(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108061
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】耐火構造体および建築物の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
E04B1/94 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012338
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】八戸 翔太朗
(72)【発明者】
【氏名】横林 優
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001EA06
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA42
2E001GA47
2E001GA77
2E001HB02
2E001HD01
2E001HE01
2E001HF12
2E001KA01
2E001LA15
(57)【要約】
【課題】発泡後における応力集中が緩和されるように発泡性耐火材を容易に鉄骨材に付与することができる耐火構造体を提供する。
【解決手段】耐火構造体は、鉄骨材と、前記鉄骨材の表面を被覆するとともに所定の温度環境下において発泡特性を有する発泡性耐火材と、前記鉄骨材に保持された被保持部と、前記発泡性耐火材に埋設された埋設部と、前記埋設部に対して前記被保持部と反対側で前記発泡性耐火材の外側に露出する露出部と、を有する線状部材と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火構造体であって、
鉄骨材と、
前記鉄骨材の表面を被覆するとともに所定の温度環境下において発泡特性を有する発泡性耐火材と、
前記鉄骨材に保持された被保持部と、前記発泡性耐火材に埋設された埋設部と、前記埋設部に対して前記被保持部と反対側で前記発泡性耐火材の外側に露出する露出部と、を有する線状部材と、を有する、耐火構造体。
【請求項2】
前記埋設部は、前記鉄骨材の表面に接触した状態で前記発泡性耐火材に埋設されている、請求項1に記載の耐火構造体。
【請求項3】
前記鉄骨材は、前記鉄骨材における前記発泡性耐火材により被覆された領域で、かつ、側面視で前記埋設部と重なる位置に設けられているとともに、前記線状部材の前記被保持部と反対側の端部を固定可能な固定部を有する、請求項2に記載の耐火構造体。
【請求項4】
前記鉄骨材は、所定方向に延びるとともに前記所定方向と直交する多角形の断面形状を有する部材であり、
前記埋設部は、前記多角形の一辺に相当する前記鉄骨材の一側面の領域のみに配置されている、請求項1に記載の耐火構造体。
【請求項5】
前記耐火構造体は、前記鉄骨材に保持された別の被保持部と、前記多角形の他の一辺に相当する前記鉄骨材の他の一側面の領域のみに配置され、前記発泡性耐火材に埋設された別の埋設部と、前記別の埋設部に対して前記別の被保持部と反対側で前記発泡性耐火材の外側に露出する別の露出部と、を有する別の線状部材をさらに備えている、請求項4に記載の耐火構造体。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の耐火構造体を用いた建築物の製造方法であって、
前記線状部材の前記露出部を前記鉄骨材から離れるように引くことにより、前記発泡性耐火材に破断部を形成する破断部形成工程を有する建築物の製造方法。
【請求項7】
前記破断部形成工程の後、前記線状部材と前記鉄骨材との間に前記発泡性耐火材が挟まれるように前記線状部材を配置するとともに前記発泡性耐火材が挟まれた状態を維持するように前記線状部材を前記鉄骨材に固定する固定工程と、を有する請求項6に記載の建築物の製造方法。
【請求項8】
前記固定工程では、前記発泡性耐火材の周囲に巻き付けられるように前記線状部材を配置するとともに、前記発泡性耐火材の周囲に巻き付けられた状態を維持するように前記線状部材を前記鉄骨材に固定する、請求項7に記載の建築物の製造方法。
【請求項9】
耐火構造体であって、
鉄骨材と、
前記鉄骨材の表面を被覆するとともに所定の温度環境下において発泡特性を有する発泡性耐火材と、
前記鉄骨材に保持された被保持部と、前記被保持部の先端側に位置する第1の部分と、前記第1の部分の先端側に位置する第2の部分と、を有する線状部材と、を有し、
前記発泡性耐火材は、厚み方向に破断された破断部を有し、
前記破断部の幅は、前記線状部材の前記第1の部分の幅に相当する、耐火構造体。
【請求項10】
前記線状部材が、前記破断部と交差するように前記発泡性耐火材の周囲に巻き付けられた状態で固定されている、請求項9に記載の耐火構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火構造体およびこの耐火構造体を用いた建築物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の柱や梁等の構造体に耐火性を付与するため、構造体の表面に発泡性耐火材を設ける技術がある。発泡性耐火材は、所定の温度環境において発泡する特性を有し、加熱され、発泡することにより耐火性を発揮する。
【0003】
