(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108122
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】半導体素子、その製造方法、それを用いた回路、無線通信装置、薄膜トランジスタアレイおよびセンサ
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20240802BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240802BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20240802BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240802BHJP
C08K 5/5419 20060101ALI20240802BHJP
C08K 5/51 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01L29/78 617T
H01L29/78 617V
H01L29/78 618B
H01L29/78 613Z
H01L21/312 C
C08L83/04
C08K5/5419
C08K5/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208971
(22)【出願日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2023011783
(32)【優先日】2023-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 和生
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 清一郎
【テーマコード(参考)】
4J002
5F058
5F110
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002CP051
4J002CP101
4J002EW126
4J002EX036
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5F110QQ06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】素子の連続動作安定性と絶縁層の加工安定性を両立する半導体素子を提供する。
【解決手段】少なくとも、基板と、第1電極、第2電極と、第1電極および第2電極の両方に接する半導体層と、半導体層に接する絶縁層と、半導体層に対して絶縁層とは反対側で絶縁層と接する第3電極と、を備えた半導体素子であって、絶縁層が、ポリシロキサン及び下記一般式(1)等で表される化合物を含有する。
一般式(1)中、Xはフルオロ基を置換基として有するアルキル基、アルケニル基、アルキニキル基又はシクロアルキル基を表す。R
1又はR
2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R
1を複数有する場合、R
1は互いに同じでも異なっていてもよい。R
2を複数有する場合、R
2は互いに同じでも異なっていてもよい。aは0~2の整数を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基板と、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および第2電極の両方に接する半導体層と、前記半導体層に接する絶縁層と、前記半導体層に対して前記絶縁層とは反対側で前記絶縁層と接する第3電極と、を備えた半導体素子であって、
前記絶縁層が、ポリシロキサンと、下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物とを含有することを特徴とする、半導体素子。
【化1】
【化2】
(一般式(1)および(2)中、Xは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基を表し、かつ、フルオロ基を置換基として有する。R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R
1を複数有する場合、複数のR
1は互いに同じでも異なっていてもよい。R
2を複数有する場合、複数のR
2は互いに同じでも異なっていてもよい。aは0~2の整数を表す。bは0または1を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)および(2)におけるXが、フルオロ基を置換基として有するアルキル基である、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記一般式(1)および(2)におけるXが、末端にトリフルオロメチル基を有するアルキル基である、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記一般式(1)におけるaが0であり、前記一般式(2)におけるbが0である、請求書1に記載の半導体素子。
【請求項5】
前記絶縁層における前記一般式(1)または(2)で表される化合物の含有量が0.05重量%以上5重量%以下である、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記ポリシロキサンが下記一般式(3)で表される構造単位を少なくとも有する、請求項1に記載の半導体素子。
【化3】
(一般式(3)中、Aは、カルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基またはそれらの誘導体を少なくとも二つ含む有機基を表す。ただし、前記誘導体が、前記カルボキシル基、スルホ基、チオール基およびフェノール性水酸基のうちの二つによる環状縮合構造である場合は、Aは当該環状縮合構造を少なくとも一つ有する有機基を表す。R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはシリル基を表す。R
3を複数有する場合、複数のR
3は互いに同じでも異なっていてもよい。R
4を複数有する場合、複数のR
4は互いに同じでも異なっていてもよい。nは0または1を表す。)
【請求項7】
前記一般式(3)におけるnが0である、請求項6に記載の半導体素子。
【請求項8】
前記絶縁層が無機酸化物粒子を含有する、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項9】
前記半導体層がナノカーボンを含有する、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項10】
前記ナノカーボンがカーボンナノチューブである、請求項9に記載の半導体素子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の半導体素子の製造方法であって、前記絶縁層を塗布法により形成する工程を含む、半導体素子の製造方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載の半導体素子の製造方法であって、前記絶縁層にパターン形成する工程を含む、請求項11に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれかに記載の半導体素子を有する、回路。
【請求項14】
請求項13に記載の回路と、アンテナと、を少なくとも有する無線通信装置。
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載の半導体素子を有する、薄膜トランジスタアレイ。
【請求項16】
請求項1~10のいずれかに記載の半導体素子を有する、センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子、その製造方法、それを用いた回路、無線通信装置、薄膜トランジスタアレイおよびセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低コスト、大面積、フレキシブル、ベンダブルな電子デバイスの実現を目指して、インクジェット技術やスクリーン印刷などの塗布技術が適用できる、カーボンナノチューブ(CNT)やグラフェン、有機半導体、酸化物半導体等の半導体材料を用いた電界効果型トランジスタ(FET)が盛んに検討されている。電子デバイスとしては、例えば、ディスプレイ、RFID(Radio Frequency IDentification)技術を用いた無線通信装置、センサなどが挙げられ、それらのICチップ内の論理回路やセンサ部などにFETが使用される。
【0003】
そのFETの構成部材の1つである絶縁層は、ゲート絶縁層として機能する場合、しきい値電圧やサブスレッショルドスイングなどのトランジスタ特性に関係する重要な部材として知られる。また、FETを組み合わせて回路として用いる場合、FETを連続動作させた際の動作安定性が重要な項目として挙げられる。FETを連続動作させた際の動作が不安定な場合、誤った信号処理がされてしまい、回路として正しく機能しなくなる。FETの動作安定性は絶縁層内部や絶縁層/半導体層界面のキャリアトラップなどに大きく影響されるため、絶縁層は重要な役割を担う。
