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特開2024-108182光学シートおよび光学シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108182
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】光学シートおよび光学シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/128 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
G02B5/128
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012398
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】523033888
【氏名又は名称】池上 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】池上 仁
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042EA07
2H042EA12
2H042EA14
2H042EA15
(57)【要約】
【課題】再帰反射性や蓄光性等を有する樹脂フィルムを備える光学シートにおいて、樹脂フィルムが取り付けられる基材をユーザが自由に選択することが可能となる光学シートを提供する。
【解決手段】光学シート1は、剥離紙または剥離フィルムからなる剥離部材2と、樹脂製の樹脂部7を有し剥離部材2と重なる樹脂フィルム4とを備えている。樹脂フィルム4には、再帰反射性を有する透明な複数のビーズ6が含まれており、ビーズ6の少なくとも一部分が樹脂部7に埋まっている。樹脂部7は、剥離部材2上に樹脂フィルム4を成膜可能な樹脂であって、剥離部材2から樹脂フィルム4を剥離可能な樹脂で形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離紙または剥離フィルムからなる剥離部材と、樹脂製の樹脂部を有し前記剥離部材と重なる樹脂フィルムとを備え、
前記樹脂フィルムには、再帰反射性を有する透明な複数のビーズ、蓄光性を有する複数の蓄光性粒子、および、紫外線が当たると色が変わる光変色性を有する複数の光変色性粒子の少なくともいずれかが含まれ、
前記樹脂フィルムに含まれる前記ビーズ、前記蓄光性粒子および前記光変色性粒子の少なくともいずれかの少なくとも一部分は、前記樹脂部に埋まっており、
前記樹脂部は、前記剥離部材上に前記樹脂フィルムを成膜可能な樹脂であって、前記剥離部材から前記樹脂フィルムを剥離可能な樹脂で形成されていることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記剥離部材では、シリコーン系の剥離剤が使用され、
前記樹脂部は、アクリル樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1記載の光学シート。
【請求項3】
剥離紙または剥離フィルムからなり、前記剥離部材との間に前記樹脂フィルムを挟むように前記樹脂フィルムと重なる第2剥離部材を備えることを特徴とする請求項1または2記載の光学シート。
【請求項4】
前記樹脂部は、透明な紫外線硬化型樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光学シート。
【請求項5】
前記剥離部材は、透明な前記剥離フィルムであることを特徴とする請求項1または2記載の光学シート。
【請求項6】
前記樹脂部は、紫外線硬化型樹脂で形成されていることを特徴とする請求項3記載の光学シート。
【請求項7】
請求項6記載の光学シートの製造方法であって、
長尺状の前記剥離部材がロール状に巻回された第1繰出しロールから繰り出される前記剥離部材の上に、前記ビーズ、前記蓄光性粒子および前記光変色性粒子の少なくともいずれかが含まれる硬化前の前記紫外線硬化型樹脂を一定の厚さで塗布する樹脂塗布工程と、
前記樹脂塗布工程後に、長尺状の前記第2剥離部材がロール状に巻回された第2繰出しロールから繰り出される前記第2剥離部材を硬化前の前記紫外線硬化型樹脂の上に載せながら、積層される前記剥離部材、前記紫外線硬化型樹脂および前記第2剥離部材をローラ対の間を通過させて、前記剥離部材および前記第2剥離部材と、前記紫外線硬化型樹脂とを密着させる第2剥離部材配置工程と、
