(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108144
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】熱硬化性の注型用材料、注型用材料から製造される成形体、及び、このような成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 33/04 20060101AFI20240802BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240802BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20240802BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240802BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240802BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20240802BHJP
C08F 22/10 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C08L33/04
C08K3/013
C08L45/00
C08L67/00
C08L71/02
C08L93/04
C08F22/10
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024008705
(22)【出願日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】10 2023 102 130.3
(32)【優先日】2023-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518429207
【氏名又は名称】ショック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Schock GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビタリー・ダツュク
(72)【発明者】
【氏名】アダム・オレンドール
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AF022
4J002BG021
4J002BK002
4J002CF002
4J002CH022
4J002DA016
4J002DA066
4J002DC006
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DG046
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GC00
4J002GL00
4J100AL02P
4J100AU10Q
4J100AU16Q
4J100DA47
4J100FA03
4J100FA18
4J100FA28
4J100JA67
(57)【要約】 (修正有)
【課題】キッチンシンク及びサニタリー用品を製造するための重合可能な熱硬化性の注型用材料の提供。
【解決手段】(a)1つ又は複数の単官能性のアクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマーが1つ又は複数のモノマーが再生材料に由来し、及び/又は植物又は動物由来である前記アクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマーと、(b)植物又は動物由来である1つ又は複数の多官能性のアクリルバイオモノマー、及び/又は、メタクリルバイオモノマーと、(c)(コ)ポリアクリレート、(コ)ポリメタクリレート、ポリオール、ポリエステル、ロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂から選択される1つ又は複数のポリマー又はコポリマーであって、いずれも、再生材料又は植物若しくは動物由来である、1つ又は複数のポリマー又はコポリマーと、(d)自然由来の、又は、再生材料から成る、無機フィラー粒子及び/又は有機フィラー粒子とを含む熱硬化性の注型用材料。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キッチンシンク及びサニタリー用品を製造するために調製された、重合可能な熱硬化性の注型用材料であって、
(a)1つ又は複数の単官能性のアクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマーであって、1つ又は複数のモノマーが再生材料に由来し、及び/又は、1つ又は複数のモノマーが植物又は動物由来である、1つ又は複数の単官能性のアクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマーと、
(b)植物又は動物由来である、1つ又は複数の多官能性のアクリルバイオモノマー、及び/又は、メタクリルバイオモノマーと、
(c)(コ)ポリアクリレート、(コ)ポリメタクリレート、ポリオール、ポリエステル、ロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂から選択される1つ又は複数のポリマー又はコポリマーであって、いずれも、再生材料、又は、植物若しくは動物由来である、1つ又は複数のポリマー又はコポリマーと、
(d)自然由来の、又は、再生材料から成る、無機フィラー粒子及び/又は有機フィラー粒子と、を含み、
(a)~(c)の材料は、ポリマーバインダーを形成する、熱硬化性の注型用材料において、
前記単官能性のアクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマー、並びに、前記多官能性のアクリルバイオモノマー及びメタクリルバイオモノマーの割合は、10~40重量%であり、前記ポリマー又はコポリマーの割合は、1~16重量%であり、前記無機フィラー粒子及び/又は有機フィラー粒子の割合は、44~89重量%であり、前記ポリマーバインダーは、少なくとも1つの重合可能なテルペン又はその誘導体をさらに含む、熱硬化性の注型用材料。
【請求項2】
前記注型用材料は、2つ以上の重合可能なテルペン及びその誘導体から成る混合物を含む、請求項1に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項3】
