(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108162
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】光学フィルター
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
G02B5/22
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011975
(22)【出願日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】10-2023-0011616
(32)【優先日】2023-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】509179087
【氏名又は名称】エルエムエス・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LMS Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ナム ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ジョン
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA13
2H148CA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】不要な波長領域の光(例えば、紫外線と赤外線領域の光)を効果的に遮断しながらも、必要な波長領域(例えば、可視光領域)では高透過率を確保することができる光学フィルターおよびその用途を提供する。
【解決手段】基板と、上記基板の一面または両面に形成されている透過率制御層と、を含み、上記基板の屈折率に対する上記透過率制御層の屈折率の差の絶対値が、2%~10%の範囲内であり、下記式1の△T
1が、0.5%以上である光学フィルター:
[式1]
△T
1=100×(T
F1-T
S1)/T
S1
式1中、T
F1は、上記光学フィルターの481nm~560nmの波長範囲における平均透過率であり、T
S1は、上記透過率制御層を含まない光学フィルターの481nm~560nmの波長範囲における平均透過率である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一面または両面に形成されている透過率制御層と、を含み、
前記基板の屈折率に対する前記透過率制御層の屈折率の差の絶対値が、2%~10%の範囲内であり、
下記式1の△T1が、0.5%以上である光学フィルター。
[式1]
△T1=100×(TF1-TS1)/TS1
式1中、TF1は、前記光学フィルターの481nm~560nmの波長範囲における平均透過率であり、TS1は、前記透過率制御層を含まない光学フィルターの481nm~560nmの波長範囲における平均透過率である。
【請求項2】
前記式1のTF1が、80%以上である、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項3】
前記基板が、ガラス基板である、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項4】
前記ガラス基板が、10重量%以下の割合で銅を含む、請求項3に記載の光学フィルター。
【請求項5】
前記透過率制御層が、環状オレフィン樹脂、ポリアリレート、ポリイソシアネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリシラザンおよびポリシロキサンからなる群から選択された1つ以上を含む、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項6】
前記基板の屈折率が、前記透過率制御層の屈折率に比べて大きく、前記基板の屈折率が、1.48~1.6の範囲内にある、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項7】
前記基板の両面に前記透過率制御層を含む、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項8】
光吸収層をさらに含む、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項9】
前記基板の屈折率に対する前記光吸収層の屈折率の差の絶対値が、0.2%~10%の範囲内である、請求項8に記載の光学フィルター。
【請求項10】
前記光吸収層と前記基板の間に粘着層、接着層またはプライマー層をさらに含む、請求項8に記載の光学フィルター。
【請求項11】
前記透過率制御層が、前記基板の前記粘着層、接着層またはプライマー層が形成された表面とは反対側の表面または前記光吸収層の前記粘着層、接着層またはプライマー層が形成された表面とは反対側の表面に存在する、請求項10に記載の光学フィルター。
【請求項12】
前記基板の屈折率に対する前記光吸収層の屈折率の差が、0.2%~2%の範囲内であり、
前記基板の屈折率に対する前記粘着層、接着層またはプライマー層の屈折率の差が、3%~10%の範囲内であり、
前記透過率制御層の屈折率に対する前記粘着層、接着層またはプライマー層の屈折率の差が、8%~15%の範囲内である、請求項11に記載の光学フィルター。
【請求項13】
前記基板の屈折率に対する前記透過率制御層の屈折率の差が、-2%~-10%の範囲内である、請求項12に記載の光学フィルター。
【請求項14】
前記光吸収層と前記粘着層、接着層またはプライマー層が、互いに直接接しており、前記粘着層、接着層またはプライマー層と前記基板が、互いに直接接しており、前記透過率制御層が、前記光吸収層または前記基板と直接接している、請求項12に記載の光学フィルター。
【請求項15】
前記光吸収層として、互いに屈折率が異なる第1および第2光吸収層を含む、請求項8に記載の光学フィルター。
【請求項16】
前記第1光吸収層が、前記第2光吸収層に比べて低い屈折率を有し、前記第1光吸収層が、前記第2光吸収層と前記基板の間に存在する、請求項15に記載の光学フィルター。
【請求項17】
前記基板の屈折率に対する前記第1光吸収層の屈折率の差が、-2%~-10%の範囲内であり、前記基板の屈折率に対する前記第2光吸収層の屈折率の差が、2%~10%の範囲内である、請求項15に記載の光学フィルター。
【請求項18】
前記透過率制御層が、前記基板の前記第1光吸収層が形成された表面とは反対側の表面または前記第2光吸収層の前記第1光吸収層が形成された表面とは反対側の表面に存在する、請求項15に記載の光学フィルター。
【請求項19】
前記基板の屈折率に対する前記透過率制御層の屈折率の差が、-2%~-10%の範囲内である、請求項15に記載の光学フィルター。
【請求項20】
前記第2光吸収層と前記第1光吸収層が、互いに直接接しており、前記第1光吸収層と前記基板が、互いに直接接しており、前記透過率制御層が、前記第2光吸収層または前記基板と直接接している、請求項15に記載の光学フィルター。
【請求項21】
前記基板の一面または両面に形成された誘電体多層膜をさらに含む、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項22】
順次積層されている第1層、第2層、第3層および第4層を含み、
前記第1~第4層の屈折率が、それぞれn1、n2、n3およびn4であり、
前記第1~第4層のうちいずれか1つが、基板であり、
前記第1~第4層のうちいずれか1つが、透過率制御層であり、
前記屈折率n1~n4が、下記式4または5の関係を満たし、
前記第1~第4層の平均屈折率が、1.3~1.9の範囲内であり、
前記第1層と前記第3層の平均屈折率と前記第2層と前記第4層の平均屈折率の差の絶対値が、0~2の範囲内である光学フィルター。
[式4]
n2>n1≧n3>n4
[式5]
n2>n3≧n1>n4
【請求項23】
順次積層されている第1層、第2層、第3層および第4層を含み、
前記第1~第4層の屈折率が、それぞれn1、n2、n3およびn4であり、
前記第1~第4層のうち少なくとも1つが、基板であり、
前記第1~第4層のうち少なくとも1つが、透過率制御層であり、
前記第1~第4層の平均屈折率nvが、1.3~1.9の範囲内であり、
下記式6または式7を満たすフィルター。
[式6]
nv-n1>0、nv-n2<0、nv-n3>0およびnv-n4<0
[式7]
nv-n1<0、nv-n2>0、nv-n3<0およびnv-n4>0
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、光学フィルターおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)イメージセンサーなどを用いた撮像装置において光学フィルターが用いられている。このような光学フィルターは、近赤外線カットフィルターとも呼ばれ、良好な色再現性と鮮明な画像を得るために用いられる。
【0003】
このような光学フィルターには様々な特性が要求される。
【0004】
上記光学フィルターは、紫外線および赤外線領域の光を効果的に遮断し、同時に可視光を高透過率で透過させなければならない。このために、遮断しようとする紫外線と可視光の境界と赤外線と可視光の境界に急激かつシャープな透過率の変化が必要である。
【0005】
光学フィルターは、上記のような透過および遮断特性が入射角が変化しても維持されることが必要である。広角カメラなどの開発に伴い、このような特性がより重要になり、さらに広い入射角でも透過および遮断特性が維持される光学フィルターの必要性が大きくなっている。
【0006】
上記のような機能の光学フィルターを製造するために、通常、光学フィルターは、多層構造を有するように製造される。すなわち、光学フィルターが所望の波長の光を透過させ、不要な光を遮断させるために、光学フィルターには、通常、誘電体多層膜および/または光吸収層が含まれる。
【0007】
上記で誘電体多層膜は、通常、高屈折率の誘電体材料と低屈折率の誘電体材料を反復積層して形成した膜であり、このような膜は、設計によって不要な波長の光を反射により遮断することができる。
【0008】
光吸収層は、多様な色素を用いて不要な波長の光を吸収により遮断するように設計した膜である。
【0009】
光学フィルターに上記のような誘電体多層膜および/または光吸収層を適切に形成することによって、目的とする波長で光を遮断することができる。
【0010】
しかしながら、多層構造で光学フィルターが形成されると、層と層間の界面に不要な反射および/または吸収が発生し、このような反射および吸収は、光学フィルターが高透過率を示さなければならない波長領域(例えば、可視光波長領域)で低透過率を示す原因となる。
