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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107920
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】特定小電力無線機の設定支援方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/12 20090101AFI20240802BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20240802BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20240802BHJP
   H04W 24/04 20090101ALI20240802BHJP
【FI】
H04W40/12
H04W84/10 110
H04W84/18
H04W24/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012112
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】細川 翔太郎
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD11
5K067DD43
5K067EE25
5K067HH21
(57)【要約】
【課題】既存の無線機との電波干渉を避けつつ特定小電力無線機のチャンネル及び特定小電力無線機の位置を設定すること。
【解決手段】特定小電力無線機の設定支援方法は、区域を分割した複数のグリッド毎に電波のチャンネル及び電波の受信継続時間を計測した計測結果に基づいて、電波による占有確率であって受信継続時間が長いほど高くなるように設定された占有確率を複数のグリッド毎に設定した占有マップをチャンネル毎に作成することと、始点から終点までの経路に占有確率が閾値以上のグリッドが存在しないように、中継器のチャンネル及び中継器の位置を決定することと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の特定小電力無線機を区域に配置することによってマルチホップ方式のネットワークを構築する際に、前記複数の特定小電力無線機の設定を支援する特定小電力無線機の設定支援方法であって、
前記区域を分割した複数のグリッド毎に電波のチャンネル及び前記電波の受信継続時間を計測した計測結果に基づいて、前記電波による占有確率であって前記受信継続時間が長いほど高くなるように設定された占有確率を前記複数のグリッド毎に設定した占有マップを前記チャンネル毎に作成することと、
前記複数の特定小電力無線機のうちパケットの送信元となる子機の位置を始点とし、前記複数の特定小電力無線機のうちパケットの送信先となる親機の位置を終点とし、前記占有マップの前記グリッドのうち前記占有確率が閾値未満の前記グリッドを当該占有マップに対応する前記チャンネルでの通信が可能な前記グリッドとした場合、前記始点から前記終点までの経路に前記占有確率が前記閾値以上の前記グリッドが存在しないように、前記複数の特定小電力無線機のうち前記親機と前記子機との間に配置される中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することと、を含む特定小電力無線機の設定支援方法。
【請求項2】
前記経路が複数存在する場合に前記経路毎にコストを算出することを含み、
前記中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することは、前記コストが最小となる前記経路に従い前記中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することであり、
前記中継器の数が多いほど前記コストを高くする、請求項1に記載の特定小電力無線機の設定支援方法。
【請求項3】
前記経路が複数存在する場合に前記経路毎にコストを算出することを含み、
前記中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することは、前記コストが最小となる前記経路に従い前記中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することであり、
前記経路が通過する前記グリッドの前記占有確率の合算値が高いほど前記コストを高くする、請求項1又は請求項2に記載の特定小電力無線機の設定支援方法。
【請求項4】
前記経路が複数存在する場合に前記経路毎にコストを算出することを含み、
