(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108140
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】単一の光学的ポンピング磁力計を用いたMRI及びMEG検出
(51)【国際特許分類】
G01R 33/26 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
G01R33/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024008066
(22)【出願日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】63/482,212
(32)【優先日】2023-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/508,084
(32)【優先日】2023-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】メアリー サリット
(72)【発明者】
【氏名】アルギリオス デリス
(72)【発明者】
【氏名】ケネス サリット
(57)【要約】 (修正有)
【課題】単一の光学的ポンピング磁力計を用いたMRI及びMEG検出のためのシステムが提供される。
【解決手段】一例では、システムは、RF原子磁力計を備えるチップスケールデバイスを備え、RF原子磁力計は、レーザ光を放射するように構成されたレーザと、光検出器と、レーザと光検出器との間の蒸気セルと、レーザによって放射されたレーザ光を円偏光させるように構成された円偏光子と、を備える。円偏光レーザビームは、蒸気セル内の原子のスピンを配向状態にポンピングし、蒸気セル内の原子を探査するように構成され、探査は、局所RF場を検出することを含む。チップスケールデバイスは、ソースからのRF信号をRF原子磁力計に結合するように構成された磁束変圧器コイル(複数可)と、レーザによって放射されたレーザ光の光軸に対して45度に配向されたDC磁場を生成するように構成されたDCコイル(複数可)とを更に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム(10、50)であって、
チップスケールデバイス(11)を備え、前記チップスケールデバイスは、
無線周波数原子磁力計(12、200、250)を備え、前記無線周波数原子磁力計は、
レーザ光を放射するように構成されたレーザ(210、254)と、
光検出器(216、262)と、
前記レーザ(210、254)と前記光検出器(216、262)との間のレーザ光の光路内の蒸気セル(214、260)と、
前記レーザ(210、254)によって放射された前記レーザ光を円偏光させるように構成された円偏光子(211、258)と、を備え、円偏光されたレーザビームは、前記蒸気セル(214、260)内の原子のスピンを配向状態にポンピングし、前記蒸気セル(214、260)内の前記原子を探査するように構成され、探査は局所無線周波数場を検出することを含み、前記チップスケールデバイスは更に、
ソースからの無線周波数信号を前記無線周波数原子磁力計(12、200、250)に結合するように構成された1つ以上の磁束変圧器コイル(16)と、
少なくとも1つのコイルを含む直流(DC)コイル(15)のセットと、を備え、前記DCコイルのセット(15)は、前記レーザ(210、254)によって放射される前記レーザ光の光軸に対して45度に配向されたDC磁場を生成するように構成されている、システム(10、50)。
【請求項2】
前記無線周波数原子磁力計(12、200、250)及び前記DCコイルのセット(15)を取り囲む受動磁気シールド(14)を更に備える、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
1つ以上のプロセッサ(20)及び第2の磁力計(28)を更に備え、前記1つ以上のプロセッサ(20)は、前記DCコイルのセット(15)及び前記第2の磁力計(28)に通信可能に結合され、前記第2の磁力計(28)は、外部DC場を検出し、前記外部DC場の測定値を前記1つ以上のプロセッサ(20)に提供するように構成され、前記1つ以上のプロセッサ(20)は、前記検出された外部DC場を緩和するために、前記DCコイルのセット(15)に対するDC電気バイアスを調整するように構成されている、請求項1に記載のシステム(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2023年1月30日に出願された、「MRI AND MEG DETECTION WITH A SINGLE OPTICALLY PUMPED MAGNETOMETER」と題する米国仮出願第63/482212号の優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、2015年10月20日に発行され、「VAPOR CELL ATOMIC CLOCK PHYSICS PACKAGE」と題された米国特許第9,164,491号、及び2018年1月2日に発行され、「SINGLE BEAM RADIO FREQUENCY ATOMIC MAGNETOMETER」と題された米国特許第9,857,441号に関連し、それらの全ての内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
磁気共鳴映像法(Magnetic Resonance Imaging、MRI)は、脳損傷のための重要な診断ツールである。しかしながら、臨床研究は、脳に心理的変化を引き起こすのに十分に重篤であるが、MRI単独では検出することができない軽度から中等度の外傷性脳傷害症例の半分以上が、脳磁図(MagnetoEncephaloGraphy、MEG)の追加によって検出することができることを示している。MRIとMEGとの組み合わせ(まとめて磁気ソースイメージング(Magnetic Source Imaging、MSI)と呼ばれることもある)は、脳の構造及び活動を一緒に理解することを可能にし、脳機能及びこれを改善するために使用することができる介入の新たな理解につながる可能性がある。
【0004】
MRIの使用は、それが必要とする高価で不動の装置によって現在制限されている。この装置のコスト及びサイズは、従来のMRIで使用される約1Tの磁場を生成するのに必要な大型の超伝導磁石のコスト及びサイズによって支配される。そのサイズ及びコストの極低温冷却磁石は、一時的な場所又は移動場所に配備することができない。同様に、極低温冷却は、MEGに一般的に使用される超伝導量子干渉デバイス(Superconducting Quantum Interference Device、SQUID)磁力計のタイプに必要とされる。MEGは、MRIよりも更に感度の高い診断ツールであり、より広範な利用可能性は、あらゆる種類の脳損傷を有する患者の転帰を改善し得る。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの態様では、システムは、チップスケールデバイスを備える。チップスケールデバイスは、無線周波数原子磁力計を備える。無線周波数原子磁力計は、レーザ光を放射するように構成されたレーザと、光検出器と、レーザと光検出器との間のレーザ光の光路内の蒸気セルと、レーザによって放射されたレーザ光を円偏光させるように構成された円偏光子と、を備える。円偏光レーザビームは、蒸気セル内の原子のスピンを配向状態にポンピングし、蒸気セル内の原子を探査するように構成され、探査は、局所無線周波数場を検出することを含む。チップスケールデバイスは、ソースからの無線周波数信号を無線周波数原子磁力計に結合するように構成された1つ以上の磁束変圧器コイルを更に備える。チップスケールデバイスは、少なくとも1つのコイルを含む直流(DC)コイルのセットを更に備え、DCコイルのセットは、レーザによって放射されるレーザ光の光軸に対して45度に配向されたDC磁場を生成するように構成される。
【0006】
いくつかの態様では、システムは、無線周波数原子磁力計及びDCコイルのセットを取り囲む受動磁気シールドを更に備える。
【0007】