前記重合可能なテルペン及びその誘導体、又は、前記混合物を形成する2つ以上のテルペン及びその誘導体は、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、テルピネン-4-オール テルピノレン、(Z)-2,6-ジメチル-2,6-オクタジエン-8-オール、及び、ミルセンから選択される、請求項1又は2に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項4】
前記テルペン及びその誘導体の割合、又は、複数のテルペン及びその誘導体の混合物の割合は、0.1~20重量%、好ましくは0.8~15重量%、特に好ましくは1~10重量%の範囲にある、先行する請求項のいずれか1項に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項5】
前記多官能性の(メタ)アクリルモノマーの一部は、石油化学由来であり再生されているか、又は、バイオベース由来であり再生されておらず、0.5~20重量%、好ましくは0.8~15重量%、特に好ましくは1~10重量%の範囲にあることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項6】
前記フィラー粒子は、無機フィラー粒子、有機フィラー粒子、再生材料、又は、これらの組み合わせを含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項7】
前記無機フィラー粒子は、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、Fe2O3、ZnO、Cr2O5、SiC、CaCO3、BaSO4、炭素、金属、合金、又は、これらの混合物から選択される、請求項6に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項8】
有機フィラー粒子は、粉砕されたオリーブの種、アーモンドの種、桃の種、サクランボの種、アプリコットの種、アボガドの皮、又は、アルガンの皮から選択されることを特徴とする、請求項6又は7に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項9】
前記再生材料は、熱硬化性の注型用材料から成る成形品の粉砕物から製造されることを特徴とする、請求項6~8のいずれか1項に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項10】
前記無機フィラー粒子、前記有機フィラー粒子、及び、前記再生材料の粒径は、好ましくは1~1200μm、特に好ましくは25~1000μm、具体的には50~800μmであることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項11】
先行する請求項のいずれか1項に記載の熱硬化性の注型用材料を使用して製造された成形体。
【請求項12】
前記成形体は、キッチンシンク、シャワートレイ、洗面器、又は、浴槽であることを特徴とする、請求項11に記載の成形体。
【請求項13】
成形体の製造方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の注型用材料を使用すると共に型の中に挿入し、前記型の中で、前記注型用材料を、酸化還元によって誘導される硬化システムを用いて低温硬化させて重合する、成形体の製造方法。
【請求項14】
前記型の中の前記注型用材料は、10~70℃、好ましくは12~50℃、特に好ましくは15~30℃の温度で重合される、請求項13に記載の成形体の製造方法。
【請求項15】
成形体の製造方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の注型用材料を使用すると共に型の中に挿入し、前記型の中で、前記注型用材料を、熱によって誘導される硬化システムを用いて重合する、成形体の製造方法。
【請求項16】
前記型の中の前記注型用材料は、70~120℃、好ましくは80~110℃、特に好ましくは90~100℃の温度で重合されることを特徴とする、請求項15に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温での成形(酸化還元によって誘導される低温硬化)及び高温での成形(熱によって誘導される高温硬化)に適しているとともに優れた成形加工性を有する、熱硬化性の注型用材料に関する。本発明はさらに、この注型用材料から製造される、見栄えがよく、耐衝撃性が高く、耐熱性及び耐熱衝撃性が良好な、キッチンシンク、シャワートレイ、洗面器、又は、浴槽の形の成形体に関する。最後に、本発明は、キッチンシンク、シャワートレイ、洗面器、又は、浴槽といった成形品の製造方法に関する。
【0002】
石英砂のような無機フィラーとオリーブの種のような有機フィラーとを石油化学系またはバイオベースのアクリル樹脂に配合することによって製造される、キッチンシンク、シャワートレイ、洗面器、又は、浴槽の形をした成形体は、例えば、色の多様性、滑らかで浄化しやすい表面、耐候性、並びに、機械的及び熱的特性といった様々な優れた機能及び特性を有する。成形品は、通常、注型法によって製造される。この注型法では、まず、無機及び有機フィラーを、メチルメタクリレートから成るアクリルシロップ、又は、バイオベースアクリルモノマー及び/又は再生アクリルモノマーとポリメチルメタクリレートとの混合物、又は、アクリレート、ポリエステル、ポリオール、及び、それらのコポリマーの混合物の中に分散させる。次に、型をこの注型用材料で充填し、これを高温で硬化させて重合する。台所やサニタリー領域におけるこのような成形品の最も重要な特性は、その耐衝撃性(輸送時や取付時の耐破損性)及び浄化可能性である(台所やサニタリー用品は健康的な生活のために清潔に保つことが可能でなければならない)。耐衝撃性の(ISO179にしたがって測定される)典型的な値は、1.8~2.5mJ/mm2の範囲であり、(EN14688による)浄化試験を行った後の変色(DE)についての典型的な値は、4.5~9.5の範囲である。例えば、米国特許第6,841,253号は、注型法によって製造され、優れた浄化可能性および耐摩耗性を有する、キッチンシンク、洗面器、浴槽、又は、シャワートレイの形に成形されたプラスチック物品を開示している。ここで、注型用材料組成物は、メタクリレート、架橋剤、及び、フッ素ポリマー粒子から成る、石英フィラー及びポリマーバインダー成分を含み、型の中において、100℃で30分間硬化される。フッ素ポリマーは超疎水性であることが知られており[Y. Huang and so. Materials and Design, 162 (2019) 285]、フッ素ポリマーの使用により、ポリマー表面の疎水性が向上する。高い表面疎水性により、製品における浄化用の防護力が向上する。
