(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010810
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】三次元造形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/336 20170101AFI20240118BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240118BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240118BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240118BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240118BHJP
【FI】
B29C64/336
B33Y10/00
B29C64/118
B29C64/393
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112322
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 啓太郎
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP05
4F213AR06
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WK03
4F213WL02
4F213WL67
4F213WL73
4F213WL85
4F213WL93
(57)【要約】
【課題】熱収縮率が異なるスライス層間において層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる三次元造形方法を提供すること。
【解決手段】第1樹脂を含む第1材料と、第1樹脂が有する熱収縮率と異なる熱収縮率を有する第2樹脂を含む第2材料とを用いて三次元造形物を造形する三次元造形方法であって、第1材料と第2材料とのうちの一方により形成される第1スライス層に、第1材料と第2材料とのうちの他方により形成される第2スライス層を積層する場合、当該一方により形成される第1境界層を第1スライス層の上に積層し、当該他方により形成される第2境界層を第1境界層の上に積層し、第2境界層の上に第2スライス層を積層し、第1境界層は、第1スライス層と第2スライス層との積層方向から第1境界層を見た場合において、第1境界層の輪郭の内側に複数の空隙が形成される層である、三次元造形方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂を含む第1材料と、前記第1樹脂が有する熱収縮率と異なる熱収縮率を有する第2樹脂を含む第2材料とを用いて三次元造形物を造形する三次元造形方法であって、
前記第1材料と前記第2材料とのうちの一方により形成される第1スライス層に、前記第1材料と前記第2材料とのうちの他方により形成される第2スライス層を積層する場合、
前記一方により形成される第1境界層を前記第1スライス層の上に積層し、
前記他方により形成される第2境界層を前記第1境界層の上に積層し、
前記第2境界層の上に前記第2スライス層を積層し、
前記第1境界層は、前記第1スライス層と前記第2スライス層との積層方向から前記第1境界層を見た場合において、前記第1境界層の輪郭の内側に複数の空隙が形成される層である、
三次元造形方法。
【請求項2】
前記第1スライス層と前記第2スライス層との積層方向から前記第1境界層を見た場合において、前記第1境界層の輪郭の内側には、前記第1境界層のアウトライン内におけるインフィルの充填率に応じた前記複数の空隙が形成される、
請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項3】
前記インフィルの充填率は、20%以上90%以下の範囲内である、
請求項2に記載の三次元造形方法。
【請求項4】
前記第2境界層を前記第1境界層の上に積層することにより、前記第2境界層の一部を、前記第1境界層に形成された前記複数の空隙へ含浸させる、
請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項5】
前記第2境界層の上に、前記第2スライス層を複数積層させ、
前記第2境界層を形成する場合における前記他方の単位面積あたりの供給量は、前記第2スライス層を形成する場合における前記他方の単位面積あたりの供給量よりも多い、
請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項6】
前記第2境界層の上に複数積層される前記第2スライス層それぞれのアウトライン内におけるインフィルの充填率のうち、最下段の前記第2スライス層のアウトライン内におけるインフィルの充填率を最も低い充填率にする、
請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項7】
前記第2樹脂の熱収縮率は、前記第1樹脂の熱収縮率よりも大きい、
請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項8】
前記第1境界層を形成する場合における前記第1境界層の温度を、前記第1スライス層を形成する場合における前記第1スライス層の温度よりも高くする、
請求項7に記載の三次元造形方法。
【請求項9】
前記第1スライス層と前記第2スライス層との積層方向から前記第1境界層を見た場合において、前記第2境界層の輪郭は、前記第1境界層の輪郭の内側に含まれる、
請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項10】
第1樹脂を含む第1材料により形成され、第1ヤング率を有する第1部分と、前記第1樹脂が有する熱収縮率と異なる熱収縮率を有する第2樹脂を含む第2材料により形成され、前記第1ヤング率と異なる第2ヤング率を有する第2部分とが積層された三次元造形物を造形する、
三次元造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一部を溶融した造形材料を積層して三次元造形物を造形する三次元造形装置についての研究、開発が行われている。
【0003】
これに関し、POM(Polyoxymethylene)等の熱収縮率の高い造形材料をステージ上に積層させて三次元造形物を造形する三次元造形方法として、造形材料をステージ上に積層させる場合において、ステージの温度と雰囲気温度との少なくとも一方を制御することにより、積層された造形材料がステージから剥離してしまうことを抑制する三次元造形方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された三次元造形方法では、熱収縮率の異なる複数の造形材料をステージ上に積層させて三次元造形物を造形する場合、複数の造形材料のうち熱収縮率の高い方の造形材料により形成された層と、複数の造形材料のうち熱収縮率の低い方の造形材料により形成された層との境界において、層間剥離が生じてしまうことを抑制することが困難な場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の一態様は、第1樹脂を含む第1材料と、前記第1樹脂が有する熱収縮率と異なる熱収縮率を有する第2樹脂を含む第2材料とを用いて三次元造形物を造形する三次元造形方法であって、前記第1材料と前記第2材料とのうちの一方により形成される第1スライス層に、前記第1材料と前記第2材料とのうちの他方により形成される第2スライス層を積層する場合、前記一方により形成される第1境界層を前記第1スライス層の上に積層し、前記他方により形成される第2境界層を前記第1境界層の上に積層し、前記第2境界層の上に前記第2スライス層を積層し、前記第1境界層は、前記第1スライス層と前記第2スライス層との積層方向から前記第1境界層を見た場合において、前記第1境界層の輪郭の内側に複数の空隙が形成される層である、三次元造形方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】三次元造形装置1の構成の一例を示す図である。
【
図2】制御装置60のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】制御装置60の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】制御装置60が造形制御を行う処理の流れの一例を示す図である。
【
図5】三次元造形物ML1の外観の一例を示す図である。
【
図6】第1部分P1の外観の一例を示す上面図である。
【
図7】第1境界層B1の外観の一例を示す上面図である。
【
図8】第2境界層B2の外観の一例を示す上面図である。
【
図9】第1境界層B1に形成された複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸している様子の一例を示す図である。
【
図10】第2境界層B2の造形パスの太さが、第1境界層B1の空隙が延伸する方向における当該空隙の太さよりも太い場合において第2境界層B2の一部が第1境界層B1の空隙へ含浸する様子の一例を示す図である。
【
図11】第2境界層B2の造形パスの太さが、第1境界層B1の造形パスの太さよりも太い場合において第2境界層B2の一部が第1境界層B1の空隙へ含浸する様子の一例を示す図である。
【
図12】第2部分P2として積層される3個の第2スライス層のうちの最下層の第2スライス層P21の外観の一例を示す上面図である。
【
図13】第2部分P2として積層される3個の第2スライス層のうちの真ん中の第2スライス層P22の外観の一例を示す上面図である。
【
図14】第2部分P2として積層される3個の第2スライス層のうちの最上段の第2スライス層P23の外観の一例を示す上面図である。
【
図15】三次元造形物ML2の外観の一例を示す図である。
【
図16】三次元造形物ML3の外観の一例を示す図である。
【
図17】三次元造形物ML4の外観の一例を示す図である。
【
図18】三次元造形物ML5の外観の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
<三次元造形装置の概要>
まず、実施形態に係る三次元造形装置の概要について説明する。
【0010】
実施形態に係る三次元造形装置は、第1材料と、第2材料とを用いて三次元造形物を造形する。第1材料は、第1樹脂を含む。第2材料は、第1樹脂が有する熱収縮率と異なる熱収縮率を有する第2樹脂を含む。また、三次元造形装置は、ステージと、吐出部と、移動部と、制御部を備える。吐出部は、第1材料と第2材料とのそれぞれを吐出する。移動部は、吐出部とステージとを相対的に移動させる。制御部は、吐出部と移動部とを制御する。また、制御部は、第1材料と第2材料とのうちの一方により形成される第1スライス層に、第1材料と第2材料とのうちの他方により形成される第2スライス層を積層する場合、当該一方により形成される第1境界層を第1スライス層の上に積層し、当該他方により形成される第2境界層を第1境界層の上に積層し、第2境界層の上に第2スライス層を積層する。そして、第1境界層は、第1スライス層と第2スライス層との積層方向から第1境界層を見た場合において、第1境界層の輪郭の内側に複数の空隙が形成される層である。これにより、三次元造形装置は、熱収縮率が互いに異なる材料により形成された第1スライス層と第2スライス層との境界において、層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。
【0011】
以下では、実施形態に係る三次元造形装置の構成と、当該三次元造形装置が備える制御装置の構成と、当該制御装置が行う処理とについて詳しく説明する。
【0012】
<三次元造形装置の構成>
以下、実施形態に係る三次元造形装置の構成について、三次元造形装置1を例に挙げて説明する。
【0013】
図1は、三次元造形装置1の構成の一例を示す図である。
【0014】
ここで、三次元座標系TCは、三次元座標系TCが描かれた図における方向を示す三次元直交座標系である。以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるX軸を、単にX軸と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるY軸を、単にY軸と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるZ軸を、単にZ軸と称して説明する。また、以下では、一例として、Z軸の負方向が重力方向と一致している場合について説明する。このため、以下では、説明の便宜上、Z軸の正方向を上方向又は単に上と称し、Z軸の負方向を下方向又は単に下と称して説明する。
【0015】
