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特開2024-107986サンプリング装置及びサンプリング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107986
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】サンプリング装置及びサンプリング方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20240802BHJP
   G01N 1/44 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G01N1/28 X
G01N1/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012212
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 康彰
(72)【発明者】
【氏名】守田 佳史
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA18
2G052AC13
2G052AD12
2G052BA17
2G052CA02
2G052CA40
2G052EB11
2G052EB13
2G052FD09
2G052FD12
2G052GA15
(57)【要約】
【課題】樹脂製品の品質を効果的に管理するための樹脂材料の品質検査のために、樹脂材料を適切に、かつ効率的にサンプリングすることが可能な、新規のサンプリング装置及びサンプリング方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示のサンプリング装置100は、底部に第1の開口11を有し、かつ内部に固体状の樹脂材料1を収容するための容器10と、容器10に対して取り外し可能に接合され、かつ第1の開口11を閉塞する底蓋20と、を備える。底蓋20は、蓋本体部21と、採取するサンプルを収容するためのサンプル収容部22と、を含む。蓋本体部21は、容器10の内部に面する第1の面21aから容器10の外部に面する第2の面21bに貫通する貫通孔21cを有する。サンプル収容部22は、貫通孔21cと連通する内部空洞22aを有し、かつ第2の面21bにおける貫通孔21cの開口を覆う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状の樹脂材料からサンプルを採取するサンプリング装置であって、
前記サンプリング装置は、
底部に第1の開口を有し、かつ内部に前記樹脂材料を収容するための容器と、
前記容器に対して取り外し可能に接合され、かつ前記第1の開口を閉塞する底蓋と、
を備え、
前記底蓋は、蓋本体部と、採取する前記サンプルを収容するためのサンプル収容部と、を含み、
前記蓋本体部は、前記容器の内部に面する第1の面から前記容器の外部に面する第2の面に貫通する貫通孔を有し、
前記サンプル収容部は、前記貫通孔と連通する内部空洞を有し、かつ前記第2の面における前記貫通孔の開口を覆う、
サンプリング装置。
【請求項2】
前記容器に収容された、固体状の樹脂材料をさらに備える、
請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項3】
前記容器の前記底部の縁の少なくとも一部と、前記蓋本体部の縁の少なくとも一部とが、第1の接合部材によって互いに接合されている、
請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項4】
前記サンプル収容部は、前記内部空洞の底部を開閉可能なカバー部を含む、
請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項5】
前記サンプル収容部は、筒状部及び底部を含む有底筒状体であり、
前記筒状部は、前記蓋本体部の前記第2の面に接続された第1の端部と、前記底部によって開口が閉塞された第2の端部とを有する、
請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項6】
前記筒状部において、前記内部空洞は、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって縮径されている、
請求項5に記載のサンプリング装置。
【請求項7】
前記筒状部の内径は、10mm以上25mm以下である、
請求項5に記載のサンプリング装置。
【請求項8】
前記筒状部の長さは、20mm以上130mm以下である、
請求項5に記載のサンプリング装置。
【請求項9】
前記サンプル収容部の少なくとも一部は、前記蓋本体部から取り外し可能に設けられている、
請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項10】
前記容器は、筒状体である、
請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項11】
前記容器の内径は、30mm以上100mm以下である、
請求項10に記載のサンプリング装置。
【請求項12】
前記容器の長さは、20mm以上600mm以下である、
請求項10に記載のサンプリング装置。
【請求項13】
前記容器及び前記底蓋は、金属で構成されている、
請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項14】
前記容器は、上部に第2の開口を有し、
前記サンプリング装置は、前記第2の開口を閉塞する上蓋をさらに備える、
請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項15】
前記容器を加熱する加熱器をさらに備える、
請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載のサンプリング装置を用いて、固体状の樹脂材料からサンプルを採取するサンプリング方法であって、
(a)前記容器の内部に収容された固体状の前記樹脂材料が流動性を有するように前記容器を加熱して、前記樹脂材料の一部を前記サンプル収容部に収容することと、
(b)前記容器を冷却することと、
(c)前記サンプル収容部に収容されている、採取された前記樹脂材料のサンプルを、前記サンプル収容部から取り出すことと、
を含む、
サンプリング方法。
【請求項17】
前記(c)は、クリーンベンチ内で行われる、
請求項16に記載のサンプリング方法。