【0003】
しかしながら、この注型用材料にはフッ素ポリマー粒子が含まれているため、このような成形体を台所やサニタリー室で使用すると、フッ素ポリマーに関連した呼吸器疾患が引き起こされる可能性がある。よく見られるのは、インフルエンザに似た症状を伴う急性呼吸器症状である(Hays & Spiller, Clinical Toxicology (2014), 52, 848-855)。
【0004】
有害なフッ素ポリマー化合物の使用を回避するために、架橋剤の濃度を高めたキッチンシンクやその他のサニタリー物品といった成形品が開発されてきた。例えば、ドイツ特許出願公開第DE10 2004 055 365A1号には、架橋剤の量を増大させたプラスチック成形体が開示されている。この架橋剤は、メチル(メタ)アクリレート(MMA)よりも反応性が高く、プラスチック本体の表面に、浄化可能性を向上させる薄膜を生成する。しかしながら、この注型用材料組成物が極めて多量の架橋剤を含有しているため、成形品は非常に高い架橋度を有しており、このため、成形されたプラスチック本体内に内部微小応力が発生し、その結果、本体の耐衝撃性が低下することがある。
【0005】
機械的性能が低い成形品の製造を防ぐために、メタクリレートモノマーの環状誘導体、例えばイソボルニルメタクリレート(IBOMA)やシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)を、注型用材料において使用することが可能である。例えば、イタリア特許出願公開第IT2016 00108376 A1号には、IBOMA及びCHMAの割合が高い注型用組成物、並びに、浄化可能性が向上したキッチンシンク及び/又は浴槽用の成形品が開示されている。フッ素ポリマーと同様に、ポリIBOMAおよびポリCHMAは、ポリメチルメタクリレートベースの純粋なアクリル樹脂よりも高い疎水性を有しているので、より高い浄化可能性が得られる。しかしながら、大量のIBOMA及びCHMAをプラスチック成形品の構造の中に導入することは、耐熱衝撃性の低下を招く。この耐熱衝撃性は、特にキッチンシンクにとっては重要な特性である。シンクは、例えばパスタの湯を捨てることによって、熱い湯や沸騰した湯に定期的に接触することが予想されるからである。
【0006】
本発明の課題は、特に、見栄えがよく、良好な機械特性及び熱特性を有し、浄化可能性が高い成形品の製造を可能にする、改善された注型用材料を提供することにある。
【0007】
この課題を解決するために、キッチンシンク及びサニタリー用品を製造するために調製された、重合可能な熱硬化性の注型用材料は、
(a)1つ又は複数の単官能性のアクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマーであって、1つ又は複数のモノマーが再生材料に由来し、及び/又は、1つ又は複数のモノマーが植物又は動物由来である、1つ又は複数の単官能性のアクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマーと、
(b)植物又は動物由来である、1つ又は複数の多官能性のアクリルバイオモノマー、及び/又は、メタクリルバイオモノマーと、
(c)(コ)ポリアクリレート、(コ)ポリメタクリレート、ポリオール、ポリエステル、ロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂から選択される1つ又は複数のポリマー又はコポリマーであって、いずれも、再生材料、又は、植物若しくは動物由来である、1つ又は複数のポリマー又はコポリマーと、
(d)自然由来の、又は、粉砕された再生材料から成る、無機フィラー粒子及び/又は有機フィラー粒子と、を含み、
(a)~(c)の材料は、ポリマーバインダーを形成する、熱硬化性の注型用材料において、
前記単官能性のアクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマー、並びに、前記多官能性のアクリルバイオモノマー及びメタクリルバイオモノマーの割合は、10~40重量%であり、前記ポリマー又はコポリマーの割合は、1~16重量%であり、前記無機フィラー粒子及び/又は有機フィラー粒子の割合は、44~89重量%であり、前記ポリマーバインダーは、少なくとも1つの重合可能なテルペン又はその誘導体をさらに含む。
【0008】
本発明に係る熱硬化性の注型用材料は、ポリマーバインダーにおいて、注型用材料に含有される、溶解されたポリマー又はコポリマーを有する単官能性及び多官能性のアクリル/メタクリルモノマー及びフィラー粒子に加えて、少なくとも1つの重合可能なテルペンを含むか、又は、その誘導体を含むという特徴を有する。
【0009】
重合可能なテルペン及びその誘導体は、(メタ)アクリルモノマーと共重合することが可能であり、これによって、表面の疎水性が高まり、浄化可能性が向上する(フッ素ポリマーや添加された環状メタクリルモノマーと同様)と同時に、硬くて脆いアクリル樹脂の柔軟性が向上する。
【0010】
驚くべきことに、注型用材料においてテルピネオールを添加することにより、重合後の成形品の離型プロセス、具体的にはガラス繊維複合材料から成る型(GRP型)から成形品を離型するプロセスが改善される。テルペンの添加は、GRP型の表面にある離型剤層及びゲルコートの破壊を防ぐ。重合中、これらは、メタクリレートベースのモノマーの重合中にトロンムスドルフ効果が起こった場合に生じる高温やその際に使用されるアクリレートによって破壊される。重合可能なテルペンをさらに添加すると、メタクリレートベースのモノマーとテルピネオールとが共重合する際の可塑化作用により、成形品はより高い耐衝撃性を有するようになる。
【0011】
注型用材料は、1つの重合可能なテルペンだけを含有する可能性に加えて、2つ以上の重合可能なテルペン及びその誘導体の混合物を含有することも可能である。これにより、このような混合物によって異なるテルペンの異なる特性を組み合わせることが可能になり、注型用材料、及び最終的には注型による成形品に、成形品に求められる幅広いスペクトルの特性を与えることが可能となる。
【0012】