三次元造形装置1は、ノズルNzを有する吐出部10と、三次元造形物が造形される造形面21を有するステージ20と、移動部30と、加熱部40と、温度検出部50と、制御装置60と、データ生成装置70を備える。なお、三次元造形装置1において、制御装置60は、データ生成装置70と一体に構成されてもよい。また、三次元造形装置1は、データ生成装置70を備えない構成であってもよい。この場合、データ生成装置70は、三次元造形装置1の制御装置60へ外部から通信可能に接続される。また、三次元造形装置1は、制御装置60とデータ生成装置70とを備えない構成であってもよい。この場合、制御装置60は、三次元造形装置1へ外部から通信可能に接続される。また、この場合、データ生成装置70は、制御装置60へ外部から通信可能に接続される。
【0016】
三次元造形装置1は、ステージ20の造形面21上に向かって吐出部10から図示しない造形材料Xを吐出させつつ、吐出部10とステージ20との相対的な位置を変化させる。これにより、三次元造形装置1は、N個のスライス層Lを積層させて1個の予め決められた形状の三次元造形物を造形する。ここで、Nは、1以上の整数であれば、如何なる整数であってもよい。この場合、N個のスライス層Lのうち下から数えて1番目のスライス層Lは、造形面21上に積層される。また、造形面21上に積層されるN個のスライス層Lのそれぞれは、造形面21と平行な造形パスに沿って吐出された造形材料Xのことである。また、造形パスは、造形材料Xを吐出しながら移動するノズルNzのステージ20に対する走査経路のことである。すなわち、三次元造形装置1は、N個のスライス層Lのうちのn番目のスライス層Lの造形パスに沿って造形材料Xを吐出部10によって吐出し、n番目のスライス層Lをn-1番目のスライス層Lの上に積層させる。なお、nは、1以上N以下のいずれかの整数である。また、N個のスライス層Lのそれぞれは、単一の層によって構成されてもよく、積層された複数の層によって構成されてもよい。ここで、あるスライス層Lの造形パスには、当該スライス層Lの輪郭に沿ったノズルNzの走査経路であるアウトライン経路と、当該アウトライン経路に囲まれた領域内におけるノズルNzの走査経路であるインフィル経路とが含まれている。すなわち、あるスライス層Lは、当該スライス層Lのアウトライン経路に沿って吐出された造形材料Xと、当該スライス層Lのインフィル経路に沿って吐出された造形材料Xとによって構成される。
【0017】
また、三次元造形装置1は、熱収縮率が互いに異なる第1材料と第2材料との2種類の材料をノズルNzから造形材料Xとして選択的に吐出することができる。これにより、三次元造形装置1は、これら2種類の材料によって造形された三次元造形物を造形することができる。ここで、第1材料は、第1樹脂を含む材料のことである。また、第2材料は、第1樹脂が有する熱収縮率と異なる熱収縮率を有する第2樹脂を含む材料のことである。以下では、一例として、第2材料が有する熱収縮率が、第1材料が有する熱収縮率よりも大きい場合について説明する。この場合、第1樹脂は、例えば、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)である。また、この場合、第2樹脂は、例えば、POM(Polyoxymethylene)である。なお、第1樹脂は、ABSに代えて、第2樹脂が有する熱収縮率よりも小さい熱収縮率を有する他の種類の樹脂であってもよい。また、第2樹脂は、POMに代えて、第1樹脂が有する熱収縮率よりも大きい熱収縮率を有する他の種類の樹脂であってもよく、例えば、結晶性樹脂であるPA12(ポリアミド12)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PSU(ポリスルホン)、PA66(ポリアミド66)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PSF(ポリサルホン)、PA6(ポリアミド6)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等であってもよい。
【0018】
三次元造形装置1は、このような三次元造形物の造形を行う造形制御を、三次元造形用データに基づいて行う。ここで、三次元造形装置1は、受け付けた操作に応じて、三次元造形用データを生成する。三次元造形用データは、N個のスライス層Lを予め決められた形状の三次元造形物として三次元造形装置1に積層させるためのデータである。三次元造形装置1には、当該形状を示す形状データが記憶されている。形状データは、例えば、当該形状を示すデータであれば、如何なるデータであってもよく、例えば、STL(Stereolithography)データである。三次元造形装置1は、受け付けた操作と、形状データとに基づいて、形状データが示す形状を有する仮想的な造形体と、造形体を支持するために造形体に付加される仮想的な支持体とのうち、少なくとも造形体を含む仮想的なオブジェクトを示すオブジェクトデータを生成する。造形体は、積層されるN個のスライス層Lが有する部分のうち、1個の三次元造形物としてN個のスライス層Lから切り離される部分のことである。また、支持体は、積層されたN個のスライス層Lが有する部分のうち、造形体を支持する部分のことである。
【0019】
オブジェクトデータを生成した後、三次元造形装置1は、生成したオブジェクトデータを記憶する。オブジェクトデータを記憶した後、三次元造形装置1は、スライス条件情報に基づいて、オブジェクトをN個のスライス層VLに仮想的にスライスする。このように三次元造形装置1によりオブジェクトが仮想的にスライスされたN個のスライス層VLのそれぞれは、前述のN個のスライス層Lのそれぞれに対応する。そこで、以下では、説明の便宜上、これらN個のスライス層VLのうちn番目のスライス層VLを、スライス層VLnと称し、前述のN個のスライス層Lのうちn番目のスライス層Lを、スライス層Lnと称して説明する。この場合、例えば、1番目のスライス層VL1は、1番目のスライス層L1に対応する。ここで、スライス条件情報は、三次元造形装置1が記憶したオブジェクトデータが示すオブジェクトをN個のスライス層VLに仮想的にスライスするためのスライス条件を示す情報のことである。スライス条件情報には、N個のスライス層VLの数を示す情報、N個のスライス層VLのそれぞれの厚みを示す情報等の情報が、スライス条件を示す情報として含まれている。
【0020】
オブジェクトを仮想的にスライスした後、三次元造形装置1は、造形パス生成条件情報に基づいて、スライスしたN個のスライス層VLのそれぞれ毎に、スライス層VLの造形パスを生成する。造形パスは、前述した通り、造形材料Xを吐出しながら移動するノズルNzのステージ20に対する走査経路のことである。このため、n番目のスライス層VLnの造形パスに沿って吐出された造形材料Xが、スライス層VLnに対応する現実のスライス層Lnのことである。
【0021】
ここで、n番目のスライス層VLnは、オブジェクトに含まれる造形体と支持体とのうちの少なくとも一方がスライスされたスライス層のうちの1つである。このため、n番目のスライス層VLnには、造形体がスライスされた部分と、支持体がスライスされた部分とのうちの少なくとも一方が含まれている。すなわち、n番目のスライス層VLnは、造形体がスライスされた層と、支持体がスライスされた層とのうちの少なくとも一方を含んでいる。そして、造形体がスライスされた層は、第1ソリッド層、造形層の2種類に分類される。第1ソリッド層は、造形体のソリッド層のことである。造形体は、第1ソリッド層と、第1ソリッド層と第1ソリッド層との間に積層される造形層とによって構成される。すなわち、造形体は、第1ソリッド層と、造形層とを積層させることによって造形される。また、支持体がスライスされた層は、第2ソリッド層、支持層、ラフト層の3種類に分類される。第2ソリッド層は、支持体のソリッド層のことである。ラフト層は、第1ソリッド層、造形層、第2ソリッド層、支持層のそれぞれが積層される土台となる層のことである。支持体は、第2ソリッド層と、第2ソリッド層と第2ソリッド層との間に積層される支持層と、ラフト層とによって構成される。すなわち、支持体は、第2ソリッド層と、支持層と、ラフト層とを積層させることによって造形される。例えば、ある造形体の形状がオーバーハングを有する形状である場合、当該造形体が有する部分のうちオーバーハングの部分は、このような支持体により支持される。以上のことから、n番目のスライス層VLnの種類は、n番目のスライス層VLnに含まれる層によって分類される。例えば、n番目のスライス層VLnが第1ソリッド層のみを含んでいる場合、n番目のスライス層VLnの種類は、第1ソリッド層である。また、例えば、n番目のスライス層VLnが第1ソリッド層と第2ソリッド層とを含んでいる場合、n番目のスライス層VLnの種類は、n番目のスライス層VLnに含まれる層のうち造形体がスライスされた層の種類と、n番目のスライス層VLnに含まれる層のうち支持体がスライスされた層の種類との組み合わせ、すなわち、第1ソリッド層と第2ソリッド層との組み合わせによって表される。そして、n番目のスライス層VLnの種類は、n番目のスライス層Lnの種類でもある。このため、三次元造形装置1は、スライス条件情報に基づいて、n番目のスライス層VLnの種類を特定することができるとともに、スライス層Lnの種類を特定することができる。
【0022】
N個のスライス層VLそれぞれの造形パスを生成した後、三次元造形装置1は、生成したN個のスライス層VLそれぞれの造形パスを示す造形パス情報を含む三次元造形用データを生成する。ここで、造形パス生成条件情報は、N個のスライス層VLそれぞれの造形パスを生成するための造形パス生成条件を示す情報のことである。造形パス生成条件情報には、N個のスライス層VLそれぞれの種類毎の造形パスの形状を示す情報、N個のスライス層VLそれぞれの種類毎の造形パスの幅を示す情報、N個のスライス層VLそれぞれの種類毎の造形パスの厚みを示す情報、N個のスライス層VLそれぞれの種類毎の造形パスに沿って造形材料Xを吐出する場合におけるノズルNzの移動速度を示す情報、ノズルNzから吐出する造形材料Xの種類を示す情報等の情報が、造形パス生成条件を示す情報として含まれている。また、ある造形パスを示す造形パス情報には、当該造形パスの幅を示す情報、当該造形パスの厚みを示す情報、当該造形パスに沿って造形材料Xを吐出する場合のノズルNzの移動速度を示す情報等の他の情報が含まれている。
【0023】
なお、三次元造形装置1では、前述のスライス条件情報には、N個のスライス層VLのうちのn-1番目のスライス層VLn-1の種類を示すn-1番目スライス層種類情報と、N個のスライス層VLのうちn-1番目のスライス層VLn-1の上に積層されるn番目のスライス層VLnの種類を示すn番目スライス層種類情報とが含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
【0024】
ここで、N個のスライス層Lのうちのラフト層のスライス層Lは、他の層のスライス層Lの土台として造形面21と、他の層との間に形成される層であり、造形材料Xによって塗り潰された層のことである。当該他の層は、N個のスライス層Lのうちラフト層の上に積層される個々のスライス層Lのことであり、具体的には、第1ソリッド層、造形層、第2ソリッド層、支持層のうちの一部又は全部のスライス層Lのことである。当該他の層は、造形面21と接するように造形面21上に積層された場合、造形面21から剥がれ難くなることがある。また、当該他の層は、当該場合、精度よく定着させることができないことがある。また、当該他の層には、当該場合、残存応力が残ってしまうことがある。これらの問題を解決するために当該他の層と造形面21との間に積層される層が、ラフト層のスライス層Lである。また、ソリッド層、造形層、支持層それぞれのスライス層Lは、予め決められた外形状の輪郭に沿って吐出された造形材料Xであるアウトラインと、アウトラインによって囲まれた領域内に吐出される造形材料Xであるインフィルとによって形成される。換言すると、ソリッド層、造形層、支持層それぞれのスライス層Lは、前述のアウトライン経路に沿って吐出される造形材料Xであるアウトラインと、前述のインフィル経路に沿って吐出される造形材料Xであるインフィルとによって形成される。そして、ソリッド層のスライス層Lは、ソリッド層のスライス層Lのアウトラインによって囲まれた領域内が、インフィルによって略隙間無く塗り潰された層のことである。換言すると、ソリッド層のスライス層Lは、当該領域内におけるインフィルの充填率が100%の層のことである。なお、第1ソリッド層のスライス層Lは、造形体の表面を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことであると換言することもできる。また、造形層のスライス層Lは、造形体の内部を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことである。また、第2ソリッド層のスライス層Lは、支持体の表面を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことであると換言することもできる。一方、造形層のスライス層Lは、造形層のアウトラインによって囲まれた領域内にインフィルが含まれ、当該領域内にインフィルが充填されていない領域が存在する層のことである。換言すると、造形層のスライス層Lは、当該領域内におけるインフィルの充填率が100%未満の層のことである。また、造形層のスライス層Lは、造形体の内部を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことであると換言することもできる。また、支持層のスライス層Lは、支持層のアウトラインによって囲まれた領域内にインフィルが含まれ、当該領域内にインフィルが充填されていない領域が存在する層のことである。換言すると、支持層のスライス層Lは、当該領域内におけるインフィルの充填率が100%未満の層のことである。また、支持層のスライス層Lnは、支持体の内部を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことであると換言することもできる。
