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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108146
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】微生物培養用の交換装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240802BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20240802BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C12M1/00 D
C12M1/12
C12M1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009026
(22)【出願日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2023012293
(32)【優先日】2023-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599132959
【氏名又は名称】株式会社シバタ
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA04
4B029BB01
4B029CC01
4B029DB11
4B029DB17
4B029DD02
4B029DF10
4B029DG04
4B029DG06
4B029GA02
4B029GB02
(57)【要約】
【課題】屋外環境においても滅菌環境と目的微生物の生育に適した生育環境を維持しつつ目的微生物を培養できるメンテンナス性のよい微生物培養用の交換装置を提供すること。
【解決手段】交換機材2は、培地Bを注入することで目的の微生物を培養し培養液Cを生成する培養容器31と、培養容器31に補充される培地Bを収納する培地容器21と、培地容器21の培地Bを培養容器31へ送液する培地送液用チューブ25とを備える。培養容器31は、チューブコネクタ32を有する。培地送液用チューブ25の先端には、チューブコネクタ26が設けられている。チューブコネクタ26は、培養容器31側のニードルレスコネクタ39と接続することで、培地容器21の培地Bを無菌で培養容器31に注入することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的微生物を培養する装置本体に対して着脱可能に設置される交換機材として機能する、微生物培養用の交換装置において、
前記目的微生物を培養する培養容器と、
前記培養容器に対して補充される消耗品を液体として収納する培地容器と、
前記培地容器から前記培養容器に対して前記消耗品を送液する送液部と、
を予めオートクレーブ滅菌された状態で備える、
微生物培養用の交換装置。
【請求項2】
前記培養容器は、第1栓を有しており、
前記送液部は、第1管として構成され、その端部に、無菌で前記第1栓に接続されて前記消耗品を前記培養容器に注入する第1接続部を有している、
請求項1に記載の微生物培養用の交換装置。
【請求項3】
前記第1管には、殺菌用溶液が封入されており、前記第1接続部が前記第1栓に接続時に開封又は通液させる機構を有する、
請求項2に記載の交換装置。
【請求項4】
前記培地容器は、第2栓を有しており、
前記送液部は、
前記第2栓を殺菌溶液で覆う殺菌部と、
所定条件を満たすと前記第2栓に接続して、前記培地容器から前記消耗品を出力する第2接続部と、
前記第2接続部から出力された前記消耗品を前記培養容器に供給する消耗品供給部と、
前記培養容器に供給された前記消耗品の分の無菌エアを前記培地容器に供給する無菌エア供給部と、
を備える請求項1に記載の交換装置。
【請求項5】
前記第2接続部は、移動機構を有しており、前記所定条件を満たす前には、前記第2栓から離間した位置に存在し、前記所定条件を満たすと当該移動機構により移動して前記第2栓に接続する、
請求項4に記載の交換装置。
【請求項6】
前記送液部は、前記培地容器を移動させる駆動部をさらに有し、
前記所定条件を満たす前には、前記培地容器の前記第2栓は前記第2接続部から離間した位置に存在し、前記所定条件を満たすと当該駆動部により前記培地容器が移動されて前記第2栓が前記第2接続部に接続する、
請求項4に記載の交換装置。
【請求項7】
前記所定条件は、所定時間が経過したという条件である、
請求項5又は6に記載の交換装置。
【請求項8】
前記培地容器と前記培養容器とは一体に形成されている、
請求項1に記載の交換装置。
【請求項9】
前記培養容器に水を注入するための第2管、
前記培養容器にエアを注入するための第3管、
前記目的微生物を含む液体を培養液として前記培養容器の外部に排出するための第4管、
を少なくとも含む複数の管をさらに備え、
前記複数の管の夫々は、その一端に、前記装置本体と接続するための第3接続部を有している、
請求項1に記載の交換装置。
【請求項10】
前記第2管及び前記第3管の夫々は、注入される前記水又は前記エアを滅菌するためのフィルタをさらに有している、
請求項9に記載の交換装置。
【請求項11】
前記第3接続部、前記送液部、前記第2管及び前記第3管は、火炎滅菌又はアルコール殺菌が施されている、
請求項9項に記載の交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物培養用の交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、現場で目的の微生物を増殖させて添加するシステムが知られており、実際に社会実装されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6628068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1の技術は、完全に滅菌していない水や培地成分、容器を使用する一般環境中で微生物を培養しているため、目的の微生物と共に他の雑菌(目的外の微生物)の増殖が起こり、屋内のような純粋培養ができない、という課題がある。
この他、目的の微生物を増殖させるため、培養可能な微生物が限られる。例えば培地(液体)のpHを目的微生物の生育に適した値にするため、設定したpH以外を好む微生物の培養ができず、目的微生物を培養する都度、洗浄が必要になる。また、例えば油分分解菌を培養する際には、培地(液体)に特定の油分を加えて培養するため、培養槽を短い期間で定期的に洗浄する必要があるが、このようなメンテナンス作業の間隔はできるだけ長くしたい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、屋外環境において、滅菌環境と目的微生物の生育に適した生育環境を維持しつつ目的微生物を培養することができるメンテンナス性のよい微生物培養用の交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の微生物培養用の交換装置は、
目的微生物を培養する装置本体に対して着脱可能に設置される交換機材として機能する、微生物培養用の交換装置において、
前記目的微生物を培養する培養容器と、
前記培養容器に対して補充される消耗品を液体として収納する培地容器と、
前記培地容器から前記培養容器に対して前記消耗品を送液する送液部と、
を予めオートクレーブ滅菌された状態で備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、屋外環境において、滅菌環境と目的微生物の生育に適した生育環境を維持しつつ目的微生物を培養することができるメンテンナス性のよい微生物培養用の交換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るオンサイト培養システムを利用するサービスの一例を示す図である。
図2】実施形態に係るオンサイト培養システムの構成例を示す図である。
図3図2のオンサイト培養システムの培養容器の構成を示す図である。
図4図2のオンサイト培養システムの培地容器と培養容器との接続部を示す図である。
図5図2のオンサイト培養システムの動作を示すフロー図である。
図6】他の実施形態に係るオンサイト培養システムの構成例を示す図である。
図7】本発明の微生物培養用の交換装置に係る第2実施形態のオンサイト培養システムの装置本体の一部構成を示す図である。
図8図7の装置本体に用いられるスピルの構成を示す図である。
図9】本発明の微生物培養用の交換装置に係る第2実施形態のオンサイト培養システムにおけるウォータサーバの形態の装置本体の第1実施例の構成を示す図である。
図10図9の装置本体の移動部の詳細構成を示す図である。
図11】本発明の微生物培養用の交換装置に係る第2実施形態のオンサイト培養システムにおけるウォータサーバの形態の装置本体の第2実施例の構成を示す図である。
