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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108013
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】繊維篩い出し装置
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/10 20060101AFI20240802BHJP
   B28C 5/40 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B28C7/10
B28C5/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012248
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臺 哲義
(72)【発明者】
【氏名】坂本 遼
(72)【発明者】
【氏名】小宮 克仁
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056AA11
4G056CB12
(57)【要約】
【課題】効率よく補強繊維塊を解繊して補強繊維を篩い出すことが可能な繊維篩い出し装置を提供する。
【解決手段】コンクリート補強繊維篩い出し装置1は、筐体2と、筐体2に回転可能に支持された回転体3と、回転体3の内部への補強繊維塊4の投入を可能にするべく回転3に設けられた投入口3aとを備える。回転体3の内部には、回転体3の回転に伴って補強繊維塊4を巻き上げる少なくとも1つの巻き上げ部31が設けられる。巻き上げ部31は回転体3の回転軸線Xの方向に延在する1つ以上の巻き上げ部材31cを含む。巻き上げ部材31cと回転体3の内周面との間には所定の間隙31zが形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートに混練されるべき補強繊維を篩い出すための繊維篩い出し装置であって、
筐体と、
前記筐体に回転可能に支持された籠様又は檻様の回転体と、
前記回転体の内部への補強繊維塊の投入を可能にするべく前記回転体に設けられた投入口と、
前記回転体の内部に設けられ、前記回転体の回転に伴って前記補強繊維塊を巻き上げる少なくとも1つの巻き上げ部と、
を有する繊維篩い出し装置。
【請求項2】
前記巻き上げ部は、前記回転体の内部において前記回転体の回転軸線の方向に延在するように設けられた少なくとも1つの巻き上げ部材を含み、
前記巻き上げ部材と前記回転体の内周面との間に所定の間隙が形成されている、請求項1に記載の繊維篩い出し装置。
【請求項3】
前記巻き上げ部が、互いに間隙を空けて配置された複数の前記巻き上げ部材を含む、請求項2に記載の繊維篩い出し装置。
【請求項4】
複数の前記巻き上げ部が、前記回転体の周方向に間隔を空けて配置されている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の繊維篩い出し装置。
【請求項5】
前記回転体における回転軸線方向の一端側に前記投入口が設けられている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の繊維篩い出し装置。
【請求項6】
前記回転体の回転軸線が水平を向き、
前記筐体が、前記投入口から前記回転体の内部に投入される前記補強繊維塊を案内するシュートを備え、
前記シュートの一方の開口である導入口が上方を向いている、請求項5に記載の繊維篩い出し装置。
【請求項7】