【0025】
三次元造形装置1は、以上のようにして生成した三次元造形用データに基づいて、三次元造形物を造形する造形制御を行う。また、三次元造形装置1は、造形制御において造形面21上にN個のスライス層Lを積層させる場合、ラフト層、第1ソリッド層、造形層、第2ソリッド層、支持層のうちの一部又は全部によって表される種類のスライス層Lとして、N個のスライス層Lのそれぞれを吐出部10によって造形面21上に吐出し、N個のスライス層Lを積層させて1個の三次元造形物を造形する。
【0026】
ここで、第1材料によって形成されるスライス層Lと、第2材料によって形成されるスライス層Lとを積層させる場合、第1材料が有する熱収縮率と第2材料が有する熱収縮率との違いにより、これら2つのスライス層の境界において、層間剥離が生じてしまうことがある。
【0027】
そこで、三次元造形装置1は、三次元造形物を造形する造形制御において、第1スライス層に第2スライス層を積層する場合、第1材料により形成される第1境界層を第1スライス層の上に積層し、第2材料により形成される第2境界層を第1境界層の上に積層し、第2境界層の上に第2スライス層を積層する。ここで、境界層は、三次元造形装置1により造形面21上に積層されるN個のスライス層のうち第1材料により形成されるスライス層Lと、三次元造形装置1により造形面21上に積層されるN個のスライス層のうち第2材料により形成されるスライス層Lとの境界を挟むように位置する2つのスライス層Lのことである。また、第1境界層は、第1材料により形成される境界層のことであり、第1スライス層と第2スライス層との積層方向から見た場合において、輪郭の内側に複数の空隙が形成される境界層のことである。また、第2境界層は、第2材料により形成される境界層のことであり、第1境界層に形成される複数の空隙へ一部が含浸する境界層のことである。また、第1スライス層は、第1材料により形成されるスライス層Lのうち第1境界層以外のすべてのスライス層Lのそれぞれのことである。また、第2スライス層は、第2材料により形成されるスライス層Lのうち第2境界層以外のすべてのスライス層Lのそれぞれのことである。
【0028】
このように、三次元造形装置1は、第1スライス層、第1境界層、第2境界層、第2スライス層の順に、第1スライス層と第2スライス層とによって第1境界層及び第2境界層を挟み込むように積層することにより、第1スライス層と第2スライス層との境界において、層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。これは、第1スライス層と第1境界層とが同じ熱収縮率を有していることと、第2スライス層と第2境界層とが同じ熱収縮率を有していることと、第1境界層に形成される複数の空隙へ第2境界層の一部が含浸することとの3つの要件の組み合わせにより実現される。ここで、第1境界層に形成される複数の空隙へ第2境界層の一部が含浸すると、第2境界層が第1境界層に嵌合する。これにより、第1境界層は、温度の低下によって第2境界層が反ろうとする圧縮応力を支えることになる。その結果、第2境界層の反りの発生が抑制され、第2境界層は、第1境界層から離れ辛くなる。このようなスライス層Lの積層手順法により、三次元造形装置1は、熱収縮率が互いに異なる材料により形成された第1スライス層と第2スライス層との境界において、層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。なお、このように第2境界層の一部を第1境界層へ含浸させた場合、第2境界層と第1境界層との間の層間密着性は、第1材料と第2材料とのそれぞれによって第1境界層を形成した後に第1境界層の上に第2境界層を積層した場合と比較して、高くなる。この理由は、第1材料と第2材料とのそれぞれによって第1境界層を形成した後に第1境界層の上に第2境界層を積層した場合、第1境界層における第2材料と第2境界層における第2材料との間に層界面が形成されるためである。対して、第2境界層の一部を第1境界層の空隙へ含浸させる場合、第1境界層に含侵した第2材料と第2境界層における第2材料との間に層界面が形成されない。このため、第2境界層の一部を第1境界層の空隙へ含浸させる処理と、第1材料と第2材料とのそれぞれによって第1境界層を形成した後に第1境界層の上に第2境界層を積層する処理とは、本質的に異なる処理である。なお、造形時における第2境界層の熱収縮体積は、造形完了後における第2境界層の熱収縮体積の60%以下が好ましい。これにより、造形時に造形層の形状が変化することで造形精度が低下することを抑制できる。
【0029】
吐出部10は、第1材料と第2材料とのそれぞれを選択的に造形材料Xとして造形面21上に吐出する吐出装置である。より具体的には、吐出部10は、前述のノズルNzとともに、1種類以上の材料を溶融させて第1材料とする第1材料溶融部と、1種類以上の材料を溶融させて第2材料とする第2材料溶融部と、材料供給切替部と、第1材料供給部と、第2材料供給部を有する。ここで、吐出部10において、第1材料供給部と第1材料溶融部との間は、第1供給路によって接続される。また、吐出部10において、第2材料供給部と第2材料溶融部との間は、第2供給路によって接続される。また、第1材料溶融部と材料供給切替部との間は、第3供給路によって接続される。また、第2材料溶融部と材料供給切替部との間は、第4供給路によって接続される。また、材料供給切替部とノズルNzとの間は、連通孔によって接続される。なお、材料供給切替部は、連通孔を介してノズルNzへ造形材料Xとして供給する材料を、第1材料溶融部から供給される第1材料と、第2材料溶融部から供給される第2材料とのいずれかに切り替える。ノズルNzは、連通孔を通って材料供給切替部から供給される造形材料Xを先端から吐出する。なお、吐出部10は、ノズルNzに代えて、第1材料を吐出する第1ノズルと、第2材料を吐出する第2ノズルとの2つのノズルを備える構成であってもよい。この場合、吐出部10は、材料供給切替部を有さない。そして、この場合、第1材料溶融部は、第1連通孔を介して第1ノズルと接続される。また、この場合、第2材料溶融部は、第2連通孔を介して第2ノズルと接続される。
【0030】
ここで、三次元造形装置1は、n-1番目のスライス層Ln-1の上にn番目のスライス層Lnを積層する場合、n-1番目のスライス層Ln-1の上面とノズルNzの先端との距離を変更することにより、n-1番目のスライス層Ln-1の上面に吐出する造形材料Xの幅と、n-1番目のスライス層Ln-1の上面に吐出する造形材料Xの厚みとの少なくとも一方を変化させる。ただし、三次元造形装置1によりn番目のスライス層Lnの上面に吐出される造形材料Xの幅の最大値は、ノズルNzの先端の外径である。これは、n-1番目のスライス層Ln-1の上面とノズルNzの先端との距離を、ノズルNzの先端の内径よりも短くすると、ノズルNzの先端から吐出される造形材料Xが、ノズルNzの先端によって押し潰されながらn-1番目の造形層の上面に吐出されることになるからである。
【0031】
第1材料供給部には、第1材料となる材料として、ペレット、粉末等の状態の1種類以上の材料が収容される。以下では、一例として、第1材料供給部に収容される材料が、ペレット状の第1樹脂を含む場合について説明する。第1材料供給部は、例えば、ホッパーによって構成される。第1材料供給部に収容された材料は、第1材料供給部の下方に設けられた第1供給路を介して、第1材料溶融部に供給される。
【0032】
第2材料供給部には、第2材料となる材料として、ペレット、粉末等の状態の1種類以上の材料が収容される。以下では、一例として、第2材料供給部に収容される材料が、ペレット状の第2樹脂を含む場合について説明する。第2材料供給部は、例えば、ホッパーによって構成される。第2材料供給部に収容された材料は、第2材料供給部の下方に設けられた第2供給路を介して、第2材料溶融部に供給される。
【0033】
第1材料溶融部は、スクリューケースと、スクリューケース内に収容されたフラットスクリューと、フラットスクリューを駆動させる駆動モーターと、スクリューケース内においてフラットスクリューよりも下方に固定されたバレルを備える。
【0034】
フラットスクリューは、扁平な円柱形状を有し、円柱の外周から円柱の中心軸に向かう渦状の溝部が円柱の底面に形成されたスクリューである。
【0035】
バレルには、第3供給路が設けられている。また、バレルには、ヒーターが内蔵されている。ヒーターの温度は、制御装置60によって制御される。
【0036】
回転しているフラットスクリューと、バレルとの間に供給された材料は、フラットスクリューの回転と、バレルに内蔵されたヒーターによる加熱とによって、少なくとも一部が溶融されて、流動性を有するペースト状の第1材料となる。ペースト状の第1材料は、フラットスクリューの回転によって、バレルに設けられた第3供給路を介して材料供給切替部に供給される。材料供給切替部の状態が第1材料をノズルNzへ供給する状態に切り替わっている場合、材料供給切替部に供給された第1材料は、連通孔を介して、ノズルNzへ供給される。そして、ノズルNzに供給された第1材料は、造形材料XとしてノズルNzの先端からステージ20に向かって吐出される。
【0037】
第2材料溶融部は、第1材料溶融部の構成と同様の構成を有する。このため、以下では、第2材料溶融部につての詳細な説明を省略する。第2材料溶融部においてペースト状にされた第2材料は、フラットスクリューの回転によって、バレルに設けられた第4供給路を介して材料供給切替部に供給される。材料供給切替部の状態が第2材料をノズルNzへ供給する状態に切り替わっている場合、材料供給切替部に供給された第2材料は、連通孔を介して、ノズルNzへ供給される。そして、ノズルNzに供給された第2材料は、造形材料XとしてノズルNzの先端からステージ20に向かって吐出される。
【0038】
移動部30は、吐出部10のノズルNzとステージ20との相対的な位置を変化させる。より具体的には、移動部30は、吐出部10とステージ20とのいずれか一方又は両方を移動させることにより、吐出部10のノズルNzとステージ20との相対的な位置を変化させる。以下では、一例として、移動部30が、ステージ20を移動させることにより、吐出部10のノズルNzとステージ20との相対的な位置を変化させる場合について説明する。例えば、移動部30は、吐出部10をZ軸に沿って移動させる第1移動機構部31と、ステージ20を吐出部10に対してX軸及びY軸に沿って移動させる第2移動機構部32を備えている。本実施形態では、
図1に示した第1移動機構部31は、吐出部10をZ軸に沿って移動させる昇降装置によって構成され、吐出部10をZ軸に沿って移動させるためのモーターを有している。
図1に示した第2移動機構部32は、ステージ20をX軸及びY軸に沿って移動させる水平搬送装置によって構成され、ステージ20をX軸に沿って移動させるためのモーター、及び、ステージ20をY軸に沿って移動させるためのモーターを有している。第1移動機構部31及び第2移動機構部32は、制御装置60により制御される。
【0039】
加熱部40は、吐出部10により吐出された造形材料Xを含む対象領域を加熱する。ここで、対象領域は、造形面21上の領域のうち、1個の三次元造形物として造形面21上にN個のスライス層Lが積層された場合におけるN個のスライス層Lの全体を含む領域のことである。加熱部40は、対象領域を加熱可能な構成であれば、如何なる構成であってもよい。
図1に示した例では、加熱部40は、ステージ20の上面、すなわち、造形面21と対向する面を有し、対象領域を加熱する平板形状のパネルヒーターである。この場合、加熱部40は、平板形状の加熱部40が有する下面と、造形面21との間に挟まれた領域を対象領域として加熱する。なお、加熱部40は、制御装置60により制御される。また、
図1に示した例では、加熱部40には、前述のノズルNzが挿通される貫通孔が設けられている。このため、加熱部40は、ノズルNzの周囲に設けられており、ノズルNzとともに動く。なお、加熱部40は、パネルヒーターに代えて、温風を送り込むチャンバー方式のヒーターであってもよく、カートリッジヒーターであってもよく、対象領域内を加熱可能な他の如何なる種類のヒーターであってもよい。また、三次元造形装置1は、加熱部40を備えない構成であってもよい。
【0040】
温度検出部50は、造形面21上に積層されるスライス層Lの上面の温度を検出する温度センサーである。