構造体の表面全体に発泡性耐火材を設けた場合、加熱により発泡した発泡性耐火材に割れが生じ、構造体が露出して耐火性が低下することがある。特許文献1には、このような発泡性耐火材の割れを抑制するため、構造体の表面に発泡性耐火材と隣接して非発泡材を配置し、発泡性耐火材および非発泡材により構造体の表面を被覆した耐火構造が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された耐火構造によれば、非発泡材により発泡性耐火材が複数に仕切られているため、発泡により発泡性耐火材に生じる応力集中が緩和され、発泡した発泡性耐火材の割れを抑制することができる。
【0005】
特許文献1に開示された耐火構造は、構造体の表面に上面をマスキングした非発泡材を耐熱性接着剤で貼り付け、さらに発泡性耐火材を塗布した後、マスキング材を剥がし、発泡性耐火材を乾燥させるという工程により形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術では、非発泡材にマスキング材を設け、構造体に非発泡材を貼り付けて発泡性耐火材を塗布した後にマスキング材を剥がす作業が必要であり、施工性が悪い。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、発泡後における応力集中が緩和されるように発泡性耐火材を容易に鉄骨材に付与することができる耐火構造体を提供すること、およびこのような耐火構造体を用いた建築物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、種々検討した結果、上記目的は、以下の発明により達成されることを見出した。
【0010】
上記課題を解決するために、第一の発明は、耐火構造体であって、鉄骨材と、前記鉄骨材の表面を被覆するとともに所定の温度環境下において発泡特性を有する発泡性耐火材と、前記鉄骨材に保持された被保持部と、前記発泡性耐火材に埋設された埋設部と、前記埋設部に対して前記被保持部と反対側で前記発泡性耐火材の外側に露出する露出部と、を有する線状部材と、を有する、耐火構造体である。
【0011】
第一の発明に係る耐火構造体は、線状部材の露出部を鉄骨材から離れるように引くことにより、埋設部の外側に位置する発泡性耐火材の一部を埋設部によって破断することができる。この破断により形成された破断部の存在によって発泡性耐火材の発泡後における応力集中を緩和することができる。そして、上記のように線状部材の一部(被保持部)が保持された状態で線状部材の一部(埋設部)が埋設された耐火構造体を準備し、この耐火構造体における線状部材の露出部を引くという簡単な操作で応力集中を緩和するための破断部を形成することができる。
【0012】
したがって、第一の発明によれば、発泡後における応力集中が緩和されるように発泡性耐火材を容易に鉄骨材に付与することができる。
【0013】
なお、第一の発明に係る耐火構造体において被保持部が「鉄骨材に保持された」とは、露出部を鉄骨材から離れるように引いたときに、発泡性耐火材に破断部が形成されるように、鉄骨材に対する線状部材の移動が抑制された状態で鉄骨材に保持されていることを意図する。
【0014】
第二の発明は、第一の発明において、前記埋設部は、前記鉄骨材の表面に接触した状態で前記発泡性耐火材に埋設されていることが好ましい。
【0015】
第二の発明によれば、埋設部によって発泡性耐火材を厚さ方向に完全に破断することができるため、発泡性耐火材が発泡した際に発生する応力集中をより有効に緩和することかできる。
【0016】
第三の発明は、第二発明において、前記鉄骨材は、前記鉄骨材における前記発泡性耐火材により被覆された領域で、かつ、側面視で前記埋設部と重なる位置に設けられているとともに、前記線状部材の前記被保持部と反対側の端部を固定可能な固定部を有することが好ましい。
【0017】
第三の発明によれば、埋設部によって発泡性耐火材を厚さ方向に完全に破断することにより形成された破断部を通じて固定部を露出させることができる。そのため、例えば、発泡性耐火材の周囲に巻き付けるように線状部材を配置した状態で線状部材の被保持部と反対側の端部を固定部に容易に固定することにより火災発生時における発泡性耐火材の脱落を防止することができる。
【0018】
第四の発明は、第一から第三の何れか一つの発明において、前記鉄骨材は、所定方向に延びるとともに前記所定方向と直交する多角形の断面形状を有する部材であり、前記埋設部は、前記多角形の一辺に相当する前記鉄骨材の一側面の領域のみに配置されていることが好ましい。
【0019】
鉄骨材が多角柱状である場合には、鉄骨材の角部において、発泡した発泡性耐火材に応力が集中しやすいだけでなく、発泡した発泡性耐火材が薄くなりやすいため、当該角部において発泡した発泡性耐火材に割れが生じやすい。しかし、第四の発明によれば、埋設部が鉄骨材の一側面の領域のみに設けられているため、線状部材の露出部を鉄骨材から離れるように引くことにより、発泡性耐火材の破断部が発泡した発泡性耐火材に発生する応力集中が鉄骨材の当該一側面において緩和され、発泡した発泡性耐火材が鉄骨材の角部に集まりやすくなる。これにより、鉄骨材の角部において発泡した発泡性耐火材が薄くなるのを抑制でき、鉄骨材の角部における発泡した発泡性耐火材の割れをより有効に抑制することができる。
【0020】
第五の発明は、第四の発明において、前記耐火構造体は、前記鉄骨材に保持された別の被保持部と、前記多角形の他の一辺に相当する前記鉄骨材の他の一側面の領域のみに配置され、前記発泡性耐火材に埋設された別の埋設部と、前記別の埋設部に対して前記別の被保持部と反対側で前記発泡性耐火材の外側に露出する別の露出部と、を有する別の線状部材をさらに備えていることが好ましい。
