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特開2024-108090嵌合システム、ロボット、及び制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108090
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】嵌合システム、ロボット、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
B25J15/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012381
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】518106124
【氏名又は名称】コネクテッドロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】三浦 祐太
(72)【発明者】
【氏名】中島 和哉
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS07
3C707BS15
3C707ES03
3C707ET08
3C707FS01
3C707FT02
3C707HT22
3C707KS34
3C707KW03
3C707KX10
3C707NS02
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】ロボットによって蓋閉め作業を行う場合に、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させる
【解決手段】嵌合システム1は、抑制機構340及び押圧機構310を備えた多関節ロボット30と、多関節ロボット30の動作を制御する制御装置40と、を備える。制御装置40は、第1嵌合部を有する蓋を抑制機構340で保持することで、容器が有する第2嵌合部に対して、第1嵌合部を近接させた状態を維持する保持動作と、保持動作により近接させた状態が維持されている間に、押圧機構310を第1方向に移動させることで第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、第1嵌合動作を行った後に、押圧機構310を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、を多関節ロボット30に実行させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持機構及び押圧機構を備えたロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた嵌合システムであって、
前記制御装置は、
第1嵌合部を有する蓋を前記保持機構で保持することで、容器が有する第2嵌合部に対して、前記第1嵌合部を近接させた状態を維持する保持動作と、
前記保持動作により近接させた状態が維持されている間に、前記押圧機構を第1方向に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、
前記第1嵌合動作を行った後に、前記押圧機構を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする嵌合システム。
【請求項2】
前記第2嵌合動作では、前記押圧機構を前記第2方向に揺動することで前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1に記載の嵌合システム。
【請求項3】
前記第2嵌合動作では、前記押圧機構が前記押圧対象部分に接触した状態を維持しながら、前記押圧機構を前記第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項4】
前記第2嵌合動作では、前記押圧対象部分における第1領域に対する押圧と、前記押圧対象部分における第2領域に対する押圧とを異なるタイミングで行うことで前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項5】
前記第2嵌合動作では、前記押圧機構を、前記第1方向とは異なる前記第2方向であって、複数の第2方向に対して移動させることで、前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項6】
前記第2嵌合動作では、前記押圧機構を支持する支持部を回転軸として、前記押圧機構を回転運動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記保持動作により近接させた状態が維持されている間に、可撓性を有する前記押圧機構を、前記押圧対象部分の形状に適合した形状となるように前記可撓性を利用して変形させる変形動作をさらに前記ロボットに実行させ、
前記変形動作により変形した状態の前記押圧機構により、前記第1嵌合動作及び前記第2嵌合動作の少なくとも何れかを前記ロボットに実行させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項8】
制御装置の制御に従って動作する、押圧機構を備えたロボットであって、
蓋が有する第1嵌合部が、容器が有する第2嵌合部に対して近接している状態が維持されている間に、前記押圧機構を第1方向に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、
前記第1嵌合動作を行った後に、前記押圧機構を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、
を前記制御装置の制御に従って実行することを特徴とするロボット。
【請求項9】
保持機構及び押圧機構を備えたロボットの動作を制御する制御装置の制御に従って、前記ロボットが行う嵌合方法であって、
第1嵌合部を有する蓋を前記保持機構で保持することで、容器が有する第2嵌合部に対して、前記第1嵌合部を近接させた状態を維持する保持ステップと、
前記保持ステップにより近接させた状態が維持されている間に、前記押圧機構を第1方向に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合ステップと、
前記第1嵌合ステップを行った後に、前記押圧機構を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合ステップと、
を含むことを特徴とする嵌合方法。
【請求項10】
保持機構及び押圧機構を備えたロボットの動作を制御する制御手段を備えた制御装置であって、
前記制御手段は、
第1嵌合部を有する蓋を前記保持機構で保持することで、容器が有する第2嵌合部に対して、前記第1嵌合部を近接させた状態を維持する保持動作と、
前記保持動作により近接させた状態が維持されている間に、前記押圧機構を第1方向に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、
前記第1嵌合動作を行った後に、前記押圧機構を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする制御装置。
【請求項11】
保持機構及び押圧機構を備えたロボットの動作を制御する制御機能をコンピュータに実現させるプログラムであって、
前記制御機能は、
第1嵌合部を有する蓋を前記保持機構で保持することで、容器が有する第2嵌合部に対して、前記第1嵌合部を近接させた状態を維持する保持動作と、
前記保持動作により近接させた状態が維持されている間に、前記押圧機構を第1方向に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、
前記第1嵌合動作を行った後に、前記押圧機構を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合システム、ロボット、嵌合方法、制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な業界において機械化が推進され、ロボットにより各種の作業が行われている。例えば、惣菜等の食品が盛り付けられた容器に対して、蓋を嵌合することで容器を閉塞するという蓋閉め作業がロボットにより行われている。
このような、蓋閉め作業を行うロボットに関する技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7126437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1等に記載の一般的な技術では、嵌合をするにあたって、容器の嵌合部と蓋の嵌合部との位置合わせのために、複数の方向(例えば、鉛直上方から蓋を平面視した場合の上下方向や左右方向)に蓋を移動させて位置合わせをするということが開示されている。そして、このような一般的な技術では、位置合わせをした後に、蓋の嵌合部を押圧すれば、嵌合部同士が当然に嵌合するという前提である。
しかしながら、容器や蓋の嵌合部の形状は、蓋閉め後の気密性等を考慮して様々な凹凸形状をしており、これらを位置合わせした後に押圧したからといって、必ずしも確実に嵌合するとは限らない。
【0005】
この課題は、食品が盛り付けられた容器に蓋を閉める状況に限られるものではなく、工業分野等において、ロボットによって蓋閉めを行う様々な状況全般に共通するものである。
このように、従来の技術では、ロボットによって嵌合を行う場合に、確実に嵌合を行うという観点において、未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明の課題は、ロボットによって嵌合を行う場合に、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る嵌合システムは、
保持機構及び押圧機構を備えたロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた嵌合システムであって、
前記制御装置は、
第1嵌合部を有する蓋を前記保持機構で保持することで、容器が有する第2嵌合部に対して、前記第1嵌合部を近接させた状態を維持する保持動作と、
前記保持動作により近接させた状態が維持されている間に、前記押圧機構を第1方向に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、
前記第1嵌合動作を行った後に、前記押圧機構を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロボットによって蓋閉め作業を行う場合に、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】発明に係る嵌合システム1全体の構成を模式的に示す斜視図である。
図2】制御装置40のハードウェア構成を示す模式図である。
図3】制御装置40の機能的構成を示すブロック図である。
図4】ハンド31の先端に装着される嵌合部材31aの構成について模式的に示す斜視図である。
図5】押圧機構310の構造について、より詳細に説明するための模式図である。
図6】第1支持部312と第2支持部313が固定された状態の押圧機構310の構造について、詳細に説明するための模式図である。
図7】抑制機構340の構造について、より詳細に説明するための模式図である。
図8】制御装置40の制御に基づいて、多関節ロボット30が行う嵌合に関する一連の動作の一例を示す模式図である。
