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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107954
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】過熱蒸気式熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20240802BHJP
   A47J 27/16 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F24C1/00 310C
A47J27/16 G
F24C1/00 310B
F24C1/00 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012165
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】加賀 忠
【テーマコード(参考)】
4B054
【Fターム(参考)】
4B054AA06
4B054BA02
4B054CE20
4B054CG01
(57)【要約】
【課題】 上部ノズルからの液滴の落下を可及的に防止する
【解決手段】 内部に加熱室Rが形成されるとともに入口Enおよび出口Exが形成された函体2と、物品3を搬送する搬送手段4と、上記加熱室Rの内部に過熱蒸気を噴射する過熱蒸気噴射手段5とを備えた過熱蒸気式熱処理装置1に関する。
上記入口Enおよび出口Exにエアカーテンを形成するエアカーテンノズル13は、上記搬送手段4の上方に設けられるとともに、上方から下方に向けて蒸気を噴射する上部ノズル13Aを備えており、当該上部ノズル13Aの内部に、蒸気供給配管15を構成する管状の排出部分22aを設け、当該排出部分22aにおける中心よりも上側となる位置に、蒸気を排出する蒸気排出孔22bを設けた。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に加熱室が形成されるとともに入口および出口が形成された函体と、上記函体の入口から出口へと物品を搬送する搬送手段と、上記加熱室の内部に過熱蒸気を噴射する過熱蒸気噴射手段と、蒸気を噴射して上記函体の入口と出口の少なくとも一方にエアカーテンを形成するエアカーテンノズルと、上記エアカーテンノズルに蒸気を供給する蒸気供給手段と、上記エアカーテンノズルと蒸気供給手段との間に配設された蒸気供給配管とを備えた過熱蒸気式熱処理装置において、
上記エアカーテンノズルは、上記搬送手段の上方に設けられるとともに、上方から下方に向けて蒸気を噴射する上部ノズルを備え、
当該上部ノズルの内部に、上記蒸気供給配管を構成する管状の排出部分を設け、当該排出部分における中心よりも上側となる位置に、蒸気を排出する蒸気排出孔を設けたことを特徴とする過熱蒸気式熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過熱蒸気式熱処理装置に関し、詳しくは函体の入口および出口にエアカーテンを形成するエアカーテンノズルを備えた過熱蒸気式熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過熱蒸気式熱処理装置として、内部に加熱室が形成されるとともに入口および出口が形成された函体と、上記函体の入口から出口へと物品を搬送する搬送手段と、上記加熱室の内部に過熱蒸気を噴射する過熱蒸気噴射手段とを備えたものが知られている(特許文献1)。
また特許文献1の過熱蒸気式熱処理装置では、上記入口や出口からの外気の進入等を防止するため、蒸気を噴射して上記入口および出口をエアカーテンによって閉鎖することが行われている。
上記入口および出口には、それぞれ蒸気を噴射するエアカーテンノズルが設けられ、蒸気を供給する蒸気供給手段と上記エアカーテンノズルとの間には蒸気供給配管が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5839192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記蒸気供給手段から供給された蒸気は、上記蒸気供給配管を流通する間に一部が液滴化する場合があり、上記特許文献1のエアカーテンノズルのうち、特に搬送手段の上方に設けられた上部ノズルから液滴となって落下すると、搬送中の物品に付着してしまうおそれがあった。