前記中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することは、前記コストが最小となる前記経路に従い前記中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することであり、
前記経路が長いほど前記コストを高くする、請求項1又は請求項2に記載の特定小電力無線機の設定支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特定小電力無線機の設定支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の自動収集システムは、複数の特定小電力無線機を備える。複数の特定小電力無線機は、マルチホップ方式のネットワークを構築している。マルチホップ方式は、各特定小電力無線機が隣接する特定小電力無線機に順次パケットを伝送していくことによって、子機から親機にパケットを伝送させる方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-56661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチホップ方式のネットワークを構築する際には、既存の無線機との電波干渉を避けつつ特定小電力無線機のチャンネル、及び特定小電力無線機の位置を設定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する特定小電力無線機の設定支援方法は、複数の特定小電力無線機を区域に配置することによってマルチホップ方式のネットワークを構築する際に、前記複数の特定小電力無線機の設定を支援する特定小電力無線機の設定支援方法であって、前記区域を分割した複数のグリッド毎に電波のチャンネル及び前記電波の受信継続時間を計測した計測結果に基づいて、前記電波による占有確率であって前記受信継続時間が長いほど高くなるように設定された占有確率を前記複数のグリッド毎に設定した占有マップを前記チャンネル毎に作成することと、前記複数の特定小電力無線機のうちパケットの送信元となる子機の位置を始点とし、前記複数の特定小電力無線機のうちパケットの送信先となる親機の位置を終点とし、前記占有マップの前記グリッドのうち前記占有確率が閾値未満の前記グリッドを当該占有マップに対応する前記チャンネルでの通信が可能な前記グリッドとした場合、前記始点から前記終点までの経路に前記占有確率が前記閾値以上の前記グリッドが存在しないように、前記複数の特定小電力無線機のうち前記親機と前記子機との間に配置される中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することと、を含む。
【0006】
特定小電力無線機には、単位時間あたりに電波を発することができる時間が定められている。このため、特定小電力無線機を配置する区域に既存の無線機が存在している場合であっても、時間を区切って同一のチャンネルを共用することができる。電波の受信継続時間が短いグリッドについては、当該電波のチャンネルを共用することによって特定小電力無線機が通信を行うことができる場合がある。電波の受信継続時間が高いほど占有確率を高くすることによって、グリッド毎に既存の無線機との電波干渉が生じ易いかを判断することができる。特定小電力無線機の設定支援方法は、始点から終点までの経路に占有確率が閾値以上のグリッドが存在しないように、中継器のチャンネル及び中継器の位置を決定する。これに従い中継器のチャンネル及び中継器の位置を設定することで、既存の無線機との電波干渉を避けつつ特定小電力無線機のチャンネル及び特定小電力無線機の位置を設定することができる。
【0007】
上記特定小電力無線機の設定支援方法について、前記経路が複数存在する場合に前記経路毎にコストを算出することを含み、前記中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することは、前記コストが最小となる前記経路に従い前記中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することであり、前記中継器の数が多いほど前記コストを高くしてもよい。
【0008】
上記特定小電力無線機の設定支援方法について、前記経路が複数存在する場合に前記経路毎にコストを算出することを含み、前記中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することは、前記コストが最小となる前記経路に従い前記中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することであり、前記経路が通過する前記グリッドの前記占有確率の合算値が高いほど前記コストを高くしてもよい。
【0009】