様々なテルペン及びその誘導体を使用可能である。テルペン、又は、混合物を形成する2つ以上のテルペン及びそれらの誘導体は、好ましくは、α-テルピネオール、s-テルピネオール、γ-テルピネオール、テルピネン-4-オール及びそれらの混合物、メンタジエンとしてのテルピノレン、非環状モノテルペンアルコールとしての(Z)-2,6-ジメチル-2,6-オクタジエン-8-オール、モノテルペンとしてのミルセンから選択されるが、これらに限定されない。これら全ての重合可能なテルペン及びそれらの誘導体は、(メタ)アクリルモノマーと共重合する。これらは、樹脂構造に、浄化可能性及び可塑化作用を向上させるための疎水性セグメントを導入し、これによって、樹脂は、機械的衝撃や熱衝撃に対してより安定化する。
【0013】
重合可能なテルペン及びその誘導体の割合の量、又は、テルペン混合物の割合の量は、注型用材料に対して0.1~20重量%の範囲であるべきである。これが意味することは、非常に低い割合の油であっても、成形体の特性に著しい改善をもたらすのに十分であることである。テルペンの割合又はテルペン混合物の割合は、好ましくは0.8~15重量%、より好ましくは1~10重量%であるべきである。
【0014】
キッチンシンク及びサニタリー用品は、様々な方法により、及び、様々な注型用材料組成物の使用により、製造可能である。これらの様々な可能性の例は、ドイツ特許出願公開第DE 38 32 351 A1号、ドイツ特許出願公開第DE 10 2004 055 365 A1号、又は、ドイツ特許出願公開第DE 10 2019 125 777 A1号に記載されている。熱活性化された過酸化物(ジ-(4-tert-ブチル-シクロヘキシル)-ペルオキシジカーボネートおよびラウリルペルオキシド混合物)の開始剤システムを、酸化還元活性化された開始剤システム(ベンゾイルペルオキシド-エトキシル化されたp-トルイジン)に交換することにより、ドイツ特許出願公開第DE 38 32 351 A1号、ドイツ特許出願公開第DE 10 2004 055 365 A1号、又は、ドイツ特許出願公開第DE 10 2019 125 777 A1号の注型用材料を室温で硬化させることが可能である。
【0015】
基本的には、様々な注型用材料を成形品の製造に使用可能である。これらが、本発明に係る注型用材料のベースとなり得ることが分かった。
【0016】
典型的な調製では、例えば、本発明に係る注型用材料は、重合可能なテルペン及びその誘導体に加えて、石油化学由来の多官能性(メタ)アクリルモノマーの割合を含むべきであり、これは新たに合成されたもの、すなわち再生されていないものであるか、又は、バイオベース由来の再生されたものであり、その割合は、0.5~20重量%、好ましくは0.8~15重量%、より好ましくは1~10重量%の範囲である。異なる架橋度を有する成形品を製造するために、多官能性モノマーの量を、様々な用途の特定の要件に応じて、変更することが可能である。例えば、キッチンシンクは、シャワートレイよりも硬い表面を必要とするが、これは架橋度を高くすることで実現可能である。これに対して、シャワートレイは、トレイに足を踏み入れる際に人体によってかかる負荷に対応するため、より柔軟でなければならない。
【0017】
本発明の熱硬化性の注型用材料のうち、重量割合において支配的な成分は、フィラー粒子である。本発明のフィラー粒子は、材料に硬度を与える無機フィラー粒子、材料を軽くする有機フィラー粒子、及び、再生材料であり得る。再生材料は、製造時の不良品を再利用することや、キッチンシンク及び他の成形品をその製品寿命の最後に再利用することで、非生分解性のプラスチック廃棄物を削減することを可能にする。これらのフィラーは、上記した粒子種類の幾つか又は全ての混合物として提供されていてもよい。
【0018】
本発明に係る注型用材料の無機フィラー粒子は、好ましくは、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、Fe2O3、ZnO、Cr2O5、SiC、CaCO3、BaSO4、炭素、金属、又は、合金から選択され、異なる2種類以上のフィラー粒子の混合物を使用してもよい。混合比は、所望の比率であり得る。
【0019】
本発明に係る注型用材料の有機フィラー粒子は、好ましくは、粉砕されたオリーブの種、アーモンドの種、桃の種、サクランボの種、アプリコットの種、アボガドの皮、アルガンの皮、又は、カカオ豆の皮から選択される。本発明に係る熱硬化性の注型用材料から硬化された成形品の軽さは、キッチンシンク、洗面器、及び、特に重量が数百キログラムであり得る浴槽にとって、極めて重要な特徴である。また、果実の種のような有機フィラー粒子は、高い機械的および熱的性能を実現する際に重要な役割を果たす。リグニンと硬材セルロースは、オリーブの種をベースとしている。注型用材料を混合する際のせん断力が、リグニンとセルロースとから成る繊維構造を開き、これによって、フィラーとマトリックスとの界面を改善するコアヘア粒子の種類が形成される。リグニン及びセルロースの繊維末端は、ポリマーマトリックスを貫通し、耐衝撃性及び耐熱衝撃性を高める。
【0020】
本発明に係る注型用材料の再生材料は、ドイツ特許出願公開第DE 10 2021 127 484.2号に係るキッチンシンク及びサニタリー廃棄物、又は、例えば米国特許出願公開第US 10 953 407 B2号に係る再生風力タービンブレードといった、熱硬化性注型用材料から成る成形品からの粉砕粒子の形で選択される。再生材料は、初期材料に応じて、石英複合材料、人造石複合材料、鉱物複合材料、又は、ガラス繊維複合材料である。
【0021】
本発明に係る注型用材料の無機フィラー粒子、有機フィラー粒子、及び、再生フィラー粒子の粒径は、好ましくは1~1200μm、特に好ましくは25~1000μm、具体的には50~800μmである。
【0022】
本発明に係る注型用材料に加えて、本発明はさらに、上記したような本発明に係る注型用材料を使用して製造される成形体に関する。注型用材料のうち、テルペン及びその誘導体以外の成分に関して使用される材料によっては、製造される成形品が、部分的に又は完全にバイオベースであってもよい。いずれにせよ、テルペン及びその誘導体が生物学的源から提供されるため、本発明に従って製造される成形体は、バイオ複合材料ベースの成形品である。
【0023】
本発明に係る熱硬化性の注型用材料から、様々な種類の成形体を製造することができる。成形品は、例えば、キッチンシンク、シャワートレイ、洗面器、又は、浴槽であり得る。
【0024】
本発明はさらに、上記した種類の成形体の製造方法であって、上記した種類の注型用材料を空の型の中に挿入し、その中で、これを、酸化還元によって誘導される硬化システムを用いて低温硬化させて重合する方法に関する。
【0025】
注型用組成物は、型の中において、10~70℃、好ましくは12~50℃、より好ましくは15~30℃の温度で、酸化還元によって誘導される低温硬化により重合される。
【0026】
