IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アドヴィックスの特許一覧

<>
  • 特開-電動制動装置 図1
  • 特開-電動制動装置 図2
  • 特開-電動制動装置 図3
  • 特開-電動制動装置 図4
  • 特開-電動制動装置 図5
  • 特開-電動制動装置 図6
  • 特開-電動制動装置 図7
  • 特開-電動制動装置 図8
  • 特開-電動制動装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108148
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】電動制動装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/225 20060101AFI20240802BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240802BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F16D55/225 102C
B60T13/74 G
F16D65/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009548
(22)【出願日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2023012054
(32)【優先日】2023-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】北原 康利
(72)【発明者】
【氏名】杉本 成
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB45
3D048CC49
3D048HH18
3D048NN01
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA73
3J058AA78
3J058BA46
3J058CC15
3J058CC35
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】直動変換機構の耐久性が低下することを抑制できる電動制動装置を提供する。
【解決手段】電動制動装置10は、直動部70とともに直線運動することによって摩擦材24,25を回転体201に押し付けるピストン80と、径方向において、ピストン80と直動部70との間に設けられ、直動部70とピストン80との相対回転を規制する規制部90と、を備える。規制部90は、第1方向D1及び第2方向D2への直動部70に対するピストン80の相対変位を許容するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータの回転運動が直動変換機構の回転部に伝達され、前記回転部の回転運動が前記直動変換機構の直動部の直動方向の直線運動に変換され、車輪とともに回転する回転体に前記直動部と連動する摩擦材を押し付けることにより前記車輪に制動力を発生させる電動制動装置であって、
前記直動部とともに直線運動することによって前記摩擦材を前記回転体に押し付けるピストンと、
前記直動方向及び前記直動部の径方向の少なくとも一方における、前記ピストンと前記直動部との間に設けられ、前記直動部と前記ピストンとの相対回転を規制する規制部と、を備え、
前記規制部は、前記直動方向とは異なる方向であって、互いに異なる第1方向及び第2方向への前記直動部に対する前記ピストンの相対変位を許容するように構成されている
電動制動装置。
【請求項2】
前記規制部は、前記ピストンの軸線と前記直動部の軸線とのなす角度が変化するように前記ピストンが前記直動部に対して変位する揺動方向、又は、前記ピストンの軸線と前記直動部の軸線との距離が変化するように前記ピストンが前記直動部に対して変位する軸ずれ方向を前記第1方向とする、前記直動部に対する前記ピストンの相対変位を許容する
請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記揺動方向又は前記軸ずれ方向を前記第2方向とする、前記直動部に対する前記ピストンの相対変位を許容する
請求項2に記載の電動制動装置。
【請求項4】
前記規制部は、前記揺動方向を前記第1方向とする前記直動部に対する前記ピストンの相対変位と、前記軸ずれ方向を前記第2方向とする前記直動部に対する前記ピストンの相対変位とに加え、前記第1方向とは異なる前記揺動方向への前記直動部に対する前記ピストンの相対変位と、前記第2方向とは異なる前記軸ずれ方向への前記直動部に対する前記ピストンの相対変位とを、許容する
請求項3に記載の電動制動装置。
【請求項5】
前記規制部は、
前記揺動方向を前記第1方向とする前記直動部に対する前記ピストンの相対変位と、前記軸ずれ方向を前記第2方向とする前記直動部に対する前記ピストンの相対変位とを許容するものであって、
前記直動部及び前記ピストンの一方に設けられた被当接部と前記直動方向に当接する当接部であって、前記第2方向への投影が凹形状及び凸形状の一方であり、前記被当接部に当接する当接面が円弧形状である当接部を有し、
前記被当接部は、前記第2方向への投影が前記当接部の前記第2方向への前記投影に対応する前記凹形状及び凸形状の他方であり、前記規制部の前記当接面に当接する被当接面が前記当接面に対応する円弧形状である、
請求項3に記載の電動制動装置。
【請求項6】
前記規制部は、前記第1方向に垂直な前記第2方向への前記ピストンの相対変位を許容する
請求項1~請求項5の何れか一項に記載の電動制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の車輪とともに回転する回転体に対して摩擦材を押し付けることにより、車輪に制動力を発生させる電動制動装置が記載されている。電動制動装置は、電気モータと、電気モータから伝達される動力に基づき回転するねじ軸と、ねじ軸の回転に応じて直動するナットと、ナットとともに直動することにより摩擦材を回転体に対して変位させるピストンと、を備えている。ねじ軸とナットとは、回転運動を直線運動に変換する直動変換機構を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-114766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電動制動装置では、摩擦材を回転体に押し付ける場合に、ピストンに対して直動方向と異なる方向に外力が作用する場合がある。こうした荷重がねじ軸などに伝わると、ねじ軸が偏心回転することにより、直動変換機構の耐久性が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する電動制動装置は、電気モータの回転運動が直動変換機構の回転部に伝達され、前記回転部の回転運動が前記直動変換機構の直動部の直動方向の直線運動に変換され、車輪とともに回転する回転体に前記直動部と連動する摩擦材を押し付けることにより前記車輪に制動力を発生させる電動制動装置であって、前記直動部とともに直線運動することによって前記摩擦材を前記回転体に押し付けるピストンと、前記直動方向及び前記直動部の径方向の少なくとも一方における、前記ピストンと前記直動部との間に設けられ、前記直動部と前記ピストンとの相対回転を規制する規制部と、を備え、前記規制部は、前記直動方向とは異なる方向であって、互いに異なる第1方向及び第2方向への前記直動部に対する前記ピストンの相対変位を許容するように構成されている。
【0006】
電動制動装置において、車輪に制動力を発生させる場合には、電気モータの動力が直動変換機構を介してピストンに伝達される。すると、ピストンが直動することにより、摩擦材が回転体に押し付けられるため、車輪に制動力が発生する。この際、摩擦材を回転体に押し付けることに起因して、ピストンに対して直動方向と異なる方向に外力が作用する場合がある。この場合、ピストンが外力の作用する方向に変位しようとする。
