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特開2024-10811金属体の移動速度測定方法及びその移動速度測定装置
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  • 特開-金属体の移動速度測定方法及びその移動速度測定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010811
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】金属体の移動速度測定方法及びその移動速度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/36 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G01P3/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112325
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄太
(72)【発明者】
【氏名】大野 紘明
(72)【発明者】
【氏名】大場 洋尚
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 晋
(57)【要約】
【課題】ライン設備自体に測定のためのロールやその他付帯する装置を取り付けることなく、安価で簡便な金属体の移動速度を測定する技術を提供する。
【解決手段】パスラインPに沿って搬送される金属体の移動速度測定方法であって、定位置で、搬送される金属体の表面1aを撮像するカメラ2を有し、上記カメラ2で測定対象を撮像した2つの撮像画像間における、測定対象表面1aの模様11の移動量を算出し、その移動量と、上記2つの撮像画像の撮像時間間隔とから、測定対象の移動速度を算出する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パスラインに沿って搬送される金属体の移動速度を測定する方法であって、
定位置で、搬送される金属体の表面を撮像するカメラを有し、
上記カメラが撮像した2つの撮像画像間における、上記金属体表面の模様の移動量を算出し、その移動量と、上記2つの撮像画像の撮像時間間隔とから、上記金属体の移動速度を算出する、
ことを特徴とする金属体の移動速度測定方法。
【請求項2】
上記2つの撮像画像に基づく移動量の算出は、デジタル画像相関法によって実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載した金属体の移動速度測定方法。
【請求項3】
上記模様は、上記金属体表面に有する金属体固有の模様とする、
ことを特徴とする請求項1に記載した金属体の移動速度測定方法。
【請求項4】
上記2つの撮像画像のうちの、時刻が先の撮像画像の画像領域に予め設定されたテンプレート領域に存在する画像を上記模様とし、画像処理によって、その模様の模様パターンと同じ画像の領域を、時刻が後の撮像画像の画像領域から抽出することとで、上記移動量を算出する、
ことを特徴とする請求項3に記載した金属体の移動速度測定方法。
【請求項5】
所定サンプリング周期で撮像画像を取得して、上記移動速度の算出を連続して実行する、
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載した金属体の移動速度測定方法。
【請求項6】
パスラインに沿って搬送される金属体の移動速度測定装置であって
搬送される金属体の表面を撮像するカメラと、
上記カメラが撮像した撮像画像を取得する画像取得部と、
上記画像取得部が取得した撮像時刻の異なる2つの撮像画像について、デジタル画像相関法によって画像処理を行い、上記2つの撮像画像間における、金属体表面の模様の移動量を算出する画像処理部と、
上記画像処理部が算出した移動量と、上記2つの撮像画像の撮像時間間隔とから、測定対象の移動速度を算出する速度算出部と、
を備えることを特徴とする金属体の移動速度測定装置。
【請求項7】
上記カメラの撮像位置に光を発光するストロボ光源と、
上記カメラの撮像に同期をとって、上記ストロボ光源を起動する同期制御部と、
を備えることを特徴とする請求項6に記載した金属体の移動速度測定装置。
【請求項8】
上記模様は、上記金属体表面に有する金属体固有の模様である、
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載した金属体の移動速度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板や鋼管などの搬送される金属体の移動速度を測定する技術に関する。本発明は、例えば、熱延鋼板圧延ラインや冷延鋼板圧延ライン、鋼管製造ラインなどの鋼板製造ラインにおける鋼板の搬送時の移動速度(搬送速度)の測定に好適な技術である。
