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特開2024-108111物標探知装置および探知画像生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108111
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】物標探知装置および探知画像生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/89 20060101AFI20240802BHJP
   G01S 13/87 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G01S13/89
G01S13/87
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194391
(22)【出願日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2023011542
(32)【優先日】2023-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 達也
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB01
5J070AC02
5J070AC11
5J070AF05
5J070AH31
5J070AJ06
5J070AK22
5J070BD01
5J070BE01
(57)【要約】
【課題】物標の正確な形状、大きさを把握することが可能な物標探知装置および探知画像生成方法を提供する。
【解決手段】レーダシステムは、第1のレーダ装置からスイープ画像データx~x-4を取得し、第2のレーダ装置から、第1のレーダ装置1の不足方位のスイープ画像データy~y-4を取得し、スイープ画像データx~x-4とスイープ画像データy~y-4とを取得方位に基づいて配列し、物標Tの探知画像D3を生成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を送信し、物標にて反射された前記送信波の反射波を受信するスイープ処理を方位方向に回転しながら繰り返し行ない、前記反射波から方位方向のスイープ画像データを生成する複数の送受信手段と、前記スイープ画像データを取得方位に基づいて配列して探知画像を生成する探知画像生成手段と、を備え、
前記探知画像生成手段は、
前記複数の送受信手段のうちの一の送受信手段から前記スイープ画像データを取得し、
前記複数の送受信手段のうちの他の送受信手段から、前記一の送受信手段にて取得できなった方位の前記スイープ画像データを取得し、
前記一の送受信手段の前記スイープ画像データと、前記他の送受信手段の前記スイープ画像データとを取得方位に基づいて配列して前記探知画像を生成する、
ことを特徴とする物標探知装置。
【請求項2】
前記探知画像生成手段は、前記一の送受信手段から取得した前記スイープ画像データと、前記他の送受信手段から取得した前記スイープ画像データとを利用して、前記一の送受信手段と前記他の送受信手段とから取得できなかった方位を補間する、
ことを特徴とする請求項1に記載の物標探知装置。
【請求項3】
前記探知画像生成手段は、前記一の送受信手段にて取得できなった方位の前記スイープ画像データが前記他の送受信手段から取得できなかった場合、前記一の送受信手段から取得した前記スイープ画像データを利用して、前記一の送受信手段にて取得できなかった方位を補間する、
ことを特徴とする請求項1に記載の物標探知装置。
【請求項4】
前記探知画像生成手段は、前記複数の送受信手段のうちの一の送受信手段から取得した前記スイープ画像データには存在し、前記複数の送受信手段のうちの他の送受信手段から取得した前記スイープ画像データには存在しない像がある場合、前記一の送受信手段の前記スイープ画像データから前記像を除いて前記探知画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の物標探知装置。
【請求項5】
送信波を送信し、物標にて反射された前記送信波の反射波を受信するスイープ処理を方位方向に回転しながら繰り返し行ない、前記反射波から方位方向のスイープ画像データを生成する複数の送受信手段と、前記スイープ画像データを取得方位に基づいて配列して探知画像を生成する探知画像生成手段と、を備えた物標探知装置の探知画像生成方法であって、
前記複数の送受信手段のうちの一の送受信手段から前記スイープ画像データを取得し、
前記複数の送受信手段のうちの他の送受信手段から、前記一の送受信手段にて取得できなった方位の前記スイープ画像データを取得し、
