(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107902
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
B62D25/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012081
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB16
3D203BB17
3D203CA23
3D203CA38
3D203CA42
3D203CA53
3D203CA58
3D203CA67
3D203CB09
3D203CB19
3D203DA05
3D203DB09
(57)【要約】
【課題】電気デバイスに対する保護性能をより向上する。
【解決手段】車両前部構造Sでは、クロスメンバ22が、インバータ装置30の前側で且つラジエータサポート20の後側でフロントサイドフレーム10に架け渡されている。また、ラジエータサポートRF40が、ラジエータサポート20とクロスメンバ22とを連結し、後側固定フランジ40Bがクロスメンバ22の支持ガイド部50によって上下方向両側から支持されている。これにより、オフセット衝突時やアンダーライド衝突時に後傾するラジエータサポート20に対して、支持ガイド部50及びクロスメンバ22からラジエータサポートRF40を介して前斜め上方への反力を作用させることができる。その結果、これら衝突時において衝突体に有効な反力を作用させることができると共に、衝突体の車両Vの前部における後側への侵入を抑制することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部の車幅方向両側において車両前後方向に延在された一対のフロントサイドフレームと、
一対の前記フロントサイドフレームの間に配置され、正面視で矩形枠状に形成されると共に、車幅方向両側部が前記フロントサイドフレームに連結されたラジエータサポートと、
車幅方向に延在され、前記ラジエータサポートの車両後側に配置され、一対の前記フロントサイドフレームに架け渡されたクロスメンバと、
前記クロスメンバの車両後側に配置された電気デバイスと、
前記ラジエータサポートの車幅方向外側端部と前記クロスメンバとを連結する一対のラジエータサポートリインフォースメントと、
前記クロスメンバに設けられ、前記ラジエータサポートリインフォースメントの後端部を車両下側から支持する支持部と、
を備えた車両前部構造。
【請求項2】
所定値以上の車両後側への衝突荷重が前記ラジエータサポートリインフォースメントに入力されたときには、前記ラジエータサポートリインフォースメントの後端部と前記クロスメンバとの連結状態が解除される請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
一対の前記ラジエータサポートリインフォースメントが、平面視で車両後側へ向かうに従い車幅方向中央側へ傾斜している請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記クロスメンバには、一対の前記支持部が設けられており、
一対の前記支持部は、車幅方向に延在されると共に、前記ラジエータサポートリインフォースメントの後端部を車両上下方向両側から支持している請求項3に記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記ラジエータサポートリインフォースメントの後端部には、車幅方向外側へ屈曲された連結部が形成されており、
連結部が、前記クロスメンバに固定されている請求項3に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の車両前部構造では、車幅方向に延在されたバンパリインフォースメントの車両後側に左右一対のフロントサイドメンバが設けられており、フロントサイドメンバとバンパリインフォースメントとの間には、クラッシュボックスが介在されている。また、車幅方向に延在されたクロスメンバによって、一対のフロントサイドフレームの前端部が連結されている。さらに、クロスメンバの車両後側には、モータ等の高電圧部品郡(電気デバイス)が配置されている。そして、車両の正面衝突時には、高電圧部品郡よりも車両前側の骨格構造が変形するように、高圧電圧部品郡の前後位置が設定されている。また、車両のオフセット衝突時には、クロスメンバが突っ張ることで、フロントサイドメンバの折れ曲がりが抑制され、フロントサイドメンバが軸方向に圧縮変形して、衝突エネルギを吸収する。これにより、オフセット衝突時における高電圧部品郡に対する保護性能を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記車両前部構造では、以下に示す点において改善の余地がある。すなわち、車両のオフセット衝突では、衝突時の車両の挙動等によって、衝突体がラジエータサポート等の車両前端部を押し倒すように侵入するケースが散見されている。この場合には、衝突体に対する有効な反力を付与することができず、衝突体が高電圧部品郡(電気デバイス)の配置領域に侵入する虞がある。
