(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108009
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】水処理方法及び水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/72 20230101AFI20240802BHJP
C02F 1/78 20230101ALI20240802BHJP
B01F 23/2373 20220101ALI20240802BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20240802BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20240802BHJP
B01F 23/231 20220101ALI20240802BHJP
【FI】
C02F1/72 101
C02F1/78
B01F23/2373
C02F1/50 510A
C02F1/50 520B
C02F1/50 520P
C02F1/50 531R
C02F1/50 540A
C02F1/50 550C
C02F1/50 550D
C02F1/50 560B
C02F1/50 560C
C02F1/50 560D
C02F1/50 560H
C02F1/50 560Z
C02F1/50 560F
C02F1/50 560E
C02F1/50 550H
C02F1/32
B01F23/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012244
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北澤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】二見 賢一
(72)【発明者】
【氏名】古市 竜哉
(72)【発明者】
【氏名】高木 哲史
(72)【発明者】
【氏名】上田 卓矢
【テーマコード(参考)】
4D037
4D050
4G035
【Fターム(参考)】
4D037AA02
4D037AA05
4D037AA11
4D037AB03
4D037AB14
4D037BA18
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4D050AB07
4D050AB19
4D050AB26
4D050BB02
4D050BD03
4D050BD04
4D050CA03
4D050CA06
4D050CA07
4D050CA08
4D050CA09
4D050CA10
4D050CA13
4D050CA15
4D050CA16
4D050CA17
4D050CA20
4G035AB05
(57)【要約】
【課題】被処理水に含まれる溶解性有機物を簡易な装置で安全に効率良く分解処理することが可能な水処理方法及び水処理装置を提供する。
【解決手段】溶解性有機物を含有する被処理水を処理槽21内に収容し、処理槽21内の被処理水に紫外線を照射する光源122の周囲に形成された気体流通領域126に酸素を含有する気体を注入し、オゾンを生成させる波長域の紫外線を光源から気体流通領域126に照射することにより、気体流通領域126内にオゾンを生成させ、紫外線の照射によって生成したオゾンを処理槽21内の被処理水と混合し、オゾンを含む被処理水に光源122から紫外線を照射して促進酸化処理を行うことにより、被処理水中の溶解性有機物を除去することを有する水処理方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解性有機物を含有する被処理水を処理槽内に収容し、
前記処理槽内の前記被処理水に紫外線を照射する光源の周囲に形成された気体流通領域に酸素を含有する気体を注入し、
オゾンを生成させる波長域の紫外線を前記光源から前記気体流通領域に照射することにより、前記気体流通領域内にオゾンを生成させ、
前記紫外線の照射によって生成したオゾンを前記処理槽内の前記被処理水と混合し、
オゾンを含む前記被処理水に前記光源から前記紫外線を照射して促進酸化処理を行うことにより、前記被処理水中の溶解性有機物を除去すること
を有することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記気体流通領域で生成したオゾン及び酸素を含む気体を、前記被処理水中に0.005~1L/L-被処理水で、前記被処理水と前記オゾン及び酸素を含む気体の気液比が体積比で1~200となるように供給することを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
気泡径100μm以下の酸素を含有する気泡を生成させ、生成した前記気泡を前記被処理水中に注入する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記被処理水を前記処理槽内に収容する前に、前記被処理水中の色度成分を除去するための前処理を行う工程を更に有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記被処理水が、細菌類、菌類、微小動物、藻類、藍藻類、有機フッ素化合物の少なくともいずれかを含有する被処理水であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項6】
前記被処理水を前記処理槽内に収容する前に、前記被処理水に対し、固液分離処理、凝集沈殿処理、生物処理、イオン交換処理、ろ過処理、物理吸着処理、電気分解処理の少なくとも何れかを含む水処理を実施する工程を更に有する請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項7】
溶解性有機物を含有する被処理水を収容し、前記被処理水に紫外線とオゾンとを用いた促進酸化処理を行うことにより前記被処理水中の溶解性有機物を分解する処理槽と、
前記被処理水に100~300nmの波長域の紫外線を照射する光源及び前記光源の周囲に形成された気体を流通させるための気体流通領域を備える紫外線照射手段と、
前記気体流通領域に酸素を含む気体を供給する気体注入手段と、
酸素を含む気体が注入された前記気体流通領域内への前記光源からの紫外線の照射によって生成させたオゾンを前記処理槽内の前記被処理水に導入する導入手段と
を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
