(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108014
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】眼科装置、眼科装置の制御方法、眼科撮影方法、プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 3/12 20060101AFI20240802BHJP
A61B 3/14 20060101ALI20240802BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20240802BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20240802BHJP
【FI】
A61B3/12
A61B3/14
G02B7/28 H
G03B13/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012255
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】山部 将
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏太
(72)【発明者】
【氏名】松井 拓也
【テーマコード(参考)】
2H011
2H151
4C316
【Fターム(参考)】
2H011BB03
2H151AA15
2H151BA25
2H151BA33
2H151CC07
4C316AA09
4C316AB11
4C316AB16
4C316FA08
4C316FA18
4C316FB06
4C316FY02
4C316FY04
4C316FY06
4C316FY08
4C316FY09
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】スリットスキャン型の眼科装置によって取得される画像の輝度ムラの問題を解消する。
【解決手段】実施形態の眼科装置の撮影部は、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニットを含む。プロセッサは、第1の撮影制御と撮影条件決定処理と第2の撮影制御とを実行する。第1の撮影制御では、プロセッサは、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように撮影ユニットを制御する。撮影条件決定処理では、プロセッサは、第1の撮影制御で生成された2つ以上の画像に基づき撮影条件を決定する。第2の撮影制御では、プロセッサは、撮影条件決定処理で決定された撮影条件に基づいて被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するように撮影部を制御する。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニットを含む撮影部と、
プロセッサと
を含み、
前記プロセッサは、
前記被検眼の前記眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように前記撮影ユニットを制御する第1の撮影制御と、
前記第1の撮影制御により生成された前記2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する撮影条件決定処理と、
前記撮影条件決定処理により決定された前記撮影条件に基づいて前記被検眼の前記眼底に前記スリットスキャン撮影を適用するように前記撮影部を制御する第2の撮影制御と
を実行する、
眼科装置。
【請求項2】
前記撮影ユニットは、前記被検眼の前記眼底における一連の領域に対する前記スリット光の順次的な投射と前記一連の領域の順次的な撮影との組み合わせによって前記スリットスキャン撮影を実行し、
前記プロセッサは、前記一連の領域に対する前記スリット光の投射強度が等しくなるように前記第2の撮影制御を実行する、
請求項1の眼科装置。
【請求項3】
前記撮影ユニットは、光源を含み、前記光源により発生された光から前記スリット光を生成し、
前記プロセッサは、前記第2の撮影制御において、前記光源の制御を実行する、
請求項2の眼科装置。
【請求項4】
前記撮影部は、前記撮影ユニットのフォーカス調整を行うためのフォーカス調整ユニットを更に含み、
前記プロセッサは、前記第2の撮影制御において、前記フォーカス調整ユニットの制御を実行する、
請求項2又は3の眼科装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記撮影条件決定処理を実行する条件決定部と、
前記第2の撮影制御を実行する撮影制御部と
を含み、
前記条件決定部は、
前記第1の撮影制御により生成された前記2つ以上の画像に基づいて、前記被検眼の前記眼底における前記2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の値を算出する算出処理部と、
前記算出処理部により算出された前記2つ以上の値に基づいて前記撮影条件を決定する決定処理部と
を含み、
前記撮影制御部は、前記決定処理部により決定された前記撮影条件に基づいて前記第2の撮影制御を実行する、
請求項1の眼科装置。
【請求項6】
前記撮影ユニットは、前記被検眼の前記眼底における一連の領域に対する前記スリット光の順次的な投射と前記一連の領域の順次的な撮影との組み合わせによって前記スリットスキャン撮影を実行し、
前記条件決定部は、前記一連の領域に対する前記スリット光の投射強度が等しくなるように前記撮影条件を決定し、
前記撮影制御部は、前記第2の撮影制御において、前記順次的な投射と前記順次的な撮影との前記組み合わせのための前記撮影ユニットの制御と並行して、前記撮影条件に基づく前記撮影部の制御を実行する、
請求項5の眼科装置。
【請求項7】
前記決定処理部は、前記算出処理部により算出された前記2つ以上の値に基づいて、前記被検眼の前記眼底における前記一連の領域にそれぞれ対応する一連の値を含む前記撮影条件を求める、
請求項6の眼科装置。
【請求項8】
前記一連の値を含む前記撮影条件は、連続的情報及び離散的情報のいずれかを含む、
請求項7の眼科装置。
【請求項9】
前記決定処理部は、前記算出処理部により算出された前記2つ以上の値に内挿、外挿、及び回帰分析のうちの1つ以上の演算を適用することによって前記撮影条件を求める、
請求項7又は8の眼科装置。
【請求項10】
前記撮影ユニットは、光源を含み、前記光源により発生された光から前記スリット光を生成し、
前記条件決定部は、前記光源を制御するための光源制御条件を前記撮影条件として決定し、
前記撮影制御部は、前記第2の撮影制御において、前記順次的な投射と前記順次的な撮影との前記組み合わせのための前記撮影ユニットの制御と並行して、前記光源制御条件に基づく前記光源の制御を実行する、
請求項6の眼科装置。
【請求項11】
前記条件決定部は、前記光源により発生される光の強度を制御するための発光強度制御条件を前記光源制御条件として決定し、
前記撮影制御部は、前記第2の撮影制御において、前記順次的な投射と前記順次的な撮影との前記組み合わせのための前記撮影ユニットの制御と並行して、前記発光強度制御条件に基づく前記光源の制御を実行する、
請求項10の眼科装置。
【請求項12】
前記撮影部は、前記撮影ユニットのフォーカス調整を行うためのフォーカス調整ユニットを更に含み、
前記条件決定部は、前記フォーカス調整ユニットを制御するためのフォーカス制御条件を前記撮影条件として決定し、
前記撮影制御部は、前記第2の撮影制御において、前記順次的な投射と前記順次的な撮影との前記組み合わせのための前記撮影ユニットの制御と並行して、前記フォーカス制御条件に基づく前記フォーカス調整ユニットの制御を実行する、
請求項6の眼科装置。
【請求項13】
前記条件決定部は、前記撮影ユニットの焦点位置を制御するための焦点位置制御条件を前記フォーカス制御条件として決定し、
前記撮影制御部は、前記第2の撮影制御において、前記順次的な投射と前記順次的な撮影との前記組み合わせのための前記撮影ユニットの制御と並行して、前記焦点位置制御条件に基づく前記フォーカス調整ユニットの制御を実行する、
請求項12の眼科装置。
【請求項14】
前記撮影ユニットは、
前記被検眼の前記眼底に前記スリット光を投射する第1の光学系と、
撮像装置と、
前記被検眼の前記眼底からの前記スリット光の戻り光を前記撮像装置に導く第2の光学系と
を含み、
前記フォーカス調整ユニットは、
前記第1の光学系の焦点位置を調整するための第1のフォーカス調整ユニットと、
前記第2の光学系の焦点位置を調整するための第2のフォーカス調整ユニットと
を含み、
前記撮影制御部は、前記第2の撮影制御において、前記順次的な投射と前記順次的な撮影との前記組み合わせのための前記撮影ユニットの制御と並行して、前記第1の光学系の焦点位置を移動するための前記第1のフォーカス調整ユニットの制御と前記第2の光学系の焦点位置を移動するための前記第2のフォーカス調整ユニットの制御とを前記焦点位置制御条件に基づき実行する、
請求項13の眼科装置。
【請求項15】
前記撮影部は、前記撮影ユニットのフォーカス調整を行うためのフォーカス調整ユニットを更に含み、
前記プロセッサは、前記被検眼の前記眼底に対する前記撮影ユニットのフォーカス調整を実行するように前記フォーカス調整ユニットの制御を実行した後に、前記第1の撮影制御を実行する、
請求項1の眼科装置。
【請求項16】
被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニットを含む撮影部と、プロセッサと、メモリとを含む眼科装置を制御する方法であって、
前記プロセッサに、
前記被検眼の前記眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように前記撮影ユニットを制御する第1の撮影制御ステップと、
前記第1の撮影制御ステップにより生成された前記2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する撮影条件決定ステップと、
前記撮影条件決定ステップにより決定された前記撮影条件に基づいて前記被検眼の前記眼底に前記スリットスキャン撮影を適用するように前記撮影部を制御する第2の撮影制御ステップと
を実行させる、
方法。
【請求項17】
被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行する方法であって、
前記被検眼の前記眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成し、
生成された前記2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定し、
決定された前記撮影条件に基づいて前記被検眼の前記眼底に前記スリットスキャン撮影を適用する、
方法。
【請求項18】
被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニットを含む撮影部と、プロセッサと、メモリとを含む眼科装置に実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、前記プロセッサに、
前記被検眼の前記眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように前記撮影ユニットを制御する第1の撮影制御ステップと、
前記第1の撮影制御ステップにより生成された前記2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する撮影条件決定ステップと、
前記撮影条件決定ステップにより決定された前記撮影条件に基づいて前記被検眼の前記眼底に前記スリットスキャン撮影を適用するように前記撮影部を制御する第2の撮影制御ステップと
を実行させる、
プログラム。
【請求項19】
被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニットを含む撮影部を備えた眼科装置を制御するために、プロセッサとメモリとを含むコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、前記プロセッサに、
前記被検眼の前記眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように前記撮影ユニットを制御するための第1の命令を生成する第1の命令生成ステップと、
前記第1の命令生成ステップで生成された前記第1の命令を前記眼科装置に送るための制御を行う第1の送信制御ステップと、
前記第1の命令に基づき前記眼科装置により生成された前記2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する撮影条件決定ステップと、
前記撮影条件決定ステップにより決定された前記撮影条件に基づいて、前記被検眼の前記眼底に前記スリットスキャン撮影を適用するように前記撮影部を制御するための第2の命令を生成する第2の命令生成ステップと、
前記第2の命令生成ステップで生成された前記第2の命令を前記眼科装置に送るための制御を行う第2の送信制御ステップと
を実行させる、
プログラム。
【請求項20】
被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行するための処理を、プロセッサとメモリとを含むコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、前記プロセッサに、
前記被検眼の前記眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するための処理を行うステップと、
生成された前記2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定するステップと、
決定された前記撮影条件に基づいて前記被検眼の前記眼底に前記スリットスキャン撮影を適用するための処理を行うステップと
を実行させる、
プログラム。
【請求項21】
請求項18~20のいずれかのプログラムが記録された、コンピュータ可読な非一時的記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科装置、眼科装置の制御方法、眼科撮影方法、プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の眼底を撮影するための眼科装置としては、眼底カメラや走査型レーザー検眼鏡(SLO)が知られている。特許文献1には、スリット光を用いて眼底を照明し、その戻り光をローリングシャッター型の撮像装置(CMOS)で検出することによって眼底画像を生成するように構成された眼科装置が開示されている。この眼科装置は、眼底に対するスリット光の投射位置の移動と、撮像装置による戻り光の検出(撮影)とを同期的に繰り返し実行して収集された複数の画像を合成することによって、簡素な構成で眼底画像を取得することが可能である。このような撮影手法(モダリティ)はスリットスキャン、スリットスキャン撮影などと呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知のスリットスキャン型の眼科装置が有する問題の1つとして次のものがある。
【0005】
一般的に、眼底の内壁の形状は凹球面状(椀状)である。そのため、被検眼が正視眼でない限り、光学系のピントを眼底の中心部に合わせても周辺部ではピントズレが生じ、逆に周辺部にピントを合わせても中心部ではピントズレが生じてしまう。
【0006】
公知のスリットスキャン型の眼科装置においては、眼底の中心部にピントを合わせて撮影を行う場合、眼底の中心部には十分に収束したスリット光が投射される一方で、周辺部には十分に収束していないスリット光が投射されるため、中心部の画像は相対的に明るく描写され、周辺部の画像は相対的に暗く描写される。これらを合成して得られる画像は明るさが不均一なものになってしまう。すなわち、公知のスリットスキャン型の眼科装置では、輝度ムラのある画像が取得されてしまう。
【0007】
逆に、眼底の周辺部にピントを合わせて撮影を行う場合には、眼底の周辺部には十分に収束したスリット光が投射される一方で、中心部には十分に収束していないスリット光が投射されるため、周辺部の画像は相対的に明るく描写され、中心部の画像は相対的に暗く描写される。これらを合成して得られる画像もやはり輝度ムラを有するものになってしまう。
【0008】
このような輝度ムラの問題は、強度近視眼のように眼軸長の長い眼を撮影する場合に特に顕著に現れる。
【0009】
本開示の1つの目的は、スリットスキャン型の眼科装置によって取得される画像の輝度ムラの問題を解消するための新規な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る実施形態の1つの態様は、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニットを含む撮影部と、プロセッサとを含み、前記プロセッサは、前記被検眼の前記眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように前記撮影ユニットを制御する第1の撮影制御と、前記第1の撮影制御により生成された前記2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する撮影条件決定処理と、前記撮影条件決定処理により決定された前記撮影条件に基づいて前記被検眼の前記眼底に前記スリットスキャン撮影を適用するように前記撮影部を制御する第2の撮影制御とを実行する、眼科装置である。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る実施形態のいくつかの態様によれば、スリットスキャン型の眼科装置によって取得される画像の輝度ムラの問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図2】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図3】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図4】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図5】実施形態に係る眼科装置の動作の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図6A】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図6B】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図7】実施形態に係る眼科装置が形成する光路の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図8】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図9】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図10】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図11】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図12A】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図12B】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図12C】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図12D】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図13A】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図13B】実施形態に係る眼科装置が実行するフォーカス調整の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図14A】実施形態に係る眼科装置がスリットスキャン撮影のために実行する制御の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図14B】実施形態に係る眼科装置がスリットスキャン撮影のために実行する制御の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図15A】実施形態に係る眼科装置がスリットスキャン撮影のために実行する撮影条件決定処理の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図15B】実施形態に係る眼科装置がスリットスキャン撮影のために実行する撮影条件決定処理の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図15C】実施形態に係る眼科装置がスリットスキャン撮影のために実行する撮影条件決定処理の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図16】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するためのフローチャートである。
【
図17】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図18】実施形態に係る眼科装置がスリットスキャン撮影のために実行する撮影条件決定処理の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図19】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するためのフローチャートである。
【
図20】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するためのフローチャートである。
【
図21】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図22】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図23】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図24】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するためのフローチャートである。
【
図25】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するための概略図である。
【
図26】実施形態に係る眼科装置が実行する動作の非限定的な例について説明するためのフローチャートである。
【
図27】実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示に係る実施形態のいくつかの非限定的な態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本開示に係るいずれかの態様に任意の公知技術を組み合わせることができる。例えば、本明細書で引用する文献に開示されている任意の事項を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。また、本開示に関連する技術分野における任意の公知技術を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。例えば、本開示に関連する技術又は当該技術に応用可能な技術について本願の出願人により開示された任意の技術事項(特許出願、論文などにおいて開示された事項)を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。
【0015】
本開示に記載された様々な態様のうちのいずれか2つ以上の態様を、少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。
【0016】
本開示において説明される要素の機能の少なくとも一部は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装される。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能の少なくとも一部を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされる。本開示において、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、開示された機能の少なくとも一部を実行するハードウェア、又は、開示された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されたハードウェアであってよく、或いは、記載された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用される。
【0017】
実施形態に係る眼科装置の第1の態様は、撮影部とプロセッサとを含んでいる。
【0018】
撮影部は、スリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニットを含んでいる。スリットスキャン撮影では、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ眼底の撮影が行われる。撮影ユニットは、例えば、ローリングシャッター型の撮像装置、又は、ローリングシャッター型の撮像装置と同様の機能を有する撮像装置を含んでいる。後者の例として、グローバルシャッター型のイメージセンサーと、機械的なスリット絞りとを組み合わせた撮像装置がある。別の実施形態に係る撮像装置についても同様である。
