(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107991
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】連続線材
(51)【国際特許分類】
D01F 8/14 20060101AFI20240802BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
D01F8/14 B
D01F8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012219
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雄俊
(72)【発明者】
【氏名】南波 祐司
【テーマコード(参考)】
4L041
【Fターム(参考)】
4L041AA07
4L041AA18
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA21
4L041BC20
4L041BD01
4L041BD20
4L041CA06
4L041CA08
4L041CA13
4L041CA15
4L041CA16
4L041CA36
4L041DD05
4L041DD19
4L041EE20
(57)【要約】
【課題】 ポリエステル樹脂からなる連続線材において、実用上必要な機械的物性、工程通過性等を備えたものであり、かつ耐摩耗性を向上させた連続線材を提供する。
【解決手段】芯鞘複合型のポリエステル系連続線材であり、鞘部は、高融点ポリエステル(A1)とポリオレフィンとから構成され、高融点ポリエステル(A1)100質量部に対して、ポリオレフィンを1~10質量部含み、芯部は、高融点ポリエステル(A2)と低融点ポリエステルとポリオレフィンとから構成され、高融点ポリエステル(A2)100質量部に対して、低融点ポリエステルを2~40質量部、ポリオレフィンを1~10質量部含み、高融点ポリエステル(A1)および(A2)の融点が240℃以上280℃以下、低融点ポリエステルの融点が150℃以上240℃未満、芯部と鞘部の複合比(体積比)が芯部/鞘部=60/40~10/90である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が芯鞘複合型であるポリエステル系連続線材であって、
鞘部を構成する熱可塑性重合体は、高融点ポリエステル(A1)とポリオレフィンとから構成され、高融点ポリエステル(A1)100質量部に対して、ポリオレフィンを1~10質量部含み、
芯部を構成する熱可塑性重合体は、高融点ポリエステル(A2)と低融点ポリエステルとポリオレフィンとから構成され、高融点ポリエステル(A2)100質量部に対して、低融点ポリエステルを2~40質量部、ポリオレフィンを1~10質量部含み、
高融点ポリエステル(A1)および高融点ポリエステル(A2)の融点が240℃以上280℃以下、低融点ポリエステルの融点が150℃以上240℃未満であり、
芯部と鞘部の複合比(体積比)が芯部/鞘部=60/40~10/90であることを特徴とするポリエステル系連続線材。
【請求項2】
高融点ポリエステル(A1)と高融点ポリエステル(A2)とは、いずれもエチレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリエステルであることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系連続線材。
【請求項3】
高融点ポリエステル(A1)と高融点ポリエステル(A2)とは、同一のポリエステルであることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系連続線材。
【請求項4】
低融点ポリエステルが、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリエステルであることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系連続線材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の連続線材からなることを特徴とする材料押出型の付加製造装置に適用する造形材料。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項記載の連続線材からなることを特徴とするラケットストリング。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項記載の連続線材からなることを特徴とする釣り糸。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項記載の連続線材によって構成されることを特徴とする織編物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂製の連続線材であり、特に各種資材用の織物、編物、ネット、ロープ、ストリング、釣糸、造形材料などに適用できる連続線材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱可塑性樹脂からなる連続線材は抄紙用途や汚水濾過用のフィルター、ゴム補強材、消防ホース、面ファスナー、漁網、防球フェンス、ブラシ、釣糸、ラケット用ストリングなど様々な用途で使用されている。特にポリエステル樹脂製の連続線材は耐熱性、耐薬品性、機械的物性、経済性の高さから広く活用されている。
