(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108012
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ホットスタンピング部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 22/20 20060101AFI20240802BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20240802BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20240802BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20240802BHJP
C21D 9/46 20060101ALN20240802BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20240802BHJP
C22C 38/38 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
B21D22/20 H
C21D9/00 A
C21D1/00 112D
C21D1/18 C
C21D9/46 J
C22C38/00 301T
C22C38/38
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012247
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、スンピル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョジン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ギュヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヒョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンホ
【テーマコード(参考)】
4E137
4K034
4K037
4K042
【Fターム(参考)】
4E137AA08
4E137AA23
4E137BA01
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4E137GB01
4K034AA01
4K034BA05
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4K037EA02
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4K042AA25
4K042BA01
4K042BA03
4K042BA08
4K042BA10
4K042BA14
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4K042DF01
4K042EA01
(57)【要約】
【課題】ホットスタンピング部品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、メッキ層が形成された鋼板を第1温度で第1時間の間、加熱する段階;加熱された鋼板を裁断してブランクを形成する段階;ブランクを段階的に加熱する多段加熱段階;多段加熱されたブランクをAc3~1,000℃の温度で加熱する均熱加熱段階;及び均熱加熱されたブランクを加熱炉からプレス金型に移送する段階;を含むホットスタンピング部品の製造方法を開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキ層が形成された鋼板を第1温度で第1時間の間、加熱する段階と、
前記加熱された鋼板を裁断してブランクを形成する段階と、
前記ブランクを段階的に加熱する多段加熱段階と、
前記多段加熱されたブランクをAc3~1,000℃の温度で加熱する均熱加熱段階と、
前記均熱加熱されたブランクを加熱炉からプレス金型に移送する段階と、を含み、
前記第1温度は、540℃~600℃であり、
前記移送段階での前記ブランクの空冷時間は、下記数式を満足する、ホットスタンピング部品の製造方法;
【数1】
(この際、λ
tは、空冷時間(s)、a
tは、加熱炉取り出し温度及び大気温度を考慮した補正係数、T
tは、加熱温度(℃)、b
tは、素材成分を考慮した補正係数、tは、素材厚さ(mm)、c
tは、高温素材厚さ敏感度を考慮した補正係数)。
【請求項2】
前記第1温度が540℃であるとき、前記第1時間は、60分以上である、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項3】
前記第1温度が600℃であるとき、前記第1時間は、10分以上である、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項4】
前記数式において、
前記atは、0.0160以上0.0165以下であり、Ttは、Ac3以上1000℃以下であり、btは、10以上0.5以下であり、tは、1mm以上2.6mm以下であり、ctは、0.7以上0.9以下である、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項5】
前記数式において、λtは、5s以上20s以下である、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項6】
前記多段加熱段階及び前記均熱加熱段階は、
互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備えた加熱炉内でなされる、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項7】
前記複数の区間において、前記ブランクを多段加熱する区間の長さと前記ブランクを均熱加熱する区間の長さとの比は、1:1~4:1を満足する、請求項6に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項8】
前記複数の区間の温度は、前記加熱炉の入口から前記加熱炉の出口方向に増加する、請求項6に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項9】
前記ブランクを多段加熱する区間のうち、互いに隣接した2つの区間間の温度差は、0℃より大きく、100℃以下である、請求項6に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項10】
前記複数の区間のうち、前記ブランクを均熱加熱する区間の温度が前記ブランクを多段加熱する区間の温度より高い、請求項6に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項11】
前記移送段階以後に、
前記移送されたブランクをホットスタンピングし、成形体を形成する段階と、
前記形成された成形体を冷却する段階と、をさらに含む、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンピング部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に環境規制、及び燃費規制が強化されながら、さらに軽い車両素材に係わる必要性が増加している。これにより、超高強力鋼とホットスタンピング鋼に対する研究開発が活発になされている。ホットスタンピング工程は、普遍的に、加熱/成形/冷却/トリムからなり、工程中、素材の相変態、及び微細組織の変化を利用することになる。
【0003】
最近、ホットスタンピング工程によって製造されたホットスタンピング部品で発生する遅延破断、耐食性、及び溶接性を向上させようとする研究が活発に進められている。それと係わる技術としては、大韓民国特許公開公報第10-2018-0095757号(発明の名称:ホットスタンピング部品の製造方法)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】大韓民国特許公開公報第10-2018-0095757号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ホットスタンピング工程時、水素遅延破断、及び金型焼着の問題が発生することを防止または最小化することができるホットスタンピング用ブランク、その製造方法、ホットスタンピング部品、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例は、メッキ層が形成された鋼板を第1温度で第1時間の間、加熱する段階;前記加熱された鋼板を裁断してブランクを形成する段階;前記ブランクを段階的に加熱する多段加熱段階;前記多段加熱されたブランクをAc3~1,000℃の温度で加熱する均熱加熱段階;及び前記均熱加熱されたブランクを前記加熱炉からプレス金型に移送する段階;を含み、前記第1温度は、540℃~600℃であり、前記移送段階での前記ブランクの空冷時間は、下記数式を満足する、ホットスタンピング部品の製造方法が提供される。