【0005】
また、車両の前面衝突の形態として、車両が衝突体の下側に潜り込むように衝突するアンダーライド衝突があり、アンダーライド衝突では、衝突体が車両の前部の上部を侵入する。すなわち、衝突体がラジエータサポート等の車両前端部を押し倒すように侵入する。このため、この場合にも、衝突体に対する有効な反力を付与することができず、衝突体が高電圧部品郡(電気デバイス)の配置領域に侵入する虞がある。したがって、上記車両前部構造では、高電圧部品郡(電気デバイス)に対する保護性能をより向上するという点において改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、電気デバイスに対する保護性能をより向上することができる車両前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、車両の前部の車幅方向両側において車両前後方向に延在された一対のフロントサイドフレームと、一対の前記フロントサイドフレームの間に配置され、正面視で矩形枠状に形成されると共に、車幅方向両側部が前記フロントサイドフレームに連結されたラジエータサポートと、車幅方向に延在され、前記ラジエータサポートの車両後側に配置され、一対の前記フロントサイドフレームに架け渡されたクロスメンバと、前記クロスメンバの車両後側に配置された電気デバイスと、前記ラジエータサポートの車幅方向外側端部と前記クロスメンバとを連結する一対のラジエータサポートリインフォースメントと、前記クロスメンバに設けられ、前記ラジエータサポートリインフォースメントの後端部を車両下側から支持する支持部と、を備えた車両前部構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、電気デバイスに対する保護性能をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る車両前部構造が適用された車両の前部を模式的に示す上側から見た平面図である。
【
図2】
図1に示される車両の前部の車幅方向中央部を示す左側から見た断面図(
図1の2-2線断面図)である。
【
図3】
図1に示されるラジエータサポートリインフォースメントの後端部の周辺を拡大して示す前側から見た正面図である。
【
図4】
図3に示されるクロスメンバの変形例とラジエータサポートリインフォースメントとの固定状態を示す左側から見た断面図である。
【
図5】
図3に示されるクロスメンバの他の変形例とラジエータサポートリインフォースメントとの固定状態を示す左側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係る車両前部構造Sが適用された車両(自動車)Vについて説明する。なお、図面では、車両Vの車両前側を矢印FRで示し、車両上側を矢印UPで示し、車両上側から見たときの車両左側(車幅方向一方側)を矢印LHで示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、車両上下方向、車両前後方向、車両左右方向を示すものとする。
【0011】
図1~
図3に示されるように、車両前部構造Sは、車両Vの前部に適用されている。車両前部構造Sは、左右一対のフロントサイドフレーム10と、バンパビーム14と、ラジエータサポート20と、クロスメンバ22と、を含んで構成されている。また、車両前部構造Sは、左右一対のラジエータサポートリインフォースメント40(以下、ラジエータサポートRF40と記載する)と、クロスメンバ22に設けられた上下一対の支持部としての支持ガイド部50と、を有している。以下、車両前部構造Sの各構成について説明する。
【0012】
一対のフロントサイドフレーム10は、前後方向に延在された中空の略矩形柱状に形成されて、車両Vの前部の車幅方向両側(左右方向両側)に配置されている。フロントサイドフレーム10の前側には、クラッシュボックス12が設けられている。クラッシュボックス12は、前後方向を軸方向とする略矩形筒状に形成されており、クラッシュボックス12の後端部が、フロントサイドフレーム10の前端部に連結されている。
【0013】
