(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108019
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】評価装置、評価方法、生成方法、評価システム、および評価プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240802BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20240802BHJP
【FI】
A61B5/11 320
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012266
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】前田 真理子
(72)【発明者】
【氏名】林 眞由
(72)【発明者】
【氏名】金田 健
(72)【発明者】
【氏名】平野 浩彦
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 正則
【テーマコード(参考)】
4C038
5L099
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB05
4C038VB07
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】対象者の総合的な口腔機能を示し、かつ、その意味を理解しやすい指標値を算出する。
【解決手段】評価装置(1)は、対象者の口腔機能データと身体機能データとを取得するデータ取得部(101)と、対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの口腔機能データおよび身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデル(111)と、対象者の口腔機能データおよび身体機能データと、に基づいて算出する口腔機能年齢算出部(103)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとを取得するデータ取得部と、
前記対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの前記口腔機能データおよび前記身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデルと、前記データ取得部が取得する前記対象者の口腔機能データおよび身体機能データと、に基づいて算出する口腔機能年齢算出部と、を備える評価装置。
【請求項2】
前記口腔機能データには、前記対象者の残存歯数を示すデータ、前記対象者が所定期間に所定の音節を発音できた回数を示すデータ、およびオーラルフレイルに関する設問に対する前記対象者の回答内容を示すデータの少なくとも何れかが含まれており、
前記身体機能データには、身体機能に関する設問に対する前記対象者の回答内容を示すデータが少なくとも含まれている、請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記予測モデルは、前記口腔機能データおよび前記身体機能データから生成された複数の説明変数から前記口腔機能年齢を算出する重回帰モデルに下記の値を加算したモデルであり、
{CA-(CAの平均値)}{1-r×(σBA/σCA)}
前記CAは実年齢、前記rは前記重回帰モデルで予測した予測年齢とCAの相関係数、前記σBAは前記予測年齢の標準偏差、前記σCAは前記実年齢の標準偏差である、請求項1または2に記載の評価装置。
【請求項4】
前記データ取得部が取得する前記口腔機能データおよび前記身体機能データと、前記対象者の実年齢との対応関係を示す教師データを生成する教師データ生成部を備える、請求項1または2に記載の評価装置。
【請求項5】
前記教師データを用いて前記予測モデルを更新する学習部を備える、請求項4に記載の評価装置。
【請求項6】
前記口腔機能年齢算出部が算出する口腔機能年齢と前記対象者の実年齢との差を出力装置に出力させる出力制御部を備える、請求項1または2に記載の評価装置。
【請求項7】
1または複数の装置により実行される口腔機能の評価方法であって、
対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとを取得するデータ取得ステップと、
前記対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの前記口腔機能データおよび前記身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデルと、前記データ取得ステップで取得された前記対象者の口腔機能データおよび身体機能データと、に基づいて算出する口腔機能年齢算出ステップと、を含む口腔機能の評価方法。
【請求項8】
1または複数の装置により実行される予測モデルの生成方法であって、
複数の被験者の口腔機能に関する口腔機能データおよび当該被験者の身体機能に関する身体機能データと当該被験者の実年齢との関係を示す教師データを取得するデータ取得ステップと、
前記教師データを用いて、対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、当該対象者の口腔機能データおよび身体機能データに基づいて算出するための予測モデルを生成する予測モデル生成ステップと、を含む予測モデルの生成方法。
【請求項9】
対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとの入力を受け付ける端末装置と、
前記対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの前記口腔機能データおよび前記身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデルと、前記端末装置が入力を受け付けた前記対象者の口腔機能データおよび身体機能データと、に基づいて算出する評価装置と、を含む評価システム。
【請求項10】
