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特開2024-108040再生スチレン系樹脂組成物、及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108040
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】再生スチレン系樹脂組成物、及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20240802BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C08L25/04
C08L53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012297
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】平塚 義嗣
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC02W
4J002BC02X
4J002BP01W
4J002BP01X
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD200
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本開示が解決する課題は、環境負荷を低減して、機械強度に優れた再生スチレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形品を提供することである。
【解決手段】本開示は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)を含有する再生スチレン系樹脂組成物であって、
前記再生スチレン系樹脂組成物は、前記再生スチレン系樹脂組成物の総量に対して、ポリマー成分65質量%~90質量%及びゴム成分7質量%超含み、
前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分の含有量が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して5質量%以下であり、
前記再生スチレン系樹脂組成物をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解分散させた組成物分散液中の分散質が式(1)を満たす、再生スチレン系樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)及びヴァージン材であるスチレン系樹脂(B)を含有する再生スチレン系樹脂組成物であって、
前記再生スチレン系樹脂組成物は、前記再生スチレン系樹脂組成物の総量に対して、ポリマー成分65質量%~90質量%及びゴム成分7質量%超含み、
前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分の含有量が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して5質量%以下であり、
前記再生スチレン系樹脂組成物をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解分散させた組成物分散液中の分散質が以下の式(1):
[数1]
0<(|d84%-d16%|)/2<2 (1)
(上記式中、d84%は、レーザー回折法により測定した前記分散質の粒子径の積分分布曲線における積算値84%径を表し、d16%は、レーザー回折法により測定した前記分散質の粒子径の積分分布曲線における積算値16%径を表す。)
を満たす、再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリマー成分は、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)及びヴァージン材であるスチレン系樹脂(B)のポリマーマトリックス部(b1)を含有する、請求項1に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分は、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のゴム状重合体粒子(a-2)の共役ジエン単量体単位及び前記スチレン系樹脂(B)中に含まれるゴム状重合体粒子(b-2)の共役ジエン単量体単位を含有する、請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリマー成分の重量平均分子量(Mw)が12万~30万の範囲である、請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
酸化防止剤、顔料、難燃剤、添加剤、鉱物油、植物油及び滑剤からなる群から選択される1種又は2種以上含有する、請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、再生スチレン系樹脂組成物、並びに該再生スチレン系樹脂組成物を用いて成形される成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン等のスチレン系樹脂は、無味無臭、食品用途に適しているだけでなく、完全燃焼によって発生する成分は炭酸ガス及び水蒸気であるため、環境負荷が少ない材料として知られている。特に、スチレン系樹脂の成形工場等の生産工程で発生するインナーロス等の廃スチレン系樹脂は品質及び組成が明確であるため、リサイクル容易な材料である。
しかし、市場から回収された廃スチレン系樹脂は、当該廃スチレン系樹脂以外の種々の樹脂若しくは金属粉、付着物又は異物を多く含んでいるため、廃スチレン系樹脂を単にリサイクルした成形品は、新品のスチレン系樹脂を用いた成形品と同等の機械的性質を維持し難いのが実情である。例えば、TVの筐体、冷蔵庫内の仕切り棚あるいは複合機のカートリッジ等に使用される部材にはスチレン系樹脂が多く含んでいるため、これらの部材のマテリアルリサイクル技術が要求されている。
特許文献1には、使用済みスチレン系樹脂とゼオライトとを含有する再生スチレン系樹脂組成物により、成型時の金型へのヤニ付着、経時的な黄変の原因である樹脂用添加剤のジブチルヒドロキシトルエン分子あるいはジブチルヒドロキシトルエン二量体を前記ゼオライトに吸着させることによって外観意匠性の低下を抑制する技術が開示されている。また、特許文献2には、リサイクル材含有率が高く、未使用のスチレン系樹脂組成物と同等の強度と難燃性を有するスチレン系樹脂組成物の技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-007424号公報
【特許文献2】特開2017-186438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術では、依然として機械強度に改善の余地が残る。また、上記特許文献2の技術では、使用済スチレン系リサイクル材由来のゴム状重合体及び不純物粒子(無機材料、金属粉及びオレフィン系樹脂)の一次粒子~二次粒子が比較的大きく、当該不純物粒子が衝撃を吸収しないと割れの起点になりやすいため、リサイクル後のスチレン系樹脂組成物自体の機械強度が低下する問題が生じる。
そこで、本開示が解決する課題は、環境負荷を低減して、機械強度に優れた再生スチレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記問題点に鑑みて鋭意研究を進めた結果、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)に含まれるスチレン系樹脂組成物の物性低下を引き起こす成分の含有量を四酸化オスミウム処理により定量できることを見出し、かつリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に対して、ヴァージン材であるスチレン系樹脂(B)を所定量配合した再生スチレン系樹脂組成物において、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を所定量に制御し、かつN,N-ジメチルホルムアミドに溶解分散させた組成物分散液中の分散質の粒度分布を制御することにより、機械強度に優れた再生スチレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形品の実現に成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本開示は以下の通りである。
【0006】
[1]四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)及びヴァージン材であるスチレン系樹脂(B)を含有する再生スチレン系樹脂組成物であって、
前記再生スチレン系樹脂組成物は、前記再生スチレン系樹脂組成物の総量に対して、ポリマー成分65質量%~90質量%及びゴム成分7質量%超含み、
前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分の含有量が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して5質量%以下であり、
前記再生スチレン系樹脂組成物をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解分散させた組成物分散液中の分散質が以下の式(1):
[数1]
0<(|d84%-d16%|)/2<2 (1)
(上記式中、d84%は、レーザー回折法により測定した前記分散質の粒子径の積分分布曲線における積算値84%径を表し、d16%は、レーザー回折法により測定した前記分散質の粒子径の積分分布曲線における積算値16%径を表す。)
を満たす、再生スチレン系樹脂組成物。
【0007】
[2]前記ポリマー成分は、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)及び前記ヴァージン材である前記スチレン系樹脂(B)のポリマーマトリックス部(b1)を含有する、[1]に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【0008】
[3]前記ゴム成分は、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のゴム状重合体粒子(a-2)の共役ジエン単量体単位及び前記スチレン系樹脂(B)中に含まれるゴム状重合体粒子(b-2)の共役ジエン単量体単位を含有する、[1]又は[2]に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【0009】
[4]前記ポリマー成分の重量平均分子量(Mw)が12万~30万の範囲である、[1]~[3]のいずれかに記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【0010】
[5]酸化防止剤、顔料、難燃剤、添加剤、鉱物油、植物油及び滑剤からなる群から選択される1種又は2種以上含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【0011】
[6][1]~[5]のいずれかに記載の再生スチレン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、環境負荷を低減し、かつ機械強度に優れた再生スチレン系樹脂組成物を提供することができる。
本開示によれば、環境負荷を低減し、かつ機械強度に優れた再生スチレン系樹脂組成物を用いた成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本開示の範囲は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[再生スチレン系樹脂組成物]
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ヴァージン材としてスチレン系樹脂(B)とを含む。この組成物中において、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中のスチレン系単量体単位を有するスチレン系重合体(a-1)と、スチレン系樹脂(B)中のスチレン系単量体単位を有するスチレン系重合体(b-1)とは、それぞれの由来等を識別し難いため、製品である再生スチレン系樹脂組成物から、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)及びスチレン系樹脂(B)の各含有量を特定することは困難である。そこで、本開示では、本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物に含有される成分をモルフォロジ―的に分類して、再生スチレン系樹脂組成物の全体を特定している。
【0014】
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物に含有される成分をモルフォロジ―的に分類すると、当該再生スチレン系樹脂組成物に含まれる成分は、スチレン系重合体(例えば、上記スチレン系重合体(a-1)及び上記スチレン系重合体(b-1)を包含する)から構成されたポリマーマトリックス相と、当該ポリマーマトリックス相に(例えば、海島状に)分散されるゴム成分を含有するゴム状重合体粒子と、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の混入物(例えば、他の樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン樹脂)、無機物(例えば、金属粉又はシリカ)、顔料、付着物又は異物)と、に分類されうる。そのため、前記スチレン系重合体から構成されたポリマーマトリックス相を、本明細書では「ポリマー成分」とし、当該ポリマーマトリックス相に分散されるゴム状重合体粒子中のゴム成分(例えば、共役ジエン単量体単位)を、本明細書では「ゴム成分」とする。また、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の混入物は、後述の四酸化オスミウム処理を行った後においてもトルエンに不溶であり、かつその量が、四酸化オスミウム処理後のトルエン溶解処理前後においても一定であることが確認された。一方、ポリマー成分は、トルエンに可溶である。さらには、ゴム成分を含有するゴム状重合体粒子はトルエンに不溶であるが、後述の四酸化オスミウム処理を行うと、トルエンに可溶になることが確認された。なお、前記ゴム状重合体粒子内に内包されるポリマー相(例えば、コアシェル構造又はサラミ構造の前記ゴム状重合体粒子中のポリマー相)及び前記ゴム状重合体粒子の表面におけるスチレン系単量体を有するグラフトポリマー鎖(スチレン系重合体)の合計を、本明細書では「オクルード成分」とする。そして、本明細書では便宜上、「ポリマー成分」は、スチレン系重合体から構成され、かつ四酸化オスミウム処理を行う前の再生スチレン系樹脂組成物中のトルエンに可溶な成分とする。一方、「オクルード成分」は、スチレン系重合体から構成され、かつ四酸化オスミウム処理を行う前の再生スチレン系樹脂組成物中のトルエンに不溶な成分から、前記トルエンに不溶な成分に対して四酸化オスミウム処理を行った後のトルエン不溶分(=四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分)及び「ゴム成分」の合計量を引いた成分とする。また、本明細書における「四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分」とは、再生スチレン系樹脂組成物又はリサイクルポリスチレン系樹脂(A)をトルエン溶解処理して、トルエンに可溶な成分と、トルエンに不溶な成分とに分けた後、前記トルエンに不溶な成分に対して四酸化オスミウム処理を行って炭素-炭素二重結合を切断し、かつさらにトルエン溶解処理して、四酸化オスミウム処理後のトルエンに可溶な成分と、四酸化オスミウム処理後のトルエンに不溶な成分とに分けたうち、前記四酸化オスミウム処理後のトルエンに不溶な成分を「四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分」と称する。