前記回転体に設けられ、前記回転体の前記内周面に対する前記巻き上げ部材の径方向位置を変更可能に、前記巻き上げ部材を支持するアジャスタ機構を更に有する、請求項2又は請求項3に記載の繊維篩い出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやモルタル等の混練プロセスにおいて補強繊維の塊を解繊したうえで篩い出す、繊維篩い出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、補強繊維の塊(以後、補強繊維塊という)を解繊したうえで篩い出す技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このコンクリート補強用短繊維供給装置(以後、単に短繊維供給装置という)は、補強繊維塊を受容する回転可能に支持された籠状回転体を備え、籠状回転体を回転させることにより補強繊維塊を解繊する。解繊されて籠状回転体から繰り出された短繊維は、空気輸送によって混練中のコンクリート(コンクリートミキサー車内)に分散状に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-101521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、繊維状の物体は重量に対する表面積が大きいことから、摩擦力により繊維相互の移動が阻害されやすいという性質があり、繊維の集合体も圧縮力が印加されると自らの纏まりを維持するように振る舞う性質がある。従来の短繊維供給装置では、仮に籠状回転体を回転させたとしても、補強繊維塊は回転しながら籠状回転体の内周面の最下部近傍に留まり続けるため、自重による圧縮力を受け続けた補強繊維塊には自らの纏まりを維持する性質が強く作用し続ける。それゆえ、補強繊維塊の解繊処理や解繊されるべき繊維の篩い出し処理の効率低下を招くという課題があった。
【0005】
また、従来の短繊維供給装置においては、籠状回転体の周面に蓋が設けられ、蓋を開扉することにより供給用開口部が形成されるように構成されている。したがって、補強繊維塊を籠状回転体に投入する際には籠状回転体を停止させる必要がある。加えて、この装置はその構成上、補強繊維塊を籠状回転体に投入する際には蓋が籠状回転体の上方に向けて開扉できるような回転角度位置に存在していなければならない。したがって、籠状回転体を停止する度にその回転角度位置合わせのための処理が必要になる。
【0006】
本発明は以上の背景に鑑み、効率よく補強繊維塊を解繊して解繊された補強繊維を篩い出すことが可能な繊維篩い出し装置を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、コンクリートに混練されるべき補強繊維を篩い出すための繊維篩い出し装置(1)であって、筐体(2)と、前記筐体に回転可能に支持された籠様又は檻様の回転体(3)と、前記回転体の内部への補強繊維塊(4)の投入を可能にするべく前記回転体に設けられた投入口(3a)と、前記回転体の内部に設けられ、前記回転体の回転に伴って前記補強繊維塊を巻き上げる少なくとも1つの巻き上げ部(31)と、を有する。
【0008】
この態様によれば、回転体を回転駆動することにより、回転体の内部に設けられた巻き上げ部が当該内部を周回するように移動する。このとき、巻き上げ部は周回の方向に対する補強繊維塊の位置規制効果を有し、当該効果は回転体の内部における高位置(即ち補強繊維塊の落下方向と逆方向の位置)に向けて補強繊維塊を巻き上げるように作用する。高位置から落下し回転体の内周面に衝突することにより、補強繊維塊の解繊作用が促進される。結果として、籠様又は檻様をなす回転体の内部から繊維を効率的に篩い出すことができる。
【0009】
上記の態様において、前記巻き上げ部(31)は、前記回転体(3)の内部において前記回転体の回転軸線(X)の方向に延在するように設けられた少なくとも1つの巻き上げ部材(31c)を含み、前記巻き上げ部材と前記回転体の内周面との間に所定の間隙(31z)が形成されていてもよい。
【0010】
この態様によれば、巻き上げ部を構成する巻き上げ部材と回転体の内周面との間には間隙が形成され、当該間隙を通過するようにして補強繊維塊の一部の脱落が許容される。これにより、補強繊維塊の解繊作用がより促進され、回転体の内部から繊維をより効率的に篩い出すことができる。
【0011】
また、上記態様において、前記巻き上げ部(31)が、互いに間隙(31x、31y)を空けて配置された複数の前記巻き上げ部材(31a、31b、31c)を含んでいてもよい。
【0012】
