(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108132
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】樹脂ホース及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 11/10 20060101AFI20240802BHJP
B29C 69/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F16L11/10 B
B29C69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004543
(22)【出願日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2023012285
(32)【優先日】2023-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023118081
(32)【優先日】2023-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 立道
(72)【発明者】
【氏名】青木 達郎
【テーマコード(参考)】
3H111
4F213
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CA03
3H111CA43
3H111CB04
3H111CB14
3H111CB22
3H111CC13
3H111DA26
3H111EA04
3H111EA17
4F213AG07
4F213WA06
(57)【要約】
【課題】ガスバリア性を有し且つ生産性に優れた樹脂ホース及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、樹脂ホースであって、前記樹脂ホースは、帯状樹脂を部分的に重ねながら螺旋形状に巻いて管状にしたものであり、前記帯状樹脂は、表皮樹脂と、帯状のガスバリア層と、を備え、前記表皮樹脂は、前記ガスバリア層のおもて面、裏面及び側端面を被い、前記ガスバリア層は、螺旋軸方向に沿って、前記表皮樹脂を挟みつつ重ね巻きにされた、樹脂ホースが提供される。前記帯状樹脂は、芯材を備えてもよい。前記表皮樹脂は、前記ガスバリア層及び前記芯材を被ってもよい。前記芯材は、前記帯状樹脂の螺旋巻形状に従って螺旋形状にのび、且つ前記表皮樹脂よりも硬質の材料で構成されてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ホースであって、
前記樹脂ホースは、帯状樹脂を部分的に重ねながら螺旋形状に巻いて管状にしたものであり、
前記帯状樹脂は、表皮樹脂と、帯状のガスバリア層と、を備え、
前記表皮樹脂は、前記ガスバリア層のおもて面、裏面及び側端面を被う、樹脂ホース。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂ホースであって、
前記ガスバリア層は、螺旋軸方向に沿って、前記表皮樹脂を挟みつつ重ね巻きにされた、樹脂ホース。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の樹脂ホースであって、
前記帯状樹脂は、芯材を備え、
前記表皮樹脂は、前記ガスバリア層及び前記芯材を被い、
前記芯材は、前記帯状樹脂の螺旋巻形状に従って螺旋形状にのび、且つ前記表皮樹脂よりも硬質の材料で構成される、樹脂ホース。
【請求項4】
押出工程と螺旋巻工程とを備える樹脂ホースの製造方法であって、
前記押出工程は、帯状樹脂を押し出し、
前記帯状樹脂は、表皮樹脂と、帯状のガスバリア層と、を含み、
前記表皮樹脂は、前記ガスバリア層のおもて面、裏面及び側端面を被い、
前記螺旋巻工程は、前記帯状樹脂を部分的に重ねながら螺旋形状に巻いて管状とすることで、前記樹脂ホースを製造する、製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法であって、
前記帯状樹脂は、芯材を備え、
前記芯材の材料は、前記表皮樹脂よりも硬質であり、
前記螺旋巻工程は、前記帯状樹脂を前記芯材と共に前記螺旋形状に巻く、製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法であって、
前記芯材の材料は、前記表皮樹脂よりも硬質の樹脂であり、
前記押出工程は、前記表皮樹脂で前記芯材及び前記ガスバリア層が覆われるように前記帯状樹脂を押し出すことで前記芯材を設ける、製造方法。
【請求項7】
請求項4又は請求項5に記載の製造方法であって、
前記螺旋巻工程は、前記ガスバリア層が螺旋軸方向に沿って前記表皮樹脂を挟みつつ重ね巻きにされるように、前記帯状樹脂を前記螺旋形状に巻く、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ホース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部にガスバリア性樹脂層が設けられた可撓性ホースが開示されている。特許文献1では、まず樹脂を巻き付けて内側樹脂層が形成される。続いて、内側樹脂層の外周面にガスバリア性樹脂を巻き付けて、中間樹脂層が形成される。その後、中間樹脂層の外周面に更に他の樹脂を巻き付けて、外側樹脂層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、樹脂巻付工程を三回も繰り返さなくてはならず、生産性に乏しい問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性を有し且つ生産性に優れた樹脂ホース、及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]樹脂ホースであって、前記樹脂ホースは、帯状樹脂を部分的に重ねながら螺旋形状に巻いて管状にしたものであり、前記帯状樹脂は、表皮樹脂と、帯状のガスバリア層と、を備え、前記表皮樹脂は、前記ガスバリア層のおもて面、裏面及び側端面を被う、樹脂ホース。
