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  • 特開-吸着固定具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108010
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】吸着固定具
(51)【国際特許分類】
   F16B 47/00 20060101AFI20240802BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F16B47/00 Z
B65D25/20 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012245
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】591203831
【氏名又は名称】株式会社マーナ
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】長堀 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健二
【テーマコード(参考)】
3E062
3J038
【Fターム(参考)】
3E062AA10
3E062CA14
3J038AA02
3J038CA04
3J038CA14
(57)【要約】
【課題】 平面上に対象物を固定する吸着固定具の密着状態を解除する際に、対象物から突出することがなく、どの方向から触れても密着状態を解除できる吸着固定具を提供すること。
【解決手段】 対象物Aは、軸線方向に延設される胴部1と、胴部1の下端部から外径が胴部1よりも縮径される縮径胴部3と、縮径胴部3の内周側に形成され、吸着固定具Bに装着される被装着部7と、を備え、吸着固定具Bは、上部に対象物Aの被装着部7と嵌合する装着部11を有し、下面に吸盤面12を有する吸盤保持部10と、吸盤保持部10の周縁から径方向下方に向けて延設される弾性変形可能なシール部13と、シール部13の外縁から軸線方向に立設されるシール解放部14と、を備え、シール解放部14は、縮径胴部3との間に間隙αが設けられ、対象物Aは、平面D上に密着した状態で、シール解放部14を間隙αに向けて弾性変形することで密着状態が解除されることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を平面上で固定する吸着固定具であって、
対象物は、軸線方向に延設される胴部と、胴部の下端部から外径が胴部よりも縮径される縮径胴部と、縮径胴部の内周側に形成され、吸着固定具に装着される被装着部と、を備え、
吸着固定具は、上部に対象物の被装着部と嵌合する装着部を有し、下面に吸盤面を有する吸盤保持部と、吸盤保持部の周縁から径方向下方に向けて延設される弾性変形可能なシール部と、シール部の外縁から軸線方向に立設されるシール解放部と、を備え、
シール解放部は、縮径胴部との間に間隙が設けられ、
対象物は、平面上に密着した状態で、シール解放部を間隙に向けて弾性変形することで密着状態が解除されることを特徴とする吸着固定具。
【請求項2】
シール解放部の外周は、対象物の最大外周寸法を超えないことを特徴とする請求項1に記載の吸着固定具。
【請求項3】
シール部の軸線方向の厚みは、シール解放部の径方向の厚みよりも薄く設定され、
シール部の径方向の長さは、シール解放部の軸線方向の長さよりも短く設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の吸着固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着作用により物品を固定する吸着固定具に関し、とくに、密着状態の解除が容易な吸着固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器などの対象物を平面上に固定するために、吸着作用を利用した固定具が使用されている。
この種の固定具では、対象物の固定時に、吸着面を平面に押し付け、吸着面と平面との間の空気を外部に押し出し、減圧状態とすることにより簡単に吸着することができるが、固定具の吸着状態を解除する際には、固定時よりも手間を要するという問題があった。
【0003】
このような問題に対して、容器を所望の設置部に固定設置する構造として、固定具本体が、容器に外嵌された状態において、容器を平滑な設置部に設置した場合には、吸盤作用により容器を固定する一方、固定具本体の外周部の一部を設置部から剥がすことにより、吸盤作用を解除するように構成されている容器の固定設置構造が知られている(特許文献1を参照)。
【0004】
また、容易に吸着状態を解除することができる着脱自在のペンケースとして、ペンケース本体と、ペンケース本体を被吸着面に吸着させる吸着体と、を備え、吸着体は、下方側を被吸着面に対して吸着する吸着面と、吸着面の周縁部をめくり上げて吸着状態を解除するための押圧部と、を有するものも知られている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-131915号公報