【背景技術】
【0002】
従来の鋼板の速度測定方法としては、例えば、特許文献1~3に記載の方法がある。
特許文献1には、製造ラインに設置された鋼板と接触するロールにおけるロールモーターの回転パルスを用いて鋼板速度を算出する方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、非接触型の鋼板速度測定方法が記載されている。その測定方法は、レーザー光を鋼板表面に照射し、ドップラー効果による反射光周波数の速度変化を利用する方法である。
【0004】
また、特許文献3には、鋼板以外の速度測定方法として、カメラを用いた速度算出方法がある。その方法は、被測定物にマーキングを施し、撮像した画像上のマーク間隔と実際のマーク間隔との関係から、被測定物の移動速度を算出する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭51-032658公報
【特許文献2】特開平5-123749公報
【特許文献3】特開2001-108695公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ロールモーターの回転パルスによる鋼板速度の測定方法では、測定対象の製造設備に対し、測定用のロールやその他付帯する装置を大規模改造にて設置する必要がある。このため、ライン(製造設備)によっては、容易には測定装置の設置ができないという問題点があった。
【0007】
また、ドップラー効果を利用したレーザー光を用いる鋼板速度の測定方法では、非接触で測定するため、測定装置を測定対象ラインに後付け可能である。しかし、この測定方法は、導入費用が高価である。また、この測定方法は、圧延ライン環境からの影響を防止するために、エアパージ装置といった付帯品の設置の必要性や、設置位置の制約がある。すなわち、この測定方法は、費用と簡便性について問題があった。
【0008】
また、特許文献3のような測定方法は、測定対象に目印としてマーキングを施す必要があり、マーキング装置等の付帯設備の導入も必要となる。
【0009】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、ライン設備自体に測定のためのロールその他の付帯する装置を取り付けることなく、安価で簡便な金属体の移動速度を測定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題解決のために、本発明の一態様は、パスラインに沿って搬送される金属体の移動速度を測定する方法であって、定位置で、搬送される金属体の表面を撮像するカメラを有し、上記カメラが撮像した2つの撮像画像間における、上記金属体表面の模様の移動量を算出し、その移動量と、上記2つの撮像画像の撮像時間間隔とから、上記金属体の移動速度を算出する、ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、搬送される金属体表面を非接触で撮像した2つの撮像画像に帯する画像処理で金属体の移動速度を算出する。この結果、本発明の態様によれば、ライン設備自体に測定のためのロールやその他付帯する装置を取り付ける必要がない。そして、本発明の態様によれば、安価で簡便な金属体の移動速度を測定する技術を提供するが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に基づく実施形態に係る移動速度測定装置を説明するための模式図である。
図2】本発明に基づく実施形態に係る速度演算部の構成を説明する図である。
図3】画像領域などの領域を説明する図である。
図4】画像処理による移動量の算出方法を説明する模式図である。
図5】実施例の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に基づく実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、金属体として鋼板を例に挙げて説明する。また本実施形態では、鋼板圧延ラインにおける、圧延される鋼板の搬送速度(移動速度)を測定する場合を例に挙げて説明する。搬送速度を測定する箇所は、圧延前でも圧延中でも圧延後でも構わない。
なお、鋼板その他の金属板は、その表面全面に金属特有の地合い模様を有する。また、表面処理が施されている場合も、表面処理による地合い模様が形成されている。
【0014】
また、以下の説明では、冷延鋼板圧延ラインを想定して説明するが、適用するラインは、熱延鋼板圧延ラインや表面処理ラインなどでも構わない。また、対象とする金属体は、平板状の鋼板に限定されず、鋼管や形鋼などの金属体であって構わない。予め設定したパスラインに沿って搬送される金属体であり、所定の面を有する物体であれば、本発明は適用可能である。
