IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特開2024-108033画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム
<>
  • 特開-画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム 図1
  • 特開-画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム 図2
  • 特開-画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム 図3
  • 特開-画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム 図4
  • 特開-画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム 図5
  • 特開-画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム 図6
  • 特開-画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム 図7
  • 特開-画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム 図8
  • 特開-画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム 図9
  • 特開-画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム 図10
  • 特開-画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム 図11
  • 特開-画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108033
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20240802BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240802BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B41J29/38 350
G03G21/00 510
B41J29/38 801
B65H3/06 350A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012286
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(72)【発明者】
【氏名】石原 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 義和
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆史
(72)【発明者】
【氏名】井口 幸宣
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】江口 達也
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
3F343
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ06
2C061AS02
2C061HJ10
2C061HK06
2C061HK11
2C061HK19
2C061HV33
2H270KA32
2H270LA01
2H270LA79
2H270LD05
2H270LD09
2H270LD14
2H270MH01
2H270RA03
2H270RA13
2H270RA14
2H270RB01
2H270RB04
2H270RC03
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC05
3F343FA01
3F343FB01
3F343FC29
3F343GA01
3F343GB01
3F343JA01
3F343KB04
3F343MA13
(57)【要約】
【課題】 使用により状態が変化する対象物の状態を、対象物を駆動しながら検出する。
【解決手段】 画像形成装置は、給紙ローラーを駆動する第1モーターと、第1モーターが受ける負荷を検出する負荷検出部71と、第1モーターにより給紙ローラーが駆動された履歴と、第1モーターが受ける負荷の変化量とに基づいて対象物の状態を検出する状態検出部77と、を備える。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を駆動する駆動源と、
前記駆動源が受ける負荷を検出する負荷検出部と、
前記駆動源により前記対象物が駆動された履歴と、前記駆動源が受ける負荷の変化量とに基づいて前記対象物の状態を検出する状態検出部と、を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記対象物は、回転軸周りを回転することにより、画像が形成される記録媒体を搬送する部材である、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記状態検出部は、前記履歴が予め定められた耐久しきい値以上を示す場合に、第1時刻に検出された第1負荷が第1しきい値以上でかつ前記第1時刻より後の第2時刻に検出された第2負荷が前記第1しきい値より小さい第2しきいち値以下の場合に、前記対象物が交換された状態を検出する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記状態検出部は、前記履歴が前記耐久しきい値以上を示す場合に、前記第1負荷が前記第1しきい値以上でかつ前記第2負荷が前記第1しきい値より小さくかつ前記第2しきい値より大きい場合に、前記対象物が清掃された状態を検出する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記状態検出部は、前記履歴が前記耐久しきい値より小さい状態において、前記第1負荷が前記第1しきい値以上でかつ前記第2負荷が前記第1しきい値よい小さい場合に、前記対象物が清掃された状態を検出する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記駆動源は、モーターと、
前記モーターを電流制御する電流制御部と、を備え、
前記負荷検出部は、前記電流制御部が前記モーターに流れる電流の大きさを前記負荷として検出する、請求項1~5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記対象物としての給紙ローラーと、
前記給紙ローラーよりも上流側に配置され、外周面に周方向に所定の間隔を隔てた複数の凸部を有するピックアップローラーと、を備え、
前記駆動源は、前記給紙ローラーおよび前記ピックアップローラーを駆動するモーターと、
前記モーターを電流制御する電流制御部と、を備え、
前記負荷検出部は、前記電流制御部が前記モーターに流れる電流の振幅の大きさを前記負荷として検出する、請求項1~5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記履歴は、前記対象物が回転軸回りを回転する時間および回転数、前記対象物が搬送した記録媒体の枚数のいずれかである、請求項1~5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記状態検出部は、本体電源のONに切り換えられた時、または通常モードよりの消費電力が小さい省電力モードから前記通常モードに切り換わった時、および本体筐体が有する扉が開閉された時のすくなく1つのタイミングで、前記対象物の状態を検出する、請求項1~5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記状態検出部により前記対象物が交換されたことが検出されることに応じて、前記履歴がリセットするリセット部を、さらに備える、請求項1~5いずれかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記状態検出部により前記対象物が交換されたことが検出されることに応じて、前記対象物の補給に関する情報を生成し、出力する通知手段を、さらに備えた、請求項1~5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
対象物を駆動する駆動源を備えた画像形成装置で実行される部材状態検出方法であって、
前記駆動源が受ける負荷を検出する負荷検出ステップと、
前記駆動源により前記対象物が駆動された履歴と、前記駆動源が受ける負荷とに基づいて前記対象物の状態を検出する状態検出ステップと、を含む部材状態検出方法。
【請求項13】
対象物を駆動する駆動源を備えた画像形成装置で実行される部材状態検出方法であって、
前記駆動源が受ける負荷を検出する負荷検出ステップと、
前記駆動源により前記対象物が駆動された履歴と、前記駆動源が受ける負荷とに基づいて前記対象物の状態を検出する状態検出ステップと、をコンピューターに実行させる部材状態検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置、部材状態検出方法および部材状態検出プログラムに関し、特に、使用により状態が変化する部材を備えた画像形成装置、その画像形成装置により実行される部材状態検出方法、その部材状態検出方法を画像形成装置を制御するコンピューターに実行させる部材状態検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター、ファクシミリ装置等の画像形成装置が備える部材には、記録媒体に画像を形成することより汚れや消耗する部材がある。この部材は、所定のタイミングで清掃または交換が必要である。このため、画像形成装置をメンテナンスする専門の人員が、メンテナンスする際に部材が清掃または交換される。しかしながら、専門の人員でない使用者でも部材の清掃または交換できれば、メンテナンスする専門の人員が不要になる。
【0003】
例えば、特開2008-225221号公報には、装置制御部271は、予め設定された所定のタイミングにおいて、定着ローラの回転速度を、印字処理中の回転速度より予め設定された一定速度だけ高速回転させ、このときの定着ローラの駆動源であるモータ274の負荷トルクを負荷トルク検出部275で検出し、この検出した高速回転中の負荷トルクに基づき、加圧ローラのクリーニング部材である金属ローラの汚れ具合を判定する画像形成装置が記載されている。
【0004】
しかしながら、特開2008-225221号公報に記載の画像形成装置は、印字処理中の回転速度より予め設定された一定速度だけ高速回転させなければならず、印字処理とは別の処理を実行しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-225221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的の1つは、使用により状態が変化する対象物の状態を、対象物を駆動しながら検出することが可能な画像形成装置を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、使用により状態が変化する対象物の状態を、対象物を駆動しながら検出することが可能な部材状態検出方法を提供することである。
【0008】