図1に示した例では、温度検出部50は、加熱部40の下面に設けられている。そして、温度検出部50は、検出した温度を示す情報を制御装置60に出力する。また、三次元造形装置1は、温度検出部50を備えない構成であってもよい。
【0041】
制御装置60は、三次元造形装置1の全体を制御する。制御装置60は、データ生成装置70によって生成された三次元造形用データを、ネットワーク又は記録媒体を介して取得する。制御装置60は、予め記憶された三次元造形用プログラムを実行することによって、三次元造形用データに応じて吐出部10と移動部30との動作を制御する造形制御を行うことにより、三次元造形物を造形する。なお、制御装置60は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0042】
前述の造形制御は、吐出部10、移動部30についての制御のことである。より具体的には、造形制御は、造形面21上にN個のスライス層Lを積層させて予め決められた形状の1個の三次元造形物を造形する制御のことである。ここで、N個のスライス層Lのうちのn番目のスライス層Lnは、n-1番目のスライス層Ln-1の上に積層される。この際、n番目のスライス層Lnは、n-1番目のスライス層Lnの上に積層された場合、n番目のスライス層Lnの熱によりn-1番目のスライス層Ln-1の一部を溶融させる。このため、n番目のスライス層Lnは、n-1番目のスライス層Ln-1と接合される。その結果、造形面21上において、N個のスライス層Lは、1個の三次元造形物として積層される。このため、実施形態では、0番目のスライス層L0は、造形面21のことを意味する。すなわち、実施形態において、1番目のスライス層L1は、0番目のスライス層L0、すなわち、造形面21の上に積層される。
【0043】
造形制御によってn番目のスライス層Lnをn-1番目のスライス層Ln-1の上に積層させる場合、制御装置60は、吐出部10、移動部30を制御し、n番目のスライス層Lnに対応するn番目のスライス層VLnの造形パスに沿った造形材料Xの吐出を吐出部10によって行う。これにより、制御装置60は、n番目のスライス層Lnをn-1番目のスライス層Ln-1の上に積層させることができる。以上のような制御を造形制御として行うことにより、制御装置60は、造形材料Xの吐出を順に行い、造形面21上にN個のスライス層Lを積層させて、1個の三次元造形物を造形する。
【0044】
また、制御装置60は、造形制御において、第1スライス層に第2スライス層を積層する場合、前述した通り、第1境界層を第1スライス層の上に積層し、第2境界層を第1境界層の上に積層し、第2境界層の上に第2スライス層を積層する。これにより、制御装置60は、熱収縮率が互いに異なる材料により形成された第1スライス層と第2スライス層との境界において、層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。
【0045】
図2は、制御装置60のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0046】
制御装置60は、プロセッサー61と、記憶部62と、入力受付部63と、通信部64と、表示部65を備える。なお、制御装置60は、前述した通り、三次元造形装置1と別体に構成された情報処理装置であってもよい。この場合、三次元造形装置1は、この情報処理装置と通信可能に接続され、この情報処理装置により制御される。
【0047】
プロセッサー61は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。なお、プロセッサー61は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の他のプロセッサーであってもよい。また、プロセッサー61は、複数のプロセッサーにより構成されてもよい。プロセッサー61は、記憶部62に記憶された各種のプログラム、各種の命令等を実行することにより、制御装置60が有する各種の機能を実現する。
【0048】
記憶部62は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部62は、制御装置60に内蔵されるものに代えて、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。記憶部62は、制御装置60が処理する各種のプログラム、各種の命令、各種の情報等を記憶する。例えば、記憶部62は、三次元造形用データ等を記憶する。
【0049】
入力受付部63は、表示部65に表示された画像を見ながら行われるユーザーからの操作を受け付ける。入力受付部63は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド等を含む入力装置である。なお、入力受付部63は、表示部65と一体に構成されたタッチパネルであってもよい。
【0050】
通信部64は、例えば、USB等のデジタル入出力ポート、イーサネット(登録商標)ポート等を含んで構成される。
【0051】
表示部65は、画像を表示する。表示部65は、制御装置60が備えるディスプレイとして、例えば、液晶ディスプレイパネル、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイパネル等を含む表示装置である。
【0052】
図3は、制御装置60の機能構成の一例を示す図である。
【0053】
制御装置60は、記憶部62と、入力受付部63と、通信部64と、表示部65と、制御部66を備える。
【0054】
制御部66は、制御装置60の全体を制御する。制御部66は、装置制御部661を備える。制御部66が備えるこれらの機能部は、例えば、プロセッサー61が、記憶部62に記憶された各種のプログラムを実行することにより実現される。また、当該機能部のうちの一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0055】
装置制御部661は、三次元造形装置1の全体を制御する。例えば、装置制御部661は、吐出部10と、移動部30と、加熱部40とのそれぞれを制御する。
【0056】
データ生成装置70は、三次元造形装置1が三次元造形物を造形するために用いる三次元造形用データを生成する装置である。データ生成装置70は、上記において説明した三次元造形装置1が三次元造形用データを生成する方法により、三次元造形用データを生成する。このため、ここでは、当該方法の説明については、省略する。また、データ生成装置70は、受け付けた操作に応じて、上記の形状データを記憶する。なお、データ生成装置70は、形状データを生成可能であってもよく、形状データを生成不可能であってもよい。データ生成装置70が形状データを生成不可能である場合、データ生成装置70は、他の装置からネットワーク又は記憶媒体を介して形状データを取得する。また、データ生成装置70は、受け付けた操作に応じて、前述のスライス条件情報、造形パス生成条件情報を記憶する。
【0057】
データ生成装置70は、例えば、ワークステーション、デスクトップPC(Personal Computer)、ノートPC、タブレットPC、多機能携帯電話端末(スマートフォン)、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)等の情報処理装置であるが、これらに限られるわけではない。より具体的には、データ生成装置70は、1以上のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。
【0058】
<制御装置が造形制御を行う処理>
以下、
図4を参照し、制御装置60が造形制御を行う処理について説明する。
図4は、制御装置60が造形制御を行う処理の流れの一例を示す図である。以下では、一例として、
図4に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、三次元造形用データが記憶部62に記憶されている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、造形制御を制御装置60に開始させる操作を制御装置60が受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、
図4に示したフローチャートの処理によって三次元造形装置1が造形する三次元造形物が、
図5に示した三次元造形物ML1である場合について説明する。
図5は、三次元造形物ML1の外観の一例を示す図である。三次元造形物ML1は、1個以上の第1スライス層の積層によって長方形状に形成される第1部分P1に、1個以上の第2スライス層の積層によって長方形状に形成される第2部分P2が積層される略直方体形状の三次元造形物である。三次元造形物ML1は、例えば、プリンタ等の装置が有する部品のうちの1つである。三次元造形物ML1は、例えば、摺動する部材が第2部分P2の上に載置される。この場合、三次元造形物ML1は、例えば、摩擦係数の低いPOM等である第2材料により形成された第2部分P2によって当該部材の摺動を受けるため、当該部材の摺動によって第1部分P1が摩耗してしまうことを抑制することができる。三次元造形装置1は、このように第1材料によって形成される第1部分P1に、第2材料によって形成される第2部分P2を積層させた三次元造形物ML1を造形しようとする場合、
図5に示したように、第1部分P1の上に第1境界層B1を積層し、第1境界層B1の上に第2境界層B2を積層し、第2境界層B2の上に第2部分P2を積層させる。これにより、三次元造形装置1は、熱収縮率が互いに異なる材料により形成された第1部分P1と第2部分P2との境界、すなわち、第1スライス層と第2スライス層との境界において、層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。
【0059】
造形制御を制御装置60に開始させる操作を制御装置60が受け付けた後、装置制御部661は、記憶部62に予め記憶された三次元造形用データを記憶部62から読み出す(ステップS110)。
【0060】
次に、装置制御部661は、ステップS110において読み出した三次元造形用データに基づいて、第1部分P1の造形を開始する(ステップS120)。
【0061】
次に、装置制御部661は、ステップS120において開始した第1部分P1の造形が終了するまで待機する(ステップS130)。
図4では、ステップS130の処理を「終了?」によって示している。ここで、装置制御部661は、例えば、ステップS110において読み出した三次元造形用データに基づいて、第1部分P1の造形が終了したか否かを判定する。なお、装置制御部661は、第1部分P1の造形が終了したか否かを如何なる方法によって判定してもよい。
【0062】
ここで、
図6は、第1部分P1の外観の一例を示す上面図である。
図6に示した例では、第1部分P1は、1個の第1スライス層によって形成されている。また、当該例では、第1部分P1を形成している第1スライス層のアウトラインOL1は、
図6に示した始点S1から終点G1に向かう造形パスPH1に沿って三次元造形装置1により第1材料が吐出されることによって造形される。また、当該例では、第1部分P1を形成している第1スライス層のインフィルIF1は、
図6に示した始点S2から終点G2に向かう造形パスPH2に沿って三次元造形装置1により第1材料が吐出されることによって造形される。なお、
図6では、造形パスPH1及び造形パスPH2のそれぞれを、点線の矢印によって示している。また、
図6では、ハッチングされた領域は、第1材料が吐出された領域を示す。すなわち、当該例では、インフィルIF1の充填率は、100%である。従って、当該例では、第1部分P1を形成している第1スライス層は、第1ソリッド層である。なお、第1部分P1は、複数の第1スライス層が積層されることによって形成されてもよい。この場合、これら複数の第1スライス層には、第1ソリッド層に加えて、造形層が含まれてもよい。
【0063】
装置制御部661は、ステップS120において開始した第1部分P1の造形が終了したと判定した場合(ステップS130-YES)、第1部分P1の上に、第1境界層B1を積層させる(ステップS140)。
【0064】
ここで、
図7は、第1境界層B1の外観の一例を示す上面図である。
図7に示した例では、第1境界層B1は、1個のスライス層Lによって形成されている。しかしながら、第1境界層B1は、2個以上のスライス層Lによって形成されることが望ましい。これは、第1境界層B1に形成される複数の空隙それぞれの深さを深くし、第2境界層B2がこれら複数の空隙のそれぞれに含浸し易くすることができるためである。例えば、第1境界層B1は、5個のスライス層Lが積層されることによって造形されてもよい。この場合、三次元造形装置1は、例えば、第1境界層B1の厚さを、1cm程度にすることができる。その結果、空隙に含侵する第2境界層の深さが深くなるため、第2境界層と第1境界層とが嵌合する長さを長くすることができる。
【0065】
また、
図7に示した例では、第1境界層B1のアウトラインOL2は、