【0015】
(構成)
本実施形態では、図1に示すように、鋼板1が、パスラインPに沿って搬送されるとする。図1では、鋼板1(金属帯)が右から左に向けて移動する場合である。
本実施形態の移動速度測定装置は、図1に示すように、カメラ2、ストロボ光源3、ストロボ装置5、同期制御部6、及び速度演算部8を備える。
【0016】
<カメラ2>
カメラ2は、搬送される鋼板1の表面1a(図1では上面)を撮像する。本実施形態では、カメラ2は、同期制御部6から同期信号が入力される度に撮像を行う。すなわち、カメラ2は、予め設定されたサンプリング周期で鋼板1の表面1aを撮像する。図1中、符号9は、カメラ2を支持する固定アームを、符号10は雲台を示す。
【0017】
本実施形態では、カメラ2の撮像軸は、搬送される鋼板1の表面1aに対し垂直方向(本実施形態では鉛直方向)を向いている。撮像範囲を多くするために、カメラ2の撮像軸は、上記垂直方向に対し搬送方向へ傾いていてもよい。撮像軸を傾けた場合、画像を射影変換することで、撮像画像を標準化(真上から見た画像)とすればよい。
【0018】
<ストロボ光源3>
ストロボ光源3は、撮像領域中の鋼板1の表面1aに向けて発光可能に設置される。図1中、符号4は、ストロボ光源3を支持する三脚を示す。ストロボ光源3は、ストロボ装置5からの信号によって、カメラ2の撮像と同期をとって発光可能となっている。
【0019】
<同期制御部6>
同期制御部6は、所定サンプリングで、カメラ2及びストロボ装置5に同期をとって、信号を送る処理を実行する。
【0020】
同期制御部6は、例えば図1に示すように、ファンクションジェネレータ6Aと信号変換回路6Bとを備える。
【0021】
ファンクションジェネレータ6Aは、トリガー信号を生成する。信号変換回路6Bは、トリガー信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をストロボ装置5及びカメラ2に出力する。ファンクションジェネレータ6Aは、パーソナルコンピューター7に有線で接続される。
【0022】
そして、トリガー信号がΔT秒間隔で生成され、ファンクションジェネレータ6Aから生成したトリガー信号によって、ストロボ発光とカメラ2での撮像が同時に実施される。これによって、ΔT秒間隔で撮像が実施され、撮像された撮像画像はパーソナルコンピューター7へ転送される。
【0023】
<速度演算部8>
速度演算部8は、パーソナルコンピューター7で実行されるプログラムとして構成される。パーソナルコンピューター7は、画像処理機能を備える。
速度演算部8は、図2に示すように、画像取得部8A、画像処理部8B、及び速度算出部8Cを備える。
【0024】
[画像取得部8A]
画像取得部8Aは、カメラ2が撮像した撮像画像を所定サンプリング周期で取得する。
【0025】
ここで、カメラ2が撮像する撮像領域は、例えば、鋼板1の幅方向全体の領域を含み、図3に示すように、搬送方向(パスラインP)に沿って所定長さまで鋼板1が入るように設定する。若しくは、撮像領域の搬送方向の長さに応じて、サンプリング周期を設定する。
【0026】
例えば、撮像領域の搬送方向の長さを、相対的に、鋼板1の搬送速度の想定される上限値に、サンプリング時間を掛けた値以上に設定する。例えば、鋼板1の搬送速度の想定される上限値に、サンプリング時間の2倍を掛けた値に設定する。
このように設定することで、一の撮像画像での鋼板1上流側の半分が、次の撮像画像に確実に存在させることができる。
【0027】
また、取得した撮像画像について、エッジ強調処理などを実行して、鋼板1の領域(鋼板領域ARA2)の切り取り処理(画像処理)を実行する。この処理は、画像処理部8Bでも構わない。鋼板領域ARA2は、鋼板領域ARA2の中心と画像領域ARA1の中心とが一致するように設定され、図3に示すように、長辺がパスラインPと平行な矩形の領域とする。以降、この鋼板領域ARA2を基準に、処理を実行する。この鋼板領域ARA2に鋼板1の幅方向外方を含んでいても良いし、鋼板領域ARA2は、鋼板1の幅方向端部よりも内側に設定しても良い。つまり、鋼板領域ARA2の幅方向の寸法は、鋼板1の幅よりも広くても狭くても構わない。
【0028】
また、撮像画像は、シェーディング補正による輝度むら除去と輝度強調処理を実施することにより、鋼板地合い模様を識別容易となるようにしている。また、ストロボ撮影も鋼板地合い模様を識別容易とするために実行している。
【0029】
[画像処理部8B]
