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特開2024-107960固定部材、固定部材セットおよび補強部材の打設方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107960
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】固定部材、固定部材セットおよび補強部材の打設方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20240802BHJP
   E21D 20/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
E21D11/40 Z
E21D20/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012174
(22)【出願日】2023-01-30
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】593089046
【氏名又は名称】青木あすなろ建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517068704
【氏名又は名称】遠州スプリング有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 彬
(72)【発明者】
【氏名】粟屋 紘介
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155FA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡便な構成であり、装着の手間も少ない固定部材を提供する。
【解決手段】固定部材100は、補強部材の周方向に湾曲する第1湾曲部と一端および他端とを含み、補強部材の外周面を把持する第1把持部11と、周方向に湾曲する第2湾曲部と一端および他端とを含み、補強部材の外周面を把持する第2把持部12と、所定の配列方向に沿って第1把持部と第2把持部との間に位置し、周方向に湾曲する第3湾曲部と一端および他端とを含み、補強部材の外周面を把持する第3把持部13と、第1把持部の一端と第3把持部の一端とを連結する第1連結部21と、第2把持部の他端と第3把持部の他端とを連結する第2連結部22と、第1把持部の他端から、第3把持部の一端と他端とを通る線分の中点を通り、配列方向に直交する基準直線から離れる方向に突出する第1突出部41と第2把持部の一端から基準直線から離れる方向に突出する第2突出部42とを具備する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を補強するために当該地盤に打設される軸状の補強部材の外周面に装着される部材であって、
前記補強部材の周方向に沿うように湾曲する第1湾曲部と一端および他端とを含み、当該補強部材の外周面を把持する第1把持部と、
前記周方向に沿うように湾曲する第2湾曲部と一端および他端とを含み、前記補強部材の外周面を把持する第2把持部と、
所定の配列方向に沿って前記第1把持部と前記第2把持部との間に位置し、前記周方向に沿うように湾曲する第3湾曲部と一端および他端とを含み、前記補強部材の外周面を把持する第3把持部と、
前記第1把持部の一端と前記第3把持部の一端とを連結する第1連結部と、
前記第2把持部の他端と前記第3把持部の他端とを連結する第2連結部と、
前記第1把持部の他端から、前記第3把持部の一端と他端とを通る線分の中点を通り、前記配列方向に直交する基準直線から離れる方向に突出する第1突出部と、
前記第2把持部の一端から、前記基準直線から離れる方向に突出する第2突出部とを具備し、
前記第1把持部の一端および前記第2把持部の一端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記第3把持部の一端と同じ側にあり、
前記第1把持部の他端および前記第2把持部の他端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記第3把持部の他端と同じ側にある
固定部材。
【請求項2】
前記第1把持部の他端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線と当該第1把持部とが交差する部分に前記第1把持部の一端よりも近い位置にあり、
前記第2把持部の一端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線と当該第2把持部とが交差する部分に前記第2把持部の他端よりも近い位置にある
請求項1の固定部材。
【請求項3】
前記第1突出部と前記第2突出部とは、直線状である
請求項1の固定部材。
【請求項4】
前記基準直線に平行な方向からみたときに、
前記第1突出部は、0°より大きく60°以下の角度で前記第1把持部の他端から前記第3把持部側に傾斜し、
前記第2突出部は、0°より大きく60°以下の角度で前記第2把持部の一端から前記第3把持部とは反対側に傾斜する
請求項3の固定部材。
【請求項5】
前記第1突出部は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜し、
前記第2突出部は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜する
請求項3の固定部材。
【請求項6】
前記補強部材に装着された状態において、前記配列方向からみたときに、前記第1突出部と前記第2突出部とは平行な方向に突出する
請求項5の固定部材。
【請求項7】
前記第3湾曲部は、円弧状であって、
前記配列方向からみたときに、前記第3湾曲部の内側で確定される円の中心と前記第1連結部の先端とを通る直線と、前記中心と前記第2連結部の先端とを通る直線とがなす角度は、30°以上180°以下である
請求項1の固定部材。
【請求項8】
前記第1把持部と前記第3把持部との間隔は、前記基準直線と前記配列方向に平行な直線とを含む平面から前記第1突出部側に向かって連続的に大きくなり、
前記第2把持部と前記第3把持部との間隔は、前記平面から前記第2突出部側に向かって連続的に大きくなる
請求項1の固定部材。
【請求項9】
前記第1突出部および前記第2突出部の長さは、15~150mmである
請求項1の固定部材。
【請求項10】
一連の線材からなる
請求項1の固定部材。
【請求項11】
前記線材は、表面が亜鉛で形成された線材である
請求項10の固定部材。
【請求項12】
地盤を補強するために当該地盤に打設される軸状の補強部材の外周面に装着される部材であって、
前記補強部材の周方向に沿うように湾曲する第1湾曲部と一端および他端とを含み、当該補強部材の外周面を把持する第1把持部と、
前記周方向に沿うように湾曲する第2湾曲部と一端および他端とを含み、前記補強部材の外周面を把持する第2把持部と、
所定の配列方向に沿って前記第1把持部と前記第2把持部との間に位置し、前記周方向に沿うように湾曲する第3湾曲部と一端および他端とを含み、前記補強部材の外周面を把持する(2N-1:Nは1以上の整数)個の第3把持部と、
前記第1把持部の一端と、前記(2N-1)個の第3把持部のうち当該第1把持部に隣接する第3把持部の一端とを連結する第1連結部と、
前記第2把持部の他端と、前記(2N-1)個の第3把持部のうち当該第2把持部に隣接する第3把持部の他端とを連結する第2連結部と、
相互に隣接する2個の第3把持部の一端同士を連結する(N-1)個の第3連結部と、 相互に隣接する2個の第3把持部の他端同士を連結する(N-1)個の第4連結部と、 前記第1把持部の他端から、前記第3把持部の一端と他端とを通る線分の中点を通り、前記配列方向に直交する基準直線から離れる方向に突出する第1突出部と、
前記第2把持部の一端から、前記基準直線から離れる方向に突出する第2突出部とを具備し、
前記第3連結部と前記第4連結部とは、前記配列方向に沿って交互に位置し、
前記第1把持部の一端および前記第2把持部の一端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記各第3把持部の一端と同じ側にあり、
前記第1把持部の他端および前記第2把持部の他端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記各第3把持部の他端と同じ側にある
固定部材。
【請求項13】
K個の貫通孔が形成された板状の保持部材と、
請求項1または請求項12のK個の固定部材とを具備し、
前記K個の貫通孔のそれぞれに前記K個の固定部材の全長方向における前記第1把持部の他端から前記第2把持部の一端までの間の部分を嵌め込むことで、前記K個の固定部材が前記保持部材に保持されている 固定部材セット。
【請求項14】
前記第1突出部および前記第2突出部に装着可能であり、地盤との接触面積を大きくするための補助部材を含む
請求項1または請求項12の固定部材。
【請求項15】
補強部材の打設方法であって、
請求項1または請求項12の固定部材が装着された補強部材を充填材が充填された穿孔内に当該充填材が硬化する前に挿入する工程を含む
打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を補強するための補強部材を固定するための固定部材の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の工事において地盤(例えば地山や岩盤)を補強するために補強部材(例えばロックボルトやグラウンドアンカー)が用いられている。例えば、山岳トンネルを施工するNATM(New Austrian Tunneling Method)工法や斜面の崩壊を防止する斜面安定工法で補強部材が用いられている。
