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特開2024-108031緑茶抽出液の製造方法及びカテキン類による処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108031
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】緑茶抽出液の製造方法及びカテキン類による処理方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
A23F3/16
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012283
(22)【出願日】2023-01-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】596087812
【氏名又は名称】株式会社エルブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】宮松 扶友基
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴美
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB01
4B027FC10
4B027FE06
4B027FK01
4B027FK02
4B027FP72
4B027FP75
4B027FR04
(57)【要約】
【課題】茶葉より抽出されたカテキン類の効果を高くできる緑茶抽出液の製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【解決手段】茶葉からカテキン類を抽出した後に乾燥させることなく、所定の濃度範囲にまで濃縮することでカテキン類の安定性が向上するとの知見を得た。本発明の緑茶抽出液の製造方法は上記知見に基づき完成したものであり、茶の生葉又は荒茶からなる茶葉原料を、水を主成分とする抽出媒に浸漬し、カテキン類を抽出した緑茶抽出液を得る抽出工程と、前記カテキン類の濃度が5%~40%になるまで不活性雰囲気且つ減圧雰囲気下で加熱保持して前記緑茶抽出液を濃縮して濃縮緑茶抽出液とする濃縮工程とを有する。
本発明の緑茶抽出液の製造方法は、上記構成を有することにより含有するカテキン類の分散性が良くなると共に、カテキン類の作用効果も高く維持できることが分かった。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶の生葉又は荒茶からなる茶葉原料を、水を主成分とする抽出媒に浸漬し、カテキン類を抽出した緑茶抽出液を得る抽出工程と、
前記カテキン類の濃度が5%~40%になるまで不活性雰囲気且つ減圧雰囲気下で加熱保持して前記緑茶抽出液を濃縮して濃縮緑茶抽出液とする濃縮工程と、
を有する緑茶抽出液の製造方法。
【請求項2】
前記抽出工程又は前記濃縮工程において、コロイダルシリカを共存させる請求項1に記載の緑茶抽出液の製造方法。
【請求項3】
前記抽出工程は、前記抽出媒の温度が0℃~15℃、浸漬時間が3時間~10時間である請求項1又は2に記載の緑茶抽出液の製造方法。
【請求項4】
前記濃縮工程後に、不活性雰囲気に保存する保存工程を有する請求項1又は2に記載の緑茶抽出液の製造方法。
【請求項5】
前記保存工程は、前記濃縮緑茶抽出液を凍結して保存する工程である請求項4に記載の緑茶抽出液の製造方法。
【請求項6】
前記抽出媒は、0質量%以上50質量%未満のエチルアルコールを含み、残部が水である請求項1又は2に記載の緑茶抽出液の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の緑茶抽出液の製造方法により製造された前記濃縮緑茶抽出液を乾燥させることなく、添加して処理液を調製する処理液調製工程と、
前記処理液を被処理物に接触させて前記カテキン類を前記被処理物に結合させる処理工程と、