他の態様では、システムは、1つ以上の制御部と、第2の磁力計と、を更に備える。1つ以上の制御部は、DCコイルのセット及び第2の磁力計に通信可能に結合される。第2の磁力計は、外部DC場を検出し、外部DC場の測定値を1つ以上の制御部に提供するように構成される。1つ以上の制御部は、検出された外部DC場を緩和するために、DCコイルのセットに対するDC電気バイアスを調整するように構成される。
【0008】
いくつかの態様では、システムは、上述し、アレイ状に配置された複数のチップスケールデバイスを備える。
【0009】
いくつかの態様では、システムは、アレイ状に配置された複数のチップスケールデバイスを備える。複数のチップスケールデバイスの各チップスケールデバイスは、レーザ光を放射するように構成されたレーザと、光検出器と、レーザと光検出器との間のレーザ光の光路内の蒸気セルと、レーザによって放射されたレーザ光を円偏光させるように構成された円偏光子と、を備える無線周波数原子磁力計を備える。円偏光レーザビームは、蒸気セル内の原子のスピンを配向状態にポンピングし、蒸気セル内の原子を探査するように構成され、探査は、局所無線周波数場を検出することを含む。複数のチップスケールデバイスの各チップスケールデバイスは、ソースからの無線周波数信号を無線周波数原子磁力計に結合するように構成された1つ以上の磁束変圧器コイルを更に備える。複数のチップスケールデバイスの各チップスケールデバイスは、少なくとも1つのコイルを含む直流(DC)コイルのセットを更に備え、DCコイルのセットは、レーザによって放射されるレーザ光の光軸に対して45度に配向されたDC磁場を生成するように構成される。
【0010】
いくつかの態様では、システムは、チップスケールデバイスを備える。チップスケールデバイスは、レーザ光を放射するように構成されたレーザと、光検出器と、レーザと光検出器との間のレーザ光の光路内の蒸気セルと、レーザによって放射されたレーザ光を円偏光させるように構成された円偏光子と、を備える無線周波数原子磁力計を備える。円偏光レーザビームは、蒸気セル内の原子のスピンを配向状態にポンピングし、蒸気セル内の原子を探査するように構成され、探査は、局所無線周波数場を検出することを含む。チップスケールデバイスは、ソースからの無線周波数信号を無線周波数原子磁力計に結合するように構成された1つ以上の磁束変圧器コイルを更に備える。チップスケールデバイスは、少なくとも1つのコイルを含む直流(DC)コイルのセットを更に備える。DCコイルのセットは、レーザによって放射されるレーザ光の光軸に対して45度に配向されたDC磁場を生成するように構成される。システムは、外部DC場を検出するように構成された第2の磁力計を更に備える。システムは、チップスケールデバイス及び第2の磁力計に通信可能に結合された1つ以上のプロセッサを更に備える。システムは、磁気共鳴撮像(MRI)動作モード及び脳磁図(MEG)動作モードで動作するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
説明及び以下の図面を考慮して検討されると、本発明の実施形態はより容易に理解することができ、更なる利点及びその使用がより容易に明らかとなり得る。
【
図1】MRI測定を実行するための例示的なシステムの図である。
【
図3】MRI及び/又はMEG測定を実行するための例示的なシステムの図である。
【
図4A】MRI動作のためのラーモア歳差運動の図である。
【
図4B】MEG動作のためのラーモア歳差運動の図である。
【
図5A】チップスケールデバイスのアレイのブロック図である。
【
図5B】MRI及び/又はMEG測定を実行するためのチップスケールデバイスの例示的なアレイの図である。
【0012】
慣例に従って、記載された様々な特徴は一定の縮尺で描かれているのではなく、本発明に関連する特徴を強調するように描かれている。参照文字は、図及び本文を通して同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照し、図面には、本発明が実施され得る特定の例示的な実施形態の例として示される。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することを可能にするために十分に詳細に説明されており、他の実施形態を利用することができ、本発明の範囲から逸脱することなく、論理的、機械的、及び電気的変化がなされ得ることを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0014】
上述したように、MRI及びMEG技術はそれぞれ、極低温冷却を必要とする大型で高価な超伝導システムを使用する。これらの技術は、典型的には、組み合わせることが困難であり、一般に、非院内/科学環境又は投資が不足している地域ではアクセス不可能である。十分な分解能を有するミリテスラ(mT)の磁場強度で生成され感知されるMRI信号は、MRIとMEGの組み合わせの可能性とは別の追加の用途を有する。
【0015】
低磁場核磁気共鳴(Low-Field Nuclear Magnetic Resonance、LF-NMR)及び0磁場核四重極共鳴(Nuclear Quadrupole Resonance、NQR)は、MRIなどの撮像用途に、又は化学組成及び材料特性を決定するための分光法に使用することができる。典型的には、低磁場及び0磁場測定は、従来の高磁場NMR及びMRIにおいて達成可能であるよりも低い信号対雑音レベルを有するが、これらの測定は、異なる爆発物、並びに潜在的にいくつかの核及び生物学的物質の分光学的指紋等のセキュリティ用途を有するいくつかを含む、異なる特性を検出するために使用されることができる。MRIの信号対雑音比は、磁場強度の減少とともに低下するため、低磁場MRIは高感度検出器の恩恵を受ける。低Tc超伝導量子干渉デバイス(Superconducting Quantum Interference Device、SQUID)を使用する超低磁場MRIシステムは、ヒトの脳の撮像に成功しているが、依然として極低温冷却を必要とし、医療分野に対するそれらの実用的価値を制限している。
【0016】
多くの低磁場技術は、従来の高磁場NMR及びMRIにおけるような大きな超伝導磁石の必要性を排除し、これは、低磁場NMR及びNQRシステムが潜在的により携帯可能であり、小型化可能であり、より低電力であることを可能にする。MRIシステムが小型化されれば、外傷性脳損傷が現場で検出されることを可能にし、早期診断及び治療を可能にすることによって臨床転帰を改善する。mTの磁場強度では、従来の無線周波数送受信アンテナを用いて撮像を行うことができる。しかしながら、これらのシステムの信号対雑音比は、低電界では、対応する信号周波数がキロヘルツ領域にあるという事実によって制限され、長波長は、小型アンテナが理想的な性能を有さないことを意味し、ジョンソン雑音が大きい。
【0017】
少なくとも上述の理由により、当該技術分野において、MRI及びMEG技術のためのより手頃で携帯可能な解決策が必要とされている。
【0018】
本明細書に記載のシステムは、MRI及び/又はMEG測定を実行するように構成されたチップスケールデバイスを提供する。チップスケールデバイスは、RF原子磁力計と、試料からのRF信号をRF原子磁力計に結合するように構成された1つ以上の磁束変圧器コイルと、DC磁場を生成するように構成されたDCコイルのセットとを含む。いくつかの例では、チップスケールデバイスは、受動磁気シールドを更に備え、MRI測定のみを実行するように構成される。他の例では、チップスケールデバイスは、DCコイルのセットを利用して、望ましくない磁場を能動的に緩和し、MRI測定を実行するためにRF原子磁力計に印加されるDC磁場を調整する。いくつかのそのような例では、チップスケールデバイスは、DCコイルのセットを非アクティブ化し、スピン交換緩和フリー(Spin Exchange Relaxation-Free、SERF)磁力計として動作してMEG測定を実行するように構成される。複数のチップスケールデバイスを一緒にグループ化して、より大きな試料サイズのためのMRI及びMEG測定を生成するために使用することができるアレイを形成することができる。
【0019】
図1は、MRI測定を実行するための例示的なシステム10のブロック図である。
図1に示される例では、システム10は、メモリ22に結合された少なくとも1つのプロセッサ20を含む少なくとも1つのコンピューティングデバイス18に通信可能に結合されたチップスケールデバイス11を含む。