前記一の送受信手段の前記スイープ画像データと、前記他の送受信手段の前記スイープ画像データとを取得方位に基づいて配列して前記探知画像を生成する、
ことを特徴とする探知画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物標探知装置と、物標探知装置に用いられる探知画像生成方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶などに搭載されるレーダ装置は、方位方向に回転するアンテナから送信波を送信し、物標にて反射された送信波の反射波を受信するスイープ処理を繰り返し行ない、反射波に基づいて生成された方位方向のスイープ画像データを取得方位に基づいて配列することにより、PPI(Plan Position Indicator)形式の探知画像を生成する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなレーダ装置では、アンテナが方位方向に1回転(1スキャンともいう)する間に所定の周期でスイープ処理を行なうようになっており、スイープ処理と、スイープ処理が行なわれる方位とは同期していない。そのため、従来のレーダ装置では、スイープ処理が行なわれない方位(すなわち、スイープ画像データが取得できない方位、不足方位ともいう)が発生し、その方位は一定ではない。
【0004】
不足方位が発生するという問題を解決するために従来のレーダ装置には、スイープ処理が行なわれなかった方位を直前に取得したスイープ画像データによって補間するものがある。図7(A)は、アンテナを時計方向に回転させながら所定の周期でスイープ処理を行なった状態を示している。同図(A)中において2点鎖線で示す長方形は、アンテナにより送受信された送信波および受信波、すなわち、1回のスイープ処理を示している。また、符号xは、x回目のスイープ処理を示し、符号x-1~x-4は、符号xのスイープ処理から1~4回前に実施されたスイープ処理を示している。符号Tは、物標を示している。
【0005】
このようなレーダ装置では、スイープ処理x-3~x-1によって物標Tが検出されるので、スイープ処理x-3~x-1のスイープ画像データ(スイープ処理と同符号を使用)により生成される探知画像D1は、図7(B)のように隙間が空いたものとなり、物標Tの本来の形状は分からなくなる。そのため、従来のレーダ装置では、同図(C)に示すように、スイープ画像データx-3とスイープ画像データx-2との間の方位を、スイープ画像データx-3のコピーx-3cにより補間し、スイープ画像データx-2とスイープ画像データx-1との間の方位を、スイープ画像データx-2のコピーx-2cより補間する。また、探知画像の生成処理では、スイープ画像データx-1が物標の端部を示しているとは認識できないため、スイープ画像データx-1も同様にコピーx-1cが生成される。その結果、同図(D)に示すように、スイープ画像データのコピーによって補間された探知画像D2は、スキャン方向(方位方向)に見かけ上、長く表示されてしまう。このように、スイープ処理が行なわれなかった方位を直前に取得したスイープ画像データによって補間することにより、同図(B)のように補間していない探知画像に比べて、物標Tにより近い形状を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-326493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図7(D)に示すように、スイープ処理が行なわれなかった方位を直前
に取得したスイープ画像データによって補間した場合、その補間された探知画像D2は実際の物標Tとは明らかに異なった形状(方位方向に長い形状)として表示されてしまうため、正確な物標の形状、大きさなどを把握することは難しいものであった。
【0008】
そこで本発明は、物標の正確な形状、大きさを把握することが可能な物標探知装置および探知画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、送信波を送信し、物標にて反射された前記送信波の反射波を受信するスイープ処理を方位方向に回転しながら繰り返し行ない、前記反射波から方位方向のスイープ画像データを生成する複数の送受信手段と、前記スイープ画像データを取得方位に基づいて配列して探知画像を生成する探知画像生成手段と、を備え、前記探知画像生成手段は、前記複数の送受信手段のうちの一の送受信手段から前記スイープ画像データを取得し、前記複数の送受信手段のうちの他の送受信手段から、前記一の送受信手段にて取得できなった方位の前記スイープ画像データを取得し、前記一の送受信手段の前記スイープ画像データと、前記他の送受信手段の前記スイープ画像データとを取得方位に基づいて配列して前記探知画像を生成する、ことを特徴とする物標探知装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の物標探知装置において、前記探知画像生成手段は、前記一の送受信手段から取得した前記スイープ画像データと、前記他の送受信手段から取得した前記スイープ画像データとを利用して、前記一の送受信手段と前記他の送受信手段とから取得できなかった方位を補間する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の物標探知装置において、前記探知画像生成手段は、前記一の送受信手段にて取得できなった方位の前記スイープ画像データが前記他の送受信手段から取得できなかった場合、前記一の送受信手段から取得した前記スイープ画像データを利用して、前記一の送受信手段にて取得できなかった方位を補間する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の物標探知装置において、前記探知画像生成手段は、前記複数の送受信手段のうちの一の送受信手段から取得した前記スイープ画像データには存在し、前記複数の送受信手段のうちの他の送受信手段から取得した前記スイープ画像データには存在しない像がある場合、前記一の送受信手段の前記スイープ画像データから前記像を除いて前記探知画像を生成する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、送信波を送信し、物標にて反射された前記送信波の反射波を受信するスイープ処理を方位方向に回転しながら繰り返し行ない、前記反射波から方位方向のスイープ画像データを生成する複数の送受信手段と、前記スイープ画像データを取得方位に基づいて配列して探知画像を生成する探知画像生成手段と、を備えた物標探知装置の探知画像生成方法であって、前記複数の送受信手段のうちの一の送受信手段から前記スイープ画像データを取得し、前記複数の送受信手段のうちの他の送受信手段から、前記一の送受信手段にて取得できなった方位の前記スイープ画像データを取得し、前記一の送受信手段の前記スイープ画像データと、前記他の送受信手段の前記スイープ画像データとを取得方位に基づいて配列して前記探知画像を生成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および請求項5に記載の発明によれば、他の送受信手段から一の送受信手段の不足方位の前記スイープ画像データを取得し、一の送受信手段のスイープ画像データと、他の送受信手段のスイープ画像データとを取得方位に基づいて配列して探知画像を生成す
るので、不足方位に隙間が生じず、物標の正確な形状、大きさを把握可能な探知画像を生成することができる。また、不足方位に納まってしまうような小さな物標も表示することができるので、より正確で高精度な物標探知を行なうことが可能である。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、一の送受信手段と他の送受信手段との不足方位を、一の送受信手段から取得したスイープ画像データと、他の送受信手段から取得したスイープ画像データとを利用して補間するので、より不足方位に隙間が生じず、物標の正確な形状、大きさを把握可能な探知画像を生成することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、一の送受信手段の不足方位のスイープ画像データが他の送受信手段から取得できなかった場合、一の送受信手段のスイープ画像データを利用して不足方位を補間するので、少なくとも従来のレーダ装置と同程度まで不足方位に隙間が生じず、物標の正確な形状、大きさを把握可能な探知画像を生成することができる。
【0017】
また、ある送受信手段のスイープ画像データには存在するが、他の送受信手段のスイープ画像データには存在しない像がある場合、そのような像は虚像(物標が存在しないのにレーダ上に現れる像)であると考えられる。そして、請求項4に記載の発明によれば、このような虚像を除いて探知画像が生成されるため、適正な探知画像を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施の形態1に係るレーダシステムの概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示すレーダシステムによる探知画像の生成手順を示すフローチャートである。
図3図2に示す探知画像の生成手順を示す説明図である。
図4】第1のレーダ装置と第2のレーダ装置の不足方位を第1のレーダ装置と第2のレーダ装置のスイープ画像データで補間した探知画像を示す図である。
