Y方向として説明する。図1において、躯体2に対して+Y方向側が室外側であり、-Y方向側が室内側である。また、+X方向および-X方向を総称してX方向、+Y方向および-Y方向を総称してY方向、+Z方向および-Z方向を総称してZ方向ともいう。X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。X方向とY方向とZ方向とはそれぞれ直交する。
【0022】
建築物1は、建築物1の開口に配置されたサッシ3と、サッシ3を支持する支持部材4と、支持部材4の室内側に設けられた内装部材5と、サッシ3と内装部材5とに亘る気密ライン6を形成する気密部材7と、サッシ3の室内側の周囲に気密部材7を手前から覆うように設置された額縁8(被覆部材)と、支持部材4の外側に設けられた外壁パネル9と、を有する。図1では、内装部材5および外壁パネル9は省略されている。
【0023】
支持部材4は、サッシ3、内装部材5、および外壁パネル9を支持する。具体的に、支持部材4は、サッシ3のX方向の両側でそれぞれZ方向に延びる2本の柱41と、サッシ3のZ方向の両側で両柱41間に延びる上胴縁42および下胴縁43と、を有する。また、支持部材4は、柱41にそれぞれ設けられ、サッシ3が取り付けられる第1の被取付部44と、上胴縁42に設けられ、サッシ3が取り付けられる第2の被取付部45と、下胴縁43に取り付けられ、サッシ3が取り付けられる第3の被取付部46と、を有する。
【0024】
サッシ3は、サッシ枠30(第一部材)と、サッシ枠30に対してそれぞれX方向に摺動可能に嵌め込まれた内障子37および外障子38と、を有する。サッシ枠30は、Z方向に延び、X方向に間隔を空けて平行に配置された第1の縦枠31および第2の縦枠32と、第1の縦枠31および第2の縦枠32の上端同士を接続する上枠33と、第1の縦枠31および第2の縦枠32の下端同士を接続する下枠34と、を有する。上枠33および下枠34は、第1の縦枠31および第2の縦枠32に対して直交する方向(X方向)に延びている。
【0025】
第1の縦枠31および第2の縦枠32は、それぞれ柱41に対して-X方向および+X方向に隙間を空けて配置されている。第1の縦枠31および第2の縦枠32は、それぞれ柱41に設けられた第1の被取付部44に取り付けられている。上枠33は、上胴縁42に対して-Z方向に隙間を空けて配置されている。上枠33は、上胴縁42に設けられた第2の被取付部45に取り付けられている。下枠34は、下胴縁43に対して+Z方向に隙間を空けて配置されている。下枠34は、下胴縁43に設けられた第3の被取付部46に取り付けられている。
【0026】
第1の縦枠31は、図2に示すように、Z方向に延びる本体部31bと、本体部31bから室内側(-Y方向)に突出し、額縁8が取り付けられる被取付部31aと、を有する。第2の縦枠32にも第1の縦枠31と同様に被取付部が設けられているが、第2の縦枠32は図2に示す第1の縦枠31とX方向に対称な構成を有するため、断面の図示を省略している。以下では第1の縦枠31の説明をもって第2の縦枠32の説明に代えることもある。
【0027】
上枠33は、図3に示すように、X方向に延びる本体部33bと、本体部33bから室内側(-Y方向)に突出し、額縁8が取り付けられる被取付部33aと、を有する。また、下枠34は、図4に示すように、X方向に延びる本体部34bと、本体部34bから室内側(-Y方向)に突出し、額縁8が取り付けられる被取付部34aと、を有する。被取付部31a、被取付部33a、被取付部34aおよび第2の縦枠32に設けられた被取付部を総称して、被取付部30aともいう。
【0028】
内装部材5および外壁パネル9は、いずれも躯体2の開口以外の領域に配置され、躯体2に取り付けられている。
【0029】
内装部材5は、図2図4に示すように、内装パネル51と、内装パネル51の室外側(+Y方向側)に設けられた枠体52(第二部材)と、枠体52により囲まれた断熱材53と、内装パネル51と枠体52および断熱材53との間に設けられた気密シート54と、枠体52と柱41とを連結する連結部材55と、を有する。