本発明はさらに、上述の種類の成形品に関する。この成形品は、上述の種類の注型用材料を空の型に挿入し、その中で、この注型用材料は、低温硬化の代わりに、熱によって誘導される硬化システムを使用することによっても重合される。
【0027】
注型用材料は、型の中において、70~120℃、好ましくは80~110℃、より好ましくは90~100℃の温度で、熱によって誘導される硬化方法により重合される。
【0028】
本発明において、キッチンシンク又はサニタリー用品は、テルペン及びその誘導体を、0.1重量%以上、最大20重量%の濃度で含有する。テルペンおよびその誘導体は、植物、具体的には針葉樹及び柑橘類の精油から抽出される、揮発性不飽和炭化水素誘導体の大きな基である。テルペンは、構造的にイソプレン単位(C3H8)nをベースとする化学化合物の大型であるが不均一なクラスを形成し、その最も一般的な誘導体がアルコールである。これらの物質は、フィラー粒子(表面に多数のヒドロキシル基を持つ石英砂や果実の種)と強い化学的又は物理的結合を形成することが可能である。他方で、分子構造中に二重結合が存在することにより、テルピネオールは、バインダーの(メタ)アクリルモノマーと共重合することが可能であり、このため、低濃度であっても、本発明に係る注型用材料から製造される成形体の対応する特性を向上させることが可能である。
【0029】
以下では、本発明に係る注型用材料、及びしたがって本発明に係る成形体の効率的な幾つかの使用例について記載する。
【0030】
実施例1
使用した成分:
単官能性モノマー:
単官能性のバイオベースモノマー:イソボルニルメタクリレート(IBOMA、Evonik Performance Materials GmbH社)、ラウリルメタクリレート、エチルメタクリレート(BCH Bruhl Chemikalien Handel GmbH社)。これらの成分は全て、植物又は動物由来であり、例えば、VISIOMER(R) Terra IBOMAは、松脂から製造されている。
単官能性の再生モノマー:単官能性の再生モノマーメタクリレート(再生MMA、Monomeros del Valles, S.L.社)
テルペン及びその誘導体:
テルピネオール(International Flavour and Fragrance社)。
多官能性モノマー:
ポリエチレングリコール200ジメタクリレート(PEG200DMA)(Arkema France社)。
ポリマー:
アクリルガラス-微粉砕物XP95(再生PMMA、Kunststoff- und Farben-GmbH社)。
フィラー:
SiO2、石英砂(Dorfner GmbH社)、粒径0.1~0.70μmの石英粉末(Quarzwerke GmbH社)、粉砕されたオリーブの種(Bio Powder社)、天然着色料(Kreidezeit社)。
添加剤:
バイオベースの分散添加剤(0.1%)(BYK Chemie GmbH社)、及び、チキソ性添加剤(0.1%)(BYK Chemie GmbH社)、内部離型剤(Munzing社)。
【0031】
ポリマーマトリックスを製造するための組成物は、アクリルガラス微粉砕物XP95(再生PMMA、Kunststoff- und Farben-GmbH社)を表1の単官能性モノマー、すなわち、メチルメタクリレート(Monomeros del Valles社)、イソボルニルメタクリレート(Evonik Performance Materials GmbH社)、エチルメタクリレート(BCH Bruhl Chemikalien Handel GmbH社)、の混合物に溶解して製造する。反応混合物を40℃に加熱して、100分での溶解を促進させて、最終的に透明な溶液を得た。単官能性モノマーの混合物においてPMMAの透明な溶液を得た後、得られた組成物の粘度120~155cPsを測定する(Brookfield Viscometer DVI Prime社)。その後、バイオ-(1,10-デカンジオールジメタクリレート)(Arkema社)を添加する。
【0032】
バイオPEG200DMA及びテルピネオールを添加した実験1~3におけるアクリルガラス微粉砕物XP95の透明な溶液を使用して、無機及び有機フィラー(石英砂(Dorfner GmbH社)、石英粉末(Quarzwerke GmbH社)、粉砕されたオリーブの種(Bio-Pulver社)、及び、天然顔料粒子(Kreidezeit社))の混合物を分散させた。さらに、バイオベースの分散添加剤(0.1%)(BYK-Chemie社)及びチキソ性添加剤(0.1%)(BYK-Chemie社)及び内部離型剤(Munzing社)を添加した。
注型用材料の定量的組成を、表1にまとめる。
【0033】
【0034】
こうして製造された注型用材料を20分間撹拌した(Dispermat AE-3M、VMA-Getzmann GmbH社)。この注型用材料をそれぞれ型に流し込み、110℃で35分間重合させることにより、注型用材料からキッチンシンクの形の成形体を製造した。
【0035】
【0036】
耐衝撃性の測定のために、シンクから80×6mmのサイズのサンプルを12個切り出した。測定は、振り子式衝撃測定装置のZwickRoell HIT P機で行った。テーバー摩耗試験のために、1つのサンプル(100×100mm)を切り出し、Elcometer 1720機で摩耗試験を行う。
【0037】
水蒸気に対する耐性を以下の方法で測定する。すなわち、製造されたキッチンシンクから1つの平らなサンプル(100mm×100mm)を切り出し、その色を、Datacolor色測定システムを用いて、分光光度法で測定した。サンプルを、軽く温めたホットプレート上で保持された、270mlの沸騰蒸留水で満たされた広口三角フラスコの上に置いた。サンプルが揺動しないように、サンプルの上に重り(1kg)を載せた。60分後、サンプルを、るつぼはさみを用いて広口フラスコから除去し、測定の前に、(常温で)24時間乾燥させる。24時間後に、色測定を繰り返す。蒸気処理前後の差(DE)が、サンプルの水蒸気耐性を特徴付けるものである。
【0038】
汚染試験(EN14688)のために、シンクからサンプル(100×150mm)を切り出し、その色を、Datacolor色測定システムを用いて、分光法で測定した。測定後、コップの中の5滴の試験用汚染溶液(IPP2、WFK Testgewebe GmbH社)を、湿らせたブラシで混ぜる。このブラシを使って、被験体の上に長さ約8cmの横線を5本平行に引く。同様に、これらの横線の上に、5本の縦線を平行に引く。室温で1時間乾燥させた後、サンプルを、約80°の角度の温水(約60℃)及び減速されたジェット水流で予備洗浄する。その後、約5gの洗浄懸濁液(Viss Cremereiniger Original)を試験用汚染箇所に塗布し、新しいスポンジが装着された洗浄体を攪拌機に入れ、4kgの重りを付けて、実験台を上に回転させることにより、試験用汚染箇所の上に載せる。攪拌機(Buddeberg GmbH社)が、攪拌機の圧縮空気供給部のボール弁レバーを回し始める。回転回数は機械式カウンターで読み取りが可能であり、25回目の回転の後、サンプルを冷たい流水で洗浄し、その後乾燥させる。一晩乾燥させた後、汚染箇所で測定した色及びその結果を、最初の色測定値と共に記録する。色値の差は、サンプルの汚染試験(浄化可能性)を特徴付けるものである。
