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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107907
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ハブユニット軸受
(51)【国際特許分類】
   B60B 35/14 20060101AFI20240802BHJP
   F16C 19/14 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B60B35/14 V
F16C19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012092
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊秋
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA52
3J701AA62
3J701AA72
3J701BA53
3J701BA57
3J701DA09
3J701DA20
3J701FA15
3J701FA51
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】軽量化を図りつつ、ハブフランジに丸フランジに近い周方向や軸方向の剛性を与えることができるハブユニット軸受を提供する。
【解決手段】ハブユニット軸受10の内輪部材30は、複数の外向きフランジ部33が周方向に間隔を空けて設けられたハブ軸31と、周方向に隣り合う外向きフランジ部33の周方向側面33b間にそれぞれ配置され、複数の外向きフランジ部33と協働して円盤状のハブフランジ38を構成する、ハブ軸31より軽量の材料からなる複数の補強部材40と、を有する。外向きフランジ部33の周方向側面33bと補強部材40の周方向側面40aとは、一方の周方向側面に形成された凸部と他方の周方向側面に形成された凹部とが係合することによって、互いに接続される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複列の外輪軌道を有する外輪部材と、
外周面に複列の内輪軌道を有し、軸方向一方側にホイール及びブレーキロータが取り付けられるハブフランジを有する内輪部材と、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に転動自在に配置された複数の転動体と、
を備えるハブユニット軸受であって、
前記内輪部材は、径方向に延在する複数の外向きフランジ部が周方向に間隔を空けて設けられたハブ軸と、周方向に隣り合う前記外向きフランジ部の周方向側面間にそれぞれ配置され、前記複数の外向きフランジ部と協働して円盤状の前記ハブフランジを構成する、前記ハブ軸より軽量の材料からなる複数の補強部材と、を有し、
前記外向きフランジ部の周方向側面と前記補強部材の周方向側面とは、一方の前記周方向側面に形成された凸部と他方の周方向側面に形成された凹部とが係合することによって、互いに接続される、
ハブユニット軸受。
【請求項2】
前記凸部の先端部の少なくとも一部と前記他方の周方向側面とは、周方向から見てオーバーラップしている、請求項1に記載のハブユニット軸受。
【請求項3】
前記凹部は、断面逆ハの字状のあり溝或いはT字溝であり、
前記凸部は、前記あり溝或いは前記T字溝に係合する断面ハの字状またはT字状の突条部である、請求項1に記載のハブユニット軸受。
【請求項4】
前記凸部は、前記内輪部材の成形時に前記外向きフランジ部の周方向側面に形成され、軸方向に傾斜するように曲げ加工されたフラッシュである、
請求項1に記載のハブユニット軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブユニット軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
ハブユニット軸受はバネ下荷重であるため、ハブユニット軸受の軽量化は、省エネ及び省資源に寄与するだけでなく、乗り心地の向上にも大きく影響する。ハブユニット軸受の軽量化のためには、径が大きく、結果的に質量が大きくなるハブフランジの軽量化の効果が大きく、これにより、車両の発進、停止時に要するエネルギーを抑えられるので、イナーシャ減少による省燃費効果も得られる。
【0003】
