(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010790
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】3Dプリンタシステム、3D印刷方法、色再現モデルおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240118BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20240118BHJP
B29C 64/10 20170101ALI20240118BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240118BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240118BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240118BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240118BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/112
B29C64/10
B33Y50/00
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y80/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112293
(22)【出願日】2022-07-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】上平 員丈
(72)【発明者】
【氏名】シラパスパコオウオン ピヤラット
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AM23
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】3D造形物およびカラー印刷層の全体の見た目の色を高精度に予測する。
【解決手段】複数の3D造形物層を積層して3D造形物を生成する3D造形物生成部と3D造形物に対するカラー印刷を行うカラー印刷部と制御部とを備える3Dプリンタシステムであって、カラー印刷部は、3D造形物生成部によって積層される隣接する2つの3D造形物層の間に位置する内部カラー印刷層を少なくとも1つ形成すると共に、3D造形物生成部によって最後に積層される3D造形物層の上面に位置する表面カラー印刷層を形成し、3Dプリンタシステムは、表面カラー印刷層での反射スペクトルと、3D造形物の3D造形物層の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算した合成出力光のスペクトルに基づいて、3D造形物、表面カラー印刷層および内部カラー印刷層の全体の見た目の色に相当する再現色を決定する色再現モデルを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D(三次元)造形物を生成する3D造形物生成部と、
前記3D造形物生成部によって生成される前記3D造形物に対するカラー印刷を行うカラー印刷部と、
前記3D造形物生成部および前記カラー印刷部を制御する制御部とを備える3Dプリンタシステムであって、
前記3D造形物生成部は、複数の3D造形物層を積層することによって前記3D造形物を生成し、
前記カラー印刷部は、前記3D造形物生成部によって積層される隣接する2つの3D造形物層の間に位置する内部カラー印刷層を少なくとも1つ形成すると共に、前記3D造形物生成部によって最後に積層される3D造形物層の上面に位置する表面カラー印刷層を形成し、
前記表面カラー印刷層での反射スペクトルと、前記3D造形物の3D造形物層の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算したものである合成出力光のスペクトルに基づいて、前記3D造形物生成部によって生成される前記3D造形物および前記カラー印刷部によって形成される前記表面カラー印刷層および前記内部カラー印刷層の全体の見た目の色に相当する再現色を決定する色再現モデルを備える、
3Dプリンタシステム。
【請求項2】
前記色再現モデルは、
前記内部からの反射光のスペクトルとして、
前記3D造形物生成部によって生成される前記3D造形物の透過スペクトルと、前記3D造形物生成部によって生成される前記3D造形物の内部での乱反射スペクトルとの積を前記複数の3D造形物層の積層方向に積分したものである第1スペクトルに、前記表面カラー印刷層の透過スペクトルを更に乗じたものである第2スペクトルを用いる、
請求項1に記載の3Dプリンタシステム。
【請求項3】
前記カラー印刷部によって形成される前記内部カラー印刷層の色と、前記カラー印刷部によって形成される前記表面カラー印刷層の色とが同一である、
請求項2に記載の3Dプリンタシステム。
【請求項4】
前記色再現モデルは、
前記カラー印刷部によって形成される前記内部カラー印刷層の透過スペクトルの値および前記カラー印刷部によって形成される前記表面カラー印刷層の透過スペクトルの値として、同一の値を用いる、
請求項3に記載の3Dプリンタシステム。
【請求項5】
3D造形物生成部が、3D造形物を生成する3D造形物生成ステップと、
カラー印刷部が、前記3D造形物生成ステップにおいて生成される前記3D造形物に対するカラー印刷を行うカラー印刷ステップと、
制御部が、前記3D造形物生成部および前記カラー印刷部を制御する制御ステップとを備える3D印刷方法であって、
前記3D造形物生成ステップでは、前記3D造形物生成部が、複数の3D造形物層を積層することによって前記3D造形物を生成し、
前記カラー印刷ステップでは、前記カラー印刷部が、前記3D造形物生成ステップにおいて積層される隣接する2つの3D造形物層の間に位置する内部カラー印刷層を少なくとも1つ形成すると共に、前記3D造形物生成ステップにおいて最後に積層される3D造形物層の上面に位置する表面カラー印刷層を形成し、
色再現モデルが、前記表面カラー印刷層での反射スペクトルと、前記3D造形物の3D造形物層の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算したものである合成出力光のスペクトルに基づいて、前記3D造形物生成部によって生成される前記3D造形物および前記カラー印刷部によって形成される前記表面カラー印刷層および前記内部カラー印刷層の全体の見た目の色に相当する再現色を決定する色再現ステップを備える、
3D印刷方法。
【請求項6】
3D造形物生成部によって生成される3D造形物およびカラー印刷部によって形成される表面カラー印刷層および内部カラー印刷層の全体の見た目の色に相当する再現色を決定する色再現モデルであって、
前記3D造形物生成部は、複数の3D造形物層を積層することによって前記3D造形物を生成し、