気泡径100μm以下の酸素を含有する気泡を生成し、生成した前記気泡を前記被処理水へ注入する気泡注入手段を更に備えることを特徴とする請求項7に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記処理槽の前段に接続され、前記被処理水中の色度成分を除去するための前処理を行う前処理手段を更に備える請求項7又は8に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川水、浸出水、工業用水、農業用水、水道水、純水、下水、工業廃水、有機性廃水等の種々の被処理水は様々な不純物が含まれている。例えば、被処理水中には、ゴミ、ホコリ又は粘土質等の夾雑物、細菌又は微生物等の水生生物、藻類、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)及びその塩等の有機フッ素化合物等の有機性物質、カルシウム、マグネシウム又はナトリウム等の無機塩類、二酸化炭素、炭素又は硫化水素等の気体、鉄又はマンガン等の金属物質等が含まれる。これら不純物を取り除くために、被処理水には、凝集沈殿処理、生物処理、ろ過処理等の種々の水処理が行われる。
【0003】
被処理水は更に、必要に応じて殺菌処理が行われる。例えば、特許第5802558号公報には、液肥である培養液に対し、オゾン供給機能と紫外線照射機能と光触媒作用機能を有する除菌浄化ユニットの相乗効果によって殺菌作用と有機物分解作用とを発揮するようにした養液栽培システムを用いた殺菌処理の例が記載されている。特許第5191782号公報には、液肥である培養液を殺菌する養液栽培システムの例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5802558号公報
【特許文献2】特許第5191782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線を用いた殺菌処理は、殺菌剤等を用いた薬剤による殺菌処理と比べて残留性が少なく、安全で短時間で効果的に溶解性有機物を分解処理できる点で有用である。しかしながら、被処理水の濁りが強い場合や光を遮る物質がある場合は、紫外線が十分に届かず、殺菌が不十分になることがある。一般的なオゾン酸化処理では、比較的高濃度のオゾンガスを供給して処理するため、酸化処理の過程で周囲に臭気を発生させる場合がある。また、オゾン酸化処理により被処理水中に残留するオゾンによって被処理水の放流先等に生息する生物に種々の影響を生じさせる懸念がある。
【0006】
上記課題を鑑み、本発明は、被処理水に含まれる溶解性有機物を簡易な装置で安全に効率良く分解処理することが可能な水処理方法及び水処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、溶解性有機物を含有する被処理水に対し、紫外線と紫外線の照射によって生成するオゾンとを利用した促進酸化処理を行うことが有用であるとの知見を得た。
【0008】
以上の知見を基礎として完成した本開示は一側面において、溶解性有機物を含有する被処理水を処理槽内に収容し、処理槽内の被処理水に紫外線を照射する光源の周囲に形成された気体流通領域内に酸素を含有する気体を注入し、オゾンを生成させる波長域の紫外線を光源から気体流通領域に照射することにより、気体流通領域内にオゾンを生成させ、紫外線の照射によって生成したオゾンを処理槽内の被処理水と混合し、オゾンを含む被処理水に光源から紫外線を照射して促進酸化処理を行うことにより、被処理水中の溶解性有機物を除去することを有することを特徴とする水処理方法である。
【0009】
本発明の実施の形態に係る水処理方法は一実施態様において、気体流通領域で生成したオゾン及び酸素を含む気体を、被処理水中に0.005~1L/L-被処理水で、被処理水とオゾン及び酸素を含む気体の気液比が体積比で1~200となるように供給する。
【0010】
本発明の実施の形態に係る水処理方法は別の一実施態様において、気泡径100μm以下の酸素を含有する気泡を生成させ、生成した気泡を被処理水中に注入する工程を更に有する。
【0011】
本発明の実施の形態に係る水処理方法は別の一実施態様において、被処理水を処理槽内に収容する前に、被処理水中の色度成分を除去するための前処理を行う工程を更に有する。
【0012】
本発明の実施の形態に係る水処理方法は別の一実施態様において、被処理水が、細菌類、菌類、微小動物、藻類、藍藻類、有機フッ素化合物の少なくともいずれかを含有する被処理水である。
【0013】
本発明の実施の形態に係る水処理方法は別の一実施態様において、被処理水を処理槽内に収容する前に、被処理水に対し、固液分離処理、凝集沈殿処理、生物処理、イオン交換処理、ろ過処理、物理吸着処理、電気分解処理の少なくとも何れかを含む水処理を実施する工程を更に有する。
【0014】
本発明の実施の形態に係る水処理装置は一側面において、溶解性有機物を含有する被処理水を収容し、被処理水に紫外線とオゾンとを用いた促進酸化処理を行うことにより被処理水中の溶解性有機物を分解する処理槽と、被処理水に100~300nmの波長域の紫外線を照射する光源及び光源の周囲に形成された気体を流通させるための気体流通領域を備える紫外線照射手段と、気体流通領域に酸素を含む気体を供給する気体注入手段と、酸素を含む気体が注入された気体流通領域内への光源からの紫外線の照射によって生成させたオゾンを処理槽内の被処理水に導入する導入手段とを備える。
【0015】
本発明の実施の形態に係る水処理装置は一実施形態において、気泡径100μm以下の酸素を含有する気泡を生成し、生成した気泡を被処理水へ注入する気泡注入手段を更に備える。
【0016】
本発明の実施の形態に係る水処理装置は別の一実施形態において、処理槽の前段に接続され、被処理水中の色度成分を除去するための前処理を行う前処理手段を更に備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被処理水に含まれる溶解性有機物を簡易な装置で安全に効率良く分解処理することが可能な水処理方法及び水処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る水処理装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係る水処理装置の一例を示す概略図である。
【
図3】本発明の第3の実施の形態に係る水処理装置の一例を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施の形態の変形例に係る水処理装置の一例を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施の形態の変形例に係る水処理装置の一例を示す概略図である。
【
図6】本発明の実施の形態の変形例に係る水処理装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を以下に説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0020】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る水処理装置100は、
図1に示すように、原水を水処理して被処理水を得る水処理手段1と、被処理水に紫外線とオゾンとを用いた促進酸化処理(AOP処理)を行う促進酸化処理手段2とを備える。
