(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107984
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用画像診断装置及び医用情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/50 20240101AFI20240802BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240802BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240802BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
A61B6/03 375
A61B6/00 331E
A61B6/00 370
A61B6/03 377
A61B5/055 383
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012209
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊平
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昂彦
(72)【発明者】
【氏名】渕上 航
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA22
4C093AA24
4C093CA33
4C093DA02
4C093EE20
4C093FD09
4C093FF17
4C093FF21
4C093FF28
4C096AA10
4C096AA11
4C096AD14
4C096AD19
4C096AD24
4C096DC40
4C096FC14
(57)【要約】
【課題】手技中の造影剤の使用をより適切なものとすること。
【解決手段】実施形態に係る医用情報処理装置は、被検体に対して手技中に使用可能な造影剤の総量を取得する取得部と、前記被検体に関する造影条件ごとの解析結果を取得する解析部と、前記造影剤の総量と前記解析結果とに基づいて、造影剤の使用に関する情報を出力する出力部とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して手技中に使用可能な造影剤の総量を取得する取得部と、
前記被検体に関する造影条件ごとの解析結果を取得する解析部と、
前記造影剤の総量と前記解析結果とに基づいて、造影剤の使用に関する情報を出力する出力部と
を備える、医用情報処理装置。
【請求項2】
前記造影剤の使用に関する情報は、前記造影剤を前記被検体に対して注入することのできる回数、時間及び量のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記造影剤の使用に関する情報は、前記造影剤を前記被検体に対して注入することのできる回数、時間及び量のうち少なくとも1つに基づく、造影剤の利用計画を含む、請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記造影剤を前記被検体に対して注入することのできる回数、時間及び量のうち少なくとも1つを、前記被検体に対して前記造影剤を注入するインジェクション位置、手技中に前記被検体に対して使用された前記造影剤の累積量、及び、前記総量のうち少なくとも1つと共に出力する、請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記造影剤の使用に関する情報は、前記造影剤を前記被検体に対して注入する回数、時間及び量のうち少なくとも1つの値が取得可能な場合において、当該値を実現可能な造影条件への変更に関する情報を含む、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記変更に関する情報は、前記被検体に対して前記造影剤を注入するインジェクション位置の変更を含む、請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前期出力部は、前記変更に関する情報として、変更前のインジェクション位置と変更後の少なくとも1つのインジェクション位置とを前記被検体の血管が造影された造影画像上に表示させ、更に、インジェクション位置を変更することにより削減される前記造影剤の量を、前記変更後の少なくとも1つのインジェクション位置に対応付けて表示させる、請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記変更に関する情報は、前記被検体に対して注入される前記造影剤の濃度の低下を含む、請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記変更に関する情報は、前記被検体に対して前記造影剤を注入するための医療デバイスの変更を含む、請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記出力部は、前記変更に関する情報を、造影条件を変更することにより削減される前記造影剤の量と共に出力する、請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
前記出力部は、前記変更に関する情報を、変更前後の各造影条件に対応した情報であって、前記造影剤を前記被検体に対して注入することのできる回数、時間及び量のうち少なくとも1つと、前記被検体に対して前記造影剤を注入するインジェクション位置との少なくとも一方と共に出力する、請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項12】
前記出力部は、前記変更に関する情報を、手技中に前記被検体に対して使用された前記造影剤の累積量、及び、前記総量のうち少なくとも一方と共に出力する、請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項13】
前記造影剤の使用に関する情報は、前記被検体における注目領域が造影された造影画像を収集することのできる推奨造影条件を含む、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項14】
前記推奨造影条件は、前記被検体に対して前記造影剤を注入する際の圧力、流速及び時間のうち少なくとも1つの条件を含む、請求項13に記載の医用情報処理装置。
【請求項15】
前記出力部は、前記造影剤の前記被検体の血管内への注入を実行するインジェクタに対して前記推奨造影条件を送信する、請求項13に記載の医用情報処理装置。
【請求項16】
前記解析結果は、前記造影条件で前記造影剤が注入された前記被検体から収集される造影画像の推定結果を含む、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項17】
前記出力部は、前記造影剤の使用に関する情報として、前記造影剤が注入された前記被検体からX線画像を収集するX線診断装置に対して、当該X線診断装置が備える天板の制御情報、及び、前記X線画像の撮影タイミングのうち少なくとも1つを含む情報を出力する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項18】
前記解析部は、前記被検体の血管の管腔構造情報と、関心領域の位置と、前記被検体に対して前記造影剤を注入するインジェクション位置とに基づいて、前記解析結果を取得する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項19】
被検体の造影画像を収集する収集部と、
前記造影画像の収集に用いられる造影剤について、前記被検体に対して手技中に使用可能な造影剤の総量を取得する取得部と、
前記被検体に関する造影条件ごとの解析結果を取得する解析部と、
前記造影剤の総量と前記解析結果とに基づいて、造影剤の使用に関する情報を出力する出力部と
を備える、医用画像診断装置。
【請求項20】
被検体に対して手技中に使用可能な造影剤の総量を取得し、
前記被検体に関する造影条件ごとの解析結果を取得し、
前記造影剤の総量と前記解析結果とに基づいて、造影剤の使用に関する情報を出力する
各処理をコンピュータに実行させる、医用情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用画像診断装置及び医用情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血管を対象とした手技においては、造影剤を用いて、被検体の血管が造影された造影画像を収集する場合がある。例えば、X線診断装置は、造影剤が注入された被検体に対するX線スキャンを実行して、血管が造影された透視像を収集したり、より高画質の血管造影X線画像を収集したりすることができる。また、X線CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置によれば、血管が造影された3次元画像を収集することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-110230号公報
【特許文献2】特開2006-305323号公報
