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特開2024-107955プリンタ指示装置、印刷システムおよびプリンタ指示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107955
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】プリンタ指示装置、印刷システムおよびプリンタ指示方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20240802BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240802BHJP
   B41J 5/30 20060101ALI20240802BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G06F3/12 353
B41J2/165
B41J5/30 Z
B41J29/38 206
G06F3/12 308
G06F3/12 312
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012166
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】上林 和雅
(72)【発明者】
【氏名】ルトシキン キリル
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
2C187
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB58
2C056EC23
2C061AP01
2C061AQ04
2C061AQ05
2C061AQ06
2C061HJ08
2C061HK05
2C061HN05
2C061HN15
2C187AC05
2C187AC07
2C187AC08
2C187AE18
2C187BF02
2C187BG03
2C187FC02
(57)【要約】
【課題】プリンタが印刷を開始するまでの待機時間を短縮しつつ、プリンタが印刷する際の印刷品質が低下することを抑制する。
【解決手段】プリンタ指示装置100は、プリンタ10に対して印刷に関する指示を行う装置である。プリンタ指示装置100は、プリンタ10に印刷させる印刷画像P10を取得する画像取得部112と、印刷画像P10に対する印刷設定情報PS1を取得する設定取得部114と、印刷画像P10に対してRIP処理をして、プリンタ10に出力可能な印刷データDT1に変換するデータ変換部116と、印刷設定情報PS1を取得するタイミングから、データ変換部116による印刷データDT1への変換が完了するタイミングよりも前までの間に、設定取得部114によって取得された印刷設定情報PS1に対応した印刷前準備動作M1を開始することをプリンタ10に指示する指示部118と、を備えている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタに対して印刷に関する指示を行うプリンタ指示装置であって、
前記プリンタに印刷させる印刷画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された前記印刷画像に対する印刷設定情報を取得する設定取得部と、
前記画像取得部によって取得された前記印刷画像に対してRIP処理をして、前記プリンタに出力可能な印刷データに変換するデータ変換部と、
前記設定取得部が前記印刷設定情報を取得するタイミングから、前記データ変換部による前記印刷データへの変換が完了するタイミングよりも前までの間に、前記設定取得部によって取得された前記印刷設定情報に対応した印刷前準備動作を開始することを前記プリンタに指示する指示部と、
を備えた、プリンタ指示装置。
【請求項2】
前記指示部は、前記データ変換部による前記印刷データへの変換が完了するタイミングまでに前記印刷前準備動作が完了するように、前記印刷前準備動作を開始することを前記プリンタに指示する、請求項1に記載されたプリンタ指示装置。
【請求項3】
前記指示部は、前記印刷前準備動作の開始の指示と共に、前記設定取得部によって取得された前記印刷設定情報を前記プリンタに送信する、請求項1に記載されたプリンタ指示装置。
【請求項4】
前記プリンタは、インクを吐出するノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドを備え、
前記印刷前準備動作は、前記インクヘッドに対してクリーニングを行うヘッドクリーニング動作を含む、請求項1に記載されたプリンタ指示装置。
【請求項5】
前記印刷設定情報には、前記印刷画像を印刷する際に使用されるインクの色情報が少なくとも含まれ、
前記ノズルは、特色インクを吐出する特色ノズルを有し、
前記ヘッドクリーニング動作には、前記印刷設定情報の前記色情報に特色インクが含まれているときにおいて、前記特色ノズルが形成された前記インクヘッドに対する前記ヘッドクリーニング動作が含まれる、請求項4に記載されたプリンタ指示装置。
【請求項6】
前記プリンタは、
インクを吐出するノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドと、
インクが収容され、前記ノズルにインクを供給するインクタンクと、
前記ノズルと前記インクタンクとを接続し、インクが通るインク流路と、
を備え、
前記印刷前準備動作は、前記インク流路内のインクを入れ替える流路クリーニング動作を含む、請求項1に記載されたプリンタ指示装置。
【請求項7】
前記印刷設定情報には、前記印刷画像を印刷する際に使用されるインクの色情報が少なくとも含まれ、
前記ノズルは、特色インクを吐出する特色ノズルを有し、
前記流路クリーニング動作には、前記印刷設定情報の前記色情報に特色インクが含まれているときにおいて、前記特色ノズルに接続された前記インク流路内のインクを入れ替える前記流路クリーニング動作が含まれる、請求項6に記載されたプリンタ指示装置。
【請求項8】
前記プリンタは、
インクを吐出するノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドと、
インクが収容され、前記ノズルにインクを供給するインクタンクと、
前記ノズルと前記インクタンクとを接続し、インクを循環させる循環流路と、
を備え、
前記印刷準備動作は、前記循環流路を通じてインクを循環させる循環動作を含む、請求項1に記載されたプリンタ指示装置。
【請求項9】
前記印刷設定情報には、前記印刷画像を印刷する際に使用されるインクの色情報が少なくとも含まれ、
前記ノズルは、ホワイトインクを吐出するホワイトノズルであり、
前記インクタンクは、ホワイトインクが収容され、前記ホワイトノズルにホワイトインクを供給し、
前記循環流路は、前記ホワイトノズルと前記インクタンクとを接続し、ホワイトインクを循環させ、
前記循環動作には、前記印刷設定情報の前記色情報にホワイトインクが含まれているときにおいて、前記循環流路を通じてホワイトインクを循環させる前記循環動作が含まれる、請求項8に記載されたプリンタ指示装置。
【請求項10】
前記プリンタは、
媒体を支持する支持台と、
前記支持台に支持された媒体に吐出されたインクを所定の設定温度で乾燥させる乾燥装置と、
を備え、
前記印刷前準備動作は、前記設定温度になるように前記乾燥装置を駆動させる乾燥開始動作を含む、請求項1に記載されたプリンタ指示装置。
【請求項11】
前記プリンタは、
媒体を支持する支持台と、
インクを吐出するインクヘッドと、
前記支持台に支持された媒体と、前記インクヘッドとを相対的に2次元方向に移動させる移動機構と、
を備え、
前記印刷前準備動作は、前記支持台に対する前記インクヘッドの印刷開始位置である原点位置に前記インクヘッドを移動させる原点調整動作を含む、請求項1に記載されたプリンタ指示装置。
【請求項12】
請求項3に記載されたプリンタ指示装置と、
前記プリンタ指示装置と通信可能に接続された前記プリンタと、
を備え、
前記プリンタは、制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記指示部によって送信された前記印刷設定情報を受信する受信部と、
前記印刷設定情報に基づいて、前記プリンタが実行する前記印刷前準備動作の内容を決定する動作決定部と、
前記動作決定部によって決定された内容の前記印刷前準備動作を実行する印刷前実行部と、
を備えた、印刷システム。
【請求項13】
プリンタに対して印刷に関する指示を行うプリンタ指示方法であって、
前記プリンタに印刷させる印刷画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程において取得した前記印刷画像に対する印刷設定情報を取得する設定取得工程と、
前記画像取得工程において取得した前記印刷画像に対してRIP処理をして、前記プリンタに出力可能な印刷データに変換するデータ変換工程と、
前記設定取得工程において前記印刷設定情報を取得したタイミングから、前記データ変換工程において前記印刷データへの変換が完了するタイミングよりも前までの間に、前記設定取得工程において取得した前記印刷設定情報に対応した印刷前準備動作を開始することを前記プリンタに指示する指示工程と、
を包含する、プリンタ指示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ指示装置、印刷システムおよびプリンタ指示方法に関する。詳しくは、プリンタに対して印刷に関する指示を行うプリンタ指示装置、プリンタ指示装置とプリンタとを備えた印刷システム、および、プリンタに対して印刷に関する指示を行うプリンタ指示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、情報処理装置とプリンタとが相互に通信可能に接続された印刷システムが開示されている。情報処理装置では、印刷装置に対して印刷前通知を行った後に、印刷データを生成し、生成後、印刷データを印刷装置に送信する。プリンタ側では、印刷前通知を通知されたとき、所定の印刷前準備動作を実行する。
【0003】
このことによって、プリンタ側では、情報処理装置から印刷データが送信される前に、印刷前準備動作を完了することができる。よって、プリンタは、印刷データを受信した後に印刷前準備動作を行うことなく、印刷を開始することができる。
【0004】
例えば特許文献2には、プリンタに適切なタイミングでスタンバイ動作を実施させることができる動作モード制御装置が開示されている。この動作モード制御装置では、RIP処理をして印刷データを生成するために要する処理時間を演算し、かつ、プリンタが印刷前に行うスタンバイ動作に要する動作時間を取得する。そして、処理時間と動作時間とに基づいて、印刷データがプリンタに到達するのと略同時にスタンバイ動作が完了するように、プリンタにスタンバイ動作の開始を指示する。このことによって、プリンタは、印刷データが到達した後に、スタンバイ動作をすることなく印刷を開始することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-163225号公報