【0004】
一方、上述のようにFETを組み合わせて回路を形成する場合、絶縁層の上部と下部に存在する電極を導通させるために、絶縁層にコンタクトホールを設ける必要がある。このようなホールパターンを設ける方法として、フォトリソグラフィーによりパターン形成可能な感光性樹脂組成物を絶縁層として用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、特定の構造を有するポリシロキサンを用いることで良好な半導体素子の特性や絶縁層のパターン加工性に関する開示はあるものの、半導体素子を連続動作させた際の動作安定性と絶縁層の加工安定性との両立にさらなる改善の余地があった。
【0007】
そこで本発明は、半導体素子の連続動作安定性と絶縁層の加工安定性とを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、以下の構成をとる。
[1]少なくとも、基板と、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および第2電極の両方に接する半導体層と、前記半導体層に接する絶縁層と、前記半導体層に対して前記絶縁層とは反対側で前記絶縁層と接する第3電極と、を備えた半導体素子であって、
前記絶縁層が、ポリシロキサンと、下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物とを含有することを特徴とする、半導体素子。
【0009】
【0010】
【0011】
(一般式(1)および(2)中、Xは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基を表し、かつ、フルオロ基を置換基として有する。R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R1を複数有する場合、複数のR1は互いに同じでも異なっていてもよい。R2を複数有する場合、複数のR2は互いに同じでも異なっていてもよい。aは0~2の整数を表す。bは0または1を表す。)
[2]前記一般式(1)および(2)におけるXが、フルオロ基を置換基として有するアルキル基である、[1]に記載の半導体素子。
[3]前記一般式(1)および(2)におけるXが、末端にトリフルオロメチル基を有するアルキル基である、[1]または[2]に記載の半導体素子。
[4]前記一般式(1)におけるaが0であり、前記一般式(2)におけるbが0である、[1]~[3]のいずれかに記載の半導体素子。
[5]前記絶縁層における前記一般式(1)または(2)で表される化合物の含有量が0.05重量%以上5重量%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の半導体素子。
[6]前記ポリシロキサンが下記一般式(3)で表される構造単位を少なくとも有する、[1]~[5]のいずれかに記載の半導体素子。
【0012】
【0013】
(一般式(3)中、Aは、カルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基またはそれらの誘導体を少なくとも二つ含む有機基を表す。ただし、前記誘導体が、前記カルボキシル基、スルホ基、チオール基およびフェノール性水酸基のうちの二つによる環状縮合構造である場合は、Aは当該環状縮合構造を少なくとも一つ有する有機基を表す。R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはシリル基を表す。R3を複数有する場合、複数のR3は互いに同じでも異なっていてもよい。R4を複数有する場合、複数のR4は互いに同じでも異なっていてもよい。nは0または1を表す。)
[7]前記一般式(3)におけるnが0である、[6]に記載の半導体素子。
[8]前記絶縁層が無機酸化物粒子を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の半導体素子。
[9]前記半導体層がナノカーボンを含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の半導体素子。
[10]前記ナノカーボンがカーボンナノチューブである、[9]に記載の半導体素子。
[11][1]~[10]のいずれかに記載の半導体素子の製造方法であって、前記絶縁層を塗布法により形成する工程を含む、半導体素子の製造方法。
[12][1]~[10]のいずれかに記載の半導体素子の製造方法であって、前記絶縁層にパターン形成する工程を含む、請求項11に記載の半導体素子の製造方法。
[13][1]~[10]のいずれかに記載の半導体素子を有する、回路。
[14][13]に記載の回路と、アンテナと、を少なくとも有する無線通信装置。
[15][1]~[10]いずれかに記載の半導体素子を有する、薄膜トランジスタアレイ。
[16][1]~[10]のいずれかに記載の半導体素子を有する、センサ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、素子の連続動作安定性と絶縁層の加工安定性を両立する半導体素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】薄膜トランジスタアレイの構成例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る半導体素子、その製造方法、それを用いた回路、無線通信装置、薄膜トランジスタアレイおよびセンサの好適な実施の形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0017】
(半導体素子)
本発明の実施の形態に係る半導体素子は、少なくとも、基板と、第1電極と、第2電極と、第1電極および第2電極の両方に接する半導体層と、半導体層に接する絶縁層と、半導体層に対して絶縁層とは反対側で絶縁層と接する第3電極と、を備えた半導体素子であって、絶縁層が、ポリシロキサンと、後述の一般式(1)または一般式(2)で表される化合物とを含有する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体素子を示す模式断面図である。この実施の形態1に係る半導体素子10は、絶縁性の基材1の上に形成されるゲート電極2と、それを覆うゲート絶縁層3と、その上に設けられるソース電極5およびドレイン電極6と、それらの電極の間に設けられる半導体層4と、を有する。
【0019】
図1の構造において、半導体素子10を電界効果型トランジスタとして機能させることができる。すなわち、第1電極がソース電極5、第2電極がドレイン電極6、第3電極がゲート電極2にそれぞれ相当する。この構造は、ゲート電極が半導体層の下側に配置され、半導体層の上面にソース電極およびドレイン電極が配置される、いわゆるボトムゲート・トップコンタクト構造である。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態2に係る半導体素子を示す模式断面図である。この実施の形態2に係る半導体素子20は、絶縁性の基材11の上に形成されるソース電極15およびドレイン電極16と、それら電極の間に設けられる半導体層14と、それらを覆うゲート絶縁層13と、半導体層の上に設けられるゲート電極12と、を有する。
【0021】
図2の構造において、半導体素子20を電界効果型トランジスタとして機能させることができる。すなわち、第1電極がソース電極15、第2電極がドレイン電極16、第3電極がゲート電極12にそれぞれ相当する。この構造は、ゲート電極が半導体層の上側に配置され、半導体層の下面にソース電極およびドレイン電極が配置される、いわゆるトップゲート・ボトムコンタクト構造である。
【0022】
半導体素子を電界効果型トランジスタとして機能させる場合、半導体素子の構造は、
図1、
図2に示すもの以外に、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造、トップゲート・トップコンタクト構造などが挙げられる。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態3に係る半導体素子を示す模式断面図である。この実施の形態3に係る半導体素子30は、絶縁性の基材21の上に形成される第3電極22と、それを覆う絶縁層23と、その上に設けられるカソード25およびアノード26と、それらの電極の間に設けられる半導体層24と、第3電極22と第1電極25とを電気的に接続する第4電極29と、を有する。
【0024】
図3の構造において、半導体素子30をダイオードとして機能させることができる。すなわち、第1電極がカソード25、第2電極がアノード26にそれぞれ相当する。この構造は、トランジスタをダイオード接続した構造である。
【0025】
本発明の実施の形態に係る半導体素子の構造はこれらに限定されるものではない。また、以下の説明は、特に断りのない限り、半導体素子の構造によらず共通する。
【0026】
(絶縁層)
