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特開2024-108004ホットスタンピング部品、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108004
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ホットスタンピング部品、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20240802BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20240802BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20240802BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20240802BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20240802BHJP
   C22C 38/32 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
B21D22/20 H
C21D9/00 A
C21D1/18 C
C21D1/00 112D
B21D22/20 E
C22C38/00 301S
C22C38/32
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012238
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】コン、ジョヨル
【テーマコード(参考)】
4E137
4K034
4K042
【Fターム(参考)】
4E137AA01
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC01
4E137BC02
4E137BC06
4E137BC07
4E137BC10
4E137CA09
4E137DA03
4E137EA01
4E137EA26
4E137EA36
4E137FA10
4E137FA25
4E137FA31
4E137GA03
4E137GA06
4E137GB03
4K034AA01
4K034BA05
4K034CA01
4K034CA04
4K034DA03
4K034DA06
4K034DB02
4K034DB03
4K034DB04
4K034DB05
4K034DB06
4K034EA04
4K034GA02
4K034GA03
4K042AA24
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA02
4K042BA06
4K042BA08
4K042BA10
4K042BA11
4K042CA02
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA12
4K042DB07
4K042DC01
4K042DC02
4K042DC03
4K042DD01
4K042DD02
4K042DD05
4K042DE02
4K042DE03
4K042DE05
4K042DE06
4K042DF01
4K042EA01
4K042EA03
(57)【要約】
【課題】ホットスタンピング部品、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施例は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備えた加熱炉内にブランクを投入する段階;ブランクを段階的に加熱する多段加熱段階;ブランクをAc3~1,000℃の温度で加熱する均熱加熱段階;及び加熱されたブランクを加熱炉から金型に移送する移送段階;を含む、ホットスタンピング部品の製造方法を開示する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備えた加熱炉内にブランクを投入する段階と、
前記ブランクを段階的に加熱する多段加熱段階と、
前記ブランクをAc3~1,000℃の温度で加熱する均熱加熱段階と、
前記加熱されたブランクを前記加熱炉から金型に移送する移送段階と、
を含み、
前記移送段階で前記加熱されたブランクが空冷され、
前記多段加熱段階において、前記加熱炉内の温度条件は、下記数式1を満足する、ホットスタンピング部品の製造方法;
【数1】

(前記数式1において、Tgは、均熱加熱温度(℃)、Tiは、加熱炉初入温度(℃)、Ltは、多段加熱段階が遂行される区間の長さ(mm))。
【請求項2】
前記複数の区間において、前記ブランクを多段加熱する区間の長さと前記ブランクを均熱加熱する区間の長さとの比は、1:1~4:1を満足する、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項3】
前記加熱炉内には、互いに異なる厚さを有する少なくとも2つのブランクが同時に移送される、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項4】
前記ブランクは、第1厚さを有する第1部分、及び前記第1厚さと異なる第2厚さを有する第2部分を含む、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項5】
前記複数の区間の温度は、前記加熱炉の入口から前記加熱炉の出口方向に増加する、請求項2に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項6】
前記ブランクを多段加熱する区間のうち、互いに隣接した2つの区間間の温度差は、0℃より大きく、100℃以下である、請求項5に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項7】
前記複数の区間のうち、前記ブランクを均熱加熱する区間の温度が前記ブランクを多段加熱する区間の温度より高い、請求項2に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項8】
前記ブランクは、前記加熱炉内に180秒~360秒間滞留する、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項9】
前記移送段階での前記ブランクの空冷時間は、下記数式2を満足する、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法;
【数2】

(この際、λは、空冷時間(s)、aは、加熱炉取り出し温度、及び大気温度を考慮した補正係数、Tは、加熱温度(℃)、bは、素材成分を考慮した補正係数、tは、素材厚さ(mm)、cは、高温素材厚さ敏感度を考慮した補正係数)。
【請求項10】
前記数式2において、