【特許文献3】特表2009-507611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、手技中の造影剤の使用をより適切なものとすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用情報処理装置は、被検体に対して手技中に使用可能な造影剤の総量を取得する取得部と、前記被検体に関する造影条件ごとの解析結果を取得する解析部と、前記造影剤の総量と前記解析結果とに基づいて、造影剤の使用に関する情報を出力する出力部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る流れモデルについて説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る造影画像の推定について説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る造影剤の利用可能情報について説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る血管形状の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る血管形状の変形例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る造影剤の使用予定値を実現可能な造影条件への変更に関する情報について説明するための図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る変更に関する情報について説明するための図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係る変更に関する情報の表示例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る変更に関する情報の表示例を示す図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係る流速と造影剤の拡散について説明するための図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態に係る処理の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、他の実施形態に係るWashout能について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、医用情報処理装置、医用画像診断装置及び医用情報処理プログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、
図1に示す医用情報処理システム1を例として説明する。例えば、医用情報処理システム1は、医用画像診断装置10と、画像保管装置20と、医用情報処理装置30とを備える。医用画像診断装置10と、画像保管装置20と、医用情報処理装置30とは、ネットワークNWを介して相互に接続される。なお、
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。
【0009】
医用画像診断装置10は、被検体から医用画像を収集する装置である。被検体の血管内に造影剤が注入されている場合、医用画像診断装置10は、被検体の血管が造影された医用画像を収集することができる。医用画像診断装置10の具体例としては、X線診断装置やX線CT装置、MRI装置などを挙げることができる。
【0010】
なお、以下では、血管が造影された医用画像を、単に造影画像とも記載する。造影画像は、2次元画像であってもよいし3次元画像であってもよい。例えば、医用画像診断装置10がX線CT装置である場合、血管内に造影剤が注入された状態の被検体を対象としてCTスキャンを実行することにより、血管が造影された複数ビューの投影データを収集して、血管が造影された3次元のX線CT画像を再構成することができる。また、造影画像は、骨や軟組織等の背景成分が差分されたDSA(Digital Subtraction Angiography)画像であってもよい。被検体の血管内への造影剤の注入は、医用画像診断装置10が備えるインジェクタにより行われてもよいし、医師や医療従事者等のユーザが手動で行なってもよい。
【0011】
画像保管装置20は、医用画像診断装置10により収集された医用画像を保管する装置である。例えば、画像保管装置20は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。具体的には、画像保管装置20は、ネットワークNWを介して医用画像診断装置10から医用画像を取得し、装置内又は装置外に設けられたメモリに記憶させる。
【0012】
なお、
図1では医用画像診断装置10を1つのみ図示するが、医用情報処理システム1は、複数の医用画像診断装置10を含んでいてもよい。この場合、画像保管装置20は、複数の医用画像診断装置10により収集された医用画像を保管する。また、医用情報処理システム1は、複数の医用画像診断装置10として、X線診断装置、X線CT装置、MRI装置といった複数種類のモダリティを含んでもよい。この場合、画像保管装置20は、X線画像、X線CT画像、MRI画像といった各種の医用画像を保管する。
【0013】
医用情報処理装置30は、入力インタフェース31と、ディスプレイ32と、メモリ33と、処理回路34とを有する。医用情報処理装置30は、後述する処理回路34の処理により、医用画像診断装置10における造影剤の使用に関する情報を出力し、手技中の造影剤の使用をより適切なものとすることを可能とする。
【0014】
入力インタフェース31は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路34に出力する。例えば、入力インタフェース31は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インタフェース31は、処理回路34と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース31は、モーションキャプチャによりユーザからの入力操作を受け付ける回路であっても構わない。一例を挙げると、入力インタフェース31は、トラッカーを介して取得した信号やユーザについて収集された画像を処理することにより、ユーザの体動や視線等を入力操作として受け付けることができる。また、入力インタフェース31は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用情報処理装置30本体とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を医用情報処理装置30本体へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース31の例に含まれる。
【0015】
ディスプレイ32は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ32は、入力インタフェース31を介してユーザから各種の指示や設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。例えば、ディスプレイ32は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ32は、デスクトップ型でもよいし、医用情報処理装置30本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0016】
なお、
図1においては医用情報処理装置30がディスプレイ32を備えるものとして説明するが、医用情報処理装置30は、ディスプレイ32に代えて又は加えて、プロジェクタを備えてもよい。プロジェクタは、処理回路34による制御の下、スクリーンや壁、床、被検体Pの体表面等に対して投影を行なうことができる。一例を挙げると、プロジェクタは、プロジェクションマッピングによって、任意の平面や物体、空間等への投影を行なうこともできる。例えば、処理回路34は、後述する合成画像をプロジェクタに表示させることとしても構わない。
【0017】
メモリ33は、処理回路34による制御の下、各種データの保存を行なう。なお、メモリ33におけるデータの保存については後述する。また、メモリ33は、医用情報処理装置30に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶することもできる。例えば、メモリ33は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。或いは、メモリ33は、医用情報処理装置30とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0018】
処理回路34は、取得機能34a、解析機能34b及び出力機能34cを実行することで、医用情報処理装置30全体の動作を制御する。取得機能34aは、取得部の一例である。解析機能34bは、解析部の一例である。出力機能34cは、出力部の一例である。
【0019】
例えば、処理回路34は、取得機能34aに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、被検体に対して手技中に使用可能な造影剤の総量を取得する。また、処理回路34は、解析機能34bに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、被検体に関する造影条件ごとの解析結果を取得する。また、処理回路34は、出力機能34cに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、造影剤の総量と解析結果とに基づいて、造影剤の使用に関する情報を出力する。取得機能34a、解析機能34b及び出力機能34cによる処理の詳細については後述する。
【0020】
図1に示す医用情報処理装置30においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ33へ記憶されている。処理回路34は、メモリ33からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路34は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0021】
なお、
図1においては単一の処理回路34にて、取得機能34a、解析機能34b及び出力機能34cが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路34を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路34が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0022】
また、処理回路34は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路34は、メモリ33から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、医用情報処理装置30とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、
図1に示す各機能を実現する。
【0023】
次に、医用画像診断装置10の構成の一例を、
図2を用いて説明する。
図2では、医用画像診断装置10の一例として、X線診断装置10Aを示す。