【0003】
NATM工法では、トンネルの地山を安定させることを目的として、トンネルの内壁における全方向に複数の補強部材(ロックボルト)が設置される。補強部材は、通常、トンネルの内壁に設けられた穿孔に充填材を注入した後に当該穿孔に挿入することで打設される。
【0004】
斜面安定工法としてのアンカー工は、硬岩または軟岩(土石を含む)の斜面において、岩盤に節理、亀裂および層理があり、表面の岩盤が崩落または剥落する恐れがある場合に、補強部材を用いて岩盤を安定させる。補強部材は、例えば安定な岩盤に直接的に緊結される。アンカー工には、大規模な崩壊対策に用いるグラウンドアンカー工と、小~中規模の崩壊対策に用いるロックボルト工とがある。
【0005】
ロックボルト工においては、NATM工法と同様のロックボルトが補強部材として設置される。一方で、グラウンドアンカー工においては、アンカー体と頭部定着部とを含むグラウンドアンカーが補強部材として設置される。アンカー体は、土塊のすべり面より深い地山に注入材によって定着および造成され、頭部定着部は、地表付近に設置される。そして、アンカー体と頭部定着部とを高強度引張材で連結して、所要の引張力を与え受圧板を介して積極的に土塊を安定させる。
【0006】
以上に説明したロックボルトおよびグラウンドアンカーのアンカー体は、穿孔の中心に設置されることで、注入材により安定して固定ができる。また、NATM工法においてトンネルの内壁に形成された穿孔にロックボルトを打設する際(上向き施工の際)には、充填材が硬化する前に自重や周囲の振動によって補強部材が下方に移動して穿孔から落下してしまう恐れがある。
【0007】
そこで、補強部材を穿孔の中心に設置すると共に、補強部材の落下を防止するための各種の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、補強部材に装着する落下防止具が開示されている。具体的には、特許文献1の落下防止具は、内側に補強部材を内挿可能な内径を備えるともに軸心方向に沿って切りかかれた開口部を備える円筒部と、円筒部の軸心方向の下端側から、前記円筒部の径方向外側に向けて、軸心方向の下端方向に斜めに突設された係止爪とを備え、円筒部は、軸心方向に沿って屈曲自在な屈曲部と、屈曲部を介して屈曲自在に連設された半円筒形状の第一半円筒部及び第二半円筒部を備え、第一半円筒部及び第二半円筒部には、互いに係止固定が可能であるとともに第一半円筒部及び第二半円筒部の屈曲を規制する固定部がいずれか一方に、被固定部が他方に設けられている。円筒部の内側に補強部材を挿入した後に、固定部を被固定部に差し込むことで、落下防止具が補強部材に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-088737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の落下防止具は、部品数が多く、煩雑な構成であることから、製造上の負担も大きい。また、落下防止具を補強部材に装着するのには、円筒部の内側に補強部材を挿入した後に、固定部を被固定部に差し込む必要があり、落下防止具の装着に手間がかかる。以上の事情を考慮して、本発明は、簡便な構成であり、補強部材への装着の手間も少ない固定部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]地盤を補強するために当該地盤に打設される軸状の補強部材の外周面に装着される部材であって、前記補強部材の周方向に沿うように湾曲する第1湾曲部と一端および他端とを含み、当該補強部材の外周面を把持する第1把持部と、前記周方向に沿うように湾曲する第2湾曲部と一端および他端とを含み、前記補強部材の外周面を把持する第2把持部と、所定の配列方向に沿って前記第1把持部と前記第2把持部との間に位置し、前記周方向に沿うように湾曲する第3湾曲部と一端および他端とを含み、前記補強部材の外周面を把持する第3把持部と、前記第1把持部の一端と前記第3把持部の一端とを連結する第1連結部と、前記第2把持部の他端と前記第3把持部の他端とを連結する第2連結部と、前記第1把持部の他端から、前記第3把持部の一端と他端とを通る線分の中点を通り、前記配列方向に直交する基準直線から離れる方向に突出する第1突出部と、前記第2把持部の一端から、前記基準直線から離れる方向に突出する第2突出部とを具備し、前記第1把持部の一端および前記第2把持部の一端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記第3把持部の一端と同じ側にあり、前記第1把持部の他端および前記第2把持部の他端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記第3把持部の他端と同じ側にある固定部材。
【0011】
[2]前記第1把持部の他端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線と当該第1把持部とが交差する部分に前記第1把持部の一端よりも近い位置にあり、前記第2把持部の一端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線と当該第2把持部とが交差する部分に前記第2把持部の他端よりも近い位置にある[1]の固定部材。
【0012】
[3]前記第1突出部と前記第2突出部とは、直線状である[1]または[2]の固定部材。
【0013】
[4]前記基準直線に平行な方向からみたときに、前記第1突出部は、0°より大きく60°以下の角度で前記第1把持部の他端から前記第3把持部側に傾斜し、前記第2突出部は、0°より大きく60°以下の角度で前記第2把持部の一端から前記第3把持部とは反対側に傾斜する[3]の固定部材。
【0014】
[5]前記第1突出部は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜し、前記第2突出部は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜する[3]の固定部材。
【0015】
[6]前記補強部材に装着された状態において、前記配列方向からみたときに、前記第1突出部と前記第2突出部とは平行な方向に突出する[5]の固定部材。
【0016】
[7]前記第3湾曲部は、円弧状であって、前記配列方向からみたときに、前記第3湾曲部の内側で確定される円の中心と前記第1連結部の先端とを通る直線と、前記中心と前記第2連結部の先端とを通る直線とがなす角度は、30°以上180°以下である[1]から[6]の固定部材。
【0017】
[8]前記第1把持部と前記第3把持部との間隔は、前記基準直線と前記配列方向に平行な直線とを含む平面から前記第1突出部側に向かって連続的に大きくなり、前記第2把持部と前記第3把持部との間隔は、前記平面から前記第2突出部側に向かって連続的に大きくなる[1]から[7]の固定部材。
【0018】
[9]前記第1突出部および前記第2突出部の長さは、15~150mmである[1]から[8]の固定部材。
【0019】
[10]一連の線材からなる[1]から[9]の固定部材。
【0020】
[11]前記線材は、表面が亜鉛で形成された線材である[1]から[10]の固定部材。
【0021】
[12]地盤を補強するために当該地盤に打設される軸状の補強部材の外周面に装着される部材であって、前記補強部材の周方向に沿うように湾曲する第1湾曲部と一端および他端とを含み、当該補強部材の外周面を把持する第1把持部と、前記周方向に沿うように湾曲する第2湾曲部と一端および他端とを含み、前記補強部材の外周面を把持する第2把持部と、所定の配列方向に沿って前記第1把持部と前記第2把持部との間に位置し、前記周方向に沿うように湾曲する第3湾曲部と一端および他端とを含み、前記補強部材の外周面を把持する(2N-1:Nは1以上の整数)個の第3把持部と、前記第1把持部の一端と、前記(2N-1)個の第3把持部のうち当該第1把持部に隣接する第3把持部の一端とを連結する第1連結部と、前記第2把持部の他端と、前記(2N-1)個の第3把持部のうち当該第2把持部に隣接する第3把持部の他端とを連結する第2連結部と、相互に隣接する2個の第3把持部の一端同士を連結する(N-1)個の第3連結部と、相互に隣接する2個の第3把持部の他端同士を連結する(N-1)個の第4連結部と、前記第1把持部の他端から、前記第3把持部の一端と他端とを通る線分の中点を通り、前記配列方向に直交する基準直線から離れる方向に突出する第1突出部と、前記第2把持部の一端から、前記基準直線から離れる方向に突出する第2突出部とを具備し、前記第3連結部と前記第4連結部とは、前記配列方向に沿って交互に位置し、前記第1把持部の一端および前記第2把持部の一端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記各第3把持部の一端と同じ側にあり、前記第1把持部の他端および前記第2把持部の他端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記各第3把持部の他端と同じ側にある固定部材。
【0022】
[13]K個の貫通孔が形成された板状の保持部材と、[1]から[12]のK個の固定部材とを具備し、前記K個の貫通孔のそれぞれに前記K個の固定部材の全長方向における前記第1把持部の他端から前記第2把持部の一端までの間の部分を嵌め込むことで、前記K個の固定部材が前記保持部材に保持されている固定部材セット。
【0023】
[14]前記第1突出部および前記第2突出部に装着可能であり、地盤との接触面積を大きくするための補助部材を含む[1]または[12]の固定部材。
【0024】