【0011】
最近、基板として近赤外線吸収特性を有するいわゆる赤外線吸収ガラス(Blue glassとも呼ばれる)を適用した光学フィルターも知られている。赤外線吸収ガラスは、近赤外線波長領域の光を選択的に吸収するようにガラスにCuOなどを添加したガラスフィルターである。
【0012】
このような赤外線吸収ガラスを用いる場合、不要な波長領域の光をより効果的に遮断できるという利点があるが、基板自体が吸収特性を示すので、上記層と層の間に発生する反射および/または吸収現象によって問題となる透過率低下問題がさらに大きくなるという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本出願は、光学フィルターおよびその用途を提供することを目的とする。本出願では、不要な波長領域の光(例えば、紫外線と赤外線領域の光)を効果的に遮断しながらも、必要な波長領域(例えば、可視光領域)では高透過率を確保することができる光学フィルターおよびその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書において言及する物性のうち、測定温度が結果に影響を及ぼす物性は、特に明記しない限り、常温で測定した結果である。
【0015】
本明細書において常温は、加温および減温しない自然そのままの温度を意味し、例えば、10℃~30℃の範囲内のいずれか1つの温度、約23℃または約25℃程度の温度を意味する。また、本明細書において温度の単位は、別段の定めがない限り、摂氏(℃)である。
【0016】
本明細書において言及する物性のうち、測定圧力が結果に影響を及ぼす物性は、特に明記しない限り、常圧で測定した結果である。
【0017】
本明細書において常圧は、加圧および減圧しない自然そのままの圧力であり、通常、大気圧レベルの約740mmHg~780mmHg程度を意味する。
【0018】
本明細書において測定湿度が結果に影響を及ぼす物性の場合、当該物性は、上記常温および/または常圧状態で特に調節されない自然そのままの湿度で測定した物性である。
【0019】
本出願において言及する光学特性(例えば、屈折率)が波長によって変わる特性である場合に、別段の定めがない限り、当該光学特性は、520nm波長の光に対する特性である。
【0020】
本出願において用語透過率または反射率は、別段の定めがない限り、特定波長で確認した実際の透過率(実測透過率)または実際の反射率(実測反射率)を意味する。
【0021】
本明細書において用語透過率または反射率は、別段の定めがない限り、入射角0度を基準とする透過率または反射率である。
【0022】
本出願において用語平均透過率は、別段の定めがない限り、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら各波長の透過率を測定した後に測定された透過率の算術平均を求めた結果である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の平均透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率の算術平均である。
【0023】
本明細書において用語最大透過率は、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の透過率を測定したときの最大透過率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の最大透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率のうち最も高い透過率である。
【0024】
本明細書において用語最小透過率は、所定波長領域内における最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長の透過率を測定したときの最小透過率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の最小透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率のうち最も低い透過率である。
【0025】
本明細書において入射角は、評価対象表面の法線を基準とする角度である。例えば、光学フィルターの入射角0度における透過率または反射率は、上記光学フィルター表面の法線に実質的に平行な方向に入射した光に対する透過率を意味する。また、例えば、入射角40度は、上記法線と時計または反時計回りの方向に実質的に40度の角度を成す入射光に対する値である。このような入射角の定義は、透過率または反射率など他の特性でも同一に適用する。
【0026】
本出願の光学フィルターは、短波長可視光領域近辺の紫外光と長波長可視光領域近辺の赤外光を効率的かつ正確に遮断することができ、高透過率で可視光透過バンドを具現することができる。
【0027】
本出願の光学フィルターは、基板を含んでもよい。上記基板は、透明基板であってもよい。本明細書において或る基板または層が透明であるというのは、上記基板または層が約550nmの波長で一定レベル以上の透過率を示す場合を意味する。例えば、上記透明な基板または透明な層の波長550nmにおける透過率の下限は、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%または85%程度であってもよく、その上限は、100%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%または60%程度であってもよい。上記透過率は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0028】
上記透明基板としては、特に制限されず、光学フィルターの基板に用いられる一般的な基板を用いることができる。通常、基板としては、適切な透過率を示し、光学フィルターの形状を維持できる適切な剛性を有するものが用いられ、例えば、ガラスや結晶などの無機材料や、樹脂などの有機材料からなる基板を用いることができる。
【0029】
透明基板に用いることができる樹脂材料としては、PET(poly(ethylene terephthalate))またはPBT(poly(butylene terephthalate))などのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはEVA(ethylene-vinyl acetate copolymer)などのポリオレフィン、ノルボルネンポリマー、PMMA(poly(methyl methacrylate))などのアクリルポリマー、ウレタンポリマー、塩化ビニルポリマー、フッ素ポリマー、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールまたはポリイミドなどが例示できるが、これらに制限されるものではない。
【0030】
透明基板に用いることができるガラス材料としては、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスまたは石英ガラスなどが挙げられる。
【0031】
透明基板に用いることができる結晶材料としては、水晶、ニオブ酸リチウムまたはサファイアなどの複屈折性結晶が挙げられる。
【0032】
必要な場合に、上記透明基板としていわゆる赤外線吸収基板を用いることもできる。赤外線吸収基板は、赤外線領域のうち少なくとも一部の領域で吸収特性を示す基板である。銅を含ませて上記特性を示すいわゆるブルーガラス(Blue Glass)は、上記赤外線吸収基板の代表的な例である。このような赤外線吸収基板は、赤外線領域の光を遮断する光学フィルターを構成するに際して有用であるが、上記吸収特性によって可視光領域で高透過率を確保する観点から不利である。本出願では、赤外線吸収基板を選択して所望の紫外線および赤外線領域の光を効率的に遮断しつつ、可視光領域で高透過率特性を示す光学フィルターを提供することができる。
【0033】
赤外線吸収基板としては、いわゆる赤外線吸収ガラスと知られている基板を用いることができる。このようなガラスは、フッ化リン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラスなどにCuOなどを添加して製造した吸収型ガラスである。したがって、一例示において本出願では、上記赤外線吸収基板としては、CuO含有フッ化リン酸塩ガラス基板またはCuO含有リン酸塩ガラス基板を用いてもよい。上記でリン酸塩ガラスには、ガラスの骨格の一部がSiO2で構成されるケイリン酸塩ガラス(silicophosphate glass)も含まれる。このような吸収型ガラスは、公知となっており、例えば、韓国登録特許第10-2056613号などに開示されたガラスやその他市販の吸収型ガラス(例えば、ホヤ、ショット、PTOT社などの市販製品)を用いることができる。
【0034】
上記透明基板(例えば、ガラス基板)は、銅を含んでもよい。例えば、上記透明基板が含む銅の含有量の上限は、10重量%、9重量%、8重量%または7重量%程度であってもよく、その下限は、0重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%または7重量%程度であってもよい。上記銅含有量は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。透明基板(例えば、ガラス基板)が、一般基板、すなわち赤外線吸収基板でない場合に、銅が含まれていないので、上記銅の含有量の下限は、0重量%であってもよい。
【0035】
上記基板は、所定範囲の屈折率を有していてもよい。例えば、上記基板の屈折率の下限は、1.48、1.5または1.52程度であってもよく、その上限は、1.6、1.58、1.56、1.54または1.52程度であってもよい。上記屈折率は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0036】
上記のような透明基板の厚さは、通常、約0.03mm~5mmの範囲内で調節することができるが、これに制限されるものではない。
【0037】
本出願の光学フィルターは、上記基板と共に透過率制御層を含んでもよい。
【0038】
本明細書において用語透過率制御層は、当該層の存在の有無によって光学フィルターの透過率が変わる層を意味し、具体的には、上記透過率制御層は、上記基板と後述する所定の屈折率関係を有し、上記透過率制御層を有しない光学フィルターに比べて、上記透過率制御層を有する光学フィルターがさらに高い可視光透過率を示す層を意味し得る。この際、可視光透過率は、約481nm~560nmの波長範囲における平均透過率である。
【0039】