【特許文献2】特開2005-258957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1における印刷前準備動作、および、特許文献2におけるスタンドバイ動作などの印刷前準備動作は、印刷前に行われる動作であり、予め設定された動作である。しかしながら、プリンタで印刷する際、印刷対象となる印刷画像によっては、予め設定された印刷前準備動作を実行するのみでは、印刷の品質が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プリンタが印刷を開始するまでの待機時間を短縮しつつ、プリンタが印刷する際の印刷品質が低下することを抑制することが可能なプリンタ指示装置、印刷システムおよびプリンタ指示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプリンタ指示装置は、プリンタに対して印刷に関する指示を行うプリンタ指示装置である。前記プリンタ指示装置は、画像取得部と、設定取得部と、データ変換部と、指示部とを備えている。前記画像取得部は、前記プリンタに印刷させる印刷画像を取得する。前記設定取得部は、前記画像取得部によって取得された前記印刷画像に対する印刷設定情報を取得する。前記データ変換部は、前記画像取得部によって取得された前記印刷画像に対してRIP処理をして、前記プリンタに出力可能な印刷データに変換する。前記指示部は、前記設定取得部が前記印刷設定情報を取得するタイミングから、前記データ変換部による前記印刷データへの変換が完了するタイミングよりも前までの間に、前記設定取得部によって取得された前記印刷設定情報に対応した印刷前準備動作を開始することを前記プリンタに指示する。
【0009】
上記プリンタ指示装置によれば、印刷設定情報は、印刷画像に対して設定される情報である。この印刷設定情報に対応した印刷前準備動作を実行させることをプリンタに指示することで、印刷対象の印刷画像の印刷に対応した適切な印刷前準備動作を実行させることができる。よって、適切な印刷前準備動作をプリンタに実行させることができるため、印刷品質が低下することを抑制することができる。また、上記プリンタ指示装置によれば、印刷データへの変換が完了する前には、印刷前準備動作が開始される。そのため、印刷データへの変換が完了した後に印刷前準備動作が開始される場合と比較して、プリンタが印刷を開始するまでの待機時間を短縮することができる。
【0010】
本発明に係るプリンタ指示方法は、プリンタに対して印刷に関する指示を行うプリンタ指示方法である。前記プリンタ指示方法は、画像取得工程と、設定取得工程と、データ変換工程と、指示工程とを包含する。前記画像取得工程では、前記プリンタに印刷させる印刷画像を取得する。前記設定取得工程では、前記画像取得工程において取得した前記印刷画像に対する印刷設定情報を取得する。前記データ変換工程では、前記画像取得工程において取得した前記印刷画像に対してRIP処理をして、前記プリンタに出力可能な印刷データに変換する。前記指示工程では、前記設定取得工程において前記印刷設定情報を取得したタイミングから、前記データ変換工程において前記印刷データへの変換が完了するタイミングよりも前までの間に、前記設定取得工程において取得した前記印刷設定情報に対応した印刷前準備動作を開始することを前記プリンタに指示する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プリンタが印刷を開始するまでの待機時間を短縮しつつ、プリンタが印刷する際の印刷品質が低下することを抑制することが可能なプリンタ指示装置、印刷システムおよびプリンタ指示方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る印刷システムの概念図である。
図2】プリンタを示す正面図である。
図3図2のIII-III断面におけるプリンタの断面図である。
図4】キャリッジの底面の構成を模式的に示す図である。
図5A】第1インク供給機構を示す図である。
図5B】第2インク供給機構を示す図である。
図6】キャップユニットの正面図であり、キャップがインクヘッドに装着されていない状態を示す図である。
図7】キャップユニットの正面図であり。キャップがインクヘッドに装着されている状態を示す図である。
図8】ワイパーユニットの正面図である。
図9】実施形態に係る印刷システムのブロック図である。
図10】RIP処理の説明図である。
図11】印刷前準備動作の説明図である。
図12】印刷設定情報の説明図である。
図13】プリンタ指示方法を示すフローチャートである。
図14】印刷前準備動作の開始のタイミングを示したタイミングチャートである。
図15】印刷前準備動作実行方法を示すフローチャートである。
図16】変形例における印刷前準備動作の開始のタイミングを示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る印刷システム1の概念図である。図1に示すように、印刷システム1は、プリンタ10と、プリンタ指示装置100とを備えている。本実施形態に係る印刷システム1では、プリンタ指示装置100によって、プリンタ10で印刷される印刷対象の印刷画像を作成し、かつ、印刷画像に対してRIP処理を実施し、印刷データを作成する。プリンタ10は、プリンタ指示装置100によって作成された印刷データに基づいて、媒体5に印刷画像を印刷する。
【0015】
プリンタ10は、プリンタ指示装置100と通信可能に接続されている。本実施形態では、プリンタ10と、プリンタ指示装置100とは、インターネット200に接続されており、インターネット200を介して相互に通信可能である。以下、プリンタ10およびプリンタ指示装置100について順に説明する。
【0016】
図2は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。図3は、図2のIII-III断面におけるプリンタ10の断面図である。以下のプリンタ10に関する説明において、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいるユーザ、ここでは後述の操作パネル13(図2参照)と対向する位置にいるユーザから見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ10の正面にいるユーザがプリンタ10から遠ざかる方を前方、ユーザがプリンタ10に近づく方を後方とする。
【0017】
図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を示している。また、図面中の符号Yは主走査方向を示し、図面中の符号Xは副走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。副走査方向Xは平面視において主走査方向Yと交差(ここでは直交)した方向である。副走査方向Xは例えば前後方向である。ただし、これら方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0018】
プリンタ10は、いわゆるインクジェット方式のプリンタである。しかしながら、プリンタ10の印刷の方式は、インクジェット方式に限定されず、例えばドットインパクト方式のプリンタであってもよいし、レーザプリンタやサーマルプリンタであってもよい。プリンタ10は、いわゆるロールtoロールタイプのプリンタであり、後述の支持台18(図2参照)を副走査方向Xに移動させずに、支持台18に支持された媒体5を副走査方向Xに移動させるように構成されている。ただし、プリンタ10は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであり、支持台18が副走査方向Xに移動することで、媒体5も副走査方向Xに移動させるように構成されてもよい。また、プリンタ10は、いわゆるガントリータイプのプリンタであってもよく、支持台18に支持された媒体5自体は移動させずに、後述のインクヘッド35(図3参照)が主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動するものであってもよい。
【0019】
図2に示すように、プリンタ10は、媒体5に対して印刷を行うものである。媒体5は例えばロール状の記録紙であり、いわゆるロール紙である。なお、媒体5の種類などは特に限定されない。例えば媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。また、媒体5は、立体物であってもよい。
【0020】
本実施形態では、図2に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体11と、支持台18と、ガイドレール20と、キャリッジ22と、移動機構24と、インクヘッド35(図3参照)と、インク供給機構40(図5A図5B参照)とを備えている。
【0021】
プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プリンタ本体11には、脚12が設けられている。脚12は、プリンタ本体11を支持し、プリンタ本体11から下方に延びている。なお、図3では、脚12の図示は省略されている。
【0022】
図2に示すように、プリンタ本体11には、操作パネル13が設けられている。操作パネル13は、ユーザが印刷に関する操作を行うものである。ここでは、操作パネル13は、プリンタ本体11の右側の前面に設けられているが、操作パネル13の設置位置は特に限定されない。操作パネル13は、プリンタ10の各種設定の情報などが表示される表示画面14と、操作キー15とを有している。ユーザは、例えば操作キー15を操作することによって、表示画面14に各種設定の情報を表示したり、各種設定の情報を決定したりすることができる。なお、本実施形態では、操作キー15は、物理的な操作子(例えばボタン)によって構成されているが、例えば表示画面14上に設けられたタッチパネルによって実現されてもよい。
【0023】
図3に示すように、支持台18は、媒体5を支持する。支持台18に媒体5が支持された状態で、媒体5に対して印刷が行われる。ここでは、媒体5は支持台18の上面に載置される。支持台18の上面は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。
【0024】
本実施形態では、プリンタ10は、乾燥装置19を備えている。乾燥装置19は、支持台18に支持された媒体5に吐出されたインクを、所定の設定温度T50(図12参照)で乾燥させる装置である。なお、上記の設定温度T50の具体的な数値は特に限定されず、媒体5の種類、インクの種類などに応じて決定されるものである。乾燥装置19の種類は特に限定されず、例えばヒータである。乾燥装置19は、支持台18、および、支持台18に支持された媒体5を温めることで、媒体5に吐出されたインクを乾燥させる。本実施形態では、乾燥装置19は、支持台18に設けられている。詳しくは、乾燥装置19は、インクヘッド35よりも下流側(ここでは前側)の支持台18の部分の裏面に設けられている。ただし、乾燥装置19は、支持台18の上方に配置され、支持台18に支持された媒体5に吐出されたインクを上方から乾燥させてもよい。また、乾燥装置19は、支持台18に支持された媒体5に向けて送風することで、媒体5に吐出されたインクを乾燥させる装置であってもよい。本実施形態では、乾燥装置19の数は1つであるが、複数であってもよい。