【数1】
(この際、λ
tは、空冷時間(s)、a
tは、加熱炉取り出し温度及び大気温度を考慮した補正係数、T
tは、加熱温度(℃)、b
tは、素材成分を考慮した補正係数、tは、素材厚さ(mm)、c
tは、高温素材厚さ敏感度を考慮した補正係数)
本実施例において、前記第1温度が540℃であるとき、前記第1時間は、60分以上でもある。
【0007】
本実施例において、前記第1温度が600℃であるとき、前記第1時間は、10分以上でもある。
【0008】
本実施例において、前記数式で、前記atは、0.0160以上0.0165以下であり、Ttは、Ac3以上1000℃以下であり、btは、10以上0.5以下であり、tは、1mm以上2.6mm以下であり、ctは、0.7以上0.9以下でもある。
【0009】
本実施例において、前記数式で、λtは、5s以上20s以下でもある。
【0010】
本実施例において、前記多段加熱段階、及び前記均熱加熱段階は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備えた加熱炉内でなされうる。
【0011】
本実施例において、前記複数の区間において、前記ブランクを多段加熱する区間の長さと前記ブランクを均熱加熱する区間の長さとの比は、1:1~4:1を満足する。
【0012】
本実施例において、前記複数の区間の温度は、前記加熱炉の入口から前記加熱炉の出口方向に増加しうる。
【0013】
本実施例において、前記ブランクを多段加熱する区間のうち、互いに隣接した2つの区間間の温度差は、0℃より大きく、100℃以下でもある。
【0014】
本実施例において、前記複数の区間のうち、前記ブランクを均熱加熱する区間の温度が前記ブランクを多段加熱する区間の温度よりも高い。
【0015】
本実施例において、前記移送段階以後に、前記移送されたブランクをホットスタンピングし、成形体を形成する段階;及び前記形成された成形体を冷却する段階;をさらに含むものでもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施例によれば、ホットスタンピング工程前、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を第1温度で第1時間の間、加熱することで、鋼板上に単一層として備えられる全体合金化層を形成することができる。
【0017】
また、鋼板上に合金化層が形成されたブランクを多段加熱、及び均熱加熱してホットスタンピング部品を製造することで、製造された部品の水素脆性、及び耐剥離性が向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施例によるホットスタンピング用ブランクの断面を示す断面図である。
【
図2】一実施例によるホットスタンピング用ブランクの製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図3】
図2の鋼板を製造する工程を概略的に示すフローチャートである。
【
図4】一実施例によるホットスタンピング用ブランクの製造方法において、鋼板とメッキ層とが合金化される区間を示すグラフである。
【
図5】加熱段階(S120)が省略されたホットスタンピング用ブランクの製造方法を用いて製造されたホットスタンピング用ブランクの断面を示す断面図である。
【
図6】一実施例によるホットスタンピング部品の断面を示す断面図である。
【
図7】一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図8】一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法の多段加熱段階、及び均熱加熱段階において、複数の区間を備えた加熱炉を説明するために示す図面である。
【
図9】素材厚さによる空冷時間及び加熱温度による空冷時間を示す図面である。
【
図10】加熱段階(S310)が省略されたホットスタンピング部品の製造方法を用いて製造された部品の断面を示す図面である。
【
図11】鉄(Fe)-アルミニウム(Al)状態図を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有することができるところ、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。本発明の効果及び特徴、そして、それらを達成する方法は、図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すれば、明確になるであろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、多様な形態にも具現される。
【0020】
以下の実施例において、第1、第2のような用語は、限定的な意味ではなく、1つの構成要素を、他の構成要素と区別する目的で使用されている。
【0021】
以下の実施例において、単数の表現は、文脈上、明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0022】
以下の実施例において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴または構成要素が存在するということを意味するものであり、1以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を予め排除するものではない。
【0023】
以下の実施例において、膜、領域、構成要素などの部分が、他の部分の「上」または「上部」にあるとするとき、他の部分の真上にある場合だけではなく、その中間に、他の膜、領域、構成要素などが介在されている場合も含む。
【0024】
図面では、説明の便宜上、構成要素の大きさが誇張されても、縮小されてもいる。例えば、図面で示された各構成の大きさ、及び厚さは、説明の便宜上、任意に示したものであって、本発明が必ずしも図示されたところに限定されない。
【0025】
ある実施例が異なって具現可能な場合、特定の工程順序は、説明される順序と異なって遂行されうる。例えば、連続して説明される2つの工程が、実質的に同時に遂行されてもよく、説明される順序とは逆順に進められてもよい。
【0026】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明し、図面を参照して説明するとき、同一であるか、対応する構成要素は、同じ図面符号を付する。
【0027】
図1は、一実施例によるホットスタンピング用ブランクの断面を示す断面図である。
【0028】
図1を参照すれば、一実施例によるホットスタンピング用ブランクは、鋼板100、及び前記鋼板100上に配置された第1合金化層200を含む。
【0029】
鋼板100は、所定の合金元素を所定含量含むように鋳造された鋼スラブに対して熱延工程、及び/または冷延工程を進めて製造された鋼板でもある。一例として、鋼板100は、炭素(C)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、チタン(Ti)、ボロン(B)、残部の鉄(Fe)、及びその他不可避な不純物を含むことができる。また、鋼板100は、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、及びアルミニウム(Al)のうち、1つ以上の成分をさらに含むものでもある。
【0030】
炭素(C)は、鋼板100の強度、及び硬度を決定する主要元素であり、ホットスタンピング工程以後、鋼板100の引っ張り強度、及び焼き入れ性特性を確保するための目的で添加される。一例として、炭素は、鋼板100全体重量に対して0.19wt%~0.38wt%含まれうる。炭素の含量が0.19wt%未満である場合、鋼板100の機械的強度を確保し難い。一方、炭素の含量が0.38wt%を超過すれば、鋼板100の靭性が低下するか、脆性制御問題が惹起されうる。
【0031】
シリコン(Si)は、固溶強化元素として鋼板100の強度、及び軟性を向上させうる。また、シリコンは、水素脆性によるクラックの基点になるセメンタイトの生成を抑制する役割を遂行することができる。そのようなシリコンは、鋼板100全体重量に対して0.1wt%~1wt%で含まれうる。シリコンの含量が0.1wt%未満である場合、上述した効果を得難く、反対に、シリコンの含量が1wt%を超過すれば、鋼板100のメッキ特性が低下しうる。
【0032】
マンガン(Mn)は、熱処理時、焼き入れ性、及び強度増加目的で添加される。マンガンは、鋼板100全体重量に対して1wt%~2wt%で含まれうる。マンガンの含量が1wt%未満である場合、結晶粒微細化効果が十分ではなく、ホットスタンピング部品の硬質相分率が不十分となりうる。一方、マンガンの含量が2wt%を超過すれば、マンガン偏析またはパーライトバンドによる軟性及び靭性が低下し、曲げ性能低下の原因になり、不均質微細組織が発生しうる。
【0033】