【0021】
第五の発明によれば、別の線状部材の露出部を鉄骨材から離れるように引くことにより、多角柱状の鉄骨材の他の一側面の領域のみに別の破断部を形成することができるため、鉄骨材の他の角部において発泡した発泡性耐火材が薄くなるのを抑制でき、当該他の角部における発泡した発泡性耐火材の割れをより有効に抑制することができる。
【0022】
第六の発明に係る建築物の製造方法は、第一から第五の何れか一つの発明に係る耐火構造体を用いた建築物の製造方法であって、前記線状部材の前記露出部を前記鉄骨材から離れるように引くことにより、前記発泡性耐火材に破断部を形成する破断部形成工程を有する建築物の製造方法である。
【0023】
第六の発明に係る建築物の製造方法によれば、発泡性耐火材に破断部を形成することができ、この破断部の存在によって発泡性耐火材の発泡後における応力集中を緩和することができる。
【0024】
したがって、第六の発明によれば、発泡後における応力集中が緩和されるように発泡性耐火材を容易に鉄骨材に付与することができる。
【0025】
第七の発明は、第六の発明において、前記破断部形成工程の後、前記線状部材と前記鉄骨材との間に前記発泡性耐火材が挟まれるように前記線状部材を配置するとともに前記発泡性耐火材が挟まれた状態を維持するように前記線状部材を前記鉄骨材に固定する固定工程と、を有することが好ましい。
【0026】
第七の発明によれば、破断部を形成するために用いた線状部材と鉄骨材との間に発泡性耐火材を挟むことによって、発泡性耐火材の剥離を抑制することができる。
【0027】
第八の発明は、第六の発明において、前記固定工程では、前記発泡性耐火材の周囲に巻き付けられるように前記線状部材を配置するとともに、前記発泡性耐火材の周囲に巻き付けられた状態を維持するように前記線状部材を前記鉄骨材に固定することが好ましい。
【0028】
第八の発明によれば、線状部材が発泡性耐火材に巻き付けられることにより、発泡性耐火材の剥離をより有効に抑制することができる。
【0029】
第九の発明は、耐火構造体であって、鉄骨材と、前記鉄骨材の表面を被覆するとともに所定の温度環境下において発泡特性を有する発泡性耐火材と、前記鉄骨材に保持された被保持部と、前記被保持部の先端側に位置する第1の部分と、前記第1の部分の先端側に位置する第2の部分と、を有する線状部材と、を有し、前記発泡性耐火材は、厚み方向に破断された破断部を有し、前記破断部の幅は、前記線状部材の前記第1の部分の幅に相当する、耐火構造体である。
【0030】
第九の発明に係る耐火構造体では、線状部材の第1の部分の幅に相当する幅を有する破断部が発泡性耐火材に形成されている。このような破断部は、発泡性耐火材に第1の部分が埋設された状態において第2の部分を持って発泡性耐火材から第1の部分を引き出すことにより形成することができる。そして、この破断部の存在によって発泡性耐火材の発泡後における応力集中を緩和することができる。
【0031】
したがって、第九の発明によれば、発泡後における応力集中が緩和されるように発泡性耐火材を容易に鉄骨材に付与することができる。
【0032】
第十の発明は、第九の発明において、前記線状部材が、前記破断部と交差するように前記発泡性耐火材の周囲に巻き付けられた状態で固定されていることが好ましい。
【0033】
第九の発明のように発泡性耐火材に破断部が設けられている場合、上記のように応力集中の緩和を図ることができる反面、発泡性耐火材の保持力が低下し、特に発泡後において発泡性耐火材が鉄骨材から脱落するおそれがある。これに対し、第十の発明によれば、線状部材を、破断部と交差するように発泡性耐火材の周囲に巻き付けられた状態で固定することにより、火災発生前および火災発生時における発泡性耐火材の脱落を防止することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、発泡後における応力集中が緩和されるように発泡性耐火材を容易に鉄骨材に付与することができる耐火構造体を提供すること、およびこのような耐火構造体を用いた建築物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る耐火構造体を用いた建築物の一部を省略して示す正面図である。
【
図2】
図2は、耐火構造体の一部を省略して示す正面断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る建築物の製造方法を示す図であり、建築物において線状部材の露出部を引く前の状態を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る建築物の製造方法を示す図であり、建築物において線状部材の露出部が鉄骨材から離れるように引かれ発泡性耐火材に破断部が形成された状態を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る建築物の製造方法を示す図であり、建築物において線状部材を発泡性耐火材の周囲に巻き付けた状態を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す発泡性耐火材が発泡した状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施形態の参考図であり、破断部を有しない発泡性耐火材が発泡した状態を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る上端部プレートの底面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る耐火構造体の一部を省略して示す正面図である。
