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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108135
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】水陸両用移動装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 16/18 20060101AFI20240802BHJP
   B60F 3/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B63H16/18
B60F3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006063
(22)【出願日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2023011577
(32)【優先日】2023-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592096281
【氏名又は名称】普久原 朝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100138254
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 容子
(72)【発明者】
【氏名】普久原 朝夫
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、水の抵抗力による過負荷を抑制でき、水深の浅い箇所でも水上移動可能な水陸両用移動装置を提供すること。
【解決手段】本体部110と、本体部110に接続された把持部140と、本体部110に2つ並列に設けられた板状のスライド部120と、駆動輪135とを有する水陸両用移動装置100であって、2つのスライド部120は、本体部110に対して相対的に進退移動可能に構成され、2つのスライド部120の下面には、スライド部120の進退移動方向と直交するプレート回転軸124でスライド部120に対して回転可能に接続された推進プレート122が設けられ、駆動輪135は、スライド部120の進退移動を駆動輪135の駆動力に変換する駆動力伝達ユニット130に接続されていること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部に接続された把持部と、前記本体部に2つ並列に設けられた板状のスライド部と、駆動輪とを有する水陸両用移動装置であって、
2つの前記スライド部は、前記本体部に対して相対的に進退移動可能に構成され、
2つの前記スライド部の下面には、前記スライド部の進退移動方向と直交するプレート回転軸で前記スライド部に対して回転可能に接続された推進プレートが設けられ、
前記駆動輪は、前記スライド部の進退移動を前記駆動輪の駆動力に変換する駆動力伝達ユニットに接続されていることを特徴とする水陸両用移動装置。
【請求項2】
2つの前記スライド部は、互いの進退移動が常に逆向きになるように連動することを特徴とする請求項1に記載の水陸両用移動装置。
【請求項3】
前記推進プレートは、前記スライド部のプレート回転軸から垂下した位置から後退方向側の範囲内のみで回転可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の水陸両用移動装置。
【請求項4】
前記把持部は、前記本体部を上下方向に貫通する貫通接続部材を介して接続され、
前記貫通接続部材は、前記貫通接続部材の中心軸を回転中心として前記本体部と相対回転可能に構成され、
前記貫通接続部材のうち前記本体部よりも下方側には、非駆動輪が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の水陸両用移動装置。
【請求項5】
前記把持部は、前記本体部を上下方向に貫通する貫通接続部材を介して接続され、
前記貫通接続部材は、前記貫通接続部材の中心軸を回転中心として前記本体部と相対回転可能に構成され、
前記貫通接続部材のうち前記本体部よりも下方側には、方向転換プレートが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の水陸両用移動装置。
【請求項6】
前記スライド部の下面には、前記スライド部の進退方向に連続するラックギヤが設けられ、
前記駆動力伝達ユニットは、前記ラックギヤと噛み合い前記スライド部の進退方向に直交する向きで回転可能な駆動ギヤと、前記駆動輪に設けられた従動ギヤとにかけ回される駆動力伝達ベルトとを有し、
前記駆動ギヤは、前記スライド部が進出方向へ移動した際に受ける回転力を、前記駆動輪の駆動力として前記従動ギヤに前記駆動力伝達ベルトを介して伝達することを特徴とする請求項1に記載の水陸両用移動装置。
【請求項7】
前記駆動ギヤまたは前記従動ギヤは、前記スライド部が後退方向へ移動した際に受ける回転力の伝達を阻止するラチェット機構を有していることを特徴とする請求項6に記載の水陸両用移動装置。
【請求項8】
前記本体部には、前記本体部に対して上下方向に摺動可能に配置されたブレーキ機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水陸両用移動装置。
【請求項9】
前記本体部は補助輪をさらに有し、
前記補助輪は、前記ブレーキ機構の上下動に連動して前記本体部に対して上下方向に進退移動可能に構成されていることを特徴とする請求項8に記載の水陸両用移動装置。
【請求項10】
前記本体部には、2つの前記スライド部の互いの進退移動の連動を解除された際、2つの前記スライド部の位置を固定する緊急停止機構を有することを特徴とする請求項2に記載の水陸両用移動装置。
【請求項11】
本体部と、前記本体部に接続された把持部と、前記本体部に2つ並列に設けられた板状のスライド部と、駆動輪とを有する陸上用移動装置であって、
2つの前記スライド部は、前記本体部に対して相対的に進退移動可能に構成され、
前記駆動輪は、前記スライド部の進退移動を前記駆動輪の駆動力に変換する駆動力伝達ユニットに接続され、
2つの前記スライド部は、互いの進退移動が常に逆向きになるように連動し、
前記スライド部の下面には、前記スライド部の進退方向に連続するラックギヤが設けられ、
前記駆動力伝達ユニットは、前記ラックギヤと噛み合い前記スライド部の進退方向に直交する向きで回転可能な駆動ギヤと、前記駆動輪に設けられた従動ギヤとにかけ回される駆動力伝達ベルトとを有し、
前記駆動ギヤは、前記スライド部が進出方向へ移動した際に受ける回転力を、前記駆動輪の駆動力として前記従動ギヤに前記駆動力伝達ベルトを介して伝達し、
前記駆動ギヤまたは前記従動ギヤは、前記スライド部が後退方向へ移動した際に受ける回転力の伝達を阻止するラチェット機構を有していることを特徴とする陸上用移動装置。
【請求項12】
本体部と、前記本体部に接続された把持部と、前記本体部に2つ並列に設けられた板状のスライド部とを有する水上用移動装置であって、
2つの前記スライド部は、前記本体部に対して相対的に進退移動可能に構成され、