図5】この発明の実施の形態2に係るレーダシステムによる探知画像の生成手順を示すフローチャートである。
図6図5に示す探知画像の生成手順を示す説明図である。
図7】従来のレーダ装置の不足方位の補間手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係るレーダシステム10の概略構成を示すブロック図である。レーダシステム10は、例えば、船舶に搭載されており、物標を探知してPPI形式の探知画像を表示する第1のレーダ装置1と、第2のレーダ装置2とを備えている。
【0021】
第1のレーダ装置1は、レーダアンテナ11と、送受信ユニット12と、スイープ画像データ生成部13と、探知画像生成部(探知画像生成手段)14と、信号処理部15と、表示部16と、操作部17と、を備えている。
【0022】
レーダアンテナ11は、水平面内で方位方向に回転しながらパルス状の送信波を送信し、物標にて反射された送信波の反射波(エコー)を受信するスイープ処理を所定周期で繰り返す。送受信ユニット12は、レーダアンテナ11ら送信する送信波を発生してレーダアンテナ11に入力する。また、送受信ユニット12は、レーダアンテナ11によって受信したエコーを検波して増幅し、アナログのエコー信号を生成する。
【0023】
スイープ処理は、レーダアンテナ11が回転している間に所定周期で行なわれるため、スイープ処理が行なわれない方位が発生する。また、レーダアンテナ11は、船舶の見通しのよい位置に設置されているため、風や波の影響を受けて一定速度では回転しない。そのため、レーダアンテナ11から送信波が送信される方位は一定ではなく、スイープ処理と方位とは同期しない。
【0024】
スイープ画像データ生成部12は、送受信ユニット13から出力されたエコー信号をA/D変換してデジタルのスイープ画像データを生成する。レーダアンテナ11、送受信ユニット12およびスイープ画像データ生成部13は、本発明の送受信手段を構成する。探知画像生成部14は、スイープ画像データを取得方位に基づいて配列して探知画像を生成する。
【0025】
信号処理部15は、探知画像生成部14により生成された探知画像に対し、海面反射、陸地反射、雨雪の反射などによる不要なエコー(クラッタ)の除去を含む信号処理を行なう。表示部16は、信号処理が施された探知画像が表示されるモニタなどである。操作部17は、レーダ装置1の操作に用いられる入力装置である。
【0026】
第2のレーダ装置2は、レーダアンテナ21と、送受信ユニット22と、スイープ画像データ生成部23と、探知画像生成部(探知画像生成手段)24と、信号処理部25と、表示部26と、操作部27と、を備えている。なお、第2のレーダ装置2の各構成は、第1のレーダ装置1と同様のものであるため、詳しい説明は省略する。
【0027】
第1のレーダ装置1と第2のレーダ装置2とは、それぞれ単独で物標の探知および探知画像の表示を行ない、あるいは、スイープ画像データが取得できなった方位(不足方位)を補間するために連携して物標の探知および探知画像の表示を行なう機能を備えている。第1のレーダ装置1と第2のレーダ装置2とは、連携して物標の探知および探知画像の表示を行なうために、探知画像生成部14と、探知画像生成部24とが相互に通信可能に接続されている。
【0028】
図2は、第1のレーダ装置1が物標の探知および探知画像の表示を行ない、第1のレーダ装置1の不足方位の補間を、第2のレーダ装置2が行なう場合の手順を示すフローチャートである。
【0029】
第1のレーダ装置1は、レーダアンテナ11および送受信ユニット12は、水平面内で方位方向に回転しながらパルス状の送信波を送信し、物標にて反射された送信波のエコーを受信するスイープ処理を所定周期で繰り返す(ステップS1)。
【0030】
スイープ画像データ生成部13は、送受信ユニット12から出力されたエコー信号をA/D変換してデジタルのスイープ画像データを生成する(ステップS2)。
【0031】
探知画像生成部14は、スイープ画像データを取得方位に基づいて配列して探知画像を生成する。その際に、探知画像生成部14は、第1のレーダ装置1の不足方位のスイープ画像データが第2のレーダ装置2により取得されているか否かを確認する(ステップS3)。
【0032】
第1のレーダ装置1の探知画像生成部14は、第2のレーダ装置2が第1のレーダ装置1の不足方位のスイープ画像データを取得している場合には(ステップS3でYES)、第2のレーダ装置2から不足方位のスイープ画像データを取得して探知画像を生成する(ステップS4)。
【0033】