前記aは、0.0160以上0.0165以下であり、Tは、Ac3以上1000℃以下であり、bは、10以上0.5以下であり、Tは、1mm以上2.6mm以下であり、cは、0.7以上0.9以下である、請求項9に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項11】
前記数式2において、λは、5s以上20s以下である、請求項9に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のうち、いずれか1項によって製造されたホットスタンピング部品であって、
拡散性水素量が0.45ppm未満であり、同電位分極試験を通じて測定された腐食速度が3x10-6A以下である、ホットスタンピング部品。
【請求項13】
500MPa以上800MPa未満の引っ張り強度を有し、フェライトとマルテンサイトの複合組織を有する、請求項12に記載のホットスタンピング部品。
【請求項14】
800MPa以上1,200MPa未満の引っ張り強度を有し、ベイナイトとマルテンサイトの複合組織を有する、請求項12に記載のホットスタンピング部品。
【請求項15】
1,200MPa以上2,000MPa未満の引っ張り強度を有し、フルマルテンサイトの組織を有する、請求項12に記載のホットスタンピング部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンピング部品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に環境規制、及び燃費規制が強化されながら、さらに軽い車両素材に係わる必要性が増加している。これにより、超高強力鋼とホットスタンピング鋼に対する研究開発が活発になされている。ここにおいて、ホットスタンピング工程は、普遍的に、加熱/成形/冷却/トリムからなり、工程中、素材の相変態、及び微細組織の変化を利用することになる。
【0003】
最近、ホットスタンピング工程によって製造されたホットスタンピング部品で発生する遅延破断、耐食性、及び溶接性を向上させようとする研究が活発に進められている。それと係わる技術としては、大韓民国特許公開公報第10-2018-0095757号(発明の名称:ホットスタンピング部品の製造方法)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】大韓民国特許公開公報第10-2018-0095757号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、厚さ、及び大きさのうち、少なくともいずれか1つが互いに異なる少なくとも2つのブランク、テーラーウェルデッドブランク、またはテーラーロールドブランクを加熱炉内で同時に加熱する場合にも、ブランク間の品質差が発生することを防止または最小化することができるホットスタンピング部品、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備えた加熱炉内にブランクを投入する段階;前記ブランクを段階的に加熱する多段加熱段階;前記ブランクをAc3~1,000℃の温度で加熱する均熱加熱段階;及び前記加熱されたブランクを前記加熱炉から金型に移送する移送段階;を含み、前記多段加熱段階において、前記加熱炉内の温度条件は、下記数式を満足する、ホットスタンピング部品の製造方法を開示する。
【数1】

(前記数式において、Tgは、均熱加熱温度(℃)、Tiは、加熱炉初入温度(℃)、Ltは、多段加熱段階が遂行される区間の長さ(mm))
本実施例において、前記複数の区間において、前記ブランクを多段加熱する区間の長さと前記ブランクを均熱加熱する区間の長さとの比は、1:1~4:1を満足することができる。
【0007】
本実施例において、前記加熱炉内には、互いに異なる厚さを有する少なくとも2つのブランクが同時に移送されうる。
【0008】
本実施例において、前記ブランクは、第1厚さを有する第1部分、及び前記第1厚さと異なる第2厚さを有する第2部分を含む。
【0009】
本実施例において、前記複数の区間の温度は、前記加熱炉の入口から前記加熱炉の出口方向に増加しうる。
【0010】
本実施例において、前記ブランクを多段加熱する区間のうち、互いに隣接した2つの区間間の温度差は、0℃より大きく、100℃以下でもある。
【0011】
本実施例において、前記複数の区間のうち、前記ブランクを均熱加熱する区間の温度が前記ブランクを多段加熱する区間の温度よりも高い。
【0012】
本実施例において、前記ブランクは、前記加熱炉内に180秒~360秒間滞留することができる。
【0013】
本実施例において、前記移送段階での前記ブランクの空冷時間は、下記数式2を満足する。
【数2】

(この際、λは、空冷時間(s)、aは、加熱炉取り出し温度及び大気温度を考慮した補正係数、Tは、加熱温度(℃)、bは、素材成分を考慮した補正係数、tは、素材厚さ(mm)、cは、高温素材厚さ敏感度を考慮した補正係数)
本実施例において、前記数式2において、前記aは、0.0160以上0.0165以下であり、Tは、Ac3以上1000℃以下であり、bは、-10以上0.5以下であり、tは、1mm以上2.6mm以下であり、cは、0.7以上0.9以下でもある。
【0014】
本実施例において、前記数式2において、λは、5s以上20s以下でもある。
【0015】
本発明の他の実施例は、拡散性水素量が0.45ppm未満であり、動電位分極試験を通じて測定された腐食速度が3x10-6A以下であるホットスタンピング部品を開示する。
【0016】
本実施例において、前記ホットスタンピング部品は、500MPa以上800MPa未満の引っ張り強度を有し、フェライトとマルテンサイトの複合組織を有しうる。
【0017】
本実施例において、前記ホットスタンピング部品は、800MPa以上1,200MPa未満の引っ張り強度を有し、ベイナイトとマルテンサイトの複合組織を有しうる。
【0018】
本実施例において、前記ホットスタンピング部品は、1,200MPa以上2,000MPa未満の引っ張り強度を有し、フルマルテンサイトの組織を有しうる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施例によれば、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備えた加熱炉内でブランクを多段加熱することで、前記ブランクの均熱温度到達時間をさらに精密に制御することができる。
【0020】
また、互いに異なる厚さを有するブランクの均熱温度到達時間をさらに精密に制御することで、ホットスタンピング部品の製造方法によって製造された部品の水素脆性、耐食性、及び溶接性を向上させうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法に用いられるブランクを概略的に示す平面図である。
図3】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法において、加熱炉内に投入されたブランクを概略的に示す平面図である。
図4】従来方法によってブランクが単一加熱される場合、ブランクの温度変化を示すグラフである。