【0007】
上記構成の電動制動装置において、規制部は、直動方向とは異なる方向であって、互いに異なる第1方向及び第2方向への直動部に対するピストンの相対変位を許容する。このため、ピストンに対して直動方向と異なる方向に外力が作用する場合には、ピストンは、直動変換機構の直動部に対して、外力の作用する方向に変位できる。よって、電動制動装置は、直動変換機構の直動部に外力が伝わることを抑制できるため、直動変換機構の耐久性が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の電動制動装置の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態の電動制動装置の部分分解斜視図である。
図3図3は、図1の3-3線矢視断面図である。
図4図4は、第2実施形態の電動制動装置の部分分解斜視図である。
図5図5は、第2実施形態の電動制動装置の部分断面図である。
図6図6は、第3実施形態の電動制動装置の部分分解斜視図である。
図7図7は、第3実施形態の電動制動装置の部分断面図である。
図8図8は、第4実施形態の電動制動装置の部分分解斜視図である。
図9図9は、第4実施形態の電動制動装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
電動制動装置の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態の構成>
図1に示すように、電動制動装置10は、キャリパ20と、電気モータ30と、減速機構40と、直動変換機構50と、ピストン80と、規制部90と、止め輪100と、を備える。第1実施形態に係る電動制動装置10は、車輪200とともに回転する回転体201との摩擦により、車輪200に制動力を発生させるディスクブレーキ式の制動装置である。
【0010】
<キャリパ>
キャリパ20は、シリンダボディ21と、ブリッジ22と、アーム23と、を有する。キャリパ20は、2つの摩擦材24,25を支持している。また、キャリパ20にはギアボックス26が取り付けられている。
【0011】
シリンダボディ21は、ブリッジ22を介してアーム23と連結されている。シリンダボディ21は、円柱状の空間を含むシリンダ27を有する。シリンダ27の軸線は、車輪200の回転軸線と同じ方向に延びている。アーム23は、シリンダ27の軸線を延長した方向に位置している。つまり、シリンダボディ21とアーム23とは、シリンダ27の軸方向(以下、単に「軸方向DA」ともいう。)に間隔をあけて位置している。シリンダボディ21が車両に組み付けられた状態では、シリンダボディ21とアーム23との間に回転体201が配置される。2つの摩擦材24,25は、シリンダボディ21とアーム23とにそれぞれ組み付けられている。つまり、2つの摩擦材24,25は、回転体201の厚さ方向における両側に位置している。ギアボックス26は、減速機構40を収容している。ギアボックス26は、シリンダボディ21に組み付けられている。ギアボックス26は、軸方向DAにおいて、摩擦材25が位置するシリンダ27の端部とは反対側の端部に位置している。
【0012】
以降では、シリンダ27の軸線が延びる方向において、ギアボックス26に向かう方向を後方ともいい、摩擦材25に向かう方向を前方ともいう。さらに、軸方向DAと垂直である方向を径方向といい、径方向における特定方向を「第1方向D1」といい、径方向における第1方向D1とは異なる特定方向を「第2方向D2」という。第1実施形態において、第1方向D1は、第2方向D2に対して垂直である。
【0013】
<電気モータと減速機構>
電気モータ30は、シリンダボディ21に組み付けられている。このとき、電気モータ30の出力軸31の軸線は、シリンダ27の軸線と平行になっている。また、電気モータ30の出力軸31は、ギアボックス26の内部に向かって延びている。
【0014】
減速機構40は、電気モータ30の出力軸31の回転を減速して直動変換機構50に伝達する。減速機構40は、電気モータ30の出力軸31に固定される第1ギア41と、第1ギア41から伝達される動力により回転する第2ギア42と、第2ギア42から伝達される動力により回転する第3ギア43と、を有する。このため、電気モータ30の動力は、第1ギア41、第2ギア42及び第3ギア43を介して、直動変換機構50に伝達される。
【0015】
<直動変換機構>
直動変換機構50は、第3ギア43の回転運動をピストン80の直線運動に変換する。直動変換機構50は、減速機構40を介して電気モータ30から伝達される動力に基づき回転運動する回転部60と、回転部60から伝達される動力により直線運動する直動部70と、を有する。直動変換機構50は、いわゆる送りねじ機構である。
【0016】
図1及び図3に示すように、回転部60は、丸棒状をなしている。回転部60は、連結軸61と、中間軸62と、ねじ軸63と、を有する。連結軸61は、回転部60の後端部を構成している。中間軸62は、連結軸61とねじ軸63の間の部分である。ねじ軸63は、中間軸62よりも前方の部分である。ねじ軸63の外周面には、ねじ溝が設けられている。
【0017】
直動部70は、円柱状をなしている。直動部70は、直動部70の軸方向を深さ方向とするねじ孔71を有する。ねじ孔71には、ねじ軸63に対応するねじ溝が設けられている。また、図2及び図3に示すように、直動部70は、径方向における外側の面である第2外面72を有する。第2外面72は、2つの第2対向面73と、2つの第2接続面74と、を含む。第1方向D1は、2つの第2対向面73に対して面直方向である。2つの第2対向面73は、第2方向D2に沿って延びている。
【0018】
一方の第2接続面74は、2つの第2対向面73の一方の端部同士を接続し、他方の第2接続面74は、2つの第2対向面73の他方の端部同士を接続している。直動部70の2つの第2対向面73及び2つの第2接続面74を有する部分は、直動部70の軸方向から見たときに、2面幅を有するような形状に形成されている。ここで、2面幅とは、直動部70の軸方向に沿って形成され、互いに対向する平行な平面が形成された形状を意味している。
【0019】
直動変換機構50において、回転部60と直動部70とはシリンダ27に収容されている。このとき、回転部60の連結軸61は、ギアボックス26に向かって延びている。回転部60の連結軸61は、第3ギア43に連結されている。こうして、回転部60の連結軸61は、第3ギア43と一体に回転できる。回転部60のねじ軸63は、シリンダ27の開口に向かって延びている。回転部60の中間軸62は、シリンダボディ21に固定される軸受に回転可能に支持されている。一方、直動部70のねじ孔71には、回転部60のねじ軸63が螺合している。こうして、直動部70は、直動部70の軸線が回転部60の軸線と一致するように、回転部60に支持されている。回転部60の軸方向及び直動部70の軸方向は、シリンダ27の軸方向DAと一致している。また、回転部60の径方向及び直動部70の径方向は、シリンダ27の径方向と一致している。
【0020】
<ピストン>
図1及び図2に示すように、ピストン80は、円柱状をなしている。ピストン80は、円板状をなす底壁81と、底壁81の外縁から底壁81の厚さ方向に延びる周壁82と、を有する。周壁82の外径は、シリンダ27の内径よりも僅かに小さくなっている。図2及び図3に示すように、ピストン80は、周壁82における内側の面である第1内面83を有する。第1内面83は、2つの第1ガイド面84と、2つの第1接続面85と、を含む。第2方向D2は、2つの第1ガイド面84に対して面直方向である。
【0021】