[15]補強部材の打設方法であって、[1]から[12]の固定部材が装着された補強部材を充填材が充填された穿孔内に当該充填材が硬化する前に挿入する工程を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る固定部材は、簡便な構成であり、補強部材への装着の手間も少ない。本発明に係る固定部材セットによれば、簡便な構成であり、補強部材への装着の手間も少ない固定部材を一個ずつ取り出しやすくすることができる。本発明に係る打設方法によれば、簡便な構成であり、補強部材への装着の手間が少ない固定部材を用いて当該補強部材を打設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る固定部材が装着された状態の補強部材の正面図である。
図2】固定部材が装着された状態の補強部材の背面図である。
図3】固定部材が装着された状態の補強部材の写真である。
図4】固定部材の斜視図である。
図5】固定部材をX方向からみたときの図である。
図6】固定部材をZ方向からみたときの図である。
図7】固定部材をY方向からみたときの図である。
図8】第3把持部に着目した図である。
図9】第1把持部に着目した図である。
図10】第2把持部に着目した図である。
図11】穿孔内に挿入された補強部材の模式図である。
図12】固定部材が装着された状態の補強部材を打設する工程の説明図(打設前)である。
図13】固定部材が装着された状態の補強部材を打設する工程の説明図(打設後)である。
図14】第2実施形態に係る固定部材をZ方向からみたときの図である。
図15】第2実施形態に係る補強部材用固定部材が装着された状態の補強部材の正面図である。
図16】第3実施形態に係る固定部材をZ方向からみたときの図である。
図17】第4実施形態に係る固定部材をZ方向からみたときの図である。
図18】第5実施形態に係る固定部材セットの正面図である。
図19】第5実施形態に係る固定部材セットを例示する背面図である。
図20】第5実施形態に係る固定部材セットを例示する側面図である。
図21】変形例に係る固定部材の斜視図である。
図22】変形例に係る補助部材の上面図および正面図である。
図23】変形例に係る他の態様の補助部材の上面図および正面図である。
図24】変形例に係る他の態様の補助部材の上面図および正面図である。
図25図24に記載する補助部材を製造する際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る固定部材は、地盤(例えば地山や岩盤)を補強するために当該地盤に打設される軸状の補強部材を固定するための部材である。図1および図2は、固定部材100が装着された状態の補強部材Bの正面図および背面図である。固定部材は、補強部材の外周面に装着される。
【0028】
例えば、ロックボルトやグラウンドアンカーが補強部材Bとして例示される。なお、補強部材Bがグラウンドアンカーの場合には、固定部材はアンカー体の外周面に装着される。ロックボルトの長さは、例えば3~6mであり、ロックボルトの直径は、例えば19~32mmが想定される。グラウンドアンカーにおけるアンカー体の長さは、例えば3~10mであり、アンカー体の直径は、例えば19~51mmが想定される。
【0029】
固定部材100は、補強部材Bに装着された状態で、充填材が充填された穿孔内に挿入される。固定部材100が装着された補強部材Bが穿孔内に挿入されることで、充填材が硬化する前であっても当該補強部材Bが穿孔内でずれることを防止できる。なお、第1実施形態の固定部材100が挿入される穿孔の穿孔径(設計図書に記載される穿孔径)は、例えば45~165mmが想定される。
【0030】
第1実施形態では、外周面にリブおよび節を有する異形棒鋼のロックボルトを補強部材Bとして例示する。なお、固定部材100が装着される補強部材Bの形状は、以上の例示には限定されず、例えば全ねじ鋼棒や丸鋼であってもよい。
【0031】
以下の説明では、補強部材Bの軸方向に平行な方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をY方向と表記し、X方向およびY方向の双方に直交する方向をZ方向と表記する。図3には、2個の固定部材100が装着された補強部材Bの写真を示す。
【0032】
第1実施形態に係る固定部材100は、穿孔内に挿入された補強部材Bを強固に固定することができる。以下、固定部材100について詳述する。
【0033】
図4は固定部材100の斜視図であり、図5は固定部材100をX方向の正側からみたときの図であり、図6は固定部材100をZ方向の正側からみたときの図であり、図7は固定部材100をY方向の正側からみたときの図である。
【0034】
図4から図7に例示される通り、第1実施形態の固定部材100は、一連の線材(線状の金属材料)からなる部材である。第1実施形態の固定部材100は、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13と第1連結部21と第2連結部22と第1突出部41と第2突出部42とを具備する。固定部材100を構成する各要素(11,12,13,21,22,41,42)は、切れ目なく連続的に形成される。
【0035】
第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とは、補強部材Bの外周面を把持する部分である。第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とは、X方向に沿って配列される。第1把持部11と第2把持部12との間に第3把持部13が位置する。すなわち、X方向は、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とが配列する方向(「配列方向」の例示)であるとも換言できる。
【0036】
なお、以下の説明では、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とを区別する必要がない場合には、単に「把持部」と表記する。
【0037】
各把持部(11,12,13)は、補強部材Bの外周面に巻回された状態で強固に把持することが可能なように形成される。第1実施形態の各把持部は、全体として補強部材Bの周方向に沿うような形状に形成される。各把持部は、相互に所定の間隔をあけてX方向に沿って配置される。以下、各把持部について詳述する。
【0038】
図8は、図5の固定部材100のうち第3把持部13に着目した図である。図6から図8に例示される通り、第1実施形態の第3把持部13は、全長にわたり同一平面内(第1実施形態ではY-Z平面に平行な平面内)において位置する。
【0039】
図8に例示される通り、第1実施形態の第3把持部13は、第3湾曲部131と、第1直線部132と、第2直線部133と、相互に反対側に位置する第1端(「一端」の例示)Tc1および第2端(「他端」の例示)Tc2とを含む。第1端Tc1と第2端Tc2とは、第3把持部13における相互に反対側に位置する端部である。
【0040】
第3湾曲部131は、第3把持部13のうち補強部材Bの周方向に沿うように湾曲する部分である。第1実施形態の第3湾曲部131は、円弧状に形成される。X方向からみたときに第3湾曲部131の内側で確定される仮想的な円S3の直径は、補強部材Bの直径(外径)を下回る構成が好適であり、例えば補強部材Bの直径に対して0.75~1.0倍であり、好ましくは0.8~0.9倍である。第3湾曲部131の長さ(弧長)は、円S3の半円の周の長さを上回る構成が好適である。なお、本発明において補強部材Bの直径(最外径)とは、補強部材Bが異形棒鋼である場合には、補強部材Bの公称直径(節とリブとを含めない部分の直径)である。補強部材Bが全ねじ鋼棒である場合には、雄ねじの外径を補強部材Bの直径とする。
【0041】
第1実施形態では、X方向からみたときに、円S3の中心Pを通り、Z方向に平行な直線L3について対称になるような形状に第3把持部13が形成される。図8には、第3把持部13の第1端Tc1と第2端Tc2とを通る線分Jの中点を通り、X方向に直交する直線(以下「基準直線」という)L0を図示する。第1実施形態の基準直線L0は、直線L3と一致する場合を例示するが、第3把持部13の形状によっては当該直線L3と一致しない場合もある。
【0042】
図8に例示される通り、第1直線部132と第2直線部133とは、第3湾曲部131を挟んで相互に反対側に位置し、第3湾曲部131から連続的に形成される直線状の部分である。図8の例示では、第3湾曲部131におけるY方向の負側の端部から第1直線部132が形成され、第3湾曲部131におけるY方向の正側の端部から第2直線部133が形成される。第1実施形態では、基準直線L0に向かって傾斜するように第1直線部132と第2直線部133とが形成される。第1直線部132と第2直線部133とは、同じ長さに形成される。ただし、第1直線部132と第2直線部133との長さを相違させてもよい。
【0043】
第1実施形態では、第1直線部132における第3湾曲部131とは反対側の端部が第1端Tc1であり、第2直線部133における第3湾曲部131とは反対側の端部が第2端Tc2である。第1端Tc1と第2端Tc2とは所定の間隔で離間する。なお、補強部材Bに固定部材100を強固に装着する観点からは、第3把持部13における第1端Tc1と第2端Tc2との間隔は、補強部材Bの直径より小さい構成が好ましい。
【0044】
第1端Tc1と第2端Tc2とは、円S3の円周のうち最もZ方向の正側に位置する部分(円S3と基準直線L0とにおけるZ方向の正側の交点)よりもZ方向の正側に位置する。第1実施形態の第1端Tc1と第2端Tc2とは、基準直線L0を挟んで対称となる位置にある。
【0045】
図9は、図5の固定部材100のうち第1把持部11に着目した図である。図9では、基準直線L0についても図示する。図6図7および図9に例示される通り、第1実施形態の第1把持部11は、全長にわたり同一平面内(第1実施形態ではY-Z平面に平行な平面内)に位置する。