この態様によれば、複数の巻き上げ部材どうしの間に形成される間隙が補強繊維塊のうち余剰な部分を巻き上げ部から脱落させたうえで、巻き上げ部が適切な規模の繊維塊を巻き上げるように作用する。巻き上げ部材と間隙とによる補強繊維塊の解繊作用を維持しながらも単位時間あたりに巻き上げられる量(即ち処理能力)が向上し、結果として、籠様又は檻様をなす回転体の内部から繊維をより効率的に篩い出すことができる。
【0013】
また、上記態様において、複数の前記巻き上げ部(31)が、前記回転体の周方向に間隔を空けて配置されていてもよい。
【0014】
この態様によれば、回転体における単位回転数あたりの補強繊維塊の巻き上げ頻度及び落下頻度を増加させることができる。結果として、籠様又は檻様をなす回転体の内部から繊維をより安定的に篩い出すことができる。
【0015】
上記態様において、前記補強繊維塊を投入するための前記投入口(3a)は前記回転体(3)の任意の箇所に設けてよく、例えば、前記回転体における回転軸線方向の一端側(3c)に前記投入口を設けることができる。
【0016】
この態様によれば、回転体がどのような回転角度位置で停止しようとも投入口の回転角度位置は殆ど変化しない。このため、補強繊維塊を回転体に投入する際に回転体の回転角度位置合わせをする必要がなく、回転体を停止させる必要もない。結果として、解繊された繊維を連続的かつより安定的に供給することができる。
【0017】
また、上記態様において、前記回転体(3)の回転軸線(X)が水平を向き、前記筐体(2)が、前記投入口(3a)から前記回転体の内部に投入される前記補強繊維塊を案内するシュート(24)を備え、前記シュートの一方の開口である導入口(24a)が上方を向くように構成してもよい。
【0018】
この態様によれば、回転体の内周近傍に設けられた巻き上げ部の周回移動により、補強繊維塊を効率よく巻き上げて高位置に到達させることができる。また、投入口から回転体の内部に投入される補強繊維塊を案内するシュートの導入口が上方を向いているため、作業者が補強繊維塊を投入しやすい。
【0019】
また、上記態様において、当該繊維篩い出し装置(1)は、前記回転体(3)に設けられ、前記回転体の前記内周面に対する前記巻き上げ部材(31a、31b、31c)の径方向位置を変更可能に、前記巻き上げ部材を支持するアジャスタ機構(43)を更に有してもよい。
【0020】
この態様によれば、当該装置の作業者らが適宜、回転体の内周面に対する巻き上げ部材の位置を変化させて互いの間隔を調整し、同様に、複数の巻き上げ部材の相対位置を変化させて互いの間隔を調整することができる。
【0021】
また、上記課題を解決するために本発明の他の態様は、コンクリートに混練されるべき補強繊維を解繊して篩い出すための繊維篩い出しユニット(50)であって、上記態様の繊維篩い出し装置(1)と、前記繊維篩い出し装置をコンクリート混練機(60)に組み込む組込手段(22、56)とを有する。
【0022】
この態様によれば、篩い出された繊維をコンクリート混練機に迅速に供給できるため、繊維補強コンクリートの混練時間を短縮することができる。
【0023】
上記態様において、前記組込手段が、前記繊維篩い出し装置(1)を前記コンクリート混練機の上方に固定するための固定手段を備えていてよい。繊維篩い出し装置から篩い出された繊維は直下に落下するようにしてコンクリート混練機の混練槽に供給されるとよい。一方、前記組込手段が、前記繊維篩い出し装置を移動可能にする移動手段(22)と、前記繊維篩い出し装置を案内する案内手段(56)とを備えていてもよい。
【0024】
例えば、前記移動手段は、前記繊維篩い出し装置の水平方向移動を可能にするべく前記繊維篩い出し装置に設けられた車輪(22)を備えるとよい。コンクリート混練機(60)における混練投入口(Z)が前記繊維篩い出し装置よりも幅広に形成され、更に混練投入口が材料の通過を許容するグレーチングにより閉鎖されている場合、繊維篩い出し装置が直接グレーチングの上面に乗り上げるのは容易ではない。そこで、混練投入口の上方への繊維篩い出し装置の乗り入れを容易にするべく、前記案内手段は、前記コンクリート混練機の混練投入口に配置されて繊維篩い出し装置の水平方向移動を案内するレール(56)を備えるとよい。