[2][1]に記載の樹脂ホースであって、前記ガスバリア層は、螺旋軸方向に沿って、前記表皮樹脂を挟みつつ重ね巻きにされた、樹脂ホース。
[3][1]又は[2]に記載の樹脂ホースであって、前記帯状樹脂は、芯材を備え、前記表皮樹脂は、前記ガスバリア層及び前記芯材を被い、前記芯材は、前記帯状樹脂の螺旋巻形状に従って螺旋形状にのび、且つ前記表皮樹脂よりも硬質の材料で構成される、樹脂ホース。
[4]押出工程と螺旋巻工程とを備える樹脂ホースの製造方法であって、前記押出工程は、帯状樹脂を押し出し、前記帯状樹脂は、表皮樹脂と、帯状のガスバリア層と、を含み、前記表皮樹脂は、前記ガスバリア層のおもて面、裏面及び側端面を被い、前記螺旋巻工程は、前記帯状樹脂を部分的に重ねながら螺旋形状に巻いて管状とすることで、前記樹脂ホースを製造する、製造方法。
[5][4]に記載の製造方法であって、前記帯状樹脂は、芯材を備え、前記芯材の材料は、前記表皮樹脂よりも硬質であり、前記螺旋巻工程は、前記帯状樹脂を前記芯材と共に前記螺旋形状に巻く、製造方法。
[6][5]に記載の製造方法であって、前記芯材の材料は、前記表皮樹脂よりも硬質の樹脂であり、前記押出工程は、前記表皮樹脂で前記芯材及び前記ガスバリア層が覆われるように前記帯状樹脂を押し出すことで前記芯材を設ける、製造方法。
[7][4]又は[5]に記載の製造方法であって、前記螺旋巻工程は、前記ガスバリア層が螺旋軸方向に沿って前記表皮樹脂を挟みつつ重ね巻きにされるように、前記帯状樹脂を前記螺旋形状に巻く、製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、帯状のガスバリア層を内蔵する帯状樹脂を螺旋巻にした構成の、樹脂ホースが提供される。これによりガスバリア性と生産性とを両立できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る樹脂ホース10の製造方法の一例を説明するための斜視図である。
【
図2】帯状樹脂1を斜め方向に引っ張って巻付装置30に巻き付けた変形例の平面図である。
【
図3】
図3Aは、金型20における金型吐出口21の一例である。
図3Bは、帯状樹脂1の断面図であり、
図1の金型吐出口21からの押出直後の成形品寸法を説明するための図である。
図3Cは、帯状樹脂1のオーバーラップ量W
OA0を説明する図であり、
図1の領域X1付近における帯状樹脂1の重なりを示す模式図である。
【
図5】実施例に係る樹脂ホース11の断面写真である。
【
図6】比較例に係る樹脂ホース101の断面構造を説明するための写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。さらに、以下の実施形態のうち、特許請求の範囲で規定されていない要素は、任意の要素であるので、省略可能である。以下の説明中で開示する数値の末尾には、任意の個数(例えば1つ又は2つ)の「0」を追加してもよい。例えば、「1.4」の後ろに「0」を1つ又は2つ追加して「1.40」又は「1.400」としてもよい。
【0010】
1.樹脂ホース10の製造方法及び製造装置
1-1.製造方法の概要
図1の斜視図を用いて製造方法を説明する。実施の形態の製造方法は、押出工程と螺旋巻工程と冷却工程とを備える。
図1を参照して述べると、まず、押出工程では、金型20で押し出した帯状樹脂1を矢印A1の方向に導く。次に、螺旋巻工程では、巻付装置30を用いて、所定のピッチPで帯状樹脂1を螺旋形状に巻く(矢印A2参照)。冷却工程では、冷却液41で冷却することで、樹脂ホース10が矢印A3方向へ成長していく。
図1(及び以降の各図)には、説明の便宜上、螺旋軸方向と径方向とが図示される。螺旋軸方向とは、螺旋巻工程における螺旋回転の中心軸がのびる方向であり、螺旋形状に巻かれた帯状樹脂1の中心軸に沿う方向である。螺旋軸方向は、樹脂ホース10の長さ方向でもある。径方向は、樹脂ホース10の径方向であり、螺旋軸方向と垂直な方向である。以下、各工程を説明する。
【0011】
1-2.押出工程
図1に示すように、実施の形態の押出工程は、金型20の金型吐出口21から帯状樹脂1を押し出す。金型20には3種の材料(表皮樹脂2、ガスバリア層4の樹脂材料、及び芯材6の樹脂材料)を多色成形するための押出機が接続されていて、各押出機は例えばホッパー、シリンダ、スクリュー、ヒーター等の各種装置を含むが、これらは公知技術を採用可能であるため図示を省略する。
【0012】
実施の形態の金型20の内部には、
図3Aに示すように金型吐出口21a~21cが設けられている。実施の形態の押出工程では、金型吐出口21a、21b、21cのそれぞれから吐出した3種類の樹脂材料を合流させて、金型吐出口21aと同じ外形を有する金型吐出口21から共押出成形することで、
図3Bの断面形状の帯状樹脂1が形成される。
【0013】
実施の形態では、一例として、金型吐出口21aから軟質ポリ塩化ビニル(PVC)を供給することで、表皮樹脂2が構成される。金型吐出口21bからガスバリア性樹脂を供給することで、ガスバリア層4が構成される。金型吐出口21cから硬質PVCを供給することで、芯材6が構成される。
【0014】
本明細書において、ガスバリア性樹脂は、20℃・65%RHの環境下での酸素透過度が、表皮樹脂よりも低いものを意味する。ガスバリア性樹脂は、厚さ20μmのフィルムにした状態で、20℃・65%RHの環境下での酸素透過度が50cc/(m2・24時間・atm)未満であることが好ましい。上記酸素透過度は、例えば0~49cc/(m2・24時間・atm)であり、具体的には例えば、0.01、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、49cc/(m2・24時間・atm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。ガスバリア性樹脂としては、EVOH(エチレン・ビニルアルコール樹脂)やポリアミドなどが挙げられる。