を有するカテキン類による処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑茶抽出液の製造方法及びその製造方法にて製造した緑茶抽出液を用いて行うカテキン類による処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキン類のうち茶に含まれるものは、茶葉から抽出することで製造され、抗酸化作用、抗菌作用、消臭作用などがある天然素材として汎用されている。
【0003】
茶葉からカテキン類を抽出方法としては、茶葉を湯又はアルコールに浸漬させてカテキン類を抽出したのち、60℃~80℃程度の湯煎で、水を蒸発させてカテキン類の濃度が20%以上になるまで濃縮させる。また、アルコールを用いてカテキン類を抽出することもある。
【0004】
これらの抽出液は、スプレードライヤーやスラリードライヤーなどを使って脱水させ、乾燥させることで粉末状のカテキン類として種々の用途に用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-055264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにして製造されるカテキン類の粉末は、微粒子同士が造粒されたり、凝集が起きたりしており、本来の粒子状態での分散加工が難しかった。製造されたカテキン類は、織物などの被処理物の表面乃至内部に結合させることが行われるが、凝集などが起きるとカテキン類の本来の性能が発揮し難い問題があった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、茶葉より抽出されたカテキン類の効果を高くできる緑茶抽出液の製造方法及びカテキン類による処理方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を行った結果、茶葉からカテキン類を抽出した後に乾燥させることなく、所定の濃度範囲にまで濃縮することでカテキン類の安定性が向上するとの知見を得た。
【0009】
本発明の緑茶抽出液の製造方法は上記知見に基づき完成したものであり、茶の生葉又は荒茶からなる茶葉原料を、水を主成分とする抽出媒に浸漬し、カテキン類を抽出した緑茶抽出液を得る抽出工程と、
前記カテキン類の濃度が5%~40%になるまで不活性雰囲気且つ減圧雰囲気下で加熱保持して前記緑茶抽出液を濃縮して濃縮緑茶抽出液とする濃縮工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の緑茶抽出液の製造方法は、上記構成を有することにより含有するカテキン類の分散性が良くなると共に、カテキン類の作用効果も高く維持できることが分かった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(緑茶抽出液の製造方法)
本発明の緑茶抽出液の製造方法について実施形態に基づき以下詳細に説明を行う。本実施形態の緑茶抽出液の製造方法にて製造される緑茶抽出液は、液体のまま保存可能である。例えば4℃以下の低温環境下で保存することが好ましい。凍結していても良い。ここで低温環境としては、0℃以下が好ましく、-10℃以下が更に好ましい。凍結させる場合には急速冷凍することが好ましい。本実施形態の緑茶抽出液の製造方法にて製造される緑茶抽出液は、そのまま利用することが好ましい。例えば、抽出液の状態で染料、インクなどに混合させたり、樹脂材料中に含有させたりできる。またそのまま、飲料中に含有させてもよい。
【0012】
本実施形態の緑茶抽出液の製造方法は、茶の生葉又は荒茶からなる茶葉原料に含まれるカテキン類を抽出する方法である。茶の生葉とは収穫したそのままの状態の茶葉であり、荒茶とは茶の生葉を加熱により不活性化したものである。生葉や荒茶が収穫される時期はいつでも良く、一番茶、二番茶、三番茶、秋冬茶、休耕茶葉などが採用できる。また、飲用の茶を抽出した残りの茶葉を用いることもできる。
【0013】