1つの例示において上記透過率制御層は、上記基板の屈折率に対する上記透過率制御層の屈折率の差の絶対値が一定範囲にある層を意味し得る。本明細書において用語Aの屈折率に対するBの屈折率の差は、100×(nB-nA)/nAによって計算される差であり、上記でnAは、Aの屈折率であり、nBは、Bの屈折率である。
【0040】
上記基板の屈折率に対する上記透過率制御層の屈折率の差の絶対値の下限は、2%、3%または4%程度であってもよく、その上限は、10%、9%、8%、7%、6%または5%程度であってもよい。上記絶対値は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0041】
上記透過率制御層は、基板と上記のような屈折率の関係を示す限り、基板に比べて高い屈折率を有していてもよく、低い屈折率を有していてもよい。
【0042】
光学フィルターが上記透過率制御層を含むことで透過率が上昇する理由は、明確ではないが、上記透過率制御層の光学フィルター内における位置によって適切な高屈折領域と低屈折領域の反復積層構造が光学フィルター内に形成され、このような構造による消滅干渉などの現象によって層と層の間に発生する特定波長の光の反射および吸収が緩和、相殺、防止または抑制されるためと判断される。
【0043】
光学フィルターに上記透過率制御層が存在することによって、上記光学フィルターは、所定波長領域内で上記透明基板が有するものに比べて、さらに高い透過率を示すことができる。
【0044】
例えば、上記光学フィルターは、下記式1の△T1が所定範囲内になりうる。
【0045】
[式1]
△T1=100×(TF1-TS1)/TS1
【0046】
式1中、TF1は、上記透過率制御層を含む光学フィルターの481nm~560nmの波長範囲における平均透過率であり、TS1は、上記透過率制御層を含まない光学フィルターの481nm~560nmの波長範囲における平均透過率である。
【0047】
上記透過率TS1の光学フィルターは、上記透過率制御層を含まないことを除いて、上記透過率TF1の光学フィルターと同じ光学フィルターである。
【0048】
上記式1の△T1の下限は、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%または3%程度であってもよく、その上限は、10%、9.5%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%または1%程度であってもよい。上記△T1は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0049】
上記式1中、TF1の下限は、80%、82%、84%、86%、88%または89%程度であってもよく、その上限は、100%、95%または90%程度であってもよい。上記TF1は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0050】
例えば、上記光学フィルターは、下記式2の△T2が所定範囲内になりうる。
【0051】
[式2]
△T2=100×(TF2-TS2)/TS2
【0052】
式2中、TF2は、上記透過率制御層を含む光学フィルターの466nm~480nmの波長範囲における平均透過率であり、TS2は、上記透過率制御層を含まない光学フィルターの466nm~480nmの波長範囲における平均透過率である。
【0053】
上記透過率TS2の光学フィルターは、上記透過率制御層を含まないことを除いて、上記透過率TF2の光学フィルターと同じ光学フィルターである。
【0054】
上記式2の△T2の下限は、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%または3.5%程度であってもよく、その上限は、10%、9.5%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%または1%程度であってもよい。上記△T2は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0055】
上記式2中、TF2の下限は、80%、82%、84%、86%、88%または89%程度であってもよく、その上限は、100%、95%または90%程度であってもよい。上記TF2は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0056】
例えば、上記光学フィルターは、下記式3の△T3が所定範囲内になりうる。
【0057】
[式3]
△T3=100×(TF3-TS3)/TS3
【0058】
式3中、TF3は、上記透過率制御層を含む光学フィルターの425nm~465nmの波長範囲における平均透過率であり、TS3は、上記透過率制御層を含まない光学フィルターの425nm~465nmの波長範囲における平均透過率である。
【0059】
上記透過率TS3の光学フィルターは、上記透過率制御層を含まないことを除いて、上記透過率TF3の光学フィルターと同じ光学フィルターである。
【0060】
上記式3の△T3の下限は、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%または3.3%程度であってもよく、その上限は、10%、9.5%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%または1%程度であってもよい。上記△T3は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0061】
上記式3中、TF3の下限は、65%、70%、75%、80%、85%または90%程度であってもよく、その上限は、100%、95%、90%、85%、80%または75%程度であってもよい。上記TF3は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0062】
上記透過率制御層は、通常、光学フィルターに含まれる誘電体多層膜および光吸収層と異なる種類の層である。したがって、上記透過率制御層は、上記誘電体多層膜とは異なって、1つの単一層であってもよい。また、上記透過率制御層は、上記光吸収層とは異なって、いわゆる紫外線吸収剤および赤外線吸収剤のような吸収剤(色素など)を実質的に含まない。例えば、上記透過率制御層内の上記吸収剤の量は、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下、0.005重量%以下または0.001重量%以下であってもよく、その下限は、0重量%程度であってもよい。
【0063】
上記透過率制御層を形成する素材の種類は、前述した透明な層を形成することができ、また、基板と上述した屈折率関係を示す限り、特に制限されない。
【0064】
1つの例示において上記透過率制御層は、上記素材としては、ポリシラザン、シリカ(SiOx)、シラン化合物、環状オレフィン樹脂(COP:Cyclic Olefin Polymer)、ポリシルセスキオキサン、ポリアリレート、ポリイソシアネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンフタレート、エポキシ樹脂、ポリスルホン、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリカルボシラン、フッ素樹脂およびシラン化合物からなる群から選択された1種または2種以上を含んでもよい。例えば、上記透過率制御層としては、上記ポリシラザンとして有機または無機ポリシラザンを含んでもよい。よく知られているように、ポリシラザンのケイ素原子または窒素原子に置換された官能基の炭素含有の有無によって無機および有機ポリシラザンを区別することができる。
【0065】
上記透過率制御層は、上記素材にさらに必要な添加剤、例えば、硬化剤や界面活性剤のようなその他添加剤を含んでもよい。
【0066】
上記透過率制御層は、適正範囲内の厚さを有していてもよい。例えば、上記透過率制御層の厚さの下限は、1nm、5nm、10nm、15nm、20nm、50nm、100nm、110nmまたは120nm程度であってもよく、その上限は、1000nm、500nm、250nm、200nm、150nm、100nm、80nm、60nm、40nmまたは25nm程度であってもよい。上記厚さは、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0067】
上記のような透過率制御層は、上記基板の一面または両面に形成されていてもよい。また、上記透過率制御層は、上記基板と接して形成されていてもよく、上記基板と上記透過率制御層の間に他の層が存在していてもよい。
【0068】
本出願の光学フィルターは、上記基板と透過率制御層を含み、公知の層をさらに含むこともできる。例えば、上記光学フィルターは、上記基板および/または透過率制御層の一面または両面に形成された吸収層をさらに含んでもよい。上記吸収層は、光吸収層であり、例えば、赤外線および/または紫外線領域の少なくとも一部の波長範囲内の光を吸収する層である。このような吸収層は、光学フィルターに1層または2層以上形成されていてもよい。
【0069】
上記吸収層は、赤外線吸収層および/または紫外線吸収層であってもよい。上記吸収層は、また、赤外線吸収性と紫外線吸収性を全部有する層であってもよい。このような層は、通常、吸収剤(色素、顔料、染料など)と透明樹脂を含む層であり、近紫外線領域および/または近赤外線領域の光をカットして、よりシャープな透過率バンドを具現するために適用することができる。このような吸収層も、前述した透明な層であってもよい。
【0070】
1つの例示において上記紫外線吸収層は、約300nm~390nmの波長領域で吸収極大を示すように設計することができ、赤外線吸収層は、600nm~800nmの波長領域で吸収極大を示すように設計することができる。
【0071】
1つの例示において上記光吸収層が紫外線および赤外線に対する吸収性を同時に示す層である場合に、上記光吸収層は、約300nm~390nmの波長領域で吸収バンドと600nm~800nmの波長領域で吸収バンドを同時に示すように設計することができる。
【0072】
赤外線吸収層と紫外線吸収層は、1つの層で構成されてもよく、別途の層でそれぞれ構成されてもよい。例えば、1つの層が上記紫外線吸収層の吸収極大と赤外線吸収層の吸収極大を全部示すように設計したり、上記それぞれの吸収極大を示す2つの層を形成してもよい。また、複数の赤外線吸収層および/または紫外線吸収層が存在してもよい。
【0073】
各吸収層は、1種の吸収剤のみを含むこともでき、必要な場合、赤外線および/または紫外線の適切なカットのために、2種以上の吸収剤を含むこともできる。
【0074】