画像処理部8Bは、画像取得部8Aが取得した撮像時刻の異なる2つの撮像画像について画像処理を行う。具体的には、画像処理部8Bは、デジタル画像相関法によって、上記2つの撮像画像間における、測定対象表面1aの模様の移動量を算出する。2つの撮像画像は、時刻が先の1の撮像画像(第1撮像画像)と、その次に画像取得部8Aが取得したΔT秒後の撮像画像(第2撮像画像)とである。
【0030】
この処理を、画像処理部8Bは繰り返し実行する。例えば、上記の第2撮像画像を第1撮像画像として次の画像処理を繰り返す。又は、例えば、連続して取得する2つの撮像画像毎に組を構成して、組毎に上記の画像処理を実行する。
【0031】
画像処理部8Bにおける、移動量に算出方法例について説明する。
本実施形態では、鋼板1に固有の地合い模様を検出し、移動量を算出するとする。
【0032】
予め、鋼板領域ARA2中の所定の位置(予め設定した位置)に対し、テンプレート領域ARA3を設定しておく(図3参照)。テンプレート領域ARA3は、鋼板領域ARA2の幅方向中央部に設定することが好ましい。また、テンプレート領域ARA3の大きさは、他の地合い模様と区別可能な模様を取得可能な大きさとする。
なお、鋼板領域ARA2を設定せずに、画像領域ARA1に対し直接テンプレート領域ARA3を設定しても良い。
【0033】
そして、画像処理部8Bは、図4(a)のように、第1撮像画像の画像領域ARA1からテンプレート領域ARA3に位置する、地合い模様11(鋼板1の模様パターン)を取得する。
【0034】
次に、画像処理部8Bは、デジタル画像相関法によって、第2撮像画像の鋼板領域ARA2における、取得した鋼板1の模様パターンの領域が位置する領域を相関領域ARA3-1と認識する(図4(b)参照)。そして鋼板領域ARA2における、テンプレート領域ARA3から相関領域ARA3-1までのパスラインPに沿った移動量を、移動画素量として算出し、1画素当りの移動量に基づき鋼板1の移動量を求める。
なお、相関領域ARA3-1の抽出は、画像領域ARA1全域に行う必要がなく、少なくとも鋼板領域ARA2内だけに実行すれば良い。また、パスラインPの沿った移動の際の鋼板幅方向への揺動量(蛇行量)が所定範囲内に収まるようであれば、その所定範囲の安全代分だけテンプレート領域ARA3よりも幅が広い領域を、鋼板領域ARA2の幅に設定してもよい。この場合、鋼板1の幅よりも鋼板領域ARA2の幅が狭く設定される。
【0035】
[速度算出部8C]
速度算出部8Cは、画像処理部8Bが算出した移動量と、上記2つの撮像画像の撮像時間間隔ΔTとから、測定対象の移動速度を算出する。速度算出部8Cは、具体的には、移動量をΔTで除すことで、移動速度(=移動量/ΔT)を算出する。
【0036】
(動作その他)
本実施形態によれば、鋼板1の移動速度(搬送速度)を測定するために、搬送設備(ライン)自体に付帯設備を設置する必要が無い。本実施形態では、搬送速度を測定するための情報として、カメラ2が非接触で撮像する撮像画像を用いる。
【0037】
本実施形態では、撮像画像中の鋼板地合い模様11を識別容易とするために、ストロボ撮影としているが、ストロボ光源3が無くても良い。また、ストロボ光源3は、カメラ2が有していてもよい。ただし、ストロボによる発光を行った方が、鋼板1の表面1aの地合い模様11が明瞭となり、より測定精度が向上する。
【0038】
このように、本実施形態では、製造ライン上に設置可能なカメラ2と、ストロボ光源3による光学機器構成を非接触でライン近傍に設置するだけである。この結果、本実施形態の装置は、容易に設置可能であり、簡便に鋼板1速度の測定ができる。
【0039】
そして、本実施形態では、時刻をずらして取得した2組の撮像画像中の鋼板1の表面1aの地合い模様11の移動量を画像処理で演算するため、予めマーキング処理を実行する必要がない。またこのとき、撮像画像中の領域に対し、予めテンプレート領域ARA3を設定しておくことで、地合い模様11の選定、及び移動後の地合い模様11の位置の認識処理が容易となる。
【0040】
このように、本実施形態では、撮像画像中に含まれる測定対象物固有の模様11を捉え、撮像画像間で測定対象物にみられる模様11の移動量を演算することにより、対象物の速度を算出する。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、搬送される金属体表面1aを撮像した2つの撮像画像の画像処理で金属体の移動速度を算出する。この結果、本実施形態によれば、ライン設備自体に測定のためのロールやその他付帯する装置を取り付ける必要がない。そして、本実施形態によれば、安価で簡便な金属体の移動速度を測定する技術を提供するが可能となる。
【0042】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)パスラインに沿って搬送される金属体の移動速度を測定する方法であって、
定位置で、搬送される金属体の表面を撮像するカメラを有し、