そして、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の混入物の大きさが所定の粒度分布を示すと、割れの起点になりにくいことを見出し、後述の式(1)の関係式を規定した。
以上のことから、本開示の再生スチレン系樹脂組成物は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)及びヴァージン材としてスチレン系樹脂(B)を含有し、前記再生スチレン系樹脂組成物の総量に対して、ポリマー成分65質量%~90質量%及びゴム成分7質量%超含み、
前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分の含有量が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して5質量%以下である。
また、前記再生スチレン系樹脂組成物をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解分散させた組成物分散液中の分散質が以下の式(1):
[数2]
0<(|d84%-d16%|)/2<2 (1)
(上記式中、d84%は、レーザー回折法により測定した前記分散質の粒子径の積分分布曲線における積算値84%径を表し、d16%は、レーザー回折法により測定した前記分散質の粒子径の積分分布曲線における積算値16%径を表す。)を満たす。
これにより、環境負荷を低減し、かつ機械強度に優れた再生スチレン系樹脂組成物を提供することができる。
【0015】
また、本実施形態の好ましい再生スチレン系樹脂組成物は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ヴァージン材としてスチレン系樹脂(B)とを含有し、四酸化オスミウム処理前のトルエン可溶分であるポリマー成分と、四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分であり、かつ四酸化オスミウム処理後のトルエン可溶分であるゴム状重合体粒子と、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(例えば、上記混入物)とを含有する。そして、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、前記ポリマー成分の含有量は65~90質量%であり、かつ前記ゴム状重合体粒子中のゴム成分の含有量は7質量%超である。さらには、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(例えば、上記混入物)の含有量が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して5質量%以下であり、上記式(1)の関係を満たす。
【0016】
本開示の再生スチレン系樹脂組成物の別の態様は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)及びスチレン系樹脂(B)を含有し、
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)及び前記スチレン系樹脂(B)のポリマーマトリックス部(b1)を含むポリマー成分が、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、65~90質量%と、
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)及び前記スチレン系樹脂(B)中の合計ゴム成分が、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、7質量%超と、
前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分の含有量が、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して5質量%以下であり、上記式(1)を満たす再生スチレン系樹脂組成物であることが好ましい。
本実施形態において、スチレン系樹脂(B)は、ゴム状重合体粒子(b-2)をドメイン相及びスチレン系重合体(b-1)をポリマーマトリックス相として含有する、スチレン系樹脂(B)を、ヴァージン材として再生スチレン系樹脂組成物に配合してもよい。
また、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)又はヴァージン材としてのスチレン系樹脂(B)の少なくとも一方にゴム状重合体粒子を含有する。
すなわち、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)としては、使用済のポリスチレン、使用済のゴム変性ポリスチレン系樹脂又はスチレン系共重合樹脂(例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂)のいずれかが挙げられる。そのため、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)が使用済のゴム変性ポリスチレン系樹脂である場合、換言すると、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)にゴム状重合体粒子(a-2)を含有する場合、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)及びゴム状重合体粒子(a-2)を含有する。一方、スチレン系樹脂(B)に、ゴム状重合体粒子(b-2)を含有する場合、当該スチレン系樹脂(B)は、後述のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)になりうる。
【0017】
<積分分布曲線>
本実施形態において、再生スチレン系樹脂組成物をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解分散させた当該再生スチレン系樹脂組成物分散液中の分散質が以下の式(1):
[数3]
0<(|d84%-d16%|)/2<2 (1)
(上記式中、d84%は、レーザー回折法により測定した前記分散質の粒子径の積分分布曲線における積算値84%径を表し、d16%は、レーザー回折法により測定した前記分散質の粒子径の積分分布曲線における積算値16%径を表す。)を満たす。
前記分散質は、再生スチレン系樹脂組成物中に含まれるリサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(例えば、上記混入物)及び再生スチレン系樹脂組成物中の全ゴム状重合体粒子から構成される。そして、当該分散質が、分散質の粒子径分布を積分した積分分布曲線において、頻度(%)の積算値(以下、積算値と称する)が16%の16%径(d16%)と、頻度の積算値が84%の84%径(d84%)との差(以下、d84%-d16%と称する)の絶対値を2で割った値が、0超2未満である。これにより、優れた機械的特性を奏する。その理由の詳細は不明であるが、分散質として含まれるリサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の四酸化オスミウム処理後のトルエンに不溶な成分の粒子の大きさが、比較的小さいものが多く含まれるため、割れの起点になりにくいと考えられる。
【0018】
レーザー回折法は、球形と仮定した粒子によるレーザー光の前方回折光度の角度分布が、前記粒子の粒径の関数になることを利用する粒度測定装置に用いられている。より具体的には、測定対象物を球形と仮定した粒子を分散させた懸濁液の流路に対して、レーザー光等の単色光を投射し、そのレーザー光を横切って次々に通過する測定対象の前記粒子の回折光をレンズ系により平面波にし、回転スリットを通して前記平面波の半径方向の光強度分布を光検出器に供給し、当該光検出器の検出出力を表示して前記粒子の粒径分布を算出する方法である。
そして、当該レーザー回折法により、横軸に球相当径を表示し、縦軸に頻度(%)を表示する、数基準又は体積基準の粒子径分布が得られる。本明細書では、体積基準を採用している。
そのため、本明細書において、「粒子径分布」とは、横軸に球相当径を示し、縦軸に頻度(%)(種々の球相当径を有する、分散質(=リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分及び再生スチレン系樹脂組成物中の全ゴム状重合体粒子)の体積分率(%))を示す場合における、前記分散質の粒子径分布をいう。
本明細書において、「積分分布曲線」とは、横軸に球相当径を示し、縦軸に前記頻度(%)の積算値を表示した場合における、分散質の球相当径を積算した曲線をいう。また、積分分布曲線は、前記粒子径分布を積分した関数である。
なお、体積分率は、粒子径の測定の際に得られた分散質を球体とみなしたときの体積の割合を示したものである。
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、分散質は、当該分散質の粒子径分布を積分した積分分布曲線(数基準の粒子径分布)において、頻度(%)の積算値(以下、積算値と称する)が16%の16%径(d16%)と、頻度の積算値が84%の84%径(d84%)との差の絶対値(以下、d84%-d16%と称する)の1/2が、0超2μm未満であり、好ましくは0.1μm以上1.8μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上1.6μm以下であり、0.3μm以上1.5μm以下であることがさらに好ましい。
また、分散質は、当該分散質の粒子径分布を積分した積分分布曲線(体積基準の粒子径分布)において、頻度(%)の積算値(以下、積算値と称する)が16%の16%径(d16%)と、頻度の積算値が84%の84%径(d84%)との差の絶対値(以下、d84%-d16%と称する)の1/2が、0超2μm未満であり、好ましくは0.4μm以上1.9μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上1.8μm以下であり、0.6μm以上1.7μm以下であることがさらに好ましい。
84%-d16%の絶対値の1/2が、0超2μm未満にコントロールする手段としては、リサイクルスチレン系樹脂(A)及びスチレン系樹脂(B)を配合(混合)した後、スクリーンメッシュを通過するメッシュによる篩をかける手段、リサイクルスチレン系樹脂(A)を粉砕機により解砕又は粉砕する手段、あるいは粉砕機により解砕又は粉砕したリサイクルスチレン系樹脂(A)を使用する手段等が挙げられる。当該粉砕機としては、例えば、ボールミル(例えば、転動ボールミル)、ローラーミル、遊星ミル、撹拌ミル等が挙げられる。
【0019】
本実施形態の分散質の積分分布曲線(数基準の粒子径分布)において、(縦軸の)積算値が84%の84%径(d84%)としては、0.5μm以上6.0μm以下が好ましく、0.6μm以上5.5μm以下がより好ましく、0.7μm以上5.0μm以下がさらに好ましい。
本実施形態の分散質の積分分布曲線(体積基準の粒子径分布)において、(縦軸の)積算値が84%の84%径(d84%)としては、1.0μm以上8.0μm以下が好ましく、1.2μm以上7.5μm以下がより好ましく、1.4μm以上7.0μm以下がさらに好ましい。
本実施形態の分散質の積分分布曲線(数基準の粒子径分布)において、(縦軸の)積算値が16%の16%径(d16%)としては、0.05μm以上4.0μm以下が好ましく、0.1μm以上3.0μm以下がより好ましく、0.2μm以上2.0μm以下がさらに好ましい。
本実施形態の分散質の積分分布曲線(体積基準の粒子径分布)において、(縦軸の)積算値が16%の16%径(d16%)としては、0.1μm以上4.0μm以下が好ましく、0.2μm以上3.5μm以下がより好ましく、0.3μm以上3.0μm以下がさらに好ましい。
【0020】
以下、再生スチレン系樹脂組成物を構成する、ポリマー成分及びゴム成分を含むゴム状重合体粒子について説明する。
(ポリマー成分)
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物は、上述したようにポリマー成分を含有する。
そして、当該ポリマー成分は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)及びスチレン系樹脂(B)のポリマーマトリックス部(b1)を含有する。より詳細には、当該ポリマー成分は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)を構成するスチレン系重合体(a-1)及びスチレン系樹脂(B)のポリマーマトリックス部(b1)を構成するスチレン系重合体(b-1)を含有する。そのため、ポリマー成分は、スチレン系重合体(例えば、上記スチレン系重合体(a-1)及び上記スチレン系重合体(b-1)を包含する)から構成されている。当該スチレン系重合体(a-1)及び上記スチレン系重合体(b-1)は後述するが、いずれもスチレン系単量体単位と、必要により添加される(メタ)アクリル酸系単量体単位とを有する。
なお、前記スチレン系単量体単位を構成する単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。
当該(メタ)アクリル酸系単量体単位を構成する単量体としては、(メタ)アクリル酸単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体であることが好ましい。当該(メタ)アクリル酸単量体としては、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸(n-ブチル)、(メタ)アクリル酸(t-ブチル)、(メタ)アクリル酸(イソブチル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シベンジル、(メタ)アクリル酸(n-オクチル)、(メタ)アクリル酸(2-エチルヘキシル)、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、ポリマー成分の含有量の下限は、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上である。一方、ポリマー成分の含有量の上限は、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、90質量%以下、90質量%未満、87質量%以下、86質量%以下、85質量%以下、85質量%未満、84.8質量%以下、84質量%以下、83質量%以下、82質量%以下、81質量%以下である。