請求項1に記載の評価装置としてコンピュータを機能させるための評価プログラムであって、前記データ取得部および前記口腔機能年齢算出部としてコンピュータを機能させるための評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔機能を評価するための評価装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な人が加齢により要介護となる場合、健康な状態から要介護の状態に至るまでの期間にフレイルと呼ばれる身体の虚弱状態になるといわれている。また、フレイルは口腔機能が低下したオーラルフレイルという状態から始まるとされる。オーラルフレイルの状態となっているのに口腔機能を改善するための措置をとらずに放置してしまうと、口腔機能の低下がさらに進み、それに伴って口腔以外の身体の機能も低下して、フレイル、更には要介護の状態に至る可能性が高まるといわれている。
【0003】
オーラルフレイルを含めてフレイルの状態は可逆的であり、適切な措置をとることにより健康な状態に戻すことが可能である。このため、健康な生活を長く続けるためには、口腔機能を評価し、現状を認識したうえで、オーラルフレイルになることを予防する、または、オーラルフレイルの状態となっている場合にはその対処をすることが重要である。
【0004】
口腔機能を評価する方法としては、例えば下記の特許文献1に記載されている方法が挙げられる。具体的には、特許文献1には、唾液を嚥下する際の喉の動きを評価する反復唾液嚥下テストや、音節を発音するときの唇の動きを評価するオーラルディアドコキネシス(ODK:Oral diadochokinesis)を容易に行えるようにする口腔機能評価装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来技術は、唾液を嚥下する機能や唇を動かす機能という口腔機能の一部について評価するだけであり、口腔機能を総合的に評価するものではない。また、上述のような従来技術では嚥下回数や発音回数が評価結果となるが、そのような回数は一般の人にはなじみが薄く、評価結果がどのような意味を持つのかが分かりにくいという点で改善の余地がある。
【0007】
本発明の一態様は、対象者の総合的な口腔機能を示し、かつ、その意味を理解しやすい指標値を算出することが可能な評価装置等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価装置は、対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとを取得するデータ取得部と、前記対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの前記口腔機能データおよび前記身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデルと、前記データ取得部が取得する前記対象者の口腔機能データおよび身体機能データと、に基づいて算出する口腔機能年齢算出部と、を備える。
【0009】
また、本発明の一態様に係る評価方法は、上記の課題を解決するために、1または複数の装置により実行される口腔機能の評価方法であって、対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとを取得するデータ取得ステップと、前記対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの前記口腔機能データおよび前記身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデルと、前記データ取得ステップで取得された前記対象者の口腔機能データおよび身体機能データと、に基づいて算出する口腔機能年齢算出ステップと、を含む。
【0010】
また、本発明の一態様に係る生成方法は、上記の課題を解決するために、1または複数の装置により実行される予測モデルの生成方法であって、複数の被験者の口腔機能に関する口腔機能データおよび当該被験者の身体機能に関する身体機能データと当該被験者の実年齢との関係を示す教師データを取得するデータ取得ステップと、前記教師データを用いて、対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、当該対象者の口腔機能データおよび身体機能データに基づいて算出するための予測モデルを生成する予測モデル生成ステップと、を含む。
【0011】
また、本発明の一態様に係る評価システムは、上記の課題を解決するために、対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとの入力を受け付ける端末装置と、前記対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの前記口腔機能データおよび前記身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデルと、前記端末装置が入力を受け付けた前記対象者の口腔機能データおよび身体機能データと、に基づいて算出する評価装置と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、対象者の総合的な口腔機能を年齢という形で、対象者の実年齢における一般的な口腔機能レベルからの比較を示し、その意味を理解しやすい指標値として算出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る評価装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】上記評価装置を含む評価システムの構成例を示す図である。
【
図3】上記評価システムに含まれる端末装置に表示させる画面の例を示す図である。
【
図4】予測モデルを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】口腔機能年齢の算出結果の表示画面例を示す図である。
【
図6】口腔機能年齢を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】上記評価システムの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔システム構成〕
本発明の一実施形態に係る口腔機能年齢の評価システム5の構成を
図2に基づいて説明する。