【0046】
図9に例示される通り、第1実施形態の第1把持部11は、第1湾曲部111と直線部112と、相互に反対側に位置する第1端(「一端」の例示)Ta1および第2端(「他端」の例示)Ta2とを含む。第1端Ta1と第2端Ta2とは、第1把持部11における相互に反対側に位置する端部である。
【0047】
第1湾曲部111は、第1把持部11のうち補強部材Bの周方向に沿うように湾曲する部分である。第1実施形態の第1湾曲部111は、円弧状に形成される。X方向からみたときに第1湾曲部111の内側で確定される仮想的な円S1の直径は、補強部材Bの直径を下回る構成が好適である。第1湾曲部111の長さ(弧長)は、円S1の半円の周の長さを上回る構成が好適である。なお、円S1の直径は、円S3の直径と同等である。
【0048】
直線部112は、第1湾曲部111における一端(Y方向の負側の端部)側から連続的に形成される直線状の部分である。第1実施形態では、X方向からみたときに、円S1の中心Pを通り、Z方向に平行な直線と、基準直線L0とが一致する場合を例示する。
【0049】
基準直線L0に向かって傾斜するように直線部112が形成される。例えば、直線部112は、X方向からみたときに第3把持部13の第1直線部132と重なるように傾斜する。なお、第1実施形態では、直線部112の長さが第1直線部132の長さと同等である構成を例示する。
【0050】
第1実施形態では、直線部112における第1湾曲部111とは反対側の端部が第1端Ta1であり、第1湾曲部111における直線部112とは反対側の端部が第2端Ta2である。第1端Ta1と第2端Ta2とは、基準直線L0を挟んで相互に反対側に位置する。なお、補強部材Bに固定部材100を強固に装着する観点からは、第1把持部11における第1端Ta1と第2端Ta2との間隔は、補強部材Bの直径より小さい構成が好ましい。
【0051】
第1把持部11における第2端Ta2は、X方向からみたときに、基準直線L0と当該第1把持部11とが交差する部分Uに第1把持部11の第1端Ta1よりも近い位置にある。
【0052】
図10は、図5の固定部材100のうち第2把持部12に着目した図である。図10では、基準直線L0についても図示する。図6図7および図10に例示される通り、第1実施形態の第2把持部12は、全長にわたり同一平面内(第1実施形態ではY-Z平面に平行な平面内)に位置する。
【0053】
図10に例示される通り、第1実施形態の第2把持部12は、第2湾曲部121と直線部122と、相互に反対側に位置する第1端(「一端」の例示)Tb1および第2端(「他端」の例示)Tb2とを含む。第1端Tb1と第2端Tb2とは、第2把持部12における相互に反対側に位置する端部である。
【0054】
第2湾曲部121は、第2把持部12のうち補強部材Bの周方向に沿うように湾曲する部分である。第1実施形態の第2湾曲部121は、円弧状に形成される。X方向からみたときに第2湾曲部121の内側で確定される仮想的な円S2の直径は、補強部材Bの直径を下回る構成が好適である。第2湾曲部121の長さ(弧長)は、円S2の半円の周の長さを上回る構成が好適である。なお、円S2の直径は、円S3および円S1の直径と同等である。仮想的な円S1,S2,S3の直径は、例えば13~51mmである。
【0055】
直線部122は、第2湾曲部121における一端(Y方向の正側の端部)側から連続的に形成される直線状の部分である。第1実施形態では、X方向からみたときに、円S2の中心Pを通り、Z方向に平行な直線と、基準直線L0とが一致する場合を例示する。
【0056】
基準直線L0に向かって傾斜するように直線部112が形成される。例えば、直線部122は、X方向からみたときに第3把持部13の第2直線部133と重なるように傾斜する。なお、第1実施形態では、直線部122の長さが第2直線部133の長さと同等である構成を例示する。第1把持部11と第2把持部12とは左右(X方向の正側および負側)を反転させた関係にあるとも換言できる。
【0057】
第1実施形態では、直線部122における第2湾曲部121とは反対側の端部が第2端Tb2であり、第2湾曲部121における直線部112とは反対側の端部が第1端Tb1である。第1端Tb1と第2端Tb2とは、基準直線L0を挟んで相互に反対側に位置する。第2把持部12の第1端Tb1は、X方向からみたときに、基準直線L0と当該第2把持部12とが交差する部分Uに第2把持部12の第2端Tb2よりも近い位置にある。なお、補強部材Bに固定部材100を強固に装着する観点からは、第2把持部12における第1端Tb1と第2端Tb2との間隔は、補強部材Bの直径より小さい構成が好ましい。
【0058】
図3から図7に例示される通り、第1把持部11および第2把持部12は、典型的には、X方向からみたときに第3把持部13に重なるように設けられる。円S1の中心Pと円S2の中心Pと円S3の中心PとがX方向からみたときに一致するように、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とが設けられるとも換言できる。なお、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とは、それぞれが補強部材Bの外周面を把持することが可能であれば完全に重なる必要はなく、製造上の誤差の範囲内で位置がずれる場合もある。
【0059】
図8から図10に例示される通り、X方向からみたときに、第1把持部11の第1端Ta1と第2把持部12の第1端Tb1とは、基準直線L0を中心として、第3把持部13の第1端Tc1と同じ側に位置し、第1把持部11の第2端Ta2と第2把持部12の第2端Tb2とは、基準直線L0を中心として、第3把持部13の第2端Tc2と同じ側に位置する。
【0060】
図6では、第1把持部11と第3把持部13との間隔D1は、周方向にわたり一定であり、第2把持部12と第3把持部13との間隔D2は、周方向にわたり一定である構成を例示する。間隔D1と間隔D2とは、任意であるが、例えば4~9mmであり、好ましくは4.5~7.5mmである。第1把持部11と第2把持部12との間隔D3は、例えば9~23mmであり、好ましくは10~18mmである。間隔D1,D2,D3を上記の範囲内にすることで、固定部材100を補強部材Bに強固に装着できるという利点がある。
【0061】
図6には、距離D4および距離D5が図示されている。距離D4は、第1連結部21の長さ方向における中点を通りY方向に平行な直線と、第2連結部22の長さ方向における中点を通りY方向に平行な直線との間の距離である。距離D5は、第1連結部21の長さ方向における中点から第2連結部22の長さ方向における中点までの距離(2つの中点を結ぶ線分の長さ)である。
【0062】
距離D4は、例えば間隔D1,D2の0.5倍以上かつ間隔D1,D2の2倍以下であり、好ましくは間隔D1,D2以上かつ間隔D1,D2の1.5倍以下である。図6は、距離D4が間隔D1,D2と同等である場合であり、Z方向から見たときに、第1把持部11、第2把持部12および第3把持部13とが平行には配列された状態になる。距離D4が間隔D1,D2よりも大きい場合には、後述する図16の状態になる。
【0063】
距離D4が小さすぎると、補強部材Bに対する固定部材100の締め付け力が増すものの、固定部材100を補強部材Bに装着しにくくなる恐れがある。一方で、距離D4が大きすぎると、補強部材Bに装着しやすくはなるものの、補強部材Bに対する固定部材100の締め付け力が低下する恐れがある。それに対して、距離D4を以上のように設定することで、固定部材100の補強部材Bの装着を容易にしつつ、補強部材Bに対する固定部材100の締め付け力も十分に確保することができる。ただし、本発明の固定部材100には、距離D4が間隔D1,D2未満である構成や距離D4が間隔D1,D2の2倍よりも大きい構成も包含される。
【0064】
距離D5は、例えば、固定部材100を装着する対象となる補強部材Bの直径に対して0.4倍以上0.6倍以下の長さである。距離D5を以上のように設定することで、補強部材Bへの固定部材100の装着を容易にしつつ、補強部材Bに対する固定部材100の締め付け力も十分に確保することができる。
【0065】
なお、本発明において「一定である」「一致する」「同等(同じ)である」「重なる」と記載する場合には、厳密に「一定である」「一致する」「同等(同じ)である」「重なる」場合はもちろんのこと、製造上の誤差の範囲内で「一定である」「一致する」「同等(同じ)である」「重なる」場合も包含される。
【0066】
図6および図7に例示される通り、第1連結部21は、第1把持部11の第1端Ta1と第3把持部13の第1端Tc1とを連結する部分である。具体的には、第1連結部21は、X方向(補強部材Bの軸方向)に沿って延在する部分である。
【0067】
図7に例示される通り、第1実施形態の第1連結部21は、曲線状に形成される。具体的には、第1連結部21は、Y方向(「配列方向および基準直線に直交する方向」の例示)からみて、Z方向の正側に向かって湾曲するように形成される。
【0068】
図6および図7に例示される通り、第2連結部22は、第2把持部12の第2端Tb2と第3把持部13の第2端Tc2とを連結する部分である。具体的には、第1連結部21は、X方向(補強部材Bの軸方向)に沿って延在する部分である。
【0069】
図7に例示される通り、第1実施形態の第2連結部22は、曲線状に形成される。具体的には、第2連結部22は、Z方向の正側に向かって湾曲するように形成される。
【0070】
なお、第3把持部13の第1端Tc1は、Y-Z平面に平行な平面内に延在する第3把持部13と、当該平面から交差する方向に延在する第1連結部21との境界部分であるとも換言できる。同様に、第3把持部13の第2端Tc2は、Y-Z平面に平行な平面内に延在する第3把持部13と、当該平面から交差する方向に延在する第2連結部22との境界部分であるとも換言できる。