【0015】
ガスバリア層4を構成する樹脂は、ガスバリア性樹脂と、接着性樹脂の混合樹脂であることが好ましい。ガスバリア層4をガスバリア性樹脂のみで構成すると、ガスバリア層4と表皮樹脂2の接着性が悪くなりやすく、ガスバリア層4と表皮樹脂2の接着性が悪いと、樹脂ホース10を曲げたときにガスバリア層4と表皮樹脂2が剥離してしまって、キンク(折れ)が発生しやすくなる。この傾向は、ガスバリア層4をEVOHで構成し、表皮樹脂2をPVCで構成した場合に特に顕著である。一方、ガスバリア層4を上記混合樹脂で構成すると、ガスバリア層4と表皮樹脂2が剥離しにくくなり、耐キンク性が向上する。
【0016】
接着性樹脂としては、ガスバリア層4をガスバリア性樹脂のみで構成した場合に比べて、ガスバリア層4と表皮樹脂2の接着性を高めることができる任意のものが利用可能であり、例えば、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーが利用可能である。変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーの添加によって接着性が高められることに加えて、ガスバリア層4の柔軟性が高められるという利点もある。変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーの具体例としては、三菱ケミカル株式会社製、モディック-TPC「GQ331」、「GQ131」、「GQ430」、「GK320」などが挙げられる。
【0017】
ガスバリア層4を構成する樹脂中の接着性樹脂の割合は、例えば、10~40質量%であり、25~35質量%が好ましい。この値が小さすぎると、耐キンク性が悪くなりやすく、この値が大きすぎると、ガスバリア性が悪くなりやすい。この値は、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0018】
図3Bに示すように、帯状樹脂1は、表皮樹脂2と、帯状のガスバリア層4と、を含む。帯状樹脂1は、上面1aと、下面1cと、側縁部1b1、1b2とを備える。表皮樹脂2の外表面部位によって、帯状樹脂1の上面1a、下面1c及び側縁部1b1、1b2が構成される。実施の形態では、さらに、帯状樹脂1が芯材6を備える。表皮樹脂2で芯材6及びガスバリア層4が両方とも被われている。
【0019】
図3Aを参照して、金型吐出口21a~21cの形状及び寸法の一例を詳しく説明する。金型吐出口21aは、線状部21a1と凸部21a2とを備える。凸部21a2は、線状部21a1の長手中央位置において外側に凸となっている。凸部21a2は、一例として略円形断面を有する。金型吐出口21bは、線状部21a1の内側に設けられた線状開口である。金型吐出口21bは、線状部21a1と相似形状でこれよりも一回り小さなサイズを有する。金型吐出口21cは、凸部21a2の内側に設けられている。金型吐出口21cは、凸部21a2と相似形状でこれよりも一回り小さなサイズを有し、具体的には円の一部を直線で切り欠いた略円形断面を有する。
【0020】
金型吐出口21a~21cの各部位の寸法が成形品の厚み等に大きく影響する。線状部21a1の長手寸法WdAは、帯状樹脂1の幅WAに影響する。線状部21a1の短手寸法(スリット幅)DdAは、帯状樹脂1におけるガスバリア層4周辺の厚さDAに影響する。金型吐出口21bの長手寸法WdBは、ガスバリア層4の幅WBに影響する。金型吐出口21bの短手寸法(スリット幅)DdBは、ガスバリア層4の厚さDBに影響する。金型吐出口21cの径寸法WdCは、芯材6の幅WCに影響する。寸法DdSは、凸部21a2の直径と金型吐出口21cの径寸法WdCとの差である。寸法DdSは、芯材6表面の表皮樹脂2の厚さに影響する。寸法Hdは、線状部21a1の下端から凸部21a2の上端までの高さである。これらの各寸法に加えて、樹脂の押出し速度、粘度、及び/又は隣接する層との関係なども影響して、実際の厚みが決まる。
【0021】
金型吐出口21a~21cの各寸法は、例えば下記のように規定されてもよい。
【0022】
WdAは、例えば17.5mmである。WdAは、例えば10~40mmであり、例えば15~25mmでもよい。WdAは、具体的には例えば、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5、20、25、30、35、40mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
WdBは、例えば15.5mmである。WdBは、例えば7.0~30mmであり、例えば10~20mmでもよい。WdBは、具体的には例えば、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5、20、25、30mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
W
dEは、
図3に示すように、幅方向における金型吐出口21の一端(
図3Aの紙面左側端)における、線状部21a1の端部と金型吐出口21bの端部との距離である。W
dEは、表皮樹脂2が単層で形成される部位(つまり帯状樹脂1においてガスバリア層4が存在しない部位)の幅に影響する。W
dEは、例えば1.0mmである。W
dEは、例えば0.6~5.0mmであり、例えば0.8~2.5mmでもよい。W
dEは、具体的には例えば、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.50、2.75、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