前記第2剥離部材配置工程後に、前記第2剥離部材の上側から紫外線を照射し、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させて前記樹脂フィルムを形成する紫外線照射工程とを備えることを特徴とする光学シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰反射性や蓄光性等を有する樹脂フィルムを備える光学シートに関する。また、本発明は、かかる光学シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再帰反射性を有する再帰反射シートが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の再帰反射シートは、粘着層を有する基材(支持体)と、粘着層によって基材の表面に固定される多数のビーズとを備えている。また、従来、蓄光性を有する蓄光シートが知られている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の蓄光シートは、ゴムシート基材と、ゴムシート基材の表面に形成される蓄光層とを備えている。蓄光層には、多数の蓄光材粉末が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-35711号公報
【特許文献2】特開2005-186384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の再帰反射シートでは、基材の表面に多数のビーズが固定されているため、この再帰反射シートを使用するユーザは、ビーズが取り付けられる基材を自由に選択することができない。また、特許文献2に記載の蓄光シートでは、ゴムシート基材の表面に蓄光層が形成されているため、この蓄光シートを使用するユーザは、蓄光層が取り付けられる基材を自由に選択することができない。
【0005】
そこで、本発明の課題は、再帰反射性や蓄光性等を有する樹脂フィルムを備える光学シートにおいて、樹脂フィルムが取り付けられる基材をユーザが自由に選択することが可能となる光学シートを提供することにある。また、本発明の課題は、かかる光学シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の光学シートは、剥離紙または剥離フィルムからなる剥離部材と、樹脂製の樹脂部を有し剥離部材と重なる樹脂フィルムとを備え、樹脂フィルムには、再帰反射性を有する透明な複数のビーズ、蓄光性を有する複数の蓄光性粒子、および、紫外線が当たると色が変わる光変色性を有する複数の光変色性粒子の少なくともいずれかが含まれ、樹脂フィルムに含まれるビーズ、蓄光性粒子および光変色性粒子の少なくともいずれかの少なくとも一部分は、樹脂部に埋まっており、樹脂部は、剥離部材上に樹脂フィルムを成膜可能な樹脂であって、剥離部材から樹脂フィルムを剥離可能な樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の光学シートでは、再帰反射性を有する透明な複数のビーズ、蓄光性を有する複数の蓄光性粒子、および、紫外線が当たると色が変わる光変色性を有する複数の光変色性粒子の少なくともいずれかが含まれる樹脂フィルムが剥離部材と重なっており、樹脂フィルムの樹脂部に、樹脂フィルムに含まれるビーズ、蓄光性粒子および光変色性粒子の少なくともいずれかの少なくとも一部分が埋まっている。また、本発明では、樹脂部は、剥離部材上に樹脂フィルムを成膜可能な樹脂であって、剥離部材から樹脂フィルムを剥離可能な樹脂で形成されている。そのため、本発明では、ユーザは、再帰反射性、蓄光性および光変色性の少なくともいずれかの特性を有する樹脂フィルムを剥離部材から剥離して任意の基材に取り付けることが可能になる。したがって、本発明では、再帰反射性や蓄光性等を有する樹脂フィルムが取り付けられる基材をユーザが自由に選択することが可能になる。
【0008】
本発明において、たとえば、剥離部材では、シリコーン系の剥離剤が使用され、樹脂部は、アクリル樹脂で形成されている。
【0009】
本発明において、光学シートは、剥離紙または剥離フィルムからなり、剥離部材との間に樹脂フィルムを挟むように樹脂フィルムと重なる第2剥離部材を備えることが好ましい。このように構成すると、使用前の樹脂フィルムの両側に剥離部材および第2剥離部材が配置されているため、使用前の樹脂フィルムを剥離部材および第2剥離部材によって適切に保護することが可能になる。
【0010】