図5】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法において、ブランクが多段加熱、及び均熱加熱される場合の温度変化を示すグラフである。
図6】加熱されたブランクの成形開始温度による高温引っ張り特性を示すグラフである。
図7】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法において、ブランクが多段加熱、及び均熱加熱される場合の温度変化を示すグラフである。
図8】素材厚さによる空冷時間及び加熱温度による空冷時間を示す図面である。
図9】実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造された部品から放出される水素放出率を示すグラフである。
図10】実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造された部品に対する耐食性評価結果を示すグラフである。
図11】実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造された部品に対する抵抗値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有することができるところ、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。本発明の効果、及び特徴、そして、それらを達成する方法は、図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すれば、明確になるであろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、多様な形態にも具現される。
【0023】
以下の実施例において、第1、第2のような用語は、限定的な意味ではなく、1つの構成要素を、他の構成要素と区別する目的で使用されている。
【0024】
以下の実施例において、単数の表現は、文脈上、明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0025】
以下の実施例において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴または構成要素が存在するということを意味するものであり、1以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を事前に排除するものではない。
【0026】
以下の実施例において、膜、領域、構成要素などの部分が他の部分の「上」または「上部」にあるとするとき、他の部分の真上にある場合だけではなく、その中間に、他の膜、領域、構成要素などが介在されている場合も含む。
【0027】
図面では、説明の便宜上、構成要素の大きさが誇張されても、縮小されてもいる。例えば、図面で示された各構成の大きさ、及び厚さは説明の便宜のために任意に示したので、本発明が必ずしも図示されたところに限定されない。
【0028】
ある実施例が異なって具現可能な場合、特定の工程順序は、説明される順序と異なっても遂行される。例えば、連続して説明される2つの工程が、実質的に同時にも遂行され、説明される順序と、反対の順序にも進められる。
【0029】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明し、図面を参照して説明するとき、同一であるか、対応する構成要素は、同じ図面符号を付する。
【0030】
図1は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法を概略的に示すフローチャートである。以下、図1を参照して、ホットスタンピング部品の製造方法を説明する。
【0031】
本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法は、ブランク投入段階(S110)、多段加熱段階(S120)、及び均熱加熱段階(S130)を含み、均熱加熱段階(S130)以後に、移送段階(S140)、形成段階(S150)、及び冷却段階(S160)をさらに含むものでもある。
【0032】
まず、ブランク投入段階(S110)は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備えた加熱炉内にブランクを投入する段階でもある。
【0033】
加熱炉内に投入されるブランクは、ホットスタンピング部品形成のための板材を裁断して形成されたものでもある。前記板材は、鋼スラブに、熱間圧延または、冷間圧延を遂行した後、焼き鈍し熱処理する過程を通じて製造されうる。また、前記焼き鈍し熱処理後、前記焼き鈍し熱処理された板材の少なくとも一面にAl-Si系メッキ層またはZnメッキ層を形成することができる。
【0034】
図2は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法に用いられるブランクを概略的に示す平面図である。
【0035】
図2を参照すれば、一実施例によるブランク200は、単一厚さを有するブランク210、厚さが互いに異なる異種の板材を必要な形状に裁断して溶接したテーラーウェルデッドブランク220(Tailor Welded Blank,TWB)、単一厚さの板材を圧延して互いに異なる厚さを有するテーラーロールドブランク230(Tailor Rolled Blank,TRB)、及び大きいブランクに小さなパッチブランクを溶接して製造されたパッチワーク240(Patchwork)のうち、少なくとも1つを含む。
【0036】
テーラーウェルデッドブランク220は、互いに異なる厚さを有する第1板材221、及び第2板材223を溶接して製造することができる。車両の衝突部材用重要部品であるBピラー(Pillar)は、上部の衝突支持部と下部の衝撃吸収部に互いに異なる強度の板材が結合された形で、2つの板材を溶接した後、成形して製作することができる。この際、主に使用されるテーラーウェルデッドブランク工法は、厚さ、強度及び材質が互いに異なる異種の板材を必要な形状に裁断して溶接した後、プレス成形して部品を製造する一連の過程を意味するが、異種の厚さを有する板材を溶接して互いに異なる厚さを有するブランクを製造することで、ブランクの部分別に互いに異なる特性を持たせる。例えば、Bピラーの上部の衝突支持部には、120~200K級超高強度板材を使用し、応力が集中されるBピラーの下端部には、衝撃吸収性能に優れた板材を連結して車衝突時、衝撃吸収能力を向上させうる。
【0037】