本発明における絶縁層は、ポリシロキサンおよび下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物(以下、これらを総称して単に「化合物」と称する場合がある)を含有する。これにより、素子の連続動作安定性と絶縁層の加工安定性(ここでいう加工安定性とは、電極の上での絶縁層の剥がれに起因する欠点が少なく、均一に加工された膜を得られることを言う)を両立する半導体素子を得ることができる。これは上記化合物が、(i)キャリアトラップとなり得る水分を絶縁層内部や絶縁層と半導体層との界面から少なくし、素子の連続動作安定性を向上させる効果を有すること、および(ii)絶縁層の剥がれの要因となる箇所を少なくし、加工安定性を良化させる効果を有すること、の2点を両立できるためである。(i)については化合物のXに由来する疎水性に起因すると考えられる。(ii)についてはXに由来して現像液への耐性が高くなることに加え、Xの分極が電極と電子的に相互作用することにより、絶縁層が剥がれにくくなるためと考えられる。なお、化合物が一般式(1)または一般式(2)で表されるようなSiやP周りの構造を有することでポリシロキサンへの相溶性がよくなり、絶縁層内で均一に存在することも(i)(ii)の効果がより高まる要因として挙げられる。
【0027】
【0028】
【0029】
一般式(1)および(2)中、Xは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基を表し、かつ、フルオロ基を置換基として有する。R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R1を複数有する場合、複数のR1は互いに同じでも異なっていてもよい。R2を複数有する場合、複数のR2は互いに同じでも異なっていてもよい。aは0~2の整数を表す。bは0または1を表す。
【0030】
アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示す。アルキル基は、置換基を有していても有していなくてもよく、置換基がさらに置換基を有していてもよい。これら置換基に関する説明は、特にことわらない限り、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、1以上20以下が好ましく、より好ましくは1以上8以下である。
【0031】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、ブタジエニル基などの、二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示す。アルケニル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、2以上20以下の範囲が好ましい。
【0032】
アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの、三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示す。アルキニル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は、特に限定されないが、2以上20以下の範囲が好ましい。
【0033】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂環式炭化水素基を示す。シクロアルキル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。シクロアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、3以上20以下の範囲が好ましい。
【0034】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は、特に限定されないが、6以上40以下の範囲が好ましい。
【0035】
ヘテロアリール基とは、例えば、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピリジル基、キノリニル基など、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する芳香族基を示す。ヘテロアリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、2以上30以下の範囲が好ましい。
【0036】
フルオロ基を置換基として有するとは、フルオロ基を構造中に有することを示す。例えばフルオロメチル基の場合、メチル基の水素原子の1つがフルオロ基に置換されている。フルオロ基の数は1つでも複数でもよい。フルオロ基を置換基として有する場合の例について、後述の一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の具定例の通りである。
【0037】
一般式(1)および一般式(2)におけるXは、フルオロ基を置換基として有するアルキル基であることが好ましい。これは、Xが柔軟性や運動性の高い構造であることにより一般式(1)または一般式(2)で表される化合物が絶縁層内でより均一に分布し、絶縁層の疎水性の向上効果や、現像液への耐性向上および電極との電子的な相互作用向上による絶縁層の剥がれにくさ向上効果が高められるためと考えられる。さらにXは、末端にトリフルオロメチル基を有するアルキル基であることがより好ましい。これは、トリフルオロメチル基の疎水性により絶縁層の疎水性を向上させる効果がより大きくなることに加え、トリフルオロメチル基の電荷偏りの大きさのためにXと電極との電子的な相互作用が大きくなり絶縁層の剥がれにくさを向上させる効果が高められるためと考えられる。
【0038】
絶縁層内でより均一に化合物を分布させることにより前述の(i)および(ii)の効果を高めるために、化合物は一般式(1)で表される構造であることが好ましい。これは、一般式(1)におけるSi周りの構造がポリシロキサンに対してより良好な相溶性を示すためと考えられる。
【0039】
一般式(1)におけるaは0であることが好ましく、一般式(2)におけるbは0であることが好ましい。これは、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物がポリシロキサンに対してより良好な相溶性を示すことで絶縁層内に化合物がより均一に分布し、前述の(i)および(ii)の効果をより高められるためである。
【0040】
一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の例としては、特に制限されるものではないが、例えば、1,2-ジフルオロエチルトリメトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルトリメトキシシラン、1,2,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、1,2-ジフルオロエチルメチルジメトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルメチルジメトキシシラン、1,2,3-トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルメチルジメトキシシラン、1,2-ジフルオロエチルエチルジメトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルエチルジメトキシシラン、1,2,3-トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルエチルジメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルエチルジメトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルメチルジエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルエチルジエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルエチルジエトキシシラン、1,2-ジフルオロエチルホスホン酸、3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロヘキシルホスホン酸、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルホスホン酸、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロデシルホスホン酸、1-フルオロ-2-メチルプロペニルホスホン酸などが挙げられる。
【0041】