図12】本発明の微生物培養用の交換装置に係る第3実施形態のオンサイト培養システムの装置本体と交換機材の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
まず、図1を参照して、オンサイト培養システムを利用するサービスについて説明する。図1は、実施形態に係るオンサイト培養システムを利用するサービスの一例を示す図である。
【0010】
図1に示すように、本サービスは、エンドユーザE(顧客)に対するオンサイト培養システムAの提供と、オンサイト培養システムAで定期的に必要となる消耗品を販売するビジネスSとを組み合わせたサービスであり、サービス提供者は、エンドユーザEに対して、容器に収納した補充剤の定期配送を行うと共に、使用済みとして返却される容器を回収することもサービスに含めて提供するものである。
【0011】
オンサイト培養システムAで扱う消耗品には、微生物の餌となる培地が収納された培地器と薬剤等の補充剤が含まれており、これらの消耗品は、第1の所定期間、例えば月1回等に定期的に交換が行われる。
また、消耗品には、大量培養槽等の培養器と酵素生産菌等の目的微生物が含まれており、これらは、第2の所定期間、例えば3乃至4か月に1回等に定期的に交換が行われる。
【0012】
本サービスにおいて、サービス提供者は、培養器及び培地器をオートクレーブ滅菌し、目的の微生物を植菌、もしくは純粋培養した種菌の状態で培養器に収納、及び培地を培地器に収容し、これら培養器及び培地器を所定の配送事業者からエンドユーザEに配送する。
エンドユーザEは、配送されてきた培養器および培地容器を屋外の微生物培養装置本体にセットし、自動制御にて目的の微生物の培養を行う。
サービス提供者は、現地において、微生物培養装置本体に培養容器及び培地容器を設置した後、エンドユーザEと契約した上、培地(液体)を収納した培地容器及び微生物を含む培地(液体)を収納した培養容器の配送による定期的な交換を行い(サービサイジング的)、エンドユーザE及び培養状態を管理することで、オンサイト培養システムAとしての機能を維持する。
【0013】
このように本サービスによれば、クローズドな管理体制を構築することで、純粋培養系のコンタミリスクを最小限に抑えることができる。
この結果、業界初の超高効率のオンサイト純粋培養サービスを提供することができる。
【0014】
上記のようなサービサイジングによる提供方法の他に、培地器20および培養器30を顧客側で処分するディスポーザブル可能な形態でも提供可能である。
【0015】
次に、図2及び図3を参照して本サービスを実現するオンサイト培養システムの構成を説明する。図2は、実施形態のオンサイト培養システムを示す構成図である。
【0016】
なお、実施形態を説明するにあたり、「滅菌」とは、全ての微生物を対象として、生存率が100万分の1以下まで殺滅または除去することを意味する。「殺菌」とは、微生物を殺滅させるという意味だが、殺滅する具体的な対象微生物や程度の保証は含んでいない。
【0017】
図2に示すように、実施形態のオンサイト培養システムAは、装置本体1と、交換機材2とを備える。
【0018】
装置本体1は、屋外仕様の筐体の中に、ブロワー11、圧力調整器12a、12b、流量計13a、13b、電磁弁14、送液用のチュービングポンプ17、送液用のチュービングポンプ18、制御機19、バンドヒーター(図示せず)、クーラー等の冷却装置(図示せず)等を備える。
【0019】
制御機19は、制御対象の機器(ブロワー11、圧力調整器12a、12b、チュービングポンプ17、18等)を制御する。
制御機19は、タッチパネル19a、PLC(Programmable Logic Controller)19b、電源ブレーカー19c等を備える。
タッチパネル19aは、オペレータによりタッチ操作されることで、制御対象の機器に対する各種設定や指示操作等が行われる。
PLC19bは、マイクロプロセッサを内蔵し、ユーザが変更可能なプログラムによって制御対象の機器を制御する。また、PLC19bは、各種設定及びタッチ操作に応じて制御対象の機器を制御する。
電源ブレーカー19cは、過電流が検出されたときに、本制御機19や制御対象の機器への電源供給を遮断する。
【0020】
ブロワー11は、曝気用エアの発生源(供給源)であり、制御機19のPLC19bにより制御されて、交換機材2側の培養器30に曝気用のエアを供給する。
チュービングポンプ17、18は、制御機19のPLC19bにより回転数が制御されて送液量が調整される。この他、チュービングポンプ17、18のチューブ内径、稼働時間により送液量が調整される。
【0021】
圧力調整器12aは、曝気用のエアの圧力(流量)を調整する。流量計13aは、エアの流量を計測し、計測された流量を制御機19に入力する。
圧力調整器12bは、市水の圧力(流量)を調整する。流量計13bは、市水の流量を計測し、計測された流量を制御機19に入力する。
電磁弁14は、市水を培養器30へ供給および供給停止するための弁である。電磁弁14は、制御機器19(PLC19b等)によってON/OFF等が制御される。
バンドヒーターは、交換機材2側の培養器30の培養容器31の胴の部分に固定されるものであり、培養器30の温度を上げるために使用される。バンドヒーターは、温度センサーを含む温度調節機能を有しており、培養容器31内の液体の温度を一定の温度範囲に保持することが可能である。また、冷却が必要な場合は、冷水などの冷媒を通す冷却管を培養器内もしくは、外側に通すことで、温度を下げることができる。また、筐体にクーラーを取り付けることで温度を下げることができ、これらバンドヒーターとクーラーを併用することで、オンサイト培養システムAの温度を一定に制御することもできる。
【0022】
交換機材2は、容量が例えば20L(リットル)等の培地器20、吸気用チューブ24、培地送液用チューブ25、チューブコネクタ26、水ろ過滅菌用のカプセルフィルタ27、エア滅菌用のメンブレンフィルタ28、容量が例えば20L(リットル)等の培養器30等を備える。これらは全てオートクレーブ滅菌(121℃×20分以上)が可能な材質の材料が選定され、利用されている。具体的な材料としては、例えば、金属、ガラス、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン等が用いられる。
【0023】
培地器20は、培地(液体)Bが収納される培地容器21を有する。培地容器21として、例えばメディカルペール丸型のものが使用されている。培地(液体)Bは、目的微生物の餌となる成分(培地成分)を含む液体である。
培地容器21の上部開口には、スクリューキャップ23が設けられている。スクリューキャップには、吸気用チューブ24とチェックバルブ29が取り付けられている。吸気用チューブ24は、外気を培地容器21内に取り込むものである。
チェックバルブ29は、培地の逆流を防止するためのものであり、チュービングポンプ17に弁等が設けられていれば必須ではない。チェックバルブ29には、培地送液用チューブ29aの一端が接続されている。培地送液用チューブ29aの他端はチュービングポンプ17の入口に接続されている。さらに、チュービングポンプ17の出口には培地送液用チューブ25の一端が接続されており、培地送液用チューブ25の他端にはチューブコネクタ26が設けられている。
培地送液用チューブ29a、25は、培地容器21の底部から培地(液体)Bを培養容器31へ送液するためのシリコンチューブである。チュービングポンプ17から先の培地送液用チューブ25の内容量は3mL程度である。培地送液用チューブ25内には、予め70%エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、グルタラール、過酢酸等の殺菌用の薬剤(殺菌用溶液)が封入されている。
培地(液体)Bは、培地容器21と培養容器31の間に配置されたチュービングポンプ17により培地容器21から培地送液用チューブ25を通じて培養容器31に送液される。
【0024】
培地容器21には、予め培養を行う微生物に適した培地成分を調整し充填しておく。その際、濃縮した培地溶液を充填しておくことが好ましい。理由としては、交換スパンを延ばせることと、培地成分を濃縮することにより、水分活性値を下げることができ、凝固点降下や雑菌による汚染リスクが下げられる点が挙げられる。
【0025】
培地容器21の吸気用チューブ24には、エア滅菌用のメンブレンフィルタ22が取り付けられている。培地(液体)Bの送液に伴って培地容器21に吸気されるエアは、このエア滅菌用のメンブレンフィルタ22でろ過滅菌され、培地容器21に吸気される。
【0026】
ここで、図4を参照して接続部Dについて説明する。
図4に示すように、接続部Dは、培地送液用チューブ25の培養容器31側の一端に設けられたチューブコネクタ26と、培養容器31からのシリコンチューブの一端に設けられたニードルレスコネクタ39とを着脱自在に接続することで構成される。