2つの第1ガイド面84は、第2方向D2に間隔をあけて位置し、2つの第1接続面85は、第1方向D1に間隔をあけて位置している。2つの第1ガイド面84は、第1方向D1に沿って延びている。一方の第1接続面85は、2つの第1ガイド面84の一方の端部同士を接続し、他方の第1接続面85は、2つの第1ガイド面84の他方の端部同士を接続している。ピストン80の2つの第1ガイド面84及び2つの第1接続面85を有する部分は、ピストン80の軸方向から見たときに、2面幅を有するような形状に形成されている。ここで、2面幅とは、ピストン80の軸方向に沿って形成され、互いに対向する平行な平面が形成された形状を意味している。
【0022】
ピストン80は、シリンダ27に対して軸方向DAに延びる軸線回りに回転不能であって、シリンダ27に対して軸方向DAに移動可能となるように、シリンダ27に収容されている。このような関係は、例えば、ピストン80の外面及びシリンダ27の内面に軸方向DAに延びるキー溝を設け、当該キー溝に沈みキーを嵌め込むことで実現することができる。ピストン80の底壁81は、軸方向DAにおいて、摩擦材25と対向している。また、ピストン80は、径方向における外側から直動部70を覆っている。このとき、直動部70の前端はピストン80の底壁81に接している。ピストン80の軸方向は、シリンダ27の軸方向DAと一致し、ピストン80の径方向は、シリンダ27の径方向と一致している。
【0023】
<規制部>
図1及び図2に示すように、規制部90は、円環状をなしている。規制部90は、直動部70とピストン80との軸方向DAに延びる軸線回りの相対回転を規制する。図2及び図3に示すように、規制部90は、径方向における外側の面である第1外面91と、径方向における内側の面である第2内面92と、を有する。
【0024】
第1外面91は、2つの第1対向面93と、2つの第1接続面94と、を含む。第2方向D2は、2つの第1対向面93に対して面直方向である。2つの第1対向面93は、第1方向D1に沿って延びている。一方の第1接続面94は、2つの第1対向面93の一方の端部同士を接続し、他方の第1接続面94は、2つの第1対向面93の他方の端部同士を接続している。規制部90の2つの第1対向面93及び2つの第1接続面94を有する部分は、規制部90の軸方向から見たときに、2面幅を有するような形状に形成されている。ここで、2面幅とは、規制部90の軸方向に沿って形成され、互いに対向する平行な平面が形成された形状を意味している。また、第1方向D1において、規制部90の第1対向面93の長さは、ピストン80の第1ガイド面84の長さ未満となっている。
【0025】
第2内面92は、2つの第2ガイド面95と、2つの第2接続面96と、を含む。第1方向D1は、2つの第2ガイド面95に対して面直方向である。2つの第2ガイド面95は、第1方向D1に間隔をあけて位置し、2つの第2接続面96は、第2方向D2に間隔をあけて位置している。2つの第2ガイド面95は、第2方向D2に沿って延びている。一方の第2接続面96は、2つの第2ガイド面95の一方の端部同士を接続し、他方の第2接続面96は、2つの第2ガイド面95の他方の端部同士を接続している。規制部90の2つの第2ガイド面95及び2つの第2接続面96を有する部分は、規制部90の軸方向から見たときに、2面幅を有するような形状に形成されている。ここで、2面幅とは、規制部90の軸方向に沿って形成され、互いに対向する平行な平面が形成された形状を意味している。また、第2方向D2において、規制部90の第2ガイド面95の長さは、直動部70の第2対向面73の長さよりも長くなっている。
【0026】
図1及び図2に示すように、規制部90は、直動部70の径方向において、直動部70とピストン80との間に位置している。つまり、規制部90には直動部70が挿入され、規制部90はピストン80の周壁82に挿入されている。ここで、規制部90の軸方向は、シリンダ27の軸方向DAと一致し、規制部90の径方向は、シリンダ27の径方向と一致している。
【0027】
以下、ピストン80と規制部90との係合関係及び規制部90と直動部70との係合関係について説明する。
図3に示すように、ピストン80の2つの第1ガイド面84と規制部90の2つの第1対向面93とは、第2方向D2において対向している。ピストン80の2つの第1接続面85と規制部90の2つの第1接続面94とは、第1方向D1において対向している。第2方向D2において、規制部90の2つの第1対向面93の間隔は、ピストン80の2つの第1ガイド面84の間隔よりも僅かに短くなっている。第1方向D1において、規制部90の2つの第1接続面94の間隔は、ピストン80の2つの第1接続面85の間隔よりも短くなっている。
【0028】
ここで、第2方向D2において、ピストン80の2つの第1ガイド面84の間隔と規制部90の2つの第1対向面93の間隔との差を第2方向D2の寸法差とする。また、第1方向D1において、ピストン80の2つの第1接続面85の間隔と規制部90の2つの第1接続面94の間隔との差を第1方向D1の寸法差とする。この場合、第1方向D1の寸法差は、第2方向D2の寸法差よりも大きくなっている。詳しくは、第1方向D1の寸法差及び第2方向D2の寸法差は、ピストン80が規制部90に対して第1方向D1に移動できる程度の値となっている。言い換えれば、第1方向D1の寸法差及び第2方向D2の寸法差は、ピストン80の2つの第1ガイド面84及び規制部90の2つの第1対向面93がそれぞれ摺動できる程度の値となっている。こうした点で、ピストン80は、規制部90に対して、径方向のうちの第1方向D1のみに移動可能である。
【0029】
詳細には、ピストン80の軸線と規制部90の軸線との距離が変化するようにピストン80が規制部90に対して第1方向D1に変位する。この第1方向D1の変位により、ピストン80の軸線と直動部70の軸線との距離が変化するようにピストン80が直動部70に対して変位する。この構成により、規制部90は、第1方向D1への直動部70に対するピストン80の相対変位を許容する。この点で、第1方向D1は「第1方向」及び「軸ずれ方向」に相当している。また、ピストン80と規制部90とが上記のように構成されることで、規制部90は、軸方向DAに延びる軸線回りのピストン80に対する回転が規制されている。
【0030】
同様に、規制部90の2つの第2ガイド面95及び直動部70の2つの第2対向面73は、第1方向D1に対向している。規制部90の2つの第2接続面96及び直動部70の2つの第2接続面74は、第2方向D2に対向している。第1方向D1において、直動部70の2つの第2対向面73の間隔は、規制部90の2つの第2ガイド面95の間隔よりも僅かに短くなっている。第2方向D2において、直動部70の2つの第2接続面74の間隔は、規制部90の2つの第2接続面96の間隔よりも短くなっている。
【0031】
ここで、第1方向D1において、規制部90の2つの第2ガイド面95の間隔と直動部70の2つの第2対向面73の間隔との差を第1方向D1の寸法差とする。また、第2方向D2において、規制部90の2つの第2接続面96の間隔と直動部70の2つの第2接続面74の間隔との差を第2方向D2の寸法差とする。この場合、第2方向D2の寸法差は、第1方向D1の寸法差よりも大きくなっている。詳しくは、第1方向D1の寸法差及び第2方向D2の寸法差は、規制部90が直動部70に対して第2方向D2に移動できる程度の値となっている。言い換えれば、第1方向D1の寸法差及び第2方向D2の寸法差は、規制部90の2つの第2ガイド面95及び直動部70の2つの第2対向面73がそれぞれ摺動できる程度の値となっている。こうした点で、規制部90は、直動部70に対して、径方向のうちの第2方向D2のみに移動可能である。
【0032】
詳細には、規制部90の軸線と直動部70の軸線との距離が変化するように規制部90が直動部70に対して第2方向D2に変位する。この第2方向D2の変位により、ピストン80の軸線と直動部70の軸線との距離が変化するようにピストン80が直動部70に対して変位する。この構成により、規制部90は、第2方向D2への直動部70に対するピストン80の相対変位を許容する。この点で、第2方向D2は「第2方向」及び「軸ずれ方向」に相当している。また、直動部70と規制部90とが上記のように構成されることで、直動部70は、軸方向DAに延びる軸線回りの規制部90に対する回転が規制されている。