【0003】
ポリエステル樹脂製の連続線材は、ポリアミドやポリオレフィン系など他素材に比べると硬く、耐摩耗性に劣るという課題があり、各種の対策が講じられている。例えば、特許文献1では、シリコーン化合物を配合することで耐摩耗性を改善したポリエステル系のモノフィラメントを提案している。しかしシリコーン化合物のみで十分な耐摩耗性を得るためには、多量のシリコーン化合物の添加が必要となり、溶融紡糸時にスクリューへの喰い込み不良、糸径斑などにより操業性や品質を悪化させる恐れがあり好ましくない。
特許文献2では、ポリエステルなどに二硫化モリブデン粒子を添加した耐摩耗マルチフィラメントが提案されている。しかし無機粒子である二硫化モリブデンを添加することで紡糸機や延伸ローラー、ガイド類の損耗する恐れや、糸中で粒子が凝集・偏在することで品質が不均一化する可能性もあり好ましくない。
【0004】
特許文献3~5では、ポリエステルなどのポリマーへ熱可塑性エラストマーなどを配合することで耐摩耗性を改善した繊維が提案されている。熱可塑性エラストマーによる柔軟化などの効果により耐摩耗性が改善されるが、糸表面のタック感が強くなり、紡糸工程や取扱い時の摩擦抵抗が大きく操業性が低下するという難点がある。またエラストマー原料自体もタック感が強く、ブレンド工程や紡糸工程での操業性を悪化させてしまう点も好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-242997号公報
【特許文献2】特開2010-106423号公報
【特許文献3】特表2017-520691号公報
【特許文献4】特開平9-209212号公報
【特許文献5】特開平5-86507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、ポリエステル樹脂製の連続線材において、耐摩耗性が十分には改善されていない現状に鑑み、本発明は、実用上必要な機械的物性、工程通過性等を備え、取り扱い性が良好であり、かつ耐摩耗性を向上させたポリエステル樹脂製の連続線材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、横断面が芯鞘複合型であるポリエステル系連続線材であって、
鞘部を構成する熱可塑性重合体は、高融点ポリエステル(A1)とポリオレフィンとから構成され、高融点ポリエステル(A1)100質量部に対して、ポリオレフィンを1~10質量部含み、
芯部を構成する熱可塑性重合体は、高融点ポリエステル(A2)と低融点ポリエステルとポリオレフィンとから構成され、高融点ポリエステル(A2)100質量部に対して、低融点ポリエステルを2~40質量部、ポリオレフィンを1~10質量部含み、
高融点ポリエステル(A1)および高融点ポリエステル(A2)の融点が240℃以上280℃以下、低融点ポリエステルの融点が150℃以上240℃未満であり、
芯部と鞘部の複合比(体積比)が芯部/鞘部=60/40~10/90であることを特徴とするポリエステル系連続線材を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、連続線材を構成する熱可塑性重合体がポリエステルを主たる構成重合体とするものでありながら、実用上要する機械的物性を備え、耐久性と取扱い性に優れ、産業資材用途として多岐にわたる用途に適用可能なポリエステル系連続線材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の連続線材の横断面(連続線材の軸方向に対して垂直に切断した際の断面)の形状の外形は、円形、楕円形また多角形、多葉形などの異形等、特に限定されないが、得られる機械的物性や汎用性、使用後の細断や紡出時の取扱い性の観点から円形断面が好ましい。また、断面において中空部を有するものでもよいが、機械的物性や取り扱い性等から、中実のものがよい。横断面の直径は特に限定されないが、紡糸性や加工性、取扱い性の観点から0.05~5mmが好ましく、より好ましくは0.1~4mmである。
【0010】
連続線材の横断面は、二つの層から構成される芯鞘複合型断面である。外部からの擦傷や衝撃、熱などの外部負荷に耐えうる耐久性を備えるには、後述する構成を有する鞘部は、一定の厚みを有することが重要である。本発明においては、芯部と鞘部の複合比(体積比)が芯部/鞘部=60/40~10/90であり、鞘部の比率が50%を超えることが好ましく、さらには芯部/鞘部=40/60~20/80が好ましい。鞘部の比率が40%未満となると、外部からの負荷によって、芯鞘界面の剥離、鞘層の破壊が起こりやすい。一方、鞘部の比率が90%を超えると、後述する構成の芯部が占める比率が少なくなり、初期弾性率が高くなり過ぎて硬いものとなり、柔軟性が失われ、取り扱い性に劣るものとなる。
【0011】