【0025】
投入経路が共通化されること(補強繊維とその他の材料とが同一の混練投入口から投入されること)が予定されている場合には、繊維篩い出し装置が混練投入口の上方に居据わるとその他の材料の供給プロセスが阻害され不都合である。車輪とレールとを備える上記態様によれば、繊維篩い出し装置を混練投入口の上方へ配置して補強繊維供給プロセスを推進することが容易であり、同時に、繊維篩い出し装置を混練投入口から退避させ、その他の材料の供給プロセスのために混練投入口を開放することが容易である。
【0026】
なお、上記構成の繊維篩い出しユニットにおいて、前記案内手段は前記コンクリート混練機に固定されていてもよい。反対に、前記案内手段は前記コンクリート混練機に着脱可能に構成されていてもよい。前記案内手段は、例えば、前記繊維篩い出し装置の退避が完了した後、混練投入口から離脱できるように構成されたレールであってもよい。
【0027】
また、本発明による繊維篩い出しユニットは必ずしもコンクリート混練機の上方に組み込まれる必要はない。例えば、前記繊維篩い出し装置から篩い出された補強繊維がベルトコンベアや空気輸送装置等の輸送手段によって水平方向の離れた位置に輸送され、当該輸送手段からコンクリート混練機に供給されるように、繊維篩い出しユニットが構成されてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、効率よく補強繊維塊を解繊して補強繊維を篩い出すことが可能な繊維篩い出し装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る繊維篩い出し装置の部分断面斜視図
図2】(A)回転体の内部に補強繊維塊を収容した状態、(B)補強繊維塊を巻き上げた状態、(C)補強繊維塊を落下分散させた状態の各状態の繊維篩い出し装置を模式的に示す断面図
図3図1に示す回転体を別の角度から示す斜視図
図4】本発明に係る繊維篩い出しユニットの使用状態を示す部分断面斜視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る繊維篩い出し装置1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係る繊維篩い出し装置1の部分断面斜視図である。繊維篩い出し装置1は、コンクリートの混練プロセスにおいて補強繊維の塊を解繊したうえで篩い出すための装置である。
【0031】
繊維篩い出し装置1は筐体2を備え、筐体2は骨格を形成するフレーム2aを備えている。フレーム2aには複数の支持ローラ21が回転可能に支持されている。本実施形態では、フレーム2aは直方体形状をしており、フレーム2aの8つの角部に8つの支持ローラ21が取り付けられている。支持ローラ21は、水平方向を向いた互いに平行な回転軸を有しており、筐体2の内部に配置された回転体3を協働して回転可能に支持する。回転体3は、軸線を横向きにした円筒形状をしており、軸線方向の両端に支持リング3fを有している。回転体3は、両支持リング3fを取り囲むように周方向に離間して配置された複数の支持ローラ21によって支持されることにより、支持ローラ21の回転軸に平行な水平方向を向く回転軸線Xまわりに回転可能になっている。
【0032】
回転体3の軸線方向の両端には円形の第1端壁3c及び第2端壁3dが設けられている。第1端壁3cには円形開口からなる投入口3aが形成されている。第2端壁3dの外面には回転体3を回転駆動する駆動手段として手回しハンドル32(図2参照)が設けられている。第1端壁3cの外縁及び第2端壁3dの外縁は、対応する支持リング3fの内面に固定されている。両支持リング3fは、周方向に離間して配置されて回転軸線Xの方向に延在する複数の補強ブリッジ3eによって互いに連結されている。第1端壁3c、第2端壁3d、支持リング3f及び補強ブリッジ3eにより、回転体3の骨格が形成される。回転体3の周面における補強ブリッジ3e間には、篩い出し格子3bが設けられている。
【0033】