【0021】
水処理手段1は、原水を所定の目的に利用するために所定の水処理を行う装置であり、種々の水処理装置100が利用できる。水処理手段1としては、固液分離処理、凝集沈殿処理、生物処理、イオン交換処理、ろ過処理、物理吸着処理、電気分解処理の少なくとも何れかを含む水処理を実施する装置を備えることが好ましい。
【0022】
例えば、水処理手段1が浄水処理装置である場合、水処理装置100は、被処理水を貯留する着水井、被処理水に無機凝集剤等の薬品を混和する混和池、高分子凝集剤を添加してフロックを形成するためのフロック形成池、フロックを沈殿させるための沈殿池、沈殿処理水をろ過するためのろ過池、ろ過処理水を貯留するための配水池等を含むことができる。
【0023】
例えば、水処理手段1がし尿処理施設等である場合、水処理装置100は、浄化槽汚泥、下水及び/又はし尿等の被処理水を受け入れる受入・貯留設備、被処理水から夾雑物を取り除く除渣設備、被処理水に対し生物学的脱窒素処理や嫌気性消化処理等によって生物学的に処理を行う生物処理設備、生物処理で得られる生物処理水に対して、凝集沈殿処理、砂ろ過、活性炭処理、脱塩、蒸発、消毒等の高度処理を行う高度処理設備等を含むことができる。
【0024】
例えば、水処理手段1が純水製造装置等である場合、水処理装置100は、被処理水をろ過処理する砂ろ過装置、活性炭装置、カチオン交換塔、アニオン交換塔、紫外線照射(UV)装置、逆浸透膜(RO)装置及び混床塔及び脱気膜を備える脱気装置等を含むことができる。
【0025】
例えば、水処理手段1が閉鎖循環式陸上養殖施設の水処理装置100である場合、魚類や貝類等を飼育する飼育槽、被処理水をろ過処理するろ過装置、魚類の排泄物由来の窒素成分を除去する窒素処理装置、窒素処理後の被処理水中の懸濁物質を除去するろ過装置又は泡沫分離装置、殺菌装置を含むことができる。
【0026】
例えば、水処理手段1がPFOS、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)及びその塩等の有機フッ素化合物を含む被処理水に対する純水製造装置である場合、水処理装置100は、被処理水をろ過処理する砂ろ過装置、活性炭装置、カチオン交換塔、アニオン交換塔、紫外線照射(UV)装置、逆浸透膜(RO)装置及び混床塔及び脱気膜を備える脱気装置等を含むことができる。さらに、水処理手段1が有機フッ素化合物(PFOS及びPFOA)を含む水に対する浄水施設である場合、水処理装置100は、被処理水を貯留する着水井、被処理水に無機凝集剤等の薬品を混和する混和池、高分子凝集剤を添加してフロックを形成するためのフロック形成池、フロックを沈殿させるための沈殿池、沈殿処理水をろ過するためのろ過池、ろ過処理水を貯留するための配水池等を含むことができる。また、合流式下水道越流水(CSO)の消毒、或いは湖沼・河川水の浄化装置等を含むこともできる。
【0027】
図1の例では、水処理手段1の後段に、促進酸化処理手段2が接続される例が記載されているが、この例には限定されず、水処理手段1を構成する種々の設備内の一部に促進酸化処理手段2が組み込まれていてもよい。例えば、生物処理水に対して消毒等の高度処理を行う高度処理装置、又は、純水装置において純水の殺菌処理等に紫外線照射装置等に、促進酸化処理手段2が組み込まれてもよいことは勿論である。
【0028】
被処理水は、溶解性有機物を含む。本実施形態において溶解性有機物とは、孔径1μmのろ紙によってろ過されたろ液中の有機物の総称を意味する。具体的には、溶解性CODCr、溶解性CODMn、溶解性BOD、溶解性TOC、溶解性還元糖、溶解性でんぷん、有機フッ素化合物などを含む。
【0029】
被処理水は、栄養塩類又は微量金属成分を更に含んでいてもよい。栄養塩類又は微量金属としては、具体的には、窒素(N)とその化合物、リン(P)とその化合物、Na、K、Ca、Mg、Fe、Bと、各金属の水和物又は化合物を含む。
【0030】
被処理水は、細菌類、菌類、微小動物、藻類、藍藻類、有機フッ素化合物の少なくともいずれかを含有する。被処理水に含まれる溶解性有機物は、これら細菌類、菌類、微小動物、藻類、藍藻類、有機フッ素化合物等に由来する溶解性の有機成分であることが多い。そのため、溶解性有機物の濃度は、被処理水中の細菌類、菌類、微小動物、藻類、藍藻類、有機フッ素化合物等に由来する溶解性有機物の成分濃度に応じて変化する。
【0031】
被処理水に含まれる細菌類(以下において「細菌」又は「一般細菌」ともいう)は、準寒天培地によって36±1℃で、24±2時間培養したときに、培地上にコロニーを形成する細菌(特に従属栄養細菌)を指し、上水試験法(日本水道協会発行、上水試験方法)又は下水試験法(日本下水道協会発行、下水試験方法)に準拠した方法で測定する。培地上に形成されたコロニー数は、個/mL、CFU/mLとして表す。細菌類には一般生菌も含む。被処理水として培養液を用いる場合、培養液は、野菜や果物類などの食品生育用途に用いられることから、細菌類を一定の基準値以下とすることが求められる。
【0032】
藻類は、典型的には植物プランクトン等を含む。具体的には、藻類は、緑藻類、藍藻類、黄金藻類、珪藻類などを含み、特に、光合成色素(クロロフィルa)を細胞内に持つ、緑藻類を含む。被処理水として、培養液や、植物生産システムの培養液等の被処理水等を利用する場合は、藻類の発生により被処理水の交換頻度及び流路の清掃頻度が増加するなどの問題が生じることがある。被処理水として河川水等の水道原水を利用する場合は、ゲリラ豪雨などの天候により植物プランクトンの濃度に変動が生じ、藻類が急激に増加することがある。
【0033】
有機フッ素化合物はPFAS(Per-and Polyfluoroalkyl Substances)と略称され、炭素-フッ素結合を有機化合物であり、溶解性有機物にも含まれる。有機フッ素化合物は、独特の性質(撥水性、撥油性、耐熱性、耐薬品性、非吸光性)を有するため、様々な製品に使用されてきたが、難分解性であり、生物の体内に蓄積し、生物へ影響することが報告されている。特に、炭素数が8のPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)及びPFOA(パーフルオロスルホン酸)の毒性や蓄積性が知られている。PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)はPFOSの代替物質として使用されている。有機フッ素化合物は前処理後に高速液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC/MSまたはLC/MS/MS)によって定量される。有機フッ素化合物は自然界の様々な場所や人間の生活環境中に存在するが、地下水、湖沼・河川水、下水、工場または工業排水中に存在する可能性がある。PFOS及びPFOAに対して、国際的には残留有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)において規制されている。また、日本国内では河川水や地下水中のPFOS及びPFOAに対して、水質汚濁に係る要監視項目に指定されており、飲料水中のPFOS及びPFOAに対して水質管理目標項目に位置付けられており暫定的な目標値が設定されている。
