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  • 特開-ポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法 図1
  • 特開-ポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法 図2
  • 特開-ポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108093
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/12 20060101AFI20240802BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20240802BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
C08J9/12 CFD
C08J3/24 Z
C08L101/16 ZBP
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034313
(22)【出願日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2023011517
(32)【優先日】2023-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】福山 英司
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4J200
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AC56
4F070AE08
4F070GA05
4F070GB08
4F070GC07
4F074AA68
4F074AB01
4F074AB05
4F074BA37
4F074BA38
4F074BC12
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA13
4F074DA33
4J200AA14
4J200AA19
4J200AA24
4J200BA14
4J200CA01
4J200CA09
4J200DA17
4J200DA24
4J200EA02
4J200EA04
4J200EA07
4J200EA10
4J200EA21
4J200EA22
(57)【要約】
【課題】発泡特性に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法は、ポリ乳酸樹脂(P)を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して、ポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する方法であって、該押出機に投入する直前の該ポリ乳酸樹脂(P)の水分率を0.30質量%以下とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(P)を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して、ポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する方法であって、
該ポリ乳酸樹脂(P)の水分率を0.30質量%以下とする、
ポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項2】
前記ポリ乳酸樹脂(P)が、改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含む、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項3】
前記改質されたポリ乳酸樹脂が、ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物を押出機中で溶融混練して得られたものである、請求項2に記載のポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項4】
前記ポリ乳酸樹脂(P)が、未改質のポリ乳酸樹脂を主成分として含む、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡シートは、軽量で緩衝性に優れており、多様な形状に成形加工することが容易であるため、包装材などをはじめとして各種成形品の原材料として利用されている。
【0003】
近年、樹脂発泡シートは、大量に使用された後に大量に廃棄されるため、環境に大きな負荷を与え、地球温暖化問題、資源枯渇問題、廃棄物処理問題など、様々な社会問題の要因となっている。そこで、生分解性を示し、環境負荷が小さく、比較的安価に製造できるポリ乳酸樹脂を用いた、ポリ乳酸樹脂発泡シートが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、ポリ乳酸樹脂発泡シートを従来の各種方法によって製造してみたところ、その製造条件によって発泡特性にばらつきが生じていることが判明し、例えば、連続気泡率が高くなってしまって収縮しやすいポリ乳酸樹脂発泡シートが得られたり、見掛け密度が高くなってしまって緩衝性が低下したポリ乳酸樹脂発泡シートが得られたりするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6971947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、発泡特性に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法は、ポリ乳酸樹脂(P)を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して、ポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する方法であって、該ポリ乳酸樹脂(P)の水分率を0.30質量%以下とする。
[2]上記[1]に記載のポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法において、上記ポリ乳酸樹脂(P)が、改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含むものであってもよい。
[3]上記[2]に記載のポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法において、上記改質されたポリ乳酸樹脂が、ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物を押出機中で溶融混練して得られたものであってもよい。
[4]上記[1]に記載のポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法において、上記ポリ乳酸樹脂(P)が、未改質のポリ乳酸樹脂を主成分として含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、発泡特性に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態Aの第1工程における製造装置の構成を示す概略図である。
図2】実施形態Aの第2工程における製造装置の構成を示す概略図である。
図3】実施形態Bにおける製造装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0011】
≪≪ポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法≫≫
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法(以下、便宜上、単に「本発明の実施形態による製造方法」と称することがある。)においては、ポリ乳酸樹脂(P)を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して、ポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する。本発明の実施形態による製造方法においては、上記ポリ乳酸樹脂(P)の水分率を、好ましくは0.30質量%以下とし、より好ましくは0.25質量%以下とし、さらに好ましくは0.20質量%以下とし、特に好ましくは0.17質量%以下とし、最も好ましくは0.15質量%以下とする。上記水分率の下限値は、少なければ少ないほどよく、理想的には0質量%である。
【0012】