第1端壁3cは回転体3における回転軸線方向の一方側の端壁を形成し、第2端壁3dは回転体3における回転軸線方向の他方側の端壁を形成し、投入口3aは回転軸線X軸上に配置されている。回転体3の内部において回転軸線X上にはシャフト等の骨格部材は存在せず、回転体3の内部には円柱様の空間が形成されている。
【0034】
篩い出し格子3bは、回転体3の内部と外部とを連通させる所定寸法の方形の篩い出し窓を多数形成する網状の格子であり、投入口3aより投入された補強繊維塊4を保持する一方、解繊された補強繊維を回転体3の外部へ篩い出す。
【0035】
筐体2は重力落下方向である図中下方向を向く下面を除く全方向を向く面(5面)に遮蔽壁23を備え、回転体3から篩い出される補強繊維の外方への飛散を阻止する。
【0036】
加えて、筐体2は投入口3aに貫入するシュート24を備えている。シュート24はダクト様の形状をなし、一方の開口である導入口24aは回転体3の外部にあって上方を向き、他方の開口である導出口24bは回転体3の内部にあって下方を向いている。これにより、作業者が補強繊維塊4を回転体3の内部に投入することが容易になっている。導入口24aの上方から投入された補強繊維塊4は、傾斜を有するシュート24の滑落路24cを滑落するように移動した後、導出口24bから排出され、回転体3の内部に供給される。
【0037】
また、回転体3の内部であって回転体3の内周面に近接する部分には巻き上げ部31が形成されている。ここで、篩い出し格子3bと補強ブリッジ3eとによる環状の構造を「回転体3の周」と定義するものとし、その内側の面を「回転体3の内周面」と表現する。巻き上げ部31は、3つの棒様の巻き上げ部材31a、31b、31cによって構成される。巻き上げ部材31a、31b、31cは、回転軸線Xの方向に沿って延在するとともに回転体3の径方向に沿って直線上に整列し、その両端は第1端壁3cと第2端壁3dに接合されている。なお、4つの巻き上げ部31が回転体3の周に沿った等間隔位置(90°間隔)に設けられている。
【0038】
更に、巻き上げ部材31aと巻き上げ部材31bとの間には間隙31xが、巻き上げ部材31bと巻き上げ部材31cとの間には間隙31yが、巻き上げ部材31cと回転体3の内周面との間には間隙31zがそれぞれ形成されている。これらの間隙31x、31y、31zは補強繊維の通過を許容する。本発明による繊維篩い出し装置1は以上のように構成されている。
【0039】
次に、同構成の繊維篩い出し装置1の動作について説明する。図2は繊維篩い出し装置1における回転軸線Xと垂直をなす断面を示す模式図である。図2(A)は、回転体3の内部に補強繊維塊4を収容した状態の繊維篩い出し装置1を模式的に示す断面図である。図2(B)は、補強繊維塊4を巻き上げた状態の繊維篩い出し装置1を模式的に示す断面図である。図2(C)は、補強繊維塊4を落下分散させた状態の繊維篩い出し装置1を模式的に示す断面図である。図2(A)、図2(B)及び図2(C)はともに、投入口3a側から繊維篩い出し装置1を視た断面図である。
【0040】
図2(A)に示すように、シュート24(図1)に案内されて投入口3a(図1)から回転体3の内部に投入された補強繊維塊4は、水平を向く回転軸線Xを有する回転体3の内周面のうち低位置にある部分に保持される。
【0041】
回転体3の周の大部分は、回転体3の内部と外部とを連通させる所定寸法の方形の篩い出し窓を多数形成する網状の格子からなる篩い出し格子3bによって構成されている。そのため、篩い出し窓の寸法よりも十分に小さい補強繊維は篩い出し窓を通過して回転体3の外方に離脱することが許容される。その一方で、前述のとおり自重による圧縮力を受ける補強繊維塊4には自らの纏まりを維持する性質が強く働くため、下敷きにされた補強繊維塊4における回転体3の内周面に近接する部分が、自らバリケートの如き阻止要素として振る舞うようになる。このため、回転体3を停止させ補強繊維塊4が静止した状況下では補強繊維塊4の解繊がなされず、これを篩い出すことができない。
【0042】