チューブコネクタ26は、ルアーロック雄51とルアーロック雄キャップ52とを備え、培地送液用チューブ25の一端を封止している。また上述したように培地送液用チューブ25内には、70%エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、グルタラール、過酢酸等の殺菌用の薬剤(殺菌用溶液)が封入されている。
一方、ニードルレスコネクタ39は、シリコンチューブを介して培養容器31に取り付けられたチューブコネクタ32に接続されている。
このニードルレスコネクタ39とチューブコネクタ26とは夫々のキャップを外すことで、容易に着脱することができる。
【0027】
チュービングポンプ17及び接続部Dは、チューブコネクタ26とニードルレスコネクタ39とを接続して流路を開放、つまり培地送液用チューブ25内の殺菌用溶液を開封し上記コネクタやチューブに通液させる機構として機能する。この機構により、培地送液用チューブ25及びチューブコネクタ26の先に位置するニードルレスコネクタ39及びシリコンチューブの内部が殺菌用溶液により殺菌されるので、交換時の汚染を防止することができる。
なお、ここでは培地送液用チューブ25の開封と殺菌用溶液の通液を両方することとしたが、殺菌用溶液を開封すればチューブ内に通液されるので、開封と通液はいずれか一方でもよい。
【0028】
ニードルレスコネクタ39としては、例えばセーフタッチプラグ(ニプロ社製)が使用されており、その先端はディスク弁が採用されており、普段は閉じている。
ニードルレスコネクタ39のディスク弁を70%アルコールにて洗浄し、培地送液用チューブ25の先端のチューブコネクタ26のルアーロック雄キャップ52(図4参照)を外してニードルレスコネクタ39をルアーロック雄51に接続することで、接続時の雑菌による汚染を防止できる。
また、接続後に培地送液用チューブ25内に封入されている70%エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、グルタラール、過酢酸等の殺菌用の薬剤を通液することで、ニードルレスコネクタ39側のシリコンチューブやチューブコネクタ32の内部は、70%エタノールの殺菌効果と、噴射液による洗浄効果が加わり、殺菌することができる。この結果、培地容器21と培養容器31とを無菌状態で接続することができる。
【0029】
本実施形態では、セーフタッチプラグ(ニードルレスコネクタ39)を培養容器31側のシリコンチューブ先端に取り付けている。セーフタッチプラグの材質としては、例えばポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、シリコン素材等を用いることができる。
【0030】
上記の交換機材2一式は、チューブの先端やカプセルフィルタ27の吸気側、チューブコネクタ26の先端、ニードルレスコネクタ39の先端等、培地容器21や培養容器31が外部環境と接する箇所全てにおいて、アルミホイル等のオートクレーブ滅菌が可能な被覆材で被覆し、その後、オートクレーブ滅菌を行う。アルミホイル等の被覆材は、使用直前まで剥がさないことで滅菌環境が維持される。
【0031】
図2、3に示すように、培養器30は、培養容器31を有する。培養容器31には、例えばストロングボトル等のボトル型の容器が用いられている。培養容器31には、ねじ口に市販のチューブコネクタ付スクリューキャップ33等が取り付けられている。また、培養容器31としては、例えばジャーファーメンター等の培養装置やバッグタイプの容器等も用いることができる。
培養容器31には、培地器20からの培地(液体)Bと、事前に植菌された目的の微生物とを含む液体C(以下これを「培養液C」と略記する)が収納されている。なお、この他、培養容器31には、予め植菌用の種菌を充填しておいてもよい。
【0032】
培地容器21及び培養容器31には、それぞれ送液または送気用のシリコンチューブやテフロンチューブ等の配管が取り付けられる。例えば培地容器21には、培地送液用チューブ25が取り付けられる。なお、テフロンは登録商標である。
また、培養容器31には、曝気用エア供給用チューブ38が取り付けられている。
【0033】
図2、3に示すように、培養容器31には、オーバーフロー用チューブ35、市水供給用チューブ36、培養液出口用チューブ37、曝気用エア供給用チューブ38、チューブコネクタ32、チューブコネクタ付スクリューキャップ33、34、バンドヒーター(図示せず)等が設けられている。
その他、攪拌羽根、撹拌用の回転子、pH計、DO計、アルカリ注入ポンプ、アルカリ注入口、酸注入ポンプ、酸注入口、電極式水位センサー、濁度センサー、冷却器等を培養容器31に設けても良い。
【0034】
チューブコネクタ32は、培養容器31に設けられた開口を塞ぐ栓としての機能と、送液されてくる培地を培養容器31内に導くための配管としての機能とを有するものである。
【0035】
バンドヒーターは、例えば温調付きバンドヒーター等の温度調整機能を有するバンドを備えており、培養容器31の胴部分にバンドを巻き付けるようにして取り付けられる。温調付きバンドヒーターは、培養する微生物夫々に適した最適温度に合わせた培養温度調整を行うことができる。一般的には20℃~38℃程度の範囲で微生物の生育速度が最大となることが多く、この温度範囲で温度を微調整可能なものが用いられている。例えば油脂分解菌であるRhodococcus erythropolisの培養温度は約20℃であるのに対し、Pseudomonas putidaは約35℃で高い活性を示す。
【0036】
市水供給用チューブ36の一端には、チューブコネクタ15aが設けられている。曝気用エア供給用チューブ38の一端には、チューブコネクタ15bが設けられている。
培養液出口用チューブ37は、微生物(目的微生物)を含む液体を培養液Cとして培養容器31の外部に排出するための管であり、培養液出口用チューブ37の一端には、チューブコネクタ15cが設けられている。
オーバーフロー用チューブ35の一端には、チューブコネクタ15dが設けられている。
これらチューブコネクタ15a乃至15dは、装置本体1や外部機器の配管(チューブ部品等)と簡単な作業で着脱可能に接続するためのものである。
【0037】
培養容器31には、曝気用エア供給用チューブ38を通じてエアが供給される。曝気用エア供給用チューブ38の途中には、エア滅菌用のメンブレンフィルタ28が取り付けられており、エアのろ過滅菌が行われる。
【0038】
曝気用エアの発生源(供給源)には、装置本体1に設置したブロワー11が用いられる。この他、エアポンプ等を用いてもよい。ブロワー11と培養容器31との間には、ブロワー11の側から順に、圧力調整器12a、流量計13a、取り外し可能なチューブ継手であるチューブコネクタ15b、エア滅菌用のメンブレンフィルタ28、曝気用エア供給用チューブ38が接続されている。
ブロワー11からチューブコネクタ15bまでが装置本体1側の機器であり、チューブコネクタ15bより培養容器31側に取り付けられるエア滅菌用のメンブレンフィルタ28及び曝気用エア供給用チューブ38は、培養器30側の機器である。
【0039】
曝気用エアは、培養容器31に取り付けたチューブコネクタ付スクリューキャップ33を介して、培養容器31の中に導入される。培養容器31の底部に散気管40を取り付け、培養液Cの曝気を行う。直接曝気のみでも良いが、散気管40等で空気を細かくした方が、酸素溶解効率が上がることで培養効率も向上する。
【0040】
培養容器31には、市水供給用チューブ36にて培地希釈用の水道水(市水)が供給される。なお、井水や工業用水等、ろ過滅菌が可能で微生物の培養に悪影響を及ぼさない液体であれば水道水でなくてもよい。このため、その水は、孔径0.45μm(好ましくは0.2μm以下)以下の、カプセルフィルタ27を用いてろ過滅菌を行う。他の方法として、殺菌レベルとなるが、例えば紫外線殺菌や加熱殺菌、高周波、マイクロ波、超音波、オゾン、プラズマ等の殺菌技術を用いても良い。
【0041】
カプセルフィルタ27でろ過滅菌を行うためには、原水側で0.3MPa程度以上の水圧が必要となる。水圧が低い場合は、別途ポンプ等で加圧するものとする。
市水等の水道水の供給手段としては、圧力調整器12bと流量計13b、電磁弁14を設け、その後段に接続された取り外し可能なチューブ継手であるチューブコネクタ15aにて、培養容器31に接続された市水供給用チューブ36と接続する。カプセルフィルタ27は、チューブコネクタ15aより培養容器31側の位置に取り付けられている。
市水は、上記の給水経路を通じて培養容器31に取り付けたチューブコネクタ付スクリューキャップ33を介して、培養容器31内に導入される。
【0042】
培養容器31で培養した培養液Cは、培養液出口用チューブ37から、装置外部に移送され、必要な箇所に添加される。培養容器31内の培養液Cが、全量の1~5%程度が残るように、培養容器31の底部の少し上部の位置に抜き出し位置を調整する。
【0043】