2つの前記スライド部の下面には、前記スライド部の進退移動方向と直交するプレート回転軸で前記スライド部に対して回転可能に接続された推進プレートが設けられ、
2つの前記スライド部は、互いの進退移動が常に逆向きになるように連動し、
前記推進プレートは、前記スライド部のプレート回転軸から垂下した位置から後退方向側の範囲内のみで回転可能に構成されていることを特徴とする水上用移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力によって推進力を発生する水陸両用移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人力によって推進力を発生する移動装置として、本体部(船体11)と、本体部(船体11)に接続された把持部(ハンドル15)と、回転式ペダル13と、回転式ペダルに接続された水掻棒20とを有した移動装置(小型船10)が、特許文献1等で公知である。
【0003】
この特許文献1で公知の移動装置(小型船10)は、回転式ペダル13のペダル部13aに足を置いて漕ぐと、水掻棒20がペダル部13の回転に連動して本体部(船体11)の前後方向に揺動して水を掻くことで、推進力が発生して前進できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-193293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で公知の移動装置には、未だ改善の余地があった。
すなわち、特許文献1で公知の移動装置は、水掻き棒を船体の上方側に位置する回転軸に回転可能に接続し、水掻き棒の下端に設けられた水掻板で水を掻いて推進力を発生させるため、回転軸と水掻き板との距離が離れており、回転式ペダルを強く漕いでしまうと、水掻き棒の下端部に水を掻く際の抵抗力が集中して水掻き棒が曲がったり破損してしまうのを防止するために装置を強固に形成する必要があった。
【0006】
また、水掻き棒による推進力を大きくするためには、船体の下方側により大きな水掻き板を必要とするため、水深の浅い箇所等では水掻き板が水底に引っかかってしまう虞があった。
さらに、水上移動に加えて車輪を設けて地上移動を可能に構成する場合、水掻き板が大型化すると車輪の下部を水掻き板よりも下方に位置するように配置する必要があるため、より一層浅い水場での水上移動が困難となる虞があった。
【0007】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡単な構成で、水の抵抗力による過負荷を抑制でき、水深の浅い箇所でも水上移動可能な水陸両用移動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水陸両用移動装置は、本体部と、前記本体部に接続された把持部と、前記本体部に2つ並列に設けられた板状のスライド部と、駆動輪とを有する水陸両用移動装置であって、2つの前記スライド部は、前記本体部に対して相対的に進退移動可能に構成され、2つの前記スライド部の下面には、前記スライド部の進退移動方向と直交するプレート回転軸で前記スライド部に対して回転可能に接続された推進プレートが設けられ、前記駆動輪は、前記スライド部の進退移動を前記駆動輪の駆動力に変換する駆動力伝達ユニットに接続されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る水陸両用移動装置は、スライド部の下面にプレート回転軸を介して推進プレートが接続されるとともに、駆動輪は駆動力伝達ユニットを介してスライド部に接続されているため、使用者はスライド部の進退移動という共通の操作のみで、水上では推進プレートで水を掻いて移動することができるとともに、地上では駆動輪を回転させて移動することができる。
また、推進プレートがスライド部の進退移動方向と直交するプレート回転軸でスライド部に対して回転可能に接続されているため、プレート回転軸と推進プレートとの距離が近く、水を掻く際の抵抗力で推進プレートの変形や破損を十分抑制できる。
さらに、推進プレートをスライド部の下面に複数設けることができるため、水深の浅い箇所でも水上移動可能な程度の大きさの推進プレートで、十分な推進力を得ることができる。
また、推進プレートが本体部の下方に大きく進出することがないため、駆動輪の下部を推進プレートよりも下方に位置するように配置しても、水深の浅い箇所でも駆動輪が水底に触れずに水上移動することができる。
【0010】
請求項2に記載の構成によれば、2つのスライド部は、互いの進退移動が常に逆向きになるように連動するため、例えば、足で2つのスライド部を動かす場合、使用者は足を交互に進出、後退させるのみで簡単にスライド部を進退移動させて推進プレートまたは駆動輪を動作させ、水上または地上での推力を得ることができる。
請求項3に記載の構成によれば、推進プレートは、スライド部のプレート回転軸から垂下した位置から後退方向側の範囲内のみで回転可能に構成されているため、スライド部を進出方向に移動させた場合は推進プレートが水の抵抗力によってプレート回転軸を中心に回転してスライド部側に移動する。
これによって、水から受ける抵抗力を最小限に留めることができ、後退方向への移動を確実に防止できるとともに、スライド部を進出方向に移動させる際の使用者の負担を軽くできる。
また、スライド部を後退方向に移動させた場合は推進プレートが水の抵抗力によってプレート回転軸を中心に回転してプレート回転軸から垂下した位置で水を掻く。
これによって、推進プレートでより一層多くの水を掻くことができ、推進力を効率的に得ることができる。
【0011】
請求項4に記載の構成によれば、把持部は、貫通接続部材で本体部と相対回転可能に接続され、貫通接続部材の本体部よりも下方側には、非駆動輪が接続されているため、使用者は、把持部を回転させることで非駆動輪の向きを貫通接続部材を回転中心として回転させることができ、水陸両用移動装置の地上での方向転換を容易に実施できる。
請求項5に記載の構成によれば、把持部は、貫通接続部材で本体部と相対回転可能に接続され、貫通接続部材の本体部よりも下方側には、方向転換プレートが接続されているため、使用者は、把持部を回転させることで方向転換プレートの向きを貫通接続部材を回転中心として回転させることができ、水陸両用移動装置の水上での方向転換を容易に実施できる。
【0012】
請求項6に記載の構成によれば、スライド部の下面には、スライド部の進退方向に連続するラックギヤが設けられ、駆動力伝達ユニットは、ラックギヤと噛み合いスライド部の進退方向に直交する向きで回転可能な駆動ギヤと、駆動輪に設けられた従動ギヤとにかけ回される駆動力伝達ベルトとを有し、駆動ギヤは、スライド部が進出方向へ移動した際に受ける回転力を、駆動輪の駆動力として従動ギヤに駆動力伝達ベルトを介して伝達するため、スライド部の移動を、効率的且つ確実に水陸両用移動装置の地上での推進力として利用できる。
請求項7に記載の構成によれば、駆動ギヤまたは従動ギヤは、スライド部が後退方向へ移動した際に受ける回転力の伝達を阻止するラチェット機構を有しているため、駆動輪に水陸両用移動装置を進出方向に移動するための駆動力のみ伝達できる。
【0013】