上記カメラが撮像した2つの撮像画像間における、上記金属体表面の模様の移動量を算出し、その移動量と、上記2つの撮像画像の撮像時間間隔とから、上記金属体の移動速度を算出する。
(2)上記2つの撮像画像に基づく移動量の算出は、デジタル画像相関法によって実行する。
(3)上記模様は、上記金属体表面に有する金属体固有の模様とする。
(4)上記2つの撮像画像のうちの、時刻が先の撮像画像の画像領域に予め設定されたテンプレート領域ARA3に存在する画像を上記模様とし、画像処理によって、その模様の模様パターンと同じ画像の領域を、時刻が後の撮像画像の画像領域から抽出することとで、上記移動量を算出する。
(5)所定サンプリング周期で撮像画像を取得して、上記移動速度の算出を連続して実行する。
(6)パスラインに沿って搬送される金属体の移動速度測定装置であって
搬送される金属体の表面を撮像するカメラと、
上記カメラが撮像した撮像画像を取得する画像取得部と、
上記画像取得部が取得した撮像時刻の異なる2つの撮像画像について、デジタル画像相関法によって画像処理を行い、上記2つの撮像画像間における、金属体表面の模様の移動量を算出する画像処理部と、
上記画像処理部が算出した移動量と、上記2つの撮像画像の撮像時間間隔とから、測定対象の移動速度を算出する速度算出部と、を備える。
(7)上記カメラの撮像位置に光を発光するストロボ光源と、
上記カメラの撮像に同期をとって、上記ストロボ光源を起動する同期制御部と、を備える。
(8)上記模様は、上記金属体表面に有する金属体固有の模様である。
【実施例0043】
次に、本実施形態に基づく実施例について説明する。
本実施例は、図1に示すような、冷延鋼板圧延ラインに適用し、図1に示すような装置構成で速読の測定を行った。
【0044】
具体的には、冷延鋼板圧延ラインにおいて、カメラ2をライン上の鋼板1からの高さが1250mmの位置に固定アーム9を設け、その固定アーム9に自由雲台10よってカメラ2を定位置に固定した。また、ストロボ光源3をライン横側に三脚4にて設置した。ストロボ光源3は、カメラ2よりもライン後方に400mm、鋼板1からの高さが1250mmの位置となるように設置した。また、カメラ2の撮像軸とストロボ光源3の発光軸との角度が60°となるように設置した。これによって、カメラ2及びストロボ光源3ともに、簡便に設置された。
【0045】
このように、ライン周りの設置は、カメラ2とストロボ光源3の設置と各装置の配線を実施するだけで済む。このため、装置は、6時間程度の操業停止で設置可能となった。
設置後のカメラ2の調整としては、絞り調整による光量調整を行った。また、ストロボ発光の調整として、照射方向の微調整を行った。これらの調整も最小限で済むため、簡便な測定手法となる。
【0046】
他の計測方法(比較例)として、比較的に取付けの際の設備改造が容易なドップラー板速計を採用した。この比較例と本実施例を比較すると、本実施例は、比較例のコストの1/3で導入可能であった。
【0047】
また、ストロボ発光及びカメラ2撮像周期を100Hz(1秒に100回)とし、前後画像間での相関演算をソフトウェアにて実施するため、画像処理部8Bでの演算周期を50Hzとした。この場合、測定により0.02秒間隔の速度データが得られた。
【0048】
このとき、ストロボ発光及びカメラ2撮像周期は、撮像画像と測定対象(鋼板1)の最高速度を基に決定した。撮像画像中のテンプレート領域ARA3にあった鋼板地合い模様11がΔT秒後に撮像画像内に収まるような周期であればよい。
【0049】
図5は、本発明を実施した際に測定した速度精度を検証するために、既設速度計速度(比較例)と比較したグラフである。なお、既設速度計速度は、ロールモーターの回転パルスにより速度測定を実行した。
【0050】
図5のグラフは、鋼板1の搬送速度が定常状態となった速度域における、既設の形状計ロール速度をプロットした。また、測定により得られた速度が定常状態となった速度域の0.02秒間隔の速度データに対して前50データによるメジアンフィルタ処理を実施した。すなわち、処理後のデータを0.2秒間隔でサンプリングし、前後3点の移動平均を算出し、算出後のデータを1秒間隔でサンプリングした値をプロットした。
【0051】
両者の平均値の差は0.04%であった。これから、本実施例での測定は、従来のロールモーターの回転パルスによる速度測定結果と同程度の精度となる良好な結果が得られた。
【符号の説明】
【0052】
1 鋼板(金属体)
1a 表面
2 カメラ
3 ストロボ光源
5 ストロボ装置
6 同期制御部
7 パーソナルコンピューター
8 速度演算部
8A 画像取得部
8B 画像処理部
8C 速度算出部
11 地合い模様
ARA1 画像領域
ARA2 鋼板領域
ARA3 テンプレート領域
P パスライン
図1
図2
図3
図4
図5