【
図12】
図12は、
図11に示す耐火構造体において線状部材を発泡性耐火材の周囲に巻き付けた状態を示す正面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第3の実施形態に係る上端部プレートおよび補助プレートの底面図である。
【
図15】
図15は、本発明の第3の実施形態に係る耐火構造体を用いた建築物の一部を省略して示す正面図である。
【
図16】
図16は、
図15に示す建築物において線状部材を発泡性耐火材の周囲に巻き付けた状態を示す図である。
【
図17】
図17は、本発明の第4の実施形態に係る建築物において線状部材を発泡性耐火材の周囲に巻き付けた状態を建築物の一部を省略して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態に係る耐火構造体を用いた建築物、および当該建築物の製造方法について図面に基づいて説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る耐火構造体を用いた建築物の一部を省略して示す正面図である。
図2は、耐火構造体の一部を省略して示す正面断面図である。本実施形態に係る建築物1は、
図1に示すように、水平方向に延びるとともに上下に並んで設けられた梁等の上側支持部材2および下側支持部材3と、上側支持部材2から下側支持部材3まで延びるとともに上側支持部材2および下側支持部材3に接続された上下の端部を有する耐火構造体10と、を備える。耐火構造体10は、上下方向(所定方向)に延びる鉄骨材20と、鉄骨材20の表面を被覆するとともに所定の温度環境下において発泡特性を有する発泡性耐火材30と、鉄骨材20に保持された線状部材40と、上側支持部材2および下側支持部材3に鉄骨材20を固定するための固定手段50と、を有する。固定手段50は、ボルト51およびナット52を有する。
【0037】
鉄骨材20は、
図1および
図2に示すように、下側支持部材3に取り付けられる下端部プレート21と、上側支持部材2に取り付けられる上端部プレート27と、下端部プレート21から上に延びる円筒状の下脚部22と、上端部プレート27から下に延びる円筒状の上脚部26と、下脚部22の上端から上脚部26の下端まで延びるとともに下脚部22および上脚部26よりも大きな断面形状を有する大径部29と、を有する。
【0038】
大径部29は、下脚部22の上端面が突き合わされた状態で下脚部22に固定された下部接続プレート23と、上脚部26の下端面が突き合わされた状態で上脚部26に固定された上部接続プレート25と、下部接続プレート23の上面から上部接続プレート25の下面まで延びる本体部24と、を有する。
【0039】
本実施形態では、本体部24は、上下方向に直交する四角形の断面形状を有する筒状の部材である。本体部24の上下の開口は、それぞれ上部接続プレート25および下部接続プレート23によって閉じられている。本体部24の断面形状は、四角形以外の多角形でもよく、多角形以外の形状、例えば円形であってもよい。
【0040】
本体部24の断面形状の四角形の一辺に相当する各側面の領域の上部には、線状部材40を通すための上部貫通孔24aが1個ずつ設けられている。また、本体部24の各側面の領域の下部には、発泡性耐火材30の破断部31を形成した後の線状部材40を固定するための下部貫通孔24b(固定部)が1個ずつ設けられている。
【0041】
発泡性耐火材30は、大径部29の側面を被覆する。発泡性耐火材30は、所定の温度環境下、例えば約250℃に達すると発泡を開始する特性を有する。これは、火災を想定した温度環境である。発泡性耐火材30には、例えば、熱可塑性樹脂、リン化合物、ゴム物質等を使用することができる。
【0042】
線状部材40(線状部材、他の線状部材)は本体部24の上部を貫通するように2本設けられている。
図2に示すように、各線状部材40は、鉄骨材20の本体部24の互いに対向する側面に設けられた上部貫通孔24aに挿通される。各線状部材40は、それぞれ本体部24に保持された2つの被保持部41(被保持部、他の被保持部)と、各被保持部41から本体部24の一側面と当該側面に対向する他の側面に沿って延び、発泡性耐火材30に埋設された2つの埋設部42(埋設部、他の埋設部)と、各埋設部42に対して被保持部41と反対側で発泡性耐火材30の外側に露出する2つの露出部43(露出部、他の露出部)と、を有する。
【0043】
被保持部41は、露出部43を鉄骨材20から離れるように引いたときに、発泡性耐火材30に破断部31が形成されるように、鉄骨材20に対する線状部材40の移動が抑制された状態で、鉄骨材20に保持されている。
【0044】