テーラーロールドブランク230は、冷延状態の鋼材を特定厚さプロファイルを有するように圧延して製造し、前記テーラーロールドブランク230を用いてホットスタンピング部品製造時、軽量化効果が優秀である。一例として、前記厚さプロファイルは、通常の方法によって実施することができる。例えば、前記冷延状態の鋼材を冷間圧延する時、圧下率を調節して第1厚さを有する第1領域231、第2厚さを有する第2領域232、第3厚さを有する第3領域233、及び第4厚さを有する第4領域234を含むテーラーロールドブランク230を形成することができる。この際、第1厚さ、第2厚さ、第3厚さ、及び第4厚さのそれぞれは、互いに異なり、第1領域231と第2領域232との間、第2領域232と第3領域233との間、及び第3領域233と第4領域234との間には、遷移区間235が存在しうる。但し、図2では、テーラーロールドブランク230が第1領域231ないし第4領域234を含むと図示しているが、本発明がそれに限定されるものではない。テーラーロールドブランク230は、第1領域231、第2領域232、…、第n領域を含んで形成されうる。
【0038】
パッチワーク240は、少なくとも2つ以上の板材を使用して部分的に母材を補強する工法であり、成形工程以前にパッチが母材に接合されて母材とパッチとが同時に形成されうる。一例として、第1大きさを有する母材241に前記第1大きさより小さな第2大きさを有するパッチ243が溶接された後、同時に成形されうる。
【0039】
図3は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法において、加熱炉内に投入されたブランクを概略的に示す平面図である。
【0040】
ブランク投入段階(S100)において、厚さ及び大きさのうち、少なくともいずれか1つが互いに異なる少なくとも2つのブランク200は、加熱炉内に同時に投入されうる。
【0041】
一例として、図3は、加熱炉内に同時に投入される2つの第1ブランク250と2つの第2ブランク260とを示す。この際、第1ブランク250と第2ブランク260は、互いに異なる大きさ及び異なる厚さを有しうる。例えば、第1ブランク250は、1.2mmの厚さを有し、第2ブランク260は、1.6mmの厚さを有しうる。但し、本発明がそれに限定されるものではなく、1つの第1ブランク250、及び1つの第2ブランク260が加熱炉内に同時に投入されうる。また、第1ブランク250と第2ブランク260は、同じ大きさ、異なる厚さを有するように形成されるか、または同じ厚さ、異なる大きさを有するように形成されるなど、多様な変形が可能である。
【0042】
または、ブランク投入段階(S100)において、加熱炉内に単一厚さを有する少なくとも2つのブランク200が同時に投入されうる。例えば、1.2mmの厚さを有するブランク250が少なくとも2つ以上同時に投入され、1.6mmの厚さを有するブランク260が少なくとも2つ以上同時に投入されうる。また、ブランク投入段階(S100)において、加熱炉内に、前述したテーラーウェルデッドブランク220(図2参照)、またはテーラーロールドブランク230(図2参照)が投入されうる。
【0043】
加熱炉内に投入されたブランクは、ローラーに実装された後、移送方向に沿って移送されうる。
【0044】
ブランク投入段階(S110)以後、多段加熱段階(S120)と均熱加熱段階(S130)とがなされうる。多段加熱段階(S120)と均熱加熱段階(S130)は、ブランクが加熱炉内に備えられた複数の区間を通過して加熱される段階でもある。
【0045】
具体的に、多段加熱段階(S120)では、ブランクが加熱炉内に備えられた複数の区間を通過して段階的に昇温されうる。加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、多段加熱段階(S120)が遂行される区間は、複数個存在し、ブランクが投入される加熱炉の入口からブランクが取り出される加熱炉の出口方向に高くなるように各区間別に温度が設定されてブランクを段階的に昇温させうる。
【0046】
多段加熱段階(S120)以後に、均熱加熱段階(S130)がなされうる。均熱加熱段階(S130)では、多段加熱されたブランクがAc3~1,000℃の温度に設定された加熱炉の区間を通過して熱処理されうる。望ましくは、均熱加熱段階(S130)では、多段加熱されたブランクを930℃~1,000℃の温度で均熱加熱することができる。さらに望ましくは、均熱加熱段階(S130)では、多段加熱されたブランクを950℃~1,000℃の温度で均熱加熱することができる。また、加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、均熱加熱段階(S130)が遂行される区間は、少なくとも1つ以上でもある。
【0047】
図4は、従来方法によって、ブランクが単一加熱される場合、ブランクの温度変化を示すグラフである。具体的に、図4は、加熱炉の内部温度がブランクの目標温度Tと同一に保持されるように加熱炉の温度を設定した後、1.2mmの厚さを有するブランクと1.6mmの厚さを有するブランクを同時に単一加熱(320)した場合、経時的なそれらブランクの温度変化を示すグラフである。
【0048】
この際、ブランクの目標温度Tは、Ac3以上でもある。望ましくは、ブランクの目標温度Tは、930℃でもある。さらに望ましくは、ブランクの目標温度Tは、950℃でもある。但し、本発明がそれに限定されるものではない。また、単一加熱は、加熱炉内に1.2mmの厚さを有するブランクと1.6mmの厚さを有するブランクをそれぞれ投入して加熱するものではない、加熱炉の温度を単一温度に設定した後、加熱炉内に1.2mmの厚さを有するブランクと、1.6mmの厚さを有するブランクを同時に投入して加熱した場合を意味する。
【0049】
図4を参照すれば、加熱炉内部の温度をブランクの目標温度Tと同じ温度にセッティングした後、1.2mmの厚さを有するブランク、及び1.6mmの厚さを有するブランクを同時に単一加熱する場合、1.2mmの厚さを有するブランクが1.6mmの厚さを有するブランクに比べて、目標温度Tに先に到逹することが分かる。
【0050】
すなわち、1.2mmの厚さを有するブランクが先に目標温度Tに到逹し、1.2mmの厚さを有するブランクは、第1時間Sの間、均熱加熱され、1.6mmの厚さを有するブランクは、前記第1時間Sより短い第2時間Sの間、均熱加熱されうる。目標温度に遅く到逹するブランクを基準に均熱加熱時間が調節されるので、目標温度に先に到逹した1.2mmの厚さを有するブランクが過加熱され、1.2mmの厚さを有するブランクの遅延破断が増加し、溶接性が低下しうる。
【0051】
図5は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法において、ブランクが多段加熱、及び均熱加熱される場合の温度変化を示すグラフである。図5は、本発明の一実施例において、1.2mmの厚さを有するブランクを多段加熱330、及び1.6mmの厚さを有するブランクを多段加熱(340)する場合の経時的な温度変化を示すグラフである。
【0052】
図5を参照すれば、一実施例による加熱炉は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備えることができる。さらに具体的に、加熱炉は、第1温度範囲Tを有する第1区間P、第2温度範囲Tを有する第2区間P、第3温度範囲Tを有する第3区間P、第4温度範囲Tを有する第4区間P、第5温度範囲Tを有する第5区間P、第6温度範囲Tを有する第6区間P、及び第7温度範囲Tを有する第7区間Pを備えることができる。