【0025】
ガイドレール20は、支持台18よりも上方に配置され、かつ、支持台18の上面と平行になるように配置されている。図2に示すように、ガイドレール20は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール20には、キャリッジ22が係合している。キャリッジ22は、ガイドレール20に対して摺動可能に設けられている。キャリッジ22は、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0026】
移動機構24は、支持台18に支持された媒体5と、インクヘッド35(ここではキャリッジ22)とを相対的に2次元方向に移動させる機構である。ここでは、移動機構24は、支持台18に支持された媒体5と、インクヘッド35とを相対的に主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動させる。移動機構24の構成は特に限定されない。本実施形態では、移動機構24は、媒体搬送機構25と、ヘッド移動機構30とを有している。
【0027】
媒体搬送機構25は、支持台18に支持された媒体5を副走査方向Xに搬送する機構である。なお、媒体搬送機構25の構成は特に限定されない。媒体搬送機構25は、ピンチローラ26と、グリットローラ27と、フィードモータ28と、を備えている。ピンチローラ26は、支持台18の上方かつガイドレール20の下方に設けられ、図3に示すように、媒体5を上から押さえ付けるものである。ピンチローラ26は、キャリッジ22の少なくとも一部(ここでは前部)よりも後方に配置されている。グリットローラ27は、支持台18に設けられた円筒状の部材である。ここでは、グリットローラ27は、その上面部を露出させた状態で支持台18に埋設されている。グリットローラ27は、ピンチローラ26と対向している。図2に示すように、グリットローラ27は、フィードモータ28に接続されている。なお、図2では、ピンチローラ26が2つ配置されているが、実際には、複数のピンチローラ26が主走査方向Yに並んで配置されている。また、グリットローラ27も2つ配置されているが、実際には、ピンチローラ26の下方に配置されるようにして、複数のグリットローラ27が主走査方向Yに並んで配置されている。複数のグリットローラ27は、例えば主走査方向Yに延びたシャフト(図示せず)に設けられて連結されている。複数のグリットローラ27のうちの1つのグリットローラ27、または、上記シャフトにフィードモータ28が接続されている。
【0028】
ここでは、ピンチローラ26とグリットローラ27との間に媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ28が駆動する。フィードモータ28の駆動によって、上記シャフトと複数のグリットローラ27が回転し、支持台18に支持された媒体5は、副走査方向Xに搬送される。
【0029】
ヘッド移動機構30は、キャリッジ22およびインクヘッド35(図3参照)を主走査方向Yに移動させる機構である。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構30は、図2に示すように、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、ヘッドモータ33とを備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール20の左端部の周囲に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール20の右端部の周囲に設けられている。ベルト32は、無端状のベルトであり、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ22が取り付けられている。ここでは、右のプーリ31bには、ヘッドモータ33が接続されている。ヘッドモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことによって、キャリッジ22およびインクヘッド35は、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動する。
【0030】
図4は、キャリッジ22の底面の構成を模式的に示す図である。図4に示すように、インクヘッド35は、キャリッジ22に設けられている。インクヘッド35は、その底面を露出するように、キャリッジ22に支持されている。インクヘッド35の数は特に限定されないが、ここでは4つである。4つのインクヘッド35は、主走査方向Yに並んで配置されている。
【0031】
各インクヘッド35は、ノズル面36を有している。ノズル面36は、インクヘッド35の底面を構成している。ノズル面36には、インクが吐出される複数のノズル37が形成されている。各インクヘッド35において、ノズル37は、副走査方向Xに並んで配置されている。ここでは、副走査方向Xに並んだノズル37の列のことをノズル列38という。本実施形態では、1つのインクヘッド35において、ノズル列38の数は2つであるが、特に限定されない。1つのインクヘッド35におけるノズル列38の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0032】
ノズル37から吐出されるインクの色は特に限定されない。本実施形態では、ノズル列38毎に、プロセスカラーインクおよび特色インクのうちの何れかの色のインクが吐出される。プロセスカラーインクには、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどが含まれる。特色インクには、プロセスカラーインク以外の色のインクであり、例えばホワイトインク、クリアインク、プライマーインクなどが含まれる。ここで、ノズル37のうち、プロセスカラーインクを吐出するノズル37をプロセスカラーノズル37Aともいう。特色インクを吐出するノズル37を特色ノズル37Bともいう。特色ノズル37Bのうち、ホワイトインクを吐出するノズル37をホワイトノズル37Cともいう。ホワイトインク以外の特色インクのことを他の特色インクともいい、他の特色インクを吐出するノズル37を他の特色ノズル37Dともいう。
【0033】
本実施形態では、プロセスカラーノズル37Aによって構成されたノズル列38は4列であり、特色ノズル37Bによって構成されたノズル列38は4列である。特色ノズル37Bによって構成されたノズル列38のうち、ホワイトノズル37Cによって構成されたノズル列38は2列であり、他の特色ノズル37Dによって構成されたノズル列38は2列である。ただし、プロセスカラーノズル37A、特色ノズル37B、ホワイトノズル37C、他の特色ノズル37Dによって構成されたノズル列38の数は特に限定されない。
【0034】
図5A図5Bは、インク供給機構40を示す図である。インク供給機構40は、インクヘッド35に向かってインクを供給する機構である。ここでは、インク供給機構40は、ノズル列38毎に、ノズル37に対してインクを供給する。インク供給機構40は、ノズル列38毎に設けられている。ここでは、全てのインクヘッド35におけるノズル列38の数は8つであるため、インク供給機構40の数も8つである。
【0035】
本実施形態では、インク供給機構40は、第1インク供給機構40A(図5A参照)と、第2インク供給機構40B(図5B参照)とを有している。図5Aに示すように、第1インク供給機構40Aは、プロセスカラーノズル37A、および、他の特色ノズル37Dに対してインク(ここでは、プロセスカラーインク、他の特色インク)を供給する機構である。図5Bに示すように、第2インク供給機構40Bは、ホワイトノズル37Cに対してインク(ここではホワイトインク)を供給する機構である。
【0036】
図5Aに示すように、第1インク供給機構40Aは、インクタンク41Aと、インク流路42Aと、送液ポンプ43Aと、ダンパー44Aとを備えている。インクタンク41Aは、インクが貯留される容器である。インクタンク41Aは、例えばインクカートリッジやインクパウチなどである。プロセスカラーノズル37Aにインクを供給する場合、インクタンク41Aには、プロセスカラーインクが貯留されている。他の特色ノズル37Dにインクを供給する場合、インクタンク41Aには、他の特色インクが貯留されている。
【0037】
インク流路42Aは、インクタンク41Aと、インクヘッド35のノズル37(ここでは、プロセスカラーノズル37A、または他の特色ノズル37D)とを接続する流路であり、インクタンク41Aから供給されたインクが通る流路である。インク流路42Aは、枝分かれしておらず、インクを循環させる循環機能を有していない。ここでは、インク流路42Aの一端は、インクタンク41Aに接続され、インク流路42Aの他端は、ダンパー44Aを介してノズル37に接続されている。インク流路42Aの種類は特に限定されないが、インク流路42Aは、例えばチューブによって構成されている。
【0038】
送液ポンプ43Aは、インク流路42Aに設けられている。送液ポンプ43Aは、インクタンク41Aに貯留されたインクをインクヘッド35のノズル列38のノズル37に供給すると共に、接続先のノズル37からのインクの吐出に適した圧力に調整するためのポンプである。送液ポンプ43Aは、駆動時、インクタンク41Aからインクヘッド35のノズル37に向かってインクを送液する。送液ポンプ43Aの種類は限定されないが、送液ポンプ43Aは、例えばダイヤフラムポンプやチューブポンプなどである。
【0039】
ダンパー44Aは、インクの圧力変動を緩和して、ノズル37のインクの吐出動作を安定させるものである。ダンパー44Aは、ダンパー44Aに流入するインクの流量(言い換えると、ダンパー44A内の圧力)を検出する。そして、インクの流量の検出結果に基づいて、送液ポンプ43Aの駆動が制御される。ダンパー44Aは、インクヘッド35に接続されている。ここでは、ダンパー44Aは、インクヘッド35の上部に設けられている。ダンパー44Aの構成は特に限定されず、従来公知の構成を採用することができる。
【0040】
図5Bに示すように、第2インク供給機構40Bは、インクを循環させる循環機能を有しており、ホワイトインクなどのように比較的に沈殿し易いインクを供給する際に設けられる機構である。本実施形態では、第2インク供給機構40Bによって供給されるインクは、ホワイトインクであるが、特に限定されない。すなわち、循環させる対象となるインクは、ホワイトインクに限定されない。第2インク供給機構40Bは、インクタンク41Bと、循環流路42Bと、送液ポンプ43Bと、ダンパー44Bとを備えている。なお、第2インク供給機構40Bにおけるインクタンク41B、送液ポンプ43B、ダンパー44Bの構成は、それぞれ図5Aの第1インク供給機構40Aのインクタンク41A、送液ポンプ43A、ダンパー44Aの構成と同じであるため、詳しい説明は適宜省略する。ここでは、インクタンク41Bには、ホワイトインクが貯留されている。