【0071】
図2に例示される通り、第1連結部21の長さ(X方向における長さ)および第2連結部22の長さ(X方向における長さ)は、例えば、固定部材100を補強部材Bに装着した際に、X方向において相互に隣接する2つの節(リブ)の間に配置可能なように設定される。
【0072】
図1および図2に例示される通り、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13と第1連結部21と第2連結部22との全体(固定部材100の全長方向において第1把持部11の第2端Ta2から第2把持部12の第1端Tb1までの間の部分)で、補強部材Bの外周面に固定部材100を取り付けるための要素として機能する。第1連結部21と第2連結部22との間隔(第3把持部13の第1端Tc1と第2端Tc2との間隔)から補強部材Bを嵌め込むことで、補強部材Bに固定部材100が取り付けられる。
【0073】
図1および図2の第1突出部41および第2突出部42は、穿孔の内壁に接触することで、補強部材Bを穿孔内で固定するための要素である。
【0074】
図9に例示される通り、第1突出部41は、X方向からみたときに、第1把持部11の第2端Ta2から、基準直線L0から離れる方向に突出する部分である。なお、第2突出部42は補強部材Bから離れる方向に突出するとも換言できる。第1実施形態の第1突出部41は、直線状である。第1突出部41が基準直線L0から離れる方向に突出するとは、X方向からみたときに、角度θ11で傾斜する状態をいう。角度θ11は、基準直線L0と第1突出部41とがなす角度であるとも換言できる。なお、角度θ11は、第1湾曲部111とは反対側において第1突出部41と基準直線L0とがなす角度である。
【0075】
具体的には、角度θ11は、0°より大きく90°以下である。第1実施形態の角度θ11は、例えば10°以上88°以下であり、好適には20°以上85°以下である。
【0076】
図6に例示される通り、Z方向(すなわち基準直線L0に平行な方向)からみたときに、第1実施形態の第1突出部41は、角度θ12で第1把持部11の第2端Ta2から第3把持部13側に傾斜する。角度θ12は、例えば、0°より大きく60°以下であり、好適には20°以上50°以下である。角度θ12を上記の範囲内に設定することで、穿孔内に補強部材Bを挿入しやすくなり、かつ、抜けにくくなるという利点がある。
【0077】
なお、角度θ12が0°である状態とは、第1把持部11が存在する平面(Y-Z平面に平行な平面)内に第1突出部41が存在する状態である。すなわち、角度θ12は、第1把持部11が存在する平面と第1突出部41とがなす角度であるとも換言できる。
【0078】
図10に例示される通り、第2突出部42は、X方向からみたときに、第2把持部12の第1端Tb1から、基準直線L0から離れる方向に突出する部分である。なお、第2突出部42は補強部材Bから離れる方向に突出するとも換言できる。第1実施形態の第2突出部42は、直線状である。第2突出部42が基準直線L0から離れる方向に突出するとは、X方向からみたときに、角度θ21で傾斜する状態をいう。角度θ21は、基準直線L0と第2突出部42とがなす角度であるとも換言できる。なお、角度θ21は、第2湾曲部121とは反対側において第2突出部42と基準直線L0とがなす角度である。
【0079】
具体的には、角度θ21は、0°より大きく90°以下である。第1実施形態の角度θ21は、例えば10°以上88°以下であり、好適には20°以上85°以下である。
【0080】
図6に例示される通り、Z方向(すなわち基準直線L0に平行な方向)からみたときに、第2突出部42は、角度θ22で第2把持部12の第1端Tb1から第3把持部13とは反対側に傾斜する。角度θ22は、例えば、0°より大きく60°以下であり、好適には20°以上50°以下である。角度θ22を上記の範囲内に設定することで、穿孔内に補強部材Bを挿入しやすくなり、かつ、抜けにくくなるという利点がある。
【0081】
なお、角度θ22が0°である状態とは、第2把持部12が存在する平面(Y-Z平面に平行な平面)内に第2突出部42が存在する状態である。すなわち、角度θ22は、第2把持部12が存在する平面と第2突出部42とがなす角度であるとも換言できる。
【0082】
第1実施形態では、角度θ12と角度θ22とが同じである構成を例示するが、相違してもよい。
【0083】
図11は、地山に設けれた穿孔内に挿入された固定部材の模式図である。図11(a)は、Z方向から見たときの補強部材Bの模式図であり、図11(b)は、補強部材BをX方向からみたときの模式図である。
【0084】
図11(b)に例示される通り、補強部材Bに装着された状態において、X方向からみたときに、第1突出部41と第2突出部42とが平行な方向に突出するように、角度θ11と角度θ21とを設定する構成が好適である。以上の構成を採用することで、補強部材Bを穿孔の中心に配設することが可能になる。以下の説明では、第1突出部41と第2突出部42とを区別する必要がないときは単に「突出部」と表記する。
【0085】
図11に例示される通り、実際には、穿孔の断面は、正円に形成されることは少なく、様々な形状になる。そうすると、突出部から穿孔の内壁までの距離が計算上の距離にはならないことが多い。そこで、第1実施形態の突出部の長さは、穿孔の内壁の形状に関わらず、当該内壁に接触できるように設定する。具体的には、突出部の長さは、補強部材Bの直径と穿孔径(直径)とを踏まえた上で設定する。例えば、補強部材Bが穿孔の中心部に位置するとした場合に、補強部材Bの外周面から穿孔の内壁までの距離((穿孔径-補強部材Bの直径)/2)を大きく上回るように、突出部の長さを設定する。補強部材Bの半径と穿孔の半径との差を大きく上回るように突出部の長さを設定するとも換言できる。
【0086】
各突出部(41,42)の長さは、例えば、円S3(図8)の直径の0.45~10.5倍である。具体的には、各突出部の長さは、例えば15~150mmであり、好ましくは20~120mmmmであり、より好ましくは25~110mmmmであり、さらに好ましくは30~100mmmmである。突出部の長さを以上のように設定することで、穿孔の内壁面の形状にかかわらず、突出部を穿孔の内壁に強固に接触させることができる。また、突出部の長さを以上のように設定することで、多様な穿孔径(例えば45~165mmの範囲内の穿孔径)の穿孔に固定部材100を用いることができる。
【0087】
図8には、X方向からみたときに、円S3の中心Pと第1連結部21の先端とを通る直線と、円S3の中心Pと第2連結部22の先端とを通る直線とがなす角度θ3が図示されている。第1連結部21の先端とは、X方向からみたときに、第2連結部22に最も近い部分(最もY方向の正側に位置する部分)である。同様に、第2連結部22の先端とは、X方向からみたときに、第1連結部21に最も近い部分(最もY方向の負側に位置する部分)である。
【0088】
角度θ3は、例えば30°以上180°以下であり、好適には45°以上120°以下であり、さらに好適には50°以上90°以下に設定される。角度θ3を以上の範囲内に設定することで、第1連結部21と第2連結部22との間の空間から補強部材Bを嵌め込みやすくなる。
【0089】
以下、第1実施形態に係る固定部材100を装着した補強部材Bを用いた接着工法について説明する。
【0090】
図12および図13は、固定部材100が装着された状態の補強部材Bを穿孔H内に打設する工程を説明する説明図である。図12は、補強部材Bを穿孔H内に挿入する前の図で、図13は、補強部材Bを穿孔H内に挿入した後の図である。図12および図13では、補強部材Bに2個の固定部材100を装着する場合を例示する。補強部材Bに装着する固定部材100の個数は任意である。なお、図12および図13では、便宜的に鉛直方向に設けられた穿孔に対して下方から補強部材Bを挿入する場合を記載する。
【0091】
図12に例示される通り、地山に形成された穿孔H内に充填材Qを注入した後に、補強部材Bが挿入される。穿孔H内に注入される充填材Qは、特に限定されるものではないが、例えば、セメント系の無機系充填材等が用いられる。穿孔Hと、挿入された補強部材Bとの間の空間を埋める量の充填材Qが穿孔H内に注入される。
【0092】
次に、図13に例示される通り、充填材Qが硬化する前に穿孔H内に補強部材Bを挿入する。第3把持部13とは反対側に傾斜する第2突出部42が穿孔Hの開口側に位置し、第3把持部13側に傾斜する第1突出部41が穿孔Hの底側に位置するように補強部材Bが穿孔H内に挿入される。また、各固定部材100の第1突出部41と第2突出部42とが穿孔Hの内壁面に接触するように補強部材Bが挿入される。
【0093】
第1実施形態の固定部材100を装着した補強部材Bは、固定部材100の第1突出部41と第2突出部42とが穿孔の内壁面に接触することで、補強部材Bを穿孔内で強固に固定することができる。したがって、例えば、上向き施工の場合には、補強部材Bが自重や振動により下方にずれることや穿孔から脱落ことを防ぐことができる。すなわち、固定部材100は、ストッパーとして機能するとも換言できる。また、第1突出部41と第2突出部42とにより、補強部材Bを穿孔の中心に設置することが可能である。すなわち、固定部材100は、スペーサーとして機能するとも換言できる。
【0094】
第1実施形態の固定部材100は、一連の線材で構成され、把持部(11,12,13)を補強部材Bに嵌め込むことで使用できる。したがって、例えば特許文献1の構成と比較して、簡便な構成で、かつ、補強部材Bへの装着の手間も少ないという利点がある。
【0095】