図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置10Aの構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図2に示すように、X線診断装置10Aは、X線高電圧装置101と、X線管102と、X線絞り器103と、天板104と、Cアーム105と、X線検出器106と、入力インタフェース107と、ディスプレイ108と、メモリ109と、処理回路110とを備える。
【0025】
X線高電圧装置101は、処理回路110による制御の下、X線管102に高電圧を供給する。例えば、X線高電圧装置101は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管102に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管102が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
【0026】
X線管102は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管102は、X線高電圧装置101から供給される高電圧を用いて、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。
【0027】
X線絞り器103は、X線管102により発生されたX線の照射範囲を絞り込むコリメータと、X線管102から曝射されたX線を調節するフィルタとを有する。
【0028】
X線絞り器103におけるコリメータは、例えば、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。コリメータは、絞り羽根をスライドさせることで、X線管102が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管102のX線照射口付近に設けられる。
【0029】
X線絞り器103におけるフィルタは、被検体Pに対する被曝線量の低減とX線画像の画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、被検体Pに吸収されやすい軟線成分を低減したり、X線画像のコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタは、その材質や厚み、位置などによってX線の線量及び照射範囲を変化させ、X線管102から被検体Pへ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
【0030】
例えば、X線絞り器103は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路110による制御の下、駆動機構を動作させることによりX線の照射を制御する。例えば、X線絞り器103は、処理回路110から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、コリメータの絞り羽根の開度を調整して、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、X線絞り器103は、処理回路110から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、フィルタの位置を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の線量の分布を制御する。
【0031】
天板104は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。なお、被検体Pは、X線診断装置10Aに含まれない。例えば、寝台は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路110による制御の下、駆動機構を動作させることにより、天板104の移動・傾斜を制御する。例えば、寝台は、処理回路110から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、天板104を移動させたり、傾斜させたりする。
【0032】
Cアーム105は、X線管102及びX線絞り器103と、X線検出器106とを、被検体Pを挟んで対向するように保持する。例えば、Cアーム105は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路110による制御の下、駆動機構を動作させることにより、回転したり移動したりする。例えば、Cアーム105は、処理回路110から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、X線管102及びX線絞り器103と、X線検出器106とを被検体Pに対して回転・移動させ、X線の照射位置や照射角度を制御する。なお、
図2では、X線診断装置10Aがシングルプレーンの場合を例に挙げて説明しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、バイプレーンの場合であってもよい。
【0033】
X線検出器106は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器106は、X線管102から照射されて被検体Pを透過したX線を検出して、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路110へと出力する。なお、X線検出器106は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0034】
入力インタフェース107は、上述した入力インタフェース31と同様にして構成することができる。例えば、入力インタフェース107は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路110に出力する。
【0035】
ディスプレイ108は、上述したディスプレイ32と同様にして構成することができる。例えば、ディスプレイ108は、処理回路110による制御の下、医用画像やGUIの表示を行なう。また、X線診断装置10Aは、ディスプレイ108に代えて又は加えて、プロジェクタを備えることとしてもよい。
【0036】
メモリ109は、上述したメモリ33と同様にして構成することができる。例えば、メモリ109は、処理回路110による制御の下で各種データの保存を行なったり、X線診断装置10Aに含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶したりする。
【0037】
処理回路110は、収集機能110a及び出力機能110bを実行することで、X線診断装置10A全体の動作を制御する。収集機能110aは、造影画像を収集する収集部の一例である。
【0038】
例えば、処理回路110は、収集機能110aに対応するプログラムをメモリ109から読み出して実行することにより、被検体Pの撮影を実行して、X線画像を収集する。例えば、収集機能110aは、X線高電圧装置101を制御し、X線管102に供給する電圧を調整して、被検体Pに対して照射されるX線量やオン/オフを制御する。また、例えば、収集機能110aは、X線絞り器103や天板104、Cアーム105等の動作を制御することにより、X線の照射範囲やX線の線量の分布、X線の照射角度等を制御する。具体的には、収集機能110aは、X線絞り器103の動作を制御し、コリメータが有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、収集機能110aは、X線絞り器103の動作を制御し、フィルタの位置を調整することで、X線の線量の分布を制御する。また、収集機能110aは、Cアーム105を回転させたり、移動させたりすることで、X線の照射範囲及び照射角度を制御する。また、収集機能110aは、天板104を移動させたり、傾斜させたりすることで、X線の照射範囲及び照射角度を制御する。また、収集機能110aは、X線検出器106から受信した検出信号に基づいてX線画像を生成する。
【0039】
ここで、収集機能110aは、造影剤が注入された状態の被検体Pを対象として撮影を実行することにより、造影画像を収集することができる。例えば、収集機能110aは、図示しないインジェクタの動作を制御して被検体Pの血管内に造影剤を注入することにより、造影画像を収集する。なお、造影剤の注入は、ユーザが手動で行なってもよい。
【0040】
また、例えば、処理回路110は、出力機能110bに対応するプログラムをメモリ109から読み出して実行することにより、収集機能110aにより収集されたX線画像を出力する。例えば、出力機能110bは、収集されたX線画像をディスプレイ108に表示させる。また、出力機能110bは、収集されたX線画像を、ネットワークNWを介して画像保管装置20に送信して保管させる。
【0041】
図2に示すX線診断装置10Aにおいては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ109へ記憶されている。処理回路110は、メモリ109からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路110は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0042】
なお、
図2においては単一の処理回路110にて、収集機能110a及び出力機能110bが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路110を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路110が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0043】
また、処理回路110は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路110は、メモリ109から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、X線診断装置10AとネットワークNWを介して接続されたサーバ群を計算資源として利用することにより、
図2に示す各機能を実現する。
【0044】