【請求項18】
前記(c)において、前記装置における前記底蓋を前記容器から取り外す、
請求項16に記載のサンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サンプリング装置及びサンプリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料を用いて製造される樹脂製品においては、その製品内に含まれる異物が製品の品質に大きな影響を及ぼす場合がある。特に、プラスチック光ファイバー(以下、「POF」と記載する。)等の光学部品においては、光学部品内に含まれる異物によってその品質が低下してしまう場合がある。したがって、樹脂材料については、樹脂製品の製造に用いられる前に、異物等に関する品質検査が実施されることが望まれている。
【0003】
樹脂材料の品質検査のためには、樹脂材料を適切にサンプリングすることが必要である。例えば、特許文献1には、高粘性溶融物等の液状物を、加圧下及び/又は減圧下において、反応容器及び/又は加工容器からサンプリングするサンプリング装置が開示されている。特許文献1に開示されているサンプリング装置は、反応容器内から内容物の一部を流れ出させ、かつその流れ出した内容物を反応容器内に戻す循環流路を備えており、当該循環流路から内容物を循環流路外部に出してサンプリングする。この装置によれば、サンプル採取時、反応等を加圧下及び/又は減圧下で実施するような加工プロセスにおいて、反応容器内の圧力等の諸条件を不変とし、反応又は加工が中断されることなく反応容器内の内容物のサンプリングが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-181116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された装置は、反応容器内の液状の内容物のサンプリングに適している。しかし、樹脂製品の品質向上の観点から、樹脂材料の品質検査は、可能な限り製品に成形されるプロセスの直前の樹脂材料に対して実施されることが望ましい。樹脂製品の製造に用いられる樹脂材料には、成形直前は固体状であるものも多い。また、光学用樹脂材料等のように、異物が混入しないように厳しく管理される樹脂材料の場合、成形プロセスの直前は密閉容器内で保管されることも多いので、樹脂材料に異物等を付着させることなく、かつ効率的にサンプリングすることが非常に困難である。
【0006】
例えば、POF等の樹脂ファイバーを製造する方法の一例として、溶融紡糸法が挙げられる。溶融紡糸法でPOFを製造する際に用いられる樹脂材料は、品質を担保するために、通常、紡糸のために溶融される直前まで、密閉容器内でロッド状の材料として保管されている。したがって、品質担保の観点から、ロッド状の材料を容器から取り出してその一部をサンプリングすることができない。さらに、固体状であるため容器からその一部のみを容器外に取り出してサンプリングすることも難しい。よって、このような樹脂材料については、従来、成形プロセスの直前のものについて、適切にかつ効率的にサンプリングすることができなかった。
【0007】
本開示は、樹脂製品の品質を効果的に管理するための樹脂材料の品質検査のために、樹脂材料を適切に、かつ効率的にサンプリングすることが可能な、新規のサンプリング装置及びサンプリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様に係るサンプリング装置は、固体状の樹脂材料からサンプルを採取するサンプリング装置であって、
前記サンプリング装置は、
底部に第1の開口を有し、かつ内部に前記樹脂材料を収容するための容器と、
前記容器に対して取り外し可能に接合され、かつ前記第1の開口を閉塞する底蓋と、
を備え、
前記底蓋は、蓋本体部と、採取する前記サンプルを収容するためのサンプル収容部と、を含み、
前記蓋本体部は、前記容器の内部に面する第1の面から前記容器の外部に面する第2の面に貫通する貫通孔を有し、
前記サンプル収容部は、前記貫通孔と連通する内部空洞を有し、かつ前記第2の面における前記貫通孔の開口を覆う。
【0009】
本開示の第2態様に係るサンプリング方法は、本開示の第1態様に係るサンプリング装置を用いて、固体状の樹脂材料からサンプルを採取するサンプリング方法であって、
(a)前記容器の内部に収容された固体状の前記樹脂材料が流動性を有するように前記容器を加熱して、前記樹脂材料の一部を前記サンプル収容部に収容することと、
(b)前記容器を冷却することと、
(c)前記サンプル収容部に収容されている、採取された前記樹脂材料のサンプルを前記サンプル収容部から取り出すことと、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示のサンプリング装置及びサンプリング方法によれば、樹脂製品の品質を効果的に管理するための樹脂材料の品質検査のために、樹脂材料を適切に、かつ効率的にサンプリングすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施形態によるサンプリング装置の一例を示す概略斜視図である。
図2A図2Aは、本開示の実施形態によるサンプリング装置の一例を示す概略断面図である。
図2B図2Bは、本開示の実施形態によるサンプリング装置の底蓋を下から見た場合の底蓋の一例を示す図である。
図2C図2Cは、本開示の実施形態によるサンプリング装置の底蓋を上から見た一例を示す図である。
図2D図2Dは、本開示の実施形態によるサンプリング装置の底蓋を横から見た一例を示す図である。
図3A図3Aは、本開示の実施形態によるサンプリング装置の底蓋において、蓋本体部の貫通孔及びサンプル収容部の内部空洞の形状の一例を示す概略断面図である。
図3B図3Bは、本開示の実施形態によるサンプリング装置の底蓋において、蓋本体部の貫通孔及びサンプル収容部の内部空洞の形状の別の例を示す概略断面図である。
図3C図3Cは、本開示の実施形態によるサンプリング装置の底蓋において、蓋本体部の貫通孔及びサンプル収容部の内部空洞の形状のさらに別の例を示す概略断面図である。
図4図4は、本開示の実施形態によるサンプリング装置において、カバー部を含むサンプル収容部を備えた底蓋の一例を示す概略断面図である。
図5A図5Aは、図1図2A~2Dに示された底蓋の変形例を示す概略断面図である。
図5B図5Bは、図5Aに示された底蓋について、サンプル収容部の底部を含む少なくとも一部が蓋本体部から取り外された状態を示す概略断面図である。