バンパビーム14は、車幅方向に延在されて、車両Vの前端部における骨格を構成している。バンパビーム14は、バンパビーム14の長手方向から見た断面視で、略矩形枠状に形成されている。すなわち、バンパビーム14は、矩形閉断面構造を成している。そして、バンパビーム14の車幅方向両端部がフロントサイドフレーム10よりも車幅方向外側に突出した状態で、バンパビーム14がクラッシュボックス12の前端部に連結されている。これにより、バンパビーム14がフロントサイドフレーム10にクラッシュボックス12を介して連結されている。なお、クラッシュボックス12を省略して、バンパビーム14をフロントサイドフレーム10の前端部に直接的に連結するように構成してもよい。
【0014】
ラジエータサポート20は、前側から見た正面視で、略矩形枠状に形成されている。具体的には、ラジエータサポート20は、上下方向に延在され且つラジエータサポート20の車幅方向両側部を構成する左右一対のラジエータサポートサイド20Sと、左右方向に延在され且つラジエータサポートサイド20Sの上端部同士を連結するラジエータサポートアッパ20Uと、左右方向に延在され且つラジエータサポートサイド20Sの下端部同士を連結するラジエータサポートロア20Lと、を含んで構成されている。ラジエータサポート20は、一対のフロントサイドフレーム10の前端部間に配置されており、ラジエータサポートサイド20Sの下端側部分が、フロントサイドフレーム10に接合されている。すなわち、ラジエータサポート20は、フロントサイドフレーム10よりも上側へ突出している。また、ラジエータサポートサイド20Sは、上下方向に延在された略中空の矩形柱状に形成されている。ラジエータサポート20の内側には、図示しないラジエータが設けられており、ラジエータサポート20によってラジエータが支持されている。
【0015】
クロスメンバ22は、車幅方向に延在された中空の略矩形柱状に形成されている。クロスメンバ22は、ラジエータサポート20の後側に離間して配置されており、クロスメンバ22の左右方向両端部が、フロントサイドフレーム10の車幅方向内側の壁部に固定されている。クロスメンバ22の後側には、電気デバイスとしてのインバータ装置30が設けられており、インバータ装置30は、フロントサイドフレーム10に連結されたフレーム部材(図示省略)によって支持されている。なお、詳細については後述するが、車両Vの正面衝突時には、車両Vの前部におけるクロスメンバ22の前側領域が押し潰されて、衝突体のインバータ装置30への侵入を抑制するように、クロスメンバ22及びインバータ装置30の前後方向の位置が設定されている。
【0016】
左右一対のラジエータサポートRF40は、車両Vの車幅方向中央に対して左右対称に構成されている。このため、以下、右側のラジエータサポートRF40について説明し、左側のラジエータサポートRF40についての説明は適宜省略する。
【0017】
ラジエータサポートRF40は、ラジエータサポート20とクロスメンバ22との間に配置されて、ラジエータサポートサイド20S及びクロスメンバ22を連結している。ラジエータサポートRF40は、左右方向を板厚方向とする略台形プレート状に形成されると共に、平面視で後側へ向かうに従い車幅方向中央側へ傾斜している。ラジエータサポートRF40の前端部における上下長さは、ラジエータサポートサイド20Sの上下長さよりも若干短く設定されている。ラジエータサポートRF40の前端部には、車幅方向外側へ屈曲された前側固定フランジ40Aが形成されており、前側固定フランジ40Aが、ラジエータサポートサイド20Sの後側に隣接して配置され、ラジエータサポートサイド20Sに溶接等によって固定されている。前側固定フランジ40Aの上端部は、ラジエータサポートサイド20Sの上端部の後側に位置しており、前側固定フランジ40Aの下端部は、ラジエータサポートサイド20Sの下端部よりも上側で且つフロントサイドフレーム10よりも下側に突出した位置に配置されている。なお、前側固定フランジ40Aの上下長さを、ラジエータサポートサイド20Sの上下長さと略一致させて、前側固定フランジ40Aの下端部をラジエータサポートサイド20Sの下端部の後側に配置してもよい。
【0018】
ラジエータサポートRF40の後端部には、車幅方向外側へ屈曲された連結部としての後側固定フランジ40Bが形成されている。後側固定フランジ40Bの上下方向の長さは、後述する上下一対の支持ガイド部50の離間距離に対応して設定されると共に、前側固定フランジ40Aの上下長さよりも短く設定されている。すなわち、後側固定フランジ40Bが、前側固定フランジ40Aの上端部よりも下側に位置している。後側固定フランジ40Bには、複数(本実施の形態では、3箇所)の固定孔40C(
図3参照)が貫通形成されており、固定孔40Cが上下方向に所定の間隔を空けて並んでいる。そして、固定孔40Cに前側から挿入された固定ボルトBLが、クロスメンバ22の前壁の後面に設けられた固定ナットNに螺合されて、後側固定フランジ40Bがクロスメンバ22に固定されている。後側固定フランジ40Bのクロスメンバ22への固定状態では、後側固定フランジ40Bがクロスメンバ22の上端部及び下端部を除く部分において、上下方向に延在されている。