また、本発明において、芯部は1つ存在するものが好ましいが、横断面の中央部に2~3個程度の複数の芯部を有するものでもよい。耐久性や機械的特定の観点からは、芯部は1つの芯鞘複合型がよい。
【0012】
また芯部の断面形状は、連続線材の断面形状の外形と同様の形状としてもよく、異なる形状としてもよい。すなわち、例えば、連続線材の外形が円形の場合に、芯部の形状も同様の円形としてもよく、また、連続線材の外形が円形の場合に、芯部の形状が楕円、多角形、多葉形であってもよい。
【0013】
本発明の連続線材の芯部および鞘部を構成する主たる熱可塑性重合体はポリエステルである。ポリエステルとしては、分子内にエステル結合を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、芳香族ポリエステルでは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられ、また、脂肪族ポリエステルでは、例えばポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等が挙げられる。また、本発明におけるポリエステルとして、その一部または全部に、マテリアルリサイクル原料やケミカルリサイクル原料、またはバイオマス由来原料(ポリマー、モノマーまたはオリゴマー)からなるポリエステルを使用することは、環境面からも好ましい。
【0014】
前記したポリエステルに、本発明の目的が達成される範囲において、他のジカルボン酸成分、ジオール成分あるいはオキシカルボン酸成分等を共重合してもよく、共重合する他の成分としては、ジカルボン酸では、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ε-カプロラクトン等が挙げられ、ジオール成分では、エタンジオール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0015】
本発明の連続線材において、鞘部を構成する熱可塑性重合体は、高融点ポリエステル(A1)とポリオレフィンであり、高融点ポリエスエル(A1)100質量部に対して、ポリオレフィンを1~10質量部含む。
【0016】
高融点ポリエステル(A1)の融点は、240℃以上280℃以下の範囲にある。高融点ポリエステル(A1)の融点が240℃未満であると、瞬間的な摩擦や衝撃を受けた際に発する熱への耐久性が劣るものとなり、機械的特性にも劣る傾向となって実用強度を備えないものとなり、様々な産業用途に適用しにくい。一方、融点が280℃を超えると、加工温度もまたより高く設定する必要があり汎用性に劣る。このような理由から、高融点ポリエステル(A1)の融点は、245℃~270℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは250℃~270℃の範囲である。高融点ポリエステル(A1)は、前記した融点の範囲内のものであれば、ホモポリエステルであっても、他の成分を共重合してなるポリエステルであってもよく、また、1種のポリエステルのみで構成したものであっても、2種のポリエステルをブレンドしたものであってもよい。高融点ポリエステル(A1)としては、耐熱性、機械的物性、経済性の観点から、エチレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリエステルを選択することが好ましく、なかでもホモポリエステルであるポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
【0017】
高融点ポリエステル(A1)の相対粘度は1.1~1.8が好ましく、より好ましくは1.2~1.7、さらに好ましくは1.3~1.6である。高融点ポリエステル樹脂(A1)の相対粘度が1.1以上であることにより、連続線材の機械的特性や耐久性、寸法安定性を保持することができ、一方、1.8以下とすることにより、連続線材を得るにあたっての溶融紡出時の加工性を良好に維持でき、取り扱い性が良好な連続線材となる。上記の相対粘度を有する連続線材を得るためには1.2~1.9の相対粘度を有するポリエステルを原料として用いるとよい。また、異なる相対粘度を有する2種以上のポリエステル原料を混合して使用してもよい。また、使用するポリエステルの少なくとも一部を溶融重合や固相重合などの方法で重合度を増加させてもよい。特に、ポリエステルのマテリアルリサイクル原料を用いる場合、その相対粘度が低い場合は、固相重合などの方法で重合度を引き上げるとよく、特に使用済み等の回収した連続線材を、重合度を引き上げてリサイクル原料として使用する場合は、リペレット工程を省略するために固相重合法を選択することが好ましい。なお、ポリエステルの相対粘度は、濃度0.5%のフェノール/四塩化エタンの等質量混合溶液を溶媒とし、ウベローデ粘度計を使用して、温度20℃で測定する。
【0018】