培養容器31に取り付けた培養液出口用チューブ37は、培養容器31内の培養液Cを装置外部へ移送するための配管である。培養液Cは、培養液出口用チューブ37を介して装置本体1に設置された送液用のチュービングポンプ18により吸い出されて、外部の移送先(添加先)へ移送される。
チュービングポンプ18は、PLC19bによりポンプの回転数が制御されて、培養液Cの送液量が調整される。この他、送液量は、チューブ内径、プログラムタイマーでの稼働時間によっても調整可能である。
【0044】
培養容器31には、オーバーフロー用チューブ35が接続される。オーバーフロー用チューブ35は、培地(液体)の添加場所や、下水配管ライン等、培養している微生物および培地成分が若干量流出しても問題ない場所に敷設する。
【0045】
オーバーフロー用チューブ35は、培養容器31内の内圧が上がらないようにする役割のために取り付ける。具体的には、オーバーフロー用チューブ35は、培養のために行う曝気エアの出口、培養中に発泡が起きた際の泡の逃げ道、市水や培地が何らかの異常で多く入り過ぎた際の培養液Cの逃げ道、として機能する。
【0046】
上記の培養容器31一式は、チューブの先端やメンブレンフィルタの吸気側等、培養容器31内部が外部環境と接する箇所全てにおいて、アルミホイル等のオートクレーブ滅菌が可能な被覆材で被覆した後、オートクレーブ滅菌を行う。アルミホイル等の被覆材は、使用直前まで剥がさないことで、培養容器31内の滅菌環境が維持される。
【0047】
上記培地容器21と培養容器31との接続作業は、チューブコネクタ26及びニードルレスコネクタ39を用いず、火炎滅菌が可能な金属継手等で代用することもできる。例えば、培地送液用チューブ25の途中を金属配管とし、培養容器31側との接続を金属製のストレートユニオンにしてもよい。
【0048】
培地(液体)Bを交換する際は、ストレートユニオン部分を外し、培地容器21を交換する。交換の際は、新しい滅菌された培地容器21と培地送液用チューブ25の先端の金属配管およびユニオン接続部分を十分に火炎滅菌し接続することで、滅菌状態を維持したまま接続が可能となる。
【0049】
上記培地容器21と培養容器31との接続は、市販の無菌コネクタを用いて代用することができる。例えば、日本ポール株式会社製のクリーンパック(R)無菌コネクタ等を用いることで、屋外であっても無菌状態を維持したまま接続が可能となる。
但し、この方法の場合、培養容器31側の接続部分を毎回滅菌できないため、汚染リスクは高まる。
【0050】
上記培地容器21と培養容器31との接続は、汚染リスクに応じてアルコール殺菌のみで代用することも可能である。交換機材2と装置本体1の接続部分はチューブコネクタ15a乃至15dとし、交換の際は、新たなチューブおよびチューブコネクタ15a乃至15dを70%エタノールで十分に殺菌を行った上で夫々の対応部位に接続する。
この方法も培地容器21側の接続部分は、毎回滅菌できないため、汚染リスクは高まるが、比較的衛生環境の良い場所に装置本体1を設置している場合等は、この方法でも運用が可能な場合もあると考えられる。
【0051】
装置本体1の動作は、装置本体1に設置されている制御機器19(PLC19b等)によって制御される。主にポンプや電磁弁のON/OFFや、タイマー等の動作順序をプログラムすることで、培養・添加工程、培地交換工程、培養器交換工程を制御する。
また、PLC19bに通信回線機能を持たせることで、外部からの遠隔操作や、装置状態を確認したり、エラーの発生状況を確認することができる。
【0052】
ここで、図4を参照して実施形態のオンサイト培養システムにおける培地容器21の交換方法を説明する。
交換機材2が現地に納品されたときの状態は、図4の状態、つまり接続部Dのコネクタどうしが分離された状態である。
【0053】
交換機材2を着脱する際、新規に培地容器21を培養容器31に接続する第1のケースと、既に設置されている培地容器21を古いものから新しいものに交換する第2のケースの2つのケースがある。
【0054】
まず、第1のケースの場合を説明する。
第1のケースの場合、作業員は、まず、培養容器31側のニードルレスコネクタ39のルアーロック雄51からルアーロック雌キャップ62を外し、ルアーロック雄51の表面を70%アルコールなどで殺菌する。
その後、作業員は、培養容器31の隣に新たに設置した培地容器21側のルアーロック雌キャップ52をルアーロック雄51から外し、ルアーロック雄51を手早く培養容器31側のセーフタッチルアーロック雌61に接続する。
【0055】
続いて、作業員は、制御機19のタッチパネル19aに表示されている接続完了ボタンを押すことで、制御機19は、培地容器21側のチュービングポンプ17を稼働制御する。
これにより、チュービングポンプ17が稼働して送液動作を開始し、培地送液用チューブ25内で押し出された70%エタノールが培養容器31側へ送液され、培養容器31側のニードルレスコネクタ39(セーフタッチルアーロック雌61)の内部及びシリコンチューブ内が殺菌されながら送り出される。
そして、送り出された少量の70%エタノールがチューブコネクタ32を通じて培養容器31内に入ると、培養容器31内の培養液Cに混ざり希釈され、殺菌効果を失うため、培養微生物への影響はない。
【0056】
次に、第2のケースの場合を説明する。
旧培地容器21側のルアーロック雄51と培養容器31側のセーフタッチルアーロック雌61を素早く取り外し、培養容器31と分離した旧培地容器21を取り去る。
続いて、新たな培地容器21をセットし、培養容器31側のセーフタッチルアーロック雌61の表面を70%アルコールなどで殺菌洗浄する。
その後、新たな培地容器21側のルアーロック雄51からルアーロック雌キャップ52を取り外し、当該ルアーロック雄51を素早く培養容器31側のセーフタッチルアーロック雌61に接続する。
以後の操作は第1のケースの場合と同様でありその説明は省略する。
【0057】
このように本実施形態の培地容器21の交換方法によれば、培地容器21と培養容器31とを繋ぐ接続部Dをワンタッチで着脱できる構造とし、新たな培地容器21をセットして接続部Dを繋ぎ、培地の送液を開始すると、培地送液用チューブ25に封入されていた70%アルコールが培地よりも先にコネクタやチューブの内部に流れて内部を殺菌洗浄するので、雑菌等が入る余地を与えることなく培地容器21を交換することができる。即ち、容器交換時の培養液の汚染を防止することができる。
【0058】
ここで、図5を参照して実施形態のオンサイト培養システムの動作を説明する。
図5は、図2のオンサイト培養システムの動作を示すフロー図である。下記説明で制御主体の記載がないものは主に制御機19のPLC19bの動作である。
【0059】
図5に示すように、ステップS101の培養工程では、制御機19のPLC19bにより、ブロワー11、バンドヒーター、電磁弁14、チュービングポンプ17、18がON/OFF制御されて、水道水や培地(液体)が培養容器31に注入されて、目的微生物が培養される。
この際、培地注入回数、培養開始タイムがカウントされる。
また培地交換までの上限回数と培養設定時間が設定され、上限回数又は培養設定時間に至るまで培地注入回数と培養タイムがカウントされる。
【0060】
そして、ステップS102において、培地注入回数が上限回数に到達したことが検知されると、ステップS103において、培地交換ランプが点灯される。
【0061】
培地交換ランプが点灯したことで、オペレータによりタッチパネル19aの培地交換ボタンが押下されると、PLC19bにより、タッチパネル19aに交換手順が表示されるので、次に、ステップS104において、タッチパネル19aに表示された交換手順に従って、オペレータにより培地が交換される。
【0062】
ここで、まず、培地交換ボタンが押下されると、培地交換回数が+1カウントアップされる。またチュービングポンプ17が逆転され、チュービングポンプ17に接続されている培地送液用チューブ25の内液が抜き出される。
チュービングポンプ17の逆転と共にタイマーが起動されて、予め設定された既定の時間にタイムアップすることで、内液の抜き出し完了ランプが点灯し、内液の抜き出し完了がオペレータに通知される。
【0063】
チューブ内液の抜き出しが完了すると、培養容器31と古い培地容器21との接続部Dが分離されるとともに、チュービングポンプ17のヘッドから培地送液用チューブ25が取り外される。これにより、古い培地容器21(旧培地容器21)が取り外される。その後、その場所に新しい培地容器21(新培地容器21)が設置される。
【0064】
新培地容器21を設置し、接続部Dが接続された後、オペレータにより培地容器取付完了ボタンが押下されると、チュービングポンプ17が正転し、新培地容器21の培地が送り出され、シリコンチューブ、培地送液用チューブ25等の配管を通じて、先に培地送液用チューブ25に封入されていた殺菌剤、次に培地という順に培養容器31に送られる。
【0065】
ここで、ステップS105において、培地交換回数が設定回数に達したことが検知されると、培養器交換ランプが点灯され、上記同様にオペレータによる培養器交換が行われる。