【0019】
また、後側固定フランジ40Bにおける固定孔40Cよりも車幅方向外側部分は、破断部40Dとして構成されている。そして、所定値以上の車両後側への衝突荷重がラジエータサポートRF40の前端部に入力されたときには、破断部40Dが破断されるように、破断部40Dの機械的強度が設定されている。具体的には、車両Vの正面衝突時に破断部40Dが固定ボルトBLによって破断されて、後側固定フランジ40Bのクロスメンバ22への固定状態が解除される設定になっている。
【0020】
上下一対の支持ガイド部50は、クロスメンバ22に一体に設けられている。支持ガイド部50は、車幅方向に沿って延在されたリブ状に形成されて、クロスメンバ22の前壁の上端部及び下端部から前側へ突出している。上下一対の支持ガイド部50は、ラジエータサポートRF40の後側固定フランジ40Bの上下方向両側に隣接して配置されており、後側固定フランジ40Bを上下方向両側から支持している。また、支持ガイド部50の延在長さは、クロスメンバ22の延在長さと略一致している。すなわち、支持ガイド部50は、クロスメンバ22の長手方向の全体に亘って延在している。
【0021】
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0022】
車両Vの正面衝突では、衝突体が車両Vの前端部を車幅方向の略全体に亘って衝突する。このため、車両後側への衝突荷重(
図2の矢印F1参照)がバンパビーム14の長手方向の略全体に亘って入力され、当該衝突荷重によってクラッシュボックス12が圧縮変形する。これにより、クラッシュボックス12によって衝突荷重を吸収する。衝突体が後側へさらに侵入すると、フロントサイドフレーム10の前端部及びラジエータサポート20に衝突荷重が入力される。ラジエータサポート20は、ラジエータサポートRF40によって後側から支持されているため、後側への衝突荷重がラジエータサポートRF40の前端部に入力される。これにより、当該衝突荷重がラジエータサポートRF40に沿って後側へ伝達されて、ラジエータサポートRF40の後端部である後側固定フランジ40Bに入力される。
【0023】
ラジエータサポートRF40は、平面視で後側へ向かうに従い車幅方向中央側へ傾斜している。このため、ラジエータサポートRF40に沿った衝突荷重が後側固定フランジ40Bに入力されると、衝突荷重における車幅方向の成分によって、後側固定フランジ40Bがクロスメンバ22に対して車幅方向中央側へずれるようになる。ここで、車両Vの正面衝突では、固定ボルトBLによって破断部40Dが破断されるように、破断部40Dの機械的強度が設定されている。これにより、後側固定フランジ40Bのクロスメンバ22への固定状態が解除される。
【0024】
また、後側固定フランジ40Bは、上下一対の支持ガイド部50によって上下方向両側から支持されている。このため、後側固定フランジ40Bのクロスメンバ22への固定状態が解除されると、後側固定フランジ40Bが上下一対の支持ガイド部50によってガイドされながらクロスメンバ22に沿って車幅方向中央側へ移動する。すなわち、ラジエータサポートRF40が突っ張ることなく、折り畳むように変形する。よって、ラジエータサポート20が全体的に後側へ変位すると共に、衝突荷重がフロントサイドフレーム10に良好に入力されて、フロントサイドフレーム10が前後方向に圧縮変形する。以上により、正面衝突時には、クラッシュボックス12及びフロントサイドフレーム10が前後方向に圧縮変形して、車両Vに入力された衝突エネルギを吸収することができる。また、正面衝突時には、クロスメンバ22よりも前側の領域で、クラッシュボックス12及びフロントサイドフレーム10が変形して、衝突体のインバータ装置30への侵入が抑制されるようになっている。これにより、前面衝突時における衝突エネルギ吸収性能を維持しつつ、インバータ装置30に対する保護性を確保することができる。
【0025】
車両Vのオフセット衝突では、衝突体が車両Vの前端部の車幅方向外側部分に衝突する。このため、後側への衝突荷重がバンパビーム14の車幅方向外側部分に入力されて、クラッシュボックス12が前後方向に圧縮変形する。また、オフセット衝突では、例えば、衝突時における車両Vのピッチング等の挙動によって、衝突体がフロントサイドフレーム10の上側を後側へ侵入するように衝突することが散見されている。より詳しくは、衝突体がラジエータサポート20の車幅方向外側端部であるラジエータサポートサイド20Sを後側へ押し倒すように侵入する。これにより、ラジエータサポートサイド20Sが後傾するように変形する。
【0026】
ラジエータサポートサイド20Sが後傾するように変形すると、ラジエータサポートサイド20Sを後側から支持するラジエータサポートRF40も後傾するようになる。すなわち、主として、後斜め下方側への衝突荷重(