図9】制御装置40の制御に基づいて、多関節ロボット30が行う嵌合に関する一連の動作の一例を示す模式図である。
図10】制御装置40の制御に基づいて、多関節ロボット30が行う嵌合に関する一連の動作の一例を示す模式図である。
図11】制御装置40の制御に基づいて、多関節ロボット30が行う嵌合に関する一連の動作の一例を示す模式図である。
図12】制御装置40の制御に基づいて、多関節ロボット30が行う嵌合に関する一連の動作の一例を示す模式図である。
図13】変形例1において、制御装置40の制御に基づいて、多関節ロボット30が行う嵌合に関する一連の動作の一例を示す模式図である。
図14】変形例2において、複数の機能を、それぞれ別の機構により実現する場合の構成例を示す図である。
図15】嵌合システム1が実行する蓋嵌合処理の流れを示すフローチャートである。
図16】嵌合システム1が実行する蓋嵌合処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[実施形態]
[全体構成]
図1は、本発明に係る嵌合システム1全体の構成を模式的に示す斜視図である。
本実施形態における嵌合システム1は、対象物が盛り付けられた容器に対して、蓋を嵌合する嵌合システムに本発明を適用することを想定したものである。以下の説明では、嵌合システム1が、対象物として食品が盛り付けられた容器に対して、蓋を嵌合することで、この容器の開口部を閉塞する場合を例に挙げて説明する。
【0011】
この場合、食品の種類について特に限定されず、例えば、麺類や寿司といった主食や、肉や魚料理等の主菜や、ポテトサラダ等の副菜(すなわち、惣菜)や、これらが容器内で区分された領域毎に詰め合わせられた弁当等であってもよい。また、容器及び蓋の形状についても特に限定されず、容器及び蓋を鉛直上方から平面視した場合に、四角形や六角形といった多角形の形状のものであってもよいし、多角形にさらに円弧を含んだ形状のものであってもよいし、正円や楕円といった円形の形状のものであってもよい。
すなわち、嵌合システム1は、様々な食品が盛り付けられた、様々な形状の容器及び蓋に対して、汎用的に嵌合を行うことができる。
【0012】
図1に示すように、嵌合システム1は、蓋供給部10と、容器検出センサ20と、多関節ロボット30と、制御装置40と、を備えている。また、制御装置40と、蓋供給部10、容器検出センサ20、及び多関節ロボット30とは、有線又は無線によって通信接続されており、相互に通信可能となっている。
【0013】
さらに、嵌合システム1に隣接して、食品が盛り付けられた容器を上流から下流に向かって自動的に運搬するベルトコンベア2が設置されている。このベルトコンベア2には、容器の進行方向を前方向とした場合における左右の方向に、一対の案内部材2Aが設置されている。案内部材2Aは、進行方向に向かってその左右幅が狭まっていくテーパ状の形状をしており、容器を所定の位置に案内できる構造となっている。食品が盛り付けられた容器は、案内部材2Aよりも上流においてベルトコンベア2の様々な位置(例えば、左右方向における異なる位置)にて運搬されているが、この案内部材2Aにより案内されることで、蓋を嵌合する位置である嵌合位置P1に案内される。
【0014】
なお、本実施形態において、嵌合システム1のさらなる上流にて容器に食品を盛り付ける作業は、人手によって行われてもよいし、食品盛り付け用のロボットによって行われてもよい。
【0015】
蓋供給部10は、多関節ロボット30に対して蓋を供給する位置である蓋供給位置P2に対して、蓋を供給する。蓋供給部10には、複数の種類の容器に対応した複数の種類の蓋が、それぞれ複数個収容されている。そして、蓋供給部10は、嵌合システム1が動作を開始すると、蓋供給部10に備えられた押し出し機構によって、ベルトコンベア2にて運搬中の容器に対応した形状の蓋を、1つずつ蓋供給位置P2に供給する。また、蓋供給部10は、多関節ロボット30が蓋閉めのために蓋を取得するたびに、新たに蓋を供給する。
なお、蓋が確実に蓋供給位置P2上に供給されるように、例えば、蓋供給部10の蓋の排出部分に向かって開口している、鉛直上方から平面視した場合に凹型等の形状をした部材を、蓋供給位置P2を囲うようにして設置してもよい。
【0016】
容器検出センサ20は、ベルトコンベア2にて運搬中の容器の位置を検出するセンサである。容器検出センサ20は、例えば、光学センサにより構成される。容器検出センサ20は、例えば、案内部材2Aにより案内された容器が、嵌合位置P1に運搬されたこと、あるいは、嵌合位置P1に運搬される直前であることを検出する。容器検出センサ20によって検出された容器の位置のデータは、制御装置40に出力される。
【0017】
多関節ロボット30は、例えば、水平多関節ロボットあるいは垂直多関節ロボット等によって構成され、容器に対して蓋の嵌合を実行するハンド31と、ハンド31の先端に装着されて蓋の嵌合を実行する嵌合部材31aと、可動範囲において任意の位置にハンド31を移動させるロボットアーム32と、を備えている。
また、多関節ロボット30のハンド31を保持する関節には、ハンド31が容器や蓋に接触したことを検出する手段の一例として、接触対象物からの反力(表面に接触されることで得られる力覚を含む)を計測する力センサ30Aが設置されている。力センサ30Aによって計測された反力のデータは、制御装置40に出力される。
【0018】
さらに、ハンド31を保持する関節は、ロボットアーム32に対してハンド31を捻り方向に回転させる軸を備えている。そのため、ハンド31が容器に蓋を嵌合する際に、ハンド31の向きを変化させることで、ハンド31が蓋や容器に対向する方向を調整することができる。これにより、自由度の高い動きによって、適切に嵌合を行うことができる。
【0019】
制御装置40は、PC(Personal Computer)又はプログラマブルコントローラ等の情報処理装置によって構成され、各種プログラムを実行することにより、嵌合システム1全体を制御する。例えば、制御装置40は、蓋供給部10が蓋を供給する動作や、多関節ロボット30が、蓋供給位置P2から蓋を取得し、この蓋を嵌合位置P1において容器に対して嵌合する動作等を制御する。より詳細には、例えば、制御装置40は、ロボットアーム32の駆動を制御することで、ハンド31を予め設定された所定位置に所定ルート及び所定速度で移動させる動作や、ハンド31に装着された嵌合部材31aが備える各機構の駆動を制御する動作を制御する。
【0020】
[制御装置40のハードウェア構成]
図2は、制御装置40のハードウェア構成を示す模式図である。
図2に示すように、制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)711と、ROM(Read Only Memory)712と、RAM(Random Access Memory)713と、バス714と、入力部715と、出力部716と、記憶部717と、通信部718と、ドライブ719と、を備えている。
【0021】
CPU711は、ROM712に記録されているプログラム、又は、記憶部717からRAM713にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM713には、CPU711が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0022】
CPU711、ROM712及びRAM713は、バス714を介して相互に接続されている。バス714には、入力部715、出力部716、記憶部717、通信部718及びドライブ719が接続されている。
【0023】
入力部715は、マウスやキーボード等の入力装置を備え、制御装置40に対する各種情報の入力を受け付ける。なお、入力部715としてマイクを備え、作業者の音声入力によって各種情報の入力を受け付けることとしてもよい。
出力部716は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部717は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部718は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0024】
ドライブ719には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア731が適宜装着される。ドライブ719によってリムーバブルメディア731から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部717にインストールされる。
なお、上記ハードウェア構成は、制御装置40の基本的構成であり、一部のハードウェアを備えない構成としたり、付加的なハードウェアを備えたり、ハードウェアの実装形態を変更したりすることができる。
【0025】
[機能的構成]
次に、制御装置40の機能的構成について説明する。
図3は、制御装置40の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、嵌合システム1の動作を制御するためのプログラムを実行することにより、制御装置40のCPU711においては、対象情報取得部151と、センサ情報取得部152と、蓋供給制御部153と、多関節ロボット制御部154と、記録制御部155と、が機能する。また、記憶部717には、パラメータ記憶部171と、履歴データベース(履歴DB)172と、が形成される。
【0026】
パラメータ記憶部171には、嵌合システム1が動作する際に用いられる各種パラメータが記憶されている。例えば、パラメータ記憶部171には、嵌合位置P1や蓋供給位置P2の位置、嵌合を実行する際のハンド31の移動経路、嵌合を実行する際の嵌合部材31aの駆動制御の手順といった、多関節ロボット30の動作パターンを定義するパラメータ等が記憶される。なお、嵌合システム1は、上述したように、様々な種類の容器及び蓋の嵌合に対応することが可能なので、このパラメータは様々な種類の容器及び蓋のそれぞれに対応して複数設定されていてもよい。
【0027】
履歴DB172には、嵌合システム1が動作した際に取得される制御に関するパラメータ、あるいは嵌合システム1で嵌合を行った際に嵌合に要した時間を示す値(例えば、複数回の嵌合に要した時間を、嵌合した回数で除算した値)等が履歴として記憶される。この場合、記録された制御に関するパラメータは、例えば、新たな動作パターンを設定する場面等において活用される。また、嵌合に要した時間を示す値は、例えば、嵌合システム1のユーザが要求するタクトタイム(TT:Takt Time)を、満たすことができるか否か等を検討する際の指標として活用される。
【0028】
対象情報取得部151は、嵌合の対象となる容器及び蓋に関する情報である対象情報を取得する。例えば、対象情報取得部151は、現在ベルトコンベア2にて運搬中の容器の種類や、これに対応する形状の蓋の種類といった情報や、あといくつ嵌合した場合に、ベルトコンベア2にて運搬される容器が異なる種類の容器変更される予定かといった情報を取得する。これらの情報は、ユーザが制御装置40の入力部715を介して入力することで、対象情報取得部151に取得される。この場合に、入力部715に代えて、例えば、多関節ロボット30の近傍にタッチパネル等の入力装置を設置し、ユーザがこの入力装置を介してこれらの情報を入力するようにしてもよい。
【0029】