手回しハンドル32を旋回させて回転体3を回転駆動すると、図2(A)の時点で低位置(即ち図中下方)に存在していた巻き上げ部31が、図2(B)に示すように、手回しハンドル32の旋回方向と同一の方向に向けて周回移動する。このとき、補強繊維塊4に対する巻き上げ部材31a、31b、31cが有する位置規制効果によって、補強繊維塊4の一部が高位置に巻き上げられて、補強繊維塊4は残留繊維群4aと巻き上げ繊維群4cとに分断される。
【0043】
なお、回転体3が水平を向く回転軸線Xを有することにより、巻き上げ部31の周回移動によって補強繊維塊4が効率よく巻き上げられて高位置に到達する。
【0044】
上記のように、巻き上げ部材31aと巻き上げ部材31bとの間には間隙31xが、巻き上げ部材31bと巻き上げ部材31cとの間には間隙31yが、巻き上げ部材31cと回転体3の内周面との間には間隙31zが形成されている。この構造により、巻き上げ繊維群4cにおける間隙31x、31y、31zの近傍部分が下方に脱落する(脱落繊維群4b)。巻き上げ部材31a、31b、31cによって巻き上げられ、間隙31x、31y、31zによって適切に間引かれた巻き上げ繊維群4cは「補強繊維塊4が本来持っていた自らの纏まりを維持する性質」が弱められ、解繊が容易な状態になる。
【0045】
続けて回転体3を回転駆動すると、図2(B)の時点で中位置に存在していた巻き上げ部31が更に周回移動して、図2(C)に示すように、回転体3の内部における高位置(即ち図中上方)に到達する。このとき、巻き上げ部31に巻き上げられた巻き上げ繊維群4cは自重を受けて巻き上げ部31から離脱し、一部が分散しながら落下して解繊される(落下分散繊維4d)。低位置に落下し、回転体3の内周面に補強繊維塊4が衝突することにより、補強繊維塊4の解繊作用が促進される。解繊された繊維は篩い出し格子3bを容易に通過する(篩い出し繊維4e)。結果として、繊維が回転体3の内部から効率的に篩い出され、篩い出し口Yから分散した状態で落下する。
【0046】
回転体3には周方向に間隔を空けて4つの巻き上げ部31が備えられているため、回転体3を回転駆動すると上記プロセスが連続的に繰り返される。即ち、回転体3における単位回転数あたりの補強繊維塊4の巻き上げ頻度及び落下頻度が増加する。結果として、篩い出し繊維4eを篩い出し口Yから安定的に供給することができる。
【0047】
巻き上げ部材31cと回転体3の内周面との間に適切な間隙31zが設けられていない場合には、巻き上げ部材31cと回転体3の内周面とによる幅広なリフト部が形成される。補強繊維塊4の解繊はままならず、補強繊維塊4は大きな規模のまま回転体3の内部の高位置に巻き上げられた後、回転体3の内周面における低部分に落下する。自重による圧縮力を受ける繊維塊には自らの纏まりを維持する性質が強く働くのは前述のとおりである。大きな規模の補強繊維塊4が回転体3の内周面における低部分に衝突すると、効果的な解繊がなされず繊維の篩い出し作用が阻害される虞がある。
【0048】
本実施形態では、巻き上げ部材31cと回転体3の内周面との間隙31zが補強繊維塊4のうちの一部の巻き上げ部31からの脱落を許容し、巻き上げ部31が適切な規模の補強繊維塊4を巻き上げるように作用する。結果として、補強繊維塊4の解繊作用がより促進され、籠様又は檻様をなす回転体3の内部から繊維がより効率的に篩い出される。
【0049】
同様に、複数の巻き上げ部材31a、31b、31cどうしの間に適切な間隙31x、31y、31zが設けられていない場合には、複数の当該部材相互による幅広なリフト部が形成される。補強繊維塊4の解繊はままならず、補強繊維塊4は大きな規模のまま回転体3の内部の高位置に巻き上げられた後、同内部の低位置に落下する。大きな規模の補強繊維塊4が回転体3の内周面における低部分に衝突すると、効果的な解繊がなされず繊維の篩い出し作用が阻害される虞がある。
【0050】
本実施形態では、複数の巻き上げ部材31a、31b、31cどうしの間に形成される間隙31x、31yが補強繊維塊4のうちの一部を巻き上げ部31から脱落させたうえで、巻き上げ部31が適切な規模の補強繊維塊4を巻き上げるように作用する。巻き上げ部材31a、31b、31cと間隙31x、31yとによる補強繊維塊4の解繊作用が維持されながらも単位時間あたりに巻き上げられる量(即ち処理能力)が向上し、結果として、籠様又は檻様をなす回転体3の内部から繊維がより効率的に篩い出される。