【0020】
図1に示される例では、チップスケールデバイス11は、RF原子磁力計12、受動磁気シールド14、DCコイルのセット15、及び1つ以上の磁束変圧器コイル16を含む。
図1に示される例では、DCコイル15のセットは、RF原子磁力計12を取り囲み、受動磁気シールドは、RF原子磁力計12及びDCコイル15のセットの両方を取り囲む。いくつかの例では、システム10は、チップスケールデバイス11の1つ以上の構成要素(例えば、DCコイル15のセット、RF原子磁力計12、及び/又は1つ以上の磁束変圧器コイル16)に通信可能に結合された1つ以上の制御部26を更に備える。いくつかのそのような例では、1つ以上の制御部26は、コンピューティングデバイス18に含まれ得る。
【0021】
RF原子磁力計12は、様々な設計を使用して実装することができる。いくつかの例では、RF原子磁力計12は、単一のレーザビームを利用して、蒸気セル内の原子を光学的にポンピングするとともに探査する単一ビームRF原子磁力計である。
図2A~
図2Bは、チップスケールデバイス11においてRF原子磁力計12として使用するのに適した例示的なRF原子磁力計200、250を示す。
【0022】
図2Aは、チップスケールデバイス11内のRF原子磁力計12として使用するのに適した第1の例示的なRF原子磁力計200の断面図である。RF原子磁力計200は、RF原子磁力計200の構成要素を収容するための空洞203を画定するセラミック本体202を含む。空洞203内の構成要素を含むセラミック本体202は、セラミックリードレスチップキャリア(Ceramic Leadless Chip Carrier、CLCC)パッケージを含むことができる。RF原子磁力計200はまた、空洞203及びその中の構成要素を収容する閉じたパッケージを形成するために、セラミック本体202の空洞203の上に嵌合するように構成された非磁性(例えば、セラミック)蓋204を含むことができる。いくつかの例では、セラミック蓋204は、概して平面形状を有する。
図2Aに示される例では、蓋204を本体202に封止するためにはんだシール206が使用される。一例では、(例えば、蓋204を本体202に封止するための)RF原子磁力計200のダイ取り付け及び封止動作は、封止されたパッケージ内の低圧を可能にするために磁束を使用せずに達成され、これは、パッケージの熱伝導率を最小化し、したがって、一定の高温を維持するために必要な加熱器電力の量を低減することによって、より低い電力動作を可能にすることができる。いくつかの例では、蓋204は、真空中で本体202に封止することができる。この設計は、本体202に対する蓋204のバッチ真空封止を可能にすることができる。RF原子磁力計200はまた、セラミック蓋204の内面の大部分を被覆するゲッター膜を含むことができる。
【0023】
いくつかの例では、セラミック本体202は、本体202が空洞203を画定するように、一方の側(例えば、上部)が開いている。蓋204は、空洞203を囲むように本体202の開放側を覆うように構成される。いくつかの例では、空洞203は、開口側(例えば、上部)から見たときに、概して五角形の断面形状を有する。他の例では、空洞203は、開口側(例えば、上部)から見たときに概して円形の断面を有する。いずれの場合も、空洞203は、ベース面205と、1つ以上の内側面207と、を含むことができる。
図2Aに示される例では、1つ以上の側面207は、例えば、本体202の空洞内の構造を支持するために、その中に画定された1つ以上の段209を有する。
【0024】
図2Aに示される例では、RF原子磁力計200は、レーザ210、円偏光子211、蒸気セル214、及び光検出器216などの構成要素を支持するための1つ以上の足場208、212、220を含む。いくつかの例では、足場208、212、220は、フレームの間に懸架された膜を含むことができる。足場208、212、220はまた、膜に追加の構造を提供するために膜に取り付けられた補剛部材を含むことができる。RF原子磁力計200に使用することができるサイズで足場208、212、220を製造するために、足場208、212、220は、半導体製造プロセスを使用して製造することができる。したがって、フレーム及び補剛部材はシリコンから構成することができ、膜はポリイミドから構成することができる。ポリイミドは、足場208、212、220上の補剛部材及び構成要素をフレーム及び本体202から熱的に分離することができる。
【0025】
図2Aに示される例では、RF原子磁力計200は、空洞203内に取り付けられた下部足場208、上部足場212、及び中間足場220を含む。いくつかの例では、下部足場208、上部足場212、及び中間足場220は、互いに平行に、かつ空洞203のベース面205に平行に配置することができる。いくつかのそのような例では、下部足場208は、フラックスレスダイアタッチ(例えば、複数の金(Au)スタッドバンプ)を介して空洞203のベース面205に取り付けられる。下部足場208は、レーザ210、及びいくつかの例では加熱器(図示せず)のための支持構造として機能するように構成される。下部足場208及びその上の構成要素(例えば、レーザ210)は、セラミック本体202の空洞203の内側面207の下側段209上のパッドへのワイヤボンドを介して、本体202上のピンに電気的に結合され得る。いくつかの例において、レーザ210は、垂直共振器面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser、VCSEL)であってもよい。
【0026】
図2Aに示される例では、下部足場208は、ベース面205に対向する第1の側213と、第1の側213の反対側であり、蓋204、中間足場220、及び上部足場212に面する第2の側215と、を含む。
図2Aに示される例では、フレーム219及び補剛部材223は、第1の側213にある。いくつかの例では、補剛部材223は、その質量を低減するために複数の開口を画定することができる。
図2Aに示される例では、レーザ210は、第2の側215に取り付けられる。いくつかの例では、レーザ210は、例えばフリップチップ実装を使用して第2の側215にはんだ接合することができる。
【0027】
上述したように、下部足場208は、フレーム219及びそれに取り付けられた補剛部材223を有する膜を含むことができる。フレーム219及び補剛部材223は、フレーム219と補剛部材223との間に延在する膜の複数のテザー(図示せず)を用いて膜上で互いに分離することができる。フレーム219を本体202に取り付けるために、複数のスタッドバンプ(図示せず)をフレーム219上に設けることができる。構成要素(例えば、レーザ210)は、補剛部材223の領域内の膜上に搭載することができる。補剛部材上の構成要素をスタッドバンプに電気的に結合するために、トレースがテザーを横切って延びることができる。
【0028】
図2Aに示される例では、上部足場212及び中間足場220は、1つ以上のスペーサ218(例えば、脚構造、ワッシャ)の両側に搭載される。上部足場212は、光検出器216のための支持構造として機能するように構成され、中間足場220は、円偏光子211のための支持構造として機能するように構成される。加えて、上部足場212及び中間足場220は、アルカリ蒸気セル214のための支持構造として機能するように構成される。特に、蒸気セル214は、上部足場212と中間足場220との間に支持され得る。したがって、
図2Aに示される例では、蒸気セル214は、一方の端部で上部足場212に取り付けられ、反対側の端部で中間足場220に取り付けられる。更に、蒸気セル214は、スペーサ218の開口部内に配置することができる。したがって、上部足場212、中間足場220、及びスペーサ218は、蒸気セル214のための支持構造を形成する。いくつかの例では、蒸気セル214の上面のための加熱器(図示せず)を上部足場212に搭載することができ、及び/又は蒸気セル214の下面のための加熱器(図示せず)を中間足場220に搭載することができる。別の例では、蒸気セル214の1つ以上の表面上に1つ以上の加熱器を製造することができる。一例では、スペーサ218は、その中に開口を画定するリング形状(例えば、五角形リング形状)を有することができる。スペーサ218は、蒸気セル214がスペーサ218内に画定された開口部内にあるように、蒸気セル214の周りに配置することができる。