鞘部に含まれるポリオレフィンは、上記した高融点ポリエステル(A1)100質量部に対して、ポリオレフィン1~10質量部含まれるものであり、高融点ポリエステル(A1)中に分散して存在し、ベースの構成重合体である高融点ポリエステル(A1)の耐熱性を損なうことなく、連続線材の摺動性、耐衝撃性、耐摩耗性を改善する役割を担う。ポリオレフィンの配合量が1質量部未満であると、連続線材の摺動性、耐衝撃性、耐摩耗性を改善向上させる効果を十分に発揮できず、ポリオレフィンの配合量が10質量部を超えると、高融点ポリエステル(A1)中に良好に分散できなくなり、線材径に斑が生じやすく、機械的物性の低下が生じ、また耐熱性が低下する傾向となる。このような理由から、ポリオレフィンの配合量は1~8質量部が好ましく、2~5質量部がより好ましい。
【0019】
ポリオレフィン樹脂の種類としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンおよびこれらの変性物(アクリル酸変性物、無水マレイン酸変性物、ビニルアセテート共重合、グリシジルメタクリレート共重合など)やこれらの共重合体(ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合など)、アイオノマー等が挙げられ、これらを単独または複数種あわせて使用することができる。また、使用するポリオレフィンにおいて、その一部または全部が、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルからなるリサイクル原料や、バイオマス由来原料を用いることは環境面からよい。
【0020】
ポリオレフィンは、連続線材を得る際の溶融紡糸時にポリエステルと溶融混合させるとよく、溶融混合時の分散性の観点から、ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は0.001~50g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.005~40g/10分、さらに好ましくは0.01~30g/10分である。MFRが0.001g/10分~50g/10分の範囲とすることにより、溶融紡糸工程で流動しやすく、ポリエステルと乖離せずに、ポリエステル中へ分散しやすく、物性を維持し、線径の斑が生じにくい。なお、MFRはJIS-K7210に記載の試験方法で、ポリエチレンは190℃、ポリプロピレンは230℃で測定した値である。
【0021】
本発明の連続線材において、芯部を構成する熱可塑性重合体は、高融点ポリエステル(A2)と低融点ポリエステルとポリオレフィンとから構成され、高融点ポリエステル(A2)100質量部に対して、低融点ポリエステルを2~40質量部、ポリオレフィンを1~10質量部含む。
【0022】
高融点ポリエステル(A2)の融点は、240℃以上280℃以下の範囲である。高融点ポリエステル(A2)の融点が240℃未満であると、摩擦や衝撃を受けた際に発する熱への耐久性が劣るものとなり、機械的特性にも劣る傾向となって実用強度を備えないものとなり、様々な産業用途に適用できないものとなる。一方、融点が280度を超えると、加工温度もまたより高く設定する必要があり汎用性に劣る。このような理由から、高融点ポリエステル(A2)の融点は、245℃以上270℃以下の範囲が好ましく、より好ましくは250℃以上270℃以下の範囲である。高融点ポリエステル(A2)は、前記した融点の範囲内であれば、ホモポリエステルであっても、他の成分を共重合してなるポリエステルであってもよく、また、1種のポリエステルのみで構成したものであっても、2種のポリエステルをブレンドしたものであってもよい。高融点ポリエステル(A2)としては、耐熱性、機械的物性、経済性の観点から、エチレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリエステルを選択することが好ましく、なかでもホモポリエステルであるポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましく、また、鞘部に配する高融点ポリエステル(A1)と同じポリエステルを配することにより、芯部と鞘部との親和性がより高く、界面での剥離が生じにくく、機械的特性が良好となるため好ましい。よって、鞘部の高融点ポリエステル(A1)と芯部の高融点ポリエステル(A2)は、いずれもエチレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリエステルであることが好ましく、なかでもいずれもホモポリエステルであるポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0023】
高融点ポリエステル(A2)の相対粘度は、上記した高融点ポリエステル(A1)と同様の理由で、1.1~1.8が好ましく、より好ましくは1.2~1.7、さらに好ましくは1.3~1.6である。
【0024】
芯部には、高融点ポリエステル(A2)100質量部に対して、低融点ポリエステルを2~40質量部含む。低融点ポリエステルは、連続線材に柔軟性を付与する役割を担うものであり、特定量の低融点ポリエステルを含むことにより、連続線材は硬すぎることなく、耐衝撃性が備わり、しなやかさを有するものとなり、取り扱い性が良好となる。高融点ポリエステル(A2)100質量部に対して、低融点ポリエステルを2質量部未満であると柔軟性を発揮できず剛直なものとなり取り扱い性に劣り、一方、40質量部を超えると、耐熱性や機械的特性の点で劣るものとなる。このような理由から、低融点ポリエステルの配合量は2~30質量部が好ましく、さらに好ましくは3~20質量部である。