特許文献1には、冷間側方押し出しにより、ハブフランジを間欠的に設けて、即ち、複数の外向きフランジ部を周方向に間隔を空けて設けて、ハブフランジの軽量化を図ったハブユニット軸受が開示されている。この様な構造にあっては、冷間鍛造による加工硬化の効果によりハブフランジを細くできる効果も加わり、ハブフランジの軽量化が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-201421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のハブユニット軸受によると、ハブフランジとブレーキロータの接触面積が減少するため、取り付け部の応力が上昇してしまうことが懸念される。また、間欠的(十字形や星形)に形成されたハブフランジは、連続的に形成された円盤状のフランジ、所謂丸フランジに比べて周方向や軸方向の剛性が低くなるため、操安性に影響を及ぼすと共に、ホイールやブレーキロータの取り付け部の応力を高める虞がある。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量化を図りつつ、ハブフランジに丸フランジに近い周方向や軸方向の剛性を与えて、操安性の向上や、ホイール及びブレーキロータの取り付け部の応力低減効果が得られるハブユニット軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
[1] 内周面に複列の外輪軌道を有する外輪部材と、
外周面に複列の内輪軌道を有し、軸方向一方側にホイール及びブレーキロータが取り付けられるハブフランジを有する内輪部材と、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に転動自在に配置された複数の転動体と、
を備えるハブユニット軸受であって、
前記内輪部材は、径方向に延在する複数の外向きフランジ部が周方向に間隔を空けて設けられたハブ軸と、周方向に隣り合う前記外向きフランジ部の周方向側面間にそれぞれ配置され、前記複数の外向きフランジ部と協働して円盤状の前記ハブフランジを構成する、前記ハブ軸より軽量の材料からなる複数の補強部材と、を有し、
前記外向きフランジ部の周方向側面と前記補強部材の周方向側面とは、一方の前記周方向側面に形成された凸部と他方の周方向側面に形成された凹部とが係合することによって、互いに接続される、
ハブユニット軸受。
【発明の効果】
【0008】
本発明のハブユニット軸受によれば、軽量化を図りつつ、ハブフランジに丸フランジに近い周方向や軸方向の剛性を与えて、操安性の向上や、ホイール及びブレーキロータの取り付け部の応力低減効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るハブユニット軸受の断面図である。
図2図2は、図1に示すハブ軸の斜視図である。
図3図3は、外向きフランジ部の周方向側面と補強部材の周方向側面との係合状態を示すハブフランジの要部側面図である。
図4】ハブ軸を冷間鍛造による製造方法の一例を工程順に示す図である。
図5】ハブ軸を製造するための冷間鍛造加工装置を説明するための断面図である。
図6図6は、外向きフランジ部の周方向側面と補強部材の周方向側面との他の係合状態を示すハブフランジの要部側面図である。
図7図7(a)は、外向きフランジ部の周方向側面と補強部材の周方向側面とのさらに他の係合状態を示すハブフランジの要部側面図であり、図7(b)は、外向きフランジ部の周方向側面と補強部材の周方向側面とのさらに他の係合状態を示すハブフランジの要部側面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係るハブ軸の斜視図である。
図9図9は、図8の外向きフランジ部の周方向側面と補強部材の周方向側面との係合状態を示すハブフランジの要部側面図である。
図10図10は、図8の外向きフランジ部の周方向側面と補強部材の周方向側面との他の係合状態を示すハブフランジの要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るハブユニット軸受について、図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
なお、本明細書において、「インボード側」とは、車体に取り付けた際のハブユニット軸受10の車体側を表し、図1中の右側である。「アウトボード側」とは、車体に取り付けた際のハブユニット軸受10の車輪側を表し、図1中の左側である。
【0011】