前記カラー印刷部は、前記3D造形物生成部によって積層される隣接する2つの3D造形物層の間に位置する前記内部カラー印刷層を少なくとも1つ形成すると共に、前記3D造形物生成部によって最後に積層される3D造形物層の上面に位置する前記表面カラー印刷層を形成し、
前記色再現モデルは、前記表面カラー印刷層での反射スペクトルと、前記3D造形物の3D造形物層の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算したものである合成出力光のスペクトルに基づいて、前記再現色を決定する、
色再現モデル。
【請求項7】
コンピュータに、
3D造形物生成部によって生成される3D造形物およびカラー印刷部によって形成される表面カラー印刷層および内部カラー印刷層の全体の見た目の色に相当する再現色を決定する色再現ステップを実行させるためのプログラムであって、
前記3D造形物生成部は、複数の3D造形物層を積層することによって前記3D造形物を生成し、
前記カラー印刷部は、前記3D造形物生成部によって積層される隣接する2つの3D造形物層の間に位置する前記内部カラー印刷層を少なくとも1つ形成すると共に、前記3D造形物生成部によって最後に積層される3D造形物層の上面に位置する前記表面カラー印刷層を形成し、
前記色再現ステップでは、前記表面カラー印刷層での反射スペクトルと、前記3D造形物の3D造形物層の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算したものである合成出力光のスペクトルに基づいて、前記再現色が決定される、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンタシステム、3D印刷方法、色再現モデルおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル技術とモノづくりが融合したデジタルファブリケーションがデジタル時代の新しいモノづくりとしてとして注目され、基礎から応用に至るまで活発な研究開発が展開されている。デジタルファブリケーションのなかでも特に3Dプリンタは小型・低コスト化が進み、広い分野で普及が始まっている。しかし、従来の3Dプリンタは形を造るいわゆる「造形」が主目的であり、表面に絵柄やパタンなどを描画する機能は備わっていないため造形物表面は材料の色に限定され、このため用途もデザイン性が求められない部品などに限定されていた。
最近、造形用材料を射出するノズルに加えてインクジェットノズルを備え、造形しながら同時にフルカラー印刷が可能な3Dプリンタが開発され、3Dプリンタによる造形物(以下、「3D造形物」と略す)の用途拡大が期待されている。しかし、3D造形物へのカラー印刷(以下、「3Dカラー印刷」と略す)に対して、色再現の制御・管理技術やノウハウは未だなく、紙への印刷に比べて色再現性が極めて低いのが現状である。
【0003】
図9は紙へのカラー印刷を説明するための図である。
図9に示すように、紙への印刷では、光の表面の反射特性で色再現が決定される。
図10は3D造形物へのカラー印刷を説明するための図である。
図10に示すように、カラー印刷が行われた3D造形物では、十分な厚さを有するカラー印刷層を形成することが難しいために、カラー印刷層において吸収される必要がある色成分(カラー印刷層を構成するインクの色成分以外の色成分)の光が表面から内部の浅い領域にまで侵入して、それぞれの深さで乱反射された光の合成により色が決定される(つまり、カラー印刷が行われた3D造形物の全体の見た目の色が決まる)と考えられる。すなわち、カラー印刷が行われた3D造形物では、カラー印刷が行われた3D造形物の全体の見た目の色と、カラー印刷層を構成するインクの色とが異なってしまう。特に光を透過する樹脂系の材料を用いて3D造形物が生成される場合にこのようなメカニズムが顕著に生じると考えられ、この内部からの反射光が色再現範囲を狭める要因になっていると考えられる。さらに、3Dカラー印刷用のカラーマネジメントシステムは未だ開発されておらず、従来の紙用のシステムが使われていることも低い色再現の要因となっている。
【0004】
特許文献1には、3D印刷に用いられる印刷層の設計支援方法について記載されている。詳細には、特許文献1には、着色操作に応じて各印刷ブロックの色が設定され、各印刷ブロックの色に基づいて1層のカラー印刷データが生成される旨が記載されている。また、特許文献1には、ソリッドモデルを着色する必要がある場合に、同じ層のカラー印刷データに基づいてソリッドモデルを着色するように3Dプリンタが制御される旨が記載されている。
ところで、特許文献1には、ユーザにより選択された各印刷層の各印刷ブロックの色を編集し、対応する1層のカラー印刷データを生成する色彩編集機能について記載されているものの、特許文献1に記載された技術では、カラー印刷が行われた3D造形物(ソリッドモデル)の全体の見た目の色と、カラー印刷層を構成するインクの色とが異なってしまうことに対する対策が施されていない。詳細には、特許文献1に記載された技術では、ユーザの着色操作において選択された色が、各印刷ブロックの色として設定される。
そのため、特許文献1に記載された技術によっては、カラー印刷が行われた3D造形物(ソリッドモデル)の全体の見た目の色を所望の色(例えばユーザの着色操作において選択された色、例えばカラーキャリブレーションされたディスプレイを用い、ディスプレイの画面で見たままの色など)に近づけることができない。
【0005】
特許文献2には、造形モジュールと、カラー印刷ヘッドを有する印刷モジュールとを備える3Dプリンタについて記載されている。詳細には、特許文献2には、カラー印刷ヘッドが、物体層における1つの表面に色を適用し、これにより所要の色仕上げを有する層を形成する旨が記載されている。また、特許文献2には、物体の着色が、物体層を形成するために使用される透明ビーズと、物体層における1つ以上の表面に適用される色との間の相互作用および相乗効果によって実現される旨が記載されている。更に、特許文献2は、ビーズが造形物体上に塗布されると共に、物体の最上層における表面が順次に効果的に着色されることにより、カラー層が形成される旨が記載されている。
ところで、特許文献2に記載された技術においても、物体の着色が行われた3D造形物(3D物体)の全体の見た目の色と、物体層の表面に適用される色(カラー層の色)とが異なってしまうことに対する対策が施されていない。
そのため、特許文献2に記載された技術によっても、カラー印刷が行われた3D造形物の全体の見た目の色を所望の色に近づけることができない。
【0006】
特許文献3には、ノズルから吐出するフィラメントを積層して立体造形ワークを形成する熱溶解積層方式の3Dプリンタ部と、プリントヘッドから異なる複数色のインクを噴射して立体造形ワークにカラー印刷を行うインクジェット式のカラープリンタ部とを備える3Dプリンタについて記載されている。詳細には、特許文献3には、立体造形ワークを適宜の高さ(一層または複数層)ずつ造形した後、この造形部分にカラー着色を施す動作(造形と着色)を繰り返し行うようにした場合と、三次元的な立体造形が全て完了した立体造形ワーク(カラー印刷を行っていない未着色の状態)の表面にカラー着色を施す場合とについて記載されている。