【0066】
この場合、培養容器31によりタッチパネル19aの培養器交換ボタンが押下されると、PLC19bにより、タッチパネル19aにその交換手順が表示されるので、上記同様に、表示された手順に従って、オペレータにより、旧培養容器31が新培養容器31に交換される。
装置本体1側では、チュービングポンプ18の正転と共にタイマーが起動されて、培養器31内の培養液Cは全て培養液出口用チューブ37から、装置外部に移送され、必要な箇所に添加される。その後、チューブコネクタ15a、15b、15c、15dが切り離される。また、チュービングポンプ18から培養液出口用チューブ37が取り外されて旧培養容器31が取り外される。
【0067】
このようにこの実施形態によれば、滅菌環境を維持した屋外仕様の培養システムを提供することができる。
これにより、屋外のユースポイントにて目的微生物のみの培養と供給が可能となる。
また、定期的に、培養容器31及び培地容器21を交換することによって、現場での洗浄が不要であり、他の雑菌の繁殖による汚染、いわゆるコンタミネーション(以下「コンタミ」と称す)が発生しないため、培養できる微生物の制限が格段に下がり、ラボ環境で培養条件(培地や温度等)が把握できている微生物は全て培養可能となる。
即ち、屋外環境において、滅菌環境と目的微生物の生育に適した生育環境を維持しつつ目的微生物を培養することができるメンテンナス性のよい微生物培養用の交換装置を提供することができる。
【0068】
上述した実施形態は、本発明を実施するための一例を記載したに過ぎず、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではない。
【0069】
上記実施形態では、培養容器31及び培地容器21の容器としてボトル型のものを使用したが、これ以外であってもよい。
培地の種類によっては沈殿物が発生することがある。このため、培地容器21の培地を攪拌する必要があるが、容器がボトル型の場合は、開口が小さいため容器内部に攪拌の仕掛けを組み込むことが難しい。
そこで、他の実施形態として、図6に示すように、ディスポタイプの容器(培地容器21a及び培養容器31a)を使用する。ディスポタイプの容器の材質はPPやフッ素系樹脂等の耐熱性樹脂である。ディスポタイプの容器の周囲の形状は丸型又は四角型等のものがある。ディスポタイプの容器には、チューブコネクタ等でシリコンチューブ類を直接接続する。ディスポタイプの容器は、カプセルフィルタやエアフィルタも一体化できる。
ディスポタイプの容器の場合、容器上部の開口が広い(大きい)ため、容器内部に仕掛けを配置することができる。なお、この場合、容器上部の開口を塞ぐための蓋を設けることで容器内部を密閉するものとする。
例えば培地容器21aの内部に回転子41又は撹拌子を配置すると共に、培地容器21aを載置する台としてマグネチックスタイラー42を設置する。
マグネチックスタイラー42の磁力により培地容器21a内部の回転子41を移動させて、培地容器21a内に収容されている培地を攪拌することで、培地容器21aの培地を培養容器31a側へ送液する前に培地成分を均一化させることができる。
なお、培地を均一に撹拌できれば、回転子41の種類は問わない。マグネチックスタイラー42と回転子41を用いる以外にも、曝気による撹拌や、超音波を用いた撹拌、撹拌羽根を用いた攪拌等、さまざまな攪拌手法を用いてもよい。
これらの撹拌は、培養容器31に培地を添加する前に開始するように、PLC19bやタイマーによって任意の時間を設定し、攪拌動作を自動的に実行させるものとする。
また、この例では、培地容器21a側に攪拌の仕組みを配置したが、攪拌の仕組みを培養容器31側に配置してもよい。
【0070】
上記実施形態では、接続部Dの一部品として、ニードルレスコネクタ39を使用したが、この他に、例えば注射針等を用いて培地容器21と培養容器31とを接続することも可能である。注射針は、その先端の針を培養容器31に取り付けられたガスケットに刺すことで、無菌状態で接続される。ガスケットの素材は、臭素化ブチルゴムや他の針が刺さり、且つ滅菌可能な素材であれば良い。
培地容器21に接続される注射針と培養容器31とは、全てオートクレーブ滅菌された状態で接続を行う。
注射針をガスケットに刺し込む際は、培地容器21側の滅菌された注射針に被覆しているアルミホイルを、被覆部分の注射針に触れないように気を付けながら剥がし、70%エタノールを十分に吹きかけて殺菌を行う。その後、培養容器31のガスケットに刺し込み接続する。
【0071】
次回以降、培地容器21を交換する際は、ガスケットに注射針の刺す位置を変えることで、ガスケット側の汚染リスクを抑えた培地容器21の交換が可能となる。
【0072】
上記注射針による培地容器21と培養容器31との接続作業は、屋外で実施することを想定しているが、特に強風時や雨天時は、注射針を被覆材から剥がした後に、粉塵や雨の水滴によって汚染され易いため、上記の70%エタノールで十分に殺菌を行い、手早く実施する必要がある。
また、除菌をより確実に実施する場合は、注射針の先端を、ガスバーナーやライター等を用いて火炎滅菌し、その後、ガスケットに差し込み培養容器31との接続を行っても良い。
【0073】
上述した実施形態では、第1接続部として、接続部Dを例示したが、第1接続部は、無菌で栓に接続されて消耗品を培養容器に注入するものであれば足りる。
ここで、「無菌で栓に接続」とは、栓に直接接続されることは当然含む他、チューブ等の配管を介して接続されることも含む。
上述した実施形態では、培養容器31の一例として、3つ口のデュラン瓶を用いたが、リンゴ型の瓶を用いてもよく、培養容器31の形状や種類に限定されるものではない。
培養容器31としては、微生物の培養で一般的に使われている、ジャーファーメンターや、素材がガラスに限らず、オートクレーブ滅菌が可能な金属素材等の容器であってもよい。また、培養容器31及び培地容器21は共に、滅菌処理済みのバッグ型(オードクレーブ可能なもの)の容器で代用することも可能である。
上述した実施形態では、目的の微生物を培養して添加するシーンについては言及していないが、例えば排水中の油脂分を分解する場合であれば、リパーゼ産生菌の培養や、グリセロールや脂肪酸分解菌の培養が想定される。
上述した実施形態では、培養できる微生物濃度について言及していないが、例えば1×10~1×10、つまり1ミリリッター当たり10の7乗個から10の9乗個(1000万個~10億個)の細菌が培養可能である。
上述した実施形態では、チューブコネクタ26とニードルレスコネクタ39との組み合わせで接続部D(第1接続部の一部)を構成したが、この他、ニードル、パイプ継手、接手とこれら部材に接続されるシリコンチューブ等であってもよく、第1接続部は、第1管の先端に、無菌で栓に接続されて消耗品を培養容器に注入するものであれば足りる。
【0074】
上述した実施形態のオンサイト培養システムAは、屋内はもとより屋外においても純粋培養を行うことができるものである。
屋外にて培養を行った際に、万一、雑菌により汚染(コンタミ)が生じてしまった場合、即座にその状況を把握する必要がある。
培養液の状況を最も簡単な構造で把握する方法として、例えば非接触濁度計を用いて非接触により培養液の濁度を測定する方法と、培養液から排出される排気ガスの成分から培養液の濁度を測定する方法等がある。
【0075】
非接触濁度計は、既に市販されており、以下のような装置と消耗品を使用することで、非接触で培養容器内の培養液の濁度を測定し、純粋培養時の濁度変化に対して、コンタミした場合の濁度変化を検知し濁度変化が一定値を超えた場合、警報を発報する。
また、排ガス成分による測定方法は、多種類の有機酸類、酸素、二酸化炭素などのガス成分を検知するセンサーを排気ガスラインに組み込み、純粋培養時に発生するガス成分に対し、コンタミした場合のガス成分の変化を検知し、ガス成分の変化の値が一定値を超えた場合に警報を発報する。またこれらは、純粋培養時の菌の生育状態の把握にも使用可能であり、常時モニタリングすることで、目的の微生物が正常に培養できているか否かを確認することができる。
【0076】
上述した実施形態では、培地容器と培養容器の間をチューブで繋ぎ、滅菌状態のコネクターやニードル等を、アルコール殺菌して接続するように構成していた。
以下に、このような構成に加えて、より簡便で人為的ミスが起こり難い構成例を説明する。
【0077】
図7乃至図11を参照して本発明の微生物培養用の交換装置に係る第2実施形態を説明する。
まず、図7及び図8を参照して本発明の微生物培養用の交換装置に係る第2実施形態のオンサイト培養システムの装置本体の第2実施形態を説明する。
図7は、本発明の微生物培養用の交換装置に係る第2実施形態のオンサイト培養システムの装置本体の一部構成を示す図である。図8は、図7の装置本体に用いられるスピルの構成を示す図である。
【0078】
図7に示すように、第2実施形態のオンサイト培養システムは、装置本体をウォータサーバの形態としたものである。