リン(P)は、鋼板100の靭性低下を防止するために添加される。リンは、鋼板100全体重量に対して0超過0.03wt%以下含まれうる。リンの含量が0.03wt%を超過すれば、リン化鉄化合物が形成されて靭性が低下し、製造工程中、鋼板100にクラックが誘発されうる。
【0034】
硫黄(S)は、鋼板100全体重量に対して0超過0.01wt%以下含まれうる。硫黄の含量が0.01wt%を超過すれば、熱間加工性が低下し、巨大介在物生成により、クラックのような表面欠陥が生じうる。
【0035】
クロム(Cr)は、鋼板100の焼き入れ性、及び強度を向上させる目的で添加される。クロムは、鋼板100全体重量に対して0.1wt%~0.6wt%含まれうる。クロムの含量が0.1wt%未満である場合、焼き入れ性、及び強度向上の効果が不十分でもある。一方、クロムの含量が0.6wt%を超過すれば、製造コストが増加し、かつ鋼板100の靭性が低下しうる。
【0036】
チタン(Ti)は、ホットスタンピング熱処理後の析出物形成による焼き入れ性強化、及び材質向上目的で添加される。また、チタンは、高温でTi(C,N)などの析出相を形成し、オーステナイト結晶粒微細化に効果的に寄与することができる。チタンは、鋼板100全体重量に対して0.01wt%~0.05wt%含まれうる。チタンの含量が0.01wt%未満である場合、析出物形成が微々たるものであり、結晶粒微細化効果が不十分でもある。一方、チタンが0.05wt%超過である場合、延伸率下落、及び靭性低下が発生しうる。
【0037】
ボロン(B)は、マルテンサイト組織を確保することで、鋼板100の焼き入れ性、及び強度を確保する目的で添加され、オーステナイト結晶粒成長温度増加によって結晶粒微細化効果を有する。ボロンは、鋼板100全体重量に対して0.001wt%~0.005wt%含まれうる。ボロンの含量が0.001wt%未満である場合、焼き入れ性向上効果が不十分でもある。一方、ボロンの含量が0.005wt%を超過する場合、脆性危険性と延伸率劣位危険性とが増加しうる。
【0038】
一例として、第1合金化層200は、鋼板100の少なくとも一面に形成され、単一層として備えられうる。例えば、第1合金化層200は、FeAlSi合金によって備えられうる。
【0039】
後述するように、鋼板100、及び前記鋼板100上に形成されたアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層を第1温度で第1時間の間、加熱することで、鋼板100とアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が合金化されて第1合金化層200が形成されうる。この際、鋼板100上には、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が残存せず、鋼板100の少なくとも一部とアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が全体合金化されうる。
【0040】
図2は、一実施例によるホットスタンピング用ブランクの製造方法を概略的に示すフローチャートであり、
図3は、
図2の鋼板を製造する工程を概略的に示すフローチャートである。以下、
図2及び
図3を参照して、ホットスタンピング用ブランクの製造方法を説明する。
【0041】
図2を参照すれば、一実施例によるホットスタンピング用ブランクの製造方法は、メッキ層形成段階(S110)、及び加熱段階(S120)を含む。
【0042】
メッキ層形成段階(S110)は、
図3に図示されたように、鋼スラブの熱間圧延段階(S210)、冷却/巻取段階(S220)、冷間圧延段階(S230)、焼き鈍し熱処理段階(S240)、及び溶融メッキ段階(S250)を含む。まず、鋼板を形成する工程の対象になる半製品状態の鋼スラブを準備する。この際、前記鋼スラブは、炭素(C):0.19wt%~0.38wt%、シリコン(Si):0.1wt%~1wt%、マンガン(Mn):1wt%~2wt%、リン(P):0超過0.03wt%以下、硫黄(S):0超過0.01wt%以下、クロム(Cr):0.1wt%~0.6wt%、チタン(Ti):0.01wt%~0.05wt%、ボロン(B):0.001wt%~0.005wt%、及び残部の鉄(Fe)と不可避な不純物を含むものでもある。
【0043】
熱間圧延のために前記鋼スラブの再加熱段階が進められる。鋼スラブ再加熱段階では、連続鋳造工程を通じて確保した鋼スラブを所定の温度に再加熱することにより、鋳造時、偏析された成分を再固溶することになる。一例として、スラブ再加熱温度(Slab Reheating Temperature, SRT)は、1,200℃~1,400℃でもある。スラブ再加熱温度(SRT)が1,200℃より低い場合には、鋳造時、偏析された成分が十分に再固溶されず、合金元素の均質化効果が大きいとすることはできず、チタン(Ti)の固溶効果が大きいとすることもできない。スラブ再加熱温度(SRT)が高いほど均質化に有利であるが、スラブ再加熱温度(SRT)が1,400℃を超過する場合には、オーステナイト結晶粒度が増加して強度確保が困難であり、かつ過度な加熱工程によって鋼板の製造費用が上昇しうる。
【0044】
熱間圧延段階(S210)では、再加熱された鋼スラブを所定の仕上げ圧延温度で熱間圧延する。一例として、仕上げ圧延温度(Finishing Delivery Temperature: FDT)は、880℃~950℃でもある。この際、仕上げ圧延温度(FDT)が880℃より低ければ、異常領域圧延による混粒組織の発生によって鋼板の加工性確保が困難であり、微細組織の不均一によって加工性が低下する問題があるだけではなく、急な相変化によって熱間圧延中、通板性の問題が発生しうる。仕上げ圧延温度(FDT)が950℃を超過する場合には、オーステナイト結晶粒が粗大化されうる。また、TiC析出物が粗大化されてホットスタンピング部品の性能が低下しうる。
【0045】
冷却/巻取段階(S220)では、熱間圧延された鋼板を所定の巻取温度(Coiling Temperature: CT)まで冷却して巻き取る。一例として、前記巻取温度は、550℃~800℃でもある。前記巻取温度は、炭素(C)の再分配に影響を与え、巻取温度が550℃未満である場合には、過冷による低温相分率が高くなって強度が増加し、冷間圧延時、圧延負荷が激しくなる恐れがあり、軟性が急に低下してしまう。逆に、巻取温度が800℃を超過する場合には、異常結晶粒子成長や過度な結晶粒子成長によって成形性及び強度劣化が発生しうる。
【0046】
冷間圧延段階(S230)では、巻き取られた鋼板をアンコイリング(uncoiling)し、酸洗処理した後、冷間圧延する。この際、酸洗は、巻き取られた鋼板、すなわち、前記熱延過程を通じて製造された熱延コイルのスケールを除去するための目的で実施することになる。
【0047】
焼き鈍し熱処理段階(S240)は、前記冷延鋼板を700℃以上の温度で焼き鈍し熱処理する段階である。一例として、焼き鈍し熱処理は、冷延板材を加熱し、加熱された冷延板材を所定の冷却速度で冷却する段階を含みうる。
【0048】
溶融メッキ段階(S250)は、焼き鈍し熱処理された鋼板に対してメッキ層を形成する段階である。一例として、溶融メッキ段階(S250)において、前記焼き鈍し熱処理された鋼板、すなわち、鋼板上にアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層を形成することができる。
【0049】
具体的に、溶融メッキ段階(S250)において、前記鋼板を8wt%~12wt%のシリコン(Si)、及び余分のアルミニウム(Al)を含む溶融メッキ浴に浸漬させうる。この際、溶融メッキ浴は、400℃~700℃の温度を保持することができる。メッキ層は、前記鋼板の両面基準40g/m2~200g/m2でメッキされて形成されうる。
【0050】
加熱段階(S120)は、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を加熱する段階である。さらに具体的に、加熱段階(S120)は、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を加熱して第1合金化層を形成する段階である。
【0051】
加熱段階(S120)において、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を加熱する加熱時間と加熱温度は、下記数式1を満足する。
【数2】
この際、taは、加熱時間、αは、メッキ量による補正係数、βは、メッキ層に含まれたシリコン(Si)含量による補正係数、Rは、気体定数、及びTは、加熱温度である。前記数式1で加熱温度Tは、絶対温度を意味する。
【0052】
一実施例によるホットスタンピング用ブランクの製造方法において、鋼板上に形成されたアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層のメッキ量は、40g/m2~200g/m2でもあるので、メッキ量による補正係数αは、-31.09~-10.36の値を有しうる。
【0053】