DdAは、例えば0.7又は1.0mmである。DdAは、例えば0.5~3.0mmであり、例えば0.7~2.0mmでもよい。DdAは、具体的には例えば、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
DdBは、例えば0.4mmである。DdBは、例えば0.2~1.0mmであり、例えば0.3~0.8mmでもよい。DdBは、具体的には例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
WdCは、例えば3.5mmである。WdCは、例えば2.0~10mmであり、例えば3.0~5.0mmでもよい。WdCは、具体的には例えば、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
DdSは、例えば0.2mmである。DdSは、例えば0.1~1.0mmでもよく、例えば0.2~0.5mmでもよい。芯材6表面を被う表皮樹脂2は、ガスバリア層4を被う表皮樹脂2よりも、薄くすることができる。
【0029】
Hdは、例えば3.7mmである。Hdは、例えば2.0~10mmでもよく、例えば3.0~5mmでもよい。Hdは、金型吐出口21cの高さ寸法及びDdsに応じて適宜に設定可能である。
【0030】
図3Bに示すように、表皮樹脂2は、ガスバリア層4のおもて面4a、裏面4c及び側端面4b1、4b2を被う。このようにガスバリア層4の全周を被うことで剥離が防止される。芯材6は、ガスバリア層4のおもて面4aの側に配置される。芯材6の断面は、円の一部を直線で切り欠いた形状を有し、その切欠面がガスバリア層4の側を向いている。芯材6とガスバリア層4とは接しておらず、両者の間には表皮樹脂2が挟まれている。表皮樹脂2が芯材6とガスバリア層4とを一体に被うことで、帯状樹脂1が提供される。
【0031】
図3Bには、帯状樹脂1の成形寸法(後述のW
A、W
B、W
E、D
A、D
B、W
C、H)が図示される。この成形寸法各々は、上述の金型寸法(W
dA、W
dB、W
dE、D
dA、D
dB、W
dC、H
d)とは異なる。以下に、金型吐出口21からの押出直後における帯状樹脂1の寸法値を例示する。
【0032】
図3Bの幅W
Aと厚さD
Aは、ガスバリア層4周辺における表皮樹脂2の断面寸法である。W
Aは、帯状樹脂1の全体幅でもある。
【0033】
WAは、例えば12.4mmである。WAは、例えば8~30mmであり、例えば10~20mmでもよい。WAは、具体的には例えば、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5、20、25、30mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0034】
DAは、例えば0.5mmである。DAは、例えば0.25~2.0mmであり、例えば0.4~1.0mmでもよい。DAは、具体的には例えば、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0035】
ガスバリア層4は、幅WBと厚さDBを有する。
【0036】
WBは、例えば11mmである。WBは、例えば4.5~20mmであり、例えば6~16mmでもよい。WBは、具体的には例えば、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0037】
W
Eは、帯状樹脂1の端部において表皮樹脂2を単層で形成した部分の幅寸法を指している。
図3Bに示すように、W
Eは、帯状樹脂1の片側からガスバリア層4の側端面4b1までの距離である。W
Eは、金型吐出口21のW
dEによって影響を受ける。W
Eは、例えば0.7mmである。W
Eは、例えば0.5~5.0mmであり、例えば0.6~2.0mmでもよい。W
Eは、具体的には例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.50、2.75、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0038】
DBは、例えば0.1mm(100μm)である。DBは、例えば0.03~1.0mmであり、例えば0.1~0.25mmでもよい。DBは、具体的には例えば、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
なお、ガスバリア層4周辺における表皮樹脂2の厚さは、DAとDBとの差に応じて決まるが、最も薄い部位が例えば0.125mm以上でもよい。
【0040】
芯材6は幅WCを有する。WCは、例えば2.5mmである。WCは、例えば1.4~7mmであり、例えば2~4mmでもよい。WCは、具体的には例えば、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.5、4、5、6、7mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0041】
なお、芯材6表面の表皮樹脂2の厚さは、例えば0.1mmであり、例えば0.1~0.5mmでもよい。また、
図3Bの高さHは、帯状樹脂1の全体高さである。Hは、例えば2.6mmでもよい。Hは、例えば1.5~8mmでもよく、例えば2.0~4mmでもよい。Hは、芯材6の径寸法及びこれを被う表皮樹脂2の厚さに応じて適宜に設定可能である。
【0042】
1-3.螺旋巻工程
螺旋巻工程は、帯状樹脂1を部分的に重ねながら螺旋形状に巻いて管状にする。帯状樹脂1が所定ピッチ(ピッチP)を伴って螺旋軸周りに螺旋形状に巻き進められるとともに、帯状樹脂1の重なり部位が一体化されて、管状になる。重なり部位の一体化は、表皮樹脂2の熱融着により行われる。螺旋巻工程では、帯状樹脂1が巻付装置30に巻き付けられることで、共押出成形された表皮樹脂2、ガスバリア層4及び芯材6がまとめて螺旋形状に巻かれて管状にされる。
【0043】
図3Cは、