図2は、評価システム5の構成例を示す図である。評価システム5は、対象者の口腔機能を評価する機能を備えたシステムであり、図示のように、評価装置1と端末装置3を含む。評価装置1と端末装置3は、ネットワークを介して相互に通信することができる。なお、ネットワークは評価装置1と端末装置3とが通信できるようなものであればよい。
【0015】
評価装置1は、対象者の口腔機能を評価する指標値として口腔機能年齢を算出する。口腔機能年齢は、対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示している。詳細は後述するが、評価装置1は、対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとを用いて、複数の被験者のそれぞれの口腔機能データおよび身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデルにより口腔機能年齢を算出する。なお、口腔機能データは、加齢に伴う口腔機能の低下の度合いを示すデータであるともいえる。また、身体機能データは、加齢に伴う筋力の低下の度合いを示すデータであるともいえる。
【0016】
端末装置3は、口腔機能年齢の算出に必要な各種データの入力を受け付ける入力装置として機能する。上述のように、口腔機能年齢の算出に必要なデータには、口腔機能データと身体機能データが含まれている。端末装置3に入力されたこれらのデータはネットワークを介して評価装置1に送信される。なお、端末装置3に入力されたデータを評価装置1に送信する方法は任意であり、例えばネットワークを介さずに送信する等の方法を採用してもよい。
【0017】
そして、評価装置1は、受信したデータを用いて口腔機能年齢を算出し、算出した口腔機能年齢を、ネットワークを介して端末装置3に送信し、端末装置3は受信した口腔機能年齢を表示する。つまり、端末装置3は、評価装置1により算出された口腔機能年齢を出力する出力装置としても機能する。
図2の例では、端末装置3の表示部に「あなたのお口年齢は64歳です」との文章が表示されており、この文章に含まれる「64歳」が評価装置1により算出された口腔機能年齢である。
【0018】
以上のように、本実施形態の評価システム5は、対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとの入力を受け付ける端末装置3と、対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの口腔機能データおよび身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデルと、端末装置3が入力を受け付けた口腔機能データおよび身体機能データとを用いて算出する評価装置1と、を含む。
【0019】
また、本実施形態の端末装置3は、対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとの入力を受け付ける処理と、入力を受け付けた口腔機能データおよび身体機能データと、複数の被験者のそれぞれの口腔機能データおよび身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデルとを用いて算出された口腔機能年齢を出力する処理と、を実行する。
【0020】
対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢は、その値の意味が誰にでも容易に理解できる。ただし、口腔機能データのみから、対象者の総合的な口腔機能を示す口腔機能年齢を算出することは難しかった。そこで、本発明の発明者らは検討を重ね、口腔機能データのみではなく、身体機能データも用いて口腔機能年齢を算出することによって、実年齢との相関性がより高い、妥当な口腔機能年齢を算出できることを突き止めた。
【0021】
よって、口腔機能データのみではなく、身体機能データも用いて口腔機能年齢を算出する評価システム5によれば、対象者の総合的な口腔機能を年齢という形で分かりやすく示し、妥当性が高く、かつ、対象者の実年齢における一般的な口腔機能レベルからの比較を示すためその意味を理解しやすい指標値として口腔機能年齢を算出することが可能になるという効果を奏する。また、評価装置1および端末装置3によれば、評価システム5と同様の効果を奏する。例えば、口腔機能年齢が20代や30代であれば何でも不自由なく食べることができると理解でき、口腔機能年齢が80代以上であれば固いもの等は食べにくいと理解することができる。
【0022】
なお、
図2には、端末装置3がタブレット型の端末装置である例を示しているが、端末装置3は上述のような機能を備えたものであればよく、タブレット型のものに限られない。例えば、端末装置3としてパーソナルコンピュータ等を適用することもできるし、ゲーム機等の他の機能を主とする装置を端末装置3として適用することもできる。評価装置1についても同様であり、図示の例に限られない。また、端末装置3に評価装置1の機能を持たせてもよい。この場合、端末装置3単体で口腔機能年齢を算出することができる。
【0023】
〔評価装置の構成〕
評価装置1のより詳細な構成を
図1に基づいて説明する。
図1は、評価装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、評価装置1は、評価装置1の各部を統括して制御する制御部10と、評価装置1が使用する各種データを記憶する記憶部11と、評価装置1が他の装置と通信するための通信部12を備えている。通信部12は、端末装置3との通信に用いられる。また、図示していないが、評価装置1は、評価装置1に対する各種データの入力を受け付ける入力部および評価装置1が各種データを出力するための出力部を備えていてもよい。
【0024】
制御部10には、データ取得部101、指標値算出部102、口腔機能年齢算出部103、出力制御部104、教師データ生成部105、および学習部106が含まれている。また、記憶部11には、予測モデル111と教師データ112が記憶されている。
【0025】
データ取得部101は、口腔機能年齢の算出に必要な各種データを取得する。上述のように、これらのデータには、口腔機能年齢の算出の対象となる対象者の口腔機能データと身体機能データが含まれている。データ取得部101は、これらのデータを、例えば、通信部12を介した通信により端末装置3から取得してもよい。