図5C図5Cは、図5Aに示された底蓋の変形例において、蓋本体部の貫通孔及びサンプル収容部の内部空洞の形状が異なる例を示す概略断面図である。
図6A図6Aは、図4に示された底蓋の変形例を示す概略断面図である。
図6B図6Bは、図6Aに示された底蓋について、カバー部と筒状部の第2の端部とを含む少なくとも一部が蓋本体部から取り外された状態を示す概略断面図である。
図7図7は、本開示の実施形態によるサンプリング方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(用語の定義)
本明細書において、樹脂材料とは、所定の形状(すなわち、目的とする樹脂製品の形状)に成形される前のものを意味する。固体状の樹脂材料は、例えば、樹脂製品の製造のために所定の形状に成形される前の樹脂ロッドである。
【0013】
本明細書において、樹脂製品とは、樹脂成形品のことを意味する。また、光学部品とは、樹脂成形品のうち、光学用途に用いられるものを意味する。
【0014】
本明細書において、異物とは、原料に由来する不純物(例えば、繊維状の樹脂異物)、製造工程において混入した金属片及びヒトから入るポリアミド等のことである。
【0015】
本明細書において、「上」とは、後述される図1が示すように重力が向かう方向とは反対の方向を意味する。
【0016】
本明細書において、「下」とは、後述される図1が示すように重力が向かう方向を意味する。
【0017】
本明細書において、「横」とは、後述される図1が示すように「上」及び「下」に対する垂直方向(言い換えると水平方向)を意味する。
【0018】
(本開示の実施形態)
本開示のサンプリング装置及びサンプリング方法の実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態のサンプリング装置は、固体状の樹脂材料からサンプルを採取するサンプリング装置である。本実施形態のサンプリング装置は、底部に第1の開口を有し、かつ内部に固体状の樹脂材料を収容するための容器と、当該容器に対して取り外し可能に接合され、かつ上記第1の開口を閉塞する底蓋と、を備える。底蓋は、蓋本体部と、採取するサンプルを収容するためのサンプル収容部と、を含む。上記蓋本体部は、上記容器の内部に面する第1の面から上記容器の外部に面する第2の面に貫通する貫通孔を有する。上記サンプル収容部は、上記貫通孔と連通する内部空洞を有し、かつ上記第2の面における上記貫通孔の開口を覆う。
【0020】
本実施形態のサンプリング装置は、サンプル収容部を含む底蓋を備えている。サンプル収容部の内部空洞は、蓋本体部の貫通孔と連通しているので、この貫通孔を介して容器の内部と連通することができる。したがって、例えば容器を加熱することによって、容器の内部に収容された固体状の樹脂材料が流動性を有する状態となった場合、樹脂材料の一部が、容器の第1の開口及び蓋本体部の貫通孔を通ってサンプル収容部の内部空洞に収容される。このように樹脂材料の一部をサンプル収容部の内部空洞に収容した後に、例えば容器を冷却して容器の内部の樹脂材料の流動性を低下させる又は流動性を失わせて、サンプル収容部に収容されている樹脂材料をサンプル収容部から取り出すことにより、樹脂材料の一部をサンプルとして採取することができる。また、本実施形態のサンプリング装置によれば、容器の内部の樹脂材料が容器外へできるだけ露出しないように、あるいはまったく露出しないように、樹脂材料の一部のみ(例えば、品質検査に必要な少量のみ)を、サンプル収容部の内部空洞に流入させてサンプルとして採取することができる。したがって、採取されたサンプルを用いて行われた品質検査で樹脂材料が良品であると判定された場合は、容器の内部に収容された樹脂材料をそのまま樹脂製品の製造に用いることができる。これにより、樹脂材料の品質検査の結果は、そのまま樹脂製品の品質に効果的に反映されうる。また、採取されたサンプルを用いて行われた品質検査で樹脂材料が不良品であると判定された場合は、例えば、その不良品の樹脂材料に対し、異物を除去するための精製処理(例えば、ろ過処理による異物の除去)等を実施することによって、良品の樹脂材料として利用することが可能となる。
【0021】
また、本実施形態のサンプリング装置においては、容器の内部の樹脂材料を流動させて、樹脂材料の自重(言い換えると、樹脂材料そのものの重さ)によって底蓋に設けられたサンプル収容部の内部空洞に樹脂材料を収容させることができる。したがって、本実施形態のサンプリング装置は、サンプルを採取するために、機械的な駆動力(例えば、摺動部のような機構)を必要としない。したがって、本実施形態のサンプリング装置は、容器からサンプル収容部までの樹脂材料の流路に摺動部のような機構を設けない構成を実現できる。これにより、本実施形態のサンプリング装置は、樹脂材料中への異物の混入を抑えつつ、品質の良い、検査に適切なサンプルを採取することが可能となる。
【0022】
サンプル収容部の内部空洞に流入した樹脂材料は、例えば、容器を冷却する等して樹脂材料を固化させた後に、底蓋を容器から取り外すことによって、例えば容器10の内部の樹脂材料から折り取られてサンプル収容部からサンプルとして取り出すことができる。
【0023】
以上のように、本実施形態のサンプリング装置は、樹脂製品の品質を効果的に管理するための樹脂材料の品質検査のために、樹脂材料を適切に、かつ効率的にサンプリングすることができる。
【0024】
図1は、本開示の実施形態によるサンプリング装置の一例を示す斜視図である。本実施形態のサンプリング装置100は、固体状の樹脂材料からサンプルを採取するための装置である。図1に示すように、本実施形態によるサンプリング装置100は、容器10と、底蓋20とを備える。さらに、底蓋20は、容器10と接合された状態において容器10と接する蓋本体部21と、蓋本体部21に接続されているサンプル収容部22とを有する。さらに、サンプリング装置100は、例えば、容器10と底蓋20とを接合するために第1の接合部材30を備える。接合の様式については、後述される。また、容器10の上部には、例えば、上蓋40と、容器10と上蓋40とを接合するための第2の接合部材50と設けられている。第1の接合部材30は、例えば、容器10と底蓋20とを互いに接合するための第1の枠状部材31と、第1の枠状部材31の形状を変えるため、具体的には第1の枠状部材31を容器10及び底蓋20に対して装着及び脱着するために第1の枠状部材31を開閉可能な構造とするための第1の軸部材32と、第1の枠状部材31を閉じた状態で固定するための第1の固定部33とを備える。第2の接合部材50は、例えば、容器10と底蓋20とを互いに接合するための第2の枠状部材51と、第2の枠状部材51の形状を変えるため、具体的には第2の枠状部材51を容器10及び上蓋40に対して装着及び脱着するために第2の枠状部材51を開閉可能な構造とするための第2の軸部材52と、第2の枠状部材51を閉じた状態で固定するための第2の固定部53とを備える。以下、本実施形態のサンプリング装置100の断面図等に基づき、詳細を説明する。