【0019】
プロセッサは、第1の撮影制御、撮影条件決定処理、及び第2の撮影制御を実行するように構成されている。
【0020】
第1の撮影制御では、プロセッサは、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように撮影ユニットを制御する。これら2つ以上の領域は予め設定されてよい。
【0021】
撮影条件決定処理では、プロセッサは、第1の撮影制御により生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する。この撮影条件は、スリットスキャン撮影に適用可能な任意の条件(パラメータ(操作量))であってよく、特に、スリットスキャン撮影で得られる画像の明るさに影響を与える条件であってよい。いくつかの例示的な態様において、撮影条件は、被検眼の眼底に投射されるスリット光に関する任意の条件であってよく、例えば、被検眼の眼底に投射されるスリット光の強度(投射強度)に関する条件、及び/又は、被検眼の眼底に投射されるスリット光の時間の長さ(投射時間)に関する条件を含んでいてよい。
【0022】
プロセッサにより決定される撮影条件の非限定的な例として次のものがある:(1)光源の制御を行うためのパラメータ(例えば、発光強度の制御パラメータ);(2)フォーカス調整のための光学素子の位置を制御するためのパラメータ(例えば、フォーカスレンズの位置の制御パラメータ)(3)フォーカス調整のための光学素子を駆動する機構を制御するためのパラメータ(例えば、フォーカスレンズを移動する機構の制御パラメータ、フォーカスレンズの屈折力を変化させる機構の制御パラメータ);(4)被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動する光学素子を制御するためのパラメータ(例えば、スリット光を偏向する光スキャナーの制御パラメータ);(5)被検眼の眼底に対するスリット光の投射/不投射を切り替える光学素子を制御するためのパラメータ(例えば、スリット光を遮断可能なシャッターの制御パラメータ)。
【0023】
第2の撮影制御では、プロセッサは、撮影条件決定処理により決定された撮影条件に基づいて被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するように撮影部の制御を行う。
【0024】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像に基づき決定された撮影条件の下にこの被検眼の眼底のスリットスキャン撮影を実行することができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0025】
実施形態に係る眼科装置の第2の態様について説明する。本態様は、第1の態様に係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、撮影ユニットにより実行されるスリットスキャン撮影は、被検眼の眼底における一連の領域に対するスリット光の順次的な投射と、これら一連の領域の順次的な撮影との組み合わせによって実現される。スリットスキャン撮影が適用される一連の領域は予め設定される。
【0026】
本態様のプロセッサは、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するための撮影部に対する第2の撮影制御において、被検眼の眼底におけるこれら一連の領域に対するスリット光の投射強度(明るさ)を等しくするように制御を実行する。本態様のプロセッサは、第2の撮影制御において、これら一連の領域に対するスリット光の投射時間の制御を行ってもよい。本態様のプロセッサは、これら一連の領域に適用されるスリット光の光量が等しくなるように第2の撮影制御を実行してもよい。例えば、プロセッサは、これら一連の領域の各領域(全体)に対するスリット光の投射光量が等しくなるように第2の撮影制御を行ってもよいし(例えば、一連の領域における各領域の寸法が実質的に等しい場合)、これら一連の領域の各領域における単位領域に対するスリット光の投射光量が等しくなるように第2の撮影制御を行ってもよい(例えば、一連の領域における各領域の寸法が等しくない場合)。なお、投射光量は、投射強度と投射時間との積であり、換言すると、スリット光の明るさ(光束)の時間積分量である。
【0027】
本態様によれば、スリットスキャン撮影が適用される被検眼の眼底のエリア(一連の領域の全体)を均一な明るさのスリット光でスキャンするように制御を行うことができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0028】
実施形態に係る眼科装置の第3の態様について説明する。本態様は、第2の態様に係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、撮影ユニットは、光源を含んでおり、この光源により発生された光からスリット光を生成し、このスリット光を用いてスリットスキャン撮影を行う。
【0029】
本態様のプロセッサは、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するための撮影部に対する第2の撮影制御において、この光源の制御を実行する。この制御の非限定的な例として、発光強度の制御、発光時間の制御、出力波長の制御などがある。光源の制御は、光源に対する直接的な制御であってもよいし、光源により発生された光に対する制御であってもよい。例えば、光源の制御は、スリット光を偏向する光スキャナーの制御、スリット光を遮断可能なシャッターの制御、スリット光の波長を変化させるためのフィルターの制御などを含んでいてもよい。
【0030】
本態様によれば、スリットスキャン撮影が適用される被検眼の眼底のエリア(一連の領域の全体)を均一な明るさのスリット光でスキャンするように撮影ユニットの光源の制御を行うことができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0031】
実施形態に係る眼科装置の第4の態様について説明する。本態様は、第2又は第3の態様に係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、撮影部は、撮影ユニットのフォーカス調整を行うためのフォーカス調整ユニットを含んでいる。
【0032】
本態様のプロセッサは、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するための撮影部に対する第2の撮影制御において、このフォーカス調整ユニットの制御を実行する。この制御の非限定的な例として、フォーカスレンズの移動制御、フォーカスレンズの屈折力制御などがある。
【0033】
本態様によれば、スリットスキャン撮影が適用される被検眼の眼底のエリア(一連の領域の全体)を均一な明るさのスリット光でスキャンするようにフォーカス調整ユニットの制御を行うことができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0034】
実施形態に係る眼科装置の第5の態様について説明する。本態様は、第1~第4の態様のいずれかに係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、プロセッサは、スリットスキャン撮影のための条件を決定する撮影条件決定処理を実行する条件決定部と、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するための撮影部に対する第2の撮影制御を実行する撮影制御部とを含んでいる。
【0035】
本態様の条件決定部は、算出処理部と決定処理部とを含んでいる。算出処理部は、第1の撮影制御により生成された被検眼の眼底の2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像に基づいて、被検眼の眼底における当該2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の値を算出する。決定処理部は、算出処理部により算出された2つ以上の値に基づいて、被検眼の眼底に対するスリットスキャン撮影において適用される撮影条件を決定する。
【0036】
算出処理部によって算出される値は、スリットスキャン撮影の撮影条件を決定するために使用することが可能な任意の種類の操作量の値であってよい。この操作量の非限定的な例として、制御量である発光強度を変化させるための光源の操作量(例えば、光源に対する印加電圧の大きさ)、制御量である発光時間を変化させるための光源の操作量(例えば、光源に対する電流印可時間)、制御量である撮影ユニットのフォーカス状態(ディオプター値、焦点位置)を変化させるための制御信号のパラメータ(例えば、駆動パルスの数)などがある。
【0037】
本態様の撮影制御部は、条件決定部の決定処理部により決定された撮影条件に基づいて撮影部に対する第2の撮影制御を実行することにより、被検眼の眼底に対するスリットスキャン撮影を撮影ユニットに実行させる。
【0038】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像から、これら2つ以上の領域のそれぞれに対応する値を求めて撮影条件を決定し、この撮影条件を用いて被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用することができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0039】
実施形態に係る眼科装置の第6の態様について説明する。本態様は、第5の態様に係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、撮影ユニットは、被検眼の眼底における一連の領域に対するスリット光の順次的な投射と、これら一連の領域の順次的な撮影との組み合わせによって、被検眼の眼底に対するスリットスキャン撮影を実行する。
【0040】
本態様の条件決定部は、被検眼の眼底における一連の領域に対するスリット光の投射強度が等しくなるように、スリットスキャン撮影のための撮影条件を決定する。
【0041】
本態様の撮影制御部は、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するための撮影部に対する第2の撮影制御において、この順次的なスリット光投射とこの順次的な撮影との組み合わせを撮影ユニットに実行させるための制御と並行して、被検眼の眼底における一連の領域に対するスリット光の投射強度が等しくなるように決定された撮影条件に基づく撮影部の制御を実行する。
【0042】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像から、これら2つ以上の領域のそれぞれに対応する値を求めて撮影条件を決定し、この撮影条件を用いて、スリットスキャン撮影が適用される被検眼の眼底のエリア(一連の領域の全体)を均一な明るさのスリット光でスキャンするように制御を行うことができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0043】
実施形態に係る眼科装置の第7の態様について説明する。本態様は、第6の態様に係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、決定処理部は、算出処理部により算出された2つ以上の値に基づいて、被検眼の眼底における一連の領域にそれぞれ対応する一連の値を含む撮影条件を求める。
【0044】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像から、スリットスキャン撮影の適用エリアを成す一連の領域の各領域に対応する値を求めて撮影条件を決定し、この撮影条件を用いてスリットスキャン撮影を行うことができるので、スリットスキャン撮影の適用エリア(一連の領域の全体)を均一な明るさのスリット光でスキャンするように制御を行うことが可能である。これにより、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0045】
実施形態に係る眼科装置の第8の態様について説明する。本態様は、第7の態様に係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、決定処理部により決定される撮影条件は、連続的情報及び離散的情報のいずれかを含んでいる。本態様の撮影条件は、被検眼の眼底に対するスリットスキャン撮影の適用エリアを成す一連の領域にそれぞれ対応する一連の値を含んでいる。本態様の連続的情報は、これら一連の値を連続的に表現した情報である。この連続的情報の非限定的な例として、グラフ、数式などがある。また、本態様の離散的情報は、これら一連の値を離散的に表現した情報である。この離散的情報の非限定的な例として、テーブル、リストなどがある。
【0046】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像から、スリットスキャン撮影の適用エリアを成す一連の領域の各領域に対応する値を求め、これら一連の値を連続的情報及び/又は離散的情報として表現することによって撮影条件を決定し、この撮影条件を用いてスリットスキャン撮影を行うことができるので、スリットスキャン撮影の適用エリア(一連の領域の全体)を均一な明るさのスリット光でスキャンするように制御を行うことが可能である。これにより、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0047】
実施形態に係る眼科装置の第9の態様について説明する。本態様は、第7又は第8の態様に係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、決定処理部は、算出処理部により算出された2つ以上の値に内挿、外挿、及び回帰分析のうちの1つ以上の演算を適用することによって撮影条件を求める。
【0048】
本態様の内挿は、補間とも呼ばれ、算出処理部により算出された2つ以上の値(データ列)に基づいて、このデータ列における第1の値と第2の値との間の値を求める演算、又は、そのような関数を求める演算である。
【0049】
本態様の外挿は、補外(ほがい)とも呼ばれ、算出処理部により算出された2つ以上の値(データ列)に基づいて、このデータ列の範囲の外側における予想値を求める演算、又は、そのような関数を求める演算である。
【0050】
本態様の回帰分析は、算出処理部により算出された2つ以上の値(データ列)に数理モデルを当てはめる統計的手法である。例えば、この数理モデルの従属変数(目的変数)は、算出処理部により算出される2つ以上の値と同種のパラメータであり、独立変数(説明変数)は、被検眼の眼底における位置を示すパラメータ(眼底位置パラメータ)である。この眼底位置パラメータは、眼底における位置を特定するための任意のパラメータであってよく、その非限定的な例として、所定方向(例えば、眼軸に沿う方向)を基準とした角度による位置表現パラメータ、寸法(距離)を規格化した座標系による位置表現パラメータ、眼底の所定のランドマーク(例えば、視神経乳頭、黄斑)を基準とした座標系による位置表現パラメータなどがある。
【0051】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像から、スリットスキャン撮影の適用エリアを成す一連の領域の各領域に対応する値を内挿、外挿、及び回帰分析のいずれかを利用して求めて撮影条件を決定し、この撮影条件を用いてスリットスキャン撮影を行うことができるので、スリットスキャン撮影の適用エリア(一連の領域の全体)を均一な明るさのスリット光でスキャンするように制御を行うことが可能である。これにより、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0052】
実施形態に係る眼科装置の第10の態様について説明する。本態様は、第6~第9の態様のいずれかに係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、撮影ユニットは、光源を含んでおり、この光源により発生された光からスリット光を生成し、このスリット光を用いてスリットスキャン撮影を行う。
【0053】
本態様の条件決定部は、撮影ユニットの光源を制御するための条件(光源制御条件)を決定する。本態様の撮影条件は、この光源制御条件を含んでいる。
【0054】
本態様の撮影制御部は、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するための撮影部に対する第2の撮影制御において、被検眼の眼底における一連の領域に対するスリット光の順次的な投射と、これら一連の領域の順次的な撮影との組み合わせのための撮影ユニットの制御と並行して、条件決定部により決定された光源制御条件に基づく撮影ユニットの光源の制御を実行する。
【0055】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像から、これら2つ以上の領域のそれぞれに対応する値を求めて光源制御条件を決定し、この光源制御条件を用いて、スリットスキャン撮影が適用される被検眼の眼底のエリア(一連の領域の全体)を均一な明るさのスリット光でスキャンするように光源の制御を行うことができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0056】
実施形態に係る眼科装置の第11の態様について説明する。本態様は、第10の態様に係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、条件決定部は、撮影ユニットの光源により発生される光の強度を制御するための発光強度制御条件を光源制御条件として決定する。
【0057】
本態様の撮影制御部は、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するための撮影部に対する第2の撮影制御において、被検眼の眼底における一連の領域に対するスリット光の順次的な投射と、これら一連の領域の順次的な撮影との組み合わせのための撮影ユニットの制御と並行して、条件決定部により決定された発光強度制御条件に基づく撮影ユニットの光源の制御を実行する。
【0058】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像から、これら2つ以上の領域のそれぞれに対応する値を求めて発光強度制御条件を決定し、この光源制御条件を用いて、スリットスキャン撮影が適用される被検眼の眼底のエリア(一連の領域の全体)を均一な明るさのスリット光でスキャンするように光源の制御を行うことができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0059】
いくつかの例示的な態様は、撮影ユニットの光源の制御の代わりに、又は、撮影ユニットの光源の制御と組み合わせて、被検眼の眼底にスリット光を投射するための光学系の途中(光源と被検眼との間の光路における任意の位置)に光強度を変化させるための光学素子を設け、この光学素子の制御を行うように構成されてよい。この光学素子の非限定的な例として、減光フィルター、液晶駆動透過光量可変デバイスなどがある。
【0060】
実施形態に係る眼科装置の第12の態様について説明する。本態様は、第6~第11の態様のいずれかに係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、撮影部は、撮影ユニットのフォーカス調整を行うためのフォーカス調整ユニットを含んでいる。
【0061】
本態様の条件決定部は、撮影部のフォーカス調整ユニットを制御するための条件(フォーカス制御条件)を決定する。本態様の撮影条件は、このフォーカス制御条件を含んでいる。
【0062】
本態様の撮影制御部は、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するための撮影部に対する第2の撮影制御において、被検眼の眼底における一連の領域に対するスリット光の順次的な投射と、これら一連の領域の順次的な撮影との組み合わせのための撮影ユニットの制御と並行して、条件決定部により決定されたフォーカス制御条件に基づく撮影部のフォーカス調整ユニットの制御を実行する。
【0063】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像から、これら2つ以上の領域のそれぞれに対応する値を求めてフォーカス制御条件を決定し、このフォーカス制御条件を用いて、スリットスキャン撮影が適用される被検眼の眼底のエリア(一連の領域の全体)を均一な明るさのスリット光でスキャンするようにフォーカス調整ユニットの制御を行うことができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0064】
実施形態に係る眼科装置の第13の態様について説明する。本態様は、第12の態様に係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、条件決定部は、撮影ユニットの焦点位置を制御するための焦点位置制御条件をフォーカス制御条件として決定する。
【0065】
本態様の撮影制御部は、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するための撮影部に対する第2の撮影制御において、被検眼の眼底における一連の領域に対するスリット光の順次的な投射と、これら一連の領域の順次的な撮影との組み合わせのための撮影ユニットの制御と並行して、条件決定部により決定された焦点位置制御条件に基づく撮影部のフォーカス調整ユニットの制御を実行する。
【0066】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像から、これら2つ以上の領域のそれぞれに対応する値を求めて焦点位置制御条件を決定し、この焦点位置制御条件を用いて、スリットスキャン撮影が適用される被検眼の眼底のエリア(一連の領域の全体)を均一な明るさのスリット光でスキャンするようにフォーカス調整ユニットの制御を行うことができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0067】
実施形態に係る眼科装置の第14の態様について説明する。本態様は、第13の態様に係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、撮影ユニットは、第1の光学系と撮像装置と第2の光学系とを含んでいる。第1の光学系は、被検眼の眼底にスリット光を投射する。第2の光学系は、被検眼の眼底からのスリット光の戻り光を撮像装置に導く。
【0068】
本態様のフォーカス調整ユニットは、第1のフォーカス調整ユニットと第2のフォーカス調整ユニットとを含んでいる。第1のフォーカス調整ユニットは、被検眼の眼底にスリット光を投射する第1の光学系の焦点位置を調整するための構成を有する。第2のフォーカス調整ユニットは、被検眼の眼底からのスリット光の戻り光を撮像装置に導く第2の光学系の焦点位置を調整するための構成を有する。
【0069】
本態様の撮影制御部は、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するための撮影部に対する第2の撮影制御において、被検眼の眼底における一連の領域に対するスリット光の順次的な投射と、これら一連の領域の順次的な撮影との組み合わせのための撮影ユニットの制御と並行して、第1の光学系の焦点位置を移動するための第1のフォーカス調整ユニットの制御と第2の光学系の焦点位置を移動するための第2のフォーカス調整ユニットの制御とを、条件決定部により決定された焦点位置制御条件に基づいて実行する。
【0070】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像から、これら2つ以上の領域のそれぞれに対応する値を求めて焦点位置制御条件を決定し、この焦点位置制御条件に基づき第1の光学系及び第2の光学系の双方の焦点位置制御を実行することによって、スリットスキャン撮影が適用される被検眼の眼底のエリア(一連の領域の全体)を均一な明るさのスリット光でスキャンすることが可能になる。これにより、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0071】
実施形態に係る眼科装置の第15の態様について説明する。本態様は、第1~第14の態様のいずれかに係る構成に加えて次のような構成を有する。本態様において、撮影部は、撮影ユニットのフォーカス調整を行うためのフォーカス調整ユニットを含んでいる。
【0072】
本態様のプロセッサは、被検眼の眼底に対する撮影ユニットのフォーカス調整を実行するようにフォーカス調整ユニットの制御を実行した後に、撮影条件の決定に用いられる2つ以上の画像(被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像)を生成するために撮影ユニットを制御する第1の撮影制御を実行する。
【0073】
本態様によれば、被検眼の眼底に対する撮影ユニットのフォーカス調整がなされた状態の下に、撮影条件の決定に用いられる2つ以上の画像を取得することができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消するための処理の品質向上を図ることが可能になる。
【0074】
第1~第15の態様のいずれかに係る眼科装置に対して、後述の実施形態に係る任意の事項を組み合わせることができる。
【0075】
実施形態に係る眼科装置の制御方法の1つの態様について説明する。本態様は、撮影部とプロセッサとメモリとを含む眼科装置を制御する方法である。眼科装置の撮影部は、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニットを含んでいる。
【0076】