この発明のさらに他の目的は、使用により状態が変化する対象物の状態を、対象物を駆動しながら検出することが可能な部材状態検出プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面によれば、画像形成装置は、対象物を駆動する駆動源と、駆動源が受ける負荷を検出する負荷検出部と、駆動源により対象物が駆動された履歴と、駆動源が受ける負荷の変化量とに基づいて対象物の状態を検出する状態検出部と、を備える。
【0010】
この発明の他の局面によれば、部材状態判別方法は、対象物を駆動する駆動源を備えた画像形成装置で実行される部材状態検出方法であって、駆動源が受ける負荷を検出する負荷検出ステップと、駆動源により対象物が駆動された履歴と、駆動源が受ける負荷とに基づいて対象物の状態を検出する状態検出ステップと、を含む。
【0011】
この発明の他の局面によれば、部材状態判別プログラムは、対象物を駆動する駆動源を備えた画像形成装置で実行される部材状態検出方法であって、駆動源が受ける負荷を検出する負荷検出ステップと、駆動源により対象物が駆動された履歴と、駆動源が受ける負荷とに基づいて対象物の状態を検出する状態検出ステップと、をコンピューターに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態の1つにおけるプリンターの外観を示す第1の斜視図である。
図2】プリンターのハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
図3】プリンターの内部構成の一例を模式的に示す断面図である。
図4】ローラーへの駆動力の伝達の一例を示す図である。
図5】捌きローラーの機能を説明するための模式図である。
図6】トルク電流リップルの一例を示す図である。
図7】プリンターが備えるCPUが有する機能の一例を示すブロック図である。
図8】部品状態検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】負荷検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】判別処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】実験データの一例示す図である。
図12】定着装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明では同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0014】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるプリンターの外観を示す第1の斜視図である。図2は、プリンターのハードウエア構成の一例を示すブロック図である。図1および図2を参照して、プリンター100は、画像形成装置の一例であり、メイン回路110と、画像データに基づいて記録媒体に画像を形成するための画像形成部140と、画像形成部140に用紙を供給するための給紙部150と、ユーザーインターフェースとしての操作パネル160とを含む。記録媒体は、用紙の他、樹脂で形成されたOHPシート、布などを含む。以下、記録媒体として、用紙を例に説明する。
【0015】
メイン回路110は、プリンター100の全体を制御するCPU(中央演算処理装置)111と、通信インターフェース(I/F)部112と、ROM(Read Only Memory)113と、RAM(Random Access Memory)114と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)115と、外部記憶装置117と、を含む。CPU111は、画像形成部140、給紙部150および操作パネル160と接続され、プリンター100の全体を制御する。
【0016】
給紙部150は、給紙カセットに収納された用紙等の記録媒体を画像形成部140に搬送する。プリンター100の筐体には、扉150Aを有する。扉150Aは、開閉自在である。扉150Aは、閉じた状態で給紙部150が有する用紙の搬送経路の一部を覆い、開いた状態で搬送経路の一部が外部に露出する。扉150Aの開閉を検出するセンサーが設けられる。
【0017】
画像形成部140は、CPU111により制御され、周知の電子写真方式により画像を形成するものであって、CPU111から入力される画像データに基づいて、給紙部150により搬送される記録媒体に画像を形成し、画像を形成した用紙を排紙トレイ39に排出する。CPU111が画像形成部140に出力する画像データは、外部のパーソナルコンピューター等から受信されるプリントデータ等の画像データを含む。
【0018】
ROM113は、CPU111が実行するプログラム、またはそのプログラムを実行するために必要なデータを記憶する。RAM114は、CPU111がプログラムを実行する際の作業領域として用いられる。
【0019】
操作パネル160は、プリンター100の上面に設けられる。操作パネル160は、表示部161と操作部163とを含む。表示部161は、例えば、液晶表示装置(LCD)であり、ユーザーに対する指示メニューや取得した画像データに関する情報等を表示する。なお、LCDに代えて、画像を表示する装置であれば、例えば、有機EL(electroluminescence)ディスプレイを用いることができる。
【0020】
操作部163は、タッチパネル165と、ハードキー部167とを含む。ハードキー部167は、複数のハードキーを含む。ハードキーは、例えば接点スイッチである。タッチパネル165は、表示部161の表示面中でユーザーにより指示された位置を検出する。
【0021】
通信I/F部112は、ネットワークにプリンター100を接続するためのインターフェースである。通信I/F部112は、TCP(Transmission Control Protocol)またはUDP(User Datagram Protocol)等の通信プロトコルで、ネットワークに接続された他のコンピューターと通信する。なお、通信I/F部112が接続されるネットワークは、ローカルエリアネットワーク(LAN)であり、接続形態は有線または無線を問わない。またネットワークは、LANに限らず、ワイドエリアネットワーク(WAN)、公衆交換電話網(PSTN)、インターネット等であってもよい。
【0022】
外部記憶装置117は、CPU111により制御され、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)118、または半導体メモリが装着される。本実施の形態においては、CPU111は、ROM113に記憶されたプログラムを実行する例を説明するが、CPU111は、外部記憶装置117を制御して、CD-ROM118からCPU111が実行するためのプログラムを読み出し、読み出したプログラムをRAM114に記憶し、実行するようにしてもよい。
【0023】
なお、CPU111が実行するためのプログラムを記憶する記録媒体としては、CD-ROM118に限られず、フレキシブルディスク、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、ICカード、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)などの半導体メモリ等の媒体でもよい。さらに、CPU111がネットワークに接続されたコンピューターからプログラムをダウンロードしてHDD115に記憶する、または、ネットワークに接続されたコンピューターがプログラムをHDD115に書込みするようにして、HDD115に記憶されたプログラムをRAM114にロードしてCPU111で実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、CPU111により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0024】
図3は、プリンターの内部構成の一例を模式的に示す断面図である。以下、説明のため、図3の左右の方向を左右方向といい、表裏の方向を奥行方向という。左右方向で左から右に向かう方向を右側面方向といい、右から左に向かう方向を左側面方向という。奥行方向の表から裏に向かう方向を正面方向といい、裏から表に向かう方向を背面方向という。
【0025】
プリンター100は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックそれぞれの画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kを備える。ここで、“Y”、“M”、“C”および“K”は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックを表す。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの少なくとも1つが駆動されることにより、画像が形成される。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kのすべてが駆動されると、フルカラーの画像が形成される。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kには、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの印字用データがそれぞれ入力される。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kは、取扱うトナーの色彩が異なるのみなので、ここでは、イエローの画像を形成するための画像形成ユニット20Yについて説明する。
【0026】
画像形成ユニット20Yは、イエローの印字用データが入力される露光装置21Yと、像担持体である感光体ドラム23Yと、感光体ドラム23Yの表面を一様に帯電するための帯電ローラー22Yと、現像器24Yと、感光体ドラム23Y上に形成されたトナー像を電界力の作用で像担持体である中間転写ベルト30上に転写するための1次転写ローラー25Yと、感光体ドラム23Y上の転写残トナーを除去するためのドラム清掃ブレード27Yと、トナーボトル41Yと、トナーホッパー42Yと、を備える。
【0027】
トナーボトル41Yは、イエローのトナーを収容する。トナーボトル41Yは、トナーボトルモーターを駆動源として回転し、トナーを外部に排出する。トナーボトル41Yから排出されたトナーは、トナーホッパー42Yに供給される。トナーホッパー42Yは、現像器24Yに収容されたトナーの残量が予め定められた下限値以下になることに応じて現像器24Yにトナーを供給する。
【0028】
感光体ドラム23Yの周辺に、帯電ローラー22Y、露光装置21Y、現像器24Y、1次転写ローラー25Y、ドラム清掃ブレード27Yが、感光体ドラム23Yの回転方向に沿って順に配置される。
【0029】
感光体ドラム23Yは、帯電ローラー22Yによって帯電された後、露光装置21Yが発光するレーザー光が照射される。露光装置21Yは、感光体ドラム23Yの表面の画像対応部を露光して静電潜像を形成する。これにより、感光体ドラム23Yに静電潜像が形成される。続いて、現像器24Yが、感光体ドラム23Yに形成された静電潜像を帯電したトナーで現像する。具体的には、感光体ドラム23Yに形成された静電潜像上に電界力の作用でトナーが載せられることにより、トナー像が感光体ドラム23Yに形成される。感光体ドラム23Y上に形成されたトナー像は、像担持体である中間転写ベルト30上に1次転写ローラー25Yにより電界力の作用で転写される。感光体ドラム23Y上で転写されずに残ったトナーは、ドラム清掃ブレード27Yにより感光体ドラム23Yから除去される。
【0030】