以上、医用情報処理システム1の構成例について説明した。かかる構成の下、X線診断装置10Aは、被検体Pに対する手技が行われている間、被検体Pの血管が造影された造影画像を収集する。また、医用情報処理装置30は、後述する造影剤の使用に関する情報を出力することにより、X線診断装置10Aにおける造影剤の適切な使用を支援する。
【0045】
例えば、被検体Pが虚血性心疾患を有する患者である場合、経皮的冠動脈インターベンション(Percutaneous Coronary Intervention:PCI)等の血管内治療が実行される。このような手技が行われている間、X線診断装置10Aは、造影画像を適宜収集して表示させる。これにより、医師等のユーザは、血管の形状や血管内に挿入した医療デバイスの位置を把握しつつ、手技を進行することができる。
【0046】
ここで、X線診断装置10Aが造影画像を収集するために使用される造影剤は、例えば、ヨードを主成分とするヨード造影剤である。被検体Pの血管内に注入されたヨード造影剤は腎臓で適宜代謝されるが、ヨード造影剤が過剰に注入されることは好ましくなく、一般にその使用量については上限が設けられる。特に、被検体Pの腎機能が十分でない場合には使用量を制限する必要がある。ヨード造影剤の使用量の上限については、例えば、術前及び術中にクレアチニン値を測定し、被検体Pの体重を加味して決定される。
【0047】
造影剤の使用量は少ない方が好ましいが、単に造影剤の量を減らしたのでは造影画像において血管が不明瞭になってしまい、手技の効率に影響する場合もある。造影剤をどのように使用すれば適切なのかは、被検体Pごと且つ手技のシーンごと個別に異なるものであって、その判断は容易ではない。
【0048】
そこで、医用情報処理装置30の処理回路34は、造影剤の使用に関する情報を出力することにより、X線診断装置10Aにより収集される被検体Pの造影画像を参照しながら実行される手技において、造影剤の使用をより適切なものとする。以下、造影剤の使用に関する情報を出力するまでに行われる処理回路34の各処理について説明する。
【0049】
まず、処理回路34の取得機能34aは、被検体Pに対して手技中に使用可能な造影剤の総量を取得する。例えば、取得機能34aは、上述した通り、クレアチニン値の測定結果や被検体Pの体重等に基づいて、使用可能な造影剤の総量を計算する。或いは、取得機能34aは、入力インタフェース31を介してユーザからの入力操作を受け付けることにより、使用可能な造影剤の総量を取得してもよい。
【0050】
また、解析機能34bは、
図3に示す流れモデルM1を生成する。流れモデルM1は、被検体Pの血管における血流を推定したものである。即ち、流れモデルM1は、被検体Pに対して個別化されたモデルである。
【0051】
流れモデルM1は、画像に基づく測定値、画像に基づく推測値、非画像の情報といった各種のパラメータを所定のプログラムに入力することで生成される。当該所定のプログラムは、例えば、数値流体力学(Computational fluid dynamics:CFD)に基づいた流体シミュレーションを実行するアプリケーションである。
【0052】
画像に基づく測定値の例としては、血管の断面積や体積を挙げることができる。また、画像に基づく推測値の例としては、血管内を流れる血液の圧力や流量、流速などを挙げることができる。ここで、画像とは、例えば、被検体Pから収集された3次元造影画像である。当該3次元造影画像は、X線診断装置10Aにより収集されてもよいし、X線CT装置やMRI装置などの別種のモダリティにより収集されてもよい。例えば、X線診断装置10Aは、造影剤が注入された被検体Pから、Cアーム105を回転させながら撮影角度の異なる複数の2次元造影画像を収集し、当該複数の2次元造影画像から3次元造影画像を再構成することができる。3次元造影画像については、当該3次元造影画像を収集した医用画像診断装置から直接取得してもよいし、当該3次元造影画像を保管する画像保管装置20から取得してもよい。断面積等の測定値は、被検体Pの血管の管腔構造情報の一例である。
【0053】
非画像の情報の例としては、血液粘性や薬剤特性を挙げることができる。血液粘性は、被検体Pの血液の検査結果に基づいて取得することができる。例えば、解析機能34bは、HIS(Hospital Information System)やRIS(Radiology Information System)などの情報管理システムに登録された検査結果を自動で取得し、流れモデルM1の生成に使用することができる。
【0054】
また、薬剤特性は、被検体Pに投与される薬剤に関する情報である。例えば、手技の開始前或いは手技が行われている間、被検体Pに対して、血管拡張剤や抗凝固剤といった薬剤が投与される場合がある。ここで、例えば上述の断面積が事前に収集された3次元造影画像に基づく測定値である場合、手技中における実際の断面積を推定するためには、血管拡張剤の影響を加味することが好ましい。また、例えば上述の血液粘性が事前に採取された血液の検査結果に基づく場合、手技中における実際の血液粘性を推定するためには、抗凝固剤の影響を加味することが好ましい。このように、薬剤特性を入力パラメータに含めることによって、流れモデルM1は、手技中の被検体Pの血管における血流をより正確に推定することができる。
【0055】
図3はあくまで一例であり、流れモデルM1を生成するための入力情報については種々の変形が可能である。例えば、解析機能34bは、画像に基づく測定値に代えて又は加え、被検体Pの血管形状を示す形状データを管腔構造情報として用いて、流れモデルM1を生成してもよい。このような形状データは、被検体Pから収集された3次元造影画像から血管壁面の位置を推定することにより、生成することができる。或いは、解析機能34bは、3次元造影画像そのものを、被検体Pの血管形状を示す形状データとして用いてもよい。また、解析機能34bは、非画像の情報として、ヘマトクリットなどの値を用いてもよい。
【0056】
図3の流れモデルM1は、被検体Pの血管のうち斜線のパターンを付した部分(P
inからP
outまでの部分)を関心領域(Field Of View:FOV)とし、関心領域内の血流をモデル化したものである。流れモデルM1によれば、例えば、関心領域の容積や流量、圧力などを推定することができる。
【0057】
次に、解析機能34bは、流れモデルM1に対して造影条件を入力することにより、入力した造影条件ごとの解析結果を取得する。例えば、解析機能34bは、解析結果として、任意の造影条件で造影剤が注入された被検体Pから収集される造影画像の推定結果を取得する。例えば、解析機能34bは、被検体Pに対する手技の開始前に、被検体Pの手技において予定されている造影条件で造影剤が注入された被検体Pから収集される造影画像を推定する。
【0058】
例えば、解析機能34bは、
図4に示すように、流れモデルM1とX線吸収モデルM2とを用いて、造影画像の推定結果を取得する。X線吸収モデルM2は、例えば、X線エネルギー(管電圧値)や造影剤の成分に応じた線減弱係数、造影剤の濃度等をパラメータとして、透過したX線の強度を推定する既知のモデルである。
【0059】
例えば、解析機能34bは、被検体Pに対して造影剤を注入するインジェクション位置、造影剤原液濃度、希釈率、造影剤を注入する際の圧力、流速、時間といった種々の造影条件を、流れモデルM1に入力する。これにより、造影剤注入後の各時点における、関心領域内の造影剤の分布を推定することができる。
【0060】
なお、インジェクション位置は、被検体Pに対して造影剤が注入される位置である。一般に、造影剤は、血管内に挿入されたカテーテルの先端から、血管内に送り出される。この場合、インジェクション位置は、カテーテルの先端位置となる。また、造影剤原液濃度は、造影剤原液において単位体積当たりに含まれる造影剤の質量である。造影剤は、造影剤原液を設定された希釈率で希釈した上で、血管内に注入される。
【0061】
造影剤を注入する際の圧力及び流速は、造影剤の注入速度に関する条件である。圧力が大きいほど、カテーテルの先端から血管内に送り出される時の造影剤の流速は大きくなる。また、カテーテルの径が一定である時、圧力が大きいほど、単位時間内にカテーテルの先端から血管内に送り出される造影剤の量(流量)は大きくなる。また、造影剤を注入する際の時間が長いほど、カテーテルの先端から血管内に送り出される造影剤の量は多くなる。
【0062】
更に、解析機能34bは、X線の照射条件と、関心領域内の造影剤の分布の推定結果とをX線吸収モデルM2に適用することで、造影画像の推定結果を取得する。具体的には、解析機能34bは、X線の照射条件に基づいてX線管102から照射されるX線の線量及びエネルギーを推定することができる。また、解析機能34bは、X線吸収モデルM2に従い、推定した線量及びエネルギーを有するX線が、推定した分布で造影剤が含まれる被検体Pを透過した時に生じるX線の減衰量を推定することができる。これにより、解析機能34bは、X線検出器106によって検出される時のX線の強度を推定し、また、収集される造影画像の各画素の画素値を推定することができる。
【0063】
ここで、出力機能34cは、解析機能34bによる造影画像の推定結果を出力し、医師等のユーザに提供してもよい。例えば、出力機能34cは、推定された造影画像をディスプレイ32に表示させる。解析機能34bは、造影剤注入後の各時点について造影剤の分布を推定し、各時点の造影画像を推定することもできる。この場合、出力機能34cは、造影画像の推定結果を、注入された造影剤が血管内を流れる様子を示す動画像として出力することができる。
【0064】
ここで、出力機能34cは、被検体に対して手技中に使用可能な造影剤の総量と、造影画像の推定結果とに基づいて、被検体Pにおける注目領域が造影された造影画像を収集することのできる推奨造影条件を出力してもよい。なお、注目領域とは、例えばPCI治療の対象となる狭窄部や、慢性完全閉塞病変(Chronic Total Occlusion:CTO)において治療の対象となるプラークなど、手技中にユーザが特に注目する領域である。PCI治療においては、血管内に挿入したバルーンやステント等を用いて、狭窄部を拡張する操作が行われる。また、CTOに対する手技においては、冠動脈を閉塞させているプラークを、ガイドワイヤ等のデバイスによって貫通させる操作が行われる。注目領域については、医師等のユーザが手動で設定してもよいし、被検体Pの症例や検査プロトコル等に基づいて出力機能34cが自動で設定してもよい。推奨造影条件は、造影剤の使用に関する情報の一例である。