請求項8に記載の構成によれば、本体部には、本体部に対して上下方向に摺動可能に配置されたブレーキ機構が設けられているため、ブレーキ機構を本体部の下方に進出させて地面に当接することで、水陸両用移動装置を減速するブレーキとして機能させることができる。
また、ブレーキ機構をさらに下方に進出させて駆動輪を地面から離脱させることで、水陸両用移動装置を停止した状態を安定的に維持することができる。
請求項9に記載の構成によれば、本体部には、ブレーキ機構の上下動に連動して本体部に対して上下方向に進退移動可能に構成されている補助輪を有しているため、例えば、ブレーキ機構を上方に後退させた際に補助輪が連動して下方に進出するように構成すれば、補助輪を下方に進出させて駆動輪を地面から離脱させることで、スライド部を操作する必要なく水陸両用移動装置を非駆動輪と補助輪とで自由に前進/後退させることができる。
【0014】
請求項10に記載の構成によれば、本体部には、2つのスライド部の互いの進退移動の連動を解除された際、2つの前記スライド部の位置を固定する緊急停止機構を有するため、故障等でスライド部の連動が解除されて水陸両用移動装置のコントロールが不安定になった場合でも、スライド部の位置が固定されることで使用者がスライド部上でバランスをとりやすくなり、水陸両用移動装置から安全に離脱することができる。
請求項11に記載の構成によれば、駆動輪は駆動力伝達ユニットを介してスライド部に接続されているため、使用者はスライド部の進退移動という操作のみで、駆動輪を回転させて移動することができる。
また、2つのスライド部は、互いの進退移動が常に逆向きになるように連動するため、例えば、足で2つのスライド部を動かす場合、使用者は足を交互に進出、後退させるのみで簡単にスライド部を進退移動させて駆動輪を動作させ、地上での推力を得ることができる。
さらに、スライド部の下面には、スライド部の進退方向に連続するラックギヤが設けられ、駆動力伝達ユニットは、ラックギヤと噛み合いスライド部の進退方向に直交する向きで回転可能な駆動ギヤと、駆動輪に設けられた従動ギヤとにかけ回される駆動力伝達ベルトとを有し、駆動ギヤは、スライド部が進出方向へ移動した際に受ける回転力を、駆動輪の駆動力として従動ギヤに駆動力伝達ベルトを介して伝達するため、スライド部の移動を、効率的且つ確実に地上での推進力として利用できる。
また、駆動ギヤまたは従動ギヤは、スライド部が後退方向へ移動した際に受ける回転力の伝達を阻止するラチェット機構を有しているため、駆動輪に陸上用移動装置を進出方向に移動するための駆動力のみ伝達できる。
【0015】
請求項12に記載の構成によれば、スライド部の下面にプレート回転軸を介して推進プレートが接続されているため、使用者はスライド部の進退移動という操作のみで、水上では推進プレートで水を掻いて移動することができる。
また、推進プレートがスライド部の進退移動方向と直交するプレート回転軸でスライド部に対して回転可能に接続されているため、プレート回転軸と推進プレートとの距離が近く、水を掻く際の抵抗力で推進プレートの変形や破損を十分抑制できる。
さらに、推進プレートをスライド部の下面に複数設けることができるため、水深の浅い箇所でも水上移動可能な程度の大きさの推進プレートで、十分な推進力を得ることができる。
また、推進プレートが本体部の下方に大きく進出することがないため、水深の浅い箇所でも推進プレートが水底に触れることなく水上移動することができる。
さらに、2つのスライド部は、互いの進退移動が常に逆向きになるように連動するため、例えば、足で2つのスライド部を動かす場合、使用者は足を交互に進出、後退させるのみで簡単にスライド部を進退移動させて推進プレートを動作させ、水上での推力を得ることができる。
また、推進プレートは、スライド部のプレート回転軸から垂下した位置から後退方向側の範囲内のみで回転可能に構成されているため、スライド部を進出方向に移動させた場合は推進プレートが水の抵抗力によってプレート回転軸を中心に回転してスライド部側に移動する。
これによって、水から受ける抵抗力を最小限に留めることができ、後退方向への移動を確実に防止できるとともに、スライド部を進出方向に移動させる際の使用者の負担を軽くできる。
また、スライド部を後退方向に移動させた場合は推進プレートが水の抵抗力によってプレート回転軸を中心に回転してプレート回転軸から垂下した位置で水を掻く。
これによって、推進プレートでより一層多くの水を掻くことができ、推進力を効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の正面図。
図2】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の側面図。
図3】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の上面図。
図4】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の側面断面模式説明図。
図5】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100のA部拡大図。
図6】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の下面図。
図7】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の、スライド部120の動作を示す下面図。
図8】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の、非駆動輪141および方向転換プレート142の動作を示す下面図。
図9】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の、推進プレート122の動作を示すC部拡大図。
図10】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の、ストッパー151の動作1を示すB部拡大図。
図11】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の、ストッパー151の動作2を示すB部拡大図。
図12】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の、減速板159の動作1を示すB部拡大図。
図13】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の、減速板159の動作1を示すD部拡大図。
図14】本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100の、減速板159の動作2を示すD部拡大図。
図15】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、操作レバー270の周囲の構造を示す拡大図。
図16】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、駆動輪235の周囲の構造を示す拡大図。
図17】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、駆動輪235の周囲の構造を示す下面図。