例えば、上記赤外線吸収層は、吸収極大波長が700nm~720nmの範囲内であり、半値幅が50nm~60nmの範囲内である第1吸収剤;および吸収極大波長が730nm~750nmの範囲内であり、半値幅が60nm~70nmの範囲内である第2吸収剤を少なくとも含んでもよいし、紫外線吸収層は、吸収極大波長が340nm~390nmの範囲内である吸収剤を少なくとも含んでもよい。
【0075】
上記赤外線および紫外線吸収層は、1層で構成されることもできる。
【0076】
吸収層を構成する材料および構成方法は、特に制限されず、公知の材料および構成方法を適用することができる。
【0077】
吸収層は、目的とする吸収極大を示すことができる吸収剤(染料または顔料など)を透明な樹脂と配合した材料を用いて形成する。
【0078】
例えば、紫外線吸収剤としては、約300nm~390nmの波長領域で吸収極大を示す公知の吸収剤を適用することができ、その例としては、Exiton社のABS407;QCR Solutions Corp社のUV381A、UV381B、UV382A、UV386A、VIS404A;H.W.Sands社のADA1225、ADA3209、ADA3216、ADA3217、ADA3218、ADA3230、ADA5205、ADA3217、ADA2055、ADA6798、ADA3102、ADA3204、ADA3210、ADA2041、ADA3201、ADA3202、ADA3215、ADA3219、ADA3225、ADA3232、ADA4160、ADA5278、ADA5762、ADA6826、ADA7226、ADA4634、ADA3213、ADA3227、ADA5922、ADA5950、ADA6752、ADA7130、ADA8212、ADA2984、ADA2999、ADA3220、ADA3228、ADA3235、ADA3240、ADA3211、ADA3221、ADA5220、ADA7158;CRYSTALYN社のDLS 381B、DLS 381C、DLS 382A、DLS 386A、DLS 404A、DLS 405A、DLS 405C、DLS 403Aなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0079】
また、赤外線吸収剤として、600nm~800nmの波長領域で吸収極大を示す適切な染料または顔料などを用いることができ、例えば、スクアリリウム(squarylium)系染料、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物またはジチオール系金属錯体系化合物などを用いることができるが、これらに制限されるものではない。
【0080】
また、吸収層に適用される透明樹脂は、公知の樹脂を用いることができ、例えば、環状オレフィン系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂および多様な有機・無機ハイブリッド系の樹脂のうち1種以上を用いることができる。
【0081】
また、このような吸収層は、上記基板と所定の屈折率関係を有するように形成されていてもよい。例えば、上記基板の屈折率に対する上記光吸収層の屈折率の差の絶対値の下限は、0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、1%、2%、3%、4%、5%または6%程度であってもよく、その上限は、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%または0.7%程度であってもよい。上記絶対値は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0082】
上記光吸収層は、基板と上記のような屈折率の関係を示す限り、基板に比べて高い屈折率を有していてもよく、低い屈折率を有していてもよい。
【0083】
このような光吸収層は、通常、約1μm~20μm程度の範囲内の厚さを有するように形成されるが、光吸収層の厚さがこれに制限されるものではない。
【0084】
上記光吸収層は、光学フィルターに1層または2層以上を含んでもよいし、光吸収層が2層以上含む場合に、各層の吸収特性は、互いに同じでも、異なっていてもよい。
【0085】
本出願の光学フィルターは、さらなる層としていわゆる誘電体多層膜を含んでもよい。このような多層膜は、基板、透過率制御層および/または光吸収層の一面または両面に形成されていてもよい。
【0086】
このような誘電体多層膜は、通常、それぞれ互いに屈折率が異なる少なくとも2種のサブ層を含む多層構造であってもよく、上記2種のサブ層が繰り返して積層された多層構造を含んでもよい。例えば、上記誘電体多層膜は、互いに屈折率が異なる第1および第2サブ層が反復積層された構造を含んでもよい。
【0087】
上記第1および第2サブ層は、相互間の屈折率の差によって区分されるサブ層である。
【0088】
誘電体多層膜は、低屈折率の誘電体材料と高屈折率の誘電体材料を反復積層して構成された膜であり、いわゆるIR反射層およびAR(Anti-reflection)層を形成するために用いられ、本出願でも、このような公知のIR反射層やAR層の形成のための誘電体多層膜を適用することができる。
【0089】
誘電体多層膜を形成する材料、すなわち上記各サブ層を形成する材料の種類は、特に制限されず、公知の材料を適用することができる。通常、低屈折サブ層の製造には、SiO2またはNa5Al3F14、Na3AlF6またはMgF2などのフッ化物を適用し、高屈折サブ層の製造には、TiO2、Ta2O5、Nb2O5、ZnSまたはZnSeなどを適用することができるが、本出願において適用する材料が上記に制限されるものではない。
【0090】
誘電体多層膜を形成するための上記低屈折および高屈折サブ層材料の選択、それらの配置や厚さなどには、特別な制限はなく、例えば、公知のIR反射層およびAR(Anti-reflection)層またはその他誘電体多層膜の形成のために適用する設計形態を制限なしで適用することができる。
【0091】
上記誘電体多層膜を形成する方法も、特に制限されず、例えば、公知の蒸着方法を適用して形成することができる。当業界では、サブ層の蒸着厚さや層数などを勘案して、当該誘電体多層膜の反射や透過特性を制御する方法が知られており、本出願では、このような公知の方法によって目的とする特性を示す誘電体多層膜を形成することができる。
【0092】
光学フィルターは、また、さらなる層であり、粘着層、接着層および/またはプライマー層を含んでもよい。このような層は、通常、光学フィルターにおいて層と層間の密着性を改善するために適用する。本出願では、公知の材料を用いて上記粘着層、接着層および/またはプライマー層を形成することができる。
【0093】
光学フィルターは、上述した層の他にも、目的に応じて多様な公知の層を含んでもよい。
【0094】
光学フィルターが含む層の種類と構成によって上記透過率制御層の位置および光学フィルターの各層間の屈折率を上述した屈折率関係などの範囲内で制御することができる。
【0095】
例えば、上記粘着層、接着層またはプライマー層が含まれる場合に、上記粘着層、接着層またはプライマー層は、上記光吸収層と基板の間に含まれてもよい。このような場合に、上記透過率制御層の位置は、特別な制限はないが、上記基板の粘着層等が形成された表面とは反対側の表面または光吸収層の上記粘着層等が形成された表面とは反対側の表面に存在してもよい。
【0096】
図1は、上記吸収層300、粘着層等400、基板100および透過率制御層200が順次積層された場合の断面模式図であり、
図2は、上記透過率制御層200、吸収層300、粘着層等400および基板100が順次積層された場合の断面模式図である。
【0097】
上記
図1および
図2のような積層形態では、上記基板の屈折率n
100に対する上記光吸収層の屈折率n
300の差100×(n
300-n
100)/n
100の下限は、0.2%、0.4%または0.6%程度であってもよく、その上限は、2%、1.5%、1%、0.9%、0.8%または0.7%程度であってもよい。上記屈折率の差は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0098】
上記
図1および
図2のような積層形態では、上記基板の屈折率n
100に対する上記粘着層等の屈折率n
400の差100×(n
400-n
100)/n
100の下限は、3%、4%または5%程度であってもよく、その上限は、10%、8%または6%程度であってもよい。上記屈折率の差は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0099】
上記
図1および
図2のような積層形態では、上記透過率制御層の屈折率n
200に対する上記粘着層等の屈折率n
400の差100×(n
400-n
200)/n
200の下限は、8%、9%または10%程度であってもよく、その上限は、15%、13%または11%程度であってもよい。上記屈折率の差は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0100】
また、上記
図1および
図2のような積層形態では、上記基板の屈折率n
100に対する上記透過率制御層の屈折率n
200の差100×(n
200-n
100)/n
100の下限は、-10%、-8%、-6%または-5%程度であってもよく、その上限は、-2%または-4%程度であってもよい。上記屈折率の差は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0101】
図1および
図2のような積層形態において上記のような屈折率関係を有する場合に、目的とする透過率が確保される光学フィルターを得ることができる。
【0102】
特に制限されるものではないが、上記のような構造では、上記光吸収層と粘着層等は、互いに直接接しており、上記粘着層等と基板は、互いに直接接しており、上記透過率制御層は、光吸収層または基板と直接接していてもよい。
【0103】
上記光学フィルターは、場合によっては、2層以上の光吸収層を含んでもよい。例えば、上記光学フィルターは、上記光吸収層として、互いに屈折率が異なる第1および第2光吸収層を含んでもよい。
【0104】
このような場合に、さらに低い屈折率を有する光吸収層が、他の光吸収層に比べて基板に近く存在してもよい。例えば、上記第1および第2光吸収層のうち、第1光吸収層が第2光吸収層に比べて低い屈折率を有する場合、上記第1光吸収層が上記第2光吸収層と透明基板の間に存在してもよい。
【0105】
このような場合に、上記透過率制御層は、上記透過率制御層と上記第1光吸収層の間に上記第2光吸収層が存在するように位置してもよい。
図3は、このような構造を示し、上記透過率制御層200、第2光吸収層302、第1光吸収層301および基板100が順次形成された場合を示す。
【0106】