一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の例として、より好ましくは、1,2-ジフルオロエチルトリメトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルトリメトキシシラン、1,2,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、1,2-ジフルオロエチルメチルジメトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルメチルジメトキシシラン、1,2,3-トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルメチルジメトキシシラン、1,2-ジフルオロエチルエチルジメトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルエチルジメトキシシラン、1,2,3-トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルエチルジメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルエチルジメトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルメチルジエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルエチルジエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルエチルジエトキシシラン、1,2-ジフルオロエチルホスホン酸、3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロヘキシルホスホン酸、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルホスホン酸、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロデシルホスホン酸などが挙げられる。
【0042】
一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の例として、さらに好ましくは、2,2,2-トリフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルメチルジメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルエチルジメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルメチルジエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルエチルジエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルエチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0043】
なお上記化合物において、メトキシ基はエトキシ基などの他のアルコキシ基であってもよい。
【0044】
絶縁層における一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の含有量は、0.05重量%以上5重量%以下であることが好ましい。この範囲にあることで、上述の効果(i)および(ii)がさらに有効に奏される。上記含有量の下限は、より好ましくは0.2重量以上である。上記含有量の上限は、より好ましくは3重量%以下である。
【0045】
絶縁層が含有するポリシロキサンとしては、シラン化合物に由来する構造単位を有するものが挙げられる。シラン化合物に由来する構造単位としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、α-ナフチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、またはこれらのメトキシ基が他のアルコキシ基に置換された化合物などが挙げられる。
【0046】
他には、アクリル基および/またはメタクリル基同士の付加反応構造を含む有機基を各シラン化合物に由来する構造単位に有するものが挙げられる。アクリル基および/またはメタクリル基同士の付加反応構造を含む有機基とは、アクリル基および/またはメタクリル基が、それら同士および/または他のラジカル重合性化合物に含まれるアクリル基および/またはメタクリル基と付加反応したものであり、付加反応は、光または熱によるラジカル重合に伴う架橋反応である。そのようなシラン化合物に由来する構造単位としては、例えば、(3-アクリロキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、(3-メタクリロキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、(3-アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、またはこれらのメトキシ基が他のアルコキシ基に置換された化合物由来の構造が付加反応した構造単位が挙げられる。
【0047】
絶縁層が含有するポリシロキサンは、下記一般式(3)で表される構造単位を少なくとも有することがより好ましい。これにより、絶縁層の加工性をより高めることができる。
【0048】
【0049】
一般式(3)において、Aは、カルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基またはそれらの誘導体を少なくとも二つ含む有機基を表す。ただし、誘導体が、カルボキシル基、スルホ基、チオール基およびフェノール性水酸基のうちの二つによる環状縮合構造である場合は、Aは当該環状縮合構造を少なくとも一つ有する有機基を表す。
【0050】
カルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基又はそれらの誘導体を二つ以上含む場合には、同一種類の基を二つ含む場合(例えば、カルボキシル基を二つ含む場合)と、異なる種類の基をそれぞれ一つずつ含む場合(例えば、カルボキシル基とチオール基をそれぞれ一つずつ含む場合)の双方を含む。
【0051】
R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはシリル基を表す。R3を複数有する場合、複数のR3は互いに同じでも異なっていてもよい。R4を複数有する場合、複数のR4は互いに同じでも異なっていてもよい。nは0または1を表す。
【0052】
シリル基とは、Si原子を結合点とする官能基であれば特に制限はされず、水素原子、有機基及びさらにシリル基を有してよく、酸素原子を介してもよい。ポリシロキサンもまた可能である。
【0053】
一般式(3)におけるnは0であることが好ましい。これは一般式(1)または一般式(2)で表される化合物のポリシロキサンへの相溶性がより向上することで絶縁層内に化合物がより均一に分布し、前述の(i)および(ii)の効果が高められるためである。
【0054】
一般式(3)で表される構造単位は、例えば、シラン化合物として下記に示す構造単位が挙げられる。カルボキシル基又はそれらの誘導体を持つ構造単位として、ジメトキシメチルシリルメチルコハク酸、ジメトキシフェニルシリルメチルコハク酸、トリメトキシシリルメチルコハク酸、3-(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸、6-(トリメトキシシリル)ヘキシルコハク酸、これらコハク酸構造を有する化合物の無水物、およびこれらコハク酸がグルタル酸となった化合物由来の構造単位が挙げられる。
【0055】
スルホ基又はそれらの誘導体を持つ構造単位として、5-[ジメトキシ(メチル)シリル]ペンタン-1,2-ジスルホン酸、5-[ジエトキシ(メチル)シリル]ペンタン-1,2-ジスルホン酸、5-[ジメトキシ(フェニル)シリル]ペンタン-1,2-ジスルホン酸、5-(トリメトキシシリル)ペンタン-1,2-ジスルホン酸、及びこれらのメチルエステルやエチルエステルなどの各アルキルエステル由来の構造単位が挙げられる。
【0056】
チオール基またはそれらの誘導体を持つ構造単位として、3-[3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピロキシ]プロパン-1,2-ジチオール、3-[3-[ジメトキシ(フェニル)シリル]プロピロキシ]プロパン-1,2-ジチオール、3-[3-(トリメトキシシリル)プロピロキシ]プロパン-1,2-ジチオール、及びこれらのメチルチオエーテルやエチルチオエーテルなどの各アルキルエーテル由来の構造単位が挙げられる。
【0057】
フェノール性水酸基又はそれらの誘導体を持つ構造単位として、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピル基、3-[ジメトキシ(フェニル)シリル]プロピル基、3-(トリメトキシシリル)プロピル基を有するカテコール、レソルシノール、ヒドロキノン又はフロログルシノール、及びこれらのメチルエーテルやエチルエーテルなどの各アルキルエーテル由来の構造単位が挙げられる。
【0058】
カルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基又はそれらの誘導体を持つ構造単位の内、異なる種類の基をそれぞれ一つずつ含むものとして、1-カルボキシル-2-スルホ-5-(トリメトキシシリル)ペンタン、1-カルボキシル-2-メルカプト-5-(トリメトキシシリル)ペンタン、1-スルホ-2-メルカプト-5-(トリメトキシシリル)ペンタン、1-カルボキシル-2-ヒドロキシ-4-(トリメトキシシリル)ベンゼン、1-スルホ-2-ヒドロキシ-4-(トリメトキシシリル)ベンゼン、1-メルカプト-2-ヒドロキシ-4-(トリメトキシシリル)ベンゼンおよびこれら置換基の位置が異なる位置異性体、加えてこれらのメチル(チオ)エステルやエチル(チオ)エステルなどの各アルキル(チオ)エステル、メチル(チオ)エーテル、エチル(チオ)エーテルなどの各アルキル(チオ)エーテル、それらの環状(チオ)エステル及び環状(チオ)エーテル由来の構造単位が挙げられる。