【0026】
指標値算出部102は、データ取得部101が取得するデータを用いて口腔機能年齢の算出に用いられる指標値を算出する。指標値の詳細は後記「予測モデルの構成」の項目で説明する。なお、口腔機能年齢の算出には複数の指標値が用いられる。このため、指標値毎に指標値算出部102を設けてもよい。
【0027】
口腔機能年齢算出部103は、対象者の口腔機能データおよび身体機能データに基づいて、当該対象者の口腔機能年齢を算出する。詳細は後記「予測モデルの構成」の項目で説明するが、口腔機能年齢の算出には、複数の被験者のそれぞれの口腔機能データおよび身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデル111が用いられる。
【0028】
出力制御部104は、口腔機能年齢算出部103が算出する口腔機能年齢を出力装置に出力させる。なお、出力装置は、
図2の例のように評価装置1の外部の装置である端末装置3であってもよいし、評価装置1が備えているものであってもよい。また、出力の態様は出力された情報をユーザが認識できるようなものであればよく、例えば表示出力であっても、印字出力であっても、音声出力であってもよい。
【0029】
教師データ生成部105は、予測モデル111の生成または更新に用いる教師データ112を生成する。より詳細には、教師データ生成部105は、複数の被験者のそれぞれの口腔機能データおよび身体機能データと実年齢とを対応付けて教師データ112を生成する。各被験者の口腔機能データ、身体機能データ、および実年齢は、例えば評価装置1のユーザが評価装置1に入力してもよいし、データ取得部101がそれらのデータを格納している記憶装置にアクセスして当該記憶装置から取得してもよい。
【0030】
また、教師データ生成部105は、データ取得部101が取得する、口腔機能年齢の算出の対象となる対象者の口腔機能データおよび身体機能データと、当該対象者の実年齢との対応関係を示す教師データ112を生成する。教師データ生成部105を備えていることにより、評価装置1は、対象者の口腔機能データおよび身体機能データに基づく教師データ112を自動で生成することができる。なお、対象者が端末装置3に実年齢を入力するようにすれば、データ取得部101は、当該端末装置3から実年齢についても取得することができるから、教師データ生成部105はこのようにして取得された実年齢を用いて教師データ112を生成すればよい。対象者の口腔機能データと身体機能データに基づいて生成される教師データ112は、予測モデル111の更新に用いられる。
【0031】
学習部106は、教師データ112を用いた学習により予測モデル111を生成する。また、学習部106は、予測モデル111の生成後に新たな教師データ112が追加された場合に、追加された教師データ112を用いて予測モデル111を更新する。これにより、対象者の口腔機能年齢を算出する度に、予測モデル111の予測精度を維持または向上させることが可能になる。
【0032】
以上のように、評価装置1は、対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとを取得するデータ取得部101と、対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの口腔機能データおよび身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデル111と、データ取得部101が取得する口腔機能データおよび身体機能データとに基づいて算出する口腔機能年齢算出部103と、を含む。当該構成によれば、対象者の総合的な口腔機能を年齢という形で、対象者の実年齢における一般的な口腔機能レベルからの比較を示し、その意味を理解しやすい指標値として口腔機能年齢を算出することが可能になる。
【0033】
〔予測モデルの構成〕
予測モデル111は、口腔機能データおよび身体機能データと実年齢との関係をモデル化したものであればよい。例えば、予測モデル111は、重回帰分析により生成されたモデルであってもよい。この場合、目的変数は実年齢とし、説明変数は、実年齢と相関のある口腔機能データおよび身体機能データとすればよい。
【0034】
説明変数として適用可能な口腔機能データの例としては、例えば以下の(1)~(4)のようなものが挙げられる。また、説明変数として適用可能な身体機能データの例としては、例えば以下の(5)~(7)のようなものが挙げられる。
【0035】
(1)残存歯数(親知らずを含む歯数であってもよい)
(2)機能歯数(天然歯、差し歯、取り外し式の入れ歯、およびインプラントも含めて、物を咬むのに役立っている歯の本数)
(3)オーラルディアドコキネシスの繰り返し発音回数
(4)口腔に関する各種設問に対する回答
(5)身体機能に関する各種設問に対する回答
(6)性別
(7)BMI(Body Mass Index)、体脂肪率、筋肉量等の身体機能を示す測定値
上記(1)の残存歯数や上記(2)の機能歯数については、口腔機能年齢の算出の対象となる対象者に入力させればよい。例えば、出力制御部104は、残存歯数や機能歯数の入力画面を端末装置3に表示させることにより、対象者に残存歯数や機能歯数を入力させてもよい。この際、残存歯数や機能歯数を示す数値を入力させてもよいし、数値範囲を選択させてもよい。例えば、出力制御部104は、「抜けた歯は12本未満」、「抜けた歯は13~22本」、「抜けた歯は23本以上」のような選択肢を表示させ、データ取得部101はユーザが選択した選択肢を示す情報を口腔機能データとして取得してもよい。
【0036】
残存歯数や機能歯数については、そのまま説明変数として用いることもできるし、残存歯数や機能歯数を用いて算出された指標値を説明変数として用いることもできる。後者の場合、指標値算出部102は、残存歯数や機能歯数の範囲に応じた数値を、残存歯数や機能歯数を示す指標値(以下、歯数指標値と呼ぶ)として算出してもよい。例えば、指標値算出部102は、残存歯数が5本以下である場合に歯数指標値を1とし、残存歯数が6本から15本である場合に歯数指標値を2とし、残存歯数が16本以上である場合に歯数指標値を3としてもよい。
【0037】