図3のような構造の場合には、上記基板100の屈折率n
100に対する上記第1光吸収層301の屈折率n
301の差100×(n
301-n
100)/n
100の下限は、-10%、-8%、-6%または-5%程度であってもよく、その上限は、-2%、-4%または-4.5%程度であってもよい。上記屈折率の差は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0107】
図3のような構造の場合には、上記基板100の屈折率n
100に対する上記第2光吸収層302の屈折率n
302の差100×(n
302-n
100)/n
100の下限は、2%、4%または6%程度であってもよく、その上限は、10%、9%、8%または7%程度であってもよい。上記屈折率の差は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0108】
上記構造において上記透過率制御層200は、基板100の第1光吸収層301が形成された表面とは反対側の表面に存在するか、または
図3のように第2光吸収層302の第1光吸収層301が形成された表面とは反対側の表面に存在してもよい。
【0109】
このような場合に、基板の屈折率n100に対する上記透過率制御層の屈折率n200の差100×(n200-n100)/n100の下限は、-10%、-8%、-6%または-5%程度であってもよく、その上限は、-2%または-4%程度であってもよい。上記屈折率の差は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0110】
図3などのように2種の光吸収層を含む構造において上記のような屈折率関係を有する場合に、目的とする透過率が確保される光学フィルターを得ることができる。
【0111】
上記のように光吸収層、基板、透過率制御層および粘着層等の屈折率関係を制御する方法は、特に制限されない。例えば、通常、上記光吸収層、基板、透過率制御層および粘着層等を形成できるもの知られた素材のうち、目的に応じて適切な素材を選択し、上記屈折率を満足させることができ、必要な場合に、低屈折の確保が可能な低屈折粒子(例えば、中空粒子)および/または高屈折の確保が可能な高屈折粒子(TiO2など)などを適用し、屈折率を調整することができる。
【0112】
特に制限されるものではないが、上記構造では、上記第2光吸収層と第1光吸収層は、互いに直接接していてもよく、上記第1光吸収層と基板は、互いに直接接しており、透過率制御層は、上記第2光吸収層または基板と直接接していてもよい。
【0113】
上記光学フィルターは、順次積層されている第1層、第2層、第3層および第4層を含んでもよい。
【0114】
上記構造において第1~第4層のうちいずれか1つは、上述した基板であり、また、上記第1~第4層のうちいずれか1つは、上記透過率制御層であってもよい。また、上記構造において上記第1~第4層のうち、上記基板および透過率制御層でない層は、前述した光吸収層、粘着層、接着層および/またはプライマー層であってもよい。
【0115】
上記のような構造は、
図1または
図2に示された形態の積層構造であってもよい。
【0116】
したがって、1つの例示において上記構造において第1層または第2層が上述した光吸収層であり、第2層または第3層が上述した粘着層等であり、第3層または第4層が上記基板であり、第1層または第4層が上記透過率制御層であってもよい。上記光吸収層、基板、透過率制御層および粘着層等に対する詳細な内容は、前述した通りである。
【0117】
上記のような構造において各層の屈折率の関係を制御することができる。
【0118】
例えば、上記第1層の屈折率をn1、第2層の屈折率をn2、第3層の屈折率をn3、第4層の屈折率をn4とすれば、上記屈折率n1~n4は、下記式4または式5の関係を満たすことができる。
【0119】
[式4]
n2>n1≧n3>n4
【0120】
[式5]
n2>n3≧n1>n4
【0121】
上記のような構造において上記第1~第4層の平均屈折率(n1、n2、n3およびn4の算術平均)の下限は、1.3、1.4または1.5程度であってもよく、その上限は、1.9、1.8、1.7または1.6程度であってもよい。上記平均屈折率は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0122】
上記の場合、上記第1層と第3層の平均屈折率(n1およびn3の算術平均)と上記第2層と第4層の平均屈折率(n2およびn4の算術平均)の差の絶対値の下限は、0、0.1、0.2、0.3、0.4または0.5程度であってもよく、その上限は、2、1.5、1、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1程度であってもよい。上記差は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0123】
このような関係を満たすように層を選択し、配置することによって、目的とする特性の光学フィルターを得ることができる。
【0124】
他の例示において上記第1層~第4層を含む光学フィルターは、下記式6または式7の関係を満たすことができる。上記構造において第1~第4層のうちいずれか1つは、上述した基板であり、また、上記第1~第4層のうちいずれか1つは、上記透過率制御層であってもよい。また、上記構造において上記第1~第4層のうち上記基板および透過率制御層でない層は、前述した光吸収層、粘着層、接着層および/またはプライマー層であってもよい。
【0125】
式6または式7を満たす光学フィルターは、
図3に例示された光学フィルターであってもよい。したがって、上記の場合、第1層は、上記透過率制御層であり、第2層と第3層は、上記光吸収層であり、第4層は、上記基板であってもよい。
【0126】
[式6]
nv-n1>0、nv-n2<0、nv-n3>0およびnv-n4<0
【0127】
[式7]
nv-n1<0、nv-n2>0、nv-n3<0およびnv-n4>0
【0128】
上記式6および式7中、n1、n2、n3およびn4は、それぞれ第1層、第2層、第3層および第4層の屈折率であり、nvは、上記n1、n2、n3およびn4の算術平均であってもよい。
【0129】
上記nvの下限は、1.3、1.4または1.5程度であってもよく、その上限は、1.9、1.8、1.7または1.6程度であってもよい。上記平均屈折率は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0130】
また、上記nv-n1、nv-n2、nv-n3およびnv-n4のそれぞれの範囲の下限は、正数の場合に、0、0.01、0.02、0.03 0.04、0.05または0.05程度であってもよく、その上限は、1、0.5、0.1、0.09、0.08、0.07または0.065程度であってもよい。上記範囲は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0131】
また、上記nv-n1、nv-n2、nv-n3およびnv-n4のそれぞれの範囲の下限は、負数である場合に、-1、-0.5、-0.1、-0.05または-0.03程度であってもよく、その上限は、0、-0.5、-0.3、-0.1、-0.05または-0.03程度であってもよい。上記範囲は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0132】
このような関係を満たすように層を選択し、配置することによって、目的とする特性の光学フィルターを得ることができる。
【0133】
本出願の光学フィルターは、卓越した光学特性を示すことができる。
【0134】
例えば、上記光学フィルターは、T50%cut on波長が約380nm~425nmの範囲内の透過バンドを示すことができる。上記T50%cut on波長は、350nm~425nmの波長範囲内で50%の透過率を示す波長のうち最短波長である。上記50%の透過率を示す波長は、上記380nm~425nmの範囲内に1つまたは2つ以上存在してもよく、1つが存在する場合に、当該波長、2つ以上存在する場合に、それらのうち最短波長が、上記T50%cut on波長となる。上記T50%cut on波長は、385nm以上、390nm以上、395nm以上、400nm以上、405nm以上または410nm以上の範囲内および/または420nm以下、415nm以下、410nm以下、405nm以下または400nm以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0135】
上記光学フィルターは、T50%cut off波長が約590nm~680nmの範囲内の透過バンドを示すことができる。上記T50%cut off波長は、560nm~700nmの波長範囲内で50%の透過率を示す波長のうち最長波長である。上記50%の透過率を示す波長は、上記560nm~700nmの範囲内に1つまたは2つ以上存在してもよく、1つが存在する場合に、当該波長、2つ以上存在する場合に、最長波長が、上記T50%cut off波長となる。上記T50%cut off波長は、600nm以上、610nm以上、620nm以上、630nm以上または640nm以上の範囲内および/または670nm以下、660nm以下、650nm以下または640nm以下の範囲内でさらに調節することができる。
【0136】
上記光学フィルターの、425nm~465nmの範囲内における平均透過率の下限は、70%または75%程度であってもよく、その上限は、100%、95%、90%、85%または80%程度であってもよい。上記透過率は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0137】
上記光学フィルターの、466nm~480nmの範囲内における平均透過率の下限は、70%、75%、80%または85%程度であってもよく、その上限は、100%、95%または90%程度であってもよい。上記透過率は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0138】
上記光学フィルターの、481nm~560nmの範囲内における平均透過率の下限は、70%、75%、80%、85%または90%程度であってもよく、その上限は、100%、95%または90%程度であってもよい。上記透過率は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0139】
上記光学フィルターの、850nm~1050nmの範囲内における平均透過率の下限は、0%、5%、15%、20%または25%程度であってもよく、その上限は、30%、25%、20%、15%、10%、5%または1%程度であってもよい。上記透過率は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0140】