【0025】
図2Aは、本開示の実施形態によるサンプリング装置の一例を示す概略断面図である。この断面図は、図1に記載されている斜視図のX-X線矢視断面を示す。図2Bは、本開示の実施形態によるサンプリング装置の底蓋を下から見た場合の底蓋の一例を示す図である。図2Cは、本開示の実施形態によるサンプリング装置の底蓋を上から見た一例を示す図である。図2Dは、本開示の実施形態によるサンプリング装置の底蓋を横から見た一例を示す図である。以下、図2A図2B図2C及び図2Dを用いて、サンプリング装置の詳細を説明する。
【0026】
図2Aに示すように、本実施形態によるサンプリング装置100は、容器10と、底蓋20とを備える。
【0027】
容器10は、底部に第1の開口11を有し、かつ内部に固体状の樹脂材料1を収容する。図2Aにおいては、固体状の樹脂材料1として、例えばロッド状の樹脂材料が容器10の内部に収容されている。本実施形態のサンプリング装置100は、固体状の樹脂材料1をさらに備えていてもよい。
【0028】
底蓋20は、容器10に対して取り外し可能に接合され、かつ容器10の第1の開口11を閉塞する。底蓋20は、蓋本体部21と、サンプル収容部22とを含んでいる。サンプル収容部22は、樹脂材料1から採取するサンプルを収容する。蓋本体部21は、容器10の内部に面する第1の面21aから容器10の外部に面する第2の面21bに貫通する貫通孔21cを有する。サンプル収容部22は、貫通孔21cと連通する内部空洞22aを有し、かつ第2の面21bにおける貫通孔21cの開口を覆う。
【0029】
底蓋20の直径は、40mm以上110mm以下であることが好ましい。また、底蓋20の厚みは、4mm以上25mm以下であることが好ましい。なお、底蓋20の直径とは、ここでは蓋本体部21の直径を意味する。また、底蓋20の厚みとは、ここでは蓋本体部21の厚みを意味する。
【0030】
底蓋20を容器10に接合する構造は、特に限定されない。底蓋20を容器10に接合する構造は、底蓋20を容器10に設置したり容器10から取り外したりする際に、容器10の内部の樹脂材料1に金属部品の金属片等の異物が混入しにくい構造であることが望ましい。例えば、図2Aに示すように、容器10の底部の縁10aの少なくとも一部と、蓋本体部21の縁21dの少なくとも一部とが、第1の接合部材30の第1の枠状部材31によって互いに接合されていてもよい。また、容器10の底部の縁10aと蓋本体部21の縁21dとが、隙間のないように密着するように縁10a及び縁21dが互いに接して、第1の接合部材30によって互いに接合されていてもよい。第1の接合部材30による接合とは、例えば、容器10の底部の縁10aと蓋本体部21の縁21dとが、第1の接合部材30を構成する第1の枠状部材31の第1の篏合部31aに入り込み、第1の篏合部31aに抑えられるように設けられることである。なお、第1の枠状部材31は、図1に示された第1の固定部33によって開かないように固定されている。第1の接合部材30として、例えば、クランプ、アルミブロック等が用いられうる。なお、図2Aに示されている第1の接合部材30は、縁10a及び縁21dの全体を互いに密着させるような構成を有しているが、これに限定されない。第1の接合部材30は、縁10aと縁21dとを部分的に接合するような部材であってもよい。容器10に対する底蓋20の取り外し及び設置は、手動で行われてもよいし、自動で行われてもよい。サンプリング装置100の構成を簡潔にして、樹脂材料1のサンプルを採取する際の異物混入のリスクを低くするために、容器10に対する底蓋20の取り外し及び設置は手動で行われることが望ましい。
【0031】
容器10は、図2Aに示すように上部に第2の開口12を有していてもよい。この場合、本実施形態のサンプリング装置100は、第2の開口12を閉塞する上蓋40をさらに備えていてもよい。このような構成によれば、本実施形態のサンプリング装置100は、上蓋40を開けることによって容器10の内部を開放することができる。したがって、例えば、液状の樹脂材料(例えば、樹脂材料を溶解させた樹脂溶液又は溶融した樹脂材料)を第2の開口12から容器10の内部に滴下して乾燥させることにより、容器10の内部に固体状の樹脂材料1を設置することも可能となる。上蓋40も、底蓋20と同様に、容器10に対して取り外し可能に接合されていてもよい。例えば、図2Aに示すように、容器10の上部の縁10bの少なくとも一部と、上蓋の縁40aの少なくとも一部とが、第2の接合部材50によって互いに接合されていてもよい。また、容器10の第2の開口12の縁12bと上蓋40の縁40aとが、隙間のないように密着するように縁10b及び縁40aが互いに接して、第2の接合部材50によって互いに接合されていてもよい。第2の接合部材50による接合とは、例えば、容器10の上部の縁10bと上蓋40の縁40aとが、第2の接合部材50を構成する第2の枠状部材51の第2の篏合部51aに入り込み、第2の篏合部51aに押さえられるように設けられることである。なお、第2の枠状部材51は、図1に示された第2の固定部53によって開かないように固定されている。第2の接合部材50として、例えば、クランプ、アルミブロック等が用いられうる。なお、図2Aに示されている第2の接合部材50は、縁10b及び縁40aの全体を互いに密着させるような構成を有しているが、これに限定されない。第2の接合部材50は、縁10bと縁40aとを部分的に接合するような部材であってもよい。また、第2の接合部材50は、第1の接合部材30と同様の構成を有するものであってもよいし、第1の接合部材30とは異なる構成を有するものであってもよい。
【0032】
サンプル収容部22は、上述のように、蓋本体部21の貫通孔21cと連通する内部空洞22aを有し、かつ蓋本体部21の第2の面21bにおける貫通孔21cの開口を覆う構造を有していればよく、その形状は特に限定されない。第2の面21bにおける貫通孔21cの開口を覆う構造は、例えば、内部空洞22aの内壁面(側面及び底面)である。
【0033】
サンプル収容部22は、例えば、筒状部221及び底部222を含む有底筒状体である。この場合、筒状部221は、蓋本体部21の第2の面21bに接続された第1の端部221aと、底部222によって開口が閉塞された第2の端部221bとを有する。