センサ情報取得部152は、嵌合システム1に設置された各種センサによって検出された情報であるセンサ情報を取得する。例えば、センサ情報取得部152は、多関節ロボット30の関節に設置された力センサ30Aによって計測された反力のデータや、多関節ロボット30の近傍に設置された容器検出センサ20によって検出された容器の位置のデータを取得する。
【0030】
蓋供給制御部153は、蓋供給部10を制御し、蓋供給位置P2に蓋を供給するタイミングを制御する。例えば、蓋供給制御部153は、嵌合システム1の動作開始と共に、蓋供給部10に蓋の供給を開始させる。また、蓋供給制御部153は、多関節ロボット30が蓋閉めのために蓋を取得するたびに、蓋供給部10に新たに蓋を供給させる。この場合に、蓋供給制御部153は、対象情報取得部151が取得した対象情報に基づいて、現在ベルトコンベア2にて運搬中の容器の種類を特定し、この特定した容器に対応する形状の蓋を、蓋供給部10に供給させる。
【0031】
多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30の動作を制御し、嵌合システム1において定義されている動作パターンに従って、容器に対して蓋を嵌合するための一連の動作を多関節ロボット30に実行させる。例えば、多関節ロボット制御部154は、ハンド31を嵌合位置P1や蓋供給位置P2に向かって移送する動作(移送動作)、ハンド31により蓋供給位置P2から蓋を取得する動作(蓋取得動作)、ハンド31により蓋を容器の収容空間側に押し込む動作(押し込み動作)、ハンド31により嵌合位置P1にて容器に対して蓋を複数回嵌合する動作(第1嵌合動作及び第2嵌合動作を含む嵌合実行動作)、等を含む様々な動作を多関節ロボット30に実行させる。この場合に、多関節ロボット制御部154は、対象情報取得部151が取得した対象情報に基づいて、現在ベルトコンベア2にて運搬中の容器の種類を特定し、この特定した容器に対応する動作パターンを用いるようにする。
【0032】
記録制御部155は、嵌合システム1が動作した際に取得される制御に関するパラメータや、嵌合システム1で嵌合を行った際に嵌合に要した時間を示す値等を、履歴DB172に記憶する。これらの情報の活用方法については、履歴DB172の説明の際に上述した通りである。
【0033】
[嵌合部材31aの構成]
図4は、ハンド31の先端に装着される嵌合部材31aの構成について模式的に示す斜視図である。
図4に示すように、嵌合部材31aは、押圧機構310と、スライド機構320と、開閉機構330と、抑制機構340と、ハンド装着部350と、を備える。ここで、図示するように、押圧機構310が備える押圧部311の長手方向を基準として、開閉機構330が配置されている方向を前方向と定義する。また、この前方向と逆側のスライド機構320が配置されている方向を後ろ方向と定義する。また、水平面において、この長手方向と直行する方向であって、嵌合部材31aを後方向から前方向に向かって平面視した場合の、右側の方向を右方向と定義し、左側の方向を左方向と定義する。さらに、前後方向及び左右方向のそれぞれと互いに直行する方向を鉛直方向と定義する。この場合、鉛直方向を基準として、スライド機構320や開閉機構330が配置されている側の方向が鉛直上方であって、押圧機構310や抑制機構340が配置されている側の方向が鉛直下方となる。
【0034】
押圧機構310は、左方向と右方向のそれぞれに配置されており、一対の構成となっている。この一対の押圧機構310のそれぞれは、シリコンやゴム等の可撓性のある素材により板状に構成されている押圧部311と、押圧部311を支持する第1支持部312と、同じく押圧部311を支持する第2支持部313と、を備える。
押圧機構310は、蓋を嵌合する際に押圧部311によって蓋と接触することで、蓋の当接対象部分を当接したり、蓋の押圧対象部分を押圧したりする機構として機能する。なお、押圧機構310のより詳細な構造については、図5図6を参照して後述する。
【0035】
スライド機構320は、左右方向に直線の溝が設けられたレール部321と、この溝に係止するフック部322と、第2支持部313、フック部322、及びラック333のそれぞれを結合することで各機構同士を連結する連結部323と、を備える。
スライド機構320は、レール部321、フック部322及び連結部323によって一対の押圧機構310を左右方向に直動可能に支持すると共に、連結部323を介して開閉機構330から伝達される左右方向へ直動する力に応じて、一対の押圧機構310同士を左右方向に近づけたり遠ざけたりする(すなわち、開閉する)ための機構として機能する。
【0036】
開閉機構330は、鉛直方向を回転軸として回転運動をするアクチュエータ331と、アクチュエータ331の回転部分の先端に接続されたピニオンギア332と、ピニオンギア332の歯車に噛み合うように溝が設けられた一対のラック333と、を備えている。
ピニオンギア332とラック333はラック・アンド・ピニオンを形成し、アクチュエータ331の回転運動により生じた回転力を、ピニオンギア332と、一対のラック333それぞれが、左右方向に直動する力に変換する。これにより、開閉機構330は、左右方向に直動する力を、連結部323を介して一対の押圧機構310のそれぞれに伝達することで、一対の押圧機構310を駆動する機構として機能する。
【0037】
抑制機構340は、接続されている真空発生器(図示省略)を用いて、密着した対象物との間の空間を真空に近づけることで、対象物を吸着する吸着パッドである。本実施形態において、抑制機構340は、対象物として蓋に密着して吸着することで、蓋を保持する。さらに、抑制機構340は、鉛直方向に容器に蓋を嵌合する際に、蓋に密着した先端が鉛直方向に伸縮する構造を有している。そして、抑制機構340は、この伸縮する先端を用いることで、蓋の天面を容器の収容空間側に押し込む。なお、抑制機構340のより詳細な構造については、図7を参照して後述する。
【0038】
ハンド装着部350は、上述の構成をした嵌合部材31a全体を、ハンド31の先端に装着するための部分である。ハンド装着部350には、例えば、図示を省略した複数のネジ穴が設けられ、このネジ穴にネジを螺合することで、嵌合部材31aはハンド31の先端に装着される。
【0039】
図5は、押圧機構310の構造について、より詳細に説明するための模式図である。図5では、押圧機構310を鉛直下方から平面視した構造を示す。
【0040】
図5(a)に示すように、押圧部311は、2つの異なる形状が組み合わさった構造をしている。具体的には、図4で定義した左右方向(図5の紙面では上下方向)において、一対の押圧機構310の一方と他方が対向する側(すなわち、内側)は平面形状となっている。一方で、左右方向において、この内側と逆側の方向(すなわち、外側)は、鉛直方向に延在する角柱が所定間隔で離間して配置された形状となっている。なお、押圧部311が、可撓性を有する素材で構成されている点については、上述した通りである。
【0041】
図5(b)に示すように、押圧部311は、押圧部311の両端の角柱形状それぞれに対応した形状にて構成された第1支持部312に嵌め込まれる。
【0042】
図5(c)に示すように、押圧部311は、第1支持部312と挟まれるようにして、第2支持部313に支持される。そして、図5(d)に示すように、第1支持部312と第2支持部313は、ネジにより螺合されることで固定される。
これらの、第1支持部312と、第2支持部313とは、押圧部311を適切に支持するために、押圧部311とは異なり、通常の使用では変形しないステンレス等の可撓性が極めて低い素材で構成されている。
【0043】
図6は、第1支持部312と第2支持部313が固定された状態の押圧機構310の構造について、詳細に説明するための模式図である。
【0044】
図6(a)は、押圧機構310を図5で定義した外側から平面視した状態を示す。また、図6(b)は、押圧機構310を図5で定義した内側から平面視した状態を示す。前提として、同じ素材で構成されていたとしても、その構造から、押圧部311の内側の平面形状は、相対的に可撓性が高く変形しやすい。これに対して、押圧部311の外側の角柱形状は、相対的に可撓性が低く変形しにくい。
【0045】
そのため、押圧部311の底面(平面形状及び角柱形状の底面)が何らかの物体に接触して、その物体から鉛直方向の力(例えば、鉛直上方への力)が加わった場合には、角柱形状の低い可撓性が影響することで、全体として可撓性が低く変形しにくい状態となる。これに対して、押圧部311の内側の平面形状が何らかの物体に接触して、その物体から外側方向への力が加わった場合、平面形状はその高い可撓性により外側に湾曲すると共に、角柱形状はそれぞれが離間していることから互いに接触することはなく、平面形状の湾曲に対して影響を与えない。これにより、全体として可撓性が高く変形しやすい状態となる。
【0046】
図6(c)は、上述した後者の場合(押圧部311の内側の平面形状が何らかの物体に接触して、その物体から外側方向への力が加わった場合)の、押圧機構310を、鉛直上方から平面視した状態を示す。図示されるように、外側方向への力が加わったことから、第1支持部312及び第2支持部313に支持されている部分を除き、平面形状はその高い可撓性により外側に湾曲する。そして、角柱形状はこの平面形状の湾曲に対して影響を与えていないことが分かる。本実施形態では、このような、力のかかる方向によって、押圧部311の可撓性に基づく変形の仕方が異なるという特徴を利用して、適切な嵌合を実現する。
【0047】
図7は、抑制機構340の構造について、より詳細に説明するための模式図である。図7では、抑制機構340を前方向から平面視した構造を示す。
図7(a)に示すように、抑制機構340は、筐体部341と、押し込み部342と、保持部343を備える。
【0048】
筐体部341は、押し込み部342全体を収容する円筒形の筐体であり、筐体部341の天面は嵌合部材31aの底面に固定される。また、図中では押し込み部342の構成を明確とするため、筐体部341については、その断面を示す。
押し込み部342は、筐体部341の内部で保持部343を支持する。押し込み部342は鉛直方向に伸縮する弾性体(ここでは、圧縮コイルばね)を有している。
保持部343は、蓋に密着して吸着することで、蓋を保持する真空パッドである。保持部343は、筐体部341及び押し込み部342の中心部分を鉛直方向に挿通して、真空発生器(図示省略)に接続される。
【0049】
このような構成を有する抑制機構340は、図7(b)に示すように、蓋に接触すると、保持部343による吸着により蓋を移送可能な状態に保持する。また、図7(c)に示すように、後述する嵌合時の動作において、保持部343の先端に蓋が密着した状態(すなわち、蓋を保持している状態)であって、且つ、蓋が容器に支持された状態(詳細は後述する。)で、嵌合部材31aが下降すると、抑制機構340は、鉛直下方に向かって押し込まれる。すると、保持部343の先端に対して、蓋からの反力が押し込む方向と逆側の方向(ここでは、鉛直上方)に与えられ、これに応じて弾性体である圧縮コイルばねが弾性変形し、押し込む方向(ここでは、鉛直方向)において縮む。
【0050】
次に、図7(d)に示すように、嵌合部材31aがさらに下降すると、抑制機構340の押し込み部342は、さらに弾性変形し、押し込まれた蓋は、蓋自身の可撓性により変形して、押し込み方向(ここでは、鉛直下方)に押し込まれた状態となる。本実施形態では、このような、抑制機構340の先端が鉛直方向に伸縮するという特徴を利用して、蓋閉め作業において嵌合を行う場合に、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させる。