【0025】
低融点ポリエステルの融点は、150℃以上240℃未満である。熱に対する耐性を要するため、融点の下限は150℃以上とし、柔軟性を付与する観点から、融点の上限は240℃未満とする。好ましい融点の範囲は、下限は170℃以上、上限は235℃以下であり、より好ましい融点の範囲は190℃以上230℃以下である。
【0026】
本発明で好ましく用いることができる低融点ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンフタレートなどのポリエステル主骨格に対して、上述したジカルボン酸成分、ジオール成分あるいはオキシカルボン酸成分等の共重合成分が共重合した共重合ポリエステルが挙げられる。また、柔軟成分としてポリテトラメチレングリコール(PTMG)を、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル主骨格に共重合した共重合ポリエステルも好ましく用いられる。このような共重合ポリエステルは、ランダム共重合であっても、ブロック共重合であってもよい。ホモポリマーではなく、コポリマーである共重合ポリエステルとすることによって、柔軟化するとともに、融点が、主骨格であるホモポリエステルよりも低くなる。また、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などは、ホモポリエステルであるが、融点が240℃程度であり、低融点ポリエステルとして単独で用いることもできる。低融点ポリエステルは、1種のポリエステルのみで構成したものであっても、また、前記した融点の範囲の2種以上のポリエステルをブレンドしたものを低融点ポリエステルとして用いてもよい。
【0027】
低融点ポリエステルの粘度は、特に限定されないが、紡糸加工性や高融点ポリエステル(A2)との分散性の観点から、高融点ポリエステル(A2)に近似する相対粘度あるいは溶融粘度を有するものが好ましい。
【0028】
上述した鞘部と同様で、芯部を構成する熱可塑性重合体にもポリオレフィンを含み、上記した高融点ポリエステル(A2)100質量部に対して、ポリオレフィン1~10質量部含む。芯部におけるポリオレフィンは、高融点ポリエステル(A2)と低融点ポリエステル中に分散して存在するものとなり、ベースの構成重合体である高融点ポリエステル(A2)の耐熱性を損なうことなく、連続線材の摺動性、耐衝撃性、耐摩耗性を改善する役割を担う。ポリオレフィンの配合量が1質量部~10質量部とする理由は、上記した鞘部にポリオレフィンを特定量含ませる理由と同じであり、1質量部未満であると、連続線材の摺動性、耐衝撃性、耐摩耗性を改善向上させる効果を十分に発揮できず、10質量部を超えると、ポリエステル中に良好に分散できなくなり、線材径に斑が生じやすく、機械的物性の低下が生じ、また耐熱性が低下する傾向となる。このような理由から、ポリオレフィンの配合量は1~8質量部が好ましく、2~5質量部がより好ましい。
【0029】
本発明において、連続線材としての物性や耐久性、耐熱性をより高めるために、本発明の連続線材において、高融点ポリエステル(A1)と高融点ポリエステル(A2)とを合計質量は少なくとも80質量%であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上である。また、本発明において、柔軟性向上による連続線材の耐摩耗性の改善効果を得るために、本発明の連続線材において、低融点ポリエステルの配合量は、連続線材の質量に対して0.5質量%以上とし、1質量%~10質量%が好ましい。
【0030】
本発明の連続線材には、本発明の目的を達成する範囲であれば、少量であれば、ポリエステルやポリオレフィン以外の熱可塑性重合体を添加してもよい。たとえば、ポリアミド、ポリウレタン、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、これらを単独でまたは混合して添加してもよい。
【0031】
また、所望により種々の添加剤を含有させてもよい。たとえば、染料、顔料、分散剤、相溶化剤、展着剤、可塑剤、粘度調整剤、難燃剤、滑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収材料、マイクロ波吸収材料、光安定剤、酸化防止剤、pH調整剤、抗菌剤、防腐剤、充填剤、補強材、耐熱剤、耐候剤、帯電防止剤、導電材、熱伝導性材料、結晶核剤等を添加することができる。また、連続線材を補強するための補強材として、マイクロファイバーやナノファイバーなどの補強繊維を添加することもできる。補強繊維の種類により異なるが、連続線材100重量部に対して補強繊維の配合量は5重量部以下が好ましく、より好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下である。
【0032】