図1の領域X1における帯状樹脂1の断面を示す。
図3Cには「帯状樹脂1の部分的な重なり」が示される。
図3Cでは、帯状樹脂1における「側縁部1b2側に位置する下面1cの一部」が、一周前の帯状樹脂1の「側縁部1b1側に位置する上面1aの一部」に対して、直接に重ねられている。螺旋巻工程では、
図3Cの位置関係が維持されながら帯状樹脂1が螺旋形状に巻き進められていく。
【0044】
図2に示すように、巻付装置30は、金型吐出口21が設けられている吐出面22に対して垂直な方向D1からずれた斜め方向に帯状樹脂1を引っ張りながら、帯状樹脂1を螺旋形状に巻くことが好ましい。ここで、帯状樹脂1は、芯材6の形状が反映された凸条1dと、凸条1dの一側及び他側に位置する一側部1eと他側部1fを備えるものとする。一側は、帯状樹脂1が引っ張られる側である。帯状樹脂1を斜め方向に引っ張ると、他側部1fでは、一側部1eよりも引き伸ばされる度合いが大きくなり、その結果、一側部1eの幅が他側部1fの幅よりも大きくなる。一側部1eは、一周前の帯状樹脂1の他側部1fの上側に配置されるので、一周前の帯状樹脂1の他側部1fの厚さに相当する分だけ、他側部1fよりも幅広に形成されることが好ましいところ、帯状樹脂1を斜め方向に引っ張りながら螺旋形状に巻くことによって、一側部1eの幅が他側部1fの幅よりも大きいという構成を実現することができる。また、方向D1に対する、帯状樹脂1を引っ張る方向の角度αを変化させることによって、一側部1eの幅と他側部1fの幅の差を調整することが可能である。角度αは、例えば5~45度であり、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0045】
なお、金型吐出口21の形状を変化させることによって一側部1eの幅が他側部1fの幅よりも大きいという構成を実現することも可能であるが、この場合、一側部1eの幅と他側部1fの幅の差を変化させるには、金型変更が必要になってしまうという問題があることに加えて、金型吐出口21を非対称にすると、各層の厚さの制御が複雑になってしまうという問題もある。一方、帯状樹脂1を斜め方向に引っ張るという方法は、上記問題が生じない点で好ましい。
【0046】
実施の形態では、一例として巻付装置30が使用される。巻付装置30は、中央シャフト31と、複数の自転部材32と、支持リング33と、を備える。複数の自転部材32は、細長の棒状であり、中央シャフト31の周囲に配置され、且つ支持リング33によって支持されている。中央シャフト31及び各自転部材32は、実際には
図1の紙面左下方向へ更にのびており、その先で駆動装置(図示せず)に接続される。駆動装置は、自転部材32各々を自転させるとともに、自転している各々の自転部材32を矢印A3の方向へと送り出していく。これにより、樹脂ホース10全体を矢印A2方向に回転させながら帯状樹脂1を巻付装置30に巻き付けて、矢印A3方向へと樹脂ホース10を成長させることができる。
【0047】
押出された帯状樹脂1は高温であり、
図3Cの重なり部位で表皮樹脂2が互いに熱融着する。これにより、螺旋形状に巻かれた帯状樹脂1において、重なり合った部位同士が一体化して、管状になる。なお、領域X1に押付具(図示せず)が設けられてもよい。押付具は、新たに巻き付ける帯状樹脂1を巻付装置30側へ押し付ける器具である。
【0048】
実施の形態の螺旋巻工程は、ガスバリア層4が表皮樹脂2を挟みつつ重ね巻きにされるように、帯状樹脂1をピッチPで螺旋形状に巻く。この点に関し、
図3Cには、螺旋巻きのピッチP、帯状樹脂1のオーバーラップ量W
OA0、及びガスバリア層4のオーバーラップ量W
OB0が図示されている。帯状樹脂1が螺旋形状に巻き進められるのに応じて、螺旋軸方向へと帯状樹脂1が相対的に変位する。その変位量がピッチPである。W
OA0は、帯状樹脂1における、螺旋軸方向に沿う重なりの大きさである。W
OB0は、表皮樹脂2を挟んで重ね巻きされたガスバリア層4における、螺旋軸方向に沿う重なりの大きさである。W
OB0は、ガスバリア層4における、重なり合う側端面4b1、4b2間の螺旋軸方向距離である。
【0049】
図3C(つまり領域X1)における帯状樹脂1の各部位の寸法は、
図3Bで例示した各寸法の数値範囲から、ある程度相違し得る。巻付装置30による帯状樹脂1の引っ張り具合(例えば巻付速度や、帯状樹脂1にかかる張力など)による影響があるからである。
【0050】
ピッチPはWOA0に応じて設定される。WOA0はWOB0をどの程度確保したいかに応じて設定される。WOA0は例えば5mmでもよく、この場合ピッチPは例えば7.4mmでもよい。側縁部1b1、1b2が芯材6に当たらない程度でWOA0を設定してもよい
【0051】
具体的には、WOA0は例えば5mmである。WOA0は、例えば2.5~10mmであり、例えば4~7mmが好ましい。WOA0は、具体的には例えば、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5、6、7、8、9、10mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0052】
具体的には、WOB0は例えば3.0mmである。WOB0は、例えば0.5~4.0mmであり、例えば2.5~3.5mmが好ましい。WOB0は、具体的には例えば、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0053】
WOB0は、例えばガスバリア層4の幅WBの25%でもよく、例えばWBの5%~40%でもよく、より好ましくは例えばWBの10%~30%でもよい。WOB0は、具体的には例えば、幅WBの5%、7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0054】
W
OB0は、
図3Cの厚さD
C0との関係で規定してもよい。D