また、βは、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層に含まれたシリコン(Si)含量、及びシリコン(Si)の活性化エネルギーを考慮して84752.2J/mol~254256.5J/molの値を有しうる。
【0054】
一例として、加熱段階(S120)では、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を加熱温度Tで加熱することができる。例えば、加熱段階(S120)では、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を第1温度で加熱することができる。この際、第1温度は、540℃~600℃でもある。第1温度が540℃未満である場合、鋼板の少なくとも一部とアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層との合金化に必要な時間が増加し、工程上ロス(Loss)が発生しうる。一方、第1温度が600℃超過である場合、後述するホットスタンピング部品の製造工程時、ブランクの表面に液状が形成されて金型焼着問題が発生しうる。
【0055】
一例として、加熱段階(S120)では、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を加熱時間(ta)の間、加熱する。例えば、加熱段階(S120)では、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を第1時間の間、加熱することができる。この際、第1時間は、10分~120分でもある。具体的に、第1温度が540℃であるとき、第1時間は、60分以上120分未満でもあり、第1温度が600℃であるとき、第1時間は、10分以上60分未満でもある。第1時間が10分未満である場合、鋼板とアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が完全に合金化されない。一方、第1時間が120分超過である場合、過度な加熱時間によってホットスタンピング部品の生産性が低下しうる。
【0056】
加熱段階(S120)において、第1温度が540℃である場合、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層の全体合金化に必要な最小時間が約60分でもある。すなわち、加熱段階(S120)において、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を540℃で約60分以上加熱して初めて、全体合金化層が形成されうる。したがって、第1温度が540℃より高い場合、全体合金化層を形成することができる最小時間が60分より小さくなり、最小時間は、10分~60分でもある。
【0057】
また、加熱段階(S120)において、第1温度が600℃である場合、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層の全体合金化に必要な最小時間が約10分でもある。すなわち、加熱段階(S120)において、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を600℃で約10分以上加熱して初めて、全体合金化層が形成されうる。したがって、第1温度が600℃より低い場合、全体合金化層を形成することができる最小時間が10分より大きくなり、最小時間は、10分~60分でもある。
【0058】
図4は、一実施例によるホットスタンピング用ブランクの製造方法において、鋼板とメッキ層が合金化される区間を示すグラフである。さらに具体的に、
図4は、数式1を満足する加熱温度による加熱時間を示すグラフであり、メッキ層が合金化される区間を示す図面である。
【0059】
前述したように、加熱段階(S120)では、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を、第1温度で第1時間の間、加熱することで、鋼板の少なくとも一部とアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層とが合金化され、全体合金化層が形成されうる。
【0060】
したがって、
図4のA区間に該当する場合、鋼板の少なくとも一部とアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が相互拡散されて第1合金化層が形成されうる。この際、形成された第1合金化層は、単一層として備えられうる。例えば、第1合金化層は、FeAlSi合金によって備えられうる。一例として、鋼板上には、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が残存せず、鋼板の少なくとも一部とアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が全体合金化されうる。
【0061】
以後、ブランク形成段階が遂行されうる。ブランク形成段階は、第1合金化層が形成された鋼板を裁断してブランクを形成する段階でもある。ブランク形成段階では、第1合金化層が形成された鋼板を目的によって所望の形状に裁断してブランクを形成する。
【0062】
一例として、ブランク形成段階は、加熱段階(S120)以前に遂行されうる。例えば、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を裁断してブランクを形成した後、前記形成されたブランクを加熱する加熱段階(S120)が遂行されうる。
【0063】
図5は、加熱段階(S120)が省略されたホットスタンピング用ブランクの製造方法を用いて製造されたホットスタンピング用ブランクの断面を示す断面図である。
【0064】
図1及び
図5を参照すれば、加熱段階(S120)を含むホットスタンピング用ブランクの製造方法を用いて製造されたホットスタンピング用ブランクは、鋼板100、及び前記鋼板100上に配置された第1合金化層200として備えられうる。第1合金化層200は、鋼板100と前記鋼板100上に形成されたアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が合金化されたものでもある。具体的に、鋼板100、及び前記鋼板100上に形成されたアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層を、第1温度で第1時間の間、加熱することで、鋼板100とアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が合金化され、第1合金化層200が形成されうる。この際、鋼板100上には、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が残存せず、鋼板100の少なくとも一部とアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が全体合金化されうる。
【0065】
加熱段階(S120)が省略されたホットスタンピング用ブランクの製造方法を用いて製造されたホットスタンピング用ブランクは、鋼板100、前記鋼板上に配置された第1合金化層200’、及び前記第1合金化層200’上に配置されたアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層250’で備えられうる。
【0066】
それを通じて、加熱段階(S120)が遂行されたホットスタンピング用ブランクでは、鋼板100上に形成されたアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層がいずれも第1合金化層200として合金化されるが、加熱段階(S120)が省略されたホットスタンピング用ブランクでは、鋼板100上にアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が一部残存することを確認することができる。
【0067】
したがって、加熱段階(S120)が遂行されたホットスタンピング用ブランク上に形成されたアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層がいずれも第1合金化層200としてて合金化されるので、高温熱処理を通じるオーステナイジング過程で表面にアルミニウム-シリコン(Al-Si)液状形成による水素流入、及び金型焼着問題を防止するか、最小化することができる。
【0068】
図6は、一実施例によるホットスタンピング部品の断面を示す断面図である。
【0069】
図6を参照すれば、一実施例によるホットスタンピング部品は、鋼板100、及び前記鋼板100上に位置して順次に積層された第1層310、第2層320、及び第3層330を備える第2合金化層300を含むことができる。
【0070】
第2合金化層300は、鋼板100の少なくとも一面に形成され、アルミニウム(Al)を含む。第2合金化層300は、鋼板100上に順次に積層された第1層310、第2層320、及び第3層330を含む。第3層330は、FeAl相を含む。
【0071】
第1層310は、合金化された鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、及びシリコン(Si)を含む。一例として、第1層310は、α-Fe相を有しうる。