【0034】
被処理水は、浮遊物質(SS:Suspened Solids)を含んでもよい。SSは、水中に浮遊する固形状の懸濁物質のことであり、孔径1μmのろ紙でろ過した際に、ろ紙上に残留する物質を指す。SSは無機性及び有機性の物質を含む。無機性のSSは、土壌由来の成分や粘土成分などを含む。有機性のSSは、動植物及び微生物の細胞由来や工場由来の成分を含む。被処理水に含まれるSSは特に限定されないが、例えば、清涼飲料水製造工場の製造工程で生じた成分、活性汚泥、流動担体から剥離した汚泥、凝集処理工程で生じた汚泥フロック由来のSSが該当する。
【0035】
被処理水の性状は、以下に限定されるものではないが、例えば、全有機炭素(TOC)が0.1~5000mg/L、更には1~3000mg/L、一実施態様においては0.5~100mg/Lの有機性廃水が用いられる。或いは、化学的酸素要求量(COD)が0.1~10000mg/L、更には1~6000mg/Lの有機性廃水が被処理水として用いられる。或いは、SSが0.1~2000mg/L、更には1~1000mg/L、一実施態様においては0.1~100mg/Lの有機性廃水が被処理水として用いられる。
【0036】
以下に限定されないが、AOP処理では、場合によっては、紫外線の透過性に応じて色度、濁度、溶解性有機物の除去効果が限定的になる場合がある。一実施態様においては、被処理水の色度は1~1000度程度であり、より典型的には5~1000度、更に典型的には50~500度であり、一実施態様においては5~10度である。被処理水のSSは、典型的には50~1000mg/Lであり、より典型的には50~500mg/L、更に典型的には50~300mg/Lである。溶解性有機物(溶解性TOC)は典型的には0.01~50mg/Lであり、より典型的には0.05~20mg/Lであり、更に典型的には0.1~10mg/Lである。CODMnは、典型的には100~1000mg/Lであり、より典型的には200~1000mg/L、更に典型的には200~550mg/Lである。S-CODMnは、典型的には100~1000mg/Lであり、より典型的には200~1000mg/L、更に典型的には200~500mg/Lである。BODは、典型的には200~1500mg/Lであり、より典型的には200~1000mg/Lである。S-BODは、典型的には200~1500mg/Lであり、より典型的には200~600mg/Lである。全Mnは典型的には0.01~5mg/Lであり、より典型的には0.01~3mg/Lであり、更に典型的には0.01~1mg/Lである。溶解性Mnは典型的には0.01~5mg/Lであり、より典型的には0.01~3mg/Lであり、更に典型的には0.01~1mg/Lである。全Feは典型的には0.01~10mg/Lであり、より典型的には0.01~7mg/Lであり、更に典型的には0.01~5mg/Lである。溶解性Feは典型的には0.01~10mg/Lであり、より典型的には0.01~7mg/Lであり、更に典型的には0.01~5mg/Lである。被処理水の色度、SS、CODMn、S-CODMn、BOD、S-BOD、溶解性TOC、全Fe、全Mn、溶解性Fe、溶解性Mnはそれぞれ公知の上水試験方法または下水試験方法に準じて測定することができる。
【0037】
<促進酸化処理手段>
促進酸化処理手段2は、被処理水に対して紫外線とオゾンを用いた促進酸化処理を行うことにより、被処理水を殺菌及び浄化する装置である。促進酸化処理手段2は、溶解性有機物を含有する被処理水を収容し、被処理水に紫外線とオゾンとを用いた促進酸化処理を行うことにより被処理水中の溶解性有機物を分解する処理槽21と、被処理水に100~300nmの波長域の紫外線を照射する光源122及び光源122の周囲に形成された気体を流通させるための気体流通領域126を備える紫外線照射手段22と、気体流通領域126に酸素を含む気体を供給する気体注入手段23と、酸素を含む気体が注入された気体流通領域126内への光源122からの紫外線の照射によって生成させたオゾンを処理槽21内の被処理水に導入する導入手段24とを備える。
【0038】
処理槽21は、中央部に、被処理水に対して100~300nmの波長域の紫外線を照射可能な紫外線照射手段22を備える。紫外線照射手段22の外周側の処理槽21内に設けられた被処理水流通領域127には被処理水が収容されている。紫外線照射手段22の構成は特に限定されない。例えば、紫外線照射手段22は、紫外線を照射する光源122、光源122の周囲を覆うように配置されたケーシング25、図示しない電源及び配線等を備える。光源122とケーシング25との間にある空間は、気体を流通させるための気体流通領域126として機能する。
【0039】
光源122の種類に特に制限はないが、熱陰極型、冷陰極型の紫外線ランプが好適に用いられる。ケーシング25は、光源122を防護しつつ、光源122とケーシング25との間に気体注入手段23から注入される酸素を含有する気体を流通させるように機能する。ケーシング25の材質に制限はないが、典型的には、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ガラス樹脂等の無色透明であって紫外線照射手段22の光源122が照射する波長域の紫外線を吸収または反射せず、紫外線による劣化が生じにくいものが好ましい。
【0040】
紫外線照射手段22は、被処理水を殺菌処理するための波長域を有する第1の紫外線と、酸素からオゾンを生成させるための波長域を有する第2の紫外線とを照射する。
図1に示す例では、紫外線照射手段22は、第1の紫外線を照射する第1の紫外線照射手段22A(第1の光源)と、第2の紫外線を照射する第2の紫外線照射手段22B(第2の光源)とがそれぞれ別々に備えられる例を示しているが、この構成には限定されない。好ましくは、波長域の異なる第1の紫外線と第2の紫外線とを一本の紫外線ランプで照射可能な光源122を備える紫外線照射手段22を用いることにより、装置の小型化及び簡略化が図れる。
【0041】
第1の紫外線の波長域は、被処理水中の溶解性有機物の分解とオゾンの活性化を促す波長域であれば限定されず、典型的には100~300nmの波長域を有する。第1の紫外線は、より典型的には波長域240~300nm、更に典型的には240~260nmの紫外線を照射する。第2の紫外線の波長域は、紫外線の照射によりオゾンを生成させる波長域であれば限定されないが、典型的には波長域180~190nm、より典型的には185nmである。
【0042】