【0033】
<止め輪>
図1及び図2に示すように、止め輪100は、環状をなしている。止め輪100は、ピストン80に対して軸方向DAに移動できないように、ピストン80に係止している。こうして、止め輪100は、規制部90をピストン80に対して位置決めしている。このとき、直動部70の前端はピストン80の底壁81に接し、直動部70の後端は止め輪100に接している。その結果、直動部70が軸方向DAに移動する場合には、直動部70は、ピストン80と規制部90と止め輪100とともに軸方向DAに移動する。つまり、直動部70が軸方向DAに移動する場合には、ピストン80とともに摩擦材24,25が軸方向DAに移動する。この点で、摩擦材24,25は、直動部70と連動しているといえる。
【0034】
<第1実施形態の作用及び効果>
電動制動装置10において、車輪200に制動力を発生させる場合には、電気モータ30が駆動される。すると、電気モータ30の動力が減速機構40を介して直動変換機構50に伝達されることにより、回転部60が回転する。続いて、直動変換機構50において、回転部60の回転運動が直動部70の軸方向DAにおける直線運動に変換される。そして、直動部70とともにピストン80が直動する。これにより、ピストン80によって摩擦材24,25が回転体201に押し付けられるため、車輪200に制動力が発生する。以降の説明では、車輪200に発生する制動力の増大時におけるピストン80の移動方向を前進方向といい、車輪200に発生する制動力の減少時におけるピストン80の移動方向を後退方向という。前進方向及び後退方向はともに軸方向DAに沿う方向である。また、前進方向は後退方向の逆方向である。
【0035】
摩擦材24,25が回転体201に押し付けられていると、ピストン80に対して径方向に外力が作用する場合がある。この点、第1実施形態の電動制動装置10において、規制部90は、軸方向DAとは異なる方向であって、互いに異なる第1方向D1及び第2方向D2への直動部70に対するピストン80の相対変位を許容するように構成される。このため、ピストン80は、直動変換機構50の直動部70に対し、径方向の外力の作用する方向に相対的に変位できる。
【0036】
例えば、ピストン80に対して第1方向D1の外力が作用する場合には、ピストン80の2つの第1ガイド面84及び規制部90の2つの第1対向面93がそれぞれ摺動する。その結果、ピストン80が直動変換機構50に対して第1方向D1に変位する。また、ピストン80に対して第2方向D2の外力が作用する場合には、規制部90の2つの第2ガイド面95及び直動部70の2つの第2対向面73がそれぞれ摺動する。その結果、ピストン80が規制部90とともに直動変換機構50に対して第2方向D2に変位する。また、ピストン80に対して、第1方向D1及び第2方向D2の間の方向の外力が作用する場合には、ピストン80の2つの第1ガイド面84及び規制部90の2つの第1対向面93がそれぞれ摺動する。さらに、規制部90の2つの第2ガイド面95及び直動部70の2つの第2対向面73がそれぞれ摺動する。つまり、ピストン80が規制部90に対して第1方向D1に変位し、ピストン80が規制部90とともに直動部70に対して第2方向D2に変位する。その結果、ピストン80が直動変換機構50に対して外力の作用する方向に変位する。第1実施形態において、第1方向D1は第2方向D2に対して垂直であるため、ピストン80が規制部90に対して変位できる方向は、規制部90が直動部70に対して変位できる方向に対して垂直である。ただし、2つの方向が垂直の関係にあるということは、2つの方向に延びる2つの軸線の間をなす角度が90°から僅かに変化した関係を含むものとする。
【0037】
こうして、電動制動装置10は、ピストン80に対して径方向の外力が作用する場合であっても、当該外力が直動変換機構50の直動部70に伝達することを抑制できる。つまり、電動制動装置10は、直動変換機構50の回転部60に曲げ荷重が作用することを抑制することにより、回転部60の偏心回転を抑制できる。その結果、電動制動装置10は、直動変換機構50の耐久性が低下することを抑制できる。
【0038】
また、ピストン80に対して径方向の外力が作用する課題以外にも、以下課題がある。制動力が加わっている際に、ブリッジ22がたわむことで、シリンダボディ21に保持されているピストン80及び直動変換機構50の直動部70が傾くことで、回転部60の軸と直動部70の軸とが軸ずれし、直動変換機構50の耐久性が低下する課題がある。本発明では、規制部90により、ピストン80に対する直動部70の相対変位が許容されているため、ピストン80が傾いても直動部70は傾かないようにすることができる。これにより、回転部60と直動部70との軸ずれを吸収でき、直動変換機構50の耐久性が低下することを抑制できる。
【0039】
また、第2方向D2におけるピストン80と規制部90との間の隙間及び第1方向D1における規制部90と直動部70との間の隙間は、僅かな隙間である。このため、電動制動装置10は、車輪200に制動力を発生させるときに、ピストン80が規制部90に対して相対的に回転したり、規制部90が直動部70に対して相対的に回転したりすることを抑制できる。このように、ピストン80は、規制部90に対して、径方向のうちの第1方向D1のみ変位が許容され、規制部90は、直動部70に対して、第1方向D1及び直動方向と異なる方向である第2方向D2のみ変位が許容される。その結果、上述した相対回転を抑制する際にガタツキが生じることがないよう構成できる。
【0040】
さらに、電動制動装置10は、回転部60の回転方向が切り替わったときに、すぐにピストン80を軸方向DAに駆動できる。
(第2実施形態)
図4及び図5を参照して、第2実施形態に係る電動制動装置110について説明する。第2実施形態に係る電動制動装置110は、第1実施形態に係る電動制動装置10と比較したとき、直動変換機構50の直動部70とピストン80と規制部90とが主に相違している。このため、以降の説明では、第1実施形態と共通する構成について同一の符号を付すとともに説明を省略する。
【0041】
<第2実施形態の構成>
図4及び図5に示すように、直動変換機構150の直動部170は、小径部171と、大径部172と、を有する。また、直動部170は、ねじ孔71を有する。
【0042】
小径部171は、軸方向DAを高さ方向とする円柱状をなしている。小径部171には、ねじ孔71が軸方向DAに貫通している。大径部172は、軸方向DAを厚さ方向とする円板状をなしている。大径部172の直径は、小径部171の直径よりも大きくなっている。大径部172は、小径部171と同軸配置されているとともに、小径部171の後端に繋がっている。大径部172には、小径部171と同様に、ねじ孔71が軸方向DAに貫通している。大径部172は、2つの第2対向面173と、2つの第2接続面174と、第2被当接面175と、を有する。第1方向D1は、2つの第2対向面173に対して面直方向である。2つの第2対向面173は、第1方向D1に間隔をあけた状態で並行に延びている。2つの第2接続面174は、軸方向DAから見たとき、円弧状をなしている。一方の第2接続面174は、2つの第2対向面173の一方の端部同士を接続し、他方の第2接続面174は、2つの第2対向面173の他方の端部同士を接続している。第2被当接面175は、前進方向に凸となる凸曲面である。第2被当接面175は、ある半径の球面の一部である。第2被当接面175は、軸方向DAから見たとき、環状をなしている。
【0043】
