(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107936
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】磁界発生装置
(51)【国際特許分類】
G01V 15/00 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
G01V15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012139
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000159618
【氏名又は名称】吉川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原野 信也
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB12
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH01
2G105JJ05
2G105KK06
(57)【要約】
【課題】所定の方向に長く延びる領域を画定するために、所定の方向に長く延びる磁界を発生させることのできる磁界発生装置を提供する。
【解決手段】長尺U字状の導線1と、導線1を保持する保持具2と、導線1に同調回路を介して所定の周波数の交流電流を印加する発信回路とを含む磁界発生装置Bである。保持具2は、柔軟性を有する非金属質材料で形成され、かつ導線1の略全長にわたりU字の間隔を一定に保つように配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺U字状の導線と、前記導線を保持する保持具と、前記導線に同調回路を介して所定の周波数の交流電流を印加する発信回路とを含む磁界発生装置であって、
前記保持具は、柔軟性を有する非金属質材料で形成され、かつ前記導線の略全長にわたりU字の間隔を一定に保つように配置されている磁界発生装置。
【請求項2】
前記保持具は、長尺帯状の本体部と、前記本体部の両側に設けられ前記導線を被覆するように保持する保持部とを備える、請求項1に記載の磁界発生装置。
【請求項3】
前記同調回路を複数含み、前記導線と接続される同調回路を切り替えるための切替手段を更に含む、請求項1又は2に記載の磁界発生装置。
【請求項4】
前記切替手段は、前記導線の両端に接続された多ピンコネクタを含む、請求項3に記載の磁界発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流誘導磁界を発生させる磁界発生装置に関する。なお、本明細書では「交流誘導磁界」のことを単に「磁界」ともいう。
【背景技術】
【0002】
磁界発生装置は、例えば特許文献1に開示されているように高所作業領域を画定するためや、例えば特許文献2に開示されているように作業者の安全が確保された安全区域の出入口部を画定するためなど、各種領域を画定するための手段として使用されることがある。従来一般的に磁界発生装置は球形状又は楕円体状に磁界を発生させるが、上述の高所作業領域や安全区域は所定の方向に長く延びている場合があり、このように画定したい領域が所定の方向に長く延びている場合、従来一般的な磁界発生装置では、その領域を画定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-166685号公報
【特許文献2】特許第6445812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、所定の方向に長く延びる領域を画定するために、所定の方向に長く延びる磁界を発生させることのできる磁界発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、次の磁界発生装置が提供される。
長尺U字状の導線と、前記導線を保持する保持具と、前記導線に同調回路を介して所定の周波数の交流電流を印加する発信回路とを含む磁界発生装置であって、
前記保持具は、柔軟性を有する非金属質材料で形成され、かつ前記導線の略全長にわたりU字の間隔を一定に保つように配置されている磁界発生装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、所定の方向に長く延びる磁界を発生させることができ、これにより所定の方向に長く延びる領域を画定することができる。すなわち、本発明によれば、長尺U字状の導線に沿って磁界が発生するから、この長尺U字状の導線を所定の方向に沿って設置することで、所定の方向に長く延びる磁界を発生させることができ、これにより所定の方向に長く延びる領域を画定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態である磁界発生装置の装置構成を概念的に示す平面図。