【0030】
内装パネル51およびこれが固定される枠体52は、サッシ3のサッシ枠30の-Y方向に離れた位置に設けられている。これにより、内装パネル51とサッシ枠30との隙間D(図5~7参照)を+X方向に沿って見る視点(以下、この視点における+X方向側を奥側、-X方向側を手前側として説明する)において、内装パネル51の内部構造が見えてしまう。そのため、内装パネル51とサッシ枠30との隙間Dを手前から被覆するように、額縁8が設けられている。
【0031】
額縁8は、図2図4に示すように、サッシ枠30の被取付部30aと内装パネル51とに亘って設けられている。具体的に、額縁8は、内装パネル51とZ方向に嵌合する溝8aを有する先端部と、被取付部30aに取り付けられる基端部と、を有する。額縁8の先端部は、溝8aに対して内装パネル51が奥から挿入されることにより内装パネル51に嵌合されている。額縁8の基端部は、上記のように内装パネル51は嵌合された状態において被取付部30aの奥に配置され、被取付部30aに対して手前から刺し込まれたねじ部材81によって固定されている。
【0032】
額縁8の手前を向く面において、ねじ部材81が刺し込まれる領域は刺込領域8bとして定義される。また、額縁8の奥を向く面において、刺込領域と奥に重なる領域は、後述する密封体71が固定される固定領域8cとして定義される。ねじ部材81は、その先端が後述の気密部材7に到達するように額縁8を貫通している。後述するように、ねじ部材81は、気密ライン6を形成するために固定領域8cに固定された密封体71を破るための破り部材の一例である。
【0033】
気密部材7は、気密性を有するとともにサッシ枠30と枠体52とに亘って設けられ、サッシ枠30と枠体52とを繋ぐ気密ライン6を構成する。具体的に、気密部材7は、後述のように額縁8の固定領域8cに固定された密封体71が破られることにより密封体71から導出された液体発泡剤72が発泡したものである。なお、気密シート54と気密部材7との間に設けられた枠体52は、本実施形態では木材により構成され、気密ライン6の一部を構成する。
【0034】
図1では、サッシ枠30の周囲を取り囲むように配置された複数の気密部材7が示されているが、これは、液体発泡剤72の発泡前において密封体71によって密封された液体発泡剤72の配置を便宜上示したものであり、液体発泡剤72の発泡後においては各気密部材7は互いに接続されている。気密部材7は、図2~4に太線で示すように、サッシ枠30と、枠体52と、気密シート54とともに、サッシ枠30と内装部材5に亘る気密ライン6を形成する。
【0035】
(気密ラインの形成方法)
サッシ枠30と内装部材5とに亘って上記気密ライン6を形成するための方法(以下「気密ライン6の形成方法」ともいう。)について、図5図10を参照して説明する。図5図7は、図2図4に示す建築物1において、額縁8を設ける前の状態を示す平面断面図および側面断面図である。図8~10は、図5図7に示す建築物1において、密封体71を固定した額縁8を設けた状態を示す平面断面図および側面断面図である。
【0036】
気密ライン6の形成方法は、サッシ枠30と枠体52との間に隙間Dが形成されるようにサッシ枠30および枠体52を配置する配置工程と、所定の密封体71によって密封された液体発泡剤72を準備する発泡剤準備工程と、隙間Dを通じてサッシ枠30および枠体52の奥に密封体71によって密封された液体発泡剤72を挿入する発泡剤挿入工程と、密封体71によって密封された液体発泡剤72を手前から覆うように額縁8を設置する額縁設置工程と、密封体71を破るための破り部材であるねじ部材81を、サッシ枠30、枠体52、および額縁8の手前から奥に挿入して密封体71を破ることにより液体発泡剤72によりサッシ枠30と枠体52との間の隙間Dを埋める埋設工程と、を含む。
【0037】