このような問題に鑑み、本発明は上部ノズルからの液滴の落下を可及的に防止することが可能な過熱蒸気式熱処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1にかかる過熱蒸気式熱処理装置は、内部に加熱室が形成されるとともに入口および出口が形成された函体と、上記函体の入口から出口へと物品を搬送する搬送手段と、上記加熱室の内部に過熱蒸気を噴射する過熱蒸気噴射手段と、蒸気を噴射して上記函体の入口および出口にエアカーテンを形成するエアカーテンノズルと、上記エアカーテンノズルに蒸気を供給する蒸気供給手段と、上記エアカーテンノズルと蒸気供給手段との間に配設された蒸気供給配管とを備えた過熱蒸気式熱処理装置において、
上記エアカーテンノズルは、上記搬送手段の上方に設けられるとともに、上方から下方に向けて蒸気を噴射する上部ノズルを備え、
当該上部ノズルの内部に、上記蒸気供給配管を構成する管状の排出部分を設け、当該排出部分における中心よりも上側となる位置に、蒸気を排出する蒸気排出孔を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、上記エアカーテンノズルのうち、上部ノズルの内部には、蒸気供給配管を構成する管状の排出部分を設けて、当該排出部分に蒸気を排出する蒸気排出孔を設けている。
上記蒸気排出孔は排出部分における中心よりも上側となる位置に形成されているため、上記が液滴化した場合であっても、当該液滴が蒸気排出孔より排出されず、液滴が上部ノズルの内部に進入しないことから、物品への液滴の落下を可及的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかる過熱蒸気式熱処理装置の構成図
図2】エアカーテンノズルを説明する側面図
図3】エアカーテンノズルを説明する正面図
図4】エアカーテンノズルを説明する斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施形態に基づいて本発明を説明すると、図1は過熱蒸気式熱処理装置1を示し、内部に加熱室R2~R5が形成されるとともに入口Enおよび出口Exが形成された函体2と、上記函体2の入口Enから出口Exへと物品3を搬送する搬送手段4と、上記加熱室R2~R5の内部に過熱蒸気を噴射する過熱蒸気噴射手段5とを備えている。
上記函体2の内部には複数の区画壁2aが設けられ、この区画壁2aによって函体2の内部には6つの部屋が形成されている。具体的には、物品3の搬送方向上流側から下流側に向けて、入口室R1と、4つの加熱室R2~R5と、出口室R6とが形成されている。
また上記各区画壁2aには開口がそれぞれ形成されており、各開口は上記搬送手段4によって搬送される物品3の通過を許容するようになっている。上記開口のうち、上記入口室R1と上流端の加熱室R2とを区画する区画壁2aに形成された開口が上記入口Enを形成し、上記出口室R6と下流端の加熱室Rとの間に形成された区画壁2aの開口が上記出口Exを形成している。
上記搬送手段4は金属製ローラコンベヤなどによって構成され、この搬送手段4によって食品などの物品3を上記函体2の入口室R1に搬入すると、上記入口Enを介して加熱室R2~R5を通過させ、上記物品3を上記出口Exから出口室R6へと搬出するようになっている。
【0009】
上記過熱蒸気噴射手段5は、各加熱室R2~R5の内部に設けられた過熱蒸気ノズル11と、各過熱蒸気ノズル11に過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段12とを備えている。
上記過熱蒸気ノズル11は各加熱室R2~R5の内部に設けられるとともに、上記搬送手段4の上下に設けられており、上記各過熱蒸気ノズル11は水平面内で平行に配置した多数のパイプ(図示せず)によって構成され、各パイプに形成した多数の貫通孔から過熱蒸気を噴射するように構成されている。
上記各過熱蒸気ノズル11に過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段12は、それぞれブロワ等の送気手段や、電気式や燃焼式ヒータ等の加熱手段を備えており、加熱手段によって高温の200~500℃の範囲の所要温度に加熱するようになっている。
そして上記過熱蒸気供給手段12から供給された過熱蒸気は、それぞれ上下の過熱蒸気ノズル11から物品3に向けてそれぞれ噴射され、該物品3を焼成するようになっている。
【0010】
また本実施形態では、各加熱室R内に供給された過熱蒸気は、図示しない排気手段によって排気されると、図示しない循環配管によって上記過熱蒸気供給手段12へと還流されるようになっており、過熱蒸気を循環して使用することが可能となっている。