本発明の実施形態による製造方法においては、ポリ乳酸樹脂(P)の水分率を上記のように上記範囲に調整することにより、発泡特性に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを提供することができる。ポリ乳酸樹脂(P)の水分率が上記範囲を外れて多すぎると、得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの発泡特性が低下するおそれがあり、例えば、連続気泡率が高くなってしまって収縮しやすいポリ乳酸樹脂発泡シートが得られたりするおそれや、見掛け密度が高くなってしまって緩衝性が低下したポリ乳酸樹脂発泡シートが得られたりするおそれがある。
【0013】
本発明の実施形態による製造方法においては、ポリ乳酸樹脂(P)の水分率とは、好ましくは、ポリ乳酸樹脂(P)が押出機に投入される直前の該ポリ乳酸樹脂(P)の水分率である。ポリ乳酸樹脂の吸水率が、吸湿する環境(空気中での取り扱いや水分含有物との接触など)に曝されることによって変動し得るため、押出機に投入される直前の水分率として規定することが好ましいからである。なお、押出機に投入される直前の水分率は、例えば、カールフィッシャー水分測定装置によって測定することができる。
【0014】
本発明の実施形態による製造方法においては、ポリ乳酸樹脂(P)は、改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含むか、または、未改質のポリ乳酸樹脂を主成分として含む。ポリ乳酸樹脂(P)として、改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含む実施形態(以下、実施形態Aと称することがある。)と、ポリ乳酸樹脂(P)として、未改質のポリ乳酸樹脂を主成分として含む実施形態(以下、実施形態Bと称することがある。)との、2種の実施形態が挙げられる。
【0015】
ここで、「改質されたポリ乳酸樹脂」とは、改質処理がなされたポリ乳酸樹脂であり、代表的には、後述する実施形態Aの第1工程で説明する改質処理がなされたポリ乳酸樹脂である。
【0016】
ここで、「未改質のポリ乳酸樹脂」とは、改質処理がなされていないポリ乳酸樹脂であり、代表的には、一般に入手可能なポリ乳酸樹脂であって、後述する実施形態Aの第1工程で説明する改質処理がなされていないポリ乳酸樹脂である。
【0017】
本明細書において、「主成分として含む」とは、その含有割合が、好ましくは50質量%を超え、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。
【0018】
本明細書において、「実質的に100質量%」とは、意図しないで混入した微量(例えば、1質量%未満)の不純物の存在は無視してもよいことを意味する表現である。
【0019】
本明細書において、ポリ乳酸樹脂は、「ポリ乳酸樹脂(P)」、「改質されたポリ乳酸樹脂」、「未改質のポリ乳酸樹脂」と特記されておらず単に「ポリ乳酸樹脂」と記載されている場合は、未改質のポリ乳酸樹脂を意味するものとする。
【0020】
以下、2種の実施形態A、Bについて説明する。
【0021】
≪実施形態A≫
実施形態Aにおいては、改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含むポリ乳酸樹脂(P)を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して、ポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する。
【0022】
改質されたポリ乳酸樹脂は、好ましくは、ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物を押出機中で溶融混練して得られたものである。
【0023】
したがって、実施形態Aは、好ましくは、ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物を押出機中で溶融混練して、改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含むポリ乳酸樹脂を製造する第1工程と、これに続く、該改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含むポリ乳酸樹脂を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して、ポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する第2工程とを含む。
【0024】
以下、便宜上、改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含むポリ乳酸樹脂(P)中の改質されたポリ乳酸樹脂の含有割合が実質的に100質量%であるとして説明する。すなわち、実施形態Aは、好ましくは、ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物を押出機中で溶融混練して改質されたポリ乳酸樹脂を製造する第1工程と、これに続く、該改質されたポリ乳酸樹脂を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して、ポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する第2工程とを含む。
【0025】
<第1工程>
第1工程においては、ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物を押出機中で溶融混練して改質されたポリ乳酸樹脂を製造する。ここにいう第1工程の原料としてのポリ乳酸樹脂は、好ましくは未改質のポリ乳酸樹脂を意味する。
【0026】
ポリ乳酸樹脂は、乳酸の単独重合体であっても乳酸と他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、例えば、乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価カルボン酸、多官能多糖類が挙げられる。
【0027】
ポリ乳酸樹脂を構成する乳酸は、L-体とD-体とのいずれか一方であってもよいし、L-体とD-体との両方であってもよい。すなわち、乳酸の単独重合体であるポリ乳酸樹脂は、ポリ(L-乳酸)樹脂、ポリ(D-乳酸)樹脂、および、ポリ(DL-乳酸)樹脂のいずれであってもよい。
【0028】
乳酸以外のヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸が挙げられる。
【0029】
脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0030】
脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸が挙げられる。また、脂肪族多価カルボン酸は、酸無水物であってもよい。
【0031】
多官能多糖類としては、例えば、セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロイド、ビスコースレーヨン、再生セルロース、セロハン、キュプラ、銅アンモニアレーヨン、キュプロファン、ベンベルグ、ヘミセルロール、デンプン、アクロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アカシアガムが挙げられる。
【0032】
ポリ乳酸樹脂における、分子中の乳酸(L-体及びD-体)に由来する構造部分の含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは90質量%以上である。
【0033】
原料としてのポリ乳酸樹脂は、その少なくとも一部をリサイクル品としてもよい。
【0034】
第1工程においては、改質剤を用いて、ポリ乳酸樹脂を高分子量化させたり、ポリ乳酸樹脂の分子構造中に架橋構造や長鎖分岐構造を持たせたりすることによって、改質されたポリ乳酸樹脂を製造する。
【0035】
改質剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0036】
ポリ乳酸樹脂の高分子量化には、改質剤として、カルボジイミドなどの鎖伸長剤を採用し得る。鎖伸長剤による改質においては、アクリル系有機化合物、エポキシ系有機化合物、イソシアネート系有機化合物など、ポリ乳酸樹脂の分子構造中に存在する水酸基やカルボキシル基と縮合反応させることが可能な官能基を1個以上有する化合物を用い得る。すなわち、ポリ乳酸樹脂の高分子量化は、カルボジイミドなどの鎖伸長剤を用い、アクリル系有機化合物、エポキシ系有機化合物、イソシアネート系有機化合物などをポリ乳酸樹脂に結合させることによって行い得る。
【0037】
ポリ乳酸樹脂の分子構造中に架橋構造や長鎖分岐構造を持たせるためには、例えば、改質剤として、ラジカル開始剤を採用し得る。この場合、ラジカル開始剤によってポリ乳酸樹脂どうしを反応させる。適度な反応性を有するラジカル開始剤を使ってポリ乳酸樹脂どうしを反応させると、例えば、押出機内でのポリ乳酸樹脂の分解起点が、ラジカル開始剤によって発生させたフリーラジカルによってアタックされ、その箇所が架橋点(分岐点)となって安定化され得る。このような改質がなされることで、ポリ乳酸樹脂は、熱安定性が増し、押出機を通過する際に低分子量化され難くなる。