【0034】
サンプル収容部22の筒状部221の内径及び長さは、特に限定されないが、品質検査に必要なサンプルサイズ、サンプル収容部22からのサンプルの取り出しやすさ、及びサンプルにできるだけ気泡が含まれないようにすること等を考慮して、適宜選択されることが望ましい。
【0035】
筒状部221の内径は、例えば10mm以上25mm以下であることが好ましい。なお、ここで特定されている筒状部221の内径とは、図2A及び図2BのRa(点線の両矢印)が示すように、第1の端部221aにおける筒状部221の内径(直径)のことである。なお、内径は、筒状部221の軸に垂直な方向における断面について、筒状部221の内壁の直径の最大値である。筒状部221の内径が10mm以上であることにより、品質検査に十分なサンプルサイズを得ることができる。筒状部221の内径が25mm以下であることにより、サンプル収容部22の内部空洞22aに収容されたサンプルを容器10の内部の樹脂材料1から切断して取り出す(例えば、折って取り出す)ことが容易となる。より十分なサンプルサイズを得るために、筒状部221の内径は、12mm以上であることがより好ましい。サンプルを取り出す際の切断をより容易にするために、筒状部221の内径は、20mm以下であることがより好ましい。また、筒状部221の内径は、上記の観点から、以下に例示されるような多様な設計が可能である。
筒状部221の内径の例:11mm以上25mm以下、12mm以上25mm以下、13mm以上25mm以下、14mm以上25mm以下、15mm以上25mm以下、10mm以上24mm以下、10以上23mm以下、10mm以上22mm以下、10mm以上21以下、10mm以上20以下、12mm以上20mm以下
【0036】
筒状部221の側壁部の厚みは、例えば4mm以上25mm以下である。
【0037】
サンプル収容部22の蓋本体部21の貫通孔21cの直径は、筒状部221の内径と同様の理由から、例えば10mm以上25mm以下であることが好ましい。貫通孔21cの直径は、図2A及び図2Cに示されたRb(点線の両矢印)の長さである。また、蓋本体部21の貫通孔21cの直径は、筒状部221の内径にあわせて、以下に例示されるような多様な設計が可能である。
蓋本体部21の貫通孔21cの直径の例:11mm以上25mm以下、12mm以上25mm以下、13mm以上25mm以下、14mm以上25mm以下、15mm以上25mm以下、10mm以上24mm以下、10以上23mm以下、10mm以上22mm以下、10mm以上21mm以下、10mm以上20mm以下
【0038】
筒状部221の長さ(図2Dに記載されているL(両矢印))は、20mm以上130mm以下であることが好ましい。筒状部221の長さが20mm以上であることにより、サンプル収容部22の内部空洞22aに収容されたサンプルを容器10の内部の樹脂材料1から切断して取り出す(例えば、折って取り出す)ことが容易となる。筒状部221の長さが130mm以下であることにより、流動性を有する樹脂材料1が筒状部221の内部に流入する際に気泡が抜けやすくなる。これにより、気泡が低減された、品質の良いサンプルを得ることができる。サンプルを取り出す際の切断をより容易にするために、筒状部221の長さは25mm以上であることがより好ましい。より品質の良いサンプルを得るために、筒状部221の長さは100mm以下であることがより好ましい。
【0039】
筒状部221において、内部空洞22aは、図3Aに示すように第1の端部221aから第2の端部221bに向かって内径がほぼ一定であるストレート形状を有していてもよい。この形状により、サンプリングを考慮した必要最低限のサンプルを樹脂材料から取り出すことが可能である。言い換えると、サンプリングすることにより製品に使える樹脂材料の量が減るので、この形状により製品に使える樹脂材料の量を極力減らさないことができる。また、図3Bに示すように第1の端部221aから第2の端部221bに向かって縮径された(言い換えると、径が徐々に小さくなった)、いわゆるテーパー形状を有していてもよい。さらに、図3Cに示すように、蓋本体部21の貫通孔21c及びサンプル収容部22の内部空洞22aによって形成される空洞全体が、蓋本体部21の第1の面21aからサンプル収容部22の第2の端部221bに向かって縮径された(言い換えると、径が徐々に小さくなった)、いわゆるテーパー形状を有していてもよい。内部空洞22aからサンプルが取り出しやすく、かつサンプルを取り出す際にサンプルに割れが生じにくいように、貫通孔21a及び内部空洞22aは、図3B又は図3Cに示された形状を有することが望ましい。
【0040】
本実施形態のサンプリング装置100において、内部空洞22aに収容されたサンプルを取り出しやすいように、サンプル収容部22は、後述されるように、内部空洞22aの底部を開閉可能なカバー部を含んでいてもよい。サンプルを内部空洞22aから取り出す際にカバー部を開くことにより、内部空洞22a内に収容されたサンプルの底部を露出させることができる。したがって、サンプルの底部をつかんでサンプルをサンプル収容部22から引き抜く、あるいは、サンプルの底部を押してサンプルをサンプル収容部22の上部から押し出すことが可能となる。例えば、底部222がカバー部に相当してもよい。この場合、底部222は、筒状部221の第2の端部221bを開閉できるように筒状部221に取り付けられる。
【0041】
図4は、カバー部を含むサンプル収容部を備えた底蓋の一例を示す概略断面図である。この例の底蓋23は、蓋本体部24と、内部空洞25aを有するサンプル収容部25とを備える。蓋本体部24は、図2Aに示された蓋本体部21と同様に、容器10の内部に面する第1の面24aから容器10の外部に面する第2の面24bに貫通する貫通孔24cを有する。サンプル収容部25は、筒状部251と、底部を構成するカバー部252とを含む有底筒状体である。筒状部251は、蓋本体部24の第2の面24bに接続された第1の端部251aと、カバー部252によって開口が閉塞された第2の端部251bとを有する。図4に示されるように、カバー部252の縁は、筒状部251の下の第2の端部251bと密着するように構成されている。さらに、カバー部252は、筒状部251の第2の端部251bを開閉できるように、例えば、筒状部251に対して取り外し可能に接合されている。
【0042】