図2の矢印F2を参照)がラジエータサポートRF40の前端部に作用する。一方、ラジエータサポートRF40の後端部である後側固定フランジ40Bは、クロスメンバ22の支持ガイド部50によって上下方向両側から支持されている。すなわち、支持ガイド部50によって、後側固定フランジ40Bが少なくとも下側から支持されている。このため、支持ガイド部50及びクロスメンバ22からラジエータサポートRF40に前斜め上方の反力(
図2の矢印Rを参照)が作用する。これにより、衝突体がラジエータサポート20の車幅方向外側部分の上部を後側へ押し倒すように侵入する場合でも、支持ガイド部50が衝突体に反力を付与するための反力付与部として機能して、衝突体に有効な反力を作用させることができる。その結果、オフセット衝突時における衝突体の車両Vの前部の侵入を抑制することができると共に、ひいてはインバータ装置30の損傷を抑制できる。したがって、オフセット衝突時におけるインバータ装置30への保護性能をより向上することができる。
【0027】
車両Vのアンダーライド衝突では、車両Vが衝突体の下側に潜り込むように衝突する。このため、衝突体が、主として車両Vの前部におけるバンパビーム14よりも上側部分を後側へ侵入する。具体的には、衝突体がラジエータサポート20の上部に衝突し、ラジエータサポート20の上部が後側へ押込まれる。一方、ラジエータサポート20では、ラジエータサポートサイド20Sの下端側部分がフロントサイドフレーム10に連結されている。このため、ラジエータサポート20が後傾するように変形する。したがって、上述のオフセット衝突と同様に、ラジエータサポートサイド20Sを後側から支持するラジエータサポートRF40も後傾するようになる。すなわち、後斜め下方側への衝突荷重がラジエータサポートRF40の前端部に作用する。
【0028】
また、上述のように、ラジエータサポートRF40の後端部である後側固定フランジ40Bは、クロスメンバ22の支持ガイド部50によって上下方向両側から支持されている。このため、支持ガイド部50及びクロスメンバ22からラジエータサポートRF40に前斜め上方の反力が作用する。これにより、衝突体がラジエータサポート20の上部を後側へ押し倒すように侵入する場合でも、支持ガイド部50が衝突体に反力を付与するための反力付与部として機能して、衝突体に有効な反力を作用させることができる。その結果、アンダーライド衝突における衝突体の車両Vの前部の侵入を抑制することができると共に、ひいてはインバータ装置30の損傷を抑制できる。したがって、アンダーライド衝突時においてもインバータ装置30への保護性能をより向上することができる。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態の車両前部構造Sでは、クロスメンバ22が、インバータ装置30の前側で且つラジエータサポート20の後側において、左右一対のフロントサイドフレーム10に架け渡されている。また、ラジエータサポートRF40が、ラジエータサポート20のラジエータサポートサイド20Sとクロスメンバ22とを連結しており、ラジエータサポートRF40の後側固定フランジ40Bがクロスメンバ22に設けられた上下一対の支持ガイド部50によって上下方向両側から支持されている。これにより、上述したように、車両Vのオフセット衝突時やアンダーライド衝突時に後傾するラジエータサポート20に対して、支持ガイド部50及びクロスメンバ22からラジエータサポートRF40を介して前斜め上方側への反力を作用させることができる。その結果、これら衝突時において衝突体に有効な反力を作用させることができると共に、衝突体の車両Vの前部における後側への侵入を抑制することができる。したがって、車両Vの前部に搭載されるインバータ装置30の保護性能をより向上することができる。
【0030】
また、車両Vの正面衝突時には、上述のように、後側への衝突荷重がラジエータサポートRF40の前端部に入力されて、ラジエータサポートRF40の後側固定フランジ40Bとクロスメンバ22との固定状態が解除される。このため、車両Vの正面衝突時には、ラジエータサポートRF40を機能させることなく、正面衝突時における衝突荷重をフロントサイドフレーム10に良好に伝達することができる。すなわち、正面衝突時における車両Vの前部におけるクラッシュストロークを確保しつつ、衝突エネルギを良好に吸収することができる。したがって、ラジエータサポート20を後側から支持するラジエータサポートRF40を設けても、正面衝突時における衝突性能を維持しつつ、インバータ装置30に対する保護性能を向上することができる。
【0031】