【0039】
表2に記載したDE値は、変色全体を説明するものである。
ここで、
DL:明輝度における色偏差
Da:赤/緑軸上の色偏差
Db:黄/青軸上の色偏差
【0040】
表2には、本発明のキッチンシンクの耐衝撃性が、テルペンを含まない対照サンプルと比較して、最大10%の軽微に向上していることが示されている。この調製物の中に0.6重量%のテルピネオールを添加すると、耐摩耗性が25%向上する。また、テルピネオールの添加により、キッチンシンクでは水蒸気耐性の向上も観察された。低濃度(0.2重量%)の場合でも、汚染耐性の著しい向上が確認された。
【0041】
実施例2
本発明の注型用組成物の酸化還元による硬化(加熱を伴わない低温硬化)を行っている間にも、キッチンシンクおよびサニタリー用品にとって重要な特性が多く発見された。
【0042】
使用した原料は、過酸化物及び酸化還元促進剤が添加される追加的な開始システムを除いて、実施例1について記載したものと同じである。酸化還元によって硬化されるアクリル系に典型的であるのは、アミンベースの還元剤である。実施例2に示す一連の実験は、エトキシル化されたp-トルイジン(Pergan GmbH社)である。顔料を除く他の全ての成分は、実施例1に記載した製造業者/サプライヤーと同じ製造業者/サプライヤーのものである。酸化還元によって硬化される注型用組成物の場合、白色顔料として、二酸化チタン(Crystal International社)を使用した。さらに、実施例2では、異なるテルペンおよびその誘導体を使用した。すなわち、s-ミルセン(Thermo Fisher Scientific社)、ネロール900(International Flavour and Fragrances社)、テルピノレン(ARAE社)、ゲラニオール(International Flavour and Fragrances社)を使用した。
【0043】
ポリマーマトリックスを製造するための組成物は、アクリルガラス微粉砕物XP95(再生PMMA、Kunststoff- und Farben GmbH社)をメチルメタクリレート(Monomeros del Valles社)とポリエチレングリコール(PEG)200ジメタクリレート(PEG200DMA)との混合物に溶解することにより製造した。反応混合物を40℃に加熱して、100分での溶解を促進させ、透明な溶液を得た。
【0044】
アクリルガラス微粉砕物XP95の透明溶液を、石英砂(Dorfner GmbH社)、石英粉末(Quarzwerke GmbH社)としての無機および有機フィラーと白色顔料粒子(Crystal International社)とのSiO2含有の混合物を分散させるために使用した。さらに、バイオベースの分散添加剤(0.1%)(BYK Chemie社)及びチキソ性添加剤(0.1%)(BYK Chemie社)及び内部離型剤(Munzing社)を添加した。フィラー粒子の安定した分散液を調製した後、注型用材料に過酸化物(Pergan GmbH社)を添加した。
【0045】
別の容器において、エトキシル化されたp-トルイジン(Pergan GmbH社)を、表3のそれぞれのテルペン及びその誘導体に溶解する。
【0046】
注入の直前に、対応するテルペン及びその誘導体中のエトキシル化されたp-トルイジン溶液を注型用材料に添加し、当該材料を2分間撹拌し、室温で30分間型に注入する。
【0047】
注型用材料の定量的組成を、表3にまとめる。
【0048】
【0049】
こうして製造された注型用材料を20分間撹拌した(Dispermat AE-3M、VMA-Getzmann GmbH社)。注入の直前に、各テルペン及びその誘導体中のエトキシル化されたp-トルイジン溶液を、注型用材料に添加し、当該材料を2分間撹拌し、室温で型に注入する。この組成物を、外部から加熱せずに35分間重合した。
【0050】
【0051】
全てのサンプル3~7は、(実施例1の調製物に対応する)比較サンプルと比べて、特に高い耐衝撃性、部分的には2倍以上に高い耐衝撃性を示している。浄化可能性についても、著しく向上している。
【0052】
実施例3
2つ以上の重合可能なテルペン及びその誘導体を成形品製造用の注型用材料において使用することは、実施例2に記載した条件と同じ条件下で行われる。ポリマーマトリックスを製造するための材料は、アクリルガラス微粉砕物XP95(再生PMMA、Kunststoff- und Farben-GmbH社)を、メチルメタクリレート(Monomeros del Valles社)とポリエチレングリコール(PEG)200ジメタクリレート(PEG200DMA)との混合物に溶解することによって得た。反応混合物を40℃に加熱して、100分での溶解を促進させ、透明な溶液を得た。
【0053】
アクリルガラス微粉砕物XP95の透明溶液を、石英砂(Dorfner GmbH社)、石英粉末(Quarzwerke GmbH社)としての無機および有機フィラーと白色顔料粒子(Crystal International社)とのSiO2含有の混合物を分散させるために使用した。さらに、バイオベースの分散添加剤(0.1%)(BYK Chemie社)及びチキソ性添加剤(0.1%)(BYK Chemie社)及び内部離型剤(Munzing社)を添加した。フィラー粒子の安定した分散液を調製した後、注型用材料に過酸化物(Pergan GmbH社)を添加した。
【0054】
別の容器において、エトキシル化されたp-トルイジン(Pergan GmbH社)を、表3のそれぞれのテルペンおよびその誘導体に溶解する。
【0055】
注入の直前に、テルピネオール(International Flavors & Fragrances社)とs-ミルセン(Thermo Fisher Scientific社)とから成る混合物中のエトキシル化されたp-トルイジン溶液を注型用材料に加え、当該材料を2分間撹拌し、室温で30分間型に注入する。
【0056】
注型用材料の定量的組成を、表5にまとめる。
【0057】
【0058】