上記(3)の発音回数は、例えば、被験者または対象者に「パ」「タ」「カ」の単音節をそれぞれ所定の測定期間(例えば5秒間)にできるだけ早く繰り返し発音させて、発音できた回数を入力させたものであってもよい。この場合、データ取得部101は、対象者の「パ」「タ」「カ」の発音回数を示す口腔機能データを取得し、指標値算出部102は、それらの発音回数から、オーラルディアドコキネシスに関する指標値(以下、ODK指標値と呼ぶ)を算出する。例えば、指標値算出部102は、「パ」「タ」「カ」の発音回数の最小値をODK指標値としてもよいし、「パ」「タ」「カ」の発音回数の平均値をODK指標値としてもよい。
【0038】
また、オーラルディアドコキネシスによる口腔機能の評価は、端末装置3を用いて行えるようにしてもよい。この場合、出力制御部104は、オーラルディアドコキネシスによる口腔機能の評価のための各種情報を端末装置3に表示させてもよい。これについて
図3に基づいて説明する。
図3は、端末装置3に表示させる表示画面の例を示す図である。
【0039】
図3に示す画面A、Bのうち、画面Aがオーラルディアドコキネシスにおける「カ」の発音回数を評価する際に表示させる表示画面の例を示している。画面Aには、「カ」の発音をチェックする旨、および5秒間に何度「カ」と言えるかを計測する旨の文字列が表示されている。また、画面Aには、「スタート」との文字列を含むオブジェクトが表示されている。出力制御部104は、このような画面を端末装置3に表示させてもよい。
【0040】
対象者が、画面Aにおける「スタート」のオブジェクトを選択すると、端末装置3は対象者の発音の録音を開始し、所定の測定期間だけ録音を行って録音データを生成する。また、出力制御部104は、「パ」の発音と「カ」の発音についても画像Aと同様の画面を端末装置3に表示させ、端末装置3はそれらの発音を録音した録音データを生成する。そして、3つの録音データの生成が完了した後、端末装置3はそれらの録音データを評価装置1に送信し、データ取得部101は当該録音データを口腔機能データとして取得してもよい。この場合、指標値算出部102は、取得した録音データを解析して、「パ」「タ」「カ」の発音回数を特定し、それらの最小値あるいは平均値をODK指標値として算出する。
【0041】
上記(4)あるいは(5)の設問に対する回答を対象者に入力させるために、出力制御部104は、端末装置3に設問を表示させてもよい。
図3に示す画面Bは設問の表示画面の例を示している。画面Bには、設問とその設問に対する回答の選択肢とが表示されている。なお、画面Bに表示されている設問は、何れも身体機能に関する設問である。
【0042】
対象者は、各設問の選択肢のうち、自らに該当する選択肢を選び、端末装置3は各設問について対象者が選択した選択肢を示すデータを評価装置1に送信する。データ取得部101は当該データを口腔機能データまたは身体機能データとして取得し、指標値算出部102は、それらのデータを用いて回答に応じた値の指標値(以下、設問回答指標値と呼ぶ)を算出する。
【0043】
設問回答指標値の算出方法は予め定めておけばよい。例えば、各設問の各選択肢について点数を予め定めておき、指標値算出部102は、全設問の合計点数や平均点数を設問回答指標値として算出してもよい。
【0044】
指標値算出部102が算出する設問回答指標値は、例えば、SARC-Fスコア(サルコペニア・フレイルリスクチェックスコア)であってもよい。この場合、出力制御部104は、SARC-F用の設問を端末装置3に表示させて対象者に回答させればよい。SARC-F用の設問には、「半年前と比べて硬いものが食べにくくなった」、「お茶や汁物でむせることがある」、「義歯(部分入れ歯・総入れ歯)を使用している」、「定期的に歯科検診を受診している」等があり、対象者はこれらの設問に対し、「はい」または「いいえ」で回答する。SARC-Fスコアは、各回答の選択肢に予め設定された点数の合計である。
【0045】
この他にも、出力制御部104は、例えば、「乾燥した食べ物は食べるのが難しいことがあるか」、「唇が渇く」、「口が渇いて、就寝中に目が覚める」、等の設問を提示し、該当する頻度を回答させてもよい。また、出力制御部104は、例えば、「若いころと比べて食事の味はどうか」等の設問を提示して回答させてもよい。
【0046】
上記(6)の性別および上記(7)の測定値は対象者に入力させればよい。そして、指標値算出部102は、入力された内容に応じた指標値を算出すればよい。例えば、男性を示す指標値を「0」、女性を示す指標値を「1」としてもよい。また、上記(7)の測定値について、指標値算出部102は、当該測定値をそのまま指標値としてもよいし、当該測定値の範囲に応じた所定の数値を指標値としてもよい。例えば、指標値算出部102は、BMIが閾値以上の場合にはBMIの指標値の値を「1」とし、閾値未満の場合には当該指標値の値を「0」としてもよい。
【0047】
以上のように、口腔機能年齢の算出に用いる口腔機能データには、対象者の残存歯数を示すデータ、対象者が所定期間に所定の音節を発音できた回数を示すデータ、およびオーラルフレイルに関する設問に対する対象者の回答内容を示すデータの少なくとも何れかが含まれていてもよい。また、口腔機能年齢の算出に用いる身体機能データには、身体機能に関する設問に対する対象者の回答内容を示すデータが少なくとも含まれていてもよい。これらのデータは、何れも口腔機能年齢と相関があることが確認されているデータであるから、これらのデータを用いることにより妥当な口腔機能年齢を算出することが可能になる。
【0048】
なお、上述の指標値を口腔機能データまたは身体機能データとして入力させてもよく、この場合、指標値算出部102は省略される。また、予測モデル111は、口腔機能データおよび身体機能データと実年齢との関係をモデル化したものであればよく、重回帰モデルに限られない。例えば、ニューラルネットワークやランダムフォレスト等の予測モデル111を用いることも可能である。
【0049】
〔処理の流れ(予測モデルの生成方法)〕
学習部106が予測モデル111を生成する処理(予測モデルの生成方法)の流れを
図4に基づいて説明する。
図4は、予測モデル111を生成する処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図4には、複数の被験者の口腔機能データおよび身体機能データ(正確には口腔機能データおよび身体機能データから算出された上述のような各種指標値)と実年齢とを対応付けた教師データ112が、記憶部11に記憶されている状態における処理を示している。