ところで、特許文献3に記載された技術においても、カラー着色が施された後の立体造形ワークの全体の見た目の色と、カラー着色に用いられるインクの色とが異なってしまうことに対する対策が施されていない。
そのため、特許文献3に記載された技術によっても、カラー着色が施された後の立体造形ワークの全体の見た目の色を所望の色に近づけることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-139730号公報
【特許文献2】特表2018-538185号公報
【特許文献3】特開2017-105063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した点に鑑み、本発明は、3D造形物および3D造形物に形成されるカラー印刷層の全体の見た目の色を高精度に予測することによって、3D造形物および3D造形物に形成されるカラー印刷層の全体の見た目の色を所望の色に近づけることを容易にすることができる3Dプリンタシステム、3D印刷方法、色再現モデルおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、3D(三次元)造形物を生成する3D造形物生成部と、前記3D造形物生成部によって生成される前記3D造形物に対するカラー印刷を行うカラー印刷部と、前記3D造形物生成部および前記カラー印刷部を制御する制御部とを備える3Dプリンタシステムであって、前記3D造形物生成部は、複数の3D造形物層を積層することによって前記3D造形物を生成し、前記カラー印刷部は、前記3D造形物生成部によって積層される隣接する2つの3D造形物層の間に位置する内部カラー印刷層を少なくとも1つ形成すると共に、前記3D造形物生成部によって最後に積層される3D造形物層の上面に位置する表面カラー印刷層を形成し、前記表面カラー印刷層での反射スペクトルと、前記3D造形物の3D造形物層の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算したものである合成出力光のスペクトルに基づいて、前記3D造形物生成部によって生成される前記3D造形物および前記カラー印刷部によって形成される前記表面カラー印刷層および前記内部カラー印刷層の全体の見た目の色に相当する再現色を決定する色再現モデルを備える、3Dプリンタシステムである。
【0010】
本発明の一態様は、3D造形物生成部が、3D造形物を生成する3D造形物生成ステップと、カラー印刷部が、前記3D造形物生成ステップにおいて生成される前記3D造形物に対するカラー印刷を行うカラー印刷ステップと、制御部が、前記3D造形物生成部および前記カラー印刷部を制御する制御ステップとを備える3D印刷方法であって、前記3D造形物生成ステップでは、前記3D造形物生成部が、複数の3D造形物層を積層することによって前記3D造形物を生成し、前記カラー印刷ステップでは、前記カラー印刷部が、前記3D造形物生成ステップにおいて積層される隣接する2つの3D造形物層の間に位置する内部カラー印刷層を少なくとも1つ形成すると共に、前記3D造形物生成ステップにおいて最後に積層される3D造形物層の上面に位置する表面カラー印刷層を形成し、色再現モデルが、前記表面カラー印刷層での反射スペクトルと、前記3D造形物の3D造形物層の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算したものである合成出力光のスペクトルに基づいて、前記3D造形物生成部によって生成される前記3D造形物および前記カラー印刷部によって形成される前記表面カラー印刷層および前記内部カラー印刷層の全体の見た目の色に相当する再現色を決定する色再現ステップを備える、3D印刷方法である。
【0011】
本発明の一態様は、3D造形物生成部によって生成される3D造形物およびカラー印刷部によって形成される表面カラー印刷層および内部カラー印刷層の全体の見た目の色に相当する再現色を決定する色再現モデルであって、前記3D造形物生成部は、複数の3D造形物層を積層することによって前記3D造形物を生成し、前記カラー印刷部は、前記3D造形物生成部によって積層される隣接する2つの3D造形物層の間に位置する前記内部カラー印刷層を少なくとも1つ形成すると共に、前記3D造形物生成部によって最後に積層される3D造形物層の上面に位置する前記表面カラー印刷層を形成し、前記色再現モデルは、前記表面カラー印刷層での反射スペクトルと、前記3D造形物の3D造形物層の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算したものである合成出力光のスペクトルに基づいて、前記再現色を決定する、色再現モデルである。
【0012】
本発明の一態様は、コンピュータに、3D造形物生成部によって生成される3D造形物およびカラー印刷部によって形成される表面カラー印刷層および内部カラー印刷層の全体の見た目の色に相当する再現色を決定する色再現ステップを実行させるためのプログラムであって、前記3D造形物生成部は、複数の3D造形物層を積層することによって前記3D造形物を生成し、前記カラー印刷部は、前記3D造形物生成部によって積層される隣接する2つの3D造形物層の間に位置する前記内部カラー印刷層を少なくとも1つ形成すると共に、前記3D造形物生成部によって最後に積層される3D造形物層の上面に位置する前記表面カラー印刷層を形成し、前記色再現ステップでは、前記表面カラー印刷層での反射スペクトルと、前記3D造形物の3D造形物層の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算したものである合成出力光のスペクトルに基づいて、前記再現色が決定される、プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、3D造形物および3D造形物に形成されるカラー印刷層の全体の見た目の色を高精度に予測することによって、3D造形物および3D造形物に形成されるカラー印刷層の全体の見た目の色を所望の色に近づけることを容易にすることができる3Dプリンタシステム、3D印刷方法、色再現モデルおよびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の3Dプリンタシステム1の一例を示す図である。
【
図2】第1実施形態の3Dプリンタシステム1によって生成される3D(三次元)造形物MDおよび3D造形物MDに対して行われるカラー印刷の一例を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態の3Dプリンタシステム1の色再現モデル14に適用される仮定を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態の3Dプリンタシステム1の色再現モデル14によるカラーマネージメント法を説明するための図である。