気体注入手段23は、例えば、エアコンプレッサ、空気圧力計、空気流量計、減圧弁、配管、その付随装置から構成される。酸素を含有する気体としては、取り扱い性、入手容易性および経済性の観点等から空気を利用することが最も好ましい。酸素を含有する気体として、酸素の他にも、オゾン、二酸化炭素、水素等の任意の気体を更に含有させてもよいし、これら2種類以上の気体をそれぞれ同時に導入することも可能である。気体注入手段23は、光源122とケーシング25との間に形成された気体流通領域126に接続されている。気体注入手段23は、ケーシング25に設けられた注入口231を介して酸素を含有する気体、典型的には空気を気体流通領域126に注入する。
【0043】
促進酸化処理手段2では、紫外線照射手段22によって第1の紫外線を、オゾンを含む被処理水に照射することにより、被処理水中の溶解性有機物を分解する促進酸化処理を行う。光源122は、空気等の酸素を含有する気体が注入された気体流通領域126に第2の紫外線を照射する。これにより、気体流通領域126には、注入した酸素の一部からオゾンが生成する。第2の紫外線の照射により生成した少量のオゾンは、酸素を含有する気体とともに導入手段24を介して処理槽21内の被処理水中に混合される。そして、オゾンを含む被処理水に対する第1の紫外線照射手段22Aによる第1の紫外線の照射によって、被処理水中にヒドロキシラジカルが生成される。その結果、促進酸化処理手段2では、紫外線と、オゾンと、ヒドロキシラジカルとによる酸化分解反応の促進処理(AOP処理)が進行する。このAOP処理により、被処理水中の溶解性有機物、細菌類、藻類、浮遊物質(SS)等が効率良く分解される。
【0044】
AOP処理は、酸化促進処理又は促進酸化処理とも呼称されている。このAOP処理は、いくつかの酸化剤と水との反応によって、単独の酸化処理よりも多くのヒドロキシラジカルを発生させて酸化分解反応を促進する方法である。AOP処理で用いられる酸化剤としては、オゾン、過酸化水素などが挙げられる。AOP処理は、薬剤等を用いた処理方法と異なり、処理後の残留物が残らず、脱色性に優れる点で有用である。そのため、被処理水中の溶解性有機物、細菌類、藻類、浮遊物質(SS)等の分解処理に適用されることによって、被処理水の成分変化を抑制し、溶解性有機物を分解して細菌及び藻類等の繁殖を抑制しながら、簡易な装置で安全に促進酸化処理を行うことができる。本実施形態では、AOP処理の中でも、紫外線による紫外線(UV)処理をAOP処理に組み合わせることにより、酸化処理、有機物処理、殺菌処理などが促進できるため、単独の紫外線処理やオゾン処理やAOP処理よりも、更に高い促進酸化処理効果を有する。
【0045】
気体注入手段23による気体の注入量に特は制限されないが、注入量が多すぎると空気と紫外線との反応が不十分となり、オゾンの生成量が不足する一方で、少なすぎても促進酸化処理手段2で実施するAOP処理のためのオゾンの生成量が不足し、除菌浄化処理効果が小さくなる場合がある。
【0046】
以下に限定されるものではないが、気体流通領域126内に酸素を含有する気体として気体流通領域126内のオゾン濃度が0.005~0.5mg-O3/L-流体となるようにオゾンを生成させることが好ましく、0.005~0.3mg-O3/L-流体となるようにオゾンを生成させることがより好ましく、0.01~0.5mg-O3/L-流体液となるようにオゾンを生成させることが更に好ましい。
【0047】
気体流通領域126中のオゾンを含有する気体は、気体流通領域126の一端と、処理槽21内の紫外線照射手段22の外周側に設けられた被処理水流通領域127の一端とに接続された配管及びポンプ等からなる導入手段24を介して処理槽21内の被処理水に混合される。気体流通領域126の容積は被処理水流通領域127の容積に対して1/1~1/200とすることが好ましく、1/3~1/100とすることがより好ましい。これにより、導入手段24を介して常時安定した濃度のオゾンを含有する気体を被処理水流通領域127へ導入できる。よって、被処理水に含まれる溶解性有機物を簡易な装置で安全に効率良く分解処理することが可能となる。
【0048】
導入手段24は、気体流通領域126で生成したオゾン及び酸素を含む気体を、処理槽21内に0.005~1L/L-被処理水で供給することが好ましく、0.01~0.5L/L-被処理水で供給することがより好ましく、0.01~0.2L/L-被処理水で供給することがより好ましい。或いは、酸素含有気体として空気を供給する場合は、被処理水と注入気体の気液比(被処理水/オゾン及び酸素を含有する気体の体積比)を1~200とすることが好ましく、3~100とすることがより好ましく、5~50とすることが更に好ましい。導入手段24から処理槽21内に導入されたオゾン及び酸素を含む気体は、処理槽21から排出されてさらに処理槽21内に循環させるように構成してもよい。
【0049】
紫外線照射手段22の気体流通領域126で生成されたオゾンと酸素を含有する気体は、気体流通領域126に接続された導入手段24を介して、処理槽21内のケーシング25の外側の被処理水流通領域127を流れる被処理水へ注入される。これにより、紫外線照射で発生した微量のオゾンを有効に利用してAOP処理をより効率的に行うことができる。なお、促進酸化処理手段2の前段に浮遊懸濁成分除去のためのフィルター等の前処理装置(不図示)を設置することにより、被処理水の溶解性有機物の分解効率を更に高めることが可能な点で好ましい。
【0050】
処理槽21内の被処理水中のオゾンの生成量が多すぎるとオゾンの濃度によっては被処理水の放流先や利用先の生物等に悪影響を及ぼす場合がある。本発明では、処理槽21内に外部から比較的高濃度のオゾンを供給するのではなく、処理槽21内、更には紫外線照射手段22の気体流通領域126に空気を注入し、気体流通領域126で酸素と紫外線とを反応させることにより微量のオゾンを発生させる。そして、発生したオゾンと紫外線との反応によって酸化力の強いヒドロキシラジカルを生成させる。被処理水中のオゾンは微量であるため、被処理水中に溶存するオゾンの分解処理等を特別に設ける必要が無い。さらに、外部からのオゾン供給がないため、装置構成が簡易であり、ランニングコストの低減が可能である。よって、本発明によれば、被処理水の溶解性有機物をより簡易かつ小型な設備で分解処理できる。
【0051】
以下に限定されるものではないが、促進酸化処理手段2から排出される被処理水中のオゾン濃度が0.005~0.5mg-O3/L-被処理水、より典型的には0.01~0.4mg-O3/L-被処理水、更に典型的には0.01~0.3mg-O3/L-被処理水となるように、促進酸化処理手段2におけるオゾン処理が行われることが好ましい。
【0052】
或いは、促進酸化処理における被処理水のDOが5~20mg/Lとなるように、酸素を含有する気体及び/又は気泡を被処理水に注入することが好ましく、DOが6~15mg/Lとなるように注入することがより好ましく、DOが6~12mg/Lとなるように、酸素を含有する気体の注入量が制御されることが更により好ましい。
【0053】
