(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107996
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】車両の冷却装置
(51)【国際特許分類】
F01P 3/20 20060101AFI20240802BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F01P3/20 M
F01P3/20 L
F01P7/16 507A
F01P7/16 507B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012227
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】景山 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】引谷 晋一
(72)【発明者】
【氏名】小口 智弘
(72)【発明者】
【氏名】城 侑生
(72)【発明者】
【氏名】志茂 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 正浩
(72)【発明者】
【氏名】福田 大介
(72)【発明者】
【氏名】津田 顕
(72)【発明者】
【氏名】田中 健治
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 和史
(72)【発明者】
【氏名】五丹 宏明
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】本田 絢大
(72)【発明者】
【氏名】角田 良枝
(72)【発明者】
【氏名】東方田 敏彰
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙太
(72)【発明者】
【氏名】村井 亜樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 将貴
(72)【発明者】
【氏名】三浦 道行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 友作
(57)【要約】 (修正有)
【課題】変速機の潤滑及び冷却用の流体の温度を適切に保つこと。
【解決手段】車両の冷却装置3は、内燃機関11を冷却するための第1クーラントが循環する第1クーラント回路4と、電気駆動装置2を冷却するための第2クーラントが循環する第2クーラント回路5と、変速機15内の摩擦締結要素を潤滑しかつ冷却するための流体が循環する流体回路(ATF回路6)と、を備え、流体回路は、第1熱交換器(第1ATFウォーマクーラ47)と、第2熱交換器(第2ATFウォーマクーラ53)と、第1熱交換器を通過する流体の流量を変更する第1調整器(切替バルブ64)と、第2熱交換器を通過する前記流体の流量を変更する第2調整器(第2サーモスタットバルブ66)と、を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関及び電気駆動装置に接続されかつ、前記内燃機関及び前記電気駆動装置の少なくとも一方の出力を変速して車両の駆動輪へ出力する変速機と、
前記内燃機関を冷却するための第1クーラントが循環する第1クーラント回路と、
前記第1クーラント回路から独立した回路であって、前記電気駆動装置を冷却するための第2クーラントが循環する第2クーラント回路と、
前記変速機内の摩擦締結要素を潤滑しかつ冷却するための流体が循環する流体回路と、を備え、
前記流体回路は、
前記流体と前記第1クーラントとの間で熱交換を行う第1熱交換器と、
前記第1熱交換器と直列な熱交換器であって、前記流体と前記第2クーラントとの間で熱交換を行う第2熱交換器と、
前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量を変更する第1調整器と、
前記第2熱交換器を通過する前記流体の流量を変更する第2調整器と、を有している、
車両の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の冷却装置において、
前記第1調整器は、前記第2熱交換器の前記流体の通過流量から独立して、前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量を変更する、車両の冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の冷却装置において、
前記流体回路は、前記第1熱交換器をバイパスする第1バイパス流路をさらに有し、
前記第1調整器は、制御器に接続されかつ、前記制御器からの信号に基づいて、前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量と、前記第1バイパス流路を通過する前記流体の流量との割合を変更する、車両の冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の冷却装置において、
前記制御器は、前記流体の温度が第1温度未満の場合に、前記第1調整器へ通電信号を出力し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が大となり、
前記制御器は、前記流体の温度が前記第1温度以上の場合に、前記第1調整器への通電信号を停止し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が、前記第1温度未満の場合よりも小となる、車両の冷却装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の冷却装置において、
前記制御器は、前記流体の温度が第2温度(但し、第2温度>第1温度)以上の場合に、前記第1調整器へ通電信号を出力し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が、前記第1温度以上前記第2温度未満の場合よりも大となる、車両の冷却装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の冷却装置において、
前記制御器は、前記流体の温度が前記第2温度以上でかつ、前記第1クーラントの温度が第3温度(但し、第3温度<第2温度、第3温度≒第1温度)以上の場合に、前記第1調整器へ通電信号を出力し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が大となり、
前記制御器は、前記流体の温度が前記第2温度以上でかつ、前記第1クーラントの温度が前記第3温度未満の場合に、前記第1調整器への通電信号を停止し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が、前記第3温度以上の場合よりも小となる、車両の冷却装置。
【請求項7】
請求項5に記載の車両の冷却装置において、
前記制御器は、前記流体の温度が前記第1温度以上前記第2温度未満でかつ、前記第1クーラントの温度が第4温度(但し、第4温度>第3温度、第4温度≒第2温度)以上の場合に、
前記第2クーラントの温度が第5温度未満であれば、前記第1調整器へ通電信号を出力し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が大となり、
前記第2クーラントの温度が前記第5温度以上であれば、前記第1調整器への通電信号を停止し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が、前記第5温度未満の場合よりも小となる、車両の冷却装置。
【請求項8】
請求項4に記載の車両の冷却装置において、
前記第1クーラント回路は、前記第1クーラントの温度が第3温度未満の場合に、前記第1熱交換器を通過する前記第1クーラントの流量を、前記第3温度以上の場合よりも小にする第3調整器を有し、
前記制御器は、前記流体の温度が第1温度未満でかつ、前記第1クーラントの温度が前記第3温度以上の場合に、前記第1調整器へ通電信号を出力し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が大となり、
前記制御器は、前記流体の温度が前記第1温度未満でかつ、前記第1クーラントの温度が前記第3温度未満の場合に、前記第1調整器への通電信号を停止し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が、前記第3温度以上の場合よりも小となる、車両の冷却装置。
【請求項9】
請求項3~8のいずれか1項に記載の車両の冷却装置において、
前記流体回路は、前記変速機内においてシャフトに接続されかつ、前記シャフトの回転によって駆動する、循環用の流体ポンプを有し、
前記制御器は、前記流体ポンプが停止している場合は、前記第1調整器への通電信号を停止する、車両の冷却装置。
【請求項10】
請求項4に記載の車両の冷却装置において、
前記流体回路は、前記第2熱交換器をバイパスする第2バイパス流路をさらに有し、
前記第2調整器は、前記流体の温度に応じて、前記第2熱交換器を通過する前記流体の流量と、前記第2バイパス流路を通過する前記流体の流量との割合を変更するサーモスタットバルブであり、
前記第2調整器は、前記流体の温度が前記第1温度未満の場合に、前記第2熱交換器を通過する前記流体の流量を小とし、
前記制御器は、前記流体の温度が前記第1温度以上の場合に、前記第2熱交換器を通過する前記流体の流量を、前記第1温度未満の場合よりも大とする、車両の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、車両の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の冷却装置が記載されている。従来の冷却装置は、内燃機関と電気駆動装置と変速機とを備えた車両に搭載されている。従来の冷却装置は、ATF(Automatic Transmission Fluid)の温度管理を行う。ATFは、変速機内の摩擦締結要素を潤滑しかつ冷却する。