【0029】
一例では、スペーサ218はまた、上部足場212及び中間足場220を上段209に結合する継手(複数可)上の疲労を低減するように機能することができる。スペーサ218は、本体202の熱膨張係数と上部足場212及び中間足場220の熱膨張係数との間にある熱膨張係数を有する材料から構成されることによって、疲労を低減することができる。したがって、本体202、上部足場212、及び中間足場220が温度変化に起因して膨張及び収縮するとき、スペーサ218は変化の一部を吸収することができる。例えば、本体202は、7ppm/℃の熱膨張係数を有するセラミックから構成することができ、スペーサ218は、5ppm/℃の熱膨張係数を有することができ、上部足場212及び中間足場220は、3ppm/℃の熱膨張係数を有することができる。別の例では、スペーサ218は、本体202及び蓋204と同じ材料で形成することができる。スペーサ218は、上部足場212及び中間足場220のための機械的支持及び電気接触を提供することができる。いくつかの例では、スペーサ218は、表面実装技術(Surface Mount Technology、SMT)電子機器などの追加の電子構成要素のための機械的支持及び電気的接触も提供することができる。
【0030】
図2Aに示される例では、上部足場212及び中間足場220が取り付けられたスペーサ218は、本体202内の段209に取り付けられている。特に、スペーサ218は上段209に取り付けられている。空洞203の側面207内の段209は、少なくとも部分的に、上部足場212及び中間足場220を下部足場208から離間させるために使用されることができる。スペーサ218は、空洞203の上段209から上に延在して、上部足場212を下部足場208及び中間足場220から更に離間させ、中間足場220と上部足場212との間に蒸気セル214のための空間を提供する。いくつかの例では、スペーサ218は、セラミックから構成され得る。
【0031】
上部足場212とスペーサ218との組み合わせは、スペーサ218の頂部上で本体202の空洞203を横断することができる。同様に、中間足場220及びスペーサ218は、スペーサ218の底部上で本体202の空洞203を横断することができる。一例では、上部足場212及び中間足場220は、フラックスレスダイアタッチを介してスペーサ218に取り付けられ得る。スペーサ218は、フラックスレスダイアタッチを介して本体202の上段209に取り付けることができる。一例では、フラックスレスダイアタッチは、複数の金(Au)スタッドバンプであり得る。
【0032】
図2Aに示される例では、上部足場212は、蓋204に対向する第1の側221と、第1の側221の反対側であり、中間足場220及び下部足場208に面する第2の側224と、を含む。
図2Aに示される例では、フレーム225及び補剛部材227は、第1の側221にある。いくつかの例では、補剛部材227は、その質量を低減するために複数の開口を画定することができる。
図2Aに示される例では、光検出器216及び蒸気セル214は、第2の側224に取り付けられ、蒸気セル214は、光検出器216の上に配置され、レーザ210からのレーザビーム217が円偏光子211を通り、次いで蒸気セル214を通って伝搬し、光検出器216によって検出され得るように、レーザ210及び円偏光子211と位置合わせされる。いくつかの例では、光検出器216は、例えばフリップチップ実装を使用して第2の側224にはんだ接合することができる。
図2Aに示される例では、複数のはんだボール226が第2の側224に取り付けられ、光検出器216の周りに配置される。複数のはんだボール226は、蒸気セル214が複数のはんだボール226にはんだ付けされ、光検出器216の上に配置され得るように、光検出器216よりも高い第2の側224の上の高さに突出する。いくつかの例では、蒸気セル214は、光検出器216から少なくとも200マイクロメートル離れて配置され得る。この間隙は、蒸気セル214と光検出器216との間から磁束を洗い流すことを可能にすることができる。一例では、複数のはんだボール226は、所望のサイズのはんだボールを生成するように調整された噴射プロセスを使用して形成することができる。一例では、はんだボール226は、足場212上に形成されると、RF原子磁力計200の更なる製造中にはんだボール226がその構造を概ね維持するように、高温融点を有するはんだから形成することができる。いくつかの例では、蒸気セル214は、ルビジウム原子をするアルカリ蒸気セルであり得る。
【0033】
図2Aに示される例では、上部足場212は、下部足場208及び中間足場220に対して反転位置にある。すなわち、下部足場208及び中間足場220上のフレーム219は、上部足場212のフレーム225から反対方向に突出する。更に、蒸気セル214は、上部足場212及び中間足場220のポリイミド層の間に配置することができる。
【0034】
図2Aに示される例では、上部足場212は、フレーム225及びそれに取り付けられた補剛部材227を有する膜を含む。フレーム225及び補剛部材227は、フレーム225と補剛部材227との間に延在する膜の複数のテザー(図示せず)を用いて膜上で互いに分離することができる。フレーム225を本体202に取り付けるために、複数のスタッドバンプ(図示せず)をフレーム225上に設けることができる。構成要素(例えば、蒸気セル214)は、補剛部材227の領域内の膜に搭載することができる。補剛部材上の構成要素をスタッドバンプに電気的に結合するために、トレースがテザーを横切って延びることができる。
【0035】
図2Aに示される例では、中間足場220は、蓋204に面し、上部足場212に対向する第1の側228と、基部表面205に面し、下部足場208に対向する第2の側230とを含む。
図2Aに示される例では、中間足場220は、足場220の第1の側228上のスペーサ218に搭載されることができる。
【0036】
図2Aに示される例では、フレーム229及び補剛部材231は、第2の側230にある。いくつかの例では、補剛部材231は、その質量を低減するために複数の開口を画定することができる。蒸気セル214は、中間足場220の第1の側228に搭載され、円偏光子211は、中間足場220の第2の側面230に搭載される。
図2Aに示される例では、複数の傾斜特徴232が、中間足場220の第2の側230内に加工され、円偏光子211は、これらの傾斜特徴232に搭載され、これは、中間足場220に対してある角度で円偏光子211を配向するように構成されることができる。例えば、第1の特徴部は、第2の特徴部よりも低い高さを有することができ、円偏光子211の第1の縁部を第1の特徴部に取り付けることができ、円偏光子211の第2の縁部を第2の特徴部に取り付けることができる。ある角度で円偏光子211を配向することは、円偏光子211からのレーザ反射をレーザ210から離れるように方向付け、レーザビーム217を円偏光することができる。いくつかの例では、円偏光子211は、四分の一波長板及び直線偏光子を含む。
【0037】
図2Aに示される例では、中間足場220は、フレーム229及びそれに取り付けられた補剛部材231を有する膜を含む。いくつかの例では、フレーム229及び補剛部材231は、フレーム229と補剛部材231との間に延在する膜の複数のテザー(図示せず)を用いて膜上で互いに分離することができる。いくつかの例では、フレーム229を本体202に取り付けるために、複数のスタッドバンプ(図示せず)をフレーム229上に設けることができる。構成要素(例えば、蒸気セル214)は、補剛部材231の領域内の膜に搭載することができる。加えて、他の構成要素(例えば、円偏光子211)を補剛部材231に搭載することができる。
【0038】
いくつかの例では、1つ以上のコイル234は、1つ以上のコイル234が蒸気セル214の周りに延在するように、スペーサ218の周り(例えば、内部)に配置される。他の例では、1つ以上のコイル234は、スペーサ218に(例えば、内部に)一体化することができる。1つ以上のコイル234は、以下で更に説明する1つ以上の磁束変圧器コイル16に結合される。
【0039】