こうして製造された注型用材料を20分間撹拌した(Dispermat AE-3M、VMA-Getzmann GmbH社)。注入の直前に、各テルペン及びその誘導体中のエトキシル化されたp-トルイジン溶液を、注型用材料に添加し、当該材料を2分間撹拌し、室温で型に注入する。この組成物を、外部から加熱せずに35分間重合した。
【0059】
【0060】
2つの重合可能なテルペンである、テルピネオール及びs-ミルセンから成る混合物を使用することによって、本発明の成形品の機械的性質に素晴らしい相乗効果が得られる。具体的には、耐衝撃性の大幅な向上、及び、浄化可能性の改善が確認されることになる。
【0061】
実施例4
本実施例では、酸化還元によって誘導される重合により成形品を製造するために、様々な濃度のテルピネオールの使用を試験する。
【0062】
注型用組成物及び成形品は、実施例2に記載した技術に従って製造した。ここで、サンプル9及び10では、6.0部及び2.0部のテルピネオールを使用した。注型用組成物及び成形品の比較サンプルは、テルピネオールを等価部のメチルメタクリレートで置き換えたものである。
【0063】
定量組成を表7にまとめる。
【0064】
【0065】
こうして製造された注型用材料を20分間撹拌した(Dispermat AE-3M、VMA-Getzmann GmbH社)。注入の直前に、各テルペン及びその誘導体中のエトキシル化されたp-トルイジン溶液を、注型用材料に添加し、当該材料を2分間撹拌し、室温で型に注入する。この組成物を、外部から加熱せずに35分間重合した。
【0066】
【0067】
調製されたサンプルは、成形品の比較サンプルと同等の機械的特性及び表面特性を示すが、少量のテルピネオール添加でも浄化可能性は著しく向上する。
【0068】
また、重合可能なテルペン及びその誘導体を使用すると、離型工程が容易になることも分かった。一般に、メタクリレートベースのモノマーを重合する間に、連鎖停止の拡散制限により、重合が著しく加速して鎖長が長くなることが知られている。これは、極端な温度上昇、いわゆるトロンムスドルフ効果をもたらす。アクリレート複合材料の硬化時には、このような高いピーク温度により、離型剤だけでなく型表面のゲルコートも破壊されるので、型及び成形品が損傷する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】アクリル樹脂だけから成る比較サンプル1の重合中の温度プロファイルを示している。横軸には時間がプロットされており、縦軸には重合中の注型用材料の温度がプロットされている。最高温度は約120℃であり、これは、メチルメタクリレート(MMA)の沸点よりもはるかに高い。MMAの蒸気がゲルコートの微細孔に浸透し、コーティングを剥離する。
【
図2】8.0重量%のテルピネオールを含有するサンプル3の硬化の温度プロファイルを示している。横軸には時間がプロットされており、縦軸には重合中の注型用材料の温度がプロットされている。
図2に示されるように、温度は80℃よりも高くならず、このため、MMAの蒸気の攻撃的な作用は大幅に低減される。
【
図3】製造中に
図1の温度プロファイルに曝された、比較サンプルの成形品を示している。成形品の表面の白色は、部分的に、型に付着したゲルコートの黒い斑点で覆われている。ゲルコートは、MMAの蒸気によって破壊され、ゲルコートや場合によっては型の材料が成形品に付着又は固着し、それが黒い斑点の形で示されている。
【
図4】これに対して、
図2にしたがって重合温度を下げると、型の損傷が妨げられ、成形品は、
図4に示すように、付着することなく成形される。
図4は、製造時に
図2の温度プロファイルに曝された成形品を示している。この成形品は、残留物なしに離型可能であった。すなわち、重合中でも型からの分離が行われ、ゲルコート層は無傷で保持された。
【0070】
重合可能なテルペンおよびその誘導体を使用する際のさらなる特徴は、これらを、粉砕されたキッチンシンク、サニタリー用品、又は、粉砕された型の産業廃棄物や、再生された無機フィラーといった、再生材料と組み合わせて使用可能な点である。
【0071】
実施例5
ドイツ特許出願公開第DE 38 32 351 A1号にしたがって製造され、その後粉砕されたキッチンシンクの再生材料を含む調製物の使用を試験した。
【0072】
【0073】
製造された注型用材料(サンプル11)を、20分間撹拌した(Dispermat AE-3M、VMA-Getzmann GmbH社)。注入の直前に、各テルペン及びその誘導体中のエトキシル化されたp-トルイジン溶液を、注型用材料に添加し、当該材料を2分間撹拌し、室温で型に注入する。この組成物を、外部から加熱せずに35分間重合した。
【0074】
【0075】
使われなくなったキッチンシンクから再生された材料と再生された炭酸カルシウムとを使用して製造されたサンプルは、従来の材料から成る成形品と同等の特性を示した。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キッチンシンク及びサニタリー用品を製造するために調製された、重合可能な熱硬化性の注型用材料であって、
(a)1つ又は複数の単官能性のアクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマーであって、1つ又は複数のモノマーが再生材料に由来し、及び/又は、1つ又は複数のモノマーが植物又は動物由来である、1つ又は複数の単官能性のアクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマーと、
(b)植物又は動物由来である、1つ又は複数の多官能性のアクリルバイオモノマー、及び/又は、メタクリルバイオモノマーと、
(c)(コ)ポリアクリレート、(コ)ポリメタクリレート、ポリオール、ポリエステル、ロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂から選択される1つ又は複数のポリマー又はコポリマーであって、いずれも、再生材料、又は、植物若しくは動物由来である、1つ又は複数のポリマー又はコポリマーと、
(d)自然由来の、又は、再生材料から成る、無機フィラー粒子及び/又は有機フィラー粒子と、を含み、
(a)~(c)の材料は、ポリマーバインダーを形成する、熱硬化性の注型用材料において、
前記単官能性のアクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマー、並びに、前記多官能性のアクリルバイオモノマー及びメタクリルバイオモノマーの割合は、10~40重量%であり、前記ポリマー又はコポリマーの割合は、1~16重量%であり、前記無機フィラー粒子及び/又は有機フィラー粒子の割合は、44~89重量%であり、前記ポリマーバインダーは、少なくとも1つの重合可能なテルペン又はその誘導体をさらに含む、熱硬化性の注型用材料。