具体的に、配置工程では、図5図7に示すように、サッシ枠30と枠体52との間に隙間Dが形成されるように、躯体2に、サッシ3、内装部材5および外壁パネル9を設ける。
【0038】
発泡剤準備工程では、密封体71によって密封された液体発泡剤72を準備する。密封体71は、一方向に延びる袋状に成形されたフィルムやシートからなる。密封体71は、液体発泡剤72を収容した状態においてサッシ枠30と枠体52との間の隙間Dにおいて液体発泡剤72とともにサッシ枠30の周囲の形状に応じて変形可能となるような弾性を有することが好ましい。
【0039】
液体発泡剤72は、空気に触れると発泡、膨張し、密封体71によって密封された状態よりも体積が増大する。液体発泡剤72は、発泡後、固化して気密部材7となる。液体発泡剤72は、例えば、発泡ウレタン等を使用することができる。液体発泡剤72の発泡率は、液体発泡剤72を収容した密封体71の大きさと隙間Dの大きさに応じて定めることができる。
【0040】
液体発泡剤72の収容前の密封体71の容積は、発泡前の液体発泡剤72の容積よりも小さいことが好ましい。この場合、液体発泡剤72は、密封体71を膨張させた状態で密封体71に収容される。これにより、密封体71は、破られることにより収縮し、液体発泡剤72の周囲が開放されるため、液体発泡剤72の膨張が容易となる。
【0041】
本実施形態では、発泡剤挿入工程の前において、額縁8の奥を向く面においてあらかじめ設定された固定領域8cに密封体71によって密封された液体発泡剤72(以下、「密封発泡剤72」ともいう。)を固定する発泡剤固定工程を行う。発泡剤固定工程では、図8~10に示すように、額縁8の固定領域8cに、接着剤や両面粘着テープ等によって、密封発泡剤72を固定する。
【0042】
次に、本実施形態では発泡剤挿入工程と額縁設置工程とを同時に行う。具体的に、隙間Dを通じてサッシ枠30および枠体52の奥に密封体71によって密封された液体発泡剤72を挿入するとともに(発泡剤挿入工程)、密封体71によって密封された液体発泡剤72を手前から覆うように額縁8を設置する(額縁設置工程)。本実施形態では、密封体71によって密封された液体発泡剤72が隙間Dを通じてサッシ枠30と枠体52の奥に挿入するように額縁8をサッシ枠30および内装パネル51への取付位置に設置する。
【0043】
より詳細には、図8~10に示すように、サッシ枠30の被取付部30aが額縁8の刺込領域8bの手前に位置するように額縁8の基端部を設置するとともに、額縁8の溝8aに内装パネル51が嵌合するように額縁8の先端部を内装パネル51に設置する。これにより、密封発泡剤72を手前から覆うように額縁8が設置される。また、額縁設置工程において、額縁8は、固定領域8cとサッシ枠30を支持する支持部材4とが対向するように支持部材4の手前に設置する。
【0044】
埋設工程では、ねじ部材81を、サッシ枠30、枠体52、および額縁8の手前から奥に挿入して密封体71を破ることにより液体発泡剤72によりサッシ枠30と枠体52との間の隙間Dを埋める。具体的に、刺込領域8bに対してねじ部材81を刺し込む、より具体的には、被取付部30aおよび額縁8を貫くようにねじ部材81を手前から刺し込むことにより、額縁8を貫いて液体発泡剤72を収容する密封体71を破るとともに、被取付部30aに対して額縁8を取り付ける。これにより、図2図4に示すように、密封体71に収容された液体発泡剤72が空気に触れて発泡、膨張し、躯体2とサッシ枠30と枠体52とに囲まれた空間に広がり、隙間Dを埋め、固化して気密部材7となる。以上の工程により、建築物1においてサッシ枠30と内装部材5とに亘る気密ライン6を形成することができる。発泡した液体発泡剤72は、躯体2とサッシ枠30と枠体52とに囲まれた空間の全体を埋める必要はなく、サッシ枠30と枠体52とを接続することができればよい。
【0045】