【0003】
具体的に、冷却装置は、ATFが循環するATF回路と、第1クーラント回路と、第2クーラント回路と、を備えている。第1クーラント回路は、内燃機関を冷却するための第1クーラントが循環する回路である。第2クーラント回路は、電気駆動装置を冷却するための第2クーラントが循環する回路である。ATF回路は、第1熱交換器と、第1熱交換器と直列な第2熱交換器とを有している。第1熱交換器は、ATFと第1クーラントとの間で熱交換を行う。第2熱交換器は、ATFと第2クーラントとの間で熱交換を行う。従来の冷却装置は、二つの熱交換器を用いるため、ATFの冷却に有利である。
【0004】
従来の冷却装置のATF回路はまた、サーモスタットバルブを有している。サーモスタットバルブは、第2熱交換器を通過するATFの流量を、ATFの温度に応じて調整する。より詳細に、ATF回路は、第2熱交換器をバイパスするバイパス流路を有している。サーモスタットバルブは、ATFの温度が高くなると、第2熱交換器の通過流量を大にかつ、バイパス流路の通過流量を小にし、ATFの温度が低くなると、第2熱交換器の通過流量を小にかつ、バイパス流路の通過流量を大にする。従来の冷却装置は、サーモスタットバルブによって、ATFを適切な温度に維持しようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、変速応答性の向上、変速感の向上、及び/又は、燃費/電費性能の向上を目的として、車両に搭載された変速機がトルクコンバーターレスである場合、変速機は、摩擦締結要素(つまり、クラッチ及び/又はブレーキ)を使って、車両の発進時のトルク伝達を行う。トルクコンバーターレスの変速機は、摩擦締結要素が発熱しやすいという技術課題を有している。特にオフロード走行時又はトーイング走行時には、摩擦締結要素が高温になりやすい。
【0007】
従来の冷却装置は、二つの熱交換器によってATFが高温になることを抑制できるから、オフロード走行時又はトーイング走行時の摩擦締結要素の冷却に有利である。しかし、通常走行時には、摩擦締結要素の発熱が抑えられているため、ATFの温度が相対的に低くなる。従来の冷却装置におけるATFの温度低下は、第1熱交換器において第1クーラントの温度を必要以上に低下させる恐れがある。第1クーラントの温度低下は、内燃機関の潤滑油の温度を下げるから、内燃機関の摩擦損失を増大させる。つまり、従来の冷却装置は、内燃機関の燃費性能の悪化を招く恐れがある。
【0008】
ここに開示する技術は、変速機の潤滑及び冷却用の流体の温度を適切な温度に保つ。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示する技術は、車両の冷却装置に係る。この冷却装置は、
内燃機関及び電気駆動装置に接続されかつ、前記内燃機関及び前記電気駆動装置の少なくとも一方の出力を変速して車両の駆動輪へ出力する変速機と、
前記内燃機関を冷却するための第1クーラントが循環する第1クーラント回路と、
前記第1クーラント回路から独立した回路であって、前記電気駆動装置を冷却するための第2クーラントが循環する第2クーラント回路と、
前記変速機内の摩擦締結要素を潤滑しかつ冷却するための流体が循環する流体回路と、を備え、
前記流体回路は、
前記流体と前記第1クーラントとの間で熱交換を行う第1熱交換器と、
前記第1熱交換器と直列な熱交換器であって、前記流体と前記第2クーラントとの間で熱交換を行う第2熱交換器と、
前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量を変更する第1調整器と、
前記第2熱交換器を通過する前記流体の流量を変更する第2調整器と、を有している。
【0010】
流体回路は、第1熱交換器と第2熱交換器との二つの熱交換器を有している。変速機の潤滑及び冷却用の流体は、第1熱交換器において、第1クーラントと熱交換し、第2熱交換器において、第2クーラントと熱交換する。冷却装置は、二つの熱交換器を使って流体が高温になることを抑制できる。例えば変速機がトルクコンバーターレスであって、変速機の摩擦締結要素が発熱しやすい場合であっても、冷却装置は、流体の温度を下げて摩擦締結要素を適切に冷却できる。
【0011】
冷却装置は、第2調整器を有している。第2調整器は、例えば流体の温度が高くなると、第2熱交換器を通過する流体の流量を大にし、流体の温度が低くなると第2熱交換器を通過する流体の流量を小にする。流体と第2クーラントとの熱交換の調整は、流体の温度を適切な温度に保つ。
【0012】
冷却装置はさらに、第1調整器を有している。第1調整器は、流体の温度に応じて第1熱交換器を通過する流体の流量を変更してもよい。
【0013】
流体の温度が低い場合、例えば車両の冷間時に、第1調整器は、内燃機関の熱によって流体の温度が上がるよう第1熱交換器を通過する流体の流量を大にしてもよい。流体の温度の早期上昇は、流体の粘度低下によって変速機の抵抗を低減させるから、車両の燃費及び/又は電費性能の向上に有利である。
【0014】
流体の温度が高い場合、例えば車両のオフロード走行時/又はトーイング走行時に、第1調整器は、流体の温度が下がるよう第1熱交換器を通過する流体の流量を大にしてもよい。流体の温度の低下は、変速機の摩擦締結要素の過剰な発熱を抑制する。
【0015】
流体の温度が中程度の場合、例えば車両の通常走行時に、第1調整器は、第1熱交換器を通過する流体の流量を小にしてもよい。車両の通常走行時は、変速機の摩擦締結要素の発熱が相対的に少ない。流体の冷却要求は低い。また、中程度の温度の流体と第1クーラントとの熱交換によって第1クーラントの温度が過剰に低下すると、内燃機関の潤滑油の粘度が上がって内燃機関の摩擦損失が増大する。中程度の温度の流体と第1クーラントとの熱交換を抑制することは、第1クーラントの過剰な温度低下を抑制する。内燃機関の摩擦損失の増大が抑制される。このことにより、内燃機関の燃費性能は悪化しない。
【0016】
前記第1調整器は、前記第2熱交換器の前記流体の通過流量から独立して、前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量を変更する、としてもよい。
【0017】
第1熱交換器の通過流量と第2熱交換器の通過流量との独立した変更は、二つの熱交換器を備えた冷却装置において、流体の温度の適切な維持を実現する。
【0018】
前記流体回路は、前記第1熱交換器をバイパスする第1バイパス流路をさらに有し、
前記第1調整器は、制御器に接続されかつ、前記制御器からの信号に基づいて、前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量と、前記第1バイパス流路を通過する前記流体の流量との割合を変更する、としてもよい。
【0019】
第1調整器は、第1バイパス流路を使うことによって、流体回路における循環流量を一定に保ちながら第1熱交換器の通過流量を変更できる。第1調整器はまた、サーモスタットバルブとは異なり、制御器からの通電信号に基づいて、第1バイパス流路を通過する流体の流量を変更する。第1調整器は、例えば、流体の温度、第1クーラントの温度、及び/又は、第2クーラントの温度に応じて、第1バイパス流路を通過する流体の流量を変更できる。尚、第1調整器は、第1熱交換器を通過する流体の流量をゼロにできてもよい。第1調整器は、第1バイパス流路を通過する流体の流量をゼロにできてもよい。
【0020】
前記制御器は、前記流体の温度が第1温度未満の場合に、前記第1調整器へ通電信号を出力し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が大となり、
前記制御器は、前記流体の温度が前記第1温度以上の場合に、前記第1調整器への通電信号を停止し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が、前記第1温度未満の場合よりも小となる、としてもよい。
【0021】
流体の温度が第1温度未満の場合は、例えば変速機の冷間時に相当する。流体の温度が第1温度未満の場合、内燃機関、及び/又は、電気駆動装置も、冷間の場合がある。流体の温度が第1温度未満の場合に、第1熱交換器を通過する流体の流量が大であることは、内燃機関の熱を利用して流体の温度を速やかに上昇させることができる。変速機の潤滑を行う流体の温度上昇は、変速機の抵抗を低減させ、ひいては車両の燃費及び/又は電費性能を向上させる。
【0022】
流体の温度が第1温度以上の場合は、例えば変速機の温間時であって車両の通常走行時に相当する。この場合、変速機の摩擦締結要素の発熱は抑制されている。第1熱交換器を通過する流体の流量が小であることは、第1クーラントが過剰に温度低下してしまうことを抑制する。内燃機関の摩擦損失の増大が抑制されるから、内燃機関の燃費性能が悪化しない。また、流体の温度が第1温度以上の場合、流体は適正温度であるから、第1熱交換器を通過する流体の流量が小であることは、流体の過剰な温度上昇を抑制することにもなる。潤滑用の流体の粘度が過剰に低下することによる変速機の潤滑低下が抑制される。さらに、第1熱交換器における熱交換の不要な場合に第1調整器への通電信号が停止されることにより、車両の燃費及び/又は燃費性能が向上する。
【0023】
前記制御器は、前記流体の温度が第2温度(但し、第2温度>第1温度)以上の場合に、前記第1調整器へ通電信号を出力し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が、前記第1温度以上前記第2温度未満の場合よりも大となる、としてもよい。
【0024】