【
図5】内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)が形成されない比較例を説明するための図である。
【
図6】第1実施形態の3Dプリンタシステム1において実行される処理の一例を説明するためのシーケンス図である。
【
図7】第2実施形態の3Dプリンタシステム1の一例を示す図である。
【
図8】第3実施形態の3Dプリンタシステム1の一例を示す図である。
【
図9】紙へのカラー印刷を説明するための図である。
【
図10】3D造形物へのカラー印刷を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の3Dプリンタシステム、3D印刷方法、色再現モデルおよびプログラムの実施形態について説明する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の3Dプリンタシステム1の一例を示す図である。
図2は第1実施形態の3Dプリンタシステム1によって生成される3D(三次元)造形物MDおよび3D造形物MDに対して行われるカラー印刷の一例を説明するための図である。
図1および
図2に示す例では、第1実施形態の3Dプリンタシステム1が、3D造形物MDを生成すると共に、3D造形物MDに対するカラー印刷を行う。3Dプリンタシステム1は、3D造形物生成部11と、カラー印刷部12と、制御部13と、色再現モデル14とを備えている。
3D造形物生成部11は、3D造形物MDを生成する。
図1および
図2に示す例では、3D造形物生成部11が、FMD(Fused Deposition Modeling)方式であり、熱で溶かした熱可塑性樹脂をノズル(図示せず)から押し出して積層することによって3D造形物MDを生成する。3D造形物生成部11は、複数の3D造形物層MD(1)~MD(4)を積層することによって3D造形物MDを生成する。
【0017】
図2に示す例では、3D造形物生成部11が、4つの3D造形物層MD(1)、MD(2)、MD(3)、MD(4)を積層することによって3D造形物MDを生成するが、他の例では、3D造形物生成部11が、4以外の複数の3D造形物層を積層することによって3D造形物MDを生成してもよい。
【0018】
図1および
図2に示す例では、3D造形物生成部11がFMD方式であるが、他の例では、3D造形物生成部11が、例えば光造形方式(SLA(Stereo Lithography Apparatus)方式)、インクジェット方式(材料噴射法)、バインダージェット方式(結合材噴射法)等のようなFMD方式以外の方式であってもよい。
【0019】
図1および
図2に示す例では、カラー印刷部12が、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物MDに対するカラー印刷を行う。
詳細には、
図2に示す例では、カラー印刷部12が、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物層MD(1)に対するカラー印刷を行わない。カラー印刷部12は、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物層MD(2)に対するカラー印刷を行い、3D造形物生成部11によって積層される隣接する2つの3D造形物層MD(2)、MD(3)の間に位置する内部カラー印刷層PY(3)を形成する。また、カラー印刷部12は、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物層MD(3)に対するカラー印刷を行い、3D造形物生成部11によって積層される隣接する2つの3D造形物層MD(3)、MD(4)の間に位置する内部カラー印刷層PY(2)を形成する。更に、カラー印刷部12は、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物層MD(4)に対するカラー印刷を行い、3D造形物生成部11によって最後に積層される3D造形物層MD(4)の上面に位置する表面カラー印刷層PY(1)を形成する。
【0020】
図2に示す例では、カラー印刷部12が、2つの内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)を形成するが、他の例では、カラー印刷部12が、1つの内部カラー印刷層を形成したり、3以上の内部カラー印刷層を形成したりしてもよい。
図2に示す例では、3D造形物生成部11が、4つの3D造形物層MD(1)~MD(4)を生成するが、他の例では、3D造形物生成部11が、4以外の任意の数の3D造形物層を生成してもよい。
【0021】
図1および
図2に示す例では、制御部13が、3D造形物生成部11およびカラー印刷部12を制御する。
色再現モデル14は、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物MDおよびカラー印刷部12によって形成される表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の全体の見た目の色に相当する再現色を決定(予測)する。
【0022】
図3~
図5は第1実施形態の3Dプリンタシステム1の色再現モデル14に適用される考え方を説明するための図である。詳細には、
図3は第1実施形態の3Dプリンタシステム1の色再現モデル14に適用される仮定を説明するための図である。
図4は第1実施形態の3Dプリンタシステム1の色再現モデル14によるカラーマネージメント法を説明するための図である。
図5は内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)が形成されない比較例を説明するための図である。
【0023】
(仮定1)
図3に示す第1実施形態の3Dプリンタシステム1の色再現モデル14に適用される仮定では、3D造形物は白色とする。つまり、3D造形物の反射スペクトルおよび透過スペクトルが波長によらず一定であると仮定する。一般的に3Dプリンタによって3D造形物の表面にカラー印刷が行われる場合、3D造形物の材料として白い樹脂が用いられるからである。ただし、色がついた材料を用いて3D造形物を生成する場合にも以下の議論は成り立つ。
(仮定2)
カラー印刷が行われた3D造形物に入射する入射光は白色光とする。
【0024】
(仮定3)
内部カラー印刷層が形成されない比較例では、通常の紙への印刷と同様に、入射光はカラー印刷層(表面カラー印刷層)を透過して、その下の3D造形物の表面、および3D造形物の表面付近の3D造形物の内部で反射して、再びカラー印刷層(表面カラー印刷層)に入射し、カラー印刷層(表面カラー印刷層)を透過してカラー印刷層(表面カラー印刷層)の表面側(
図3の上側)に出る。このとき、光はカラー印刷層を往復で2回透過し、この往復の透過スペクトルにより反射光の色が決まる。