図18】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、操作腕271を押し下げた際の操作レバー270の周囲の状態を示す拡大図。
図19】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、操作腕271を押し下げた際の駆動輪235の周囲の状態を示す拡大図。
図20】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、操作腕271を引き上げた際の操作レバー270の周囲の状態を示す拡大図。
図21】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、操作腕271を引き上げた際の駆動輪235の周囲の状態を示す拡大図。
図22】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、操作腕271を引き上げた際の駆動輪235の周囲の状態を示す下面図。
図23】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、サドル250を倒した際の操作レバー270の周囲の状態を示す拡大図。
図24】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、サドル250を倒した際の駆動輪235の周囲の状態を示す拡大図。
図25】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、下面図。
図26】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、緊急停止機構290の周囲の構造を示す拡大図。
図27】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、緊急停止機構290の作動前の位置関係を示す拡大図。
図28】本発明の他の実施形態に係る水陸両用移動装置200の、緊急停止機構290の作動後の位置関係を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100について、図1乃至図14を用いて説明する。
なお、説明のため、図1乃至図14において、水陸両用移動装置100の一部を図示していない。
【0018】
本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100は、図1乃至図9に示すように、本体部110と、本体部110に貫通接続部材143を介して接続された把持部140と、本体部110に2つ並列に設けられた板状のスライド部120(右スライド部120a、左スライド部120b)と、左右1対の駆動輪135と、非駆動輪141とを有している。
【0019】
本体部110には、把持部140の前方側に設けられた前方カバー111と、把持部140よりも後方側に設けられた後方カバー112とを有し、前方カバー111と後方カバー112とは、スライド部120の上面が十分に露出するように間隔を空けて配置されている。
さらに、本体部110の上面側の、前方カバー111と後方カバー112との間には、サドル傾倒軸153を回転中心として傾倒可能なサドル150と、サドル150を傾倒する持ち手152と、左右1対のストッパー151およびストッパー操作部155とで構成されたブレーキ機構が設けられている。
【0020】
本体部110の下面側には、貫通接続部材143に接続された非駆動輪141と、非駆動輪141と回転伝達ワイヤ145で接続された方向転換プレート142と、1対の駆動輪135に駆動力を伝える駆動力伝達ユニット130と、スライド部120の下面側に設けられたラックギヤ121に着脱可能に構成された後述するスライドロック部材147と、保持接続面163および減速抵抗面164がスライド部120の下面と略平行となるように配置された減速板159とが設けられている。
【0021】
スライド部120は、右スライド部120aと左スライド部120bを有し、前後に進退移動可能に配置され、右スライド部120aと左スライド部120bとは互いに進退方向が逆向きに連動するようにスライド連動ワイヤ123を介して接続されている。
スライド部120の前方および後方には、スライド部120が進退移動した際に前部および後部に当接するクッション部材158が配置されている。
【0022】
スライド部120(右スライド部120a、左スライド部120b)の下面には、前後方向に延びるラックギヤ121(右ラックギヤ121a、左ラックギヤ121b)と、プレート回転軸124によって回転可能に接続された推進プレート122(右推進プレート122a、左推進プレート122b)が設けられ、ラックギヤ121(右ラックギヤ121a、左ラックギヤ121b)は、駆動ギヤ131(右駆動ギヤ131a、左駆動ギヤ131b、駆動側変速ギヤ131c)の右駆動ギヤ131a、左駆動ギヤ131bと噛み合うように構成されている。
推進プレート122(右推進プレート122a、左推進プレート122b)は、それぞれのスライド部120(右スライド部120a、左スライド部120b)の下面側に複数設けられており、プレート回転軸124に接続された一端が厚く、他端に向かうに従って薄く、プレート回転軸124方向に延びる板状に形成され、平面部122fと、水掻き部122sと、平面部122fの一端と水掻き部122sの一端とを接続する曲面部122rと、平面部122fの他端と水掻き部122sの他端とを接続する斜面部122tとを有し、平面部122fは推進プレート122のプレート回転軸124を回転中心とした回転によってスライド部120の下面に当接可能に構成されている。
【0023】
スライドロック部材147は、ラックギヤ121に噛み合うように上下に移動可能に構成され、スライドロックワイヤ146を介して把持部140近傍に設けられたスライドロックレバー144によって上下移動を操作できる。
【0024】
駆動力伝達ユニット130は、ラックギヤ121(右ラックギヤ121a、左ラックギヤ121b)と噛み合い駆動軸136を回転軸として回転する右駆動ギヤ131a、左駆動ギヤ131bと、駆動軸136を介して右駆動ギヤ131a、左駆動ギヤ131bから駆動力を伝達される駆動側変速ギヤ131cとで構成された駆動ギヤ131と、駆動輪135の回転軸である従動軸134に接続された従動側変速ギヤ132と、駆動側変速ギヤ131cと従動側変速ギヤ132とにかけ回されて駆動側変速ギヤ131cから従動側変速ギヤ132へ駆動力を伝達する駆動力伝達ベルト133とを有している。
なお、右駆動ギヤ131aおよび左駆動ギヤ131bは、それぞれ右駆動ギヤ131aおよび左駆動ギヤ131bに内蔵されたラチェット(図示しない)を介して駆動軸136と接続しており、図5に示すように、スライド部120が前方カバー側へ進んだ際にラックギヤ121と噛み合って伝達される駆動力のみ駆動軸136へ伝達するように構成されている。
【0025】