【0050】
S1(データ取得ステップ)では、学習部106は、記憶部11に記憶された教師データ112を取得する。続いて、S2(予測モデル生成ステップ)では、学習部106は、S1で取得した教師データ112を用いて予測モデル111を生成する。そして、学習部106は、生成した予測モデル111を記憶部11に記憶させ、これにより
図4の処理は終了する。
【0051】
重回帰分析により予測モデル111を生成する場合、学習部106は、教師データ112を用いて各説明変数に乗じる係数と定数の値を算出し、算出した値を予測モデル111として記憶部11に記憶させる。
【0052】
例えば、残存歯数の指標値、ODK指標値、SARC-Fスコア、およびオーラルフレイルに関する複数の設問の回答に基づいて算出された設問回答指標値を説明変数とした場合、予測モデル111は、下記の数式(1)で表される。なお、数式(1)におけるa1~a4は回帰係数であり、bは定数である。これらの値が教師データ112から算出される。
【0053】
(年齢)=a1×(残存歯数の指標値)+a2×(ODK指標値)+a3×(SARC-Fスコア)+a4×(設問回答指標値)+b …(1)
口腔機能年齢算出部103は、上記の数式(1)に対象者の口腔機能データおよび身体機能データから算出された上述のような各種指標値を入力することにより、対象者の年齢の予測値を算出することができる。この予測値は、口腔機能に関連するデータである口腔機能データと身体機能に関連するデータである身体機能データとに基づくものであり、口腔機能の衰えと身体機能の衰えとの両方を考慮した予測値である。このため、当該予測値は、妥当性および納得性の高い口腔機能年齢であるといえる。
【0054】
算出された口腔機能年齢が対象者の実年齢よりも小さければ、その対象者は、口腔機能データおよび身体機能データから想定されるよりも若いということになる。一方、算出された予測値が対象者の実年齢よりも大きい値であれば、その対象者の口腔機能の老化は年齢以上に進んでいるということになる。
【0055】
以上のように、本実施形態の予測モデル111の生成方法は、複数の被験者の口腔機能に関する口腔機能データおよび当該被験者の身体機能に関する身体機能データと当該被験者の実年齢との関係を示す教師データ112を取得するデータ取得ステップ(S1)と、S1で取得された教師データ112を用いて、対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、当該対象者の口腔機能データおよび身体機能データに基づいて算出するための予測モデル111を生成する予測モデル生成ステップ(S2)と、を含む。これにより、対象者の総合的な口腔機能を示し、かつ、その意味を理解しやすい指標値である口腔機能年齢を算出することが可能な予測モデル111を生成することができる。
【0056】
〔予測精度の向上について〕
学習部106は、上記の数式(1)の右辺にZスコアを加えたものを予測モデル111としてもよい。Zスコアを加えることにより予測精度を向上させることができる。Zスコアは下記の数式(2)で表される。なお、CAは実年齢、rは数式(1)で予測した年齢とCAの相関係数、σBAは当該予測した年齢の標準偏差、σCAは実年齢の標準偏差である。
【0057】
(Zスコア)={CA-(CAの平均値)}{1-r×(σBA/σCA)} …(2)
右辺にZスコアを加えた数式(1)で口腔機能年齢を算出する場合、CAは対象者の実年齢とし、CAの平均値は、教師データ112における実年齢の平均値とすればよい。また、r、σBA、σCAは教師データ112を用いて算出することができる。CAの平均値、r、σBA、σCAは学習時に学習部106が算出すればよい。
【0058】
〔結果表示画面例〕
出力制御部104は、以上のようにして生成された予測モデル111を用いて算出された口腔機能年齢を出力装置に出力させる。この際、出力制御部104は、口腔機能年齢に関連する各種情報についても出力装置に出力させてもよい。
【0059】
口腔機能年齢に関連する情報としては、例えば、対象者の実年齢や実年齢と口腔機能年齢の差などが挙げられる。出力制御部104は、口腔機能年齢と実年齢との差を出力装置に出力させることにより、口腔機能年齢と実年齢との乖離の程度を対象者に容易に認識させることができる。
【0060】
この他にも、出力制御部104は、例えば、口腔機能年齢に応じたメッセージ(噛み応えのある食品をしっかり食べられる等)や、口腔機能年齢を低下させるためのアドバイスなどを出力させてもよい。
【0061】
また、口腔機能年齢の算出を複数回行っている対象者には、口腔機能年齢の推移を示す情報を提示してもよい。これについて
図5に基づいて説明する。
図5は、口腔機能年齢の算出結果の表示画面例を示す図である。
【0062】
図5に示す画面Cには、算出された口腔機能年齢の推移を示す折れ線グラフが表示されている。出力制御部104は、このような画面を端末装置3等に表示させることにより、ユーザに口腔機能年齢の推移を容易に認識させることができる。なお、画面Cでは口腔機能年齢を「おくち年齢」として示している。
【0063】
また、画面Cでは、口腔機能年齢の推移を示すグラフと共に対象者の実年齢を示す破線の折れ線グラフが表示されている。これにより、口腔機能年齢と実年齢との乖離度の推移をユーザに容易に認識させることができる。
【0064】
また、画面Cでは、推移を表示させる対象とする期間を、直近10回、月ごと、および年毎で切り替えられるようになっている。これにより、対象者が関心のある期間における口腔機能年齢の推移を表示させることができる。なお、対象者の口腔機能年齢の推移を表示させる場合、口腔機能年齢算出部103は、算出した口腔機能年齢を対象者の識別情報および算出日と対応付けて記憶部11等の記憶装置に記憶させておけばよい。
【0065】
〔処理の流れ(口腔機能年齢の算出)〕
評価装置1が口腔機能年齢を算出する処理(口腔機能の評価方法)の流れを
図6に基づいて説明する。
図6は、口腔機能年齢を算出する処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図6には教師データ112の生成および予測モデル111の更新についても示しているが、これらの処理は口腔機能年齢を算出する際に必須の処理ではない。