【0051】
上記のように投入口3aは回転体3における回転軸線X方向の一端側に設けられているため、回転体3がどのような回転角度位置で停止しようとも投入口3aの回転角度位置は殆ど変化しない。このため、補強繊維塊4を回転体3に投入する際に回転体3の回転角度位置合わせをする必要がなく、回転体3を停止させる必要もない。結果として、解繊された繊維を連続的かつより安定的に供給することができる。
【0052】
次に、回転体3に設けられた巻き上げ部31についてより詳細に説明する。図3は、本発明による繊維篩い出し装置1における回転体3を図1とは別の角度から示す斜視図である。なお、図3においては、ハンドル32は図示省略されている。
【0053】
回転体3の第1端壁3cは複数の長孔41cを備えている。巻き上げ部材31a、31b、31cの第1端壁3cに近接する側の端部は、雄ねじを形成され、長孔41cに貫入されている。この雄ねじに螺合する一対の締結ナット42cが第1端壁3cを表裏から挟み込むように締め込まれることにより、巻き上げ部材31a、31b、31cの一方の端部が第1端壁3cに接合される。
【0054】
同様に、回転体3の第2端壁3dは複数の長孔41dを備えている。巻き上げ部材31a、31b、31cの第2端壁3dに近接する側の端部は、雄ねじを形成され、長孔41dに貫入されている。この雄ねじに螺合する一対の締結ナット42dが第2端壁3dを表裏から挟み込むように締め込まれことにより、巻き上げ部材31a、31b、31cの他方の端部が第2端壁3dに接合される。
【0055】
なお、回転体3における巻き上げ部31は形態変化可能に構成されている。具体的には、締結ナット42c、42dを螺緩させることで長孔41c、41dの延在方向に沿って巻き上げ部材31a、31b、31cが移動可能になる。巻き上げ部材31a、31b、31cの移動後、再度締結ナット42c、42dを締め込むことにより、巻き上げ部材31a、31b、31cが固定される。このようにして、巻き上げ部材31a、31b、31cをそれぞれ任意の位置で固定し、巻き上げ部材31a、31b、31cの相対位置や、間隙31x、31y、31zの間隔を調整することができる。即ち、これらの長孔41c、41d及び締結ナット42c、42dにより、巻き上げ部材31a、31b、31cを、それらの径方向位置を変更可能に支持するアジャスタ機構43が構成される。
【0056】
このように繊維篩い出し装置1がアジャスタ機構43を有することにより、装置の作業者らは適宜、回転体3の内周面に対する巻き上げ部材31cの位置を変化させて互いの間隔(間隙31z)を調整することができる。同様に作業者らは、複数の巻き上げ部材31a、31b、31cの相対位置を変化させて互いの間隔(間隙31x、31y)を調整することができる。
【0057】
コンクリート等の混練プロセスにおいて鋼繊維や有機繊維、カーボン繊維等、多様な材質の繊維が用いられ得る。本発明による繊維篩い出し装置1が扱える繊維は限定されるものではない。ただし、繊維の材質や形状によって好適な解繊の条件は都度異なる。本発明による回転体3は、自身の内周面と巻き上げ部材31cとによる間隔(間隙31z)や、巻き上げ部材31a、31b、31cどうしの間隔(間隙31x、31y)がアジャスタ機構43によって調整可能である。そのため、都度好適な解繊の条件に合致するよう巻き上げ部31を形態変化させたうえで篩い出しプロセスを行うことができる。
【0058】
次に、図4を参照して、実施形態に係る繊維篩い出しユニット50について詳細に説明する。図4は、本発明に係る繊維篩い出しユニット50の使用状態を示す部分断面斜視図である。
【0059】
繊維篩い出しユニット50は上記構成の繊維篩い出し装置1とレール56とを備える。また繊維篩い出し装置1は原動機55を更に備えている。原動機55は支持ローラ21のうちのいずれかを回転駆動するように筐体2に取り付けられる。支持ローラ21が原動機55によって回転駆動されると、これに転接する支持リング3fを有する回転体3が回転軸線Xまわりに回転駆動される。即ち、繊維篩い出し装置1は、作業者による回転駆動手段と、他の動力による回転駆動手段とを備えている。