【
図2】
図1の磁界発生装置における装置本体の構成を概念的に示すブロック図。
【
図4】
図1の磁界発生装置において発生する磁界を概念的に示す説明図。
【
図5】導線と接続される同調回路を切り替えるための切替手段の一例を概念的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に、本発明の一実施形態である磁界発生装置の装置構成を平面図で概念的に示している。また、
図2には
図1の磁界発生装置における装置本体の構成をブロック図で概念的に示している。
図1において磁界発生装置Bは接近検知システムAに組み込まれており、長尺U字状の導線1と、導線1を保持する保持具2と、接近検知システムAの検知機を兼ねる装置本体3とを備えている。装置本体3は導線1に所定の周波数の交流電流を印加する発信回路31と、導線1と発信回路31との間に介在する同調回路32とを含む。すなわち、発信回路31は同調回路32を介して所定の周波数の交流電流を導線1に印加する。なお、本実施形態において装置本体3は上述の通り接近検知システムAの検知機を兼ねており、その詳細な構成及び作用については後述する。
【0009】
図1に戻って導線1は長尺U字状に形成されている。ここで、「長尺U字状」とは、U字状の導線1の長さL1が概ね1m以上で、かつU字の間隔W1が概ね15cm以下の細長い形状ことをいい、長さL1に関してはより実用的には概ね5m以上の細長い形状ことをいう。なお、長さL1の上限は特に限定されないが、実用面を考慮すると概ね100mが上限である。また、間隔W1の下限も特に限定されないが、実用面を考慮すると数mmが下限である。
導線1としては一般的なケーブルを用いることができ、一般的なケーブルをU字状に折り曲げることで形成することができる。またケーブルとしてはコスト面から、最も一般的で安価な2芯ケーブルを用いることができる。2芯ケーブルを用いる場合、2芯のうち1芯のみを用いて発信回路31及び同調回路32に接続してもよいし、2芯の両端を接合しこれを発信回路31及び同調回路32に接続するようにしてもよい。
【0010】
保持具2は、柔軟性を有する非金属質材料で形成され、かつ長尺U字状の導線1の略全長にわたりU字の間隔W1(
図3参照)を一定に保つように配置されている。なお、本実施形態において導線としては2芯ケーブルを用いているが、
図3において2芯ケーブルである導線1の断面は簡略化して示している。
保持具2を形成するための柔軟性を有する非金属質材料としては、エラストマー、ゴム、シリコーンレジン等が挙げられるが、成形の容易性等の観点から、熱可塑性のエラストマーを用いることが好ましい。
本実施形態において保持具2は、熱可塑性エラストマーによる一体成形物であり、長尺帯状の本体部21と、本体部21の両側に設けられ導線1を被覆するように保持する保持部22とを備える。本体部21は一定の幅W2を有し、保持部22は本体部21の両側に全長にわたり対をなすように形成されている。また、保持部22の端部には全長にわたり切欠き221が形成されており、導線1は切欠き221を介して保持部22内に装着される。これにより、導線1が保持部22で被覆されるように保持される。
【0011】
保持具2は上述の通り、長尺U字状の導線1の略全長にわたり配置される。ここで長尺U字状の導線1の略全長とは、U字状に折り曲げた先端部分と、装置本体3に接続される基端部分を除く全長ということである。ここで、上記の「先端部分」及び「基端部分」は必ずしも厳密に画定されるものではなく、長尺U字状の導線1のU字の間隔W1を一定に保つという保持具2の機能及び技術常識等を考慮して画定されるものである。
【0012】
保持具2に保持された長尺U字状の導線1には、上述の通り所定の周波数の交流電流を印加される。これにより、
図4に概念的に示しているように長尺U字状の導線1の周囲に磁界Mが発生する。このとき、長尺U字状の導線1のU字の間隔W1が一定に保たれているから、磁界Mは長尺U字状の導線1の周囲に略円柱状に発生する。なお、この略円柱状の磁界Mの半径rは、長尺U字状の導線1のU字の間隔W1、導線1に印加する交流電流の周波数、電流値等により調整することができる。例えば間隔W1を30mm、交流電流の周波数を125kHz、電流値を100mmAとした場合、半径rは1mとなる。
【0013】
このように本実施形態によれば、長尺U字状の導線1に沿って略円柱状の磁界Mが発生するから、この長尺U字状の導線1を所定の方向に沿って設置することで、所定の方向に長く延びる磁界を発生させることができ、これにより所定の方向に長く延びる領域を画定することができる。また本実施形態において保持具2は、長尺U字状の導線1の略全長にわたりU字の間隔W1を一定に保つように配置されているから、磁界Mは長尺U字状の導線1に沿って略円柱状となり、所定の方向に長く延びる領域を均一に画定することができる。更に本実施形態において保持具2は、柔軟性を有する非金属質材料で形成されているから、長尺U字状の導線1を所定の設置場所に設置するときにその設置場所に多少の凹凸や段差等があったとしても、保持具2の柔軟性により対応することができる。