図7に示した始点S3から終点G3に向かう造形パスPH3に沿って三次元造形装置1により第1材料が吐出されることによって造形される。また、当該例では、第1境界層B1のインフィルIF2は、
図7に示した始点S4から終点G4に向かう造形パスPH4に沿って三次元造形装置1により第1材料が吐出されることによって造形される。なお、
図7では、造形パスPH3及び造形パスPH4のそれぞれを、点線の矢印によって示している。また、
図7では、ハッチングされた領域は、第1材料が吐出された領域を示す。すなわち、当該例では、インフィルIF2の充填率は、100%未満である。この場合、
図7に示したように、第1境界層B1には、インフィルIF2の充填率に応じた複数の空隙が形成される。第2境界層B2を第1境界層B1に嵌合させるためには、インフィルIF2の充填率は、20%以上90%以下の範囲内の充填率であればよい。なお、インフィルIF2の充填率が30%以上80%以下の範囲内の充填率である場合、第2境界層B2は、より確実に第1境界層B1に嵌合する。装置制御部661は、例えば、インフィルIF2を形成させるためのインフィル経路において隣り合うインフィル経路同士を、所定の間隔離間させることによって、インフィルIF2の充填率を変えることができる。換言すると、装置制御部661は、造形パスPH4同士を所定の間隔離間させることによって、インフィルIF2の充填率を変えることができる。例えば、出願人が行った実験では、インフィルIF2の造形パスの幅の1/4程度の距離が所定の間隔である場合、インフィルIF2の充填率は、20%程度であった。所定の間隔とインフィルIF2の充填率との対応関係は、事前の実験、各種の理論計算等によって特定することができる。また、所定の間隔として最適であると考えられる距離は、事前の実験等によって決められてもよく、他の方法によって決められてもよい。当該他の方法としては、例えば、ノズルNzの内径と、インフィルIF2の長手方向の長さとの比と、第2境界層B2の第1境界層B1への嵌合の強さとの相関関係に基づく方法が挙げられる。ここで、インフィルIF2の長手方向は、造形パスPH4が延伸する2つの方向のうちの造形パスPH4の長さが長い方の方向である。すなわち、当該例では、インフィルIF2の長手方向は、Y軸と平行な方向である。この方法を用いる場合、このような相関関係を事前の実験等によって得ておく必要がある。また、この方法を用いる場合、このような相関関係は、テーブル化しておくことによって利便性を向上させることができる。当該例では、第1境界層B1には、Y軸と平行な方向に延伸する7個の空隙が形成されている。そして、当該例では、インフィルIF2の充填率は、45%程度である。なお、装置制御部661は、他の方法によって第1境界層B1を形成する構成であってもよい。例えば、装置制御部661は、複数の空隙がランダムな位置に形成されたインフィルIF2を有する第1境界層B1を、第1部分P1の上に積層させる構成であってもよい。
【0066】
また、
図7に示した例では、インフィルIF2の長手方向は、第1部分P1のインフィルIF1の長手方向と平行な方向である。インフィルIF1の長手方向は、インフィルIF1の造形パスPH2が延伸する2つの方向のうちの造形パスPH2の長さが長い方の方向である。しかしながら、装置制御部661は、これら2つの長手方向が交差するように第1境界層B1を第1部分P1の上に積層する構成であってもよい。この場合、三次元造形装置1は、第1部分P1と第1境界層B1との層間密着性を向上させることができる。
【0067】
なお、装置制御部661は、加熱部40を制御し、第1境界層B1を形成する場合における第1境界層B1の温度を、第1部分P1を形成する場合における第1部分P1の温度よりも高くする構成であってもよい。これにより、三次元造形装置1は、後述するステップS150において第1境界層B1の上に第2境界層B2を積層する場合において、第1境界層B1によって第2境界層B2が冷却されてしまうことを抑制することができる。その結果、三次元造形装置1は、第1境界層B1と第2境界層B2との境界において層間剥離が生じてしまうことを、より確実に抑制することができる。これを実現するための加熱部40による第1境界層B1の加熱方法は、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。
【0068】
ステップS140の処理が行われた後、装置制御部661は、ステップS140において造形した第1境界層B1の上に、第2境界層B2を積層する(ステップS150)。
【0069】
ここで、
図8は、第2境界層B2の外観の一例を示す上面図である。
図8に示したように、第2境界層B2は、1個のスライス層Lによって形成される。これは、第2境界層B2を厚くした場合、第1材料よりも大きな熱収縮率を有する第2材料によって形成される第2境界層B2の熱収縮の度合いが大きくなってしまい、第2境界層B2が温度の低下とともに第1境界層B1から剥離してしまう可能性が高くなるからである。
【0070】
また、
図8に示した例では、第2境界層B2のアウトラインOL3は、
図8に示した始点S5から終点G5に向かう造形パスPH5に沿って三次元造形装置1により第2材料が吐出されることによって造形される。また、当該例では、第2境界層B2のインフィルIF3は、
図8に示した始点S6から終点G6に向かう造形パスPH6に沿って三次元造形装置1により第2材料が吐出されることによって造形される。なお、
図8では、造形パスPH5及び造形パスPH6のそれぞれを、点線の矢印によって示している。また、
図8では、ハッチングされた領域は、第2材料が吐出された領域を示す。装置制御部661は、例えば、インフィルIF3を形成させるためのインフィル経路において隣り合うインフィル経路同士を、所定の第2間隔離間させる。換言すると、装置制御部661は、例えば、造形パスPH6同士を、所定の第2間隔離間させる。これにより、三次元造形装置1は、インフィルIF3の充填率を100%未満にすることができ、その結果、第2境界層B2の熱収縮による変形の度合いを小さくすることができる。これは、インフィルIF3の充填率が高くなるほど、第1材料よりも大きな熱収縮率を有する第2材料によって形成される第2境界層B2の熱収縮の度合いが大きくなってしまい、第2境界層B2が温度の低下とともに第1境界層B1から剥離してしまう可能性が高くなるからである。なお、所定の第2間隔は、所定の間隔と同じ間隔であってもよく、所定の間隔と異なる間隔であってもよい。
【0071】
また、インフィルIF3の長手方向は、第1境界層B1のインフィルIF2の長手方向と交差する方向である。
図8に示した例では、第2境界層B2のインフィルIF3が延伸する長手方向は、第1境界層B1のインフィルIF2が延伸する長手方向と直交している。ここで、インフィルIF3の長手方向は、造形パスPH6が延伸する2つの方向のうちの造形パスPH6の長さが長い方の方向である。すなわち、当該例では、インフィルIF3の長手方向は、X軸と平行な方向である。これにより、三次元造形装置1は、第2境界層B2の一部を、第1境界層B1に形成された複数の空隙へ、より確実に含浸させることができる。ここで、
図9は、第1境界層B1に形成された複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸している様子の一例を示す図である。また、
図9は、
図6~
図8のそれぞれに示した切断面A-Aにおいて、第1部分P1、第1境界層B1、第2境界層B2のそれぞれを切断した断面図である。なお、
図9に示した第1部分P1、第1境界層B1、第2境界層B2それぞれの厚さは、第1境界層B1に形成された複数の空隙への第2境界層B2の一部の含浸を明確に示すため、
図5に示した第1部分P1、第1境界層B1、第2境界層B2それぞれの厚さと異なる厚さとして描かれている。
図9に示したように、第2境界層B2が第1境界層B1の上に積層された場合、第2境界層B2の一部は、第1境界層B1に形成された複数の空隙へ含浸する。これにより、第2境界層B2と第1境界層B1とが嵌合する。その結果、三次元造形装置1は、第1境界層B1と第2境界層B2との境界において層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。
【0072】
なお、装置制御部661は、第2境界層B2のインフィルIF3の長手方向と、第1境界層B1のインフィルIF2の長手方向とが平行になるように、第2境界層B2を第1境界層B1の上に積層する構成であってもよい。ただし、この場合、第1境界層B1に形成された複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸し辛くなること、又は、第1境界層B1に形成された複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸し易くなり過ぎることが起こる。第1境界層B1に形成された複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸し辛くなることが起きた場合、第2境界層B2と第1境界層B1とが嵌合し辛くなり、第1境界層B1から剥離してしまい易くなる。一方、第1境界層B1に形成された複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸し易くなり過ぎることが起きた場合、第2境界層B2は、第1境界層B1上においてスライス層Lを形成し辛くなり、その結果、造形不良を起こしてしまい易くなる。これらを防ぐため、装置制御部661は、これら2つの長手方向が平行になるように第2境界層B2を第1境界層B1の上に積層する場合、
図10及び
図11に示したように、第2境界層B2の造形パスの太さを、第1境界層B1の空隙が延伸する方向における当該空隙の太さよりも太くする、又は、第1境界層B1の造形パスの太さよりも太くする。これにより、三次元造形装置1は、当該場合であっても、第2境界層B2の造形不良が起きてしまうことを抑制しつつ、第1境界層B1に形成された複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸し易くすることができる。
【0073】
ここで、
図10は、第2境界層B2の造形パスの太さが、第1境界層B1の空隙が延伸する方向における当該空隙の太さよりも太い場合において第2境界層B2の一部が第1境界層B1の空隙へ含浸する様子の一例を示す図である。
図10に示した造形パスPT1及び造形パスPT2のそれぞれは、第1境界層B1の造形パスの一例である。すなわち、
図10に示した例では、造形パスPT1と造形パスPT2との間の空隙は、第1境界層B1の空隙の一例である。また、
図10に示した造形パスPT3は、第2境界層B2の造形パスの一例である。
図10に示したように、造形パスPT1と造形パスPT2との間の空隙の太さよりも、造形パスPT3の太さが太い場合、造形パスPT3の一部は、当該空隙に含浸する。一方、当該場合、造形パスPT3の他部は、造形パスPT1及び造形パスPT2の上に残る。この結果として、第2境界層B2の造形パスの太さが、第1境界層B1の空隙が延伸する方向における当該空隙の太さよりも太い場合、第2境界層B2の造形不良が起こり辛くなり、且つ、第1境界層B1に形成された複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸し易くなる。換言すると、三次元造形装置1は、第2境界層B2の造形不良が起きてしまうことを抑制しつつ、第1境界層B1に形成された複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸し易くすることができる。
【0074】
一方、
図11は、第2境界層B2の造形パスの太さが、第1境界層B1の造形パスの太さよりも太い場合において第2境界層B2の一部が第1境界層B1の空隙へ含浸する様子の一例を示す図である。
図11に示した造形パスPT4は、第1境界層B1の造形パスの一例である。すなわち、
図11に示した例では、造形パスPT4の両隣の空隙は、第1境界層B1の空隙の一例である。また、
図11に示した造形パスPT5は、第2境界層B2の造形パスの一例である。
図11に示したように、造形パスPT4の太さよりも、造形パスPT5の太さが太い場合、造形パスPT5の一部は、造形パスPT4の両隣の空隙に含浸する。一方、当該場合、造形パスPT5の他部は、造形パスPT4の上に残る。この結果として、第2境界層B2の造形パスの太さが、第1境界層B1の造形パスの太さよりも太い場合、第2境界層B2の造形不良が起こり辛くなり、且つ、第1境界層B1に形成された複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸し易くなる。換言すると、三次元造形装置1は、第2境界層B2の造形不良が起きてしまうことを抑制しつつ、第1境界層B1に形成された複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸し易くすることができる。
【0075】
また、
図5及び