ピストン180は、底壁181と、周壁182と、を有する。周壁182は、2つの第1ガイド面183と、第1被当接面184と、を含む。2つの第1ガイド面183及び第1被当接面184は、周壁182の後端に設けられている。第2方向D2は、2つの第1ガイド面183に対して面直方向である。2つの第1ガイド面183は、第2方向D2に間隔をあけた状態で並行に延びている。第1被当接面184は、前進方向に凹となる凹曲面である。第1被当接面184は、ある半径の球面の一部である。第1被当接面184は、軸方向DAから見たとき、環状をなしている。
【0044】
規制部190は、円環状をなしている。規制部190は、2つの第1対向面191と、2つの第2ガイド面192と、第1当接面193と、第2当接面194と、を有する。2つの第1対向面191と第1当接面193とは、規制部190の径方向における外側の面であり、2つの第2ガイド面192と第2当接面194とは、規制部190の径方向における内側の面である。第2方向D2は、2つの第1対向面191に対して面直方向である。2つの第1対向面191は、第2方向D2に間隔をあけた状態で並行に延びている。第1方向D1は、2つの第2ガイド面192に対して、面直方向である。2つの第2ガイド面192は、第1方向D1に間隔をあけた状態で平行に延びている。第1当接面193は、前進方向に凸となる凸曲面である。第1当接面193は、ある半径の球面の一部である。第1当接面193は、軸方向DAから見たときに環状をなしている。第2当接面194は、前進方向に対して凹となる凹曲面である。第2当接面194は、ある半径の球面の一部である。第2当接面194は、軸方向DAから見たときに環状をなしている。
【0045】
<直動部とピストンと規制部との係合関係>
軸方向DAにおいて、ピストン180の後端には規制部190の先端が挿入されている。このとき、ピストン180の2つの第1ガイド面183と規制部190の2つの第1対向面191とは、第2方向D2にそれぞれ対向している。第2方向D2において、ピストン180の2つの第1ガイド面183の間隔は、規制部190の2つの第1対向面191の間隔と略同等となっている。この点で、ピストン180と規制部190とは、第2方向D2に対して相対的に移動不能であるとともに、軸方向DAに延びる軸線回りに相対的に回転不能である。
【0046】
また、ピストン180の第1被当接面184と規制部190の第1当接面193とは、軸方向DAに接している。第2実施形態において、ピストン180の第1被当接面184を構成する球面の半径と規制部190の第1当接面193を構成する球面の半径とは同等である。この点で、ピストン180の軸線と規制部190の軸線との距離が変化するようにピストン180は規制部190に対して変位不能である。具体的には、ピストン180と規制部190とは、第1方向D1及び第2方向D2の両方向に対して相対的に移動不能である。一方、ピストン180と規制部190とは、ピストン180の軸線と規制部190の軸線とのなす角度が変化するように、すなわち、ピストン180の軸線と規制部190の軸線とが相対的に傾くように揺動可能である。この場合、ピストン180の第1被当接面184と規制部190の第1当接面193とが摺動する。ただし、ピストン180と規制部190とは、2つの第1ガイド面183及び2つの第1対向面191によって、揺動可能な方向が制限されている。詳しくは、ピストン180と規制部190とは、第2方向D2に延びる第1軸線AX1回りの第1揺動方向S1に限って揺動可能となっている。
【0047】
詳細には、ピストン180の軸線と規制部190の軸線とのなす角度が変化するようにピストン180が規制部190に対して第1揺動方向S1に変位する。この第1揺動方向S1の変位により、ピストン180の軸線と直動部170の軸線とのなす角度が変化するようにピストン180が直動部170に対して変位する。この構成により、規制部190は、第1揺動方向S1への直動部70に対するピストン80の相対変位を許容する。第1揺動方向S1は「第1方向」及び「揺動方向」に相当している。
【0048】
軸方向DAにおいて、規制部190の内側には、その後端から直動部170が挿入されている。このとき、規制部190の2つの第2ガイド面192と直動部170の2つの第2対向面173とは、第1方向D1にそれぞれ対向している。第1方向D1において、規制部190の2つの第2ガイド面192の間隔は、直動部170の2つの第2対向面173の間隔と同等となっている。この点で、規制部190と直動部170とは、第1方向D1に対して相対的に移動不能であるとともに、軸方向DAに延びる軸線回りに相対的に回転不能である。
【0049】
また、規制部190の第2当接面194と直動部170の第2被当接面175とは、軸方向DAに接している。第2実施形態において、規制部190の第2当接面194を構成する球面の半径と直動部170の第2被当接面175を構成する球面の半径とは同等である。この点で、規制部190の軸線と直動部170の軸線との距離が変化するように規制部190は直動部170に対して変位不能である。具体的には、規制部190と直動部170とは、第1方向D1及び第2方向D2の両方向に対して相対的に移動不能である。一方、規制部190と直動部170とは、規制部190の軸線と直動部170の軸線とのなす角度が変化するように、すなわち、ピストン180の軸線と規制部190の軸線とが相対的に傾くように揺動可能である。この場合、規制部190の第2当接面194と直動部170の第2被当接面175とが摺動する。ただし、規制部190と直動部170とは、2つの第2ガイド面192及び2つの第2対向面173によって、揺動可能な方向が制限されている。詳しくは、規制部190と直動部170とは、第1方向D1に延びる第2軸線AX2回りの第2揺動方向S2に限って揺動可能となっている。
【0050】
詳細には、規制部190の軸線と直動部170の軸線とのなす角度が変化するように規制部190が直動部170に対して第2揺動方向S2に変位する。この第2揺動方向S2の変位により、ピストン180の軸線と直動部170の軸線とのなす角度が変化するようにピストン180が直動部170に対して変位する。この構成により、規制部190は、第2揺動方向S2への直動部170に対するピストン180の相対変位を許容する。第2揺動方向S2は「第2方向」及び「揺動方向」に相当している。
【0051】
以上より、規制部190は、直動部170の直動方向である軸方向DAにおいて、ピストン180と直動部170との間に設けられている。そして、規制部190は、ピストン180に対して、軸方向DAに延びる軸線回りに回転不能であるとともに、直動部170に対して、軸方向DAに延びる軸線回りに回転不能である。この点で、規制部190は、ピストン180と直動部170との軸方向DAに延びる軸線回りの相対回転を規制している。
【0052】
<第2実施形態の作用効果>
第1実施形態と同様に、電動制動装置110において、車輪200に制動力を発生させる場合には、ピストン180に対して径方向に外力が作用する場合がある。この点、第2実施形態に係る電動制動装置110において、ピストン180は規制部190に対して第1揺動方向S1に揺動可能であり、規制部190は直動部170に対して第2揺動方向S2に揺動可能である。このため、ピストン180は、直動変換機構150に対し、径方向の外力の作用する方向に相対的に変位できる。
【0053】
こうして、電動制動装置110は、ピストン180に対して径方向の外力が作用する場合であっても、当該外力が直動変換機構150に伝達することを抑制できる。その結果、電動制動装置110は、直動変換機構150の耐久性が低下することを抑制できる。また、ブリッジ22がたわむことで、シリンダボディ21に保持されているピストン180の軸線及び直動部170の軸線が傾く場合であっても、直動変換機構150に負荷が掛かりにくくなる。
【0054】
(第3実施形態)
図6及び図7を参照して、第3実施形態に係る電動制動装置210について説明する。第3実施形態に係る電動制動装置210は、他の実施形態に係る電動制動装置10,110と比較したとき、直動変換機構50の直動部70とピストン80と規制部90とが主に相違している。このため、以降の説明では、他の実施形態と共通する構成について同一の符号を付すとともに説明を省略する。