流体の温度が第2温度以上の場合は、例えばオフロード走行又はトーイング走行によって変速機の摩擦締結要素が発熱しやすい場合に相当する。流体の温度が第2温度以上の場合に、第1熱交換器を通過する流体の流量が大であることは、流体の温度を低下させる。摩擦締結要素の過剰な発熱が抑制される。
【0025】
前記制御器は、前記流体の温度が前記第2温度以上でかつ、前記第1クーラントの温度が第3温度(但し、第3温度≒第1温度、第3温度<第2温度)以上の場合に、前記第1調整器へ通電信号を出力し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が大となり、
前記制御器は、前記流体の温度が前記第2温度以上でかつ、前記第1クーラントの温度が前記第3温度未満の場合に、前記第1調整器への通電信号を停止し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が、前記第3温度以上の場合よりも小となる、としてもよい。
【0026】
流体の温度が第2温度以上でかつ、第1クーラントの温度が第3温度以上の場合は、前述のように、オフロード走行又はトーイング走行によって変速機の摩擦締結要素が発熱しやすい場合に相当する。この場合、第1熱交換器を通過する流体の流量が大であることは、第1熱交換器における熱交換が促進される。流体及び第1クーラントの温度低下に有利になる。オフロード走行又はトーイング走行時の摩擦締結要素の過剰な発熱が抑制される。また、オフロード走行又はトーイング走行時に、内燃機関が適切に冷却される。
【0027】
流体の温度が第2温度以上でかつ、第1クーラントの温度が第3温度未満の場合、第1熱交換器を通過する流体の流量が小であることは、流体の温度を適切な温度に維持できる。流体の温度が第2温度以上でかつ、第1クーラントの温度が第3温度未満の場合も、前述のように、オフロード走行又はトーイング走行によって変速機の摩擦締結要素が発熱しやすい場合に相当する。しかし、流体の温度が第2温度以上の場合は、流体と第1クーラントとの熱交換が過剰に行われてしまう。第1熱交換器を通過する流体の流量が小であることによって、内燃機関の温度を適切に維持できる。
【0028】
前記制御器は、前記流体の温度が前記第1温度以上前記第2温度未満でかつ、前記第1クーラントの温度が第4温度(但し、第4温度>第3温度、第4温度≒第2温度)以上の場合に、
前記第2クーラントの温度が第5温度未満であれば、前記第1調整器へ通電信号を出力し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が大となり、
前記第2クーラントの温度が前記第5温度以上であれば、前記第1調整器への通電信号を停止し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が、前記第5温度未満の場合よりも小となる、としてもよい。
【0029】
流体の温度が第1温度以上第2温度未満でかつ、第1クーラントの温度が第4温度以上の場合、第1クーラントの温度が流体の温度よりも高いため、第1熱交換器で熱交換が行われると第1クーラントから流体へ熱が移動する。
【0030】
電気駆動装置の第2クーラントの温度は、外気温の影響を受けやすい。外気温が高いと第2クーラントの温度が高くなりやすい。第2クーラントの温度が第5温度以上である場合、第2クーラントの温度がそれ以上に上昇することによって、電気駆動装置の温度が許容温度を超えることは避けなければならない。
【0031】
前述したように、流体の温度が第1温度以上第2温度未満でかつ、第1クーラントの温度が第4温度以上の場合に、第1熱交換器で熱交換が行われると、第1クーラントから流体へ熱が移動する。この場合に、第2熱交換器において、流体から第2クーラントへ熱が移動すれば、第2クーラントの温度上昇を招く恐れがある。
【0032】
そこで、第2クーラントの温度が第5温度以上であれば、制御器は、第1調整器への通電信号を停止する。第1熱交換器における熱交換が抑制される。第1クーラントから流体への熱の移動が抑制されるから、第2熱交換器における流体から第2クーラントへの熱の移動も抑制される。つまり、第2クーラントの温度上昇が抑制される。例えば高外気温時に、電気駆動装置の温度が許容温度を超えることが抑制される。
【0033】
第2クーラントの温度が第5温度未満であれば、制御器は、第1調整器へ通電信号を出力する。第1熱交換器において、第1クーラントから流体へ熱が移動し、第2熱交換器において、流体から第2クーラントへ熱が移動する。内燃機関の熱が、流体を介して、第2クーラントへ移動するため、第1クーラントの温度低下が促進される。例えばトーイング走行時に、内燃機関が効率的に冷却される。
【0034】
尚、第5温度は、電気駆動装置の許容温度に応じて定めることができる。第5温度は、例えば第3温度と第4温度との間の温度としてもよい。
【0035】
前記第1クーラント回路は、前記第1クーラントの温度が第3温度未満の場合に、前記第1熱交換器を通過する前記第1クーラントの流量を、前記第3温度以上の場合よりも小にする第3調整器を有し、
前記制御器は、前記流体の温度が第1温度未満でかつ、前記第1クーラントの温度が前記第3温度以上の場合に、前記第1調整器へ通電信号を出力し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が大となり、
前記制御器は、前記流体の温度が前記第1温度未満でかつ、前記第1クーラントの温度が前記第3温度未満の場合に、前記第1調整器への通電信号を停止し、それによって前記第1熱交換器を通過する前記流体の流量が、前記第3温度以上の場合よりも小となる、としてもよい。
【0036】
第1クーラントの温度が第3温度未満の場合は、内燃機関の冷間時に相当する。第3調整器によって、第1熱交換器を通過する第1クーラントの流量は相対的に小さい。第1熱交換器における熱交換は実質的に行われない。第1熱交換器へ流体を供給する必要性に乏しいため、制御器は、第1調整器への通電信号を停止する。第1調整器への通電信号の停止は、車両の燃費及び/又は電費性能を向上させる。
【0037】
また、第1熱交換器における熱交換が抑制されるため、第1クーラントの温度上昇が促進される。内燃機関の早期の暖機が実現する。
【0038】
第1クーラントの温度が第3温度以上の場合は、内燃機関の温間時に相当する。第3調整器は、第1熱交換器を通過する第1クーラントの流量を相対的に大にする。また、制御器は、第1調整器へ通電信号を出力し、第1熱交換器を通過する流体の流量を相対的に大にする。低温の流体が第1クーラントの熱を受けて、その温度が速やかに上昇する。
【0039】
前記流体回路は、前記変速機内においてシャフトに接続されかつ、前記シャフトの回転によって駆動する、循環用の流体ポンプを有し、
前記制御器は、前記流体ポンプが停止している場合は、前記第1調整器への通電信号を停止する、としてもよい。
【0040】
変速機が停止している場合は流体ポンプも停止するため、流体回路において流体は循環しない。流体ポンプの停止中に第1調整器への通電信号が停止されることは、車両の燃費/電費性能を向上させる。
【0041】
前記流体回路は、前記第2熱交換器をバイパスする第2バイパス流路をさらに有し、
前記第2調整器は、前記流体の温度に応じて、前記第2熱交換器を通過する前記流体の流量と、前記第2バイパス流路を通過する前記流体の流量との割合を変更するサーモスタットバルブであり、
前記第2調整器は、前記流体の温度が前記第1温度未満の場合に、前記第2熱交換器を通過する前記流体の流量を小とし、
前記制御器は、前記流体の温度が前記第1温度以上の場合に、前記第2熱交換器を通過する前記流体の流量を、前記第1温度未満の場合よりも大とする、としてもよい。
【0042】
流体の温度が第1温度未満の場合は、前述したように例えば変速機の冷間時に相当する。第2熱交換器を通過する流体の流量が小であることは、流体から第2クーラントへの熱の移動を抑制するから、流体の速やかな温度上昇に有利である。流体の速やかな温度上昇は、変速機における抵抗低減に有利である。
【0043】
流体の温度が第1温度以上の場合は、例えば変速機の温間時に相当する。これは、車両の通常走行時、オフロード走行時、及び/又は、トーイング走行時を含む。第2熱交換器を通過する流体の流量が大であることは、流体の温度を適切な温度に維持することを可能にする。
【発明の効果】
【0044】
前記の車両の冷却装置は、変速機の潤滑及び冷却用の流体の温度を適切な温度に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、冷却装置が搭載される車両の走行駆動系を示している。
【
図5】
図5は、制御マップの各領域におけるATFの流量割合を示している。
【
図6】
図6は、切替バルブの制御に係るフローチャートである。
【
図8】
図8は、冷却装置の、別の制御マップである。
【
図9】
図9は、切替バルブの制御に係る、別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、車両の冷却装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する冷却装置は例示である。
【0047】
(車両の全体構成)
図1は、車両1の走行駆動系を示している。車両1は、電力を利用した走行が可能なハイブリッド自動車である。
【0048】
車両1には、内燃機関11が搭載されている。内燃機関11は、走行用のトルクを出力する。内燃機関11は、例えば車体の前側に配置されていてもよい。車両1の駆動輪12は後輪であってもよい。車両1は、いわゆるFR車であってもよい。尚、車両1の駆動輪12は前輪であってもよい。車両1は、いわゆるFF車であってもよい。
【0049】