上記特定小電力無線機の設定支援方法について、前記経路が複数存在する場合に前記経路毎にコストを算出することを含み、前記中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することは、前記コストが最小となる前記経路に従い前記中継器の前記チャンネル及び前記中継器の位置を決定することであり、前記経路が長いほど前記コストを高くしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、既存の無線機との電波干渉を避けつつ特定小電力無線機のチャンネル及び特定小電力無線機の位置を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】特定小電力無線機が配置される区域の模式図である。
図2】特定小電力無線機の設定支援方法を示すフローチャートである。
図3】計測器の配置位置を示す模式図である。
図4】特定小電力無線機の設定支援装置を示す模式図である。
図5】(a)~(d)は占有マップを示す図である。
図6】三次元占有マップを示す図である。
図7】(a)~(d)は特定小電力無線機をノードで表した図である。
図8】(a)~(c)は経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特定小電力無線機の設定支援方法の一実施形態について説明する。
<特定小電力無線機>
図1に示すように、区域A1には複数の特定小電力無線機X1,X2,X3,X4,X5が配置されている。区域A1は、例えば、工場、空港、公共施設、又は商業施設である。区域A1は、道路Rと、建物B1,B2と、を含む。
【0013】
特定小電力無線機X1~X5は、特定小電力無線方式で通信を行う無線機である。特定小電力無線方式は、電波法における免許を必要としない通信方式である。特定小電力無線方式は、例えば、920MHz帯を使用して通信する通信方式であってよい。920MHz帯を使用して通信する特定小電力無線方式は、例えば、Wi-SUNの通信規格に基づく通信方式であってもよい。
【0014】
複数の特定小電力無線機X1~X5は、マルチホップ方式のネットワークを構築している。マルチホップ方式は、各特定小電力無線機X1~X5が隣接する特定小電力無線機X1~X5に順次パケットを伝送していくことによって、パケットの送信元となる特定小電力無線機X1からパケットの送信先となる特定小電力無線機X2にパケットを受信させる方式である。複数の特定小電力無線機X1~X5のうちパケットの送信元となる特定小電力無線機X1を子機X1とする。複数の特定小電力無線機X1~X5のうちパケットの送信先となる特定小電力無線機X2を親機X2とする。複数の特定小電力無線機X1~X5のうち親機X2と子機X1との間に配置される特定小電力無線機X3~X5を中継器X3~X5とする。
【0015】
<特定小電力無線機の設定支援方法>
複数の特定小電力無線機X1~X5を上記した区域A1に配置することによってマルチホップ方式のネットワークを構築する際に、複数の特定小電力無線機X1~X5の設定を支援する特定小電力無線機の設定支援方法について説明する。特定小電力無線機の設定支援方法は、中継器X3~X5のチャンネル及び中継器X3~X5の位置を決定する。
【0016】
図2に示すように、特定小電力無線機X1~X5の設定支援方法は、準備段階と、決定段階と、を含む。準備段階は、中継器X3~X5のチャンネル及び中継器X3~X5の位置を決定するのに必要となる情報を収集する段階である。決定段階は、準備段階で収集した情報に基づいて中継器X3~X5のチャンネル及び中継器X3~X5の位置を決定する段階である。
【0017】
<準備段階>
図2及び図3に示すように、ステップS1において、区域A1を分割した複数のグリッドG1に計測器M1が配置される。図3に示す例では、区域A1は36個のグリッドG1に分割されている。グリッドG1は、正方形である。グリッドG1の一辺の長さは、特定小電力無線機X1~X5の通信可能距離よりも短かければよく、任意に設定することができる。
【0018】
計測器M1は、グリッドG1のうち特定小電力無線方式の電波を受信可能なグリッドG1にのみ配置されてもよい。例えば、建物B1,B2の壁が存在する位置に対応するグリッドG1は、壁によって電波が遮られることによって特定小電力無線方式の電波を受信不可能なグリッドG1である。建物B1,B2に対応するグリッドG1であっても、建物B1,B2の窓際に計測器M1を配置できる場合、当該グリッドG1は特定小電力無線方式の電波を受信可能なグリッドG1である。屋外に対応するグリッドG1は、特定小電力無線方式の電波を受信可能なグリッドG1である。このように、グリッドG1毎に特定小電力無線方式の電波を受信可能か否かの判定を行った結果に基づき、グリッドG1のうち特定小電力無線方式の電波を受信可能なグリッドG1にのみ計測器M1が配置されるようにしてもよい。計測器M1は、全てのグリッドG1に配置されてもよい。計測器M1は、グリッドG1の中心に設けられてもよいし、グリッドG1の中心からずれた位置に設けられてもよい。計測器M1は、中継器X3~X5を配置可能な位置に設けられることが好ましい。計測器M1の配置は、特定小電力無線機X1~X5のユーザによって行われる。