図9に示した例では、第1部分P1と第2部分P2との積層方向から第1境界層B1を見た場合において、第2境界層B2の輪郭は、第1境界層B1の輪郭の内側に含まれる。すなわち、装置制御部661は、当該場合において第2境界層B2のアウトラインOL3が第1境界層B1のアウトラインOL2の内側に含まれるように、アウトラインOL3を造形する構成であってもよい。これは、アウトラインOL2上に第1境界層B1の空隙が存在しないため、第2境界層B2の熱収縮によって第2境界層B2が第1境界層B1から剥離してしまうことがあるためである。これを抑制するため、三次元造形装置1は、当該場合においてアウトラインOL3がアウトラインOL2の内側に含まれるように、アウトラインOL3を造形する。これにより、三次元造形装置1は、第1境界層B1に形成された空隙へ、アウトラインOL3の一部を含浸させ、アウトラインOL2上における第1境界層B1からの第2境界層B2の剥離が生じてしまうことを抑制することができる。なお、この場合、装置制御部661は、第2境界層B2を形成する場合、後述する第2部分P2を形成する第2スライス層それぞれの厚みよりも第2境界層B2の厚みを薄くする構成であってもよい。これにより、三次元造形装置1は、第1境界層B1の輪郭の内側に含まれる輪郭を有する第2境界層B2の厚みによって三次元造形物ML1の寸法精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0076】
ここで、装置制御部661は、第2境界層B2を形成する場合、例えば、アウトラインOL3を形成した後、インフィルIF3を形成する構成であってもよい。これは、POM等のような材料が第2材料である場合、インフィルIF3から先に形成してしまうと、第2境界層B2の形成に失敗してしまうことがあるためである。すなわち、これにより、三次元造形装置1は、第2境界層B2の形成を容易に行うことができる。
【0077】
また、装置制御部661は、アウトラインOL3を形成する場合、例えば、加熱部40を制御し、第1境界層B1の温度を、インフィルIF3を形成する場合における第1境界層B1の温度よりも高くする構成であってもよい。これにより、三次元造形装置1は、アウトラインOL3と第1境界層B1との層間密着性を向上させることができる。そして、三次元造形装置1は、インフィルIF3をアウトラインOL3に接触させながら造形することができ、その結果、第2境界層B2の造形不良が発生してしまうことを抑制することができる。
【0078】
また、装置制御部661は、第2境界層B2を形成する場合、
図9に示したような第1境界層B1に形成された複数の空隙への第2境界層B2の一部の含浸を促進するため、例えば、第2材料の吐出部10による供給速度を維持したまま、吐出部10とステージ20との相対的な移動速度を移動部30により遅くする構成であってもよい。この場合、第2境界層B2を形成する場合における第2材料の単位面積あたりの供給量は、第2部分P2を形成する場合における第2材料の単位面積あたりの供給量よりも多くなる。これにより、三次元造形装置1は、当該複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸する量を多くすることができる。その結果、三次元造形装置1は、第1境界層B1と第2境界層B2との境界において層間剥離が生じてしまうことを、より確実に抑制することができる。
【0079】
また、装置制御部661は、第2境界層B2を形成する場合、
図9に示したような第1境界層B1に形成された複数の空隙への第2境界層B2の一部の含浸を促進するため、例えば、吐出部10とステージ20との相対的な移動速度を移動部30により維持したまま、第2材料の吐出部10による供給速度を速くする構成であってもよい。この場合も、第2境界層B2を形成する場合における第2材料の単位面積あたりの供給量は、第2部分P2を形成する場合における第2材料の単位面積あたりの供給量よりも多くなる。これによっても、三次元造形装置1は、当該複数の空隙へ第2境界層B2の一部が含浸する量を多くすることができる。その結果、三次元造形装置1は、第1境界層B1と第2境界層B2との境界において層間剥離が生じてしまうことを、より確実に抑制することができる。
【0080】
ステップS150の処理が行われた後、装置制御部661は、第2部分P2の造形を開始する(ステップS160)。なお、以下では、一例として、第2部分P2が、三次元造形物ML1が有する部分のうち、第2スライス層P21~第2スライス層P23の3個の直方体形状の第2スライス層が積層された部分である場合について説明する。なお、第2部分P2は、三次元造形物ML1が有する部分のうち2個以下の第2スライス層が積層された部分であってもよく、三次元造形物ML1が有する部分のうち4個以下の第2スライス層が積層された部分であってもよい。
【0081】
次に、装置制御部661は、ステップS160において開始した第2部分P2の造形が終了するまで待機する(ステップS170)。
図4では、ステップS170の処理を「終了?」によって示している。ここで、装置制御部661は、例えば、ステップS110において読み出した三次元造形用データに基づいて、第2部分P2の造形が終了したか否かを判定する。なお、装置制御部661は、第2部分P2の造形が終了したか否かを如何なる方法によって判定してもよい。
【0082】
ここで、
図12は、第2部分P2として積層される3個の第2スライス層のうちの最下層の第2スライス層P21の外観の一例を示す上面図である。
図12に示した例では、第2スライス層P21のアウトラインOL4は、
図12に示した始点S7から終点G7に向かう造形パスPH7に沿って三次元造形装置1により第2材料が吐出されることによって造形される。また、当該例では、第2スライス層P21のインフィルIF4は、
図12に示した始点S8から終点G8に向かう造形パスPH8に沿って三次元造形装置1により第2材料が吐出されることによって造形される。なお、
図12では、造形パスPH7及び造形パスPH8のそれぞれを、点線の矢印によって示している。また、
図12では、ハッチングされた領域は、第2材料が吐出された領域を示す。すなわち、当該例では、インフィルIF4の充填率は、100%未満である。装置制御部661は、例えば、インフィルIF4を形成させるためのインフィル経路において隣り合うインフィル経路同士を、所定の第3間隔離間させる。換言すると、装置制御部661は、例えば、造形パスPH8同士を、所定の第3間隔離間させる。これにより、三次元造形装置1は、インフィルIF4の充填率を100%未満にすることができ、その結果、第2スライス層P21の熱収縮による変形の度合いを小さくすることができる。これは、インフィルIF4の充填率が高くなるほど、第2スライス層P21の熱収縮の度合いが大きくなってしまい、温度の低下に応じた第2スライス層P21の圧縮応力によって第1境界層B1との界面において第2境界層B2に引っ張り応力が発生し、第2境界層B2が第1境界層B1から剥離してしまう可能性が高くなるからである。このような事情から、装置制御部661は、例えば、第2境界層B2の上に3個積層される第2スライス層それぞれのアウトライン内におけるインフィルの充填率のうち、最下段の第2スライス層P21のアウトラインOL4内におけるインフィルIF4の充填率を最も低い充填率にする。なお、所定の第3間隔は、所定の間隔と所定の第2間隔との少なくとも一方と同じ間隔であってもよく、所定の間隔と所定の第2間隔との両方と異なる間隔であってもよい。また、装置制御部661は、例えば、事前の実験等によって第2境界層B2が第1境界層B1から剥離してしまう可能性が高くならないことが判明している場合、第2境界層B2の上に3個積層される第2スライス層それぞれのアウトライン内におけるインフィルの充填率のうち、最下段以外の第2スライス層のアウトライン内におけるインフィルの充填率を最も低い充填率にする構成であってもよい。
【0083】
また、インフィルIF4の長手方向は、第2境界層B2のインフィルIF3の長手方向と交差する方向である。
図12に示した例では、インフィルIF4の長手方向は、インフィルIF3の長手方向と直交している。ここで、インフィルIF4の長手方向は、造形パスPH8が延伸する2つの方向のうちの造形パスPH8の長さが長い方の方向である。すなわち、当該例では、インフィルIF4の長手方向は、Y軸と平行な方向である。これにより、三次元造形装置1は、第2スライス層P21と第2境界層B2との層間密着性を向上させることができる。すなわち、三次元造形装置1は、第2部分P2と第2境界層B2との層間密着性を向上させることができる。
【0084】
また、装置制御部661は、第1部分P1と第2部分P2との積層方向から第1境界層B1を見た場合において、第1境界層B1のアウトラインOL2の少なくとも一部と、アウトラインOL4の少なくとも一部とが重なるように、アウトラインOL4を形成する。
図12に示した例では、装置制御部661は、当該場合において、アウトラインOL2とアウトラインOL4とが重なるように、アウトラインOL4を形成している。これにより、三次元造形装置1は、第1境界層B1の輪郭の大きさと第2境界層B2の輪郭の大きさとの差によって三次元造形物ML1の寸法精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0085】
装置制御部661は、このような第2スライス層P21を第2境界層B2の上に積層した後、
図13に示した第2スライス層P22を第2スライス層P21の上に積層する。
図13は、第2部分P2として積層される3個の第2スライス層のうちの真ん中の第2スライス層P22の外観の一例を示す上面図である。
図13に示した例では、第2スライス層P22のアウトラインOL5は、
図13に示した始点S9から終点G9に向かう造形パスPH9に沿って三次元造形装置1により第2材料が吐出されることによって造形される。また、当該例では、第2スライス層P22のインフィルIF5は、
図13に示した始点S10から終点G10に向かう造形パスPH10に沿って三次元造形装置1により第2材料が吐出されることによって造形される。なお、
図13では、造形パスPH9及び造形パスPH10のそれぞれを、点線の矢印によって示している。また、
図13では、ハッチングされた領域は、第2材料が吐出された領域を示す。すなわち、当該例では、インフィルIF5の充填率は、100%未満である。装置制御部661は、例えば、インフィルIF5を形成させるためのインフィル経路において隣り合うインフィル経路同士を、所定の第4間隔離間させる。換言すると、装置制御部661は、例えば、造形パスPH10同士を、所定の第4間隔離間させる。これにより、三次元造形装置1は、インフィルIF5の充填率を100%未満にすることができ、その結果、第2スライス層P22の熱収縮による変形の度合いを小さくすることができる。これは、インフィルIF5の充填率が高くなるほど、第2スライス層P22の熱収縮の度合いが大きくなってしまい、温度の低下に応じた第2スライス層P22の圧縮応力によって第1境界層B1との界面において第2スライス層P21に引っ張り応力が発生し、第2スライス層P21とともに第2境界層B2が第1境界層B1から剥離してしまう可能性が高くなるからである。このように、この一例における装置制御部661は、第2部分P2の造形において、下側の第2スライス層の造形から上側の第2スライス層の造形に向かう毎に、第2スライス層のインフィルの充填率を徐々に高くする。このため、所定の第4間隔は、所定の第3間隔よりも短い間隔である。なお、所定の第4間隔は、所定の第3間隔以下であってもよい。
【0086】
また、
図13に示した例では、インフィルIF5の長手方向は、第2スライス層P21のインフィルIF4の長手方向と平行な方向であるが、インフィルIF4の長手方向と交差する方向であってもよい。インフィルIF5の長手方向は、造形パスPH10が延伸する2つの方向のうちの造形パスPH10の長さが長い方の方向である。これら2つの長手方向が交差する方向である場合、三次元造形装置1は、第2スライス層P21と第2スライス層P22との層間密着性を向上させることができる。
【0087】
また、
図13に示した例でも、装置制御部661は、第1部分P1と第2部分P2との積層方向から第1境界層B1を見た場合において、第1境界層B1のアウトラインOL2と、第2スライス層P22のアウトラインOL5とが重なるように、アウトラインOL5を形成している。これにより、三次元造形装置1は、第1境界層B1の輪郭の大きさと第2境界層B2の輪郭の大きさとの差によって三次元造形物ML1の寸法精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0088】
装置制御部661は、このような第2スライス層P22を第2スライス層P21の上に積層した後、
図14に示した第2スライス層P23を第2スライス層P22の上に積層する。
図14は、第2部分P2として積層される3個の第2スライス層のうちの最上段の第2スライス層P23の外観の一例を示す上面図である。
図14に示した例では、第2スライス層P23のアウトラインOL6は、
図14に示した始点S11から終点G11に向かう造形パスPH11に沿って三次元造形装置1により第2材料が吐出されることによって造形される。また、当該例では、第2スライス層P23のインフィルIF6は、
図14に示した始点S12から終点G12に向かう造形パスPH12に沿って三次元造形装置1により第2材料が吐出されることによって造形される。なお、