【特許文献2】実用新案登録第3227250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の容器の固定設置構造では、固定具本体の容器への装着が容器への外嵌に限られるとともに、固定具の設置面積が容器の底部面積に比べて広くなるという問題があった。
また、上記特許文献2記載のペンケースでは、吸着面の周縁部をめくり上げて吸着状態を解除するための押圧部は、周縁部の特定部分から水平方向に延出した延出部と、延出部の端から垂直上方に突出して形成された略半円形状の押圧面を有するものであるため、押圧部が対象物から突出して邪魔になるとともに、吸着状態を解除する際に、押圧する場所が限られるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、平面上に対象物を固定する吸着固定具の密着状態を解除する際に、対象物から突出することがなく、どの方向から触れても密着状態を解除できる吸着固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、吸着固定具として、対象物を平面上で固定する吸着固定具であって、対象物は、軸線方向に延設される胴部と、胴部の下端部から外径が胴部よりも縮径される縮径胴部と、縮径胴部の内周側に形成され、吸着固定具に装着される被装着部と、を備え、吸着固定具は、上部に対象物の被装着部と嵌合する装着部を有し、下面に吸盤面を有する吸盤保持部と、吸盤保持部の周縁から径方向下方に向けて延設される弾性変形可能なシール部と、シール部の外縁から軸線方向に立設されるシール解放部と、を備え、シール解放部は、縮径胴部との間に間隙が設けられ、対象物は、平面上に密着した状態で、シール解放部を間隙に向けて弾性変形することで密着状態が解除されることを特徴とする構成を採用する。
【0009】
さらに、吸着固定具の実施形態として、シール解放部の外周は、対象物の最大外周寸法を超えないことを特徴とする構成、また、シール部の軸線方向の厚みは、シール解放部の径方向の厚みよりも薄く設定され、シール部の径方向の長さは、シール解放部の軸線方向の長さよりも短く設定されることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸着固定具は、上記構成を採用することにより、シール解放部に触れるだけで、シール解放部に連結されているシール部の外縁側が持ち上がり、シール部の下に空気が戻り、吸着固定具の密着状態を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例である吸着固定具を対象物に装着した状態を示す縦断面図で、(a)は吸着固定具の静置時、(b)は吸着固定具の密着時である。
図2図1(b)の要部拡大図である。
図3】本発明の実施例である吸着固定具を対象物に装着した状態を示す縦断面図で、(a)は吸着固定具の密着状態解除開始時、(b)は吸着固定具の密着状態解除終了時である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の吸着固定具について、実施例の図面を参照して説明する。
以下の説明では、図1および図3でみて、縦方向を「軸線方向」、横方向を「径方向」とする。
【0013】
(実施例)
図1において、Aは容器等の対象物、Bは対象物Aを平面D上で固定するために、対象物Aに装着される吸着固定具である。
【0014】
図1および図3に示すように、対象物Aは、本実施例では、上部が開口された有底のカップ状の容器として構成されている。例えば、対象物Aがウェットティッシュを収納する容器である場合、開口された上部をウェットティッシュの取り出し口のある蓋で覆って使用する。
【0015】
対象物Aであるカップ状の容器は、上部が開口され、軸線方向に延設された円筒状の胴部1と、胴部1の下端部から縮径されるリング状の段部2と、段部2の内縁から軸線方向に垂設され、外径が胴部1よりも縮径される縮径胴部3と、縮径胴部3の下端部から内方を閉塞する底部4と、縮径胴部3の下端部から縮径される切欠き部5と、切欠き部5の内縁から軸線方向に垂設される円筒状の装着脚部6と、装着脚部6の内周側に形成され、吸着固定具Bに装着される被装着部としての嵌合凹部7と、を備える。
なお、本実施例では、対象物Aであるカップ状の容器は、上面視で円形をなすが、円形に限らず、楕円形や略四角形であってもよい。
【0016】
図1および図3に示すように、吸着固定具Bは、柔軟性のある合成樹脂(例えば、ゴムやシリコーン樹脂など)により成形され、上部に対象物Aが装着される円盤状の吸盤保持部10と、吸盤保持部10の周縁から径方向下方に向けて延設される弾性変形可能な薄肉リング状のシール部13と、シール部13の外縁から軸線方向に立設される円筒状のシール解放部14と、を備える。さらに、図2に示すように、シール部13の軸線方向の厚みt1は、シール解放部14の径方向の厚みt2よりも薄く設定されるとともに、シール部13の径方向の長さL1は、シール解放部14の軸線方向の長さ(外周側面の長さ)L2よりも短く設定されている。