【0053】
第1区間Pないし第7区間Pは、順番通り、加熱炉内に配置されうる。第1温度範囲Tを有する第1区間Pは、ブランクが投入される加熱炉の入口と隣接し、第7温度範囲Tを有する第7区間Pは、ブランクが排出される加熱炉の出口と隣接しうる。したがって、第1温度範囲Tを有する第1区間Pが加熱炉の最初区間でもあり、第7温度範囲Tを有する第7区間Pが加熱炉の最後区間でもある。後述するように、加熱炉の複数の区間において、第5区間P、第6区間P、及び第7区間Pは、多段加熱が遂行される区間ではない均熱加熱が遂行される区間でもある。
【0054】
加熱炉内に備えられた複数の区間の温度、例えば、第1区間Pないし第7区間Pの温度は、ブランクが投入される加熱炉の入口からブランクが取り出される加熱炉の出口方向に増加しうる。但し、第5区間P、第6区間P及び第7区間Pの温度は、同一でもある。また、加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、互いに隣接した2つの区間間の温度差は、0℃より大きく、100℃以下でもある。例えば、第1区間Pと第2区間Pの温度差は、0℃より大きく、100℃以下でもある。
【0055】
一実施例において、第1区間Pの第1温度範囲Tは、820℃~860℃でもあり、835℃~865℃でもある。第2区間Pの第2温度範囲Tは、850℃~890℃でもあり、865℃~895℃でもある。第3区間Pの第3温度範囲Tは、880℃~920℃でもあり、895℃~925℃でもある。第4区間Pの第4温度範囲Tは、910℃~940℃でもあり、915℃~945℃でもある。第5区間Pの第5温度範囲Tは、Ac3~1,000℃でもある。望ましくは、第5区間Pの第5温度範囲Tは、930℃以上1,000℃以下でもある。さらに望ましくは、第5区間Pの第5温度範囲Tは、950℃以上1,000℃以下でもある。第6区間Pの第6温度範囲T、及び第7区間Pの第7温度範囲Tは、第5区間Pの第5温度範囲Tと同一である。但し、本発明がそれに限定されるものではない。
【0056】
図5では、本発明の一実施例による加熱炉が互いに異なる温度範囲を有する7区間を備えていると図示されているが、本発明がそれに限定されるものではない。加熱炉内には、互いに異なる温度範囲を有する5個、6個、または8個などの区間が備えられうる。
【0057】
一実施例によるブランクは、加熱炉内に定義された複数の区間を通過して段階的に加熱されうる。一実施例において、ブランクが加熱炉内の複数の区間を通過して段階的に加熱される多段加熱段階において加熱炉内の温度条件は、下記数式1を満足することができる。
【数3】

ここで、Tgは、均熱加熱温度(℃)、Tiは、加熱炉初入温度(℃)、Ltは、多段加熱段階が遂行される区間の長さ(mm)である。
【0058】
前記数式1の値が0.025℃/mmを超過する場合、加熱炉初入温度が低くなり、ブランクの昇温速度が低下して十分な均熱加熱時間を確保することができず、均熱加熱時間を確保するために、ローラーの駆動速度を低めて運行する場合、生産性が低下しうる。また、前記数式1の値が0℃/mmである場合、単一加熱に該当し、前述したように薄厚のブランクが先に目標温度Tに到逹し、薄厚のブランクに過加熱が発生する場合が存在しうる。
【0059】
図4及び図5を参照すれば、ブランクが加熱炉内に定義された複数の区間(例えば、第1区間Pないし第4区間P)を通過して段階的に多段加熱され、多段加熱の温度条件が前記数式を満足する場合、単一加熱によってブランクが加熱される場合に比べて、互いに異なる厚さを有するブランクの温度変化グラフが互いに類似した挙動を示しうる。例えば、加熱炉内にブランクを投入した後、同一時間が経過したとき、1.2mmの厚さを有するブランクを単一加熱(310)、及び1.6mmの厚さを有するブランクを単一加熱(320)する場合のブランク間の温度差よりも1.2mmの厚さを有するブランクを多段加熱(330)、及び1.6mmの厚さを有するブランクを多段加熱(340)する場合のブランク間の温度差がさらに小さくもなる。したがって、ブランクを多段加熱する場合、互いに異なる厚さを有するブランクの昇温速度を同様に制御することで、それぞれのブランクが目標温度に到逹する時間差を減らし、薄厚のブランクが過加熱されることを防止しうる。
【0060】
多段加熱段階(S120)後、均熱加熱段階(S130)がなされうる。均熱加熱段階(S130)は、加熱炉に備えられた複数の区間のうち、最後の部分で、ブランクを950℃~1,000℃の温度で均熱加熱する段階でもある。
【0061】
均熱加熱段階(S130)は、加熱炉の複数の区間のうち、最後の部分でなされうる。一例として、均熱加熱段階(S130)は、加熱炉の第5区間P、第6区間P、及び第7区間Pでなされうる。加熱炉内に複数の区間が備えられる場合、1つの区間の長さが長ければ、前記区間内で温度変化が生じるなどの問題点が存在しうる。したがって、均熱加熱段階(S130)が遂行される区間は、第5区間P、第6区間P、及び第7区間Pに区分されるが、前記第5区間P、第6区間P、及び前記第7区間Pは、加熱炉内において同じ温度範囲を有しうる。
【0062】
均熱加熱段階(S130)では、多段加熱されたブランクをAc3~1,000℃の温度で均熱加熱することができる。望ましくは、均熱加熱段階(S130)では、多段加熱されたブランクを930℃~1,000℃の温度で均熱加熱することができる。さらに望ましくは、均熱加熱段階(S130)では、多段加熱されたブランクを950℃~1,000℃の温度で均熱加熱することができる。
【0063】
図6は、加熱されたブランクの成形開始温度による高温引っ張り特性を示すグラフである。図6は、950℃の温度で均熱加熱され、取り出された後、10秒間空冷露出されたブランク410、及び900℃の温度で均熱加熱され、取り出された後、10秒間空冷露出されたブランク420に対する高温引っ張りテストグラフである。この際、950℃の温度で均熱加熱され、取り出された後、10秒間空冷露出されたブランク410の成形開始温度は、650℃~750℃であり、900℃の温度で均熱加熱され、取り出された後、10秒間空冷露出されたブランク420の成形開始温度は、550℃~650℃でもある。
【0064】
図6を参照すれば、950℃の温度で均熱加熱され、取り出された後、10秒間空冷露出されたブランク410が、900℃の温度で均熱加熱され、取り出された後、10秒間空冷露出されたブランク420に対し、真応力が低いことを確認した。したがって、加熱炉内の均熱加熱温度が950℃未満である場合、加熱されたブランクが加熱炉から取り出された後、空冷露出時間によってプレス成形開始温度が過度に低くなり、加熱されたブランクの延伸率が減少して成形中、厚さ減少が発生するか、破断が発生する。前記空冷露出時間の間、加熱されたブランクが冷却されることで、ブランクの強度が増大し、複数のブランクを同時に成形するのに大きな力が必要となり、プレス設備に過負荷がかかる。また、均熱加熱温度が1,000℃を超過する場合、ブランク内のTi、V、Nb、Moなどの炭化物形成元素や窒化物形成元素が母材に溶解(dissolution)されて結晶粒粗大化を抑制し難い。