【0065】
例えば、出力機能34cは、推定された造影画像における注目領域のコントラストを評価することにより、推奨造影条件を設定する。例えば、注目領域のコントラストが低すぎる場合には、手技中に実際に収集される造影画像においても、注目領域の血管が十分に描画されないと推定される。そこで、出力機能34cは、例えば造影剤を注入する際の圧力や流速、時間などを増加させた推奨造影条件を設定し、ユーザに提供する。また、注目領域のコントラストが高すぎる場合には、造影剤を過剰に使っている可能性があるとともに、画像の輝度が高くなりすぎてアーチファクトが発生する場合もある。そこで、出力機能34cは、例えば造影剤を注入する際の圧力や流速、時間などを低下させた推奨造影条件を設定し、ユーザに提供する。
【0066】
注目領域の適切なコントラストについては、部位や症例等に応じてプリセットされてもよいし、ユーザの操作に基づいて設定してもよい。例えば、ユーザは、被検体Pから収集された造影画像について、注目領域を観察しやすいようにコントラストを調整する画像処理を実行させる場合がある。このような画像処理済みの造影画像がある場合、出力機能34cは、当該造影画像のコントラストを適切な値として、推奨造影条件の設定を行なうことができる。また、出力機能34cは、注目領域や撮影角度に応じて適切なコントラストを適宜更新しつつ、推奨造影条件の設定を行なってもよい。
【0067】
また、血管の狭窄部の近傍においてはプラークが発達している場合が多い。また、プラークの近傍において高い圧力で造影剤の注入を行なうことにより、プラークが破綻して血管内を流れ出し、他の血管を狭窄させてしまう場合がある。そこで、出力機能34cは、プラークを破綻させないように推奨造影条件の設定を行なってもよい。例えば、出力機能34cは、プラークの硬さを評価し、プラークが柔らかく破綻しやすい場合には、造影剤を注入する圧力を低く設定する、インジェクション位置をプラークから離れた位置にするなどして、プラークが破綻しにくいように推奨造影条件を設定してもよい。
【0068】
なお、注入1回あたりの造影剤の量などの一部の造影条件については、部位や施設ごとに、経験則等に基づいて予め設定される場合がある。また、インジェクタを用いれば、設定された造影条件に従って、精度良く造影剤の注入を実現することもできる。しかしながら、最適な造影条件を設定するためには被検体Pごとの個人差を考慮する必要がある。これに対し、出力機能34cは、被検体Pに対して個別化された流れモデルM1に基づいて、より適切な推奨造影条件を設定することができる。
【0069】
別の例を挙げると、冠動脈を対象として造影剤を注入する場合、インジェクション位置や心位相に対するタイミングによっては、造影剤の一部が大動脈側に流れてしまうケースが知られている。これに対し、解析機能34bは、被検体Pに対して個別化された流れモデルM1を用いて、インジェクション位置やタイミングといった造影条件ごとに、収集される造影画像を推定することができる。そして、出力機能34cは、推定された造影画像に基づいて、大動脈側に流れる造影剤の量が最小となるインジェクション位置及びタイミングを特定し、推奨造影条件としてユーザに提供することができる。或いは、出力機能34cは、推定された造影画像に基づいて、適度な量の造影剤が大動脈側に流れるインジェクション位置及びタイミングを特定し、推奨造影条件としてユーザに提供することができる。
【0070】
例えば、出力機能34cは、推奨造影条件を、当該推奨造影条件で造影剤が注入された被検体Pから収集される造影画像の推定結果とともに、ディスプレイ32に表示させる。表示された推奨造影条件は、医師等のユーザにより参照され、また、ユーザにより適切と判断されれば、当該推奨造影条件が、被検体Pに対して手技中に造影剤を注入する際の造影条件として設定される。
【0071】
例えば、ディスプレイ32に表示された推奨造影条件を参照したユーザは、当該推奨造影条件に従って、造影剤の注入を実行する。或いは、ディスプレイ32に表示された推奨造影条件を参照したユーザは、医用画像診断装置10が備えるインジェクタによる造影設定として、入力インタフェース31を介して当該推奨造影条件を入力し、インジェクタは、入力された造影条件に従って造影剤の注入を実行する。
【0072】
或いは、出力機能34cは、推奨造影条件をインジェクタに対して送信してもよい。この時、インジェクタは、送信された推奨造影条件を、造影条件の候補として保持する。また、ユーザは、入力インタフェース31を介して、推奨造影条件を使用するか否か選択する。例えば、ユーザは、ディスプレイ32に表示された推奨造影条件を参照した上で、当該推奨造影条件を使用するか否か選択する。そして、推奨造影条件を使用する旨の入力操作が行われた場合、インジェクタは、推奨造影条件を実際の造影設定として設定し、また、設定した造影条件に従って造影剤の注入を実行する。
【0073】
なお、造影条件が変更される場合、変更後の造影条件に応じて、X線照射条件も変更した方が好ましい場合がある。例えば、血管内の造影剤が薄くなるように造影条件が変更された場合には、造影画像におけるコントラストを向上させるため、X線エネルギーを低下させることが好ましい。このように、出力機能34cは、推奨されるX線照射条件を、推奨造影条件とともに出力してもよい。
【0074】
また、出力機能34cは、手技の開始時や手技の最中において、造影剤を被検体Pに対して注入することのできる回数、時間及び量のうち少なくとも1つを出力する。造影剤を被検体Pに対して注入することのできる回数、時間及び量は、それぞれ、造影剤の使用に関する情報の一例である。以下、造影剤を被検体Pに対して注入することのできる回数、時間及び量を総称して、造影剤の利用可能情報とも記載する。
【0075】
以下、造影剤の利用可能情報について、
図5を用いて説明する。
図5は、PCI治療の開始から終了までの間における造影剤の使用例を、時間軸に沿って示したものである。
【0076】
図5においては、PCI治療が開始されて、まず、透視F1が行われている。透視F1は、X線診断装置10Aにおける撮影モードの1つであり、複数の造影画像(透視像)が経時的に収集されて、また、リアルタイムに表示される。また、
図5においては、透視F1の後、撮影DA1が行われている。撮影DA1は、X線診断装置10Aにおける撮影モードの1つであり、透視像より高画質の造影画像が撮影される。例えば、撮影DA1においては、透視F1と比較して、より多くの造影剤を注入したり、より高線量のX線を照射させたりして、高画質の造影画像を収集する。透視F1がある程度の時間継続的に行われるものであるのに対し、撮影DA1は、通常、1回又は数回のみ行われる。
【0077】
なお、造影条件は、透視と撮影とについて別個に設定されてもよい。また、設定された造影条件は、上述した推奨造影条件であってもよいし、プリセットされた造影条件やユーザが手動で設定した造影条件であってもよい。
【0078】
また、
図5においては、「現在」の時点と、「現在」以降に行われる透視F2、透視F3、透視F4、撮影DA2及び撮影DA3とが図示されている。透視F2、透視F3、透視F4、撮影DA2及び撮影DA3は、例えば、被検体Pと同様の症例を有する他の被検体に対して過去に行われたPCI治療における透視及び撮影の記録から、推定することができる。
【0079】
図5の「現在」の時点においては、透視F1及び撮影DA1において使用された造影剤の累積量が明らかとなっている。また、被検体Pに対して手技中に使用可能な造影剤の総量が、取得機能34aによって取得されている。そして、出力機能34cは、使用可能な造影剤の総量から、使用された造影剤の累積量を差分することにより、「現在」の時点以降に被検体Pに対して注入することのできる造影剤の量を計算することができる。出力機能34cは、計算した造影剤の量を、造影剤の使用に関する情報としてディスプレイ32に表示させることができる。
【0080】
ここで、出力機能34cは、造影剤の量を、時間や回数に変換することができる。例えば、出力機能34cは、透視時の造影条件に基づいて単位時間内に血管内に送り出される造影剤の量を取得し、取得した量で、「現在」の時点以降に被検体Pに対して注入することのできる造影剤の量を割ることにより、「現在」の時点以降に被検体Pに対して透視を実行できる時間の長さを計算することができる。
【0081】
また、例えば、出力機能34cは、撮影時の造影条件に基づいて撮影1回当たりの造影剤の使用量を取得し、取得した使用量で、「現在」の時点以降に被検体Pに対して注入することのできる造影剤の量を割ることにより、「現在」の時点以降に被検体Pに対して撮影を実行できる回数を計算することができる。
【0082】
例えば、出力機能34cは、
図5に示すように、「現在」の時点において、「あとX秒間の透視とY回の撮影が可能です」との表示を行なうことができる。なお、当該表示は、造影剤の使用に関する情報の一例である。「X秒」及び「Y回」は、「X秒」の透視と「Y回」の撮影とを行なった時に使用される造影剤の量が、「現在」の時点以降に被検体Pに対して注入することのできる造影剤の量を上回らないように計算される。
【0083】
出力機能34cは、利用可能情報を種々の情報と共に出力することもできる。例えば、出力機能34cは、利用可能情報を、インジェクション位置や、手技中に被検体Pに対して使用された造影剤の累積量、被検体Pに対して手技中に使用可能な造影剤の総量など共に、ディスプレイ32に表示させてもよい。
【0084】
上述した通り、出力機能34cは、利用可能情報を、造影剤の使用に関する情報として出力することができる。当該利用可能情報については、時間の経過に伴って適宜更新することができる。例えば、
図5に示す状態から透視F2が更に実行された場合、出力機能34cは、透視F2において使用された造影剤の量を累積量に加算し、透視F3以降における造影剤の利用可能情報を改めて計算して、出力することができる。
【0085】
造影剤の利用可能情報を参照したユーザとしては、手技の終了まで造影剤が足りるかどうか検討し、造影条件や、透視の秒数、撮影の回数などを微調整することができる。例えば、手技の終了までに造影剤が十分に足りると判断した場合、ユーザは、例えば透視の秒数を長くして、造影画像に基づく医療デバイスの配置や血管形状の把握をより確実なものとしつつ、手技を進めることができる。一方で、手技の終了まで造影剤が足りない可能性があると判断した場合、ユーザは、例えば透視の秒数を最低限の長さに留めるよう心掛けつつ、手技を進めることができる。
【0086】