【0017】
吸盤保持部10は、上部に対象物Aの被装着部としての嵌合凹部7と嵌合する装着部としての嵌合凸部11が形成され、下面に平面Dと吸着可能な吸盤面12が形成されている。
なお、本実施例では、対象物Aの嵌合凹部7が装着脚部6の内周から縮径して2段階に形成されているため、嵌合凸部11も、嵌合凹部7の形状に合致するように、2段階に形成されているが、嵌合凸部11は、対象物Aの嵌合凹部7の形状に合わせるようにすればよい。
【0018】
図1(a)に示すように、シール解放部14は、吸着固定具Bを対象物Aに装着した際に、外周が対象物Aの最大外周寸法を超えないように設定されるとともに、シール解放部14の内周は、対象物Aの縮径胴部3の外周との間に径方向の間隙αが設定され、シール解放部14を内側にむけて倒すことを許容している。
さらに、シール解放部14の上端部は、図1(b)に示すように、吸着固定具Bを平面Dに密着させた際に、対象物Aの段部2に接触しないように、図1(a)に示すように、対象物Aの段部2との間に軸線方向の間隙βが設定されている。
【0019】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について図面を参照しながら説明する。
本実施例の吸着固定具Bは、対象物Aの下部に設けられた被装着部である嵌合凹部7に装着部である嵌合凸部11を嵌合することにより、図1(a)に示す吸着固定具B付きの対象物A(カップ状の容器)とすることができる。
【0020】
吸着固定具B付きの対象物Aを平面D上に設置するには、図1(a)に示すように、吸着固定具Bの吸盤面12を下にして平面D上に置くと、吸着固定具Bに対象物Aの負荷がかかり、吸盤面12と平面Dとの空隙が狭くなる。
【0021】
その後、対象物Aを上部から軸線方向下方(平面D)に向けて押圧すると、吸盤保持部10は、吸盤面12と接する空気を押し出しながら、シール部13を径方向に広げ、平面Dに接地させる。
すると、図1(b)に示すように、シール部13が全周で平面Dに密着することで、吸盤面12に空気が入らなくなり、密着状態となる。
【0022】
次に、吸着固定具Bの密着状態を解除するには、図3(a)に示すように、シール解放部14の何れかの個所を外周側から矢印方向に触れると、シール解放部14の下端部と連結されているシール部13の外縁側が装着脚部6の下端部を支点として持ち上がることにより、シール部13の下に空気が戻り、シール部13の密着状態が解除される。
【0023】
前述したように、シール部13の軸線方向の厚みt1をシール解放部14の径方向の厚みt2よりも薄く設定するとともに、シール部13の径方向の長さL1をシール解放部14の軸線方向の長さL2よりも短く設定したことで、シール部13の方がシール解放部14よりも弾性変形し易くなり、シール解放部14を内側に向けて(図3(a)の矢印方向)軽く押し込むだけで、シール部13の外縁側を容易に上方に持ち上げる(捲る)ことができ、シール部13の密着状態を解除できる。
【0024】
次に、図3(b)に示すように、対象物Aを傾けると、吸盤保持部10の吸盤面12の負圧が解放され、完全に吸着固定具Bの密着状態が解除される。
【0025】
以上のように、吸着固定具Bは、例えば、ウェットティッシュを収納する容器に適用できる。この場合、吸着固定具Bにより容器をテーブル等の平面D上に密着させることで、容器からウェットティッシュを取り出すことができる。すなわち、容器がテーブルに密着しているので、容器が動かないように手で押さえなくても、ウェットティッシュを片手で摘まんで容器から容易に取り出すことができる。
【0026】
また、容器の下端にあるシール解放部14に軽く触れるだけで、吸着固定具Bの密着状態が解除されるので、容器を容易に移動させることができる。このように、吸着固定具Bは、容器等を使用する際に、容器が動かないように手で押さえる必要があり、かつ移動させる必要がある対象物Aに適用することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の吸着固定具は、シール解放部に軽く触れるだけで、シール解放部に連結されているシール部の外縁側が持ち上がり、シール部の下に空気が戻り、シール部の密着状態を解除することができ、対象物を使用する際に、対象物が動かないように手で押さえる必要があり、かつ移動させる必要がある対象物の吸着固定具として広い範囲に応用できる。
【符号の説明】
【0028】
A 対象物
B 吸着固定具
D 平面
t1、t2 厚み
L1、L2 長さ
α、β 間隙
1 胴部
2 段部
3 縮径胴部
4 底部
5 切欠き部
6 装着脚部
7 嵌合凹部(被装着部)
10 吸盤保持部
11 嵌合凸部(装着部)
12 吸盤面
13 シール部
14 シール解放部
図1
図2
図3