なお、ポリマー成分の含有量は、四酸化オスミウム処理前の再生スチレン系樹脂組成物全体から、四酸化オスミウム処理前の再生スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分を差し引くことにより算出する。より詳細には、四酸化オスミウム処理前の再生スチレン系樹脂組成物をトルエン溶解処理して、トルエンに可溶な成分とトルエンに不溶な成分とに分けた後、当該トルエンに不溶な成分である「四酸化オスミウム処理前の再生スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分」の質量を測定し、四酸化オスミウム処理前の再生スチレン系樹脂組成物の質量から、「四酸化オスミウム処理前の再生スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分」の質量を引いて、ポリマー成分の含有量を算出する。
また、本実施形態のポリマー成分は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)、すなわちスチレン系重合体(a-1)と、スチレン系樹脂(B)のポリマーマトリックス部(b1)、すなわちスチレン系重合体(b-1)とを含有する。
本実施形態のポリマー成分において、ポリマー成分全体に対して、スチレン系単量体単位は50~100質量%、(メタ)アクリル酸単量体単位は0~20質量%、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は0~50質量%であることが好ましく、スチレン系単量体単位は55~100質量%、(メタ)アクリル酸単量体単位は0~15質量%、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は0~45質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、ポリマー成分の重量平均分子量(Mw)は、12万~30万であることが好ましく、より好ましくは14万~28万、更に好ましくは15万~26万である。当該ポリマー成分の重量平均分子量が12万~30万である場合、衝撃強度と流動性とのバランスの実用性に優れる樹脂が得られる。前記重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定できる。
本明細書における「リサイクルポリスチレン系樹脂(A)」は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含有し、かつ前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分の含有量は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対して5質量%以下、好ましくは0超~5質量%、更に好ましくは0超~3質量%でありうる。
本明細書における「スチレン系重合体(b-1)及びポリマーマトリックス部(b1)」には、四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分及び四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を実質的には含有しておらず、スチレン系重合体(b-1)及びポリマーマトリックス部(b1)の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分の含有量は、スチレン系重合体(b-1)又はポリマーマトリックス部(b1)全体に対して0.01質量%未満、実質的には、検出限界以下でありうる。
【0021】
(ゴム成分を含むゴム状重合体粒子)
本実施形態のゴム成分は、上述したように、ゴム成分を含むゴム状重合体粒子として再生スチレン系樹脂組成物中に含有される。
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、再生スチレン系樹脂組成物中に含まれる全ゴム状重合体粒子(後述のゴム状重合体粒子(a-2)及び(b-2)の総称)の含有量(ゲル%)の上限は、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、30質量%以下、30%未満、29質量%以下、28質量%以下、27質量%以下、26質量%以下、25質量%以下、24質量%以下である。一方、全ゴム状重合体粒子の含有量の下限は、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、12質量%超、13質量%以上、14質量%以上、15質量%以上、16質量%以上、17質量%以上、18質量%以上である。
全ゴム状重合体粒子の含有量が上記範囲であると、機械的特性の向上効果を奏する。
なお、全ゴム状重合体粒子の含有量は、後述のトルエン不溶分の算出方法を用いて、[再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対するトルエン不溶分]から[再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対するオスミウム処理後のトルエン不溶分]を引いた値として算出する。
【0022】
本実施形態において、四酸化オスミウム処理前のゴム成分(例えば、ゴム状重合体粒子(a-2)及びゴム状重合体粒子(b-2)中の共役ジエン単量体量の合計)の含有量の上限は、再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、20質量%以下、19質量%以下、18質量%以下、17質量%以下、16質量%以下、15質量%以下が好ましい。
本実施形態において、四酸化オスミウム処理前のゴム成分(ゴム状重合体粒子(a-2)中の共役ジエン単量体単位量及びゴム状重合体粒子(b-2)中の共役ジエン単量体単位量の合計)の含有量の下限は、再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、7質量%以上、7.2質量%以上、7.4質量%以上、7.6質量%以上、8.0質量%以上が好ましい。なお、ゴム成分の含有量は、後述の実施例の欄に記載の熱分解GC/MSによりブタジエンの含有量として算出する。
【0023】
本実施形態のゴム成分の態様は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)がゴム状重合体粒子(a-2)を含有しない場合は、再生スチレン系樹脂組成物のゴム成分は、ゴム状重合体粒子(b-2)中の共役ジエン単量体単位になる。一方、スチレン系樹脂(B)がゴム状重合体粒子(b-2)を含有しない場合は、再生スチレン系樹脂組成物のゴム成分は、ゴム状重合体粒子(a-2)中の共役ジエン単量体単位になる。そして、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)がゴム状重合体粒子(a-2)を含有し、かつスチレン系樹脂(B)がゴム状重合体粒子(b-2)を含有する場合は、再生スチレン系樹脂組成物のゴム成分は、ゴム状重合体粒子(a-2)中の共役ジエン単量体単位及びゴム状重合体粒子(b-2)中の共役ジエン単量体単位の合計になる。
【0024】
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物中に含まれる、全ゴム状重合体粒子及び四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含む粒状物全体の平均粒子径は、耐衝撃性の観点から、0.4~4.5μmであることが好ましく、更に好ましくは0.5~4.0μmである。
また、再生スチレン系樹脂組成物中に含まれる前記粒状物全体の平均粒子径の測定方法は、後述の実施例の欄に記載のレーザー回折法により算出される。
当該全ゴム状重合体粒子の平均粒子径としては、再生スチレン系樹脂組成物中に含まれるゴム状重合体粒子の全体の平均粒子径を表し、例えば、ゴム状重合体粒子(a-2)及びゴム状重合体粒子(b-2)の合計の粒子の平均粒子径を表す。上記粒状物の平均粒子径・含有量であると耐衝撃性と剛性とのバランスよく向上する。
【0025】
<トルエン不溶分(=トルエンに不溶な成分)>
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、「トルエン不溶分」とは、再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルスチレン系樹脂(A)等の測定対象物1gをトルエン20mlに加えて23℃で2時間振とうした後、当該トルエンに未溶解の成分をいう。また、測定対象物1gをトルエン20mlに加えて23℃で2時間振とうする処理をトルエン溶解処理とも称する。
そして、「四酸化オスミウム処理前の再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルスチレン系樹脂(A)」とは、四酸化オスミウム処理を行っていない再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルスチレン系樹脂(A)をいう。したがって、四酸化オスミウム処理前の再生スチレン系樹脂組成物あるいは当該リサイクルスチレン系樹脂(A)中に存在するトルエン不溶分には、スチレン系樹脂(B)(例えば、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2))に含有されるゴム状重合体粒子(b-2)、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の成分(前記ゴム状重合体粒子(b-2)以外のゴム(例えば、ゴム状重合体粒子(a-2))、金属、他の樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン樹脂)、顔料、付着物又は異物)等が含まれている。
一方、「四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)」とは、四酸化オスミウム処理前のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に対して、四酸化オスミウム処理を行った四酸化オスミウム処理済のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に残存するトルエン不溶分を含む使用済のポリスチレン系樹脂をいう。
そして、四酸化オスミウム処理後の再生スチレン系樹脂組成物あるいは四酸化オスミウム処理後のリサイクルスチレン系樹脂(A)におけるトルエン不溶分には、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の成分(他の樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン樹脂)、無機物(例えば、金属粉又はシリカ)、顔料、付着物又は異物)が含まれている。
未使用のスチレン系単量体単位を含むヴァージン材のスチレン系樹脂(例えば、未使用の樹脂であるスチレン系樹脂(B)など)を四酸化オスミウム処理した後、トルエン不溶分の量を測定すると、当該ヴァージン材には実質的にトルエン不溶分が含まれていないことが確認された。したがって、ヴァージン材であるスチレン系樹脂(B)を四酸化オスミウム処理した四酸化オスミウム処理後のスチレン系ヴァージン材に含まれるトルエン不溶分の含有量は、組成物あるいはヴァージン材全体に対して、0.01質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以下であることがより好ましく、0.0001質量%以下、検出下限以下であることがさらに好ましい。
【0026】
<トルエン不溶分の測定方法>
本実施形態において、再生スチレン系樹脂組成物、リサイクルスチレン系樹脂(A)及びスチレン系樹脂(B)の四酸化オスミウム処理前及び後におけるトルエン不溶分の量の測定方法は、以下の通りである。沈殿管に測定対象物1g(W1)を精秤し、トルエン20mLを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機(佐久間製作所社製、SS-2050A ローター:6B-N6L)にて温度4℃、回転数20000rpm、遠心加速度45100×Gで60分間遠心分離した。沈澱管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。
沈殿管に再度トルエン20mLを加え23℃で2時間振とう後、あらかじめ重量を測定しておいたろ紙(W2)を用いてろ過を行い、ろ紙上の不溶分をトルエンで繰り返し洗浄した後、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケーター内で室温まで冷却後、ろ紙の質量を精秤(W3)し、ろ過前のろ紙との質量の差分W4を求め、下式でトルエン不溶分を計算した。
トルエン不溶分(%)=W4/W1×100
【0027】
<四酸化オスミウム処理>
本実施形態における四酸化オスミウム処理は、アルケン基等の炭素-炭素不飽和結合に対して二つのヒドロキシ基がシン付加する四酸化オスミウムによる酸化反応を利用した化学処理をいう。また、触媒量の四酸化オスミウム及び酸化剤をアルケン基等の炭素-炭素不飽和結合を有する化合物(例えば、ゴム成分やトルエン不溶分)に加えて、ジオールへと変換した後、四酸化オスミウムとあわせて添加しうる過酸化物によりアルケン基等の炭素-炭素不飽和結合を切断することができる。そのため、再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に対して四酸化オスミウム処理を行うと、当該再生スチレン系樹脂組成物又はリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に含まれるゴム成分(共役ジエン構造)が溶媒(例えば、トルエン)に対して可溶化し、再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に含まれるリサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の混入物(他の樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン樹脂)、無機物(例えば、金属粉又はシリカ)、顔料、付着物又は異物)が残留することが確認された。
以上のことから、本明細書では、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)を再利用のため回収した際に混入されているリサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の混入物を、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分として規定している。