【0066】
S11(データ取得ステップ)では、データ取得部101が、対象者の口腔機能データと身体機能データを取得する。例えば、データ取得部101は、端末装置3に入力された上記のデータを、通信部12を介した通信により取得してもよい。また、この際に、データ取得部101は、対象者の実年齢を示すデータ等についても取得してもよい。
【0067】
なお、上述のように、口腔機能データと身体機能データを取得するにあたり、出力制御部104は、口腔機能データと身体機能データを入力させるための各種表示画面を端末装置3に表示させてもよい。
【0068】
S12では、指標値算出部102が、S11で取得された口腔機能データと身体機能データから、口腔機能年齢の算出に用いる各種指標値を算出する。指標値算出部102が算出する指標値は予測モデル111の説明変数である。
【0069】
S13(口腔機能年齢算出ステップ)では、口腔機能年齢算出部103が、対象者の口腔機能年齢を算出する。具体的には、口腔機能年齢算出部103は、S12で算出された指標値を予測モデル111に入力することにより口腔機能年齢を算出する。なお、予測モデル111は、例えば数式(1)で示されるような重回帰モデルであってもよいし、当該重回帰モデルに数式(2)で示されるZスコアを加算したものであってもよく、他の機械学習手法で生成されたものであってもよい。
【0070】
S14では、出力制御部104が、S13で算出された口腔機能年齢を出力装置(例えば端末装置3)に出力させる。この際、出力制御部104は、S13で算出された口腔機能年齢と実年齢の差や、口腔機能年齢の推移などについても出力させてもよい。
【0071】
S15では、教師データ生成部105が教師データを生成する。具体的には、教師データ生成部105は、S12で算出された指標値と対象者の実年齢とを対応付けて教師データ112を生成し、記憶部11に記憶させる。なお、S15以降の処理は、S12の処理の終了後、任意のタイミングで行えばよく、例えばS13~S14の処理よりも先に行ってもよいし、S13~S14の処理と並行で行ってもよい。
【0072】
S16では、学習部106が、予測モデル111を更新するか否かを判定する。S16でYESと判定された場合にはS17の処理に進み、S16でNOと判定された場合には
図6の処理は終了となる。なお、予測モデル111を更新する条件は予め定めておけばよい。例えば、予測モデル111の生成後、あるいは予測モデル111を最後に更新した後、所定の期間が経過したことを条件として更新するようにしてもよいし、新たな教師データ112が所定数蓄積されたことを条件として予測モデル111を更新するようにしてもよい。また、S16の処理を省略し、新たな教師データ112が生成される毎に予測モデル111を更新するようにしてもよい。
【0073】
S17では、学習部106が、予測モデル111の更新を行う。予測モデル111が例えば数式(1)で示されるような重回帰モデルである場合、S17ではa
1~a
4およびbの値が更新される。これにより、
図6の処理は終了する。
【0074】
以上のように、本実施形態の口腔機能の評価方法は、対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとを取得するデータ取得ステップ(S11)と、対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの口腔機能データおよび身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデル111と、S11で取得された対象者の口腔機能データおよび身体機能データと、に基づいて算出する口腔機能年齢算出ステップ(S13)と、を含む。よって、対象者の総合的な口腔機能を年齢という形で、対象者の実年齢における一般的な口腔機能レベルからの比較を示し、その意味を理解しやすい指標値として口腔機能年齢を算出することができる。
【0075】
〔システム構成の他の例〕
上述の実施形態で説明した各処理の実行主体は任意であり、上述の例に限られない。つまり、上述の各実施形態で説明した各処理を実行可能であれば、評価システム5を構成する装置は適宜変更することができる。
【0076】
例えば、
図7に示すような構成の評価システム6も本発明の範疇に含まれる。
図7は、評価システム6の構成例を示す図である。評価システム6は、評価システム5と同様に口腔機能年齢を算出する機能を備えたシステムである。図示のように、評価システム6には、評価装置61、ディスプレイ62、キーボード63、マウス64、および学習装置65が含まれている。
【0077】
評価装置61は、上述の評価装置1と同様に口腔機能年齢を算出する機能を備えている。ディスプレイ62は、画像を表示する表示装置であり、図示のように口腔機能年齢(
図7ではお口年齢と表記)の表示等に用いられる。キーボード63およびマウス64は、対象者の口腔機能データや身体機能データの入力に用いられる入力装置である。また、学習装置65は、予測モデル111を生成する装置である。予測モデル111の生成は学習装置65が行うため、評価装置61は、予測モデル111を生成するための構成要素である学習部106を備えている必要はない。
【0078】
評価システム6では、学習装置65が予測モデル111を生成し、評価装置61は学習装置65が生成した予測モデル111を取得する。対象者は、キーボード63およびマウス64を用いて自身の口腔機能データや身体機能データを評価装置61に入力し、評価装置61は、入力された各種データと学習装置65が生成した予測モデル111とを用いて対象者の口腔機能年齢を算出する。このように、対象者の直接的な操作の対象となる装置により口腔機能年齢を算出する構成としてもよい。
【0079】
また、学習装置65は、評価装置61に入力された、対象者の口腔機能データ、対象者の身体機能データ、および対象者の実年齢等を取得し、それらのデータを用いて教師データ112を生成したり、生成した教師データ112を用いて予測モデル111を更新したりする処理についても行ってもよい。
【0080】
無論、
図7のシステム構成も
図2のシステム構成も例示にすぎず、本発明の実装の態様はこれらの例に限られない。例えば、評価装置61をノート型のパーソナルコンピュータとしてもよいし、タブレット型の端末装置としてもよい。
【0081】
また、