図14では、造形パスPH11及び造形パスPH12のそれぞれを、点線の矢印によって示している。また、
図14では、ハッチングされた領域は、第2材料が吐出された領域を示す。すなわち、当該例では、インフィルIF6の充填率は、100%である。これは、第2スライス層P23が、三次元造形物ML1の表面の一部を構成するスライス層Lであり、第1ソリッド層だからである。このように、この一例における三次元造形装置1は、第2部分P2の造形において、下側の第2スライス層の造形から上側の第2スライス層の造形に向かう毎に、第2スライス層のインフィルの充填率を徐々に高くする。
【0089】
また、
図14に示した例では、インフィルIF6の長手方向は、第2スライス層P22のインフィルIF5の長手方向と平行な方向であるが、インフィルIF5が延伸する長手方向と交差する方向であってもよい。インフィルIF6の長手方向は、造形パスPH12が延伸する2つの方向のうちの造形パスPH12の長さが長い方の方向である。これら2つの長手方向が交差する方向である場合、三次元造形装置1は、第2スライス層P22と第2スライス層P23との層間密着性を向上させることができる。
【0090】
また、
図14に示した例でも、装置制御部661は、第1部分P1と第2部分P2との積層方向から第1境界層B1を見た場合において、第1境界層B1のアウトラインOL2と、第2スライス層P23のアウトラインOL6とが重なるように、アウトラインOL6を形成している。これにより、三次元造形装置1は、第1境界層B1の輪郭の大きさと第2境界層B2の輪郭の大きさとの差によって三次元造形物ML1の寸法精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0091】
装置制御部661は、ステップS160において開始した第2部分P2の造形が終了したと判定した場合(ステップS170-YES)、
図4に示したフローチャートの処理を終了する。
【0092】
以上のように、三次元造形装置1は、第1材料により形成される第1部分P1に、第2材料により形成される第2部分P2を積層する場合、第1材料により形成される第1境界層B1を第1部分P1の上に積層し、第2材料により形成される第2境界層B2を第1境界層B1の上に積層し、第2境界層B2の上に第2部分P2を積層する。これにより、三次元造形装置1は、熱収縮率が異なるスライス層間において層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。
【0093】
なお、上記において説明した例では、第2材料が有する熱収縮率が、第1材料が有する熱収縮率よりも大きい場合について説明した。しかしながら、第2材料が有する熱収縮率は、第1材料が有する熱収縮率よりも小さい構成であってもよい。この場合、三次元造形装置1は、上記において説明した第1スライス層及び第1境界層B1を第2材料によって形成し、第2境界層B2及び第2スライス層を第1材料によって形成することにより、第1部分P1と第2部分P2との境界において層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。
【0094】
また、装置制御部661は、
図4に示したステップS110において、読み出した三次元造形用データに基づいて、第1スライス層と第2スライス層との境界を1つ以上特定し、特定した1つ以上の境界のそれぞれに自動的に第1境界層と第2境界層との2つの境界層を挿入する構成であってもよい。この場合、三次元造形装置1は、第1境界層及び第2境界層それぞれについてのデータが三次元造形用データに含まれていなかった場合であっても、熱収縮率が異なるスライス層間において層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。
【0095】
<実施形態の変形例1>
以下、実施形態の変形例1について説明する。実施形態の変形例1でも、一例として、第2材料が有する熱収縮率は、第1材料が有する熱収縮率よりも大きい場合について説明する。しかしながら、実施形態の変形例1では、第1スライス層及び第1境界層は、第2材料によって形成される。また、実施形態の変形例1では、第2スライス層及び第2境界層は、第1材料によって形成される。そして、実施形態の変形例1では、三次元造形装置1は、三次元造形物ML1に代えて、
図15に示したような三次元造形物ML2を造形する。
【0096】
図15は、三次元造形物ML2の外観の一例を示す図である。三次元造形物ML2は、第2材料の第1スライス層によって長方形状に形成される第1部分P3に、第1材料の第2スライス層によって長方形状に形成される第2部分P4が積層される略直方体形状の三次元造形物である。三次元造形物ML2は、三次元造形物ML1と同様の部品である。しかしながら、三次元造形物ML2は、三次元造形物ML1が造形される順と上下逆の順で造形される三次元造形物である。すなわち、三次元造形物ML2の第1部分P3は、三次元造形物ML1の第2部分P2に対応する部分である。このため、第1部分P3は、第2材料の第1スライス層として、第2スライス層P21~第2スライス層P23のそれぞれに対応する第1スライス層が、第2スライス層P23に対応する第1スライス層、第2スライス層P22に対応する第1スライス層、第2スライス層P21に対応する第1スライス層の順に下から積層されることを除いて、第2部分P2の構成と同様の構成を有する。また、第2部分P4は、三次元造形物ML1の第1部分P1に対応する部分である。このため、第2部分P4は、第1材料の第2スライス層により形成されることを除いて、第1部分P1の構成と同様の構成を有する。三次元造形装置1は、このように第2材料によって形成される第1部分P3に、第1材料によって形成される第2部分P4を積層させた三次元造形物ML2を造形しようとする場合、
図15に示したように、第1部分P3の上に第1境界層B3を積層し、第1境界層B3の上に第2境界層B4を積層し、第2境界層B4の上に第2部分P4を積層させる。ここで、第1境界層B3は、第2材料により形成されることを除いて、第1境界層B1の構成と同様の構成を有する境界層である。一方、第2境界層B4は、第1材料により形成されることを除いて、第2境界層B2と同様の構成を有する境界層である。これにより、三次元造形装置1は、熱収縮率が互いに異なる材料により形成された第1部分P3と第2部分P4との境界において、層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。すなわち、三次元造形装置1は、第2材料が有する熱収縮率が第1材料が有する熱収縮率よりも大きく、第1部分P3を第2材料により形成し、第2部分P4を第1材料により形成する場合であっても、第1部分P3と第2部分P4との境界において、層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。
【0097】
なお、三次元造形物ML2を造形するための造形制御を制御装置60が行う処理は、
図4に示したフローチャートの処理と同様の処理である。このため、装置制御部661は、
図4に示したステップS120~ステップS130において、第1部分P3の造形を行う。ただし、装置制御部661は、ステップS120~ステップS130において、第2部分P2を形成する方法と同様の方法と第2材料とを用いて、第2スライス層P23に対応する第1スライス層、第2スライス層P22に対応する第1スライス層、第2スライス層P21に対応する第1スライス層の順に造形面21の上に3個の第1スライス層を積層させる。また、装置制御部661は、
図4に示したステップS140において、第1境界層B1を形成する方法と同様の方法と第2材料とを用いて、第1境界層B3の造形を行う。また、装置制御部661は、
図4に示したステップS150において、第2境界層B2を形成する方法と同様の方法と第1材料とを用いて、第2境界層B4の造形を行う。また、装置制御部661は、
図4に示したステップS160~ステップS170において、第1部分P1を形成する方法と同様の方法と第1材料とを用いて、第2部分P4の造形を行う。このような処理によっても、三次元造形装置1は、熱収縮率が互いに異なる材料により造形される三次元造形物ML2を造形することができる。
【0098】
なお、実施形態の変形例1では、第2材料が有する熱収縮率が、第1材料が有する熱収縮率よりも大きい場合について説明した。しかしながら、第2材料が有する熱収縮率は、第1材料が有する熱収縮率よりも小さい構成であってもよい。この場合、三次元造形装置1は、上記において説明した第1スライス層及び第1境界層B3を第1材料によって形成し、第2境界層B4及び第2スライス層を第2材料によって形成することにより、第1部分P3と第2部分P4との境界において層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。
【0099】
<実施形態の変形例2>
以下、実施形態の変形例2について説明する。実施形態の変形例2でも、一例として、第2材料が有する熱収縮率は、第1材料が有する熱収縮率よりも大きい場合について説明する。そして、実施形態の変形例2では、三次元造形装置1は、三次元造形物ML3に代えて、
図16に示したような三次元造形物ML3を造形する。
【0100】
図16は、三次元造形物ML3の外観の一例を示す図である。三次元造形物ML3は、三次元造形物ML2の上に三次元造形物ML1を積層させたような三次元造形物である。すなわち、三次元造形物ML3は、上面及び下面の両面が、第2材料のスライス層Lにより形成された三次元造形物である。ただし、三次元造形物ML3では、第1材料により形成される第2部分P4と、第1材料により形成される第1部分P1とが、1つの造形物として共有化されている。三次元造形装置1は、第1部分P3に第2部分P4を積層させ、且つ、第2部分P4に第2部分P2を積層させた三次元造形物ML3を造形しようとする場合、
図16に示したように、第2材料の第1部分P3の上に第2材料の第1境界層B3を積層し、第2材料の第1境界層B3の上に第1材料の第2境界層B4を積層し、第1材料の第2境界層B4の上に第1材料の第2部分P4を積層し、第1材料の第2部分P4の上に第1材料の第1境界層B1を積層し、第1材料の第1境界層B1の上に第2材料の第2境界層B2を積層し、第2材料の第2境界層B2の上に第2材料の第2部分P2を積層する。これにより、三次元造形装置1は、熱収縮率が互いに異なる材料により形成された第1部分P3と第2部分P4との境界、及び、熱収縮率が互いに異なる材料により形成された第2部分P4と第2部分P2との境界のそれぞれにおいて、層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。その結果、三次元造形装置1は、例えば、上下面の両方がPOMによって形成され、且つ、上下面の間がABSによって形成された三次元造形物を、三次元造形物ML3として造形することができる。
【0101】
なお、三次元造形物ML3を造形するための造形制御を制御装置60が行う処理は、
図4に示したフローチャートの処理を応用した処理である。例えば、装置制御部661は、
図4に示したステップS120~ステップS130の処理により、実施形態の変形例2における第1部分P3を形成する方法と同様の方法と第2材料とを用いて、第1部分P3の造形を行う。次に、装置制御部661は、
図4に示したステップS140の処理により、実施形態の変形例2における第1境界層B3を形成する方法と同様の方法と第2材料とを用いて、第1境界層B3の造形を行う。次に、装置制御部661は、
図4に示したステップS150の処理により、実施形態の変形例2における第2境界層B4を形成する方法と同様の方法と第1材料とを用いて、第2境界層B4の造形を行う。次に、装置制御部661は、
図4に示したステップS160~ステップS170の処理により、実施形態の変形例2における第2部分P4を形成する方法と同様の方法と第1材料とを用いて、第2部分P4の造形を行う。次に、装置制御部661は、
図4に示したステップS140の処理により、実施形態における第1境界層B1を形成する方法と同様の方法と第1材料とを用いて、第1境界層B1の造形を行う。次に、装置制御部661は、
図4に示したステップS150の処理により、実施形態における第2境界層B2を形成する方法と同様の方法と第2材料とを用いて、第2境界層B2の造形を行う。そして、装置制御部661は、
図4に示したステップS160~ステップS170の処理により、実施形態の変形例2における第2部分P2を形成する方法と同様の方法と第2材料とを用いて、第2部分P2の造形を行う。以上のような処理により、三次元造形装置1は、熱収縮率が互いに異なる材料により造形される三次元造形物ML3を造形する場合においても、熱収縮率が異なるスライス層L間において層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。
【0102】
なお、実施形態の変形例2では、第2材料が有する熱収縮率が、第1材料が有する熱収縮率よりも大きい場合について説明した。しかしながら、第2材料が有する熱収縮率は、第1材料が有する熱収縮率よりも小さい構成であってもよい。