左右1対のストッパー151は、本体部110に対して上下方向に摺動可能に配置され、ストッパー151の上部にはストッパー操作部155が設けられ、左右1対のストッパー151を本体部110の上面側で接続しており、ストッパー151のうち、ストッパー操作部155と本体部110の上面との間の外周面を覆うように弾性部材154が設けられている。
また、左右1対のストッパー151は、それぞれ本体部110の下面側で左右一対の連動ロッド160に接続されている。
【0026】
ストッパー操作部155は、後方に延びる係止部156を有し、係止部156はストッパー操作部155の後方の本体部110の上面から延びる被係止部157と係合可能に構成されている。
減速板159は、一端を本体部110に対して左右方向に延びる減速板回転軸162を回転中心として回転可能に接続されているとともに、他端を保持スプリング161を介して本体部110の下面と接続されている。
【0027】
次に、本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100による、地上および水上での移動方法および停止方法について、図5乃至図14を用いて説明する。
なお、本発明の一実施形態に係る水陸両用移動装置100は、スライド部120の上面が水上に露出した状態で水に浮くものとする。
【0028】
まず、地上での移動方法および停止方法について説明する。
使用者は水陸両用移動装置100に乗り、把持部140を持って右スライド部120aに右足を置き、左スライド部120bに左足を置く。
次に、使用者が把持部140を持ちながら歩行するように左足を動かして、左足で左スライド部120bを後方カバー112側へ蹴って移動させた際、スライド連動ワイヤ123を介して左スライド部120bと接続されている右スライド部120aは、前方カバー111側へ移動する。
このとき、右ラックギヤ121aに噛み合っている右駆動ギヤ131aは、正回転(図5の正面から見て反時計回り方向に回転)することで、駆動軸136を介して駆動側変速ギヤ131cに正回転の駆動力を伝達する。
【0029】
なお、スライド部120は前方カバー111側へ進んだ際にラックギヤ121と噛み合って伝達される駆動力のみ駆動軸136へ伝達するようなラチェット(図示しない)を有しているため、左スライド部120bが後方カバー112側へ移動した際は左ラックギヤ121bに噛み合っている左駆動ギヤ131bが逆回転(図5の正面から見て時計回り方向に回転)するが、駆動軸136には逆回転の駆動力は伝達されることがない。
【0030】
さらに、正回転の駆動力は駆動力伝達ベルト133を介して駆動側変速ギヤ131cから従動側変速ギヤ132へ伝達されるため、従動軸134および駆動輪135を正回転でき、水陸両用移動装置100を前進することができる。
【0031】
次に、使用者は把持部140を持ちながら歩行するように右足を動かして、右足で右スライド部120aを後方カバー112側へ蹴って移動させると、スライド連動ワイヤ123を介して右スライド部120aと接続されている左スライド部120bが前方カバー111側へ移動する。
これによって、左ラックギヤ121bに噛み合っている左駆動ギヤ131bから駆動軸136を介して駆動側変速ギヤ131cに正回転の駆動力を伝達する。
なお、右スライド部120aが後方カバー112側へ移動しても、右駆動ギヤ131aに設けられたラチェット(図示しない)によって、駆動軸136から右駆動ギヤ131aの逆回転の駆動力は伝達されないため、正回転の駆動力のみを従動軸134を介して駆動輪135に伝達して水陸両用移動装置100を前進することができる。
【0032】
このように、使用者が把持部140を持ってスライド部120上で歩行するように両足を交互に動かすことのみで、簡単に水陸両用移動装置100を地上で前進させることができる。
また、非駆動輪141は把持部140と貫通接続部材143で接続されているため、把持部140を貫通接続部材143を回転中心として回転操作することで、非駆動輪141も向きを変えることができ、これによって、例えば、前進する水陸両用移動装置100の進行方向を変えてカーブを曲がる等方向転換できる。
また、各スライド部120の前後にはクッション部材158が設けられているため、スライド部120を強く蹴って移動させた際に足や本体部110へかかる衝撃を吸収できる。
【0033】
また、本体部110の下面側には、ラックギヤ121と係合するように上下移動可能なスライドロック部材147が設けられており、把持部140近傍に設けられたスライドロックレバー144によってスライドロック部材147の上下移動を操作できるため、例えば、下り坂を移動する際等、前進する際にスライド部120を動作させる必要のない場合にスライドロックレバー144を操作してスライドロック連結腕147cを押し上げてスライドロック部材147をラックギヤ121と係合させることで、スライド部120の位置を固定でき、使用者がスライド部120上で簡単に安定した姿勢を維持できる。
【0034】
移動する水陸両用移動装置100を停止したい場合は、持ち手152を持ち上げるように操作してサドル150をサドル傾倒軸153を中心として回転し、接触押下点P1でストッパー操作部155を押下してストッパー151を押し下げてブレーキ機構を作動させる。
ストッパー151を所定量押し下げると、ストッパー151の下端が地面に到達してブレーキとして機能するとともに、駆動輪135と地面との接触を解除することができる。
これによって、水陸両用移動装置100の地上での前進を減速または停止することができる。
【0035】
なお、被係止部157と係止部156との係合可能位置を、ストッパー151の下端が地面に到達する高さに設定すれば、ストッパー151を押し下げる際、ストッパー操作部155の係止部156を被係止部157に係合することで、持ち手152を操作してストッパー151を押し下げ続けなくても、接触押下点P1でストッパー操作部155を押下した状態を維持できるため、水陸両用移動装置100の停止状態を使用者が操作し続けることなく維持できる。
さらに、ストッパー151を押し下げ続けた状態で使用者がスライド部120上で歩行動作を実施することで、水陸両用移動装置100は移動することがなく、ルームランナーとしても利用できる。
被係止部157と係止部156との係合を解除すれば、弾性部材154の反発力によってストッパー151およびストッパー操作部155は上昇してストッパー151の下端は地面から離脱するため、再び水陸両用移動装置100の移動を開始できる。
【0036】
次に、水上での移動方法および停止方法について説明する。
使用者は水陸両用移動装置100に乗り、把持部140を持って右スライド部120aに右足を置き、左スライド部120bに左足を置く。
次に、使用者が把持部140を持ちながら歩行するように左足を動かして、左足で左スライド部120bを後方カバー112側へ蹴って移動させた際、スライド連動ワイヤ123を介して左スライド部120bと接続されている右スライド部120aは、前方カバー111側へ移動する。
このとき、左スライド部120bの下面に設けられた左推進プレート122bは、水掻き面122sに水の抵抗を受けて平面部122fを左スライド部120bの下面に当接させるように回転(正回転)し、水掻き面122sが左スライド部120bの下面に対してほぼ垂直の向きで回転移動を止める。
【0037】