【0059】
上記シラン化合物において、メトキシ基はエトキシ基などの他のアルコキシ基であってもよい。
【0060】
上記ポリシロキサンは、例えば次の方法で得ることができる。溶媒中に全シラン化合物を溶解し、ここに酸または塩基触媒および水を1~180分かけて添加した後、15~80℃で1~180分加水分解反応させる。加水分解反応時の温度は、15~55℃がより好ましい。この反応液を、50℃以上、溶媒の沸点以下で1~100時間加熱し、縮合反応を行うことにより、上記ポリシロキサンを得ることができる。加水分解における各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状などを考慮して、例えば、触媒濃度、反応温度、反応時間などを適宜設定することができる。
【0061】
絶縁層は、さらに無機酸化物粒子を含有することが好ましい。これは、絶縁層内に無機酸化物粒子が存在することで、キャリアトラップとなり得る水分が絶縁層内部からより少なくなることによる素子の連続動作安定性向上効果、および、ポリシロキサンおよび一般式(1)または一般式(2)で表される化合物との相性がよいことによる加工安定性の良化効果、の2点をより高めることができるためである。
【0062】
無機酸化物粒子としては、例えば、シリカ粒子、酸化マグネシウム粒子、酸化カルシウム粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化ハフニウム、酸化スズ粒子、酸化イットリウム粒子、酸化ニオブ粒子、酸化タンタル粒子、酸化スズ-酸化チタン複合粒子、酸化ケイ素-酸化チタン複合粒子、酸化スズ-酸化ジルコニウム複合粒子、酸化ケイ素-酸化ジルコニウム複合粒子、酸化アルミニウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸バリウム-チタン酸ストロンチウム複合粒子等が挙げられる。
【0063】
絶縁層は、さらに感光性有機成分として、UV光の照射によって結合開裂及び/又は反応してラジカルを発生する化合物(光重合開始剤)、光により酸を発生する化合物(光酸発生剤)、光により塩基を発生する化合物(光塩基発生剤)、増感剤、連鎖移動剤またはその付加反応体、重合禁止剤を含むことができる。
【0064】
絶縁層の膜厚は0.05μm~5μmが好ましく、0.1μm~1μmがより好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になる。膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法などにより測定できる。
【0065】
(基材)
基材は、少なくとも電極系が配置される面が絶縁性を備える基材であれば、いかなる材質のものでもよい。基材としては、例えば、シリコンウエハ、ガラス、サファイア、アルミナ焼結体等の無機材料からなる基材、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン等の有機材料からなる基材が好ましい。
【0066】
また、基材としては、例えば、シリコンウエハ上にPVP膜を形成したものや、ポリエチレンテレフタレート上にポリシロキサン膜を形成したものなど、複数の材料が積層されたものであってもよい。
【0067】
(電極)
第1電極、第2電極および第3電極に用いられる材料は、一般的に電極として使用されうる導電材料であれば、いかなるものでもよい。導電材料としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物;白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、アモルファスシリコン、ポリシリコンなどの金属やこれらの合金;ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質;ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン;ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸との錯体など;ヨウ素などのドーピングにより導電率を向上させた導電性ポリマーなど;炭素材料など;および有機成分と導電体とを含有する材料など、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
中でも、電極の柔軟性が増し、屈曲時にも基材および絶縁層との密着性が良く、配線および半導体層との電気的接続が良好となる点から、電極は、有機成分と導電体を含有することが好ましい。
【0069】
有機成分としては、特に制限はないが、モノマー、オリゴマー、ポリマー、光重合開始剤、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料などが挙げられる。電極の折り曲げ耐性向上の観点からは、有機成分としては、オリゴマーもしくはポリマーが好ましい。
【0070】
オリゴマーもしくはポリマーとしては、特に限定されず、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド前駆体、ポリイミドなどを用いることができる。これらの中でも、電極を屈曲した時の耐クラック性の観点から、アクリル樹脂が好ましい。これは、アクリル樹脂のガラス転移温度が100℃以下であり、導電膜の熱硬化時に軟化し、導電体粒子間の結着が高まるためと推定される。
【0071】
アクリル樹脂とは、繰返し単位に少なくともアクリル系モノマーに由来する構造を含む樹脂である。アクリル系モノマーの具体例としては、炭素-炭素二重結合を有するすべての化合物が挙げられ、これらのアクリル系モノマーは、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0072】
導電体としては、一般的に電極として使用されうる導電材料であれば、いかなるものでもよいが、導電材料で全部または一部が構成され、粒子自体は導電性を有している導電性粒子であることが好ましい。導電体として導電性粒子を用いることにより、それを含む電極の表面に凹凸が形成される。その凹凸に絶縁層が入り込むことで、アンカー効果が生じ、電極と絶縁層との密着性がより向上する。電極と絶縁層との密着性が向上することで、電極の折り曲げ耐性が向上する効果や、半導体素子に電圧を繰り返し印加した時の電気特性の変動が抑制される効果がある。これらの効果により、半導体素子の信頼性がより改善する。
【0073】
導電性粒子に適した導電材料としては、金、銀、銅、ニッケル、錫、ビスマス、鉛、亜鉛、パラジウム、白金、アルミニウム、タングステン、モリブデンまたは炭素などが挙げられる。より好ましい導電性粒子は、金、銀、銅、ニッケル、錫、ビスマス、鉛、亜鉛、パラジウム、白金、アルミニウムおよび炭素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含有する導電性粒子である。これらの導電性粒子は、単独で用いられてもよいし、合金として用いられてもよいし、混合粒子として用いられてもよい。
【0074】
これらの中でも、導電性の観点から、金、銀、銅または白金の粒子が好ましい。中でも、コストおよび安定性の観点から、銀であることがより好ましい。
【0075】
また、第1電極、第2電極および第3電極のそれぞれの幅および厚み、ならびに、第1電極と第2電極との間隔は、任意の値に設計することが可能である。例えば、電極幅は10μm~10mm、電極の厚みは0.01μm~100μm、第1電極と第2電極との間隔は1μm~1mmが、それぞれ好ましいが、これらに限らない。
【0076】
これらの電極を作製するための材料は、単独で用いられてもよいが、複数の材料を積層して電極を形成し、または、複数の材料を混合して用いて電極を形成してもよい。
【0077】
また、本発明の実施の形態3に係る半導体素子おいて、第4電極29に用いられる材料は、特に制限はないが、第1電極、第2電極および第3電極に用いられる材料と同様、一般的に使用される導電材料を用いることができる。第3電極22と第1電極25とを電気的に接続する方法は、電気的に導通を取ることができれば、いかなる方法でもよい。また、接続部の幅や厚みは、任意である。
【0078】
(半導体層)
半導体層は、酸化物半導体などの無機半導体材料、有機半導体材料、ナノカーボン等を用いることができる。中でも、キャリア移動度に優れ、低コストで簡便な塗布プロセスを適用可能なナノカーボンを半導体層が含有することが好ましい。
【0079】
ナノカーボンとは、ナノメートルサイズの大きさの構造を有する、炭素からなる物質であり、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、フラーレン、カーボンナノホーン、グラフェンナノリボン、内包CNTなどが挙げられる。半導体特性の観点から、ナノカーボンとしては、CNT、グラフェンが好ましく、CNTがより好ましい。さらにCNTは、その表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNT複合体として用いることが好ましい。半導体層は電気特性を阻害しない範囲であれば、さらに有機半導体や絶縁材料を含んでもよい。
