(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107906
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】護岸の補強構造および補強方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/12 20060101AFI20240802BHJP
E02B 3/06 20060101ALI20240802BHJP
E02D 27/34 20060101ALI20240802BHJP
E02D 5/80 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
E02B3/12
E02B3/06
E02D27/34 A
E02D27/34 Z
E02D5/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012089
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 和雄
(72)【発明者】
【氏名】小池 雅也
(72)【発明者】
【氏名】内田 加苗
(72)【発明者】
【氏名】本島 禎二
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 賢治
(72)【発明者】
【氏名】尾村 倫基
(72)【発明者】
【氏名】佐川 浩紀
【テーマコード(参考)】
2D041
2D046
2D118
【Fターム(参考)】
2D041GA01
2D041GB01
2D041GC01
2D041GD01
2D041GD02
2D046DA11
2D118AA02
2D118BA05
2D118CA03
2D118FA06
2D118GA07
2D118GA09
(57)【要約】
【課題】周辺施設による影響を受けにくい護岸の補強構造および補強方法を提供する。
【解決手段】既設の壁体12を有する護岸14を補強した構造10であって、前記壁体12の内陸側に設けられる控え杭16と、前記控え杭16と前記壁体12とを連結するタイ材18と、前記控え杭16の上部から斜め下方向に向けて前記控え杭16および前記壁体12から次第に離れるように打設されたグラウンドアンカー20とを備えるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の壁体を有する護岸を補強した構造であって、
前記壁体の内陸側に設けられる控え杭と、前記控え杭と前記壁体とを連結するタイ材と、前記控え杭の上部から斜め下方向に向けて前記控え杭および前記壁体から次第に離れるように打設されたグラウンドアンカーとを備えることを特徴とする護岸の補強構造。
【請求項2】
前記控え杭は、内陸側に設けられた既設の施設と前記壁体との間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の護岸の補強構造。
【請求項3】
既設の壁体を有する護岸を補強する方法であって、
前記壁体の内陸側に控え杭を設けるステップと、前記控え杭と前記壁体とをタイ材で連結するステップと、前記控え杭の上部から斜め下方向に向けて前記控え杭および前記壁体から次第に離れるようにグラウンドアンカーを打設するステップとを有することを特徴とする護岸の補強方法。
【請求項4】
前記控え杭を、内陸側に設けられた既設の施設と前記壁体との間に設けることを特徴とする請求項3に記載の護岸の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、
図1に示す護岸の補強構造および補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、土木構造物の多くが老朽化している中で、港湾施設も全国で更新工事が行われている。特に岸壁の更新工事は、新設当時の条件に比べ、陸上に既設構造物や立坑・海底トンネルなどの近接構造物の制約や接岸船舶の大型化などにより、岸壁前面に浚渫が必要となることによる岸壁の構造的な補強なども求められることがある。
【0003】
図2は、標準的な鋼矢板または鋼管矢板からなる岸壁の一例である。岸壁前面に浚渫が必要となることによる岸壁の補強方法として、控え式構造で補強する場合と、グラウンドアンカー構造で補強する場合とがある。控え式構造は、
図3(1)に示すように、岸壁1の頭部からタイ材2等を利用して控え杭3により水平方向に反力を確保する構造であり、従来から多く採用されている(例えば、特許文献1を参照)。グラウンドアンカー構造は、
図3(2)に示すように、岸壁1の上部から斜め下方向に打込んだグラウンドアンカー4の先端と支持地盤Gとの一体化を図り反力を確保する構造であり、従来から多く採用されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-236657号公報
【特許文献2】特開2016-17273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の控え式構造を岸壁更新工事に採用した場合、