上記光学フィルターの950nmにおける透過率の下限は、0%、5%、15%、20%または25%程度であってもよく、その上限は、30%、25%、20%、15%、10%、5%、1%または0.5%程度であってもよい。上記透過率は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0141】
上記光学フィルターの1050nmにおける透過率の下限は、0%、5%または15%程度であってもよく、その上限は、20%、15%、10%、5%、1%または0.5%程度であってもよい。上記透過率は、上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であるか、または上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満であるか、または上述した下限のうち任意のいずれか1つの下限以上または超過であり、かつ上述した上限のうち任意のいずれか1つの上限以下または未満の範囲内であってもよい。
【0142】
本出願の光学フィルターは、上記光学特性のうちいずれか1つ、2つ以上の組み合わせを示すことができ、好適には、上述した光学特性を全部満たすことができる。
【0143】
本出願は、また、上記光学フィルターを含む撮像装置に関する。この際、上記撮像装置の構成方法や上記光学フィルターの適用方法は、特に制限されず、公知の構成と適用方法を適用することができる。
【0144】
また、本出願の光学フィルターの用途が上記撮像装置に制限されるものではなく、その他近赤外線カットが必要な多様な用途(例えば、PDPなどのディスプレイ装置など)に適用することができる。
【発明の効果】
【0145】
本出願は、光学フィルターおよびその用途を提供することができる。本出願では、不要な波長領域の光(例えば、紫外線と赤外線領域の光)を効果的に遮断しながらも、必要な波長領域(例えば、可視光領域)では高透過率を確保することができる光学フィルターおよびその用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
図1~
図3は、本出願の光学フィルターの例示的な構造を示す図である。
図4は、実施例8の光学フィルターの透過率特性を示す図である。
図5は、実施例9の光学フィルターの透過率特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0147】
以下、実施例に基づいて本出願の光学フィルターを具体的に説明するが、本出願の光学フィルターの範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0148】
1.透過率の評価
透過率は、測定対象を横および縦がそれぞれ10mmおよび10mmとなるように裁断して得た試験片に対して分光光度計(製造社:Perkinelmer社、製品名:Lambda750分光光度計)を用いて測定した。透過率は、上記装置のマニュアルによって波長別および入射角別に測定した。試験片を分光光度計の測定ビームとディテクターの間の直線上に位置させ、測定ビームの入射角を0度から40度まで変更しながら透過率を確認した。特に明記しない限り、本実施例においていう透過率の結果は、上記入射角が0度である場合の結果である。入射角0度は、試験片の表面法線方向に実質的に平行な方向である。
【0149】
透過率において所定波長領域内における平均透過率または平均反射率は、上記波長領域内で最短波長から波長を1nmずつ増加させながら、各波長別の透過率を測定した後に測定された透過率の算術平均を求めた結果であり、最小透過率は、上記1nmずつ波長を増加させながら測定した透過率のうち最小透過率である。例えば、350nm~360nmの波長範囲内の平均透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率の算術平均であり、350nm~360nmの波長範囲内の最小透過率は、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nmおよび360nmの波長で測定した透過率のうち最も低い透過率である。
【0150】
2.銅含有量の評価
ガラス基板の銅含有量は、X線蛍光分析装置(WD XRF、Wavelength Dispersive X-Ray Fluorescence Spectrometry)を用いて確認した。上記装置を用いて試験片(ガラス基板)にX線を照射すると、上記試験片の個別元素から特徴的な二次X線が発生し、上記装置は、上記二次X線を各元素の波長によって検出する。上記二次X線の強度は、元素含有量に比例し、したがって、上記元素の波長によって測定された二次X線の強度を用いて定量分析を行うことができる。
【0151】
3.屈折率の評価
屈折率は、ATAGO社の測定装置(ATAGO、NAR-4T)を用いて波長520nmに対して測定した。
【0152】
製造例1.吸収層材料Aの製造
吸収層材料Aは、色素およびバインダー樹脂(ポリアクリレート系、Sumitomo社、Sumipex)を溶媒(MEK、Methyl Ethyl Ketone)に分散させて製造した。上記過程でバインダー樹脂、色素および溶媒の混合割合は、重量比(バインダー樹脂:色素:溶媒)で1.54:0.2:8.44程度とした。
【0153】
上記色素としては、色素1(IRA1032、Exciton、ジインモニウム系化合物、吸収極大波長範囲:900nm~1200nm)、色素2(IRA705、Exciton、スクアリリウム系化合物、吸収極大波長範囲:700nm~800nm)および色素3(ADA3232、HW.SANDS、吸収極大波長範囲:300nm~400nm)の混合物を用いた。上記色素の混合物は、上記3種の色素を3.8:3.3:2.9の重量比(色素1:色素2:色素3)で含む。
【0154】
上記吸収層材料Aを適正な方法でコートし、熱処理(約135℃で約2時間)して、吸収層を形成することができる。
【0155】
例えば、上記吸収層材料Aを用いて形成された吸収層の屈折率は、上記吸収層材料Aを基板(ガラス基板)にスピンコーターでコートし、135℃で約2時間硬化させて、厚さが約3.5μm程度の吸収層を形成し、上記吸収層に対して上記に示した方法によって評価することができる。このような方法で評価した屈折率は、約1.53程度であった。
【0156】
製造例2.吸収層材料Bの製造
吸収層材料Bは、上記製造例1の色素1とバインダー樹脂を溶媒(MEK、Methyl Ethyl Ketone)に分散させて製造することができる。上記でバインダー樹脂としては、シロキサンオリゴマー(Siloxane Oligomer)(3-glycidoxypropyltrimethoxysilaneの部分加水分解縮合物)を用いた。上記で吸収剤とバインダー樹脂および溶媒の混合割合は、重量比(色素:バインダー樹脂:溶媒)で1:75:24程度とした。
【0157】
上記吸収層材料Bをコートし、熱処理(約140℃で約2時間)して、吸収層を形成することができる。
【0158】
例えば、上記吸収層材料Bで形成した吸収層の屈折率は、上記材料Bをガラス基板にスピンコーターでコートし、140℃で2時間維持して、厚さが約5μm程度の吸収層を形成し、上記吸収層に対して評価した。このような方法で評価した屈折率は、約1.45程度である。
【0159】
製造例3.吸収層材料Cの製造
吸収層材料Cは、色素とバインダー樹脂(Polyimide)を溶媒(GBL、gamma butyrolactone)に分散させて製造した。上記で色素とバインダー樹脂および溶媒の混合割合は、重量比(色素:バインダー樹脂:溶媒)で0.1:70:29.9程度とした。なお、上記色素としては、製造例1の色素2と色素3を4.9:5.1の重量比(色素2:色素3)で混合した混合物を用いた。
【0160】
上記吸収層材料Cを適正な方法でコートし、熱処理(約140℃で約2時間)して、吸収層を形成することができる。
【0161】
上記吸収層材料Cをガラス基板にスピンコーターでコートし、140℃で2時間維持して、厚さが約6μm程度の吸収層を形成し、上記吸収層に対して屈折率を評価した。このような方法で評価した屈折率は、約1.62程度である。
【0162】
実施例1.
樹脂層(透過率制御層)を屈折率が約1.52程度のガラス基板(厚さ:約0.21mm)の両面に形成した。上記樹脂層(透過率制御層)は、溶媒(Dibutyl ether)および無機ポリシラザン(製造社:三和化学、製品名:1035)を9.5:0.5の重量比(溶媒:無機ポリシラザン)で混合したコーティング液を用いて製造した。上記コーティング液を上記ガラス基板にスピンコートし、140℃で2時間維持して、厚さが約20nm程度の樹脂層(透過率制御層)を形成した。上記樹脂層(透過率制御層)の屈折率は、約1.45程度であった。
【0163】
上記のような樹脂層(透過率制御層)を上記ガラス基板の両面に形成した。
【0164】
実施例2.
ガラス基板としては、実施例1と同じガラス基板を適用し、上記ガラス基板の一面に樹脂層(透過率制御層)を形成した。上記樹脂層(透過率制御層)は、溶媒(Dibutyl ether)と有機ポリシラザン(製造社:三和化学、製品名:1001-5)を9.5:0.5の重量比(溶媒:有機ポリシラザン)で混合したコーティング液を用いて製造した。上記コーティング液をガラス基板にスピンコートし、140℃で約2時間維持して、厚さが約76nm程度の上記樹脂層(透過率制御層)を形成した。上記樹脂層(透過率制御層)の屈折率は、約1.45程度であった。
【0165】
実施例3.
実施例2のコーティング液を用いてガラス基板の両面に樹脂層(透過率制御層)を形成した。この際、樹脂層の形成方法は、実施例2と同一であり、また、ガラス基板として、実施例2と同じガラス基板を用いた。
【0166】
実施例1~3に対する評価結果を下記表1に整理して記載した。下記表1で、Tminは、当該波長領域における最小透過率(単位:%)であり、Taveは、当該波長領域における平均透過率(単位:%)である。また、表1で、屈折率は、各実施例で形成された樹脂層(透過率制御層)の屈折率であり、Refは、実施例1~3で用いたガラス基板自体の透過率である。
【0167】
【0168】
表1の結果より、各実施例の透過率Tmin、Taveの増減率(単位:%)を確認し、下記表2に整理して記載した。上記増減率は、ガラス基板の各透過率RefをT1といい、樹脂層(透過率制御層)が形成されたガラス基板の各透過率をT2というとき、式100×(T2-T1)/T1によって計算した。
【0169】
【0170】
表1および表2の結果を見ると、実施例1~3において樹脂層(透過率制御層)によりガラス基板自体の透過率に比べて高い透過率が確保されることが分かる。
【0171】
実施例4.