C0は、ガスバリア層4に挟まれた部位の表皮樹脂2の厚さである。実施の形態の螺旋巻工程は、一例として、W
OB0/D
C0が7.5となるように帯状樹脂1を巻いてもよい。これは例えばピッチPを調節することで可能である。W
OB0/D
C0は、例えば2.0~20が好ましく、より好ましくは例えば5.0~10である。W
OB0/D
C0は、具体的には例えば、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0055】
1-4.冷却工程
冷却工程では、樹脂ホース10を冷却する。用いる冷却手段に限定はない。実施の形態では、一例として、ノズル40から冷水等の冷却液41を噴射して、冷却液41で樹脂ホース10を冷却する。なお、常温冷却等を行う場合は、ノズル40等の冷却設備は省略され得る。
【0056】
以上説明した実施の形態に係る製造方法によれば、ガスバリア層4を内蔵する帯状樹脂1を螺旋巻くことで樹脂ホース10を提供できる。樹脂巻付工程を何度も繰り返す必要がないので、生産性に優れる利点がある。これにより樹脂ホース10のガスバリア性と生産性とを両立できる利点がある。
【0057】
なお、樹脂ホース10は、実施の形態と異なる他の製造方法及び装置で製造されてもよい。帯状樹脂1を螺旋形状に巻いて管状とする任意の樹脂ホース製造方法及び製造装置を採用可能である。
【0058】
2.樹脂ホース10の構成
図4A~
図4Cは、製造後の樹脂ホース10の構成を示す。
図4Aは樹脂ホース10の側面図であり、
図4Bは螺旋軸方向に沿って見た正面図である。
図4Cには、樹脂ホース10の部分10a(
図4A、
図4B参照)の切断面が示されている。
【0059】
図4Cに示すように、隣接する2つのガスバリア層4の間に挟まれた表皮樹脂2は熱融着により一体化している。表皮樹脂2はガスバリア層4及び芯材6を被っており、ガスバリア層4及び芯材6は帯状樹脂1の螺旋巻形状に従って螺旋形状にのびている。表皮樹脂2の厚さ、ガスバリア層4の厚さ及び芯材6の幅は、
図3BのD
A、D
B、及びW
Cそれぞれと実質的に同じであるものとする。
【0060】
ガスバリア層4は、表皮樹脂2を挟んで重ね巻きにされている。
図4CのW
OB1は、ガスバリア層4における、螺旋軸方向に沿うオーバーラップ量である。
図4CのD
C1は、表皮樹脂2におけるガスバリア層4に挟まれた部位の厚さである。
【0061】
WOB1は、0.1mm以上が好ましく、0.6mm以上がさらに好ましい。この場合に、ガスバリア性が特に良好になる。この値は、例えば、0.1~3.0mmであり、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0、2.5、3.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以上であってもよい。
【0062】
図4Cと
図3Cとを比較するとわかるように、完成後の樹脂ホース10では、ガスバリア層4及びその周囲の表皮樹脂2の形状が歪み得る。完成後の樹脂ホース10において、ガスバリア層4の幅W
B1は、側端面4b1、4b2の両端を螺旋軸方向に沿って測った距離である。また、オーバーラップ量W
OB1は、直近にある側端面4b1、側端面4b2間の螺旋軸方向距離である。W
B1及びW
OB1は、側端面4b1、4b2の距離を螺旋軸方向に沿って計測することで得られる。
【0063】
WOB1は、例えばWB1の16.5%でもよい。WOB1は、例えばWB1の5%~40%が好ましく、より好ましくは例えばWB1の10%~30%でもよい。WOB1は、具体的には例えば、幅WB1の5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0064】
ガスバリア層4の屈曲に起因して、表皮樹脂2の厚さがオーバーラップ量WOB1の範囲内で位置によって大きくばらつく場合は、DC1は例えばWOB1の範囲内における平均厚さでもよい。
【0065】
実施の形態では、一例としてWOB1/DC1が3.5でもよい。WOB1/DC1は、例えば1.5~15が好ましく、より好ましくは例えば2.0~5.0である。WOB1/DC1は、具体的には例えば、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0066】
以上説明した実施の形態に係る樹脂ホース10は、ガスバリア層4を内蔵する帯状樹脂1を螺旋巻にした構成を備える。樹脂巻付工程を何度も繰り返す必要がないので、生産性に優れる利点がある。
【0067】
実施の形態の樹脂ホース10は、ガスバリア層4によるガスバリア性を備える。これにより防臭性が提供される。樹脂ホース10の内部の臭気はガスバリア層4で遮断される。ガスバリア層4が途切れている部位においても、帯状樹脂1の部分的重なり(
図3CのW
OA0参照)により、厚めの表皮樹脂2を形成可能である。このように厚く形成した表皮樹脂2が臭気を阻止可能である。
【0068】
以上のように、実施の形態の樹脂ホース10によれば、ガスバリア性(防臭性)と生産性とを両立可能である。
【0069】
しかも実施の形態では、ガスバリア層4のオーバーラップ量WOB1が、ある程度大きく設定される。ガスバリア層4で挟まれた部位の表皮樹脂2は、オーバーラップ量WOB1で規定される長さで螺旋軸方向にのびる。これにより、臭気にとって、樹脂ホース10外部に到達するために通過すべき表皮樹脂2の経路が長くなる。結果、臭気は表皮樹脂2を通過できずに阻止されるので、防臭性が確保される。
【0070】
実施の形態の樹脂ホース10は、可撓性を有しており、屈曲可能である。芯材6を設けることで、キンク(ホース曲げ時の折れ)の発生を抑制できる利点もある。
【0071】
実施の形態では、厚さDC1の表皮樹脂2が挟まれることで、ガスバリア層4の隣接する側端面4b1、4b2同士がつながっておらず互いに分離している。これにより樹脂ホース10の屈曲時にガスバリア層4が追随して変形しやすい特徴がある。オーバーラップ量WOB1を好適範囲に設定することで、上述した防臭性能も確保可能である。