内燃機関11は、例えば圧縮着火式エンジンである。内燃機関11は、火花点火式エンジンであってもよい。内燃機関11は、複数の気筒を有している。尚、気筒数は、特定の数に制限されない。内燃機関11は、過給機付きエンジンである。過給機は、排気エネルギを利用したターボチャージャーであってもよい。内燃機関11は、圧縮された吸気を冷却するインタークーラ13(
図2参照)を有している。
【0050】
車両1には、電気駆動装置2が搭載されている。電気駆動装置2は、電気モータ21を有している。電気モータ21は、例えば三相の交流によって駆動する永久磁石型の同期モータである。電気モータ21は、クラッチ14を介して内燃機関11と直列に接続されている。電気モータ21は、走行用のトルクを発生する。内燃機関11及び電気モータ21が協働することによって、駆動輪12が駆動される。駆動輪12の駆動により、車両1は走行する。尚、電気モータ21は、回生時には発電機としても利用される。
【0051】
電気モータ21は、インバータ22を介して、高電圧バッテリ23に接続されている。高電圧バッテリ23は、車両1に搭載された駆動電源である。高電圧バッテリ23は、インバータ22に高電圧の直流電力を供給する。インバータ22は、その直流電力を三相の交流に変換して電気モータ21に通電する。それにより、電気モータ21が回転駆動する。また、電気モータ21は、回生エネルギを、高電圧バッテリ23へ供給する。
【0052】
DCDCコンバータ24が、高電圧バッテリ23に接続されている。DCDCコンバータ24は、高電圧の直流電力を低電圧の直流電力に変換して出力する。DCDCコンバータ24は、低電圧バッテリ25と接続されている。DCDCコンバータ24は、低電圧バッテリ25を充電する。
【0053】
前述した電気モータ21、インバータ22、高電圧バッテリ23、DCDCコンバータ24、及び、低電圧バッテリ25は、電気駆動装置2に含まれる。
【0054】
クラッチ14は、電気モータ21のシャフトと、内燃機関11のクランクシャフトとの間に介在している。クラッチ14は、クランクシャフトとモータシャフトとを連結した状態と、クランクシャフトとモータシャフトとを分離した状態とに切り替わる。
【0055】
電気モータ21のシャフトは、後述する変速機15の入力軸に連結されている。従って、内燃機関11は、クラッチ14及びモータシャフトを介して、変速機15と連結されている。クラッチ14が分離状態になれば、内燃機関11は変速機15から切り離される。車両1は、電気駆動装置2のトルクのみによって走行可能である。
【0056】
車両1には、変速機15が搭載されている。変速機15は、内燃機関11及び電気駆動装置2の少なくとも一方の出力を変速して駆動輪12へ出力する。変速機15は、例えば多段式自動変速機(いわゆるAT)である。変速機15の入力軸は、上述したように電気モータ21に連結されている。変速機15の出力軸は、動力伝達部材17を介して、駆動輪12に接続されている。
【0057】
変速機15は、複数の遊星歯車機構、及び、複数の摩擦締結要素を含む変速機構を有している。摩擦締結要素は、いわゆるブレーキ及び/又はクラッチである。摩擦締結要素は、油圧によって締結状態と非締結状態とに切り替わる。変速機15は、油圧制御により、複数の摩擦締結要素を選択的に締結する。変速機15の変速段は、1速から8速までの前進用の変速段、及び、後退用の変速段(後退速)のいずれかに切り替わる。
【0058】
変速機15は、トルクコンバーターレスの変速機である。変速機15は、例えば車両1の発進時に、発進用の摩擦締結要素16を締結する。発進用の摩擦締結要素16は、前述した複数の摩擦締結要素のいずれか一つ又は複数である。尚、摩擦締結要素16の締結は、摩擦締結要素16を滑らせることも含む。
【0059】
車両1は、EV(Electric Vehicle)モードと、HEV(Hybrid Electric Vehicle)モードとを有している。EVモードは、電気駆動装置2のみが車両1の走行用のトルクを出力するモードである。HEVモードは、内燃機関11及び電気駆動装置2の両方が車両1の走行用のトルクを出力するモードである。
【0060】
(冷却装置)
図2は、車両1に搭載されている冷却装置3の回路図である。冷却装置3は、変速機15の温度管理を行う。冷却装置3はまた、内燃機関11、及び、電気駆動装置2の温度管理を行う。
【0061】
冷却装置3は、第1クーラント回路4を備えている。第1クーラント回路4は、内燃機関11の温度管理を行う。第1クーラント回路4では、内燃機関11を冷却する第1クーラントが循環する。
【0062】
第1クーラント回路4は、第1流路41を有している。第1流路41における第1クーラントの流れ方向は、実線の矢印の向きによって示されている。第1流路41は、内燃機関11と、第1ラジエータ42とを接続している。第1流路41には、機械式ウォータポンプ43が接続されている。機械式ウォータポンプ43は、内燃機関11に取り付けられている。機械式ウォータポンプ43は、内燃機関11のクランクシャフトに連結されている。機械式ウォータポンプ43は、内燃機関11によって駆動される。機械式ウォータポンプ43が駆動すると、第1クーラントが、内燃機関11の内部に導入される。第1クーラントは、内燃機関11から受熱する。第1クーラントは、内燃機関11に取り付けられたアウトレット44から内燃機関11の外へ導出される。第1クーラントは、第1流路41を通じて、アウトレット44から第1ラジエータ42に送られる。第1クーラントは、第1ラジエータ42において大気中へ放熱する。
【0063】
第1流路41には、第1サーモスタットバルブ45が接続されている。第1サーモスタットバルブ45は、第1クーラントの温度に応じて開閉するバルブである。第1クーラントの温度が開弁温度になると、第1サーモスタットバルブ45は、第1流路41を開く。開弁温度は、例えば50℃である。第1サーモスタットバルブ45は、例えばワックスを使用した公知の構造を採用できる。
【0064】
第1サーモスタットバルブ45によって第1流路41が開くと、第1クーラントは、機械式ウォータポンプ43、内燃機関11、アウトレット44、第1ラジエータ42、第1サーモスタットバルブ45、及び、機械式ウォータポンプ43の順に流れ、第1流路41を循環する。第1クーラントの温度は所定温度に維持され、内燃機関11が冷却される。
【0065】
第1クーラント回路4はまた、第2流路46を有している。第2流路46は、機械式ウォータポンプ43に接続されている。第2流路46における第1クーラントの流れ方向は、実線の矢印の向きによって示されている。
【0066】
第2流路46には、第1ATFウォーマクーラ47が接続されている。第1ATFウォーマクーラ47は、後述するように、第1クーラントとATFとの間で熱交換を行う。第1ATFウォーマクーラ47は、第1熱交換器の一例である。第1ATFウォーマクーラ47の構造は、公知の熱交換器の様々な構造を採用できる。
【0067】
第2流路46にはまた、オイルクーラ48が接続されている。オイルクーラ48は、第1クーラントと内燃機関11の潤滑油との間で熱交換を行う。オイルクーラ48の構造も、公知の熱交換器の様々な構造を採用できる。
【0068】
第2流路46は、内燃機関11に接続されている。第2流路46は、内燃機関11において最も高温である排気ポート近傍111に位置している。第2流路46は分岐している。第2流路46の一方は、アウトレット44に接続される。アウトレット44は、第1流路41と第2流路46とを合流させる。第2流路46の他方は、第1ラジエータ42をバイパスして、第1サーモスタットバルブ45に接続される(
図2の(A)参照)。
【0069】
第1サーモスタットバルブ45は、第1流路41を閉じている状態で第2流路46を開く。第2流路46が開くと、第1クーラントは、機械式ウォータポンプ43、第1ATFウォーマクーラ47、オイルクーラ48、内燃機関11、第1サーモスタットバルブ45、及び、機械式ウォータポンプ43の順に流れる。内燃機関11及び変速機15の冷間時に、内燃機関11の排気ポート近傍111から受熱した第1クーラントは、第1ラジエータ42において放熱せずに、後述するように、第1ATFウォーマクーラ47においてATFに放熱する。第1クーラントはまた、オイルクーラ48において潤滑油に放熱する。ATF及び潤滑油の温度が速やかに上昇する。車両1の燃費及び/又は電費性能が向上する。
【0070】
尚、第1流路41が開いている状態で、第1クーラントは、第2流路46において、機械式ウォータポンプ43、第1ATFウォーマクーラ47、オイルクーラ48、内燃機関11、アウトレット44、第1ラジエータ42、第1サーモスタットバルブ45、及び、機械式ウォータポンプ43の順に流れる。
【0071】
冷却装置3は、第2クーラント回路5を備えている。第2クーラント回路5は、電気駆動装置2の温度管理を行う。第2クーラント回路5では、電気駆動装置2を冷却する第2クーラントが循環する。
【0072】
第2クーラント回路5は、メイン流路51を有している。メイン流路51における第2クーラントの流れ方向は、実線の矢印の向きによって示されている。メイン流路51には、電気式ウォータポンプ52、DCDCコンバータ24、インバータ22、及び、電気モータ21が接続されている。電気式ウォータポンプ52は、低電圧バッテリ25からの電力供給を受けて駆動する。電気式ウォータポンプ52が駆動すると、第2クーラントがメイン流路51を流れる。第2クーラントは、DCDCコンバータ24、インバータ22、及び、電気モータ21から受熱する。
【0073】
メイン流路51には、第2ATFウォーマクーラ53が接続されている。第2ATFウォーマクーラ53は、
図2に例示する回路構成において、電気駆動装置2の下流に位置している。第2ATFウォーマクーラ53は、後述するように、第2クーラントとATFとの間で熱交換を行う。第2ATFウォーマクーラ53は、第2熱交換器の一例である。第2ATFウォーマクーラ53の構造は、公知の熱交換器の様々な構造を採用できる。