図4に示した予測モデルの生成方法の各ステップの実行主体、および
図6に示した口腔機能の評価方法の各ステップの実行主体も任意である。つまり、これらの各方法は、1つの装置に実行させることもできるし、複数の装置に各ステップの処理を分担させることにより実行することもできる。
【0082】
〔ソフトウェアによる実現例〕
評価装置1、端末装置3、評価装置61、および学習装置65(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラム(評価プログラム/予測モデル生成プログラム等)により実現することができる。
【0083】
この場合、上記各装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラム(コンピュータを評価装置1として機能させる評価プログラムあるいは予測モデル生成プログラム/コンピュータを端末装置3として機能させるプログラム/コンピュータを評価装置61として機能させる評価プログラム/コンピュータを学習装置67として機能させる予測モデル生成プログラム)を実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0084】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0085】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0086】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0087】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る評価装置は、対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとを取得するデータ取得部と、前記対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの前記口腔機能データおよび前記身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデルと、前記データ取得部が取得する前記対象者の口腔機能データおよび身体機能データと、に基づいて算出する口腔機能年齢算出部と、を備える。
【0088】
本発明の態様2に係る評価装置は、上記の態様1において、前記口腔機能データには、前記対象者の残存歯数を示すデータ、前記対象者が所定期間に所定の音節を発音できた回数を示すデータ、およびオーラルフレイルに関する設問に対する前記対象者の回答内容を示すデータの少なくとも何れかが含まれており、前記身体機能データには、身体機能に関する設問に対する前記対象者の回答内容を示すデータが少なくとも含まれている。
【0089】
本発明の態様3に係る評価装置は、上記の態様1または2において、前記予測モデルは、前記口腔機能データおよび前記身体機能データから生成された複数の説明変数から前記口腔機能年齢を算出する重回帰モデルに下記の値を加算したモデルであり、
{CA-(CAの平均値)}{1-r×(σBA/σCA)}
前記CAは実年齢、前記rは前記重回帰モデルで予測した予測年齢とCAの相関係数、前記σBAは前記予測年齢の標準偏差、前記σCAは前記実年齢の標準偏差である。
【0090】
本発明の態様4に係る評価装置は、上記の態様1から3の何れかにおいて、前記データ取得部が取得する前記口腔機能データおよび前記身体機能データと、前記対象者の実年齢との対応関係を示す教師データを生成する教師データ生成部を備える。
【0091】
本発明の態様5に係る評価装置は、上記の態様4において、前記教師データを用いて前記予測モデルを更新する学習部を備える。
【0092】
本発明の態様6に係る評価装置は、上記の態様1から5の何れかにおいて、前記口腔機能年齢算出部が算出する口腔機能年齢と前記対象者の実年齢との差を出力装置に出力させる出力制御部を備える。
【0093】
本発明の態様7に係る評価方法は、1または複数の装置により実行される口腔機能の評価方法であって、対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとを取得するデータ取得ステップと、前記対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの前記口腔機能データおよび前記身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデルと、前記データ取得ステップで取得された前記対象者の口腔機能データおよび身体機能データと、に基づいて算出する口腔機能年齢算出ステップと、を含む。
【0094】
本発明の態様8に係る予測モデルの生成方法は、1または複数の装置により実行される予測モデルの生成方法であって、複数の被験者の口腔機能に関する口腔機能データおよび当該被験者の身体機能に関する身体機能データと当該被験者の実年齢との関係を示す教師データを取得するデータ取得ステップと、前記教師データを用いて、対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、当該対象者の口腔機能データおよび身体機能データに基づいて算出するための予測モデルを生成する予測モデル生成ステップと、を含む。
【0095】
本発明の態様9に係る評価システムは、対象者の口腔機能に関する口腔機能データと、当該対象者の身体機能に関する身体機能データとの入力を受け付ける端末装置と、前記対象者の口腔機能が何歳相当であるかを示す口腔機能年齢を、複数の被験者のそれぞれの前記口腔機能データおよび前記身体機能データと実年齢との関係をモデル化した予測モデルと、前記端末装置が入力を受け付けた前記対象者の口腔機能データおよび身体機能データと、に基づいて算出する評価装置と、を含む。
【0096】
本発明の態様10に係る評価プログラムは、付記1に記載の評価装置としてコンピュータを機能させるための評価プログラムであって、前記データ取得部および前記口腔機能年齢算出部としてコンピュータを機能させる。
【符号の説明】
【0097】
1 評価装置
101 データ取得部
103 口腔機能年齢算出部
104 出力制御部
105 教師データ生成部
106 学習部
111 予測モデル
112 教師データ
3 端末装置
5、6 評価システム
61 評価装置