一方、中間転写ベルト30は、駆動ローラー33と従動ローラー34とにより弛まないように懸架されている。駆動ローラー33が図2中で反時計回りに回転すると、中間転写ベルト30が所定の速度で図中反時計回りに回転する。中間転写ベルト30の回転に伴って、従動ローラー34が、反時計回りに回転する。
【0031】
これにより、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kが、順に中間転写ベルト30上にトナー像を転写する。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kそれぞれが、中間転写ベルト30上にトナー像を転写するタイミングは、中間転写ベルト30に付された基準マークを検出することにより、調整される。これにより、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト30上に重畳される。
【0032】
中間転写ベルト30に形成されたトナー像は、転写部材である2次転写ローラー26によって電界力の作用で用紙に転写される。タイミングローラー31により搬送される用紙は、中間転写ベルト30と2次転写ローラー26とが接するニップ部に搬送される。トナー像が転写された用紙は、定着装置50に搬送され、加熱および加圧される。これにより、トナーが溶かされて用紙に定着する。その後、用紙は排紙トレイ39に排出される。
【0033】
中間転写ベルト30の画像形成ユニット20Yの上流に、ベルト清掃ブレード28が設けられている。ベルト清掃ブレード28は、中間転写ベルト30上で用紙に転写されずに残ったトナーを除去する。
【0034】
プリンター100は、フルカラーの画像を形成する場合、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kのすべてを駆動するが、モノクロの画像を形成する場合、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kのいずれか1つを駆動する。また、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの2以上を組み合わせて画像を形成することもできる。なお、ここでは、プリンター100は、用紙に4色のトナーそれぞれを形成する画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kを備えたタンデム方式を採用する例について説明するが、1つの感光体ドラムで4色のトナーを順に用紙に転写する4サイクル方式を採用してもよい。
【0035】
給紙カセット35には、複数枚の用紙がセットされている。給紙カセット35に対応して、ピックアップローラーPR1、給紙ローラーFR1および捌きローラーSR1が配置されている。ピックアップローラーPR1は、給紙カセット35に収容された複数の用紙の最上段の用紙を取り出し、給紙ローラーFR1へ向けて供給する。給紙ローラーFR1は、ピックアップローラーPR1から搬送される用紙を搬送ローラー37に送る。搬送ローラー37対は、給紙ローラーFR1より送られる用紙をタイミングローラー31に搬送する。捌きローラーSR1の機能については後述する。
【0036】
また、手差カセット35Aに対応して、ピックアップローラーPR2、給紙ローラーFR2および捌きローラーSR2が配置されている。手差カセット35Aに1枚以上の用紙がセットされる場合、ピックアップローラーPR2は、手差カセット35Aに載置された1以上の用紙の最上段の用紙を取り出し、給紙ローラーFR2へ向けて供給する。給紙ローラーFR2は、ピックアップローラーPR2から搬送される用紙を搬送ローラー37に送る。搬送ローラー37は、給紙ローラーFR2より送られる用紙をタイミングローラー31に搬送する。捌きローラーSR2の機能については後述する。
【0037】
用紙の搬送経路は、画像形成経路45、第1搬送経路46、第2搬送経路47および表裏反転経路48を含む。画像形成経路45は、タイミングローラー31から経路切換ゲート49までの経路であり、タイミングローラー31から順に、2次転写ローラー26、および定着装置50が配置される。タイミングローラー31は、給紙カセット35または手差カセット35Aから搬送される用紙を画像形成経路45に送り出す。タイミングローラー31は、中間転写ベルト30に形成されたトナー像が2次転写ローラー26に到達するタイミングで用紙が2次転写ローラー26に到達するように、用紙の搬送を開始する。タイミングローラー31により搬送される用紙は、2次転写ローラー26により中間転写ベルト30に押し当てられ、中間転写ベルト30上に重畳して形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が用紙に転写される。
【0038】
2次転写ローラー26から搬送される用紙は、定着装置50に搬送される。定着装置50は、用紙を加熱するとともに加圧する。これにより、用紙にトナーが定着される。その後、用紙は経路切換ゲート49により第1搬送経路46および第2搬送経路47のいずれかに搬送される。
【0039】
第1搬送経路46は、経路切換ゲート49から排紙ローラー43までの経路である。第1搬送経路46に搬送される用紙は、排紙ローラー43によって排紙トレイ39に排紙される。
【0040】
第2搬送経路47は、経路切換ゲート49から反転ローラー44までの経路である。第2搬送経路47は、経路切換ゲート49において、画像形成経路45と表裏反転経路48と繋がる。経路切換ゲート49から第2搬送経路47に進入する用紙は、反転ローラー44まで搬送される。反転ローラー44は、待機動作と、反転動作と、排紙動作と、の3つの動作をする。反転ローラー44は、待機動作をする場合、正回転して、タイミングローラー31が駆動してから所定の時間経過後に停止する。これにより、反転ローラー44は、経路切換ゲート49から進入する用紙を、その後端が経路切換ゲート49を通過した状態で保持する。反転ローラー44は、待機動作後に反転動作をする。反転ローラー44は、反転動作をする場合、逆回転し、保持した用紙を経路切換ゲート49側に搬送する。これにより、用紙は、反転ローラー44により第2搬送経路47を搬送され、経路切換ゲート49により表裏反転経路48に導かれる。また、反転ローラー44は、排出動作をする場合、正回転して用紙を排紙トレイ39に排紙する。
【0041】
表裏反転経路48は、経路切換ゲート49と画像形成経路45中のタイミングローラー31とを結ぶ経路である。経路切換ゲート49から表裏反転経路48に進入する用紙は、搬送ローラー38によりタイミングローラー31まで搬送される。したがって、用紙が最初に画像形成経路45を通過する間に用紙の表面に画像が形成され、その用紙が表裏反転経路48を経由して再度画像形成経路45を通過する間に用紙の裏面に画像が形成される。裏面に画像が形成された用紙は、経路切換ゲート49により第1搬送経路46に導かれ、排紙トレイ39に排紙される。
【0042】
図4は、ローラーへの駆動力の伝達の一例を示す図である。図4を参照して、給紙カセット35に対応して設けられるピックアップローラーPR1、給紙ローラーFR1に回転力を伝達する第1モーターM1が設けられる。第1モーターM1の回転軸はベルトを介して給紙ローラーFR1の回転軸と接続される。給紙ローラーFR1の回転軸は、ベルトを介してピックアップローラーPR1の回転軸に接続される。第1モーターM1は、第1モーター制御部MC1により電流制御される。第1モーター制御部MC1は、第1モーターM1の回転数を検出し、電流値を制御して第1モーターM1の回転数を所定の値に維持するフィードバック制御をする。第1モーター制御部MC1は、第1モーターM1に流れる電流の電流値をCPU111に出力する。第1モーター制御部MC1が第1モーターM1を駆動すると、給紙ローラーFR1およびピックアップローラーPR1が同時に回転する。給紙ローラーFR1およびピックアップローラーPR1は、第1モーターM1から伝達される回転力を受け、図中の矢印a1で示す方向に回転する。捌きローラーSR1には、第1モーターM1から動力は伝達されない。
【0043】
ピックアップローラーPR1が回転することにより、ピックアップローラーPR1が接触する最上段の用紙Pa1が給紙ローラーFR1に搬送される。この際に、用紙Pa1に接触する用紙Pa2が、用紙Pa1に重なった状態で給紙ローラーFR1に搬送される場合がある。捌きローラーSR1は、この用紙Pa2が給紙ローラーFR1に搬送されることを規制する機能を有する。
【0044】
図5は、捌きローラーの機能を説明するための模式図である。図5を参照して、ピックアップローラーPR1から用紙Pa1と、用紙Pa1に重なる用紙Pa2とが給紙ローラーFR1に搬送される場合を示している。
【0045】
捌きローラーSR1は、給紙ローラーFR1に対向して配置される。捌きローラーSR1の回転軸は、矢印a4で示す方向にバネSPによりに付勢される。矢印a4は、捌きローラーSR1から給紙ローラーFR1に向かう方向である。給紙ローラーFR1と捌きローラーSR1との間に用紙が存在しない状態では、捌きローラーSR1は給紙ローラーFR1と接触し、給紙ローラーFR1の回転に伴って回転する。ただし、給紙ローラーFR1は、回転を規制する抵抗が設けられている。
【0046】
図5において、一点鎖線で囲われた部分が拡大して模式的に吹き出し領域に示される。給紙ローラーFR1と捌きローラーSR1との間に複数の用紙が進入した状態における摩擦係数が示される。給紙ローラーFR1と用紙Pa1との間の動摩擦係数をμ1、捌きローラーSR1と用紙Pa2との間の静止摩擦係数をμ2、および用紙Pa1と用紙Pa2との間の静止摩擦係数をμ3とする。給紙ローラーFR1および捌きローラーSR1それぞれの外周面は、μ1>μ3およびμ2>μ3の関係を満たす材質で形成され、表面処理が施されている。
【0047】
給紙ローラーFR1と捌きローラーSR1との間に複数の用紙が進入した状態において、給紙ローラーFR1は、回転を規制する抵抗が設けられているので、矢印a3で示す方向の力が発生する。μ2>μ3なので、捌きローラーSR1は用紙Pa2と接触した状態で、回転することなく停止する。
【0048】
また、μ1>μ3なので、給紙ローラーFR1が用紙Pa1に加える力が用紙Pa1が用紙Pa2から受ける摩擦力に打ち勝ち、用紙Pa1は矢印a5で示す方向に搬送される。
【0049】
図4に戻って、給紙ローラーFR1により搬送される用紙は、図中に太い実線で示す搬送経路に沿って搬送され、搬送ローラー37に搬送される。搬送経路中で、給紙ローラーFR1と搬送ローラー37との間に用紙検出センサーSE1が配置されている。用紙検出センサーSE1は、光電センサーであり、光を射出する発光部と、光を受光する受光部とを備える。発光部と受光部とは搬送経路を挟んで配置され、搬送経路中に発光部と受光部との間の検出領域が定められる。搬送経路を搬送される用紙が検出領域を通過する際に、受光部で発光部が射出した光を受光しなくなることが検出される。
【0050】
第1モーターM1の回転軸は、さらに、手差カセット35Aに対応して設けられる給紙ローラーFR2の回転軸とベルトを介して接続される。第1モーターM1の回転軸に、電磁クラッチが設けられており、給紙ローラーFR1および給紙ローラーFR2のいずれか一方に動力が伝達されるように切り換えられる。
【0051】
このため、第1モーターM1が駆動されると、給紙ローラーFR2が回転する。給紙ローラーFR2は、第1モーターM1から伝達される回転力を受け、図中の矢印a2で示す方向に回転する。捌きローラーSR2およびピックアップローラーには、第1モーターM1から動力は伝達されない。
【0052】