更に、本実施形態の緑茶抽出液の製造方法により製造された緑茶抽出液はカテキン類の粒径が小さくできるため、樹脂材料中に混合する場合に、より均質に分散させることができる。
【0014】
本実施形態の緑茶抽出液の製造方法は、抽出工程と濃縮工程と必要に応じて選択されるその他工程とを有する。
【0015】
抽出工程は、茶の生葉又は荒茶からなる茶葉原料を、水を主成分とする抽出媒に浸漬し、カテキン類を抽出した緑茶抽出液を得る工程である。必要な量のカテキン類が抽出されるまで抽出媒中に茶葉原料を浸漬する。茶葉原料としては、生葉及び荒茶の双方を用いても良い。生葉、荒茶共に細かく切断して用いることもできる。
【0016】
抽出工程における抽出媒の温度及び抽出時間は特に限定しないが、高温で短時間、又は、低温で長時間にすることが好ましい。高温で短時間での条件としては、抽出媒の温度が50℃~90℃程度で15分~30分程度にすることが好ましい。抽出媒の温度は、60℃以上、70℃以上、80℃以上にすることができる。また加圧条件で抽出工程を行う場合には沸点以上の温度(例えば110℃、120℃)で抽出することもできる。低温で長時間の条件としては、抽出媒の温度が0℃~15℃程度で3時間~10時間程度にすることが好ましい。抽出媒の温度は、10℃以下、5℃以下、4℃以下にすることができる。
【0017】
抽出媒は水を主成分とする。ここで主成分とは質量基準で50%以上含有することをいい、含有量の下限値としては60%、70%、80%、90%、95%、100%が挙げられる。水以外にはエタノールを含有することができる。抽出媒中の酸素は少ない方が好ましいため、抽出媒から酸素を除去する工程をもつことが好ましい。酸素を除去する工程としては、窒素などの不活性ガスによりバブリングを行ったり、沸騰させるなど加熱を行ったりすることが好ましい。バブリングは、抽出工程中に継続して行っても良い。
【0018】
抽出工程における雰囲気は不活性雰囲気にすることが好ましい。不活性雰囲気にするためには、窒素などの不活性ガスで抽出媒の水面上の空間を置換することが好ましい。
【0019】
茶葉原料を抽出媒に入れる量としては特に限定しないが、濃縮工程において抽出媒を除去する量を減らすためにできるだけ多く入れることが好ましい。例えば、茶葉原料は全体の質量(抽出媒及び茶葉原料の質量の和)を基準として1%~30%程度含有させることができる。下限値としては3%、5%、8%、10%などが採用できる。上限値としては25%、20%、15%、12%などが採用できる。
【0020】
濃縮工程は、不活性雰囲気且つ減圧雰囲気下で緑茶抽出液を加熱して抽出媒を除去して濃縮緑茶抽出液とする工程である。抽出媒の除去は、緑茶抽出液に含まれるカテキン類の濃度が5%~40%になるまで行う。
【0021】
不活性雰囲気としては窒素ガスなどの不活性ガスにより緑茶抽出液の水面上の空間を置換された雰囲気が例示できる。更には緑茶抽出液中に不活性ガスによりバブリングを行うことでも不活性雰囲気を形成することができる。
【0022】
減圧雰囲気としては、特に限定しないが、90kPa、80kPa、70kPa、60kPa、50kPaなどが採用できる。この程度の圧力に減圧しながら加熱することで抽出媒を蒸発させて除去できる。濃縮工程は、緑茶抽出液を静置しながら行うこともできるし、緑茶抽出液を撹拌しながら行うこともできる。濃縮工程は不活性雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、窒素ガスなどの不活性ガスを用いて空気を追い出して行うことができる。
【0023】
その他の工程としては、抽出媒にコロイダルシリカを含有させる工程がある。コロイダルシリカの存在下で抽出工程を行ったり、濃縮工程を行ったりすることで、カテキン類とコロイダルシリカとの間に結合が生起してカテキンの安定性が向上する。コロイダルシリカを含有させる前にはカテキン類を乾燥状態にしないことが好ましい。カテキン類を乾燥状態にしないことでカテキン類の凝集が抑制され、コロイダルシリカとカテキン類との分散性が向上できる。
【0024】