図2Aに示される例では、第2の光検出器236は、レーザ210に隣接して下部足場208の第2の側215に搭載され、円偏光子211からのレーザ210の反射を検出するように構成される。第2の光検出器236は、レーザ210の光パワー出力を制御するために使用することができる。特に、円偏光子211から反射された光の強度に基づいて、レーザ210のパワー出力を決定し、それに応じて制御することができる。
【0040】
RF原子磁力計200は、本体202の底部に入力/出力(I/O)はんだパッド222を含むことができる。したがって、RF原子磁力計200の底部を回路基板に取り付けることができる。いくつかの例では、I/Oはんだパッドと内部構成要素(例えば、レーザ210、円偏光子211、光検出器216、蒸気セル214、及びコイル234)との間の相互接続は、本体202を通してルーティングされ得る。いくつかの例では、上部足場212(例えば、光検出器216)及び中間足場220(例えば、加熱器)上の構成要素のための相互接続は、スペーサ218を通してルーティングされることができる。したがって、スペーサ218は、その内側又は外側部分上に電気トレースを含むことができる。
【0041】
図2Bは、チップスケールデバイス11内のRF原子磁力計12として使用するのに適した別の例示的なRF原子磁力計250の断面図を示す。
図2Bに示すRF原子磁力計250は、レーザ254を含む真空パッケージ252と、円偏光子258(例えば、1/4波長板及び直線偏光子)と、蒸気セル260と、光検出器262とを含む。いくつかの例では、レーザ254は、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)である。
【0042】
蒸気セル260は、レーザ254によって放射されたレーザビーム256の光路において、レーザ254と光検出器262との間に配置される。いくつかの例では、蒸気セル260は、アルカリ原子(例えば、ルビジウム原子又はカリウム原子)を含有するアルカリ蒸気セルである。いくつかの例では、蒸気セル260はまた、当業者に知られているような「バッファ」及び「クエンチ」ガスとして作用する他のガスを含む。これらは典型的には、ヘリウム又はアルゴンなどの希ガス、及び窒素などの二原子分子を含む(特に「クエンチガス」の役割において)。円偏光器258は、レーザビーム256を円偏光する。
【0043】
図2Bに示される例では、真空パッケージ252はまた、以下で更に説明する1つ以上の磁束変圧器コイル16に結合された1つ以上のコイル264を含む。いくつかの例では、1つ以上のコイル264は、磁気コイルが蒸気セル260の周りに延在するように配置される。一例では、1つ以上のコイル264は、蒸気セル260に隣接して結合されたスペーサに(例えば、内部に)一体化され得る。
【0044】
図1に戻って参照すると、システム10のチップスケールデバイス11は、数百キロヘルツまでの周波数でアルカリ原子中の電子のラーモア歳差運動を直接感知するように構成される。MRI信号である検出されるべきRF信号は、脳内の水素原子(又は他の試料原子)内の陽子のラーモア歳差運動又は他のソースによって生成される。
【0045】
RF原子磁力計12の蒸気セル214、260を取り囲む1つ以上のコイル234、264は、1つ以上の磁束変圧器コイル16に結合される。1つ以上の磁束変圧器コイル16は、1つ以上のコイル234、264を使用して、磁場のRF部分を試料からRF原子磁力計12の蒸気セル214、260に中継するように構成される。いくつかの例では、1つ以上の磁束変圧器コイル16は、単一のコイルを含む。他の例では、磁束変圧器コイル16のうちの1つ又は複数は、RF原子磁力計に結合された複数の小径磁束変圧器を含み、これは、同じ体積をカバーする単一コイルよりも良好な信号強度を生成することができる。各コイルの半径が小さいほど、磁界とコイル電流との間により好ましい関係が得られる。小さいコイルはまた、ジョンソンノイズが少なく(総抵抗が小さいため)、試料までの距離が短い(試料の直径よりも大きい直径を有するコイルは、試料からの距離がコイルサイズによって決定され、位置によっては決定されないコイル巻数を有する)。いくつかの例では、1つ以上の磁束変圧器コイル16は、約1.5cmの直径を有する。しかしながら、1つ以上の磁束変圧器コイル16は、システム10の所望の性能に応じて異なる直径を有することができることを理解されたい。
【0046】
試料からの陽子ラーモア歳差運動周波数を、RF原子磁力計12の蒸気セル214、260内の電子ラーモア歳差運動周波数に一致させるためには、陽子及び電子が異なる磁気回転比を有することから、蒸気セル214、260内のアルカリ原子は、試料原子が受ける磁場強度とは異なる磁場強度を受ける必要がある。蒸気セル214、260の原子は、それらの共振周波数におけるRF場のみに敏感であり、その共振周波数は、DC場コイル15によって誘導されるDC磁場の強度に応じて調整可能である。
【0047】
図1に示される例では、RF原子磁力計12は、RF原子磁力計12及びDCコイル15のセットを取り囲む受動磁気シールド14によって、MRIのために試料に印加されるDC場から遮蔽される。蒸気セル214、260内の原子が適切な磁場強度を受けるように、蒸気セル214、260内の原子の共振周波数を調整するために、RF原子磁力計12を取り囲む(例えば、本体202又は真空パッケージ252の外側にある)DC場コイル15のセットは、電気DCバイアスが印加されたときに、レーザビーム217、256の光軸に対して45度に配向されたDC磁場を提供するように構成される。DC磁界の強度は、DC場コイル15に印加される電気DCバイアスを調整することによって変更することができる。いくつかの例では、1つ以上の制御部26及び/又は少なくとも1つのプロセッサ20は、蒸気セル214、260内の原子を適切に調整するために、DC場コイルに印加される電気DCバイアスを調整するように構成される。
【0048】
本明細書で説明する例では、レーザビーム217、256は、ポンプビーム及びプローブビームの両方として働くように構成され、したがって、RF原子磁力計250内のレーザビーム217、256は、蒸気セル214、260内の原子を光学的にポンピング及びプローブするように構成された単一のビームである。光学的ポンピングの結果として、蒸気セル214、260の原子は、配向された磁気状態にある。
【0049】
動作中、RF原子磁力計12のレーザ210、254は、固定周波数に保持され、蒸気セル214、260の原子に対する試料のRF場の影響によって誘起された検出器信号の変調が検出される。1つ以上の磁束変圧器コイル16及び1つ以上のコイル234、264を使用して蒸気セル214、260の原子に結合されるRF場は、原子のゼーマン副準位間の遷移を駆動する効果を有する。
【0050】
DC場の方向が「Z方向」として定義され、RF磁場が2つの軸の間の角度を二等分するY-Z平面内にある場合、RFのZ成分は、DC場B
0を変調し、「Pi」偏光によって結合された任意の遷移がその周波数で共振する場合、いわゆる「Pi」遷移を引き起こす。しかしながら、一般的には、ゼーマン副準位間でそのような遷移は許されず、この成分の影響は無視することができる。対照的に、RF磁場のY成分は、左円偏光場及び右円偏光場の重ね合わせであり、減衰又はポンピングがない場合に、隣接する準位間のラビ振動を駆動するように、ゼーマン副準位を互いに結合する傾向がある。このラビ振動プロセスの間、磁気モーメントは、y軸、x軸、次いで負のz軸を中心に回転する傾向があり、一方、z軸を中心に螺旋を描く(ラーモア歳差運動)。しかしながら、光場の光学的ポンピング効果は、この傾向を打ち消す。その結果、ラーモア歳差運動は継続するが、ラビ振動及び光学的ポンピングのプロセルは定常状態に達する挙動が生じる。MRI動作のためのラーモア歳差運動の例示的な図が
図4Aに提供される。
【0051】
RF原子磁力計12の蒸気セル214、260内の電子のラーモア歳差運動は、自発的ではなく試料のRF場によって駆動され、全ての原子に対して共通の位相を有する。このため、光場の振幅に変調を加える。蒸気セル214、260内の原子によるレーザ光の吸収は、円偏光に対する選択規則による磁気モーメントベクトルの向きの関数である。RF場が存在しない場合、蒸気セル214、260内の各原子は依然として個別にラーモア歳差運動を行うが、これらの歳差運動プロセスの位相はランダムであるため、正味の光信号は存在しない。試料のRF場は、それが蒸気セル214、260内の原子に課す位相に基づいて、光検出器216、262を使用して感知される。
【0052】