なお、本実施形態のように、内部に加熱室R2~R5が形成された函体2と、上記加熱室Rの内部で物品3を搬送する搬送手段4とを備え、上記加熱室Rの内部に過熱蒸気を噴射して物品3を焼成する過熱蒸気式熱処理装置1は従来公知であり、上記過熱蒸気ノズル11や過熱蒸気供給手段12などの構成については、従来公知の様々な構成を採用することが可能となっている。
【0011】
そして本実施形態の過熱蒸気式熱処理装置1では、上記入口室R1および出口室R6に形成された入口Enおよび出口Exに、蒸気からなるエアカーテンを形成して、加熱室R2~R5内に空気が流入しないようにし、各加熱室R2~R5内の酸素濃度を低酸素濃度に維持するようになっている。
具体的に説明すると、上記入口Enおよび出口Exのそれぞれに、蒸気を噴射してエアカーテンを形成するエアカーテンノズル13を設け、さらに上記エアカーテンノズル13に蒸気を供給する蒸気供給手段14と、上記エアカーテンノズル13と上記蒸気供給手段14との間に配設された蒸気供給配管15とを設けたものとなっている。
ここで、上記入口室R1および出口室R6の上部には、それぞれ排出口16が設けられており、各排出口16に設けた開閉弁の開度を調節することにより、入口En、出口Exから外部への蒸気の流出を防ぐとともに、入口室R1および出口室R6の圧力が加熱室R2~R5内の圧力よりも高くならないようにしている。
上記蒸気供給手段14は上記函体2の外部に設けられており、上記過熱蒸気より低温の蒸気を供給するようになっている。
【0012】
図2図3は入口Enに設けたエアカーテンノズル13を示しており、図2は側面図を、図3は正面図をそれぞれ示している。なお出口Exに設けたエアカーテンノズル13は同様の構成を有しているため説明を省略する。
上記エアカーテンノズル13は上記入口Enの上方および下方に設けられた上部ノズル13Aおよび下部ノズル13Bによって構成されている。
物品3の上方に位置する上部ノズル13Aは上方から下方に向けて蒸気を噴射し、物品3の下方に位置する下部ノズル13Bは下方から上方に向けて蒸気を噴射することにより、入口Enを覆うエアカーテンを形成するようになっている。
また上記上部ノズル13Aおよび下部ノズル13Bは図2に示すように上記入口Enの幅に合わせて水平に設けられており、上記噴射口13aは入口Enの開口縁に沿って水平に設けられている。
上記上部ノズル13Aは、図3図4に示すように箱状を有しており、上記蒸気が流通可能な空間が形成された断面略長方形の本体部13bと、当該本体部13bの下部に設けられるとともに、下方に向けて徐々に幅が狭くなるように形成された噴射部13cとを備え、上記噴射部13cの下端部に上記噴射口13aが形成されている。
これと同様、下部ノズル13Bは断面略長方形の本体部13bの上部に、上記噴射口13aが形成された噴射部13cが設けられた構成を有している。
【0013】
上述したように、上記上部ノズル13Aは上記搬送手段4によって搬送される物品3の上方に設けられ、上方から下方に向けて蒸気を噴射するようになっている。
一方、上記蒸気供給手段14は上記函体2の外部に設けられており、蒸気供給配管15の一部は函体2の外部に配設されている。このため、函体2の外部の環境によっては、温度差などによって蒸気供給配管15を流通する蒸気の一部が液滴化してしまう場合がある。
このため、上記液滴がそのまま上記上部ノズル13Aへと流通してしまうと、当該液滴が液滴となって上部ノズル13Aから下方に落下し、搬送手段4によって搬送される物品3に付着してしまう恐れがあった。
特に当該物品3が食品の場合、衛生的や品質的に問題が発生するため、このような液滴の落下を防止する必要がある。
【0014】
そこで、本実施形態の過熱蒸気式熱処理装置1では、図2図4に示すように、上記上部ノズル13Aおよび上記蒸気供給配管15を以下のように構成することで液滴の落下を防止するものとなっている。図4は上記上部ノズル13Aの斜視図となっている。
上記蒸気供給配管15は、上記蒸気供給手段14に接続されるとともに、函体2の外部に配設された外部配管15Aと、上記函体2の内部に配設された内部配管15Bとを有している(図1参照)。
このうち上記内部配管15Bは図2に示すように函体2の内部上方において水平方向に分岐した後、上記入口Enの側方を迂回するように設けられた垂直部分21を備えており、当該垂直部分21の途中において、上記上部ノズル13Aに蒸気を供給する上側供給通路22と、下部ノズル13Bに蒸気を供給する下側供給通路23とに分岐するようになっている。