【0074】
メイン流路51は、第2ラジエータ54に接続されている。第2ラジエータ54は、第2クーラントを放熱させる。電気式ウォータポンプ52が駆動すると、第2クーラントは、電気式ウォータポンプ52、DCDCコンバータ24、インバータ22、電気モータ21、第2ATFウォーマクーラ53、第2ラジエータ54、及び、電気式ウォータポンプ52の順に流れ、メイン流路51を循環する。電気式ウォータポンプ52の駆動中において、メイン流路51を循環する第2クーラントの温度は所定温度に維持され、電気駆動装置2が冷却される。尚、内燃機関11及び電気駆動装置2の両方が運転している状態において、一般的に、第2クーラントの温度は、第1クーラントの温度よりも低い。
【0075】
第2クーラント回路5はまた、サブ流路55を有している。サブ流路55は、メイン流路51における電気式ウォータポンプ52とDCDCコンバータ24の間から分岐している。サブ流路55における第2クーラントの流れ方向は、実線の矢印の向きによって示されている。
【0076】
電気式ウォータポンプ52から吐出された第2クーラントの一部は、サブ流路55を流れる。サブ流路55には、流量調整弁56(CSV:Coolant Solenoid Valve)が設けられている。流量調整弁56は、後述する制御器7からの制御信号を受けて、サブ流路55を流れる第2クーラントの流量を、ゼロから最大流量までの間で調整する。
【0077】
サブ流路55には、インタークーラ13が接続されている。第2クーラントは、内燃機関11の吸気を冷却する。サブ流路55はまた、第2ラジエータ54に接続されている。インタークーラ13において受熱した第2クーラントは、第2ラジエータ54において大気中へ放熱する。
【0078】
冷却装置3は、ATF回路6を備えている。ATF回路6は、変速機15の温度管理を行う。ATF回路6では、ATFが循環する。ATF回路6は、流体回路の一例である。ATFは、変速機15内部の潤滑及び摩擦締結要素の冷却を行う。
【0079】
ATF回路6は、外部流路61を有している。外部流路61は、変速機15の外に位置している。ATFは、変速機15内から外部流路61へ流入し、外部流路61から再び変速機15内へ戻る。外部流路61におけるATFの流れ方向は、破線の矢印の向きによって示されている。
【0080】
ATF回路6は、流体ポンプ62を有している。流体ポンプ62は、変速機15内において、変速機15のシャフト151に接続されている。流体ポンプ62は、シャフト151の回転によって駆動する。従って、流体ポンプ62は、車両1の走行中に駆動する。流体ポンプ62の駆動によって、ATFは、変速機15の内部の各所に供給され、その潤滑及び冷却を行う。また、流体ポンプ62の駆動によって、ATFは、油圧制御回路に供給されて、変速機15の変速制御を実行する。さらに、流体ポンプ62の駆動によって、ATFは、外部流路61を循環する。
【0081】
外部流路61には、前述した第1ATFウォーマクーラ47及び第2ATFウォーマクーラ53が接続されている。ATF回路6において、第1ATFウォーマクーラ47及び第2ATFウォーマクーラ53は直列である。ATFの流れ方向について、第2ATFウォーマクーラ53は、第1ATFウォーマクーラ47の下流に位置している。流体ポンプ62が駆動すると、変速機15から外部流路61へ吐出されたATFは、第1ATFウォーマクーラ47において第1クーラントと熱交換しかつ、第2ATFウォーマクーラ53において第2クーラントと熱交換した後、変速機15へ戻る。
【0082】
ATF回路6は、第1バイパス流路63を有している。第1バイパス流路63は、第1ATFウォーマクーラ47をバイパスする流路である。
【0083】
ATF回路6は、切替バルブ64を有している。切替バルブ64は、ATFの流れ方向を、第1ATFウォーマクーラ47の側と、第1バイパス流路63の側と間で切り替える。切替バルブ64は、例えばオンオフバルブであってもよい。切替バルブ64は、後述する制御器7からの通電信号に基づいて、オンとオフとが切り替わる。具体的に切替バルブ64は、
図5の上図及び下図に示すように、制御器7からの通電信号を受けるとオンになって、ATFは第1ATFウォーマクーラ47を通過する。切替バルブ64は、
図5の中図に示すように、制御器7からの通電信号を受けないとオフになって、ATFは第1バイパス流路63を流れる。切替バルブ64は、第1調整器の一例である。切替バルブ64と、第1バイパス流路63との組み合わせは、ATF回路6における循環流量を一定に保ちつつ、第1ATFウォーマクーラ47の通過流量を変更できる。
【0084】
尚、図例のATF回路6においては、切替バルブ64が第1ATFウォーマクーラ47の上流に位置しているが、切替バルブ64は、第1ATFウォーマクーラ47の下流に位置していてもよい。また、ATF回路6は、切替バルブ64に代えて、流量調整バルブを有してもよい。流量調整バルブは、制御器7からの制御信号を受けて、第1ATFウォーマクーラ47を通過するATFの流量と、第1バイパス流路63を流れるATFの流量との割合を調整する。流量調整バルブは、第1ATFウォーマクーラ47を通過するATFの流量と、第1バイパス流路63を流れるATFの流量との割合を、例えば0:10~10:0の間で調整してもよい。
【0085】
ATF回路6は、第2バイパス流路65を有している。第2バイパス流路65は、第2ATFウォーマクーラ53をバイパスする流路である。
【0086】
ATF回路6は、第2サーモスタットバルブ66を有している。第2サーモスタットバルブ66は、第2ATFウォーマクーラ53を通過するATFの流量を変更する。第2サーモスタットバルブ66は、第2クーラントの温度に応じて開度が変化するバルブである。
図5の上図に示すように、第2クーラントの温度が設定温度未満の場合、第2サーモスタットバルブ66は、第2バイパス流路65を流れるATFの流量を、第2ATFウォーマクーラ53を流れるATFの流量よりも大にする。尚、
図5の「3」「7」は流量割合を示している。
図5の中図又は下図に示すように、第2クーラントの温度が設定温度以上の場合、第2サーモスタットバルブ66は、第2バイパス流路65を流れるATFの流量を、第2ATFウォーマクーラ53を流れるATFの流量よりも小にする。尚、
図5の「9」「1」は流量割合を示している。設定温度は、例えば50~60℃である。第2サーモスタットバルブ66は、第2調整器の一例である。第2サーモスタットバルブ66と、第2バイパス流路65との組み合わせは、ATF回路6における循環流量を一定に保ちつつ、第2ATFウォーマクーラ53の通過流量を変更できる。
【0087】
尚、図例のATF回路6においては、第2サーモスタットバルブ66が第2ATFウォーマクーラ53の上流に位置しているが、第2サーモスタットバルブ66は、第2ATFウォーマクーラ53の下流に位置していてもよい。また、ATF回路6は、第2サーモスタットバルブ66に代えて、電気制御の流量調整バルブを有してもよい。電気制御の流量調整バルブは、後述する制御器7からの制御信号を受けて、第2ATFウォーマクーラ53を通過するATFの流量と、第2バイパス流路65を流れるATFの流量との割合を調整する。また、ATF回路6は、第2サーモスタットバルブ66に代えて、電気制御のオンオフバルブを有してもよい。オンオフバルブは、制御器7からの通電信号を受けて、ATFが第2ATFウォーマクーラ53を通過しかつ、第2バイパス流路65を通過しない状態と、ATFが第2ATFウォーマクーラ53を通過せずかつ、第2バイパス流路65を通過する状態とに切り替える。
【0088】
図3は、冷却装置3の制御に関する構成を示している。冷却装置3は、制御器7を有している。制御器7は、プロセッサ、メモリ、インターフェースなどのハードウエアと、データベースや制御プログラムなどのソフトウエアとで構成されている。制御器7には、前述した切替バルブ64が接続されている。
【0089】
冷却装置3は、ATF温度センサ71を有している。ATF温度センサ71は、ATF回路6の外部流路61に設置されている(
図2も参照)。尚、ATF温度センサ71の設置位置は、特定の位置に限定されない。ATF温度センサ71は、ATFの温度に対応する計測信号を、制御器7へ出力する。
【0090】
冷却装置3は、第1温度センサ72を有している。第1温度センサ72は、例えば内燃機関11に取り付けられている(
図2も参照)。尚、第1温度センサ72は、第1流路41における適宜の位置に設置できる。第1温度センサ72は、第1クーラントの温度に対応する計測信号を、制御器7へ出力する。
【0091】
冷却装置3は、第2温度センサ73を有している。第2温度センサ73は、第2クーラント回路5のメイン流路51に設置されている(
図2も参照)。尚、第2温度センサ73は、メイン流路51における適宜の位置に設置できる。第2温度センサ73は、第2クーラントの温度に対応する計測信号を、制御器7へ出力する。
【0092】
制御器7は、ATF温度センサ71、第1温度センサ72、及び、第2温度センサ73からの計測信号を受ける。
【0093】
制御器7はまた、変速機15の回転信号を受ける。変速機15の回転信号に基づいて、制御器7は、変速機15のシャフト151に接続された流体ポンプ62が駆動中であるか否かを判断する。尚、制御器7は、様々な信号を変速機15の回転信号として利用できる。
【0094】
制御器7はさらに、内燃機関11の運転信号を受ける。内燃機関11の運転信号に基づいて、制御器7は、内燃機関11が運転中であるか否かを判断する。尚、制御器7は、様々な信号を内燃機関11の運転信号として利用できる。
【0095】
制御器7は、ATFの温度、第1クーラントの温度、第2クーラントの温度、変速機15の回転信号、及び、内燃機関11の運転信号に基づいて、切替バルブ64への通電信号の出力と、通電信号の停止とを切り替える。制御器7による切替バルブ64の制御の詳細は、後述する。