本態様の方法は、眼科装置のプロセッサに、第1の撮影制御ステップと撮影条件決定ステップと第2の撮影制御ステップとを実行させるように構成されている。第1の撮影制御ステップでは、眼科装置のプロセッサは、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように撮影ユニットを制御する。撮影条件決定ステップでは、眼科装置のプロセッサは、第1の撮影制御ステップにより生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する。第2の撮影制御ステップでは、眼科装置のプロセッサは、撮影条件決定ステップにより決定された撮影条件に基づいて被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するように撮影部を制御する。
【0077】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像に基づき決定された撮影条件の下にこの被検眼の眼底のスリットスキャン撮影を実行するように、眼科装置の制御を行うことができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0078】
本態様の眼科装置の制御方法に対して、実施形態に係る眼科装置の第2~第15の態様のいずれかに係る事項、及び/又は、後述の実施形態に係る任意の事項を組み合わせることができる。
【0079】
実施形態に係る眼科撮影方法の1つの態様について説明する。本態様は、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行する方法である。
【0080】
本態様の方法は、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成し、生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定し、決定された撮影条件に基づいて被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するように構成されている。
【0081】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像に基づき決定された撮影条件の下にこの被検眼の眼底のスリットスキャン撮影を実行するように、眼科撮影を行うことができるので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0082】
本態様の眼科撮影方法に対して、実施形態に係る眼科装置の第2~第15の態様のいずれかに係る事項、及び/又は、後述の実施形態に係る任意の事項を組み合わせることができる。
【0083】
実施形態に係るプログラムの第1の態様について説明する。本態様は、撮影部とプロセッサとメモリとを含む眼科装置に実行させるためのプログラムである。眼科装置の撮影部は、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニットを含んでいる。
【0084】
本態様のプログラムは、眼科装置のプロセッサに、第1の撮影制御ステップと撮影条件決定ステップと第2の撮影制御ステップとを実行させる。第1の撮影制御ステップでは、眼科装置のプロセッサは、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように撮影ユニットを制御する。撮影条件決定ステップでは、眼科装置のプロセッサは、第1の撮影制御ステップにより生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する。第2の撮影制御ステップでは、眼科装置のプロセッサは、撮影条件決定ステップにより決定された撮影条件に基づいて被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するように撮影部を制御する。
【0085】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像に基づき決定された撮影条件の下にこの被検眼の眼底のスリットスキャン撮影を眼科装置に実行させるように、眼科装置によって実行されるプログラムが構成されているので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0086】
本態様のプログラムに対して、実施形態に係る眼科装置の第2~第15の態様のいずれかに係る事項、及び/又は、後述の実施形態に係る任意の事項を組み合わせることができる。
【0087】
実施形態に係るプログラムの第2の態様について説明する。本態様は、撮影部を備えた眼科装置を制御するためのプログラムであって、プロセッサとメモリとを含むコンピュータに実行させるためのプログラムである。眼科装置の撮影部は、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニットを含んでいる。
【0088】
本態様のプログラムは、コンピュータのプロセッサに、第1の命令生成ステップと第1の送信制御ステップと撮影条件決定ステップと第2の命令生成ステップと第2の送信制御ステップとを実行させる。第1の命令生成ステップでは、コンピュータのプロセッサは、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように眼科装置の撮影ユニットを制御するための第1の命令を生成することができる。第1の送信制御ステップでは、コンピュータのプロセッサは、第1の命令生成ステップで生成された第1の命令を眼科装置に送るための制御を行う。眼科装置は、コンピュータから送信された第1の命令に基づいて、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成し、生成された2つ以上の画像をコンピュータに送る。撮影条件決定ステップでは、コンピュータのプロセッサは、第1の命令に基づき眼科装置により生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する。第2の命令生成ステップでは、コンピュータのプロセッサは、撮影条件決定ステップにより決定された撮影条件に基づいて、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するように撮影部を制御するための第2の命令を生成する。第2の送信制御ステップでは、コンピュータのプロセッサは、第2の命令生成ステップで生成された第2の命令を眼科装置に送るための制御を行う。眼科装置は、コンピュータから送信された第2の命令に基づいて、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用することができる。
【0089】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像に基づき決定された撮影条件の下にこの被検眼の眼底のスリットスキャン撮影を眼科装置に実行させるように、コンピュータによって実行されるプログラムが構成されているので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0090】
本態様のプログラムに対して、実施形態に係る眼科装置の第2~第15の態様のいずれかに係る事項、及び/又は、後述の実施形態に係る任意の事項を組み合わせることができる。
【0091】
実施形態に係るプログラムの第3の態様について説明する。本態様は、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行するための処理を、プロセッサとメモリとを含むコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0092】
本態様のプログラムは、コンピュータのプロセッサに、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するための処理を行うステップ(第1のステップ)と、この第1のステップにより生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定するステップ(第2のステップ)と、この第2のステップにより決定された撮影条件に基づいて被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するための処理を行うステップ(第3のステップ)とを実行させる。
【0093】
本態様によれば、被検眼の眼底における2つ以上の領域を実際に撮影して得られた2つ以上の画像に基づき決定された撮影条件の下にこの被検眼の眼底のスリットスキャン撮影を実行するための処理をコンピュータに実行させるように、コンピュータによって実行されるプログラムが構成されているので、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0094】
本態様のプログラムに対して、実施形態に係る眼科装置の第2~第15の態様のいずれかに係る事項、及び/又は、後述の実施形態に係る任意の事項を組み合わせることができる。
【0095】
実施形態に係る記録媒体の1つの態様について説明する。本態様は、実施形態に係るプログラムの第1~第3の態様のいずれかのプログラムが記録された、コンピュータ可読な非一時的記録媒体である。
【0096】
本態様によれば、記録媒体に記録されているプログラムと同様に、スリットスキャン撮影で取得される画像の輝度ムラの問題を解消することが可能になる。
【0097】
本態様の記録媒体に対して、実施形態に係る眼科装置の第2~第15の態様のいずれかに係る事項、及び/又は、後述の実施形態に係る任意の事項を組み合わせることができる。
【0098】
いくつかの態様は、撮影ユニットのフォーカス調整を行うためのフォーカス調整ユニットを含んでいる。フォーカス調整ユニットにより実行されるフォーカス調整では、被検眼の屈折度数の推定値に対応するフォーカス補正量が求められる。
【0099】
このフォーカス補正量は、所定のフォーカスパラメータについて予め設定された基準値に対するパラメータ値のズレ量(偏位量、補正量、視度値)を示すものであり、被検眼の視度データに相当する。非限定的な例において、フォーカス補正量は、正視(0ディオプター)を基準として定義され、被検眼の屈折度数の推定値に等しい。フォーカス補正量はこれに限定されず、例えば別の基準値に基づき定義されてよい。
【0100】
視度データは、フォーカス調整ユニットにより実行されるフォーカス調整で得られた視度値であってもよく、或いは、視度と等価な任意のパラメータの値であってもよい。後者の非限定的な例として、撮影部のフォーカス調整のためのパラメータがある。このパラメータは、フォーカス調整ユニットに関するパラメータであってよく、その非限定的な例として、フォーカス調整ユニットに含まれる光学素子(例えば、フォーカスレンズ)の位置を示すパラメータ、この光学素子を駆動するためのパラメータ(例えば、フォーカスレンズを移動するための制御パラメータ、フォーカスレンズの屈折力を変化させるための制御パラメータ)などがある。なお、2つのパラメータが等価であるとは、少なくとも、一方のパラメータから他方のパラメータを導出できることを意味する。
【0101】
いくつかの非限定的な実施形態及びそのいくつかの非限定的な態様について以上に説明したが、それらのうちの2つ以上を少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。また、本開示に記載又は示唆されている任意の事項をいずれかの態様に組み合わせることが可能である。
【0102】
<第1の実施形態>
第1の実施形態に係る眼科装置の構成の非限定的な例を
図1に示す。本例の眼科装置1は、スリットスキャン方式のモダリティを用いて生体眼の眼底を画像化する眼科イメージング機能を有する。眼科装置1は、撮影ユニット2、フォーカス調整ユニット3、プロセッサ4、メモリ5、及びユーザーインターフェイス6を含む。眼科装置1に含まれるハードウェア要素は、特に言及しない限り、既存のスリットスキャン型の眼科イメージング装置のハードウェア要素と同様であってよい。
【0103】
撮影ユニット2は、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつローリングシャッター型のイメージセンサー(撮像装置)で撮影を行うことによってスリットスキャン撮影を実行可能に構成されている。換言すると、撮影ユニット2は、スリット状の照明光(スリット光)の照射位置(照射範囲)を移動させながら被検眼の眼底を照明し、1次元的に又は2次元的に受光素子が配列されたイメージセンサーを用いて眼底からの戻り光を受光するように構成されている。プロセッサ4の制御の下に、戻り光の受光結果は、スリット光の照射位置の移動タイミングに同期して、スリット光の照射位置に対応した戻り光の受光位置にある受光素子から信号(データ)が読み出される。イメージセンサーからの信号読み出しはローリングシャッター方式で行われる。撮影ユニット2の具体的な構成については、その非限定的な例を後述する。
【0104】
前述したように、ローリングシャッター型のイメージセンサーの代わりに、グローバルシャッター型のイメージセンサーとスリット絞りとを組み合わせた撮像ユニット(撮像装置)を用いることによって、ローリングシャッター型のイメージセンサーと同様の撮影動作を行うことができる。
【0105】
フォーカス調整ユニット3は、撮影ユニット2のフォーカス調整(ピント合わせ)を行うための構成を含んでいる。第1の実施形態のフォーカス調整は、既存のフォーカス調整技術を用いて実行されてよい。例えば、被写体(被検眼の眼底)とイメージセンサーとの間に配置されているレンズの焦点距離(焦点の位置)を変化させることによって、及び/又は、レンズとイメージセンサーとの間の距離を変化させることよって、フォーカス調整を行うことができる。
【0106】
プロセッサ4は、メモリ5及び/又は他の記憶装置に記憶されているプログラムにしたがって処理を実行することにより第1の実施形態に係る機能を実現する。
【0107】
メモリ5は、各種のコンピュータプログラムや各種のデータを記憶している。例えば、メモリ5には、眼科装置1に所定の動作を実行させるための制御プログラム及び/又は制御データや、眼科装置1に所定の演算処理を実行させるための演算プログラム及び/又は演算データが格納されている。メモリ5に格納されるプログラムやデータはこれらに限定されない。また、メモリ5には、眼科装置1により取得されたデータが保存される。例えば、眼科装置1により生成されたデータや、眼科装置1が外部から取得したデータがメモリ5に保存される。典型的な実施形態において、メモリ5は、不揮発性メモリと揮発性メモリとを含んでいる。
【0108】
ユーザーインターフェイス6は、眼科装置1とそのユーザーとの間で情報をやりとりするための要素(ハードウェア要素、ソフトウェア要素、プロトコル)である。ユーザーインターフェイス6は、例えば、ユーザーから眼科装置1に情報を提供するための手段である入力部(操作部)と、眼科装置1からユーザーに情報を提供するための手段である出力部とを含んでいる。入力部のハードウェア要素の非限定的な例として、操作パネル、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ダイアル、スキャナー、光学文字認識(OCR)デバイス、マイクロフォン、カメラ(ビデオカメラ)などがある。出力部のハードウェア要素の非限定的な例として、ディスプレイ、プリンタ、スピーカーなどがある。ユーザーインターフェイス6は、タッチスクリーンのように入力機能と出力機能とが一体化されたデバイスを含んでいてもよい。
【0109】
図示は省略するが、眼科装置1は、既存の同種の眼科装置と同様に、被検眼Eに対する撮影ユニット2のアライメント(位置合わせ)を行うための要素を備えている。眼科装置1により実行されるアライメントの方法は任意であってよく、例えば、特開2013-248376号公報に記載された2つ以上の前眼部カメラを用いて被検眼Eの位置を求めるステレオアライメントであってよいし、被検眼Eの正面画像(例えば前眼部Eaの観察画像)を解析して被検眼Eの位置を求める方法でもよいし、前眼部Ea(角膜)にアライメント指標を投影して被検眼Eの位置を求める方法でもよい。眼科装置1は、アライメントの手法に応じたハードウェア要素及びソフトウェア要素を備えている。図示は省略するが、眼科装置1は、既存の同種の眼科装置と同様に、撮影ユニット2を3次元的に移動するための移動機構を備えている。
【0110】
撮影ユニット2の構成の非限定的な例を
図2に示す。
図2は側面図である。
図2において、光学系の光軸(対物レンズ46の光軸)に沿った方向をZ方向(前後方向、作動距離方向)とし、Z方向に直交する1つの方向(本例では左右方向、水平方向)をX方向とし、Z方向及びY方向の双方に垂直な方向(本例では上下方向、鉛直方向)をY方向とする。
【0111】
本例の撮影ユニット2は、光源10、照明光学系20、光スキャナー30、撮影光学系40、及び撮像装置50を含んでいる。照明光学系20は、光源10から発せられた光からスリット光を生成して被検眼Eの眼底Efに投射する。光源10を照明光学系20の要素とみなしてもよい。光スキャナー30は、照明光学系20により眼底Efに投射されるスリット光の位置(投射位置)を移動する。光スキャナー30を照明光学系20の要素とみなしてもよい。撮影光学系40は、照明光学系20により眼底Efに投射されたスリット光の戻り光を撮像装置50に導く。撮像装置50を撮影光学系40の要素とみなしてもよい。
【0112】
光源10は、可視領域の光を発生する可視光源(例えば、白色光を発生する白色光源)を含んでいてよい。光源10は、赤外領域(近赤外領域)の光を発生する赤外光源(近赤外光源)を含んでいてもよい。光源10は、異なる波長帯の光を切り替えて出力することが可能であってもよい。光源10は、任意の種類の光源を含んでいてよく、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、ハロゲンランプ、及びキセノンランプのうちの1つ以上を含んでいてよい。被検眼Eに対する撮影ユニット2のアライメントが適切な状態において、光源10は、眼底Ef及び虹彩のそれぞれに対して光学的に非共役な位置に配置される。いくつかの態様では、プロセッサ4の制御の下に、光源10は、スリットスキャンのために可視光を出力し、フォーカス調整のために近赤外光又は可視光を出力する。
【0113】
照明光学系20は、光源10により発せられた光からスリット状の照明光(スリット光)を生成して被検眼Eの眼底Efに投射する。本例において、照明光学系20は、虹彩絞り21、スリット開口絞り(スリット)22、リレーレンズ23、光スキャナー30、リレーレンズ31、ホールミラー45、及び対物レンズ46を含む。リレーレンズ23は1つ以上のレンズを含み、リレーレンズ31は1つ以上のレンズを含み、対物レンズ46は1つ以上のレンズを含む。
【0114】
撮影光学系40は、照明光学系20(及び光スキャナー30)により被検眼Eの眼底Efに投射された照明光(スリット光)の戻り光を撮像装置50に導く。本例において、撮影光学系40は、対物レンズ46、ホールミラー45、フォーカスレンズ47、及び結像レンズ48を含む。フォーカスレンズ47は1つ以上のレンズを含み、結像レンズ48は1つ以上のレンズを含む。
【0115】
光源10から出力された光(具体的には、この光の一部)は、虹彩絞り21に形成された開口部、スリット開口絞り22に形成された開口部、及びリレーレンズ23を通過して光スキャナー30に導かれる。
【0116】
被検眼Eに対する撮影ユニット2のアライメントが適切な状態において、虹彩絞り21(具体的には、虹彩絞り21に形成された開口部)は、被検眼Eの虹彩(瞳孔)に対して光学的に略共役な位置に配置される。
【0117】
虹彩絞り21には、照明光学系20の光軸から離隔した位置に1つ以上の開口部が形成されている。例えば、
図3に示す非限定的な例に係る虹彩絞り21には、照明光学系20の光軸Oを中心とした円周方向に沿って所定の寸法(所定の長さ及び所定の幅)を有する2つの開口部21A及び21Bが形成されている。
【0118】
虹彩絞り21の開口部は、被検眼Eの瞳孔における照明光の入射状態(入射位置、入射形状)を規定する。例えば、開口部21A及び21Bが形成された虹彩絞り21が用いられる場合には、被検眼Eの瞳孔中心に略一致するように照明光学系20の光軸O(対物レンズ46の光軸)が配置された状態において(つまり、アライメントが適切な状態において)、瞳孔中心から偏心した位置(具体的には、瞳孔中心に対して点対称に配置された2つの位置)を通じて照明光(スリット光)を眼底Efに導くことができる。
【0119】
いくつかの態様では、光源10からの光を偏向する光学素子を光源10と虹彩絞り21との間に設けることによって、虹彩絞り21の開口部とスリット開口絞り22の開口部(スリット)とを結ぶ方向における光量分布を最適化してもよい。また、光源10と虹彩絞り21の開口部との間の相対位置を変更可能に構成することによって、虹彩絞り21の開口部を通過する光の光量分布を可変にしてもよい。
【0120】
被検眼Eに対する撮影ユニット2のアライメントが適切な状態において、スリット開口絞り22(具体的には、スリット開口絞り22に形成された開口部(スリット))は、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置に配置される。
【0121】
スリット開口絞り22には、後述するイメージセンサー51からローリングシャッター方式で信号読み出しが行われるライン方向(ロウ(row)方向)に対応した方向を長手方向とする開口部(スリット)が形成されている。例えば、
図4に示す非限定的な例に係るスリット開口絞り22には、照明光学系20の光軸Oを含む領域に所定の寸法(所定の長さ及び所定の幅)を有する開口部(スリット)22Aが形成されている。
【0122】
スリット開口絞り22に形成された開口部(スリット)は、被検眼Eの眼底Efにおけるスリット光の投射像の形状を規定する。スリット開口絞り22に形成されたスリットの長手方向をスリット長方向と呼ぶことがある。また、スリット開口絞り22に形成されたスリットの短手方向をスリット幅方向と呼ぶことがある。
【0123】
スリット開口絞り22は、移動機構22Mにより、照明光学系20の光軸に沿う方向に移動可能である(
図2を参照)。移動機構22Mは、プロセッサ4の制御の下に動作する。プロセッサ4は、被検眼Eの状態(例えば、屈折力(屈折度数、視度)、眼底形状など)に応じて移動機構22Mを制御するように構成されてよい。
【0124】
虹彩絞り21の開口部を通過した光は、スリット開口絞り22の開口部を通過することによってスリット状の照明光(スリット光)に変換される。スリット光は、リレーレンズ23を介して光スキャナー30に導かれ、光スキャナー30により偏向され、リレーレンズ31を介してホールミラー45に導かれる。
【0125】
ホールミラー45は、既存の眼底カメラなどに用いられる光学部材であり、照明光学系20の光路と撮影光学系40の光路とを結合する光路結合部材として機能する。ホールミラー45の中心位置には開口部(又は、光透過部)が形成されている。例えば、この開口部の外縁は円形である。照明光学系20の光軸と撮影光学系40の光軸とは、ホールミラー45の開口部において交差している。ホールミラー45の開口部の周囲には反射部(ミラー部)が形成されている。
【0126】
リレーレンズ31を介してホールミラー45に導かれたスリット光は、反射部により反射され、対物レンズ46により屈折されて被検眼Eに入射する。被検眼Eに入射したスリット光は、眼底Efに投射される。
【0127】
いくつかの態様において、眼底Efにおけるスリット光の投射像(投射領域)の形状は略スリット形状であり、このスリット形状の投射像の長手方向はX方向に略一致している。この場合、光スキャナー30は、眼底Efにおけるスリット光の投射像をY方向に移動させるように、虹彩絞り21及びスリット開口絞り22によって生成されたスリット光を偏向する。なお、眼底Erにおけるスリット光の投射像の長手方向の向きはX方向に限定されず、光スキャナー30による投射像の移動方向はY方向に限定されない。
【0128】
被検眼Eに対する撮影ユニット2のアライメントが適切な状態において、光スキャナー30は、被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置に配置される。これにより、被検眼Eの瞳孔内の位置(又は瞳孔の近傍位置)をピボット(スキャン軸、偏向中心軸)としてスリット光をY方向に偏向することができ、眼底Efの所定のスキャン範囲を仮想的に分割して形成される複数のスリット状の部分領域に対して逐次にスリット光を投射することが可能になる。つまり、眼底Efのスリットスキャン撮影を行うことが可能になる。
【0129】
眼底Efに投射されたスリット光の反射光は、被検眼Efの瞳孔を介して被検眼Eから出射し、撮影ユニット2に入射する。被検眼Eから撮影ユニット2に入射した光(戻り光)は、対物レンズ46を介してホールミラー45に導かれる。この戻り光は、ホールミラー45の開口部を通過し(又は、光透過部を透過し)、フォーカスレンズ47及び結像レンズ48を介して撮像装置50に導かれて検出される。
【0130】
光スキャナー30は、例えば、スリット光を1次元的又は2次元的に偏向することが可能である。1次元偏向用の光スキャナー30は、所定の方向を基準とした所定の偏向角度範囲においてスリット光を偏向する。この偏向角度範囲は、眼底Efにおけるスリット光の移動方向(例えば、Y方向)に対応した方向において定義されている。2次元偏向用の光スキャナー30は、例えば、互いに異なる偏向方向を提供する2つの光スキャナーを組み合わせたものである。光スキャナー30に使用される光偏向デバイスの種類は任意であってよく、例えばガルバノスキャナーであってよい。
【0131】
フォーカスレンズ47は、移動機構47Mにより、撮影光学系40の光軸に沿う方向に移動可能である(
図2を参照)。移動機構47Mは、プロセッサ4の制御の下に動作する。プロセッサ4は、被検眼Eの状態(例えば、屈折力、眼底形状など)に応じて移動機構47Mを制御するように構成されてよい。