本発明の第1の実施の形態に係る水処理装置100によれば、促進酸化処理手段2の紫外線照射手段22を介して第1及び第2の紫外線の照射を行うとともに、気体注入手段23から紫外線照射手段22の気体流通領域126へ酸素を含有する気体を注入して、気体流通領域126に光源122から第2の紫外線を照射することで、少量のオゾンを生成させる。このオゾンと酸素を含有する気体が導入手段24を介して処理槽21内の被処理水中に混合され、オゾンの存在下で第1の紫外線が照射されることでヒドロキシラジカルが生成する。その結果、処理槽21内では、紫外線とオゾンによるAOP処理が促進され、この促進効果によって、被処理水中の溶解性有機物の分解が行われる。本発明の実施の形態によれば、従来のようにオゾンを外部から供給するものではなく、殺菌のための薬品も使用しないため、薬品未使用且つ低オゾン濃度での安全な処理が行える。
【0054】
(水処理方法)
本発明の第1の実施の形態に係る水処理方法は、
図1の水処理装置100を用いて実施することができる。即ち、水処理方法は、溶解性有機物を含有する被処理水を水処理することと、溶解性有機物を含有する被処理水を処理槽21内に収容し、処理槽21内の被処理水に紫外線を照射する光源122の周囲に形成された気体流通領域126内に酸素を含有する気体を注入し、オゾンを生成させる波長域の紫外線を光源122から気体流通領域126に照射することにより、気体流通領域126内にオゾンを生成させ、紫外線の照射によって生成したオゾンを処理槽21内の被処理水と混合し、オゾンを含む被処理水に光源122から紫外線を照射して促進酸化処理を行うことにより、被処理水中の溶解性有機物を除去することを含む。
【0055】
本発明の第1の実施の形態に係る水処理方法によれば、酸素の存在下で第1及び第2の紫外線を被処理水に照射し、紫外線とオゾンによるAOP処理(UV-AOP処理)を行うことができる。よって、被処理水中の成分変化を抑制しながら簡易な装置で安全に被処理水中の溶解性有機物の分解処理を行うことが可能な水処理方法が得られる。
【0056】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る水処理装置100は、
図2に示すように、気泡径100μmm以下の酸素を含有する気泡を生成し、生成した気泡を被処理水へ注入する気泡注入手段6を更に備える。
【0057】
気泡注入手段6では、気体注入手段23から供給される酸素を含有する気体の一部を気泡注入手段6に注入することで微小な気泡を生成し、この気泡を被処理水へ溶解させ、気泡を含む被処理水を促進酸化処理手段2へ送給する。気泡注入手段6で生成させる気泡径を小さくするほど、気泡が被処理水中に溶解する時間が長くなる。そのため、気泡注入手段6で生成させる気泡径を小さくすることにより、被処理水中に残存する気泡を多くし、これにより被処理水中のDOをより好適な範囲に調整できる。
【0058】
気泡注入手段6としては特に限定されないが、エジェクター方式、インジェクター方式、旋回流方式、ベンチュリー方式、二相臨海流方式、回転翼負圧利用自吸方式(スタティックミキサー)、オーラジェット方式などの水流によるせん断力や旋回流を利用した装置、キャビテーションを利用した装置、加圧溶解による装置、多孔質膜を用いた装置等の種々の装置が利用可能である。
【0059】
中でも、気泡注入手段6としては、多孔質膜を備える気泡生成装置を用いることにより、装置を小型化及び簡略化できる点で好ましい。多孔質膜を備える気泡生成装置では、多孔質膜へ気体を供給し、多孔質膜の表面に発生した微細気泡を水流のせん断力によって流し、水中に微小な気泡を生成させる。気泡注入手段6ではコンプレッサー等から気体を気体注入手段23へ供給する気体供給ラインから分岐させた分岐ラインを介して気泡注入手段6へ気体を注入することができる。分岐ラインから分岐させる気体量を調整することで、気泡注入手段6が被処理水へ注入する気体量の比と気体注入手段23が促進酸化処理手段2へ供給する気体量の比を調整できる。
【0060】
以下に限定されるものではないが、本発明では、気泡注入手段6が被処理水へ注入する気体量の比と気体注入手段23が促進酸化処理手段2へ供給する気体量の比、即ち、被処理水に供給される、酸素を含有する気体に対する気泡の供給比(気泡注入手段6の供給量/気体注入手段23の供給量)は、体積比で0.0超1.0未満とする。好ましくは、酸素を含有する気体に対する気泡の被処理水への供給比が、体積比で0.1以上となるように、酸素を含有する気体及び気泡を注入することが好ましい。供給比は、0.2以上とすることがより好ましく、0.3以上とすることが更に好ましい。供給比は、0.9以下がより好ましく、0.2以上0.8以下が更に好ましく、0.3以上0.6以下がより更に好ましい。
【0061】
気泡注入手段6で生成させる気泡は、気泡径100μm以下、更には10μm以下のマイクロバブルとすることが好ましく、気泡径1000nm以下のウルトラファインバブルとすることが更に好ましい。マイクロバブルは、被処理水中を収縮しながら浮力によってゆっくり浮上する。そのため、紫外線照射手段22によって第2の紫外線が照射される際に、気泡径1mm程度のミリバブルに比べて紫外線照射時間が長くでき、これによりオゾンの生成量を増大できる。
【0062】
ウルトラファインバブルは、一般的には、超微細気泡、又はナノバブルなどとも呼称され、気泡径が数十nmから1000nm(1μm)までの気泡を指す。ウルトラファインバブルは、気泡径が1μmから100μmの微細気泡として知られるマイクロバブル又はマイクロファインバブルとは区別される。ウルトラファインバブルの主な物性は、気泡径が非常に小さく上昇速度が非常に遅いため、液中に長期間存在可能であることと、気泡が圧壊する際にヒドロキシラジカルが生じることと、溶解効率が非常に高いことと、マイナスの表面電荷をもつことと、気泡と気泡とが近づくと反発すること等が報告されている。
【0063】
ウルトラファインバブルは、気泡径が微小なために浮力が小さく、水中に数週間~数か月もの長期間残存できる。そのため、マイクロバブルよりも更に被処理水中の滞留時間が長くなる。ウルトラファインバブルが被処理水で消失することなく長期間滞留することによって、処理水中の酸素濃度を長時間維持できる。また、ウルトラファインバブルから生成させたオゾンを含む気泡、所謂オゾンウルトラファインバブルは、被処理水中に長時間滞留し、気泡の圧壊又は紫外線照射手段22から照射される第2の紫外線と反応してヒドロキシラジカルを生成させる。ウルトラファインバブルは溶解効率が高いため、液中に溶解しにくいオゾンガスを外部から注入する場合に比べてその酸化作用、殺菌効果、脱色効果も高くなる。なお、気泡注入手段6は、マイクロバブル又はウルトラファインバブル生成時に、同時に副産物として、気泡径1μm~1mm程度のミリバブルを生成させてもよい。気泡径の異なる種々の気泡を生成させて被処理水中へ注入することにより、被処理水中のDOの維持と除菌浄化処理とを効率良く行うことができる。
【0064】