この嵌合時の動作や作用ついて、以下、さらに説明をする。
【0051】
[嵌合に関する一連の動作]
図8図12は、制御装置40の制御に基づいて、多関節ロボット30が行う嵌合に関する一連の動作の一例を示す模式図である。
【0052】
図8(a)に、容器及び蓋を鉛直上方から平面視した状態を示す。容器及び蓋の中央の盛り付け領域には、食品が盛り付けられている。また、盛り付け領域の周辺には嵌合部が設けられており、容器の嵌合部を蓋の嵌合部に対して押圧して、2つの嵌合部を嵌合することで、容器の開口部は蓋により閉塞される。なお、このような容器と蓋の嵌合については、例えば、外勘合方式、内勘合方式、内外勘合方式等の様々な嵌合方式があるが、本実施形態では、蓋の嵌合部を押圧することで嵌合を実現できるのであれば、何れの嵌合方式についても、処理の対象とすることができる。
【0053】
以下に説明する図8(a)~図9図11及び図12、並びに、後述する図13は、何れも、この図8(a)のA-A断面図である。また、後述する図10は、この図8(a)のB-B断面図である。
まず、図8(b)に示すように、多関節ロボット30は、ハンド31を蓋供給位置P2に移送させると、嵌合部材31aを蓋供給位置P2に供給されている蓋に接触するまで鉛直上方から下降させる。そして、多関節ロボット30は、抑制機構340により蓋を吸着することで、蓋の保持を開始する。そして、多関節ロボット30は、蓋を保持したまま、ハンド31を嵌合位置P1に移送する。
【0054】
次に、図8(c)に示すように、多関節ロボット30は、ベルトコンベア2により嵌合位置P1まで運搬されてくる容器に対して、嵌合部材31aを鉛直上方から下降する。この場合、蓋の嵌合部の底面は、容器の嵌合部の天面に接触する。しかしながら、未だ押圧機構310による押圧は行われていないことから、嵌合部同士は嵌合していない。
これにより、蓋の両端部分にある蓋の嵌合部は、容器により鉛直下方から支持された状態となる。
【0055】
次に、図9(d)に示すように、多関節ロボット30は、容器に対して、嵌合部材31aを鉛直上方からさらに下降する。ここで、上述したように、蓋の両端部分にある蓋の嵌合部は、容器により鉛直下方から支持されている。そのため、蓋の両端部分については、これ以上鉛直下方には移動しない。これに対して、蓋の中央の領域については、蓋の両端のように支持されてはいない。そのため、抑制機構340により蓋の中央の領域が鉛直下方に押し込まれることに伴い、蓋の中央の領域は変形して、容器の収容空間側(すなわち、食品が盛り付けられている側)の方向に押し込まれた状態となる。
【0056】
次に、図9(e)に示すように、多関節ロボット30は、蓋を抑制機構340で保持しながら、抑制機構340による押し込みを継続して行うことで、蓋が収容空間側の方向に押し込まれている状態であって、容器の嵌合部に対して蓋の嵌合部を近接させた状態を維持する。そして、多関節ロボット30は、この押し込まれている状態が維持されている間に、アクチュエータ331を駆動して、一対の押圧機構310のそれぞれを容器の水平面における中央部分に近づく方向(すなわち、内側方向)に水平移動させることで、一対の押圧機構310同士を近づけて、嵌合部よりも鉛直上方の蓋の側面の部分(以下、「当接対象部分」と称する。)に対して、押圧機構310の押圧部311を当接させる。
【0057】
ここで、図6を参照して上述したように、押圧部311の内側の平面形状が何らかの物体(ここでは、蓋の当接対象部分)に接触して、その物体から内側方向と反対側の外側方向への力(ここでは、蓋の当接対象部分からの反力)が加わった場合、押圧部311は平面形状の相対的に高い可撓性により外側に湾曲するという特徴がある。そのため、押圧部311は、可撓性により、蓋及び押圧部311を鉛直上方から平面視した場合に、当接対象部分の外周の形状に沿った形状に湾曲する。すなわち、本実施形態では、容器の水平面の形状(すなわち、鉛直上方から平面視した形状)そのものを利用して、この形状に沿った形状に、押圧機構310を変形させる。
これに伴い、押圧部311は、蓋の当接対象部分のさらに鉛直下方に存在する、嵌合のために押圧すべき部分(以下、「押圧対象部分」と称する。)に適合した形状に変形する。
【0058】
次に、図9(f)に示すように、多関節ロボット30は、変形動作により変形した状態の押圧機構310の押圧部311により、蓋の嵌合部の嵌合のために押圧すべき押圧対象部分を、鉛直下方に向かって押圧する。押圧対象部分の位置は容器によって異なるが、典型的には蓋の嵌合部の鉛直上方の部分が押圧対象部分である。
【0059】
詳細について以下で説明するが、本実施形態では、抑制機構340により容器の嵌合部に対して蓋の嵌合部を近接させた状態が維持されている間に、押圧機構310を所定の方向(以下、「第1方向」と称する。)に移動させることで、蓋の押圧対象部分を押圧する動作(以下、「第1嵌合動作」と称する。)をまず行う。図9(f)を参照して説明した、上記の嵌合動作は、この第1嵌合動作に相当する。
また、本実施形態では、この第1嵌合動作を行った後に、押圧機構310を第1方向とは異なる方向(以下、「第2方向」と称する)に移動させることで、押圧対象部分を再度押圧する動作(以下、「第2嵌合動作」と称する。)をさらに行う。
【0060】
これにより、第1嵌合動作において第1方向に動いて押圧した後に、さらに第2嵌合動作において第2方向という異なる方向に動いて押圧して、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合することができる。そのため、蓋閉め後の気密性等を考慮して様々な凹凸形状をした嵌合部であっても、可能な限り嵌合部同士の隙間をなくし、より確実に、嵌合をすることができる。例えば、仮に第1嵌合動作による嵌合が不十分なものであったとしても、第2嵌合動作によって、より確実に嵌合をすることができる。あるいは、仮に第1嵌合動作によってそもそも嵌合ができていなかったとしても、第2嵌合動作によって、より確実に嵌合をすることができる。
【0061】
ここで、第1方向と第2方向をそれぞれ何れの方向とするのかについては特に限定されないが、本実施形態では、一例として、第1方向を上述したように鉛直下方と想定して説明する。この場合、第2方向は、鉛直下方と異なる方向であればよく、例えば、左方向や、右方向、前方向、及び後ろ方向といった、水平面における方向であってもよいし、鉛直上方であってもよい。他にも、第2方向は、鉛直上方や鉛直下方への鉛直方向成分と、左右等の方向への水平方向成分の双方が含まれる方向であってもよい。すなわち、斜め方向であってもよい。
さらに、第2方向は、その移動の軌跡が、直線となる方向であってもよいし、曲線となる方向であってもよい。例えば、回転運動に基づいた、その移動の軌跡が円弧となるような方向であってもよい。加えて、第2方向は、1つの方向であってもよいし、例えば、往復運動に基づいた、複数の方向であってもよい。さらに、第1方向が鉛直下方であるというのは、上述したように例示にすぎず、これら説明した様々な方向の何れかを、第1方向としてもよい。
【0062】
つまり、本実施形態において、第1方向と第2方向が異なっており、この異なる方向を移動した押圧機構310が、異なる方法で押圧を行うことができればよい。そのため、例えば、嵌合の対象とする容器や蓋の形状や大きさや素材の特性といった様々な要素を考慮して、任意の方向を第1方向や第2方向として選択することができる。
【0063】
次に、押圧機構310を、様々な第2方向に移動させることで押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作について、図面を参照して、より具体的に説明する。
図10(a)に、図9(f)に示したようにして第1嵌合動作を行った後の、容器及び蓋の状態を示す。図10は、図8(a)のB-B断面図であり、容器や押圧機構310の長手方向を平面視した図である。
【0064】
まず、第1嵌合動作では、押圧機構310を鉛直下方に移動させることで押圧を行っている。この場合、容器と蓋の位置関係が適切であれば、第1嵌合動作によって、容器と蓋の嵌合部同士は嵌合する。例えば、容器と蓋が共に水平な状態となっており、且つ、容器と蓋の嵌合部同士が正確に位置合わせされていれば、第1嵌合動作により、容器と蓋の嵌合部同士は嵌合する。
しかしながら、現実的には、第1嵌合動作の実行時に、これらの位置関係がずれた状態となっている場合がある。また、そもそも嵌合部の形状が複雑であり、単純に1つの方向に動いて押圧しただけでは嵌合することが困難な場合もある。これらの場合、第1嵌合動作を行ったとしても、嵌合が不十分、もしくは、全く嵌合できていないという状態になる。例えば、図10(a)に示すように、蓋が傾いており、蓋の嵌合部の一部が浮いているような、不十分に嵌合された状態となる。
そこで、このような容器と蓋を、より確実に嵌合するために、以下に示すようにして、第2嵌合動作を行う。
【0065】
例えば、図10(b-1)に示すようにして、押圧機構310が押圧対象部分に接触した状態を維持しながら、押圧機構310を第2方向に移動させることで押圧対象部分を再度押圧して、第2嵌合動作を行う。この場合、蓋の傾きが修正されるように、押圧機構310の底面を水平方向として押圧対象部分に接触させた状態のまま、前後方向(紙面における左右方向)を第2方向として、押圧機構310を往復運動させる。すなわち、押圧機構310が前後に揺動するように移動させる。なお、以下の説明も含め、揺動とは、ある方向に単純に移動するのみならず、例えば、微小に振動しながら移動するような動作を含んでいてもよい。例えば、前後方向に移動しながら、微小に鉛直上下方向に振動しながら移動するような動作を含んでいてもよい。
【0066】
これにより、押圧機構310が第2方向(ここでは、前後方向)へ移動する力を、押圧対象部分を鉛直下方側に押圧して嵌合させる力に変換しながら押圧を行うことができる。この嵌合させる力には、鉛直上方から下方へ向かった直線的な力のみならず、斜め方向へ向かった力も含まれる。従って、第1嵌合動作のように鉛直下方にのみ押圧する場合と異なり、より様々な方向へ作用する力を用いて、様々な方向における嵌合部同士の隙間をなくすよう嵌合ができる。
【0067】
この場合に、蓋の嵌合部において、傾きにより鉛直上方側に浮いている部分には、他の部分よりも相対的に強く押圧させる力が作用する。これにより、このように浮いてしまっており、嵌合が不十分となっている部分を、より確実に嵌合させることができる。特に、本実施形態において、押圧機構310の押圧部311は、可撓性を有している。そのため、蓋の嵌合部の浮いている部分に適合した形状に変形して、嵌合させる力を強く作用させることができる。また、押圧部311は、変形前の形状に復元しようとする力が働くことから、この力によって、嵌合させる力をさらに作用させることができる。
【0068】
なお、図10や後述の図12では、押圧機構310と、容器及び蓋との位置関係について明確とするべく、抑制機構340の図示を省略しているが、第2嵌合動作において抑制機構340による保持や押し込みは継続していることを想定する。ただし、これに限らず、第1嵌合動作が終了した時点で、抑制機構340による保持や押し込みを終了し、その後、第2嵌合動作を行うようにしてもよい。
【0069】
第2嵌合動作としては、他にも、例えば図10(b-2)に示すようにして、蓋の傾きが修正されるよう、押圧機構310の底面を蓋の傾きと合わせた、やや傾いた方向として押圧対象部分に接触させた状態のまま、前後方向(紙面における左右方向)を第2方向として、押圧機構310を往復運動させる。すなわち、押圧機構310が前後に揺動するように移動させる。