【0072】
第2層320は、Fe2Al5相を含む。一例として、合金化層300に対する第2層320の面積分率は、0%超過33%以下でもある。合金化層300に対する第2層320の面積分率が33%を超過する場合、ホットスタンピング部品の製造方法によって製造されたホットスタンピング部品の耐剥離性及び水素脆性が低下しうる。
【0073】
一方、第1層310は、200Hv~800Hvの硬度を有し、第2層320は、700Hv~1,200Hvの硬度を有し、第3層330は、200Hv~800Hvの硬度を有しうる。
【0074】
一例として、ホットスタンピング部品は、第2合金化層300上に配置された表面層をさらに含むものでもある。表面層は、アルミニウム(Al)を80wt%以上含む層であり、鋼板100が酸化されることを防止しうる。一例として、鋼板上に配置された表面層の平均厚さは、100nm~200nmでもある。
【0075】
図7は、一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【0076】
図7を参照すれば、一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法は、加熱段階(S310)、ブランク形成段階(S320)、多段加熱段階(S330)、均熱加熱段階(S340)、移送段階(S350)、形成段階(S360)、及び冷却段階(S370)を含む。
【0077】
加熱段階(S310)は、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を加熱する段階である。さらに具体的に、加熱段階(S310)は、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を加熱して第1合金化層を形成する段階である。この際、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板は、
図3に図示された鋼スラブの熱間圧延段階(S210)、冷却/巻取段階(S220)、冷間圧延段階(S230)、焼き鈍し熱処理段階(S240)、及び溶融メッキ段階(S250)を通じて製造されうる。
【0078】
加熱段階(S310)において、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を加熱する加熱時間と加熱温度は、下記数式1を満足する。
【数3】
この際、taは、加熱時間、αは、メッキ量による補正係数、βは、メッキ層に含まれたシリコン(Si)含量による補正係数、Rは、気体定数、及びTは、加熱温度である。前記数式1において加熱温度Tは、絶対温度を意味する。
【0079】
一実施例によるホットスタンピング用部品の製造方法において、鋼板上に形成されたアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層のメッキ量は、40g/m2~200g/m2でもあるので、メッキ量による補正係数αは、-31.09~-10.36の値を有しうる。
【0080】
また、βは、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層に含まれたシリコン(Si)含量、及びシリコン(Si)の活性化エネルギーを考慮して84752.2J/mol~254256.5J/molの値を有しうる。
【0081】
一例として、加熱段階(S310)では、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を加熱温度Tで加熱することができる。例えば、加熱段階(S120)では、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を第1温度で加熱することができる。この際、第1温度は、540℃~600℃でもある。第1温度が540℃未満である場合、鋼板の少なくとも一部とアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が合金化されるのに必要な時間が増加し、工程上、ロス(Loss)が発生しうる。一方、第1温度が600℃超過である場合、ホットスタンピング部品の製造工程時、ブランクの表面に液状が形成されて金型焼着問題が発生しうる。
【0082】
一例として、加熱段階(S310)では、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を加熱時間taの間、加熱することができる。例えば、加熱段階(S120)では、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を第1時間の間、加熱することができる。この際、第1時間は、10分~120分でもある。具体的に、第1温度が540℃であるとき、第1時間は、60分以上120分未満でもあり、第1温度が600℃であるとき、第1時間は、10分以上60分未満でもある。第1時間が10分未満である場合、鋼板とアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層の完全な合金化が困難である。一方、第1時間が120分超過である場合、過度な加熱時間によってホットスタンピング部品の生産性が低下しうる。
【0083】
加熱段階(S310)において、第1温度が540℃である場合、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層の全体合金化に必要な最小時間が約60分でもある。すなわち、加熱段階(S310)において、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を540℃で約60分以上加熱して初めて、全体合金化層が形成されうる。したがって、第1温度が540℃より高い場合、全体合金化層を形成することができる最小時間が60分より短くなり、最小時間は、10分~60分でもある。
【0084】
また、加熱段階(S310)において、第1温度が600℃である場合、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層の全体合金化に必要な最小時間が約10分でもある。すなわち、加熱段階(S120)において、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を600℃で約10分以上加熱して初めて、全体合金化層が形成されうる。したがって、第1温度が600℃より低い場合、全体合金化層を形成することができる最小時間が10分より長くなり、最小時間は、10分~60分でもある。
【0085】
ブランク形成段階(S320)は、第1合金化層が形成された鋼板を裁断してブランクを形成する段階でもある。ブランク形成段階(S320)では、第1合金化層が形成された鋼板を目的によって所望の形状に裁断してブランクを形成することができる。
【0086】
一例として、ブランク形成段階(S320)は、加熱段階(S310)以前に遂行されてもよい。例えば、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を裁断してブランクを形成した後、前記形成されたブランクを加熱する加熱段階(S120)が遂行されうる。
【0087】
多段加熱段階(S330)は、ブランクを段階的に加熱する段階でもあり、均熱加熱段階(S340)は、均一な温度で多段加熱されたブランクを加熱する段階でもある。多段加熱段階(S330)では、ブランクが加熱炉内に備えられた複数の区間を通過して段階的に昇温されうる。加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、多段加熱段階(S330)が遂行される区間は、複数個存在し、ブランクが投入される加熱炉の入口からブランクが取り出される加熱炉の出口方向に高くなるように各区間別に温度が設定され、ブランクを段階的に昇温させうる。多段加熱段階(S330)以後に均熱加熱段階(S340)がなされうる。均熱加熱段階(S340)では、多段加熱されたブランクがAc3~1,000℃の温度に設定された加熱炉の区間を通過して熱処理されうる。望ましくは、均熱加熱段階(S340)では、多段加熱されたブランクを930℃~1,000℃の温度で均熱加熱することができる。さらに望ましくは、均熱加熱段階(S340)では、多段加熱されたブランクを950℃~1,000℃の温度で均熱加熱することができる。また、加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、均熱加熱段階(S340)が遂行される区間は、少なくとも1つ以上でもある。
【0088】
図8は、一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法の多段加熱段階、及び均熱加熱段階において、複数の区間を備えた加熱炉を説明するために示す図面である。
【0089】
図8を参照すれば、一実施例による加熱炉は、互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備えることができる。さらに具体的に、加熱炉は、第1温度範囲T