【0019】
計測器M1は、特定小電力無線方式の電波を受信可能な装置である。即ち、計測器M1は、特定小電力無線機X1~X5を区域A1に配置した際に、特定小電力無線機X1~X5が送信する電波と干渉し得る電波を受信可能である。計測器M1は、特定小電力無線方式の電波を送信できなくてもよい。計測器M1は、既存の無線機による電波環境を計測するために設けられる。計測器M1は、電波のチャンネル及び電波の受信継続時間を計測する。詳細にいえば、計測器M1は、電波のチャンネル毎に、電波の受信継続時間、電波の受信回数、及び電波の受信強度を計測する。電波の受信継続時間は、単位時間当たりに電波を継続して受信した時間である。電波の受信回数は、単位時間当たりに電波を受信した回数である。受信強度は、受信した電波の強度である。受信強度は、複数回受信した電波の平均値であってもよい。
【0020】
次に、ステップS2において、計測器M1は、計測を行う。これにより、グリッドG1毎に電波のチャンネル及び電波の受信継続時間を計測した計測結果を得ることができる。本実施形態において、計測結果は、電波の受信回数、及び電波の受信強度を含む。
【0021】
<決定段階>
図4に示すように、決定段階では、準備段階で得られた計測結果に基づいて、特定小電力無線機の設定支援装置10が処理を実行する。設定支援装置10は、コンピュータである。設定支援装置10は、プロセッサと、記憶部と、を備える。設定支援装置10は、例えば、プログラムに従って予め定められた処理を実行することによって中継器X3~X5のチャンネル及び中継器X3~X5の位置を決定する。
【0022】
図2及び図5に示すように、ステップS3において、設定支援装置10は、計測結果に基づいて占有マップ21,22,23,24を作成する。占有マップ21~24は、区域A1における既存の無線機による電波環境を示すマップである。占有マップ21~24は、グリッドG2毎に電波による占有確率を設定したマップである。占有確率の上限値は、100%である。占有マップ21~24のグリッドG2は、区域A1に設定されたグリッドG1と同一のものである。占有マップ21~24は、チャンネル毎に作成される。
【0023】
設定支援装置10は、準備段階で得られた計測結果をチャンネル毎にグリッドG2にプロットすることによって占有マップ21~24を作成する。設定支援装置10は、電波の受信継続時間が長いほど占有確率を高くする。設定支援装置10は、電波の受信回数が多いほど占有確率を高くする。設定支援装置10は、電波の受信強度が強いほど占有確率を高くする。設定支援装置10は、電波の受信強度の強さに応じて、隣接するグリッドG2にも占有確率を付与する。隣接するグリッドG2に付与される占有確率は、電波の受信強度が強いほど高くなる。設定支援装置10は、計測器M1を配置しなかったグリッドG2については、占有確率を100%にする。
【0024】
図5に示すように、一例として、4つのチャンネルに対応した4つの占有マップ21~24が得られたとする。図5では、グリッドG2の濃淡によって占有確率を表している。濃淡が濃いほど占有確率は高い。図示の都合上、占有確率は5段階で表されているが、占有確率は連続的に変化する値であってもよい。4つのチャンネルは、第1チャンネル、第2チャンネル、第3チャンネル、及び第4チャンネルを含む。各チャンネルは、周波数の帯域幅が異なる。
【0025】
図5(a)には、第1チャンネルの電波による占有確率を表す第1占有マップ21を示す。図5(b)には、第2チャンネルの電波による占有確率を表す第2占有マップ22を示す。図5(c)には、第3チャンネルの電波による占有確率を表す第3占有マップ23を示す。図5(d)には、第4チャンネルの電波による占有確率を表す第4占有マップ24を示す。
【0026】
図6に示すように、同一座標のグリッドG2が重なるように4つの占有マップ21~24を重ねると三次元占有マップ20が得られる。三次元占有マップ20は、X座標及びY座標によってグリッドG2の位置を表し、Z座標によってチャンネルを表す。Z座標に重なり合う複数のグリッドG2は、ボクセルを構成する。
【0027】
図2に示すように、ステップS4において、設定支援装置10は、始点から終点までの経路を生成する。始点は、区域A1における子機X1の位置である。終点は、区域A1における親機X2の位置である。始点は、少なくとも1箇所以上設定される。本実施形態の始点は1箇所であるが、始点は複数箇所であってもよい。終点は、1箇所設定される。始点及び終点は、例えば、設定支援装置10のユーザによって入力される。