【請求項2】
前記注型用材料は、2つ以上の重合可能なテルペン及びその誘導体から成る混合物を含む、請求項1に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項3】
前記重合可能なテルペン及びその誘導体、又は、前記混合物を形成する2つ以上のテルペン及びその誘導体は、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、テルピネン-4-オール テルピノレン、(Z)-2,6-ジメチル-2,6-オクタジエン-8-オール、及び、ミルセンから選択される、請求項1に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項4】
前記重合可能なテルペン及びその誘導体、又は、前記混合物を形成する2つ以上のテルペン及びその誘導体は、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、テルピネン-4-オール テルピノレン、(Z)-2,6-ジメチル-2,6-オクタジエン-8-オール、及び、ミルセンから選択される、請求項2に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項5】
前記テルペン及びその誘導体の割合、又は、複数のテルペン及びその誘導体の混合物の割合は、0.1~20重量%の範囲にある、請求項1に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項6】
前記テルペン及びその誘導体の割合、又は、複数のテルペン及びその誘導体の混合物の割合は、0.1~20重量%の範囲にある、先行する請求項2に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項7】
前記多官能性の(メタ)アクリルモノマーの一部は、石油化学由来であり再生されているか、又は、バイオベース由来であり再生されておらず、0.5~20重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項8】
前記多官能性の(メタ)アクリルモノマーの一部は、石油化学由来であり再生されているか、又は、バイオベース由来であり再生されておらず、0.5~20重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項2に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項9】
前記フィラー粒子は、無機フィラー粒子、有機フィラー粒子、再生材料、又は、これらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項10】
前記フィラー粒子は、無機フィラー粒子、有機フィラー粒子、再生材料、又は、これらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項2に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項11】
前記無機フィラー粒子は、SiO
2
、Al
2
O
3
、TiO
2
、ZrO
2
、Fe
2
O
3
、ZnO、Cr
2
O
5
、SiC、CaCO
3
、BaSO
4
、炭素、金属、合金、又は、これらの混合物から選択される、請求項9に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項12】
有機フィラー粒子は、粉砕されたオリーブの種、アーモンドの種、桃の種、サクランボの種、アプリコットの種、アボガドの皮、又は、アルガンの皮から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項13】
前記再生材料は、熱硬化性の注型用材料から成る成形品の粉砕物から製造されることを特徴とする、請求項9に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項14】
前記無機フィラー粒子は、SiO
2
、Al
2
O
3
、TiO
2
、ZrO
2
、Fe
2
O
3
、ZnO、Cr
2
O
5
、SiC、CaCO
3
、BaSO
4
、炭素、金属、合金、又は、これらの混合物から選択される、請求項10に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項15】
有機フィラー粒子は、粉砕されたオリーブの種、アーモンドの種、桃の種、サクランボの種、アプリコットの種、アボガドの皮、又は、アルガンの皮から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項16】
前記再生材料は、熱硬化性の注型用材料から成る成形品の粉砕物から製造されることを特徴とする、請求項10に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項17】
前記無機フィラー粒子、前記有機フィラー粒子、及び、前記再生材料の粒径は、1~1200μmであることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項18】
前記無機フィラー粒子、前記有機フィラー粒子、及び、前記再生材料の粒径は、1~1200μmであることを特徴とする、請求項2に記載の熱硬化性の注型用材料。
【請求項19】
先行する請求項のいずれか1項に記載の熱硬化性の注型用材料を使用して製造された成形体。
【請求項20】
前記成形体は、キッチンシンク、シャワートレイ、洗面器、又は、浴槽であることを特徴とする、請求項19に記載の成形体。
【請求項21】
成形体の製造方法であって、請求項1~18のいずれか1項に記載の注型用材料を使用すると共に型の中に挿入し、前記型の中で、前記注型用材料を、酸化還元によって誘導される硬化システムを用いて低温硬化させて重合する、成形体の製造方法。
【請求項22】
前記型の中の前記注型用材料は、10~70℃の温度で重合される、請求項21に記載の成形体の製造方法。
【請求項23】
成形体の製造方法であって、請求項1~18のいずれか1項に記載の注型用材料を使用すると共に型の中に挿入し、前記型の中で、前記注型用材料を、熱によって誘導される硬化システムを用いて重合する、成形体の製造方法。
【請求項24】
前記型の中の前記注型用材料は、70~120℃の温度で重合されることを特徴とする、請求項23に記載の成形体の製造方法。
【外国語明細書】