また、ステップS3で、第2のレーダ装置2が第1のレーダ装置1の不足方位のスイープ画像データを取得していない場合には(ステップS3でNO)、第1のレーダ装置1の探知画像生成部14は、従来のレーダ装置と同様に、直前に取得したスイープ画像データをコピーして不足方位を補間し、探知画像を生成する(ステップS5)(図7参照)。
【0034】
第1のレーダ装置1の探知画像生成部14により生成された探知画像は、信号処理部15により信号処理され、表示部16に表示される(ステップS6)。
【0035】
図3は、第1のレーダ装置1の探知画像生成部14が、第2のレーダ装置2から不足方位のスイープ画像データを取得して探知画像を生成する手順を示している。同図(A)は、レーダアンテナ11を時計方向に回転させながら所定の周期でスイープ処理を行なった状態を示している。同図(A)中において2点鎖線で示す長方形は、レーダアンテナ11により送受信された送信波および受信波、すなわち、1回のスイープ処理を示している。また、符号xは、x回目のスイープ処理を示し、符号x-1~x-4は、符号xのスイープ処理から1~4回前に実施されたスイープ処理を示している。符号Tは、物標を示している。
【0036】
第1のレーダ装置1では、スイープ処理x-3~x-1によって物標Tが検出されるので、スイープ処理x-3~x-1のスイープ画像データ(スイープ処理と同符号を使用)により生成される探知画像は、不足方位の部分に隙間が空いたものとなり、物標Tの本来の形状は分からなくなる。
【0037】
図3(B)は、第2のレーダ装置2のレーダアンテナ21を時計方向に回転させながら所定の周期でスイープ処理を行なった状態を示している。同図(B)中において2点鎖線で示す長方形は、レーダアンテナ21により送受信された送信波および受信波、すなわち、1回のスイープ処理を示している。また、符号yは、y回目のスイープ処理を示し、符号y-1~y-4は、符号yのスイープ処理から1~4回前に実施されたスイープ処理を示している。符号Tは、物標を示している。
【0038】
第2のレーダ装置2では、スイープ処理y-4~y-2によって物標Tが検出されるので、スイープ処理y-4~y-2のスイープ画像データ(スイープ処理と同符号を使用)により生成される探知画像は、不足方位の部分に隙間が空いたものとなり、物標Tの本来の形状は分からなくなる。
【0039】
第1のレーダ装置1と第2のレーダ装置2は、レーダアンテナ11および21の回転が同期していないため、スイープ処理が行なわれる方位は互いにずれている。また、レーダアンテナ11および21は、風や波の影響によって回転速度が変化するため、レーダアンテナ11および21のスイープ処理が行なわれる方位は一時的に同期したり、再びずれたりする。そのため、第1のレーダ装置1の探知画像生成部14は、探知画像を生成する際に、第2のレーダ装置2が不足方位のスイープ処理を行なっているか否かを確認する。
【0040】
第1のレーダ装置1の探知画像生成部14は、図3(B)に示す第2のレーダ装置2のスイープ処理が不足方位に対して行なわれている場合には、同図(C)に示すように、第1のレーダ装置1のスイープ画像データと、第2のレーダ装置2のスイープ画像データとを合成(取得方位に基づいて配列)し、同図(D)に示すように、第1のレーダ装置1のスイープ画像データx-3~x-1と、第2のレーダ装置2のスイープ画像データy-4~y-2とによって物標Tの探知画像D3を生成する。
【0041】
上記の実施の形態に係るレーダシステム10によれば、第2のレーダ装置2から第1の
レーダ装置1の不足方位のスイープ画像データを取得し、第1のレーダ装置1のスイープ画像データと、第2のレーダ装置2のスイープ画像データとを取得方位に基づいて配列して探知画像を生成するので、不足方位に隙間が生じず、物標Tの正確な形状、大きさを把握可能な探知画像D3を生成することができる。また、不足方位に納まってしまうような小さな物標も表示することができるので、より正確で高精度な物標探知を行なうことが可能である。
【0042】
また、上記の実施の形態に係るレーダシステム10によれば、第1のレーダ装置1の不足方位のスイープ画像データが第2のレーダ装置2から取得できなかった場合、第1のレーダ装置1のスイープ画像データを利用して不足方位を補間するので、少なくとも従来のレーダ装置と同程度まで不足方位に隙間が生じず、物標の正確な形状、大きさを把握可能な探知画像を生成することができる。
【0043】
なお、上記の実施の形態では、第1のレーダ装置1の不足方位を第2のレーダ装置2のスイープ画像データで補間したが、第1のレーダ装置1および第2のレーダ装置2の不足方位をそれぞれのスイープ画像データのコピーデータで補間してもよい。
【0044】