本発明において、樹脂部は、透明な紫外線硬化型樹脂で形成されていることが好ましい。このように構成すると、樹脂部が紫外線硬化型樹脂で形成されているため、剥離部材上に樹脂フィルムを成膜しやすくなる。また、このように構成すると、樹脂部が透明な樹脂で形成されているため、ビーズの再帰反射機能や蓄光性粒子の蓄光機構や光変色性粒子の光変色機能を高めることが可能になる。
【0011】
本発明において、たとえば、剥離部材は、透明な剥離フィルムである。この場合には、樹脂フィルムを剥離部材から剥離せずに任意の基材に取り付けて使用することも可能になる。すなわち、剥離部材と重なっている状態の樹脂フィルムを任意の基材に取り付けて使用することも可能になる。
【0012】
本発明において、樹脂フィルムは、紫外線硬化型樹脂で形成されていることが好ましい。このように構成すると、剥離部材上に樹脂フィルムを成膜しやすくなる。
【0013】
また、この場合には、光学シートは、たとえば、長尺状の剥離部材がロール状に巻回された第1繰出しロールから繰り出される剥離部材の上に、ビーズ、蓄光性粒子および光変色性粒子の少なくともいずれかが含まれる硬化前の紫外線硬化型樹脂を一定の厚さで塗布する樹脂塗布工程と、樹脂塗布工程後に、長尺状の第2剥離部材がロール状に巻回された第2繰出しロールから繰り出される第2剥離部材を硬化前の紫外線硬化型樹脂の上に載せながら、積層される剥離部材、紫外線硬化型樹脂および第2剥離部材をローラ対の間を通過させて、剥離部材および第2剥離部材と、紫外線硬化型樹脂とを密着させる第2剥離部材配置工程と、第2剥離部材配置工程後に、第2剥離部材の上側から紫外線を照射し、紫外線硬化型樹脂を硬化させて樹脂フィルムを形成する紫外線照射工程とを備える光学シートの製造方法によって製造される。
【0014】
この製造方法では、第2剥離部材配置工程において、剥離部材および第2剥離部材と紫外線硬化型樹脂とを密着させているため、第2剥離部材配置工程後の紫外線照射工程において、剥離部材および第2剥離部材と紫外線硬化型樹脂とを密着させた状態で、第2剥離部材の上側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させることが可能になる。したがって、たとえば、窒素ガスが充填された空間内で紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射しなくても、紫外線硬化型樹脂を硬化させるときの酸素阻害の発生を防止することが可能になる。その結果、光学シートの製造装置の構成を簡素化することが可能になる。
【0015】
また、この製造方法では、第2剥離部材配置工程において、剥離部材および第2剥離部材と紫外線硬化型樹脂とが密着するように、積層される剥離部材、紫外線硬化型樹脂および第2剥離部材がローラ対の間を通過するため、樹脂フィルムの両面を滑らかにすることが可能になるとともに、樹脂フィルムに含まれる複数のビーズ、複数の蓄光性粒子および複数の光変色性粒子の少なくともいずれかの、樹脂フィルムの厚さ方向における位置のばらつきを抑制することが可能になる。さらに、この製造方法では、第2剥離部材配置工程において、剥離部材および第2剥離部材と紫外線硬化型樹脂とが密着するように、積層される剥離部材、紫外線硬化型樹脂および第2剥離部材がローラ対の間を通過するため、本願発明者の検討によれば、硬化前の粘度が比較的低い紫外線硬化型樹脂が使用されても、厚さが比較的薄い樹脂フィルムを剥離部材上に成膜することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、再帰反射性や蓄光性等を有する樹脂フィルムを備える光学シートにおいて、樹脂フィルムが取り付けられる基材をユーザが自由に選択することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態にかかる光学シートの拡大断面図である。
図2図1に示す光学シートを製造するための製造装置の概略図である。
図3図2のE部の構成を説明するための拡大図である。
図4】本発明の他の実施の形態にかかる樹脂フィルムの構成を説明するための拡大断面図である。
図5】本発明の他の実施の形態にかかる樹脂フィルムの構成を説明するための拡大断面図である。
図6】本発明の他の実施の形態にかかる光学シートの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(光学シートの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる光学シート1の拡大断面図である。