透明基板としては、赤外線に対して吸収特性を有するリン酸塩系赤外線吸収ガラス基板(HOYA社、厚さ:約0.21mm)を用いた。上記赤外線吸収ガラス基板に対して測定された銅含有量は、約2.89重量%であった。上記ガラス基板の一面に実施例2において用いたものと同じコーティング液を用いて樹脂層(透過率制御層)を形成した。この際、樹脂層は、実施例2と同じ方法で形成し、厚さも同一に調節した。
【0172】
実施例5
実施例4において用いたものと同じ透明基板の両面に実施例3と同じ方法で樹脂層(透過率制御層)を形成した。
【0173】
実施例4および5に対する評価結果を下記表3に整理して記載した。下記表3で、Tminは、当該波長領域における最小透過率(単位:%)であり、Taveは、当該波長領域における平均透過率(単位:%)である。また、下記表3で、Refは、実施例7および8で用いたガラス基板自体の透過率である。また、下記表3で、増減率は、ガラス基板の各透過率RefをT1といい、樹脂層が形成されたガラス基板の各透過率をT2というとき、式100×(T2-T1)/T1によって計算した結果であり、その単位は、%である。
【0174】
【0175】
実施例6.
ガラス基板としては、赤外線に対して吸収特性を有するリン酸塩系赤外線吸収ガラス基板(HOYA社、厚さ:約0.21mm、屈折率:約1.57、銅含有量:9.5重量%)を用いた。上記樹脂層(透過率制御層)は、実施例2において用いたものと同じコーティング液を用いて製造した。上記樹脂層材料であるコーティング液で形成された樹脂層の屈折率も、実施例2と同一に評価し、その結果、樹脂層の屈折率は、約1.45程度であった。上記コーティング液を上記ガラス基板の一面にスピンコーティング法でコートし、140℃で約2時間維持して、厚さが約76nm程度の樹脂層を形成した。
【0176】
実施例7.
樹脂層の形成時に、スピンコーティング後、コーティング液の維持温度を90℃とし、樹脂層を約70nm程度の厚さで形成したことを除いて、実施例6と同一に樹脂層を形成した。
【0177】
実施例6および7に対する評価結果を下記表4に整理して記載した。下記表4で、Tminは、当該波長領域における最小透過率(単位:%)であり、Taveは、当該波長領域における平均透過率(単位:%)である。また、表4で、Refは、実施例9および10において用いたガラス基板自体の透過率である。また、表4で、増減率は、ガラス基板の各透過率RefをT1といい、樹脂層が形成されたガラス基板の各透過率をT2というとき、式100×(T2-T1)/T1によって計算した結果であり、その単位は、%である。
【0178】
【0179】
表4の結果より、実施例6および7は、同じ種類の材料で樹脂層(透過率制御層)を形成したにもかかわらず、硬化温度が140℃レベルの実施例6が、硬化温度が90℃レベルの実施例7に比べて優れた効果を示した。このような結果は、上記硬化温度の差によって樹脂層の硬化度の差が発生し、その差によって、実施例7の場合、実施例6と異なる屈折率の層が形成されたためと判断される。
【0180】
実施例8
ガラス基板としては、実施例2と同じガラス基板を適用し、上記ガラス基板の一面に樹脂層(透過率制御層)を形成した。この際、樹脂層は、実施例2において適用したコーティング液を用いて形成した。上記樹脂層の形成方法と形成厚さは、実施例2の場合と同様であった。
【0181】
次に、上記ガラス基板の上記樹脂層(透過率制御層)が形成されていない面に粘着層と吸収層を順次形成して、光学フィルターを製造した。
【0182】
上記粘着層は、公知のアクリル系粘着剤を用いて約170nm程度の厚さで形成した。この粘着層の屈折率は、約1.60レベルであった。上記粘着層を形成する粘着剤をガラス基板にスピンコートし、140℃で30分程度維持して、粘着層を形成した。次に、上記粘着層上に製造例1の吸収層材料Aをスピンコートし、135℃で約2時間維持して、厚さが約3.5μm程度の吸収層を形成した。
【0183】
図4は、上記光学フィルターの透過率特性を示す図である。(同図で、x軸が波長(nm)であり、y軸が透過率(%)である)。同図で点線で示された部分は、樹脂層(高透過層)が形成される前の光学フィルターに対する結果であり、実線で示された部分は、上記実施例8の光学フィルターに対する結果である。
【0184】
表5は、上記光学フィルターに対する評価結果であり、表5で、Tminは、当該波長領域における最小透過率(単位:%)であり、Taveは、当該波長領域における平均透過率(単位:%)である。また、下記表5で、Refは、樹脂層(透過率制御層)が形成されていない、光学フィルター(すなわち、吸収層/粘着層/ガラス基板の構造のフィルター)に対する値である。表5で、T50%cut onは、350nm~425nmの波長領域内で50%の透過率を示す最短波長(単位:nm)であり、T50%cut offは、600nm~900nmの波長領域内で50%の透過率を示す最長波長(単位:nm)であり、T10%cut offは、600nm~900nmの波長領域内で10%の透過率を示す最長波長(単位:nm)である。
【0185】
【0186】
実施例9
ガラス基板としては、実施例2と同じガラス基板を適用した。上記ガラス基板の一面に製造例2の材料を用いた第1吸収層、製造例3の材料を用いた第2吸収層および樹脂層(透過率制御層)を順次形成して、光学フィルターを製造した(すなわち、ガラス基板/第1吸収層/第2吸収層/樹脂層の構造)。
【0187】
第1吸収層は、製造例2の吸収層材料を上記ガラス基板上にスピンコートし、140℃で約2時間維持して、厚さが約5μm程度となるように形成し、第2吸収層は、上記第1吸収層上に製造例3の吸収層材料をスピンコートし、140℃で約2時間維持して、厚さが約6μm程度となるように形成した。
【0188】
次に、上記第2吸収層上に実施例2と同じ方法で同一厚さの樹脂層(透過率制御層)を形成した。
【0189】
図5は、上記製造された光学フィルターの透過率特性を示す図である(同図でx軸が波長(nm)であり、y軸が透過率(%)である)。同図で点線で示された部分は、樹脂層(透過率制御層)が形成される前の光学フィルターに対する結果であり、実線で示された部分は、上記実施例9の光学フィルターに対する結果である。
【0190】
下記表6は、上記光学フィルターに対する評価結果であり、下記表6で、Tminは、当該波長領域における最小透過率(単位:%)であり、Taveは、当該波長領域における平均透過率(単位:%)である。また、下記表6で、Refは、樹脂層(透過率制御層)が形成されていない、光学フィルター(すなわち、第2吸収層/第1吸収層/ガラス基板の構造のフィルター)に対する値である。
【0191】
下記表6で、T50%cut onは、350nm~425nmの波長領域内で50%の透過率を示す最短波長(単位:nm)であり、T50%cut offは、600nm~900nmの波長領域内で50%の透過率を示す最長波長(単位:nm)であり、T10%cut offは、600nm~900nmの波長領域内で10%の透過率を示す最長波長(単位:nm)である。
【0192】
【0193】
実施例10
実施例9の光学フィルターの両面に誘電体多層膜を形成して、光学フィルターを製造した。誘電体多層膜は、イオンビームアシスト蒸着(Ion-beam assisted deposition)方法でサブ層を蒸着して形成した。蒸着時に、真空度および温度条件は、それぞれ5.0E-5 Torrおよび120℃とし、IBS(Ion Beam Sputtering)ソース(source)電圧350Vおよび電流850mAの条件に設定した。上記方法で高屈折層としてのTiO2層(屈折率約2.61)と低屈折層としてのSiO2層(屈折率約1.46)を交互に形成して、誘電体多層膜を形成した。
【0194】
下記表7は、光学フィルターの樹脂層(透過率制御層)の表面に形成された誘電体多層膜の各サブ層の厚さを表示し、表8は、光学フィルターのガラス基板の上記樹脂層(透過率制御層)が形成された面とは反対側の表面に形成された各サブ層の厚さを表示する。
【0195】
表7および表8で、番号1は、樹脂層(透過率制御層)またはガラス基板上に最初に形成される層である。
【0196】
【0197】
【0198】
下記表9は、上記光学フィルターに対する評価結果であり、下記表9で、Tminは、当該波長領域における最小透過率(単位:%)であり、Taveは、当該波長領域における平均透過率(単位:%)である。また、下記表9で、Refは、樹脂層(透過率制御層)が形成されていない、光学フィルター(すなわち、誘電体多層膜/第2吸収層/第1吸収層/ガラス基板/誘電体多層膜の構造のフィルター)に対する値である。
【0199】
表9で、T50%cut onは、350nm~425nmの波長領域内で50%の透過率を示す最短波長(単位:nm)であり、T50%cut offは、600nm~900nmの波長領域内で50%の透過率を示す最長波長(単位:nm)であり、T10%cut offは、600nm~900nmの波長領域内で10%の透過率を示す最長波長(単位:nm)である。
【0200】
【0201】
実施例11.