【0070】
このようにしても、図10(b-1)と同様に、押圧機構310が第2方向(ここでは、前後方向)へ移動する力を、押圧対象部分を鉛直下方側に押圧して嵌合させる力に変換しながら押圧を行うことができる。この場合、蓋の嵌合部において、傾きにより鉛直上方側に浮いている部分には、他の部分よりも相対的に強く押圧させる力が作用する点についても、図10(b-1)と同様である。特に、この例であれば、仮に押圧機構310の押圧部311全体が可撓性の低い素材で構成されており、殆ど変形しないような場合であったとしても、押圧部311と押圧対象部分との摩擦力が確保できるような素材であれば、第2嵌合動作を実現することができる。
【0071】
なお、図10において、蓋の嵌合部の紙面における右方向の部分が浮いており、押圧機構310が紙面における右方向に移動して、この部分をより確実に嵌合する場合を例にとって説明したが、これは一例に過ぎない。押圧機構310は、第2嵌合動作において、紙面における左方向にも移動するので、例えば、蓋の嵌合部の紙面における左方向の部分が浮いていた場合であったとしても、この部分をより確実に嵌合させることができる。また、このような往復運動により、例えば、蓋の嵌合部の紙面における中央の部分等が浮いていた場合であったとしても、この部分をより確実に嵌合させることができる。
【0072】
図11は、第1嵌合動作や第2嵌合動作に伴う、押圧部311の底面部分の変形の一例について示す図である。図11は、図8(a)のA-A断面図であり、容器や押圧機構310の長手方向と水平面において直交する方向(すなわち、短手方向)を平面視した図である。
【0073】
図11(a)に示すように、容器と蓋の位置関係が適切な状態で、適切に第1嵌合動作を行った場合、上述した押圧部311における角柱形状の、鉛直方向への可撓性が相対的に低いという特徴から、押圧部311は変形しない。
これに対して、図11(b)に示すように、容器と蓋の位置関係が不適切な状態であって、例えば、第1嵌合動作をおこなった際、容器に対して蓋が傾いていた場合には、上述した押圧部311における平面形状の、外側方向への可撓性が相対的に高いという特徴から、押圧部311は外側に、捲れ上がるように変形する。これは、第1嵌合動作を行った場合に限るものでなく、例えば、図10(b-1)に示すようにして第2嵌合動作を行った場合にも起こりえる変形である。
【0074】
このように変形してしまった場合、押圧部311の底面の一部分のみが蓋の押圧対象部分に接触し、この一部分だけに、嵌合させる力が作用する。従って、このまま第1嵌合動作や第2嵌合動作を継続しても、押圧対象部分を適切に嵌合することは困難となる。
そこで、第2嵌合動作として、第1方向である鉛直下方とは異なる方向である、鉛直上方や、鉛直の斜め上方を第2方向として、押圧部311を移動させる。これにより、押圧部311は蓋に押圧されている状態から解放される。これに伴い、図11(c)に示すように、押圧部311は、押圧部311が有している可撓性に基づいた復元力により、本来の形状に戻るよう、内側へ復元をする。
【0075】
このように、内側に復元中の押圧部311を、鉛直下方、あるいは鉛直斜め下方に再度移動させることで、この押圧部311が再度移動する力を、押圧対象部分を鉛直下方側に押圧して嵌合させる力に変換しながら押圧を行うことができる。この嵌合させる力には、鉛直上方から下方へ向かった直線的な力のみならず、復元中の押圧部311が内側に復元するために斜め方向へ向かう力も含まれる。従って、第1嵌合動作のように鉛直下方にのみ押圧する場合と異なり、より様々な方向へ作用する力を用いて、様々な方向における嵌合部同士の隙間をなくすよう嵌合ができる。
【0076】
さらに、このような短手方向の状態を考慮した第2嵌合動作を、図10に示したような長手方向の状態を考慮した第2嵌合動作と組み合わせて行う(すなわち、異なる第2方向に対する、2つの第2嵌合動作を順番に行う)ことで、より確実に嵌合させることができる。
特に、第1嵌合動作において、容器と蓋の嵌合部同士がどのように嵌合されるかについては、予測が困難であり、様々な状況が想定されることから、このように2つの第2嵌合動作を順番に行うことは、より確実に嵌合を行うために、好適である。
【0077】
図12に、図11に示したような押圧部311の特徴を利用して行われる、第2嵌合動作の一例を示す。
例えば、図12(a-1)に示すようにして、第2嵌合動作のために、一対の押圧機構310を第2方向(例えば、鉛直上方や、鉛直の斜め上方)に一度移動してから、一対の押圧機構310を鉛直下方、あるいは鉛直斜め下方に再度移動させる。つまり、押圧機構310を鉛直上方や鉛直の斜め上方を含む方向を第2方向として、押圧機構310が上下に揺動するように移動させる。これにより、押圧対象部分を鉛直下方側に押圧して嵌合させる力に加えて、図11を参照して上述したように、復元中の押圧部311が内側に復元するために斜め方向へ向かう力も利用して、より確実に嵌合を行うことができる。
【0078】
他にも、例えば、ハンド31の関節として機能する部分を回転軸として嵌合部材31aを回転運動できるような場合には、図12(b-2)に示すようにして、第2嵌合動作のために、回転運動により移動する軌跡を第2方向として嵌合部材31aを回転運動させる。つまり、押圧機構310を、回転軸を中心として、振り子が揺動するように移動させる。これによっても、押圧対象部分を鉛直下方側に押圧して嵌合させる力に加えて、復元中の押圧部311が内側に復元するために斜め方向へ向かう力も利用して、より確実に嵌合を行うことができる。また、この場合、押圧対象部分を鉛直下方側に押圧して嵌合させる力は、回転運動に基づいた力となるので、第1嵌合動作のように鉛直下方にのみ押圧する場合と異なり、より様々な方向へ作用する力を用いて、様々な方向における嵌合部同士の隙間をなくすよう嵌合ができる。
【0079】
他にも、例えば、一対の嵌合部材31aをそれぞれ独立して駆動できるような場合には、図12(b-3)に示すようにして、一方の押圧機構310(紙面において左側の押圧機構310)によって押圧対象部分に対する押圧を継続する。そして、第2嵌合動作のために、他方の押圧機構310(紙面において右側の押圧機構310)を第2方向(例えば、鉛直上方や、鉛直の斜め上方)に一度移動してから、この押圧機構310を鉛直下方、あるいは鉛直斜め下方に再度移動させる。つまり、一方の押圧機構310を鉛直上方や鉛直の斜め上方を含む方向を第2方向として、押圧機構310が上下に揺動するように移動させる。これによっても、押圧対象部分を鉛直下方側に押圧して嵌合させる力に加えて、復元中の押圧部311が内側に復元するために斜め方向へ向かう力も利用して、より確実に嵌合を行うことができる。また、この場合、一対の押圧機構310の各々が、それぞれ異なる方法で押圧を行うことから、第1嵌合動作のように鉛直下方にのみ押圧する場合と異なり、より様々な方向へ作用する力を用いて、様々な方向における嵌合部同士の隙間をなくすよう嵌合ができる。なお、この場合には、第2嵌合動作を行う押圧機構310を入れ替えて、一方の押圧機構310が第2嵌合動作を行った後に、他方の押圧機構310が第2嵌合動作を行うようにする。
【0080】
なお、図12において、蓋の嵌合部の紙面における右方向の部分が浮いており、紙面の右方向の押圧機構310により、この部分をより確実に押圧する場合を例にとって説明したが、これは一例に過ぎない。紙面の左方向の押圧機構310も同様にして、第2嵌合動作を行うので、例えば、蓋の嵌合部の紙面における左方向の部分が浮いていた場合であったとしても、この部分をより確実に嵌合させることができる。
【0081】
また、図10図12を参照して説明した第2嵌合動作は、一例に過ぎず、これ以外にも容器や蓋に適合した様々な方法で、第2嵌合動作を実現することができる。また、この様々な方法による第2嵌合動作を、適宜組み合わせて行うこともできる。
【0082】
そして、多関節ロボット30は、第2嵌合動作が終了すると抑制機構340による吸着を取り止め、抑制機構340による蓋の保持を終了する。これにより、嵌合システム1による嵌合時の一連の動作は終了する。なお、その後、多関節ロボット30は、嵌合後の容器を解放するために上昇するが、この上昇の際に、嵌合した蓋が再度外れないように、押圧機構310を一度左右に開いて当接対象部分への当接を取り止めてから、上昇するようにしてもよい。
【0083】
以上、嵌合システム1による嵌合時の一連の動作について説明したが、この一連の動作によれば、例えば、以下に示すような効果を奏する。
まず、このような嵌合動作において、通常、当接対象部分と押圧対象部分とは、鉛直上方から平面視した場合に相似した形状をしているが、その大きさが異なることから離間している。そのため、押圧対象部分を押圧するのは、当接対象部分と当接している押圧部311の平面形状ではなく、この平面形状から外側に離間している押圧部311の角柱形状である。ここで、図6を参照して上述したように、押圧部311の角柱形状の底面が何らかの物体(ここでは、蓋の押圧対象部分)に接触して、その物体から鉛直上方への力(ここでは、蓋の押圧対象部分からの反力)が加わった場合、角柱形状の低い可撓性により変形しにくいという特徴がある。そのため、押圧部311は、変形することなく押圧を行うことができる。また、上述した当接対象部分による当接によって、角柱形状も含めて押圧部311は、押圧対象部分に適合した形状に変形している。そのため、押圧部311は、押圧対象部分全体を均等な力でまんべんなく押圧することができ、より確実に、蓋の嵌合部と容器の嵌合部という嵌合部同士を嵌合することができる。
【0084】
また、第1嵌合動作や第2嵌合動作において、抑制機構340による押し込みを継続することで、蓋が収容空間側の方向に押し込まれている状態を維持する。これにより、容器と蓋とで閉塞される空間を縮小させて、空気を抜きながら嵌合することができる。そのため、容器内へ空気の流入量が低減し、閉塞後の容器や蓋の膨らみを抑制することができる。また、膨らみを抑制することで、容器と蓋をより確実に嵌合することができる。
【0085】
このように、嵌合システム1による嵌合に関わる一連の動作では、力のかかる方向によって、押圧部311の可撓性に基づく変形の仕方が異なるという特徴を利用して、変形時には相対的に高い可撓性で変形をさせる一方で、押圧時には相対的に低い可撓性で変形させることなく押圧をすることができる。
これにより、押圧機構310を、今回の嵌合の対象とする容器や蓋の嵌合部に適合した形状とした上で、その後、適切に押圧を行うことができる。そのため、複数の種類の蓋や容器のそれぞれに対応して嵌合を実現することが可能となる。従って、例えば、1つの製造ライン上で異なる形状の容器に対応しなければならないような状況において、蓋閉めに用いる部材を交換することなく嵌合をすることができる。
また、この変形は、押圧機構310が有する可撓性という物理的な特性を利用することで実現できる、従って、上記のような状況において、多関節ロボット30の制御方法を適宜細かく調整することなく対応することができる。
すなわち、嵌合システム1によれば、多関節ロボット30によって嵌合を行う場合に、様々な嵌合対象物に対して、より汎用的に嵌合を行うことができる。
【0086】
また、嵌合システム1による嵌合に関わる一連の動作では、抑制機構340の先端が鉛直方向に伸縮するという特徴を利用して、容器と蓋とで閉塞される空間を縮小させて、空気を抜きながら嵌合することができる。そのため、容器内へ空気の流入量が低減し、閉塞後の容器や蓋の膨らみを抑制することができる。また、膨らみを抑制することで、容器と蓋をより確実に嵌合することができる。