【0060】
繊維篩い出し装置1は水平方向移動を可能にする車輪22を更に備え、コンクリート混練機60における混練投入口Zの上方への乗り入れが可能になっている。車輪22には図示しないストッパが設けられている。車輪22は、繊維篩い出し装置1を移動可能にする移動手段であり、ストッパは、繊維篩い出し装置1をコンクリート混練機60の上方に固定するための固定手段である。
【0061】
混練投入口Zは繊維篩い出し装置1よりも幅広に形成され、混練材料の通過を許容するグレーチング61により閉鎖されている。繊維篩い出し装置1がグレーチング61の上面を走行することは容易ではない。そこで本実施形態では、混練投入口Zの上方に配置されるレール56が用いられる。レール56の重量は、コンクリート混練機60の上方で作業員が配置・撤去可能な程度に設定されている。図示の例では、レール56は混練投入口Zに橋渡しできる長さを有している。レール56が混練投入口Zの上方に配置され、繊維篩い出し装置1がレール56の軌道部56aを走行可能に構成されることにより、繊維篩い出し装置1の混練投入口Zの上方への乗り入れが可能になる。
【0062】
一対の軌道部56aは延在方向に離間する適所で連結部56cによって連結されており、全長にわたって一定の軌道幅を有している。軌道部56aの外縁部には、案内部56bが上方に向けて立設されている。案内部56bは、車輪22が軌道部56aの延在方向以外の方向に走行することを規制する。これにより、繊維篩い出し装置1がレール56から脱落することなく移動する。
【0063】
コンクリート混練機60における混練投入口Zは共通化されており、補強繊維及びその他の混練材料はともに共通投入口である混練投入口Zから投入される。したがって、繊維篩い出しユニット50が混練投入口Zの上方に居据わると、その他の混練材料の供給プロセスが阻害され不都合である。本実施形態では、繊維篩い出しユニット50がレール56を備え、補強繊維の供給プロセスに際して作業員が混練投入口Zの上方にレール56を配置することで繊維篩い出し装置1の混練投入口Zの上方への乗り入れが可能になる。また、作業員が繊維篩い出し装置1を混練投入口Zの上方から退避させた後、混練投入口Zの上方からレール56を除去することで、混練投入口Zが開放される。そのため、その他の材料の供給プロセスが阻害されない。
【0064】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。
【0065】
例えば、巻き上げ部材31cと回転体3の内周面との間隙31zは巻き上げ部材31cの延在方向に沿って必ずしも一様に形成される必要はない。間隙31zは、例えば、一端側において狭小に形成される一方で他端側において広大に形成されてもよく、間隙31zの条件は任意に設定することができる。
【0066】
巻き上げ部31を構成する複数の巻き上げ部材31a、31b、31cは、必ずしも規則的な相互位置関係性を有して配置される必要はない。図1に示す繊維篩い出し装置1の巻き上げ部31のように、巻き上げ部材31a・31b・31cは、回転体3の径方向に向けて直線上に整列するよう配置されていてもよい。一方、巻き上げ部材31a・31b・31cは、例えば回転体3に対する不規則な回転角度位置関係性を有するように配置されていてもよい。また、巻き上げ部材31a・31b・31cは不等間隔に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 :繊維篩い出し装置
2 :筐体
3 :回転体
3a :投入口
3b :篩い出し格子
3c :第1端壁
3d :第2端壁
4 :補強繊維塊
22 :車輪
24 :シュート
24a :導入口
24b :導出口
31 :巻き上げ部
31a :巻き上げ部材
31b :巻き上げ部材
31c :巻き上げ部材
31x :間隙
31y :間隙
31z :間隙
43 :アジャスタ機構
50 :繊維篩い出しユニット
56 :レール
60 :コンクリート混練機
X :回転軸線
Z :混練投入口
図1
図2
図3
図4