【0079】
ウォータサーバの形態の装置本体には、送液部90が設けられている。送液部90の上部には、逆さにした状態で培地容器としてのボトル71が配置される。また、送液部90の下部には、培養容器31が配置される。
送液部90は、タンク受け皿72(殺菌部)と、薬液ドレン73と、スピル74(第2接続部)と、ポンプ91及び配管92等(図9参照、消耗品供給部)と、エア滅菌フィルタ75(無菌エア供給部等)とを備える。
【0080】
ボトル71の内部には、培地Bが充填されている。ボトル71のネック部71aには、キャップ71bが螺合して取り付けられている。
キャップ71bの中心部には、凹みが設けられている。凹みの部分は、スピル74の先端が押し込まれることで先端の形状に沿って破れるようになっている。凹みの部分は、柔軟性がある素材で形成されており、破れた際にはスピル74が抜けない限り、ボトル71の内部の培地Bは漏れない。
【0081】
タンク受け皿72には、殺菌液Eが一定の水位で貯留されている。殺菌液Eには、例えば過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム溶液、70%エタノール、グルタラール等が用いられる。
タンク受け皿72は、逆さにしたボトル71のネック部71aに取り付けられたキャップ71b(第2栓)を殺菌液Eに浸して覆う。具体的には、タンク受け皿72に貯留されている殺菌液Eにネック部71aまでが浸される。
【0082】
薬液ドレン73は、排液部であり、殺菌液Eの水位を調整するためにタンク受け皿72の底部に設けられている。
【0083】
スピル74は、タンク受け皿72の底部に配置されており、上方で倒立されたボトル71のキャップ71bと着脱自在に接続される第2接続部として機能する。
スピル74は、固定された状態で、ボトル71が下降されたときにキャップ71bに刺さるようになっている。
この他、移動部100(図9乃至図11参照、駆動部)を設けてスピル74又はボトル71を移動させてスピル74がキャップ71bに刺さるようにしてもよい。
この場合、PLC19bの制御により移動部100を駆動してスピル74をキャップ71bに接続し、ボトル71から培地Bを出力する。PLC19bは、所定条件を満たすと、移動部100を駆動するように制御する。所定条件は、例えばボトル71を設置した後、一定時間経過したことを条件に駆動してもよい。
具体的には、PLC19bは、タイマー動作によりタイムアップしたことを所定条件を満たしたものとして移動部100を駆動する。
なお、所定条件を満たす例は、一例であり、この他、例えばオペレータにより駆動用のスイッチが押されたことを条件としてもよく、これ以外の条件であってもよい。
【0084】
エア滅菌フィルタ75は、培養容器31に供給された培地Bの分の無菌のエアをボトル71に供給する。具体的には、エア滅菌フィルタ75は、培養容器31から排出された培地Bの分の無菌のエアをスピル74を介してボトル71に供給する。
エア滅菌フィルタ75で生成されるエアは、網目が0.2μmのフィルターで滅菌された状態でボトル71に供給されるため、エアの供給路及びスピル74内部の管路84(図8参照)等を無菌状態を保つことができる。
【0085】
ポンプ91及び配管92等は、スピル74から出力された培地Bを培養容器31に供給する消耗品供給部である。
【0086】
図7に示したスピル74は、模式的なものであり、実物としては、図8に示すような形状を有している。
即ち、スピル74は、円錐状のスピル本体81と、その上部(トップ部)に設けられた2つの孔82、83とを備える。スピル本体81の材質は、耐薬性のある樹脂や硬質のゴム類等である。
スピル本体81内には、孔82からスピル本体81の底部へ抜けるエア供給用の管路84が設けられている。
また、スピル本体81内には、孔83からスピル本体81の底部へ抜ける培地供給用の管路85が設けられている。
【0087】
スピル74が、ボトル71のキャップ71bに刺さった状態では、ボトル71の培地Bが孔83から入り、管路85を通じて底部から排出されて、送液部90内の配管を通じて培養容器31へ出力される。
また、ボトル71から培地Bが排出される分のエアをボトル71へ吸気する必要があるが、その分のエアは、エア滅菌フィルタ75においてフィルタ滅菌された状態でスピル74の培地供給用の管路84を通じて孔82からボトル71内に供給される。
【0088】
このように第1実施形態によれば、培養容器31の上に配置したタンク受け皿72に、ボトル71を着脱可能に配置するウォータサーバの形態で、目的微生物を培養する装置本体に、ボトル71や培養容器31等の交換機材を配置する構成とすることで、装置本体の送液部90にボトル71を無菌状態で接続できるので、コンタミを防ぎつつ省スペース化を実現することができる。
【0089】
ここで、図9及び図10を参照して第2実施形態(ウォータサーバの形態)の第1実施例(第1パターン)を説明する。
なお、第1実施例を説明するにあたり、図7及び図8と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
図9は、本発明の微生物培養用の交換装置に係る第2実施形態のオンサイト培養システムにおけるウォータサーバの形態の装置本体の第1実施例の構成を示す図である。
図10は、図9の装置本体の移動部の詳細構成を示す図である。
【0090】
第1実施例は、セットしたボトル71にスピル74が移動して接続するよう構成された例であり、図9に示すように、送液部90は、移動部100と、ポンプ91と、配管92と、薬液ドレン93と、を有する。
ポンプ91及び配管92は、スピル74から出力された培地Bを培養容器31に供給する消耗品供給部である。
薬液ドレン93は、タンク受け皿72に貯留されている薬液(例えば殺菌液又は滅菌薬等)の水位を調整するためのものである。
【0091】
移動部100は、モーター101と、図10に示すアクチュエータ102とを有する。
モーター101は、アクチュエータ102を駆動して、スピル74を昇降移動させる。
アクチュエータ102は、一軸のアクチュエータであり、モーター101により駆動されてスピル74を上下に移動させる。
【0092】
タンク受け皿72には、底部の中心に孔が設けられており、その孔に張られたシート状の弾性部材72aによりスピル74が矢印Pの方向に摺動可能とされている。弾性部材72aには、例えば樹脂又はゴムシート等の耐水性がありかつ耐薬性のある柔軟な部材が用いられている。
【0093】
スピル74は、駆動部100を有しており、タイマーがタイムアップする前には、キャップ71bから離間した位置に存在し、タイムアップすると、駆動部100により移動されてキャップ71bに接続する。
このように、スピル74を移動させる駆動部100を有し、タイマーがタイムアップしたときに、スピル74をキャップ71bに自動的に接続することで、人手によらずボトル71を接続しその中の培地Bを培養容器31へ自動的に供給する仕組みを実現することができる。
【0094】
ここで、この第1実施例の動作を説明する。
この第1実施例の移動部100の場合、スピル74は、最初、タンク受け皿72の底部の位置まで下がっている状態(図示位置)である。
殺菌液又は滅菌薬を貯めたタンク受け皿72に、逆さに向けたボトル71をセットし、キャップ71bの部分を殺菌液又は滅菌薬に浸漬させて薬液滅菌する。
セット後、制御機19のPLC19bが例えば10分のタイマーを動作させてタイムアップすると、PLC19bは、モーター101を駆動してアクチュエータ102を動作させることで、スピル74が上昇し、キャップ71bを貫き、スピル74がボトル71に接続される。
【0095】
続いて、PLC19bは、ポンプ91を制御して駆動する。ポンプ91が稼働することで、ボトル71から培養容器31に無菌状態で培地Bが供給される。このとき、減った培地Bの分の無菌のエアがエア滅菌フィルタ75を通じてボトル71へ供給される。
【0096】
なお、ここで示したタイムアップの時間(10分)は、薬液滅菌によりキャップ71bに付着していた雑菌等が滅菌される時間を想定しているだけであり、想定される雑菌の種類によりタイムアップの時間を可変してもよい。
【0097】
このように第1実施例によれば、ボトル71をタンク受け皿72に載置(セット)してボトル71のキャップ71bがタンク受け皿72の薬液に浸されて滅菌された後、10分(所定時間)経過後に自動的にスピル74が上昇してボトル71のキャップ71bに刺さりボトル71に接続されるので、ボトル71を装置本体の送液部90に接続するのと、ボトル71の培地Bを培養容器31に供給するのとを、共に無菌状態で実施することができる。
【0098】
次に、図11を参照して第2実施形態(ウォータサーバの形態)の第2実施例(第2パターン)を説明する。
なお、第2実施例を説明するにあたり、図7乃至図10と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