【0038】
ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、ハロゲン分子が挙げられ、有機過酸化物が好ましい。
【0039】
有機過酸化物としては、例えば、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイドが挙げられる。
【0040】
パーオキシエステルとしては、例えば、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートが挙げられる。
【0041】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、パーメタンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、及び、t-ブチルハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0042】
ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3が挙げられる。
【0043】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ジベンゾイルパーキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、及び、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイドが挙げられる。
【0044】
パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートが挙げられる。
【0045】
パーオキシケタールとしては、例えば、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ブタン、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンが挙げられる。
【0046】
ケトンパーオキシドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドが挙げられる。
【0047】
有機過酸化物による改質では、改質後のポリ乳酸樹脂に熱溶融時にゲルとなるような分子量が過大な成分を混在させたり、有機過酸化物の分解残渣による臭気の問題を発生させたりするおそれがある。このような問題の発生を抑制でき、ポリ乳酸樹脂を発泡に適した状態に改質することが容易である点において、有機過酸化物は、パーオキシエステルであることが好ましい。また、パーオキシエステルの中でも、パーオキシモノカーボネートやパーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート系有機過酸化物が好ましい。さらに、パーオキシカーボネート系有機過酸化物の中でも、パーオキシモノカーボネート系有機過酸化物が好ましく、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートがより好ましい。
【0048】
有機過酸化物の使用量は、その分子量などにもよるが、本発明の効果をより発現させ得る点で、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.2質量部以上であり、さらに好ましくは0.3質量部以上である。有機過酸化物の使用量の上限値は、好ましくは2.0質量部以下であり、より好ましくは1.5質量部以下であり、さらに好ましくは1.0質量部以下である。
【0049】
第1工程において、ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なポリ乳酸樹脂と改質剤以外の他の成分を含んでいてもよい。ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物中の、ポリ乳酸樹脂と改質剤の合計量の含有割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは70質量%~100質量%であり、さらに好ましくは90質量%~100質量%であり、特に好ましくは95質量%~100質量%である。
【0050】
第1工程において、ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂と改質剤と必要に応じて他の成分をあらかじめ混合していてもよい。このような混合の方法としては、例えば、タンブラー、リボンブレンダー、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディゲーミキサー等の混合機を用いた混合方法が挙げられる。
【0051】
第1工程においては、ポリ乳酸樹脂と改質剤を含むポリ乳酸樹脂組成物を押出機中で溶融混練する。
【0052】
押出機としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な押出機を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、押出機としては、好ましくは二軸押出機が挙げられる。
【0053】
二軸押出機は、ストランドダイやTダイが装着されていてもよい。この場合、押し出されたストランド状やシート状の混練物を、冷却し、ペレタイザー等でカットして、ペレット化してもよい。
【0054】
二軸押出機は、造粒ダイ(ホットカットダイ)が装着されていてもよい。この場合、混練物は、押し出された直後にペレット化される。
【0055】
溶融混練の温度条件は、押出の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。例えば、原料フィード部の温度として、好ましくは100℃~200℃に設定する。
【0056】
押出機の回転数は、押出の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。このような回転数としては、例えば、好ましくは20rpm~800rpmである。
【0057】
第1工程で得られる改質されたポリ乳酸樹脂は、例えば、乾燥を行うための乾燥工程に供して乾燥させたものであってもよい。代表的には、第1工程で得られる改質されたポリ乳酸樹脂は、ストランドダイが装着された二軸押出機から押し出されたストランド状の混練物を、冷却し、ペレタイザー等でカットして得られたペレットを、乾燥を行うための乾燥工程に供して乾燥させたものであってもよい。
【0058】
第1工程は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な装置を用いて実施することができる。本発明の効果をより発現させ得る点で、第1工程は、例えば、図1に示すような製造装置を用いて実施することができる。
【0059】
図1に示すように、第1工程においては、代表的には、ホッパー11に投入された原料としてのポリ乳酸樹脂が二軸押出機30によって溶融混練され、ストランドダイ3から押し出されたストランド状の混練物が冷却装置6で冷却され、その後、ペレタイザー4によってペレット化されたのち、乾燥装置5で乾燥され、得られた改質されたポリ乳酸樹脂が第2工程へ供される。
【0060】
第1工程で得られる改質されたポリ乳酸樹脂は、本発明の効果をより発現させ得る点で、その水分率が、好ましくは0.30質量%以下であり、より好ましくは0.25質量%以下であり、さらに好ましくは0.20質量%以下であり、特に好ましくは0.17質量%以下であり、最も好ましくは0.15質量%以下である。上記水分率の下限値は、少なければ少ないほどよく、理想的には0質量%である。
【0061】
第1工程で得られる改質されたポリ乳酸樹脂のMFR(メルトマスフローレイト)は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.2g/10min~20g/10minであり、より好ましくは0.5g/10min~10g/10minであり、さらに好ましくは1.0g/10min~5.0g/10minであり、特に好ましくは1.1g/10min~4.0g/10minであり、最も好ましくは1.2g/10min~3.0g/10minである。MFR(メルトマスフローレイト)の測定方法は後述する。
【0062】
第1工程で得られる改質されたポリ乳酸樹脂の溶融張力は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは5cN~100cNであり、より好ましくは10cN~80cNであり、さらに好ましくは20cN~70cNであり、特に好ましくは25cN~60cNである。溶融張力の測定方法については後述する。
【0063】
<第2工程>
第2工程においては、第1工程で得られた改質されたポリ乳酸樹脂を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して、ポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する。