【0080】
半導体層の膜厚は、1nm以上100nm以下が好ましい。この範囲内にあることで、均一な薄膜形成が容易になる。半導体層の膜厚は、より好ましくは1nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは1nm以上20nm以下である。膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法、電子顕微鏡などにより測定できる。
【0081】
CNTとしては、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTのいずれを用いてもよい。高い半導体特性を得るためには、単層CNTを用いることが好ましい。CNTは、アーク放電法、気相成長法(CVD)、レーザー・アブレーション法等により得ることができる。
【0082】
CNTは、CNTの表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNT(以下、「CNT複合体」と称する)であることが好ましい。ここで、共役系重合体とは、繰り返し単位が共役構造をとり、重合度が2以上である化合物を指す。
【0083】
CNTの表面の少なくとも一部に共役系重合体を付着させることにより、CNTの保有する高い電気的特性を損なうことなく、CNTを溶液中に均一に分散することが可能になる。CNTが均一に分散した溶液を用いれば、塗布法により、均一に分散したCNTを含んだ膜を形成することが可能になる。これにより、高い半導体特性を実現できる。CNTの表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着した状態とは、CNTの表面の一部、あるいは全部を、共役系重合体が被覆した状態を意味する。
【0084】
共役系重合体としては、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ-p-フェニレン系重合体、ポリ-p-フェニレンビニレン系重合体などが挙げられるが、特に限定されない。上記重合体としては、単一のモノマーユニットが並んだものが好ましく用いられるが、異なるモノマーユニットをブロック共重合したもの、ランダム共重合したもの、およびグラフト重合したものも好ましく用いられる。中でも、CNTへの付着が容易であり、CNT複合体を形成しやすい観点から、ポリチオフェン系重合体が好ましく、さらにポリチオフェン系重合体の中でも、環中に含窒素二重結合を有する縮合へテロアリールユニットと、チオフェンユニットとを、繰り返し単位中に含むものがより好ましい。
【0085】
上記CNTおよびCNT複合体の具体例としては、国際公開第2009/139339号、国際公開2020/066741号、国際公開2020/261891に記載のものなどが挙げられる。
【0086】
(第2絶縁層)
半導体素子は第2絶縁層を有していてもよい。第2絶縁層は、半導体層に対して絶縁層が形成された側の反対側に形成される。半導体層に対して絶縁層が形成された側の反対側とは、例えば、半導体層の下側に絶縁層を有する場合は、半導体層の上側を指す。
【0087】
第2絶縁層を形成することにより、p型半導体素子およびn型半導体素子を物理的なダメージや湿度などから保護することや、n型半導体素子の特性を向上できる。p型半導体素子としては、例えば、特開2013-62391号に記載のp型半導体素子などが挙げられる。n型半導体素子としては、例えば、国際公開第2018/180146号、国際公開2019/097978号、国際公開第2020/195707号や国際公開第2020/195708号に記載のn型半導体素子などが挙げられる。
【0088】
第2絶縁層の膜厚は、500nm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、3.0μm以上であることがさらに好ましく、10μm以上であることが特に好ましい。また、膜厚の上限としては、特に限定されるものではないが、500μm以下であることが好ましい。第2絶縁層の膜厚は、第2絶縁層の断面を走査型電子顕微鏡により測定し、得られた像のうち、半導体層上に位置する第2絶縁層部分の中から無作為に選択した10箇所の膜厚を算出し、その算術平均の値とする。
【0089】
(保護層)
半導体素子は、半導体層上や第2絶縁層上などに、さらに保護層を有していてもよい。保護層の役割としては、擦れなどの物理ダメージや大気中の水分や酸素から半導体素子を保護することなどが挙げられる。
【0090】
保護層の材料としては、例えば、シリコンウエハ、ガラス、サファイア、アルミナ焼結体等の無機材料、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン、ポリアクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー等の有機材料などが挙げられる。また、例えば、シリコンウエハ上にポリビニルフェノール膜を形成したものや、ポリエチレンテレフタレート上に酸化アルミニウム膜を形成したものなど、複数の材料が積層されたものであってもよい。
【0091】
本発明の実施の形態に係る半導体素子では、電界効果型トランジスタとして機能させた場合、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流(ソース・ドレイン間電流)を、ゲート電圧を変化させることによって制御することができる。半導体素子を連続的に動作させた際のオン電流やオフ電流の変化が小さいものが、素子の連続動作安定性に優れる半導体素子である。
【0092】
(半導体素子の製造方法)
本発明の実施の形態に係る半導体素子の製造には、種々の方法を用いることができ、その製造方法に特に制限はない。例えば、国際公開第2018/097042号や国際公開第2018/180146号に記載の半導体素子の製造方法などが挙げられる。
【0093】
絶縁層の形成方法としては、少なくとも、ポリシロキサンと一般式(1)または一般式(2)で表される化合物とを含む溶液を、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコート法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。
【0094】
塗布工程のために、絶縁層の構成材料を含む溶液は溶媒を含むことができる。溶媒は特に限定されないが、具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等のアセテート類、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これら溶媒は単独あるいは2種以上含まれても構わない。
【0095】
絶縁層を得るための塗布溶液の乾燥温度は、特に限定されるものではないが、50~150℃が好ましい。さらに追加で熱処理を行う場合、その温度は、特に限定されるものではないが、100~300℃の範囲にあることが好ましい。プラスチック基板上に形成する場合、乾燥及び追加熱処理の温度は、200℃以下であることがさらに好ましい。
【0096】
上記のようにして絶縁層を得る過程で、絶縁層にパターン形成することが好ましい。本発明の実施の形態に係る半導体素子を組み合わせた回路を形成する際は、第1電極または第2電極と第3電極との間で導通を取るために、絶縁層に開口部となるパターン(コンタクトホール)を形成する必要がある。
【0097】
感光性有機成分に光ラジカル発生剤とラジカル重合性化合物を含有する組成物を用いた絶縁層のネガ型パターン形成について説明する。絶縁層の上方から所望のパターンを有するネガ型マスクを通して化学線を照射(露光)する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を利用することが好ましい。
【0098】
次に、露光した絶縁層を現像する。ネガ型パターン形成では、露光部が不溶部、未露光部が可溶部としてパターン形成される。現像液としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、などアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましく、1種あるいは2種以上含有してもよい。また、これらのアルカリ水溶液に、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、などの極性溶媒、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを混合して用いることも可能である。
【0099】
現像後は通常、水でリンス処理するが、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理してもよい。
【0100】
感光性有機成分に光酸発生剤としてジアゾケトン化合物を含有する組成物を用いた絶縁層のポジ型パターン形成では、絶縁層の上方から所望のパターンを有するポジ型マスクを通して化学線を照射する。好ましい化学線種と、絶縁層の現像とリンス処理については、感光性有機成分に光ラジカル発生剤とラジカル重合性化合物を用いる場合と同様である。ポジ型パターン形成では、露光部が可溶部、未露光部が不溶部としてパターン形成される。