なお、後述のスチレン系樹脂(B)がゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)である場合、当該ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)に対して同様の四酸化オスミウム処理を行うと、四酸化オスミウム処理によりゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)のゴム成分は全て分解するため、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)中に含まれる四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分は実質的に存在しない。
本実施形態における四酸化オスミウム処理は、再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に含まれるゴム成分(共役ジエン構造)がトルエンに対して可溶化する条件であれば特に制限されることはないが、例えば、以下の手順で行うことが好ましい。
本実施形態における四酸化オスミウム処理は、四酸化オスミウム分解剤を調製する工程(I)と、当該四酸化オスミウム分解剤を再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルポリスチレン系樹脂(A)のトルエン不溶分に接触させる工程(II)とを有することが好ましい。
前記工程(I)としては、酸化オスミウム(VIII)30~500mg(例えば、
100mg)と、t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(濃度40~80質量%、例えば70質量%)50~1,400g(例えば、200g)と、低級アルコール(例えば、t-ブチルアルコール)90~1,500ml(例えば、300ml)とを混合し、四酸化オスミウム分解剤とすることが好ましい。
前記工程(II)としては、上記回収したトルエン不溶分を有機溶媒(例えば、クロロホルム)に溶解したトルエン不溶分含有溶液を調製した後、四酸化オスミウム分解剤を当該トルエン不溶分含有溶液に添加して、70~90℃(例えば、90℃の温水バス中)で10~30分(例えば、12分間)還流下において、前記四酸化オスミウム分解剤と前記トルエン不溶分とを接触させることが好ましい。
当該工程(II)により、トルエン不溶分に含まれるアルケン等の不飽和結合の分解処理を行った。
上記工程(II)の後、分解処理後の固形分及び液分を回収する回収工程(III)を設けてもよい。当該回収工程(III)の一例としては、前記四酸化オスミウム分解剤を添加したトルエン不溶分含有溶液を冷却した後、当該溶液にメタノールを撹拌しながら加えて、前記メタノール添加によるメタノール不溶分を沈殿させる沈殿工程(IV)と、そして、ろ紙により前記メタノール不溶分と液分とを分離し、前記メタノール不溶分である回収物をトルエンで繰り返し洗浄し、ろ紙上に残ったものをトルエン不溶分として回収する洗浄工程(V)とを有することが好ましい。
【0028】
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、四酸化オスミウム処理した後の再生スチレン系樹脂組成物中に含まれるトルエン不溶分が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して5質量%以下であり、好ましくは0.0001~4質量%、より好ましくは0.0001~3質量%でありうる。
四酸化オスミウム処理した後の再生スチレン系樹脂組成物中に含まれるトルエン不溶分が5質量%以下の範囲であると、衝撃の観点で好ましい。特に、四酸化オスミウム処理した後の再生スチレン系樹脂組成物中に含まれるトルエン不溶分が、0.0001~1質量%の範囲であると、外観ならびに各機械物性の観点で好ましい。
【0029】
(オクルード成分)
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物又はゴム状重合体粒子は、オクルード成分を含有することが好ましい。そして、本実施形態において、再生スチレン系樹脂組成物中に含まれる全ゴム状重合体粒子(後述のゴム状重合体粒子(a-2)及び(b-2)の総称)のオクルード成分は、再生スチレン系樹脂組成物中に含まれる全ゴム状重合体粒子内に内包されるポリマー相(例えば、コアシェル構造又はサラミ構造の前記ゴム状重合体粒子中のポリマー相)及び前記ゴム状重合体粒子の表面におけるスチレン系単量体を有するグラフトポリマー鎖(スチレン系重合体)の合計である。そのため、前記オクルード成分は、スチレン系重合体から構成され、かつ四酸化オスミウム処理を行う前の再生スチレン系樹脂組成物中のトルエンに不溶な成分から、前記トルエンに不溶な成分に対して四酸化オスミウム処理を行った後のトルエン不溶分(=四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分)及び「ゴム成分」の合計量を引いた成分とする。
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物におけるオクルード成分の含有量の上限は、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、25質量%以下、25%未満、24質量%以下、23質量%以下、22質量%以下、21質量%以下、20質量%以下であることが好ましい。一方、オクルード成分の含有量の下限は、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、5質量%以上、5%超、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上であることが好ましい。
本実施形態のゴム状重合体粒子(a-2)の好ましい形態は、ゴム状重合体(a)内にスチレン系重合体(a-1)を構成する重合体を含む相が内包された内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、並びに表面にスチレン系重合体(a-1)を構成する重合体がグラフトされた表面グラフト化粒子でありうる。また、これらの形態を複合的に備えてもよい。
本実施形態のゴム状重合体粒子(b-2)の好ましい形態は、ゴム状重合体(b)内にスチレン系重合体(b-1)を構成する重合体を含む相が内包された内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、並びに表面にスチレン系重合体(b-1)を構成する重合体がグラフトされた表面グラフト化粒子でありうる。また、これらの形態を複合的に備えてもよい。
本実施形態において、全ゴム状重合体粒子中に占めるオクルード成分の含有量の上限は、全ゴム状重合体粒子の総量に対して、85質量%以下、85%未満、80質量%以下、78質量%以下、76質量%以下、74質量%以下、72質量%以下であることが好ましい。一方、全ゴム状重合体粒子中に占めるオクルード成分の含有量の下限は、全ゴム状重合体粒子の総量に対して、30質量%以上、30%超、35質量%以上、38質量%以上、40質量%以上、42質量%以上、45質量%以上であることが好ましい。
【0030】
以下、本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
(リサイクルポリスチレン系樹脂(A))
本実施形態のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、使用済のポリスチレン系樹脂であり、いわゆる廃棄されたポリスチレン系樹脂の回収物でありうる。より詳細には、当該リサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、スチレン系樹脂を含む製品の生産工程で生じる端材、スチレン系樹脂を含む製品の不良品、スチレン系樹脂を含む売れ残り品、品質保証期間を経過したスチレン系樹脂及び出荷前に廃棄されたスチレン系樹脂を回収して再利用した材料(プレコンシューマー材料)であっても、あるいは、一度市場に出荷され、消費者による使用が終了した後に回収して再利用する材料(ポストコンシューマー材料)であってもよい。
そして、本実施形態のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含有する。当該リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分の含有量は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対して、10質量%以下であり、好ましくは0質量%超10質量%以下、より好ましくは0質量%以上9質量%以下、さらに好ましくは0質量%以上8質量%以下である。
本開示に使用可能なリサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対してスチレン系単量体単位を70質量%以上含有し、かつ四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分の含有量が、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対して5質量%以下であることが好ましい。
本開示の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、ポリスチレン、スチレン系共重合樹脂、並びにスチレン系重合体(a-1)から構成されるポリマーマトリックス部(a1)及びゴム状重合体(a)の粒子(=ゴム状重合体粒子(a-2))から構成されるドメイン部(a2)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂ならなる群から選択される1種又は2種以上を含むことが好ましい。
なお、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)に含まれる、上記ポリスチレン、上記スチレン系共重合樹脂及び上記ゴム変性ポリスチレン系樹脂の物性及びポリマー組成は、後述のスチレン系重合体(B1)、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)の物性及びポリマー組成の好ましい範囲と同様であるため、上記ポリスチレン、上記スチレン系共重合樹脂及び上記ゴム変性ポリスチレン系樹脂の物性及びポリマー組成の好ましい範囲を援用できる。
【0031】
また、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)には、使用済み家電製品等から回収されたポリスチレン系樹脂も含まれる。当該ポリスチレン系樹脂にスチレン系エラストマー等の公知の樹脂やタルク、マイカ、ワラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレイ、アルミナ、シリカ、硫酸カルシウム、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、セルロース、けい砂、けし石、カーボンブラック、酸化チタン、水酸化マグネシウム、アスベスト、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、水酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸ソーダ、ベントナイト、黒鉛等の無機充填材を含有するものも含まれる。このようなリサイクルポリスチレン系樹脂(A)には、一般にリサイクルポリスチレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~10重量部程度の無機充填材が含有されていることが多い。
本実施形態において、四酸化オスミウム処理前のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、10万~40万であることが好ましく、更に好ましくは12万~38万である。重量平均分子量が15万~35万である場合、衝撃強度と流動性とのバランスの実用性に優れる樹脂が得られる。
重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定できる。
本実施形態において、四酸化オスミウム処理前のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)がゴム状重合体粒子(a-2)を含む場合、当該ゴム状重合体粒子(a-2)の内側にスチレン系単量体より得られるスチレン単量体単位を含有する樹脂若しくはポリスチレン系重合体(ポリスチレン及び/又はポリスチレン-(メタ)アクリル酸系)を内包してもよく、及び/又は、当該ゴム状重合体粒子(a-2)の表面にスチレン単量体単位を含有する樹脂若しくはポリスチレン系重合体がグラフトされたものであってよい。より詳細には、本実施形態におけるゴム状重合体粒子(a-2)は、ゴム状重合体(a)を含有する粒子体であればよい。したがって、ゴム状重合体粒子(a-2)の形態は、ゴム状重合体(a)からなる中実粒子、ゴム状重合体(a)からなる中空粒子、ゴム状重合体(a)内にポリスチレン系重合体を含む相が内包された内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、並びに表面にポリスチレン系重合体がグラフトされた表面グラフト化粒子を含む。また、これらの形態を複合的に備えてもよい。
本実施形態のゴム状重合体(a)としては、共役ジエン構造を有していればよい。そのため、当該ゴム状重合体(a)は、共役ジエン単量体単位を有する共役ジエン系重合体であり、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等のゴム成分を使用できる。
【0032】
本実施形態の四酸化オスミウム処理前のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体粒子(a-2)の平均粒子径は、耐衝撃性の観点から、0.1~4.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.3~3.8μmである。
また、四酸化オスミウム処理前のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体粒子(a-2)の平均粒子径は、ゴム状重合体粒子(b-2)の平均粒子径の方法と同様に、後述する電子顕微鏡写真により測定することができる。なお、上記のレーザー回折法による平均粒子径の測定方法では、その測定原理及び混入物の存在から、樹脂全体又は組成物全体における、ゴム状重合体粒子(a-2)又はゴム状重合体粒子(b-2)の各平均粒子径の値を算出し難い。
なお、ゴム状重合体粒子(a-2)の好ましい形態としては、下記のゴム状重合体粒子(b-2)の形態を適用することができる。
【0033】
<ポリマーマトリックス部(a1)>
本実施形態のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)がゴム状重合体粒子(a-2)を含む場合、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分、ポリマーマトリックス部(a1)及びゴム状重合体粒子(a-2)から構成されることが好ましい。一方、本実施形態のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)がゴム状重合体粒子(a-2)を含まない場合、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分及びポリマーマトリックス部(a1)から構成される。なお、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)がゴム状重合体粒子(a-2)を含まない場合、後述のスチレン系樹脂(B)はゴム状重合体粒子(b-2)を含有する。