本発明の連続線材の引張強力は、適用する用途や線径にもよるが、10N以上であることが好ましい。10N未満では、加工時や実用時の負荷に耐えられないことがある。より好ましい引張強力は20N以上であり、さらに好ましくは40N以上である。なお、引張強力は大きいほどよいが、上限として50000N程度あれば十分と考える。なお、線径が大きいと、単位断面積あたりの強度(MPa)が低くても、線材としての強力(N)は高くなるが、単位断面積あたりの強度としては、20MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上である。なお、引張試験時の条件は、つかみ間隔250mm、引張速度300mm/minとし、n=5で測定し、最大強力および破断時の伸度の平均値を求め、その平均値を引張強力、破断伸度とする。
【0033】
本発明の連続線材の引張伸度は3~200%であればよく、より好ましくは10~100%、さらに好ましくは15~50%である。3%未満では、線材の脆性が高くなり、屈曲疲労などに対する耐久性が低くなるため好ましくない。200%を超えると、各種資材としての剛性が低下し、例えばフィルターでは濾過精度が不足してしまうため好ましくない。
【0034】
本発明の連続線材の製造方法について、一例を挙げて説明する。
【0035】
芯部および鞘部を構成する所定分量の高融点ポリエステル(A1、A2)チップと低融点ポリエステルチップ、ポリオレフィンチップを所定量それぞれ用意し、これを2台のエクストルーダー型溶融押出機にそれぞれ混合・供給し、紡糸温度250~300℃で溶融し、紡糸孔を1個以上有する芯鞘型複合紡糸口金で合流させて吐出する。紡糸糸条を20~80℃の水で冷却後、引き続きこれを70~100℃の湯浴中で2.5~4.5倍に延伸(第一段延伸)し、その後、100~350℃の乾熱ヒーター中で1~2倍に延伸(第二段延伸)する。その後、100~350℃の温度で0.8~1倍の弛緩熱処理を行い、連続線材を得る。
【0036】
ベースとなる高融点ポリエステル(A1)、(A2)に対して、他に添加する樹脂や添加剤がある場合は、事前にコンパウンド加工したものを原料としてもよく、マスターバッチ化したものを用いて添加してもよい。本発明においては、高融点ポリエステル(A1)、(A2)にポリオレフィンを添加したマスターバッチを予め準備し、このマスターバッチを用いることも好ましい。延伸時の加熱方法は限定されず、例えば第一段延伸を湯浴でなく乾熱ヒーターで実施してもよく、第二段延伸を湯浴で実施してもよい。また延伸は三段以上や一段としてもよい。連続線材の巻取り速度は特に限定されず、押出や延伸の条件によって適性値は異なるが、10~200m/分であることが好ましく、より好ましくは20~120m/分である。
【0037】
連続線材の取扱い性や表面性状(摩擦係数、表面硬度、耐光性、親水性、親油性、色調など)を調整するために、延伸前後にオンラインで繊維用油剤などを塗布してもよく、後工程でコーティングやディンピングで塗膜を付与してもよい。また、水との親和性や工程通過性などを調整するためにプラズマ処理などの後加工を施してもよい。
【0038】
本発明の連続線材は物性や耐摩耗性、耐熱性に優れているため、例えば濾材などの工業用織物、漁網、防球ネットなどのネット類、釣り糸、ロープ、ゴム補強材、ラケット用や弦楽器用のストリング、ブラシ用毛材、研磨材や投射材などの研磨用具、バリ取り用等に適用する砥粒、カーペット、人工芝、クッション材など各種用途へ好適に使用することができる。研磨材や投射材などの研磨用具や砥粒は、本発明の連続線材を長さ0.05~10mm程度に裁断してペレット状物の形態として用いる。本発明の連続線材を織物や編物に適用する場合には、織編物を構成する糸条の50質量%以上が本発明の連続線材であることにより、耐摩耗性を効果的に発揮できる。
また、本発明の連続線材およびこれを所定のカット長に細断した材料は卓上型3Dプリンターや3Dペンなどの材料押出型の付加製造装置や積層造形装置にも適用することも好適である。この場合、本発明の連続線材を、材料押出型の付加製造装置に適用し、所望の形状の三次元造型物を製造することができる。付加製造装置へ用いる場合、材料の機械的物性への要求が高くないため、連続線材の製造時には延伸を加えず、未延伸の連続線材であってもよいが、プリント時や事前乾燥時などの工程通過性を向上させるために延伸品であることが好ましい。
【実施例0039】
以下、本発明について、実施例に基づき説明する。物性は以下の方法により測定した。
(1)線径
連続線材の長手方向50cmおきに10カ所を測定した数値の平均値を線径(mm)とした。
【0040】
(2)引張試験
連続線材は通常巻き取ってなるものであることから、必要量解舒し、室温下で24時間以上静置した後、引張試験機にて切断するまで荷重をかけ、最大強力と破断伸度を測定した。引張試験の条件は、初荷重は連続線材の断面積1平方ミリメートルあたり0.05N(例えば連続線材の線径が1mmの場合、初荷重は5.1Nとなる)、つかみ間隔は250mm、引張速度は300mm/minとし、n=5で測定した平均値を強力(N)、伸度(%)とした。また、柔軟性の指標として、前記した引張試験における荷重-伸び曲線から原点の近くで伸長変化に対する荷重変化の最大点(接線角の最大点)を求め、初期弾性率を算出し、n=5の平均値を初期弾性率(GPa)とした。初期弾性率は、10GPa未満であることが好ましく、より好ましくは9.5GPa以下である。