本実施形態の製造方法のように、カテキン類が高度に分散した状態でコロイダルシリカを接触させると、カテキン類とコロイダルシリカとも高度に分散した状態の濃縮緑茶抽出液が得られる。このようにして得られた濃縮緑茶抽出液をスプレードライ等により粉末化すると、カテキン類のみを含む抽出液を粉末化したときと比較してカテキン類の分散性が向上するため樹脂材料中に分散させやすくなる。このようにして得られた粉末は、混合する樹脂材料の種類に応じて適正に選択されるシランカップリング剤などにより表面処理を行っても良い。
【0025】
その他の工程としては、濃縮工程後の濃縮緑茶抽出液を不活性雰囲気下で保存する保存工程がある。保存工程は、空気中の酸素ガスの影響を抑制するために保存に使用する保存容器中に隙間無く充填したり、不活性ガスと共に充填したりできる。保存工程では、濃縮緑茶抽出液を冷暗所に保存したり、氷点下に保存して濃縮緑茶抽出液を凍結したりできる。
【0026】
(カテキン類による処理方法)
本実施形態のカテキン類による処理方法は、処理液調製工程と処理工程とを有する。た例えば、織物、糸を染色したり、印刷用のインクとしたり、家具などのような何らかの物品の表面に塗布することができる。カテキン類により処理することで着色させたり、抗菌性・消臭性を付与したりできる。処理液調製工程は、本実施形態の緑茶抽出液の製造方法にて得られた濃縮緑茶抽出液を乾燥することなく処理液を調製する工程である。処理液としては、織物や皮革を染色する染料、印刷に用いるインクなどである。
【0027】
処理工程は、処理液を被処理物に接触させてカテキン類を被処理物に結合させる工程である。処理液が染料である場合には染色工程、インクであるときには印刷工程である。
【実施例0028】
・実施例1
荒茶10kgを90℃のイオン交換水100Lの割合(1:10)で30分間浸漬、または4℃の冷水に8時間浸漬し、得られた緑茶カテキン類の抽出水を、100メッシュのSUS網で茶葉固形物を除去しながら吸引濾過瓶で濾過し、SUS製の円筒キッチンポット(50L)に緑茶抽出液としての濾液を回収した。
【0029】
濾液の入ったキッチンポットを真空乾燥機(ADVANTEC/型番:DRV622DA)に設置し、真空乾燥器の温度は60℃に設定し、槽内圧力が約70kPaに設定し、真空濃縮時間は、72時間にセットし、初期濃度を約10倍に濃縮した。
【0030】
このような加工工程で得られた緑茶カテキン類の抽出液(濃縮緑茶抽出液)は、一番茶、二番茶、秋冬番茶、休耕茶葉それぞれの荒茶から、いずれの茶葉からもカテキン類が約20~25%程度の濃度で得られた。湯でも冷水でも秋冬番茶がもっとも高濃度のカテキン類が抽出できた。これらの濃縮液は、PP製またはPET製の容器に空気が残らないようにフル充填し、1℃で冷蔵保存、またはマイナス5℃で冷凍保存した。
【0031】
以下に、各収穫茶葉の荒茶より得られたカテキン濃縮のお湯の温度と抽出時間の影響に
ついて、カテキン類として10倍に濃縮した時点での濃度を分光光度計で算出し、結果を表1~3に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
表より明らかなように、抽出媒の温度としては90℃にしたときのカテキン類の抽出量が一番多かったが、80℃以上であれば90℃と遜色がない量のカテキン類を抽出できることが分かった。また、抽出時間が45分と30分との間でカテキン類の抽出量に大差が無く、15分でも十分な量のカテキン類が抽出できていることから抽出時間は15分以上が好ましく、30分であれば十分であることが分かった。
【0036】
・実施例2
秋冬番茶の荒茶10kgを4℃のイオン交換水とエタノール混合液(質量比60:40)100Lで8時間浸漬し、得られた緑茶カテキン類の抽出液を、100メッシュのSUS網で茶葉固形物を除去しながら吸引濾過瓶で濾過し、SUS製の円筒キッチンポット(50L)に緑茶抽出液としての濾液を回収した。
【0037】
濾液の入ったキッチンポットを真空乾燥機に設置し、槽内の空気を窒素ガスで置換したのちに、真空乾燥器の温度を60℃に設定し、槽内圧力が約70kPaに減圧にし、真空乾燥時間は、24時間にセットし、初期濃度を約10倍に濃縮した液を回収した。