【0096】
(冷却装置の制御)
図4は、冷却装置3の制御マップ81、82を例示している。前述したように、制御器7は、ATFの温度、第1クーラントの温度、及び、第2クーラントの温度と、制御マップ81、82とに基づいて、切替バルブ64への通電信号の出力と、通電信号の停止とを切り替える。
【0097】
制御マップは、第1制御マップ81と第2制御マップ82とを含む。第1制御マップ81は、第2クーラントの温度(T_ED)が、第5温度(T5)未満の場合のマップであり、第2制御マップ82は、第2クーラントの温度(T_ED)が、第5温度(T5)以上の場合のマップである。第5温度(T5)は、電気駆動装置2の許容温度に応じて定めることができる。第5温度(T5)は、後述する第3温度(T3)と第4温度(T4)との間に設定してもよい。第5温度(T5)は、例えば60~70℃であってもよい。
【0098】
二つの制御マップ81、82は共に、ATFの温度(T_ATF)と、第1クーラントの温度(T_IC)とによって規定されている。尚、制御マップ81、82においては、ATFの温度(T_ATF)の上限、及び、第1クーラントの温度(T_IC)の上限が定まっている。
【0099】
(第1制御マップ)
第1制御マップ81は、第1領域811、第2領域812、及び、第3領域813の3つの領域に分かれる(
図5の一点鎖線参照)。第1領域811、第2領域812、及び、第3領域813は、概ねATFの温度の高低について第1制御マップ81を分けている。
【0100】
第1領域811は、ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)未満の領域である。
【0101】
第2領域812は、ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)以上、第2温度(T2(>T1))未満でかつ、第1クーラントの温度(T_IC)が第4温度(T4)未満の領域、及び、ATFの温度(T_ATF)が第2温度(T2)以上でかつ、第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3(<T4))未満の領域である。
【0102】
第3領域813は、ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)以上、第2温度(T2)未満でかつ、第1クーラントの温度(T_IC)が第4温度(T4)以上の領域、及び、ATFの温度(T_ATF)が第2温度(T2)以上でかつ、第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)以上の領域である。
【0103】
尚、第1温度(T1)と第3温度(T3)とは、ほぼ同じ(T1≒T3)としてもよい。第1温度(T1)は、50~60℃としてもよく、第3温度(T3)も、50~60℃としてもよい。第1温度(T1)は、前述した第2サーモスタットバルブ66の設定温度にも対応する。第2温度(T2)と第4温度(T4)とは、ほぼ同じ(T2≒T4)としてもよい。第2温度(T2)は、95~105℃としてもよく、第4温度(T4)も、95~105℃としてもよい。
【0104】
第1領域811は、変速機15の冷間時に相当する。制御器7は、第1領域811において、切替バルブ64へ通電信号を出力する(つまり、ON)。
図5の上図は、第1領域811における、ATF回路6のATFの流量割合を示している。ATFは、第1ATFウォーマクーラ47を通過する。第1ATFウォーマクーラ47において、内燃機関11の熱によってATFの温度が上昇する。
【0105】
ここで、内燃機関11の冷間時は、前述したように、第1サーモスタットバルブ45が第1流路41を閉じかつ、第2流路46を開く。第1クーラントは、第1ラジエータ42をバイパスして循環するため、内燃機関11の熱によって、第1クーラントの温度は、速やかに上昇する。ATFは、第1クーラントの温度上昇に伴って、速やかに上昇する。ATFの温度上昇は、変速機15の抵抗を低減させるから、車両の燃費及び/又は電費性能が向上する。
【0106】
また、第1クーラントの温度が高まった内燃機関11の温間時には、前述したように、第1サーモスタットバルブ45が第1流路41を開けることにより、第1クーラントの温度は適切な温度に維持される。ATFは、第1クーラントから熱を受けて、その温度が上昇する。
【0107】
また、ATFの温度が低い第1領域811においては、第2サーモスタットバルブ66によって、第2ATFウォーマクーラ53を流れるATFの流量が、相対的に少ない。第2ATFウォーマクーラ53における、ATFと第2クーラントとの間の熱交換が抑制される。つまり、第1ATFウォーマクーラ47において受熱したATFが、第2ATFウォーマクーラ53において第2クーラントに放熱することが抑制される。この放熱抑制も、ATFの速やかな温度上昇に有利である。
【0108】
第2領域812は、変速機15の温間時に相当する。制御器7は、第2領域812において、切替バルブ64への通電信号を停止する(つまり、OFF)。
図5の中図は、第2領域812における、ATF回路6のATFの流量割合を示している。ATFは、第1ATFウォーマクーラ47をバイパスする。第1ATFウォーマクーラ47における、ATFと第1クーラントとの熱交換が行われない。
【0109】
第2領域812は、主に車両の通常走行時に相当する。この「通常走行」は、前述した冷間時では無く、かつ、後述するオフロード走行時及びトーイング走行時ではないことを意味する。第2領域812において、第1温度(T1)以上第2温度(T2)未満のATFは、適切な温度を保っている。
【0110】
車両の通常走行時に第1ATFウォーマクーラ47を通過する流体の流量が小であることは、第1クーラントからATFへの熱移動を抑制する。第1クーラントの過度な温度低下が抑制される。このことは、内燃機関11の摩擦損失の増大を抑制するから、内燃機関11の燃費性能の悪化を抑制する。また、ATFの過剰な温度上昇が抑制される。このことは、ATFの過剰な粘度低下に起因する変速機15の潤滑低下を、抑制する。
【0111】
尚、第2領域812においては、第2サーモスタットバルブ66によって、第2ATFウォーマクーラ53を流れるATFの流量が、相対的に多い。第2ATFウォーマクーラ53において、ATFと第2クーラントとの間の熱交換が行われる。第2クーラントも、適正な温度を保つ。
【0112】
また、第2領域812における、ATFの温度(T_ATF)が第2温度(T2)以上の領域は、オフロード走行又はトーイング走行によって変速機15の摩擦締結要素16が発熱しやすい場合に相当する。しかし、第2領域812における、ATFの温度(T_ATF)が第2温度(T2)以上の領域は、ATFの温度に対して第1クーラントの温度が低いため、ATFと第1クーラントとの熱交換を行うと、熱交換が過剰に行われてしまう。この領域において、第1ATFウォーマクーラ47において熱交換を行わず、第2ATFウォーマクーラ53においてATFと第2クーラントとの熱交換を行うことにより、ATFの温度が適切に維持される。
【0113】
さらに、第2領域812では、制御器7は、切替バルブ64への通電信号を停止するため、車両1の燃費及び/又は燃費性能の向上に有利である。車両1の一般的な走行においては、第2領域812の頻度が、第1領域811及び第3領域813の頻度よりも高いため、第2領域812において切替バルブ64への通電信号を停止することは、車両1の燃費及び/又は燃費性能の向上に有効である。
【0114】
第3領域813は、ATF及び/又は第1クーラントの温度が高い領域である。制御器7は、第3領域813において、切替バルブ64へ通電信号を出力する(つまり、ON)。
図5の下図は、第3領域813における、ATF回路6のATFの流量割合を示している。ATFは、第1ATFウォーマクーラ47を通過する。第1ATFウォーマクーラ47において、ATFと第1クーラントとの間で熱交換が行われる。また、第2ATFウォーマクーラ53を通過するATFの流量が大である。第2ATFウォーマクーラ53において、ATFと第2クーラントとの間で熱交換が行われる。
【0115】
第3領域813においてATFの温度が高い場合、ATFは、第1ATFウォーマクーラ47及び第2ATFウォーマクーラ53の両方において放熱できる。ATFの温度の過剰な上昇が抑制される。
【0116】
第3領域813において第1クーラントの温度が高い場合、第1クーラントの熱は、第1ATFウォーマクーラ47においてATFへ移動する。第1ATFウォーマクーラ47において受熱したATFは、第2ATFウォーマクーラ53において、第2クーラントへ放熱する。ここで、第1制御マップ81では概ね、第2クーラントの温度が低いため、第2ATFウォーマクーラ53におけるATFから第2クーラントへの熱移動が促進される。このことは、第1クーラントの温度の低下促進に有利である。
【0117】
第3領域813は、車両1のオフロード走行時又はトーイング走行時に相当する。第3領域813において、ATF及び/又は第1クーラントの過剰な温度上昇が抑制できる。
【0118】
(第2制御マップ)
電気駆動装置2の温度は、外気温度の影響を受けやすい。高外気温の場合、電気駆動装置2の温度が高くなり、それに伴い、第2クーラントの温度が高くなる。第2クーラントの温度(T_ED)が、第5温度(T5)以上になれば、第2クーラントの温度(T_ED)の上昇を抑制することにより、電気駆動装置2の温度が許容温度を超えないようにすることが求められる。
【0119】
図4に示すように、第2制御マップ82も、概ねATFの温度の高低について、第1領域821、第2領域822、及び、第3領域823の3つの領域に分かれる。第2制御マップ82の第1領域821は、第1制御マップ81の第1領域811と同じである。