【0055】
<第3実施形態の構成>
図6及び図7に示すように、直動変換機構250の直動部270は、軸方向DAを高さ方向とする円柱状をなしている。直動部270は、直動部270を軸方向DAに貫通するねじ孔71を有する。また、直動部270は、2つの第2対向面271と、2つの第2被当接面272と、を有する。2つの第2対向面271は、直動部270の外側であって直動部270の前端付近に設けられている。第1方向D1は、2つの第2対向面271に対して垂直である。2つの第2対向面271は、第1方向D1に間隔をあけた状態で並行に延びている。2つの第2被当接面272は、第1方向D1に間隔をあけて設けられている。軸方向DAは、第2被当接面272に対して面直方向である。2つの第2被当接面272は、2つの第2対向面271の後端とそれぞれ接続している。
【0056】
ピストン280は、底壁281と、周壁282と、2つの第2被当接部283と、を有する。2つの第2被当接部283は、周壁282の内側であって周壁282の前端付近に設けられている。2つの第2被当接部283は、第2方向D2に間隔をあけて設けられている。第2被当接部283は、第1ガイド面284を含む。第2方向D2は、第1ガイド面284に対して面直方向である。2つの第2被当接部283の第1ガイド面284は、第2方向D2に間隔をあけた状態で並行に延びている。2つの第2被当接部283の間隔は、周壁282の内径よりも小さくなっている。
【0057】
規制部290は、円環状をなしている。規制部290の軸方向DAにおける厚さは、直動部270の第2対向面271の軸方向DAにおける長さよりも長くなっている。規制部290は、2つの第1対向面291と、2つの第2ガイド面292と、第1当接面293と、第2当接面294と、を有する。2つの第1対向面291は、規制部290の外側の面である。第2方向D2は、2つの第1対向面291に対して面直方向である。2つの第1対向面291は、第2方向D2に間隔をあけた状態で並行に延びている。2つの第2ガイド面292は、規制部290の内側の面である。第1方向D1は、2つの第2ガイド面292に対して面直方向である。2つの第2ガイド面292は、第1方向D1に間隔をあけた状態で平行に延びている。軸方向DAは、規制部290の前面である第1当接面293に対して面直方向である。軸方向DAは、規制部290の後面である第2当接面294に対して面直方向である。
【0058】
<直動部とピストンと規制部との係合関係>
軸方向DAにおいて、ピストン280には規制部290が挿入されている。このとき、ピストン280の2つの第1ガイド面284と規制部290の2つの第1対向面291とは、第2方向D2にそれぞれ対向している。第2方向D2において、ピストン280の2つの第1ガイド面284の間隔は、規制部290の2つの第1対向面291の間隔と同等である。この点で、ピストン280と規制部290とは、第2方向D2に対して相対的に移動不能であるとともに、ピストン280の軸線と規制部290の軸線とのなす角度が変化するようにピストン280は規制部290に対して変位不能である。一方、ピストン280の内径は、規制部290の外径よりも僅かに大きくなっている。この点で、ピストン280と規制部290とは、第1方向D1に対して相対的に移動可能である。
【0059】
詳細には、ピストン280の軸線と規制部290の軸線との距離が変化するようにピストン280が規制部290に対して第1方向D1に変位する。この第1方向D1の変位により、ピストン280の軸線と直動部270の軸線との距離が変化するようにピストン280が直動部270に対して変位する。この構成により、規制部290は、第1方向D1への直動部270に対するピストン280の相対変位を許容する。つまり、第3実施形態において、第1方向D1は「第1方向」及び「軸ずれ方向」に相当している。
【0060】
軸方向DAにおいて、ピストン280と規制部290とには直動部270が挿入されている。このとき、規制部290の2つの第2ガイド面292と直動部270の2つの第2対向面271とは、第1方向D1にそれぞれ対向している。第1方向D1において、規制部290の2つの第2ガイド面292の間隔は、直動部270の2つの第2対向面271の間隔と同等である。この点で、規制部290と直動部270とは、第1方向D1に対して相対的に移動不能であるとともに、規制部290の軸線と直動部270の軸線とのなす角度が変化するように規制部290は直動部270に対して変位不能である。一方、規制部290の内径は、直動部270の外径よりも僅かに大きくなっている。この点で、規制部290と直動部270とは、第2方向D2に対して相対的に移動可能である。
【0061】
詳細には、規制部290の軸線と直動部270の軸線との距離が変化するように規制部290が直動部270に対して第2方向D2に変位する。この第2方向D2の変位により、ピストン280の軸線と直動部270の軸線との距離が変化するようにピストン280が直動部270に対して変位する。この構成により、規制部290は、第2方向D2への直動部270に対するピストン280の相対変位を許容する。つまり、第3実施形態において、第2方向D2は「第2方向」及び「軸ずれ方向」に相当している。
【0062】
規制部290の第1当接面293とピストン280の底壁281とは、軸方向DAに接しているため、規制部290の第1当接面293は、ピストン280の底壁281を前進方向に押圧可能となっている。また、直動部270の2つの第2被当接面272と規制部290の第2当接面294は、軸方向DAに接しているため、直動部270の2つの第2被当接面272は、規制部290の第2当接面294を前進方向に押圧可能となっている。ただし、直動部270とピストン280の底壁281との間には隙間が存在している。この点で、直動部270は、ピストン280を前進方向に押圧不能になっている。
【0063】
以上より、規制部290は、径方向において、ピストン280と直動部270との間に設けられている。そして、規制部290は、ピストン280に対して、軸方向DAに延びる軸線回りに回転不能であるとともに、直動部270に対して、軸方向DAに延びる軸線回りに回転不能である。この点で、規制部290は、ピストン280と直動部270との軸方向DAに延びる軸線回りの相対回転を規制している。
【0064】
<第3実施形態の作用効果>
第1実施形態と同様に、電動制動装置210において、車輪200に制動力を発生させる場合には、ピストン280に対して径方向に外力が作用する場合がある。この点、第2実施形態に係る電動制動装置210において、ピストン280は規制部290に対して第1方向D1に移動可能であり、規制部290は直動部270に対して第2方向D2に移動可能である。このため、ピストン280は、直動変換機構250に対し、径方向の外力の作用する方向に相対的に変位できる。
【0065】
こうして、電動制動装置210は、ピストン280に対して径方向の外力が作用する場合であっても、当該外力が直動変換機構250に伝達することを抑制できる。その結果、電動制動装置210は、直動変換機構250の耐久性が低下することを抑制できる。また、ブリッジ22がたわむことで、シリンダボディ21に保持されているピストン280の軸線及び直動部270の軸線が傾く場合であっても、直動変換機構250に負荷が掛かりにくくなる。
【0066】
(第4実施形態)
図8及び図9を参照して、第4実施形態に係る電動制動装置310について説明する。第4実施形態に係る電動制動装置310は、他の実施形態に係る電動制動装置10,110,210と比較したとき、直動変換機構50の直動部70とピストン80と規制部90とが主に相違している。このため、以降の説明では、他の実施形態と共通する構成について同一の符号を付すとともに説明を省略する。
【0067】
<第4実施形態の構成>