本実施形態のハブユニット軸受10は、駆動輪用であり、外輪部材20と、内輪部材30と、複数の転動体11と、一対の密封部材12と、保持器13と、を主に備える。
【0012】
外輪部材20は、略円筒状に形成された本体21の外周面に外径側に延出して設けられた取付フランジ22と、内周面に設けられた複列(2列)の外輪軌道23a、23bを有している。外輪部材20は、使用時に、取付フランジ22に設けられたねじ孔22aに取付ボルトを螺合し、該取付ボルトによって、懸架装置の不図示のナックルに結合固定されており、懸架装置に支持された状態で回転しない。
【0013】
内輪部材30は、ハブ軸31と内輪32と複数の補強部材40とにより構成されており、外輪部材20の内径側に外輪部材20と同軸(同芯)に配置されている。また、本実施形態の内輪部材30は、ハブ軸31の外周面と内輪32の外周面に、複列の内輪軌道36a,36bを有する。
【0014】
具体的に、ハブ軸31の外周面には、外輪部材20の外輪軌道23aと対向する部分に、内輪軌道36aが設けられており、外輪部材20の外輪軌道23bと対向する部分に、小径段部35が設けられている。
【0015】
内輪32は、アウトボード側の端面32aを小径段部35の段差面35aに突き当てた状態で、小径段部35の外周面に圧入により外嵌されてハブ軸31に固定されている。内輪32の外周面には、外輪部材20の外輪軌道23bと対向する部分に内輪軌道36bが設けられている。
【0016】
ハブ軸31の円筒状部分34の内周面には、回転軸Oを軸方向に貫通するスプライン孔37が形成されている。スプライン孔37には、図示しないが、等速ジョイントに結合したスプライン軸が係合され、スプライン軸のアウトボード側の端面を、内輪32のインボード側の端面32bに当接させ、スプライン軸の先端部に設けられた雄ねじ部にナットを螺合することでスプライン軸とハブ軸31が固定される。これにより、内輪32が、ハブ軸31に対して軸方向に位置決め固定される。
【0017】
また、ハブ軸31の円筒状部分34には、外輪部材20のアウトボード側の開口からアウトボード側に突出する軸方向一方側に、径方向に延在、即ち、円筒状部分34から外径側に延出する複数の外向きフランジ部33が周方向に間隔を空けて設けられている。なお、外向きフランジ部33の数は任意であり、例えば、4つの外向きフランジ部が90°間隔に設けられてもよく、5つの外向きフランジ部が72°間隔で設けられてもよい。
【0018】
そして、周方向に隣り合う外向きフランジ部33の周方向側面33b間、具体的には、隣り合う外向きフランジ部33の周方向側面33b及び円筒状部分34の外周面により3方が囲まれる略扇形空間には、複数の補強部材40がそれぞれ配置されている。複数の補強部材40は、複数の外向きフランジ部と協働して円盤状のハブフランジ38、所謂丸フランジを構成する。
【0019】
外向きフランジ部33の貫通孔33aには、締結部材であるハブボルト15がセレーション嵌合して、いずれも不図示のホイール及びブレーキロータが不図示のナット部材により共締めされて、ハブフランジ38に取り付けられる。
【0020】
転動体(玉)11は、外輪軌道23a、23bと内輪軌道36a、36bとの間に、それぞれ複数ずつ、互いに所定の接触角をなして背面組み合わせで配置され、保持器13により保持された状態で転動自在に設けられている。これにより、内輪部材30が外輪部材20に対して回転可能となる。
【0021】
一対の密封部材12は、外輪部材20のアウトボード側端部とハブ軸31の軸方向中間部との間、及び外輪部材20のインボード側端部と内輪32のインボード側端部との間に配置され、複数の転動体11が設けられた内部空間14の軸方向両側を塞いでいる。
【0022】
次に、図3も参照して本発明の主要部分であるハブフランジ38について詳細に説明する。
【0023】
ハブ軸31の外向きフランジ部33は、例えば、鋼材を成形金型の押し出し口から側方に押し出して成形する冷間側方押出しにより形成されており、その周方向幅W(図2参照)は、小径側と大径側で略同じ幅に形成されている。なお、冷間側方押し出しを含むハブ軸31の製造方法については、後述する。
【0024】
補強部材40は、外向きフランジ部33の厚さと同じ厚さを有する。即ち、補強部材40の軸方向両側面は、外向きフランジ部33の軸方向両側面と段差がなく面一となっている。また、補強部材40の外径は、外向きフランジ部33の外径と略同一径を有する。補強部材40は、例えば、アルミニウム合金などの軽合金や繊維強化樹脂(FRP)などの軽量素材をハブ軸31にダイキャスト成形やモールド成形することで形成される。