【0028】
設定支援装置10は、三次元占有マップ20を地図とみなして以下の第1条件~第4条件に従い経路を生成する。特定小電力無線機X1~X5をノードとし、特定小電力無線機X1~X5間の通信をエッジとしてノードグラフによって経路は表される。
【0029】
第1条件:ノードは占有確率が閾値以上高いグリッドG2に配置できない。
第2条件:エッジは占有確率が閾値以上高いグリッドG2を通過できない。
第3条件:エッジは所定値以上長くできない。
【0030】
第4条件:同一チャンネルのノードは一定距離以内にひとつしか存在できない。
第1条件の閾値と第2条件の閾値とは、同一の値である。占有確率が高いほど、グリッドG2に特定小電力無線機X1~X5を配置した際に既存の無線機との電波干渉が起こりやすい。このため、電波干渉を許容できる値を閾値として設定しておき、占有確率が閾値未満のグリッドG2を占有マップ21~24に対応するチャンネルでの通信が可能なグリッドG2としている。言い換えれば、占有確率が閾値以上のグリッドG2を占有マップ21~24に対応するチャンネルでの通信が不可能なグリッドG2としている。閾値は、任意の値に設定することができる。
【0031】
第3条件の所定値は、特定小電力無線機X1~X5の通信可能距離である。
第4条件の一定距離は、例えば、通信方式によって定まる値である。
図7には、第1条件~第4条件に従って配置されたノードN1~N9と、ノードN1~N9間を接続するエッジE1~E10と、を示す。ノードN1~N9は、三次元占有マップ20のうち一部のボクセルに配置される。即ち、ノードN1~N9は、各占有マップ21~24の同一座標のグリッドG2に配置される。ノードN1は、子機X1を示す。ノードN1が配置されるグリッドG2は、始点G3である。ノードN9は、親機X2を示す。ノードN9が配置されるグリッドG2は、終点G4である。各占有マップ21~24には、中継器の候補を示すノードN2~N8が配置される。
【0032】
各占有マップ21~24に示されるエッジE1~E10のうち実線のエッジは、当該占有マップ21~24に対応するチャンネルを用いて通信可能であることを表す。各占有マップ21~24に示すエッジE1~E10のうち破線のエッジは、第4条件によって当該占有マップ21~24に対応するチャンネルでの通信が不可能であることを表す。各占有マップ21~24に示すノードN1~N9のうちエッジE1~E10によって接続されていないノードN1~N9同士は、第1条件~第3条件によって当該占有マップ21~24に対応するチャンネルでの通信が不可能である。
【0033】
図7(a)に示すように、第1占有マップ21では、ノードN1とノードN2とが実線のエッジE1で接続されている。ノードN1とノードN6とが実線のエッジE3で接続されている。ノードN4とノードN5とが実線のエッジE5で接続されている。ノードN3とノードN5とが実線のエッジE6で接続されている。従って、ノードN1とノードN2、ノードN1とノードN6、ノードN4とノードN5及びノードN3とノードN5のそれぞれは、第1チャンネルによって通信可能である。
【0034】
図7(b)に示すように、第2占有マップ22では、ノードN7とノードN8とが実線のエッジE9で接続されている。従って、ノードN7とノードN8は、第2チャンネルによって通信可能である。
【0035】
図7(c)に示すように、第3占有マップ23では、ノードN1とノードN4とが実線のエッジE4で接続されている。ノードN5とノードN8とが実線のエッジE7で接続されている。従って、ノードN1とノードN4及びノードN5とノードN8のそれぞれは、第3チャンネルによって通信可能である。
【0036】
図7(d)に示すように、第4占有マップ24では、ノードN2とノードN3とが実線のエッジE2で接続されている。ノードN6とノードN7とが実線のエッジE8で接続されている。ノードN8とノードN9とが実線のエッジE10で接続されている。従って、ノードN2とノードN3、ノードN6とノードN7、及びノードN8とノードN9のそれぞれは、第4チャンネルによって通信可能である。
【0037】
経路は、経路探索アルゴリズムを用いて生成することができる。経路探索アルゴリズムは、例えば、A*又はRRT(Rapidly-exploring Random Tree)であってもよい。経路は、始点G3から終点G4までを実線のエッジE1~E10で繋いだものである。
【0038】
図8に示すように、本実施形態では、3つの経路R1,R2,R3が生成される。3つの経路R1~R3は、第1経路R1と、第2経路R2と、第3経路R3と、を含む。各経路R1~R3は、始点G3から終点G4までの間に占有確率が閾値以上のグリッドG2が存在しない経路である。
【0039】