【0015】
上記上側供給通路22は水平方向に設けられた円管状の部材となっており、上記上部ノズル13Aの内部を水平に貫通するように設けられ、両端部が上記垂直部分21に接続されるように構成されている構成されている。
上記上側供給通路22のうち、上記上部ノズル13Aの内部に設けられた部分は本発明にかかる排出部分22aを構成しており、当該排出部分22aには等間隔に複数の蒸気排出孔22bが設けられている。
図3に示すように、上記排出部分22aは断面円形を有しており、上記蒸気排出孔22bは当該排出部分22aの中心に対して上方に設けられている。このような構成により、本実施例では蒸気排出孔22bから蒸気が斜め上方に噴射されるようになっている。なお、蒸気排出孔22bを真上に設けてもよい。
【0016】
上記下側供給通路23は、上記内部配管15Bの垂直部分21の下端部より略水平に設けられ、その後下部ノズル13Bの所要の位置に接続されるようになっている。
【0017】
上記構成を有する蒸気供給配管15によると、上記蒸気供給手段14から供給された蒸気は、上記外部配管15Aおよび内部配管15Bを介して函体2の内部へと導入されるようになっている。
その際、特に外部配管15Aにおいては、外部の環境によって蒸気が液滴化しやすく、このため液滴が蒸気と共に内部配管15Bを流通する場合がある。
上記内部配管15Bは上記垂直部分21において上側供給通路22と下側供給通路23とに分岐し、このうち上記上側供給通路22を流通した蒸気が上部ノズル13Aへと供給されるようになっている。
上記上側供給通路22のうち、上記上部ノズル13Aの内部に設けられた排出部分22aに蒸気が到達すると、蒸気は当該排出部分22aに設けられた蒸気排出孔22bより上部ノズル13Aの内部に噴射されることとなる。
このとき、上記蒸気排出孔22bは排出部分22aの中心よりも上方となる位置に設けられているため、仮に液滴化した蒸気が上側供給通路22に流入していた場合であっても、当該液滴は排出部分22aの下方に留まることから、上記蒸気排出孔22bからの排出が可及的に防止されるようになっている。
そして、排出部分22aより上部ノズル13Aの内部に噴射された蒸気は、当該上部ノズル13Aの噴射口13aから噴射されて、上記入口Enにエアカーテンを形成するようになっている。
【0018】
一方、下側供給通路23については、液滴化した蒸気が、液滴となって上記内部配管15Bの水平部分21を流通した後、上記下部ノズル13Bへと流入する恐れがある。
しかしながら、下部ノズル13Bは蒸気を下方から上方へと噴射するため、液滴が噴射口13aより噴射されることはなく、液滴が物品3に付着しないようになっている。
【0019】
以上のように、本実施形態の過熱蒸気式熱処理装置1は、蒸気供給配管15のうち、特に上部ノズル13Aに蒸気を供給する上側供給通路22は、上記上部ノズル13Aの内部に排出部分22aを備え、当該排出部分22aの中心よりも上方に蒸気排出孔22bを設けたことを特徴としている。
このような構成により、液滴化した蒸気がノズル13Aに流入するのを可及的に防止し、液滴が物品3に落下するのを可及的に阻止することが可能となっている。
すなわち、蒸気排出孔22bが排出部分22aの中心よりも上方に設けられているため、仮に液滴が排出部分22aまで到達しても、当該液滴は自重によって排出部分22aの下側半分から上方への移動が阻止され、上記蒸気排出孔22bより噴射されることはなく、上部ノズル13Aの内部には流入せず、また噴射口13aからの液滴の落下が防止されるようになっている。
【0020】
なお上記実施形態においては、上記函体2の入口Enおよび出口Exに形成するエアカーテンに蒸気を用いているが、例えば過熱蒸気を用いることも可能であり、この場合には上記過熱蒸気供給手段12に本実施形態の蒸気供給配管15を接続して、過熱蒸気をエアカーテンノズル13に供給するようにしてもよい。
この場合であっても、過熱蒸気が蒸気供給配管15を流通する間に液滴化しても、液滴を上記排出部分22aに設けた蒸気排出孔22bによって阻止できるため、上部ノズル13Aから物品3への液滴の落下を可及的に防止することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 加熱蒸気式熱処理装置 2 函体
3 物品 4 搬送手段
5 過熱蒸気噴射手段 13 エアカーテンノズル
13A 上部ノズル 14 蒸気供給手段
15 蒸気供給配管 15A 外部配管
15B 内部配管 22 上側供給通路
22a 排出部分 22b 蒸気排出孔
En 入口 Ex 出口
図1
図2
図3
図4