【0025】
軽合金及び繊維強化樹脂などの補強部材40は、鋼製の外向きフランジ部33と液相の温度に共通領域が無く、鋼製の外向きフランジ部33が固相のまま、補強部材40がダイキャスト成形またはモールド成形される。ここで、例えば、ショットブラスト、レーザー加工、メッキ処理などによる粗面化処理が外向きフランジ部33の周方向側面33bに行われていたとしても、補強部材40の成形収縮により、補強部材40が外向きフランジ部33から外れやすい。
【0026】
一方、本実施形態のハブフランジ38は、図3に示すように、外向きフランジ部33の周方向側面33bに、断面逆ハの字状の凹部であるあり溝41を形成し、該あり溝41に補強部材40をダイキャスト成形またはモールド成形して、補強部材40の周方向側面40aに、断面ハの字状の凸部である突条部42を形成している。
【0027】
これにより、外向きフランジ部33と補強部材40とは、突条部44とあり溝45とによって、互いに接続される。特に、軸方向幅が基部よりも大きい先端部42aを有する突条部42によって、突条部42の先端部42aと補強部材40の周方向側面40aとの間に形成される凹みに、あり溝41を構成する外向きフランジ部33の一部が入り込んでおり、その結果、突条部42の先端部42aの少なくとも一部と外向きフランジ部33の周方向側面33bとは、周方向から見てオーバーラップしている。したがって、あり溝41と突条部42とにより外向きフランジ部33と補強部材40とが強固に係合する。また、補強部材40は、補強部材40の成形収縮により周方向に引っ張られ、ハブ軸31の中心側へ向かう力が作用するので、補強部材40が外向きフランジ部33から外れることなく、ハブフランジ38に丸フランジに近い周方向や軸方向の剛性を与えることができる。
【0028】
外向きフランジ部33の周方向側面33bのあり溝41は、鋼材の冷間側方押し出しにより外向きフランジ部33を外径側(側方)に押し出し成形することで成形することができる。
【0029】
ここで、ハブ軸31は、図4に示すように、先ず、(A)に示した円柱状の素材60を用意する。この素材60には、予め軟化焼鈍処理を施して、常温でも塑性変形し易くしておく。この様な素材60に前方押し出し加工を施して、(B)に示す様な、段付の第一中間素材61を得る。そして、この第一中間素材61を、フローティングダイを使用した冷間鍛造加工(押し出し加工)により、(C)に示す様な第二中間素材62とする。次いでこの第二中間素材62に、軸方向外側のアンギュラ型の内輪軌道36aを設ける為の段差部等を形成する段付加工を施して、(D)に示す様な第三中間素材63とする。更に、この第三中間素材63に、側方押し出し加工を施して外向きフランジ部33を形成し、さらに上記内輪軌道36aを形成する加工を施して、(E)に示す様なハブ軸31としている。
【0030】
また、冷間側方押し出しを行う冷間鍛造加工装置50は、図5に示すように、固定金型である下金型51と、下金型51の内側で、下金型51と共に固定される円柱状のマンドレル57と、可動金型である上金型52と、上金型52に摺動自在に嵌合されるリングパンチ53及び押圧パンチ54と、下金型51に摺動自在に嵌合される押し出しパンチ55と、を備える。そして、これらの金型及びパンチによって、外向きフランジ部33を成形するためのフランジ成形用キャビティ56が径方向外方に向かって放射状に延設される。
【0031】
上記した冷間鍛造加工装置50による側方押し出し成形は、図4(D)の第三中間素材63を、冷間鍛造加工装置50の内に配置した後、下金型51及び上金型52を閉じた状態において、第三中間素材63の軸方向上端部をリングパンチ53及び押圧パンチ54で上方から押し潰すことにより、第三中間素材63をフランジ成形用キャビティ56に流動させる。即ち、第三中間素材63は、フランジ成形用キャビティ56に押し出される。この結果、外向きフランジ部33がハブ軸31に一体に成形される。また、外向きフランジ部33のあり溝41の形状は、フランジ成形用キャビティ56を形成する下金型51の上面と上金型52の下面によって形成される。なお、冷間側方押し出しについては、特開2013-23086号にも詳述されている。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のハブフランジ38によれば、外向きフランジ部33間に、外向きフランジ部33と面一で、外向きフランジ部33の周方向側面33bに係合する補強部材40が配置されることで、軽量化を図りながら、ハブフランジ38に丸フランジに近い周方向や軸方向の剛性を与えることができる。これにより、操安性の向上や、ホイール及びブレーキロータの取り付け部の応力低減の効果が得られる。