【0041】
図5Bに示すように、循環流路42Bは、ホワイトインクが貯留されているインクタンク41Bと、インクヘッド35のホワイトノズル37Cとを接続し、ホワイトインクが通る流路である。循環流路42Bは、ホワイトインクを循環させることが可能に構成され、いわゆる循環機能を有している。循環流路42Bは、枝分かれした後に合流しており、循環している。
【0042】
循環流路42Bの構成は特に限定されない。本実施形態では、循環流路42Bは、順流路45aと、返流路45bとを有している。順流路45aは、インクタンク41Bからホワイトノズル37Cに向かってホワイトインクが流れる流路である。順流路45aは、インクタンク41Bとホワイトノズル37Cとに接続されている。順流路45aの一端(ここでは上流端)は、インクタンク41Bに接続され、順流路45aの他端(ここでは下流端)は、ダンパー44Bを介してホワイトノズル37Cに接続されている。
本実施形態では、順流路45aの途中部分に送液ポンプ43Bが設けられている。
【0043】
返流路45bは、インクタンク41B側に向かってホワイトインクが流れる流路である。ここでは、返流路45bは、順流路45aの上流端部と下流端部に接続されている。返流路45bの一端(ここでは上流端)は、順流路45aの上流端部に接続されている。ここでは、例えば順流路45aの上流端部には、三方弁45cが設けられており、三方弁45cに返流路45bの一端が接続されている。返流路45bの他端(ここでは下流端)は、順流路45aの下流端部に接続されている。ここでは、例えば順流路45aの下流端部には、三方弁45dが設けられており、三方弁45dに返流路45bの他端が接続されている。
【0044】
なお、本実施形態では、三方弁45c、45dには、返流路45bを開閉することが可能な弁(例えば電磁式の弁)が設けられてもよい。例えばインクタンク41Bから順流路45aを通じてホワイトノズル37Cにホワイトインクを供給する場合には、三方弁45c、45dが返流路45bを閉鎖しているとよい。例えば循環流路42Bにおいてホワイトインクを循環、すなわち返流路45bを通じてホワイトインクをインクタンク41B側に戻す場合には、三方弁45c、45dが返流路45bを開放しているとよい。
【0045】
図6図7は、キャップユニット50の正面図である。図6では、キャップ51がインクヘッド35に装着されていない状態が示されている。図7では、キャップ51がインクヘッド35に装着された状態が示されている。本実施形態では、プリンタ10は、キャップユニット50を備えている。キャップユニット50は、ノズル37を覆うものであり、かつ、インクヘッド35内のインクをノズル37から吸引するものである。図6に示すように、キャップユニット50は、キャップ51と、キャッピング機構52と、吸引ポンプ53とを備えている。
【0046】
キャップ51は、ノズル37を覆うようにインクヘッド35に装着可能なものである。ここで、「装着」とは、キャップ51がノズル37を覆うように、インクヘッド35に取り付けられている状態のことをいう。「装着」には、図7に示すように、キャップ51がインクヘッド35の下部に嵌まっている状態の他、キャップ51がノズル37を覆うように、キャップ51の端面(ここでは上端面)がノズル面36に接触している状態も含まれるものとする。
【0047】
本実施形態では、1つのインクヘッド35につき、1つのキャップ51が装着される。そのため、キャップ51の数は、インクヘッド35の数と同じ4つである。4つのキャップ51は、主走査方向Yに並んで配置されている。キャップ51は、上部が開口した箱状の形状を有している。なお、キャップ51を形成する材料の種類は特に限定されない。キャップ51の少なくともインクヘッド35と接触する部分は、例えばゴムなどの弾性材料によって形成されている。また、キャップ51の内部には、スポンジなどの吸収体(図示せず)が配置されていてもよい。キャップ51の上部の開口の形状は、インクヘッド35の外周部の形状に対応している。
【0048】
図6および図7に示すように、キャッピング機構52は、インクヘッド35に対してキャップ51を昇降させる機構である。キャッピング機構52は、インクヘッド35に対して、キャップ51を装着させたり、離間させたりする機構である。本実施形態では、キャッピング機構52は、複数のキャップ51同士の相対的な位置を変化させずに、複数のキャップ51を同時に昇降させるように構成されている。
【0049】
なお、キャッピング機構52の具体的な構成は特に限定されない。本実施形態では、キャッピング機構52は、支持部材55と、キャッピングモータ56を有している。支持部材55は、キャップ51を支持する部材である。ここでは、支持部材55は板状の部材である。板状の支持部材55を水平面に配置したとき、支持部材55に支持された複数のキャップ51のそれぞれの端面(ここでは上端面)は、水平方向に延びている。キャッピングモータ56は、支持部材55に接続されている。キャッピングモータ56が駆動することで、支持部材55が昇降する。この支持部材55の昇降に伴い、複数のキャップ51は同時に昇降する。
【0050】
吸引ポンプ53は、キャップ51に接続されている。ここでは、1つのキャップ51につき、1つの吸引ポンプ53が接続されている。そのため、吸引ポンプ53の数は、キャップ51の数と同じ4つである。吸引ポンプ53は、キャップ51内のインクや空気などを吸引する部材である。吸引ポンプ53の種類は特に限定されない。吸引ポンプ53は、例えば真空ポンプである。吸引ポンプ53は、例えば図示しないチューブを介してキャップ51の底面に接続されている。吸引ポンプ53は、駆動時には、対応するインクヘッド35に接続されたインク流路42A(図5A参照)または循環流路42B(図5B参照)内の負圧よりも低い負圧を形成するように構成されている。例えば、図7に示すように、キャップ51がインクヘッド35に装着された状態で吸引ポンプ53が駆動されたときには、インクヘッド35のノズル37からインクなどが吸い出される。吸引ポンプ53に吸引されたインクなどは、図示しないチューブなどを介して図示しない廃液タンクに廃棄される。
【0051】
本実施形態では、キャップ51は、ガイドレール20の右端部に位置するホームポジション(図示せず)に配置されている。そのため、ヘッド移動機構30によってインクヘッド35が主走査方向Yに移動することで、キャップ51に対するインクヘッド35の主走査方向Yにおける相対的な位置を変更することができる。インクヘッド35が主走査方向Yに移動することで、平面視においてノズル面36がキャップ51と重なる位置に、インクヘッド35を配置することができる。そして、平面視においてノズル面36がキャップ51に重なっている状態で、図7の矢印に示すように、キャップ51が上昇することで、インクヘッド35にキャップ51を装着させることができる。
【0052】
図8は、ワイパーユニット60の正面図である。図8に示すように、プリンタ10は、ワイパーユニット60を備えている。ワイパーユニット60は、キャップ51の近傍に配置されており、インクヘッド35よりも下方に配置されている。ワイパーユニット60は、インクヘッド35のノズル面36を拭う機構である。なお、ワイパーユニット60の具体的な構成は特に限定されない。本実施形態では、ワイパーユニット60は、ワイパー61と、回転軸62と、洗浄液槽63と、回転モータ64とを備えている。
【0053】
ワイパー61は、インクヘッド35のノズル面36を拭う部材である。ワイパー61は、副走査方向Xに延びる平板状の部材である。ワイパー61の副走査方向Xの長さは、インクヘッド35の副走査方向Xの長さよりも長く構成されている。ワイパー61は、例えばゴムで形成されている。ワイパー61の一端は回転軸62に接続されている。ワイパー61は、回転軸62を中心に回転可能に構成されている。回転軸62は、副走査方向Xに延びている。洗浄液槽63は、洗浄液が収容された容器であり、回転軸62の下方に配置されている。ワイパー61の先端が下方を向いたとき、ワイパー61の先端部は洗浄液槽63内に入り、洗浄液に浸される。このことによって、ワイパー61に付着したインクなどが除去されて、ワイパー61を洗浄することができる。回転モータ64は、回転軸62に接続され、回転軸62と共にワイパー61を回転させる。
【0054】
本実施形態では、ワイパー61の先端が上を向くような回転位置にワイパー61が配置されるとき、ワイパー61の先端部は、インクヘッド35のノズル面36よりもわずかに高い位置に配置される。そこで、ワイパー61をこのような回転位置に配置しつつ、インクヘッド35を主走査方向Yに移動させると、ワイパー61によってノズル面36を拭うことができる。
【0055】
図2に示すように、プリンタ10は、制御装置70を備えている。制御装置70は、印刷に関する制御と、後述の印刷前準備動作に関する制御などを行う装置である。制御装置70の構成は特に限定されない。制御装置70は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、プリンタ指示装置100などの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。ここでは、制御装置70は、プリンタ本体11の内部に設けられている。ただし、制御装置70は、必ずしもプリンタ本体11の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ本体11の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ10に設けられた制御基板(図示せず)と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。
【0056】
図9は、本実施形態に係る印刷システム1のブロック図である。図9に示すように、制御装置70は、操作パネル13(詳しくは表示画面14および操作キー15)、乾燥装置19、移動機構24(詳しくは、媒体搬送機構25のフィードモータ28、および、ヘッド移動機構30のヘッドモータ33)、インクヘッド35、インク供給機構40(詳しくは、第1インク供給機構40Aの送液ポンプ43A、および、第2インク供給機構40Bの送液ポンプ43B)、キャップユニット50(詳しくはキャッピング機構52のキャッピングモータ56と、吸引ポンプ53)、および、ワイパーユニット60(詳しくは回転モータ64)と通信可能に接続されている。制御装置70は、操作パネル13、乾燥装置19、移動機構24、インクヘッド35、インク供給機構40、キャップユニット50、および、ワイパーユニット60を制御可能に構成またはプログラムされている。
【0057】