1を有する第1区間P
1、第2温度範囲T
2を有する第2区間P
2、第3温度範囲T
3を有する第3区間P
3、第4温度範囲T
4を有する第4区間P
4、第5温度範囲T
5を有する第5区間P
5、第6温度範囲T
6を有する第6区間P
6、及び第7温度範囲T
7を有する第7区間P
7を備えることができる。
【0090】
一例として、多段加熱段階(S330)では、ブランクが加熱炉内に定義された複数の区間(例えば、第1区間P1ないし第4区間P4)を通過して段階的に多段加熱されうる。また、均熱加熱段階(S340)では、第1区間P1ないし第4区間P4で多段加熱されたブランクが第5区間P5ないし第7区間P7で均熱加熱されうる。
【0091】
第1区間P1ないし第7区間P7は、順番通り、加熱炉内に配置されうる。第1温度範囲T1を有する第1区間P1は、ブランクが投入される加熱炉の入口と隣接し、第7温度範囲T7を有する第7区間P7は、ブランクが排出される加熱炉の出口と隣接することができる。したがって、第1温度範囲T1を有する第1区間P1が加熱炉の最初区間でもあり、第7温度範囲T7を有する第7区間P7が加熱炉の最後区間でもある。加熱炉の複数の区間において、第5区間P5、第6区間P6、及び第7区間P7は、多段加熱が遂行される区間ではない均熱加熱が遂行される区間でもある。
【0092】
加熱炉内に備えられた複数の区間の温度、例えば、第1区間P1ないし第7区間P7の温度は、ブランクが投入される加熱炉の入口からブランクが取り出される加熱炉の出口方向に増加する。但し、第5区間P5、第6区間P6及び第7区間P7の温度は、同一でもある。また、加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、互いに隣接した2つの区間間の温度差は、0℃より大きく、100℃以下でもある。例えば、第1区間P1と第2区間P2の温度差は、0℃より大きく、100℃以下でもある。
【0093】
一例として、第1区間P1の第1温度範囲T1は、820℃~860℃でもあり、835℃~865℃でもある。第2区間P2の第2温度範囲T2は、850℃~890℃でもあり、865℃~895℃でもある。第3区間P3の第3温度範囲T3は、880℃~920℃でもあり、895℃~925℃でもある。第4区間P4の第4温度範囲T4は、910℃~940℃でもあり、915℃~945℃でもある。第5区間P5の第5温度範囲T5は、Ac3~1,000℃でもある。望ましくは、第5区間P5の第5温度範囲T5は、930℃以上1,000℃以下でもある。さらに望ましくは、第5区間P5の第5温度範囲T5は、950℃以上1,000℃以下でもある。第6区間P6の第6温度範囲T6、及び第7区間P7の第7温度範囲T7は、第5区間P5の第5温度範囲T5と同一である。
【0094】
図8では、一実施例による加熱炉が互いに異なる温度範囲を有する7区間を備えていると図示されているが、本発明がそれに限定されるものではない。加熱炉内には、互いに異なる温度範囲を有する5個、6個、または8個などの区間が備えられうる。
【0095】
均熱加熱段階(S340)は、加熱炉の複数の区間のうち、最後の部分でなされうる。一例として、均熱加熱段階は、加熱炉の第5区間P5、第6区間P6、及び第7区間P7でなされうる。加熱炉内に複数の区間が備えられる場合、1つの区間の長さが長ければ、前記区間内で温度変化が生じるなどの問題点が存在しうる。したがって、均熱加熱段階が遂行される区間は、第5区間P5、第6区間P6、及び第7区間P7に区分されるが、前記第5区間P5、第6区間P6、及び前記第7区間P7は、加熱炉内において同じ温度範囲を有しうる。
【0096】
均熱加熱段階(S340)では、多段加熱されたブランクをAc3~1,000℃の温度で均熱加熱することができる。望ましくは、均熱加熱段階(S340)では、多段加熱されたブランクを930℃~1,000℃の温度で均熱加熱することができる。さらに望ましくは、均熱加熱段階(S340)では、多段加熱されたブランクを950℃~1,000℃の温度で均熱加熱することができる。
【0097】
一例として、ブランクが多段加熱される区間の長さD1とブランクが均熱加熱される区間の長さD2との比は、1:1~4:1でもある。さらに具体的に、ブランクが多段加熱される区間である第1区間P1ないし第4区間P4の長さの和とブランクが均熱加熱される区間である第5区間P5ないし第7区間P7の長さの和との比は、1:1~4:1を満足することができる。ブランクが均熱加熱される区間の長さが増加してブランクが多段加熱される区間の長さD1とブランクが均熱加熱される区間の長さD2との比が1:1を超過する場合、均熱加熱区間でオーステナイト(FCC)組織が生成されてブランク内への水素浸透量が増加し、遅延破断が増加しうる。また、ブランクが均熱加熱される区間の長さが減少し、ブランクが多段加熱される区間の長さD1とブランクが均熱加熱される区間の長さD2との比が4:1未満である場合、均熱加熱区間(時間)が十分に確保されず、ホットスタンピング部品の製造工程によって製造された部品の強度が不均一になる。
【0098】
一例として、加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、均熱加熱段階(S340)が遂行される区間の長さは、加熱炉の総長の20%~50%でもある。また、多段加熱段階(S330)、及び均熱加熱段階(S340)において、加熱炉内には、互いに異なる厚さを有する少なくとも2つのブランクが同時に移送されうる。
【0099】
一例として、ブランクは、加熱炉内で180秒~360秒間滞留する。すなわち、ブランクが多段加熱、及び均熱加熱される時間は、180秒~360秒でもある。ブランクの加熱炉内における滞留時間が180秒未満である場合、所望の均熱温度で十分に均熱され難い。また、ブランクの加熱炉内における滞留時間が360秒を超過する場合、ブランク内部に侵透する水素の量が増加して遅延破断の危険が高くなり、ホットスタンピング後の耐食性が低下しうる。
【0100】
一実施例において、移送段階(S350)は、加熱されたブランクを加熱炉からプレス金型に移送する段階でもある。この際、移送段階(S350)では、加熱されたブランクがプレス金型に移送されながら大気温度(または、常温)で冷却されうる。加熱されたブランクは、移送中、空冷されうる。加熱されたブランクが空冷されなければ、金型進入温度(例えば、成形開始温度)が高くなり、製造されたホットスタンピング部品の表面にシワ(または、屈曲)が発生しうる。また、冷媒使用時、後続工程(ホットスタンピング)に影響を与えうるので、移送中に加熱されたブランクが空冷されることが望ましい。
【0101】
形成段階(S360)は、移送されたブランクをホットスタンピングし、成形体を形成する段階である。冷却段階(S370)は、形成された成形体を冷却する段階である。
【0102】
プレス金型において、最終部品形状に成形すると共に、成形体を冷却して最終製品が形成されうる。プレス金型には、内部に冷媒が循環する冷却チャネルが備えられうる。プレス金型に備えられた冷却チャネルを介して供給される冷媒の循環によって加熱されたブランクを急冷させうる。この際、板材のスプリングバック(spring back)現象を防止すると共に、所望の形状を保持するためには、プレス金型を閉状態で加圧しながら、急冷を実施することができる。加熱されたブランクに対し、成形及び冷却操作を行うに当たって、マルテンサイト終了温度まで平均冷却速度を少なくとも10℃/s以上に冷却しうる。ブランクは、プレス金型内で3秒~20秒間保持されうる。プレス金型内の保持時間が3秒未満である場合、素材の冷却が十分になされず、残存熱による部位別の温度偏差によって脆化品質に影響を与えることができる。また、十分な量のマルテンサイトが生成されず、機械的物性が確保され得ない。一方、プレス金型内の保持時間が20秒を超過する場合、プレス金型内の保持時間が長くなって生産性が低下しうる。
【0103】
図9は、素材厚さによる空冷時間及び加熱温度による空冷時間を示す図面である。具体的に、
図9は、素材厚さによる最大許容空冷時間及び加熱温度による最大許容空冷時間を説明するために示すグラフである。
図9において、加熱温度が高いということは、加熱炉取り出し温度が高いということと理解されうる。
【0104】
図7及び
図9を参照すれば、同一素材の厚さで加熱温度が減少するほど、最大許容空冷時間が増加することを確認することができる。また、同一加熱温度で素材の厚さが増加するほど、最大許容空冷時間が増加することを確認することができる。
【0105】
加熱されたブランクが常温に過度に露出される場合、生産性が低下するだけではなく、空冷中にブランクで相変態が発生して成形性が低下し、所望の材質確保が困難である。一方、加熱されたブランクの常温露出時間が短い場合、過度に高い温度で成形が開始されて製造されたホットスタンピング部品にシワ(または、屈曲)が発生しうる。また、ブランクのメッキ層が金型に焼着されうる。したがって、移送段階(S350)での空冷時間を調節する必要がある。但し、移送段階(S350)での空冷時間を調節するためには、加熱温度及びブランクの厚さ(例えば、素材の厚さ)だけではなく、ブランクの成分、ブランクの厚さ、メッキ量及び表面放射率による熱伝導度、熱伝導率及び熱伝逹量、及びブランクの加熱炉取り出し温度と大気温度などの多様な変数を考慮せねばならない。