【0064】
実施形態Aでは、第2工程で押出機に投入される改質されたポリ乳酸樹脂の水分率を、前述の通り、好ましくは0.30質量%以下とし、より好ましくは0.25質量%以下とし、さらに好ましくは0.20質量%以下とし、特に好ましくは0.17質量%以下とし、最も好ましくは0.15質量%以下とする。上記水分率の下限値は、少なければ少ないほどよく、理想的には0質量%である。
【0065】
第2工程で押出機に投入される改質されたポリ乳酸樹脂の水分率を上記のように所定量以下に調整する方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用し得る。このような方法としては、例えば、改質されたポリ乳酸樹脂を、押出機に投入する前に、除湿乾燥機、真空乾燥機、熱風乾燥機などの乾燥機を用いて乾燥させる方法が挙げられる。また、上記のような乾燥機などで十分に乾燥させた改質されたポリ乳酸樹脂を直接(水分を含む環境に曝されることなく)押出機に投入してもよいし、上記のような乾燥機などで十分に乾燥させた改質されたポリ乳酸樹脂を、乾燥後にすぐに一度アルミ袋などに密封して、それを投入直前に開封して押出機に投入する方法が挙げられる。
【0066】
発泡剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0067】
発泡剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡剤を用いることができる。発泡剤としては、常温(23℃)、常圧(1気圧)において気体となる揮発性発泡剤、熱分解によって気体を発生させる分解型発泡剤が挙げられ、好ましくは、揮発性発泡剤である。
【0068】
揮発性発泡剤としては、好ましくは、沸点がポリ乳酸樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状または液状の有機化合物である。具体例としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン)、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素;が挙げられる。揮発性発泡剤として、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスを用いてもよい。これらの中でも、本発明の効果をより発現させ得る点で、揮発性発泡剤としては、好ましくは、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、およびシクロペンタジエンから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、およびイソペンタンから選ばれる少なくとも1種である。
【0069】
分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、重炭素ナトリウムまたはクエン酸のような有機酸もしくはその塩と重炭酸塩との混合物が挙げられる。
【0070】
発泡剤の使用量は、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の使用量は、改質されたポリ乳酸樹脂の量を100質量部としたときに、好ましくは0.1質量部~10.0質量部であり、より好ましくは0.3質量部~7.0質量部であり、さらに好ましくは0.5質量部~5.0質量部であり、特に好ましくは0.8質量部~3.0質量部である。
【0071】
第2工程において、押出機中には、本発明の効果を損なわない範囲で、改質されたポリ乳酸樹脂と発泡剤以外の任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。第2工程において、押出機中の改質されたポリ乳酸樹脂と発泡剤と必要に応じて含まれる他の成分の合計中の、改質されたポリ乳酸樹脂と発泡剤の合計の含有割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは70質量%~100質量%であり、さらに好ましくは90質量%~100質量%であり、特に好ましくは95質量%~100質量%である。
【0072】
第2工程において、押出機中には、他の成分として発泡助剤が含まれていてもよい。発泡助剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。発泡助剤としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、流動パラフィン、ヤシ油が挙げられる。
【0073】
第2工程において、押出機中には、他の成分として気泡調整剤が含まれていてもよい。気泡調整剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。気泡調整剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸とアルコールの部分エステル、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、クエン酸、重炭酸ナトリウム、ポリテトラフルオロエチレン、水酸化アルミニウム、シリカが挙げられる。高級脂肪酸アミドとしては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸モノアミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸ビスアミド;が挙げられる。高級脂肪酸とアルコールの部分エステルにおける高級脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘニン酸等の炭素数15以上の脂肪酸が挙げられる。高級脂肪酸とアルコールの部分エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグセライド、ステアリン酸ジグリセライドが挙げられる。
【0074】
上記以外の他の成分としては、例えば、他の樹脂、顔料、輻射伝熱抑制成分、架橋剤、可塑剤、安定剤、充填剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、展着剤、耐候剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、防曇剤、香料、抗菌剤が挙げられる。
【0075】
第2工程においては、改質されたポリ乳酸樹脂と気泡調整剤と必要に応じて他の成分をあらかじめ混合していてもよい。このような混合の方法としては、例えば、タンブラー、リボンブレンダー、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディゲーミキサー等の混合機を用いた混合方法が挙げられる。
【0076】
第2工程においては、第1工程で得られる改質されたポリ乳酸樹脂を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡する。
【0077】
押出機としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な押出機を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、押出機としては、好ましくは、タンデム押出機が採用される。
【0078】
タンデム押出機の先端部には、最終的にポリ乳酸樹脂発泡シートが得られるように、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なダイが備えられ、好ましくは、さらに、冷却マンドレル、ポリ乳酸樹脂発泡シートを原反ロールとして巻き取るための巻取りローラなどが備えられていてもよい。
【0079】
第2工程は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な装置を用いて実施することができる。本発明の効果をより発現させ得る点で、第2工程は、例えば、図2に示すような製造装置を用いて実施することができる。
【0080】
図2に例示の製造装置は、タンデム押出機10と、タンデム押出機10において溶融混練されたポリ乳酸樹脂組成物を筒状に吐出するサーキュラーダイCDとが備えられている。さらに、この製造装置には、サーキュラーダイCDから筒状に吐出された発泡シートを空冷する冷却装置CLと、この筒状の発泡シートを拡径して所定の大きさの筒状にするためのマンドレルMDと、このマンドレルMD通過後の発泡シートをスリットして2枚のシートに分割するスリット装置と、スリットされた発泡シート1を複数のローラ21を通過させた後に巻き取るための巻き取りローラ22が備えられている。タンデム押出機10の上流側の押出機(以下「第1押出機10a」ともいう)には、発泡シートの原材料となる改質されたポリ乳酸樹脂を投入するためのホッパー11と、発泡剤をシリンダー内に供給するためのガス導入部12が設けられている。第1側押出機10aの下流側には、改質されたポリ乳酸樹脂と発泡剤を含んだポリ乳酸樹脂組成物を溶融混練するための押出機(以下「第2押出機10b」ともいう)が備えられている。