【0120】
第2制御マップ82の第2領域822は、ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)以上、第2温度(T2)未満の領域と、ATFの温度(T_ATF)が第2温度(T2)以上でかつ、第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)未満の領域である。
【0121】
第2制御マップ82の第3領域823は、ATFの温度(T_ATF)が第2温度(T2)以上でかつ、第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)以上の領域である。
【0122】
第1制御マップ81と第2制御マップ82とを比較した場合に、ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)以上、第2温度(T2)未満の領域で、第1クーラントの温度(T_IC)が第4温度(T4)以上の特定領域820(つまり、第2制御マップ82において破線で囲んだ領域)が、第1制御マップ81においては第3領域813に含まれるのに対し、第2制御マップ82においては第2領域822に含まれる。
【0123】
制御器7は、特定領域820において、切替バルブ64への通電信号を停止する(つまり、OFF)。ATFは、第1ATFウォーマクーラ47をバイパスする。第1ATFウォーマクーラ47における熱交換が行われない。ここで、当該特定領域820において第1ATFウォーマクーラ47における熱交換が行われると、前述したように、第1クーラントからATFへ熱が移動し、その後、第2ATFウォーマクーラ53において、ATFから第2クーラントへ熱が移動してしまう。第2クーラントの温度が高い場合に、その温度が過剰に高くなる恐れがある。そのため、第2制御マップ82では、特定領域820は、第2領域822に含まれる。第1ATFウォーマクーラ47における熱交換が行われないため、第2クーラントの温度上昇が抑制される。尚、第2制御マップ82における、第1領域821、第2領域822、及び、第3領域823それぞれの、ATF回路6のATFの流量割合は、
図5に従う。
【0124】
(冷却装置の制御フロー)
図6は、冷却装置3の制御器7が、
図4の制御マップ81、82に基づいて実行する切替バルブ64の通電に関する制御手順を示している。尚、
図6のフローチャートは例示である。当該フローチャートにおいて、可能な範囲でステップの順番を入れ替えたり、新たなステップを追加したり、一部のステップを省略したりできる。
【0125】
先ずスタート後のステップS61において、制御器7は変速機回転信号に基づいて、流体ポンプ62が駆動中であるか否かを判断する。流体ポンプ62が停止中である場合(つまり、ステップS61がNoである場合)、制御器7は、ステップS68において切替バルブ64への通電信号を停止する。ATF回路6においてATFが循環していないためである。切替バルブ64への通電信号を停止することは、燃費及び/又は電費性能の向上に有利である。
【0126】
流体ポンプ62が駆動中である場合(つまり、ステップS61がYesである場合)、制御器7は、ステップS62において、内燃機関運転信号に基づいて、内燃機関11が運転中であるか否かを判断する。内燃機関11が停止中である場合(つまり、ステップS62がNoである場合)、制御器7は、ステップS68において切替バルブ64への通電信号を停止する。機械式ウォータポンプ43が停止していて第1クーラント回路4において第1クーラントが循環しておらず、第1ATFウォーマクーラ47において熱交換が行われないためである。尚、内燃機関11の停止中は、EVモードに相当する。
【0127】
内燃機関11が運転中である場合(つまり、ステップS62がYesである場合であって、HEVモードに相当する場合)、制御器7は、ステップS63において、ATF温度センサ71の計測信号に基づいて、ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)以上であるか否かを判断する。ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)未満である場合(つまり、ステップS63がNoの場合)、制御マップは、第1制御マップ81の第1領域811、又は、第2制御マップ82の第1領域821に対応する。制御器7は、ステップS69において切替バルブ64へ通電信号を出力する。
【0128】
ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)以上である場合(つまり、ステップS63がYesの場合)、制御器7は、ステップS64において、ATF温度センサ71の計測信号に基づいて、ATFの温度(T_ATF)が第2温度(T2)未満であるか否かを判断する。
【0129】
ATFの温度(T_ATF)が第2温度(T2)未満である場合(つまり、ステップS64がYesの場合)、制御器7は、ステップS65において、第2温度センサ73の計測信号に基づいて、第2クーラントの温度(T_ED)が第5温度(T5)未満であるか否かを判断する。第2クーラントの温度(T_ED)が第5温度(T5)以上である場合(つまり、ステップS65がNoの場合)、制御マップは、第2制御マップ82の第2領域822に対応する。制御器7は、ステップS68において切替バルブ64への通電信号を停止する。
【0130】
第2クーラントの温度(T_ED)が第5温度(T5)未満である場合(つまり、ステップS65がYesの場合)、制御器7は、ステップS66において、第1温度センサ72の計測信号に基づいて、第1クーラントの温度(T_IC)が第4温度(T4)未満であるか否かを判断する。
【0131】
第1クーラントの温度(T_IC)が第4温度(T4)未満である場合(つまり、ステップS66がYesの場合)、制御マップは、第1制御マップ81の第2領域812に対応する。制御器7は、ステップS68において切替バルブ64への通電信号を停止する。
【0132】
第1クーラントの温度(T_IC)が第4温度(T4)以上である場合(つまり、ステップS66がNoの場合)、制御マップは、第1制御マップ81の第3領域813に対応する。制御器7は、ステップS69において切替バルブ64へ通電信号を出力する。
【0133】
ステップS64に戻り、ATFの温度(T_ATF)が第2温度(T2)以上である場合(つまり、ステップS64がNoの場合)、制御器7は、ステップS67において、第1温度センサ72の計測信号に基づいて、第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)未満であるか否かを判断する。
【0134】
第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)未満である場合(つまり、ステップS67がYesの場合)、制御マップは、第1制御マップ81の第2領域812、又は、第2制御マップ82の第2領域822に対応する。制御器7は、ステップS68において切替バルブ64への通電信号を停止する。
【0135】
第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)以上である場合(つまり、ステップS67がNoの場合)、制御マップは、第1制御マップ81の第3領域813、又は、第2制御マップ82の第3領域823に対応する。制御器7は、ステップS69において切替バルブ64へ通電信号を出力する。
【0136】
この冷却装置3によれば、ATF回路6が、第1ATFウォーマクーラ47を通過するATFの流量を変更する切替バルブ64と、第2ATFウォーマクーラ53を通過するATFの流量を変更する第2サーモスタットバルブ66と、を有しているため、二つの熱交換器を備えた冷却装置3において、ATFの温度の適切な維持を実現できる。
【0137】
特に、車両1がトルクコンバーターレスの変速機15を搭載しており、オフロード走行時又はトーイング走行時には、変速機15の摩擦締結要素16が発熱しやすい。冷却装置3は、第1ATFウォーマクーラ47及び第2ATFウォーマクーラ53を用いてATFを効率的に冷却できるから、摩擦締結要素16の冷却に有利である。
【0138】
その一方で、摩擦締結要素16の発熱が抑制される通常走行時には、第1ATFウォーマクーラ47における熱交換が行われない。第1クーラントの温度が過剰に低下することが抑制できるから、内燃機関11の摩擦損失の増大を抑制できる。冷却装置3は、内燃機関11の燃費性能の悪化を抑制できる。
【0139】
(冷却装置の変形例)
図7は、変形例に係る冷却装置30の回路図である。冷却装置30は、
図2の冷却装置3に対して、第1クーラント回路40に、サブサーモスタットバルブ49が追加されている。サブサーモスタットバルブ49は、第2流路46に接続されている。サブサーモスタットバルブ49は、第1クーラントの温度に応じて開閉するバルブである。サブサーモスタットバルブ49は、例えばワックスを使用した公知の構造を採用できる。第1クーラントの温度が第2開弁温度になると、サブサーモスタットバルブ49は、第2流路46を開く。第2開弁温度は、例えば、前述した第3温度(T3)としてもよい。第2開弁温度は、第1サーモスタットバルブ45の開弁温度よりも低い。尚、サブサーモスタットバルブ49に代えて、電気制御のオンオフバルブ、又は、電気制御の流量調整バルブを第2流路46に接続してもよい。
【0140】
サブサーモスタットバルブ49によって第2流路46が開くと、第1クーラントは、機械式ウォータポンプ43、サブサーモスタットバルブ49、第1ATFウォーマクーラ47、オイルクーラ48、内燃機関11、第1サーモスタットバルブ45、及び、機械式ウォータポンプ43の順に流れ、第2流路46を循環する。サブサーモスタットバルブ49が第2流路46を閉じると、第1クーラントは、第1ATFウォーマクーラ47を通過しない。