気泡径は、特に限定されないが、動的光散乱法やレーザー回析・散乱法などの測定方法によって測定が可能である。動的光散乱法は、ブラウン運動中の気体粒子群に対し、レーザー光を照射しその散乱光を光電子倍増管で検出する。ブラウン運動中の気体粒子の時間的な散乱強度の変化(散乱強度の揺らぎ)から自己相関関数を計算し、拡散係数を求め、アインシュタイン・ストークスの式によって相対的な粒子径分布を得る方法である。また。レーザー回析・散乱法は、フローセルを通過する気体粒子にレーザーを照射し、そこから発せられる散乱光を前方散乱光センサ、側方散乱光センサ及び後方散乱光センサで検出して、その光強度分布パターンから気泡の粒子径分布を算出する。
【0065】
気泡注入手段6として、多孔質膜を用いた装置を利用してウルトラファインバブル又はマイクロバブルを生成させるためには、注入する気体の圧力を0.1MPa以上、更には0.5MPa以上とすることが好ましい。気体の圧力が高すぎると、装置維持の観点及び高圧処理の観点から効率的でない場合があるため、気体の圧力の上限値は例えば1MPa以下とすることができる。
【0066】
気泡注入手段6へ供給される気体は、空気が最も好ましいが、酸素、オゾン、二酸化炭素、水素等の任意の気体を更に含有させてもよいし、2種類以上の気体を同時に導入することも可能である。気泡注入手段6の前段に、浮遊懸濁成分除去のためのフィルターを設置することも可能である。気泡注入手段6による被処理水への気泡を注入することにより、被処理水中に高濃度に長時間気泡を存在させ、これによりオゾン生成時のオゾン濃度を向上できる。その結果、AOP処理時の処理を促進できる。
【0067】
(水処理方法)
本発明の第2の実施の形態に係る水処理方法は、
図2の水処理装置100を用いて実施することができる。即ち、水処理方法は、溶解性有機物を含有する被処理水を水処理することと、溶解性有機物を含有する被処理水を処理槽21内に収容し、処理槽21内の被処理水に紫外線を照射する光源122の周囲に形成された気体流通領域126内に酸素を含有する気体を注入し、オゾンを生成させる波長域の紫外線を光源122から気体流通領域126に照射することにより、気体流通領域126内にオゾンを生成させ、紫外線の照射によって生成したオゾンを処理槽21内の被処理水と混合し、オゾンを含む被処理水に光源122から紫外線を照射して促進酸化処理を行うことにより、前記被処理水中の溶解性有機物を除去することと、気泡径100μm以下の酸素を含有する気泡を生成させ、生成した前記気泡を前記被処理水中に注入する工程を更に有することとを含む。
【0068】
本発明の第2の実施の形態に係る水処理方法によれば、気泡注入手段6から気泡径100μm以下、好ましくは気泡径1000nm以下の気泡を被処理水中に溶解させることができ、これにより気泡を含む被処理水が促進酸化処理手段2へ供給される。気泡径の小さい気泡、例えば気泡径100nm以下の気泡は、被処理水中に溶解すると、その気泡が促進酸化処理手段2の処理槽21内で長期間滞留する。第2の紫外線の照射によって、気泡中の酸素からも微量のオゾンが生成される。生成されたオゾンと紫外線とヒドロキシラジカルとの反応によって促進酸化処理手段2におけるAOP処理の処理効率が増大するため、被処理水中の溶解性有機物の分解効率が高まる。また、気泡注入手段6を備えることによって、被処理水のDOを向上できるため、促進酸化処理手段2に注入する空気量を低減できる。これにより、被処理水へ注入する空気量を全体的に低減させて気泡注入のための動力を削減することができるため、より経済的且つ効率的な処理が行える。
【0069】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る水処理装置100は、
図3に示すように、処理槽21の前段に接続され、被処理水中の色度成分を除去するための前処理を行う前処理手段5を更に備える。
【0070】
前処理手段5としては色度成分を除去するための種々の装置が利用可能である。例えば、被処理水に酸を注入して被処理水のpHを6以下、更には5.5以下、より更には5以下にする酸処理装置が前処理手段5として利用可能である。被処理を砂ろ過器や精密ろ過膜等に通し、被処理水に含まれる懸濁物質を除去するろ過装置も前処理手段5として好適に利用可能である。或いは、活性炭等を用いて被処理水に含まれる懸濁物質を物理吸着させる活性炭処理装置も前処理手段5として利用可能である。更には、無機凝集剤や有機凝集剤を用いた凝集沈殿処理装置、活性炭以外に物理化学的な吸着材を用いた吸着処理装置、電気分解を行う電気分解装置を前処理手段5として利用可能である。前処理手段5として、促進酸化処理手段2を適用し、促進酸化処理を二回以上行うこともまた可能である。
【0071】
(水処理方法)
本発明の第3の実施の形態に係る水処理方法は、
図3の水処理装置100を用いて実施することができ、被処理水を処理槽内に収容する前に、被処理水中の色度成分を除去するための前処理を行う工程を有する点が、
図1及び
図2に示す水処理装置100と異なる。
【0072】
本発明の第3の実施の形態に係る水処理装置100及び水処理方法によれば、被処理水中の色度成分を除去するための前処理によって色度成分が除去される。被処理水中にMn等の金属が含まれる場合には、後述する促進酸化処理手段2による紫外線照射や促進酸化処理により金属イオンの酸化が生じ、被処理水の色度が増加する可能性がある。第3の実施の形態では、前処理手段5が設けられることにより、被処理水中の金属成分、特に鉄やマンガン等の酸化に起因する被処理水の色度の増加が抑制できるため、被処理水の成分変化が効果的に抑制できる。
【0073】
(変形例)
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を相互に組み合わせ、変形して具体化できることは勿論である。
【0074】
図4に示すように、促進酸化処理手段2で促進酸化処理が行われた被処理水を水処理手段1へ循環させる循環手段7を介して循環させるようにしてもよい。その際、水処理手段1に循環される被処理水を適切なpHにするために、
図5に示すように被処理水に対して酸やアルカリ等のpH調整剤を添加するpH調整手段3を更に備えていても良い。また、
図1~
図5では図示していないが、例えば、水処理手段1で処理された被処理水の流量、電気伝導率、pH、濁度、色度、溶解性有機物、SS、MLSS等を測定するための測定部(不図示)を備えていてもよい。測定部で測定した項目の設定値によって促進酸化処理手段2で促進酸化処理が行われた被処理水を水処理手段1へ循環させる際に、その循環の開始と停止を制御することで、その流量を調整する機能を備えても良い。
【実施例0075】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0076】
<装置構成>
図6に、試験に利用した水処理装置の概略図を示す。本処理装置は、被処理水を収容する原水槽101と、原水槽101中の被処理水を取水して促進酸化処理した後に再び原水槽101へ返送する循環ライン104と、循環ライン104に接続された促進酸化処理手段120と、循環ライン104に接続され、被処理水に気泡を注入する気泡注入手段106とを備える。
【0077】