図8及び図9に示すように、直動変換機構350の直動部370は、本体部371と、2つの第2被当接部372と、を有する。本体部371は、軸方向DAを高さ方向とする円柱状をなしている。本体部371は、本体部371を軸方向DAに貫通するねじ孔71を含む。2つの第2被当接部372は、本体部371から第2方向D2に突出している。一方の第2被当接部372の突出方向は、他方の第2被当接部372の突出方向の逆方向である。第2被当接部372は、第2被当接面373を含む。第2被当接面373は、前進方向に凸となる凸曲面である。第2被当接面373は、ある半径の円柱の側面の一部である。第2被当接面373は、第2方向D2から見たとき、円弧形状をなしている。
【0068】
ピストン380は、底壁381と、周壁382と、を有する。周壁382は、2つの第1被当接面383を含む。2つの第1被当接面383は、周壁382の後端において、第1方向D1に間隔をあけて設けられている。第1被当接面383は、前進方向に凹となる凹曲面である。第1被当接面383は、ある半径の円柱の側面の一部である。第1被当接面383は、第1方向D1から見たとき、円弧形状をなしている。
【0069】
規制部390は、基部391と、2つの第1当接部392と、を有する。基部391は、円環状をなしている。基部391の内径は、直動部370の本体部371の外径よりも大きくなっている。基部391は、2つの第2当接面393を有する。2つの第2当接面393は、周壁382の後端において、第2方向D2に間隔をあけて設けられている。第2当接面393は、前進方向に凹となる凹曲面である。第2当接面393は、ある半径の円柱の側面の一部である。第2当接面393は第2方向D2から見たとき、円弧形状をなしている。第2方向D2の投影において、第2当接面393は、第2被当接面373の凸形状に対応する凹形状である。2つの第1当接部392は、基部391から前進方向に突出している。2つの第1当接部392は、第1方向D1に間隔をあけて設けられている。第1当接部392は、第1当接面394を有する。第1当接面394は、前進方向に凸となる凸曲面である。第1当接面394は、ある半径の円柱の側面の一部である。第1当接面394は、第1方向D1から見たとき、円弧形状をなしている。第1方向D1の投影において、第1当接面394は、第1被当接面383の凹形状に対応する凸形状である。
【0070】
<直動部とピストンと規制部との係合関係>
軸方向DAにおいて、ピストン380の後端には規制部390が接している。このとき、ピストン380の2つの第1被当接面383と規制部390の2つの第1当接面394とは軸方向DAにそれぞれ接している。第4実施形態において、第1被当接面383を構成する曲面の半径と規制部390の第1当接面394を構成する曲面の半径とは同等である。この点で、ピストン380と規制部390とは、ピストン380の軸線と規制部390の軸線との距離が変化するように第1方向D1に対して相対的に移動可能であるとともに、ピストン380の軸線と規制部390の軸線とのなす角度が変化するように第1方向D1に延びる第1軸線AX1回りの第1揺動方向S1に相対的に揺動可能である。
【0071】
詳細には、ピストン380の軸線と規制部390の軸線との距離が変化するようにピストン380が規制部390に対して第1方向D1に変位する。さらに、ピストン380の軸線と規制部390の軸線とのなす角度が変化するようにピストン380が規制部390に対して第1揺動方向S1に変位する。この第1方向D1の変位及びこの第1揺動方向S1の変位により、ピストン380の軸線と直動部370の軸線との距離が変化するようにピストン380が直動部370に対して変位するとともに、ピストン380の軸線と直動部370の軸線とのなす角度が変化するようにピストン380が直動部370に対して変位する。この構成により、規制部390は、第1方向D1及び第1揺動方向S1への直動部370に対するピストン380の相対変位を許容する。
【0072】
一方、ピストン380と規制部390とは、第1方向D1を除く径方向に対して相対的に移動不能であるとともに、第1方向D1を除く径方向に延びる軸線回りに相対的に揺動不能である。また、ピストン380と規制部390とは、軸方向DAに延びる軸線回りに相対的に回転不能である。
【0073】
軸方向DAにおいて、規制部390には直動部370が挿入されている。このとき、規制部390の2つの第2当接面393と直動部370の2つの第2被当接面373とは軸方向DAにそれぞれ接している。第4実施形態において、第2当接面393を構成する曲面の半径と直動部370の第2被当接面373を構成する曲面の半径とは同等である。この点で、規制部390と直動部370とは、規制部390の軸線と直動部370の軸線との距離が変化するように第2方向D2に対して相対的に移動可能であるとともに、規制部390の軸線と直動部370の軸線とのなす角度が変化するように第2方向D2に延びる第2軸線AX2回りの第2揺動方向S2に相対的に揺動可能である。
【0074】
詳細には、規制部390の軸線と直動部370の軸線との距離が変化するように規制部390が直動部370に対して第2方向D2に変位する。さらに、規制部390の軸線と直動部370の軸線とのなす角度が変化するように規制部390が直動部370に対して第2揺動方向S2に変位する。この第2方向D2の変位及びこの第2揺動方向S2の変位により、ピストン380の軸線と直動部370の軸線との距離が変化するようにピストン380が直動部370に対して変位するとともに、ピストン380の軸線と直動部370の軸線とのなす角度が変化するようにピストン380が直動部370に対して変位する。この構成により、規制部390は、第2方向D2及び第2揺動方向S2への直動部370に対するピストン380の相対変位を許容する。
【0075】
つまり、第4実施形態では、第2方向D2が「第2方向」に対応し、第2揺動方向S2が「第1方向」に対応する。また、直動部370の第2被当接部372及び第2被当接面373は「被当接部」及び「被当接面」にそれぞれ相当し、規制部390の第2当接面393は当該被当接部と直動方向に当接する「当接部」かつ「当接面」に相当している。
【0076】
一方、規制部390と直動部370とは、第2方向D2を除く径方向に対して相対的に移動不能であるとともに、第2方向D2を除く径方向に延びる軸線回りに相対的に揺動不能である。また、規制部390と直動部370とは、軸方向DAに延びる軸線回りに相対的に回転不能である。
【0077】
なお、第4実施形態では、ピストン380の2つの第1被当接面383と規制部390の2つの第1当接面394とに着目した場合、第1方向D1が「第2方向」に対応し、第1揺動方向S1が「第1方向」に対応する。また、規制部390の第1当接部392及び第1当接面394は「当接部」及び「当接面」にそれぞれ相当し、ピストン380の第1被当接面383は当該当接部と直動方向に当接する「被当接部」かつ「被当接面」に相当している。
【0078】
以上より、規制部390は、直動部370の直動方向である軸方向DAにおいて、ピストン380と直動部370との間に設けられている。そして、規制部390は、ピストン380に対する軸方向DAに延びる軸線回りに回転不能であるとともに、直動部370に対する軸方向DAに延びる軸線回りに回転不能である。この点で、規制部390は、ピストン380と直動部370との軸方向DAに延びる軸線回りの相対回転を規制している。
【0079】
<第4実施形態の作用効果>
第1実施形態と同様に、電動制動装置310において、車輪200に制動力を発生させる場合には、ピストン380に対して径方向に外力が作用する場合がある。この点、第4実施形態に係る電動制動装置310において、ピストン380は、規制部390に対して、第1揺動方向S1に揺動可能であるとともに第1方向D1に移動可能である。また、規制部390は、直動部370に対して、第2揺動方向S2に揺動可能であるとともに第2方向D2に移動可能である。このため、ピストン380は、直動変換機構350に対し、径方向の外力の作用する方向に相対的に変位できる。