本実施形態において、サンプル収容部の少なくとも一部は、蓋本体部から取り外し可能に設けられていてもよい。この構成によれば、サンプル収容部の少なくとも一部を蓋本体部から取り外して、サンプル収容部の内部空間に収容されたサンプルを取り出すことが可能となる。これにより、サンプルを取り出すために底蓋全体を容器から取り外す必要がなくなるため、サンプルを取り出す際に容器の内部の樹脂材料が容器外の雰囲気に接する可能性を低くできる。したがって、容器の内部の樹脂材料に異物が混入するリスクを低減することができる。例えば、図5Aは、図2Aに示された底蓋20の変形例の断面図が示されている。図5Aに示された底蓋20Aは、蓋本体部21と、サンプル収容部22Aとを備える。サンプル収容部22Aの底部221Aを含む少なくとも一部が、蓋本体部21から取り外し可能に設けられている。図5Bに示されているように、サンプル収容部22Aの内部空洞に収容されたサンプル2を、サンプル収容部22Aの底部221Aを含む少なくとも一部が蓋本体部21から取り外されることにより露出させることができる。サンプル2のこの露出部分を切断することによりサンプル2を容器10の内部の樹脂材料1から容易に切り離して、異物の混入を防ぎつつ、サンプル2を取得することができる。よりサンプルを取り出しやすい構成として、図5Cに示された構成が考えられる。図5Cは、図5Aに示された変形例の底蓋において、蓋本体部の貫通孔及びサンプル収容部の内部空洞の形状が異なる例を示す概略断面図である。図5Cに示された底蓋20Bにおいては、蓋本体部21の貫通孔21c及びサンプル収容部22の内部空洞22aによって形成される空洞全体が、図3Cに示された底蓋と同様に、蓋本体部21の第1の面21aからサンプル収容部22の第2の端部221bに向かって縮径された(言い換えると、径が徐々に小さくなった)、いわゆるテーパー形状を有している。
【0043】
別の変形例として、図6Aは、図4に示された底蓋23の変形例の概略断面図が示されている。図6Aに示された底蓋23Aは、蓋本体部24と、サンプル収容部25Aとを備えている。サンプル収容部25Aは、筒状部251Aと、底部を構成するカバー部252とを含む有底筒状体である。筒状部251Aは、蓋本体部24の第2の面24bに接続された第1の端部251Aaと、カバー部252によって開口が閉塞された第2の端部251Abとを有する。カバー部252と、筒状部251Aの第2の端部251Abとを含む少なくとも一部が、蓋本体部24から取り外し可能に設けられている。この構成によれば、図6Bに示されているように、サンプル収容部25Aの内部空洞に収容されたサンプル2を、サンプル収容部25Aの少なくとも一部を蓋本体部24から取り外すことによって露出させることができる。その露出部分を切断することにより、サンプル2を容器10の内部の樹脂材料1から容易に切り離して、異物の混入を防ぎつつ、サンプル2を取得することができる。
【0044】
樹脂材料1を収容する容器10の形状は、特には限定されない。容器10は、例えば筒状体である。筒状体の断面形状は、例えば円形であってもよい。すなわち、容器10は、円筒形であってもよい。
【0045】
筒状体である容器10の内径は、30mm以上100mm以下であることが好ましい。これにより、容器10の内径をサンプル収容部22の筒状部22aの内径よりも大きくできるので、容器10からサンプル収容部20へ樹脂材料1がスムーズに流入することができる。また、これにより、容器10の容積を十分に確保することができる。なお、容器10の内径は、筒状体の軸に垂直な方向における断面について、容器10の内壁の直径の最大値である。
【0046】
筒状体である容器10の長さは、20mm以上600mm以下であることが好ましい。容器10の長さを20mm以上とすることにより、容器10の容積を十分に確保できるので、樹脂材料1の一部をサンプルとしてサンプル収容部20に収容することができる。また、容器10の材質にもよるが、耐荷重を考慮すると、容器10の長さを600mm以下とすることが好ましい。
【0047】
筒状体である容器10の厚みは、3mm以上15mm以下であることが好ましい。この厚みにより容器10の重みと強度とが両立する。
【0048】
本実施形態のサンプリング装置100においては、樹脂材料1に流動性を持たせるために、例えば容器10内の樹脂材料1を加熱する。したがって、容器10及び底蓋20は耐熱性を有する材料で構成されていることが好ましい。容器10及び底蓋20は、例えば金属で構成されていることが好ましい。容器10及び底蓋20を構成する金属は、例えばNiを含むものが好ましく、特にNi合金が好ましい。上蓋40が設けられる場合は、同様の理由から、上蓋40も金属で構成されていることが好ましい。また、サンプリング装置100の熱膨張率を踏まえ、容器10と底蓋20とは、同じ材料で構成されていることが好ましい。
【0049】
上述のとおり、本実施形態のサンプリング装置100においては、例えば容器10内の樹脂材料1を加熱する。樹脂材料1の加熱は、サンプリング装置100全体をオーブン等の加熱器で加熱することによって行われてもよい。また、本実施形態のサンプリング装置100は、容器10を加熱する加熱器(図示せず)をさらに備えていてもよい。例えば、サンプリング装置100の側面を覆うような加熱ジャケットを設けるような構成であってもよい。
【0050】
本実施形態のサンプリング装置100を用いたサンプリング方法は、固体状の樹脂材料からサンプルを採取するサンプリング方法である。
【0051】
図6は、本実施形態によるサンプリング方法を示すフローチャートである。本実施形態のサンプリング方法は、
(a)容器の内部に収容された固体状の樹脂材料が流動性を有するように容器を加熱して、樹脂材料の一部をサンプル収容部に収容すること(S1)と、
(b)容器を冷却すること(S2)と、
(c)サンプル収容部に収容されている、採取された樹脂材料のサンプルを、サンプル収容部から取り出すこと(S3)と、
を含む。
【0052】
本実施形態のサンプリング方法は、本実施形態のサンプリング装置を用いるため、樹脂製品の品質を効果的に管理するための樹脂材料の品質検査のために、樹脂材料を適切に、かつ効率的にサンプリングすることができる。
【0053】
本実施形態のサンプリング方法の上記(a)において、容器を加熱する温度、すなわち樹脂材料が流動性を有する温度は、サンプリング対象である樹脂材料の溶融温度に応じて適宜設定されるため、限定されない。例えば、サンプリング対象の樹脂材料がPOFの製造に用いられる含フッ素樹脂を含む場合、樹脂材料が流動性を有するように容器を加熱する温度は、例えば220℃以上330℃以下である。加熱時間、すなわち樹脂材料が流動性を有する温度に保持される時間は、特には限定されないが、例えば、樹脂材料の充填とサンプル収容部に流入した樹脂材料からの十分な気泡抜けとを考慮して、例えば0.5時間以上8時間以下であることが好ましい。