手差カセット35Aに載置される用紙は、最上段の用紙が給紙ローラーFR2と接触する状態で載置される。このため、給紙ローラーFR2が回転することにより、最上段の用紙が給紙ローラーFR2により搬送ローラー37に搬送される。捌きローラーSR2の機能は、上述した捌きローラーSR1の機能と同じである。したがって、ここでは説明を繰り返さない。搬送経路中で、給紙ローラーFR2と搬送ローラー37との間に用紙検出センサーSE2が配置されている。
【0053】
給紙ローラーFR1および給紙ローラーFR2と、タイミングローラー31との間に、搬送ローラー37が配置される。搬送ローラー37は、能動ローラーと従動ローラーとを有する。能動ローラーと従動ローラーとは対向する。能動ローラーに回転力を伝達する第2モーターM2が設けられる。第2モーターM2の回転軸はベルトを介して能動ローラーの回転軸と接続される。従動ローラーには、第2モーターM2から動力は伝達されない。第2モーターM2は、第2モーター制御部MC2により電流制御される。第2モーター制御部MC2は、第2モーターM2の回転数を検出し、電流値を制御して第2モーターM2の回転数を所定の値に維持するフィードバック制御をする。第2モーター制御部MC2は、第2モーターM2に流れる電流の電流値をCPU111に出力する。第2モーター制御部MC2が第2モーターM2を駆動すると、能動ローラーが回転し、従動ローラーが能動ローラーの回転に伴って回転する。
【0054】
タイミングローラー31に対向して従動タイミングローラー31Aが配置される。タイミングローラー31に回転力を伝達する第3モーターM3が設けられる。第3モーターM3の回転軸はベルトを介してタイミングローラー31の回転軸と接続される。従動タイミングローラー31Aには、第3モーターM3から動力は伝達されない。第3モーターM3は、第3モーター制御部MC3により電流制御される。第3モーター制御部MC3は、第3モーターM3の回転数を検出し、電流値を制御して第3モーターM3回転数を所定の値に維持するフィードバック制御をする。第3モーター制御部MC3は、第3モーターに流れる電流の電流値をCPU111に出力する。第3モーター制御部MC3が第3モーターM3を駆動すると、タイミングローラー31が回転し、従動タイミングローラー31Aがタイミングローラー31の回転に伴って回転する。
【0055】
搬送経路中で、タイミングローラー31と搬送ローラー37との間に2つの用紙検出センサーSE3、SE4が配置される。搬送ローラー37、用紙検出センサーSE3、用紙検出センサーSE4およびタイミングローラー31の順に並んで配置される。第2モーターM2および第3モーターM3は、2つの用紙検出センサーSE3,SE4がそれぞれ用紙を検出したタイミングに応じて、駆動される。具体的には、搬送ローラー37は、タイミングローラー31が停止した状態で、用紙の先端がタイミングローラー31に到達した後、所定の距離だけ用紙を搬送するタイミングで停止する。このため、搬送経路中で用紙が撓んだ状態となり、用紙がタイミングローラー31に押し付けられた状態で、用紙の先端がタイミングローラー31と並行になる。したがって、タイミングローラー31が回転を開始する前に、用紙が搬送される方向がタイミングローラー31の方向に合わせられる。
【0056】
第1モーターM1は、給紙ローラーFR1とピックアップローラーPR1とを同時に回転させる。ピックアップローラーPR1は、外周面に周方向に所定の間隔で配置された複数の凸部を有する。給紙カセット35に収容される複数の用紙は、バネなどの弾性部材により下方から上方に向けて付勢されている。このため、ピックアップローラーPR1は、用紙から上方に向かう力を受ける。ピックアップローラーPR1は、外周に複数の凸部を有するので、凸部が複数の用紙の最上段の用紙に叩きつけられる。このため、最上段の用紙を搬送しやすい。
【0057】
一方、給紙ローラーFR1は第1モーターM1から動力が伝達される。給紙ローラーFR1は、動摩擦係数μ1を高めるために、その外周面にしぼ加工が施されている。給紙ローラーFR1の表面に紙粉が付着すると、動摩擦係数μ1が表面に紙粉が付着していない場合に比較して小さくなる。動摩擦係数μ1が低下して静止摩擦係数μ3以下になると、給紙ローラーFR1と用紙Pa1との間で滑りが発生する。また、給紙ローラーFR1と用紙Pa1との間で滑りが発生すると、給紙ローラーFR1の表面が削れて、しぼ加工により形成せれた凹凸面の差が小さくなり、動摩擦係数μ1が低下する。
【0058】
給紙ローラーFR1と用紙Pa1との間で滑りが発生する事象は、第1モーター制御部MC1が第1モーターM1に流れる電流の変化で検出できる。給紙ローラーFR1と用紙Pa1との間で滑りが発生すると、給紙ローラーFR1の回転に必要なトルクが小さくなるので、フィードバック制御により電流値が低下する。
【0059】
ピックアップローラーPR1は、外周面に周方向に所定の間隔で配置された複数の凸部を有する。ピックアップローラーPR1の複数の凸部のいずれかが用紙に当接している場合と、そうでない場合とで用紙を搬送するトルクが異なる。このため、第1モーター制御部MC1が第1モーターM1に流れる電流が、周期的に変動し、トルク電流リップルとして表れる。トルク電流リップルの周期は、ピックアップローラーPR1の外周面に形成される複数の凸部の間隔およびピックアップローラーPR1の回転速度により定まる。
【0060】
図5で説明したように、用紙を搬送する力は、主に給紙ローラーFR1の回転により発生する。このため、駆動源である第1モーターM1が発生するトルクがピックアップローラーPR1に分配されるトルクよりも給紙ローラーFR1に分配されるトルクの方が大きくなる。このため、第1モーター制御部MC1が第1モーターM1に流れる電流に、ピックアップローラーPR1の複数の凸部の間隔に基づく周期によるトルク電流リップルは現れないか、小さな振幅である。一方で、給紙ローラーFR1と用紙Pa1との間ですべりが発生している状態においては、給紙ローラーFR1による用紙の搬送力が低下し、給紙ローラーFR1の代わりに主にピックアップローラーPR1が用紙を搬送する状態になる。このため、第1モーター制御部MC1が第1モーターM1に流れる電流に、周期的に変動するトルク電流リップルが現れる。
【0061】
図6は、トルク電流リップルの一例を示す図である。図6において、横軸は、給紙ローラーFR1の走行量を示し、縦軸は、第1モーター制御部MC1が第1モーターM1に流れる電流を示す。給紙ローラーFR1の走行量は、給紙ローラーFR1が用紙を搬送した距離の累計である。図6を参照して、走行量が耐久しきい値LL1以下では、給紙ローラーFR1は十分な凹凸面を有する状態である。走行量がL1以下ではトルク電流リップルの振幅は、清掃しきい値LI11以下であり、給紙ローラーFR1と用紙Paとの間で滑りは発生していない。清掃しきい値LI11は、給紙ローラーFR1の清掃が必要な状態を示す値として実験等で予め求められた値である。
【0062】
走行量がL1を超えると、トルク電流リップルの振幅が徐々に増加する。トルク電流リップルの振幅が清掃しきい値LI11となる。ここでは、走行量がL2となった時点で、給紙ローラーFR1が清掃され、給紙ローラーFR1に付着した紙粉が取り除かれた場合を示している。清掃後においては、トルク電流リップルの振幅が清掃しきい値LI11以下となる。その後、走行量が給紙ローラーFR1に対して定められた耐久しきい値LLに到達するまでは、給紙ローラーFR1が清掃されるごとに、トルク電流リップルの振幅が清掃しきい値LI11以下となる。
【0063】
給紙ローラーFR1の走行量が耐久しきい値LL以上になると、トルク電流リップルの振幅が徐々に増加する。そして、走行量がL3となった時点で給紙ローラーFR1が清掃されると、トルク電流リップルの振幅は減少するけれども、トルク電流リップルの振幅が清掃しきい値LI11以下に減少しなくなる。さらに、給紙ローラーFR1の走行量が増加するにつれて、トルク電流リップルの振幅が徐々に増加する。そして、走行量がL4において、トルク電流リップルの振幅が交換しきい値LI12に到達する。交換しきい値LI12は、給紙ローラーFR1の交換が必要な状態を示す値として実験等で予め求められた値である。
【0064】
図7は、プリンターが備えるCPUが有する機能の一例を示すブロック図である。図7に示す機能は、プリンター100が備えるCPU111がROM113、HDD115またはCD-ROM118に記憶された部材状態検出プログラムを実行することによりCPU111により実現される機能である。図7を参照して、プリンター100が備えるCPU111は、負荷検出部71と、駆動制御部73と、履歴生成部75と、状態検出部77と、リセット部79と、通知部81と、を含む。
【0065】
駆動制御部73は、第1モーター制御部MC1、第2モーター制御部MC2および第3モーター制御部MC3を制御する。具体的には、駆動制御部73は、第1モーター制御部MC1を制御して、第1期間に第1モーターM1を駆動させて給紙ローラーFR1およびピックアップローラーPR1を回転させ、第2期間に第2モーターM2を駆動させて給紙ローラーFR2を回転させる。駆動制御部73は、第1モーターM1が給紙ローラーFR1およびピックアップローラーPR1を回転させるごとに、第1モーターM1が給紙ローラーFR1およびピックアップローラーPR1を回転させている期間を第1期間として履歴生成部75に出力する。駆動制御部73は、第1モーターM1が給紙ローラーFR2を回転させるごとに、第1モーターM1が給紙ローラーFR2を回転させている期間を第2期間として履歴生成部75に出力する。
【0066】
駆動制御部73は、第2モーター制御部MC2を制御して、第3期間に第2モーターM2を駆動させて搬送ローラー37を回転させる。駆動制御部73は、第2モーターM2が搬送ローラー37を回転させるごとに、第2モーターM2が搬送ローラー37を回転させている期間を第3期間として履歴生成部75に出力する。駆動制御部73は、第3モーター制御部MC3を制御して、第4期間に第3モーターM3を駆動させてタイミングローラー31を回転させる。駆動制御部73は、第3モーターM3がタイミングローラー31を回転させるごとに、第3モーターM3がタイミングローラー31を回転させている期間を第4期間として履歴生成部75に出力する。
【0067】
履歴生成部75は、駆動制御部73から第1期間~第4期間が入力される。履歴生成部75は、給紙ローラーFR1、給紙ローラーFR2、搬送ローラー37およびタイミングローラー31それぞれが回転した履歴を示す履歴情報を生成する。具体的には、履歴生成部75は、駆動制御部73から入力される第1期間を累積した値を給紙ローラーFR1の第1履歴情報として生成し、状態検出部77に出力する。なお、第1履歴情報は、HDD115に記憶されてもよい。また、履歴生成部75は、駆動制御部73から第1期間が入力された日時および第1期間を、給紙ローラーFR1の履歴情報としてHDD115に記憶してもよい。
【0068】
履歴生成部75は、駆動制御部73から入力される第2期間を累積した値を給紙ローラーFR2の第2履歴情報として生成し、状態検出部77に出力する。なお、第2履歴情報は、HDD115に記憶されてもよい。また、履歴生成部75は、駆動制御部73から第2期間が入力された日時および第2期間を、給紙ローラーFR2の履歴情報としてHDD115に記憶してもよい。
【0069】
同様に、履歴生成部75は、駆動制御部73から入力される第3期間を累積した値を搬送ローラー37の第3履歴情報として生成し、状態検出部77に出力する。なお、第3履歴情報は、HDD115に記憶されてもよい。また、履歴生成部75は、駆動制御部73から第3期間が入力された日時および第3期間を、搬送ローラー37の履歴情報としてHDD115に記憶してもよい。
【0070】