図3に示す例(つまり、入射光が白色であり、3D造形物が白色であり、表面カラー印刷層が赤色であり、内部カラー印刷層が形成されない例)では、光がカラー印刷層(表面カラー印刷層)を通過する際に赤色成分以外の光がカラー印刷層(表面カラー印刷層)に吸収され、赤色成分の光のみがカラー印刷層(表面カラー印刷層)の表面(
図3の上側の面)から出射される。
図3に矢印で示す入射光および反射光の例では、白色の3D造形物の表面(
図3の上側の面)で反射された光がカラー印刷層(表面カラー印刷層)を通過する際に、赤色成分以外の光がカラー印刷層(表面カラー印刷層)に吸収され、赤色成分の光(
図3に「反射光(目で感じる色)」で示す光)のみがカラー印刷層(表面カラー印刷層)の表面(
図3の上側の面)から出射される。したがって、その部分は赤色に見える。
【0025】
(仮定4)
第1実施形態の3Dプリンタシステム1の色再現モデル14では、表面カラー印刷層PY(1)の透過率(透過スペクトル)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の透過率(透過スペクトル)を、
図3に示す例の光がカラー印刷層(表面カラー印刷層)を往復する際の透過率t
c(λ)と同じものとして扱う。
(仮定5)
第1実施形態の3Dプリンタシステム1によって形成される内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の絵柄(色)と、第1実施形態の3Dプリンタシステム1によって形成される表面カラー印刷層PY(1)の絵柄(色)とが同一であると仮定する。すなわち、第1実施形態の3Dプリンタシステム1によって形成される内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の透過スペクトルと、第1実施形態の3Dプリンタシステム1によって形成される表面カラー印刷層PY(1)の透過スペクトルとが、共にt
c(λ)であると仮定する。
【0026】
第1実施形態の3Dプリンタシステム1の色再現モデル14に適用される考え方では、
図4に示す微小領域δSにおける色再現を考える。微小領域δSの範囲内では、カラー印刷層(表面カラー印刷層および内部カラー印刷層)の透過スペクトル(透過率t
c(λ))は一定と見なす。3D造形物の3D造形物層の内部における反射率はrとする。
図4に示す例では、
図4の上側からi番目のカラー印刷層(内部カラー印刷層)と、
図4の上側からi+1番目のカラー印刷層(内部カラー印刷層)との間の3D造形物層において反射率rで乱反射されて表面(つまり、
図4に示す最も上側のカラー印刷層(表面カラー印刷層)よりも上側(
図4の上側))に出てくる光C
i(λ)は、i番目のカラー印刷層より上側のカラー印刷層(すなわち、表面カラー印刷層および2番目~i番目の内部カラー印刷層)をそれぞれ行き帰りで2回通過する。表面カラー印刷層および2番目~i番目の内部カラー印刷層のそれぞれの透過率t
c(λ)は一定であるため、この光が通過する全てのカラー印刷層(表面カラー印刷層および2番目~i番目の内部カラー印刷層)による透過スペクトルは、それぞれの積で与えられ、下記の(1A)式によって表される。
【0027】
【0028】
また、3D造形物の各3D造形物層の内部における光C
i(λ)の光路上の単位長当たりの透過率をt
pとし、3D造形物の各3D造形物層の厚さ(≒各3D造形物層の内部における光C
i(λ)の光路の片道分(つまり、行きおよび帰りの一方)の長さ(距離))をdとする。
図4の上側からi番目のカラー印刷層(内部カラー印刷層)で反射されて表面(つまり、
図4に示す最も上側のカラー印刷層(表面カラー印刷層)よりも上側(
図4の上側))に出てくる光は、3D造形物中で距離2idを通過する。その光が3D造形物中で距離2idを通過する際の透過率は、t
p/2idになる。
【0029】
図4の上側からi番目のカラー印刷層(内部カラー印刷層)と
図4の上側からi+1番目のカラー印刷層(内部カラー印刷層)との間の3D造形物層において反射率rで乱反射されて表面(つまり、
図4に示す最も上側のカラー印刷層(表面カラー印刷層)よりも上側(
図4の上側))に出てくる光C
i(λ)は、表面カラー印刷層に入射する入射光(白色光)の強度Iと、その光が3D造形物中で距離2idを通過する際の透過率t
p/2idと、3D造形物の3D造形物層の内部における反射率はrと、この光が通過する全てのカラー印刷層(表面カラー印刷層および2番目~i番目の内部カラー印刷層)による透過スペクトル((1A)式参照)とを乗算したもの(つまり、下記の(1)式)によって表される。
【0030】
【0031】
(1)式中の(tp/2d)×rをαとすると、(1)式で示す光Ci(λ)は、下記の(2)式のように表される。
【0032】
【0033】
カラー印刷層(表面カラー印刷層および内部カラー印刷層)がN層あるとし、全てのカラー印刷層(表面カラー印刷層および内部カラー印刷層)からの反射光を加算したものである光C(λ)は、下記の(3)式によって表される。
【0034】
【0035】
内部カラー印刷層が形成されない
図5に示す比較例においては、3D造形物の透過率のみを考慮すればよい。内部カラー印刷層はないが、仮想的に厚さdを有するN層の3D造形物層があると考える。
また、内部カラー印刷層が形成されない
図5に示す比較例においては、カラー印刷層として、1つの表面カラー印刷層のみが存在する。
そのため、
図5に示す比較例では、
図5の上側からi番目の3D造形物層において反射率rで乱反射されて表面(つまり、
図5に示す表面カラー印刷層よりも上側(
図5の上側))に出てくる光C
0iは、上述した(2)式中の、(1A)式によって表される透過スペクトルを、透過スペクトルt
c(λ)に置き換えたものである下記の(4)式によって表される。
【0036】
【0037】
図5に示す比較例では、全ての3D造形物層(N層の3D造形物層)からの光が合わさったものである光C
0は、下記の(5)式によって表され、表面カラー印刷層を通過する。
【0038】
【0039】
簡単のため、N=3とすると、上述した(3)式で示す全てのカラー印刷層(表面カラー印刷層および内部カラー印刷層)からの反射光を加算したものである光のスペクトルC(3D造形物、表面カラー印刷層および内部カラー印刷層の全体の見た目の色に相当する再現色)は、下記の(6)式によって表される。また、N=3とすると、上述した(5)式で示す全ての3D造形物層(N層の3D造形物層)からの光が合わさって表面カラー印刷層から出てくる光のスペクトルC0(3D造形物および表面カラー印刷層の全体の見た目の色に相当する再現色)は、下記の(7)式によって表される。
【0040】
【0041】
【0042】
(6)式と(7)式とを比較すると、色を決定するのはカラー印刷層(表面カラー印刷層および内部カラー印刷層)の透過スペクトルt
c(λ)であり、表面のみにカラー印刷層(表面カラー印刷層)が形成される比較例では、透過スペクトルt