なお、以上に説明した第1実施形態による効果は、穿孔が鉛直方向に形成される場合はもちろんのこと、鉛直方向以外の方向(水平方向や鉛直方向に対して傾斜する方向)に沿って穿孔が形成される場合にも実現される。
【0096】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0097】
図14は、第2実施形態に係る固定部材100をZ方向からみたときの図である。第1実施形態では、第1把持部11と第3把持部13との間隔D1と、第2把持部12と第3把持部13との間隔D2とが、周方向にわたり一定である構成を例示した。第2実施形態では、間隔D1と間隔D2とが周方向に沿って変化する構成を例示する。
【0098】
図14には、基準直線L0と、X方向に平行な直線(基準直線L0に直交する直線)とを含む平面を基準平面Fと表記する。X-Z平面が基準平面Fの例示である。
【0099】
図14に例示される通り、第2実施形態では、第1把持部11と第3把持部13との間隔D1は、基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に小さくなる。また、第2把持部12と第3把持部13との間隔D2は、基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に小さくなる。
【0100】
Z方向からみたときに、第1把持部11と第2把持部12との間において、第3把持部13を傾斜するように配置する。すなわち、第2実施形態の第3把持部13は、Y-Z平面に対して傾斜する平面内において延在する。
【0101】
具体的には、Z方向からみたときに、第3把持部13の第1端Tc1と第2把持部12の第1端Tb1との間の距離が、第3把持部13の第1端Tc1との間の距離を下回り、第3把持部13の第2端Tc2と第1把持部11の第2端Ta2との間の距離が、第3把持部13の第2端Tc2と第2把持部12の第2端Tb2との間の距離を下回るように、第3把持部13を配置する。第3把持部13を以上のように配置することで、間隔D1が基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に小さくなり、間隔D2が基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に小さくなるように設定される。
【0102】
なお、間隔D1のうち基準平面Fから第1連結部21までの間の部分については、周方向に沿って一定であってもよいし、第1連結部21から基準平面Fにかけて連続的に小さくなってもよい。同様に、間隔D2のうち基準平面Fから第2連結部22までの間の部分については、周方向に沿って一定であってもよいし、第2連結部22から基準平面Fにかけて連続的に小さくなってもよい。
【0103】
図15は、第2実施形態の固定部材100を装着した補強部材Bの図(図1に対応)である。図15に例示される通り、補強部材Bの外周面のうち左半周に位置する節と、右半周に位置する節との間において固定部材100を装着することができる。
【0104】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。なお、第2実施形態において、間隔D1が基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に小さくなり、間隔D2が基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に小さくなるように設定されること以外は、第1実施形態と同様である。
【0105】
<第3実施形態>
【0106】
図16は、第3実施形態に係る固定部材100をZ方向からみたときの図である。第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、第1把持部11と第3把持部13との間隔D1と、第2把持部12と第3把持部13との間隔D2とが周方向に沿って変化する構成を例示する。
【0107】
図16に例示される通り、第3実施形態では、第1把持部11と第3把持部13との間隔D1は、基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に大きくなる。また、第2把持部12と第3把持部13との間隔D2は、基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に大きくなる。図16の状態は、上述した通り、距離D4が間隔D1,D2よりも大きい場合である。なお、図16の構成においては、距離D4が間隔D1,D2よりも大きいとは、第1把持部11における第1端Ta1と第3把持部13における第1端Ta1との間隔D1(すなわち間隔D1のうち最短距離)、および、第2把持部12における第2端Tb2と第3把持部13における第2端Tc2との間隔D2(すなわち間隔D2のうち最短距離)よりもそれぞれ大きいことを言う。
【0108】
Z方向からみたときに、第1把持部11と第2把持部12との間において、第3把持部13が傾斜するように配置する。すなわち、第2実施形態の第3把持部13は、Y-Z平面に対して傾斜する平面内において延在する。
【0109】
具体的には、Z方向からみたときに、第3把持部13の第1端Tc1と第2把持部12の第1端Tb1との間の距離が、第3把持部13の第1端Tc1との間の距離を上回り、第3把持部13の第2端Tc2と第1把持部11の第2端Ta2との間の距離が、第3把持部13の第2端Tc2と第2把持部12の第2端Tb2との間の距離を上回るように、第3把持部13を配置する。第3把持部13を以上のように配置することで、間隔D1が基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に大きくなり、間隔D2が基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に大きくなるように設定される。
【0110】
なお、間隔D1のうち基準平面Fから第1連結部21までの間の部分については、周方向に沿って一定であってもよいし、第1連結部21から基準平面Fにかけて連続的に大きくなってもよい。間隔D2のうち基準平面Fから第2連結部22までの間の部分については、周方向に沿って一定であってもよいし、第2連結部22から基準平面Fにかけて連続的に大きくなってもよい。
【0111】
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。図16は、第3実施形態の固定部材100が装着された状態の補強部材Bである。図16に例示される通り、間隔D1が基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に大きくなり、間
隔D2が基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に大きくなる第3実施形態の固定部材100によれば、第3把持部13が補強部材Bの節に重ならないように(乗らないように)装着することが可能である。
【0112】
ここで、第3把持部13が補強部材Bの節に重なった状態で固定部材100が装着されると第1突出部41と第2突出部42とに加わる力が対称でなくなり、補強部材Bを適切に固定できない場合もある。それに対して、第3実施形態の固定部材100によれば、第3把持部13が補強部材Bの節に重ならないから第1突出部41と第2突出部42とに加わる力を対称にできるという利点がある。
【0113】
なお、第3実施形態において、間隔D1が基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に大きくなり、間隔D2が基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に大きくなるように設定されること以外は、第1実施形態と同様である。
【0114】
<第4実施形態>
【0115】
図17は、第4実施形態に係る固定部材100をZ方向からみたときの図である。第1実施形態では、固定部材100が1つの第3把持部13を含む構成を例示したが、第4実施形態では固定部材100が複数の第3把持部13を含む構成を例示する。
【0116】
第4実施形態の固定部材100は、第1把持部11と第2把持部12と第1突出部41と第2突出部42と第1連結部21と第2連結部22とに加えて、(2N-1)個の第3把持部13と、(N-1)個の第3連結部23と、(N-1)個の第4連結部24とを具備する。Nは、1以上の整数である。なお、図17では、Nが2である場合を例示する。第1実施形態は、Nが1である場合の構成であるとも換言できる。
【0117】
(2N-1)個の第3把持は、X方向に沿って第1把持部11と第2把持部12との間に位置する。(2N-1)個の第3把持は、所定の間隔をあけて配置される。第4実施形態では、各第3把持部13は、第1実施形態の第3把持部13と同様に形成される。
【0118】
第1把持部11の第1端Ta1と第2把持部12の第1端Tb1とは、X方向からみたときに、基準直線L0を中心として、各第3把持部13の第1端Tc1と同じ側にある。第1把持部11の第2端Ta2と第2把持部12の第2端Tb2とは、X方向からみたときに、基準直線L0を中心として、各第3把持部13の第2端Tc2と同じ側にある。
【0119】
第4実施形態の第1連結部21は、第1把持部11の第1端Ta1と、(2N-1)個の第3把持部13のうち当該第1把持部11に隣接する第3把持部13の第1端Tc1とを連結する要素である。第4実施形態の第2連結部22は、第2把持部12の第2端Tb2と、(2N-1)個の第3把持部13のうち当該第2把持部12に隣接する第3把持部13の第2端Tc2とを連結する要素である。
【0120】
第3連結部23は、相互に隣接する2個の第3把持部13の第1端Tc1同士を連結する部分である。具体的には、第3連結部23は、X方向(補強部材Bの軸方向)に沿って延在する部分である。第4実施形態の第3連結部23は、第1連結部21と同様の形状に形成される。