具体的には、図4(A)に示すように、スイープ画像データy-4とスイープ画像データx-3との間の不足方位をスイープ画像データy-4のコピーy-4cにより補間し、スイープ画像データx-3とスイープ画像データy-3との間の不足方位をスイープ画像データx-3のコピーx-3cにより補間し、スイープ画像データy-3とスイープ画像データx-2との間の不足方位をスイープ画像データy-3のコピーy-3cにより補間し、スイープ画像データx-2とスイープ画像データy-2との間の不足方位をスイープ画像データx-2のコピーx-2cにより補間し、スイープ画像データy-2とスイープ画像データx-1との間の不足方位をスイープ画像データy-2のコピーy-2cにより補間する。
【0045】
これによれば、図4(B)に示すように、より不足方位に隙間が生じず、物標Tの正確な形状、大きさを把握可能な探知画像D4を生成することができる。
【0046】
(実施の形態2)
図5は、この実施の形態に係るレーダシステムによる探知画像の生成手順を示すフローチャートである。この実施の形態では、実施の形態1の動作・機能に加えて、虚像を除去する機能を備える点で構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0047】
この実施の形態では、実施の形態1と同様にステップS1からステップS5までの処理を行った後に、虚像があるか否かを判定する(ステップS6)。ここで、虚像とは、物標が存在しないのにレーダ上に現れる像であり、複数のレーダ装置のすべてに同時に現れることはないと考えられる。このため、探知画像生成部14は、第1のレーダ装置1または第2のレーダ装置2の一方のスイープ画像データには存在するが、他方のスイープ画像データには存在しない像がある場合、この像は虚像であると判定する。
【0048】
具体的には、例えば、図6(c)に示すように、第1のレーダ装置1のスイープ画像データには物標Tのみが現れ、図6(d)に示すように、第2のレーダ装置2のスイープ画像データには物標Tと像Fが現れているとする。この場合、上記の実施の形態1と同様にして、図6(e)に示すように、2つのスイープ画像データを重ね合わせて(取得方位に基づいて配列して)合成する。そして、第2のレーダ装置2のスイープ画像データy-3~y-1には現れているが、第1のレーダ装置1のスイープ画像データx-3~x-1には現れていない像Fを、虚像と判定する。
【0049】
このようにして虚像があると判定した場合(ステップS6でYESの場合)、探知画像生成部14は、この虚像を除いて、つまり、第2のレーダ装置2のスイープ画像データから像Fを除いて、探知画像を生成する(ステップS7)。これにより、図6(f)に示すように、虚像(像F)がない物標Tのみの探知画像D5が生成される。その後の信号処理及び表示処理(ステップS8)は、実施の形態1のステップS6と同等の処理である。なお、図6(a)および図6(b)は、図3(A)および図3(B)と同義の図である。
【0050】
このように、この実施の形態によれば、2つのレーダ装置1、2のうちのいずれかのスイープ画像データのみに現れた像Fが、虚像として自動的に除去される。このため、虚像のない適正な探知画像を生成することが可能となる。
【0051】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0052】
例えば、上記の実施の形態では、第1のレーダ装置1の不足方位を第2のレーダ装置2のスイープ画像データにより補間するようにしたが、第2のレーダ装置2の不足方位を第1のレーダ装置1のスイープ画像データにより補間してもよい。また、第1のレーダ装置1のレーダアンテナ11と、第2のレーダ装置2のレーダアンテナ21とが離れた位置に設置される場合には、補間を行なう際にレーダアンテナ11とレーダアンテナ21との距離に応じてスイープ画像データをオフセットするようにしてもよい。
【0053】
また、上記の実施の形態では、レーダ装置が2台のレーダシステムを例に説明したが、3台以上のレーダ装置を組み合わせて本実施形態のレーダシステムを構成してもよい。また、2台のレーダ装置を利用したが、例えば、複数の送受信手段(レーダアンテナ、送受信ユニット、スイープデータ生成部)を備えた1台のレーダ装置により構成してもよい。
【0054】
10 レーダシステム
1 第1のレーダ装置
11 レーダアンテナ(一の送受信手段)
12 送受信ユニット(一の送受信手段)
13 スイープ画像データ生成部(一の送受信手段)
14 探知画像生成部(探知画像生成手段)
2 第2のレーダ装置
21 レーダアンテナ(他の送受信手段)
22 送受信ユニット(他の送受信手段)
23 スイープ画像データ生成部(他の送受信手段)
24 探知画像生成部(探知画像生成手段)
T 物標
F 虚像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7