光検出器216、262は、更なる処理のために、検出された信号をコンピューティングデバイス18に出力するように構成される。いくつかの例では、メモリ22は、少なくとも1つのプロセッサ20によって実行されると、少なくとも1つのプロセッサ20にチップスケールデバイス11からの信号を分析させる1つ以上の命令を含む。いくつかの例では、少なくとも1つのプロセッサ20は、チップスケールデバイス11からの信号を処理し、MRI測定値を出力するように構成される。
【0053】
いくつかの例では、システム10は、コンピューティングデバイス18に通信可能に結合されたディスプレイ24を更に任意選択で含み、MRI測定値又はMRI測定値から生成された画像を表示するように構成することができる。ディスプレイは、陰極線管(CRT)ディスプレイ、アクティブマトリクス液晶ディスプレイ(LCD)、パッシブマトリクスLCD、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、又はプラズマディスプレイであり得る。それはまた、陽性又は陰性の結果を示すために、LED光信号又は白熱電球などの単純なインジケータであってもよい。
【0054】
図3は、MRI及び/又はMEG測定を実行するための例示的なシステム50を示す。システム50の構成要素は、システム10について上述したものと同様であり、システム10、50の対応する構成要素には同じ参照番号が使用されている。
【0055】
図3に示される例では、チップスケールデバイス11は、RF原子磁力計12と、RF磁力計12を取り囲むDCコイル15のセットと、1つ以上の磁束変圧器コイル16とを含む。しかしながら、
図1に関して上述したシステム10とは異なり、システム50のチップスケールデバイス11は、受動磁気シールド14を含まない。これは、受動磁気シールドが、以下で説明するシステム50のMEG動作を妨げるからである。
【0056】
図3に示される例では、システム50は、MRIのために試料に印加された外部DC場を決定するように構成された磁力計28を含む。いくつかの例では、磁力計28は、1つ以上の制御部26及び/又はコンピューティングデバイス18に通信可能に結合され、外部DC場の測定値を1つ以上の制御部26及び/又はコンピューティングデバイス18に提供するように構成される。いくつかの例では、1つ以上の制御部26及び/又は少なくとも1つのプロセッサ20は、DC場コイル15に印加される電気的DCバイアスを調整して、外部DC場を緩和するとともに、蒸気セル214、260内の原子を適切に調整するように構成される。
【0057】
図3に示されるシステム50のMRI動作のために、RF原子磁力計12は、RF原子磁力計12を取り囲むDC場コイル15のセットによって、MRIのために試料に印加されるDC場に対して遮蔽される。特に、DC場コイル15のセットは、MRIのために試料に印加される外部DC場を緩和するように構成される。システム50の構成要素の機能は、その他の点では、MRI測定を実行するためのシステム10について上述したものと同じである。
【0058】
MEG測定を実行するために、システム50のRF原子磁力計12は、SERF磁力計として動作するように再構成される。SERF磁力計としての動作のために、約200nTより強い磁場の存在下では信号が生成されないため、感知体積は一般に外部場から遮蔽される。したがって、MEG信号の適切な測定のために、システム50は、遮蔽された部屋でシステムを動作させることによって生成することができる近0場環境で動作する必要がある。
【0059】
更に、試料上の磁場を低減し、システム50の構成要素を使用してMEG信号の検出を可能にするために、RF原子磁力計12内のDC場コイル15、1つ以上の磁束変圧器コイル16、及び1つ以上のコイル234、264は無効にされる。いくつかの例では、1つ以上の制御部26又は少なくとも1つのプロセッサ20は、RF原子磁力計12内のDC場コイル15、1つ以上の磁束変圧器コイル16、及び1つ以上のコイル234、264を切断するか、又は別の方法で無効にするように構成される。
【0060】
SERF磁力計として動作するためのいくつかの他の重要な要因は、蒸気セル214、260内のバッファガス圧力及び動作温度に関連する。いくつかの例では、システム50は、蒸気セル214、260内のバッファガス圧力を約1気圧に設定するように構成され、動作温度は約150℃に設定される。いくつかの例では、1つ以上の制御部26及び/又は少なくとも1つのプロセッサ20は、RF原子磁力計12の本体202又は真空パッケージ252内の1つ以上の加熱器を制御することによって、バッファガス圧力及び動作温度を調整するように構成される。
【0061】
磁場が存在しない場合、蒸気セル214、260内の原子のスピンは、それらの元の配向を保持し、レーザビーム217、256の偏光は変化しないままである。しかしながら、DC(<100Hz)に近い磁場が存在するとき、磁場は配向をわずかにねじり、これは光検出器216、262に入る光の量を変化させる。レーザビーム217、256は、蒸気セル214、260内の蒸気を通過して、到達する光の偏光を測定するように構成された光検出器216、262に入射する。光検出器216、262における光スループットは、0磁場で最大となり、磁場の関数として減衰する。いくつかの例では、光検出器216、262からの信号は、DC光レベル(又は変調及び復調されたDC光レベル)である。MEG動作のためのラーモア歳差運動の例示的な図が
図4Bに提供される。
【0062】
光検出器216、262は、更なる処理のために、検出された信号(MRI動作のためのRF信号及びMEG動作のためのDC SERF信号)をコンピューティングデバイス18に出力するように構成される。いくつかの例では、メモリ22は、少なくとも1つのプロセッサ20によって実行されると、少なくとも1つのプロセッサ20にチップスケールデバイス11からの信号を分析させる1つ以上の命令を含む。いくつかの例では、少なくとも1つのプロセッサ20は、チップスケールデバイス11からの信号を処理し、そのときのチップスケールデバイス11の構成に応じてMRI測定値及び/又はMEG測定値を出力するように構成される。
【0063】
いくつかの例では、コンピューティングデバイス18に通信可能に結合された任意選択のディスプレイ24は、MRI及び/若しくはMEG測定値、又はMRI及び/若しくはMEG測定値から生成された画像を表示するように構成することができる。
【0064】
RF原子磁力計の基本的な感度限界は、次式で求められる。
【0065】
【0066】
【数2】
は、ルビジウム衝突の平均相対熱速度であり、ηは、フォトダイオード効率であり、V
aは、原子蒸気セルの体積(体積全体がレーザ及びRF場と相互作用していると仮定する)であり、ω
0は、ゼーマン共鳴のRF角周波数であり、γは、原子磁気回転因子であり、σ
ex及びσ
sdは、スピン交換及びスピン破壊衝突断面であり、
【0067】
【数3】
は、スピン交換速度であり、nは、原子の数密度であり、ν
HFは、アルカリ原子の基底状態超微細分裂である。
【0068】
これは、蒸気セル内にルビジウム原子を有するRF原子磁力計のパラメータに対して約50fT/Hz1/2の感度限界をもたらす。同様のセンサのベンチトップバージョンは、薄いアルミニウムシールドのみを使用して、NMR測定において7fT/Hz1/2を達成した。一方、SERF磁気測定は、約15fT/Hz1/2の感度を有するデバイスを使用して、MEG測定について既に実証されている。
【0069】
上記の技法を使用して、システム50は、MRI及びMEG信号をそれぞれ測定するRF及びSERF磁気測定の両方に同じ構成要素を利用する。したがって、システム50に関して説明した技法は、MRI測定とMEG測定の両方のための大型で高価な構成要素を単一のデバイスで置き換える可能性を有する。
【0070】
MRI又はMEG測定のためにより大きな関心体積をサンプリングするために、
図1~
図3に関して上述したチップスケールデバイス11のアレイを利用することができる。
【0071】
図5Aは、チップスケールデバイス11の例示的なアレイ500のブロック図である。MRIのみの動作の場合、システム10又はシステム50に関して説明したチップスケールデバイス11を利用することができる。MEGのみの動作のために、又は同じアレイ500を用いたMRI及びMEG動作の両方のために、システム50に関して説明したチップスケールデバイス11を利用することができる。