本実施形態の各線状部材40では、一方の露出部43から鉄骨材20の側面に沿って一方の埋設部42が上に延び、上部貫通孔24aを通じて一方の埋設部42から他方の埋設部42へ両埋設部42と直交する方向へ途中部44が延び、途中部44から鉄骨材20の側面に沿って他方の埋設部42が他方の露出部43まで下に延びている。そのため、2つの露出部43のうちの一方の露出部43を基準として考えた場合、隣接する一方の埋設部42により破断部31を形成する際には、当該一方の埋設部42よりも先の部分(途中部44、他方の埋設部42)が被保持部41として機能する。つまり、被保持部41は、鉄骨材20および発泡性耐火材30との間の摩擦力によって鉄骨材20に対して保持されている。なお、被保持部41は、他の部材(例えば、接着剤や締結材)を用いて鉄骨材20に保持されていてもよく、被保持部41自体によって鉄骨材20に保持されて(例えば、結び付けられて)いてもよい。
【0045】
線状部材40は、金属製のワイヤー、例えば直径0.2~0.8mmのピアノ線等を使用することができる。
【0046】
本実施形態に係る耐火構造体10は、上側支持部材2および下側支持部材3に鉄骨材20を取り付けた後、鉄骨材20の本体部24の互いに対向する側面に設けられた2組の上部貫通孔24aにそれぞれ1本ずつ線状部材40を挿通し、本体部24の各側面に、線状部材40を沿わせた状態で発泡性耐火材30を形成するための液状の塗布剤を塗布することにより、製造することができる。なお、線状部材40は、上側支持部材2および下側支持部材3に鉄骨材20を取り付ける前に挿通してもよい。また、発泡性耐火材30は、上側支持部材2および下側支持部材3に鉄骨材20を取り付ける前に形成してもよい。
【0047】
埋設部42は、本体部24の断面形状の四角形の一辺に相当する側面の領域のみに配置されている。また、埋設部42は、本体部24の表面に接触した状態で発泡性耐火材30に埋設されている。
【0048】
次に、本発明の第1の実施形態に係る建築物の製造方法について説明する。
【0049】
図3~5は、本実施形態に係る建築物の製造方法を示す図である。
図3は、建築物1において線状部材40の露出部43を引く前の状態を示す図である。
図4は、建築物1において線状部材40の露出部43が鉄骨材20から離れるように引かれ発泡性耐火材30に破断部31が形成された状態を示す図である。
図5は、建築物1において線状部材40を発泡性耐火材30の周囲に巻き付けた状態を示す図である。
【0050】
前記耐火構造体10を用いた建築物1の製造方法を実施する前に、
図3に示すように鉄骨材20が上側支持部材2および下側支持部材3に取り付けられ、線状部材40の埋設部42が埋設された状態で鉄骨材20の表面に発泡性耐火材30が形成された耐火構造体10を準備する。
【0051】
建築物1の製造方法は、
図3の矢印Aに示すように、線状部材40の露出部43を鉄骨材20から離れるように引くことにより、
図4に示すように発泡性耐火材30を厚み方向に破断して破断部31を形成する破断部形成工程を有する。埋設部42は本体部24の表面に接触した状態で発泡性耐火材30に埋設されているため、埋設部42により発泡性耐火材30を本体部24に対向する面から外側の表面まで完全に破断することができる。このとき、破断部31が形成されるとともに、破断部31を通じて下部貫通孔24bが露出する。
【0052】
具体的に、破断部形成工程では、各線状部材40における一方の露出部43を引くことにより破断部31を形成するととともに、他方の露出部43を引くことにより破断部31を形成し、これらの破断部31の形成を両線状部材40において行う。これらの破断部31の形成順序は限定されず、複数の破断部31の形成を同時に行ってもよい。上述のように、露出部43を引く際においては、各線状部材40における埋設部42よりも先の部分と鉄骨材20および発泡性耐火材30との間の摩擦力によって被保持部41が保持されている。この摩擦力が不足する場合には、上述のように接着剤や締結材等の保持力を付加する手段を追加してもよい。
図4に示すように、引いた後の線状部材40は、被保持部41と、被保持部41の先端側に位置する埋設部42であった第1の部分42aと、露出部43であった部分の先端側に位置する露出部43であった第2の部分43aと、を有する。
【0053】
また、本実施形態に係る建築物の製造方法は、破断部形成工程の後、線状部材40と鉄骨材20との間に発泡性耐火材30が挟まれるように線状部材40を配置するとともに発泡性耐火材30が挟まれた状態を維持するように線状部材40を鉄骨材20に固定する固定工程をさらに有する。具体的に、固定工程では、
図5に示すように破断部31と交差するように発泡性耐火材30の周囲に巻き付けられるように線状部材40を配置するとともに、発泡性耐火材30の周囲に巻き付けられた状態を維持するように線状部材40を下部貫通孔24bに固定する。線状部材40は、下部貫通孔24bに露出部43側の端部(被保持部41と反対側の端部)を挿通させた状態で、接着剤やビス等の挿入部材を挿入することによって固定することができる。
【0054】
なお、固定工程では、破断部形成工程で発泡性耐火材30の外側に引き出された線状部材40が破断部形成工程前の埋設部42の配索経路とは異なる径路に沿って配置することにより、鉄骨材20との間に発泡性耐火材30を挟むように配置することができる。
【0055】
次に、上記製造方法によって製造された建築物1において発泡性耐火材30が加熱され、発泡した場合について説明する。
【0056】
図6は、
図5のVI-VI線での断面図である。
図7は、
図6に示す発泡性耐火材30が発泡した状態を示す断面図である。
【0057】
図6に示す状態から発泡した発泡性耐火材30は、
図7に示すように巻き付けられた線状部材40を超えて本体部24の外側方向に膨張する。発泡した発泡性耐火材30の断面形状において、破断部31が形成されていた部分における発泡性耐火材30の厚みが最も小さく、鉄骨材20の本体部24の角部周辺における発泡性耐火材30の厚みは、破断部31が形成されていた部分に比べて大きい。