さらに、嵌合システム1によれば、独立して駆動可能な複数の押圧部材によって交互に押圧を行うような煩雑な処理を行う必要もない。そのため、例えば、一度の押圧で嵌合を終了でき、作業時間を短縮することができる。
すなわち、嵌合システム1によれば、多関節ロボット30によって嵌合を行う場合に、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させることができる。
【0087】
特に、嵌合システム1によれば、第1嵌合動作において第1方向に動いて押圧した後に、さらに第2嵌合動作において第2方向という異なる方向に動いて押圧して、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合することができる。これにより、蓋閉め後の気密性等を考慮して様々な凹凸形状をした嵌合部であっても、可能な限り嵌合部同士の隙間をなくし、より確実に嵌合をすることができる。例えば、仮に第1嵌合動作による嵌合が不十分なものであったとしても、第2嵌合動作によって、より確実に嵌合をすることができる。あるいは、仮に第1嵌合動作によってそもそも嵌合ができていなかったとしても、第2嵌合動作によって、より確実に嵌合をすることができる。
このように、嵌合システム1は、「ある方向に動いて押圧したからといって、必ずしも確実に嵌合するとは限らない」という、従来技術では、そもそも想定すらされていなかった課題を鑑みたものであって、さらに、この課題を解決するものである。
すなわち、嵌合システム1によれば、多関節ロボット30によって嵌合を行う場合に、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させることができる。
【0088】
また、嵌合システム1によれば、押圧機構310を第2方向に揺動することで押圧対象部分を再度押圧する。
これにより、押圧機構310を揺動させるという動作(例えば、押圧機構310を揺らすことで第2方向に往復運動させるという動作や、揺動により押圧機構310を振動させる動作)によって、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させることができる。
【0089】
さらに、嵌合システム1によれば、図10(b-1)や図10(b-2)に示したように、第2嵌合動作では、押圧機構310が押圧対象部分に接触した状態を維持しながら、押圧機構310を第2方向に移動させることで押圧対象部分を再度押圧する。
これにより、押圧機構310が第2方向へ移動する力を、押圧対象部分を押圧する力に変換しながら押圧を行うことができる。
【0090】
さらに、嵌合システム1によれば、図12(a-2)や図10(a-3)に示したように、第2嵌合動作では、押圧対象部分における第1領域に対する押圧と、押圧対象部分における第2領域に対する押圧とを異なるタイミングで行うことで押圧対象部分を再度押圧する。
これにより、複数の押圧対象部分に対して、一律に押圧をするのではなく、押圧する力を分散するという異なる方法で押圧を行うことができる。
【0091】
さらに、嵌合システム1によれば、複数の方法で第2嵌合動作を行うことで、押圧機構310を、第1方向とは異なる第2方向であって、複数の第2方向に対して移動させることで、押圧対象部分を再度押圧する。
これにより、例えば、再度押圧する押圧対象部分に適した方向から、押圧を行うことができる。
【0092】
さらに、嵌合システム1によれば、図12(a-2)に示したように、押圧機構310を支持するハンド31を回転軸として、押圧機構310を回転運動させることで押圧対象部分を再度押圧する。
これにより、回転運動という規則性のある動きを利用して、様々な方向に動いて押圧を行うことができる。
【0093】
さらに、嵌合システム1によれば、図12に示したように、押圧機構310を水平方向に対して揺動することなく、押圧対象部分を再度押圧する。
これにより、例えば、ベルトコンベア2や容器の底面の摩擦力が低く、押圧機構310を水平方向に対して揺動すると、容器がベルトコンベア2上で動いて、蓋を嵌合する位置である嵌合位置P1からずれてしまうような場合であっても、容器を嵌合位置P1に留まらせておくことができる。そのため、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させることができる。
【0094】
[作用]
図13及び図14は、上述した嵌合システム1による嵌合に関わる一連の動作における作用について説明するための模式図である。
【0095】
図13(A)には、一般的な技術において、蓋の両端の嵌合部を同時に容器の嵌合部に対して嵌合させた場合の、嵌合後の蓋により閉塞された容器の状態を示す。なお、これは、あくまで本実施形態との比較のために示すものであり、本実施形態により嵌合を行った場合の状態を示すものではない。本実施形態の第2嵌合動作のような動作を行わない場合、嵌合部同士を確実に嵌合することができず、嵌合が不十分となる場合がある。また、本実施形態の押し込みのような動作を行わない場合、容器内に空気が流入した状態のまま嵌合がなされるので、図示するように、内部の空気により蓋が外側に押し出され、嵌合後に容器や蓋が膨らんだ状態となる。このように容器や蓋が膨らんでしまうと、これも図示するように、容器や蓋の膨らみに伴って嵌合部も変形してしまい嵌合が不十分となり、外部からの力が加わった場合に蓋が容易に外れてしまう。
【0096】
これに対して、図13(B)には、本実施形態において、上述したようにして第1嵌合動作を行った後に、さらに第2嵌合動作を行って嵌合させた場合の、嵌合後の蓋により閉塞された容器の状態を示す。上述したように、本実施形態では、第2嵌合動作を行うことにより、嵌合部同士を、より確実に嵌合する。また、本実施形態では、抑制機構340により蓋の中央領域を、容器の収容空間側の方向に押し込んだ状態で嵌合を行う。これにより、容器と蓋とで閉塞される空間を縮小させて、空気を抜きながら嵌合することができる。そのため、図示するように、閉塞後の容器や蓋の膨らみを抑制することができる。また、膨らみを抑制することで、嵌合部の変形が生じることもなく、容器と蓋をより確実に嵌合することができる。
このように、一般的な技術と比較して、本実施形態が、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合できることは明らかである。
【0097】
図14は、押圧機構310の押圧部311を当接対象部分に当接させた場合の、変形例を示す図である。図14は、変形前後の押圧機構310と、容器及び蓋とを、鉛直上方から平面視した状態を示す。
図14(A)及び(B)に示すように、変形前の押圧機構310は、長手方向において、当接対象部分及び押圧対象部分以上の長さを有している。すなわち、変形前の押圧機構310は、長手方向において、相対的に長尺となっている。これにより、蓋や容器の大小を問うことなく、押圧対象部分の全体に対して、押圧することが可能となる。
【0098】
また、これも図14(A)及び(B)に示すように、当接対象部分や押圧対象部分は、円弧形状を含む形状である。変形後の押圧機構310は、この円弧形状に沿った形状となるように、少なくとも一部を湾曲させるように変形している。これにより、例えば、食品を盛り付ける容器や蓋等でよく用いられる、円弧形状を含んだ容器や蓋に対して、適切に押圧を行うことができる。
なお、図14(A)及び(B)では、角部分に円弧形状を含んだ四角形の容器や、全体が円弧形状で構成された正円である円形の容器を例示しているが、押圧機構310を変形させる対象はこれに限られない。例えば、角部分に円弧形状を含んでいない六角形等の多角形の容器を対象として、押圧機構310を変形させることも可能である。
【0099】
[全体動作]
次に、嵌合システム1の全体動作を説明する。
図15及び図16は、嵌合システム1が実行する蓋嵌合処理の流れを示すフローチャートである。蓋嵌合処理は、例えば、ユーザによって蓋嵌合処理を開始させる操作が行われたことを契機として開始される。
【0100】
図15に示すように、蓋嵌合処理が開始されると、S11において、多関節ロボット制御部154は、蓋嵌合処理における一連の動作を実行するための動作用のデータ(動作パターンのデータ等)をパラメータ記憶部171から読み込むことで、容器に蓋を嵌合するための準備を行う。この際、多関節ロボット制御部154は、現在ベルトコンベア2にて運搬中の容器に対応する動作パターンを読み込む。
【0101】
ステップS12において、蓋供給制御部153は、蓋供給部10を制御し、蓋供給位置P2に、現在ベルトコンベア2にて運搬中の容器に対応する蓋を供給する。
ステップS13において、多関節ロボット制御部154は、動作パターンのデータに従って、蓋供給位置P2に、ハンド31を移送する。
【0102】
ステップS14において、多関節ロボット制御部154は、抑制機構340を制御し、蓋を吸着して保持する。
ステップS15において、多関節ロボット制御部154は、容器検出センサ20によって容器が嵌合位置P1に運搬されたこと、あるいは、嵌合位置P1に運搬される直前であることが検出されたか否かを判定する。検出された場合は、ステップS15においてYesと判定され、処理はステップS16に進む。一方で、検出されない場合は、ステップS15においてNoと判定され、ステップS15の判定を継続する。
【0103】
ステップS16において、多関節ロボット制御部154は、動作パターンのデータに従って、嵌合位置P1に、ハンド31を移送する。
ステップS17において、多関節ロボット制御部154は、抑制機構340の先端部分を利用し、容器により支持されている蓋の、中央の領域を押し込む。
ステップS18において、多関節ロボット制御部154は、嵌合部材31aを制御し、押圧機構310を当接対象部分に当接することで、押圧部311を変形させる。
【0104】
図16に移り、ステップS19において、多関節ロボット制御部154は、嵌合部材31aを制御し、変形した状態の押圧機構310の押圧部311により、押圧対象部分を、第1方向(ここでは、鉛直下方)に向かって押圧することで、第1嵌合動作を実行する。
ステップS20において、多関節ロボット制御部154は、嵌合部材31aを制御し、変形した状態の押圧機構310の押圧部311により、押圧対象部分を、第2方向に向かって押圧することで、第1嵌合動作を実行する。
【0105】
ステップS21において、多関節ロボット制御部154は、他の第2方向から、異なる第2嵌合動作をさらに実行するか否かを判定する。第2嵌合動作をさらに実行する場合は、ステップS21においてYesと判定され、処理はステップS20に戻る。そして、このステップS20では、他の第2方向から、異なる第2嵌合動作をさらに実行する。一方で、第2嵌合動作をさらに実行しない場合は、ステップS21においてNoと判定され、処理はステップS22に進む。
ステップS22において、多関節ロボット制御部154は、第1嵌合動作及び第2嵌合動作における押圧により容器と蓋が嵌合すると、抑制機構340を制御して蓋の保持を終了させると共に、ハンド31を上昇させる。これにより容器と蓋の嵌合が実現される。
【0106】
ステップS23において、記録制御部155は、嵌合システム1が動作した際に取得される制御に関するパラメータや、嵌合システム1で嵌合を行った際に嵌合に要した時間を示す値等を、履歴DB172に記憶する。
【0107】