また、左右一対のラジエータサポートRF40が、平面視で後側へ向かうに従い車幅方向中央側へ傾斜している。このため、正面衝突時に、ラジエータサポートRF40が突っ張ることを抑制できると共に、ラジエータサポートRF40の後端部に車幅方向中央側への衝突荷重を作用させることができる。すなわち、後側固定フランジ40Bに車幅方向中央側へ向かう荷重を作用させて、固定ボルトBLによって破断部40Dを破断させることができる。したがって、正面衝突時における衝突性能を有効に維持することができる。
【0032】
また、クロスメンバ22には、上下一対の支持ガイド部50が設けられており、一対の支持ガイド部50が、車幅方向に延在されると共に、ラジエータサポートRF40の後側固定フランジ40Bを上下方向両側から支持している。これにより、正面衝突時における後側固定フランジ40Bのクロスメンバ22への固定解除後において、後側固定フランジ40Bを一対の支持ガイド部50によってガイドしつつクロスメンバ22に沿って車幅方向中央側へ移動させることができる。すなわち、オフセット衝突時やアンダーライド衝突時に衝突体に反力を付与する支持ガイド部50をガイド部として活用して、ラジエータサポートRF40を折り畳むように変形させることができる。また、支持ガイド部50をクロスメンバ22に一体に形成することで、支持ガイド部50とクロスメンバ22とを別体に構成する場合と比べて、部品点数の削減及びコストダウンに寄与することができる。
【0033】
また、ラジエータサポートRF40の後側固定フランジ40Bは、車幅方向外側へ屈曲されて、クロスメンバ22に固定ボルトBLによって固定されている。これにより、正面衝突時に、固定ボルトBLによって破断部40Dを良好に破断させることができる。したがって、正面衝突時に簡易な構成でラジエータサポートRF40のクロスメンバ22への固定状態を解除することができる。
【0034】
なお、正面衝突時に、後側固定フランジ40Bを支持ガイド部50に沿って車幅方向中央側へ移動させるという観点からすると、上下一対の支持ガイド部50をクロスメンバ22に設けることが望ましいが、クロスメンバ22において、上側の支持ガイド部50を省略してもよい。この場合でも、オフセット衝突時及びアンダーライド衝突時において、下側の支持ガイド部50から衝突体に対する反力を付与することができると共に、正面衝突時に、下側の支持ガイド部50によって後側固定フランジ40Bの車幅方向中央側への移動をガイドすることができる。
【0035】
また、本実施の形態では、支持ガイド部50がクロスメンバ22に一体に設けられているが、支持ガイド部50をクロスメンバ22と別体に構成して、支持ガイド部50をクロスメンバ22に固定するように構成してもよい。例えば、
図4に示されるように、クロスメンバ22の前側に左右方向に延在されたガイド部材52を設けて、ガイド部材52に支持ガイド部50を形成してもよい。詳しくは、ガイド部材52が、左右方向から見て、前側へ開放された略U字形プレート状に形成され、ガイド部材52の上端部及び下端部を支持ガイド部50として構成して、溶接等によってガイド部材52をクロスメンバ22に固定する。
【0036】
また、本実施の形態では、クロスメンバ22が、矩形閉断面構造をなしているが、クロスメンバ22の断面形状は、任意に変更可能である。例えば、
図5に示されるように、クロスメンバ22の断面形状をI字形状に形成して、クロスメンバ22の上端部及び下端部から前側へ突出する部分を、支持ガイド部50としてもよい。
【0037】
また、本実施の形態では、ラジエータサポートRF40が略台形プレート状に形成されているが、ラジエータサポートRF40の形状はこれに限らない。例えば、ラジエータサポートRF40を、複数のフレーム部材によって構成された台形枠状に形成してもよい。この場合には、当該フレーム部材を閉断面構造として構成してもよい。また、本実施の形態のプレート状のラジエータサポートRF40において、補強用のビードやフランジを適宜追加して、ラジエータサポートRF40の剛性を各種の衝突形態に対応する剛性に設定してもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、正面衝突時に、ラジエータサポートRF40における後側固定フランジ40Bの破断部40Dが破断されて、ラジエータサポートRF40とクロスメンバ22との固定状態が解除される構成になっているが、ラジエータサポートRF40とクロスメンバ22との固定状態を解除する方法はこれに限らない。例えば、ピン結合によって後側固定フランジ40Bをクロスメンバ22に固定して、正面衝突時に当該ピンが破断されて、ラジエータサポートRF40とクロスメンバ22との固定状態を解除してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 フロントサイドフレーム
20 ラジエータサポート
22 クロスメンバ
30 インバータ装置(電気デバイス)
40 ラジエータサポートリインフォースメント
40B 後側固定フランジ(連結部)
50 支持ガイド部(支持部)
S 車両前部構造
V 車両