c(λ)の項が一つであるが、第1実施形態の3Dプリンタシステム1の色再現モデル14によるカラーマネージメント法を説明する
図4に示す例では、透過スペクトルt
c(λ)の項の他、内部カラー印刷層の効果が、下記の(6A)式で示す透過スペクトルt
c(λ)の2乗の形および下記の(6B)式で示す透過スペクトルt
c(λ)の3乗の形で現れ、これらはべき乗となるために透過スペクトルt
c(λ)の項よりも彩度、コントラストが高い。このため、第1実施形態の3Dプリンタシステム1の色再現モデル14によるカラーマネージメント法を説明する
図4に示す例は、表面のみにカラー印刷層(表面カラー印刷層)が形成される比較例よりも色再現性を高める効果を有することになる。
【0043】
【0044】
【0045】
つまり、
図1および
図2に示す例では、色再現モデル14が、表面カラー印刷層PY(1)での反射スペクトルと、3D造形物MDの3D造形物層MD(1)~MD(4)の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算したものである合成出力光のスペクトルに基づいて、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物MDおよびカラー印刷部12によって形成される表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の全体の見た目の色に相当する再現色を決定(予測)する。
詳細には、色再現モデル14が、内部からの反射光(3D造形物MDの3D造形物層MD(1)~MD(4)の内部において乱反射された光)のスペクトルとして、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物MDの透過スペクトルTo(λ)と、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物MDの内部での乱反射スペクトルRo(λ)との積を複数の3D造形物層MD(1)~MD(4)の積層方向に積分したものである第1スペクトルに、表面カラー印刷層PY(1)の透過スペクトルを更に乗じたものである第2スペクトルを用いる。
また、色再現モデル14は、上述した仮定4および仮定5に基づいて、カラー印刷部12によって形成される内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の透過スペクトルの値およびカラー印刷部12によって形成される表面カラー印刷層PY(1)の透過スペクトルの値として、同一の値を用いる。
また、
図1および
図2に示す例では、上述した仮定5に基づいて、カラー印刷部12によって形成される内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の色と、カラー印刷部12によって形成される表面カラー印刷層PY(1)の色とが同一である。
【0046】
上述したように特許文献1~特許文献3に記載された技術では、カラー着色が施された後の3D造形物およびカラー印刷層の全体の見た目の色と、カラー印刷に用いられるインクの色とが異なってしまうことに対する対策が施されていないのに対し、第1実施形態の3Dプリンタシステム1では、色再現モデル14が、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物MDおよびカラー印刷部12によって形成される表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の全体の見た目の色に相当する再現色を決定(予測)する。更に、第1実施形態の3Dプリンタシステム1では、3D造形物MDおよび3D造形物MDに形成されるカラー印刷層(表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3))の全体の見た目の色が、所望の色(例えばカラーキャリブレーションされたディスプレイを用い、ディスプレイの画面で見たままの色など)に近づくように、3D造形物MDに対するカラー印刷に用いられるインクの色が設定される。
そのため、第1実施形態の3Dプリンタシステム1によれば、3D造形物および3D造形物に形成されるカラー印刷層の全体の見た目の色を所望の色に近づけることを容易にすることができる。詳細には、第1実施形態の3Dプリンタシステム1によれば、十分な厚さを有する表面カラー印刷層PY(1)を形成できない場合であっても、3D造形物および3D造形物に形成されるカラー印刷層の全体の見た目の色を所望の色に近づけることを容易にすることができる。
【0047】
図6は第1実施形態の3Dプリンタシステム1において実行される処理の一例を説明するためのシーケンス図である。詳細には、
図6は
図2に示す3D造形物MD(3D造形物層MD(1)~MD(4))の生成およびカラー印刷層(表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3))の形成を行うために第1実施形態の3Dプリンタシステム1において実行される処理の一例を示している。
図6に示す例では、ステップS1において、色再現モデル14が、シミュレーションを実行する。具体的には、色再現モデル14は、表面カラー印刷層PY(1)での反射スペクトルと、3D造形物MDの3D造形物層MD(1)~MD(4)の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算したものである合成出力光のスペクトルに基づいて、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物MDおよびカラー印刷部12によって形成される表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の全体の見た目の色に相当する再現色を決定(予測)する。
【0048】
次いで、ステップS2では、色再現モデル14が、ステップS1において決定(予測)された再現色を示す情報を制御部13に送信する。
また、ステップS3では、色再現モデル14が、ステップS1において決定(予測)された再現色を示す情報をカラー印刷部12に送信する。
次いで、ステップS4では、カラー印刷部12が、ステップS3において色再現モデル14から送信された再現色を示す情報に基づいて、3D造形物MDおよび3D造形物MDに形成されるカラー印刷層(表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3))の全体の見た目の色が所望の色に近づくように、3D造形物MDに対するカラー印刷に用いられるインクの色を設定する。
【0049】
ステップS5では、制御部13が、3D造形物生成部11を制御するための制御信号を3D造形物生成部11に送信する。
次いで、ステップS6では、3D造形物生成部11が、ステップS5において制御部13から送信された制御信号に基づいて、3D造形物MDの3D造形物層MD(1)を生成し、3D造形物MDの3D造形物層MD(2)を生成する。つまり、3D造形物生成部11が、3D造形物MDの3D造形物層MD(1)および3D造形物層MD(2)を積層する。