【0081】
溶融混練の温度条件は、押出の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。例えば、上流側押出機10aの原料フィード部の温度を、好ましくは100℃~200℃、より好ましくは140℃~200℃に設定し、上流側押出機10aのそれ以降の温度を、好ましくは120℃~300℃、より好ましくは140℃~270℃に設定し、下流側押出機10bの温度を、好ましくは100℃~250℃、より好ましくは120℃~220℃に設定する。
【0082】
押出機の回転数は、押出の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。このような回転数としては、例えば、上流側押出機10aについて、好ましくは10rpm~300rpmであり、下流側押出機10bについて、好ましくは5rpm~200rpmである。
【0083】
以上の第2工程により、ポリ乳酸樹脂発泡シートが得られる。
【0084】
≪実施形態B≫
実施形態Bにおいては、未改質のポリ乳酸樹脂を主成分として含むポリ乳酸樹脂(P)を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して、ポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する。
【0085】
以下、便宜上、未改質のポリ乳酸樹脂を主成分として含むポリ乳酸樹脂(P)中の未改質のポリ乳酸樹脂の含有割合が実質的に100質量%であるとして説明する。すなわち、実施形態Bは、好ましくは、ポリ乳酸樹脂(すなわち、未改質のポリ乳酸樹脂)を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して、ポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する。
【0086】
ポリ乳酸樹脂については、前述の≪実施形態A≫の<第1工程>における説明をそのまま援用し得る。
【0087】
原料としてのポリ乳酸樹脂は、その少なくとも一部をリサイクル品としてもよい。
【0088】
実施形態Bにおいては、押出機に投入される原料としてのポリ乳酸樹脂の水分率を、前述の通り、好ましくは0.30質量%以下とし、より好ましくは0.25質量%以下とし、さらに好ましくは0.20質量%以下とし、特に好ましくは0.17質量%以下とし、最も好ましくは0.15質量%以下とする。上記水分率の下限値は、少なければ少ないほどよく、理想的には0質量%である。
【0089】
実施形態Bにおいて、押出機に投入される原料としてのポリ乳酸樹脂の水分率を上記のように所定量以下に調整する方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用し得る。このような方法としては、例えば、ポリ乳酸樹脂を、押出機に投入する前に、除湿乾燥機、真空乾燥機、熱風乾燥機などの乾燥機を用いて乾燥させる方法が挙げられる。また、上記のような乾燥機などで十分に乾燥させたポリ乳酸樹脂を直接(水分を含む環境に曝されることなく)押出機に投入してもよいし、上記のような乾燥機などで十分に乾燥させたポリ乳酸樹脂を、乾燥後にすぐに一度アルミ袋などに密封して、それを投入直前に開封して押出機に投入する方法が挙げられる。
【0090】
発泡剤の種類については、前述の≪実施形態A≫の<第2工程>における説明をそのまま援用し得る。
【0091】
発泡剤の使用量は、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の使用量は、ポリ乳酸樹脂の量を100質量部としたときに、好ましくは0.1質量部~10.0質量部であり、より好ましくは0.3質量部~7.0質量部であり、さらに好ましくは0.5質量部~5.0質量部であり、特に好ましくは0.8質量部~3.0質量部である。
【0092】
実施形態Bにおいて、押出機中には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリ乳酸樹脂と発泡剤以外の任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。実施形態Bにおいて、押出機中のポリ乳酸樹脂と発泡剤と必要に応じて含まれる他の成分の合計中の、ポリ乳酸樹脂と発泡剤の合計の含有割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは70質量%~100質量%であり、さらに好ましくは90質量%~100質量%であり、特に好ましくは95質量%~100質量%である。
【0093】
実施形態Bにおいて、押出機中には、他の成分として、好ましくは改質剤が含まれる。改質剤を含むことにより、ポリ乳酸樹脂を高分子量化させたり、ポリ乳酸樹脂の分子構造中に架橋構造や長鎖分岐構造を持たせたりすることができる。
【0094】
改質剤については、前述の≪実施形態A≫の<第1工程>における説明をそのまま援用し得る。
【0095】
実施形態Bにおいて、押出機中には、他の成分として発泡助剤が含まれていてもよい。発泡助剤については、前述の≪実施形態A≫の<第2工程>における説明をそのまま援用し得る。
【0096】
実施形態Bにおいて、押出機中には、他の成分として気泡調整剤が含まれていてもよい。気泡調整剤については、前述の≪実施形態A≫の<第2工程>における説明をそのまま援用し得る。
【0097】
上記以外の他の成分としては、例えば、他の樹脂、顔料、輻射伝熱抑制成分、架橋剤、可塑剤、安定剤、充填剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、展着剤、耐候剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、防曇剤、香料、抗菌剤が挙げられる。
【0098】
実施形態Bにおいては、ポリ乳酸樹脂と改質剤と気泡調整剤と必要に応じて他の成分をあらかじめ混合していてもよい。このような混合の方法としては、例えば、タンブラー、リボンブレンダー、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディゲーミキサー等の混合機を用いた混合方法が挙げられる。
【0099】
実施形態Bにおいては、ポリ乳酸樹脂を押出機中で発泡剤と溶融混練する。
【0100】
押出機としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な押出機を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、押出機としては、好ましくは二軸押出機が挙げられる。
【0101】
実施形態Bにおいて、二軸押出機の先端部には、最終的にポリ乳酸樹脂発泡シートが得られるように、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なダイが備えられ、好ましくは、さらに、冷却マンドレル、ポリ乳酸樹脂発泡シートを原反ロールとして巻き取るための巻取りローラなどが備えられていてもよい。
【0102】
実施形態Bは、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な装置を用いて実施することができる。本発明の効果をより発現させ得る点で、実施形態Bは、例えば、図3に示すような製造装置を用いて実施することができる。
【0103】
図3に例示の製造装置は、二軸押出機30と、二軸押出機30において溶融混練されたポリ乳酸樹脂組成物を筒状に吐出するサーキュラーダイCDとが備えられている。さらに、この製造装置には、サーキュラーダイCDから筒状に吐出された発泡シートを空冷する冷却装置CLと、この筒状の発泡シートを拡径して所定の大きさの筒状にするためのマンドレルMDと、このマンドレルMD通過後の発泡シートをスリットして2枚のシートに分割するスリット装置と、スリットされた発泡シート1を複数のローラ21を通過させた後に巻き取るための巻き取りローラ22が備えられている。二軸押出機30の上流側には、発泡シートの原材料となるポリ乳酸樹脂を投入するためのホッパー11が設けられている。二軸押出機30の下流側には、発泡剤をシリンダー内に供給するためのガス導入部12が設けられている。このような装置にて押出発泡工程を実施する場合、二軸押出機30内で、ポリ乳酸樹脂の改質および発泡剤などの混合が行われ、発泡シートの原材料となるポリ乳酸樹脂組成物が調製され、サーキュラーダイCDから押出発泡が行われる。
【0104】
溶融混練の温度条件は、押出の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。例えば、二軸押出機30の原料フィード部の温度を、好ましくは100℃~200℃、より好ましくは120℃~200℃に設定し、二軸押出機30のそれ以降の温度を、好ましくは120℃~300℃、より好ましくは120℃~250℃に設定する。