図8(a)に示すように、第1経路R1は、ノードN1→エッジE3→ノードN6→エッジE8→ノードN7→エッジE9→ノードN8→エッジE10→ノードN9を通る経路である。
【0040】
図8(b)に示すように、第2経路R2は、ノードN1→エッジE1→ノードN2→エッジE2→ノードN3→エッジE6→ノードN5→エッジE7→ノードN8→エッジE10→ノードN9を通る経路である。
【0041】
図8(c)に示すように、第3経路R3は、ノードN1→エッジE4→ノードN4→エッジE5→ノードN5→エッジE7→ノードN8→エッジE10→ノードN9を通る経路である。
【0042】
図2に示すように、ステップS5において、設定支援装置10は、第1経路R1、第2経路R2、及び第3経路R3から1つの経路を選択する。設定支援装置10は、第1経路R1、第2経路R2、及び第3経路R3毎にコストを算出する。設定支援装置10は、各経路R1,R2,R3が通過するノードN2~N8が多いほどコストを高くする。ノードN2~N8は中継器を表すため、中継器の数が多いほどコストは高くなる。設定支援装置10は、始点G3から終点G4までの各経路R1~R3のエッジE1~E10の全長が長いほどコストを高くする。エッジE1~E10の全長が長いほど経路R1~R3は長くなるため、経路R1~R3が長いほどコストは高くなる。設定支援装置10は、各経路R1~R3が通過するグリッドG2の占有確率の合算値が高いほどコストを高くする。
【0043】
図8(a)に示す例では、第1経路R1が通過するノードN2~N8の数は3である。始点G3から終点G4までの第1経路R1のエッジE1~E10の全長は、9.2である。第1経路R1が通過するグリッドG2の占有確率の合算値は1である。
【0044】
図8(b)に示す例では、第2経路R2が通過するノードN2~N8の数は4である。始点G3から終点G4までの第2経路R2のエッジE1~E10の全長は、10である。第2経路R2が通過するグリッドG2の占有確率の合算値は2である。
【0045】
図8(c)に示す例では、第3経路R3が通過するノードN2~N8の数は3である。始点G3から終点G4までの第3経路R3のエッジE1~E10の全長は、9.2である。第3経路R3が通過するグリッドG2の占有確率の合算値は3である。
【0046】
上記した例では、エッジE1~E10の全長は、グリッドG2の一辺を1として算出している。各経路R1~R3が通過するグリッドG2の占有確率の合算値は、5段階で表現される占有確率のうち最も低い占有確率よりも高い占有確率のグリッドG2を通過した数である。即ち、各経路R1~R3が通過するグリッドG2の占有確率の合算値を算出する際に、5段階で表現される占有確率のうち最も低い占有確率は0、最も低い占有確率よりも高い占有確率については1とみなして算出を行っている。各経路R1~R3が通過するグリッドG2の占有確率の合算値は、各経路R1~R3が通過するグリッドG2に対応付けられた占有確率を当該占有確率のまま合算した値であってもよい。
【0047】
設定支援装置10は、コストが最小となる1つの経路を選択する。第2経路R2が通過するノードN2~N8の数は、第1経路R1が通過するノードN2~N8の数よりも多い。第2経路R2が通過するノードN2~N8の数は、第3経路R3が通過するノードN2~N8の数よりも多い。第2経路R2のエッジE1~E10の全長は、第1経路R1のエッジE1~E10の全長よりも長い。第2経路R2のエッジE1~E10の全長は、第3経路R3のエッジE1~E10の全長よりも長い。従って、第2経路R2のコストは、第1経路R1のコスト及び第3経路R3のコストよりも大きい。第1経路R1が通過するグリッドG2の占有確率の合算値は、第3経路R3が通過するグリッドG2の占有確率の合算値よりも低い。このため、第1経路R1のコストは、第3経路R3のコストよりも小さい。従って、設定支援装置10は、コストが最小となる経路として第1経路R1を選択する。
【0048】
図2に示すように、ステップS6において、設定支援装置10は、コストが最小となる第1経路R1に従い中継器X3~X5のチャンネル及び中継器X3~X5の位置を決定する。図8(a)に示す例では、ノードN6に対応する位置、ノードN7に対応する位置、及びノードN8に対応する位置が中継器X3~X5の位置として決定される。エッジE3は第1占有マップ21でのエッジであるため、ノードN6に対応して配置される中継器X3とノードN1に対応して配置される子機X1の通信に用いられるチャンネルは、第1チャンネルに決定される。エッジE8は第4占有マップ24でのエッジであるため、ノードN6に対応して配置される中継器X3とノードN7に対応して配置される中継器X4の通信に用いられるチャンネルは、第4チャンネルに決定される。エッジE9は第2占有マップ22でのエッジであるため、ノードN7に対応して配置される中継器X4とノードN8に対応して配置される中継器X5の通信に用いられるチャンネルは、第2チャンネルに決定される。エッジE10は第4占有マップ24でのエッジであるため、ノードN8に対応して配置される中継器X5とノードN9に対応して配置される親機X2の通信に用いられるチャンネルは、第4チャンネルに決定される。