ステップS24において、多関節ロボット制御部154は、蓋嵌合処理を終了する条件に適合したか否かを判定する。この場合、蓋嵌合処理を終了する条件としては、予定された数の容器に蓋を嵌合したこと、あるいは、ユーザによって蓋嵌合処理を終了させる操作が行われたこと等を定義することができる。
蓋嵌合処理を終了する条件に適合していない場合は、ステップS24においてNoと判定されて、処理はステップS25に進む。一方で、蓋嵌合処理を終了する条件に適合している場合は、ステップS24においてYesと判定されて、蓋嵌合処理は終了する。
【0108】
ステップS25において、多関節ロボット制御部154は、対象情報取得部151が取得している対象情報に基づいて、嵌合をすべき容器と蓋に変更があるか否かを判定する。変更がある場合は、ステップS25においてYesと判定され、処理は図15に示すステップS11に戻る。そして、多関節ロボット制御部154は、変更後の容器と蓋に対応する動作パターンを新たに読み込んだ上で、この新たに読み込んだ動作パターンに従って、ステップS12以降の処理を再度行う。一方で、変更がない場合は、ステップS25においてNoと判定され、処理は図15に示すステップS12に戻る。そして、多関節ロボット制御部154は、読み込み済みの動作パターンに従って、ステップS12以降の処理を再度行う。
【0109】
以上のように、本実施形態に係る嵌合システム1によれば、多関節ロボット30によって蓋閉め作業を行う場合に、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させることができる。これに加えて、本実施形態に係る嵌合システム1は、各図を参照した説明の際に上述したような、様々な効果も奏する。
【0110】
[変形例1]
上述の実施形態において、多関節ロボット制御部154は、例えば、力センサ30Aによって計測された容器や蓋からの反力(すなわち、容器や蓋への接触の検出結果)のデータに基づいて、蓋の押し込みを開始したり、当接対象部分への当接を開始したり、第1嵌合動作や第2嵌合動作における、押圧対象部分への押圧を開始したり、これらを終了したりするように、多関節ロボット30を制御することができる。これに限らず、他の方法で制御をするようにしてもよい。
【0111】
例えば、容器や蓋の幅や高さが正確にデータとして把握できており、より高精度に多関節ロボット30を駆動できる場合には、この容器や蓋の幅や高さのデータのみに基づいて、多関節ロボット30を制御するようにしてもよい。あるいは、カメラの設置コスト等が問題とならない場合には、カメラ(すなわち、撮像装置)によって、嵌合位置P1の蓋や容器を撮影する。そして、この撮像装置によって撮像された画像をリアルタイムに画像解析し、その解析結果に基づいて、多関節ロボット30を制御するようにしてもよい。
【0112】
[変形例2]
上述の実施形態では、押圧部311を、平面形状と角柱形状を組み合わせた構成としていた。そして、平面形状の高い可撓性を利用して、例えば、押圧部311を、外側に湾曲するよう変形をさせていた。これに限らず、押圧部311は、適切に押圧をできる形状に構成すればよく、必ずしも変形するような形状でなくともよい。
このようにした場合であっても、少なくとも抑制機構340等を利用した押し込みを実現することは可能であるので、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させることができるという効果を奏することができる。
【0113】
[変形例3]
上述の実施形態では、第1嵌合動作や第2嵌合動作の際に、抑制機構340の押し込み部342により蓋を保持すると共に、蓋を容器の収容空間側の方向に押し込んでいた。これに限らず、例えば、容器や蓋の可撓性が低くて膨らみにくいような場合には、この抑制機構340の押し込み部342による蓋の押し込みを行わないようにしてもよい。
この場合、抑制機構340に代えて、保持部343の機能に相当する機構を設けるのみでよく、装置構成を簡略化することができる。
また、本変形例を、さらに変形してもよい。例えば、嵌合システム1のユーザである作業者が、蓋を保持できる場合には、抑制機構340の保持部343による蓋の保持を行わないようにしてもよい。すなわち、作業者が、蓋を保持することで、容器の嵌合部に対して蓋の嵌合部を近接させた状態を維持している間に、多関節ロボット30が、第1嵌合部動作や第2嵌合動作を行うようしてもよい。
この場合、抑制機構340そのものを省略することができ、装置構成を、さらに簡略化することができる。
なお、上述した変形例1~変形例3については、これらを適宜組み合わせて、別途の変形例とすることも可能である。
【0114】
[構成例]
以上のように、本実施形態における嵌合システム1は、抑制機構340及び押圧機構310を備えた多関節ロボット30と、多関節ロボット30の動作を制御する制御装置40と、を備える。
制御装置40は、
第1嵌合部を有する蓋を抑制機構340で保持することで、容器が有する第2嵌合部に対して、第1嵌合部を近接させた状態を維持する保持動作と、
保持動作により近接させた状態が維持されている間に、押圧機構310を第1方向に移動させることで第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、
第1嵌合動作を行った後に、押圧機構310を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、
を多関節ロボット30に実行させる。
これにより、ある方向に動いて押圧した後に、さらに他の方向に動いて押圧することができる。そのため、蓋閉め後の気密性等を考慮して様々な凹凸形状をした嵌合部であっても、可能な限り嵌合部同士の隙間をなくし、より確実に嵌合をすることができる。例えば、仮に第1嵌合動作による嵌合が不十分なものであったとしても、第2嵌合動作によって、より確実に嵌合をすることができる。あるいは、仮に第1嵌合動作によってそもそも嵌合ができていなかったとしても、第2嵌合動作によって、より確実に嵌合をすることができる。
このように、嵌合システム1は、「ある方向に動いて押圧したからといって、必ずしも確実に嵌合するとは限らない」という、従来技術では、そもそも想定すらされていなかった課題を鑑みたものであって、さらに、この課題を解決するものである。
すなわち、嵌合システム1によれば、多関節ロボット30によって嵌合を行う場合に、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させることができる。
【0115】
第2嵌合動作では、押圧機構310を第2方向に揺動することで押圧対象部分を再度押圧する。
これにより、押圧機構310を揺動させるという動作(例えば、押圧機構310を揺らすことで第2方向に往復運動させるという動作や、揺動により押圧機構310を振動させる動作)によって、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させることができる。
【0116】
第2嵌合動作では、押圧機構310が押圧対象部分に接触した状態を維持しながら、押圧機構310を第2方向に移動させることで押圧対象部分を再度押圧する。
これにより、押圧機構310が第2方向へ移動する力を、押圧対象部分を押圧する力に変換しながら押圧を行うことができる。
【0117】
第2嵌合動作では、押圧対象部分における第1領域に対する押圧と、押圧対象部分における第2領域に対する押圧とを異なるタイミングで行うことで押圧対象部分を再度押圧する。
これにより、複数の押圧対象部分に対して、一律に押圧をするのではなく、押圧する力を分散するという異なる方法で押圧を行うことができる。
【0118】
第2嵌合動作では、押圧機構310を、第1方向とは異なる第2方向であって、複数の第2方向に対して移動させることで、押圧対象部分を再度押圧する。
これにより、例えば、再度押圧する押圧対象部分に適した方向から、押圧を行うことができる。
【0119】
第2嵌合動作では、押圧機構310を支持する支持部を回転軸として、押圧機構310を回転運動させることで押圧対象部分を再度押圧する。
これにより、回転運動という規則性のある動きを利用して、様々な方向に動いて押圧を行うことができる。
【0120】
制御装置40は、
保持動作により近接させた状態が維持されている間に、可撓性を有する押圧機構310を、押圧対象部分の形状に適合した形状となるように可撓性を利用して変形させる変形動作をさらに多関節ロボット30に実行させ、
変形動作により変形した状態の押圧機構310により、第1嵌合動作及び第2嵌合動作の少なくとも何れかを多関節ロボット30に実行させる。
これにより、押圧対象部分に適合した形状をもって、より確実に、容器と蓋の嵌合部同士を嵌合させることができる。
【0121】
なお、上述の実施形態及び変形例は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の機能を実現する種々の実施形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態及び変形例において、食品が盛り付けられた容器に対して、蓋をする嵌合システムに本発明を適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、種々の対象物を嵌合するシステムに適用することができる。例えば、工業分野等において、ロボットによって嵌合を行う様々なシステムに本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態に記載された例を適宜組み合わせて、本発明を実施することが可能である。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図3の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。すなわち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が嵌合システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図3の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0122】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0123】
プログラムを記憶する記憶媒体は、装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア、あるいは、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクあるいはフラッシュメモリ等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray Disc(登録商標)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。フラッシュメモリは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリあるいはSDカードにより構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体は、例えば、プログラムが記憶されているROMやハードディスク等で構成される。
【0124】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0125】