【0058】
本実施形態では、線状部材40は2本設けられているが、線状部材40を1本だけ設けてもよい。また、2本の線状部材40に加え、各上部貫通孔24aから埋設部42が上方に延びる別の線状部材40をさらに設けてもよい。本体部24の内部を貫通して設けられた線状部材40に代えて、本体部24の4つの上部貫通孔24aのそれぞれにビス等の挿入部材によって線状部材40を1本ずつ保持させてもよい。
(作用、効果)
上記実施形態に係る耐火構造体10によれば、線状部材40の露出部43を鉄骨材20から離れるように引くことにより、埋設部42の外側に位置する発泡性耐火材30の一部を埋設部42によって破断することができる。この破断により形成された破断部31の存在によって発泡性耐火材30の発泡後における応力集中を緩和することができる。そして、上記のように線状部材40の一部(被保持部41)が保持された状態で線状部材40の一部(埋設部42)が埋設された耐火構造体10を準備し、この耐火構造体10における線状部材40の露出部43を引くという簡単な操作で応力集中を緩和するための破断部31を形成することができる。
【0059】
したがって、上記実施形態に係る耐火構造体10によれば、発泡後における応力集中が緩和されるように発泡性耐火材30を容易に鉄骨材20に付与することができる。
【0060】
また、上記実施形態に係る耐火構造体10によれば、埋設部42によって発泡性耐火材30を鉄骨材20の本体部24に対向する面から外側の表面まで厚さ方向に完全に破断することができるため、発泡性耐火材30が発泡した際に発生する応力集中をより有効に緩和し、発泡した発泡性耐火材30の割れをより有効に抑制することができる。
【0061】
以下ではこれらの効果についてより詳しく説明する。
【0062】
図8は、本実施形態の参考図であり、破断部31を有しない発泡性耐火材30が発泡した状態を示す図である。破断部31を形成していない発泡性耐火材30が発泡すると、
図8に示すように、発泡性耐火材30の厚さ方向に膨張し、発泡した発泡性耐火材30の断面形状において、鉄骨材20の本体部24の側面の幅方向中央部における発泡性耐火材30の厚みが最も大きく、本体部24の角部における発泡性耐火材30の厚みが最も小さい。さらに、発泡した発泡性耐火材30の、本体部24の角部近傍には本体部24の側面の幅方向中央に向かう引張応力が集中する。これらの要因により、発泡性耐火材30に破断部31を形成していない場合には、発泡した発泡性耐火材30は本体部24の角部近傍において割れが発生しやすい。
【0063】
これに対して、上記実施形態に係る耐火構造体10によれば、埋設部42が鉄骨材20の本体部24の一側面の領域のみに設けられているため、線状部材40の露出部43を鉄骨材20から離れるように引くことにより、発泡性耐火材30の破断部31が発泡した発泡性耐火材30に発生する応力集中が本体部24の当該一側面において緩和され、発泡した発泡性耐火材30が本体部24の角部に集まりやすくなる。これにより、鉄骨材20の本体部24の角部において発泡した発泡性耐火材30が薄くなるのを抑制でき、本体部24の角部における発泡性耐火材30の割れをより有効に抑制することができる。
【0064】
発泡性耐火材30に破断部31が設けられている場合、上記のように応力集中の緩和を図ることができる反面、発泡性耐火材30の保持力が低下し、特に発泡後において発泡性耐火材30が鉄骨材20から脱落するおそれがある。これに対し、上記実施形態に係る耐火構造体10では、線状部材40を、破断部31と交差するように発泡性耐火材30の周囲に巻き付けられた状態で固定することにより、火災発生前および火災発生時における発泡性耐火材30の脱落を防止することができる。
【0065】
また、上記実施形態に係る耐火構造体10によれば、埋設部42によって発泡性耐火材30を厚さ方向に完全に破断することにより形成された破断部31を通じて下部貫通孔24bを露出させることができる。そのため、例えば、発泡性耐火材30の周囲に巻き付けるように線状部材40を配置した状態で線状部材40の被保持部41と反対側の端部を下部貫通孔24bに容易に固定することにより火災発生時における発泡性耐火材30の脱落を防止することができる。
【0066】
また、上記実施形態に係る耐火構造体10によれば、別の線状部材40の露出部43、別の線状部材40の露出部43を鉄骨材20から離れるように引くことにより、多角柱状(四角柱状)の鉄骨材20の本体部24の他の一側面の領域のみに別の破断部31を形成することができるため、鉄骨材20の本体部24の他の角部において発泡した発泡性耐火材30が薄くなるのを抑制でき、当該他の角部における発泡した発泡性耐火材30の割れをより有効に抑制することができる。
【0067】
上記実施形態に係る建築物の製造方法によれば、線状部材40の露出部43を鉄骨材20から離れるように引いて、発泡性耐火材30に破断部31を設ける工程を有するため、発泡性耐火材30に破断部31を形成することができ、この破断部31の存在によって発泡性耐火材30の発泡後における応力集中を緩和することができる。
【0068】
したがって、上記実施形態に係る建築物の製造方法によれば、発泡後における応力集中が緩和されるように発泡性耐火材30を容易に鉄骨材20に付与することができる。
【0069】