以上、本実施形態に係るプリンタ10の構成について説明した。次に、図1に示すプリンタ指示装置100について説明する。プリンタ指示装置100は、プリンタ10に対して印刷に関する指示を行う装置である。図10は、RIP処理の説明図である。本実施形態では、プリンタ10を使用して媒体5に印刷する際、印刷データDT1(図10参照)に基づいて印刷が行われる。図10に示すように、この印刷データDT1は、媒体5に印刷する印刷対象である印刷画像P10に対してRIP(Raster Image Processor)処理することで得られるラスターデータまたはビットマップデータのことである。すなわち、印刷データDT1は、印刷画像P10をプリンタ10が出力可能な形式に変換したデータである。なお、印刷画像P10は、例えばPDF(Portable Document Format)形式で作成される。プリンタ指示装置100は、印刷画像P10に対してRIP処理をして、印刷データDT1を作成する。すなわち、プリンタ指示装置100は、印刷画像P10を印刷データDT1に変換する。そして、プリンタ指示装置100は、印刷データDT1をプリンタ10に送信することで、プリンタ10に対して印刷画像P10を媒体5に印刷することを指示する。
【0058】
図1に示すように、プリンタ指示装置100は、プリンタ10と別体に構成されている。ここでは、プリンタ指示装置100は、プリンタ10のプリンタ本体11の外部に設置されたコンピュータによって実現されている。プリンタ指示装置100を実現するコンピュータは、プリンタ10に対する専用のコンピュータであってもよいし、いわゆる汎用コンピュータであってもよい。なお、プリンタ指示装置100は、プリンタ本体11の内部に設けられてもよく、プリンタ10の制御装置70と一体的なものであってもよい。
【0059】
本実施形態では、図9に示すように、プリンタ指示装置100は、指示表示画面101と、指示操作機構102と、指示制御装置103とを備えている。指示表示画面101の種類は特に限定されないが、例えばデスクトップ型またはノート型のコンピュータのディスプレイである。指示操作機構102の種類も特に限定されない。指示操作機構102は、例えばコンピュータのキーボードおよびマウスである。ただし、指示操作機構102は、指示表示画面101に設けられたタッチパネルであってもよい。
【0060】
指示制御装置103は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えばCPUと、ROMと、RAMと、記憶装置などを備えている。指示制御装置103は、指示表示画面101および指示操作機構102と通信可能に接続されている。また、指示制御装置103は、プリンタ10の制御装置70と、インターネット200(図1参照)を介して通信可能に接続されている。
【0061】
本実施形態では、指示制御装置103には、RIP処理をするためのアプリケーションである専用のRIPアプリケーションがインストールされている。ユーザは、RIPアプリケーションを起動して指示表示画面101に表示させ、指示操作機構102を操作することで、RIPアプリケーションを操作する。このことによって、図10に示すように、例えば印刷画像P10に対してRIP処理が行われ、印刷データDT1が作成される。
【0062】
図11は、印刷前準備動作M1の説明図である。ところで、本実施形態では、印刷データDT1に基づいて印刷画像P10の印刷が開始される前において、プリンタ10は、印刷前準備動作M1を実行する。ここで、印刷前準備動作M1とは、プリンタ10が印刷を開始することができるために、事前に実行される動作のことである。印刷前準備動作M1には、プリンタ10が媒体5に印刷する際に印刷の品質に影響を与えるプリンタ10の動作が含まれる。なお、印刷前準備動作M1の具体例については後述する。
【0063】
従来では、プリンタ指示装置100によって印刷データDT1(図10参照)が作成され、作成された印刷データDT1がプリンタ10に送信された後に、印刷前準備動作M1(図11参照)がプリンタ10によって実行されていた。そして、プリンタ10によって印刷前準備動作M1が実行された後、プリンタ10は、印刷データDT1に基づいて印刷画像P10を媒体5に印刷する。ここで、プリンタ指示装置100によって印刷データDT1が作成されることに要する時間は、印刷画像P10の大きさや解像度によって変わるものであるが、例えば10分~15分程度のRIP処理時間T1(図14参照)を要する。従来では、プリンタ10は、RIP処理が行われている間は待機状態となり、基本的に動作しておらず、印刷データDT1を受信した後に、待機状態が解除されて印刷前準備動作M1が行われていた。この印刷前準備動作M1についても、具体的な印刷前準備動作M1の内容にもよるが、10分未満の印刷前準備時間T2(図14参照)を要する。このように、従来では、ユーザは、プリンタ10による印刷が開始されるまでに、上記のRIP処理時間T1と印刷前準備時間T2とを合わせた時間(すなわち、T1+T2)だけ待機しており、印刷が開始されるまでの時間を要していた。
【0064】
そこで、本実施形態では、プリンタ10による印刷が開始されるまでに要する時間を短くすることを実現する。本実施形態に係る印刷システム1では、プリンタ指示装置100によって、印刷前準備動作M1の内容を決定するための後述の印刷設定情報PS1を取得したタイミングから、印刷画像P10に対してRIP処理することによる印刷データDT1への変換が完了するタイミングよりも前までの間に、プリンタ10による印刷前準備動作M1を開始するように印刷前準備動作M1を実行する。ここで、「印刷データDT1への変換が完了するタイミングよりも前」とは、印刷データDT1への変換が完了したタイミングは除かれ、印刷データDT1への変換が完了したタイミングよりも前のことをいう。このことによって、プリンタ10による印刷が開始されるまでにユーザが待機する時間を、RIP処理時間T1と印刷前準備時間T2とを合わせた時間よりも短縮することができる。さらに、本実施形態に係る印刷システム1では、プリンタ指示装置100によって、印刷画像P10に対してRIP処理をすることによる印刷データDT1への変換が完了するタイミングまでに、印刷前準備動作M1を完了するように印刷前準備動作M1を開始する。このことによって、プリンタ10による印刷が開始されるまでにユーザが待機する時間を、RIP処理時間T1と印刷前準備時間T2とを合わせた時間から、RIP処理時間T1だけに短縮することができる。
【0065】
プリンタ10が印刷開始前に実行する印刷前準備動作M1の具体的な種類(ここでは内容)は特に限定されず、プリンタ10の機種に応じて設定されるものである。本実施形態では、図11に示すように、印刷前準備動作M1は、ヘッドクリーニング動作M11と、流路クリーニング動作M12と、循環動作M13と、乾燥開始動作M14と、原点調整動作M15とを含んでいる。
【0066】
ヘッドクリーニング動作M11とは、インクヘッド35に対してクリーニングを行う動作である。ここでは、ヘッドクリーニング動作M11は、吸引処理と、ワイピング処理とを有する。吸引処理とは、図7に示すように、インクヘッド35にキャップ51を装着させた状態でノズル37からインクを吸引する処理のことである。ここでは、吸引処理において、インクヘッド35にキャップ51を装着させるために、キャッピング機構52を制御してインクヘッド35を上昇させる。インクヘッド35にキャップ51が装着された状態で、吸引ポンプ53を駆動させる。この吸引ポンプ53の駆動によって、ノズル37からインクが吸引され、キャップ51内に排出される。
【0067】
ヘッドクリーニング動作M11において、吸引処理後、ワイピング処理が実行される。ワイピング処理では、図8に示すように、インクヘッド35のノズル面36をワイパー61で拭う処理である。ここでは、ワイパー61の先端が上を向いた状態で、インクヘッド35を主走査方向Yに移動させる。このとき、ワイパー61上をインクヘッド35が通過する際、ワイパー61がノズル面36に接触することによって、ノズル面36が拭われ、ノズル面36に付着したインクなどが除去される。
【0068】
なお、本実施形態では、ヘッドクリーニング動作M11において、吸引ポンプ53の駆動力を大、中、小の3段階に調整することが可能である。ヘッドクリーニング動作M11のうち、吸引ポンプ53の駆動力が大のときのヘッドクリーニング動作M11をパワフルクリーニング動作という。吸引ポンプ53の駆動力が中のときのヘッドクリーニング動作M11をミディアムクリーニング動作という。吸引ポンプ53の駆動力が小のときのヘッドクリーニング動作M11をノーマルクリーニング動作という。ここでは、プリンタ10にヘッドクリーニング動作M11を実行させるときに、印刷設定情報PS1(図12参照)に基づいて、パワフルクリーニング動作、ミディアムクリーニング動作、ノーマルクリーニング動作の何れかをプリンタ10が決定して実行してもよい。
【0069】
また、ヘッドクリーニング動作M1には、インクヘッド35のノズル37からキャップ51にインクを吐出するフラッシング処理が含まれてもよい。フラッシング処理が実行されることによって、インクヘッド35の内部に付着した異物や固まったインクを、インクヘッド35から排出させることができる。
【0070】
流路クリーニング動作M12とは、第1インク供給機構40Aのインク流路42A(図5A参照)内のインク、または、第2インク供給機構40Bの循環流路42B(図5B参照)内のインクを入れ替えて、インク流路42Aまたは循環流路42B内をクリーニングする動作のことである。本実施形態では、循環流路42Bは、本発明のインク流路の一例でもある。流路クリーニング動作M12では、インク流路42A内のインクを一度排出し(例えばキャップ51内に排出し)、インクタンク41Aから新しいインクをインク流路42A内に供給する。また、流路クリーニング動作M12では、循環流路42B内のインクを一度排出し、インクタンク41Bから新しいインクを循環流路42B内に供給する。なお、流路クリーニング動作M12において、インク流路42Aまたは循環流路42B内のインクを一度排出した後に、いわゆる洗浄液をインク流路42Aまたは循環流路42Bに供給してもよい。この場合、インク流路42Aまたは循環流路42B内の洗浄液を排出した後に、新しいインクをインク流路42Aまたは循環流路42B内に供給する。
【0071】
ここでは、図7に示すように、例えばインクヘッド35にキャップ51を装着させた状態で、インク供給機構40の送液ポンプ43A(図5A参照)、43B(図5B参照)を駆動させて、インク流路42A、循環流路42B内のインクをキャップ51に排出する。このとき、キャップ51に接続された吸引ポンプ53を駆動させてインクを吸引することで、キャップ51に排出させてもよい。また、送液ポンプ43A、43Bを駆動させることで、インクタンク41A、41Bに収容されたインクが、それぞれインク流路42A、循環流路42B内に入り込む。このことで、流路クリーニング動作M12において、インク流路42Aまたは循環流路42B内のインクを入れ替えることができる。
【0072】
循環動作M13は、図5Bに示すように、第2インク供給機構40Bにおいて、循環流路42Bを通じてホワイトインクを循環させて、ホワイトインクの沈殿を解消させる動作のことである。本実施形態では、循環動作M13では、第2インク供給機構40Bにおいて、三方弁45c、45dによって循環流路42Bの返流路45bを開放させた状態で、送液ポンプ43Bを駆動させる。このことによって、循環流路42Bにおいて、順流路45aでは、インクタンク41Bからホワイトノズル37C側に向かってホワイトインクが流れ、返流路45bでは、ホワイトノズル37Cからインクタンク41B側に向かってホワイトインクが戻るように流れる。このようにして、循環動作M13では、ホワイトインクを循環させて、ホワイトインクの沈殿を解消させることができる。なお、本実施形態では、循環動作M13は、循環流路42Bを通じてホワイトインクを循環させる動作であるが、第2インク供給機構40Bによって供給されるインクがホワイトインク以外の他のインクの場合には、他のインクを循環させる動作であってもよい。