【0072】
3.変形例等
実施の形態の樹脂ホース10及びその製造方法には、各種の変形を施すことができる。
【0073】
3-1.ガスバリア層の変形例
ガスバリア層4を構成するガスバリア性樹脂は、より具体的には、次に述べる各種の特性値を満たすものでもよい。一例として、ガスバリア性樹脂は、(20℃・100%RHの環境下での酸素透過度)/(20℃・40%RHの環境下での酸素透過度)の値が2以上であることが好ましく、5以上がさらに好ましい。この値が大きいほど、高湿化でのガスバリア性が低いので、ガスバリア層4を表皮樹脂で被覆することの技術的意義が顕著である。この値は、例えば2~10000であり、具体的には例えば、2、5、10、20、50、100、200、1000、10000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。
【0074】
耐屈曲性を向上させる観点から、ガスバリア性樹脂は、柔軟性に優れたEVOHの一例として三菱ケミカル株式会社製の商品名SF7503B又は商品名E3808が採用されてもよい。EVOHのエチレン含量は、例えば29~50mol%であることが好ましく、具体的には例えば29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50mol%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であることが好ましい。
【0075】
3-2.表皮樹脂の変形例
表皮樹脂2の樹脂材料は、実施の形態で例示した軟質PVCに限定されない。表皮樹脂2には、任意の軟質樹脂を採用することができ、例えばポリエチレン樹脂が用いられてもよい。表皮樹脂2は、例えば、軟質PVC、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン樹脂、エチレン・プロピレン共重合体のオレフィン系レアストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエンスチレン等のスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系エラストマー、エチレン-ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリエチレン、エチレン-アクリル酸エチル重合体、アクリロニトリル系エラストマー、ポリブタジエン樹脂、又はシリコーン樹脂等であってもよく、又はこれらの樹脂を適宜組み合わせた混合物であってもよい。
【0076】
3-3.芯材の変形例
芯材6についても各種変形が可能である。樹脂、金属など材質を問わず、表皮樹脂2よりも硬質な任意の材料の芯材6を採用可能である。
【0077】
実施の形態と同様に芯材6を樹脂製とする場合は、表皮樹脂2よりも硬質な任意の樹脂を採用可能である。「硬質な樹脂」としては、具体的には、表皮樹脂2の材料よりも曲げ弾性率、引張強さ、及び/又は曲げ強さが大きい任意の樹脂を採用可能である。実施の形態では芯材6と表皮樹脂2とにPVC(軟質/硬質)を用いているが、これは一例であり両者が異なる樹脂材料でもよい。
【0078】
芯材6の断面形状は、
図3Bのものに限らず、任意に形状変更可能である。変形例として、芯材6の断面形状は、円以外の任意形状(例えば楕円、正方形、長方形、台形、任意の多角形、又は任意の正多角形等)でもよい。芯材6の高さ/幅の比は、任意に設定可能である。芯材6の高さは、幅W
Cの50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%等でもよく、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。他の変形例として、芯材6が省略された場合は、帯状樹脂1が帯状平面体(テープ形状)とされてもよい。
【0079】
その一方で、変形例として、例えば金属製のワイヤ(例えばSUS製等)などを芯材6として用いることもできる。この場合には、金型吐出口21から、金型吐出口21cと、金型吐出口21aの凸部21a2とが省略される。なお芯材6に用いるワイヤの径は
図3BのW
Cに比べて十分に小さくともよい。また、ワイヤ芯材と樹脂芯材との両方を帯状樹脂1に設けてもよい。
【0080】
なお、ワイヤ製芯材を用いる場合の製造方法に限定はないが、一例を挙げると、押出工程において、金型20から押し出された帯状樹脂1の表面に沿わせるようにワイヤ製の芯材6を繰り出して、表皮樹脂2にワイヤ製の芯材6が埋め込まれた帯状樹脂1を送り出してもよい。さらに螺旋巻工程において、このようにして送り出された帯状樹脂1を巻付装置30に巻き付けるようにしてもよい。芯材6の材質を問わず、螺旋巻工程で、芯材6と共に(つまり芯材6ごとまとめて)帯状樹脂1を螺旋形状に巻くことができる。
【0081】
なお、帯状樹脂1から芯材6を省略してもよい。この場合、帯状樹脂1を表皮樹脂2及びガスバリア層4のみで構成してもよい。この場合、金型吐出口21cは省略される。
【実施例0082】
1.防臭性評価
以下のように、防臭性を確認するための試験を行った。試験に用いた実施例サンプル(実施例1)は以下のように準備された。実施例サンプルの樹脂ホース11は、実施例の帯状樹脂1から芯材6が省略されており、
図3Bから芯材6(及びその周辺の表皮樹脂2)を除いた断面形状を有するものとした。すなわち、実施例サンプルの製造に用いた金型20は、
図3Aにおける金型吐出口21の線状部21a1及び金型吐出口21bのみを有しており、金型吐出口21の凸部21a2及び金型吐出口21cを有さないものとした。これにより、芯材6を備えない帯状樹脂1を押し出した。金型寸法は、W
dA=17.5mm、W
dB=15.5mm、D
dA=0.7mm、D
dB=0.4mmとした。
【0083】
実施例サンプルでは、