なお、破られた密封体71は、額縁8の固定領域8cに残存する。液体発泡剤72の収容前の密封体71の容積を発泡前の液体発泡剤72の容積よりも小さくし、密封体71を膨張させた状態で液体発泡剤72を密封体71に収容した場合、破られた密封体71は収縮し、液体発泡剤72の周囲が開放されるため、液体発泡剤72の膨張が容易となる。
【0046】
(作用、効果)
上記実施形態に係る気密ライン6の形成方法によれば、密封体71を破ることにより発泡した液体発泡剤72によってサッシ枠30と枠体52との間の隙間Dを埋めることができるため、気密材を貼着する場合と比較して気密ライン6を形成する作業効率を向上することができる。さらに、額縁8の設置後に気密ライン6を形成するため、従来のように、額縁の設置時における気密ラインの破断を防止することができる。したがって、上記実施形態に係る気密ライン6の形成方法によれば、サッシ枠30と枠体52とに亘る気密ライン6の形成効率を向上することができる。
【0047】
また、上記実施形態に係る気密ライン6の形成方法によれば、密封体71によって密封された液体発泡剤72を額縁8に固定しておくことにより、破り部材であるねじ部材81を刺し込むための刺込領域8bを額縁8にあらかじめ設定することができる。そのため、額縁8の奥にある液体発泡剤72の位置を予測してねじ部材81を刺し込む場合と比較して密封体71を破るための作業効率を向上することができる。
【0048】
上記実施形態に係る気密ライン6の形成方法によれば、密封体71を破る作業と額縁8のサッシ枠30への取り付けとを同時に行うことができる。
【0049】
上記実施形態に係る気密ライン6の形成方法によれば、支持部材4により液体発泡剤72の奥への逃げ場を減らして液体発泡剤72により気密ライン6を有効に形成することができる。
【0050】
上記実施形態に係る建築物1によれば、上記のように気密ライン6の形成効率を向上した方法によって建設された建築物1を提供することができる。
【0051】
(変形例)
上記実施形態では、密封体71によって密封された液体発泡剤72(密封発泡剤72)を額縁8に固定する発泡剤固定工程を設け、発泡剤挿入工程と額縁設置工程とを同時に行ったが、密封発泡剤72を額縁8に固定せず、発泡剤挿入工程を行った後で額縁設置工程を行ってもよい。
【0052】
また、額縁8をサッシ枠30に取り付けるためのねじ部材81を、密封体71を破るための破り部材を兼ねるものとしたが、ねじ部材81と、破り部材とを別個の部材としてもよい。
【0053】
上記実施形態では、被取付部30aを額縁8の手前に配置したが、被取付部30aの位置は限定されない。また、額縁8は、被取付部30aに取り付けられていることに限定されず、固定された部材(例えば、サッシ枠30または内装パネル51)に保持された状態で設置されていればよい。
【0054】
また、上記実施形態では、被覆部材として、サッシ枠30と枠体52との隙間を手前から被覆するための額縁8を例示しているが、被覆部材は額縁8に限定されず、第一部材と第二部材との隙間を手前から被覆するものであればよい。例えば、被覆部材は、二つの部材(第一部材および第二部材)の隙間を被覆するように設けられた下地木、または、化粧板等を含む内装材(例えば、内壁パネル、天井パネル等)であってもよい。また、第一部材および第二部材は、サッシ枠30および枠体52に限定されず、互いに隙間を空けて配置された二つの部材(例えば、軸組みの桟、間柱、野縁等)であればよい。
【符号の説明】
【0055】
1 建築物
3 サッシ
30 サッシ枠(第一部材)
30a 被取付部
31 第1の縦枠
31a 被取付部
32 第2の縦枠
33 上枠
33a 被取付部
34 下枠
34a 被取付部
4 支持部材
41 柱(支持部材)
42 上胴縁(支持部材)
43 下胴縁(支持部材)
51 内装パネル
52 枠体(第二部材)
6 気密ライン
7 気密部材
71 密封体
72 液体発泡剤
8 額縁(被覆部材)
8b 刺込領域
8c 固定領域
81 ねじ部材(破り部材)
D 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10