出力機能34cは、造影剤の利用可能情報に基づいて造影剤の利用計画を立て、ユーザに提供してもよい。例えば、
図5に示した透視F2、透視F3、透視F4、撮影DA2及び撮影DA3のように、これから行なわれる手技中に実行される透視の秒数や撮影の回数は推定が可能である。従って、出力機能34cは、造影剤の利用可能情報に基づいて、手技の終了まで造影剤が足りるかどうか判定し、造影剤の利用計画を立てることができる。造影剤の利用計画は、造影剤の使用に関する情報の一例である。
【0087】
例えば、手技の終了までに造影剤が十分に足りると判断した場合、出力機能34cは、例えば手技の開始直後など、透視及び撮影の一部において造影剤を多めに使用しても問題ない旨、ユーザに通知することができる。また、手技の終了まで造影剤が足りない可能性があると判断した場合、出力機能34cは、可能な限り造影剤を節約することを推奨する旨、ユーザに通知することができる。このような通知は、造影剤の利用計画の一例である。
【0088】
上述した通り、第1の実施形態に係る医用情報処理装置30によれば、手技中の造影剤の使用をより適切なものとすることができる。
【0089】
例えば、CTOに対する手技においては、冠動脈の上流側から造影剤を注入して冠動脈の造影画像を収集しつつ、冠動脈を閉塞させているプラークを、ガイドワイヤ等のデバイスによって貫通させる操作が行われる。一例として、
図6に、冠動脈を閉塞させているプラークが注目領域に位置し、また、インジェクション位置から注目領域までの間に分岐部B1、分岐部B2、分岐部B3及び分岐部B4がある冠動脈を図示する。インジェクション位置の近傍における流量F1はこれらの分岐部によって分割され、注目領域への流量は流量F2まで減少する。このような血管に対し、どのような造影条件を設定すれば適度な量の造影剤が注目領域に流入するのか、ユーザが感覚的に判断することは容易ではない。
【0090】
これに対し、解析機能34bは、ある造影条件で造影剤が注入された際に被検体Pから収集される造影画像を推定することができる。具体的には、例えば
図3に示したように、画像に基づく測定値、画像に基づく推測値、非画像の情報といった被検体P個別の情報を基に、被検体Pから収集される造影画像を推定することができる。このような造影画像の推定結果の出力を受けたユーザとしては、例えば
図6に示したように血管形状が複雑な場合であっても、注目領域が十分に造影されているかどうか確認しつつ、造影条件が適切かどうか検討することができる。
【0091】
なお、手技の最中においては、血管形状が変形する場合がある。例えば、
図7に示すように、手技の効果として血管の狭窄部が拡張され、当該血管における血流も変化する場合がある。なお、このような血管形状の変形は、例えば、手技中に透視モードや撮影モードで収集された造影画像に基づいて検知することができる。血管形状の変形があった場合、解析機能34bは、当該変形を、
図3に示した流れモデルM1に反映させてもよい。
【0092】
例えば、解析機能34bは、変形後の血管における断面積や体積を、画像に基づく測定値として所定のプログラムに入力することにより、流れモデルM1を更新する。更に、解析機能34bは、更新後の流れモデルM1に基づいて、被検体Pから収集される造影画像を再度推定する。このように、手技中の血管形状の変形も考慮して造影画像の推定を行なうことにより、注目領域が十分に造影されるかどうか、より正確に示すことができる。
【0093】
また、出力機能34cは、造影画像の推定結果に基づいて、注目領域が造影された造影画像を収集することのできる推奨造影条件を出力することができる。上述した通り、造影画像の推定は、トレーニングシミュレータのような画一的なシミュレーションではなく、被検体P個別の情報を基に実行される。また、造影画像の推定は、例えば血管形状の変形を考慮するなど、手技中のシーンごとに個別化させることができる。従って、出力機能34cは、推奨造影条件についても、被検体Pごと、及び、シーンごとに個別化させた適切なものとすることができる。
【0094】
また、出力機能34cは、手技の開始時や手技中において、造影剤の利用可能情報や、利用可能情報に基づく造影剤の利用計画を出力することができる。これにより、ユーザは、手技の開始から終了までの間に過不足なく造影剤を使用することができる。例えば、利用可能情報や利用計画の提供を受けることで、ユーザは、手技の終了までに造影剤が足りなくなったり、必要以上に造影剤の使用を避けて手技の効率が低下してしまったりするケースを回避することができる。
【0095】
なお、造影剤の利用可能情報や利用計画については、推奨造影条件に基づいて生成することもできる。この場合、利用可能情報や利用計画についても、被検体Pごと、及び、シーンごとに個別化させた適切なものとすることができる。
【0096】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、造影剤を被検体Pに対して注入する回数、時間及び量のうち少なくとも1つの値が取得可能な場合において、当該値を実現可能な造影条件への変更に関する情報を出力することにより、手技中の造影剤の使用をより適切なものとする例について説明する。以下、第1の実施形態の説明と重複する部分については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0097】
造影剤を被検体Pに対して注入する回数、時間及び量のうち少なくとも1つの値が取得可能な場合とは、これらの値が設定されている場合や、これらの値を推定できる場合である。例えば、透視を行なう秒数や撮影を行なう回数が予め決められている場合、造影剤を被検体Pに対して注入する回数や時間も設定値となる。また、例えば、
図5の透視F2、透視F3、透視F4、撮影DA2及び撮影DA3のように、手技中に実行される透視の秒数や撮影の回数は推定できる場合がある。以下では、造影剤を被検体Pに対して注入する回数、時間及び量を総称して、造影剤の使用予定値とも記載する。
【0098】
造影剤の使用予定値と造影剤を注入する際の圧力や流速などの造影条件とによれば、予定される造影剤の使用量が使用可能な造影剤の総量を上回るか否か判定することができる。ここで、予定される造影剤の使用量が使用可能な造影剤の総量を上回ると判定した場合、出力機能34cは、造影剤の使用予定値を実現可能な造影条件への変更に関する情報を出力する。なお、変更に関する情報は、造影剤の使用に関する情報の一例である。変更に関する情報の詳細は後述する。
【0099】
変更に関する情報の提供を受けたユーザは、当該情報に含まれる条件の変更を許容できると判断した場合、当該情報に従って造影条件を変更する。これにより、造影剤の使用予定値を実現される。例えば、
図8では、
図5の状態から透視の造影条件が変更されている。具体的には、透視F2、透視F3及び透視F4が、造影条件の異なる透視F2’、透視F3’及び透視F4’に変更されている。これにより、影剤を被検体Pに対して注入する回数や時間、量などが増加し、造影剤の使用予定値が実現される。例えば、出力機能34cは、変更前後の造影条件と共に、「y回の撮影を追加することができます」との通知を行なうことができる。
【0100】
変更に関する情報の一例を、
図9を用いて説明する。
図9においては、変更に関する情報に、インジェクション位置の変更と、被検体Pに対して造影剤を注入するための医療デバイスの変更とが含まれる例について説明する。なお、
図9では、被検体Pに対して造影剤を注入するための医療デバイスとして、カテーテルC1及びカテーテルC2を図示している。また、
図9では、インジェクション位置として、カテーテルC1の先端及びカテーテルC2の先端の2つの位置を図示している。
【0101】
例えば、インジェクション位置を、カテーテルC1の先端の位置からカテーテルC2の先端の位置に変更することにより、注目領域とインジェクション位置との距離を小さくすることができる。ここで、一般に、注目領域とインジェクション位置とが離れている場合、血管内を流れる間に造影剤が血管の心線方向に拡散してしまうため、注目領域に到達した際の造影剤の濃度は低くなる。言い換えると、注目領域とインジェクション位置との距離を小さくすることにより、造影剤の使用量を変えなくても、注目領域内の造影剤の濃度を高くすることができる。
【0102】
また、カテーテルC1の先端の位置と注目領域との間には血管の分岐部が複数存在するところ、インジェクション位置をカテーテルC2の先端の位置に変更することにより、これらの分岐部を回避することもできる。ここで、一般に、注目領域とインジェクション位置との間に分岐部がある場合、造影剤の一部が注目領域を含まない血管に流れてしまうため、注目領域内の造影剤の濃度は低くなる。言い換えると、注目領域とインジェクション位置との間に分岐部が含まれないようにすることで、造影剤の使用量を変えなくても、注目領域内の造影剤の濃度を高くすることができる。
【0103】
カテーテルを注目領域に近い位置まで進めることは、カテーテルを操作するユーザの作業負担となる。ここで、径の小さいカテーテルC2を使用することにより、血管内でのカテーテル操作が容易になり、ユーザの作業負担を軽減することができる。なお、径の小さいカテーテルについては、マイクロカテーテルとも記載する。即ち、
図9の例において、変更に関する情報には、マイクロカテーテルへの変更が含まれる。
【0104】
マイクロカテーテルは、血管内での操作をしやすい一方、径が小さいため、造影剤の供給可能量は少ない。例えば
図9に示すように注目領域とインジェクション位置とが近い場合など、少量の造影剤によって注目領域を十分に造影できる場合もあるが、マイクロカテーテルによる供給可能量の造影剤では注目領域を十分に造影できないケースも想定される。出力機能34cは、マイクロカテーテルによる供給可能量の造影剤で注目領域を十分に造影できるか否か判定した上で、変更に関する情報にマイクロカテーテルへの変更を含ませることが好ましい。例えば、解析機能34bは、マイクロカテーテルによる供給可能量の造影剤が注入された被検体Pから収集される造影画像を推定する。そして、出力機能34cは、推定された造影画像に基づいて注目領域が十分に造影されているか否か判定し、十分に造影されていると判定した場合に、変更に関する情報にマイクロカテーテルへの変更を含ませる。
【0105】
変更に関する情報の表示例を
図10に示す。