【0065】
一実施例において、加熱炉内の複数の区間のうち、ブランクを均熱加熱する区間の温度が、前記ブランクを多段加熱する区間の温度より高いか、それと同一である。
【0066】
一実施例において、ブランクは、加熱炉内で180秒~360秒間滞留する。さらに具体的に、加熱炉内においてブランクが多段加熱、及び均熱加熱される時間は、180秒~360秒でもある。ブランクの加熱炉内における滞留時間が180秒未満である場合、所望の均熱温度で十分に均熱され難い。また、ブランクの加熱炉内における滞留時間が360秒を超過する場合、ブランク内部に侵透する水素の量が増加して遅延破断の危険が高くなり、ホットスタンピング後の耐食性が低下しうる。
【0067】
図7は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法において、ブランクが多段加熱、及び均熱加熱される場合の温度変化を示すグラフである。図7のグラフは、図5のグラフと異なって距離によるブランクの温度を示すグラフである。
【0068】
図7を参照すれば、一実施例において、加熱炉は、ブランクの移送経路に沿って20m~40mの長さを有しうる。加熱炉は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備え、複数の区間のうち、ブランクを多段加熱する区間の長さDと複数の区間のうち、ブランクを均熱加熱する区間の長さDとの比は、1:1~4:1を満足する。例えば、複数の区間のうち、ブランクを均熱加熱する区間は、加熱炉の最後の部分(例えば、第5区間P、ないし第7区間P)でもある。ブランクを均熱加熱する区間の長さが増加してブランクを多段加熱する区間の長さDとブランクを均熱加熱する区間の長さDとの比が1:1を超過する場合、均熱加熱区間でオーステナイト(FCC)組織が生成されてブランク内に水素浸透量が増加して遅延破断が増加しうる。また、ブランクを均熱加熱する区間の長さが減少し、ブランクを多段加熱する区間の長さDとブランクを均熱加熱する区間の長さDとの比が4:1未満である場合、均熱加熱区間(時間)が十分に確保されず、ホットスタンピング部品の製造工程によって製造された部品の強度が不均一になる。
【0069】
一実施例において、加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、均一加熱区間の長さは、加熱炉の総長の20%~50%の長さを有しうる。
【0070】
均熱加熱段階(S130)以後に、移送段階(S140)、形成段階(S150)、及び冷却段階(S160)がさらに遂行されうる。
【0071】
一実施例において、移送段階(S140)は、加熱されたブランクを加熱炉から金型に移送する段階でもある。この際、移送段階(S140)では、加熱されたブランクが金型に移送されながら、大気温度(または、常温)で冷却されうる。加熱されたブランクは、移送中に空冷されうる。加熱されたブランクが空冷されなければ、金型進入温度(例えば、成形開始温度)が高くなり、製造されたホットスタンピング部品の表面にシワ(または、屈曲)が発生しうる。また、冷媒使用時、後続工程(ホットスタンピング)に影響を与えうるので、移送中に加熱されたブランクが空冷されることが望ましい。
【0072】
形成段階(S150)は、移送されたブランクをホットスタンピングし、成形体を形成する段階でもある。冷却段階(S160)は、形成された成形体を冷却する段階でもある。
【0073】
プレス金型において最終部品形状に成形された後、成形体を冷却して最終製品が形成されうる。プレス金型には、内部に冷媒が循環する冷却チャネルが備えられうる。プレス金型に備えられた冷却チャネルを介して供給される冷媒の循環によって加熱されたブランクを急冷させうる。この際、板材のスプリングバック(spring back)現象を防止すると共に、所望の形状を保持するためには、プレス金型を閉状態で加圧しながら、急冷を実施することができる。加熱されたブランクを成形及び冷却操作を行うに当たって、マルテンサイト終了温度まで平均冷却速度を最小10℃/s以上にして冷却させうる。ブランクは、プレス金型内で3~20秒間保持されうる。プレス金型内の保持時間が3秒未満である場合、素材の十分な冷却がなされず、製品の残存熱と部位別温度偏差によって熱変形が発生して寸法品質が低下しうる。また、プレス金型内の保持時間が20秒を超過する場合、プレス金型内の保持時間が長くなって生産性が低下してしまう。
【0074】
図8は、素材厚さによる空冷時間及び加熱温度による空冷時間を示す図面である。具体的に、図8は、素材厚さによる最大許容空冷時間及び加熱温度による最大許容空冷時間を説明するために示すグラフである。図8において、加熱温度が高いということは、加熱炉取り出し温度が高いということと理解されうる。
【0075】
図1及び図8を参照すれば、同一素材の厚さで加熱温度が減少するほど、最大許容空冷時間が増加することを確認することができる。また、同一加熱温度で素材の厚さが増加するほど、最大許容空冷時間が増加することを確認することができる。
【0076】
加熱されたブランクが常温に過度に露出される場合、生産性が低下するだけではなく、空冷中にブランクで相変態が発生して成形性が低下し、所望の材質確保困難である。一方、加熱されたブランクの常温露出時間が短い場合、過度に高い温度で成形開始されて製造されたホットスタンピング部品にシワ(または、屈曲)が発生しうる。また、ブランクのメッキ層が金型に焼着されうる。したがって、移送段階(S140)での空冷時間を調節する必要がある。但し、移送段階(S140)での空冷時間を調節するためには、加熱温度及びブランクの厚さ(例えば、素材の厚さ)だけでなく、ブランクの成分、ブランクの厚さ、メッキ量及び表面放射率による熱伝導度、熱伝導率及び熱伝逹量、及びブランクの加熱炉取り出し温度と大気温度など多様な変数を考慮せねばならない。
【0077】
そこで、本発明者は、過度な反復実験を経て、空冷時間を容易に制御することができる数式2を導出した。一実施例において、移送段階(S140)でのブランクの空冷時間は、下記数式2を満足することができる。
【数4】

数式2においてλは、空冷時間(s)、aは、加熱炉取り出し温度及び大気温度を考慮した補正係数、Tは、加熱温度(℃)、bは、素材成分を考慮した補正係数、cは、高温素材厚さ敏感度を考慮した補正係数、tは、素材厚さ(mm)である。この際、素材は、ブランクを意味し、空冷時間の単位sは、秒を意味する。
【0078】
は、加熱されたブランクの加熱炉取り出し温度及び大気温度を考慮した補正係数であって、約0.0160以上約0.0165以下の値を有しうる。この際、aは、s/(℃xmm)の単位を有しうる。
【0079】
は、各素材が成分が互いに異なる場合を考慮したものであって、bは、素材成分を考慮した補正係数である。この際、bは、約-10.0以上約0.5以下の値を有しうる。この際、bは、s/mmの単位を有しうる。
【0080】