【0103】
<実施形態の変形例3>
以下、実施形態の変形例3について説明する。実施形態の変形例3でも、一例として、第2材料が有する熱収縮率は、第1材料が有する熱収縮率よりも大きい場合について説明する。そして、実施形態の変形例3では、三次元造形装置1は、三次元造形物ML3に代えて、
図17に示したような三次元造形物ML4を造形する構成であってもよい。
【0104】
図17は、三次元造形物ML4の外観の一例を示す図である。三次元造形物ML4は、三次元造形物ML1の上に三次元造形物ML2を積層させたような三次元造形物である。すなわち、三次元造形物ML4は、上面及び下面の両面が、第1材料のスライス層Lにより形成された三次元造形物である。ただし、三次元造形物ML4では、第2材料により形成される第2部分P2と、第2材料により形成される第1部分P3とが、1つの造形物として共有化されている。三次元造形装置1は、第1部分P1に第2部分P2を積層させ、且つ、第2部分P2に第2部分P4を積層させた三次元造形物ML4を造形しようとする場合、
図17に示したように、第1材料の第1部分P1の上に第1材料の第1境界層B1を積層し、第1材料の第1境界層B1の上に第2材料の第2境界層B2を積層し、第2材料の第2境界層B2の上に第2材料の第2部分P2を積層し、第2材料の第2部分P2の上に第1材料の第1境界層B3を積層し、第1材料の第1境界層B3の上に第2材料の第2境界層B4を積層し、第2材料の第2境界層B4の上に第2材料の第2部分P4を積層する。これにより、三次元造形装置1は、熱収縮率が互いに異なる材料により形成された第1部分P1と第2部分P2との境界、及び、熱収縮率が互いに異なる材料により形成された第2部分P2と第2部分P4との境界のそれぞれにおいて、層間剥離が生じてしまうことを抑制することができる。その結果、三次元造形装置1は、例えば、上下面の両方がABSによって形成され、且つ、上下面の間がPOMによって形成された三次元造形物を、三次元造形物ML4として造形することができる。
【0105】
なお、実施形態の変形例3では、第2材料が有する熱収縮率が、第1材料が有する熱収縮率よりも大きい場合について説明した。しかしながら、第2材料が有する熱収縮率は、第1材料が有する熱収縮率よりも小さい構成であってもよい。
【0106】
<実施形態の変形例4>
以下、実施形態の変形例4について説明する。実施形態の変形例4でも、一例として、第2材料が有する熱収縮率は、第1材料が有する熱収縮率よりも大きい場合について説明する。そして、実施形態の変形例4では、三次元造形装置1は、三次元造形物ML4に代えて、
図18に示したような三次元造形物ML5を造形する構成であってもよい。
【0107】
図18は、三次元造形物ML5の外観の一例を示す図である。三次元造形物ML5は、
図18に示したように、三次元造形物ML3と三次元造形物ML4とが交互に積層されたような三次元造形物である。三次元造形装置1は、実施形態の変形例2における三次元造形物ML3を造形する処理と、実施形態の変形例3における三次元造形物ML4を造形する処理の組み合わせを繰り返し行うことにより、三次元造形物ML5を造形することができる。換言すると、三次元造形装置1は、これらの処理の組み合わせの繰り返しによって、第1材料により形成された造形物と第2材料により形成された造形物とを交互に積層し、三次元造形物ML5を造形することができる。その結果、三次元造形装置1は、単一の材料では実現不可能であるような所望のヤング率、所望の曲げ剛性等を有する三次元造形物を擬似的に造形することができる。また、これは、ある方向に対して曲げ剛性が強く、他の方向に対して曲げ剛性が弱いというような三次元造形物を作ることも可能であることを意味している。また、これは、ある部分と他の部分でヤング率が異なるような三次元造形物を作ることも可能であることを意味している。そして、これらは、熱収縮率が異なるスライス層間において層間剥離が生じてしまうことを、三次元造形装置1が抑制することができるからこそ得られる効果である。例えば、三次元造形装置1は、POMにより形成された造形物と、ABSにより形成された造形物とが交互に積層された三次元造形物を造形することができる。そして、このような三次元造形物のヤング率は、ABSのみにより形成された三次元造形物のヤング率と、POMのみにより形成された三次元造形物のヤング率とのそれぞれと異なる。
【0108】
なお、上記において説明した内容は、如何様に組み合わされてもよい。
【0109】
また、上記において説明した三次元造形物ML1~三次元造形物ML5のそれぞれの形状は、略直方体形状に代えて、他の如何なる形状であってもよい。
【0110】
<付記>
[1]第1樹脂を含む第1材料と、前記第1樹脂が有する熱収縮率と異なる熱収縮率を有する第2樹脂を含む第2材料とを用いて三次元造形物を造形する三次元造形方法であって、前記第1材料と前記第2材料とのうちの一方により形成される第1スライス層に、前記第1材料と前記第2材料とのうちの他方により形成される第2スライス層を積層する場合、前記一方により形成される第1境界層を前記第1スライス層の上に積層し、前記他方により形成される第2境界層を前記第1境界層の上に積層し、前記第2境界層の上に前記第2スライス層を積層し、前記第1境界層は、前記第1スライス層と前記第2スライス層との積層方向から前記第1境界層を見た場合において、前記第1境界層の輪郭の内側に複数の空隙が形成される層である、三次元造形方法。
[2]前記第1スライス層と前記第2スライス層との積層方向から前記第1境界層を見た場合において、前記第1境界層の輪郭の内側には、前記第1境界層のアウトライン内におけるインフィルの充填率に応じた前記複数の空隙が形成される、[1]に記載の三次元造形方法。
[3]前記インフィルの充填率は、20%以上90%以下の範囲内である、[2]に記載の三次元造形方法。
[4]前記第2境界層を前記第1境界層の上に積層することにより、前記第2境界層の一部を、前記第1境界層に形成された前記複数の空隙へ含浸させる、[1]から[3]のうちいずれか一項に記載の三次元造形方法。
[5]前記第2境界層の上に、前記第2スライス層を複数積層させ、前記第2境界層を形成する場合における前記他方の単位面積あたりの供給量は、前記第2スライス層を形成する場合における前記他方の単位面積あたりの供給量よりも多い、[1]から[4]のうちいずれか一項に記載の三次元造形方法。
[6]前記第2境界層の上に複数積層される前記第2スライス層それぞれのアウトライン内におけるインフィルの充填率のうち、最下段の前記第2スライス層のアウトライン内におけるインフィルの充填率を最も低い充填率にする、[1]から[5]のうちいずれか一項に記載の三次元造形方法。
[7]前記第2樹脂の熱収縮率は、前記第1樹脂の熱収縮率よりも大きい、[1]から[6]のうちいずれか一項に記載の三次元造形方法。
[8]前記第1境界層を形成する場合における前記第1境界層の温度を、前記第1スライス層を形成する場合における前記第1スライス層の温度よりも高くする、[7]に記載の三次元造形方法。
[9]前記第1スライス層と前記第2スライス層との積層方向から前記第1境界層を見た場合において、前記第2境界層の輪郭は、前記第1境界層の輪郭の内側に含まれる、[1]から[8]のうちいずれか一項に記載の三次元造形方法。
[10]前記第2境界層を形成する場合、前記第2境界層のアウトラインを形成した後、前記第2境界層のインフィルを形成する、[9]に記載の三次元造形方法。
[11]前記第2境界層のアウトラインを形成する場合における前記第1境界層の温度を、前記第2境界層のインフィルを形成する場合における前記第1境界層の温度よりも高くする、[10]に記載の三次元造形方法。
[12]前記第1スライス層と前記第2スライス層との積層方向から前記第1境界層を見た場合において、前記第1境界層のアウトラインの少なくとも一部は、前記第2スライス層のアウトラインの少なくとも一部と重なる、[9]に記載の三次元造形方法。
[13]前記第2境界層の厚みは、前記第2スライスの厚みよりも薄い、[9]に記載の三次元造形方法。
[14]第1樹脂を含む第1材料と、前記第1樹脂が有する熱収縮率と異なる熱収縮率を有する第2樹脂を含む第2材料とを用いて三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、前記三次元造形装置は、ステージと、前記第1材料と前記第2材料とのそれぞれを吐出する吐出部と、前記吐出部と前記ステージとを相対的に移動させる移動部と、前記吐出部と前記移動部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1材料と前記第2材料とのうちの一方により形成される第1スライス層に、前記第1材料と前記第2材料とのうちの他方により形成される第2スライス層を積層する場合、前記一方により形成される第1境界層を前記第1スライス層の上に積層し、前記他方により形成される第2境界層を前記第1境界層の上に積層し、前記第2境界層の上に前記第2スライス層を積層し、前記第1境界層は、前記第1スライス層と前記第2スライス層との積層方向から前記第1境界層を見た場合において、前記第1境界層の輪郭の内側に複数の空隙が形成される層である、三次元造形装置。
[15]前記第1スライス層と前記第2スライス層との積層方向から前記第1境界層を見た場合において、前記第1境界層の輪郭の内側には、前記第1境界層のアウトライン内におけるインフィルの充填率に応じた前記複数の空隙が形成される、[14]に記載の三次元造形装置。
[16]前記インフィルの充填率は、20%以上90%以下の範囲内である、[15]に記載の三次元造形装置。
[17]第2境界層を前記第1境界層の上に積層することにより、前記第2境界層の一部を、前記第1境界層に形成される前記複数の空隙へ含浸させる、[14]から[16]のうちいずれか一項に記載の三次元造形装置。
[18]前記第2樹脂の熱収縮率は、前記第1樹脂の熱収縮率よりも大きく、前記第2境界層を形成する場合における前記他方の単位面積あたりの供給量は、前記第2スライス層を形成する場合における前記他方の単位面積あたりの供給量よりも多い、[14]から[17]のうちいずれか一項に記載の三次元造形装置。
[19]前記制御部は、前記第2境界層を形成する場合、前記他方の前記吐出部による供給速度を維持したまま、前記吐出部と前記ステージとの相対的な移動速度を前記移動部により遅くする、[14]から[18]のうちいずれか一項に記載の三次元造形装置。
[20]前記吐出部は、前記第1材料と前記第2材料とを共通のノズルから吐出する、[14]から[19]のうちいずれか一項に記載の三次元造形装置。
[21]第1樹脂を含む第1材料と、前記第1樹脂が有する熱収縮率と異なる熱収縮率を有する第2樹脂を含む第2材料とを用いて三次元造形物を造形する三次元造形装置を制御する制御装置であって、前記三次元造形装置は、ステージと、前記第1材料と前記第2材料とのそれぞれを吐出する吐出部と、前記吐出部と前記ステージとを相対的に移動させる移動部と、を備え、前記制御装置は、前記吐出部と前記移動部とを制御する制御部を備え、前記制御部は、前記第1材料と前記第2材料とのうちの一方により形成される第1スライス層に、前記第1材料と前記第2材料とのうちの他方により形成される第2スライス層を積層する場合、前記一方により形成される第1境界層を前記第1スライス層の上に積層し、前記他方により形成される第2境界層を前記第1境界層の上に積層し、前記第2境界層の上に前記第2スライス層を積層し、前記第1境界層は、前記第1スライス層と前記第2スライス層との積層方向から前記第1境界層を見た場合において、前記第1境界層の輪郭の内側に複数の空隙が形成される層である、制御装置。
[22]第1樹脂を含む第1材料により形成され、第1ヤング率を有する第1部分と、前記第1樹脂が有する熱収縮率と異なる熱収縮率を有する第2樹脂を含む第2材料により形成され、前記第1ヤング率と異なる第2ヤング率を有する第2部分とが積層された三次元造形物を造形する、三次元造形方法。
【0111】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0112】
また、以上に説明した装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。ここで、当該装置は、例えば、三次元造形装置1、制御装置60、データ生成装置70等である。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0113】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル又は差分プログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0114】
1…三次元造形装置、10…吐出部、20…ステージ、21…造形面、30…移動部、31…第1移動機構部、32…第2移動機構部、40…加熱部、50…温度検出部、60…制御装置、61…プロセッサー、62…記憶部、63…入力受付部、64…通信部、65…表示部、66…制御部、70…データ生成装置、661…装置制御部、Nz…ノズル、TC…三次元座標系、X…造形材料