【0038】
この濃縮された濃縮緑茶抽出液としての緑茶カテキン液2kgに、粒径が数十nmのコロイダルシリカ40質量%溶液2kgと混ぜると、OH基を持つカテキン類と化学結合して、耐水・耐熱性を有するカテキンセラミックス複合体を分散した分散液(カテキンセラミックス複合体溶液)が得られた。この分散液をスプレードライヤーで水分、アルコール分を飛ばしながら乾燥させると、カテキンセラミックスの複合体の粉末になり、それを更に窒素炉で300℃で乾留させて粉末加工した。
【0039】
なお、シリカの比率で、カテキン末端のOH基の自由度がコントロールされるので、カテキンの耐水性や耐熱性、抗菌効果、抗ウイルス効果などの活性度も左右されることが確認された。
【0040】
比較例として従来の方法(カテキン類を抽出した抽出液をスプレードライにより粉末化したもの)で得られたカテキン粉末を水中に分散させた後にコロイダルシリカと複合化した複合体について抗菌性を評価したが、実施例2のものの方が抗菌性、抗ウイルス性が高いことが分かった。
【0041】
・評価試験1:人工レザーのコート剤への添加による抗菌作用
実施例2にて得られた粉末を合成レザー用トップコートに配合し、その配合比率による除菌効果を確認することを本評価試験の目的とした。菌体は、大腸菌:NBRC 3301(Escherichia coli)を使用した。試験菌液;17600cfuを、滅菌生理食塩水1mlに溶解し、試験菌液(378cfu/0.05μl)を調整した大腸菌の菌量を確保した。試験用菌水を大腸菌群用培地に50μl滴下し、それぞれの合成レザー用トップコートに対して菌体を播種して均一に広げ、これを試験用の大腸菌培地とした。
【0042】
この検体水を質量基準で2%、5%、8%になるように合成レザー用トップコートに配合した。検体水を配合しないものも用意した(blank)。また比較例の粉末を用いた検体水でも同様の試験を行った。
【0043】
今回の検体水の場合、blankよりは菌体の数は少ないものの2%の試験試料で菌体の繁殖が認められた。5%、8%の試験試料については菌体の繁殖は、目視では認められず、99%以上の除菌効果があると判断した。
【0044】
試作したトップコート試験試料は、菌液と1時間浸漬した後、寒天培地に付着した大腸菌を生理食塩水で洗い出して、25℃、85%の恒温恒湿槽24時間後の培養結果を測定した。
【0045】
【表4】
【0046】
・評価試験2:ポリプロピレン製のモノフィラメントに粉末を練り込んだ試験試料の消臭効果
実施例2にて得られた粉末を練り込んだポリプロピレン製モノフィラメントで織ったハニカム織りネットについて、アンモニア臭気の消臭性能を評価した。実施例2にて得られた粉末の練り込み量は、2.5質量%、5.0質量%とした。粉末を練り込まないモノフィラメントで作成したハニカム織りネットをblankとした。
【0047】
ハニカム織りネットは空気清浄機に搭載し、一定量のアンモニアを噴霧した密閉空間に配置した空気清浄機を作動させて試験を行った。試験時間は、30分、60分とし、試験時間経過後のアンモニア濃度を測定した。ハニカム織りネットを搭載しない条件での運転を行い、空運転とした。結果を表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
表より明らかなように、カテキン類を練り込んだモノフィラメントで作成したハニカム織りネットを搭載した空気清浄機の方が消臭効果が高かった。なお、実施例2にて得られた粉末に代えて比較例にて得られた粉末を用いたときには、実施例2よりも消臭効果が低かった。
【0050】
・評価試験3:抽出条件及び粉末化の有無による抗酸化活性の変化
実施例1の試料のうち、80℃、30分間で抽出した後固形分濃度20%になるように濃縮したものを試験試料1、4℃、8時間で抽出した後固形分濃度20%になるように濃縮したものを試験試料2、試験試料1をスプレードライヤーにより粉末化した後固形分濃度20%になるように純水にて希釈したものを試験試料3とした。