また、素材の厚さによって素材内部から伝達される熱伝逹量が異なってもいる。cは、高温で素材の厚さによる熱伝逹量差を考慮した補正係数として、約0.7以上約0.9以下の値を有しうる。この際、高温は、600℃以上を意味する。但し、高温は、500℃以上を意味するか、700℃以上を意味する。
【0081】
加熱温度Tは、均熱加熱段階(S130)の均熱加熱温度を意味し、加熱温度Tは、約Ac3以上約1000℃以下の値を有しうる。この際、加熱温度Tは、加熱炉取り出し温度を意味しうる。また、素材厚さ(t)は、約1mm以上約2.6mm以下の値を有しうる。
【0082】
一実施例において、数式2による空冷時間λは、約5s以上約20s以下でもある。空冷時間λが5s未満である場合、ブランクの成形が開始される成形開始温度が過度に高く、ブランクの成形が高い温度で進められ、製造されたホットスタンピング部品にシワ(または、屈曲)が発生し、設備上、5s未満の空冷時間λを具現し難い。一方、空冷時間λが20s超過である場合、生産性が低下するだけではなく、ブランクが移送される過程において、ブランクで相変態が発生し、ブランクの成形性が低下し、製造されたホットスタンピング部品が所望の材質を有さない。したがって、空冷時間λが約5s以上約20s以下の範囲を満足する場合、ブランクの成形性及び工程の生産性を向上させ、製造されたホットスタンピング部品に所望の材質を有させうる。
【0083】
一実施例において、上述したホットスタンピング部品の製造方法によって製造されたホットスタンピング部品は、500MPa以上800MPa未満の引っ張り強度を有し、フェライトとマルテンサイトの複合組織を有しうる。ホットスタンピング部品の製造方法によって製造されたホットスタンピング部品は、800MPa以上1,200MPa未満の引っ張り強度を有し、ベイナイトとマルテンサイトの複合組織を有しうる。ホットスタンピング部品の製造方法によって製造されたホットスタンピング部品は、1,200MPa以上2,000MPa未満の引っ張り強度を有し、フルマルテンサイトの組織を有しうる。
【0084】
加熱炉内で同時に互いに異なる厚さを有するブランクを多段加熱することで、ブランクの目標温度(例えば、均熱温度)到達時間をさらに精密に制御することができる。互いに異なる厚さを有するブランクの目標温度(例えば、均熱温度)到達時間をさらに精密に制御することで、ホットスタンピング部品の製造方法によって製造された部品の水素脆性、耐食性、及び溶接性を向上させうる。さらに具体的に加熱炉内で薄物材と厚物材とを同時に単一加熱する場合、薄物材が厚物材に比べて、先に目標温度に到逹して薄物材に過加熱が発生する場合が存在しうる。本発明の一実施例によれば、加熱炉内で薄物材と厚物材とを同時に加熱する場合にも、薄物材と厚物材とを多段加熱することで、薄物材と厚物材との目標温度(例えば、均熱温度)到達時間を同様に制御することができる。したがって、薄物材と厚物材との目標温度(例えば、均熱温度)到達時間を同様に制御することで、ホットスタンピング製造方法によって製造された部品の水素脆性、耐食性、及び溶接性を向上させうる。
【0085】
実験例
表1の合金組成を有するブランクを準備した後、表2の規格によって設定された加熱炉において、表3の区間別に温度セッティングを設定した後、比較例1、2及び実施例の条件によってホットスタンピング部品を製造した。一方、加熱炉の総長は、22000mmである。
【表1】

【表2】

【表3】
【0086】
表3を参照すれば、一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法を用いてホットスタンピング部品(実施例)を製造し、比較例1、及び比較例2は、それぞれ950℃、及び930℃の温度で単一加熱してホットスタンピング部品を製造した。
【0087】
実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造された部品に対して水素脆性評価、耐食性評価、及び溶接評価を遂行した。
【0088】
1.水素脆性評価
実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造された部品に対してISO16573-2015規定によってTDS(Thermal Desorption Spectroscopy)装備を用いて水素脆性を評価した。すなわち、真空雰囲気下で、実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造された部品をそれぞれ加熱して300℃以下において、前記部品から放出される拡散性水素量を測定した。
【0089】
図9は、実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造された部品から放出される水素放出率を示すグラフであり、表4は、図9の実施例、比較例1、及び比較例2の水素放出率結果に基づき、300℃以下での拡散性水素量を算出した結果、及び遅延破断実験結果を示す表である。
【表4】

図9及び表4を参照すれば、実施例の場合、300℃以下での拡散性水素量が0.412ppmであり、比較例1の場合、300℃以下での拡散性水素量が0.531ppmであり、比較例2の場合、300℃以下での拡散性水素量が0.475ppmであることを確認することができる。また、遅延破断実験の結果、比較例1及び比較例2の場合、遅延破断が発生するが、実施例の場合、遅延破断が発生しないことを確認することができる。多段加熱を通じて製造されたホットスタンピング部品の拡散性水素量が最も少なく、遅延破断が発生しないので、多段加熱を用いる場合、ホットスタンピング部品の水素脆性が低下しうる。
【0090】
2.耐食性評価
実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造されたホットスタンピング部品に対して、ASTMG59-97(2014)規格によって耐食性評価実験を進めた。さらに具体的に、耐食性評価実験のために、作業電極(working electrode)として試片を、相対電極(counter electrode)として高純度炭素棒を、基準電極(reference electrode)として飽和カロメル電極(saturated calomel electrode)を使用して3電極電気化学セルを構成して動電位分極試験を進めた。動電位分極試験は、3.5% NaCl溶液で開放回路電位(open-circuit potential, OCP)を10時間測定して電気化学的安定化を確認してから進め、腐食電位(Ecorr)基準-250mVから0mVSCEまで0.166mV/sの走査速度で電位を印加して耐食性評価実験を進めた。
【0091】
図10は、実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造された部品に対する耐食性評価結果を示すグラフであり、表5は、図10の分極曲線に基づいて実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造された部品の腐食速度を算出した表である。この際、表5の腐食速度は、実施例、比較例1、及び比較例2の分極曲線から、安定して保持された電位(potential)の分岐が発生する時点の電流密度に対応する数値である。