図10では、変更前のインジェクション位置であるインジェクション位置A1と、変更後のインジェクション位置であるインジェクション位置A2とを被検体Pの血管が造影された造影画像上に表示させている。なお、インジェクション位置A1及びインジェクション位置A2を表示させる造影画像は、X線診断装置10Aにより収集された画像であってもよいし、X線CT装置やMRI装置などの別種のモダリティにより収集された画像であってもよい。
【0106】
また、
図10においては、インジェクション位置A1及びインジェクション位置A2の各位置について、注入速度と、当該注入速度で造影剤が注入された被検体Pから収集される造影画像の推定結果のうちの注目領域に対応する範囲の画像とを表示させている。より具体的には、
図10の画像I1は、インジェクション位置A1から注入速度「Z1[m1/sec]」で造影剤を注入した場合に推定される注目領域の画像である。また、画像I2は、インジェクション位置A2から注入速度「Z2[m1/sec]」で造影剤を注入した場合に推定される注目領域の画像である。
【0107】
なお、
図10における注入速度「Z2[m1/sec]」は、注入速度「Z1[m1/sec]」と同じか、注入速度「Z1[m1/sec]」より小さくてもよい。インジェクション位置A2がインジェクション位置A1よりも注目領域に近いことにより、注入速度「Z2[m1/sec]」が注入速度「Z1[m1/sec]」よりも小さい場合であっても、画像I2においては画像I1と同程度以上に血管を造影することが可能である。注入速度「Z1[m1/sec]」と注入速度「Z2[m1/sec]」との差分は、インジェクション位置を変更することにより削減される造影剤の量を示す。
【0108】
図10の表示を参照したユーザは、画像I1及び画像I2それぞれの見易さ、インジェクション位置を変更することにより削減される造影剤の量、インジェクション位置A2の位置までカテーテルを挿入する作業負担などを総合的に考慮して、インジェクション位置の変更を許容するか否か判断することができる。
【0109】
インジェクション位置を変更することにより削減される造影剤の量の他の表示例として、
図11のグラフを示す。
図11の横軸は、手技開始後の経過時間(sec)を示す。また、
図11の縦軸は、
図10のインジェクション位置A1及びインジェクション位置A2の各位置から造影剤を注入した場合における造影剤の累積量を示す。インジェクション位置A2の場合、インジェクション位置A1の場合と比較して注入速度を低く設定することが可能であるため、造影剤の累積量が増加するペースが緩やかである。インジェクション位置A1に対応するグラフとインジェクション位置A2に対応するグラフとの縦軸方向の差分は、手技開始後の各時点における、インジェクション位置を変更することにより削減される造影剤の量を示す。
【0110】
また、
図11においては、被検体Pに対して手技中に使用可能な造影剤の総量を「閾値」として示している。
図10の表示を参照したユーザは、造影剤の累積量が閾値に到達するまでに手技を終えることができるか否か検討して、インジェクション位置の変更を許容するか否か判断することができる。なお、
図11の表示は、独立に行われてもよいし、
図10の表示と共に行なわれてもよい。
【0111】
変更に関する情報の例として、インジェクション位置の変更及び造影剤を注入するための医療デバイスの変更について説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力機能34cは、造影剤の使用予定値を実現可能な造影条件への変更に関する情報として、被検体Pに対して注入される造影剤の濃度の低下を出力してもよい。
【0112】
即ち、造影剤濃度を低下させる場合、注目領域のコントラストが低下するが、このコントラストの低下はユーザにとって許容できる場合がある。例えば、出力機能34cは、変更前後の各造影剤濃度について、各造影剤濃度で造影剤を注入した場合に推定される造影画像をそれぞれ表示させる。この時、出力機能34cは、造影剤濃度を低下させることにより削減される造影剤の量や、造影剤濃度を低下させることにより追加で実行可能となる透視の秒数や撮影の回数を併せて表示させてもよい。このような表示を参照したユーザは、推定された造影画像を比較して、コントラストの低下を許容できるか否か検討することにより、変更を許容するか否か判断することができる。
【0113】
変更に関する情報の他の例を
図12に示す。
図12は、インジェクション位置(カテーテルC2の先端)と注目領域との距離が近いケースを示す。造影剤は、
図12の中段に示すように注目領域内に広く拡散することが好ましく、そのためには注入時の造影剤の流速を適切に設定する必要がある。
【0114】
具体的には、注入時の造影剤の流速が大き過ぎる場合、
図12の上段に示すように、注入された造影剤は、血液中に拡散することなく注目領域を通過してしまう場合がある。これにより、収集される造影画像において、注目領域における血管の壁面付近が造影されなくなる場合がある。
【0115】
一方で、注入時の造影剤の流速が小さ過ぎる場合、
図12の下段に示すように、注入された造影剤は、血管の壁面付近まで拡散するものの、血流方向に十分に拡散しない場合がある。これにより、収集される造影画像において、注目領域における血流方向の一部が造影されなくなる場合がある。或いは、血流方向に広く造影剤を拡散させるため、造影剤の注入をより長い時間継続することになり、造影剤の使用量が増加する場合がある。
【0116】
解析機能34bは、流速の異なる複数の造影条件について、各造影条件で造影剤が注入された被検体Pから収集される造影画像を推定する。また、出力機能34cは、推定された複数の造影画像の中から、注目領域内に造影剤が広く拡散している造影画像を特定し、また、特定した造影画像に対応する流速を特定する。そして、出力機能34cは、特定した流速を、変更に関する情報として表示させる。この時、出力機能34cは、推定された造影画像や、流速を変更することにより削減される造影剤の使用量を併せて表示させてもよい。
【0117】
上述した例の他にも、出力機能34cは、変更に関する情報を種々の情報と共に出力することができる。例えば、出力機能34cは、変更に関する情報を、手技中に被検体Pに対して使用された造影剤の累積量や、被検体Pに対して手技中に使用可能な造影剤の総量など共に、ディスプレイ32に表示させてもよい。
【0118】
上述した通り、第2の実施形態に係る出力機能34cは、造影剤を被検体Pに対して注入する回数、時間及び量のうち少なくとも1つの値について、当該値を実現可能な造影条件への変更に関する情報を出力する。これにより、例えば手技の最中において、累積の造影剤の使用量が使用可能な造影剤の総量に近づき、手技の終了まで造影剤の使用を継続できない可能性がある場合においても、造影条件を適切に変更して、造影剤の使用を継続させることができる。例えば、インジェクション位置を注目領域に近い位置に変更することにより、注目領域が造影された造影画像をより少量の造影剤により収集することができる。これにより、透視可能な秒数や撮影可能な回数が増加し、手技の終了まで造影剤の使用を継続させることができる。
【0119】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、造影剤の使用に関する情報を出力する例として、解析機能34bによる解析結果に基づいて医用画像診断装置10へのフィードバックを行なう例について説明する。以下、第1~第2の実施形態の説明と重複する部分については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0120】
第3の実施形態に係る処理の一例を
図13に示す。
図4において説明した場合と同様、解析機能34bは、流れモデルM1に基づいて造影剤注入後の各時点について造影剤の分布を推定し、各時点の造影画像を推定することができる。即ち、解析機能34bは、注入された造影剤が血管内を流れる様子を示す動画像を生成することができる。かかる動画像によれば、出力機能34cは、造影剤が注入された後、被検体Pの血管における各位置に造影剤が到達する時間を推定し、推定結果に基づいてX線診断装置10Aへのフィードバックを行なうことができる。
【0121】
例えば、出力機能34cは、造影剤の使用に関する情報として、X線診断装置10Aが備える天板104の制御情報を出力する。具体的には、例えば下大静脈など、範囲の広い血管を対象として造影画像の収拾を行なう場合において、天板104を移動させることにより、造影剤の流れに追従するようにX線照射範囲を順次変化させる技術が知られている。この時、天板104を移動させ始めるタイミングや天板104の移動速度については、個人差を考慮して設定することが好ましい。
【0122】
これに対して、出力機能34cは、被検体Pに対して個別化されたモデルM1に基づいて被検体Pの血管における各位置に造影剤が到達する時間を推定して、天板104を移動させ始めるタイミングや天板104の移動速度といった制御情報を設定することができる。そして、出力機能34cは、設定した制御情報をX線診断装置10Aにフィードバックすることにより、被検体Pに対して個別化された適切な制御情報のもと、天板104を移動させながら行なう造影画像の収集をX線診断装置10Aに実行させることができる。
【0123】
また、例えば、出力機能34cは、造影剤の使用に関する情報として、X線診断装置10Aにおける撮影タイミングを出力する。具体的には、例えば
図6に示した通り、インジェクション位置と注目領域との間には距離がある場合がある。また、被検体Pの被曝量を低減する観点から、撮影対象領域は、注目領域を含む狭い範囲に限定されることが好ましく、そのためには、造影剤がインジェクション位置に注入されてから注目領域に到達するまでの所要時間に応じて、撮影タイミングを適切に設定することが考えられる。この時、造影剤が注目領域に到達するまでの所要時間については、個人差を考慮して設定することが好ましい。
【0124】
これに対して、出力機能34cは、被検体Pに対して個別化されたモデルM1に基づいて被検体Pの血管における各位置に造影剤が到達する時間を推定して、造影剤がインジェクション位置に注入されてから注目領域に到達するまでの所要時間を設定することができる。そして、出力機能34cは、設定した撮影タイミングをX線診断装置10Aにフィードバックすることにより、被検体Pに対して個別化された適切な撮影タイミングで、注目領域を対象とした造影画像の収集をX線診断装置10Aに実行させることができる。
【0125】