【0105】
押出機の回転数は、押出の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。このような回転数としては、例えば、二軸押出機30について、好ましくは20rpm~800rpmである。
【0106】
以上の実施形態Bにより、ポリ乳酸樹脂発泡シートが得られる。
【0107】
≪≪ポリ乳酸樹脂発泡シート≫≫
本発明の実施形態による製造方法によれば、発泡特性に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを得ることができる。特に、連続気泡率が低くて収縮し難く、見掛け密度が低くて緩衝性が高いポリ乳酸樹脂発泡シートを得ることができる。
【0108】
本発明の実施形態による製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの厚みは、目的に応じて適宜設定し得る。本発明の実施形態による製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの厚みは、代表的には、好ましくは0.2mm~10mmであり、より好ましくは0.3mm~8.0mmであり、さらに好ましくは0.4mm~5.0mmであり、特に好ましくは0.5mm~3.0mmである。
【0109】
本発明の実施形態による製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの連続気泡率は、好ましくは50%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは25%以下であり、特に好ましくは20%以下である。上記連続気泡率の下限値は、低いほどよく、好ましくは0%以上である。本発明の実施形態による製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの連続気泡率が上記範囲内にあれば、該ポリ乳酸樹脂発泡シートは、収縮し難く、発泡特性に優れ得る。連続気泡率の測定方法については後述する。
【0110】
本発明の実施形態による製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの見掛け密度は、好ましくは600kg/m3以下であり、より好ましくは500kg/m3以下であり、さらに好ましくは400kg/m3以下であり、特に好ましくは300kg/m3以下である。上記見掛け密度の下限値は、好ましくは60kg/m3以上である。本発明の実施形態による製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの見掛け密度が上記範囲内にあれば、該ポリ乳酸樹脂発泡シートは、緩衝性が高く、発泡特性に優れ得る。見掛け密度の測定方法については後述する。
【0111】
本発明の実施形態による製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径は、好ましくは50μm~1000μmであり、より好ましくは100μm~800μmであり、さらに好ましくは150μm~700μmであり、特に好ましくは200μm~600μmである。本発明の実施形態による製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの平均気泡径が上記範囲内にあれば、外観美麗で、緩衝性に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートとすることができる。なお、平均気泡径の測定方法については、後述する。
【実施例0112】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0113】
<水分率>
試料1.0gを、カールフィッシャー水分測定装置(株式会社三菱化学アナリテック製、「CA-200」)および水分気化装置(株式会社三菱化学アナリテック製、「VA-236S」)にセットして、実測水分量を測定した。測定時の陽極液、陰極液には、それぞれ、三菱ケミカル株式会社製のアクアミクロンAX、アクアミクロンCXUを使用した。測定温度は128℃とした。キャリアガスはN2を用いた。キャリアガスの流量は250mL/minとした。実測水分量の測定は3回行った。
他方、試料採取場所の空気雰囲気下のみでの水分量を2回測定し、その平均値をブランク水分量とした。
上記の3回の測定で得られた実測水分量のそれぞれを用いて、水分率(質量%)を次式で算出し、得られた3つの算出結果を平均して、試料の水分率(質量%)とした。
水分率(質量%)=[〔実測水分量(μg)-ブランク水分量(μg)〕÷1000000÷試料質量(g)]×100
【0114】
<MFR(メルトマスフローレイト)>
MFRは、JIS K 7210:1999の規格に準拠して測定した。具体的には、同規格のB法記載の「b)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法」により測定した。MFRはメルトフローインデックステスター(自動)120-SAS(株式会社安田精機製作所製)を用いて測定した。試料は、70℃で5時間真空乾燥後、測定直前まで密封してデシケータ内で保存したものを用いた。測定回数は3回とし、その平均をMFR(g/10min)の値とした。
測定条件は次の通りとした。
試料:3g~8g
予熱(1):200秒
予熱(2):30秒
試験温度:190℃
試験荷重:21.18N
ピストン移動距離(インターバル):25mm
【0115】
<溶融張力(MT)>
溶融張力は、測定装置として、キャピログラフ1D(株式会社東洋精機製作所製)およびレオテンス(Rheotens71.97)(Gottfert社製)を用いて測定した。測定試料は、事前に、70℃×5時間真空乾燥した。まず、試験温度190℃に加熱された径9.55mmのバレルに測定試料を充填後、5分間予熱した後、溶融樹脂を上記測定装置のキャピラリーダイ(口径2.095mm、長さ8mm、流入角度90度(コニカル))からピストン降下速度(20mm/min)を一定に保持して紐状に押出しながら、この紐状物を上記キャピラリーダイの出口から測定部までが80mmとなるよう設置したホイール(ホイール間:上0.6mm~0.8mm、下1.0mm)に通過させて、その引き取り速度を初速6.92mm/s、加速度10mm/s2で徐々に増加させつつ通過させていき、紐状物が切断した点の直前の張力の極大値と極小値の平均を測定試料の溶融張力(MT)とした。なお、そのままでは干渉してしまって80mmまでレオテンスを接近させることができない場合は、干渉を回避する策を講じて所定の場所にレオテンスをセットすることとした。なお、張力チャートに極大点が1個しかない場合はその極大値を溶融張力、紐状物が細くなり、引き取りが空回り状態になった場合は、その時点を破断点と捉えて、直前の張力の極大値と極小値の平均を測定試料の溶融張力とした。
〔「キャピログラフ1D」の測定条件〕
ダイ:直径2.095mm、長さ8mm、流入角度90度(コニカル)
バレル径:9.55mm
ピストンスピード:20mm/min
測定温度:190℃
〔「Rheotens71.97」の測定条件〕
ホイール間:上0.6mm~0.8mm、下1.0mm
加速度:10mm/s2
引き取り速度:初速6.92mm/s
【0116】
<分子量の測定>
〔ポリ乳酸樹脂発泡シートの平均分子量の求め方〕
ポリ乳酸樹脂発泡シートの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)のそれぞれは、次のようにして求めた。
分子量を測定する試料20mgをクロロホルム6mLに溶解させ(浸漬時間:6時間±1.0時間(一部不溶))、株式会社島津ジーエルシー製の非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過した後、次の測定条件にてクロマトグラフを用いて測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から試料の平均分子量を求めた。使用装置としては、東ソー株式会社製のゲル浸透クロマトグラフ(「HLC-8320GPC EcoSEC」、RI検出器・UV検出器内蔵)を用いた。
〔GPC測定条件〕
(サンプル側)
ガードカラム:東ソー株式会社製のTSK guardcolumn HXL-H(6.0mm×4.0cm)×1本
測定カラム:東ソー株式会社製のTSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列
リファレンス側:抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列
カラム温度:40℃
移動相:クロロホルム
リファレンス側ポンプの移動相流量:0.5mL/min
サンプル側ポンプの移動相流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