【0080】
こうして、電動制動装置310は、ピストン380に対して径方向の外力が作用する場合であっても、当該外力が直動変換機構350に伝達することを抑制できる。その結果、電動制動装置310は、直動変換機構350の耐久性が低下することを抑制できる。また、ブリッジ22がたわむことで、シリンダボディ21に保持されているピストン380の軸線及び直動部370の軸線が傾く場合であっても、直動変換機構350に負荷が掛かりにくくなる。
【0081】
規制部390の第1当接面394は、ピストン380に対する第1揺動方向S1及び第1方向D1の両方向に対する相対変位を許容するための構成であるとともに、ピストン380に対する軸方向DAに延びる軸線回りの相対回転を規制するための構成である。また、規制部390の第2当接面393は、直動部370に対する第2揺動方向S2及び第2方向D2の両方向に対する相対変位を許容するための構成であるとともに、直動部370に対する軸方向DAに延びる軸線回りの相対回転を規制するための構成である。したがって、規制部390は、第1実施形態~第3実施形態における「対向面」及び「ガイド面」が不要になる。この点で、第4実施形態に係る電動制動装置310は、構成部品の加工の手間が少なくなりやすい。
【0082】
<変更例>
上記の複数の実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記の複数の実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0083】
・第1実施形態において、ピストン80が規制部90に対して第1方向D1に移動すると、ピストン80及び規制部90において、一方の第1接続面85が一方の第1接続面94に接触し得る。そこで、第1接続面85及び第1接続面94の接触により、ピストン80の規制部90に対する第1方向D1への移動量の上限を設定してもよい。この場合、ピストン80における2つの第1接続面85の間隔及び規制部90における2つの第1接続面94の間隔の寸法差に応じて、ピストン80の第1方向D1への移動量の上限を決定できる。規制部90が直動部70に対して第2方向D2に移動する場合についても同様である。
【0084】
・ピストン80が規制部90に対して移動できる方向及び規制部90が直動部70に対して移動できる方向は、垂直の関係でなくても異なる方向であればよい。言い換えれば、第1方向D1及び第2方向D2は、異なる方向であればよい。また、第1揺動方向S1及び第2揺動方向S2についても、同様に異なる方向であればよい。
【0085】
・ピストン80の第1内面83及び規制部90の第1外面91に第1方向D1に延びるキー溝を設けるとともに、ピストン80のキー溝及び規制部90のキー溝に沈みキーを嵌め込んでもよい。こうして、ピストン80を規制部90に対して第1方向D1に移動可能としてもよい。同様に、規制部90を直動部70に対して第2方向D2に移動可能としてもよい。
【0086】
・直動変換機構50は、ねじ軸63を有する回転部60が回転することにより、ねじ孔71を有する直動部70が軸方向DAに直動する構成である。他の実施形態の直動変換機構50は、ねじ孔71を有する回転部60が回転することにより、ねじ軸63を有する直動部70が軸方向DAに直動する構成であってもよい。
【0087】
・第2実施形態に係るピストン180の第1被当接面184及び規制部190の第1当接面193は、球面状をなしていなくてもよい。この場合、軸方向DAは、第1被当接面184及び第1当接面193に対して面直方向であってもよいし、第1被当接面184及び第1当接面193は、テーパ面などの軸方向DAに対して傾く斜面であってもよい。第2実施形態に係る規制部90の第2当接面194及び直動部170の第2被当接面175についても同様である。ただし、この変更例は、直動部170の第2対向面173、ピストン180の第1ガイド面183、規制部190の第1対向面191及び第2ガイド面192に相当する構成又はDカットされた軸又は孔を備える必要がある。言い換えれば、この変更例は、ピストン180に対する直動部170の回転を規制するための構成が必要である。
【0088】
・第2実施形態において、規制部190の第1当接面193は後退方向に凹となる凹曲面であるとともに、ピストン180の第1被当接面184は後退方向に凸となる凸曲面であってもよい。また、直動部170の第2被当接面175は後退方向に凹となる凹曲面であるとともに、規制部190の第2当接面194は後退方向に凸となる凸曲面であってもよい。第4実施形態についても同様である。
【0089】
・第2実施形態において、ピストン180の第1被当接面184を構成する球面の半径は、規制部190の第1当接面193を構成する球面の半径よりも大きくてもよい。また、規制部190の第2当接面194を構成する球面の半径は、直動部170の第2被当接面175を構成する球面の半径よりも大きくてもよい。第4実施形態についても同様である。
【0090】
・第2実施形態に係る電動制動装置110は、直動部170が前進方向に移動するときに弾性変形する一方で、直動部170が後退方向に移動するときにピストン180を後退方向に移動させるスプリングを備えてもよい。他の実施形態においても同様である。
【0091】
・直動変換機構50は、ボールねじを用いた直動変換機構であってもよい。
・電動制動装置10を、湿式の電動制動装置として構成してもよい。湿式の電動制動装置は、シリンダ内でのピストンの往復動により、シリンダに導入されたブレーキ液に押圧を加えることで液圧を発生して、その液圧を用いて制動力を発生する。こうした湿式の電動制動装置でも、外力や構成部品の加工誤差、組付誤差により、ピストンの中心軸と回転部60の中心軸とがずれた状態となることがある。よって、湿式の電動制動装置においても、直動部70とピストンとの間に規制部90を設けることにより、上記中心軸のずれに基づき、回転部60に曲げ荷重が作用することが抑制される。
【0092】
<技術的思想>
第1実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
電気モータの回転運動が直動変換機構の回転部に伝達され、前記回転部の回転運動が前記直動変換機構の直動部の直動方向の直線運動に変換され、車輪とともに回転する回転体に前記直動部と連動する摩擦材を押し付けることにより前記車輪に制動力を発生させる電動制動装置であって、前記直動部を前記直動部の径方向における外側から覆い、前記直動部とともに直線運動することによって前記摩擦材を前記回転体に押し付けるピストンと、前記径方向において、前記ピストンと前記直動部との間に設けられ、前記直動部と前記ピストンとの相対回転を規制する規制部と、を備え、前記ピストンは、前記規制部に対して、前記径方向のうちの第1方向に変位できる自由度を有し、前記規制部は、前記直動部に対して、前記第1方向及び前記直動方向を含む平面と交差する第2方向に変位できる自由度を有する電動制動装置。
【符号の説明】
【0093】
10,110,210,310…電動制動装置
24,25…摩擦材
30…電気モータ
50,150,250,350…直動変換機構
60…回転部
70,170,270,370…直動部
71…ねじ孔
73,173,271…第2対向面
175,272,373…第2被当接面
80,180,280,380…ピストン
84,183,284…第1ガイド面
184,285,383…第1被当接面
90,190,290,390…規制部
93,191,291…第1対向面
95,192,292…第2ガイド面
193,293,394…第1当接面
194,294,393…第2当接面
200…車輪
201…回転体
DA…軸方向
D1…第1方向
D2…第2方向
S1…第1揺動方向
S2…第2揺動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9