【0121】
第4連結部24は、相互に隣接する2個の第3把持部13の第2端Tc2同士を連結する部分である。具体的には、第4連結部24は、X方向(補強部材Bの軸方向)に沿って延在する部分である。第4実施形態の第4連結部24は、第2連結部22と同様の形状に形成される。
【0122】
第3連結部23と前記第4連結部24とは、X方向に沿って交互に位置する。すなわち、相互に隣接する2個の第3把持部13において第1端Tc1同士が第3連結部23で連結される場合には、当該2個の第3把持部13において第2端Tc2同士は連結されない。同様に、相互に隣接する2個の第3把持部13において第2端Tc2同士が第4連結部24で連結される場合には、当該2個の第3把持部13において第1端Tc1同士は連結されない。
【0123】
第4実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第3実施形態では、複数の第3把持部13を具備するから、第1実施形態の構成と比較して、補強部材Bにさらに強固に装着できるという利点がある。補強部材Bへの装着のしやすさと、補強部材Bに強固に装着することを踏まえると、第3把持部13は1個(すなわちN=1)または3個(すなわちN=2)である構成が好適である。なお、第2実施形態や第3実施形態の構成に第4実施形態の構成を適用してもよい。
【0124】
<第5実施形態>
ここで、固定部材100は、複数個(例えば100個)を袋詰めにされた状態で梱包され、施工の際に一個ずつ取り出して使用することも想定される。しかし、複数個が袋詰めにされていると、固定部材100同士が絡んでしまい、1個の固定部材100を取り出しにくいという問題がある。以上の事情を考慮して、第5実施形態では、固定部材100の梱包形態を提案する。
【0125】
以下の説明では、固定部材100の全長方向における第1把持部11の第2端Ta2から第2把持部12の第1端Tb1までの間の部分(すなわち固定部材100の全長方向において第1突出部41と第2突出部42とを除いた部分)を、便宜的に「取付部M」と表記する。例えば、第1実施形態においては、取付部Mは、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13と第1連結部21と第2連結部22とである。
【0126】
第5実施形態に係る複数の固定部材100の梱包形態(以下「固定部材セット」という)について説明する。図18から図20は、第5実施形態は、固定部材セット500を例示する図である。
【0127】
図18および図19に例示される通り、固定部材セット500は、保持部材300と、当該保持部材300に保持されたK個(Kは自然数)の固定部材100とを具備する。
【0128】
保持部材300は、平板状の部材である。図18は、保持部材300を第1面R1側(Z方向の正側)からみたときの正面図であり、図19は、保持部材300を第1面R1とは反対側の第2面R2側(Z方向の負側)から見たときの背面図である。図20は、1個の固定部材100に着目した側面図(X方向の正側からみたときの側面図)である。
【0129】
保持部材300の厚さは、例えば0.5~1.5mmである。保持部材300は、典型的には紙製(厚紙)であるが、樹脂製等であってもよい。保持部材300の大きさ(面積)は、保持する固定部材100の個数に応じて適宜に変更し得る。
【0130】
保持部材300には、K個の貫通孔Eが形成される。図18および図19では、Nが8の場合を例示するが、Nの値(すなわち貫通孔Eおよび固定部材100の個数)は任意である。なお、貫通孔Eの形成には、公知の穴あけ技術(例えばレーザー加工や打ち抜き加工)が任意に採用される。
【0131】
各貫通孔Eの形状は、取付部Mを嵌め込み可能であれば、特に限定されない。第5実施形態では、長方形である貫通孔Eを例示する。図20に例示される通り、X方向からみて、取付部Mのうち第1突出部41および第2突出部42よりもZ方向の負側にある部分Maが貫通孔Eに嵌め込まれる。
【0132】
取付部Mの部分Maが第1面R1側から貫通孔Eに嵌め込まれると、第1突出部41と第2突出部42とが保持部材300を挟んで部分Maとは反対側に位置する状態で、固定部材100が保持部材300に保持される。すなわち、部分Maは保持部材300の第2面R2側に位置し、第1突出部41と第2突出部42とが第1面R1側に位置する。
【0133】
図18および図19に例示される通り、取付部Mの部分Maが貫通孔Eに嵌め込まれて、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とが貫通孔Eの内面に当接することで、固定部材100が保持部材300に保持される。第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とはそれぞれY方向の負側と正側との双方において、貫通孔Eの内面に当接する。したがって、固定部材100が保持部材300に保持される。なお、Y方向は、第3把持部13の第1端Tc1と第2端Tc2とを通る線分(図8に図示するJ)に平行な方向であるとも換言できる。
【0134】
貫通孔EにおけるY方向の長さE1は、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とがそれぞれY方向の負側と正側との双方において貫通孔Eの内側に当接可能であり、取付部M(部分Ma)を貫通孔Eに嵌め込んだときに固定部材100がずれずに、かつ、貫通孔Eから取付部M(部分Ma)を抜き差しすることが可能なように設定する。長さE1は、第3湾曲部131の外周で確定される仮想的な円Sa(図8に図示)の直径に応じて適宜に設定される。具体的には、長さE1は、円Saの直径に対して、例えば0.75~0.99倍であり、好ましくは0.91~0.97倍になるように、設定される。
【0135】
貫通孔EにおけるX方向の長さE2は、Z方向からみたときに、第1把持部11と第2把持部12との間の距離を上回る長さであれば任意である。長さE2は、図19におけるZ方向からの平面視において、第1把持部11におけるX方向の正側の表面から第2把持部12におけるX方向の負側の表面までの距離(すなわち取付部MにおけるX方向の長さ)に対して、例えば1.1~1.3倍程度である。
【0136】
図18および図19では、K個の固定部材100の各々は、貫通孔Eに対して第1突出部41がY方向の正側に位置し、第2突出部42がY方向の負側に位置するように、貫通孔Eに嵌め込まれた場合を例示する。
【0137】
以上の説明から理解される通り、第5実施形態では、取付部Mを貫通孔Eに嵌め込むことで、各固定部材100が保持部材300に別個に保持されている。ひいては、K個の固定部材100が袋詰めにされた状態で梱包されている構成と比較して、固定部材100を一個ずつ取り出しやすいという利点がある。
【0138】
なお、第5実施形態に係る固定部材セット500において、1つの保持部材300に、相異なる大きさのK個の固定部材100が保持されてもよい。以上の構成では、各固定部材100の大きさに応じて各貫通孔Eの大きさ(E1およびE2)も異なり得る。また、第5実施形態に係る固定部材セット500として梱包される固定部材100は、前述の各形態の固定部材100には限定されない。
【0139】
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0140】
(1)前述の各形態では、各湾曲部(111,121,131)は円弧状である構成を例示したが、各湾曲部の形状は補強部材Bの外周面に沿う形状であれば円弧状には限定されない。各湾曲部の形状および大きさは、装着対象となる補強部材Bの外周面を把持することが可能であれば任意である。
【0141】
(2)前述の各形態では、第1把持部11が直線部112を含む構成を例示したが、第1把持部11において直線部112は必須ではない。例えば、第1湾曲部111が第1端Ta1まで連続して形成さてもよい。また、直線部112に代えて曲線状の部分を第1把持部11が含んでもよい。同様に、第2把持部12が直線部122を含む構成を例示したが、第1把持部11において直線部122は必須ではない。
【0142】
また、前述の各形態では、第3把持部13が第1直線部132と第2直線部133とを含む構成を例示したが、第2把持部12において第1直線部132および第2直線部133は必須ではない。例えば、第3湾曲部131が第1端Tc1および第2端Tc2まで連続して形成されてもよい。また、第1直線部132および第2直線部133に代えて曲線状の部分を第3把持部13が含んでもよい。
【0143】
(3)前述の各形態では、X方向からみたときに基準直線L0に対して対称な形状である第3把持部13(図8)を例示したが、第3把持部13の構成は以上の例示に限定されない。例えば、第1端Tc1および第2端Tc2の何れか一方が第3把持部13と基準直線L0とが交差する部分に近い構成も採用される。
【0144】
(4)前述の各形態では、X方向からみたときに、第1把持部11の第2端Ta2が基準直線L0と当該第1把持部11とが交差する部分Uに第1把持部11の第1端Ta1よりも近い位置にある構成(図9)を例示したが、例えば、当該部分Uからみて相互に反対側において同じ距離に第1端Ta1と第2端Ta2とがある構成や、第2端Ta2が第1端Ta1よりも部分Uから離れた位置にある構成も採用される。
【0145】
ただし、第1把持部11の第2端Ta2が基準直線L0と当該第1把持部11とが交差する部分Uに第1把持部11の第1端Ta1よりも近い位置にある構成によれば、第2端Ta2が当該部分Uを挟んで第1端Ta1と同じ位置にある構成と比較して、第1端Ta1と第2端Ta2との間隔が広がるから、補強部材Bを嵌め込みやすいという利点がある。