【0073】
乾燥開始動作M14は、指定された設定温度T50(図12参照)になるように、図3に示す乾燥装置19を駆動させる動作である。詳しくは後述するが、設定温度T50は、プリンタ指示装置100によって指示される温度である。乾燥開始動作M14が実行されることで、プリンタ10の印刷開始前において、乾燥装置19が設定温度T50に設定された状態にすることができる。
【0074】
原点調整動作M15とは、インクヘッド35を原点位置P20(図12参照)に移動させる動作のことである。原点位置P20とは、支持台18に対するインクヘッド35の印刷開始位置である。ここでは、インクヘッド35を原点位置P20に移動させた後に、プリンタ10による印刷が開始される。なお、本実施形態では、原点位置P20は、プリンタ指示装置100によって指示される位置である。原点調整動作M15が実行されることで、プリンタ10の印刷開始前において、インクヘッド35を原点位置P20に移動させた状態にすることができる。
【0075】
本実施形態では、プリンタ10が印刷前準備動作M1を実行するタイミングは、プリンタ指示装置100によって指示される。図12は、印刷設定情報PS1の説明図である。印刷開始前において、プリンタ10が印刷前準備動作M1のうちのどの動作を実行するかは、図12に示す印刷設定情報PS1によって決定される。ここで、印刷設定情報PS1とは、プリンタ10によって印刷される印刷画像P10に対する情報であり、印刷画像P10に対して設定される情報である。印刷設定情報PS1は、プリンタ指示装置100によって設定される情報である。印刷設定情報PS1は、プリンタ指示装置100によって自動で設定される情報であってもよいし、プリンタ指示装置100を介してユーザが手動で設定される情報であってもよい。
【0076】
なお、印刷設定情報PS1に含まれる具体的な情報は特に限定されない。本実施形態では、図12に示すように、印刷設定情報PS1は、色情報PS11と、乾燥情報PS12と、原点情報PS13を少なくとも含んでいる。色情報PS11は、プリンタ10が印刷画像P10を印刷する際に使用されるインクの色に関する情報である。色情報PS11には、印刷画像P10で使用されるプロセスカラーインクや特色インクのうちの具体的なインクの色が設定されている。例えば印刷画像P10には、色情報PS11が含まれている。そのため、プリンタ指示装置100は、印刷画像P10を取得することで、色情報PS11を印刷画像P10から自動で取得することができる。なお、色情報PS11は、例えばユーザがプリンタ指示装置100の指示操作機構102(図9参照)を操作することによって手動で設定される情報であってもよい。
【0077】
乾燥情報PS12は、乾燥装置19の設定温度T50を含む情報である。乾燥情報PS12には、乾燥開始動作M14を実行する際の乾燥装置19の設定温度T50が設定されている。なお、乾燥情報PS12には、乾燥装置19が駆動する時間である乾燥時間に関する情報が含まれていてもよい。また、プリンタ10が複数の乾燥装置19を備えている場合、乾燥情報PS12には、乾燥装置19ごとの設定温度T50や乾燥時間に関する情報が含まれていてもよい。
【0078】
原点情報PS13は、インクヘッド35の原点位置P20が設定されている。原点調整動作M15では、原点情報PS13において設定された原点位置P20にインクヘッド35を移動させる。なお、乾燥情報PS12および原点情報PS13は、例えばユーザがプリンタ指示装置100の指示操作機構102(図9参照)を操作することで手動にて設定される情報であってもよいし、印刷画像P10に基づいてプリンタ指示装置100が自動で設定される情報であってもよい。また、乾燥情報PS12および原点情報PS13は、プリンタ指示装置100に予め設定された固定の情報であってもよい。
【0079】
なお、印刷設定情報PS1には、色情報PS11、乾燥情報PS12および原点情報PS13以外の情報が含まれてもよい。例えば印刷設定情報PS1には、印刷画像P10の解像度などが含まれてもよい。
【0080】
本実施形態では、プリンタ指示装置100の指示制御装置103は、プリンタ10に印刷前準備動作M1を実行することを指示する一連の制御のために、図9に示すように、指示記憶部110と、画像取得部112と、設定取得部114と、データ変換部116と、指示部118と、を備えている。プリンタ10の制御装置70は、印刷前準備動作M1を実行する一連の制御のために、記憶部72と、受信部74と、動作決定部76と、印刷前実行部78とを備えている。なお、上述した指示制御装置103の各部、および、制御装置70の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば指示制御装置103の各部、および、制御装置70の各部は、1つまたは複数のプロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0081】
次に、プリンタ指示装置100がプリンタ10に対して印刷前準備動作M1を実行することを指示するプリンタ指示方法について、図13のフローチャートに沿って説明する。このプリンタ指示方法は、プリンタ指示装置100(図1参照)によって具現化される。図13に示すように、本実施形態に係るプリンタ指示方法は、画像取得工程S101と、設定取得工程S103と、データ変換工程S105と、指示工程S107とを包含する。
【0082】
まず図13の画像取得工程S101では、プリンタ10に印刷させる対象となる印刷画像P10(図10参照)を取得する。画像取得工程S101は、図9の画像取得部112によって実現される。画像取得部112は、プリンタ10に印刷させる印刷画像P10を取得する。印刷画像P10は、上述のように例えばPDF形式で作成された画像である。例えばプリンタ指示装置100には、画像作成用のアプリケーションがインストールされており、印刷画像P10は、プリンタ指示装置100によって作成された画像であってもよい。また、印刷画像P10は、プリンタ指示装置100とは異なるパーソナルコンピュータで作成された画像であってもよい。
【0083】
画像取得部112が印刷画像P10を取得する取得先は、特に限定されない。例えば印刷画像P10は、図9の指示記憶部110に予め記憶されており、画像取得部112は、指示記憶部110から印刷画像P10を取得してもよい。また、プリンタ指示装置100は、印刷画像P10が記憶されたサーバ(図示せず)にインターネット200(図1参照)を介して接続されていてもよい。この場合、画像取得部112は、上記のサーバにアクセスをして、サーバから印刷画像P10を取得してもよい。
【0084】
次に、図13の設定取得工程S103では、印刷設定情報PS1を取得する。設定取得工程S103は、図9の設定取得部114によって実現される。本実施形態では、設定取得部114は、印刷画像P10に対する印刷設定情報PS1を取得する。印刷設定情報PS1は、画像取得部112によって取得された印刷画像P10に対して設定された情報である。言い換えると、印刷設定情報PS1は、印刷画像P10が変更されると変更され得る情報である。上述のように、印刷設定情報PS1には、図12に示すように、色情報PS11と、乾燥情報PS12と、原点情報PS13とが少なくとも含まれている。
【0085】
なお、設定取得部114が印刷設定情報PS1を取得する取得先は、特に限定されない。例えば印刷設定情報PS1は、印刷画像P10に基づいて、プリンタ指示装置100によって自動で設定されたり、図9に示す指示表示画面101に表示された設定画面(図示せず)をユーザが見ながら、指示操作機構102(図9参照)を操作することによって手動で設定されたりするものであり、一度、指示記憶部110に記憶されるものである。この場合、設定取得部114は、指示記憶部110から、印刷画像P10に対する印刷設定情報PS1を取得してもよい。また、印刷設定情報PS1が、プリンタ指示装置100にインターネット200(図1参照)を介して接続されたサーバ(図示せず)に記憶されている場合、設定取得部114は、サーバから印刷設定情報PS1を取得してもよい。
【0086】
次に、図13に示すデータ変換工程S105と指示工程S107が行われる。ここで、データ変換工程S105では、印刷画像P10を、プリンタ10に対応した印刷データDT1(図10参照)に変換する。指示工程S107では、プリンタ10に印刷前準備動作M1(図11参照)を実行することを指示する。図14は、印刷前準備動作M1の開始のタイミングを示したタイミングチャートを示す図である。本実施形態では、図14に示すように、データ変換工程S105における印刷データDT1への変換の開始のタイミングと、指示工程S107における印刷前準備動作M1の実行の指示のタイミングは、共に時間T11であり、同じである。
【0087】
図13のデータ変換工程S105は、図9のデータ変換部116によって実現される。データ変換部116は、図10に示すように、印刷画像P10に対してRIP処理をして、プリンタ10に出力可能な印刷データDT1に変換する。ここでは、データ変換部116は、RIP処理をすることでラスターデータまたはビットマップデータである印刷データDT1を作成する。なお、データ変換部116によって変換された印刷データDT1は、図9の指示記憶部110に記憶される。
【0088】
図13の指示工程S107は、図9の指示部118によって実現される。指示部118は、設定取得工程S103において印刷設定情報PS1を取得したタイミングから、データ変換部116による印刷データDT1への変換が完了するタイミングよりも前までの間に、印刷設定情報PS1に対応した印刷前準備動作M1を開始することをプリンタ10に指示する。すなわち、指示部118は、RIP処理された印刷データDT1が作成されるまでに、印刷前準備動作M1を開始することをプリンタ10に指示する。さらに、指示部118は、データ変換部116による印刷データDT1への変換が完了するタイミングまでに印刷前準備動作M1が完了するように、プリンタ10に印刷前準備動作M1を開始することを指示する。すなわち、指示部118は、データ変換部116によってRIP処理されて印刷データDT1の作成が完了するタイミングまでに、印刷前準備動作M1が完了するように、印刷前準備動作M1を実行することをプリンタ10に指示する。
【0089】
本実施形態では、図14に示すように、RIP処理をして印刷データDT1に変換するために要するRIP処理時間T1は、プリンタ10が印刷前準備動作M1を実行するために要する印刷前準備時間T2よりも長いと考えられている。そのため、指示部118は、データ変換部116によって印刷データDT1に変換することが開始されるタイミングで、印刷前準備動作M1を実行することをプリンタ10に指示する。例えば図14において、時間T11のときに、データ変換部116による印刷データDT1への変換が開始され、かつ、指示部118によってプリンタ10に対して印刷前準備動作M1の実行が指示される。