【0033】
(変形例)
図6は、外向きフランジ部33の周方向側面33bに形成される凹部及び補強部材40の周方向側面40aに形成される凸部の変形例である。外向きフランジ部33の周方向側面33bには、凹部であるT字溝43が形成され、該T字溝43に補強部材40をダイキャスト成形またはモールド成形して断面T字状の凸部である突条部44を形成している。これにより、突条部44の先端部44aの少なくとも一部と外向きフランジ部33の周方向側面33bとは、周方向から見てオーバーラップしているので、T字溝43と断面T字状の突条部44とが強固に係合する。
この場合も、補強部材40は、補強部材40の成形収縮により周方向に引っ張られ、ハブ軸31の中心側へ向かう力が作用するので、補強部材40が外向きフランジ部33から外れることなく、ハブフランジ38に丸フランジに近い周方向や軸方向の剛性を与えることができる。
【0034】
図7は、外向きフランジ部33の周方向側面33bに凸部が形成された他の変形例である。図7(a)は、外向きフランジ部33の周方向側面33bに断面ハの字状の凸部である突条部42が形成され、補強部材40の周方向側面40aが突条部42にダイキャスト成形またはモールド成形されて断面逆ハの字状の凹部であるあり溝41が形成されている。
【0035】
また、図7(b)は、外向きフランジ部33の周方向側面33bに断面T字状の凸部である突条部44が形成され、補強部材40の周方向側面40aに凹部であるT字溝43が形成されている。
【0036】
周方向側面33bに凸部(突条部42、44)が形成される図7(a)及び図7(b)に示す外向きフランジ部33の場合には、冷間鍛造(冷間側方押し出し)だけでなく、熱間鍛造でも成形できる。ただし、周方向側面33bに凹部(あり溝41、T字溝43)を有する図3及び図6に示す外向きフランジ部33の場合には、熱間鍛造では成形困難である。換言すれば、熱間鍛造では、金型をハブ軸の軸方向に移動させて、据え込まれたビレットを軸方向に押しつぶして外向きフランジ部を張り出させるため、外向きフランジ部33の周方向側面33bに凹部を加工することは成形困難である。
【0037】
なお、熱間鍛造によれば、外向きフランジ部33は周方向幅が一定の形状(図2参照)だけでなく、径方向外側に向かうに従って次第に細くなる先細り形状(図8参照)も採用することもできる。熱間鍛造は、成型がしやすく、製造コストも削減できる。
【0038】
上記したいずれの変形例でも、突条部42の先端部の少なくとも一部が、凹部が形成される外向きフランジ部33の周方向側面33b又は補強部材40の周方向側面40aと周方向から見てオーバーラップしているので、あり溝41と突条部42、T字溝43と突条部44が強固に係合し、ハブフランジ38に丸フランジに近い周方向や軸方向の剛性を与えることができる。
【0039】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るハブユニット軸受について、図8及び図9に基づいて説明する。
本実施形態のハブユニット軸受10は、ハブ軸31が熱間鍛造(半密閉鍛造)で形成されており、外向きフランジ部33の周方向側面33bにフラッシュ33cが発生する。そして、該フラッシュ33cを凸部として利用して補強部材40を固定したものである。
【0040】
即ち、ハブ軸31を熱間鍛造(半密閉鍛造)で形成する際、外向きフランジ部33の周方向側面33bのアウトボード側に発生したフラッシュ33cを、ある程度残してトリミングした後、残留フラッシュ33cを型押し(例えば、特開2012-215269号参照)やローラがけによって、軸方向に傾斜、具体的には、インボード側に倒す曲げ加工を施し、該フラッシュ33cに補強部材40をダイキャスト成形またはモールド成形して係合させている。したがって、補強部材40の周方向側面には、該フラッシュ33cと係合するように凹部が形成されている。
【0041】
本実施形態のハブ軸31は、熱間鍛造で形成されるので、外向きフランジ部33の軸方向視の形状は、径方向外側に向かうに従って次第に周方向幅が細くなる先細り形状に形成されているが、周方向幅が一定の棒状形状など、任意の形状に形成可能である。
【0042】
図10は、フラッシュ33cが外向きフランジ部33の周方向側面33bの軸方向中間部に形成された例である。この場合も、トリミング後の残留フラッシュ33cを、型押しやローラがけでインボード側に倒し、該フラッシュ33cに補強部材40をダイキャスト成形またはモールド成形して係合させている。