履歴生成部75は、駆動制御部73から入力される第4期間を累積した値をタイミングローラー31の第4履歴情報として生成し、状態検出部77に出力する。なお、第4履歴情報は、HDD115に記憶されてもよい。また、履歴生成部75は、駆動制御部73から第4期間が入力された日時および第4期間を、タイミングローラー31の履歴情報としてHDD115に記憶してもよい。
【0071】
なお、本実施の形態においては、第1履歴情報~第4履歴情報を、給紙ローラーFR1,FR2、搬送ローラー37およびタイミングローラー31それぞれが回転した時間の累計としたが、用紙を搬送した搬送距離としてもよい。搬送距離は、回転した時間に、回転速度から算出される周速度を乗算した値である。
【0072】
負荷検出部71は、第1モーターM1、第2モーターM2および第3モーターM3それぞれの負荷を検出する。負荷検出部71は、第1モーター制御部MC1、第2モーター制御部MC2および第3モーター制御部MC3それぞれから、第1モーターM1、第2モーターM2および第3モーターM3に流れる電流の電流値を取得し、電流値に基づいて第1モーターM1、第2モーターM2および第3モーターM3それぞれの負荷を検出する。
【0073】
負荷検出部71は、第1モーター制御部MC1から第1モーターM1に与えられる電流値を取得し、電流値に基づいて第1モーターM1の負荷を検出する。第1モーターM1は、給紙ローラーFR1に駆動力を伝達する場合と、給紙ローラーFR2に駆動力を伝達する場合とがある。負荷検出部71は、第1モーターM1が給紙ローラーFR1に駆動力を伝達する間に第1モーター制御部MC1から取得される電流値に基づいて、第1モーターM1の負荷を第1負荷として検出する。上述したように、第1モーターM1が給紙ローラーFR1に駆動力を伝達する間に第1モーター制御部MC1から取得される電流値は、トルク電流リップルを含む。負荷検出部71は、このトルク電流リップルの振幅を第1負荷として検出する。第1負荷は、給紙ローラーFR1の負荷の変動を示す。
【0074】
また、負荷検出部71は、第1モーターM1が給紙ローラーFR2に駆動力を伝達する間に第1モーター制御部MC1から取得される電流値に基づいて、第1モーターM1の負荷を第2負荷として検出する。給紙ローラーFR2は、外周面に紙粉が付着すると、静止摩擦係数が低下する。給紙ローラーFR2が空回りすると、給紙ローラーFR2の負荷が低下する。このため、給紙ローラーFR2が空回りしない間の電流値は空回りする間の電流値よりも大きくなる。負荷検出部71は、第1モーターM1が給紙ローラーFR2に駆動力を伝達する間に第1モーター制御部MC1から取得される電流値の変動幅を第2負荷として検出する。第2負荷は、給紙ローラーFR2の負荷を示す。
【0075】
負荷検出部71は、第2モーター制御部MC2から第2モーターM2に与えられる電流値を取得し、電流値に基づいて第2モーターM2の負荷を検出する。搬送ローラー37は、給紙ローラーFR2と同様に、外周面に紙粉が付着すると、静止摩擦係数が低下する。負荷検出部71は、第2モーターM2が搬送ローラー37に駆動力を伝達する間に第2モーター制御部MC2から取得される電流値の変動幅を第3負荷として検出する。第3負荷は、搬送ローラー37の負荷を示す。
【0076】
負荷検出部71は、第3モーター制御部MC3から第3モーターM3に与えられる電流値を取得し、電流値に基づいて第3モーターM3の負荷を検出する。タイミングローラー31は、給紙ローラーFR2と同様に、外周面に紙粉が付着すると、静止摩擦係数が低下する。負荷検出部71は、第3モーターM3がタイミングローラー31に駆動力を伝達する間に第3モーター制御部MC3から取得される電流値の変動幅を第4負荷として検出する。第4負荷は、タイミングローラー31の負荷を示す。
【0077】
状態検出部77は、負荷検出部71から給紙ローラーFR1の第1負荷が入力され、履歴生成部75から給紙ローラーFR1の第1履歴情報が入力される。状態検出部77は、第1負荷と第1履歴情報とに基づいて、給紙ローラーFR1の状態を検出する。給紙ローラーFR1は、耐久しきい値D1が予め定められている。耐久しきい値D1は、給紙ローラーFR1が機能を発揮可能な状態で使用できる期間として、実験等により求められる値である。
【0078】
給紙ローラーFR1の第1履歴情報が耐久しきい値D1より小さい場合は、給紙ローラーFR1は、紙粉が付着して静止摩擦係数が低下しても、ユーザーが清掃して紙粉を取り除けは使用可能な状態に回復する確率が高い。一方、給紙ローラーFR1の第1履歴情報が耐久しきい値D1以上の場合は、給紙ローラーFR1の外周面にシボ加工により形成された凹凸部分の高低差が減少している。このため、給紙ローラーFR1は、紙粉が付着して静止摩擦係数が低下した場合に、ユーザーが清掃して紙粉を取り除いた後でも、滑りが発生する場合がある。この滑りは、第1負荷により検出され、発生する滑り量が多いほど第1負荷が小さくなる。
【0079】
状態検出部77は、第1負荷に基づいて給紙ローラーFR1の清掃または交換が必要か否かを判断する。具体的には、状態検出部77は、第1負荷が清掃しきい値LI11以上の場合に、給紙ローラーFR1の清掃が必要であると判断し、第1負荷が清掃しきい値LI11より大きな交換しきい値LI12以上の場合に、給紙ローラーFR1の交換が必要であると判断する。状態検出部77は、給紙ローラーFR1の清掃または交換が必要と判断する場合、通知部81に通知指示を出力する。通知指示は、給紙ローラーFR1を識別するためのローラー識別情報と、清掃または交換のいずれかを示す情報を含む。このため、給紙ローラーFR1を、清掃または交換を、適切なタイミングでユーザーに通知することができる。
【0080】
また、状態検出部77は、第1の時刻に取得された第1負荷と、第2の時刻に取得された第1負荷とに基づいて、給紙ローラーFR1が清掃された状態または交換された状態を判断する。具体的には、状態検出部77は、給紙ローラーFR1の第1履歴情報が耐久しきい値D1以上の場合であって、第1の時刻に取得された第1負荷が第1状態しきい値C11以上であってかつ第2の時刻に取得された第1負荷が第2状態しきい値C12以下の場合に、給紙ローラーFR1が交換された状態と判断する。第2状態しきい値C12は、第1状態しきい値C11よりも小さい。状態検出部77は、給紙ローラーFR1が交換された状態と判断する場合、リセット部79にリセット指示を出力する。リセット指示は、給紙ローラーFR1を識別するためのローラー識別情報を含む。
【0081】
状態検出部77は、給紙ローラーFR1が交換された状態と判断する場合、通知部81に交換通知指示を出力する。交換通知指示は、給紙ローラーFR1を識別するためのローラー識別情報を含む。
【0082】
また、状態検出部77は、給紙ローラーFR1の第1履歴情報が耐久しきい値D1以下の場合であって、第1の時刻に取得された第1負荷が第1状態しきい値C11以上であってかつ第2の時刻に取得された第1負荷が第3状態しきい値C13以下かつ第2状態しきい値C12より大きい場合に、給紙ローラーFR1が清掃された状態と判断する。第3状態しきい値C13は、第1状態しきい値C11よりも小さくかつ第2状態しきい値C12より大きい。なお、第3状態しきい値C13は、第2状態しきい値C12と同じであってもよい。
【0083】
状態検出部77は、給紙ローラーFR2、搬送ローラー37およびタイミングローラー31それぞれの状態を検出する。状態検出部77が給紙ローラーFR2の状態を検出する方法は、状態検出部77が搬送ローラー37およびタイミングローラー31それぞれの状態を検出する方法と同じである。したがって、ここでは、状態検出部77が給紙ローラーFR2の状態を検出する方法を例に説明し、状態検出部77が搬送ローラー37の状態およびタイミングローラー31の状態を検出する方法についての説明は繰り返さない。ただし、第1負荷が、第1モーターM1に流れる電流値の変動幅であるのに対して、第2負荷が、第2モーターM2に流れる電流値である点が異なる。
【0084】
また、給紙ローラーFR1、給紙ローラーFR2、搬送ローラー37およびタイミングローラー31の材質および形状等が異なるため、複数のしきい値についても、給紙ローラーFR1、給紙ローラーFR2、搬送ローラー37およびタイミングローラー31それぞれに対して定められる。ここでは、給紙ローラーFR2に対して、耐久しきい値D2、清掃しきい値LI21、交換しきい値LI22、第1状態しきい値C21、第2状態しきい値C22、第3状態しきい値C23が予め定められている場合を例に説明する。
【0085】
状態検出部77は、負荷検出部71から給紙ローラーFR2の第2負荷が入力され、履歴生成部75から給紙ローラーFR2の第2履歴情報が入力される。状態検出部77は、第2負荷と第2履歴情報とに基づいて、給紙ローラーFR1の状態を検出する。給紙ローラーFR2は、耐久しきい値D2が予め定められている。耐久しきい値D2は、給紙ローラーFR2が機能を発揮可能な状態で使用できる期間として、実験等により求められる値である。
【0086】
給紙ローラーFR2の第2履歴情報が耐久しきい値D2より小さい場合は、給紙ローラーFR2は、紙粉が付着して静止摩擦係数が低下しても、ユーザーが清掃して紙粉を取り除けは使用可能な状態に回復する確率が高い。一方、給紙ローラーFR2の第2履歴情報が耐久しきい値D2以上の場合は、給紙ローラーFR2の外周面にシボ加工により形成された凹凸部分の高低差が減少している。このため、給紙ローラーFR2は、紙粉が付着して静止摩擦係数が低下した場合に、ユーザーが清掃して紙粉を取り除いた後でも、滑りが発生する場合がある。この滑りは、第2負荷により検出され、発生する滑り量が多いほど第1負荷が小さくなる。
【0087】
状態検出部77は、第2負荷に基づいて給紙ローラーFR2の清掃または交換が必要か否かを判断する。具体的には、状態検出部77は、第2負荷が清掃しきい値LI21以上の場合に、給紙ローラーFR2の清掃が必要であると判断し、第2負荷が清掃しきい値LI21より大きな交換しきい値LI22以上の場合に、給紙ローラーFR2の交換が必要であると判断する。状態検出部77は、給紙ローラーFR2の清掃または交換が必要と判断する場合、通知部81に通知指示を出力する。通知指示は、給紙ローラーFR2を識別するためのローラー識別情報と、清掃または交換のいずれかを示す情報を含む。
【0088】
また、状態検出部77は、第1の時刻に取得された第2負荷と、第2の時刻に取得された第2負荷とに基づいて、給紙ローラーFR2が清掃された状態または交換された状態を判断する。具体的には、状態検出部77は、給紙ローラーFR2の第2履歴情報が耐久しきい値D2以上の場合であって、第1の時刻に取得された第2負荷が第1状態しきい値C21以上であってかつ第2の時刻に取得された第2負荷が第2状態しきい値C22以下の場合に、給紙ローラーFR2が交換された状態と判断する。第2状態しきい値C22は、第1状態しきい値C21よりも小さい。状態検出部77は、給紙ローラーFR2が交換された状態と判断する場合、リセット部79にリセット指示を出力する。リセット指示は、給紙ローラーFR2を識別するためのローラー識別情報を含む。
【0089】
また、状態検出部77は、給紙ローラーFR2の第2履歴情報が耐久しきい値D2以上の場合であって、第1の時刻に取得された第2負荷が第1状態しきい値C21以上であってかつ第2の時刻に取得された第2負荷が第3状態しきい値C23以下かつ第2状態しきい値C22より大きい場合に、給紙ローラーFR2が清掃された状態と判断する。第3状態しきい値C23は、第1状態しきい値C21よりも小さくかつ第2状態しきい値C22より大きい。なお、第3状態しきい値C23は、第2状態しきい値C22と同じであってもよい。
【0090】