【0014】
上述の通り交流電流は、同調回路32を介して導線1へ印加される。同調回路はマッチング回路とも呼ばれ、本実施形態において同調回路32はコンデンサよりなる。すなわち、本実施形態において磁界発生装置Bは、長尺U字状の導線1をコイル、同調回路32をコンデンサとするLC回路とみなすことができる。
【0015】
LC回路は、下記を満たすときに共振回路として動作する。
ここで、fは共振周波数(Hz)、Lはコイルのインダクタンス(H)、Cはコンデンサの静電容量(F)である。
【0016】
本実施形態ではf=125kHzに共振させるように各値を決定する。また、L値は導線1の長さで決まる。このようにf値とL値が決まるので、それに合ったC値を有するコンデンサを同調回路32とする。
なお、本実施形態ではf=125kHzに共振させるようにしたが、f値は125kHzには限定されず、例えば数十kHzから百数十kHzの範囲で任意に選択することができる。また、本実施形態では直列LC共振回路としたが並列LC共振回路とすることもできる。更に同調回路に抵抗を含めてRLC共振回路とすることもできる。
【0017】
上述の通りLC共振回路ではf値とL値が決まるとC値も決まり、本実施形態ではそのC値を有するコンデンサを同調回路32とする。本実施形態においてf値は固定値である。一方、L値は使用する導線1の長さにより変化する。そのため本実施形態では、導線1の長さに応じて適切なC値を有するコンデンサを選択して同調回路32とする。
【0018】
また、本発明の他の実施形態では、C値の異なる同調回路を複数設け、使用する導線1の長さに応じて、その導線1と接続する同調回路を切り替えるための切替手段を設けることができる。その切替手段の一例は、
図5に概念的に示しているように導線1の両端に接続された多ピンコネクタ11を含むものである。すなわち、一方の多ピンコネクタ11により、C値の異なるコンデンサよりなる3つの同調回路32a~cのうちの一つに接続する。なお、他方の多ピンコネクタ11は直接的に発信回路31に接続される。このようにして使用する導線1の長さに応じて、その導線1と接続する同調回路を切り替えることができる。
【0019】
次に装置本体3の詳細について説明する。上述の通り、本実施形態において装置本体3は接近検知システムAの検知機を兼ねている。そのため、本実施形態において装置本体3は
図2に示しているように、磁界発生装置の装置本体として必要な発信回路31及び同調回路32のほかに受信回路33及び警報回路34を含み、併せて電源に接続される電源回路35と、各回路の動作を制御する制御回路36とを含む。
【0020】
発信回路31は、電源回路35から所定の周波数の交流電流の供給を受けると共に、制御回路35から装置本体3に固有の装置IDを受信し、その装置IDを付加した交流電流を、同調回路32を介して導線1に印加する。これにより、長尺U字状の導線1の周囲に装置IDを含む磁界Mが発生する。
図1に示した接近検知システムAにおいては、磁界検知機能付きRFIDタグ4が上述の磁界Mの範囲内に入りその磁界Mを検知すると、その磁界検知機能付きRFIDタグ4から装置IDを含む電波が送信される。なお、磁界検知機能付きRFIDタグ4の構成については、例えば上述の特許文献2にも開示されているように公知であるから、その説明を省略する。
磁界検知機能付きRFIDタグ4から送信された電波が装置本体3に接続された電波受信アンテナ5で受信されると、その電波は
図2に示した受信回路33に送信される。そして制御回路36が、受信回路33が受信した電波に含まれる装置IDを確認し、その装置IDが装置本体3の装置IDと一致していれば、警報回路34から接近警報を発報させる。
【0021】
以上の通り本実施形態では磁界発生装置Bを、接近検知システムAにおいて磁界検知機能付きRFIDタグ4が接近したときに接近警報を発するための領域を画定するために使用したが、本発明の磁界発生装置はこのほか、例えば上述の通り高所作業領域を画定するためや、作業者の安全が確保された安全区域の出入口部を画定するためなど、各種領域を画定するための手段として使用することができる。
【符号の説明】
【0022】
A 接近検知システム
B 磁界発生装置
1 導線
11 多ピンコネクタ
2 保持具
21 本体部
22 保持部
221 切欠き
3 装置本体
31 発信回路
32、32a、32b、32c 同調回路
33 受信回路
34 警報回路
35 電源回路
36 制御回路
4 磁界検知機能付きRFIDタグ
5 電波受信アンテナ