【表5】
【0092】
図10及び表5を参照すれば、比較例1及び比較例2の場合、単一加熱温度が低いほど腐食速度が低く、耐食性に優れるが、実施例のように多段加熱を用いる場合、単一加熱を用いることに比べて、さらに優秀な耐食性の確保が可能であることが分かる。
【0093】
3.溶接性評価
実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造された部品に対して溶接性評価を実施した。溶接性評価では、実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造された部品をそれぞれ一対準備し、それらを直径6mmを有するクロム-銅合金である電極ロッドで350kgfの圧力、及び5.5kAの電流を印加した状態で、300ms間、スポット溶接を実施した。スポット溶接を実施しながら抵抗を測定した。
【0094】
通常、初期30msまでの抵抗値変化がスパッタ発生、及び溶接性の特徴を左右し、抵抗が低いほど溶接性が優秀でもある。
【0095】
図11は、実施例、比較例1、及び比較例2の条件によって製造された部品に対する抵抗値を示すグラフである。図11を参照すれば、多段加熱を通じて製造されたホットスタンピング部品(実施例)が、950℃の温度で単一加熱して製造されたホットスタンピング部品(比較例1)、及び930℃の温度で単一加熱して製造されたホットスタンピング部品(比較例2)に比べて、低い抵抗を有することを確認することができる。したがって、多段加熱を通じて製造されたホットスタンピング部品(実施例)の溶接性が、 950℃の温度で単一加熱して製造されたホットスタンピング部品(比較例1)、及び930℃の温度で単一加熱して製造されたホットスタンピング部品(比較例2)の溶接性に比べて、相対的に優れることを確認することができる。
【0096】
このように本発明は、図面に図示された一実施例に基づいて説明したが、これは、例示的なものに過ぎず、当該分野で通常の知識を有する者であれば、それらから、多様な変形及び実施例の変形が可能であるという点を理解するであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【符号の説明】
【0097】
200 ブランク
210 単一厚さを有するブランク
220 テーラーウェルデッドブランク
221 第1板材
223 第2板材
230 テーラーロールドブランク
231 第1領域
232 第2領域
233 第3領域
234 第4領域
240 パッチワーク
241 母材
243 パッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-02-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備えた加熱炉内にブランクを投入する段階と、
前記ブランクを、前記加熱炉内の前記複数の区間を通過させて段階的に加熱する多段加熱段階と、
前記ブランクをAc3~1,000℃の温度で加熱する均熱加熱段階と、
前記加熱されたブランクを前記加熱炉から金型に移送する移送段階と、
を含み、
前記移送段階で前記加熱されたブランクが空冷され、
前記多段加熱段階において、前記加熱炉内の温度条件は、下記数式1を満足する、ホットスタンピング部品の製造方法;
【数1】
(前記数式1において、Tgは、均熱加熱温度(℃)、Tiは、加熱炉初入温度(℃)、Ltは、多段加熱段階が遂行される区間の長さ(mm))。
【請求項2】
前記複数の区間において、前記ブランクを多段加熱する区間の長さと前記ブランクを均熱加熱する区間の長さとの比は、1:1~4:1を満足する、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項3】
前記加熱炉内には、互いに異なる厚さを有する少なくとも2つのブランクが同時に移送される、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項4】
前記ブランクは、第1厚さを有する第1部分、及び前記第1厚さと異なる第2厚さを有する第2部分を含む、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項5】
前記複数の区間の温度は、前記加熱炉の入口から前記加熱炉の出口方向に増加する、請求項2に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項6】
前記ブランクを多段加熱する区間のうち、互いに隣接した2つの区間間の温度差は、0℃より大きく、100℃以下である、請求項5に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項7】
前記複数の区間のうち、前記ブランクを均熱加熱する区間の温度が前記ブランクを多段加熱する区間の温度より高い、請求項2に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項8】
前記ブランクは、前記加熱炉内に180秒~360秒間滞留する、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項9】
前記移送段階での前記ブランクの空冷時間は、下記数式2を満足する、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法;
【数2】
(この際、λは、空冷時間(s)、aは、加熱炉取り出し温度、及び大気温度を考慮した補正係数、Tは、加熱温度(℃)、bは、素材成分を考慮した補正係数、tは、素材厚さ(mm)、cは、高温素材厚さ敏感度を考慮した補正係数)。
【請求項10】
前記数式2において、
前記aは、0.0160以上0.0165以下であり、Tは、Ac3以上1000℃以下であり、bは、10以上0.5以下であり、Tは、1mm以上2.6mm以下であり、cは、0.7以上0.9以下である、請求項9に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項11】
前記数式2において、λは、5s以上20s以下である、請求項9に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のうち、いずれか1項によって製造されたホットスタンピング部品であって、
拡散性水素量が0.45ppm未満であり、同電位分極試験を通じて測定された腐食速度が3x10-6A以下である、ホットスタンピング部品。
【請求項13】
500MPa以上800MPa未満の引っ張り強度を有し、フェライトとマルテンサイトの複合組織を有する、請求項12に記載のホットスタンピング部品。
【請求項14】
800MPa以上1,200MPa未満の引っ張り強度を有し、ベイナイトとマルテンサイトの複合組織を有する、請求項12に記載のホットスタンピング部品。
【請求項15】
1,200MPa以上2,000MPa未満の引っ張り強度を有し、フルマルテンサイトの組織を有する、請求項12に記載のホットスタンピング部品。