上記実施形態は、本発明を適用した一例を示しており、本発明の技術的範囲を限定するものではない。すなわち、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができ、上記実施形態以外の各種実施形態を取ることが可能である。本発明が取ることのできる各種実施形態及びその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0126】
1 嵌合システム、2 ベルトコンベア、2A 案内部材、10 蓋供給部、20 容器検出センサ、30 多関節ロボット、30A 力センサ、31 ハンド、31a、31a-1 嵌合部材、32 ロボットアーム、40 制御装置、151 対象情報取得部、152 センサ情報取得部、153 蓋供給制御部、154 多関節ロボット制御部、155 記録制御部、171 パラメータ記憶部、172 履歴データベース(履歴DB)、310 押圧機構、311 押圧部、312 第1支持部、313 第2支持部、320 スライド機構、321 レール部、322 フック部、323 連結部、330 開閉機構、331 アクチュエータ、332 ピニオンギア、333 ラック、340 抑制機構、341 筐体部、342 押し込み部、343 保持部、350 ハンド装着部、711 CPU、712 ROM、713 RAM、714 バス、715 入力部、716 出力部、717 記憶部、718 通信部、719 ドライブ、731 リムーバブルメディア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-07-18
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、嵌合システム、ロボット、及び制御装置に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持機構及び押圧機構を備えたロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた嵌合システムであって、
前記制御装置は、
第1嵌合部を有する蓋を前記保持機構で保持することで、容器が有する第2嵌合部に対して、前記第1嵌合部を近接させた状態を維持する保持動作と、
前記保持動作により近接させた状態が維持されている間に、前記押圧機構を第1方向に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、
前記第1嵌合動作を行った後に、前記押圧機構を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、
を前記ロボットに実行させることにより、2つの異なる嵌合動作による嵌合を行うことを特徴とする嵌合システム。
【請求項2】
前記第2嵌合動作では、前記押圧機構を前記第2方向に揺動することで前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1に記載の嵌合システム。
【請求項3】
前記蓋は、天面部と前記第1嵌合部とを有し、
前記第1嵌合部の押圧対象部分は、前記天面部の周囲に位置すると共に、前記天面部とは高さが異なる部分である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項4】
前記第2嵌合動作では、前記押圧機構が前記押圧対象部分に接触した状態を維持しながら、前記押圧機構を前記第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項5】
前記第1嵌合動作では、前記第1方向を鉛直方向とし、前記押圧機構を鉛直下方に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は4に記載の嵌合システム。
【請求項6】
前記第2嵌合動作では、前記押圧対象部分における第1領域に対する押圧と、前記押圧対象部分における第2領域に対する押圧とを異なるタイミングで行うことで前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項7】
前記第2嵌合動作では、前記押圧機構を、前記第1方向とは異なる前記第2方向であって、複数の第2方向に対して移動させることで、前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項8】
前記第2嵌合動作では、前記押圧機構を支持する支持部を回転軸として、前記押圧機構を回転運動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記保持動作により近接させた状態が維持されている間に、可撓性を有する前記押圧機構を、前記押圧対象部分の形状に適合した形状となるように前記可撓性を利用して変形させる変形動作をさらに前記ロボットに実行させ、
前記変形動作により変形した状態の前記押圧機構により、前記第1嵌合動作及び前記第2嵌合動作の少なくとも何れかを前記ロボットに実行させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項10】
制御装置の制御に従って動作する、押圧機構を備えたロボットであって、
蓋が有する第1嵌合部が、容器が有する第2嵌合部に対して近接している状態が維持されている間に、前記押圧機構を第1方向に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、
前記第1嵌合動作を行った後に、前記押圧機構を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、
を前記制御装置の制御に従って実行することにより、2つの異なる嵌合動作による嵌合を行うことを特徴とするロボット。
【請求項11】
保持機構及び押圧機構を備えたロボットの動作を制御する制御手段を備えた制御装置であって、
前記制御手段は、
第1嵌合部を有する蓋を前記保持機構で保持することで、容器が有する第2嵌合部に対して、前記第1嵌合部を近接させた状態を維持する保持動作と、
前記保持動作により近接させた状態が維持されている間に、前記押圧機構を第1方向に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、
前記第1嵌合動作を行った後に、前記押圧機構を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、
を前記ロボットに実行させることにより、2つの異なる嵌合動作による嵌合を行うことを特徴とする制御装置。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持機構及び押圧機構を備えたロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた嵌合システムであって、内嵌合方式又は内外嵌合方式に対応した第1嵌合部を有する蓋と、前記第1嵌合部と同一の方式に対応した第2嵌合部を有する容器とを嵌合の対象とし、
前記制御装置は、
前記蓋を前記保持機構で保持することで、前記容器が有する前記第2嵌合部に対して、前記第1嵌合部を近接させた状態を維持する保持動作と、
前記保持動作により近接させた状態が維持されている間に、前記押圧機構を第1方向に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、
前記第1嵌合動作を行った後に、前記押圧機構を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、
を前記ロボットに実行させることにより、2つの異なる嵌合動作による嵌合を行うことを特徴とする嵌合システム。
【請求項2】
前記第2嵌合動作では、前記押圧機構を前記第2方向に揺動することで前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1に記載の嵌合システム。
【請求項3】
前記蓋は、天面部と前記第1嵌合部とを有し、
前記第1嵌合部の押圧対象部分は、前記天面部の周囲に位置すると共に、前記天面部とは高さが異なる部分である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項4】
前記第2嵌合動作では、前記押圧機構が前記押圧対象部分に接触した状態を維持しながら、前記押圧機構を前記第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項5】
前記第1嵌合動作では、前記第1方向を鉛直方向とし、前記押圧機構を鉛直下方に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は4に記載の嵌合システム。
【請求項6】
前記第2嵌合動作では、前記押圧対象部分における第1領域に対する押圧と、前記押圧対象部分における第2領域に対する押圧とを異なるタイミングで行うことで前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項7】
前記第2嵌合動作では、前記押圧機構を、前記第1方向とは異なる前記第2方向であって、複数の第2方向に対して移動させることで、前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項8】
前記第2嵌合動作では、前記押圧機構を支持する支持部を回転軸として、前記押圧機構を回転運動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記保持動作により近接させた状態が維持されている間に、可撓性を有する前記押圧機構を、前記押圧対象部分の形状に適合した形状となるように前記可撓性を利用して変形させる変形動作をさらに前記ロボットに実行させ、
前記変形動作により変形した状態の前記押圧機構により、前記第1嵌合動作及び前記第2嵌合動作の少なくとも何れかを前記ロボットに実行させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項10】
制御装置の制御に従って動作する、押圧機構を備えたロボットであって、内嵌合方式又は内外嵌合方式に対応した第1嵌合部を有する蓋と、前記第1嵌合部と同一の方式に対応した第2嵌合部を有する容器とを嵌合の対象とし、
前記蓋が有する第1嵌合部が、前記容器が有する前記第2嵌合部に対して近接している状態が維持されている間に、前記押圧機構を第1方向に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、
前記第1嵌合動作を行った後に、前記押圧機構を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、
を前記制御装置の制御に従って実行することにより、2つの異なる嵌合動作による嵌合を行うことを特徴とするロボット。
【請求項11】
保持機構及び押圧機構を備えたロボットの動作を制御する制御手段を備えた制御装置であって、内嵌合方式又は内外嵌合方式に対応した第1嵌合部を有する蓋と、前記第1嵌合部と同一の方式に対応した第2嵌合部を有する容器とを嵌合の対象とし、
前記制御手段は、
前記蓋を前記保持機構で保持することで、前記容器が有する前記第2嵌合部に対して、前記第1嵌合部を近接させた状態を維持する保持動作と、
前記保持動作により近接させた状態が維持されている間に、前記押圧機構を第1方向に移動させることで前記第1嵌合部の押圧対象部分を押圧する第1嵌合動作と、
前記第1嵌合動作を行った後に、前記押圧機構を第1方向とは異なる方向である第2方向に移動させることで前記押圧対象部分を再度押圧する第2嵌合動作と、
を前記ロボットに実行させることにより、2つの異なる嵌合動作による嵌合を行うことを特徴とする制御装置。