この状態で左スライド部120bが後方カバー112側へ移動するため、水掻き面122sによって水を十分に掻くことで推進力を得ることができ、水陸両用移動装置100を前進させることができる。
一方、右スライド部120aの下面に設けられた右推進プレート122aは、斜面部122tに水の抵抗を受けて平面部122fが右スライド部120aの下面から離脱する方向へ回転(逆回転)し、水掻き部122sを右スライド部120aの下面に近づけた状態で前方カバー111側へ移動する。
【0038】
これによって、斜面部122tが水からの抵抗をあまり受けることがない姿勢になるため、右スライド部120aが前方カバー111側へ移動しても右推進プレート122aは水を掻くことがなく、水陸両用移動装置100の前進を妨げるような力は発生せず、右スライド部120aを進出方向に移動させる際の使用者の負担も軽くできる。
左スライド部120bの後方カバー112側への移動と、右スライド部120aの前方カバー111側への移動は同時に実施されるため、水陸両用移動装置100は水掻き面122sによって水を掻いた際の推進力で前進することができる。
【0039】
次に、使用者は把持部140を持ちながら歩行するように右足を動かして、右足で右スライド部120aを後方カバー112側へ蹴って移動させると、スライド連動ワイヤ123を介して右スライド部120aと接続されている左スライド部120bが前方カバー111側へ移動する。
これによって、右推進プレート122aは、右スライド部120aの下面と水掻き面122sとの間に受ける水の抵抗によって徐々に右推進プレート122aを正回転させ、やがて水掻き面122sが右スライド部120aの下面に対してほぼ垂直の向きで回転移動を止める。
また、左スライド部120bは前方カバー111側へ移動しているため、左推進プレート122bは逆回転して左スライド部120bの下面に水掻き面122sを近づけて斜面部122tが水からの抵抗をあまり受けることがない姿勢となる。
【0040】
このように、右推進プレート122aによって水を掻いた際の推進力でも水陸両用移動装置100は前進することができ、使用者が把持部140を持ってスライド部120上で歩行するように両足を交互に動かすことのみで、簡単に水陸両用移動装置100を継続的に前進できる。
また、方向転換プレート142は貫通接続部材143と回転伝達ワイヤ145で接続されているため、把持部140を貫通接続部材143を回転中心として回転操作することで、方向転換プレート142も向きを変えることができ、これによって、前進する水陸両用移動装置100の進行方向を変える舵として機能する。
【0041】
移動する水陸両用移動装置100を停止したい場合は、持ち手152を持ち上げるように操作してサドル150をサドル傾倒軸153を中心として回転し、接触押下点P1でストッパー操作部155を押下してストッパー151を押し下げる。
ストッパー151を所定量押し下げると、左右一対のストッパー151にそれぞれ接続する左右一対の連動ロッド160が減速板159を接触押下点P2で押下する。
これによって、減速板159は減速板回転軸162を回転中心として回転を始め、やがて減速板159が減速抵抗面164をスライド部120の下面に対して略垂直な位置まで移動することで、減速抵抗面164が水の抵抗を大きく受けることができ、水陸両用移動装置100の水上でのブレーキとして機能する。
これによって、水陸両用移動装置100の水上での前進を減速または停止することができる。
【0042】
なお、減速板159は保持接続面163と本体部110とを保持スプリング161で接続されているため、ストッパー151およびストッパー操作部155を上昇させると連動ロッド160も上昇して減速板159の押下も解除されるため、保持スプリング161によって減速板159は引っ張られて自動的にスライド部120の下面と略平行な向きになり、ブレーキとしての機能を解除できる。
【0043】
以上のように、本発明の一実施形態の水陸両用移動装置100は、使用者のスライド部120の進退移動という共通の簡単な操作のみで、地上では駆動輪135を回転させ、水上では推進プレート122で水を掻いて簡単に前進移動することができ、地上から水上へ、水上から地上への移動も操作を変えることなく実施できる。
また、推進プレート122がスライド部120の進退移動方向と直交するプレート回転軸124でスライド部120に対して回転可能に接続されているため、プレート回転軸124と推進プレート122との距離が近く、水を掻く際の抵抗力で推進プレート122の変形や破損を十分抑制できる。
さらに、推進プレート122をスライド部120の下面に複数設けているため、水深の浅い箇所でも水上移動可能な程度の大きさの推進プレート122で、十分な推進力を得ることができる。
また、推進プレート122が本体部110の下方に大きく進出することがないため、駆動輪135や非駆動輪141を小さく形成することもでき、これによって、水深の浅い箇所でも駆動輪135が水底に触れずに水上移動することができる。
【0044】
なお、駆動輪135、非駆動輪141、ストッパー151、推進プレート122、方向転換プレート142、減速板159を着脱可能に構成すれば、例えば、水陸両用移動装置100を水上用移動装置として水上のみで利用する場合は、駆動輪135、非駆動輪141、ストッパー151を外すことで水陸両用移動装置100の重量を軽くでき、水上移動時の水から受ける抵抗を少なくすることができる。
また、例えば、水陸両用移動装置100を陸上用移動装置として陸上のみで利用する場合は、推進プレート122、方向転換プレート142、減速板159を外すことで水陸両用移動装置100の重量を軽くでき、陸上移動時の空気抵抗を抑制できる。
【0045】
ここで、本発明の他の実施形態の水陸両用移動装置200について、図15乃至図28を用いて説明する。
なお、本発明の一実施形態の水陸両用移動装置100と共通する箇所については、説明を省略し、図15乃至図28には、説明のため装置構成の一部のみ示す。
また、図19図21図24は、図面手前側の規制板287を図示しない。
【0046】
本発明の他の実施形態の水陸両用移動装置200は、把持部(図示しない)にブレーキレバー(図示しない)を有し、ブレーキレバー(図示しない)はブレーキワイヤ(図示しない)を介して後述するブレーキパッド(図示しない)を操作可能に構成されている。
ブレーキパッド(図示しない)は非駆動輪241および駆動輪235を挟持可能な位置に設けられ、ブレーキレバー(図示しない)を操作することでブレーキパッド(図示しない)で非駆動輪241および駆動輪235を挟持し、摩擦力によって非駆動輪241および駆動輪235の回転を直接止めるブレーキとして機能する。
【0047】
また、本発明の他の実施形態の水陸両用移動装置200には、図15に示すように、サドル傾倒軸253の回転軸と同軸上に回転軸を有するように配置されたレバー傾倒軸278に回転可能に接続された操作レバー270が設けられている。
操作レバー270は、操作腕271と連動腕272とを有し、操作腕271と連動腕272との接続部の近傍でレバー傾倒軸278に回転可能に接続されている。
操作腕271には、後述する解除ボタン274が設けられている。