図3(1)に示すように、陸上の施設5(ピットや地下室など)が存在しているケースでは、タイ材2が施設5に干渉し実現が困難となるおそれがある。また、グラウンドアンカー構造は、
図3(2)に示すように、岸壁1にグラウンドアンカー4による下向きの分力Fが作用するため、直下にトンネルなどの施設6が存在しているケースでは、施設6への影響や矢板の支持力不足などが障害となり実現が困難となるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、周辺施設による影響を受けにくい護岸の補強構造および補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る護岸の補強構造は、既設の壁体を有する護岸を補強した構造であって、前記壁体の内陸側に設けられる控え杭と、前記控え杭と前記壁体とを連結するタイ材と、前記控え杭の上部から斜め下方向に向けて前記控え杭および前記壁体から次第に離れるように打設されたグラウンドアンカーとを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の護岸の補強構造は、上述した発明において、前記控え杭は、内陸側に設けられた既設の施設と前記壁体との間に設けられることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る護岸の補強方法は、既設の壁体を有する護岸を補強する方法であって、前記壁体の内陸側に控え杭を設けるステップと、前記控え杭と前記壁体とをタイ材で連結するステップと、前記控え杭の上部から斜め下方向に向けて前記控え杭および前記壁体から次第に離れるようにグラウンドアンカーを打設するステップとを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の護岸の補強方法は、上述した発明において、前記控え杭を、内陸側に設けられた既設の施設と前記壁体との間に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る護岸の補強構造によれば、既設の壁体を有する護岸を補強した構造であって、前記壁体の内陸側に設けられる控え杭16と、前記控え杭16と前記壁体とを連結するタイ材18と、前記控え杭16の上部から斜め下方向に向けて前記控え杭16および前記壁体から次第に離れるように打設されたグラウンドアンカー20とを備えるので、控え式構造とグラウンドアンカー構造を併用することにより、周辺施設による影響を受けにくい護岸の補強構造を提供することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る他の護岸の補強構造によれば、前記控え杭は、内陸側に設けられた既設の施設と前記壁体との間に設けられるので、内陸側に設けられた既設の施設による影響を受けにくい護岸の補強構造を提供することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る護岸の補強方法によれば、既設の壁体を有する護岸を補強する方法であって、前記壁体の内陸側に控え杭を設けるステップと、前記控え杭と前記壁体とをタイ材で連結するステップと、前記控え杭の上部から斜め下方向に向けて前記控え杭および前記壁体から次第に離れるようにグラウンドアンカーを打設するステップとを有するので、控え式構造とグラウンドアンカー構造を併用することにより、周辺施設による影響を受けにくい護岸の補強方法を提供することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の護岸の補強方法によれば、前記控え杭を、内陸側に設けられた既設の施設と前記壁体との間に設けるので、内陸側に設けられた既設の施設による影響を受けにくい護岸の補強方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係る護岸の補強構造および補強方法の実施の形態を示す側断面図である。
【
図2】
図2は、従来の自立式岸壁の一例を示す側断面図である。
【
図3】
図3は、従来の補強構造の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る護岸の補強構造および補強方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る護岸の補強構造10は、港湾や河川等の水域沿岸に設置された既設の壁体12を有する護岸14(または岸壁)を、控え式構造とグラウンドアンカー構造を併用して補強したものである。この補強構造10は、壁体12の内陸側に設けられる控え杭16と、タイ材18と、グラウンドアンカー20とを備える。
【0018】
壁体12は、水域沿岸において鉛直方向に立設した既設の壁体であり、例えば、自立式の鋼管矢板などで構成される。壁体12の根入れ長さは、水底面BLよりも深い位置に達している。壁体12の下端の直下の地盤Gには、既設の施設24が設けられている。本実施の形態では、施設24として既設のトンネル等の空洞構造物を想定している。トンネルの向きは、護岸に平行方向でも直交方向でもよい。