また、上記実施形態に係る建築物の製造方法によれば、破断部31を形成するために用いた線状部材40と鉄骨材20との間に発泡性耐火材30を挟むことによって、発泡性耐火材30の剥離を抑制することが可能な建築物1を製造することができる。
【0070】
また、上記実施形態に係る建築物の製造方法によれば、線状部材40が発泡性耐火材30に巻き付けられることにより、発泡性耐火材30の剥離をより抑制することが可能な建築物1を製造することができる。
[第2の実施形態]
第1の実施形態の耐火構造体10では、線状部材40の被保持部41が鉄骨材20の本体部24に設けられた上部貫通孔24aに保持されている。一方、第2の実施形態では線状部材40の被保持部41は、上端部プレート27に保持されている。また、第1の実施形態の建築物1では、線状部材40の被保持部41と反対側の端部は本体部24に設けられた下部貫通孔24bに保持される。一方、第2の実施形態では線状部材40の被保持部41と反対側の端部は、下端部プレート21に保持される。この場合、第2の実施形態では、鉄骨材20において上部貫通孔24aおよび下部貫通孔24bを省略することができる。以下、本発明の第2の実施形態について、第1の実施形態と異なる構成について主に説明する。
【0071】
図9は、第2の実施形態に係る上端部プレート27の底面図である。
図10は、
図9二示す上端部プレート27の正面図である。
図11は、第2の実施形態に係る耐火構造体10の一部を省略して示す正面図である。
図12は、
図11に示す耐火構造体10において線状部材40を発泡性耐火材30の周囲に巻き付けた状態を示す図である。以下の説明では、
図1~
図7に記載の構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
本実施形態の上端部プレート27は、上脚部26の上端面が付き合わされた状態で上脚部26に固定された下面を有するプレート本体27aと、プレート本体27aの下面に設けられ、線状部材40を固定するための上部固定部27cと、を有する。プレート本体27aは、下面の中央部に設けられ、上脚部26が固定された固定部分と、この固定部分の周囲に等間隔に設けられ、ボルト4aが挿通される4つの固定用孔27bと、を有する。上部固定部27cは、プレート本体27aの下面における上脚部26の固定部分の周囲に等間隔(本実施形態では、各固定用孔27bの間)に設けられている。具体的に、上部固定部27cは、プレート本体27aの下面から下に延びる延伸部27c1と、延伸部27c1に設けられ、線状部材40を挿入して被保持部41を固定するための固定部27c2と、を有する。本実施形態において、固定部27c2は、線状部材を縛るために延伸部27c1を貫通する貫通孔により形成されている。
【0073】
本実施形態に係る下端部プレート21は、上端部プレート27を上下反転した構成を有するため、下端部プレート21における上端部プレート27と異なる部分について主に説明する。
図11に示すように、下端部プレート21は、下脚部22の下端面が突き合わされた状態で下脚部22に固定された上面を有するプレート本体21aと、プレート本体21aの上面に設けられ、線状部材40を固定するための下部固定部21cと、を有する。下部固定部21cは、プレート本体21aの上面から上に延びる延伸部21c1と、延伸部21c1に設けられ、線状部材40を挿入して被保持部41を固定するための固定部21c2と、を有する。
【0074】
図11に示すように、本実施形態に係る耐火構造体10は、線状部材40の被保持部41が上端部プレート27の上部固定部27cに固定されている。そのため、被保持部41と埋設部42との間には、線状部材40が露出している部分が生じている。
図11に示される状態の耐火構造体10において、線状部材40の露出部43を鉄骨材20から離れるように引くことにより、発泡性耐火材30を厚み方向に破断して破断部31を形成することができる。
【0075】
図12に示すように、本実施形態に係る建築物1では、鉄骨材20および発泡性耐火材30の周囲に巻き付けられた線状部材40の被保持部41と反対側の端部が下端部プレート21の下部固定部21cに固定されている。
【0076】
本実施形態に係る耐火構造体10によれば、上部固定部27cが発泡性耐火材30の上端よりも上方に設けられており、線状部材40の埋設部42を発泡性耐火材30の上下方向の全長に亘って設けることができる。これにより、破断部31を発泡性耐火材30の上下方向の全体に設けることができるため、発泡した発泡性耐火材30の割れをより有効に抑制することができる。
【0077】
本実施形態では、線状部材40は各上部固定部27cに固定され、本体部24の4つの側面に1本ずつ、合計4本設けられているが、線状部材40を1本だけ一側面に設けてもよく、また、2本または3本の線状部材40を別個の側面に設けてもよい。
【0078】
さらに、線状部材40の被保持部41を本体部24の発泡性耐火材30に覆われた部分に設け、被保持部41から下方に延びる埋設部42および露出部43と、被保持部41から上方に延びる埋設部42および露出部43と、を設けてもよい。この場合、破断部31を形成し、線状部材40を巻き付けた後で、線状部材40の被保持部41から下方に延びる部分の端部は下部固定部21cに固定し、線状部材40の被保持部41から上方に延びる部分の端部は上部固定部27cに固定することができる。
[第3の実施形態]