【0072】
図5Bは、被験者504上に配置されるように構成された例示的なアレイ502の図である。アレイ502の個々の構成要素の各々は、チップスケールデバイス11を含む。
図3に関して説明したものに対応するチップスケールデバイス11の例を
図5Bに示す。いくつかの例では、アレイ500、502内のチップスケールデバイス11のうちの少なくとも一部のための1つ以上の磁束変圧器コイル16は、試料領域を完全に覆うように重なり合う。いくつかの例では、アレイ500、502内のチップスケールデバイス11は互いに干渉する可能性があり、したがって、コンピューティングデバイス18は、干渉を推定し、推定に基づいて干渉を補償するように構成される。
【0073】
本明細書で説明されるシステムを使用すると、極低温冷却を必要とする大型で高価な超伝導システムは、MRI又はMEG測定を実装するために必要とされない。MRI及び/又はMEG測定を実行するための本明細書で説明されるシステムのサイズ、重量、電力、及びコストは、従来のシステムのサイズ、重量、電力、及びコストよりも著しく小さい。したがって、本明細書で説明されるシステムは、技術が現在利用不可能である場所(例えば、戦場又は投資が不足している地域)において展開されることができる。
【0074】
携帯型MRI能力により、戦闘外科医は、どの負傷した兵士が緊急の現場手術を必要とするか、どの兵士が完全に装備された病院に直ちに流される必要があるか、どの兵士が地元の医療及び監視を受ければ十分であるか、及びどの兵士が身体的外傷ではなく精神的外傷を患っているかを決定するために、はるかに良好に装備される。更に、そのような撮像技術は、「自己駆動」気管内チューブ及びER-REBOAカテーテルのためのナビゲーションデータを提供することができ、医療専門家の到着前に救命即時処置を可能にする。それは、介入MRIの可能性を大幅に拡大し、外科医に患者へのより良好なアクセスを与え、外科医が金属器具及びロボットを使用することを可能にする。関連する核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)技術はまた、流体及び組織試料を分析するために、これらの試料を研究室に送り返すことなく使用され得る。
【0075】
様々な態様では、本開示全体にわたって説明されるシステム要素又は例(例えば、制御部、コンピューティングデバイス、又はそれらの構成要素など)は、1つ以上のコンピュータシステム、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array、FPGA)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)、又はそれらの要素、プロセス、若しくは例を実現するためのコードを実行するハードウェアを備える同様のデバイス上に実装されてもよく、このコードは非一時的データ記憶デバイスに記憶される。これらのデバイスは、分散型アンテナシステムで使用される様々な方法、プロセスタスク、計算、及び制御機能を実行するためのソフトウェアプログラム、ファームウェア、又は他のコンピュータ可読命令を含む、又はこれらと機能する。
【0076】
これらの命令は、典型的には、コンピュータ可読命令又はデータ構造の格納に使用される任意の適切なコンピュータ可読媒体に格納される。コンピュータ可読媒体は、汎用の又は特殊なコンピュータ又はプロセッサ、又は任意のプログラマブル論理デバイスによってアクセスすることができる、任意の利用可能な媒体として実装することができる。好適なプロセッサ可読媒体としては、磁気又は光学媒体等の記憶媒体又はメモリ媒体を挙げることができる。例えば、記憶媒体又はメモリ媒体は、従来のハードディスク、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)(シンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)、ダブルデータレート(DDR)RAM、RAMBUSダイナミックRAM(RDRAM)、スタティックRAM(SRAM)などを含むがこれらに限定されない)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、及びフラッシュメモリなどの揮発性又は不揮発性媒体を含んでもよい。適切なプロセッサ可読媒体は、ネットワーク及び/又は無線リンクなどの通信媒体を介して伝達される電気信号、電磁信号、又はデジタル信号などの伝送媒体も含むことができる。
【0077】
本明細書で説明される技法は、デジタル電子回路において、又はプログラマブルプロセッサ(例えば、専用プロセッサ若しくはコンピュータなどの汎用プロセッサ)、ファームウェア、ソフトウェア、若しくはそれらの組み合わせを用いて実装され得る。これらの技法を具現化する装置は、適切な入力及び出力デバイスと、プログラマブルプロセッサと、プログラマブルプロセッサによる実行のためのプログラム命令を有形に具現化する記憶媒体とを含み得る。これらの技法を具現化するプロセスは、入力データに対して動作し、適切な出力を生成することによって所望の機能を実行するための命令のプログラムを実行するプログラマブルプロセッサによって実行され得る。本技法は、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ及び命令を受信し、それらにデータ及び命令を送信するように結合された少なくとも1つのプログラム可能プロセッサを含むプログラム可能システム上で実行可能な1つ以上のプログラムにおいて有利に実装され得る。一般に、プロセッサは、読み出し専用メモリ及び/又はランダムアクセスメモリから命令及びデータを受信する。コンピュータプログラム命令及びデータを有形に実施するのに好適な記憶デバイスには、例えば半導体メモリデバイス(EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイス)を含む全ての形態の非揮発性メモリ、磁気ディスク(内部ハードディスク又は取り外し可能なディスク)、光磁気ディスク、及びDVDディスクが含まれる。前述のいずれも、特別に設計された特定用途向け集積回路(Application-Specific Integrated Circuit、ASIC)によって補完されてもよく、又はそれに組み込まれてもよい。
【0078】
例示的な実施形態
実施例1は、システムであって、チップスケールデバイスを備え、チップスケールデバイスは、無線周波数原子磁力計を備え、無線周波数原子磁力計は、レーザ光を放射するように構成されたレーザと、光検出器と、レーザと光検出器との間のレーザ光の光路内の蒸気セルと、レーザによって放射されたレーザ光を円偏光させるように構成された円偏光子と、を備え、円偏光されたレーザビームは、蒸気セル内の原子のスピンを配向状態にポンピングし、蒸気セル内の原子を探査するように構成され、探査は局所無線周波数場を検出することを含み、チップスケールデバイスは更に、ソースからの無線周波数信号を無線周波数原子磁力計に結合するように構成された1つ以上の磁束変圧器コイルと、少なくとも1つのコイルを含む直流(DC)コイルのセットと、を備え、DCコイルのセットは、レーザによって放射されるレーザ光の光軸に対して45度に配向されたDC磁場を生成するように構成されている、システムを含む。
【0079】
実施例2は、無線周波数原子磁力計及びDCコイルのセットを取り囲む受動磁気シールドを更に備える、実施例1のシステムを含む。
【0080】
実施例3は、1つ以上のプロセッサと、第2の磁力計と、を更に備え、1つ以上のプロセッサは、DCコイルのセット及び第2の磁力計に通信可能に結合され、第2の磁力計は、外部DC場を検出し、外部DC場の測定値を1つ以上のプロセッサに提供するように構成され、1つ以上のプロセッサは、検出された外部DC場を緩和するために、DCコイルのセットに対するDC電気バイアスを調整するように構成されている、実施例1のシステムを含む。
【0081】
実施例4は、1つ以上のプロセッサを更に備え、1つ以上のプロセッサは、DCコイルのセット及び1つ以上の磁束変圧器コイルに通信可能に結合され、1つ以上のプロセッサは、DCコイルのセット及び1つ以上の磁束変圧器コイルを無効にし、スピン交換緩和フリー(Spin Exchange Relaxation-Free、SERF)磁力計として動作するように無線周波数原子磁力計を構成するように構成されている、実施例1及び3のいずれかのシステムを含む。