【0090】
なお、本実施形態では、指示部118による印刷前準備動作M1を開始することの指示は、印刷データDT1に変換することが開始されるタイミングよりも前に行われてもよいし、当該タイミングよりも後に行われてもよい。すなわち、印刷前準備動作M1を開始することの指示は、印刷設定情報PS1を取得したタイミングから、データ変換部116による印刷データDT1への変換が完了するタイミングよりも前までの間に行われるとよい。
【0091】
また、印刷前準備動作M1を開始する指示を行うタイミングは、印刷前準備動作M1を実行するために要する印刷前準備時間T2に基づいて決定されてもよい。例えば指示部118は、印刷設定情報PS1から、プリンタ10が印刷前準備動作M1を実行するために要する印刷前準備時間T2を推定する。そして、指示部118は、印刷データDT1への変換の完了のタイミングまでに、推定した印刷準備時間T2に基づいた印刷前準備動作M1が完了するように、印刷前準備動作M1の開始をプリンタ10に指示してもよい。
【0092】
本実施形態では、指示部118は、印刷前準備動作M1を実行することをプリンタ10に指示するときに、設定取得部114によって取得された印刷設定情報PS1(図12参照)をプリンタ10に送信する。なお、指示部118がプリンタ10に印刷前準備動作M1を実行することを指示し、かつ、印刷設定情報PS1を送信する具体的な方法は特に限定されない。例えば指示部118は、印刷前準備動作M1を実行することを指示するための専用の指示コマンドを生成し、当該指示コマンドをプリンタ10に送信することで、プリンタ10に印刷前準備動作M1を実行することを指示してもよい。また、上記の専用の指示コマンドには、印刷設定情報PS1が付与されてもよい。例えば指示コマンドには、色情報PS11における印刷画像P10で使用されるインクの色、乾燥情報PS12における乾燥装置19の設定温度T50、および、原点情報PS13における原点位置P20などがパラメータとして付与されてもよい。
【0093】
次に、プリンタ10が印刷前準備動作M1を実行する印刷前準備動作実行方法について、図15のフローチャートに沿って説明する。本実施形態に係る印刷前準備動作実行方法は、図15に示すように、受信工程S201と、動作決定工程S203と、印刷前実行工程S205とを包含する。印刷前準備動作実行方法は、プリンタ10の制御装置70(図9参照)によって実現される。
【0094】
まず図15の受信工程S201では、プリンタ指示装置100の指示部118によって送信された印刷設定情報PS1を受信する。受信工程S201は、図9のプリンタ10の受信部74によって実現される。本実施形態では、受信部74は、図13の指示工程S107において指示部118から送信された印刷設定情報PS1を受信する。また、受信部74は、印刷設定情報PS1と共に、印刷前準備動作M1を実行する指示を受信する。本実施形態では、指示部118は、印刷設定情報PS1が付与された指示コマンドを送信するため、受信部74は、指示部118から送信された指示コマンドを受信することで、印刷設定情報PS1を受信する。なお、受信部74によって受信した印刷設定情報PS1は、図9の記憶部72に記憶される。
【0095】
次に、図15の動作決定工程S203では、プリンタ10が実行する印刷前準備動作M1の内容を決定する。ここでは、動作決定工程S203は、図9のプリンタ10の動作決定部76によって実現される。本実施形態では、プリンタ指示装置100から印刷設定情報PS1が送信されるが、印刷前準備動作M1の具体的な内容は、プリンタ指示装置100から送信されない。ただし、印刷前準備動作M1の具体的な内容は、プリンタ指示装置100から送信されてもよい。動作決定部76は、受信部74が受信した印刷設定情報PS1に基づいて、プリンタ10が実行する印刷前準備動作M1の内容を決定する。動作決定部76は、印刷設定情報PS1の内容に応じて、図11に示すように、印刷前準備動作M1に含まれるヘッドクリーニング動作M11と、流路クリーニング動作M12と、循環動作M13と、乾燥開始動作M14と、原点調整動作M15とのうちのどの動作を実行するかを決定する。なお、動作決定部76によって決定される印刷前準備動作M1の数は、1つに限定されず複数であってもよい。
【0096】
なお、動作決定部76によって印刷前準備動作M1の内容を決定する具体的な方法は特に限定されない。動作決定部76は、印刷設定情報PS1の色情報PS11に基づいて、印刷前準備動作M1として、ヘッドクリーニング動作M11、流路クリーニング動作M12、循環動作M13を実行するか否かを決定する。例えば色情報PS11にプロセスカラーインクが含まれている場合には、動作決定部76は、プロセスカラーノズル37A(図4参照)が形成されたインクヘッド35に対して、ヘッドクリーニング動作M11または流路クリーニング動作M12を実行させることを決定する。また、色情報PS11に特色インクが含まれているときには、動作決定部76は、特色ノズル37B(図4参照)が形成されたインクヘッド35に対して、ヘッドクリーニング動作M11または流路クリーニング動作M12を実行させることを決定する。
【0097】
このとき、ヘッドクリーニング動作M11と、流路クリーニング動作M12のどちらかを実行、または両方を実行するかは、プリンタ10毎に予め設定されているとよい。また、色情報PS11において設定された色のインクの粘度に応じて、ヘッドクリーニング動作M11の強度、すなわち上述したパワフルクリーニング動作、ミディアムクリーニング動作、ノーマルクリーニング動作の何れかが決定されてもよい。例えば粘度が所定の第1基準粘度よりも高い色のインクが色情報PS11に設定されている場合には、動作決定部76は、強度が高いヘッドクリーニング動作(例えばパワフルクリーニング動作)を実行することを決定してもよい。例えば粘度が、所定の第2基準粘度(例えば第1基準粘度よりも低い第2基準粘度)よりも低い色のインクが色情報PS11に設定されている場合には、動作決定部76は、強度が低いヘッドクリーニング動作(例えばノーマルクリーニング動作)を実行することを決定してもよい。
【0098】
本実施形態では、動作決定部76は、印刷設定情報PS1の色情報PS11に基づいて、色情報PS11にホワイトインクが含まれている場合には、ホワイトノズル37Cに接続される循環流路42B(図5B参照)を通じてホワイトインクを循環させる循環動作M13を実行させることを決定する。
【0099】
動作決定部76は、印刷設定情報PS1の乾燥情報PS12に基づいて、乾燥開始動作M14の設定温度T50(図12参照)を決定する。図12に示すように、乾燥情報PS12には、乾燥装置19に対する設定温度T50が設定されている。そのため、動作決定部76は、乾燥情報PS12に設定された設定温度T50で乾燥開始動作M14を実行させることを決定する。
【0100】
動作決定部76は、印刷設定情報PS1の原点情報PS13に基づいて、原点調整動作M15の原点位置P20を決定する。ここで、原点情報PS13には、インクヘッド35の原点位置P20が設定されている。そのため、動作決定部76は、原点情報PS13に設定された原点位置P20にインクヘッド35を移動させる原点調整動作M15を実行させることを決定する。以上のようにして、図15の動作決定工程S203において、動作決定部76によって印刷前準備動作M1の具体的な内容が決定される。
【0101】
次に、図15の印刷前実行工程S205では、動作決定工程S203において決定した内容の印刷前準備動作M1を実行する。ここでは、印刷前実行工程S205は、図9の印刷前実行部78によって実現される。印刷前実行部78は、動作決定部76によって決定された内容の印刷前準備動作M1を実行する。
【0102】
例えば印刷前実行部78は、印刷前準備動作M1として、動作決定部76によって決定されたヘッドクリーニング動作M11または流路クリーニング動作M12を実行する。ここでは、色情報PS11に設定された色のインクに応じて、印刷前実行部78は、インクヘッド35に対してヘッドクリーニング動作M11または流路クリーニング動作M12を実行する。例えば色情報PS11にプロセスカラーインクが含まれている場合には、印刷前実行部78は、プロセスカラーノズル37A(図4参照)が形成されたインクヘッド35に対して、ヘッドクリーニング動作M11または流路クリーニング動作M12を実行する。また、色情報PS11に特色インクが含まれているときには、印刷前実行部78は、特色ノズル37B(図4参照)が形成されたインクヘッド35に対して、ヘッドクリーニング動作M11または流路クリーニング動作M12を実行する。
【0103】
印刷前実行部78は、色情報PS11にホワイトインクが含まれているときには、印刷前準備動作M1として、ホワイトノズル37Cに接続された循環流路42B(図5B参照)に対して循環動作M13を実行する。
【0104】
また印刷前実行部78は、動作決定部76によって決定された設定温度T50、すなわち乾燥情報PS12に設定された設定温度T50で乾燥装置19を駆動させる乾燥開始動作M14を実行する。印刷前実行部78は、動作決定部76によって決定された原点位置P20、すなわち原点情報PS13に設定された原点位置P20にインクヘッド35を移動させる原点調整動作M15を実行する。
【0105】
本実施形態では、印刷前実行部78は、動作決定部76によって決定された印刷前準備動作M1の内容に応じて、図11に示すヘッドクリーニング動作M11と、流路クリーニング動作M12と、循環動作M13と、乾燥開始動作M14と、原点調整動作M15との中から、1つまたは複数の動作を順に実行する。複数の印刷前準備動作M1を実行するときの順番は特に限定されず、例えば予め定められた順番で実行される。
【0106】
本実施形態では、図14において、時間T11のときに、プリンタ指示装置100において印刷データDT1の変換が開始されると共に、プリンタ10に対して印刷前準備動作M1を実行することが指示される。プリンタ10側では、時間T11においてプリンタ指示装置100から指示された後、印刷設定情報PS1に基づいて印刷前準備動作M1の内容が決定され、決定された印刷前準備動作M1が順に実行される。なお、印刷前準備動作M1の内容を決定する時間は、僅かな時間であり、プリンタ指示装置100から指示された時間T11とほぼ同じタイミングである。
【0107】
図14において、時間T12のときに、印刷前準備動作M1が全て完了する。本実施形態では、時間T12のときには、印刷データDT1の変換が完了しておらず、時間T12よりも遅い時間T13において、印刷データDT1の変換が完了する。そのため、印刷データDT1の変換が完了したときには、プリンタ10による印刷前準備動作M1は完了している。
【0108】
ここでは、印刷データDT1の変換が完了した時間T13において、プリンタ指示装置100からプリンタ10に対して印刷データDT1が送信される。このとき、プリンタ10では、印刷前準備動作M1が完了しているため、印刷データDT1を受信すると、印刷前準備動作M1を実行することなく、図14に示すように、時間T13において、印刷データDT1に基づいた印刷画像P10の印刷を開始することができる。