本実施形態のポリマーマトリックス部(a1)は、スチレン系重合体(a-1)を主成分として構成される。当該スチレン系重合体(a-1)は、スチレン系単量体単独重合体(=ポリスチレン)、スチレン系単量体単位と、後述の(メタ)アクリル酸系単量体単位からなる群から選ばれる単量体単位1種以上とを含むスチレン系共重合樹脂、又はスチレン系単量体単独重合体とスチレン系共重合樹脂との混合物でありうる。
なお、本明細書における「主成分として構成される」とは、85質量%以上含有することをいい、例えば、「ポリマーマトリックス部(a1)は、スチレン系重合体(a-1)を主成分として構成される」とは、ポリマーマトリックス部(a1)の総量に対してスチレン系重合体(a-1)が85質量%以上占有することをいう。
前記スチレン系単量体単位を構成する単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。
当該(メタ)アクリル酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体であることが好ましい。当該(メタ)アクリル酸単量体としては、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸(n-ブチル)、(メタ)アクリル酸(t-ブチル)、(メタ)アクリル酸(イソブチル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シベンジル、(メタ)アクリル酸(n-オクチル)、(メタ)アクリル酸(2-エチルヘキシル)、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。
なお、本実施形態のポリマーマトリックス部(a1)の組成は、使用するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)によって変動するが、概ね、ポリマーマトリックス部(a1)全体に対して、スチレン系単量体単位は40~100質量%、(メタ)アクリル酸単量体単位は0~25質量%、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は0~50質量%であることが好ましい。
【0034】
<リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中のトルエン不溶分>
また、本実施形態のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分を含有する。当該リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中の四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分の含有量は、上記の混入物(他の樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン樹脂)、無機物(例えば、金属粉又はシリカ)、顔料、付着物又は異物)及び必要により配合されているゴム状重合体粒子(a-2)が含まれる。
リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中の四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分の含有量は、使用するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)によって変動するが、概ね、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対して、好ましくは0超~35質量%であり、より好ましくは0超~30質量%であり、さらに好ましくは0超~25質量%であり、よりさらに好ましくは0超~20質量%である。別の形態としては、四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分の含有量は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対して、21.3質量%以上35質量%以下であることが好ましく、22質量%以上32質量%以下であることがより好ましい。
そのため、ポリマーマトリックス部(a1)の含有量は、概ね、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)から前記四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分を除いた値でありうる。
本実施形態の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含むリサイクルポリスチレン系樹脂(A)の含有量の上限は特に限定されるものではないが、再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、99質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下が好ましい。
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)の含有量が70質量%以下であると、より優れた耐衝撃性を発揮できる。
一方、本実施形態の四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分を含むリサイクルポリスチレン系樹脂(A)の含有量の下限は、再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、1質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上が好ましい。
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)の含有量が30質量%以上であると、より優れた環境負荷低減を発揮できる。前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)の含有量の上限及び下限はそれぞれ任意に組み合わせできる。
【0035】
(スチレン系樹脂(B))
本開示の再生スチレン系樹脂組成物は、ヴァージン材としてスチレン系樹脂(B)を含有しうる。また、スチレン系樹脂(B)は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)とは異なり、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を実質的に含有しない。
前記スチレン系樹脂(B)は、スチレン系重合体(B1)、並びにスチレン系重合体(b-1)から構成されるポリマーマトリックス部(b1)及びゴム状重合体(b)の粒子(=ゴム状重合体粒子(b-2))から構成されるドメイン部(b2)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)からなる群から選択される1種又は2種以上を含むことが好ましい。以下、スチレン系樹脂(B)の好ましい形態である、スチレン系重合体(B1)及びゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)について説明する。
【0036】
<スチレン系重合体(B1)>
本実施形態において、スチレン系重合体(B1)はスチレン系単量体及び必要により配合される当該スチレン系単量体と重合可能なその他単量体とを重合した単独重合体又は共重合体であり、一般的に入手できるものを適宜選択して用いることができる。当該スチレン系重合体(B1)を構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。特に工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種又は2種以上使用することができる。
本実施形態のスチレン系重合体(B1)は、上記スチレン系単量体単位から構成されるポリスチレン、あるいはスチレン系共重合樹脂が好ましい。当該ポリスチレンは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記のスチレン系単量体単位以外の単量体単位を更に含有することを排除しないが、典型的にはスチレン系単量体単位からなる。
一方、前記スチレン系共重合樹脂は、スチレン系単量体単位と、当該スチレン系単量体と共重合可能なその他単量体(例えば、(メタ)アクリル酸系単量体単位)とを含む樹脂である。例えば、前記その他単量体が(メタ)アクリル酸系単量体単位である場合、本実施形態のスチレン系共重合樹脂は、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位の含有量は20~99質量%であり、より好ましくは30~90質量%であり、更により好ましくは40~80質量%である。
【0037】
なお、本実施形態における(メタ)アクリル酸系単量体は、(メタ)アクリル酸単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体を包含する。スチレン系共重合樹脂中のスチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量は0~16質量%であることが好ましく、より好ましくは2~14質量%であり、さらに好ましくは3~13質量%である。
本実施形態において、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは0~90質量%であり、より好ましくは10~80質量%であり、更により好ましくは20~70質量%であり、よりさらに好ましくは35~60質量%であり、特に好ましくは48~58質量%である。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量の下限を0質量%とすることにより、耐熱性の向上やコスト削減をすることができるが、上記の観点から(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量を0質量%超とすることもできる。
【0038】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂中の、スチレン系単量体単位(例えば、スチレン単量体単位)、(メタ)アクリル酸単量体単位(例えば、メタクリル酸単量体単位)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(例えば、メタクリル酸メチル単量体単位)の含有量は、それぞれ、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から求めることができる。
【0039】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂は、スチレン系単量体単位、その他の単量体の一例である、(メタ)アクリル酸系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位)以外の単量体単位を、本発明の効果を損なわない範囲で更に含有することを排除しない。しかし、本発明におけるスチレン系共重合樹脂は、典型的には、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸単量体単位、及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体単位から構成されることが好ましい。
【0040】
本実施形態のスチレン系共重合樹脂を構成する(メタ)アクリル酸単量体としては、特に限定されないが例えば、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。(メタ)アクリル酸単量体としては、耐熱性の向上効果が大きく、常温にて液状でハンドリング性に優れることからメタクリル酸が好ましい。これらの(メタ)アクリル酸系単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
本実施形態のスチレン系共重合樹脂を構成する、(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、特に限定されないが例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、耐熱性低下に対する影響が小さいことから(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。これらの(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
本実施形態の好適なスチレン系共重合樹脂としては、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレンーメタクリル酸ブチル共重合体、又はスチレン-無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
一般に、本発明におけるスチレン系共重合樹脂の好ましい一形態である、スチレン-アクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル共重合樹脂は、工業的規模ではほとんどの場合、ラジカル重合で生産されている。しかし、本実施形態において、脱揮工程のゲル化反応を抑制するために、種々のアルコールを重合系中に添加して重合を行なうことができる。
【0043】
本実施形態において、スチレン系重合体(B1)の重量平均分子量(Mw)は100,000~350,000であることが好ましく、より好ましくは120,000~300,000、さらに好ましくは140,000~240,000である。重量平均分子量(Mw)が100,000~350,000である場合、機械的強度と流動性とのバランスにより優れる樹脂が得られ、またゲル物の混入も少ない。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーを用い、標準ポリスレン換算で得られる値である。
【0044】
以下、本実施形態に用いることができるポリスチレン又はスチレン系共重合樹脂の重合方法の一例について説明する。
ポリスチレン又はスチレン系共重合樹脂を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。
ポリスチレン又はスチレン系共重合樹脂の重合に用いられる重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、なかでも、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0045】
ポリスチレン又はスチレン系共重合樹脂の重合に用いられる連鎖移動剤としては、例えば、α-メチルスチレンリニアダイマー、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等を挙げることができる。
【0046】