注入量:50μL
測定時間:25min
サンプリングピッチ:500msec
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工株式会社製の製品名「STANDARD SM-105」および「STANDARD SH-75」で質量平均分子量が5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、151,000、53,500、17,000、7,660、2,900、1,320のものを用いた。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、151,000、17,000、2,900)およびB(3,120,000、442,000、53,500、7,660、1,320)にグループ分けした後、Aを(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)に秤量後、クロロホルム30mLに溶解し、Bを(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)に秤量後、クロロホルム30mLに溶解した。
標準ポリスチレン検量線は、作製した各A溶解液および各B溶解液を50μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得た。その検量線を用いて平均分子量を算出した。
【0117】
<連続気泡率の測定>
ポリ乳酸樹脂発泡シートから、縦25mm、横25mmのシート状サンプルを複数枚切り出し、切り出したサンプルを隙間があかないようにして重ね合わせて厚み25mmの測定用試料とし、この測定用試料の外寸を株式会社ミツトヨ製の「デジマチックキャリパ」を使用して1/100mmまで測定し、見掛けの体積(cm3)を求めた。
次に、空気比較式比重計1000型(東京サイエンス株式会社製)を使用して、1-1/2-1気圧法により、測定用試料の体積(cm3)を求めた。
これらの求めた値と下記式により、連続気泡率(%)を計算し、試験数5個の平均値を求めた。
なお、測定は、測定用試料をJIS K7100-1999 記号23/50、2級の環境下で16時間状態調節した後、JIS K7100-1999 記号23/50、2級の環境下で行った。
また、空気比較式比重計は、標準球(大28.9cc、小8.5cc)にて補正を行った。
連続気泡率(%)=[(見掛け体積-空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積]×100(%)
【0118】
<見掛け密度の測定>
ポリ乳酸樹脂発泡シートの見掛け密度は、JIS K7222:1999「発泡プラスチックおよびゴム-見掛け密度の測定」に記載される方法により測定した。具体的には、下記の方法で測定した。
ポリ乳酸樹脂発泡シートから、100cm3以上の試料を元のセル構造を変えないように切断し、この試料をJIS K7100:1999の記号23/50、2級環境下で16時間状態調節した後、その寸法、質量を測定して、密度を下記式により算出した。
見掛け密度(kg/m3)=試料の質量(kg)/試料の体積(m3
なお、試料の寸法測定には、株式会社ミツトヨ製「DIGIMATIC」CD-15タイプを用いた。
【0119】
<平均気泡径の測定>
ポリ乳酸樹脂発泡シートの幅方向中央部から断面観察用試料を切り出した。試料の断面は(株)日立ハイテクノロジーズ製「SU1510」走査電子顕微鏡を用いて、30倍~100倍に拡大して撮影した。観察する断面の一つは、押出方向(MD方向)に平行しポリ乳酸樹脂発泡シートの表面に垂直となる平面で試料を切断した際の断面(以下「MD断面」という)とした。観察する断面のもう一つは、押出方向に直交する平面での試料を切断した際の断面(以下「TD断面」という)とした。
走査電子顕微鏡で、MD断面、及び、TD断面のそれぞれに対し、2視野ずつ合計4視野の顕微鏡画像を撮影した。
このとき、顕微境画像は、横向きのA4用紙1枚に縦横2画像(合計4画像)並んだ状態で印刷した際に所定の倍率となるように撮影した。具体的には、上記のように印刷した画像上に、押出方向(MD方向)、幅方向(TD方向)各方向に平行する60mmの任意の直線、及び、各方向に直交する厚み方向(VD方向)に60mmの直線を描いた際に、この直線上に存在する気泡の数が3~10個程度となるように電子顕微鏡での撮影倍率を調整した。
顕微鏡画像を上記のようにA4用紙に並べて印刷した。
MD断面の2つの画像のそれぞれにMD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描いた。また、TD断面の2つの画像のそれぞれにTD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描いた。
また、MD断面の1つの画像とTD断面の1つの画像とにVD方向に平行な3本の直線(60mm)を描いた。即ち顕微鏡画像の印刷されたA4用紙にはMD方向、TD方向、及び、VD方向に平行な60mmの任意の直線を各方向6本ずつ描いた。
なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにした。そしてこの直線が通過する気泡の数を数えた。気泡が接点のみで接してしまう場合には、この気泡も数に加えた。
MD方向、TD方向、VD方向の各方向の6本の任意の直線について数えた気泡数を算術平均し、各方向の気泡数とした。
気泡数を数えた画像倍率とこの気泡数から気泡の平均弦長tを次式より算出した。
平均弦長 t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)
画像倍率は画像上のスケールバーを(株)ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」にて1/100mmまで計測し、次式により求めた。
画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)
次式により各方向における気泡径を算出した。
気泡径D(mm)=t/0.616
そして、それらの積の3乗根を平均気泡径とした。
平均気泡径(μm)=(DMD×DTD×DVD1/3 ×1000
MD:MD方向の気泡径(mm)
TD:TD方向の気泡径(mm)
VD:VD方向の気泡径(mm)
【0120】
[製造例1]
ポリ乳酸樹脂(Nature Works LLC製、「Biopolymer Ingeo 6202D」、MFR=11.2g/10min、密度=1240kg/m3)の水分率を0.02質量%に調整した。この水分率が0.02質量%のポリ乳酸樹脂:100質量部と、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(化薬ヌーリオン社製、「トリゴノックスBPIC-75」、1分間半減期温度T1=158.8℃):0.5質量部を、リボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を、口径が57mmの二軸押出機(L/D=31.5)に供給した。
フィード部の設定温度を170℃、それ以降の温度を200℃に設定し、回転数100rpmの条件にて、上記二軸押出機中で、上記混合物を溶融混練させ、上記押出機の先端に取り付けたダイ(口径φ3mm、孔数18個)から、50kg/時間の吐出量で、混練物をストランド状に押し出した。
次いで、押し出されたストランド状の混練物を、30℃の水を収容した長さ2mの冷却水槽中を通過させて、冷却した。
冷却されたストランドを、ペレタイザーでカットして、乾燥して、改質されたポリ乳酸樹脂(1)のペレットを得た。
結果を表1に示した。
【0121】
[製造例2]
製造例1で用いたポリ乳酸樹脂の水分率を0.05質量%に調整した。ポリ乳酸樹脂として、この水分率を0.05質量%に調整したポリ乳酸樹脂を用いた以外は、製造例1と同様に行い、改質されたポリ乳酸樹脂(2)のペレットを得た。
結果を表1に示した。
【0122】
[製造例3]
製造例1で用いたポリ乳酸樹脂の水分率を0.11質量%に調整した。ポリ乳酸樹脂として、この水分率を0.11質量%に調整したポリ乳酸樹脂を用いた以外は、製造例1と同様に行い、改質されたポリ乳酸樹脂(3)のペレットを得た。
結果を表1に示した。
【0123】
[製造例4]
製造例1で用いたポリ乳酸樹脂の水分率を0.41質量%に調整した。ポリ乳酸樹脂として、この水分率を0.41質量%に調整したポリ乳酸樹脂を用いた以外は、製造例1と同様に行い、改質されたポリ乳酸樹脂(4)のペレットを得た。
結果を表1に示した。
【0124】
[実施例1]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂(1)(水分率:0.03質量%):100質量部と、気泡調整剤(松村産業株式会社製「クラウンタルク」):1.0質量部を、ドライブレンドして、混合物を作製した。
口径φ50mmの第1押出機(上流側)および口径φ65mmの第2押出機(下流側)を備えたタンデム押出機において、口径φ50mmの第1の押出機に、上記混合物を、ホッパーを通じて供給し220℃で加熱溶融させた。