【0101】
また絶縁層上にレジストを塗布し、レジスト膜を所望のパターンに露光・現像後、フッ酸等のエッチング液で処理することにより絶縁層をパターニングすることも可能である。生産性の観点から、感光性有機成分を有する絶縁層材料を使用するパターニングが好ましい。
【0102】
(半導体素子の適用可能性)
本発明の実施の形態に係る半導体素子は、各種電子機器の回路やIC、RFIDタグなどの無線通信装置、無線給電装置、ディスプレイ用TFTアレイ、センサ、開封検知システム、などに適用可能である。
【0103】
(回路)
本発明の実施の形態に係る半導体素子は各種回路へ適用することができる。例えば、整流回路などのアナログ回路や、NOT回路、NAND回路、NOR回路、AND回路、OR回路などの論理回路、それらを用いた組み合わせ回路や順序回路、メモリやマイクロプロセッサ、ロジックICなどの集積回路などが挙げられる。また、このような回路は各電子デバイスに用いることができる。本発明の導体素子は素子の連続動作安定性と絶縁層の加工安定性を両立できるため、上述の回路に好ましく用いることができる。また、絶縁層にポリシロキサンを含有することで曲げや伸縮に耐性があるため、フレキシブル、ベンダブルな電子デバイスに好ましく用いることができる。
【0104】
(無線通信装置)
本発明の実施の形態に係る回路を有する、本発明の実施の形態に係る無線通信装置について説明する。この無線通信装置は、例えば商品タグ、万引き防止タグ、各種チケットやスマートカードのような、無線電波を用いて情報の通信を行う装置である。
【0105】
無線通信装置の構成としては、例えば、特開2022―108261号に記載の無線通信装置が挙げられる。各種回路が含まれており、それらの回路またはその一部に本発明の回路を好適に用いることができる。
【0106】
(商品タグ)
上記無線通信装置の用途は特に制限はないが、例えば商品タグへ適用することができる。商品タグとしては公知のものを用いることができ、例えば基体と、この基体によって被覆された上記無線通信装置とを有しているものが挙げられる。識別情報返信機能を備えた商品タグに適用すれば、商品の精算レジにおいて、非接触で多数の商品を同時に識別することが可能となる。それゆえ、バーコードでの識別と比較して、決済処理の容易化や迅速化を図ることができる。
【0107】
また、例えば、商品の会計の際に、リーダ/ライタが、商品タグから読み取った商品情報をPOS(Point of sale system、販売時点情報管理)端末に送信することが可能である。この機能により、POS端末において、その商品情報によって特定される商品の販売登録をすることもできるため、在庫管理の容易化や迅速化を図ることができる。
【0108】
(薄膜トランジスタアレイ)
本発明の実施の形態に係る半導体素子を用いて、薄膜トランジスタ(以下、TFT)アレイを得ることができる。
図4は、TFTアレイの一例を示す模式図である。
図4に示すように、TFTアレイ200は、二本のゲート線250、260と、二本のソース線270、280と、四つのTFT210、220、230、240とを含む。ゲート線250はTFT210、230のゲート電極と電気的に結合し、ゲート線260はTFT220、240のゲート電極と電気的に結合している。ソース線270はTFT210、220のソース電極と電気的に結合し、ソース線280はTFT230、240のソース電極と電気的に結合している。なお、
図4には説明の簡略化のために四つのTFTを含むTFTアレイ200が例示されているが、ゲート線、ソース線およびTFTの数は任意に変更してもよい。
【0109】
ゲート線、ソース線、TFTを電気的に接続する材料は、特に制限はないが、例えば、一般的に使用される導電材料を用いることができる。上記接続の方法も、電気的に導通を取ることができれば、いかなる方法でもよい。また、接続部の幅や厚みは、任意である。
【0110】
本発明の実施の形態にかかるTFTアレイは、例えば、アクティブマトリクス駆動の液晶ディスプレイや電子ペーパーなどに用いることができる。
【0111】
(センサ)
本発明の実施の形態に係る半導体素子は、各種センサに用いてもよい。例えば、温度、水分、ガス、光、電磁波、放射線、圧力などを検出するセンサとしての利用が可能である。
【実施例0112】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定して解釈されるものではない。なお、実施例中における各評価方法を以下の(1)および(2)で説明する。
【0113】
(1)絶縁層の加工安定性
後述の方法により作製した半導体素子の絶縁層の加工安定性評価エリアにおいて、銅電極上における絶縁層の剥がれの個数をカウントし、その個数を下記のように判定し、A、BおよびCを良好な加工安定性とした。
A++:0個以上5個以下
A+:6個以上10個以下
A:11個以上20個以下
B:21個以上30個以下
C:31個以上50個以下
D:51個以上100個以下
E:101個以上。
【0114】
(2)半導体素子の連続動作安定性
後述の方法により作製した半導体素子サンプルについて、半導体デバイス・パラメータ・アナライザ(Keysight Technologies社、B1500A)を用い、大気下にて評価を行った。まず、ソース・ドレイン間電圧(Vsd)を-5Vとし、ゲート電圧(Vg)を+2Vから-7Vへと0.1V間隔で掃引した。なお、電圧はソース電極基準であり、以下も同様である。これを初期特性とする。次に、Vsdを0Vとし、Vg=0VおよびVg=-5Vを交互に1kHzで印加し、これを1分間続けた。最後に、Vsdを-5Vとし、Vgを+2Vから-7Vへと0.1V間隔で掃引した。これを連続動作後特性とする。連続動作後特性のオン電流またはオフ電流を、初期特性のオン電流またはオフ電流で除した値に100を乗じた値を特性変動割合(%)とする。なお、オン電流とはVg=-5Vでのソース・ドレイン電流(Isd)とし、オフ電流とはVg=0VでのIsdとする。オン電流またはオフ電流の特性変動割合のうち、大きい方の値について下記のように判定し、A、BおよびCを良好な素子の連続動作安定性であるとした。
A+:150%以下
A:150%より大きく、200%以下
B:200%より大きく、250%以下
C:250%より大きく、300%以下
D:300%より大きく、600%以下
E:600%より大きい。
【0115】
(組成物の作製例)
(1)絶縁層材料の作製例1:絶縁層材料溶液A
無機粒子が結合したポリシロキサンを、以下に示す手順で合成した。三口フラスコにメチルトリメトキシシラン(MeSi)を6.61g、p-スチリルトリメトキシシラン(StSi)を12.44g、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(AcrSi)を8.12g、20.6質量%の酸化チタン-酸化ケイ素複合粒子メタノール分散液である“オプトレイク(登録商標)”TR-550(日揮触媒化成(株)製)を232.09g、ジブチルヒドロキシトルエンを0.10g、ジアセトンアルコール(DAA)を132.93g入れ、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した。その後、水7.48gにリン酸0.27gを溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。50分後、オイルバスの温度を70℃に設定し、60分間撹拌した。次いで、オイルバスの温度を110℃に設定し、溶液の液温が100℃に到達した後、そこから3時間撹拌した。得られた溶液を氷浴にて冷却した後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を、それぞれ樹脂溶液に対して2重量%加えて12時間撹拌した。撹拌後、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂をろ過して除去し、無機粒子が結合したポリシロキサン溶液Aを得た。なお、撹拌中、窒素を0.1L/分で流しており、反応副生成物であるメタノール、水を留出させた。得られたポリシロキサン溶液Aの固形分濃度は33.7質量%であった。
【0116】
次に、OXE-04(商品名「イルガキュア」、BASF(株))を0.036g、4-tert―ブチルカテコールを0.011g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を10g、DAAを0.94g、ポリシロキサン溶液Aを7.7g、1-フルオロ―2-メチルプロぺニルホスホン酸を0.17g混合し、室温で2時間撹拌し、0.22μm孔径のフィルターでろ過することで、絶縁層材料溶液Aを得た。
【0117】
(2)絶縁層材料の作製例2:絶縁層材料溶液B
1-フルオロ―2-メチルプロぺニルホスホン酸の代わりに1,1,2,2-テトラフルオロエチルトリメトキシシランを用いたこと以外は絶縁層材料の作製例1と同様にして、絶縁層材料溶液Bを得た。
【0118】
(3)絶縁層材料の作製例3:絶縁層材料溶液C