【0043】
本実施形態のハブユニット軸受10も、フラッシュ33cの先端部の少なくとも一部と補強部材40の周方向側面40aとは、周方向から見てオーバーラップしている。これにより、補強部材40の成形収縮により、補強部材40が周方向に引っ張られると共に、ハブ軸31の中心側へ向かう力が作用するので、ハブフランジ38に丸フランジに近い周方向や軸方向の剛性を与えることができ、操安性の向上や、ホイール及びブレーキロータの取り付け部の応力低減の効果が得られる。
その他の効果及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0044】
尚、本発明は、前述した実施形態及び変形例に限定されず、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、図示した実施形態では、あり溝やT字溝を1箇所に形成しているが、複数個所に設けてもよい。
また、ハブフランジのインボード側の側面は、外向きフランジ部と補強部材が面一としているが、補強部材を外向きフランジ部より薄肉とし、補強部材のインボード側の面が外向きフランジ部のインボード側の面より凹んだ、所謂スキャロップフランジとしてもよい。また、ハブフランジのアウトボード側の側面も、ブレーキロータの取り付け部との接触部が十分取れるのであれば、補強部材を外向きフランジ部より薄肉とし、補強部材の側面が外向きフランジ部の側面より凹んだ形状とすることもできる。
【0045】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 内周面に複列の外輪軌道を有する外輪部材と、
外周面に複列の内輪軌道を有し、軸方向一方側にホイール及びブレーキロータが取り付けられるハブフランジを有する内輪部材と、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に転動自在に配置された複数の転動体と、
を備えるハブユニット軸受であって、
前記内輪部材は、径方向に延在する複数の外向きフランジ部が周方向に間隔を空けて設けられたハブ軸と、周方向に隣り合う前記外向きフランジ部の周方向側面間にそれぞれ配置され、前記複数の外向きフランジ部と協働して円盤状の前記ハブフランジを構成する、前記ハブ軸より軽量の材料からなる複数の補強部材と、を有し、
前記外向きフランジ部の周方向側面と前記補強部材の周方向側面とは、一方の前記周方向側面に形成された凸部と他方の周方向側面に形成された凹部とが係合することによって、互いに接続され、
ハブユニット軸受。
この構成によれば、軽量化を図りつつ、ハブフランジに丸フランジに近い周方向や軸方向の剛性を与えることができ、操安性の向上や、ホイール及びブレーキロータの取り付け部の応力が低減する。
【0046】
(2) 前記凸部の先端部の少なくとも一部と前記他方の周方向側面とは、周方向から見てオーバーラップしている、(1)に記載のハブユニット軸受。
この構成によれば、外向きフランジ部と補強部材とを強固に係合することができる。
【0047】
(3) 前記凹部は、断面逆ハの字状のあり溝或いはT字溝であり、
前記凸部は、前記あり溝或いは前記T字溝に係合する断面ハの字状またはT字状の突条部である、(1)に記載のハブユニット軸受。
この構成によれば、外向きフランジ部と補強部材とを、あり溝とハの字状の突条部、或いはT字溝とT字状の突条部で強固に係合させることができ、軽量化を図りつつ、ハブフランジに丸フランジに近い周方向や軸方向の剛性を与えることができる。
【0048】
(4) 前記凸部は、前記内輪部材の成形時に前記外向きフランジ部の周方向側面に形成され、軸方向に傾斜するように曲げ加工されたフラッシュである、
(1)に記載のハブユニット軸受。
この構成によれば、内輪部材の成形時に外向きフランジ部の周方向側面に形成されるフラッシュを、補強部材と係合する凸部として利用することで、製造コストを低減できる。
【符号の説明】
【0049】
10 ハブユニット軸受
11 転動体
20 外輪部材
23a、23b 外輪軌道
30 内輪部材
31 ハブ軸
33 外向きフランジ部
33b 周方向側面
33c フラッシュ
34 円筒状部分
36a、36b 内輪軌道
38 ハブフランジ
40 補強部材
40a 周方向側面
41 あり溝(凹部)
42、44 突条部(凸部)
43 T字溝(凹部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10