【0050】
ステップS7では、制御部13は、カラー印刷部12が、ステップS6において生成された3D造形物MDの3D造形物層MD(2)に対するカラー印刷を行うための制御信号をカラー印刷部12に送信する。
次いで、ステップS8では、カラー印刷部12が、ステップS7において制御部13から送信された制御信号に基づいて、3D造形物MDの3D造形物層MD(2)に対するカラー印刷を行う。詳細には、カラー印刷部12が、3D造形物MDの3D造形物層MD(2)の上側に内部カラー印刷層PY(3)を形成する。
【0051】
ステップS9では、制御部13が、3D造形物生成部11を制御するための制御信号を3D造形物生成部11に送信する。
次いで、ステップS10では、3D造形物生成部11が、ステップS9において制御部13から送信された制御信号に基づいて、3D造形物MDの3D造形物層MD(3)を生成する。つまり、3D造形物生成部11が、ステップS8において形成された内部カラー印刷層PY(3)の上側に、3D造形物MDの3D造形物層MD(3)を積層する。
【0052】
ステップS11では、制御部13は、カラー印刷部12が、ステップS10において生成された3D造形物MDの3D造形物層MD(3)に対するカラー印刷を行うための制御信号をカラー印刷部12に送信する。
次いで、ステップS12では、カラー印刷部12が、ステップS11において制御部13から送信された制御信号に基づいて、3D造形物MDの3D造形物層MD(3)に対するカラー印刷を行う。詳細には、カラー印刷部12が、3D造形物MDの3D造形物層MD(3)の上側に内部カラー印刷層PY(2)を形成する。
【0053】
ステップS13では、制御部13が、3D造形物生成部11を制御するための制御信号を3D造形物生成部11に送信する。
次いで、ステップS14では、3D造形物生成部11が、ステップS13において制御部13から送信された制御信号に基づいて、3D造形物MDの3D造形物層MD(4)を生成する。つまり、3D造形物生成部11が、ステップS12において形成された内部カラー印刷層PY(2)の上側に、3D造形物MDの3D造形物層MD(4)を積層する。
【0054】
ステップS15では、制御部13は、カラー印刷部12が、ステップS14において生成された3D造形物MDの3D造形物層MD(4)に対するカラー印刷を行うための制御信号をカラー印刷部12に送信する。
次いで、ステップS16では、カラー印刷部12が、ステップS15において制御部13から送信された制御信号に基づいて、3D造形物MDの3D造形物層MD(4)に対するカラー印刷を行う。詳細には、カラー印刷部12が、3D造形物MDの3D造形物層MD(4)の上面に位置する表面カラー印刷層PY(1)を形成する。
【0055】
上述したように、第1実施形態の3Dプリンタシステム1の色再現モデル14は、3D造形物MDの内部反射も考慮し、3D造形物MDの内部の深さ方向(複数の3D造形物層MD(1)~MD(4)の積層方法)(
図2の上下方向)への反射スペクトルの積分によって再現色を決定する。
第1実施形態の3Dプリンタシステム1は、造形しながらカラー印刷を行うことができるという特徴を生かし、3D造形物MDの表面のみならず、3D造形物MDの内部にもカラー印刷を行うことにより、カラー印刷層(表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3))を多層化して、色再現モデル14による色再現性を高めている。
【0056】
本発明者等は、3D造形物MDに対して行われるカラー印刷では、表面のみならず内部からの光反射も色再現に影響を及ぼすと考え、内部反射を考慮した色再現モデル14を構築し、第1実施形態の3Dプリンタシステム1に適用した。第1実施形態の3Dプリンタシステム1は、色再現モデル14によって決定(予測)された再現色に基づいて、表面カラー印刷層PY(1)に加えて内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)を設けると共に、それらを形成するためのインクの色を設定することにより、色再現範囲の拡大を図っている(つまり、3D造形物MDおよび3D造形物MDに形成されるカラー印刷層(表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3))の全体の見た目の色を所望の色に近づけている)。
【0057】
[第2実施形態]
以下、本発明の3Dプリンタシステム、3D印刷方法、色再現モデルおよびプログラムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態の3Dプリンタシステム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の3Dプリンタシステム1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の3Dプリンタシステム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の3Dプリンタシステム1と同様の効果を奏することができる。
【0058】
図7は第2実施形態の3Dプリンタシステム1の一例を示す図である。
図7に示す例では、
図1に示す例と同様に、3Dプリンタシステム1が、3D造形物MDを生成すると共に、3D造形物MDに対するカラー印刷を行う。3Dプリンタシステム1は、3D造形物生成部11と、カラー印刷部12と、制御部13と、色再現モデル14とを備えている。
図1に示す例は、色再現モデル14が制御部13、カラー印刷部12等に接続されているが、
図7に示す例は、色再現モデル14が制御部13、カラー印刷部12等に接続されていない。
【0059】
図7に示す例では、
図1に示す例と同様に、色再現モデル14が、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物MDおよびカラー印刷部12によって形成される表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の全体の見た目の色に相当する再現色を決定(予測)する。詳細には、色再現モデル14が、
図1に示す例と同様に、表面カラー印刷層PY(1)での反射スペクトルと、3D造形物MDの3D造形物層MD(1)~MD(4)の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算したものである合成出力光のスペクトルに基づいて、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物MDおよびカラー印刷部12によって形成される表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の全体の見た目の色に相当する再現色を決定(予測)する。
【0060】
図7に示す例では、