リセット部79は、状態検出部77からリセット指示が入力されることに応じて、リセット指示に含まれるローラー識別情報に対応する履歴情報をリセットする。具体的には、リセット部79は、履歴生成部75により生成された履歴情報のうち、リセット指示に含まれるローラー識別情報で識別されるローラーの履歴情報をリセットする。リセット部79は、例えば、履歴情報をゼロで更新する。リセット指示は、ローラーが交換された場合に入力されるため、履歴生成部75により生成される履歴情報は、ローラーが交換されてから使用された履歴を示す。
【0091】
通知部81は、状態検出部77から通知指示または交換通知指示が入力される。通知指示は、ローラー識別情報と、清掃または交換のいずれかを示す情報を含む。通知部81は、通知指示が入力されることに応じて、ローラーの清掃または交換をユーザーに指示する。例えば、通知部81は、表示部161に、ローラーの清掃または交換をユーザーに促すメッセージを表示する。また、通知部81は、状態検出部77から交換通知指示が入力されることに応じて、次のローラーを交換する準備作業をユーザーに促すメッセージを表示する。ユーザーは、次に交換するための新たなローラーを準備するために、購入などの作業をすることができる。この通知は、電子メールなどで通知されるのが好ましい。
【0092】
図8は、部品状態検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。部品状態検出処理は、プリンター100が備えるCPU111がROM113、HDD115またはCD-ROM118に記憶された部材状態検出プログラムを実行することによりCPU111により実現される機能である。部品状態検出処理が対象とする部品は、給紙ローラーFR1、給紙ローラーFR2、搬送ローラー37およびタイミングローラー31である。給紙ローラーFR1、給紙ローラーFR2、搬送ローラー37およびタイミングローラー31それぞれの状態を検出する処理は、検出される負荷および各種のしきい値が異なるが、処理の流れは同じである。ここでは、給紙ローラーFR1の状態を検出する場合を例に説明する。
【0093】
図8を参照して、プリンター100が備えるCPU111は、電源が投入されたか否かを判断する(ステップS01)。電源スイッチがONになるまで待機状態となり(ステップS01でNO)、電源スイッチがONに切り換えられると(ステップS01でYES)、処理はステップS02に進む。
【0094】
ステップS02においては省電力モードから復帰したか否かが判断される。プリンター100は、動作モードを通常モードと通常モードよりも消費電力が低い省電力モードとのいずれかに切り換える。例えば、通常モードの状態で、プリンター100が動作しない期間が所定時間となった場合、または、ユーザーによる操作を最後に受け付けてから所定時間が経過する場合に、省電力モードに自動的に切り換わる。省電力モードの状態で、ユーザーによる操作を受けつける場合、または、外部からプリントジョブを受信する場合に、省電力モードから通常モードに復帰する。省電力モードから通常モードに復帰したならば処理はステップS04に進むが、そうでなければ処理はステップS03に進む。
【0095】
ステップS03においては、扉150Aが開閉されたか否か判断される。扉150Aの開閉を検出するセンサーは、例えば、光電センサーである。扉150Aが開閉されたことが検出されたならば処理はステップS04に進むが、そうでなければ処理はステップS02に戻る。
【0096】
プリンター100に電源が投入された場合、省電力モードから通常モードに復帰した場合、扉150Aの開閉が検出された場合のいずれかの後に、ステップS04以降の処理が実行される。給紙ローラーFR1が交換される場合は、電源がOFFの間、省電力モードの間、または、扉150Aが開いた状態である。このため、給紙ローラーFR1が交換された直後に、給紙ローラーFR1が交換されたことを判別することができる。
【0097】
ステップS04においては、履歴情報が取得され、処理はステップS05に進む。HDD115に記憶されている履歴情報が読み出される。履歴情報は、後述するステップS11において、給紙ローラーFR1に対して生成され、HDD115に記憶される。
【0098】
ステップS05においては、画像形成が開始され、処理はステップS06に進む。ユーザーが操作部163に画像形成の開始時を指示する場合、または、画像データの画像を形成させるコマンドを含むプリントジョブが外部から受信される場合に、画像形成が開始される。
【0099】
ステップS06においては、負荷検出処理が実行され、処理はステップS07に進む。負荷検出処理の詳細は後述するが、第1モーターM1が給紙ローラーFR1を駆動する間における第1モーターM1の負荷を検出する処理である。
【0100】
ステップS07においては、検出された負荷が格納され、処理はステップS08に進む。給紙ローラーFR1を駆動する第1モーターM1の負荷が、その負荷が検出された日時と関連付けてHDD115に記憶される。
【0101】
ステップS08においては、判別処理が実行され、処理はステップS09に進む。判別処理の詳細は後述するが、給紙ローラーFR1が交換されたか否かを判別する処理である。ステップS09においては、判別処理が実行された結果にしたがって処理が分岐する。給紙ローラーFR1が交換されたと判別されたならば処理はステップS10に進むが、そうでなければ処理はステップS12に進む。ステップS10においては、履歴情報がリセットされ、処理はステップS11に進む。給紙ローラーFR1に対応する走行量が「0」の値を示す履歴情報が生成される。具体的には、「0」の値が設定された走行量と、現在日時と給紙ローラーFR1を識別するためのローラー識別情報とを含む履歴情報が生成される。ステップS11においては、ユーザーに搬送ローラーが交換されたことが通知され、処理はステップS13に進む。具体的には、搬送ローラーの注文を促すメッセージがユーザーに通知される。例えば、表示部161にメッセージが表示されてもよいし、電子メールがユーザーに割り当てられた電子メールアドレス宛に送信されてもよい。
【0102】
ステップS12においては、履歴情報が生成され、処理はステップS13に進む。給紙ローラーFR1が回転することにより用紙を搬送した距離として走行量が算出され、走行量と現在日時と給紙ローラーFR1を識別するためのローラー識別情報とを含む履歴情報が生成される。
【0103】
ステップS13においては、履歴情報が更新され、処理はステップS14に進む。処理がステップS11から進む場合は、ステップS08においてリセットされた履歴情報がHDD115に記憶され、処理がステップS12から進む場合は、ステップS10において生成された履歴情報がHDD115に記憶される。
【0104】
ステップS14においては、電源が遮断されたか否かを判断する。ユーザーにより電源スイッチがOFFに切り換えられたならば処理は終了するが、そうでなければ処理はステップS02に戻る。
【0105】
図9は、負荷検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。負荷検出処理は、部品状態検出処理のステップS06において実行される処理である。図9を参照して、CPU111は、第1モーター制御部MC1から所定期間の電流値を取得し(ステップS21)、処理をステップS22に進める。第1モーターM1が給紙ローラーFR1を駆動する間に、第1モーターM1に流れる電流の所定期間の電流値が取得される。
【0106】
ステップS22においては、所定期間の電流値からトルク電流リップルが抽出され、処理はステップS23に進める。所定期間の電流値から所定周波数の電流値がトルク電流リップルとして抽出される。所定周波数は、トルク電流値の周波数として予め定められた周波数である。
【0107】
ステップS23においては、トルク電流リップルの振幅が取得され、処理はステップS24に進む。ステップS24においては、トルク電流リップルの振幅が負荷に設定され、処理はステップS25に進む、ステップS25においては、負荷が格納され、処理は部品状態検出処理に戻る。負荷は、給紙ローラーFR1と関連付けてHDD115に記憶される。
【0108】
図10は、判別処理の流れの一例を示すフローチャートである。判別処理は、部品状態検出処理のステップS08において実行される処理である。判別処理が実行される前の段階で、給紙ローラーFR1に対応する履歴情報が取得されており、給紙ローラーFR1に対応する負荷が検出されている。
【0109】
図10を参照して、プリンター100が備えるCPU111は、前回検出された負荷を取得し(ステップS31)、処理をステップS32に進める。給紙ローラーFR1に関連付けてHDD115に記憶されている前回検出された負荷が読み出される。
【0110】
ステップS32においては、前回検出された負荷が第1状態しきい値C11以上か否かが判断される。前回検出された負荷が第1状態しきい値C11以上ならば処理はステップS33に進むが、そうでなければ処理は部品状態検出処理に戻る。
【0111】
ステップS33においては、給紙ローラーFR1の走行量が耐久しきい値LL以上か否かが判断される。給紙ローラーFR1の走行量が耐久しきい値LL以上ならば処理はステップS34に進むが、そうでなければ処理はステップS38に進む。
【0112】
ステップS34においては、今回検出された給紙ローラーFR1の負荷が第2状態しきい値C12以下か否かが判断される。今回検出された給紙ローラーFR1の負荷が第2状態しきい値C12以下ならば処理はステップS35に進むが、そうでなければ処理はステップS36に進む。ステップS35においては、給紙ローラーFR1が新品に交換されたと判断され、処理は部品状態検出処理に戻る。
【0113】
ステップS36においては、今回検出された給紙ローラーFR1の負荷が第3状態しきい値C13以下か否かが判断される。今回検出された給紙ローラーFR1の負荷が第3状態しきい値C13以下ならば処理はステップS37に進むが、そうでなければ処理は部品状態検出処理に戻る。ステップS37においては、給紙ローラーFR1が清掃されたと判断され、処理は部品状態検出処理に戻る。給紙ローラーFR1の走行量が耐久しきい値LL以上であっても、給紙ローラーFR1の負荷が第3状態しきい値C13以下ならば清掃を判断する。給紙ローラーFR1の負荷が第3状態しきい値C13以下であれば、給紙ローラーFR1と用紙との間で滑りが比較的少なく、用紙を適切に搬送することが可能な状態である。このため、給紙ローラーFR1を、走行量が耐久しきい値LLを超えた状態であっても使用を継続することができる。
【0114】
ステップS38においては、今回検出された給紙ローラーFR1の負荷が第2状態しきい値C12以下か否かが判断される。今回検出された給紙ローラーFR1の負荷が第2状態しきい値C12以下ならば処理はステップS39に進むが、そうでなければ処理は部品状態検出処理に戻る。ステップS39においては、給紙ローラーFR1が清掃されたと判断され、処理は部品状態検出処理に戻る。
【0115】
<実施例>
図11は、実験データの一例示す図である。図11は、横軸に用紙の搬送時間を示し、縦軸はトルク電流リップルの振幅を示す。搬送時間は、給紙カセット35に収納されている用紙の搬送を開始してから用紙の先端が用紙検出センサーSE1により検出されるまでの時間としている。図中の黒色の点は、給紙ローラーFR1が交換して間もない状態において計測される用紙の搬送時間とトルク電流リップルの振幅とを示す。
【0116】
図中の白色の点は、給紙ローラーFR1の走行量が耐久しきい値LLを超えた350K枚の用紙を搬送した状態において計測される用紙の搬送時間とトルク電流リップルの振幅とを示す。図中の実線は、白色の複数の点を回帰した直線である。図中の点線は、黒色の複数の点を回帰分析した直線である。また、電流リップル振幅に対して、第1状態しきい値C11、第2状態しきい値C12および第3状態しきい値C13が示される。
【0117】