ポリスチレン又はスチレン系共重合樹脂の重合方法としては、必要に応じて、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。用いられる重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類に更に混合することができる。これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、25質量部を超えない範囲で使用するのが好ましい。全単量体100質量部に対して重合溶媒が25質量部を超えると、重合速度が著しく低下し、且つ得られる樹脂の機械的強度の低下が大きくなる傾向がある。重合前に、全単量体100質量部に対して5~20質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
【0047】
本実施形態において、ポリスチレン又はスチレン系共重合樹脂を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、一般的なスチレン系樹脂の重合方法に従って適宜選択すればよい。例えば、塊状重合を採用する場合には、完全混合型反応器を1基、又は複数基連結した重合装置を用いることができる。また脱揮工程についても特に制限はない。塊状重合を採用する場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。より詳細には、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。なお、脱揮処理の温度は、通常、190~280℃程度である。例えば、スチレン系共重合樹脂の重合においては、(メタ)アクリル酸単量体(例えば、メタクリル酸)と(メタ)アクリル酸エステル単量体(例えば、メタクリル酸メチル)との隣接による六員環酸無水物の形成を抑制する観点から、190~260℃がより好ましい。また脱揮処理の圧力は、通常0.13~4.0kPa程度であり、好ましくは0.13~3.0kPaであり、より好ましくは0.13~2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、及び揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0048】
<ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)>
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)は、ドメイン部(b2)を構成するゴム状重合体粒子(b-2)及びポリマーマトリックス部(b1)を構成するスチレン系重合体(b-1)を含有する。より詳細には、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)は、いわゆるHIPSであり、ポリマーマトリックス相としてのスチレン系重合体(b-1)中にゴム状重合体(b)の粒子(以下、ゴム状重合体粒子(b-2))が分散したものであり、ゴム状重合体(b)の存在下でスチレン系単量体を重合させることにより製造することができる。また、当該スチレン系重合体(b-1)としては、ポリスチレン系重合体(ポリスチレン及び/又はポリスチレン-(メタ)アクリル酸系重合体等で挙げられる上記スチレン系重合体(B1)と同様の重合体)などが挙げられる。
また、本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)としては、ヴァージン材、すなわち未使用であることが好ましい。
【0049】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)を構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、例えば、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。特に、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種若しくは2種以上使用することができる。なお、本実施形態において、ポリスチレンとは、前記スチレン系単量体を重合した単独重合体であり、一般的に入手できるものを適宜選択して用いることができる。
【0050】
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)のポリマーマトリックス相を構成するスチレン系重合体(b-1)又はゴム状重合体粒子(b-2)の一部に含まれるスチレン系重合体(b-1)は、上記スチレン系単量体から構成されるスチレン系単量体単位を必須に含有する重合体である。また、前記スチレン系重合体(b-1)は、上記スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体との共重合体であってもよい。そのため、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)のポリマーマトリックス相を構成するスチレン系重合体(b-1)又はゴム状重合体粒子(b-2)の一部に含まれるスチレン系重合体(b-1)を構成する単量体は、上記スチレン系単量体以外として(メタ)アクリル酸エステル単量体が挙げられる。当該(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸(n-ブチル)、(メタ)アクリル酸(t-ブチル)、(メタ)アクリル酸(イソブチル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シベンジル、(メタ)アクリル酸(n-オクチル)、(メタ)アクリル酸(2-エチルヘキシル)、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。
【0051】
上記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)のポリマーマトリックス相を構成するスチレン系重合体(b-1)は、ポリスチレン及びスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0052】
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)全体に対するスチレン系単量体単位の含有量は、37~98質量%であることが好ましく、49~96質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)全体に対する(メタ)アクリル酸系単量体単位の含有量は、0~63質量%であることが好ましく、0~51質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)全体に対する(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量は、0~3質量%であることが好ましく、0~1質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)全体に対する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、0~60質量%であることが好ましく、0~50質量%であることがより好ましい。
【0053】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)に含まれるゴム状重合体粒子(b-2)は、例えば、当該ゴム状重合体粒子(b-2)の内側に上記のスチレン系単量体より得られるスチレン単量体単位を含有する樹脂若しくはポリスチレン系重合体を内包してもよく、及び/又は、当該ゴム状重合体粒子(b-2)の表面にスチレン単量体単位を含有する樹脂若しくはポリスチレン系重合体がグラフトされたものであってよい。より詳細には、本実施形態におけるゴム状重合体粒子(b-2)は、ゴム状重合体(b)を含有する粒子体であればよい。したがって、ゴム状重合体粒子(b-2)の形態は、ゴム状重合体(b)からなる中実粒子、ゴム状重合体(b)からなる中空粒子、ゴム状重合体(b)内にスチレン系重合体(b-1)を構成する重合体を含む相が内包された内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、並びに表面にスチレン系重合体(b-1)を構成する重合体がグラフトされた表面グラフト化粒子を含む。また、これらの形態を複合的に備えてもよい。
なお、本明細書における「スチレン系単量体単位」とは、スチレン系単量体が重合された高分子を構成する繰返し単位を意味し、スチレン系単量体の重合反応又は架橋反応により、当該スチレン系単量体中の炭素-炭素二重結合が単結合(-C-C-)になった繰返し単位(又は構造単位)である。また、本明細書中のその他の「単量体単位」も同様の意味である。
【0054】
本実施形態のゴム状重合体(b)としては、共役ジエン構造を有していればよい。そのため、当該ゴム状重合体(b)は、共役ジエン単量体単位を有する共役ジエン系重合体であり、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等のゴム成分を使用できる。また、当該ゴム成分を含むゴム状重合体粒子(b-2)には、ポリスチレン及び/又はポリスチレン-(メタ)アクリル酸系重合体等のスチレン系重合体(b-1)を内包した形態を含んでも良い。なかでも、ゴム状重合体(b)は、ポリブタジエン又はスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体(b)は1種若しくは2種以上使用することができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
本実施形態のゴム状重合体粒子(b-2)を構成するゴム状重合体(b)が、共役ジエン構造を有するため、上記の四酸化オスミウム処理によりゴム状重合体粒子(b-2)をトルエン等の有機溶媒に可溶化することができる。
【0055】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)の例としては、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体)等が挙げられ、HIPS(高衝撃ポリスチレン)が特に好ましい。
ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)がHIPS系樹脂である場合、これらのゴム状重合体(b)の中で特に好ましいのは、シス1,4結合が90モル%以上で構成されるハイシスポリブタジエンである。該ハイシスポリブタジエンにおいては、ビニル1,2結合が6モル%以下で構成されることが好ましく、3モル%以下で構成されることが特に好ましい。
なお、上記ハイシスポリブタジエンの構成単位に関する異性体としてシス-1,4構造、トランス-1,4構造、又はビニル-1,2構造を有するものの含有率は、赤外分光光度計を用いて測定し、モレロ法によりデータ処理することにより算出できる。
また、上記ハイシスポリブタジエンは、公知の製造法、例えば有機アルミニウム化合物とコバルト又はニッケル化合物を含んだ触媒を用いて、1,3-ブタジエンを重合して容易に得ることができる。
本実施形態において、ゴム状重合体粒子(b-2)或いはゴム状重合体(b)に用いる材料としてアクリロニトリル単量体単位などの(メタ)アクリロニトリルを含む共役ジエン系重合体を使用する場合、(メタ)アクリロニトリル単量体単位の含有量は、再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、0.7質量%以下であることが特に好ましい。
【0056】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)中に含まれるゴム状重合体(b)の含有量は、当該ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)総量100質量%に対して、10~20質量%が好ましく、より好ましくは11~19質量%、更に好ましくは12~18質量%である。ゴム状重合体(b)の含有量が10質量%未満であると再生スチレン系樹脂の耐衝撃性が低下する虞がある。また、ゴム状重合体(b)の含有量が20質量%を超えると曲げクリープ特性が低下する虞がある。
なお本開示で、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)中に含まれるゴム状重合体(b)の含有量(いわゆる共役ジエン量(ポリブタジエン含量))は、熱分解ガスクロマトグラフイーを用いて算出される値である。
【0057】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)中に含まれるゴム状重合体粒子(b-2)の含有量(ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)中のトルエン不溶分)は、当該ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)総量100質量%に対して、15~35質量%が好ましい。
なお本開示で、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)中又は再生スチレン系樹脂組成物中に含まれるに含まれるゴム状重合体粒子(b-2)又は全ゴム状重合体粒子の含有量は、四酸化オスミウム処理前の前記樹脂(B)あるいは前記再生スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分に対応する。具体的には、以下の方法により算出している。
沈殿管に測定対象物1g(W1)を精秤し、トルエン20mLを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機(佐久間製作所社製、SS-2050A ローター:6B-N6L)にて温度4℃、回転数20000rpm、遠心加速度45100×Gで60分間遠心分離した。沈澱管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。トルエンを含んだ不溶分の質量を精秤し、この質量をW5とする。引き続き、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケーター内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤し、この質量をW6とする。そして、沈殿管内からトルエン不溶分を回収した
下記式により、トルエン不溶分及びトルエン不溶分の膨潤指数を求めた。
トルエン不溶分の膨潤指数=(W5/W6)
トルエン不溶分(%)=(W6/W1)×100
【0058】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)中に含まれるゴム状重合体粒子(b-2)の平均粒子径は、耐衝撃性の観点から、0.5~3.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.8~2.8μmである。別の観点から、0.55~3.2μmであることが好ましく、0.65~2.8μmであることがより好ましい。ゴム状重合体粒子(b-2)の平均粒子径が0.5μmより小さかったり、あるいは3.0μmより大きかったりすると衝撃強度や耐薬品性が不十分となったり、光沢が低下する虞がある。