図11は、本発明の微生物培養用の交換装置に係る第2実施形態のオンサイト培養システムにおけるウォータサーバの形態の装置本体の第2実施例の構成を示す図である。
【0099】
第2実施例は、固定したスピル74にボトル71が移動して接続するよう構成された例である。
図11に示すように、送液部90は、移動部100と、ポンプ91と、配管92と、薬液ドレン93と、を有する。
【0100】
移動部100は、モーター101と、アクチュエータ102と、支持棒103と、を有する。
モーター101は、アクチュエータ102を駆動して、スピル74を昇降移動させる。
アクチュエータ102は、一軸のアクチュエータであり、モーター101により駆動されて支持棒103を上下に移動させる。
支持棒103は、ボトル71を支持するためのものであり、少なくとも3か所設けられている。この場合、支持棒103がボトル71を3か所、点で支持するようになるが、これ以外に、例えば支持棒103の先端をリング状に繋ぐように環状部材を配置してボトル71を線又は面で支持して安定させるようにしてもよい。
タンク受け皿72には、底部の中心位置にスピル74が突出して固定されている。
【0101】
送液部90は、駆動部100を有し、タイマーがタイムアップする前には、ボトル71のキャップ71bは、スピル74から離間した位置に存在し、タイムアップすると、駆動部100によりボトル71が移動されてキャップ71bがスピル74に接続する。
このように送液部90は、駆動部100を有し、駆動部100が、ボトル71を移動してキャップ71bをスピル74に接続するよう構成することで、スピル74を移動させる構成に比べて、駆動部100の構成が大きくなるものの、堅実な移動動作を実現することができる。
【0102】
ここで、この第2実施例の動作を説明する。
この第2実施例の移動部100の場合、スピル74は、タンク受け皿72の底部から突出した状態(図示位置)で固定されている。
逆さに向けたボトル71を支持棒103に載置(セット)すると、タンク受け皿72に貯留されている殺菌液又は滅菌薬にキャップ71bの部分が浸漬されて薬液滅菌される。
支持棒103にセットされた際に、支持棒103に配置したセンサによりボトル71の重量を検知したPLC19bが例えば10分のタイマーを動作させてタイムアップすると、PLC19bは、モーター101を駆動してアクチュエータ102を動作させることで、支持棒103が下降し、ボトル71のキャップ71bをスピル74が貫き、スピル74がボトル71に接続される。
【0103】
続いて、PLC19bは、ポンプ91を制御して駆動する。ポンプ91が稼働することで、ボトル71から無菌状態で培地Bが培養容器31に供給される。このとき、減った培地Bの分の無菌のエアがエア滅菌フィルタ75を通じてボトル71へ供給される。
【0104】
なお、ここで示したタイムアップの時間(10分)は、薬液滅菌によりキャップ71bに付着していた雑菌等が滅菌される時間を想定しているだけであり、想定される雑菌の種類によりタイムアップの時間を可変してもよい。
【0105】
このように第2実施例によれば、ボトル71を支持棒103に載置(セット)してキャップ71bがタンク受け皿72の薬液に浸されて滅菌された後、10分(所定時間)経過後に自動的にボトル71が降下してスピル74に接続されるので、ボトル71を装置本体の送液部90に接続するのと、ボトル71の培地Bを培養容器31に供給するのとを、共に無菌状態で実施することができる。
【0106】
次に、図12を参照して第3実施形態(交換機材を一体化した形態の例)を説明する。
図12は、本発明の微生物培養用の交換装置に係る第3実施形態のオンサイト培養システムの装置本体と交換機材の構成を示す図である。
図12に示すように、第3実施形態のオンサイト培養システムは、装置本体1に取り付ける交換機材(培地容器21aと培養容器31a)を一体化して構成したものである。
【0107】
具体的に説明すると、図12に示すように、交換機材110は、矩形の培地容器21aと矩形の培養容器31aとを隣り合わせて連結したものである。
培地容器21aには、吸気口121、培地出口122等が設けられている。
培養容器31aには、培地入口131、水入口132、曝気air入口133、培養液出口134、オーバーフローした分の培養液の出口135等が設けられている。
【0108】
この第3実施形態の場合、培地容器21aと培養容器31aが一体化されているため、培地容器21aの培地が空になった際に培養容器31aも同時に交換することになる。
交換機材110は、培地容器21aと培養容器31aが一体になっており、装置本体1が設置されている客先へ納入する際は、培地容器21aと培養容器31aを接続するチューブ等を接続した状態で滅菌処理を行っているため、人為的にチューブを外したりしない限り、コンタミは起こらない構造となっている。
【0109】
このようにこの第3実施形態によれば、培地容器21aと培養容器31aを一体化したことで、培地容器21aと培養容器31a間を接続するチューブ等の配管を接続した状態で滅菌処理を行って客先へ納入することができるので、コンタミが起こらないようにすることができる。
【0110】
ここで、培地Bの濃縮について説明する。
培地Bは、濃縮培地を使用する。通常、規定濃度の20倍までの培地を使用するが、より高い濃度にすることで、培地Bの交換頻度もしくは容積を少なくすることができる。
今のところ、水に対して60%の粉体培地を添加することで、ジェル状になることが分かっており、約46倍の培地を作成することができる。
また、培地成分の粉体を滅菌し、粉体の状態で添加してもよい。
滅菌には、加熱や放射線照射、瞬間減圧冷却、過熱水蒸気などの方法がある。
【0111】
連続添加培養について説明する。
通常、微生物を培養し、微生物の培養が完了した段階で、一定量の種菌を残し、培養液を添加する構造としてるが、上述したようなコンタミチェック及び培養微生物内容の非接触による培養液状態の把握を行うことで、常に対数増の定常状態を保つように培地Bを添加し、オーバーフロー分の微生物を添加する、いわゆる連続培養を行うことができる。
【0112】
以上を換言すると、本発明が適用される微生物培養用の交換装置は、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
(1)即ち、本発明が適用される微生物培養用の交換装置(例えば図2の交換機材2等)は、
目的微生物を培養する装置本体(例えば図2の装置本体1等)に対して着脱可能に設置される交換機材(例えば図2の交換機材2等)として機能する、微生物培養用の交換装置において、
前記目的微生物(例えば培養液Cの微生物等)を培養する培養容器(例えば図2図3図9図11の培養容器31等)と、
前記培養容器に対して補充される消耗品(例えば培地Bや薬品等)を液体として収納する培地容器(例えば図2の培地容器21、図7図9図11のボトル71等)と、
前記培地容器から前記培養容器に対して前記消耗品(培地Bや薬品等)を送液する送液部(例えば図2の培地送液用チューブ25や図9図11の送液部90等)と、
を予めオートクレーブ滅菌された状態で備える。
このように、目的微生物を培養する装置本体(例えば図2の装置本体1等)に対して着脱可能に設置される交換機材(例えば図2の交換機材2等)の、培養容器(例えば図2図3図7図9の培養容器31等)と、培地容器(例えば図2の培地容器21、図7のボトル71等)と、送液部(例えば図2の培地送液用チューブ25や図9の送液部90等)とを予めオートクレーブ滅菌された状態で備えることで、目的微生物以外の菌の進入を防止しつつコンタミが生じ難い構造を実現することができる。
【0113】
(2)前記培養容器(例えば図2図3図7図9の培養容器31等)は、第1栓(例えば図2のチューブコネクタ32等)を有しており、
前記送液部(例えば図2の培地送液用チューブ25や図9図11の送液部90等)は、第1管として構成され、その端部には、無菌で前記第1栓(例えば図2のチューブコネクタ32等)に接続されて前記消耗品(培地Bや薬品等)を前記培養容器(例えば図2図3の培養容器31等)に注入する第1接続部(例えば図2の接続部Dの一部のチューブコネクタ26)を有している。
これにより、例えば屋外設置の培養装置内に収納されている培養容器、培地容器及びそれらに付属する移送用の配管類を、培養装置から簡易脱着できるようになる。
また、屋外で滅菌環境を保ったまま、特定の微生物のみを純粋培養することができる。また無菌状態を保ったまま消耗品(培地Bや薬品等)の補充を行うことができる。
この結果、屋外のユースポイントにて目的微生物のみの培養と供給が可能となる。また、特定の微生物のみを純粋培養でき、コンタミが起こらないため、培養できる微生物の制限が格段に下がり、ラボ環境で培養条件(培地や温度等)が把握できている全ての微生物を培養することができる。
【0114】
(3)上記交換装置(例えば図2の交換機材2等)において、