【0141】
図8は、冷却装置30の制御マップ83、84を例示している。第1制御マップ83は、第1領域831、第2領域832及び第3領域833に分かれる。第1制御マップ83と、
図4の第1制御マップ81とを比較した場合に、第3領域813と833とは共通する。
【0142】
ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)未満の領域で、第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)未満の第2特定領域830(つまり、第1制御マップ83において破線で囲んだ領域)が、
図4の第1制御マップ81においては第1領域811に含まれるのに対し、
図8の第1制御マップ83においては第2領域832に含まれる。
【0143】
第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)未満の場合、サブサーモスタットバルブ49が第2流路46を閉じている。第1クーラントが第1ATFウォーマクーラ47を通過しない。
【0144】
制御器7は、第2特定領域830において、切替バルブ64への通電信号を停止する(つまり、OFF)。ATFは、第1ATFウォーマクーラ47をバイパスする。第1ATFウォーマクーラ47における熱交換が行われない。不要時に切替バルブ64への通電信号が停止されるため、車両1の燃費及び/又は電費性能の向上に有利である。
図8の第1制御マップ83においては、第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)未満の場合、ATFの温度に関わらず、切替バルブ64への通電信号が停止される。
【0145】
図8の第2制御マップ84は、第1領域841、第2領域842、及び、第3領域843に分かれる。第1制御マップ83と、第2制御マップ84とを比較した場合に、第1領域831と841とは同じである。第2制御マップ84においても、第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)未満の場合、ATFの温度に関わらず、切替バルブ64への通電信号が停止される。
【0146】
第1制御マップ83と、第2制御マップ84とを比較した場合に、ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)以上、第2温度(T2)未満の領域で、第1クーラントの温度(T_IC)が第4温度(T4)以上の特定領域840が、第1制御マップ83においては第3領域833に含まれるのに対し、第2制御マップ84においては第2領域842に含まれる。このことは、
図4の第1制御マップ81と第2制御マップ82との関係と同じである。
【0147】
尚、第1制御マップ83における、第1領域831、第2領域832、及び、第3領域833それぞれの、ATF回路6のATFの流量割合は、
図5に従う。第2制御マップ84における、第1領域841、第2領域842、及び、第3領域843それぞれの、ATF回路6のATFの流量割合も、
図5に従う。
【0148】
図9は、冷却装置30の制御器7が、
図8の制御マップ83、84に基づいて実行する切替バルブ64の通電に関する制御手順を示している。尚、
図9のフローチャートは例示である。当該フローチャートにおいて、可能な範囲でステップの順番を入れ替えたり、新たなステップを追加したり、一部のステップを省略したりできる。
【0149】
先ずスタート後のステップS91において、制御器7は変速機回転信号に基づいて、流体ポンプ62が駆動中であるか否かを判断する。流体ポンプ62が停止中である場合(つまり、ステップS91がNoである場合)、制御器7は、ステップS98において切替バルブ64への通電信号を停止する。ATF回路6においてATFが循環していないためである。切替バルブ64への通電信号を停止することは、燃費及び/又は電費性能の向上に有利である。
【0150】
流体ポンプ62が駆動中である場合(つまり、ステップS91がYesである場合)、制御器7は、ステップS92において、内燃機関運転信号に基づいて、内燃機関11が運転中であるか否かを判断する。内燃機関11が停止中である場合(つまり、ステップS92がNoである場合)、制御器7は、ステップS98において切替バルブ64への通電信号を停止する。機械式ウォータポンプ43が停止していて第1クーラント回路40において第1クーラントが循環しておらず、第1ATFウォーマクーラ47において熱交換が行われないためである。尚、内燃機関11の停止中は、EVモードに相当する。
【0151】
内燃機関11が運転中である場合(つまり、ステップS92がYesである場合であって、HEVモードに相当する場合)、制御器7は、ステップS93において、第1温度センサ72の計測信号に基づいて、第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)以上であるか否かを判断する。第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)未満である場合(つまり、ステップS93がNoの場合)、前述したように、サブサーモスタットバルブ49が第2流路46を閉じていて、第1クーラントが第1ATFウォーマクーラ47へ供給されていない。制御マップは、第1制御マップ83の第2領域832、又は、第2制御マップ84の第2領域842に対応する。制御器7は、ATFの温度に関わらず、ステップS98において切替バルブ64への通電信号を停止する。
【0152】
第1クーラントの温度(T_IC)が第3温度(T3)以上である場合(つまり、ステップS93がYesの場合)、制御器7は、ステップS94において、ATF温度センサ71の計測信号に基づいて、ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)以上であるか否かを判断する。ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)未満である場合(つまり、ステップS94がNoの場合)、制御マップは、第1制御マップ83の第1領域831、又は、第2制御マップ84の第1領域841に対応する。制御器7は、ステップS99において切替バルブ64へ通電信号を出力する。
【0153】
ATFの温度(T_ATF)が第1温度(T1)以上である場合(つまり、ステップS94がYesの場合)、制御器7は、ステップS95において、ATF温度センサ71の計測信号に基づいて、ATFの温度(T_ATF)が第2温度(T2)未満であるか否かを判断する。
【0154】
ATFの温度(T_ATF)が第2温度(T2)以上である場合(つまり、ステップS95がNoの場合)、制御マップは、第1制御マップ83の第3領域833、又は、第2制御マップ84の第3領域843に対応する。制御器7は、ステップS99において切替バルブ64へ通電信号を出力する。
【0155】
ATFの温度(T_ATF)が第2温度(T2)未満である場合(つまり、ステップS95がYesの場合)、制御器7は、ステップS96において、第2温度センサ73の計測信号に基づいて、第2クーラントの温度(T_ED)が第5温度(T5)未満であるか否かを判断する。第2クーラントの温度(T_ED)が第5温度(T5)以上である場合(つまり、ステップS96がNoの場合)、制御マップは、第2制御マップ84の第2領域842に対応する。制御器7は、ステップS98において切替バルブ64への通電信号を停止する。
【0156】
第2クーラントの温度(T_ED)が第5温度(T5)未満である場合(つまり、ステップS96がYesの場合)、制御器7は、ステップS97において、第1温度センサ72の計測信号に基づいて、第1クーラントの温度(T_IC)が第4温度(T4)未満であるか否かを判断する。
【0157】
第1クーラントの温度(T_IC)が第4温度(T4)未満である場合(つまり、ステップS97がYesの場合)、制御マップは、第1制御マップ83の第2領域832に対応する。制御器7は、ステップS98において切替バルブ64への通電信号を停止する。
【0158】
第1クーラントの温度(T_IC)が第4温度(T4)以上である場合(つまり、ステップS97がNoの場合)、制御マップは、第1制御マップ83の第3領域833に対応する。制御器7は、ステップS99において切替バルブ64へ通電信号を出力する。
【0159】
この冷却装置30によっても、冷却装置3と同様に、二つの熱交換器を備えた冷却装置30において、ATFの温度の適切な維持を実現できる。
【0160】
また、オフロード走行時又はトーイング走行時に、冷却装置3は、第1ATFウォーマクーラ47及び第2ATFウォーマクーラ53を用いてATFを効率的に冷却できる一方、通常走行時には、第1ATFウォーマクーラ47における熱交換が行われないことによって、第1クーラントの温度が過剰に低下することが抑制できるから、内燃機関11の摩擦損失の増大を抑制できる。
【0161】
また、冷却装置30では、切替バルブ64への通電信号を停止する第2領域832、842が、冷却装置3よりも広いため、車両1の燃費性能及び/又は電費性能の向上に有利である。
【0162】
尚、ここに開示する技術は、前述した車両1に適用されることに限定されない。車両1の走行駆動系は、様々な構造を採用することができる。
【符号の説明】
【0163】
1 車両
11 内燃機関
12 駆動輪
15 変速機
151 シャフト
2 電気駆動装置
4 第1クーラント回路
47 第1ATFウォーマクーラ(第1熱交換器)
5 第2クーラント回路
53 第2ATFウォーマクーラ(第2熱交換器)
6 ATF回路(流体回路)
62 流体ポンプ
63 第1バイパス流路
64 切替バルブ(第1調整器)
65 第2バイパス流路
66 第2サーモスタットバルブ(第2調整器)
7 制御器