【0132】
撮像装置50は、撮影光学系40によって導かれてきた戻り光を検出するイメージセンサー51を含んでいる。撮像装置50は、プロセッサ4の制御の下に、戻り光を検出したイメージセンサー51から信号読み出しを行うことができる。
【0133】
イメージセンサー51は、ピクセル化された受光器としての機能を実現する。被検眼Eに対する撮影ユニット2のアライメントが適切な状態において、イメージセンサー51の受光面(検出面、撮像面)は、被検眼Eの眼底Efに対して光学的に略共役な位置に配置される。イメージセンサー51が光電変換により生成した信号は、プロセッサ4の制御の下に、ローリングシャッター方式で読み出される。
【0134】
いくつかの態様において、イメージセンサー51はCMOSイメージセンサーを含む。この場合、イメージセンサー51においては、ロウ(row)方向に配列されたピクセル群が複数個設けられており、これら複数のピクセル群がカラム(column)方向に配列されている。より具体的には、イメージセンサー51は、2次元的に配列された複数のピクセルと、複数の垂直信号線と、水平信号線とを含む。各ピクセルは、フォトダイオードと、キャパシタとを含む。垂直信号線は、ロウ方向(水平方向)に直交するカラム方向(垂直方向)に配列されたピクセル群ごとに設けられている。各垂直信号線は、戻り光の検出結果に対応した電荷が蓄積されたピクセル群に対して選択的に電気的に接続される。水平信号線は、複数の垂直信号線に対して選択的に電気的に接続される。各ピクセルは、戻り光の検出結果に対応した電荷を蓄積し、蓄積された電荷は、例えばロウ方向のピクセル群ごとに順次に読み出される。例えば、ロウ方向のラインごとに、各ピクセルに蓄積された電荷に対応した電圧が垂直信号線に供給される。複数の垂直信号線は、選択的に水平信号線に対して電気的に接続される。上記したロウ方向のラインごとの読み出し動作を垂直方向に順次に行うことで、2次元的に配列された複数のピクセルから検出結果を読み出すことができる。
【0135】
このようなイメージセンサー51からの検出結果の読み出しをローリングシャッター方式で行うことにより、ロウ方向に延びる所望の仮想的な開口形状に対応した受光像が取得される。この制御は公知であり、例えば米国特許第7831106号明細書などに開示されている。
【0136】
眼科装置1により実行されるスリットスキャン撮影について説明する。
図5は、眼底Efにおけるスリット光の投射像の位置(投射範囲)IPと、イメージセンサー51の受光面SRにおける仮想的な開口範囲OPとを模式的に表す。
【0137】
眼科装置1は、光スキャナー30を用いてスリット光を偏向することにより、眼底Efにおけるスリット光の投射範囲IPをスリット長方向(例えば、X方向、ロウ方向、水平方向)に対して垂直な方向(例えば、Y方向、カラム方向、垂直方向)に移動させる。
【0138】
プロセッサ4によるイメージセンサー51からの信号読み出しにおいては、信号読み出しの対象となるピクセル群をライン単位で逐次に切り替えることによって、仮想的な開口範囲OPが逐次に設定される。開口範囲OPは、例えば、スリット光の戻り光が受光面SRに投射される範囲IP´と一致するように、又は、この範囲IP´よりも広い範囲になるように設定される。プロセッサ4は、スリット光の投射範囲IPを移動するための制御と、開口範囲OPを移動するための制御とを並行的に実行する。例えば、プロセッサ4は、これらの制御を同期的に実行する。このようなスリットスキャン撮影によれば、不要な散乱光の影響を受けることなく、簡素な構成によって、高いコントラストを有する高品質の眼底画像を取得することが可能である。
【0139】
いくつかの実施形態では、光スキャナー30とホールミラー45との間に、有害反射光を除去するための黒点を設けることができる。黒点は、対物レンズ46によるスリット光の反射に起因する中心ゴーストの位置に対して光学的に略共役な位置に配置される。
【0140】
既存の同種の眼科装置では、眼底Efに投射されるフォーカス調整用指標(スプリット指標)を生成するフォーカス指標投影光学系が光スキャナーとホールミラーとの間に設けられ、更に、フォーカス指標投影光学系を移動するための機構が設けられている。既存の同種の眼科装置は、フォーカス指標光学系から出力された光(フォーカス指標光)を眼底Efに投射し、その眼底反射光を撮影光学系及び撮像装置によって検出し、取得された画像におけるスプリット指標の位置をシャイネルの原理にしたがって特定し、特定されたスプリット指標の位置に基づきフォーカス指標投影光学系と撮影光学系のフォーカスレンズとをそれぞれの光軸に沿う方向に移動することによってフォーカス調整を実行する。このように、フォーカス指標投影光学系及びこの移動機構は、既存の同種の眼科装置に設けられている、フォーカス調整のための専用のハードウェア要素である。
【0141】
これに対し、本例に係る眼科装置1は、フォーカス専用ハードウェア要素として既存の同種の眼科装置に設けられているフォーカス指標投影光学系及びそれを移動する機構を備えていない。代わりに、眼科装置1は、後述する新規な技術でフォーカス調整を実行する。この新規な技術は、既存の同種の眼科装置にも設けられているハードウェア要素を新規な方法で利用するものである。いくつかの態様に係る新規な技術ではフォーカス専用ハードウェア要素は不要であり、別のいくつかの態様ではフォーカス指標投影光学系及びその移動機構のような複雑且つ大規模なフォーカス専用ハードウェア要素は不要である。
【0142】
プロセッサ4は、様々な制御処理や様々な演算処理を実行するように構成されている。例えば、プロセッサ4は、少なくとも、撮影部(撮影ユニット2、フォーカス調整ユニット3)の制御(撮影制御)を実行するように構成されている。また、本例の眼科装置1は、新規なフォーカス調整を実行するために、スリット光投射制御、フォーカス調整条件決定処理、及びフォーカス調整制御を含む一連の処理を実行するように構成されていてよい。眼科装置1は、この一連の処理を実行することによって(すなわち、新規なソフトウェア要素を備えた構成を採用することによって)、フォーカス専用ハードウェア要素を用いずに、又は、複雑且つ大規模なフォーカス専用ハードウェア要素を用いずに、フォーカス調整を実行することが可能である。
【0143】
プロセッサ4の構成の非限定的な例を
図6A及び
図6Bに示す。本例のプロセッサ4は、撮影制御部410と、フォーカス処理部420と、撮影条件決定部430とを含んでいる。本例のフォーカス処理部420は、
図6Aに示すように投射制御部421とフォーカス調整条件決定部422とフォーカス調整制御部423とを含んでいる。また、本例の撮影条件決定部430は、
図6Bに示すように、算出処理部431と決定処理部432とを含んでいる。
【0144】
撮影制御部410は、被検眼Eの眼底Efにスリットスキャン撮影を適用するために撮影部の制御を実行する。この撮影部の制御は、少なくとも撮影ユニット2の制御を含んでおり、フォーカス調整ユニット3の制御を更に含んでいてもよい。詳細は後述するが、撮影制御部410は、被検眼Eの眼底Efにおける2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように撮影ユニット2を制御する第1の撮影制御と、この第1の撮影制御により生成された2つ以上の画像に基づき決定された撮影条件に基づいて被検眼Eの眼底Efにスリットスキャン撮影を適用するように撮影部を制御する第2の撮影制御とを実行する。
【0145】
フォーカス処理部420は、フォーカス専用ハードウェア要素を用いることなく又は複雑且つ大規模なフォーカス専用ハードウェア要素を用いることなく実行される新規なフォーカス調整のための処理を実行する。
【0146】
非限定的な例に係るフォーカス処理部420は、スリット光投射制御を実行するように構成された投射制御部421と、フォーカス調整条件決定処理を実行するように構成されたフォーカス調整条件決定部422と、フォーカス調整制御を実行するように構成されたフォーカス調整制御部423とを含む。
【0147】
投射制御部421によって実行されるスリット光投射制御は、フォーカス調整のためのスリット光を被検眼Eの眼底Efに投射するために実行される撮影ユニット2の制御処理である。スリット光投射制御の態様は任意であってよく、そのいくつかの非限定的な例を後に説明する。
【0148】
フォーカス調整条件決定部422によって実行されるフォーカス調整条件決定処理は、スリット光投射制御により眼底Efに投射されたスリット光の戻り光を検出した撮像装置50からの出力に基づいてフォーカス調整条件を決定するために実行される演算処理である。フォーカス調整条件決定処理の態様は任意であってよく、そのいくつかの非限定的な例を後に説明する。
【0149】
フォーカス調整条件決定処理により生成されたフォーカス調整条件は、被検眼Eの視度データ又はそれと等価な情報を含んでいる。本例とは別のフォーカス調整方法が用いられる場合においても同様に、そのフォーカス調整処理において生成される情報は、被検眼Eの視度データ又はそれと等価な情報を含んでいる。
【0150】
フォーカス調整制御は、フォーカス調整条件決定処理により決定されたフォーカス調整条件に基づいて撮影ユニット2のフォーカス状態を調整するために実行されるフォーカス調整ユニット3の制御処理であり、フォーカス調整制御部423によって実行される。フォーカス調整制御の態様は任意であってよく、そのいくつかの非限定的な例を後に説明する。
【0151】
図2に示す例においては、フォーカス調整ユニット3は、撮影ユニット2の要素のうち、スリット開口絞り22を移動する移動機構22Mと、フォーカスレンズ47を移動する移動機構47Mとを含む。
【0152】
この場合、フォーカス調整条件決定処理は、照明光学系20のフォーカス調整を行うための(つまり、照明光学系20の焦点位置を調整するための)移動機構22Mの制御条件と、撮影光学系40のフォーカス調整を行うための(つまり、撮影光学系40の焦点位置を調整するための)移動機構47Mの制御条件とを決定するように実行される。移動機構22Mの制御条件は、スリット開口絞り22を移動する方向及び量(距離)を示す情報を含む。移動機構47Mの制御条件は、フォーカスレンズ47を移動する方向及び量(距離)を示す情報を含む。これらの制御条件は、対象要素の移動方向及び移動量に対応した別の情報を含んでいてもよく、例えば、移動機構22M(移動機構47M)に送信される制御信号の内容(例えば、制御パルスの個数)を示す情報を含んでいてよい。
【0153】
更に、フォーカス調整制御は、フォーカス調整条件決定処理により決定された移動機構22Mの制御条件に基づき移動機構22Mを制御し、且つ、移動機構47Mの制御条件に基づき移動機構47Mを制御するように実行される。
【0154】
いくつかの態様では、ここに説明したようにフォーカスレンズ47を移動することによって撮影光学系40のフォーカス調整を行っているが、別のいくつかの態様では撮像装置50(イメージセンサー51)を移動することによって撮影光学系40のフォーカス調整を行ってもよい。後者の態様では、撮像装置50(イメージセンサー51)を移動するための移動機構が設けられ、フォーカス調整条件決定処理はこの移動機構の制御条件を決定し、フォーカス調整制御はこの制御条件に基づき当該移動機構を制御することによって撮像装置50(イメージセンサー51)を移動する。
【0155】
いくつかの態様では、投射制御部421は、まず、光スキャナー30によるスリット光の偏向方向を所定の方向に固定する。つまり、投射制御部421は、光スキャナー30の反射面(ミラー面)の向きを所定の向きに固定する。
【0156】
このように光スキャナー30の動作(ミラー面の向きを変える動作)を停止した状態で、投射制御部421は、スリット光を眼底Efに投射するように撮影ユニット2を制御する。撮影ユニット2は、撮影光学系40及び撮像装置50により、光スキャナー30の動作を停止した状態で眼底Efに投射されたスリット光を検出する。これにより得られた画像はフォーカス調整条件決定部422に入力される。
【0157】
フォーカス調整条件決定部422は、この画像を解析することによってフォーカス調整条件を決定する。より具体的には、フォーカス調整条件決定部422は、光スキャナー30の動作を停止した状態で取得された画像を解析することにより、光スキャナー30の動作を停止した状態で眼底Efに投射されたスリット光の像(つまり、このスリット光に対応するスリット光像)の位置を特定する処理と、特定されたスリット光像の位置に基づいてフォーカス調整条件を決定する処理とを実行する。フォーカス調整条件決定部422が実行するこれらの処理については、その非限定的な例を後述する。
【0158】
いくつかの態様では、投射制御部421は、被検眼Eの眼底Efに投射される位置が異なる少なくとも2つのスリット光を出力するように撮影ユニット2を制御する。ここでは2つのスリット光(第1のスリット光及び第2のスリット光)を用いる場合について説明するが、3つ以上のスリット光を用いる場合についても同様の要領で実行できることは、当業者であれば理解することができるであろう。第1のスリット光及び第2のスリット光は、例えば、順次に又は同時に出力される。
【0159】
被検眼Eの眼底Efにおける投射位置が異なる第1のスリット光及び第2のスリット光を生成する方法は任意である。いくつかの態様では、
図3に示す2つの開口部21A及び21B(第1の開口部21A及び第2の開口部21Bと呼ぶ)を有する虹彩絞り21を利用することができる。なお、これらの態様は、例えば、光スキャナー30によるスリット光の偏向方向が所定の方向に固定された状態(つまり、光スキャナー30のミラー面の向きが所定の向きに固定された状態)で実行されてよい。
【0160】
例えば、第1の開口部21Aを通過した光に基づき生成されるスリット光を第1のスリット光として使用し、第2の開口部21Bを通過した光に基づき生成されるスリット光を第2のスリット光として使用することによって、被検眼Eの眼底Efにおける投射位置が異なる第1のスリット光及び第2のスリット光を生成することができる。
【0161】
そのために採用可能な1つの構成例では、第1の開口部21Aを遮閉及び開放するための第1のシャッターと、第2の開口部21Bを遮閉及び開放するための第2のシャッターとが設けられており、投射制御部421の制御の下に第1の開口部21A及び第2の開口部21Bを交互に遮閉/開放することによって、被検眼Eの眼底Efにおける投射位置が異なる第1のスリット光と第2のスリット光とを逐次に生成することができる。例えば、第1の開口部21Aを開状態とし且つ第2の開口部21Bを閉状態とすることによって第1のスリット光を選択的に生成することができ、第1の開口部21Aを閉状態とし且つ第2の開口部21Bを開状態とすることによって第2のスリット光を選択的に生成することができる。また、双方の開口部21A及び21Bを開放することによって第1のスリット光と第2のスリット光とを同時に生成することができる。
【0162】
本態様で使用される第1のシャッター及び第2のシャッターは、既存の同種の眼科装置に設けられているフォーカス専用ハードウェア要素(フォーカス指標投影光学系及びその移動機構)と比較して、極めてシンプルで小規模なデバイスである。
【0163】
別の構成例では、光源10が、第1の開口部21Aのみを通過する光を発する第1の光源と、第2の開口部21Bのみを通過する光を発する第2の光源とを含んでおり、投射制御部421の制御の下に第1の光源と第2の光源とを交互に点灯させることによって、被検眼Eの眼底Efにおける投射位置が異なる第1のスリット光と第2のスリット光とを逐次に生成することができる。例えば、第1の光源を点灯状態とし且つ第2の光源を消灯状態とすることによって第1のスリット光を選択的に生成することができ、第1の光源を消灯状態とし且つ第2の光源を点灯状態とすることによって第2のスリット光を選択的に生成することができる。また、第1の光源及び第2の光源の双方を点灯することによって第1のスリット光と第2のスリット光とを同時に生成することができる。
【0164】
本態様で使用される第1の光源及び第2の光源は、既存の同種の眼科装置に設けられているフォーカス専用ハードウェア要素(フォーカス指標投影光学系及びその移動機構)と比較して、極めてシンプルで小規模なデバイスである。
【0165】
第1のスリット光及び第2のスリット光を生成するための別のいくつかの態様では、光スキャナー30を利用することができる。本態様では、投射制御部421は、光スキャナー30のミラー面を第1の向きに配置することによって第1のスリット光を生成し、第2の向きに配置することによって第2のスリット光を生成することによって、被検眼Eの眼底Efにおける投射位置が異なる第1のスリット光及び第2のスリット光を生成することができる。本態様では、ハードウェア要素の追加を行うことなく第1のスリット光及び第2のスリット光を生成することができる。
【0166】
以上に説明したいずれかの方法又は別の方法により、投射制御部421は、被検眼Eの眼底Efに投射される位置が異なる第1のスリット光及び第2のスリット光を撮影ユニット2に出力させる。
【0167】
撮影ユニット2は、撮影光学系40及び撮像装置50により、被検眼Eの眼底Efにおける第1のスリット光の投影像(第1のスリット光像)が描出されている第1の画像と、被検眼Eの眼底Efにおける第2のスリット光の投影像(第2のスリット光像)が描出されている第2の画像とを取得する。第1のスリット光及び第2のスリット光が逐次に生成された場合、つまり、被検眼Eの眼底Efに対する第1のスリット光の投射と第2のスリット光の投射とが別々に行われた場合、第1の画像と第2の画像とは別々の画像である。また、第1のスリット光及び第2のスリット光が同時に生成された場合、つまり、被検眼Eの眼底Efに対する第1のスリット光の投射と第2のスリット光の投射とが同時に行われた場合には、第1の画像と第2の画像とは同じ画像である。
【0168】
フォーカス調整条件決定部422は、第1の画像から第1のスリット光像を検出し、第1の画像における第1のスリット光像の位置を示す第1の位置情報を求める。同様に、フォーカス調整条件決定部422は、第2の画像から第2のスリット光像を検出し、第2の画像における第2のスリット光像の位置を示す第2の位置情報を求める。例えば、第1の位置情報は、第1の画像に定義されている座標系(例えば、ピクセル位置を表現する座標系)で表される1つ以上の座標であり、第2の位置情報は、第2の画像に定義されている座標系(例えば、ピクセル位置を表現する座標系)で表される1つ以上の座標である。
【0169】
フォーカス調整条件決定部422は、第1のスリット光像と第2のスリット光像との相対位置に基づいてフォーカス調整条件を決定する。より具体的には、フォーカス調整条件決定部422は、第1の位置情報に示された第1のスリット光像の座標(第1の座標)と、第2の位置情報に示された第2のスリット光像の座標(第2の座標)との差を求め、この座標の差に基づいてフォーカス調整条件を決定することができる。
【0170】
次に、本例に係るフォーカス調整の原理及びいくつかの非限定的な具体例について説明する。
【0171】
そのために、まず、フォーカス調整で使用されるスリット光を被検眼Eの眼底Efに投射する照明光学系20の光路について説明する。
図7は、
図2~
図4に示す光学系によって形成される光路の非限定的な例を表す。
図7の上段は平面図であり、下段は側面図である。また、
図7の各光路は、虹彩絞り21の2つの開口部21A及び21Bを物点位置とした場合の光路である。
【0172】
光源10により出力された光は、虹彩絞り21を照明する。虹彩絞り21の第1の開口部21Aを通過した光(第1の光)の一部がスリット開口絞り22のスリット22Aを通過することによって第1のスリット光が生成される。同様に、虹彩絞り21の第2の開口部21Bを通過した光(第2の光)の一部がスリット開口絞り22のスリット22Aを通過することによって第2のスリット光が生成される。
【0173】
ここで、第1の開口部21Aを通過する第1の光は、例えば、前述した第1のシャッターが開状態であるときに第1の開口部21Aを通過した光、又は、前述した第1の光源から発せられて第1の開口部21Aを通過した光であってよい。同様に、第2の開口部21Bを通過する第2の光は、例えば、前述した第2のシャッターが開状態であるときに第2の開口部21Bを通過した光、又は、前述した第2の光源から発せられて第2の開口部21Bを通過した光であってよい。
【0174】
照明光学系20において、虹彩絞り21(第1の開口部21A及び第2の開口部21B)と、光スキャナー30と、ホールミラー45とは、互いに光学的に略共役な位置関係で配置されている。アライメントが適切な状態において、照明光学系20のこれらの要素は、前眼部Ea(例えば、瞳孔)に対して光学的に略共役な位置に配置される。
【0175】
虹彩絞り21及びスリット開口絞り22により生成された第1のスリット光は、リレーレンズ23によりリレーされて光スキャナー30のミラー面において結像するとともに、このミラー面によって偏向される。光スキャナー30により偏向された第1のスリット光は、リレーレンズ31によりリレーされてホールミラー45の反射部(ミラー部)において結像するとともに、この反射部によって偏向される。ホールミラー45により偏向された第1のスリット光は、対物レンズ46により収束光に変換されて被検眼Eに入射し、前眼部Ea(例えば、瞳孔)において一旦結像し、眼底Efに投射される。第1のスリット光が眼底Efに投射されている状態において撮影光学系40及び撮像装置50を用いた撮影を行うことにより、第1のスリット光に対応する第1のスリット光像が描出されている画像(前述した第1の画像)が得られる。
【0176】
同様に、虹彩絞り21及びスリット開口絞り22により生成された第2のスリット光が眼底Efに投射されている状態において撮影光学系40及び撮像装置50を用いた撮影を行うことにより、第2のスリット光に対応する第2のスリット光像が描出されている画像(前述した第2の画像)が得られる。
【0177】
照明光学系20のピントが眼底Efに合っている場合、
図8に示すように、第1のスリット光L1及び第2のスリット光L2は、眼底Efの略同じ位置に投射される。換言すると、照明光学系20のピントが眼底Efに合っている場合、第1のスリット光L1と第2のスリット光L2との交差位置Cは眼底Ef上に配置される。
【0178】
一方、照明光学系20のピントが眼底Efに合っていない場合には、
図9に示すように、第1のスリット光L1が投射される眼底Ef上の位置と、第2のスリット光L2が投射される眼底Ef上の位置とが異なる。換言すると、照明光学系20のピントが眼底Efに合っていない場合、第1のスリット光L1と第2のスリット光L2との交差位置Cは、眼底Efから離隔した位置に配置される。
【0179】
なお、
図9の上段の図は、第1のスリット光L1と第2のスリット光L2との交差位置Cが眼底Efよりも前側(前眼部Ea側)に配置されている状態、つまり、眼底Efに対していわゆる「前ピン」の状態を表している。下段の図は、第1のスリット光L1と第2のスリット光L2との交差位置Cが眼底Efよりも後側に配置されている状態、つまり、眼底Efに対していわゆる「後ピン」の状態を表している。
【0180】
図8に示すように照明光学系20のピントが眼底Efに合っている場合、第1のスリット光L1と第2のスリット光L2とが眼底Efの略同じ位置に投射される。その場合に取得される眼底画像の例を
図10に示す。
図10の眼底画像には、第1のスリット光L1の眼底投影像である第1のスリット光像G1と、第2のスリット光L2の眼底投影像である第2のスリット光像G2とが、略同じ位置に描出されている。
【0181】
一方、
図9に示すように照明光学系20のピントが眼底Efに合っていない場合、第1のスリット光L1と第2のスリット光L2とが眼底Efの互いに異なる位置に投射される。その場合に取得される眼底画像の例を
図11に示す。
【0182】
図11の左側の眼底画像は、
図9の上段の場合のような「前ピン」の場合に得られる画像である。この眼底画像には、第1のスリット光L1の眼底投影像である第1のスリット光像G1と、第2のスリット光L2の眼底投影像である第2のスリット光像G2とが互いに異なる位置に描出されている。より具体的には、この眼底画像のフレームの上下方向における中心位置よりも下側に第1のスリット光像G1が描出されており、且つ、上側に第2のスリット光像G2が描出されている。
【0183】
また、
図11の右側の眼底画像は、
図9の下段の場合のような「後ピン」の場合に得られる画像である。この眼底画像には、第1のスリット光L1の眼底投影像である第1のスリット光像G1と、第2のスリット光L2の眼底投影像である第2のスリット光像G2とが互いに異なる位置に描出されている。より具体的には、この眼底画像のフレームの上下方向における中心位置よりも上側に第1のスリット光像G1が描出されており、且つ、下側に第2のスリット光像G2が描出されている。
【0184】
このように、本例に係るフォーカス調整(オートフォーカス)は、既存のスリットスキャン方式の眼底撮影モダリティが備えているハードウェア要素を利用して実行されるため、既存の同種の眼科装置のような(複雑且つ大規模な)フォーカス専用ハードウェア要素を用いる必要がない。更に、本例に係るフォーカス調整によれば、眼底Efに対する撮影ユニット2のピントがずれている方向を特定することが可能である(つまり、フォーカス状態が前ピンであるか後ピンであるかを判別することが可能である)。加えて、詳細については後述するが、本例に係るフォーカス調整によれば、眼底Efに対して撮影ユニット2のピントがずれている量を求めることも可能である。
【0185】
詳細については後述するが、いくつかの態様では、第1のスリット光L1と第2のスリット光とを別々に眼底Efに投射することによって第1のスリット光像G1が描出された第1の画像と第2のスリット光像G2が描出された第2の画像とを取得し、これら2つの画像を比較することによってフォーカス状態に関するパラメータ(例えば、ピントのズレ方向及び/又はズレ量)を特定することができる。
【0186】