前記第1管(例えば図2の培地送液用チューブ25等)には、殺菌用溶液が封入されており、前記第1接続部(例えば図2の接続部Dの一部のチューブコネクタ26等)が前記第1栓(例えば図2のチューブコネクタ32等)に接続時に開封又は通液させる機構(例えば図2の接続部Dとチュービングポンプ17等)を有することで、容器交換時の培養液の汚染を防止することができる。
【0115】
(4)前記培地容器(例えば図7のボトル71等)は、第2栓(例えば図7のキャップ71b)を有しており、
前記送液部(例えば図7の送液部90等)は、
前記第2栓(例えば図7のキャップ71b等)を殺菌液(例えば図7の殺菌液E等)で覆う殺菌部(例えば図7のタンク受け皿72等)と、
所定条件を満たすと前記第2栓(例えば図7のキャップ71b等)に接続して、前記培地容器(例えば図7のボトル71等)から前記消耗品(例えば図7の培地B等)を出力する第2接続部(例えば図7のスピル74等)と、
前記第2接続部(例えば図7のスピル74等)から出力された前記消耗品(例えば図7の培地B等)を前記培養容器(例えば図7の培養容器31等)に供給する消耗品供給部(例えば図9のポンプ91及び配管92等)と、
前記培養容器(例えば図7の培養容器31等)に供給された前記消耗品の分の無菌エアを前記培地容器(例えば図7のボトル71等)に供給する無菌エア供給部(例えば図7のエア滅菌フィルタ75等)と、
を備える。
このように、装置本体をウォータサーバの形態に構成し、培養容器(例えば図7の培養容器31等)の上に配置した殺菌部(例えば図7のタンク受け皿72等)に、培地容器(例えば図7のボトル71等)の第2栓(例えば図7のキャップ71b等)を着脱可能に配置することで、装置本体と培地容器(例えば図7のボトル71等)とを無菌状態で接続できるので、コンタミを防ぎつつ省スペース化を実現することができる。
【0116】
(5)前記第2接続部(例えば図9のスピル74等)は、移動機構(駆動部100等)を有しており、前記所定条件を満たす(例えばタイムアップ等)前には、前記第2栓(例えば図9のキャップ71b等)から離間した位置に存在し、前記所定条件を満たすと(例えばタイムアップすると等)、当該移動機構(駆動部100等)により移動されて前記第2栓(例えば図9のキャップ71b等)に接続する。
このように、第2接続部(例えば図9のスピル74等)を移動させる移動機構(駆動部100等)を有し、所定条件を満たしたとき(例えばタイマーがタイムアップしたとき等)に、第2接続部(例えば図9のスピル74等)を第2栓(例えば図9のキャップ71b等)に自動的に接続することで、人手によらず培地容器を接続しその中の培地を培養容器へ自動的に供給する仕組みを実現することができる。
【0117】
(6)前記送液部(図9の送液部90等)は、前記培地容器を移動させる移動部(例えば駆動部100等)をさらに有し、
前記所定条件を満たす(例えばタイムアップ等)前には、前記培地容器(例えば図9のボトル71等)の前記第2栓(例えば図9のキャップ71b等)は、前記第2接続部(例えば図9のスピル74等)から離間した位置に存在し、前記所定条件を満たす(例えばタイムアップする等)と、当該移動部(例えば駆動部100等)により前記培地容器(例えば図9のボトル71等)が移動されて前記第2栓(例えば図9のキャップ71b等)が前記第2接続部(例えば図9のスピル74等)に接続する。
このように送液部(図9の送液部90等)は、培地容器を移動させる移動部(例えば駆動部100等)を有し、当該移動部(例えば駆動部100等)が、培地容器(例えば図9のボトル71等)を移動して第2栓(例えば図9のキャップ71b等)を第2接続部(例えば図9のスピル74等)に接続するよう構成することで、第2接続部(例えば図9のスピル74等)を移動させる構成に比べて、移動部(例えば駆動部100等)の構成が大きくなるものの、堅実な移動動作を実現することができる。
【0118】
(7)前記所定条件は、所定時間が経過(例えばタイムアップ等)したという条件である、ことで、人手によらず自動的な接続動作を実現することができる。
【0119】
(8)前記培地容器(例えば図12の培地容器21a)と前記培養容器(例えば図12の培養容器31a)とは一体に形成されている。
このように、培地容器と培養容器とを一体に形成することで、培地容器の培地が空になった際に培養容器も同時に交換することになるものの、容器は、培地容器と培養容器が一体になっており、顧客へ納入する際は、チューブ等を接続した状態で滅菌処理を行っているため、人為的にチューブを外したりしない限り、コンタミが起こらない構造にでき、安全性を向上することができる。
【0120】
(9)上記交換装置(例えば図2の交換機材2等)において、
前記培養容器(例えば図2図3の培養容器31等)に水を注入するための第2管(例えば図2の市水供給用チューブ36等)、
前記培養容器31にエアを注入するための第3管(例えば図2の曝気用エア供給用チューブ38等)、
前記目的微生物を含む液体を培養液Cとして前記培養容器の外部に排出するための第4管(例えば図2の培養液出口用チューブ37等)、
を少なくとも含む複数の管をさらに備え、
前記複数の管の夫々は、その一端に、前記装置本体1(の管)と(着脱可能に)接続するための第3接続部(例えば図2のチューブコネクタ15a乃至15d、26等)を有している。
即ち、チューブ等の管を含めた培養器及び培地器が第3接続部(例えば図2のチューブコネクタ26等)を境として脱着可能となる。
これにより、交換装置(例えば図2の交換機材2等)と装置本体(例えば図2の装置本体1等)との接続が第3接続部(例えば図2のチューブコネクタ15a乃至15d、26等)の脱着で行えるので、交換装置(例えば図2の交換機材2等)の交換作業が容易になり、機器の交換やメンテナンス作業の効率化を図ることができる。
【0121】
(10)上記交換装置(例えば図2の交換機材2等)において、
前記第2管(例えば図2の市水供給用チューブ36等)及び前記第3管(例えば図2の曝気用エア供給用チューブ38等)の夫々は、注入される前記水又は前記エアを滅菌するためのフィルタ(例えば図2のカプセルフィルタ27、メンブレンフィルタ28等)をさらに有している。
【0122】
(11)前記第3接続部(例えば図2のチューブコネクタ26等)、前記第1管(例えば図2の培地送液用チューブ25等)、前記第2管(例えば図2の市水供給用チューブ36等)及び前記第3管(例えば図2の曝気用エア供給用チューブ38等)は、火炎滅菌又はアルコール殺菌が施されている。
これにより、交換機材2と装置本体1との間で脱着を要する全ての部分が滅菌されるので、現場での洗浄が不要でかつ接続や培養する機器が滅菌された状態を維持して消耗品の交換が可能なオンサイト培養システムを機能させることができる。
想定の交換期間として、例えば培養器30は、3~4カ月毎に交換を行い、培地器20は1ヵ月毎に交換を行う等、機器を交換又はメンテナンスする期間の間隔を長くできるので、コストダウンを図ることができる。
【0123】
また、培養容器31を、3つ口の容器とすることで、培地、エア等を、異なる口から入出力することができる。
この他、培養容器31として、例えばジャーファーメンター等のように、1つ口でも複数の出し入れ口を設けることが可能なものを用いる場合は、1つ口であってもよい。
【符号の説明】
【0124】
A・・・オンサイト培養システム、S・・・消耗品販売ビジネス、E・・・エンドユーザ、1・・・装置本体、2、110・・・交換機材、11・・・ブロワー、12a、12b…圧力調整器、13a、13b・・・流量計、14・・・電磁弁、15a乃至15d・・・チューブコネクタ、17、18・・・チュービングポンプ、19・・・制御機、21、21a・・・培地容器、22・・・エア滅菌用のメンブレンフィルタ、23・・・スクリューキャップ、24・・・吸気用チューブ、25・・・培地送液用チューブ、26・・・チューブコネクタ、31、31a・・・培養容器、32・・・チューブコネクタ、33、34・・・チューブコネクタ付スクリューキャップ、35・・・オーバーフロー用チューブ、36・・・市水供給用チューブ、37・・・培養液出口用チューブ、38・・・曝気用エア供給用チューブ、39・・・ニードルレスコネクタ、40・・・散気管、41・・・回転子、42・・・マグネチックスタイラー、71・・・ボトル、71a・・・ネック部、71b・・・キャップ、72・・・タンク受け皿、73・・・薬液ドレン、74・・・スピル、75・・・エア滅菌フィルタ、81・・・スピル本体、82、83・・・孔、84、85・・・管路、90・・・送液部、91・・・ポンプ、92・・・、100・・・移動部、101・・・モーター、102・・・アクチュエータ、103・・・支持棒、121・・・吸気口、122・・・培地出口、131・・・培地入口、132・・・水入口、133・・・曝気air入口、134・・・培養液出口、135・・・オーバーフローした分の培養液の出口
図1
図2
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図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12