気泡注入手段106に酸素を含有する気体として空気を注入するため、気泡注入手段106にはエアコンプレッサ128を接続した。促進酸化処理手段120へ酸素を含有する気体として空気を注入するため、操作盤110に付随するエアポンプ(不図示)を設け、空気注入ライン123に流量計と空気ドレンを設け、操作盤110に付随するエアポンプにより処理槽121内へ空気を注入させた。促進酸化処理手段120の処理槽121内の中央部には、波長域185nm及び254nmの紫外線を照射可能な一本の紫外線ランプを設置し、紫外線ランプの外側にガラス製のケーシング125を設けた。ケーシング125内に形成した気体流通領域126に空気注入ライン123から空気を注入した。空気注入ライン123からケーシング125内に供給された空気の一部から波長域185nmの紫外線照射によってオゾンガスを生成させた。空気及びオゾンガスは導入部124を介して促進酸化処理手段120の処理槽121内の液相部分である被処理水流通領域127へ導入して被処理水中に注入させる構成とした。原水槽101には、撹拌機142を設置し、原水槽101に接続された循環ポンプ141から、循環ライン104へ被処理水を送給した。
【0078】
<試験条件>
溶解性有機物を含有する被処理水を表1の試験条件に準じて
図6の水処理装置を用いて処理した。試験1~5の被処理水のTOCは0.5~20mg/L、溶解性TOCは5.4~5.8mg/Lで、色度は10度以下、SSは0.1~15mg/Lであった。
図6の水処理装置において利用した被処理水の全量を50Lとし、循環水量:15L/min、循環時間:10分、水温:20~30℃(無調整)として被処理水を原水槽101と促進酸化処理手段120との間で循環させた。紫外線ランプの出力は110Wとし、紫外線照射量は0.37Wh/Lとし、紫外線照射時間は10分とした。紫外線照射量は、紫外線照射量=(紫外線出力×紫外線照射時間)÷(循環水量×循環時間)の式に基づき算出した。
【0079】
試験1に対しては気体の注入を行わず紫外線の照射のみを行い、試験2~4は促進酸化処理手段120のケーシング125内に気体を供給した。試験5では更に、気泡注入手段106でウルトラファインバブルを生成させて被処理水に注入した。注入気体は空気とし、合計注入量を0.38~1.9L/minの範囲で調整した。気泡注入手段106への空気注入量は、試験5;0.19L/minとした。表2中、「気液比」とは、被処理水の循環水量に対する注入空気量(循環水量/注入空気量)の体積比を示す。
【0080】
【0081】
<測定項目>
表2に原水及び処理水の水質分析結果を示す。水質分析項目は、pH、水温、DO、溶解性TOC、色度、濁度、一般細菌数、全マンガン(Mn)、溶解性Mn、全鉄(Fe)、溶解性Feとし、これらの測定方法は、上水試験法(日本水道協会発行、上水試験方法)または下水試験法(日本下水道協会発行、下水試験方法)、JIS-K0102(日本産業規格)に準拠して測定した。電気伝導率は市販の導電率計により測定した。
【0082】
表2中の一般細菌低減率については、一般細菌低減率=(原水濃度-処理水濃度)÷原水濃度×100に基づいて算出した。「色度増加率」は、色度増加率=(処理水濃度-原水濃度)÷処理水濃度×100に基づいて算出した。溶解性成分の測定用サンプルは、孔径1mmのガラスろ紙を用いてろ過処理し、ろ過後のろ液を用いた。
【0083】
【0084】
<溶解性TOC低減率>
溶解性TOC低減率は、試験1:6.9%、試験2:7.7%、試験3:8.6%、試験4:7.8%、試験5:7.8%で、紫外線照射のみを行った試験1よりも、紫外線とオゾンを利用した促進処理を行う試験2~5の方が、溶解性TOC低減率が向上することが分かる。
【0085】
<一般細菌低減率>
一般細菌低減率は、試験1:94.8%、試験2:97.8%、試験3:98.7%、試験4:97.4%、試験5:96.7%で、紫外線照射のみを行った試験1よりも、紫外線とオゾンを利用した促進処理を行う試験2~5の方が、試験1に比べて高い割合で一般静菌が低減できていることが分かる。
【0086】
<色度>
被処理水にはいずれもMn、Feを微量に含んでいたが、紫外線処理及び紫外線とオゾンによる酸化促進処理を行うことにより、いずれの試験例1~5においても、処理後の被処理水の色度が増加することが分かる。この結果より、被処理水の色度を低減する必要がある場合には、酸化促進処理前に予め、酸化促進処理によって色度を上昇させる原因となる物質、例えば、鉄、マンガン等の金属成分をするための前処理を行った方がよいことが分かる。
【0087】
<気泡注入処理の影響>
被処理水に気泡を注入して促進酸化処理を行った試験5の方が、被処理水に気泡を注入しないで紫外線処理を行った試験1と比べて溶解性TOC低減率が高くなることがわかる。また、一般細菌低減率についても、試験5の方が試験1よりも高い値が得られることが分かる。DOは、試験1~3では紫外線処理又は酸化促進処理の後はいずれも低減したが、気体の注入量(合計)を試験2、3、5よりも5倍程度とした試験4と、被処理水に気泡を注入した試験5はいずれも、処理後の被処理水のDOが高くなっていることが分かる。また、気体の注入量(合計)で比較すると、試験4よりも試験5の方が注入量は少ない物のDOは高い値を維持できており、気泡注入処理によって長時間被処理水中のDOを維持できることが分かる。
【0088】
<オゾン生成の影響>
波長域185nm及び254nmの紫外線を照射した後の被処理水(試験6及び7)について、促進酸化処理手段120のケーシング内の気体を採取し、気体中のオゾン濃度を測定した。試験6では促進酸化処理手段120の気体流通領域126に空気注入ライン123から空気を0.38L/minで注入した。試験7では、促進酸化処理手段120の気体流通領域126に空気注入ライン123から空気を1.9L/minで注入した。表3中「気中オゾン濃度」は、下水試験法(日本下水道協会発行、下水試験方法)に準じて測定した。表3中「空気注入量」は
図6の空気注入ライン123からの空気の注入流量を示し、「循環水量」は、促進酸化処理手段120へ流入させる被処理水の供給流量を示す。表3中「オゾン供給量」は気中オゾン濃度×空気流入量によって算出し、オゾン濃度は、被処理水の循環水量に対するオゾン供給量によって評価した。気中オゾン濃度は、試験6:0.6mg-O
3/L-Air、試験7:0.3mg-O
3/L-Airであり、オゾン供給量は、試験6:0.014g-O
3/h、試験7:0.034g-O
3/hとなった。オゾン濃度は、試験6:0.015mg-O
3/L-被処理水、試験7:0.038mg-O
3/L-被処理水であった。オゾン濃度は一般的なオゾン酸化処理の場合よりも低濃度であった。
【0089】
【0090】
本試験によれば、本発明の実施の形態に係る酸化促進処理を行うことにより、気体注入処理工程を有さない試験1よりも、被処理水に含まれる溶解性有機物を簡易な装置で安全に効率良く分解処理することが可能となることが分かる。被処理水中から一般細菌を低減させることも可能であることが分かる。