別のいくつかの態様では、特性(例えば、波長、強度(光量))が異なる第1のスリット光L1と第2のスリット光L2とを同時に眼底Efに投射することによって1つの画像を取得し、この画像における第1のスリット光像G1と第2のスリット光像G2との相対位置に基づいてフォーカス状態に関するパラメータ(例えば、ピントのズレ方向及び/又はズレ量)を特定することができる。なお、第1のスリット光L1と第2のスリット光とを別々に眼底Efに投射する場合において、特性が異なる第1のスリット光L1と第2のスリット光L2とを眼底Efに投射してもよい。
【0187】
フォーカス調整条件決定部422は、
図8~
図11を参照して説明した上記原理に基づいてフォーカス調整条件(被検眼Eの視度データ)を決定する。フォーカス調整条件決定部422は、スリット光投射制御により被検眼Eの眼底Efに投射されたスリット光(例えば、第1のスリット光L1、第2のスリット光L2)の戻り光を検出した撮像装置50からの出力(例えば、第1の画像、第2の画像)に基づいてフォーカス調整条件を決定するように構成される。
【0188】
いくつかの態様では、フォーカス調整条件決定部422は、スリット光投射制御により被検眼Eの眼底Efに投射されたスリット光(例えば、第1のスリット光L1、第2のスリット光L2)の戻り光を検出した撮像装置50により生成された画像(例えば、第1の画像、第2の画像)中のスリット光像(例えば、第1のスリット光像G1、第2のスリット光像G2)の位置に基づいてフォーカス調整条件を決定するように構成されてよい。
【0189】
眼底画像中のスリット光像の位置を求める方法は任意である。いくつかの態様のフォーカス調整条件決定部422は、撮影ユニット2によるスリット光の投射位置の移動方向に対応する第1の方向に沿ったスリット光像の少なくとも一部の画像領域の輝度プロファイルに基づいてスリット光像の位置を決定する。
【0190】
いくつかの態様において、スリット開口絞り22のスリット22Aのスリット長方向はX方向に対応しており、スリット光の投射位置の移動方向(スキャン方向)はY方向である。撮影ユニット2により取得される眼底画像においてX方向に対応する方向を同じくX方向と呼び、Y方向に対応する方向も同じくY方向と呼ぶことにする。眼底画像に描出されるスリット光像の長手方向はX方向である。
【0191】
フォーカス調整条件決定部422は、まず、スリット光像の輝度プロファイルを生成する。この輝度プロファイルは、スリット光像の全体に対して定義されてもよいし、スリット光像の一部の画像領域に対して定義されてもよい。また、フォーカス調整条件決定部422は、輝度プロファイルを生成するための準備として、眼底画像の少なくとも一部にセグメンテーションを適用して眼底画像中のスリット光像を特定することによって、輝度プロファイル生成処理を適用する範囲を決定してもよい。フォーカス調整条件決定部422により生成される輝度プロファイルは、スキャン方向(実空間におけるY方向)に対応した第1の方向(眼底画像におけるY方向)における輝度の分布を表す。
【0192】
図12Aに示す眼底画像からに描出されているスリット光像Gの輝度プロファイルを生成する場合について説明する。
図12Aにおいて、X方向(+X方向)は右方向であり、Y方向(+Y方向)は下方向であるとする。
【0193】
フォーカス調整条件決定部422は、まず、輝度プロファイルを生成するための解析領域Hを眼底画像に対して設定する(
図12Bを参照)。前述したように、セグメンテーションを利用して解析領域Hを設定してもよいし、既定の位置に解析領域Hを設定してもよい。
【0194】
例示的な解析領域Hには、複数のピクセルがX方向及びY方向に(つまり、2次元的に)配列されている。換言すると、解析領域Hには、Y方向に沿ったピクセル列が複数個含まれており、これら複数のピクセル列がX方向に配列されている。フォーカス調整条件決定部422は、解析領域Hに2次元的に配列されている複数のピクセルの輝度値をX方向に加算することによって、Y方向に沿った輝度プロファイルを生成することができる。
【0195】
別のいくつかの態様では、Y方向に沿った線状の解析領域(1次元的な解析領域)を設定し、この1次元的な解析領域の輝度プロファイルを生成してもよい。この方法は簡便であるというメリットはあるものの、1次元的な解析領域にノイズが混入している場合にはその影響が輝度プロファイルにそのまま反映されるというデメリットがある。したがって、2次元的な解析領域(H)を用いる方法には、ノイズの影響を小さくすることができるという利点がある。また、2次元的な解析領域(H)を用いる方法によれば、スリット光像Gの輝度と他の画像領域の輝度との違い(一般的に、前者は大きく、後者は小さい)を強調することができるため、輝度プロファイルの品質(例えば、精度、確度、再現性)の向上を図ることが可能になる。
【0196】
スリット光像Gの輝度プロファイルの例を
図12Cに示す。いくつかの態様において、フォーカス調整条件決定部422は、輝度プロファイルPの最大値(MAX)と最小値(MIN)とを求め、それらの中間(真ん中)の値THを求める:TH=(MAX-MIN)/2。フォーカス調整条件決定部422は、輝度プロファイルPと直線「輝度=TH」との交点を求める。このような交点は2つ存在する。2つの交点のY座標をY1及びY2とする。フォーカス調整条件決定部422は、特定された2つの交点のY座標Y1及びY2の中間(真ん中)の値Y(G)を求める:Y(G)=abs(Y1-Y2)/2。ここで、abs(α)は値αの絶対値を表す。本態様では、このようにして得られた値Y(G)が、スリット光像Gの位置(代表位置、重心位置)として採用される(
図12Dを参照)。
【0197】
スリット光像の位置を求める方法は上記方法に限定されない。例えば、上記方法では、輝度プロファイルの最大値(MAX)と最小値(MIN)との中間の値TH(TH=(MAX-MIN)/2)を求めているが、より一般に、演算式「TH=(MAX-MIN)/R」を用いることができる。ここで、Rは、予め設定された実数、又は、輝度プロファイル(又はそれと同等の情報)に基づき設定された実数であってよい。
【0198】
また、いくつかの態様では、輝度プロファイルの曲線下面積(AUC)を考慮することによってスリット光像の位置を求めてもよい。例えば、輝度プロファイル全体の曲線下面積をAとしたとき、曲線下面積Aを所定の比率に分割するY座標を求め、このY座標をスリット光像の位置(代表位置、重心位置)として採用することができる。具体例として、輝度プロファイル全体の曲線下面積Aを1:1に分割するY座標をスリット光像として求めることができる。
【0199】
別のいくつかの態様では、値THは固定値であってもよい。この固定値THを決定する方法は任意である。例えば、固定値THは、臨床的に収集された多数のデータに統計演算を適用することによって求められてもよいし、模型眼を利用した測定で得られたデータに基づき求められてもよいし、レイトレーシングなどのコンピュータシミュレーションを利用して求められてもよいし、これらの任意の組み合わせによって求められてもよいし、別の手法を用いて求められてもよい。
【0200】
フォーカス調整条件決定部422は、このようにして取得されたスリット光像の位置情報に基づいてフォーカス調整条件を決定する。
【0201】
まず、スリット光像の位置(Y座標)からフォーカス調整条件(スリット開口絞り22の位置の調整量、フォーカスレンズ47の位置の調整量)を決定するために実行される処理の原理について、
図13A及び
図13Bを更に参照しつつ説明する。
【0202】
図13Aは、照明光学系により被検眼Eの眼底Efに投射される光の経路を表している。符号100は被検眼Eの光軸E0上にある所定のターゲット100を示す。符号110はターゲット100と被検眼Eとの間にある光学系を示し、この光学系110の焦点距離をFとする。被検眼Eの眼軸長をLとし、屈折力をDとする。
【0203】
ターゲット100から照射された光(平行光)120が光学系110を経由して被検眼Eに投射される場合を考える。被検眼Eに入射する光120の高さ(光軸E0からの距離)をhとする。被検眼Eに入射した光120は、眼球光学系(角膜、水晶体など)により屈折され、眼底Efの位置130に投射される。
【0204】
ここで、
図2~
図4に示す光学系において、光120の高さhは、被検眼Eの瞳孔に対して光学的に略共役に配置される虹彩絞り21の2つの開口部21A及び21Bの間の距離の半分の値となる。
【0205】
被検眼Eが正視(0ディオプター)である場合、眼底Efにおける光120の投射位置130は眼底Efの中心(つまり、光軸E0上)に配置される。これに対し、被検眼Eが正視でない場合、眼底Efにおける光120の投射位置130は、光軸E0から距離Δだけ偏位した位置となる(偏位量Δ>0)。
【0206】
被検眼Eの屈折力Dに相当する眼底Efに対する共役点を符号140で示す。被検眼Eからこの共役点140までの距離をL´で示す。ここで、L´=1000/Dである。そうすると、
図13Aから分かるようにΔ/L=h/L´であるから、Δ=L×h/L´となる。前述したように光120の高さhは虹彩絞り21により決定される固定値であるから、眼底Efにおける光120の投射位置130の被検眼Eの光軸E0に対する偏位量Δは、被検眼Eの屈折力D(つまり、被検眼Eと共役点140との間の距離L´)、及び、被検眼Eの眼軸長Lに依存して変化する。なお、ターゲット100の形状がリング状や弧状である場合においても同様に、眼底Efにおける光120の投射位置130が被検眼Eの光軸E0に対して偏位する量はΔで表される。
【0207】
図13Bは、被検眼Eの光軸E0に対してΔだけ偏位した眼底Ef上の位置に投影されたターゲット像(ターゲット100の投影像)を光軸E0と同軸に配置された撮影光学系で撮影する場合における光の経路を表している。符号160は撮像面(撮像装置50の撮像面)を示し、符号150は被検眼Eと撮像面160との間にある光学系を示す。この光学系150の焦点距離は、
図13Aの光学系110のそれと同じくFとする。
【0208】
被検眼Eが正視である場合、眼底Efの投射位置130から出射した光170は、光学系150を経由し、撮像面160と光軸E0とが交差する位置において結像する。これに対し、被検眼Eが正視でない場合には、撮像面160における光170の結像位置は、光軸E0から距離Δ´だけ偏位した位置となる(偏位量Δ´>0)。このとき、光軸E0に沿った方向(Z方向)における結像位置も偏位する。
【0209】
図13Bから分かるようにΔ/L=Δ´/Fであるから、Δ´=F×Δ/Lとなる。上記のようにΔ=L×h/L´であるから、Δ´=F×h/L´となる。更に、L´=1000/Dであるから、Δ´=F×h×D/1000となる。
【0210】
したがって、特定の経線における被検眼Eの屈折力Dは次式により表される:D=(1000×Δ´)/(F×h)。ここで、Fは撮影光学系の焦点距離であり、hは虹彩絞り21の2つの開口部21A及び21Bの間の距離の半分の値であり、ともに既知である。よって、撮像面160における光170の偏位量Δ´を取得することで、特定の経線における被検眼Eの屈折力Dが得られる。
【0211】
本例に係る眼科装置1と同種の既存の眼科装置は、被検眼の屈折力と、フォーカス調整用光学素子(前述したフォーカス指標投影光学系、及びフォーカスレンズ)の調整量(移動距離)との間の関係を表す情報を予め有しており、この情報を参照することによって被検眼の屈折力に応じたフォーカス調整を行っている。
【0212】
同様に、いくつかの態様の眼科装置1は、被検眼の屈折力と、フォーカス調整用光学素子(
図2~
図4に示す光学系においてはスリット開口絞り22及びフォーカスレンズ47)の調整量(移動距離)との間の関係を表す情報を予め有している。眼科装置1は、この情報を参照することによって、撮像装置50により生成された画像中のスリット光像の位置に基づいてフォーカス調整条件を決定することができる。このフォーカス調整条件は、スリット開口絞り22の移動方向及び移動量(又は、これらに対応する情報)と、フォーカスレンズ47の移動方向及び移動量(又は、これらに対応する情報)とを含んでいる。
【0213】
別のいくつかの態様の眼科装置1は、2つのスリット光像の相対位置(Y方向における間隔)と、フォーカス調整用光学素子の調整量との間の関係を表す情報を予め有している。この場合、眼科装置1は、この情報を参照することによって、撮像装置50により生成された画像中のスリット光像の位置に基づいてフォーカス調整条件を決定することができる。
【0214】
より一般に、本例に係る眼科装置1は、スリット光が投射されている眼底Efを撮影して生成された情報(典型的には、画像)から取得可能な任意の情報に基づいてフォーカス調整条件を決定するように構成されていてよい。
【0215】
フォーカス調整制御部423は、例えば上記のいずれかの要領でフォーカス調整条件決定部422により決定されたフォーカス調整条件に基づいてフォーカス調整ユニット3の制御(フォーカス調整制御)を実行する。本例のフォーカス調整制御は、フォーカス調整条件に含まれるスリット開口絞り22の移動方向及び移動量(又は、これらに対応する情報)に基づいて移動機構22Mを制御する処理と、フォーカス調整条件に含まれるフォーカスレンズ47の移動方向及び移動量(又は、これらに対応する情報)に基づいて移動機構47Mを制御する処理とを含んでいる。
【0216】
いくつかの態様では、スリット開口絞り22とフォーカスレンズ47とを単一の移動機構で駆動するように構成されていてよい。この場合、フォーカス調整条件決定部422は、1つのフォーカス調整条件を決定するように構成されていてよく、且つ、フォーカス調整制御部423は、この1つのフォーカス調整条件に基づいてこの単一の移動機構を制御するように構成されていてよい。
【0217】
上記の例示的な態様では、眼科装置1は、スリット光投射制御において、被検眼Eの眼底Efに投射されるスリット光を撮影ユニット2の光軸(アライメントが適切な状態では、撮影ユニット2の光軸Oは被検眼Eの光軸E0に略一致される)に対して所定距離(高さh)だけ離隔した位置(虹彩絞り21の開口部21A又は21B)から発するように撮影ユニット2の制御を行う。
【0218】
更に、眼科装置1は、フォーカス調整条件決定処理において、この所定距離(高さh)と、撮影ユニット2の撮像装置50により生成された画像におけるスリット光像の位置(偏位量Δ´)と、撮影ユニット2の焦点距離(F)とに基づいてフォーカス調整条件(スリット開口絞り22の移動方向及び移動量又はこれらに対応する情報、並びに、フォーカス調整条件に含まれるフォーカスレンズ47の移動方向及び移動量又はこれらに対応する情報)を決定する。
【0219】
そして、眼科装置1は、フォーカス調整条件決定処理により得られたフォーカス調整条件に基づいてフォーカス調整ユニット3(移動機構22M及び移動機構47M)の制御を行う。
【0220】
なお、本実施形態に係る眼科装置1の1つの特徴は、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像に基づき決定された撮影条件に基づいて被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用することであり、すなわち、スリットスキャン撮影の好適な撮影条件を決定する技術に関するものであって、フォーカス調整技術そのものの内容に関するものではない。したがって、別のいくつかの実施形態に係る眼科装置は、前述した新規なフォーカス調整方法を実行するための構成の代わりに、又は、当該構成に加えて、既存のフォーカス専用ハードウェア要素(及び、それを制御するためのソフトウェア要素)、及び/又は、別のフォーカス専用ハードウェア要素(及び、それを制御するためのソフトウェア要素)を備えていてもよい。
【0221】
本実施形態に係る新規なスリットスキャン撮影の背景及び概要について説明する。
【0222】
図14Aの上段の図は被検眼Eが正視眼E1である場合における光の経路を表し、下段の図は被検眼Eが強度近視眼E2である場合における光の経路の場合を表す。破線で示す光L1は前述の第1のスリット光であり、点線で示す光L2は前述の第2のスリット光である。
【0223】
本例においては、眼軸を基準とした角度によって眼底位置が表現されているが、前述したように眼底位置の表現方法はこれに限定されない。また、本例では、眼底位置の範囲(スリットスキャン撮影が適用される範囲である。スリットスキャン範囲と呼ぶ。)がマイナス25度からプラス25度の範囲に設定されているが、スリットスキャン範囲はこれに限定されず任意であってよい。なお、スリットスキャン撮影が適用される範囲が広いほど眼底周辺部におけるスリット光の投射位置ズレも大きくなることは、当業者であれば理解することができるであろう。
【0224】
正視眼E1の眼球形状は略球形であるため、
図14Aの上段の図に示すように、スリットスキャン範囲の全体にわたって第1のスリット光L1の投射位置と第2のスリット光L2の投射位置とは略一致する。したがって、正視眼E1にスリットスキャン撮影を適用する場合には、
図14Bの上段の図に示すように、スリットスキャン範囲の全体を略均一な明るさ(強度)のスリット光でスキャンすることができ、全体にわたって輝度ムラのない画像H1が得られる。符号J1は、画像H1における輝度分布(スリットスキャン範囲におけるスリット光の強度分布)を表しており、特に、眼底位置0度近傍における輝度値、眼底位置マイナス25度近傍における輝度値、及び、眼底位置プラス25度近傍における輝度値を示している。
【0225】
これに対し、強度近視眼E2においては、眼球形状が略楕円形状(典型的には、眼軸方向を長軸とする楕円形状)であるため、
図14Aの下段の図に示すように、眼底位置0度及びその近傍では第1のスリット光L1の投射位置と第2のスリット光L2の投射位置とが略一致するものの、眼底位置0度から離れた位置(眼底周辺部)では第1のスリット光L1の投射位置と第2のスリット光L2の投射位置との間にズレが生じる。したがって、強度近視眼E2にスリットスキャン撮影を適用する場合には、
図14Bの下段の図に示すように、スリットスキャン範囲の全体を略均一な明るさ(強度)のスリット光でスキャンすることができず、輝度ムラのある画像H2が得られることとなる。符号J2は、画像H2における輝度分布(スリットスキャン範囲におけるスリット光の強度分布)を表しており、特に、眼底位置0度近傍における輝度値、眼底位置マイナス25度近傍における輝度値、及び、眼底位置プラス25度近傍における輝度値を示している。眼底位置マイナス25度近傍及び眼底位置プラス25度近傍においては、正視眼E1の画像H1と比較して、輝度が低下していることが分かる。なお、
図14A及び
図14Bにおいては、眼底中心部におけるスリット光の投射強度と眼底周辺部におけるスリット光の投射強度とを比較するために、眼底位置0度近傍、眼底位置マイナス25度近傍、及び眼底位置プラス25度近傍における状態のみが表されている。
【0226】
このような輝度ムラの問題を解決するために、本開示に係る眼科装置は、次の処理を実行するように構成されている:(1)被検眼Eの眼底Efにおける2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成する;(2)生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する;(3)決定された撮影条件に基づいて被検眼Eの眼底Efにスリットスキャン撮影を適用する。
【0227】
本開示では、光源の制御を実行する実施形態(第1の実施形態)及びフォーカスの制御を実行する実施形態(第2の実施形態)について特に詳しく説明するが、輝度ムラの問題を解決するために採用可能な実施形態はこれらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、光スキャナーの制御、シャッターの制御、減光フィルターの制御、液晶駆動透過光量可変デバイスの制御などを用いて、被検眼Eの眼底Efに対するスリット光の投射光量の制御を実行可能な構成を採用することができる。また、光源の制御、フォーカスの制御、光スキャナーの制御、シャッターの制御、減光フィルターの制御、液晶駆動透過光量可変デバイスの制御、及び、これら以外の採用可能な制御のうちから任意に選択された2つ以上の制御を組み合わせてもよい。
【0228】
本実施形態に係る眼科装置1は、スリットスキャン撮影の輝度ムラの問題を解決するために撮影ユニット2の光源10の制御を実行する。より具体的には、眼科装置1は、次の処理を実行するように構成されていてよい:(1)被検眼Eの眼底Efにおける2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成する(準備的撮影);(2)準備的撮影で取得された2つ以上の画像に基づいて、光源10を制御するための撮影条件(光源制御条件)を決定する;(3)決定された光源制御条件に基づく光源10の制御を実行しながら被検眼Eの眼底Efにスリットスキャン撮影を適用する。
【0229】
準備的撮影では、被検眼Eの眼底Efにおける2つ以上の領域の撮影がそれぞれ実行される。準備的撮影の対象となる眼底Efの領域を準備的撮影領域と呼ぶ。また、準備的撮影により生成される、各準備的撮影領域の画像を準備的撮影画像と呼ぶ。準備的撮影領域の個数(準備的撮影画像の個数)は任意であってよい。準備的撮影領域の個数が多いほど撮影条件の品質(確度、精度など)が向上することが期待されるが、準備的撮影に掛かる時間や手間、検者や被検者の負担などが増加するおそれがある。これらの事情を鑑みて準備的撮影領域の個数を決定することができる。
【0230】
図15Aに示す例では、複数の眼底位置Pn(n=1、2、3、・・・、N)にそれぞれ対応する複数の準備的撮影領域の撮影がそれぞれ実行され、複数の眼底位置Pnにそれぞれ対応する複数の準備的撮影画像が取得される。眼底位置Pnに対応する準備的撮影領域は、例えば、
図14Bにおいて斜線又はドットの塗りつぶしで示された領域のようなスリット光投射領域であってよいが、別の領域であってもよい。
【0231】
図6Bの算出処理部431は、準備的撮影により生成された複数の準備的撮影画像に基づいて、被検眼Eの眼底Efにおける複数の準備的撮影領域にそれぞれ対応する複数の値を算出する。本実施形態の算出処理部431により算出される値は、撮影ユニット2の光源10を制御するための所定の操作量の値である。この操作量は、例えば、光源10の制御量である発光強度を変化させるための操作量であり、光源10に対する印加電圧の調整量である。
【0232】
算出処理部431が実行する処理の非限定的な例を説明する。まず、算出処理部431は、各準備的撮影画像の輝度値を求める。準備的撮影画像の輝度値は、この準備的撮影画像の複数の画素の輝度値の代表値であり、例えば、最大値、平均値などの任意の統計量であってよい。これにより、
図15Aに示すように、複数の眼底位置Pnにそれぞれ対応する複数の輝度値Bnが得られる。
【0233】
次に、算出処理部431は、複数の輝度値Bnに基づいて、撮影ユニット2の光源10を制御するための操作量(光源操作量)の値を求める。例えば、算出処理部431は、複数の眼底位置Pnから予め選択された基準眼底位置P0における輝度値B0を、眼底位置Pnにおける輝度値Bnで除算することによって、この眼底位置Pnにおける光源操作量の値を求める。これにより、
図15Aに示すように、複数の眼底位置Pnにそれぞれ対応する複数の光源操作量の値Cnが得られる:Cn=B0/Bn。
【0234】
図15Bは1つの具体例を示す。本例の準備的撮影では、マイナス20度位置、0度位置、及びプラス20度位置の3つの眼底位置の撮影が実行され、これら3つの眼底位置にそれぞれ対応する3つの準備的撮影画像が取得される。算出処理部431は、各準備的撮影画像における最大輝度値を求める。本例では、マイナス20度位置に対応する輝度値は「100」であり、0度位置に対応する輝度値は「200」であり、プラス20度位置に対応する輝度値は「95」である。更に、算出処理部431は、0度位置に対応する輝度値「200」をマイナス20度位置に対応する輝度値「100」で除算することによってマイナス20度位置に対応する光量調整値「2.0」を求め、0度位置に対応する輝度値「200」を0度位置に対応する輝度値「200」で除算することによって0度位置に対応する光量調整値「1.0」を求め、0度位置に対応する輝度値「200」をプラス20度位置に対応する輝度値「95」で除算することによってプラス20度位置に対応する光量調整値「2.1」を求める。
【0235】
なお、眼底形状の対称性を考慮することができる場合には、マイナス20度位置、0度位置、及びプラス20度位置の3つの眼底位置の撮影を行う代わりに、マイナス20度位置及び0度位置の2つの眼底位置の撮影のみ、又は、0度位置及びプラス20度位置の2つの眼底位置の撮影のみを行うようにしてもよい。
【0236】
決定処理部432は、算出処理部431により算出された、被検眼Eの眼底Efにおける複数の準備的撮影領域にそれぞれ対応する複数の値に基づいて、被検眼Eの眼底Efにスリットスキャン撮影を適用するための光源制御条件を決定する。この光源制御条件は、例えば、連続的情報でも離散的情報でもよい。
【0237】
決定処理部432は、例えば、算出処理部431により算出された複数の値に所定の演算(内挿、外挿、回帰分析など)を適用することによって光源制御条件を求める。
図15Aの情報が算出処理部431により生成された場合、決定処理部432は、光源操作量の値Cnに所定の演算を適用することによって光源制御条件を求めることができる。
【0238】
図15Bの情報が算出処理部431により生成された場合、決定処理部432は、例えば、マイナス20度位置に対応する光量調整値「2.0」と、0度位置に対応する光量調整値「1.0」と、プラス20度位置に対応する光量調整値「2.1」とを、眼底位置を示す第1の座標軸(x軸)と光量調整値を示す第2の座標軸(y軸)とによって張られた座標系の座標(x、y)で表現し、これら3つの座標を通る近似式y=f(x)を求める:y=0.0026x^2+0.0026x+1。この近似式(近似多項式)は、連続的情報としての光源制御条件の例である。別の例として、決定処理部432は、