第2の実施形態の耐火構造体10では、上端部プレート27に上部固定部27cが設けられ、下端部プレート21に下部固定部21cが設けられている。一方、第3の実施形態の耐火構造体10では、固定部28a3、28b3が、上端部プレート27および下端部プレート21に取り付けられた補助プレート28に設けられている。
【0079】
図13は、第3の実施形態に係る上端部プレート27および補助プレート28の底面図である。
図14は、
図13に示す上端部プレート27および補助プレート28の正面図である。
図15は、第3の実施形態に係る耐火構造体10を用いた建築物1の一部を省略して示す正面図である。
図16は、
図15に示す建築物1において線状部材40を発泡性耐火材30の周囲に巻き付けた状態を示す図である。
【0080】
本実施形態において、上端部プレート27は、上部固定部27cが設けられていないことを除き、第2の実施形態のプレート本体27aおよび固定用孔27bと同様の構成である。
【0081】
図13、
図14に示すように、補助プレート28は、第1のプレート28aと、第2のプレート28bと、を有する。本実施形態において補助プレート28は、鉄骨材20を構成する。第1のプレート28aは、プレート本体28a1と、プレート本体28a1の下面に設けられている固定部28a3と、を有する。プレート本体28a1は、平面視で上端部プレート27の固定用孔27bと重なる位置に設けられた2つの固定用孔28a2を有する。固定部28a3は、第2の実施形態の上部固定部27cと同様の構成であり、プレート本体28a1の下面から下に延びる延伸部28a4と、延伸部28a4に設けられた固定部28a5と、を有する。第2のプレート28bは、プレート本体28b1と、プレート本体28b1の下面に設けられている固定部28b3と、を有する。プレート本体28b1は、平面視で上端部プレート27の固定用孔27bと重なる位置に設けられた2つの固定用孔28b2を有する。固定部28b3は、固定部28a3と同様の構成であり、プレート本体28b1の下面から下に延びる延伸部28b4と、延伸部28b4に設けられた固定部28a5と、を有する。
【0082】
図15に示すように、第1のプレート28aおよび第2のプレート28bは、上端部プレート27の固定用孔27bと固定用孔28a2、28b2に挿入されたボルト51とナット52によって、上脚部26を避けた状態で、上端部プレート27に固定される。下端部プレート21についても、上端部プレート27と同様の構成であり、補助プレート28が上端部プレート27とは上限反転した状態で取り付けられる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る建築物1では、第1~第3の実施形態と異なり、鉄骨材20および発泡性耐火材30の周囲に巻き付けられた線状部材40の被保持部41と反対側の端部を、下端部プレート21を下側支持部材3に固定するための固定手段50によって下端部プレート21に固定する。
【0083】
図17は、第4の実施形態に係る建築物1において線状部材40を発泡性耐火材30の周囲に巻き付けた状態を建築物1の一部を省略して示す正面図である。
【0084】
図17に示すように、第4の実施形態の建築物1では、下端部プレート21を下側支持部材3に固定する固定手段50のナット52は、下端部プレート21側に位置する第1のナット52aと、第1のナット52aの下端部プレート21と反対側に位置する第2のナット52bと、を有する。線状部材40の被保持部41と反対側の端部は、第1のナット52aと第2のナット52bとの間に挟んで固定される。
【0085】
本実施形態に係る建築物1では、耐火構造体10として第1~第3の実施形態の耐火構造体10のいずれも利用することができる。また、上端部プレート27を、第1のナット52aおよび第2のナット52bによって上側支持部材2に固定し、線状部材40の被保持部41も、第1のナット52aと第2のナット52bとの間に挟んで固定してもよい。
【0086】
本実施形態に係る耐火構造体10によれば、下端部プレート21および上端部プレート27において上部固定部27cおよび下部固定部21cを省略しても、また、補助プレート28を省略しても、鉄骨材20に線状部材40両端部を固定することができる。
【0087】
なお、第1~第4の実施形態の線状部材40の被保持部41の固定方法と、第1~第4の実施形態の線状部材40の被保持部41と反対側の端部の固定方法とを組み合わせてもよい。
[変形例]
上記各実施例において、埋設部42は、本体部24の断面形状の四角形の一辺に相当する側面の領域から、当該四角形の角部または他の一辺に相当する側面に跨がって配置されてもよく、角部において上下方向に延びるように配置されていてもよい。また、埋設部42は、本体部24の表面から離れた状態で発泡性耐火材30に埋設されていてもよい。
【0088】
線状部材40の長さを発泡性耐火材30の周囲に巻き付けるのに十分な長さとした場合、露出部43が下側支持部材3に届く長さとなることがある。この場合、露出部43はコイル状に巻いてもよい。
【0089】
上記各実施形態に係る耐火構造体および建築物の製造方法は、建築物の柱のように鉛直方向に延びる部材だけでなく、梁等の水平方向に延びる部材にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 建築物
10 耐火構造体
20 鉄骨材
24b 下部貫通孔(固定部)
30 発泡性耐火材
31 破断部
40 線状部材
41 被保持部
42 埋設部
42a 第1の部分
43 露出部
43a 第2の部分