【0051】
各試験試料について、化学分析によりガレート種を定量した(表6)。
【0052】
【表6】
【0053】
表より明らかなように、抽出方法によりカテキン類の存在比が変化することが分かった。このようにカテキン類の存在比が変化したのは、抽出などの製造工程においてカテキン類が酸化などにより変質したためであると推測された。
【0054】
また、DPPHを用いて緑茶カテキンの抗酸化度を測定した。具体的には、DPPH(和光純薬製:1,1-シ゛フェニル-2-ヒ゜クリルヒト゛ラシ゛ル)0.125mmol/lエタノ-ル溶液を調製し、三角フラスコに入れ、それを30℃の恒温振とう水槽に入れる。30℃に保温したDPPHエタノール液5mLにサンプリングした各試験試料1mLを入れた。抗酸化性があれば、DPPHエタノ-ル溶液のラジカルが減少し、紫色から黄色に溶液が変色する。その時のピークをDPPHエタノ-ル溶液のピークから引いた値が、抗酸化力を示す値となる。その結果、試験試料1が1.63%、試験試料2が1.03%、試験試料3が0.3%であり、本発明の緑茶抽出液の製造方法にて製造されたものに相当する試験試料1及び2が、従来の方法で製造されたものに相当する試験試料3と比べて抗酸化作用が高いことが分かった。
【0055】
・評価試験4:コロイダルシリカの作用の評価
実施例2における濃縮緑茶抽出液と、カテキンセラミックス複合体溶液について、静置した上澄みについて、カテキン類などの存在比を定量した。結果を表7に示す。
【0056】
【表7】
【0057】
表より明らかなように、コロイダルシリカを投入し複合化させることで、水中に溶出するカテキン類の量が減ることが分かった。没食子酸やカフェインは、コロイダルシリカの投入の有無に関わらず同程度の量が存在することが分かった。ここで、コロイダルシリカを投入して複合化したものについても純水を投入して希釈することでカテキン類が上澄みに移行することが明らかになっており、コロイダルシリカとカテキン類とが特異的に複合化していること、その複合化は水中で可逆的なものであることが分かった。従って、コロイダルシリカと複合化したカテキン類は、徐放化が実現できるものと推測された。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶の生葉又は荒茶からなる茶葉原料を、水を主成分とする抽出媒に浸漬し、カテキン類を抽出した緑茶抽出液を得る抽出工程と、
前記カテキン類の濃度が5%~40%になるまで不活性雰囲気且つ減圧雰囲気下で加熱保持して前記緑茶抽出液を濃縮して濃縮緑茶抽出液とする濃縮工程と、
を有し、
前記抽出工程又は前記濃縮工程において、コロイダルシリカを共存させる緑茶抽出液の製造方法。
【請求項2】
前記抽出工程は、前記抽出媒の温度が0℃~15℃、浸漬時間が3時間~10時間である請求項1に記載の緑茶抽出液の製造方法。
【請求項3】
前記濃縮工程後に、不活性雰囲気に保存する保存工程を有する請求項1又は2に記載の緑茶抽出液の製造方法。
【請求項4】
前記保存工程は、前記濃縮緑茶抽出液を凍結して保存する工程である請求項に記載の緑茶抽出液の製造方法。
【請求項5】
前記抽出媒は、0質量%以上50質量%未満のエチルアルコールを含み、残部が水である請求項1又は2に記載の緑茶抽出液の製造方法。
【請求項6】
茶の生葉又は荒茶からなる茶葉原料を、水を主成分とする抽出媒に浸漬し、カテキン類を抽出した緑茶抽出液を得る抽出工程と、前記カテキン類の濃度が5%~40%になるまで不活性雰囲気且つ減圧雰囲気下で加熱保持して前記緑茶抽出液を濃縮して濃縮緑茶抽出液とする濃縮工程と、を有する緑茶抽出液の製造方法により製造された前記濃縮緑茶抽出液を乾燥させることなく、添加して処理液を調製する処理液調製工程と、
前記処理液を被処理物に接触させて前記カテキン類を前記被処理物に結合させる処理工程と、
を有するカテキン類による処理方法。
【請求項7】
前記抽出工程又は前記濃縮工程において、コロイダルシリカを共存させる請求項6に記載のカテキン類による処理方法。