白色の点について、トルク電流リップルの振幅が第2状態しきい値C12以下になることがない状態が分かる。したがって、走行量が耐久しきい値LLを超えた交換時期に達した給紙ローラーFR1においては、トルク電流リップルの振幅が第2状態しきい値C12以下にならない。
【0118】
<他の実施の形態>
(1)上述した実施の形態においては、給紙ローラーFR1の負荷をトルク電流リップルの振幅とした。他の給紙ローラーFR2の負荷は、給紙ローラーFR2を駆動する第1モーターM1を流れる電流値である。また、搬送ローラー37の負荷は、搬送ローラー37を駆動する第2モーターM2に流れる電流値である。また、タイミングローラー31の負荷はタイミングローラー31を駆動する第3モーターM3に流れる電流値である。
【0119】
(2)清掃しきい値LI11を固定値としたが、給紙ローラーFR1の走行量に応じて変動させてもよい。給紙ローラーFR1は、走行量が多くなると表面が摩耗してくることから紙粉が付着していなくてもすべりが発生する場合がある。このため、給紙ローラーFR1に紙粉が付着していなくても清掃が必要と判断されことを防止するために、走行量が増加するほど清掃しきい値LI11を大きな値に変更する。これにより、給紙ローラーFR1に紙粉が付着した状態となる適切なタイミングでユーザーに清掃を促すための通知をすることができる。
【0120】
(3)上述した実施の形態においては、給紙ローラーFR1、給紙ローラーFR2、搬送ローラー37およびタイミングローラー31の状態を判別したが、回転軸を中心に回転する部材であれば、他の部材の状態を判別してもよい。例えば、定着装置50が備える定着ベルト57、中間転写ベルト30の状態を検出してもよい。
【0121】
図12は、定着装置の断面図である。図12では、定着装置50を加圧ローラー59の回転軸59Aを法線とする面で切断した断面を示している。図12を参照して、定着装置50は、加熱部51と、加圧ローラー59と、を含む。加熱部51は、加圧ローラー59に対向して設けられ、加圧ローラー59との間でニップ部Nを形成する。ニップ部Nは、加熱部51と加圧ローラー59とが接触する部分である。加圧ローラー59は、加熱部51に向かって所定の押圧力で加圧される。
【0122】
トナー像Toをその表面に担持する用紙Paが定着装置50の下方から上方に向かって搬送され、用紙Paがニップ部Nを通過する。用紙Paがニップ部Nを通過する間に用紙Paが加圧ローラー59と加熱部51とにより加熱および加圧され、トナー像Toが用紙Paに定着する。
【0123】
加圧ローラー59は、芯金、中間層、表層から構成されている。本実施の形態では、加圧ローラー59の外径は30mmである。芯金は、アルミまたは鉄製であり、芯金の厚さは、2~3mmである。中間層は、弾性層であり、シリコーンゴムやシリコーンスポンジなどの耐熱性および弾性を有する材料から形成される。中間層は、厚さ2~5mm程度が好ましい。表層は、フッ素チューブなどの離型性を有する材料から形成され、表層離型層の厚さは、20~80μm程度が好ましい。
【0124】
加熱部51は、加熱ローラー53と、加圧部55と、無端状の定着ベルト57と、サーミスター67と、を含む。定着ベルト57は、可撓性を有する無端状のベルトである。定着ベルト57は、加熱ローラー53と加圧部55とにより弛まないように懸架される。定着ベルト57は、基層と弾性層から構成されている。基層は、内径40mm、幅340mm、厚さ70μmのポリイミドフィルムで構成されている、弾性層は、シリコーンゴムを用い厚さ100~150μm程度が好ましい、また、表層には、厚さ30μm程度のフッ素コートからなる離型層を被覆して形成している。
【0125】
加熱ローラー53は、定着ベルト57の回転に従動して回転する。なお、加熱ローラー53を回転しないようにして、定着ベルト57が加熱ローラー53の表面を摺動するようにしてもよい。
【0126】
加圧部55は、押圧部材63と、グリス塗布部65と、を有する。押圧部材63は、耐熱性を有した樹脂部材で形成され、少なくとも定着処理する最大用紙幅以上の長さを有する形状である。押圧部材63は、本体フレームに固定される。押圧部材63は、ニップ部Nに対応する部分が加圧ローラー59の曲率に近似する形状を有する。このため、加圧ローラー59の弾性変形量を小さくしつつ、ニップ部Nの面積をできるだけ大きくすることができる。ニップ部Nの面積を大きくできるので、用紙を加圧および加熱する時間を長くすることができる。また、加圧ローラー59の外径を所定の値以下にできるので、定着装置50を小型化することができる。また、加圧ローラー59の弾性変形量を小さくできるので、加圧ローラー59を加圧する押圧力を小さくすることができる。このため、加圧ローラー59の強度を所定の値以下にすることができるので、加圧ローラー59の肉厚を小さくして、熱容量を小さくすることができる。さらに、加圧ローラー59の熱容量を小さくできるので、電力の消費量が小さくなる。
【0127】
押圧部材63のニップ部N側には、押圧部材63の表面の摺動性を高めるために摺動シートが固定されている。摺動シートは、材料は耐熱性を有するガラスクロスにフッ素樹脂をコーティングしたものであり、耐熱性、耐摩耗性、摺動性を備えている。定着ベルト57は摺動シートと接触する。このため、定着ベルト57が摩擦により消耗する度合いをできるだけ小さくできる。
【0128】
グリス塗布部65は、潤滑剤であるグリスを蓄積しており、定着ベルト57と接触する部分で、定着ベルト57にグリスを塗布する。定着ベルト57がグリス塗布部65を通過する間に、定着ベルト57とグリス塗布部65との摩擦によって、定着ベルト57の内側の面にグリスが塗布される。これにより、定着ベルト57が押圧部材63から受ける摩擦抵抗が小さくなるので、定着ベルト57を加熱ローラー53と加圧部55の周りで回転させるために受ける負荷が小さくなる。
【0129】
加熱ローラー53は、中空円筒形状の部材であり、内部に熱源61を内蔵する。加熱ローラー53の内径は、熱源61が接触しないサイズに設定されている。加熱ローラー53はステンレス製である。加熱ローラー53がステンレス製なので、強度が確保されるとともに加工が容易である。この場合、加熱ローラー53の厚みは、0.1mm~0.2mm前後にできる。なお、加熱ローラー53はアルミニウム製であってもよい。この場合、ベンディングや局部的な変形に対する強度を確保するために、加熱ローラー53の厚みは0.25mm以上にすることが好ましい。また、加熱ローラー53は、STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)等の鉄系金属製であってもよい。
【0130】
熱源61は、例えば、ハロゲンヒーターである。本実施の形態においては、熱源61として、発光長の異なる2本のハロゲンヒーターが用いられる。なお、熱源61はハロゲンヒーターに限定されず、抵抗発熱体またはIH(Induction Heating)が用いられてもよい。
【0131】
熱源61が発熱することにより、加熱ローラー53が加熱され、加熱ローラー53の温度が上昇する。サーミスター67によって、加熱ローラー53の温度が検出される。このサーミスター67が検出した温度に応じて、熱源61がオン/オフに制御され、加熱ローラー53が所定の温度になるように制御される。加熱ローラー53を薄肉化することで、加熱ローラー53の熱容量が小さくなる。このため、加熱ローラー53の昇温速度が速くなるので、加熱ローラー53が所定の温度に達するまでのウォームアップ時間を短くすることができる。また、熱源61の消費電力量を低減することができる。
【0132】
定着ベルト57は、加熱ローラー53と接触する間に加熱ローラー53から伝達される熱により所定の温度まで熱せられる。
【0133】
加圧ローラー59は、駆動モーター59Bにより回転される。加圧ローラー59の回転に伴って、定着ベルト57が従動回転する。定着ベルト57は回転される間に加熱ローラー53によって加熱される。定着ベルト57が所定の温度に加熱された後、トナー像Toを担持する用紙Paがニップ部Nに進入するように制御される。用紙Paがニップ部Nを通過する間に熱と圧力によってトナー像Toが用紙Paに定着される。
【0134】
定着ベルト57の表面に紙粉が付着すると、定着ベルトが用紙との間で滑る場合がある。定着ベルト57が用紙との間で滑る場合には、加圧ローラー59を駆動する駆動モーター59Bの負荷が低下し、駆動モーター59Bに流れる電流の電流値が低下する。駆動モーター59Bに流れる電流の電流値を、しきい値と比較することにより、定着ベルト57の状態を検出することができ、定着ベルト57が交換されたことを検出することができる。また、定着ベルト57の清掃および交換を適切なタイミングでユーザーに通知することができる。
【0135】
(4)本実施の形態においては、画像形成装置の一例としてプリンター100を例に説明されたが、画像形成装置は、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ装置、これらを組み合わせた複合機(Multi Function Peripheral)などあってもよい。
【0136】
また、本実施の形態では、画像形成装置の一例として、タンデム型のカラーの画像を形成するプリンター100が説明されたが、これに限られるものではなく、モノクロの画像を形成する画像形成装置であってもよい。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20K、露光装置21Y,21M,21C,21K、帯電ローラー22Y,22M,22C,22K、感光体ドラム23Y,23M,23C,23K、現像器24Y,24M,24C,24K、1次転写ローラー25Y,25M,25C,25K、2次転写ローラー26、定着装置50の構成や配置は、本実施の形態に限定されず、他の構成や配置であっても良い。
【0137】
以上説明したように、本実施の形態におけるプリンター100は、画像形成装置として機能し、給紙ローラーFR1およびピックアップローラーPR1を駆動する第1モーターM1を備え、CPU111は、第1モーターM1が受ける負荷を検出し、第1モーターM1により給紙ローラーFR1が駆動された履歴と、第1モーターM1が受ける負荷の変化量とに基づいて給紙ローラーFR1の状態を検出する。このため、使用により状態が変化する給紙ローラーFR1が所定期間使用された後における対象物を駆動する第1モーターM1の負荷の変化量から給紙ローラーFR1の状態が検出されるので、給紙ローラーFR1を駆動しながら給紙ローラーFR1の状態を検出することができる。
【0138】
また、給紙ローラーFR1は、回転軸周りを回転することにより、記録媒体を給紙する。給紙ローラーFR1が記録媒体を給紙する場合に給紙ローラーFR1から第1モーターM1から受ける負荷を検出できるので、給紙ローラーFR1に記録媒体を給紙させながら対象物の状態を検出することができる。
【0139】
CPU111は、給紙ローラーFR1の走行量が耐久しきい値LL以上を示す場合に、第1時刻に検出された第1負荷が第1状態しきい値C11以上でかつ第1時刻より後の第2時刻に検出された第2負荷が第1状態しきい値C11より小さい第2状態しきい値C12以下の場合に、給紙ローラーFR1が交換された状態を検出する。耐久しきい値LL以上になるまで使用された給紙ローラーFR1の負荷は、新品の状態における給紙ローラーFR1の負荷と異なる。第2状態しきい値C12を、耐久しきい値LL以上になるまで使用された給紙ローラーFR1の負荷の最低値より小さい値にすれば、新品の状態における給紙ローラーFR1に交換されたと判断できる。このため、第1時刻から第2時刻までの間に、給紙ローラーFR1が新品に交換されたと判断することができる。
【0140】