【0106】
そこで、本発明者は、過度な反復実験を経て空冷時間を容易に制御することができる数式2を導出した。一実施例において、移送段階(S350)でのブランクの空冷時間は、下記数式2を満足することができる。
【数4】
数式2において、λ
tは、空冷時間(s)、a
tは、加熱炉取り出し温度及び大気温度を考慮した補正係数、T
tは、加熱温度(℃)、b
tは、素材成分を考慮した補正係数、c
tは、高温素材厚さ敏感度を考慮した補正係数、tは、素材厚さ(mm)である。この際、素材は、ブランクを意味し、空冷時間の単位sは、秒を意味する。
【0107】
atは、加熱されたブランクの加熱炉取り出し温度及び大気温度を考慮した補正係数であって、約0.0160以上約0.0165以下の値を有しうる。この際、atは、s/(℃xmm)の単位を有しうる。
【0108】
btは、各素材が成分が互いに異なる場合を考慮したものであって、btは、素材成分を考慮した補正係数である。この際、btは、約10.0以上約0.5以下の値を有しうる。この際、btは、s/mmの単位を有しうる。
【0109】
また、素材の厚さによって素材内部から伝達される熱伝逹量が異なってもいる。ctは、高温での素材の厚さによる熱伝逹量差を考慮した補正係数であって、約0.7以上約0.9以下の値を有しうる。この際、高温は、600℃以上を意味することができる。但し、高温は、500℃以上を意味するか、700℃以上を意味する。
【0110】
加熱温度Ttは、均熱加熱段階(S340)の均熱加熱温度を意味し、加熱温度Ttは、約Ac3以上約1000℃以下の値を有しうる。この際、加熱温度Ttは、加熱炉取り出し温度を意味しうる。また、素材厚さtは、約1mm以上約2.6mm以下の値を有しうる。
【0111】
一実施例において、数式2による空冷時間λtは、約5s以上約20s以下でもある。空冷時間λtが5s未満である場合、ブランクの成形が開始される成形開始温度が過度に高く、ブランクの成形が高い温度で進められて製造されたホットスタンピング部品にシワ(または、屈曲)が発生し、設備上、5s未満の空冷時間λtを具現し難い。一方、空冷時間λtが20s超過である場合、生産性が低下し、かつ、ブランクが移送される過程でブランクで相変態が発生してブランクの成形性が低下し、製造されたホットスタンピング部品が所望の材質を有さない。したがって、空冷時間λtが約5s以上約20s以下の範囲を満足する場合、ブランクの成形性及び工程の生産性を向上させ、製造されたホットスタンピング部品が所望の材質を有するようにもできる。
【0112】
図10は、加熱段階(S310)が省略されたホットスタンピング部品の製造方法を用いて製造された部品の断面を示す図面である。
【0113】
図6及び
図10を参照すれば、加熱段階(S310)が含まれたホットスタンピング部品の製造方法を用いて製造されたホットスタンピング部品は、第2合金化層300を含み、第2合金化層300は、順次積層された第1層310、第2層320、及び第3層330を含む。この際、第1層310は、α-Feを含み、第2層320は、Fe
2Al
5を含み、第3層330は、FeAlを含むことができる。
【0114】
加熱段階(S310)が省略された製造方法を用いて製造されたホットスタンピング部品も第2合金化層300’を含む。加熱段階(S310)が省略された製造方法を用いて製造されたホットスタンピング部品の第2合金化層300’は、順次積層された第1層310’、第2層320’、第3層330’、及び第4層340’を含む。この際、第1層310’は、α-Feを含み、第2層320’は、Fe2Al5を含み、第3層330’は、FeAlを含み、第4層340’は、Fe2Al5を含む。
【0115】
加熱段階(S310)が含まれた製造方法を用いて製造されたホットスタンピング部品に含まれた第2合金化層300の最外郭層は、FeAl相であるが、加熱段階(S310)が省略された製造方法を用いて製造されたホットスタンピング部品に含まれた第2合金化層300’の最外郭層は、Fe2Al5相であることを確認することができる。
【0116】
したがって、多段加熱段階(S330)及び均熱加熱段階(S340)以前にブランクを予め加熱(加熱段階(S310))する場合、最終的なホットスタンピング部品に含まれた第2合金化層300には、Fe2Al5相が形成されないことを確認することができる。
【0117】
Fe2Al5相がFeAl相に比べてクラック発生頻度が高く、クラック伝播度が高いと知られている。一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法を通じて部品を製造する場合、第2合金化層300の最外郭に存在するFe2Al5相が消滅するので、クラックの発生頻度が低くなり、クラックの伝播が抑制され、製造された部品の耐剥離性が向上しうる。
【0118】
鋼板上にアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成されたブランクをホットスタンピング工程温度で加熱する時、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層の少なくとも一部が合金化層を形成することができずに残存し、液状のアルミニウム-シリコン(Al-Si)層が形成される場合が存在した。この際、液状のアルミニウム-シリコン(Al-Si)層は、合金化層に比べて水素拡散速度が速く、表面水素吸着力が強いので、液状のアルミニウム-シリコン(Al-Si)層を通じて鋼板内に水素が流入され、水素遅延破壊が発生する問題点が存在した。また、液状のアルミニウム-シリコン(Al-Si)層が金型に焼着されて生産性が低下する問題点が存在した。
【0119】
図11は、鉄(Fe)-アルミニウム(Al)状態図を示す図面である。
【0120】
図11を参照すれば、鉄(Fe)-アルミニウム(Al)状態図において、FeAl
3の溶融点は、約1160℃であり、Fe
2Al
5の溶融点は、約1169℃であることを確認することができる。したがって、FeAl合金を形成する場合、アルミニウム-シリコン(Al-Si)の溶融点(約660℃)より高い溶融点を有しうる。
【0121】
一例として、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を加熱(多段加熱及び均熱加熱)する前に、第1温度で第1時間の間、アルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成された鋼板を加熱することで、鋼板の少なくとも一部とアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層とが合金化されて第1合金化層が形成されうる。以後、前記第1合金化層が形成された鋼板を加熱(多段加熱及び均熱加熱)してホットスタンピング部品を製造することで、製造された部品の水素遅延破壊を防止または最小化し、同時に工程過程で金型焼着現象発生することを防止または最小化することができる。
【0122】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。下記の実施例は、本発明の範囲内で当業者によって適切に修正、変更されうる。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
表1は、鋼板の組成を示す表であり、表2は、実施例1、実施例2、及び比較例1ないし比較例9の加熱温度及び加熱時間を示す表であり、表3は、加熱炉の区間別に長さを示す表であり、表4は、区間別加熱炉設定温度及び加熱炉滞留時間を示す表である。
【0128】
表1の組成を有する鋼板上にアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が形成されたブランクを、表2の条件によって加熱した後、表3、及び表4の条件を満足する加熱炉内で前記加熱されたブランクを多段加熱及び均熱加熱してホットスタンピング部品を製造した。
【0129】
表2において、実施例1、及び実施例2は、加熱段階(S120、S310)の加熱温度、及び加熱時間を満足する場合に該当し、比較例1は、加熱段階(S120、S310)を遂行しない場合に該当し、比較例2、及び比較例3は、加熱段階(S120、S310)の加熱時間が満足されていない場合に該当し、比較例4ないし比較例6は、加熱段階(S120、S310)の加熱温度が満足されていない場合に該当する。
【0130】
実施例1及び実施例2のように、加熱段階(S120、S310)の加熱温度、及び加熱時間を満足する場合、鋼板の少なくとも一部と前記鋼板上に形成されたアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が合金化されて全体合金化層を形成することができる。
【0131】