【0059】
なお本開示で、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)中に含まれるゴム状重合体粒子(b-2)の平均粒子径は、以下の方法により測定することができる。
四酸化オスミウムで染色したゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)から厚さ75nmの超薄切片を作製し、電子顕微鏡を用いて倍率10000倍の写真を撮影する。当該写真中、黒く染色された粒子がゴム状重合体粒子(b-2)である。写真から、下記数式(N1):
[数4]
平均粒子径=ΣniDri /ΣniDri (N1)
(上記数式(N1)中、niは、粒子径Driのゴム状重合体(a)粒子の個数であり、粒子径Driは、写真中の粒子の面積から円相当径として算出した粒子径である。)
により平均粒子径を算出し、ゴム状重合体粒子(b-2)の平均粒子径とする。本測定は、写真を200dpiの解像度でスキャナーに取り込み、画像解析装置IP-1000(旭化成社製)の粒子解析ソフトを用いて測定する。
【0060】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)の還元粘度(これは、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)の分子量の指標となる)は、0.50~0.85dL/gの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.55~0.80dL/gの範囲である。0.50dL/gより小さいと衝撃強度が低下する虞があり、0.85dL/gを超えると流動性の低下により成形性が低下する虞がある。
なお本開示で、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)の還元粘度は、トルエン溶液中で30℃、濃度0.5g/dLの条件で測定される値である。
【0061】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)の製造方法は、特に制限されるものではないが、ゴム状重合体(b)の存在下、スチレン系単量体及び任意に添加される(メタ)アクリル酸エステル単量体(及び溶媒)を重合する塊状重合(若しくは溶液重合)、又は反応途中で懸濁重合に移行する塊状-懸濁重合、又はゴム状重合体(b)ラテックスの存在下、スチレン系単量体及び任意に添加される(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合する乳化グラフト重合にて製造することができる。塊状重合においては、ゴム状重合体(b)とスチレン系単量体及び任意に添加される(メタ)アクリル酸エステル単量体、並びに必要に応じて有機溶媒、有機過酸化物、及び/又は連鎖移動剤を添加した混合溶液を、完全混合型反応器又は槽型反応器と複数の槽型反応器とを直列に連結し構成される重合装置に連続的に供給することにより製造することができる。
【0062】
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)の200℃でのメルトフローレートは、好ましくは0.3~10.0g/10分、より好ましくは0.5~8.0g/10分、更に好ましくは0.7~7.0g/10分である。上記メルトフローレートが0.3~10.0g/10分の範囲であれば、リサイクルスチレン系樹脂(A)との混合性が良く、また機械的強度も良好である。本開示で、メルトフローレートは、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定される値である。
【0063】
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、スチレン系樹脂(B)の含有量は、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、5~90質量%であることが好ましく、より好ましくは10~85質量%、さらに好ましくは20~80質量%、よりさらに好ましくは25~75質量%、特に好ましくは30~70質量%でありうる。
【0064】
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物における、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)及びスチレン系樹脂(B)の合計含有量は、再生スチレン系樹脂組成物の総量に対して、70質量%超100質量%以下が好ましく、70質量%超100質量%未満が好ましく、75質量%以上99質量%以下が好ましい。
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物における、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)及び後述の任意の添加成分の合計含有量は、再生スチレン系樹脂組成物の総量に対して、72質量%以上100質量%以下が好ましく、75質量%超100質量%未満が好ましく、77質量%以上95質量%以下が好ましい。
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、スチレン系樹脂(B)としてスチレン系重合体(B1)を使用する場合、再生スチレン系樹脂組成物における、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)、スチレン系重合体(B1)、オスミウム処理後のトルエン不溶分、並びに後述の任意の添加剤の合計含有量は、再生スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは95.5質量%以上、より好ましくは96質量%以上占める。
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、スチレン系樹脂(B)としてゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)を使用する場合、再生スチレン系樹脂組成物における、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)、オスミウム処理後のトルエン不溶分、並びに後述の任意の添加剤の合計含有量は、再生スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは95.5質量%以上、より好ましくは96質量%以上占める。
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、ポリマー成分、ゴム成分、オスミウム処理後のトルエン不溶分、オクルード成分、及び後述の任意の添加剤の合計含有量は、再生スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは95.5質量%以上、より好ましくは96質量%以上占める。
以上が本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物の必須成分である。以下、本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物の任意成分である、添加成分について説明する。
【0065】
[任意の添加成分]
本実施形態において、上記リサイクルスチレン系樹脂(A)、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B2)又は任意成分を製造する際の回収工程の前後の任意の段階、又は再生スチレン系脂組成物を押出加工、成形加工する段階において、必要に応じ本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、流動パラフィン等の可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ヒンダートフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、各種染料や顔料、無機結晶核剤(酸化チタン、酸化スズ等の金属酸化物)、有機結晶核剤、蛍光増白剤、光拡散剤、選択波長吸収剤を添加してもよい。
本実施形態にかかる再生スチレン系脂組成物は、酸化防止剤、顔料、難燃剤、添加剤、鉱物油、植物油及び滑剤からなる群から選択される1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0066】
本実施形態の光安定剤は、自身に紫外線吸収能はないが、再生スチレン系樹脂系組成物が紫外線を吸収することで発生した光ラジカルを捕捉し、無害化することで、ラジカルによる組成物の劣化や着色を防ぐ機能を有することが好ましい。光安定剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができ、後述の紫外線吸収剤及び又は酸化防止剤を併用することで、より高い耐光性効果を発揮することができる。
本実施形態の光安定剤としては、ビス(1,2,2,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ウンデカンオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミン、ブチル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)などが挙げられ、具体的な製品名としては、ADEKA社製アデカスタブLA-52、アデカスタブLA-57、アデカスタブLA-63P、アデカスタブLA-68、アデカスタブLA-72、アデカスタブLA-77Y、アデカスタブLA-77G、アデカスタブLA-81、城北化学社製JF-90G、JF-95、BASFジャパン社製Chimassorb2020FDL、Chimassorb944FDL、Tinuvn622SFなどが挙げられる。
【0067】
本実施形態の紫外線吸収剤は、再生スチレン系樹脂組成物が吸収する紫外線を、当該再生スチレン系樹脂組成物に代わって吸収し、熱や化学エネルギーに変換することで、スチレン系樹脂組成物の紫外線吸収による光ラジカル発生を抑制し、樹脂の劣化や着色を抑制する機能を有する。
本実施形態の好ましい紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物が好ましい。
本実施形態の好ましい酸化防止剤として、例えばオクタデシル-3-(3,5-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(製品名としては例えば、BASFジャパン社製Irganox1076)などのヒンダートフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-ターシャリーブチルフェニル)フォスファイト(製品名としては例えば、BASFジャパン社製Irgafos168)などのリン系加工熱安定剤等を挙げることができる。これらの安定剤をそれぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて適宜用いてもよい。添加時期については、特に制限はなく、重合工程又は脱揮工程のいずれでもよい。また、押出機やミキサー等機械的装置で製品に安定剤を混合することもできる。
【0068】
本実施形態の光安定剤、紫外線吸収剤及び酸化防止剤の各含有量としては、再生スチレン系樹脂系組成物の総量に対して、0.001~2.0質量%であり、上限値としては1.8質量%以下、1.6質量%以下、1.4質量%以下、1.2質量%以下、1.0質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下の順で好ましく、下限値としては0.005質量%以上、0.010質量%以上、0.021質量%以上、0.051質量%以上、0.061質量%以上、0.071質量%以上、0.079質量%以上、0.089質量%以上、0.12質量%以上、0.17質量%以上の順で好ましい。前記含有量としては、上記の上限値、下限値の任意の組み合わせで選ぶことができる。
【0069】
本発明に係る再生スチレン系脂組成物は、さらに無機結晶核剤として金属又は金属酸化物を含有してもよい。本実施形態の再生スチレン系脂組成物において、金属酸化物(例えば、二酸化チタン)の含有量は、再生スチレン系脂組成物の総量100質量%に対して、0.07質量以上5.5質量%以下であることが好ましく、0.65質量%以上3.8質量%以下であることがより好ましく、1.2質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。また、別の態様としては、1.1質量%以上2.8質量%以下であることが好ましい。さらに別の態様としては、0.2質量%以上0.9質量%以下であることがさらに好ましい。
【0070】
尚、本実施形態の再生スチレン系脂組成物中の上記各種添加剤は、再生スチレン系脂組成物100質量%に対して10.0質量%以下であることが好ましく、5.5質量%以下であることがより好ましく、2.9質量%以下であることがさらに好ましく、1.5質量%以下であることがよりさらに好ましく、0.9質量%以下であることが特に好ましい。
【0071】
[再生スチレン系脂組成物の物性]
以下に本実施形態における再生スチレン系樹脂組成物の好ましい物性について述べる。
<ビカット軟化温度>
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は85℃以上であることが好ましく、より好ましくは86℃以上、より更に好ましくは88℃以上である。当該ビカット軟化温度を85℃以上とすることにより耐熱性に優れる成形品が得られる。本明細書におけるビカット軟化温度は、ISO306に準拠して、5kg荷重、昇温速度50℃/hの条件で測定している。
【0072】
<シャルピー衝撃強さ>
本実施形態の再生スチレン系脂組成物のシャルピー衝撃強度は、5kJ/m以上であることが好ましく、より好ましくは7~20kJ/mである。5kJ/m未満であると、使用中に破損する懸念がある。尚、本開示で、シャルピー衝撃強度は、ISO 179に準拠して測定される値である。
【0073】
本実施形態の再生スチレン系脂組成物は、メルトマスフローレイトが、1.5g/10min以上であることが好ましく、2~18g/10minであることがより好ましい。メルトマスフローレイトが1.5g/10min以上であれば、押出成形時や真空成形時の成形性が良好である。上記メルトマスフローレイトは、各成分(A)~(B)のメルトマスフローレイト、並びにこれらの樹脂の混合比を調整することにより達成できる。尚、本開示で、メルトマスフローレイトは、ISO 1133に準拠して、温度200℃、49Nにて測定される値である。
【0074】
本実施形態において、四酸化オスミウム処理前の再生スチレン系脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、10万~35万であることが好ましく、更に好ましくは15万~25万である。重量平均分子量が15万~25万である場合、機械的強度に優れる樹脂が得られる。重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定できる。
【0075】
[再生スチレン系脂組成物の製造方法]