図15Bの3つの光量調整値に内挿及び/又は外挿を適用して4つ以上の光量調整値を含む離散的情報を生成することができる。
【0239】
撮影制御部410は、撮影条件決定部430(決定処理部432)により決定された光源制御条件に基づいて、被検眼Eの眼底Efのスリットスキャン撮影のための制御(第2の撮影制御)を実行する。
【0240】
本実施形態のスリットスキャン撮影は、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射と、この一連の領域の順次的な撮影との組み合わせによって実行される。この一連の領域は、複数の眼底位置に対応している。
図15A~
図15Cの例から分かるように、撮影条件決定部430により生成される光源制御条件は、この一連の領域に対するスリット光の投射強度(投射光量)が等しくなるように設計されている。撮影制御部410は、被検眼Eの眼底Efにスリットスキャン撮影を適用するために、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射と、この一連の領域に対する順次的な撮影の適用とを撮影ユニット2に同期的に実行させるための制御と並行して、撮影条件決定部430により生成された光源制御条件に基づく光源10の制御を実行する。
【0241】
本例では、光源制御条件として、光源10により出力される光の強度(明るさ)を制御するための条件(発光強度制御条件)が求められる。本例の撮影制御部410は、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域(スリットスキャン範囲における複数の部分領域)の順次的な撮影のための撮影ユニット2の制御と並行して、撮影条件決定部430により生成された発光強度制御条件に基づく光源10の制御を実行する。換言すると、本例の撮影制御部410は、撮影条件決定部430により生成された発光強度制御条件に基づく光源10の制御を実行しつつ、被検眼Eの眼底Efのスリットスキャン撮影のための制御を実行する。これにより、発光強度制御条件に応じて光源10からの出力光の強度変調を実行しつつ、被検眼Eの眼底Efのスリットスキャン撮影を行うことができる。
【0242】
撮影制御部410によって光源10の発光強度を制御するための構成は任意であってよい。非限定的な例において、撮影制御部410は、発光強度制御条件に基づきD/A変換回路を制御することによって光源10(例えば、発光ダイオード)への印加電圧を調整するように構成されていてよい。
【0243】
このように、本例によれば、スリットスキャン撮影における順次的撮影が適用される一連の領域に対するスリット光の投射強度が等しくなるように設計された撮影条件(光源制御条件、発光強度制御条件)を生成し、この撮影条件を用いてスリットスキャン撮影を実行することができる。これにより、被検眼Eの眼底Efのスリットスキャン範囲の全体を略均一な明るさ(強度)のスリット光でスキャンすることができ、全体にわたって輝度ムラのない画像を生成することが可能になる。
【0244】
本例では、撮影ユニット2の光源10を制御する場合について説明したが、減光フィルターや透過光量可変デバイスなどの別の光強度変更要素を制御する場合においても、本例と同様の処理を実行することができ、それにより、本例と同様の作用及び効果を達成することが可能である。
【0245】
第1の実施形態に係る眼科装置1が実行する動作について説明する。眼科装置1の動作の非限定的な例を
図16に示す。
【0246】
まず、被検眼Eの眼底Efの撮影準備として、眼科装置1は、眼底Efに対する撮影ユニット2のアライメント(S1)と、眼底Efに対するフォーカス調整(S2)とを実行する。
【0247】
ステップS1のアライメントによって、眼底Efを撮影するための適切な位置に撮影ユニット2の光学系が配置される。アライメントで達成された眼底Efと撮影ユニット2との間の相対位置(適切なアライメント状態)を維持するためにトラッキングを行ってもよい。
【0248】
ステップS3で実行されるフォーカス調整の方法は任意であってよい。フォーカス調整によって被検眼Eの視度データが得られる。例えば、前述したように、ステップS2のフォーカス調整によってフォーカス調整条件が決定され、このフォーカス調整条件に基づき被検眼Eの視度データが得られる。ステップS2で取得された被検眼Eの視度データは、例えば、メモリ5に記録される。
【0249】
撮影準備が完了したら、眼科装置1は、撮影ユニット2によって、眼底Efにおける複数の位置(複数の眼底位置)にそれぞれ対応する複数の準備的撮影画像を取得する(S3)。ステップS3では、例えば、
図15Bに示す3つの眼底位置(マイナス20度位置、0度位置、及びプラス20度位置)にそれぞれ対応する3つの準備的撮影画像が取得される。ステップS3で取得された複数の準備的撮影画像は、例えば、メモリ5に記録される。
【0250】
次に、眼科装置1は、撮影条件決定部430(算出処理部431及び決定処理部432)によって、ステップS3で取得された複数の準備的撮影画像に基づいて撮影条件を決定する(S4)。ステップS4では、例えば、光源制御条件が取得される。本動作例では、発光強度制御条件が生成される。ステップS4で取得された撮影条件は、例えば、メモリ5に記録される。
【0251】
撮影条件の生成が完了したら、眼底Efの撮影を開始するための指示が行われる(S5)。この撮影開始指示は、例えば、ユーザーがユーザーインターフェイス6を操作することによって行われ(手動指示)、又は、撮影準備の完了を検知したプロセッサ4によって行われる(オートシュート)。
【0252】
撮影開始の指示を受けたプロセッサ4(撮影制御部410)は、ステップS4で取得された撮影条件に基づき撮影ユニット2を制御することによって、眼底Efにスリットスキャン撮影を適用する(S6)。本動作例では、眼科装置1は、ステップS4で取得された発光強度制御条件に基づき撮影制御部410によって撮影ユニット2の光源10を制御しつつ、眼底Efのスリットスキャン撮影を実行する。すなわち、眼科装置1は、眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせであるスリットスキャン撮影を撮影ユニット2に実行させるための制御と並行して、ステップS4で取得された発光強度制御条件に基づく光源10の制御を実行する。これにより、眼底Efにおける一連の領域にそれぞれ対応する複数の画像が収集される。
【0253】
プロセッサ4は、ステップS6のスリットスキャン撮影により収集された複数の画像に基づいて、スリットスキャン範囲に相当する眼底Efの領域(一連の領域の和集合としての領域)の画像を構築する(S7)。
【0254】
ステップS7で生成された眼底Efの画像は、スリットスキャン範囲の全体にわたって略均一な明るさのスリット光を投射するように光源10(発光強度)を制御しながら収集された複数の画像を合成したものであるから、輝度ムラを有しない画像(少なくとも、本動作例を適用せずに取得された画像との比較において輝度ムラが低減されている画像)である。以上で、本動作例は終了となる(エンド)。
【0255】
本動作例の効果について
図17を更に参照して説明する。なお、
図17においては、
図14A及び
図14Bと同様に、眼底中心部におけるスリット光の投射強度と眼底周辺部におけるスリット光の投射強度とを比較するために、眼底位置0度近傍、眼底位置マイナス25度近傍、及び眼底位置プラス25度近傍における状態のみが表されている。
【0256】
被検眼Eが正視眼E1である場合、本動作例によれば、
図17の上段の図に示すように、光源10の発光強度を一定の値K1に保ちつつスリットスキャン撮影を実行することによって、スリットスキャン範囲の全体を略均一な明るさのスリット光でスキャンすることができ、全体にわたって輝度ムラのない画像H1が得られる。
【0257】
一方、被検眼Eが強度近視眼E2である場合において、本動作例に係る光源制御(発光強度制御)を利用することなく、光源10の発光強度を一定の値K1に保持しつつスリットスキャン撮影を実行すると、
図14Bの下段の図に示すように、スリットスキャン範囲の全体を略均一な明るさのスリット光でスキャンすることができないため、輝度ムラのある画像H2が得られてしまう。
【0258】
これに対し、被検眼Eが強度近視眼E2である場合において本動作例に係る光源制御(発光強度制御)を利用すると、眼底中心部に対応する発光強度が相対的に低くなり、且つ、眼底周辺部に対応する発光強度が相対的に高くなるように光源10を制御しながらスリットスキャン撮影が実行されるため、符号J2で示す不均一な輝度分布(スリットスキャン範囲におけるスリット光の強度分布の不均一性)が解消され、符号J3で示すようにスリットスキャン範囲の全体を略均一な明るさのスリット光でスキャンすることが可能となる。これにより、全体にわたって輝度ムラのない画像H3を取得することが可能になる。
【0259】
本動作例では、光源10の発光強度を変調することによって眼底Efに投射されるスリット光の強度を変調しているが、画像の明るさの均一化を図るための光源制御はこれに限定されない。
【0260】
例えば、光源10の発光時間(光源10がパルス発光する時間)を変調することによって、眼底Efの一連の領域(スリットスキャン範囲の複数の部分領域)に投射されるスリット光の光量を変調しながら、眼底Efのスリットスキャン撮影を行ってもよい。或いは、光源10から出力された光(又は、この光から生成されたスリット光)を遮断可能なシャッターを設けるとともにこのシャッターの制御を行うことによって、眼底Efの一連の領域に対するスリット光の投射時間を変化させながら(つまり、眼底Efの一連の領域に投射されるスリット光の光量を変調しながら)、眼底Efのスリットスキャン撮影を行ってもよい。これらの変形例に係る撮影条件(発光時間制御条件、シャッター制御条件など)、撮影条件の決定方法、撮影条件に基づく光学素子(光源10、シャッターなど)の制御方法などについては、当業者であれば、本実施形態を含む本開示から理解することができるであろう。
【0261】
第1の実施形態に係る眼科装置1のいくつかの非限定的な特徴について説明する。
【0262】
本実施形態の眼科装置1は、被検眼Eの眼底Efに対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニット2を含む撮影部と、プロセッサ4とを含んでいる。プロセッサ4は、第1の撮影制御、撮影条件決定処理、及び第2の撮影制御を実行するように構成されている。第1の撮影制御において、プロセッサ4は、被検眼Eの眼底Efにおける2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように撮影ユニット2を制御する。撮影条件決定処理において、プロセッサ4は、第1の撮影制御により生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する。第2の撮影制御において、プロセッサ4は、撮影条件決定処理により決定された撮影条件に基づいて被検眼Eの眼底Efにスリットスキャン撮影を適用するように撮影部を制御する。
【0263】
本実施形態の眼科装置1において、撮影ユニット2は、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせによってスリットスキャン撮影を実行するように構成されていてよい。更に、プロセッサ4は、この一連の領域に対するスリット光の投射強度(投射光量)が等しくなるように第2の撮影制御を実行するように構成されていてよい。
【0264】
本実施形態の眼科装置1において、撮影ユニット2は、光源10を含み、光源10により発生された光からスリット光を生成するように構成されていてよい。更に、プロセッサ4は、第2の撮影制御において、光源10の制御を実行するように構成されていてよい。
【0265】
本実施形態の眼科装置1において、プロセッサ4は、撮影条件決定処理を実行する撮影条件決定部430と、第2の撮影制御を実行する撮影制御部410とを含んでいてよい。更に、撮影条件決定部430は、算出処理部431と決定処理部432とを含んでいてよい。算出処理部431は、第1の撮影制御により生成された2つ以上の画像に基づいて、被検眼Eの眼底Efにおける2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の値を算出するように構成されている。決定処理部432は、算出処理部431により算出された2つ以上の値に基づいて撮影条件を決定するように構成されている。加えて、撮影制御部410は、決定処理部432により決定された撮影条件に基づいて第2の撮影制御を実行するように構成されていてよい。
【0266】
本実施形態の眼科装置1において、撮影ユニット2は、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせによってスリットスキャン撮影を実行するように構成されていてよい。更に、撮影条件決定部430は、この一連の領域に対するスリット光の投射強度(投射光量)が等しくなるように撮影条件を決定するように構成されていてよい。加えて、撮影制御部410は、第2の撮影制御において、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせを実行させるための撮影ユニット2の制御と並行して、決定処理部432により決定された撮影条件に基づく撮影部の制御を実行するように構成されていてよい。
【0267】
本実施形態の眼科装置1において、決定処理部432は、算出処理部431により算出された2つ以上の値に基づいて、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域にそれぞれ対応する一連の値を含む撮影条件を生成するように構成されていてよい。
【0268】
本実施形態の眼科装置1において、決定処理部432により生成される、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域にそれぞれ対応する一連の値を含む撮影条件は、連続的情報及び離散的情報のいずれかを含んでいてよい。
【0269】
本実施形態の眼科装置1において、決定処理部432は、算出処理部431により算出された2つ以上の値に内挿、外挿、及び回帰分析のうちの1つ以上の演算を適用することによって、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域にそれぞれ対応する一連の値を含む撮影条件(連続的情報及び/又は離散的情報を含んでいてもよい)を生成するように構成されていてよい。
【0270】
本実施形態の眼科装置1において、撮影ユニット2は、光源10を含み、光源10により発生された光からスリット光を生成するように構成されていてよい。更に、撮影条件決定部430は、光源10を制御するための光源制御条件を撮影条件として決定するように構成されていてよい。加えて、撮影制御部410は、第2の撮影制御において、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせを実行させるための撮影ユニット2の制御と並行して、撮影条件決定部430により決定された光源制御条件に基づく光源10の制御を実行するように構成されていてよい。
【0271】
本実施形態の眼科装置1において、撮影条件決定部430は、光源10により発生される光の強度を制御するための発光強度制御条件を光源制御条件として決定するように構成されていてよい。更に、撮影制御部410は、第2の撮影制御において、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせを実行させるための撮影ユニット2の制御と並行して、撮影条件決定部430により決定された発光強度制御条件に基づく光源10の制御を実行するように構成されていてよい。
【0272】
本実施形態の眼科装置1において、撮影部は、撮影ユニット2に加えて、撮影ユニット2のフォーカス調整を行うためのフォーカス調整ユニット3を更に含んでいてよい。更に、プロセッサ4は、被検眼Eの眼底Efに対する撮影ユニット2のフォーカス調整を実行するようにフォーカス調整ユニットの制御を実行した後に第1の撮影制御を実行するように構成されていてよい。すなわち、本実施形態の眼科装置1は、フォーカス調整がなされた状態の撮影ユニット2によって、撮影条件決定処理に提供される画像を生成するように構成されていてよい。
【0273】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る眼科装置について説明する。第1の実施形態に係る眼科装置1と同様に、第2の実施形態に係る眼科装置は、スリットスキャン方式のモダリティを用いて生体眼の眼底を画像化する眼科イメージング機能を有し、撮影ユニット2、フォーカス調整ユニット3、プロセッサ4、メモリ5、及びユーザーインターフェイス6を含んでいる。第1の実施形態に係る任意の事項を第2の実施形態に係る眼科装置に適用することができる。以下、第1の実施形態に係る事項を適宜に参照しつつ第2の実施形態について説明を行う。
【0274】
第1の実施形態では、被検眼Eの眼底Efに対するスリットスキャン撮影において撮影制御部410により制御される要素は撮影ユニット2のみである。これに対し、第2の実施形態では、被検眼Eの眼底Efに対するスリットスキャン撮影において撮影制御部410により制御される要素は撮影ユニット2及びフォーカス調整ユニット3の双方である。
【0275】
本実施形態で説明する例示的な態様では、スリットスキャン撮影のための撮影ユニット2の制御と並行して、フォーカス調整ユニット3の2つの移動機構22M及び47Mの制御を実行するが、フォーカス調整ユニット3の制御はこれに限定されない。例えば、光源10、虹彩絞り21、レンズ24、及びスリット開口絞り22を含む複数の要素を可動ユニットとして構成し、且つ、この可動ユニットを照明光学系20の光軸に沿う方向に移動するユニット移動機構を設けるとともに、スリットスキャン撮影のための撮影ユニット2の制御と並行してユニット移動機構の制御及び移動機構47Mの制御を実行するように構成することができる。なお、ユニット移動機構を含む眼科装置は、移動機構22Mを含まなくてもよいし、移動機構22M及びユニット移動機構の双方を含んでもよい。
【0276】
本実施形態に係る眼科装置1は、スリットスキャン撮影の輝度ムラの問題を解決するためにフォーカス調整ユニット3の制御を実行する。より具体的には、眼科装置1は、次の処理を実行するように構成されていてよい:(1)被検眼Eの眼底Efにおける2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成する(準備的撮影);(2)準備的撮影で取得された2つ以上の画像に基づいて、フォーカス調整ユニット3を制御するための撮影条件(フォーカス制御条件)を決定する;(3)決定されたフォーカス制御条件に基づくフォーカス調整ユニット3の制御を実行しながら被検眼Eの眼底Efにスリットスキャン撮影を適用する。
【0277】
第1の実施形態と同様に、準備的撮影では、被検眼Eの眼底Efにおける2つ以上の準備的撮影領域の撮影がそれぞれ実行されて、2つ以上の準備的撮影領域にそれぞれ対応する複数の準備的撮影画像が生成される。準備的撮影領域の個数(準備的撮影画像の個数)は任意であってよい。
図15Aに示す例では、複数の眼底位置Pn(n=1、2、3、・・・、N)にそれぞれ対応する複数の準備的撮影領域の撮影がそれぞれ実行され、複数の眼底位置Pnにそれぞれ対応する複数の準備的撮影画像が取得される。眼底位置Pnに対応する準備的撮影領域は、例えば、
図14Bにおいて斜線又はドットの塗りつぶしで示された領域のようなスリット光投射領域であってよいが、別の領域であってもよい。
【0278】
図6Bの算出処理部431は、準備的撮影により生成された複数の準備的撮影画像に基づいて、被検眼Eの眼底Efにおける複数の準備的撮影領域にそれぞれ対応する複数の値を算出する。本実施形態の算出処理部431により算出される値は、フォーカス調整ユニット3を制御するための所定の操作量の値である。この操作量は、フォーカス調整ユニット3の制御量である撮影ユニット2のフォーカス状態(ディオプター値、焦点位置)を変化させるための制御信号のパラメータであってよく、例えば、移動機構22M及び移動機構47Mを制御するための駆動パルスの個数を含んでいてもよい。
【0279】
算出処理部431が実行する処理の非限定的な例を説明する。本例では、準備的撮影において、第1の実施形態で
図8~
図11を参照しつつ説明した原理に基づくフォーカス調整を実行することによって、被検眼Eの眼底Efにおける複数の準備的撮影領域にそれぞれ対応する複数の視度データ(ディオプターのずれ量)が得られる。
【0280】
そのために、算出処理部431は、例えば、第1の実施形態で説明したように、2つのスリット光(第1のスリット光L1及び第2のスリット光L2)の相対位置に基づいて視度データを求めることができる。より具体的には、算出処理部431は、例えば、各準備的撮影画像について、次の一連の処理を実行する:準備的撮影画像から、第1のスリット光L1の像(第1のスリット光像)と、第2のスリット光L2の像(第2のスリット光像)とを検出する;第1のスリット光像の位置(例えば、第1のスリット光像の重心位置)を特定する;第2のスリット光像の位置(例えば、第2のスリット光像の重心位置)を特定する;第1のスリット光像の位置と第2のスリット光像の位置との間の距離(偏位)を算出する;この距離に基づいて、当該準備的撮影画像に対応する眼底位置における視度データ(ディオプターのずれ量)を求める。
【0281】
これにより、
図18に示すように、複数の眼底位置Pnにそれぞれ対応する複数のフォーカス操作量の値Dnが得られる(n=1、2、3、・・・、N)。
【0282】
決定処理部432は、算出処理部431により算出された、被検眼Eの眼底Efにおける複数の準備的撮影領域にそれぞれ対応する複数の値(フォーカス操作量の複数の値)に基づいて、被検眼Eの眼底Efにスリットスキャン撮影を適用するためのフォーカス制御条件を決定する。このフォーカス制御条件は、例えば、連続的情報でも離散的情報でもよい。
【0283】
決定処理部432は、例えば、算出処理部431により算出された複数の値に所定の演算(内挿、外挿、回帰分析など)を適用することによってフォーカス制御条件を求める。
図18の情報が算出処理部431により生成された場合、決定処理部432は、フォーカス操作量の値Dnに所定の演算を適用することによってフォーカス制御条件を求めることができる。例えば、決定処理部432は、マイナス20度位置に対応するフォーカス調整値D(-20)と、0度位置に対応するフォーカス調整値D(0)と、プラス20度位置に対応するフォーカス調整値D(+20)とを、眼底位置を示す第1の座標軸(x軸)とフォーカス調整値を示す第2の座標軸(y軸)とによって張られた座標系の座標(x、y)で表現し、これら3つの座標を通る近似式y=f(x)を求めることができる。この近似式は、連続的情報としてのフォーカス制御条件の例である。別の例として、決定処理部432は、
図18の複数のフォーカス調整値に内挿及び/又は外挿を適用して4つ以上のフォーカス調整値を含む離散的情報を生成することができる。
【0284】
なお、眼底形状の対称性を考慮することができる場合には、マイナス20度位置、0度位置、及びプラス20度位置の3つの眼底位置の撮影を行う代わりに、マイナス20度位置及び0度位置の2つの眼底位置の撮影のみ、又は、0度位置及びプラス20度位置の2つの眼底位置の撮影のみを行うようにしてもよい。
【0285】
撮影制御部410は、撮影条件決定部430(決定処理部432)により決定されたフォーカス制御条件に基づいて、被検眼Eの眼底Efのスリットスキャン撮影のための制御(第2の撮影制御)を実行する。
【0286】
本実施形態のスリットスキャン撮影は、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射と、この一連の領域の順次的な撮影との組み合わせによって実行される。この一連の領域は、複数の眼底位置に対応している。
図18の例から分かるように、撮影条件決定部430により生成されるフォーカス制御条件は、この一連の領域に対する撮影ユニット2のフォーカス状態が等しくなるように(例えば、この一連の領域の全てに対して撮影ユニット2のピントが合うように)設計されたものであり、これにより、この一連の領域に対するスリット光の投射強度(投射光量)を等しくすることができる。撮影制御部410は、被検眼Eの眼底Efにスリットスキャン撮影を適用するために、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射と、この一連の領域に対する順次的な撮影の適用とを撮影ユニット2に同期的に実行させるための制御と並行して、撮影条件決定部430により生成されたフォーカス制御条件に基づくフォーカス調整ユニット3の制御を実行する。
【0287】
本例では、フォーカス調整制御条件として、撮影ユニット2の焦点位置を制御するための条件(焦点位置制御条件)が求められる。本例の撮影制御部410は、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域(スリットスキャン範囲における複数の部分領域)の順次的な撮影のための撮影ユニット2の制御と並行して、撮影条件決定部430により生成された焦点位置制御条件に基づくフォーカス調整ユニット3の制御を実行する。換言すると、本例の撮影制御部410は、撮影条件決定部430により生成された焦点位置制御条件に基づくフォーカス調整ユニット3の制御を実行しつつ、被検眼Eの眼底Efのスリットスキャン撮影のための制御を実行する。これにより、焦点位置制御条件に応じて撮影ユニット2の焦点位置を変化させつつ、被検眼Eの眼底Efのスリットスキャン撮影を行うことができる。
【0288】