医用画像診断装置10へのフィードバックの例として、天板104の制御情報及びX線画像の撮影タイミングについて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力機能34cは、X線診断装置10Aに対して、X線管102における管電圧や管電流といったX線条件を送信してもよい。
【0126】
例えば、解析機能34bは、流れモデルM1に基づいて造影剤注入後の造影剤の分布を推定し、また、複数のX線条件ごとに得られる造影画像を推定する。そして、出力機能34cは、適切なコントラストの造影画像が得られるX線条件を設定して、X線診断装置10Aにフィードバックする。なお、適切なコントラストについては、上述した通り、部位や症例等に応じてプリセットされてもよいし、ユーザの操作に基づいて設定してもよい。
【0127】
なお、適切なコントラストを得るためのX線条件の設定方法として、従来、ABC(Auto Brightness Control)が知られている。ABCでは、収集したX線画像に基づいて逐次的にX線条件を変化させることで、X線画像のコントラストを自動調整する。但し、ABCでは、X線画像の収集開始時、少なくとも1フレーム目においては、適切なX線条件を設定することができない。これに対し、出力機能34cは、モデルM1に基づいて、X線画像の収集開始時から、適切なコントラストを得るためのX線条件を設定することができる。ひいては、収集するX線画像のフレーム数を削減し、造影剤の使用量及び被ばく量を低減することができる。
【0128】
(他の実施形態)
これまで第1~第3の実施形態について説明したが、上述した実施形態の他にも種々の変形を加えて実行してよいものである。
【0129】
例えば、解析機能34bは、
図14に示すように、微細血管(Microvascular)における造影剤の排出期間(Washout能)を造影条件ごとに解析してもよい。具体的には、心筋のような微細血管を有する部位に対して造影剤を注入する場合、微細血管から造影剤が排出されるまでの期間は造影剤の注入を行なわないことが好ましい。ここで、造影剤のWashout能は被検体Pによって個人差があるところ、出力機能34cは、被検体Pに対して個別化されたモデルM1に基づいてWashout能を推定することができる。そして、出力機能34cは、造影剤の使用に関する情報として、造影剤を注入する1回あたりの量や間隔、単位時間あたりに注入することのできる造影剤の最大量などを出力することができる。
【0130】
また、上述した実施形態では、2次元の造影画像を収集する場合について説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、3次元の造影画像を収集する場合についても同様に適用が可能である。例えば、X線診断装置10Aは、アーム105を回転させながら撮影角度の異なる複数の2次元造影画像を収集し、当該複数の2次元造影画像から3次元造影画像を再構成することができる。このような3次元造影画像の収集時においても同様にして、医用情報処理装置30は、手技中の造影剤の使用をより適切なものとすることができる。
【0131】
なお、X線診断装置10Aが3次元造影画像を収集する際、アーム105を回転させて複数の2次元造影画像の収集を完了するまで、ある程度の長さの撮影時間を要する。注目領域について3次元造影画像を取得するためには、撮影時間の開始から終了までの間、注目領域内に造影剤が充満した状態を維持する必要がある。これは、複数の2次元造影画像の一部において注目領域が造影されていない場合、再構成される3次元造影画像においてアーチファクトが発生するためである。従来、3次元造影画像の収集時においては、アーチファクトの発生をより確実に回避するため、造影剤の注入時間を長めに設定する傾向があった。これに対し、実施形態の医用情報処理装置30によれば、被検体Pに対して個別化された、より適切な造影条件を設定することが可能となる。ひいては、造影剤の注入時間を短縮しつつもアーチファクトの発生を回避し、3次元造影画像の収集時における造影剤の使用量を抑制することができる。
【0132】
また、上述した実施形態では、X線診断装置10Aにより、造影画像を収集する場合について説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、X線CT装置やMRI装置等の別種のモダリティにより造影画像を収集する場合についても同様に適用が可能である。
【0133】
また、上述した実施形態では、造影画像を収集しながら行われる手技の例として、PCI治療やCTOの治療等について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。
【0134】
例えば、上述した実施形態は、腹部大動脈の治療についても適用することができる。具体的には、被検体Pが腹部大動脈瘤を有する患者である場合、被検体Pの腹部大動脈の形状を模して作成されたステントグラフトを、腹部大動脈に留置する手技が行われる。また、ステントグラフトの留置後には、ステントグラフトの周囲に血液の漏れ(リーク)が発生することがある。このようなリークを抑制することで予後が良くなることが知られており、ステントグラフトの留置後の経過観察は重要である。
【0135】
ステントグラフトの留置後の経過観察においては、腹部大動脈に造影剤を流して造影画像が収集される。ここで、腹部大動脈を造影するためには多くの造影剤を注入する必要がある一方で、造影剤の注入量が足りなければリークの有無を判定できなくなるケースがある。即ち、腹部大動脈の造影画像の収集時において、元々多い造影剤の注入量を安易に増やすべきではないが、造影剤の注入量を少なくし過ぎて造影画像を再収集することは更に好ましくない。これに対し、出力機能34cは、被検体Pに対して個別化された流れモデルM1に基づいて推奨造影条件を適切に設定し、必要十分な量の造影剤を用いて腹部大動脈の造影画像を収集させることができる。なお、被検体Pの血管内にステントグラフト等の医療デバイスが留置されている場合、解析機能34bは、当該医療デバイスを管腔構造情報として、流れモデルM1を生成することができる。
【0136】
更に、出力機能34cは、リークの有無や量を仮定して、推奨造影条件の設定を行なってもよい。具体的には、リークがある場合には、そのリークを視認可能なコントラストの造影画像を収集する必要がある。出力機能34cは、収集される造影画像においてこのようなコントラストが実現されるように、推奨造影条件を設定してもよい。また、エンドリークがあったとしても、量によっては予後への影響を無視できる場合もある。そこで、出力機能34cは、予後に影響するエンドリーク量を設定し、設定した量のエンドリークを視認可能なコントラストが得られるように、推奨造影条件を設定してもよい。なお、予後に影響するエンドリーク量については、文献値を利用してもよいし、医師等のユーザによる設定を受けてもよい。
【0137】
また、造影剤が腹部大動脈に到達してからリークが造影されるまでにタイムラグが生じる場合がある。そこで、出力機能34cは、このようなタイムラグをカバーできるように、造影剤を注入する時間を長くしたり、撮影時間を長くするように医用画像診断装置10に対するフィードバックを行なったりしてもよい。
【0138】
その他、例えば脳梗塞や脳動静脈奇形(Arteriovenous Malformation:AVM)など、種々の症例に対する手技において、上述の実施形態は適用可能である。例えば、脳梗塞の場合、血栓等で閉塞している脳血管の位置を注目部位として、上述の実施形態を適用することができる。なお、脳血管のうちAVMの部分については、造影剤を用いても画像上に描出されず、正確な形状を把握できない場合がある。解析機能34bは、AVM等の画像から形状を把握できない部分についてはモデリングを行なって、流れモデルM1を生成してもよい。
【0139】
上述した実施形態では、造影剤の使用に関する情報を出力機能34cが出力する場合の具体例として、造影剤の使用に関する情報をディスプレイ32に表示させるケースについて説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力機能34cは、造影剤の使用に関する情報を他の装置に送信し、当該他の装置において造影剤の使用に関する情報の表示が行われてもよい。例えば、出力機能34cは、造影剤の使用に関する情報を、ネットワークNWを介してX線診断装置10Aに送信する。この場合、X線診断装置10Aは、ディスプレイ108において、造影剤の使用に関する情報を表示させることができる。
【0140】
また、上述した実施形態では、医用情報処理装置30が備える処理回路34において、取得機能34a、解析機能34b、出力機能34cといった各種の機能が実現される場合について説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線診断装置10Aが備える処理回路110等、医用画像診断装置10が備える処理回路において、取得機能34a、解析機能34b及び出力機能34cと同様の機能が実現されてもよい。
【0141】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics PROCESSING Unit)、ASIC、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0142】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0143】
また、上述した実施形態で説明した医用情報処理方法は、予め用意された医用情報処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この医用情報処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この医用情報処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0144】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、手技中の造影剤の使用をより適切なものとすることができる。
【0145】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0146】
1:医用情報処理システム
10:医用画像診断装置
10A:X線診断装置
110:処理回路
110a:収集機能
110b:出力機能
30:医用情報処理装置
34:処理回路
34a:取得機能
34b:解析機能
34c:出力機能