図1に示す例とは異なり、例えば3Dプリンタシステム1のオペレータが、色再現モデル14によって決定(予測)された再現色を示す情報を制御部13またはカラー印刷部12に入力する。
また、
図7に示す例では、カラー印刷部12が、例えば3Dプリンタシステム1のオペレータによって入力された再現色を示す情報に基づいて、3D造形物MDおよび3D造形物MDに形成されるカラー印刷層(表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3))の全体の見た目の色が所望の色に近づくように、3D造形物MDに対するカラー印刷に用いられるインクの色を設定する。
他の例では、例えば3Dプリンタシステム1のオペレータが、色再現モデル14によって決定(予測)された再現色に基づいて、3D造形物MDおよび3D造形物MDに形成されるカラー印刷層(表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3))の全体の見た目の色が所望の色に近づくように、3D造形物MDに対するカラー印刷に用いられるインクの色を設定してもよい。この例では、例えば3Dプリンタシステム1のオペレータが、3D造形物MDに対するカラー印刷に用いられるインクの色を示す情報を制御部13またはカラー印刷部12に入力する。
【0061】
第2実施形態の3Dプリンタシステム1によれば、第1実施形態の3Dプリンタシステム1と同様に、3D造形物および3D造形物に形成されるカラー印刷層の全体の見た目の色を所望の色(例えばカラーキャリブレーションされたディスプレイを用い、ディスプレイの画面で見たままの色など)に近づけることを容易にすることができる。詳細には、第2実施形態の3Dプリンタシステム1によれば、第1実施形態の3Dプリンタシステム1と同様に、十分な厚さを有する表面カラー印刷層PY(1)を形成できない場合であっても、3D造形物および3D造形物に形成されるカラー印刷層の全体の見た目の色を所望の色に近づけることを容易にすることができる。
【0062】
[第3実施形態]
以下、本発明の3Dプリンタシステム、3D印刷方法、色再現モデルおよびプログラムの第3実施形態について説明する。
第3実施形態の3Dプリンタシステム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の3Dプリンタシステム1と同様に構成されている。従って、第3実施形態の3Dプリンタシステム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の3Dプリンタシステム1と同様の効果を奏することができる。
【0063】
図8は第3実施形態の3Dプリンタシステム1の一例を示す図である。
図8に示す例では、
図1に示す例と異なり、3Dプリンタシステム1が、3D造形物MDを生成しない。また、3Dプリンタシステム1は、3D造形物MDに対するカラー印刷も行わない。
上述したように、
図1に示す例では、3Dプリンタシステム1が、3D造形物生成部11と、カラー印刷部12と、制御部13と、色再現モデル14とを備えている。
一方、
図8に示す例では、3Dプリンタシステム1が、3D造形物生成部11、カラー印刷部12および制御部13を備えておらず、色再現モデル14のみを備えている。
【0064】
図8に示す例では、色再現モデル14がシミュレーションを実行する。具体的には、色再現モデル14は、例えば
図2に示すような3D造形物MDが生成され、例えば
図2に示すような表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)が形成される場合における3D造形物MD、表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の全体の見た目の色に相当する再現色を決定(予測)する。詳細には、色再現モデル14が、
図1に示す例と同様に、表面カラー印刷層PY(1)での反射スペクトルと、3D造形物MDの3D造形物層MD(1)~MD(4)の内部において乱反射された光である内部からの反射光のスペクトルとを加算したものである合成出力光のスペクトルに基づいて、3D造形物生成部11によって生成される3D造形物MDおよびカラー印刷部12によって形成される表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3)の全体の見た目の色に相当する再現色を決定(予測)する。
【0065】
また、
図8に示す例では、色再現モデル14が、決定(予測)した再現色に基づいて、例えば
図2に示すような3D造形物MDおよび3D造形物MDに形成されるカラー印刷層(表面カラー印刷層PY(1)および内部カラー印刷層PY(2)、PY(3))の全体の見た目の色が所望の色に近づくように、3D造形物MDに対するカラー印刷に用いられるインクの色を設定する。
図8に示す例では、色再現モデル14によって決定(予測)された再現色を示す情報、および、色再現モデル14によって設定された3D造形物MDに対するカラー印刷に用いられるインクの色を示す情報が、例えば特許文献1~特許文献3に記載されたカラー印刷機能を有する3Dプリンタ等のような、公知のカラー印刷機能を有する3Dプリンタのオペレータ等によって利用される。
その結果、第3実施形態においても、第1および第2実施形態と同様に、3D造形物および3D造形物に形成されるカラー印刷層の全体の見た目の色を所望の色(例えばカラーキャリブレーションされたディスプレイを用い、ディスプレイの画面で見たままの色など)に近づけることを容易にすることができる。詳細には、第3実施形態によれば、第1および第2実施形態と同様に、十分な厚さを有する表面カラー印刷層PY(1)を形成できない場合であっても、3D造形物および3D造形物に形成されるカラー印刷層の全体の見た目の色を所望の色に近づけることを容易にすることができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0067】
なお、上記の実施形態における3Dプリンタシステム1の全部または一部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
なお、3Dプリンタシステム1の全部または一部は、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、各システムが備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
なお、3Dプリンタシステム1の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0068】
1…3Dプリンタシステム、11…3D造形物生成部、12…カラー印刷部、13…制御部、14…色再現モデル、MD…3D造形物、MD(1)…3D造形物層、MD(2)…3D造形物層、MD(3)…3D造形物層、MD(4)…3D造形物層、PY(1)…表面カラー印刷層、PY(2)…内部カラー印刷層、PY(3)…内部カラー印刷層