撮影制御部410によって撮影ユニット2の焦点位置を制御するための構成は任意であってよい。本実施形態では、撮影ユニット2は、被検眼Eの眼底Efにスリット光を投射する照明光学系20(第1の光学系)と、撮像装置50と、被検眼Eの眼底Efからのスリット光の戻り光を撮像装置50に導く撮影光学系40(第2の光学系)とを含んでいる。また、本実施形態のフォーカス調整ユニット3は照明光学系20の焦点位置を調整するための移動機構22M(第1のフォーカス調整ユニット)と、撮影光学系40の焦点位置を調整するための移動機構47M(第2のフォーカス調整ユニット)とを含んでいる。このような本実施形態において、撮影制御部410は、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせによってスリットスキャン撮影を実行するための撮影ユニット2の制御と並行して、照明光学系20の焦点位置を移動するための移動機構22Mの制御と撮影光学系40の焦点位置を移動するための移動機構47Mの制御とを、撮影条件決定部430により生成された焦点位置制御条件に基づき実行することができる。
【0289】
このように、本例によれば、スリットスキャン撮影における順次的撮影が適用される一連の領域に対するスリット光の投射強度が等しくなるように設計された撮影条件(フォーカス制御条件、焦点位置制御条件)を生成し、この撮影条件を用いてスリットスキャン撮影を実行することができる。これにより、被検眼Eの眼底Efのスリットスキャン範囲の全体を略均一な明るさ(強度)のスリット光でスキャンすることができ、全体にわたって輝度ムラのない画像を生成することが可能になる。
【0290】
本例では、スリット開口絞り22及びフォーカスレンズ47を移動することによって撮影ユニット2のフォーカス制御を実行する場合について説明したが、撮影ユニット2のフォーカス制御の方法はこれに限定されない。
【0291】
第2の実施形態に係る眼科装置1が実行する動作について説明する。本実施形態の眼科装置1の動作の非限定的な例を
図19に示す。
【0292】
まず、被検眼Eの眼底Efの撮影準備として、眼科装置1は、眼底Efに対する撮影ユニット2のアライメント(S11)と、眼底Efに対するフォーカス調整(S12)とを実行する。本動作例では、第1の実施形態で詳述されたフォーカス調整方法が適用され、ステップS12のフォーカス調整において準備的撮影が実行される。なお、別の動作例では、任意の方法のフォーカス調整が実行された後に準備的撮影を実行するようにしてもよい。
【0293】
準備的撮影が実行された後、眼科装置1は、撮影条件決定部430(算出処理部431及び決定処理部432)によって、この準備的撮影で取得された複数の準備的撮影画像に基づいて撮影条件を決定する(S13)。ステップS13では、例えば、フォーカス制御条件が取得される。本動作例では、焦点位置制御条件が生成される。ステップS13で取得された撮影条件は、例えば、メモリ5に記録される。
【0294】
撮影条件の生成が完了したら、眼底Efの撮影を開始するための指示が行われる(S14)。撮影開始の指示を受けたプロセッサ4(撮影制御部410)は、ステップS13で取得された撮影条件に基づきフォーカス調整ユニット3を制御しつつ、眼底Efにスリットスキャン撮影を適用するために撮影ユニット2の制御を行う(S6)。本動作例では、眼科装置1は、ステップS13で取得された焦点制御条件に基づき撮影制御部410によって移動機構22M及び移動機構47Mを制御しつつ、撮影ユニット2に眼底Efのスリットスキャン撮影を実行させる。すなわち、眼科装置1は、眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせであるスリットスキャン撮影を撮影ユニット2に実行させるための制御と並行して、ステップS13で取得された焦点位置制御条件に基づくフォーカス調整ユニット3の制御を実行する。これにより、眼底Efにおける一連の領域にそれぞれ対応する複数の画像が収集される。
【0295】
プロセッサ4は、ステップS15のスリットスキャン撮影により収集された複数の画像に基づいて、スリットスキャン範囲に相当する眼底Efの領域(一連の領域の和集合としての領域)の画像を構築する(S16)。
【0296】
ステップS16で生成された眼底Efの画像は、スリットスキャン範囲の全体にわたって略均一な明るさのスリット光を投射するようにフォーカス調整ユニット3(撮影ユニット2の焦点位置)を制御しながら収集された複数の画像を合成したものであるから、輝度ムラを有しない画像(少なくとも、本動作例を適用せずに取得された画像との比較において輝度ムラが低減されている画像)である。以上で、本動作例は終了となる(エンド)。
【0297】
第2の実施形態に係る眼科装置1のいくつかの非限定的な特徴について説明する。
【0298】
本実施形態の眼科装置1は、被検眼Eの眼底Efに対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニット2と撮影ユニット2のフォーカス調整を行うためのフォーカス調整ユニット3と含む撮影部と、プロセッサ4とを含んでいる。プロセッサ4は、第1の撮影制御、撮影条件決定処理、及び第2の撮影制御を実行するように構成されている。第1の撮影制御において、プロセッサ4は、被検眼Eの眼底Efにおける2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように撮影ユニット2を制御する。撮影条件決定処理において、プロセッサ4は、第1の撮影制御により生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する。第2の撮影制御において、プロセッサ4は、撮影条件決定処理により決定された撮影条件に基づいて被検眼Eの眼底Efにスリットスキャン撮影を適用するように撮影部を制御する。
【0299】
本実施形態の眼科装置1において、撮影ユニット2は、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせによってスリットスキャン撮影を実行するように構成されていてよい。更に、プロセッサ4は、この一連の領域に対するスリット光の投射強度(投射光量)が等しくなるように第2の撮影制御を実行するように構成されていてよい。
【0300】
本実施形態の眼科装置1において、プロセッサ4は、第2の撮影制御において、フォーカス調整ユニット3の制御を実行するように構成されていてよい。
【0301】
本実施形態の眼科装置1において、プロセッサ4は、撮影条件決定処理を実行する撮影条件決定部430と、第2の撮影制御を実行する撮影制御部410とを含んでいてよい。更に、撮影条件決定部430は、算出処理部431と決定処理部432とを含んでいてよい。算出処理部431は、第1の撮影制御により生成された2つ以上の画像に基づいて、被検眼Eの眼底Efにおける2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の値を算出するように構成されている。決定処理部432は、算出処理部431により算出された2つ以上の値に基づいて撮影条件を決定するように構成されている。加えて、撮影制御部410は、決定処理部432により決定された撮影条件に基づいて第2の撮影制御を実行するように構成されていてよい。
【0302】
本実施形態の眼科装置1において、撮影ユニット2は、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせによってスリットスキャン撮影を実行するように構成されていてよい。更に、撮影条件決定部430は、この一連の領域に対するスリット光の投射強度(投射光量)が等しくなるように撮影条件を決定するように構成されていてよい。加えて、撮影制御部410は、第2の撮影制御において、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせを実行させるための撮影ユニット2の制御と並行して、決定処理部432により決定された撮影条件に基づく撮影部の制御を実行するように構成されていてよい。
【0303】
本実施形態の眼科装置1において、決定処理部432は、算出処理部431により算出された2つ以上の値に基づいて、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域にそれぞれ対応する一連の値を含む撮影条件を生成するように構成されていてよい。
【0304】
本実施形態の眼科装置1において、決定処理部432により生成される、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域にそれぞれ対応する一連の値を含む撮影条件は、連続的情報及び離散的情報のいずれかを含んでいてよい。
【0305】
本実施形態の眼科装置1において、決定処理部432は、算出処理部431により算出された2つ以上の値に内挿、外挿、及び回帰分析のうちの1つ以上の演算を適用することによって、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域にそれぞれ対応する一連の値を含む撮影条件(連続的情報及び/又は離散的情報を含んでいてもよい)を生成するように構成されていてよい。
【0306】
本実施形態の眼科装置1において、撮影条件決定部430は、フォーカス調整ユニット3を制御するためのフォーカス制御条件を撮影条件として決定するように構成されていてよい。更に、撮影制御部410は、第2の撮影制御において、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせを実行させるための撮影ユニット2の制御と並行して、撮影条件決定部430により決定されたフォーカス制御条件に基づくフォーカス調整ユニット3の制御を実行するように構成されていてよい。
【0307】
本実施形態の眼科装置1において、撮影条件決定部430は、撮影ユニット2の焦点位置を制御するための焦点位置制御条件をフォーカス制御条件として決定するように構成されていてよい。更に、撮影制御部410は、第2の撮影制御において、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせを実行させるための撮影ユニット2の制御と並行して、撮影条件決定部430により決定された焦点位置制御条件に基づくフォーカス調整ユニット3の制御を実行するように構成されていてよい。
【0308】
本実施形態の眼科装置1において、撮影ユニット2は、被検眼Eの眼底Efにスリット光を投射する照明光学系20と、撮像装置50と、被検眼Eの眼底Efからのスリット光の戻り光を撮像装置50に導く撮影光学系40とを含んでいてよい。更に、フォーカス調整ユニット3は、照明光学系20の焦点位置を調整するための第1のフォーカス調整ユニット(例えば、移動機構22M)と、撮影光学系40の焦点位置を調整するための第2のフォーカス調整ユニット(例えば、移動機構47M)とを含んでいてよい。加えて、撮影制御部410は、第2の撮影制御において、被検眼Eの眼底Efにおける一連の領域に対するスリット光の順次的な投射とこの一連の領域の順次的な撮影との組み合わせを実行させるための撮影ユニット2の制御と並行して、照明光学系20の焦点位置を移動するための第1のフォーカス調整ユニットの制御と撮影光学系40の焦点位置を移動するための第2のフォーカス調整ユニットの制御とを、撮影条件決定部430により決定された焦点位置制御条件に基づき実行するように構成されていてよい。
【0309】
本実施形態の眼科装置1において、プロセッサ4は、被検眼Eの眼底Efに対する撮影ユニット2のフォーカス調整を実行するようにフォーカス調整ユニットの制御を実行した後に第1の撮影制御を実行するように構成されていてよい。すなわち、本実施形態の眼科装置1は、フォーカス調整がなされた状態の撮影ユニット2によって、撮影条件決定処理に提供される画像を生成するように構成されていてよい。
【0310】
本実施形態の眼科装置1において、プロセッサ4は、被検眼Eの眼底Efに対する撮影ユニット2のフォーカス調整を実行するようにフォーカス調整ユニットの制御を実行しながら第1の撮影制御を実行するように構成されていてよい。
【0311】
<第3の実施形態>
第1の実施形態に係る眼科装置と第2の実施形態に係る眼科装置とを組み合わせることができる。例えば、本実施形態の眼科装置の撮影条件決定部430は、スリットスキャン撮影のための撮影条件として、第1の実施形態と同様の光源制御条件(例えば、発光強度制御条件)と、第2の実施形態と同様のフォーカス制御条件(例えば、焦点位置制御条件)との双方を決定するように構成される。更に、本実施形態の撮影制御部410は、スリットスキャン撮影のための撮影ユニット2の制御と並行して、光源制御条件に基づく光源10の制御とフォーカス制御条件に基づくフォーカス調整ユニット3の制御との双方を実行するように構成される。
【0312】
このような本実施形態により取得される眼底Efの画像は、スリットスキャン範囲の全体にわたって略均一な明るさのスリット光を投射するようにして収集された複数の画像を合成したものであるから、輝度ムラを有しない画像(少なくとも、本動作例を適用せずに取得された画像との比較において輝度ムラが低減されている画像)である。
【0313】
<フォーカス調整の方法>
前述したように、実施形態に係る眼科装置により実行されるフォーカス調整の方法は任意に選択されてよい。実施形態において採用可能なフォーカス方法のいくつかの非限定的な例を以下に説明する。
【0314】
実施形態に係る眼科装置が実行可能なオートフォーカスのための動作の1つの例を
図20に示す。
【0315】
オートフォーカス動作の前に、眼科装置は、被検眼Eの眼底Efに対する撮影ユニット2のアライメントを実行する(S41)。アライメントの完了後、眼科装置は、オートフォーカスを開始する(S42)。なお、ステップS41で達成された適切なアライメント状態を維持するためにトラッキングを行ってもよい。
【0316】
本動作例のオートフォーカスでは、まず、投射制御部421が、光スキャナー30のミラー面を所定のニュートラル位置(0度位置)に配置する(S43)。0度位置は、例えば、光スキャナー30のミラー面の可動範囲の中心位置である。本動作例のオートフォーカスは、光スキャナー30のミラー面の向きを固定した状態で、つまり、光スキャナー30の動作を停止した状態で、実行される。
【0317】
次に、投射制御部421は、虹彩絞り21の2つの開口部21A及び21Bのうちの一方(例えば、第1の開口部21A)のみから照明光を出力するように光源10及び/又は照明光学系20を制御する。第1の開口部21Aから出射された照明光の一部は、スリット開口絞り22のスリット22Aを通過してスリット光(第1のスリット光)に変換される。第1のスリット光は、リレーレンズ23によりリレーされ、停止状態の光スキャナー30により偏向され、リレーレンズ31によりリレーされ、ホールミラー45のミラー部により偏向され、対物レンズ46により屈折されて被検眼Eに入射し、眼底Efに投射される。撮影光学系40及び撮像装置50は、第1のスリット光が投射されている状態の眼底Efを撮影して画像を生成する(第1の撮影:S44)。
【0318】
ステップS44の第1の撮影で得られた画像を第1の画像と呼ぶ。第1の画像の2つの例を
図21に示す。
図21の左側の眼底画像200Aは、フォーカス状態が前ピンであるときに得られる画像の例であり、眼底画像200AのY方向の中心位置よりも下方の位置にスリット光像G1(第1のスリット光像G1)が描出されている。また、
図21の右側の眼底画像200Bは、フォーカス状態が後ピンであるときに得られる画像の例であり、眼底画像200BのY方向の中心位置よりも上方の位置にスリット光像G1(第1のスリット光像G1)が描出されている。
【0319】
次に、投射制御部421は、虹彩絞り21の2つの開口部21A及び21Bのうちの他方(例えば、第2の開口部21B)のみから照明光を出力するように光源10及び/又は照明光学系20を制御する。第2の開口部21Bから出射された照明光の一部は、スリット開口絞り22のスリット22Aを通過してスリット光(第2のスリット光)に変換される。第2のスリット光は、第1のスリット光と同じ経路を通じて眼底Efに投射される。撮影光学系40及び撮像装置50は、第2のスリット光が投射されている状態の眼底Efを撮影して画像を生成する(第2の撮影:S45)。
【0320】
ステップS45の第2の撮影で得られた画像を第2の画像と呼ぶ。第2の画像の2つの例を
図22に示す。
図22の左側の眼底画像210Aは、フォーカス状態が前ピンであるときに得られる画像の例であり、眼底画像210AのY方向の中心位置よりも上方の位置にスリット光像G2(第2のスリット光像G2)が描出されている。また、
図22の右側の眼底画像210Bは、フォーカス状態が後ピンであるときに得られる画像の例であり、眼底画像210BのY方向の中心位置よりも下方の位置にスリット光像G2(第2のスリット光像G2)が描出されている。
【0321】
本動作例では第1の撮影の後に第2の撮影を実行しているが、別の動作例では第2の撮影の後に第1の撮影を実行してもよい。また、オートフォーカスのために実行される撮影の回数は2回(第1の撮影及び第2の撮影)に限定されず、3回以上であってもよい。3回以上の撮影を行う場合においても本動作例と同様の処理によってオートフォーカスを実行できることは、当業者であれば理解することができるであろう。また、後述のように、オートフォーカスのために実行される撮影の回数は1回のみであってもよい。
【0322】
ステップS44で取得された第1の画像及びステップS45で取得された第2の画像は、フォーカス調整条件決定部422に入力される。
【0323】
フォーカス調整条件決定部422は、随意的な処理として、第1の画像と第2の画像との間のレジストレーション(位置合わせ)を実行してもよい。このレジストレーションは、例えば、第1の画像中の特徴点を検出する処理と、第2の画像中の特徴点を検出する処理と、第1の画像中の特徴点と第2の画像中の特徴点とを基準として第1の画像と第2の画像との間の位置ズレ量を求める処理と、この位置ズレ量を打ち消すように第1の画像と第2の画像との間の相対位置を調整する処理とを含む。レジストレーションの基準として用いられる特徴点は、予め決定された眼底Efのランドマークであり、例えば、視神経乳頭、黄斑、血管などの組織であってもよいし、病変部、治療痕などであってもよい。このようなレジストレーションが施された第1の画像及び第2の画像に対してフォーカス調整条件決定処理を適用することができる。なお、第1の画像と第2の画像との間の位置ズレ量を求める処理までを実行し、この位置ズレ量をフォーカス調整条件決定処理に反映させるようにしてもよい。
【0324】
以下、フォーカス調整条件決定部422が実行する処理の具体例として、フォーカス状態が前ピンである場合について説明する。フォーカス状態が後ピンである場合においても同様の処理を実行することができる。
【0325】
図23を更に参照する。
図23の左側の眼底画像200Aは、フォーカス状態が前ピンである場合にステップS44の第1の撮影で取得された画像の例であり、左側の眼底画像210Aは、フォーカス状態が前ピンである場合にステップS45の第2の撮影で取得された画像の例である。
【0326】
フォーカス調整条件決定部422は、ステップS44の第1の撮影で取得された眼底画像200Aを解析して第1のスリット光像G1を検出し、検出された第1のスリット光像G1の位置(Y(G1))を求める(S46)。同様に、フォーカス調整条件決定部422は、ステップS45の第2の撮影で取得された眼底画像210Aを解析して第2のスリット光像G2を検出し、検出された第2のスリット光像G2の位置(Y(G2))を求める(S47)。
【0327】
次に、フォーカス調整条件決定部422は、ステップS46で求められた第1のスリット光像G1の位置と、ステップS47で求められた第2のスリット光像G2の位置との間の相対位置に基づいて、被検眼Eの屈折力を推定する(S48)。
【0328】
次に、フォーカス調整条件決定部422は、ステップS48で求められた被検眼Eの屈折力の推定値に基づいて、スリット開口絞り22の移動条件(移動方向及び移動量)と、フォーカスレンズ47の移動条件(移動方向及び移動量)とを決定する(S49)。
【0329】
ステップS49で決定される移動条件に含まれる移動方向は、第1のスリット光像G1と第2のスリット光像G2との位置関係に基づき決定される。本例では、第1のスリット光像G1が第2のスリット光像G2よりも下方に位置しているから、眼底Efよりも前側(前眼部Ea側)に焦点が位置している(つまり、前ピンである)と判定される。一方、第1のスリット光像G1が第2のスリット光像G2よりも上方に位置している場合には、眼底Efよりも後側に焦点が位置している(つまり、後ピンである)と判定される。なお、前述したように、2つのスリット光像の位置関係と焦点のズレ方向との間の関係は、撮影ユニット2の光学系の構成により決定される既知の情報である。
【0330】
また、ステップS49で決定される移動条件に含まれる移動量は、眼屈折力(視度)とフォーカス調整用光学素子(本動作例ではスリット開口絞り22及びフォーカスレンズ47)の移動量との間の関係が記録された情報に基づき決定される。この情報は、予め作成され、例えばメモリ5に格納されている。
【0331】
フォーカス調整条件決定部422により決定されたフォーカス調整条件(本動作例では、ステップS49で決定されたスリット開口絞り22の移動条件及びフォーカスレンズ47の移動条件)は、フォーカス調整制御部423に送られる。
【0332】
フォーカス調整制御部423は、ステップS49で決定されたフォーカス調整条件に基づいてフォーカス調整ユニット3の制御を行う(S50)。本動作例では、フォーカス調整制御部423は、ステップS49で決定されたスリット開口絞り22の移動条件に基づき移動機構22Mを制御することによって、この移動条件に示された移動方向にこの移動条件に示された移動量だけスリット開口絞り22を移動するとともに、フォーカスレンズ47の移動条件に基づき移動機構47Mを制御することによって、この移動条件に示された移動方向にこの移動条件に示された移動量だけフォーカスレンズ47を移動する。
【0333】
以上に説明した工程により、被検眼Eの屈折力に対応した撮影ユニット2(照明光学系20及び撮影光学系40)の自動的なフォーカス調整が達成される。すなわち、照明光学系20の焦点及び撮影光学系40の焦点の双方が、被検眼Eの眼底Ef(又は、その近傍)に自動で配置される。このオートフォーカスが完了したら(S51)、眼科装置は、次段階の処理(例えば、撮影条件決定処理)を行うことができる。
【0334】
実施形態に係る眼科装置が実行可能なオートフォーカスのための動作の別の例を
図24に示す。
【0335】
図20の動作例では2つのスリット光像の相対位置からフォーカス調整条件を決定しているが、2つのスリット光像の一方を検出できない場合が想定される。例えば、被検眼Eが小瞳孔眼である場合、第1のスリット光及び第2のスリット光の一方が虹彩にケラレてスリット光像が形成されないことが考えられる。また、被検眼Eが白内障眼である場合、第1のスリット光及び第2のスリット光の一方が水晶体混濁部により遮断されてスリット光像が形成されないことや、水晶体混濁部により減弱(減衰)されてスリット光像が不明瞭になることがある。本動作例は、このような問題が生じた場合に適用可能なオートフォーカスを提供するものである。
【0336】
ステップS61~S67は、それぞれ、
図20のステップS41~S47と同様の要領で実行される。なお、本動作例のステップS66及びS67では、スリット光像の位置が検出される場合だけでなく、スリット光像が検出されない場合も想定されている。
【0337】
ステップS66において第1のスリット光像の位置が検出されなかった場合、又は、ステップS67において第2のスリット光像の位置が検出されなかった場合(S68:No)、処理はステップS69に移行する。つまり、ステップS66において第1のスリット像の位置の検出に失敗したが、ステップS67において第2のスリット光像の位置の検出に成功した場合、処理はステップS69に移行する。また、ステップS66において第1のスリット像の位置の検出に成功したが、ステップS67において第2のスリット光像の位置の検出に失敗した場合、処理はステップS69に移行する。
【0338】
これに対し、ステップS66において第1のスリット光像の位置の検出に成功し、且つ、ステップS67においても第2のスリット光像の位置の検出に成功した場合(S68:Yes)、処理はステップS70に移行する。
【0339】
なお、図示は省略されているが、ステップS66において第1のスリット光像の位置の検出に失敗し、且つ、ステップS67においても第2のスリット光像の位置の検出に失敗した場合、例えば、眼科装置はユーザーインターフェイス6によってエラー情報又は警告情報を出力することができる。この場合、眼科装置は、フォーカス調整(及び、その前工程であるアライメント)を最初からやり直すことができる(つまり、処理をステップS61又はS63に戻すことができる)。或いは、眼科装置は、オートフォーカスモードからマニュアルフォーカスモードに切り替えることができる。マニュアルフォーカスモードでは、ユーザーは、ユーザーインターフェイス6を用いて、眼底Efの観察画像を参照しながら手動でフォーカス調整を実行する。
【0340】
第1のスリット光像の位置検出及び第2のスリット光像の位置検出の一方のみ成功した場合(S68:No)、フォーカス調整条件決定部422は、検出された一方のスリット光像の位置と、所定の基準位置との間の相対位置に基づいて、被検眼Eの屈折力を推定する(S69)。
【0341】
ステップS69で参照される基準位置を決定する方法は任意である。例えば、この基準位置は、模型眼を利用した測定で得られたデータに基づき求められてもよいし、レイトレーシングなどのシミュレーションを利用して求められてもよいし、健常眼(小瞳孔眼や白内障眼のように本実施形態のオートフォーカスを阻害する可能性のある事情を有しない眼)の測定で得られたデータに基づき求められてもよいし、これらの任意の組み合わせによって求められてもよいし、別の手法を用いて求められてもよい。模型眼を利用する方法では、例えば、ステップS63~S67を実施することによって双方のスリット光像が一致する位置を求め、この位置を基準位置とすることができる。別の方法についても同様の要領で基準位置を決定することが可能である。