但し、比較例1ないし比較例6のように、加熱段階(S120、S310)が省略されるか、加熱段階(S120、S310)の加熱温度、及び/または加熱時間を満足しない場合、鋼板上にアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が残存しうる。
【0132】
また、比較例7ないし比較例9は、加熱段階(S120、S310)の加熱時間を超過する場合に該当する。比較例7ないし比較例9の場合にも、鋼板の少なくとも一部と前記鋼板上に形成されたアルミニウム-シリコン(Al-Si)メッキ層が合金化されて全体合金化層を形成しうる。但し、比較例7ないし比較例9の場合、過度な加熱時間によって、ホットスタンピング部品の生産性が低下してしまう。
【0133】
<拡散性水素量及び水素遅延破壊評価>
実施例1、実施例2、及び比較例1ないし比較例9に対して加熱脱ガス分析(Thermal Desorption Spectroscopy)を実施した。さらに具体的に、20℃/minの加熱速度で常温から500℃まで昇温させつつ、350℃以下でホットスタンピング部品から放出される拡散性水素量を測定した。前記水素遅延破壊評価は、4点屈曲試験(4 point bending test)方法で遂行した。前記4点屈曲試験は、腐食環境に露出させた状態を再現して製造された試片の特定地点に弾性限界以下レベルの応力を加え、応力腐食クラックの発生有無を確認する試験方法である。この際、応力腐食クラックは、腐食と持続的な引っ張り応力が同時に作用するとき、発生するクラックを意味する。
【表5】
【0134】
表5は、実施例1、実施例2及び比較例1ないし比較例9から放出される拡散性水素量、及び水素遅延破壊評価結果を示す表である。
【0135】
表5を参照すれば、実施例1、及び実施例2から放出される拡散性水素量に比べて、比較例1から放出される拡散性水素量がさらに多いことを確認することができる。それを通じて、ホットスタンピング工程を遂行する前、加熱段階(S120、S310)を遂行する場合、外部から水素流入量が減少することが分かる。
【0136】
また、比較例2、及び比較例3(加熱時間を満足していない場合)から放出される拡散性水素量が実施例1及び実施例2から放出される拡散性水素量に比べて多いことを確認することができる。
【0137】
それだけではなく、比較例4、比較例5、及び比較例6(加熱温度を満足していない場合)から放出される拡散性水素量が実施例1及び実施例2から放出される拡散性水素量に比べて多いことを確認することができる。
【0138】
但し、比較例7、比較例8、及び比較例9(加熱温度は、満足するが、加熱時間が60min超過である場合)から放出される拡散性水素量は、実施例1及び実施例2から放出される拡散性水素量よりは多いが、比較例1ないし比較例6から放出される拡散性水素量よりは少ないことを確認することができる。
【0139】
それを通じて、ホットスタンピング工程を遂行する前、加熱段階(S120、S310)を遂行する場合、製造されたホットスタンピング部品から放出される拡散性水素量が減少するので、外部から水素流入量が減少することが分かる。
【0140】
但し、ホットスタンピング工程を遂行する前に、アルミニウム-シリコン(Al-Si)が形成された鋼板を第1温度で120分超過加熱する場合にも、製造されたホットスタンピング部品から放出される拡散性水素量が減少するが、加熱時間が120分を超過する場合、過度な加熱時間によってホットスタンピング部品の生産性が低下しうる。
【0141】
水素遅延破壊評価の結果、実施例1、実施例2、及び比較例7ないし比較例9の場合、破断が発生していないが、比較例1ないし比較例6の場合、破断が発生した。
【0142】
それを通じて、ホットスタンピング工程を遂行する前、加熱段階(S120、S310)を遂行する場合、外部から水素流入量が減少し、これにより、水素遅延破壊に対する抵抗性に優れたものと示された。したがって、ホットスタンピング工程を遂行する前、アルミニウム-シリコン(Al-Si)が形成された鋼板を第1温度で第1時間の間、加熱する場合、製造されたホットスタンピング部品の水素脆性が向上しうる。
【0143】
<耐剥離性評価>
実施例1、実施例2、及び比較例1ないし比較例6に対して耐剥離性評価を実施するために、ドリーテスト(dolly test)を通じて合金化層の接着力を測定した。前記接着力は、速度0.6MPa/s、剥離面積20pi、最大荷重24MPa、硬化温度120℃、及び硬化時間20分の条件で測定した。
【表6】
【0144】
表6は、実施例1、実施例2、及び比較例1ないし比較例6のドリーテスト結果を示す表である。
【0145】
表6を参照すれば、実施例1、及び実施例2の接着強度が比較例1ないし比較例6の接着強度に比べて大きいことを確認することができる。
【0146】
それを通じて、ホットスタンピング工程を遂行する前、加熱段階(S120、S310)が遂行されたホットスタンピング部品の耐剥離性が加熱段階(S120、S310)が省略されるか、加熱条件を満足していない加熱段階が遂行されたホットスタンピング部品の耐剥離性よりも大きいことが分かる。
【0147】
したがって、ホットスタンピング工程を遂行する前、加熱段階(S120、S310)が遂行される場合、製造されたホットスタンピング部品の耐剥離性が向上しうる。
【0148】
このように本発明は、図面に図示された一実施例に基づいて説明したが、これは、例示的なものに過ぎず、当該分野で通常の知識を有する者であれば、それらから、多様な変形及び実施例の変形が可能であるという点を理解するであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【符号の説明】
【0149】
100 鋼板
200 第1合金化層
300 第2合金化層
【手続補正書】
【提出日】2024-02-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキ層が形成された鋼板を第1温度で第1時間の間、加熱する段階と、
前記加熱された鋼板を裁断してブランクを形成する段階と、
前記ブランクを段階的に加熱する多段加熱段階と、
前記多段加熱されたブランクをAc3~1,000℃の温度で加熱する均熱加熱段階と、
前記均熱加熱されたブランクを加熱炉からプレス金型に移送する段階と、を含み、
前記第1温度は、540℃~600℃であり、
前記移送段階での前記ブランクの空冷時間は、下記数式を満足
し;
【数1】
(この際、λ
tは、空冷時間(s)、a
tは、
前記ブランクの加熱炉取り出し温度及び大気温度を考慮した補正係数、T
tは、
前記鋼板を加熱する加熱温度(℃)、b
tは、素材成分を考慮した補正係数、tは、素材厚さ(mm)、c
tは、高温素材厚さ敏感度を考慮した補正係数)
、
前記数式において、前記a
t
は、0.0160以上0.0165以下であり、T
t
は、Ac3以上1000℃以下であり、b
t
は、10以上0.5以下であり、tは、1mm以上2.6mm以下であり、c
t
は、0.7以上0.9以下であり、λ
t
は、5s以上20s以下である、ホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項2】
前記第1温度が540℃であるとき、前記第1時間は、60分以上である、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項3】
前記第1温度が600℃であるとき、前記第1時間は、10分以上である、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項4】
前記多段加熱段階及び前記均熱加熱段階は、
互いに異なる温度範囲を有する複数の区間を備えた加熱炉内でなされ、
前記多段加熱段階では、前記ブランクが前記複数の区間を通過し、
前記均熱加熱段階は、前記複数の区間のうちの少なくとも1つ以上で遂行される、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項5】
前記複数の区間において、前記ブランクを多段加熱する区間の長さと前記ブランクを均熱加熱する区間の長さとの比は、1:1~4:1を満足する、請求項4に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項6】
前記複数の区間の温度は、前記加熱炉の入口から前記加熱炉の出口方向に増加する、請求項4に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項7】
前記ブランクを多段加熱する区間のうち、互いに隣接した2つの区間間の温度差は、0℃より大きく、100℃以下である、請求項4に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項8】
前記複数の区間のうち、前記ブランクを均熱加熱する区間の温度が前記ブランクを多段加熱する区間の温度より高い、請求項4に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項9】
前記移送段階以後に、
前記移送されたブランクをホットスタンピングし、成形体を形成する段階と、
前記形成された成形体を冷却する段階と、をさらに含む、請求項1に記載のホットスタンピング部品の製造方法。