【0041】
(3)相対粘度
前述した方法により測定した。
【0042】
(4)メルトフローレート
前述した方法により測定した。
【0043】
(5)融点
示差走査熱量計を用い、昇温速度10℃/minの条件で測定した。
【0044】
(6)摩耗性A
長さ70mm以上の試料(連続線材)を準備し、試料の断面積1平方ミリメートルあたり5Nの張力をかけた状態で、支点間距離40mmとして、ステンレス製台の上に固定した。
一方、摩耗体として、表面が鏡面のステンレス丸棒(直径2mm)を準備した。
固定した試料の支点間の中央部に、ステンレス丸棒を所定荷重で押圧して接触させた。このとき、試料の軸方向(長手方向)とステンレス丸棒の軸方向(長手方向)とが直交するように接触させ、所定荷重は、試料の断面積1平方ミリメートルあたり41ニュートンとした(実施例で得られる連続線材の線径は1mmであるため所定荷重は32N)。次いで、押圧荷重を維持した状態で、丸棒を、丸棒の軸方向に100回往復運動(条件は、ストローク幅45mm、速度120rpm)させ、試料表面を摩耗させた。往復運動前後の試料の線径を測定し(往復運動後におけるの線径の測定箇所は丸棒と接触した摩耗箇所であって、最小径となる箇所を測定)、運動前の線径から運動後の線径を引いた値を、運動前の線径で除した後、百を乗じて損耗率を算出し、摩耗性を評価した。
【0045】
(7)摩耗性B
長さ120mmの試料(連続線材)を準備した。一方、摩耗体として、10mm×10mmの大きさのサンドペーパー(理研コランダム株式会社製、CC-100)を準備した。
試料を平板上に固定し、その固定した試料表面にサンドペーパーのサンド面を所定荷重で押圧し、押圧状態を維持した状態で、サンドペーパーを水平方向に往復運動(10往復、ストローク幅45mm、速度120rpm、所定荷重は試料の断面積1平方ミリメートルあたり12ニュートン(実施例で得られる連続線材の線径1mmであるため、荷重は9.6N)の条件)させ、試料表面を摩耗させた。なお、試料を平板上に固定する際、試料の軸方向が水平方向に対して5°の傾きとなるように固定し、往復運動の際には、サンドペーパーの面と試料を固定してなる平板面とが平行となる状態とした。試料を固定するにあたり、水平方向に対して5°の傾きを設けた理由は、サンドペーパーと試料とが、線接触ではなく、面的にも接触させることにより試料表面の摩耗状態を評価するためである。往復運動前後の試料質量を測定し、運動前の質量から運動後の質量を引いた値(往復運動による摩耗により減少した質量)を算出し、摩耗性を評価した。
【0046】
実施例1
鞘部に配する熱可塑性重合体として、高融点ポリエステル(A1)として、ポリエチレンテレフタレートチップ(相対粘度1.5、融点255℃)100質量部、ポリエチレン(融点130℃、メルトフローレート5)2質量部をチップブレンドしたものを準備した。
【0047】
芯部に配する熱可塑性重合体として、鞘部に配する高融点ポリエステル(A1)と同じポリエチレンテレフタレートチップ(相対粘度1.5、融点255℃)を高融点ポリエステル(A2)として用い、このポリエチレンテレフタレート100質量部に対し、低融点ポリエステルとして、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールのブロック共重合体(融点219℃)5質量部とポリエチレン(融点130℃、MFR5)2質量部とをチップブレンドしたものを準備した。
【0048】
次いで、通常のエクストルーダー型溶融複合紡糸装置を使用し、280℃の温度で溶融紡出した。なお、芯部と鞘部の体積比が芯部/鞘部で4/6となるように計量して紡出した。紡出した連続線材を50℃の温水浴中で冷却して未延伸線材を得た。この未延伸線材を巻き取ることなく、90℃の温水浴中で、延伸倍率3.5倍で第1段延伸し、次いで全延伸倍率が4.8倍となるように、200℃の加熱ゾーンを通過させながら第2段延伸し、さらに200℃の加熱ゾーンを通過させて1%の弛緩熱処理を行い、2層構造の連続線材を得た。得られた連続線材の線径は、直径1mmであり、横断面における芯部/鞘部の面積比は4/6であった。
【0049】
実施例2
実施例1において、低融点ポリエステルの配合量を10重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、芯鞘複合型の連続線材を得た。得られた連続線材の線径は、直径1mmであり、横断面における芯部/鞘部の面積比は4/6であった。
【0050】
実施例3
実施例1において、低融点ポリエステルとして、ブロック共重合体に替えて、ポリブチレンテレフタレート(融点225℃)を7重量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして、芯鞘複合型の連続線材を得た。得られた連続線材の線径は、直径1mmであり、横断面における芯部/鞘部の面積比は4/6であった。
【0051】
実施例4
実施例3において、低融点ポリエステルの配合量を15質量部としたこと以外は実施例3と同様にして、芯鞘複合型の連続線材を得た。得られた連続線材の線径は、直径1mmであり、横断面における芯部/鞘部の面積比は4/6であった。