【0054】
上記(a)における加熱方法は、上述のとおり、サンプリング装置全体をオーブン等の加熱器で加熱することによって行われてもよい。また、サンプリング装置に加熱器が設けられている場合は、その加熱器によって容器を加熱する。
【0055】
本実施形態のサンプリング方法の上記(b)により、樹脂材料が冷却されて、樹脂材料の流動性が失われる。これにより、容器の内部の樹脂材料及びサンプル収容部に収容された樹脂材料が固体状となる。採取するサンプルに割れ等が発生することを防ぐために、冷却は、例えば30℃/h以上80℃/h以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。
【0056】
本実施形態のサンプリング方法の上記(c)において、サンプル収容部に収容されている、採取された樹脂材料のサンプルを、サンプル収容部から取り出す。上記(c)において、例えば、サンプリング装置における底蓋が容器から取り外されてもよい。サンプリング装置における底蓋が容器から取り外されると、容器の内部、底蓋の貫通孔、及び底蓋のサンプル収容部の内部空洞の間で連続して繋がっている樹脂材料が切断されて、サンプル収容部の内部空洞の樹脂材料が容器の内部の樹脂材料から折り取られる。これにより、サンプル収容部の内部空洞の樹脂材料を、サンプルとして、サンプル収容部から取り出すことができる。サンプリング装置の底蓋が、例えば図5A又は図6Aに示されるような構成、すなわち、サンプル収容部の少なくとも一部が蓋本体部から取り外し可能に設けられている構成を有する場合、サンプル収容部の少なくとも一部を蓋本体部から取り外して、サンプル収容部の内部空間に収容されたサンプルを取り出してもよい。
【0057】
上記(c)は、クリーンベンチ内で行われることが望ましい。底蓋の取り外しがクリーンベンチ内で行われることにより、容器の内部の樹脂材料に異物等が混入することを抑制できる。したがって、容器の内部の樹脂材料の品質を担保できるので、樹脂材料のサンプリングによって、製造する樹脂製品の品質を低下させることをより確実に抑制できる。
【0058】
本実施形態のサンプリング装置及びサンプリング方法によってサンプリングされた樹脂材料については、製造目的の樹脂製品に求められる品質に応じて、必要な品質検査が行われる。例えば、採取された樹脂材料のサンプルを用いて、含まれる異物の検査を行ってもよい。異物の検査としては、例えば、ICP発光分析法によりサンプルに含まれる金属量を測定したり、サンプルを溶融しそれをフィルタに通して異物を検出したりする方法が挙げられる。
【0059】
つまり、サンプル収容器から取り出された樹脂材料のサンプルを用いて、樹脂材料の品質を検査すること、を上述される(c)の後に設けてもよい。
【0060】
本実施形態のサンプリング装置を用いた本実施形態のサンプリング方法を使用する、樹脂材料の検査方法は、
(a)容器の内部に収容された固体状の樹脂材料が流動性を有するように容器を加熱して、樹脂材料の一部をサンプル収容部に収容することと、
(b)容器を冷却することと、
(c)サンプル収容部に収容されている、採取された樹脂材料のサンプルをサンプル収容部から取り出すことと、
(d)上記(c)でサンプル収容器から取り出された樹脂材料のサンプルを用いて、樹脂材料の品質を検査することと、
を含む。
【0061】
本実施形態のサンプリング装置及びサンプリング方法は、固体状の樹脂材料からサンプリングするための装置及び方法として、あらゆる樹脂材料のサンプリングに適用可能である。本実施形態のサンプリング装置及びサンプリング方法は、例えば、POF等の光学部品の製造に用いられる樹脂材料のサンプリングに好適に用いることができる。POFは、通常、溶融紡糸法を用いて製造される。溶融紡糸法でPOFを製造する際に用いられる樹脂材料は、品質を担保するために、通常、紡糸のために溶融される直前まで、密閉容器内でロッド状の材料として保管されている。したがって、従来、ロッド状の材料を容器から取り出してその一部をサンプリングすることが困難であった。このようなPOFの製造に用いられる樹脂材料について、本実施形態のサンプリング装置及びサンプリング方法によれば、品質を正確に検査するために、成形直前の樹脂材料、すなわち溶融紡糸前の密閉容器内に収容されているロッド状の樹脂材料を適切にかつ効率的にサンプリングすることができる。
【0062】
POFを溶融紡糸法で製造する場合、例えば、樹脂材料を前処理してロッド化し、得られたロッド状の樹脂材料を溶融して紡糸する。樹脂材料の前処理には、例えば、樹脂材料を溶媒に溶解させて得られた溶液を濾過することによって、樹脂材料から異物を取り除く処理が含まれる。このように異物が取り除かれた樹脂材料を含む溶液を、滴下して乾燥させることによりロッド化する。このロッド化する際の容器として、例えば本実施形態のサンプリング装置の容器を用いることができる。すなわち、本実施形態のサンプリング装置によれば、POFの製造において樹脂材料のロッド化に利用された容器を用いて、その容器からそのまま樹脂材料の一部をサンプルとして採取することが可能となる。したがって、本実施形態のサンプリング装置によれば、溶融紡糸に用いられるロッド状の樹脂材料の一部のみを効率良く、そして樹脂材料への異物の混入を防ぎながら、サンプリングすることができる。POF中の異物は、POFの伝送損失と相関がある。したがって、本実施形態のサンプリング装置及びサンプリング方法によって適切に採取されたサンプルを用いて品質検査を実施することにより、品質の高いPOFを効率良くかつ安定的に製造することが可能となる。
【0063】
上述のとおり、本実施形態のサンプリング方法のサンプリング対象の樹脂材料は、POF用の樹脂材料であってもよい。すなわち、本実施形態のサンプリング方法は、POFの製造において、POFの品質を管理するための品質検査のためのサンプリング方法として適用されることが好ましい。POFは、コアと、当該コアの外周に配置されたクラッドと、を備えている。なお、クラッドよりも外側に、オーバークラッドや被覆層等がさらに設けられていてもよい。
【0064】