【0146】
(5)前述の各形態では、X方向からみたときに、第2把持部12の第1端Tb1が基準直線L0と当該第2把持部12とが交差する部分Uに第2把持部12の第2端Tb2よりも近い位置にある構成(図10)を例示したが、例えば、当該部分Uからみて相互に反対側において同じ距離に第1端Tb1と第2端Tb2とがある構成や、第1端Ta1が第2端Ta2よりも部分Uから離れた位置にある構成も採用される。
【0147】
ただし、第2把持部12の第1端Tb1が基準直線L0と当該第2把持部12とが交差する部分Uに第2把持部12の第2端Tb2よりも近い位置にある構成によれば、第1端Tb1が当該部分Uを挟んで第2端Tb2と同じ位置にある構成と比較して、第1端Tb1と第2端Tb2との間隔が広がるから、補強部材Bを嵌め込みやすいという利点がある。
【0148】
なお、X方向からみたときにおいて、第3把持部13の第1端Tc1と第1把持部11の第1端Ta1との位置は、同じである構成を例示したが、第3把持部13や第1把持部11の形状によっては相違する場合もある。同様に、X方向からみたときにおいて、第3把持部13の第2端Tc2と第2把持部12の第2端Tb2との位置は、第3把持部13や第2把持部12の形状によっては相違する場合もある。
【0149】
(6)前述の各形態では、第1突出部41と第2突出部42とが直線状である構成を例示したが、例えば、第1突出部41と第2突出部42とが曲線状の部分を含んでもよい。固定部材100を装着された状態の補強部材Bが穿孔内に挿入されたときに、第1突出部41と第2突出部42とが穿孔の内壁に接触することが可能であれば、第1突出部41と第2突出部42との形状は任意である。なお、第1突出部41と第2突出部42とが直線状である構成によれば、例えば第1突出部41と第2突出部42とが曲線状である構成と比較して、補強部材Bを穿孔内で強固に固定できるという利点がある。また、第1突出部41と第2突出部42とは、長さや形状が相違してもよい。
【0150】
同様に、角度θ11と角度θ12と角度θ21と角度θ22とについても、第1突出部41と第2突出部42とが穿孔の内壁に接触することが可能であれば、任意である。
【0151】
(7)前述の各形態では、第1連結部21と第2連結部22とが曲線状である構成を例示したが、第1連結部21と第2連結部22との形状は以上の構成には限定されない。例えば、第1連結部21と第2連結部22とが直線状である構成も採用される。第1連結部21の形状は、第1把持部11と第3把持部13とを連結することが可能であれば任意である。同様に、第2連結部22の形状は、第2把持部12と第3把持部13とを連結することが可能であれば任意である。
【0152】
(8)前述の各形態において、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13と第1連結部21と第2連結部22と第1突出部41と第2突出部42とに加えて、他の要素を固定部材100が含んでもよい。
【0153】
(9)前述の各形態では、異形棒鋼に固定部材100を装着させる場合を例示したが、その他の各種の補強部材Bに本発明の固定部材100は利用される。
【0154】
(10)前述の各形態において、固定部材100を構成する線材の線径は、装着対象となる補強部材Bの種類やサイズに応じて適宜に選択される。例えば、補強部材Bが全ねじボルトである場合には、線材の線径はねじピッチ以下に設定することが好適である。線材の線径は、例えば1.5mm以上5.0mm以下である。例えば、補強部材Bの直径が19mmであるときは線材の線径は1.5mmであり、補強部材Bの直径が22mmであるときは線材の線径は2.0mmであり、補強部材Bの直径が25mmであるときは線材の線径は2.3mmであり、補強部材Bの直径が29mmであるときは線材の線径は2.5mmであり、補強部材Bの直径が32mmであるときは線材の線径は3.0mmである。
【0155】
(11)補強部材Bを構成する線材は、例えば鉄などの金属で形成される。補強部材Bには、酸性土壌に対する耐久性の観点から、溶融亜鉛メッキなどにより耐食性が付与されている。そこで、補強部材Bに装着される固定部材100の線材は、異種金属の接触による自然電位差による腐食を考慮して、表面が亜鉛で形成された補強部材Bと同じ材料の線材であること好ましい。線材は、表面が亜鉛で形成されていれば、全体が亜鉛で形成された線材であっても、表面が溶融亜鉛でメッキ加工された線材であってもよい。
【0156】
(12)ここで、補強部材Bを設ける地盤が岩質ではなく、粘土質などの柔らかい地質である場合には、第1突出部41および第2突出部42が穿孔Hの内壁に食い込んで固定部材100として(すなわちストッパーおよびスペーサーとして)十分に機能しない可能性もある。そこで、図21に例示される通り、第1突出部41および第2突出部42に、補助部材70を設けてもよい。補助部材70は、穿孔Hの内壁との接触面積を大きくするための部材である。補助部材70は、各突出部(41,42)に後付けで装着できる。
【0157】
図22は、補助部材70の上面図および正面図である。図22に例示される通り、補助部材70は、第1部材71と第2部材72とを有する。第1部材71は、長尺な板状の部材である。第1部材71の大きさは、任意であるが、例えば、長手方向(図21において突出部41,42が延在する方向)の長さが60mm±30mmであり、短手方向の長さが50mm±2mmであり、厚さが線材の線径程度である。
【0158】
第2部材72は、筒状の部材である。第2部材72の内側に各突出部(41,42)が挿入可能である。すなわち、第2部材72の内周面と突出部(41,42)の外周面が対向するように、当該突出部(41,42)に装着部が取り付けられる。第1部材71の一方の表面において当該第1部材71の長手方向に沿って第2部材72が設けられる。第2部材72の内径は、例えば線材の線径以下である。
【0159】
図23には、他の態様に係る補助部材70の上面図および正面図である。第1部材71は、図22と同様である。図23の第2部材72は、正面視において一部に切欠部723を有する。切欠部723は、第2部材72における長手方向の全長にわたり設けられる。切欠部723の幅(上面視において第1部材71の短手方向に沿った長さ)は、例えば第2部材72の内径よりも小さい。図23の例示では、補助部材70は、切欠部723から突出部(41,42)が取り付けられる。
【0160】
図24は、他の態様に係る補助部材70の上面図および正面図である。図22と同様に、第1部材71は板状の部材であり、第2部材72は筒状の部材である。ただし、第1部材71の短手方向における一方の端部に、第2部材72の長手方向における一方の端部が位置するように、第1部材71と第2部材72とが形成される。
【0161】
図25に例示される通り、図24の補助部材70は、一枚の板状の部材80を加工して簡便に形成することができる。部材80は、長尺状であり、長手方向に沿って第1区間81と第2区間82とに区分される。第1区間81は、第1部材71になる部分であり、第2区間82は、第2部材72になる部分である。第1区間81と第2区間82との境界に長手方向の双方側から中心部に切り込み(図25の破線)設ける。そして、当該切り込みから中心部に向かって部材80を折り曲げることで第2部材72を形成する。
【0162】
ただし、補助部材70の形状は、以上の例示には限定されない。補助部材70の形状は、突出部(41,42)に後付けで装着可能であり、当該突出部(41,42)よりも穿孔Hの内壁との接触面積を大きくできるような形状であれば、任意である。例えば、円筒状であり、内周面側に突出部(41,42)が挿入される補助部材70であってもよい。補助部材70の素材は、任意であり、例えば鉄等の金属やゴム等の弾性部材が想定される。
【0163】
以上の説明から理解される通り、固定部材100は、第1突出部41および第2突出部42に装着可能であり、地盤との接触面積を大きくするための補助部材70を含んでもよい。
【0164】
(13)本発明は、補強部材Bの打設方法であって、固定部材100が装着された補強部材Bを充填材が充填された穿孔内に当該充填材が硬化する前に挿入する工程を含む打設方法としても観念できる。
【0165】
(14)ここで、穿孔Hの内周面は凹凸がある場合がある。特に、穿孔Hをウォータジェットで形成した場合には、穿孔Hの内周面に凹凸が発生しやすい。穿孔H内に凹凸があると、第1突出部41および第2突出部42が穿孔Hの内周面に当接できないおそれがある。以上の事情を考慮して、穿孔H内の凹凸に応じて、第1突出部41および第2突出部42の双方または一方の長さを調整(切断)して短くした上で、固定部材100を補強部材Bに装着することも想定される。第1突出部41または第2突出部42の長さを調整することで、穿孔H内に強固に当接することができる。
【符号の説明】
【0166】
11 :第1把持部
12 :第2把持部
13 :第3把持部
21 :第1連結部
22 :第2連結部
23 :第3連結部
24 :第4連結部
41 :第1突出部
42 :第2突出部
70 :補助部材
71 :第1部材
72 :第2部材
723 :切欠部
80 :部材
81 :第1区間
82 :第2区間
100 :固定部材
111 :第1湾曲部
112 :直線部
121 :第2湾曲部
122 :直線部
131 :第3湾曲部
132 :第1直線部
133 :第2直線部
300 :保持部材
500 :固定部材セット
B :補強部材
F :基準平面
H :穿孔
L0 :基準直線
Ta1 :第1把持部の第1端
Ta2 :第1把持部の第2端
Tb1 :第2把持部の第1端
Tb2 :第2把持部の第2端
Tc1 :第3把持部の第1端
Tc2 :第3把持部の第2端
図1
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