連動腕272には、連動孔273が設けられ、ストッパー操作部255に設けられたストッパー連動ピン277が連動孔273内を移動可能に配置されており、操作腕271を上方に引き上げることで、連動腕272はレバー傾倒軸278を回転中心に下方へ移動する。
このとき、連動孔273内に配置されたストッパー連動ピン277も下方へ移動する力を連動腕272から受けるため、ストッパー連動ピン277に接続されたストッパー操作部255とともにストッパー251も下方へ移動してブレーキ機構が作動する。
係止部256と被係止部257とが係合可能な所定の位置まで移動させた後に操作腕271の操作を解除すると、係止部256と非係止部257とが係合し、ストッパー251の下方へ移動した状態は維持される。
【0048】
解除ボタン274は、ワイヤ挿入管276内を通過する解除用ワイヤ275を介して被係止部257に接続され、解除ボタン274を操作して解除用ワイヤ275を引っ張ることで被係止部257を撓ませ、係止部256と被係止部257との係合を解除してストッパー251を初期位置に簡単に復帰させることができる。
【0049】
さらに、本発明の他の実施形態の水陸両用移動装置200には、図16図17に示すように、駆動輪235を挟むように配置された1対の補助連動片280を介してストッパー251に接続された補助輪286と、1対の補助連動片280の外側から駆動輪235を挟むように配置されたL字型の規制板287が設けられている。
補助連動片280は、第1補助連動腕281と第2補助連動腕282とを有し、第1補助連動腕281と第2補助連動腕282との接続部の近傍で従動軸234に回転可能に接続されている。
第1補助連動腕281には、補助連動孔283が設けられ、ストッパー251に設けられた補助連動ピン284が補助連動孔283内を移動可能に配置されており、ストッパー251の昇降移動によって、第1補助連動腕281は従動軸234を回転中心に上下に移動可能に構成されている。
【0050】
第2補助連動腕282の端部には、補助回転軸285が設けられ、補助回転軸285を回転中心として回転可能な補助輪286が設けられている。
すなわち、補助輪286は、ストッパー251の昇降に連動して、補助連動片280を介してストッパー251の昇降方向とは反対側に移動可能に構成されている。
また、第2補助連動腕282は若干の弾性を有しており、第2補助連動腕282の駆動輪235に対向する面には、ブレーキシュー289が設けられている。
規制板287は、第2補助連動腕282の軌道上で第2補助連動腕282に干渉可能な位置まで突出した押圧突起288を有し、押圧突起288の先端は半球状に形成されている。
【0051】
次に、本発明の他の実施形態の水陸両用移動装置200の、ストッパー251と補助輪286との位置関係について、図15乃至図24を用いて説明する。
まず、図15乃至図17に示すように、駆動輪235が接地した状態では、水陸両用移動装置200は前進することが可能である。
この状態から、操作腕271を押し下げると、図18および図19に示すように、連動腕272とともにストッパー操作部255は上方に移動し、ストッパー251も上方へ移動する。
補助輪286はストッパー251とは反対に下方に移動して接地し、さらにストッパー251が上方へ移動すると、駆動輪235を地面から離脱させる。
駆動輪235は、水陸両用移動装置200の前進方向にのみ回転を許容しているため、駆動輪235が接地した状態では水陸両用移動装置200を後退させることができないが、駆動輪235が接地しない状態まで補助輪286を下方に移動することで、例えば、使用者が水陸両用移動装置200から降りて手で本体部210を押す等して水陸両用移動装置200を非駆動輪241と補助輪286とで支持した状態で簡単に前後自由に移動させることができる。
【0052】
操作腕271を引き上げれば、図20乃至図22に示すように、連動腕272とともにストッパー操作部255は下方に移動し、ストッパー251も下方へ移動し、接地することで水陸両用移動装置200の移動を減速または停止することができる。
第2補助連動腕282はストッパー251とは反対に上方へ移動し、やがて規制板287の押圧突起288に接触する。
押圧突起288の先端は半球状に形成されているため、若干の弾性を有する第2補助連動腕282は押圧突起288に沿って駆動輪235側へ変形しながらさらに上方へ移動する。
このとき、第2補助連動腕282に設けられたブレーキシュー289が、駆動輪235に押し付けられることで、駆動輪235にブレーキがかかり、駆動輪235の回転を減速、停止する。
【0053】
また、補助輪286はストッパー251とは反対に上方へ移動し、ストッパー251と駆動輪235との両方が接地した状態では、補助輪286は地面から離脱している。
また、操作腕271をさらに引き上げることで、図24に示すように、補助輪286だけでなく駆動輪235も地面から離脱させることもできる。
このとき、第2補助連動腕282は押圧突起288の上方へ移動するため、第2補助連動腕282は押圧突起288からの押圧を解除され、元の形状に復帰する。
なお、操作レバー270に設けられた解除ボタン274を押すことで、ストッパー251だけでなく、補助連動片280および補助輪286も初期位置に簡単に復帰させることができる。
【0054】
以上のように、操作腕271を操作することのみで、サドル250を倒すことなくストッパーや補助輪286を操作することができるため、サドル250に腰掛けた状態でも、簡単に水陸両用移動装置200を進退移動させたり、減速、停止することができる。
なお、図23のようにサドル250を倒すことでストッパー251や補助輪286の位置を操作することもできる。
【0055】
次に、水陸両用移動装置200の緊急停止機構290について、図25乃至図28を用いて説明する。
緊急停止機構290は、図25乃至図27に示すように、本体部210の裏面中央部付近のスライドロック連結腕247c近傍に配置された固定部293および固定部293と引き寄せスプリング295を介して接続された緊急停止体294と、緊急停止体294と連結ワイヤ292を介して接続された補助滑車291とを有している。
【0056】
固定部293は、本体部210に相対位置を固定され、緊急停止体294は、引き寄せスプリング295の伸縮方向に沿って移動可能に構成されている。
緊急停止体294のうち、スライドロック連結腕247cに対向する面は、第1平坦面296と、第1平坦面296よりもスライドロック連結腕247c側に膨出する第2平坦面298と、第1平坦面296と第2平坦面298とをつなぐ傾斜面297とが設けられている。
緊急停止体294は、補助滑車291から連結ワイヤ292を介して引っ張られているため、引き寄せスプリング295を伸ばしながら補助滑車291側へ移動しており、スライドロック連結腕247cと第1平坦面296とが対向する位置を保持する。
【0057】
補助滑車291は、右スライド部220aと左スライド部220bに接続されたスライド連動ワイヤ223を案内するように配置されている。
これによって、正常時は右スライド部220aと左スライド部220bとによってスライド連動ワイヤ223が張った状態であるため、引き寄せスプリング295が緊急停止体294を固定部293側に引っ張っていても、補助滑車291は緊急停止体294側へ移動することがなく、緊急停止体294はスライドロック連結腕247cと第1平坦面296とが対向する位置を維持する。