なお、改質されたポリ乳酸樹脂を調製してからホッパーに供給するまでの間に該改質されたポリ乳酸樹脂の水分率が変化するか否かを確認するため、別途、上記改質されたポリ乳酸樹脂(1)のみを上記第1の押出機にホッパーを通じて供給したときの、ホッパー内で採取した該改質されたポリ乳酸樹脂(1)の水分率を確認したところ、0.03質量%のままであった。
その後、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70質量%/30質量%):1.2質量部を第1押出機に圧入し、上記混合物とともに溶融混練させた。
次いで、溶融混練物を口径φ65mmの第2の押出機に移送して170℃に冷却した後、口径φ70mmのサーキュラーダイから吐出量30kg/時間で押出発泡させて、円筒状発泡体を得た。
得られた円筒状発泡体を内部が約20℃の水で冷却されているφ206mmのマンドレル上を沿わせ、また、その外面をその径よりも大きいエアリングによりエアーを吹き付けることにより冷却成形し、円周上の1点でカッターにより切開して、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シートを得た。
結果を表2に示した。
【0125】
[実施例2]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂(1)の水分率を0.07質量%に調整した。ポリ乳酸樹脂として、この水分率が0.07質量%の改質されたポリ乳酸樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シートを得た。
なお、改質されたポリ乳酸樹脂を調製してからホッパーに供給するまでの間に該改質されたポリ乳酸樹脂の水分率が変化するか否かを確認するため、別途、上記改質されたポリ乳酸樹脂(1)(水分率が0.07質量%に調整されたもの)のみを第1の押出機にホッパーを通じて供給したときの、ホッパー内で採取した該改質されたポリ乳酸樹脂(1)の水分率を確認したところ、0.07質量%のままであった。
結果を表2に示した。
【0126】
[実施例3]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂(1)の水分率を0.13質量%に調整した。ポリ乳酸樹脂として、この水分率が0.13質量%の改質されたポリ乳酸樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シートを得た。
なお、改質されたポリ乳酸樹脂を調製してからホッパーに供給するまでの間に該改質されたポリ乳酸樹脂の水分率が変化するか否かを確認するため、別途、上記改質されたポリ乳酸樹脂(1)(水分率が0.13質量%に調整されたもの)のみを第1の押出機にホッパーを通じて供給したときの、ホッパー内で採取した該改質されたポリ乳酸樹脂(1)の水分率を確認したところ、0.13質量%のままであった。
結果を表2に示した。
【0127】
[比較例1]
製造例1で得られた改質されたポリ乳酸樹脂(1)の水分率を0.37質量%に調整した。ポリ乳酸樹脂として、この水分率が0.37質量%の改質されたポリ乳酸樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シートを得た。
なお、改質されたポリ乳酸樹脂を調製してからホッパーに供給するまでの間に該改質されたポリ乳酸樹脂の水分率が変化するか否かを確認するため、別途、上記改質されたポリ乳酸樹脂(1)(水分率が0.37質量%に調整されたもの)のみを第1の押出機にホッパーを通じて供給したときの、ホッパー内で採取した該改質されたポリ乳酸樹脂(1)の水分率を確認したところ、0.37質量%のままであった。
結果を表2に示した。
【0128】
[実施例4]
ポリ乳酸樹脂(Nature Works LLC製、「Biopolymer Ingeo 6202D」、MFR=11.2g/10min、密度=1240kg/m3)の水分率を0.02質量%に調整した。この水分率が0.02質量%のポリ乳酸樹脂:100質量部と、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(化薬ヌーリオン社製、「トリゴノックスBPIC-75」、1分間半減期温度T1=158.8℃):0.4質量部、気泡調整剤(松村産業株式会社製「クラウンタルク」):1.0質量部を、リボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を、ホッパーを通じて、口径が41mmの二軸押出機(L/D=42)に供給した。この二軸押出機においては、原料のフィード部側から押出側にかけて、加熱ゾーンとして、フィード部、溶融ゾーン、冷却ゾーンの3ゾーンを順に含んでいる。
なお、ポリ乳酸樹脂を調製してからホッパーに供給するまでの間に該ポリ乳酸樹脂の水分率が変化するか否かを確認するため、別途、上記ポリ乳酸樹脂(水分率が0.02質量%に調整されたもの)のみを上記二軸押出機にホッパーを通じて供給したときの、ホッパー内で採取した該ポリ乳酸樹脂の水分率を確認したところ、0.02質量%のままであった。
フィード部の設定温度を160℃、溶融ゾーンの温度を200℃に設定し、回転数50rpmの条件にて、上記二軸押出機中で、上記混合物を溶融混練させ、同時に、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70質量%/30質量%):1.2質量部を、二軸押出機の溶融ゾーンで圧入し、上記混合物とともに溶融混練させた。
次いで、溶融混練物を、冷却ゾーンにて175℃に冷却した後、口径φ70mmのサーキュラーダイから吐出量30kg/時間で押出発泡させて、円筒状発泡体を得た。
得られた円筒状発泡体を内部が約20℃の水で冷却されているφ206mmのマンドレル上を沿わせ、また、その外面をその径よりも大きいエアリングによりエアーを吹き付けることにより冷却成形し、円周上の1点でカッターにより切開して、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シートを得た。
結果を表3に示した。
【0129】
[実施例5]
実施例4で用いたポリ乳酸樹脂の水分率を0.05質量%に調整した。ポリ乳酸樹脂として、この水分率を0.05質量%に調整したポリ乳酸樹脂を用いた以外は、実施例4と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シートを得た。
なお、ポリ乳酸樹脂を調製してからホッパーに供給するまでの間に該ポリ乳酸樹脂の水分率が変化するか否かを確認するため、別途、上記ポリ乳酸樹脂(水分率が0.05質量%に調整されたもの)のみを上記二軸押出機にホッパーを通じて供給したときの、ホッパー内で採取した該ポリ乳酸樹脂の水分率を確認したところ、0.05質量%のままであった。
結果を表3に示した。
【0130】
[実施例6]
実施例4で用いたポリ乳酸樹脂の水分率を0.11質量%に調整した。ポリ乳酸樹脂として、この水分率を0.11質量%に調整したポリ乳酸樹脂を用いた以外は、実施例4と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シートを得た。
なお、ポリ乳酸樹脂を調製してからホッパーに供給するまでの間に該ポリ乳酸樹脂の水分率が変化するか否かを確認するため、別途、上記ポリ乳酸樹脂(水分率が0.11質量%に調整されたもの)のみを上記二軸押出機にホッパーを通じて供給したときの、ホッパー内で採取した該ポリ乳酸樹脂の水分率を確認したところ、0.11質量%のままであった。
結果を表3に示した。
【0131】
[比較例2]
実施例4で用いたポリ乳酸樹脂の水分率を0.41質量%に調整した。ポリ乳酸樹脂として、この水分率を0.41質量%に調整したポリ乳酸樹脂を用いた以外は、実施例4と同様に行い、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シートを得た。
なお、ポリ乳酸樹脂を調製してからホッパーに供給するまでの間に該ポリ乳酸樹脂の水分率が変化するか否かを確認するため、別途、上記ポリ乳酸樹脂(水分率が0.41質量%に調整されたもの)のみを上記二軸押出機にホッパーを通じて供給したときの、ホッパー内で採取した該ポリ乳酸樹脂の水分率を確認したところ、0.41質量%のままであった。
結果を表3に示した。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートは、軽量で緩衝性に優れており、多様な形状に成形加工することが容易であるため、包装材などをはじめとして各種成形品の原材料として利用されている。
【符号の説明】
【0136】
1 発泡シート
3 ストランドダイ
4 ペレタイザー
5 乾燥装置
6 冷却装置
10 タンデム押出機
10a 第1押出機
10b 第2押出機
11 ホッパー
12 ガス導入部
21 ローラ
22 巻き取りローラ
30 二軸押出機
図1
図2
図3