本実施形態において、再生スチレン系脂組成物の製造方法は、リサイクルスチレン系樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)、及び任意成分を配合、溶融、混練、造粒する方法は特に限定されず、一般的なスチレン樹脂の製造で常用されている方法を用いることができる。例えば、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサー等で配合(混合)した上記各成分をバンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー等を用いて溶融、混練し、必要によりスクリーンメッシュを通過するメッシュによる篩をかける工程を行い、ロータリーカッター、ファンカッター等で造粒することによって再生スチレン系脂組成物を得ることができる。溶融、混練における樹脂温度は180~240℃が好ましい。目標とする樹脂温度にするためには、押出機等のシリンダー温度は樹脂温度よりも10~20℃低い温度に設定することが好ましい。樹脂温度が180℃未満では混合が不十分となり好ましくない。一方、樹脂温度が240℃を超えると樹脂の熱分解が起こり好ましくない。
【0076】
[成形品]
本発明に係る再生スチレン系脂組成物の用途としては、インジェクションブロー成形、シート体(フィルムも含む)、射出成形、又は押出成形に供されることが好ましい。
【実施例0077】
次に本発明を実施例及び比較例により詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における樹脂及び成形品の分析、評価方法は、下記の通りである。
【0078】
[各樹脂及び樹脂組成物の特性評価]
(1)重量平均分子量の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂及び樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
測定機器:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM-H(内径4.6mm)を直列に2本接続
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ-H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過を行った。
注入量:10μL
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検出器:示差屈折率計
検量線の作成には東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F-850、F-450、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
【0079】
(2)メルトマスフローレート(MFR)の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂及び樹脂組成物のメルトマスフローレート(g/10分)を、ISO1133に準拠して、200℃、49Nの荷重条件にて測定した。
【0080】
(3)ビカット軟化温度の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂及び樹脂組成物のビカット軟化温度をISO306に準拠して測定した。荷重は50N、昇温速度は50℃/hとした。
【0081】
(4)各単量体単位の含有量、ポリマー成分及びゴム成分の含有量の測定
以下の条件にて熱分解GC/MSにて実施例及び比較例で調製した樹脂組成物中に含まれる各単量体単位の含有量の測定を行なった。
<測定条件>
熱分解ユニット
機器 :フロンティアラボ製 PY-3030D
加熱炉温度 :600℃
境界温度 :300℃
GC/MS
機器 :島津製作所製 GCMS-GP2020NX
カラム :Ultra Alloy-5
(長さ30m、膜厚0.25μm、径0.250mmφ)
カラム温度 :50℃に5分間保持、10℃/分で昇温、
100℃からは7℃/分で昇温、300℃で10分間保持。
注入口温度 :300℃
検出器温度 :300℃
スプリット比 :1/300
キャリアガス :ヘリウム
検出方法 :質量分析計(MSD)
サンプル量 :50μg
検出モード :スキャンモードまたはSIMモード
なお、各単量体ピークの検出に際し、ピークの重なりや、ピーク強度の飽和を避けるため、適宜サンプルの希釈率等の前処理や、使用するカラムや、検出条件を適宜調整してもよい。
【0082】
(5)レーザー回折法測定
ポリプロピレン製ディスポーサルカップに、実施例の再生スチレン系樹脂組成物及び比較例の樹脂組成物を20mgと、N,N-ジメチルホルムアミド20mLとを入れて、超音波振動を15分間かけて溶解・分散させた。振動させた状態で、サンプルの白濁液の一部を採取し、測定用セルに入れ、回転子で撹拌させながら、レーザー回折式粒径測定装置((株)堀場製作所製、LA-960V2)を用いて、前記再生スチレン系樹脂組成物又は前記樹脂組成物を含むN,N-ジメチルホルムアミド溶液の分散質の粒子径(d84%、d50%、d16%)及び積分分布曲線を求めた。このとき、サンプルの屈折率は1.6―0.00i、溶媒の屈折率を1.428とした。
本実施例では体積基準の粒子径分布を採用している。
例えば、実施例1の再生スチレン系樹脂組成物における体積基準の粒子径分布(d84%-d16%)は1.3であり、平均粒子径d50%は1.5μmだった。一方、実施例1の再生スチレン系樹脂組成物における個数基準の粒子径分布(d84%-d16%)は1.3であり、平均粒子径d50%は1.5μmだった。他の実施例においても、個数基準の方が平均粒子径は大きく、分布は狭くなる傾向を示した。
【0083】
(6)シャルピー衝撃強度の測定
シャルピー衝撃強度の測定に用いた試験片は、後述の「ISOダンベル試験片の製造方法」の欄に記載の方法で作製したISO金型タイプA試験片の中央平行部より切り出した規定寸法の短冊を用いた。試験はISO 179に準拠して、シャルピー衝撃強度(kJ/m)をノッチありで測定した。
【0084】
(7)引張破断伸び
実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物からISOダンベル試験片を作製して引張破断伸び(%)を、ISO527に準拠して測定した。
なお、前記ISOダンベル試験片の製造方法は、以下の通りである。
実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物を、射出成形機(EC60N、東芝機械社製)により、シリンダー温度230℃、金型温度45℃、射出圧力80MPa、射出速度26mm/sで成形して、ISO金型タイプAの試験片を得た。
【0085】
[実施例・比較例に使用した原料]
表1において実施例及び比較例で使用したリサイクルポリスチレン系樹脂(A)、ヴァージン材のスチレン系樹脂(B)及び添加剤は以下の通りである。
(リサイクルポリスチレン系樹脂(A))
樹脂(A1):廃ポリスチレン 分解処理後のトルエン不溶分;1.0質量%、粒子径分布1.4、Mw18.8万
樹脂(A2):廃ポリスチレン 分解処理後のトルエン不溶分;0.1質量%、粒子径分布0.7、Mw28.0万
樹脂(A3):廃ポリスチレン 分解処理後のトルエン不溶分;1.0質量%、粒子径分布0.9、Mw19.2万
樹脂(A4):廃ポリスチレン 分解処理後のトルエン不溶分;6.0質量%、粒子径分布1.5、Mw21.2万
樹脂(A5):廃ポリスチレン 分解処理後のトルエン不溶分;6.0質量%、粒子径分布5.4、Mw21.8万
樹脂(A6):廃ポリスチレン 分解処理後のトルエン不溶分;9.5質量%、粒子径分布9.1、Mw18.4万
樹脂(A7):廃ポリスチレン 分解処理後のトルエン不溶分;5.0質量%、粒子径分布1.2、Mw17.8万
上記のリサイクルポリスチレン系樹脂(A1)~(A7)の特性を、以下の表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
(ヴァージン材のスチレン系樹脂(B))
ヴァージン材のスチレン系樹脂(B)として以下の3種を使用した。
樹脂(B1-1)GPPS
樹脂(B2-1)HIPS ゴム状重合体含有量:15.0質量%(内共役ジエン量は9.75質量%)
樹脂(B2-2)HIPS ゴム状重合体含有量:12.25質量%
【0088】
<ヴァージン材の樹脂(B1-1)の製造>
スチレン89.5質量%、流動パラフィン2.0質量%、エチルベンゼン8.5質量%、を混合した重合液を、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器-1に、0.7リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を120℃/125℃/130℃に調整した。攪拌機の回転数は毎分50回転とした。反応器出口の反応率は30%であった。
続いて層流型反応器-1と直列に接続された、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器-2に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分20回転とし、温度は128℃/135℃/141℃に設定した。続いて攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器-3に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は151℃/155℃/160℃に設定した。
重合反応器(層流型反応器-3)から連続して排出される重合体溶液を真空ベントつき押出機で、10torrの減圧下、脱揮後ペレタイズした。押出機の温度は240℃に設定した。
【0089】
<ヴァージン材の樹脂(B2-1)の製造>
スチレン41.5質量%、メタクリル酸メチル34.9質量%、アクリル酸ブチル4.4質量%、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(旭化成製625A)10.0質量%、エチルベンゼン9.0質量%、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.01質量%、α-メチルスチレンダイマー0.15質量%、オクタデシル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.14質量%を混合溶解した重合液を、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器-1に、0.7リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を128℃/130℃/136℃に調整した。攪拌機の回転数は毎分50回転とした。反応器出口の反応率は40%であった。
続いて層流型反応器-1と直列に接続された、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器-2に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分20回転とし、温度は125℃/130℃/135℃に設定した。続いて攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器-3に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は134℃/139℃/144℃に設定した。
重合反応器(層流型反応器-3)から連続して排出される重合体溶液を真空ベントつき押出機で、10torrの減圧下、脱揮後ペレタイズした。押出機の温度は240℃に設定した。
【0090】
<ヴァージン材の樹脂(B2-2)の製造>
スチレン80.9質量%、ポリブタジエンゴム(宇部興産社製13HB)8.6質量%、エチルベンゼン10.5質量%、ジ-t-ブチルパーオキサイド0.015質量%、α-メチルスチレンダイマー0.03質量%、オクタデシル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.2質量%を混合溶解した重合液を、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器-1に、0.7リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を122℃/127℃/129℃に調整した。攪拌機の回転数は毎分200回転とした。反応器出口の反応率は34%であった。
続いて層流型反応器-1と直列に接続された、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器-2に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分20回転とし、温度は127℃/127℃/127℃に設定した。続いて攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器-3に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は129℃/129℃/129℃に設定した。
重合反応器(層流型反応器-3)から連続して排出される重合体溶液を真空ベントつき押出機で、10torrの減圧下、脱揮後ペレタイズした。押出機の温度は240℃に設定した。
上記で得られた、ヴァージン材の樹脂(B1-1)~(B2-2)の特性を、以下の表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
[実施例・比較例]
「実施例1~6の再生スチレン系樹脂組成物の製造方法」
上記の[実施例・比較例に使用した原料]の欄及び下記の表1及び表2に従い原料をそれぞれ調製した後、計量した原料をドラムタンブラーで配合し、二軸押出機(東芝機械株式会社製TEM-26SS)でシリンダー設定温度220℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練、溶融樹脂は押出機スクリュー先端とダイの間にあるブレーカープレートの上流側に設けたスクリーンメッシュを通過したのち、ダイより溶融ストランドとして抜き出した。溶融ストランドを水冷しロータリーカッターでストランドをカッティングすることにより、実施例1~6のペレット状の再生スチレン系樹脂組成物を得た。そして、上記の測定方法に従い、得られた実施例1~6の再生スチレン系樹脂組成物の物性の測定及び評価を行った。その結果を表3に示す。
【0093】
「比較例1~3の樹脂組成物の製造方法」
上記の[実施例・比較例に使用した原料]の欄及び下記の表1に従い、原料をそれぞれ調製した後、計量した原料をドラムタンブラーで配合し、二軸押出機(東芝機械株式会社製TEM-26SS)でシリンダー設定温度220℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し溶融ストランドとして抜き出した。溶融ストランドを水冷しロータリーカッターでストランドをカッティングすることにより、比較例1~3のペレット状の樹脂組成物を得た。そして、上記の測定方法に従い、得られた比較例1~3の樹脂組成物の物性の測定及び評価を行った。その結果を表3に示す。
【0094】
【表3】