また、CPU111は、給紙ローラーFR1の走行量が耐久しきい値LL以上を示す場合に、第1負荷が第1状態しきい値C11以上でかつ第2負荷が第1状態しきい値C11より小さくかつ第2状態しきい値C12より大きい場合に、給紙ローラーFR1が清掃された状態を検出する。このため、耐久しきい値LL以上になるまで使用された給紙ローラーFR1の負荷は、清掃されることにより低下するが、新品の状態における負荷とはならない。このため、第2負荷が第1状態しきい値C11より小さくかつ第2状態しきい値C12より大きい場合に、第1時刻から第2時刻までの間に、給紙ローラーFR1が清掃されたと判断することができる。
【0141】
また、CPU111は、走行量が耐久しきい値LLより小さい状態において、第1負荷が第1状態しきい値C11以上でかつ第2負荷が第1状態しきい値C11よい小さい場合に、給紙ローラーFR1が清掃された状態を検出する。耐久しきい値LL以上になるまで使用される前の給紙ローラーFR1の負荷は、使用により増加し、清掃されることにより新品の状態における負荷となる場合がある。このため、第1時刻から第2時刻までの間に、対象物が清掃されたと判断することができる。
【0142】
また、CPU111は、第1モーター制御部MC1が第1モーターM1に流れる電流の振幅の大きさを負荷として検出する。ピックアップローラーPR1は外周面に周方向に所定の間隔を隔てた複数の凸部を有する。このため、給紙ローラーFR1およびピックアップローラーPR1から受ける負荷は、ピックアップローラーPR1の外周面に形成された複数の凸部の間隔により定まる周期で変動する。この変動幅が負荷として検出されるので、給紙ローラーFR1が消耗した状態を正確に検出することができる。
【0143】
また、CPU111は、本体電源のONに切り換えられた時、または動作モードが省電力モードから通常モードに切り換わった時、および本体筐体が有する扉が開閉された時のすくなく1つのタイミングで、給紙ローラーFR1の状態を判別する。給紙ローラーFR1が交換または清掃される可能性のある期間の後に給紙ローラーFR1の状態を検出することができる。
【0144】
また、CPU111は、給紙ローラーFR1が交換されたことを検出することに応じて、給紙ローラーFR1の走行量の履歴をリセットする。このため、給紙ローラーFR1が耐久しきい値LL以上まで使用されたことを正確に検出することができる。
【0145】
また、CPU111が給紙ローラーFR1が交換されたことを検出することに応じて、給紙ローラーFR1の補給に関する情報を生成し、出力する。このため、ユーザーは、次に給紙ローラーFR1を交換する作業のために、給紙ローラーを購入する等する準備をすることができる。
【0146】
また、CPU111は、給紙ローラーFR2を駆動する第1モーターM1に流れる電流の大きさから給紙ローラーFR2の負荷を検出し、第2モーターM2に流れる電流の大きさから搬送ローラー37の負荷を検出し、第3モーターM3に流れる電流の大きさからタイミングローラー31の負荷を検出する。このため、給紙ローラーFR2、搬送ローラー37またはタイミングローラー31が記録媒体を搬送している間における負荷を容易に検出することができる。
【0147】
<実施の形態の総括>
(項1) 対象物を駆動する駆動源と、
前記駆動源が受ける負荷を検出する負荷検出部と、
前記駆動源により前記対象物が駆動された履歴と、前記駆動源が受ける負荷の変化量とに基づいて前記対象物の状態を検出する状態検出部と、を備えた画像形成装置。
【0148】
この局面に従えば、駆動源により対象物が駆動された履歴と、駆動源が受ける負荷の変化量とに基づいて対象物の状態が検出される。このため、使用により状態が変化する対象物が所定期間使用された後における対象物を駆動する駆動源の負荷の変化量から対象物の状態が検出されるので、対象物を駆動しながら対象物の状態を検出することができる。その結果、使用により状態が変化する対象物の状態を、対象物を駆動しながら検出することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0149】
(項2) 前記対象物は、回転軸周りを回転することにより、画像が形成される記録媒体を搬送する部材である、項1に記載の画像形成装置。
【0150】
この局面に従えば、対象物が記録媒体を搬送する場合に対象物から駆動源から受ける負荷を検出できるので、対象物に記録媒体を搬送させながら対象物の状態を検出することができる。
【0151】
(項3) 前記状態検出部は、前記履歴が予め定められた耐久しきい値以上を示す場合に、第1時刻に検出された第1負荷が第1しきい値以上でかつ前記第1時刻より後の第2時刻に検出された第2負荷が前記第1しきい値より小さい第2しきいち値以下の場合に、前記対象物が交換された状態を検出する、項1または2に記載の画像形成装置。
【0152】
この局面に従えば、耐久しきい値以上になるまで使用された対象物の負荷は、新品の状態における対象物の負荷と異なる。第2しきい値を、耐久しきい値以上になるまで使用された対象物の負荷の最低値より小さい値にすれば、新品の状態における対象物に交換されたと判断できる。このため、第1時刻から第2時刻までの間に、対象物が新品に交換されたと判断することができる。
【0153】
(項4) 前記状態検出部は、前記履歴が前記耐久しきい値以上を示す場合に、前記第1負荷が前記第1しきい値以上でかつ前記第2負荷が前記第1しきい値より小さくかつ前記第2しきい値より大きい場合に、前記対象物が清掃された状態を検出する、項3に記載の画像形成装置。
【0154】
この局面に従えば、耐久しきい値以上になるまで使用された対象物の負荷は、清掃されることにより低下するが、新品の状態における負荷とはならない。このため、第2負荷が第1しきい値より小さくかつ第2しきい値より大きい場合に、第1時刻から第2時刻までの間に、対象物が清掃されたと判断することができる。
【0155】
(項5) 前記状態検出部は、前記履歴が前記耐久しきい値より小さい状態において、前記第1負荷が前記第1しきい値以上でかつ前記第2負荷が前記第1しきい値よい小さい場合に、前記対象物が清掃された状態を検出する、項3または4に記載の画像形成装置。
【0156】
この局面に従えば、耐久しきい値以上になるまで使用される前の対象物の負荷は、使用により増加し、清掃されることにより新品の状態における負荷となる場合がある。このため、第1時刻から第2時刻までの間に、対象物が清掃されたと判断することができる。
【0157】
(項6) 前記駆動源は、モーターと、
前記モーターを電流制御する電流制御部と、を備え、
前記負荷検出部は、前記電流制御部が前記モーターに流れる電流の大きさを前記負荷として検出する、項1~5のいずれかに記載の画像形成装置。
【0158】
この局面に従えば、電流制御部がモーターに流れる電流の大きさが負荷として検出される。このため、対象物が記録媒体を搬送している間において対象物の負荷を容易に検出することができる。
【0159】
(項7) 前記対象物としての給紙ローラーと、
前記給紙ローラーよりも上流側に配置され、外周面に周方向に所定の間隔を隔てた複数の凸部を有するピックアップローラーと、を備え、
前記駆動源は、前記給紙ローラーおよび前記ピックアップローラーを駆動するモーターと、
前記モーターを電流制御する電流制御部と、を備え、
前記負荷検出部は、前記電流制御部が前記モーターに流れる電流の振幅の大きさを前記負荷として検出する、項1~5のいずれかに記載の画像形成装置。
【0160】
この局面に従えば、ピックアップローラーは外周面に周方向に所定の間隔を隔てた複数の凸部を有し、駆動源が給紙ローラーおよびピックアップローラーを駆動する。このため、給紙ローラーおよびピックアップローラーから受ける負荷は、ピックアップローラーの外周面に形成された複数の凸部の間隔により定まる周期で変動する。この変動幅が負荷として検出されるので、給紙ローラーが消耗した状態を正確に検出することができる。
【0161】
(項8) 前記履歴は、前記対象物が回転軸回りを回転する時間および回転数、前記対象物が搬送した記録媒体の枚数のいずれかである、項1~7のいずれかに記載の画像形成装置。
【0162】
この局面に従えば、対象物が駆動された履歴を正確に計測することができる。
【0163】
(項9) 前記状態検出部は、本体電源のONに切り換えられた時、または通常モードよりの消費電力が小さい省電力モードから前記通常モードに切り換わった時、および本体筐体が有する扉が開閉された時のすくなく1つのタイミングで、前記対象物の状態を判別する、項1~8のいずれかに記載の画像形成装置。
【0164】
この局面に従えば、対象物が交換または清掃される可能性のある期間の後に対象物の状態を検出することができる。
【0165】
(項10) 前記状態検出部により前記対象物が交換されたことが検出されることに応じて、前記履歴がリセットするリセット部を、さらに備える、項1~9のいずれかに記載の画像形成装置。
【0166】
この局面に従えば、対象物が交換されたことが検出されることに応じて履歴がリセットされるので、対象物が耐久しきい値以上まで使用されたことを正確に検出することができる。
【0167】
(項11) 前記状態検出部により前記対象物が交換されたことが検出されることに応じて、前記対象物の補給に関する情報を生成し、出力する通知手段を、さらに備えた、項1~10のいずれかに記載の画像形成装置。
【0168】
この局面に従えば、対象物が交換されたことが検出されることに応じて、対象物の補給に関する情報が生成され、出力される。このため、ユーザーは、次に対象物を交換する作業のための準備をすることができる。
【0169】
(項12) 対象物を駆動する駆動源を備えた画像形成装置で実行される部材状態検出方法であって、
前記駆動源が受ける負荷を検出する負荷検出ステップと、
前記駆動源により前記対象物が駆動された履歴と、前記駆動源が受ける負荷とに基づいて前記対象物の状態を検出する状態検出ステップと、を備えた部材状態検出方法。
【0170】
この局面に従えば、使用により状態が変化する対象物の状態を、対象物を駆動しながら検出することが可能な部材状態検出方法を提供することができる。
【0171】
(項13) 対象物を駆動する駆動源を備えた画像形成装置で実行される部材状態検出方法であって、
前記駆動源が受ける負荷を検出する負荷検出ステップと、
前記駆動源により前記対象物が駆動された履歴と、前記駆動源が受ける負荷とに基づいて前記対象物の状態を検出する状態検出ステップと、を備えた部材状態検出プログラム。
【0172】
この局面に従えば、使用により状態が変化する対象物の状態を、対象物を駆動しながら検出することが可能な部材状態検出プログラムを提供することができる。
【0173】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0174】
100 プリンター、111 CPU、113 ROM、114 RAM、115 HDD、117 外部記憶装置、118 CD-ROM、140 画像形成部、150 給紙部、150A 扉、160 操作パネル、161 表示部、163 操作部、165 タッチパネル、167 ハードキー部、C11 第1状態しきい値、C12 第2状態しきい値、C13 第3状態しきい値、D1 耐久しきい値、LI11 清掃しきい値、LI12 交換しきい値、LL 耐久しきい値、M1 第1モーター、M2 第2モーター、M3 第3モーター、MC1 第1モーター制御部、MC2 第2モーター制御部、MC3 第3モーター制御部、30 中間転写ベルト、FR1 給紙ローラー、PR1 ピックアップローラー、31 タイミングローラー、35 給紙カセット、35A 手差カセット、37,38 搬送ローラー、71 負荷検出部、73 駆動制御部、75 履歴生成部、77 状態検出部、79 リセット部、81 通知部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12