【0019】
控え杭16は、壁体12に作用する土圧の一部を負担するために、壁体12から内陸側に離れた地盤Gに設けられる。より具体的には、控え杭16は、内陸側の地表面GL近くに設けられた既設の施設22と壁体12との間の所定の位置(例えば、中間の位置)において、地盤G内に略鉛直方向に建て込み埋設される。本実施の形態では、施設22として既設のピットや地下室を想定している。控え杭16は、護岸14の延在方向(
図1の奥行方向)に沿って所定の間隔で複数設ける。控え杭16は、例えば、地表面GLより圧入可能な鋼管杭などで構成することができる。控え杭16は、周知の方法により施工することができる。
【0020】
タイ材18は、控え杭16と壁体12とを連結するタイロッドまたはタイワイヤーであり、例えば、水面WL近傍の壁体12の上部に取り付けた固定部18Aと、控え杭16の上部に取り付けた固定部18Bとを略水平に連結するように設ける。タイ材18は、例えば、高張力鋼などの棒状の張力材で構成することができる。タイ材18は、控え杭16に対応して複数設ける。タイ材18は、周知の方法により施工することができる。
【0021】
グラウンドアンカー20は、控え杭16の上部から斜め下方向に向けて控え杭16および壁体12から次第に離れるように地盤G内に打設される。より具体的には、グラウンドアンカー20は、既設の施設22の下側であって、控え杭16の内陸側の地盤Gにおいて斜め下方向に打設される。グラウンドアンカー20の頭部は、控え杭16の上部の台座20Aに固定される。台座20Aは、控え杭16に溶接された図示しない上下段のブラケットに取付けた腹起し20Bに固定される。グラウンドアンカー20には、張力が付与されている。グラウンドアンカー20の張力は台座20Aを介して上下段の腹起こし20Bに分配され、控え杭16が水域側に変形するのを防止している。したがって、控え杭16にはグラウンドアンカー20による下向きの分力Fが作用する。グラウンドアンカー20は、例えば、高強度の線状の張力材と、これを地盤Gに定着するためのグラウトなどで構成することができる。鉛直線に対するグラウンドアンカー20の傾斜角度は、施設22、24の位置や、要求される設計条件などに応じて適宜設定可能である。護岸14の延在方向(
図1の奥行方向)の位置ごとに、異なる傾斜角度のグラウンドアンカー20を設置してもよい。グラウンドアンカー20は、周知の方法により施工することができる。
【0022】
本実施の形態によれば、控え式構造とグラウンドアンカー構造を併用することにより、ピットや地下室、トンネルなどの周辺施設22、24による影響を受けにくい護岸の補強構造10を提供することができる。また、補強構造10の施工時に、海上からグラウンドアンカー20を打設する必要が無く、作業船を必要としない。また、グラウンドアンカー20は地上から施工できるため、その施工に大型ボーリングマシンを使用可能である。大型ボーリングマシンを使用することにより、施工効率化を図れる。さらに、グラウンドアンカー20として太径アンカーを採用できるため、設計の自由度が高い。
【0023】
以上説明したように、本発明に係る護岸の補強構造によれば、既設の壁体を有する護岸を補強した構造であって、前記壁体の内陸側に設けられる控え杭と、前記控え杭と前記壁体とを連結するタイ材と、前記控え杭の上部から斜め下方向に向けて前記控え杭および前記壁体から次第に離れるように打設されたグラウンドアンカーとを備えるので、控え式構造とグラウンドアンカー構造を併用することにより、周辺施設による影響を受けにくい護岸の補強構造を提供することができる。
【0024】
また、本発明に係る他の護岸の補強構造によれば、前記控え杭は、内陸側に設けられた既設の施設と前記壁体との間に設けられるので、内陸側に設けられた既設の施設による影響を受けにくい護岸の補強構造を提供することができる。
【0025】
また、本発明に係る護岸の補強方法によれば、既設の壁体を有する護岸を補強する方法であって、前記壁体の内陸側に控え杭を設けるステップと、前記控え杭と前記壁体とをタイ材で連結するステップと、前記控え杭の上部から斜め下方向に向けて前記控え杭および前記壁体から次第に離れるようにグラウンドアンカーを打設するステップとを有するので、控え式構造とグラウンドアンカー構造を併用することにより、周辺施設による影響を受けにくい護岸の補強方法を提供することができる。
【0026】
また、本発明に係る他の護岸の補強方法によれば、前記控え杭を、内陸側に設けられた既設の施設と前記壁体との間に設けるので、内陸側に設けられた既設の施設による影響を受けにくい護岸の補強方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明に係る護岸の補強構造および補強方法は、浚渫に伴う既設護岸や岸壁の補強に有用であり、特に、周辺施設による影響を受けにくくして既設護岸や岸壁を補強するのに適している。
【符号の説明】
【0028】
10 護岸の補強構造
12 壁体
14 護岸
16 控え杭
18 タイ材(タイロッドまたはタイワイヤー)
20 グラウンドアンカー
22,24 施設
F 分力
G 地盤
BL 水底面
GL 地表面
WL 水面