POFの製造方法は、例えば、POFのコア及びクラッドの作製に用いられる樹脂材料の溶液を調製し、調製された樹脂材料の溶液をろ過して当該溶液から異物を取り除き、得られた樹脂材料の溶液に必要に応じて添加剤等を添加して混合し、得られた材料を固化してロッド状のコア材料(プリフォーム)及びクラッド材料(プリフォーム)を得る。次に、ロッド状のコア材料及びクラッド材料を溶融させてファイバー状に押出成形し、これを紡糸することによって、POFが製造される。このようなPOFの製造プロセスにおいて、例えば、ロッド状のコア材料及びクラッド材料に対し、その一部を本実施形態のサンプリング方法によってサンプリングして、これに対して、例えば異物検査等の品質検査を実施することが好ましい。これにより、ファイバー状に成形するプロセスの直前の樹脂材料に対し、POFの良好な品質を実現できる材料であるか否かを正確に判断できる。また、この段階で樹脂材料がたとえ使用不可と判断された場合でも、再び前処理に戻してろ過処理を行うことによってPOFの材料としての使用が可能となる。したがって、本実施形態のサンプリング方法が適用されて樹脂材料の品質検査が行われる場合、POFの製造効率及び製造コスト等の製造上のメリットが大きい。
【0065】
さらに、本実施形態のサンプリング方法のサンプリング対象の樹脂材料は、プラスチックレンズ用の樹脂材料であってもよい。
【0066】
[付記]
以上をまとめると、本開示の発明の一形態は、下記である。
【0067】
(1)
固体状の樹脂材料からサンプルを採取するサンプリング装置であって、
前記サンプリング装置は、
底部に第1の開口を有し、かつ内部に前記樹脂材料を収容するための容器と、
前記容器に対して取り外し可能に接合され、かつ前記第1の開口を閉塞する底蓋と、
を備え、
前記底蓋は、蓋本体部と、採取する前記サンプルを収容するためのサンプル収容部と、を含み、
前記蓋本体部は、前記容器の内部に面する第1の面から前記容器の外部に面する第2の面に貫通する貫通孔を有し、
前記サンプル収容部は、前記貫通孔と連通する内部空洞を有し、かつ前記第2の面における前記貫通孔の開口を覆う、
サンプリング装置。
【0068】
(2)
前記容器に収容された、固体状の樹脂材料をさらに備える、
上記(1)に記載のサンプリング装置。
【0069】
(3)
前記容器の前記底部の縁の少なくとも一部と、前記蓋本体部の縁の少なくとも一部とが、第1の接合部材によって互いに接合されている、
上記(1)又は(2)に記載のサンプリング装置。
【0070】
(4)
前記サンプル収容部は、前記内部空洞の底部を開閉可能なカバー部を含む、
上記(1)から(3)のいずれか1つに記載のサンプリング装置。
【0071】
(5)
前記サンプル収容部は、筒状部及び底部を含む有底筒状体であり、
前記筒状部は、前記蓋本体部の前記第2の面に接続された第1の端部と、前記底部によって開口が閉塞された第2の端部とを有する、
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載のサンプリング装置。
【0072】
(6)
前記筒状部において、前記内部空洞は、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって縮径されている、
上記(5)に記載のサンプリング装置。
【0073】
(7)
前記筒状部の内径は、10mm以上25mm以下である、
上記(5)又は(6)に記載のサンプリング装置。
【0074】
(8)
前記筒状部の長さは、20mm以上130mm以下である、
上記(5)から(7)のいずれか1つに記載のサンプリング装置。
【0075】
(9)
前記サンプル収容部の少なくとも一部は、前記蓋本体部から取り外し可能に設けられている、
上記(1)から(8)のいずれか1つに記載のサンプリング装置。
【0076】
(10)
前記容器は、筒状体である、
上記(1)から(9)のいずれか1つに記載のサンプリング装置。
【0077】
(11)
前記容器の内径は、30mm以上100mm以下である、
上記(10)に記載のサンプリング装置。
【0078】
(12)
前記容器の長さは、20mm以上600mm以下である、
上記(10)又は(11)に記載のサンプリング装置。
【0079】
(13)
前記容器及び前記底蓋は、金属で構成されている、
上記(1)から(12)のいずれか1つに記載のサンプリング装置。
【0080】
(14)
前記容器は、上部に第2の開口を有し、
前記サンプリング装置は、前記第2の開口を閉塞する上蓋をさらに備える、
上記(1)から(13)のいずれか1つに記載のサンプリング装置。
【0081】
(15)
前記容器を加熱する加熱器をさらに備える、
上記(1)から(14)のいずれか1つに記載のサンプリング装置。
【0082】
(16)
上記(1)から(15)のいずれか1つに記載のサンプリング装置を用いて、固体状の樹脂材料からサンプルを採取するサンプリング方法であって、
(a)前記容器の内部に収容された固体状の前記樹脂材料が流動性を有するように前記容器を加熱して、前記樹脂材料の一部を前記サンプル収容部に収容することと、
(b)前記容器を冷却することと、
(c)前記サンプル収容部に収容されている、採取された前記樹脂材料のサンプルを、前記サンプル収容部から取り出すことと、
を含む、
サンプリング方法。
【0083】
(17)
前記(c)は、クリーンベンチ内で行われる、
上記(16)に記載のサンプリング方法。
【0084】
(18)
前記(c)において、前記装置における前記底蓋を前記容器から取り外す、
上記(16)又は(17)に記載のサンプリング方法。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示のサンプリング装置及びサンプリング方法は、例えばPOF等の光学部品の樹脂材料の品質検査のためのサンプリングに適している。
【符号の説明】
【0086】
1 樹脂材料
2 サンプル
10 容器
10a 容器の底部の縁
10b 容器の上部の縁
11 第1の開口
12 第2の開口
20、20A、23、23A 底蓋
21、24 蓋本体部
21a、24a 第1の面
21b、24b 第2の面
21c、24c 貫通孔
21d 蓋本体部の縁
22、22A、25、25A サンプル収容部
22a、25a 内部空洞
221、221A、251、251A 筒状部
221a、251a、251Aa 筒状部の第1の端部
221b、251b、251Ab 筒状部の第2の端部
222 底部
252 カバー部
30 第1の接合部材
31 第1の枠状部材
31a 第1の嵌合部
32 第1の軸部材
33 第1の固定部
40 上蓋
40a 上蓋の縁
50 第2の接合部材
51 第2の枠状部材
51a 第2の嵌合部
52 第2の軸部材
53 第2の固定部
100 サンプリング装置
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7