【0342】
例えば、
図21の左側の眼底画像200Aのスリット光像G1が検出された場合、フォーカス調整条件決定部422は、
図25に示すように、このスリット光像G1の位置(Y(G1))を求め、求められたスリット光像G1の位置(Y(G1))の基準位置(Y0)に対する相対位置(ΔY)に基づいて被検眼Eの屈折力を推定する。
【0343】
第1のスリット光像の位置検出及び第2のスリット光像の位置検出の双方が成功した場合(S68:No)、フォーカス調整条件決定部422は、
図20のステップS48と同様の要領で、被検眼Eの屈折力を推定する(S70)。
【0344】
次に、フォーカス調整条件決定部422は、ステップS69又はS70で求められた被検眼Eの屈折力の推定値に基づいて、スリット開口絞り22の移動条件(移動方向及び移動量)と、フォーカスレンズ47の移動条件(移動方向及び移動量)とを決定する(S71)。ここで、移動方向はスリット光像と基準位置との位置関係に基づき決定される。移動量の決定方法は
図20のステップS49と同様であってよい。
【0345】
次に、フォーカス調整制御部423は、ステップS71で決定されたフォーカス調整条件に基づいてフォーカス調整ユニット3の制御を行う(S72)。この処理は、
図20のステップS50と同様の要領で実行される。本動作例のオートフォーカスは以上で完了となる(S73)。
【0346】
図20の動作例及び
図24の動作例では、オートフォーカスのために2回の撮影(第1の撮影及び第2の撮影)を実行しているが、
図24の動作例の変形では、1回の撮影でオートフォーカスを行うことが可能である。本変形において、眼科装置は、例えば、虹彩絞り21の2つの開口部21A及び21Bの一方のみから照明光を出力して撮影を行い、この撮影で取得された眼底画像に描出されているスリット光像の位置を求め、このスリット光像の位置と所定の基準位置との相対位置に基づき被検眼の屈折力の推定値を求め、この推定値からフォーカス調整条件を決定し、このフォーカス調整条件に基づきフォーカス調整ユニット3を制御する。本変形で用いられる基準位置は、
図24の動作例における基準位置と同様であってよい。
【0347】
実施形態に係る眼科装置が実行可能なオートフォーカスのための動作の更に別の例を
図26に示す。
【0348】
図20の動作例及び
図24の動作例では、被検眼Eの眼底Efの所定位置(眼底中心、画像フレームの中心)に焦点が合うようにフォーカス調整を実行している。これに対し、本動作例では、眼底Efの任意の位置に焦点が合うようにフォーカス調整を行うことが可能である。それにより、眼底Efの注目部位が明瞭に描出された画像を取得することが可能になる。注目部位は、例えば、視神経乳頭、黄斑、血管などの組織であってもよいし、病変部、治療痕などであってもよい。
【0349】
本動作例において、眼科装置は、まず、被検眼Eの観察画像(ライブ動画像、ライブ映像、時系列画像)の生成及び表示を開始する(S81)。観察画像の生成は、任意の方法で実行されてよく、例えば、アライメントのための手段(例えば、ステレオアライメントのための2つの前眼部カメラ、正面画像を生成するためのカメラ)により、又は反復的なスリットスキャン撮影により実行される。観察画像の表示は、ユーザーインターフェイス6(ディスプレイ)を用いて実行される。眼科装置は、ステップS81で取得される観察画像に基づいてアライメントを実行する(S82)。
【0350】
いくつかの態様において、ユーザーは、ステップS82のアライメントの完了後に、表示されている観察画像における所望の位置(注目部位の位置、注目位置)をユーザーインターフェイス6(入力部)を用いて指定する(S83)。例えば、ユーザーは、タッチスクリーンに表示されている観察画像における所望の位置にタッチする。或いは、ユーザーは、ディスプレイに表示されている観察画像における所望の位置をポインティングデバイスを用いて指定する。
【0351】
別のいくつかの態様では、プロセッサ4が観察画像を解析して注目位置を決定してもよい。更に別のいくつかの態様では、ユーザー又はプロセッサ4が過去に取得された眼底Efの画像に対して注目位置を指定し、プロセッサ4が当該画像と観察画像との間のレジストレーションを実行して当該注目位置に対応する観察画像中の位置を特定してもよい。この場合、観察画像における当該特定位置がステップS83の注目位置として用いられる。更に別の態様では、アライメントの前に生成された観察画像に対してユーザー又はプロセッサ4が注目位置を指定し、指定された注目位置を基準としたアライメントをプロセッサ4が実行してもよい。
【0352】
眼科装置は、ステップS83で指定された眼底Efの注目位置に対するオートフォーカスを開始する(S84)。
【0353】
本動作例のオートフォーカスでは、まず、投射制御部421が、ステップS83で指定された眼底Efの注目位置に対応する向きにミラー面を向けるように光スキャナー30を制御する(S85)。光スキャナー30のミラー面の向きは当該向きに固定される。スリットスキャンのための動作(
図5など)から分かるように、撮影ユニット2により取得される画像における位置(Y座標)と光スキャナー30のミラー面の向きとの間には既知の関係がある。ステップS85の処理は、この関係を参照して実行される。
【0354】
ステップS83で指定された眼底Efの注目位置に対応する向きに光スキャナー30のミラー面の向きが固定された状態で、投射制御部421は、第1の撮影及び第2の撮影を実行するように撮影ユニット2を制御する(S86、S87)。
【0355】
本動作例のステップS88~S93の処理は、それぞれ、
図20の動作例のステップS46~S51の処理と同様の要領で実行される。なお、いくつかの態様では、ステップS88~S93の処理の代わりに、
図24の動作例のステップS66~S73の処理を実行してもよい。
【0356】
実施形態に係る眼科装置が実行可能なオートフォーカスのための動作の更に別の例について説明する。本例に係る動作を実行するための構成の非限定的な例を
図27に示す。
【0357】
本例に係る眼科装置は、
図2に示す撮影ユニット2の代わりに、
図27に示す撮影ユニット2Aを備えている。撮影ユニット2Aは非限定的な例である。撮影ユニット2Aは、被検眼Eの眼底Efに対するスリット光の投射位置を移動しつつローリングシャッター型のイメージセンサー(撮像装置)で撮影を行うことによってスリットスキャン撮影を実行可能に構成されている。なお、ローリングシャッター型のイメージセンサーの代わりに、グローバルシャッター型のイメージセンサーとスリット絞りとを組み合わせた撮像ユニット(撮像装置)を採用してもよい。
【0358】
本例の撮影ユニット2Aは、光源10、照明光学系20A、光スキャナー30、撮影光学系40、及び撮像装置50を含んでいる。光源10、光スキャナー30、撮影光学系40、及び撮像装置50は、それぞれ、
図2の撮影ユニット2の対応要素と同一であってよい。光源10及び/又は光スキャナー30を照明光学系20Aの要素とみなしてもよく、撮像装置50を撮影光学系40の要素とみなしてもよい。
【0359】
本例の照明光学系20Aは、
図2の照明光学系20の代わりに設けられる。
図27に示す例において、照明光学系20Aは、第1の実施形態と同様の虹彩絞り21、スリット開口絞り22、及びリレーレンズ23に加えて、虹彩絞り21とスリット開口絞り22との間に配置されたレンズ24を含んでいる。
【0360】
更に、本例の撮影ユニット2Aは、移動機構25Mを含む。移動機構25Mは、光源10、虹彩絞り21、レンズ24、及びスリット開口絞り22を含む可動ユニット25を、照明光学系20の光軸に沿う方向に移動する。移動機構25Mは、プロセッサ4の制御の下に動作する。プロセッサ4は、被検眼Eの状態(例えば、屈折力(屈折度、視度)、眼底形状など)に応じて移動機構25Mを制御するように構成されてよい。
【0361】
本例のプロセッサ4は、前述したプロセッサ4と同様に、投射制御部421、フォーカス調整条件決定部422、及びフォーカス調整制御部423を含んでいる(
図6を参照)。本例のフォーカス調整条件決定部422は、前述した実施形態と同様のフォーカス調整条件決定処理を実行する。すなわち、フォーカス調整条件決定部422は、投射制御部421により実行されるスリット光投射制御により眼底Efに投射されたスリット光の戻り光を検出した撮像装置50からの出力に基づいてフォーカス調整条件を決定するための演算処理を実行する。本例のフォーカス調整条件決定処理は、前述した実施形態と同様の要領で実行されてよい。
【0362】
本例において、照明光学系20A(第1の光学系)は、光源10(光源)と、被検眼Eの虹彩に対して光学的に略共役な位置に配置され、光源10により発せられた光を通過させる開口部が形成された虹彩絞り21(虹彩絞り)と、虹彩絞り21の開口部を通過した光を屈折するレンズ24(レンズ)と、レンズ24により屈折された光からスリット光を生成するためのスリット開口絞り22(スリット絞り)とを含んでおり、スリット開口絞り22により生成されたスリット光を被検眼Eの眼底Efに投射するように構成されている。更に、撮影光学系40(第2の光学系)は、フォーカスレンズ47(フォーカスレンズ)を含んでいる。加えて、照明光学系20Aの焦点位置を調整するための第1のフォーカス調整ユニットは、照明光学系20Aの光軸に沿う方向に可動ユニット25を移動するための移動機構25M(第3の移動機構)を含む。つまり、第1のフォーカス調整ユニットは、照明光学系20Aの光軸に沿う方向に光源10、虹彩絞り21、レンズ24、及びスリット開口絞り22を一体的に移動するための移動機構25Mを含む。また、撮影光学系40の焦点位置を調整するための第2のフォーカス調整ユニットは、撮影光学系40の光軸に沿う方向にフォーカスレンズ47を移動するための移動機構47M(第4の移動機構)を含む。そして、フォーカス調整条件決定部422は、移動機構25Mを制御するための条件(第3の移動制御条件、第1のフォーカス調整条件)を決定し、移動機構47Mを制御するための条件(第4の移動制御条件、第2のフォーカス調整条件)を決定する。
【0363】
以上、実施形態において採用可能なフォーカス方法のいくつかの非限定的な例を説明した。これらの例によれば、スリットスキャン撮影を実行する撮影ユニットを用いて被検眼の眼底にスリット光を投射し、このスリット光が投射されている眼底を撮影して得られた情報を利用してフォーカス条件を設定してオートフォーカスを行うことが可能であるから、スリットスキャン撮影を実行可能な既存の眼科装置が有するようなフォーカス専用ハードウェア要素を設けることなくフォーカス調整を行うことが可能である。少なくとも、これらの例によれば、スリットスキャン撮影を実行可能な既存の眼科装置が有するような複雑且つ大規模なフォーカス専用ハードウェア要素を設けることなくフォーカス調整を行うことができる。これにより、眼科装置の小型化、眼科装置の構成の簡略化、眼科装置の製造コストの低減などを図ることが可能になる。
【0364】
本実施形態で説明した例示的なフォーカス方法は、以下のいずれかの特徴を有していてよい。
【0365】
本実施形態のいくつかの態様において、撮影ユニットは、撮像装置を含んでいてよく、プロセッサは、被検眼の眼底にスリット光を投射するために撮影ユニットを制御するスリット光投射制御と、スリット光投射制御により投射されたスリット光の戻り光を検出した撮像装置からの出力に基づいてフォーカス調整条件を決定するフォーカス調整条件決定処理と、フォーカス調整条件決定処理により決定されたフォーカス調整条件に基づいてフォーカス調整ユニットを制御するフォーカス調整制御とを更に実行するように構成されていてよい。
【0366】
本実施形態のいくつかの態様において、プロセッサは、フォーカス調整条件決定処理を実行するフォーカス調整条件決定部を含んでいてよい。フォーカス調整条件決定部は、撮影ユニットの撮像装置により生成された画像中のスリット光像の位置に基づいてフォーカス調整条件を決定するように構成されていてよい。
【0367】
本実施形態のいくつかの態様において、フォーカス調整条件決定部は、撮影ユニットの撮像装置により生成された画像中のスリット光像の少なくとも一部の画像領域の輝度プロファイルであって、撮影ユニットによるスリット光の投射位置の移動方向に対応する第1の方向に沿った輝度プロファイルに基づいて、スリット光像の位置を決定するように構成されていてよい。
【0368】
本実施形態のいくつかの態様において、フォーカス調整条件決定部は、撮影ユニットの撮像装置により生成された画像中のスリット光像の少なくとも一部の画像領域を構成するピクセル群の輝度を、撮影ユニットによるスリット光の投射位置の移動方向に対応する第1の方向に直交する第2の方向に加算することによって、輝度プロファイルを生成するように構成されていてよい。
【0369】
本実施形態のいくつかの態様において、撮影ユニットは、被検眼の眼底にスリット光を投射する第1の光学系と、被検眼の眼底からのスリット光の戻り光を撮像装置に導く第2の光学系とを含んでいてよい。また、フォーカス調整ユニットは、第1の光学系の焦点位置を調整するための第1のフォーカス調整ユニットと、第2の光学系の焦点位置を調整するための第2のフォーカス調整ユニットとを含んでいてよい。更に、フォーカス調整条件決定部は、第1のフォーカス調整ユニットを制御するための第1のフォーカス調整条件と第2のフォーカス調整ユニットを制御するための第2のフォーカス調整条件とをフォーカス調整条件として決定するように構成されていてよい。
【0370】
本実施形態のいくつかの態様において、第1の光学系は、光源と、光源により発せられた光からスリット光を生成するためのスリット絞りとを含んでいてよく、スリット絞りにより生成されたスリット光を被検眼の眼底に投射するように構成されていてよい。また、第2の光学系は、フォーカスレンズを含んでいてよい。更に、第1のフォーカス調整ユニットは、第1の光学系の光軸に沿う方向にスリット絞りを移動するための第1の移動機構を含んでいてよく、且つ、第2のフォーカス調整ユニットは、第2の光学系の光軸に沿う方向にフォーカスレンズを移動するための第2の移動機構を含んでいてよい。加えて、フォーカス調整条件決定部は、第1の移動機構を制御するための第1の移動制御条件を第1のフォーカス調整条件として決定し、且つ、第2の移動機構を制御するための第2の移動制御条件を第2のフォーカス調整条件として決定するように構成されていてよい。
【0371】
本実施形態のいくつかの態様において、第1の移動機構を制御するための第1の移動制御条件は、スリット絞りの移動方向及び移動距離を示す情報を含んでいてよく、且つ、第2の移動機構を制御するための第2の移動制御条件は、フォーカスレンズの移動方向及び移動距離を示す情報を含んでいてよい。
【0372】
本実施形態のいくつかの態様において、第1の光学系は、光源と、被検眼の虹彩に対して光学的に略共役な位置に配置され、光源により発せられた光を通過させる開口部が形成された虹彩絞りと、虹彩絞りの開口部を通過した光を屈折するレンズと、レンズにより屈折された光からスリット光を生成するためのスリット絞りとを含んでいてよく、スリット絞りにより生成されたスリット光を被検眼の眼底に投射するように構成されていてよい。また、第2の光学系は、フォーカスレンズを含んでいてよい。更に、第1のフォーカス調整ユニットは、第1の光学系の光軸に沿う方向に光源、虹彩絞り、レンズ、及びスリット絞りを一体的に移動するための第3の移動機構を含んでいてよく、且つ、第2のフォーカス調整ユニットは、第2の光学系の光軸に沿う方向にフォーカスレンズを移動するための第4の移動機構を含んでいてよい。加えて、フォーカス調整条件決定部は、第3の移動機構を制御するための第3の移動制御条件を第1のフォーカス調整条件として決定し、且つ、第4の移動機構を制御するための第4の移動制御条件を第2のフォーカス調整条件として決定するように構成されていてよい。
【0373】
本実施形態のいくつかの態様において、第3の移動機構を制御するための第3の移動制御条件は、光源、虹彩絞り、レンズ、及びスリット絞りの移動方向及び移動距離を示す情報を含んでいてよい。また、第4の移動機構を制御するための第4の移動制御条件は、フォーカスレンズの移動方向及び移動距離を示す情報を含んでいてよい。
【0374】
本実施形態のいくつかの態様において、プロセッサは、スリット光投射制御において、被検眼の眼底に投射されるスリット光を撮影ユニットの光軸に対して所定距離だけ離隔した位置から発するように撮影ユニットを制御するように構成されていてよい。更に、フォーカス調整条件決定部は、撮影ユニットの撮像装置により生成された画像中のスリット光像の位置と、撮影ユニットの焦点距離と、当該所定距離とに基づいてフォーカス調整条件を決定するように構成されていてよい。
【0375】
本実施形態のいくつかの態様において、撮影ユニットは、被検眼に導かれるスリット光を偏向することによって眼底に対するスリット光の投射位置を移動する光スキャナーを含んでいてよい。また、プロセッサは、スリット光投射制御を実行する投射制御部を含んでいてよい。投射制御部は、光スキャナーによるスリット光の偏向方向が固定された状態で被検眼の眼底にスリット光を投射するように撮影ユニットを制御するように構成されていてよい。更に、フォーカス調整条件決定部は、光スキャナーによるスリット光の偏向方向が固定された状態で被検眼の眼底に投射されたスリット光に対応する、撮影ユニットの撮像装置により生成された画像中のスリット光像の位置に基づいて、フォーカス調整条件を決定するように構成されていてよい。
【0376】
本実施形態のいくつかの態様において、プロセッサは、スリット光投射制御を実行する投射制御部を含んでいてよい。投射制御部は、被検眼の眼底における投射位置が異なる第1のスリット光及び第2のスリット光を出力するように撮影ユニットを制御するように構成されていてよい。更に、フォーカス調整条件決定部は、第1のスリット光に対応する第1のスリット光像と第2のスリット光に対応する第2のスリット光像との相対位置に基づいてフォーカス調整条件を決定するように構成されていてよい。
【0377】
<他の実施形態>
実施形態に係る眼科装置のいくつかの非限定的な態様について以上に説明したが、本開示に係る実施形態のカテゴリーは眼科装置に限定されない。眼科装置以外の実施形態のカテゴリーとして、眼科装置を制御する方法、眼底を撮影する方法、プログラム、記録媒体などがある。これらのカテゴリーの実施形態が前述した眼科装置の実施形態によって為し得るものであることは、当業者であれば理解することができるであろう。
【0378】
これらのカテゴリーの実施形態によっても、眼科装置の実施形態と同様に、高い品質の眼底画像(輝度ムラを有しない画像、輝度ムラが低減された画像など)を取得することができるという効果を奏することが可能になる。
【0379】
以下、これらのカテゴリーのいくつかの非限定的な実施形態について説明する。これらのカテゴリーのいずれかの実施形態に対して、本開示において眼科装置に関して説明した任意の事項や、任意の公知技術を組み合わせることが可能である。
【0380】
いくつかの実施形態に係る、眼科装置を制御する方法は、撮影部とプロセッサとメモリとを含む眼科装置を制御する新規な方法を提供する。ここで、撮影部は、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能な撮影ユニットを含んでいる。本実施形態に係る方法は、プロセッサに、第1の撮影制御ステップと、撮影条件決定ステップと、第2の撮影制御ステップとを実行させる。第1の撮影制御ステップでは、プロセッサは、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように撮影ユニットを制御する。撮影条件決定ステップでは、プロセッサは、第1の撮影制御ステップにより生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する。第2の撮影制御ステップでは、プロセッサは、撮影条件決定ステップにより決定された撮影条件に基づいて被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するように撮影部の制御を実行する。
【0381】
いくつかの実施形態に係る、眼底を撮影する方法は、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行する新規な方法を提供する。本方法は、第1の撮影ステップと、撮影条件決定ステップと、第2の撮影ステップとを含んでいる。第1の撮影ステップでは、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成する。撮影条件決定ステップでは、第1の撮影ステップで生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する。第2の撮影ステップでは、撮影条件決定ステップで決定された撮影条件に基づいて被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用する。
【0382】
いくつかの実施形態に係るプログラムは、眼科装置に実行させるための新規なプログラムである。この眼科装置は、撮影ユニットを含む撮影部と、プロセッサと、メモリとを含んでいる。撮影ユニットは、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能に構成されている。本実施形態に係るプログラムは、眼科装置のプロセッサに、第1の撮影制御ステップと、撮影条件決定ステップと、第2の撮影制御ステップとを実行させる。第1の撮影制御ステップでは、眼科装置のプロセッサは、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように撮影ユニットを制御する。撮影条件決定ステップでは、眼科装置のプロセッサは、第1の撮影制御ステップにより生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する。第2の撮影制御ステップでは、眼科装置のプロセッサは、撮影条件決定ステップにより決定された撮影条件に基づいて被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するように撮影部を制御する。
【0383】
別のいくつかの実施形態に係るプログラムは、眼科装置を制御するためのコンピュータに実行させるための新規なプログラムである。この眼科装置は、撮影ユニットを含む撮影部を含んでいる。撮影ユニットは、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行可能に構成されている。また、このコンピュータは、プロセッサと、メモリとを含んでいる。本実施形態に係るプログラムは、コンピュータのプロセッサに、第1の命令生成ステップと、第1の送信制御ステップと、撮影条件決定ステップと、第2の命令生成ステップと、第2の送信制御ステップとを実行させる。第1の命令生成ステップでは、コンピュータのプロセッサは、被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するように撮影ユニットを制御するための第1の命令を生成する。第1の送信制御ステップでは、コンピュータのプロセッサは、第1の命令生成ステップで生成された第1の命令を眼科装置に送るための制御を実行する。撮影条件決定ステップでは、コンピュータのプロセッサは、第1の命令に基づき眼科装置により生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定する。第2の命令生成ステップでは、コンピュータのプロセッサは、撮影条件決定ステップにより決定された撮影条件に基づいて、被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するように撮影部を制御するための第2の命令を生成する。第2の送信制御ステップでは、コンピュータのプロセッサは、第2の命令生成ステップで生成された第2の命令を眼科装置に送るための制御を実行する。
【0384】
更に別のいくつかの実施形態に係るプログラムは、被検眼の眼底に対するスリット光の投射位置を移動しつつ撮影を行うスリットスキャン撮影を実行するための処理を、プロセッサとメモリとを含むコンピュータに実行させるための新規なプログラムである。本実施形態に係るプログラムは、コンピュータのプロセッサに次の一連のステップを実行させる:被検眼の眼底における2つ以上の領域にそれぞれ対応する2つ以上の画像を生成するための処理を行うステップ;生成された2つ以上の画像に基づいて撮影条件を決定するステップ;決定された撮影条件に基づいて被検眼の眼底にスリットスキャン撮影を適用するための処理を行うステップ。
【0385】
いくつかの実施形態に係る記録媒体は、いずれかの実施形態に係るプログラムが記録された、コンピュータ可読な非一時的記録媒体である。実施形態に係る記録媒体として使用可能な、コンピュータ可読な非一時的記録媒体は、任意の形態の記録媒体であってよく、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、及び半導体メモリのいずれかであってよい。
【0386】
本開示は、いくつかの実施形態及びそのいくつかの態様を提示するものである。これらの実施形態及び態様は、本発明の例示に過ぎない。したがって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加など)を、本開示において提示された実施形態や態様に施すことが可能である。
【符号の説明】
【0387】
1 眼科装置
2 撮影ユニット
3 フォーカス調整ユニット
4 プロセッサ
5 メモリ
6 ユーザーインターフェイス
10 光源
22 スリット開口絞り
22M 移動機構
47 フォーカスレンズ
47M 移動機構
50 撮像装置
410 撮影制御部
421 投射制御部
422 フォーカス調整条件決定部
423 フォーカス調整制御部
430 撮影条件決定部
431 算出処理部
432 決定処理部