【0052】
実施例5
実施例1において、低融点ポリエステルとして、ブロック共重合体に替えて、ポリエステルの構成成分が、エチレングリコール、ブタンジオール、テレフタル酸、ε-カプロラクトンからなるランダム共重合ポリエステル(融点160℃)を10質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして、芯鞘複合型の連続線材を得た。得られた連続線材の線径は、直径1mmであり、横断面における芯部/鞘部の面積比は4/6であった。
【0053】
実施例6
芯部および鞘部に用いる高融点ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートに替えて、エチレンテレフタレートを繰り返し単位とし、ジエチレングリコールを3モル%共重合したポリエチレンテレフタレート(相対粘度1.6、融点250℃)を用いたこと、芯部に配合する低融点ポリエステルとして、ブロック共重合体に替えて、ポリエステルの構成成分が、エチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、テレフタル酸からなる共重合ポリエステル(融点235℃)を30質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして、芯鞘複合型の連続線材を得た。得られた連続線材の線径は、直径1mmであり、横断面における芯部/鞘部の面積比は4/6であった。
【0054】
比較例1
ポリエチレンテレフタレート(相対粘度1.5、融点255℃)のみを原料として用い、通常のエクストルーダー型溶融複合紡糸装置を使用し、280℃の温度で溶融紡出した。紡出した連続線材を50℃の温水浴中で冷却して未延伸線材を得た。この未延伸線材を巻き取ることなく、90℃の温水浴中で、延伸倍率3.5倍で第1段延伸し、次いで全延伸倍率が4.8倍となるように、200℃の加熱ゾーンを通過させながら第2段延伸し、さらに200℃の加熱ゾーンを通過させて2%の弛緩熱処理を行い、単層構造の連続線材を得た。得られた連続線材の線径は、直径1mmであった。
【0055】
比較例2
比較例1において、原料としてポリエチレンテレフタレート(相対粘度1.5、融点255℃)100質量部にポリエチレン(融点130℃、MFR5)2質量部をチップブレンドした原料を用いたたこと以外は、比較例1と同様にして単層構造の連続線材を得た。得られた連続線材の線径は、直径1mmであった。
【0056】
比較例3
比較例1において、原料としてポリエチレンテレフタレート(相対粘度1.5、融点255℃)100質量部にポリエチレン(融点130℃、MFR5)2質量部、低融ポリエステル(ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールのブロック共重合体(融点219℃))5質量部をチップブレンドした原料を用いたこと以外は、比較例1と同様にして単層構造の連続線材を得た。得られた連続線材の線径は、直径1mmであった。
【0057】
比較例4
実施例1において、横断面における芯部/鞘部の面積比を7/3としたこと以外は実施例1と同様にして、芯鞘複合型の連続線材を得た。得られた連続線材の線径は、直径1mmであった。
【0058】
比較例5
比較例1において、原料としてポリエチレンテレフタレート(相対粘度1.5、融点255℃)100質量部にポリエチレン(融点130℃、MFR5)2質量部、低融ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート(融点225℃))7質量部をチップブレンドした原料を用いたこと以外は、比較例1と同様にして単層構造の連続線材を得た。得られた連続線材の線径は、直径1mmであった。
【0059】
得られた実施例および比較例の連続線材について、評価結果を表1、表2に示す。摩耗評価において、摩耗性Aの試験においては、摩耗体表面が鏡面であるため、摩擦熱による疲労や熱溶融の影響が大きく出やすく、一方、摩耗性Bの試験においては、摩耗体表面が凹凸であり、掘り起こしや削り取りの影響が出やすい試験方法である。
【0060】
【0061】
【表2】
実施例1~6の連続線材は、十分な厚みの鞘層を有し、また芯層に柔軟性を発揮する低融点ポリエステルを配合していることから、引張強力や伸度は、単相構造の比較例1や比較例2に大きく劣ることなく、実用的な機械的特性を有し、初期弾性率が大きくないものでありながら、摩耗性A、Bのいずれにおいても摩耗量も抑制でき、各種用途へ好適に使用できる連続線材であった。
【0062】
一方、比較例1の連続線材は、初期弾性率が高いため剛直で取り扱いにくく、摩耗性Bの摩耗量が多かった。比較例2の連続線材は、比較例1よりも耐摩耗性の観点で改善しているが、初期弾性率が高く剛直で取り扱いにくいものであった。比較例3および比較例5は、初期弾性率は低減されたが、比較例2よりも摩耗性Aの摩耗量が増え、耐摩耗性を備えたものではなかった。比較例4は芯鞘複合型の連続線材であるが、鞘層の比率が小さく、摩耗性Aの摩耗量が大きく、耐摩耗性を備えたものではなかった。