【0109】
以上、本実施形態では、プリンタ指示装置100は、プリンタ10に対して印刷に関する指示を行う装置である。図9に示すように、プリンタ指示装置100は、画像取得部112と、設定取得部114と、データ変換部116と、指示部118とを備えている。画像取得部112は、図13の画像取得工程S101において、プリンタ10に印刷させる印刷画像P10を取得する。設定取得部114は、図13の設定取得工程S103において、画像取得部112によって取得された印刷画像P10に対する印刷設定情報PS1を取得する。データ変換部116は、図13のデータ変換工程S105において、画像取得部112によって取得された印刷画像P10に対してRIP処理をして、プリンタ10に出力可能な印刷データDT1に変換する。指示部118は、図13の指示工程S107において、設定取得部114が印刷設定情報PS1を取得するタイミングから、データ変換部116による印刷データDT1への変換が完了するタイミングよりも前までの間に、設定取得部114によって取得された印刷設定情報PS1に対応した印刷前準備動作M1を開始することをプリンタ10に指示する。
【0110】
ここで、印刷設定情報PS1は、印刷画像P10に対して設定される情報であり、印刷画像P10を印刷するために適した印刷設定情報である。この印刷設定情報PS1に対応した印刷前準備動作M1を実行させることをプリンタ10に指示することで、印刷対象の印刷画像P10の印刷に対応した適切な印刷前準備動作M1を実行させることができる。よって、適切な印刷前準備動作M1をプリンタ10に実行させることができるため、印刷品質が低下することを抑制することができる。また、本実施形態では、印刷データDT1への変換が完了する前には、印刷前準備動作M1が開始される。そのため、印刷データDT1への変換が完了した後に印刷前準備動作M1が開始される場合と比較して、プリンタ10が印刷を開始するまでの待機時間を短縮することができる。
【0111】
本実施形態では、指示部118は、データ変換部116による印刷データDT1への変換が完了するタイミング(図14では、時間T13のタイミング)までに印刷前準備動作M1が完了するように、印刷前準備動作M1を開始することをプリンタ10に指示する。このことによって、印刷データDT1への変換が完了する時間T13までに、印刷前準備動作M1を完了させることができる。よって、プリンタ10では、印刷データDT1を受信したときには、印刷前準備動作M1が完了しているため、印刷前準備動作M1の実行を待つことなく、印刷データDT1に基づいた印刷を開始することができる。
【0112】
本実施形態では、指示部118は、印刷前準備動作M1の開始の指示と共に、設定取得部114によって取得された印刷設定情報PS1(図12参照)をプリンタ10に送信する。このことによって、プリンタ10は、印刷設定情報PS1を取得することができる。そして、プリンタ10側において、印刷設定情報PS1に対応した印刷前準備動作M1を決定することができる。
【0113】
本実施形態では、図1に示すように、印刷システム1は、プリンタ指示装置100と、プリンタ指示装置100と通信可能に接続されたプリンタ10とを備えている。図9に示すように、プリンタ10は、制御装置70を備えている。制御装置70は、受信部74と、動作決定部76と、印刷前実行部78とを備えている。受信部74は、図15の受信工程S201において、指示部118によって送信された印刷設定情報PS1を受信する。動作決定部76は、図15の動作決定工程S203において、印刷設定情報PS1に基づいて、プリンタ10が実行する印刷前準備動作M1の内容を決定する。印刷前実行部78は、図15の印刷前実行工程S205において、動作決定部76によって決定された内容の印刷前準備動作M1を実行する。このように、印刷設定情報PS1に対応した内容の印刷前準備動作M1を実行することで、印刷画像P10の印刷に適した印刷前準備動作M1をプリンタ10が実行することができる。よって、印刷品質が低下し難くすることができる。
【0114】
本実施形態では、印刷前準備動作M1は、インクヘッド35に対してクリーニングを行うヘッドクリーニング動作M11(図12参照)を含んでいる。ヘッドクリーニング動作M11には、印刷設定情報PS1の色情報PS11に特色インクが含まれているときにおいて、特色ノズル37Bが形成されたインクヘッド35(図4参照)に対するヘッドクリーニング動作M11が含まれる。また、印刷前準備動作M1は、インク流路42A(図5A参照)または循環流路42B(図5B参照)内のインクを入れ替える流路クリーニング動作M12(図11参照)を含んでいる。流路クリーニング動作M12には、印刷設定情報PS1の色情報PS11に特色インクが含まれているときにおいて、特色ノズル37Bに接続されたインク流路42Aまたは循環流路42B内のインクを入れ替える流路クリーニング動作M12が含まれる。ここで、ヘッドクリーニング動作M11および流路クリーニング動作M12は、印刷品質に影響を与える動作であり、適宜実行されることで印刷品質が向上することがあり得る。よって、印刷前準備動作M1として、ヘッドクリーニング動作M11または流路クリーニング動作M12がプリンタ10によって適宜実行されることで、印刷品質が低下することをより抑制することができる。また、特色インクは、比較的に粘度が高く、当該粘度に起因して印刷品質に影響を与えることがあり得る。そこで、色情報PS11に特色インクが含まれているときには、特色ノズル37Bを有するインクヘッド35に対して、ヘッドクリーニング動作M11または流路クリーニング動作M12を実行する。よって、特色ノズル37Bに対してクリーニングが行われた後の状態で印刷が開始されるため、特色インクに起因して印刷品質が低下することを抑制することができる。
【0115】
本実施形態では、図11に示すように、印刷前準備動作M1は、循環流路42B(図5B参照)を通じてインクを循環させる循環動作M13を含んでいる。循環動作M13には、印刷設定情報PS1の色情報PS11にホワイトインクが含まれているときにおいて、循環流路42Bを通じてホワイトインクを循環させる循環動作M13が含まれる。このように、循環動作M13を実行することで、インクの沈殿を解消した状態で印刷が開始されるため、印刷品質が低下し難い。特に、ホワイトインクは、他の色のインクと比較して沈殿し易いインクである。仮にホワイトインクが沈殿した状態で印刷が開始されると、ホワイトインクに濃度のムラが発生し、印刷品質が低下することがあり得る。そこで、本実施形態では、色情報PS11にホワイトインクが含まれているときには、印刷前準備動作M1として、ホワイトインクを循環させる循環動作M13を実行する。このことで、ホワイトインクの沈殿を解消することができる。そして、ホワイトインクの沈殿が解消された状態で印刷が開始されるため、印刷品質が低下し難くすることができる。
【0116】
本実施形態では、プリンタ10は、支持台18に支持された媒体5に吐出されたインクを所定の設定温度T50(図12参照)で乾燥させる乾燥装置19(図3参照)を備えている。図11に示すように、印刷前準備動作M1は、設定温度T50になるように乾燥装置19を駆動させる乾燥開始動作M14を含んでいる。このことによって、印刷データDT1への変換が完了する前に、指定された設定温度T50で乾燥装置19を駆動させることができる。よって、プリンタ10が印刷データDT1を受信したときには、乾燥装置19が駆動を開始している状態にすることができるため、印刷データDT1を受信してから、プリンタ10が印刷を開始するまでの待機時間を短縮することができる。
【0117】
本実施形態では、支持台18に支持された媒体5と、インクヘッド35とは、移動機構24(図9参照)によって相対的に2次元方向に移動するように構成されている。図11に示すように、印刷前準備動作M1は、支持台18に対するインクヘッド35の印刷開始位置である原点位置P20(図12参照)にインクヘッド35を移動させる原点調整動作M15を含んでいる。図12に示すように、印刷設定情報PS1には、原点位置P20が設定された原点情報PS13が含まれている。このことによって、印刷データDT1への変換が完了する前に、指定された原点位置P20にインクヘッド35を移動させることができる。よって、プリンタ10が印刷データDT1を受信したときには、インクヘッド35の原点位置P20への移動を開始させた状態にすることができるため、印刷データDT1を受信してから、プリンタ10が印刷を開始するまえの待機時間を短縮することができる。
【0118】
なお、本実施形態では、図14に示すように、RIP処理をして印刷データDT1に変換するために要するRIP処理時間T1は、プリンタ10が印刷前準備動作M1を実行するために要する印刷前準備時間T2よりも長い。しかしながら、RIP処理時間が印刷前準備時間よりも短くても、本発明の技術を適用することが可能である。
【0119】
図16は、変形例における印刷前準備動作M1の開始のタイミングを示したタイミングチャートである。図16では、時間T20は、設定取得部114によって印刷設定情報PS1が取得されたタイミングである。時間T21は、印刷データDT1への変換が開始されるタイミングであり、時間T23は、印刷データDT1への変換が完了したタイミングである。そのため、図16におけるRIP処理時間T1Aは、時間T21から時間T23までの時間である。ここで、印刷前準備動作M1は、印刷設定情報PS1を取得したタイミングの時間T20から、印刷データDT1への変換が完了するタイミングの時間T23よりも前のタイミングまでの間の時間T22のときに開始される。そして、印刷前準備動作M1は、時間T23よりも後の時間T24のタイミングで完了する。なお、プリンタ10による印刷は、時間T24のタイミングで開始される。図16における印刷前準備時間T2Aは、時間T22から時間T24までの時間である。
【0120】
ここで、RIP処理時間T1Aは、印刷前準備時間T2Aよりも短い。このような場合であっても、印刷前準備動作M1が、印刷データDT1への変換が完了する前までに開始されることで、プリンタ10が印刷を開始するまでの待機時間を短縮することができる。図16の一例では、印刷データDT1への変換が完了した後に印刷前準備動作M1が開始される場合と比較して、RIP処理時間T1Aと印刷前準備時間T2Aとが重なる時間T22から時間T23までの間だけ、プリンタ10の待機時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 印刷システム
10 プリンタ
19 乾燥装置
24 移動機構
35 インクヘッド
36 ノズル面
37 ノズル
37B 特色ノズル
37C ホワイトノズル
42A インク流路
42B 循環流路
50 キャップユニット
51 キャップ
60 ワイパーユニット
61 ワイパー
70 制御装置
74 受信部
76 動作決定部
78 印刷前実行部
100 プリンタ指示装置
112 画像取得部
114 設定取得部
116 データ変換部
118 指示部
DT1 印刷データ
M1 印刷前準備動作
P10 印刷画像
PS1 印刷設定情報
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16