【0058】
ここで、スライド連動ワイヤ223が切れる等、右スライド部220aと左スライド部220bとの連動が維持できない不具合が発生してスライド連動ワイヤ223の張りが解除されると、緊急停止体294は補助滑車291ごと引き寄せスプリング295側へ引っ張られる。
これによって、緊急停止体294は傾斜面297をスライドロック連結腕247cに接触させながら徐々に固定部293側へ移動し、図28に示すように第2平坦面298でスライドロック連結腕247cを押し上げる位置を維持する。
緊急停止体294によって押し上げられたスライドロック連結腕247cは、スライドロック部材247をラックギヤ221と係合させるため、スライド部220の位置を固定でき、使用者がスライド部220上で安定した姿勢を維持したまま安全に不具合に対応することができる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0060】
なお、上述した実施形態では、推進プレートは各スライド部の下面に複数設けられているものとして説明したが、本発明の構成はこれに限定されず、例えば、推進プレートは各スライド部の下面に1つずつ設けられていてもよい。
また、上述した実施形態では、推進プレートはスライド部の下面に当接可能な平面部と、水掻き部と、曲面部と斜面部とを有するものとして説明したが、推進プレートの構成はこれに限定されず、例えば、推進プレートが均一な厚みの平板状に形成されていてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、本体部には、前方カバーおよび後方カバーが設けられているものとして説明したが、本体部の構成はこれに限定されず、例えば、前方カバーや後方カバーがなくてもよい。
また、上述した実施形態では、右スライド部と左スライド部とは、スライド連動ワイヤで接続されているものとして説明したが、スライド部の構成はこれに限定されず、例えば、右スライド部と左スライド部がそれぞれ独立して進退可能に構成されていてもよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、本体部のサドルの後方には、ストッパーおよびストッパー操作部が設けられており、サドルはサドル傾倒軸を回転中心として回転可能に構成され、押下接触点でストッパーを押下するものとして説明したが、サドルやストッパーの構成はこれに限定されず、例えば、サドルがなくてもよく、ストッパーがなくてもよい。
また、上述した実施形態では、水陸両用移動装置は、スライド部の上面が水上に露出した状態で水に浮くものとして説明したが、水陸両用移動装置の構成はこれに限定されず、例えば、スライド部の上面が水面よりも若干下方に位置していてもよい。
【0063】
また、上述した実施形態では、スライド部の前方および後方には、クッション部材が設けられているものとして説明したが、本体部の構成はこれに限定されず、例えば、クッション部材がスライド部の前方側にのみ設けられていてもよく、クッション部材がなくてもよい。
また、上述した実施形態では、右駆動ギヤおよび左駆動ギヤには、それぞれラチェットが内蔵されているものとして説明したが、駆動ギヤの構成はこれに限定されず、例えば、ラチェットが駆動ギヤと別体で設けられていてもよい。
【0064】
また、上述した実施形態では、ラックギヤと駆動ギヤを噛み合わせることでスライド部の移動を駆動力として伝達するものとして説明したが、駆動力の伝達方法はこれに限定されず、例えば、駆動ギヤの代わりにゴムタイヤを用いて、スライド部の下面との摩擦力でゴムタイヤを回転し駆動力として伝達してもよい。
また、上述した実施形態では、緊急停止体と補助滑車とは連結ワイヤで接続されているものとして説明したが、緊急停止機構の構成はこれに限定されず、例えば、緊急停止体と補助滑車とが丸棒で接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
100、200 ・・・ 水陸両用移動装置
110、210 ・・・ 本体部
111 ・・・ 前方カバー
112、212 ・・・ 後方カバー
120、220 ・・・ スライド部
120a、220a ・・・ 右スライド部
120b、220b ・・・ 左スライド部
121、221 ・・・ ラックギヤ
121a、221a ・・・ 右ラックギヤ
121b、221b ・・・ 左ラックギヤ
122 ・・・ 推進プレート
122a ・・・ 右推進プレート
122b ・・・ 左推進プレート
122r ・・・ 曲面部
122f ・・・ 平面部
122s ・・・ 水掻き部
122t ・・・ 斜面部
123、223 ・・・ スライド連動ワイヤ
124 ・・・ プレート回転軸
130 ・・・ 駆動力伝達ユニット
131 ・・・ 駆動ギヤ
131a ・・・ 右駆動ギヤ
131b ・・・ 左駆動ギヤ
131c ・・・ 駆動側変速ギヤ
132、232 ・・・ 従動側変速ギヤ
133、233 ・・・ 駆動力伝達ベルト
134、234 ・・・ 従動軸
135、235 ・・・ 駆動輪
136 ・・・ 駆動軸
140 ・・・ 把持部(ハンドル)
141、241 ・・・ 非駆動輪
142、242 ・・・ 方向転換プレート
143 ・・・ 貫通接続部材
144 ・・・ スライドロックレバー
145 ・・・ 回転伝達ワイヤ
146、246 ・・・ スライドロックワイヤ
147、247 ・・・ スライドロック部材
147c、247c ・・・ スライドロック連結腕
150、250 ・・・ サドル
151、251 ・・・ ストッパー
152、252 ・・・ 持ち手
153、253 ・・・ サドル傾倒軸
154、254 ・・・ 弾性部材
155、255 ・・・ ストッパー操作部
156、256 ・・・ 係止部
157、257 ・・・ 被係止部
158、258 ・・・ クッション部材
159、259 ・・・ 減速板
160 ・・・ 連動ロッド
161、261 ・・・ 保持スプリング
162 ・・・ 減速板回転軸
163 ・・・ 保持接続面
164 ・・・ 減速抵抗面
270 ・・・ 操作レバー
271 ・・・ 操作腕
272 ・・・ 連動腕
273 ・・・ 連動孔
274 ・・・ 解除ボタン
275 ・・・ 解除用ワイヤ
276 ・・・ ワイヤ挿入管
277 ・・・ ストッパー連動ピン
278 ・・・ レバー傾倒軸
280 ・・・ 補助連動片
281 ・・・ 第1補助連動腕
282 ・・・ 第2補助連動腕
283 ・・・ 補助連動孔
284 ・・・ 補助連動ピン
285 ・・・ 補助回転軸
286 ・・・ 補助輪
287 ・・・ 規制板
288 ・・・ 押圧突起
289 ・・・ ブレーキシュー
290 ・・・ 緊急停止機構
291 ・・・ 補助滑車
292 ・・・ 連結ワイヤ
293 ・・・ 固定部
294 ・・・ 緊急停止体
295 ・・・ 引き寄せスプリング
296 ・・・ 第1平坦面
297 ・・・ 傾斜面
298 ・・・ 第2平坦面
P1、P2 ・・・ 接触押下点
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