【0082】
実施例5は、蒸気セルに近接する1つ以上のプロセッサと、1つ以上の加熱器と、を更に備え、1つ以上のプロセッサは、1つ以上の加熱器に通信可能に結合され、1つ以上のプロセッサは、1つ以上の加熱器を制御することによって、蒸気セル内のバッファガスの圧力及び/又は蒸気セルの動作温度を調整するように構成されている、実施例1及び3~4のいずれかのシステムを含む。
【0083】
実施例6は、1つ以上の磁束変圧器コイルは、無線周波数原子磁力計の外部の1つ以上の第1のコイルと、蒸気セルに近接する1つ以上の第2のコイルと、を含み、1つ以上の第1のコイルは、RF信号を1つ以上の第2のコイルに結合するように構成されている、実施例1~5のいずれかのシステムを含む。
【0084】
実施例7は、チップスケールデバイスに通信可能に結合された1つ以上のプロセッサを更に備え、1つ以上のプロセッサは、MRI動作モード中に無線周波数場強度を示す第1の電気信号を光検出器から受信するように構成され、1つ以上のプロセッサは、MEG動作モード中にDC場強度を示す第2の電気信号を光検出器から受信するように構成されている、例1及び3~6のいずれかのシステムを含む。
【0085】
実施例8は、チップスケールデバイスに通信可能に結合された1つ以上のプロセッサを更に備え、1つ以上のプロセッサは、DCコイルのセットに対するDC電気バイアスを調整して、蒸気セル内の原子の電子の歳差運動の周波数を調整し、ソースの陽子の歳差運動の周波数に一致させるように構成されている、実施例1~7のいずれかのシステムを含む。
【0086】
実施例9は、システムであって、アレイ状に配置された複数のチップスケールデバイスを備え、複数のチップスケールデバイスのそれぞれのチップスケールデバイスは、無線周波数原子磁力計を備え、無線周波数原子磁力計は、レーザ光を放射するように構成されたレーザと、光検出器と、レーザと光検出器との間のレーザ光の光路内の蒸気セルと、レーザによって放射されたレーザ光を円偏光させるように構成された円偏光子と、を備え、円偏光されたレーザビームは、蒸気セル内の原子のスピンを配向状態にポンピングし、蒸気セル内の原子を探査するように構成され、探査は局所無線周波数場を検出することを含み、チップスケールデバイスは更に、ソースからの無線周波数信号を無線周波数原子磁力計に結合するように構成された1つ以上の磁束変圧器コイルと、少なくとも1つのコイルを含む直流(DC)コイルのセットと、を備え、DCコイルのセットは、レーザによって放射されるレーザ光の光軸に対して45度に配向されたDC磁場を生成するように構成されている、システムを含む。
【0087】
実施例10は、複数のチップスケールデバイスのうちの少なくとも1つのチップスケールデバイスは、無線周波数原子磁力計及び複数のチップスケールデバイスのうちの少なくとも1つのチップスケールデバイスのDCコイルのセットを取り囲む受動磁気シールドを備える、実施例9のシステムを含む。
【0088】
実施例11は、1つ以上のプロセッサと、第2の磁力計と、を更に備え、1つ以上のプロセッサは、第2の磁力計及び複数のチップスケールデバイスのうちの少なくとも1つのチップスケールデバイスに通信可能に結合され、第2の磁力計は、外部DC場を検出し、外部DC場の測定値を1つ以上のプロセッサに提供するように構成され、1つ以上のプロセッサは、検出された外部DC場を緩和するために、複数のチップスケールデバイスのうちの少なくとも1つのチップスケールデバイスのDCコイルのそれぞれのセットに対するDC電気バイアスを調整するように構成されている、実施例9のシステムを含む。
【0089】
実施例12は、1つ以上のプロセッサを更に備え、1つ以上のプロセッサは、複数のチップスケールデバイスのそれぞれのチップスケールデバイスに通信可能に結合され、1つ以上のプロセッサは、DCコイルのそれぞれのセット及びそれぞれの1つ以上の磁束変圧器コイルを無効にし、スピン交換緩和フリー(SERF)磁力計として動作するようにそれぞれの無線周波数原子磁力計を構成するように構成されている、実施例9及び11のいずれかのシステムを含む。
【0090】
実施例13は、複数のチップスケールデバイスのうちの第1のチップスケールデバイスのそれぞれの1つ以上の磁束変圧器コイルのうちの少なくともいくつかは、複数のチップスケールデバイスのうちの第2のチップスケールデバイスのそれぞれの1つ以上の磁束変圧器コイルのうちの少なくともいくつかと重なり合う、実施例9~12のいずれかのシステムを含む。
【0091】
実施例14は、システムであって、チップスケールデバイスを備え、チップスケールデバイスは、無線周波数原子磁力計を備え、無線周波数原子磁力計は、レーザ光を放射するように構成されたレーザと、光検出器と、レーザと光検出器との間のレーザ光の光路内の蒸気セルと、レーザによって放射されたレーザ光を円偏光させるように構成された円偏光子と、を備え、円偏光されたレーザビームは、蒸気セル内の原子のスピンを配向状態にポンピングし、蒸気セル内の原子を探査するように構成され、探査は局所無線周波数場を検出することを含み、チップスケールデバイスは更に、ソースからの無線周波数信号を無線周波数原子磁力計に結合するように構成された1つ以上の磁束変圧器コイルと、少なくとも1つのコイルを含む直流(DC)コイルのセットと、を備え、DCコイルのセットは、レーザによって放射されるレーザ光の光軸に対して45度に配向されたDC磁場を生成するように構成され、システムは、外部DC場を検出するように構成された第2の磁力計と、チップスケールデバイス及び第2の磁力計に通信可能に結合された1つ以上のプロセッサと、を更に備え、システムは、磁気共鳴撮像(MRI)動作モード及び脳磁図(MEG)動作モードで動作するように構成されている、システムを含む。
【0092】
実施例15は、MRI動作モードの場合、1つ以上のプロセッサは、検出された外部DC場を緩和するために、DCコイルのセットに対するDC電気バイアスを調整するように構成されている、実施例14のシステムを含む。
【0093】
実施例16は、1つ以上の磁束変圧器コイルは、無線周波数原子磁力計の外部の1つ以上の第1のコイルと、蒸気セルに近接する1つ以上の第2のコイルと、を含み、1つ以上の第1のコイルは、無線周波数信号を1つ以上の第2のコイルに結合するように構成されている、実施例14~15のいずれかのシステムを含む。
【0094】
実施例17は、MRI動作モードの場合、1つ以上のプロセッサは、DCコイルのセットに対するDC電気バイアスを調整して、蒸気セル内の原子の電子の歳差運動の周波数を調整し、ソースの陽子の歳差運動の周波数に一致させるように構成されている、実施例14~16のいずれかのシステムを含む。
【0095】
実施例18は、光検出器は、システムがMRI動作モードで動作しているときに1つ以上のプロセッサに無線周波数出力を提供するように構成され、光検出器は、システムがMEG動作モードで動作しているときに1つ以上のプロセッサにDC出力を提供するように構成されている、実施例14~17のいずれかのシステムを含む。
【0096】
実施例19は、MEG動作モードの場合、1つ以上のプロセッサは、DCコイルのセット及び1つ以上の磁束変圧器コイルを無効にし、スピン交換緩和フリー(SERF)磁力計として動作するように無線周波数原子磁力計を構成するように構成されている、実施例14~18のいずれかのシステムを含む。
【0097】
実施例20は、蒸気セルに近接する1つ以上のプロセッサと、1つ以上の加熱器と、を更に備え、1つ以上のプロセッサは、1つ以上の加熱器に通信可能に結合され、1つ以上のプロセッサは、1つ以上の加熱器を制御し、蒸気セル内のバッファガスの圧力及び/又は蒸気セルの動作温度を調整するように構成されている、実施例14~19のいずれかのシステムを含む。
【0098】
本明細書では特定の実施形態が示され、記載されているが、当業者には、示される特定の実施形態の代わりに、同一の目的を達成することが予測される任意の構成が用いられ得ることが理解されよう。本出願は、本発明の任意の改変又は変形物を包含することを意図している。したがって、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが明らかに意図されている。
【外国語明細書】