【0049】
[本実施形態の作用]
特定小電力無線機X1~X5のユーザは、ステップS6で決定された中継器X3~X5のチャンネル及び中継器X3~X5の位置に従い、中継器X3~X5の設定を行う。ユーザは、ノードN6に対応する位置に中継器X3を配置する。ユーザは、ノードN7に対応する位置に中継器X4を配置する。ユーザは、ノードN8に対応する位置に中継器X5を配置する。そして、ユーザは、各特定小電力無線機X1~X5のチャンネルを、ステップS6で決定されたチャンネルに設定する。
【0050】
[本実施形態の効果]
(1)特定小電力無線機X1~X5には、単位時間あたりに電波を発することができる時間が定められている。このため、特定小電力無線機X1~X5を配置する区域A1に既存の無線機が存在している場合であっても、時間を区切って同一のチャンネルを共用することができる。電波の受信継続時間が短いグリッドG2については、当該電波のチャンネルを共用することによって特定小電力無線機X1~X5が通信を行うことができる場合がある。このため、電波の受信継続時間が高いほど占有確率を高くすることによって、グリッドG2毎に既存の無線機との電波干渉が生じ易いかを判断することができる。特定小電力無線機の設定支援方法によって、始点G3から終点G4までの経路R1~R3に占有確率が閾値以上のグリッドG2が存在しないように、中継器X3~X5のチャンネル及び中継器X3~X5の位置を決定することができる。これに従い、中継器X3~X5のチャンネル及び中継器X3~X5の位置を設定することで、既存の無線機との電波干渉を避けつつ特定小電力無線機X1~X5のチャンネル及び特定小電力無線機X1~X5の位置を設定することができる。
【0051】
(2)複数の経路R1~R3が存在する場合、経路R1~R3毎にコストが算出される。中継器X3~X5のチャンネル及び中継器X3~X5の位置は、コストが最小となる経路R1~R3に従って決定される。コストは、中継器X3~X5の数が多いほど高くなる。このため、中継器X3~X5の数が多くなることを抑制することができる。
【0052】
(3)コストは、経路R1~R3が通過するグリッドG2の占有確率の合算値が高いほど高くなる。従って、電波干渉の生じ難い経路R1~R3を選択することができる。
(4)コストは、経路R1~R3が長いほど高くなる。経路R1~R3が長いと、通信距離が長くなることによって、パケットに誤りが生じることや、電波の減衰が生じることの原因になる。経路R1~R3が長いほどコストを高くすることで、通信距離が長くなることを抑制できる。
【0053】
(5)電波の受信継続時間、電波の受信回数、及び電波の受信強度によって占有確率を算出している。電波の受信継続時間のみで占有確率を算出する場合に比べて、既存の無線機による電波の影響を精度良く把握することができる。
【0054】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
○複数の経路R1~R3が存在する場合、いずれの経路R1~R3を選択してもよい。即ち、コストを算出することなく、任意の経路R1~R3を選択してもよい。例えば、中継器X3~X5を配置し易い経路R1~R3を選択してもよい。
【0056】
○ステップS2は、計測器M1を備える移動体を各グリッドG2に移動させることによって行われてもよい。移動体の移動によって、グリッドG2毎に電波のチャンネル及び電波の受信継続時間を計測した計測結果を得ることができる。移動体は、例えば、飛行体である。
【0057】
○占有確率は、電波の受信継続時間のみから算出されてもよい。占有確率は、電波の受信継続時間及び電波の受信回数から算出されてもよい。占有確率は、電波の受信継続時間及び電波の受信強度から算出されてもよい。
【0058】
○子機X1は、複数であってもよい。この場合、複数の子機X1毎に親機X2までの経路を生成してもよい。そして、各子機X1から親機X2までの経路の共通部分に中継器X3~X5を配置してもよい。
【0059】
○ステップS4で生成される経路が1つの場合、ステップS5の処理は行われなくてもよい。
○コストは、中継器の数、経路R1~R3が通過するグリッドG2の占有確率の合算値、及び経路R1~R3の長さの少なくとも1つに基づいて算出されればよい。
【符号の説明】
【0060】
A1…区域、G2…グリッド、G3…始点、G4…終点、R1,R2,R3…経路、X1,X2,X3,X4,X5…特定小電力無線機、21,22,23,24…占有マップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8