実施例6と同じ方法でガラス基板の一面に樹脂層(透過率制御層)を形成した。上記ガラス基板と樹脂層を形成する材料としては、実施例9と同じものを用いた。ただし、上記樹脂層を形成するための上記コーティング液のスピンコーティング時に、回転速度を約1500rpmに制御して、上記樹脂層の厚さが約75.9nm程度となるようにした。上記樹脂層の厚さを変更したことを除いて、樹脂層の形成方法は、実施例6と同一である。
【0202】
実施例12.
実施例6と同じ方法でガラス基板の一面に樹脂層(透過率制御層)を形成した。上記ガラス基板と樹脂層を形成する材料としては、実施例6と同じものを用いた。ただし、上記樹脂層を形成するための上記コーティング液のスピンコーティング時に、回転速度を約1050rpmに制御して、上記樹脂層の厚さが約121nm程度となるようにした。
【0203】
実施例13.
実施例6と同じ方法でガラス基板の一面に樹脂層(透過率制御層)を形成した。上記ガラス基板と樹脂層を形成する材料としては、実施例6と同じものを用いた。ただし、上記樹脂層を形成するための上記コーティング液のスピンコーティング時に、回転速度を約2000rpmに制御した。このような場合に、上記樹脂層が非常に薄く形成され、厚さの測定が不可能であった。
【0204】
下記表10は、上記実施例11~13に対する評価結果であり、Tminは、当該波長領域における最小透過率(単位:%)であり、Taveは、当該波長領域における平均透過率(単位:%)である。また、下記表10で、Refは、樹脂層(透過率制御層)が形成されていない、ガラス基板に対する値である。
【0205】
【0206】
実施例14.
実施例6において用いたものと同じガラス基板の一面に樹脂層(透過率制御層)を形成した。上記樹脂層は、DBE(Dibutyl ether)および無機ポリシラザン(製造社:DNF、製品名:DHC-19D)を8.1:1.9の重量比(DBE: 無機ポリシラザン)で混合したコーティング液をスピンコートし、140℃で約2時間維持して形成した。上記スピンコーティング時には、回転速度を約1700rpmに制御して、上記樹脂層の厚さが約29.6nm程度となるようにした。
【0207】
実施例15.
実施例6において用いたものと同じガラス基板の一面に樹脂層(透過率制御層)を形成した。上記樹脂層を形成する材料としては、実施例14と同じものを用いた。上記樹脂層を形成するための上記コーティング液のスピンコーティング時に回転速度を約1800rpmに制御して、上記樹脂層の厚さが約27.1nm程度になるようにした。上記樹脂層の厚さを変更したことを除いて、樹脂層の形成方法は、実施例14と同一である。
【0208】
実施例16.
実施例6において用いたものと同じガラス基板の一面に樹脂層(透過率制御層)を形成した。上記樹脂層を形成する材料としては、実施例14と同じものを用いた。ただし、上記樹脂層を形成するための上記コーティング液のスピンコーティング時に、回転速度を約2000rpmに制御して、上記樹脂層の厚さが約25.1nm程度となるようにした。上記樹脂層の厚さを変更したことを除いて、樹脂層の形成方法は、実施例14と同一である。
【0209】
表11は、上記実施例14~16に対する結果である。表11で、Tminは、当該波長領域における最小透過率(単位:%)であり、Taveは、当該波長領域における平均透過率(単位:%)である。また、下記表11で、Refは、樹脂層(透過率制御層)が形成されていない、ガラス基板に対する値である。
【0210】
【0211】
実施例17.
実施例6において用いたものと同じガラス基板の一面に樹脂層(透過率制御層)を形成した。上記樹脂層を形成する材料としては、実施例1と同じものを用いた。ただし、上記樹脂層を形成するための上記コーティング液のスピンコーティング時に、回転速度を約1500rpmに制御した。上記樹脂層のスピンコーティング時の回転速度を変更したことを除いて、樹脂層の形成方法は、実施例1と同一である。
【0212】
実施例18.
実施例6において用いたものと同じガラス基板の一面に樹脂層(透過率制御層)を形成した。上記樹脂層を形成する材料としては、実施例1と同じものを用いた。ただし、上記樹脂層を形成するための上記コーティング液のスピンコーティング時に、回転速度を約1700rpmに制御した。上記樹脂層のスピンコーティング時の回転速度を変更したことを除いて、樹脂層の形成方法は、実施例1と同一である。
【0213】
表12は、上記実施例17および18に対する評価結果である。表12で、Tminは、当該波長領域における最小透過率(単位:%)であり、Taveは、当該波長領域における平均透過率(単位:%)である。また、下記表12で、Refは、樹脂層(透過率制御層)が形成されていない、ガラス基板に対する値である。
【0214】
【0215】
実施例19
ガラス基板としては、実施例2と同じガラス基板を適用し、上記ガラス基板の一面に樹脂層(透過率制御層)を形成した。この際、樹脂層は、実施例2において適用したコーティング液を用いて形成した。上記樹脂層の形成方法と形成厚さは、実施例2の場合と同様であった。ただし、コーティング液のスピンコーティング時に、回転速度を約1050rpmに調節して、最終樹脂層の厚さが121nm程度となるように調整した。次に、上記ガラス基板の上記樹脂層(透過率制御層)が形成されていない面に接着層と吸収層を順次形成して、光学フィルターを製造した。上記接着層と吸収層は、実施例8と同じ方法で形成した。
【0216】
実施例19に対する評価結果を下記表13に整理して記載した。下記表13で、Tminは、当該波長領域における最小透過率(単位:%)であり、Taveは、当該波長領域における平均透過率(単位:%)である。また、下記表13で、Refは、樹脂層(透過率制御層)が形成されていない光学フィルターに対する透過率である。
【0217】
また、下記表13で、括弧内の数値は、Ref対比増減率(単位:%)である。
【0218】
【0219】
実施例20
実施例9と同様の方法でガラス基板/第1吸収層/第2吸収層/樹脂層の構造の光学フィルターを製造した。上記光学フィルターは、実施例9と同じ材料を用いて同じ方法で製造し、ただし、樹脂層の形成のためのコーティング液のスピンコーティング時に回転速度を約1050rpmに調節して、最終樹脂層の厚さが121nm程度となるように調整した。
【0220】
実施例21~28
樹脂層の形成時に、スピンコーティングの回転速度と樹脂層の厚さを下記表14のように変更したことを除いて、実施例20と同一に光学フィルターを形成した。実施例28の場合、樹脂層が非常に薄く形成され、正確な厚さを測定しにくかった。
【0221】
【0222】
上記実施例20~28に対する評価結果を下記表15に整理して記載した。下記表15で、Tminは、当該波長領域における最小透過率(単位:%)であり、Taveは、当該波長領域における平均透過率(単位:%)である。また、下記表15で、Refは、樹脂層(透過率制御層)が形成されていない光学フィルターに対する透過率である。
【0223】
【0224】
表15の結果をRef対比増減率(単位:%)に変換した結果は、下記表16の通りである。
【0225】
【0226】
実施例29
実施例20と同様の方法で光学フィルターを形成し、かつ光学フィルターの積層順序を変更して、光学フィルターを製造した。すなわち、ガラス基板/第1吸収層/第2吸収層/樹脂層の構造の光学フィルターである実施例20の構造を変更して、樹脂層/ガラス基板/第1吸収層/第2吸収層の構造で光学フィルターを形成した。積層順序を上記のように変更したことを除いて、各層の形成のための材料と形成方法は、実施例20と同一にした。
【0227】
実施例30~37
樹脂層の形成時に、スピンコーティングの回転速度と樹脂層の厚さを下記表17のように変更したことを除いて、実施例29と同一に光学フィルターを形成した。実施例37の場合、樹脂層が非常に薄く形成され、正確な厚さを測定しにくかった。
【0228】
【0229】
実施例29~37に対する評価結果を下記表18に整理して記載した。下記表18で、Tminは、当該波長領域における最小透過率(単位:%)であり、Taveは、当該波長領域における平均透過率(単位:%)である。また、下記表18で、Refは、樹脂層(透過率制御層)が形成されていない光学フィルターに対する透過率である。
【0230】
【0231】
表18の結果をRef対比増減率(単位:%)に変換した結果は、下記表19の通りである。
【0232】