三口フラスコにMeSiを2.91g、StSiを10.63g、AcrSiを6.94g、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(SucSi)を5.28g、TR-550を235.57g、ジブチルヒドロキシトルエンを0.09g、DAAを135.58g入れ、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した。その後、水6.76gにリン酸0.26gを溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。以降は絶縁層材料の作製例1と同様にして、ポリシロキサン溶液Bを得た。得られたポリシロキサン溶液Bの固形分濃度は33.3質量%であった。
【0119】
次に、OXE-04を0.036g、4-tert-ブチルカテコールを0.011g、PGMEAを10g、DAAを0.85g、ポリシロキサン溶液Bを7.8g、1,1,2,2-テトラフルオロエチルトリメトキシシランを0.17g混合した。以降は絶縁層材料の作製例1と同様にして、絶縁層材料溶液Cを得た。
【0120】
(4)絶縁層材料の作製例4:絶縁層材料溶液D
1,1,2,2-テトラフルオロエチルトリメトキシシランの代わりに3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(3,3,3-トリフルオロプロピルSi)を用いたこと以外は絶縁層材料の作製例3と同様にして、絶縁層材料溶液Dを得た。
【0121】
(5)絶縁層材料の作製例5:絶縁層材料溶液E
OXE-04を0.036g、4-tert-ブチルカテコールを0.011g、PGMEAを10g、DAAを0.74g、ポリシロキサン溶液Bを7.9g、3,3,3-トリフルオロプロピルSiを0.11g混合した以外は絶縁層材料の作製例4と同様にして、絶縁層材料溶液Eを得た。
【0122】
(6)絶縁層材料の作製例6:絶縁層材料溶液F
OXE-04を0.036g、4-tert-ブチルカテコールを0.011g、PGMEAを10g、DAAを0.62g、ポリシロキサン溶液Bを8.1g、3,3,3-トリフルオロプロピルSiを0.056g混合した以外は絶縁層材料の作製例4と同様にして、絶縁層材料溶液Fを得た。
【0123】
(7)絶縁層材料の作製例7:絶縁層材料溶液G
OXE-04を0.036g、4-tert-ブチルカテコールを0.011g、PGMEAを10g、DAAを0.53g、ポリシロキサン溶液Bを8.2g、3,3,3-トリフルオロプロピルSiを0.0084g混合した以外は絶縁層材料の作製例4と同様にして、絶縁層材料溶液Gを得た。
【0124】
(8)絶縁層材料の作製例8:絶縁層材料溶液H
OXE-04を0.036g、4-tert-ブチルカテコールを0.011g、PGMEAを10g、DAAを0.52g、ポリシロキサン溶液Bを8.2g、3,3,3-トリフルオロプロピルSiを0.0028g混合した以外は絶縁層材料の作製例4と同様にして、絶縁層材料溶液Hを得た。
【0125】
(9)絶縁層材料の作製例9:絶縁層材料溶液I
OXE-04を0.036g、4-tert-ブチルカテコールを0.011g、PGMEAを10g、DAAを0.51g、ポリシロキサン溶液Bを8.3g混合した以外は絶縁層材料の作製例4と同様にして、絶縁層材料溶液Iを得た。
【0126】
(10)絶縁層材料の作製例10:絶縁層材料溶液J
三口フラスコに3,3,3-トリフルオロプロピルSiを4.20g、StSiを9.60g、AcrSiを6.27g、SucSiを4.77g、TR-550を234.59g、ジブチルヒドロキシトルエンを0.08g、DAAを134.36g入れ、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて60分間撹拌した。その後、水6.11gにリン酸0.25gを溶かしたリン酸水溶液を10分間かけて添加した。以降は絶縁層材料の作製例1と同様にして、ポリシロキサン溶液Cを得た。得られたポリシロキサン溶液Cの固形分濃度は33.7質量%であった。
【0127】
次に、OXE-04を0.036g、4-tert-ブチルカテコールを0.011g、PGMEAを10g、DAAを0.61g、ポリシロキサン溶液Cを8.2g混合した。以降は絶縁層材料の作製例1と同様にして、絶縁層材料溶液Jを得た。
【0128】
(11)絶縁層材料の作製例11:絶縁層材料溶液K
3,3,3-トリフルオロプロピルSiの代わりにプロピルトリメトキシシランを用いたこと以外は絶縁層材料の作製例6と同様にして、絶縁層材料溶液Kを得た。
【0129】
(12)絶縁層材料の作製例12:絶縁層材料溶液L
3,3,3-トリフルオロプロピルSiの代わりにフェニルトリメトキシシランを用いたこと以外は絶縁層材料の作製例6と同様にして、絶縁層材料溶液Lを得た。
【0130】
(13)絶縁層材料の作製例13:絶縁層材料溶液M
3,3,3-トリフルオロプロピルSiの代わりに3-アミノプロピルトリメトキシシランを用いたこと以外は絶縁層材料の作製例6と同様にして、絶縁層材料溶液Mを得た。
【0131】
(14)絶縁層材料の作製例14:絶縁層材料溶液N
国際公開第2018/097042号の実施例2に記載の絶縁層材料溶液Bと同様にして絶縁層材料溶液を作製し、絶縁層材料溶液Nを得た。
【0132】
(15)絶縁層材料の作製例15:絶縁層材料溶液O
3,3,3-トリフルオロプロピルSiの代わりにジメトキシ(メチル)(3,3,3-トリフルオロプロピル)シランを用いたこと以外は絶縁層材料の作製例5と同様にして、絶縁層材料溶液Oを得た。
【0133】
(16)絶縁層材料の作製例16:絶縁層材料溶液P
3,3,3-トリフルオロプロピルSiの代わりに3,3,3-トリフルオロプロピルトリエトキシシランを用いたこと以外は絶縁層材料の作製例6と同様にして、絶縁層材料溶液Pを得た。
【0134】
(17)半導体層材料の作製例1;半導体層溶液A
国際公開2020/066741号のCNT分散液の作製例1と同様にしてCNT分散液Aを作製し、半導体層溶液Aとした。
【0135】
(18)電極材料の作製例;導電性ペーストA
国際公開第2019/065561号の実施例13と同様にして、導電性ペーストAを得た。
【0136】
実施例1
図1に示す半導体素子を以下のように作製した。膜厚50μmのPETフィルム(商品名「U48」、東レ(株))からなる基材1上に、抵抗加熱法により、銅を膜厚100nmになるように真空蒸着し、その上にフォトレジスト(ローム・アンド・ハース(株)、LC140-10cP)をスピンコート塗布(1000rpm×20秒)し、100℃で10分加熱乾燥した。作製したフォトレジスト膜を露光装置((株)オーク製作所、EXF-2828-A-01)を用いて、マスクを介してパターン露光した(露光量40mJ/cm
2)。このマスクパターンについて、半導体素子部以外に、銅電極のライン(線幅20μm、長さ1cm)が200μm間隔で100本形成されるようなパターンを設けており、絶縁層の加工安定性評価エリアも合わせて作製できるようにした。その後、自動現像装置(滝沢産業(株)、AD-2000)を用いて2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(三菱ガス化学(株)、ELM-D)で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間洗浄した。その後、エッチング液(関東化学(株)、Cu-03)で2分間処理してエッチングした後、水で30秒間洗浄した。レジスト剥離液(関東化学(株)、JELK-101)に2分間浸漬してレジストを剥離し、水で30秒間洗浄後、100℃で3分間加熱乾燥することでゲート電極2を形成した。
【0137】
次に絶縁層材料溶液Aをスピンコート塗布(300rpm×10秒、ついで1000rpm×2秒)し、100℃で3分間加熱処理した後、露光装置を用いて露光した(露光量120mJ/cm2)。次に自動現像装置を用いて2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で40秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間洗浄した。乾燥オーブンを用いて150℃30分加熱処理することによって、膜厚400nmのゲート絶縁層3を形成した。
【0138】
次に、インクジェット装置(クラスターテクノロジー(株))を用いて、半導体層溶液Aをゲート絶縁層3上にインクジェット塗布した後、窒素雰囲気下150℃で30分間熱処理することによって半導体層4を形成した。
【0139】
次に、導電性ペーストAをスクリーン印刷し、乾燥オーブンを用いて100℃で10分間加熱処理した後、露光装置を用いて、マスクを介してパターン露光した(露光量70mJ/cm2)。次に自動現像装置を用いて0.5重量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間シャワー現像し、水で洗浄後、乾燥オーブンで140℃、30分間キュアを行い、ソース電極5、ドレイン電極6を形成した。チャネル幅は200μm、チャネル長は20μmとした。このようにして得られた半導体素子について、上記評価方法(1)および(2)に従い、評価を行った。その結果を表1にまとめた。
【0140】
実施例2~10、比較例1~6
絶縁層材料溶液Aの代わりに各絶縁層材料溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、半導体装置を作製し、評価した。
【0141】