図3Bの寸法(金型吐出口21からの押出直後の寸法)は次のようにした。帯状樹脂1は幅W
A=12.4mmで厚さD
A=0.5mmとなるようにし、ガスバリア層4が幅W
B=11mmで厚さD
B=0.1mm(100μm)となるようにした。表皮樹脂2の材料は軟質PVC(ポリ塩化ビニル)とした。ガスバリア層4の材料は、エチレン・ビニルアルコール樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:SF7503B)とした。押し出した帯状樹脂1を巻付装置30に巻きつけて、冷却することでホース状に固化させた。
【0084】
図5は、実施例に係る樹脂ホース11の断面写真である(断面位置は
図4Aの部分10aに相当)。
図5の画像によれば、実施例サンプルでは、W
OB1がW
B1の16.7%であり(W
OB1/W
B1≒0.167)、またW
OB1/D
C1が3.5であった。
【0085】
比較例サンプル(比較例1)は次のように準備した。比較例サンプルの樹脂ホース101は、軟質PVCの表皮樹脂102と硬質PVCの芯材106とを備え、内径φ25mmであり外径φ30mmとした。各々の芯材106の直径W
Zは、φ1.9mmとした。軸方向に沿う芯材106の間隔(ピッチP
Z)は、7.5mmとした。比較例の樹脂ホース101では、
図6の写真にも示すように、複数枚の樹脂シートが重なることで表皮樹脂102が形成された。一枚の樹脂シートの肉厚は0.27mmであり、表皮樹脂102のうち芯材106が無い部位の肉厚D
Zは1.1mmであった。
【0086】
図6は、比較例に係る樹脂ホース101の断面構造を説明するための写真である。
図6の写真は
図5に対応する部位のみを樹脂ホース101から切り抜いたものである。実施例との断面形状の違いを説明するために、切り口周辺のみを抽出している。
図6に記入した軸方向とは樹脂ホース101の長さ方向であり、径方向は樹脂ホース101の径方向である。
【0087】
実施例がガスバリア層4を備えるのに対し、比較例にはガスバリア層が無い。比較試験によって、実施例の構成においてガスバリア層4の防臭性付与が十分に可能かどうかを試験した。
【0088】
実施例の樹脂ホース11及び比較例の樹脂ホース101について、臭気物質を各々の樹脂ホース内部に入れたあと、密閉し、恒温槽に40℃で静置した。4日経過後、臭気強度及び快・不快度を5名の被験者に対して測定した。結果を表1に示す。
【0089】
【0090】
表1では、臭気強度の数字が大きいほど、より臭気が強いことを示す。快・不快度の数字が大きいほど、より不快であることを示す。実施例は、臭気強度及び快・不快度のいずれもが比較例よりも十分に低い。実施例によれば、ガスバリア層4でガスバリア性(防臭性)を付与できた。螺旋軸方向に沿ってガスバリア層4が周期的に途切れた実施例の構造であっても、良好なガスバリア性(防臭性)が得られることが分かった。
【0091】
比較例サンプルでは肉厚DZ=1.1mmであるのに対して、実施例サンプルでは、帯状樹脂1単層の表皮樹脂2の厚さが約0.4mm(≒DA-DB)であり、帯状樹脂1の重なり位置における表皮樹脂2の厚さが約0.8mm(≒2×(DA-DB))である。実施例によれば表皮樹脂2が薄くとも良好なガスバリア性を得られる利点がある。
【0092】
2.耐キンク性及びガスバリア性評価
実施例2~7及び比較例1の樹脂ホース11を作製し、耐キンク性及びガスバリア性の評価を行った。
【0093】
比較例1の樹脂ホース11は、「1.防臭性評価」で説明した構成を有する。実施例2~7は、外形が比較例1と同様であり、ガスバリア層4を備える点が比較例1と異なっている。実施例2~7のガスバリア層4は、表2に示す条件で形成した。ガスバリア層4の材料は、実施例1と同じエチレン・ビニルアルコール樹脂を母材とし、実施例3~7では、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーである、三菱ケミカル株式会社 モディック-TPC「GQ331」を表2に示す割合で添加した。実施例2~4では、オーバーラップ量WOB1が-0.3mmになっているが、これは、隣接するガスバリア層4が重なっておらず、ガスバリア層4の間に0.3mmの隙間が存在していることを意味する。
【0094】
【0095】
次に、実施例・比較例の樹脂ホース11について、以下に示す方法で、耐キンク性及びガスバリア性の評価を行った。
【0096】
表2において、実施例2~7を比較すると、接着性樹脂を添加すると耐キンク性が向上し、接着性樹脂の割合が20質量%を超えると、耐キンク性が特に良好になることが分かった。
【0097】
また、実施例2~7を比較すると、オーバーラップ量WOB1が0mmよりも大きいと、ガスバリア性が特に高くなり、オーバーラップ量WOB1が0.5mmよりも大きいと、ガスバリア性がより一層高くなることが分かった。
【0098】
<耐キンク性>
耐キンク性は、ホースを曲げた際のキンク(折れ)の発生しやすさを示す指標であり、直線状のホースに対して、50cm離れた2点を左右の手で把持し、この時点での2点を結ぶ直線に沿って両方の手をゆっくりと近づけて、ホースをU字型に曲げていき、曲げ半径が50mmになったときのホースの状態に基づいて以下の基準で評価した。
〇:ホースが潰れず、流路がせまくなっていない
△:閉塞まではいかないが、ホースが潰れて流路が狭くなる
×:ホースが折れて閉塞が発生
【0099】
<ガスバリア性>
大気圧下でホース(300mm長さ)内に1日に透過する酸素量であるOTR(cc/tube.day.air)を以下の試験方法及び条件で測定し、得られた値に基づいて、ガスバリア性を評価した。
試験方法:モコン法(等圧方) JIS K-7126-2参考
試験条件:温度23℃、湿度ホース内90%、ホース外50%
【0100】
◎:OTRが0.03以下
○:OTRが0.03超0.04以下
△:OTRが0.04超0.10以下
×:OTRが0.10超