【0020】
本形態の光学シート1は、剥離紙または剥離フィルムからなる剥離部材(セパレータ)2と、剥離紙または剥離フィルムからなる第2剥離部材としての剥離部材(セパレータ)3と、剥離部材2、3と重なる樹脂フィルム4とを備えている。本形態の剥離部材2、3は、透明な剥離フィルムである。したがって、以下では、剥離部材2を「剥離フィルム2」とし、剥離部材3を「剥離フィルム3」とする。本形態の光学シート1は、2枚の剥離フィルム2、3と1枚の樹脂フィルム4とによって構成されている。
【0021】
剥離フィルム2、3は、樹脂で形成されている。剥離フィルム3は、剥離フィルム2との間に樹脂フィルム4を挟むように樹脂フィルム4と重なっている。すなわち、樹脂フィルム4は、剥離フィルム2と剥離フィルム3との間に挟まれている。剥離フィルム2、3では、シリコーン系の剥離剤が使用されている。すなわち、剥離フィルム2の樹脂フィルム4側の面と、剥離フィルム3の樹脂フィルム4側の面には、シリコーン系の剥離剤がコーティングされている。
【0022】
樹脂フィルム4の厚さは、たとえば、50~100(μm)程度となっている。樹脂フィルム4は、再帰反射性を有する透明な多数のビーズ6と、多数のビーズ6の少なくとも一部分が埋まる樹脂製の樹脂部7とを備えている。すなわち、樹脂フィルム4には、複数のビーズ6が含まれている。本形態の樹脂フィルム4は、非粘着性樹脂フィルムであり、樹脂フィルム4自体は、粘着性を有していない。
【0023】
ビーズ6は、透明なガラスによって形成されるガラスビーズである。ビーズ6は、球状に形成されている。ただし、ビーズ6は、透明な非ガラス質のセラミックスによって形成されていても良いし、透明な樹脂材料によって形成されていても良い。樹脂部7は、剥離フィルム2、3上に樹脂フィルム4を成膜可能な樹脂であって、剥離フィルム2、3から樹脂フィルム4を剥離可能な樹脂で形成されている。本形態の樹脂部7は、透明なアクリル樹脂で形成されている。また、樹脂部7は、紫外線硬化型樹脂で形成されている。樹脂フィルム4に含まれるビーズ6の重量は、たとえば、樹脂部7の重量の50~70%程度となっている。
【0024】
樹脂フィルム4は、剥離フィルム2、3から剥離されて使用される。剥離フィルム2、3から剥離された樹脂フィルム4は、様々な基材(図示省略)に取り付けられる。たとえば、樹脂フィルム4は、両面テープや接着剤等によって、紙製の基材、布製の基材、樹脂製の基材あるいはガラス製の基材等に貼り付けられる。この場合には、樹脂フィルム4は、平面に貼り付けられても良いし、立体的な曲面に貼り付けられても良い。上述のように、樹脂フィルム4の厚さは、たとえば、50~100(μm)程度となっているため、樹脂フィルム4が貼り付けられる曲面が複雑な形状になっていても、樹脂フィルム4を曲面に沿って変形させて貼り付けることが可能である。
【0025】
また、樹脂成形によって所定の樹脂部品を製造する際に、剥離フィルム2、3から剥離された樹脂フィルム4を樹脂部品と一体成形しても良い。たとえば、樹脂部品である自動車のライトのカバーや街灯のカバーを製造する際に、樹脂フィルム4を金型内に配置して樹脂部品と一体成形しても良い。すなわち、自動車のライトのカバーや街灯のカバー等の基材に樹脂フィルム4が取り付けられても良い。また、インモールド成形、真空成形またはトム成形を行うことで、樹脂部品の表面に樹脂フィルム4が取り付けられても良い。
【0026】
なお、本形態では、剥離フィルム2、3が透明であるため、樹脂フィルム4を、剥離フィルム2および剥離フィルム3の少なくともいずれか一方から剥離せずに所定の基材に取り付けて使用することも可能である。すなわち、剥離フィルム2および剥離フィルム3の少なくともいずれか一方と重なっている状態の樹脂フィルム4を所定の基材に取り付けて使用することも可能になる。
【0027】
(光学シートの製造装置および光学シートの製造方法)
図2は、図1に示す光学シート1を製造するための製造装置10の概略図である。図3は、図2のE部の構成を説明するための拡大図である。
【0028】
光学シート1を製造するための製造装置10は、長尺状の剥離フィルム2がロール状に巻回された第1繰出しロール11を回転可能に保持する第1繰出し部12と、長尺状の剥離フィルム3がロール状に巻回された第2繰出しロール13を回転可能に保持する第2繰出し部14と、長尺状の光学シート1がロール状に巻回された巻取りロール15を回転可能に保持する巻取り部16とを備えている。製造装置10では、第1繰出し部12から巻取り部16に向かって剥離フィルム2が連続的に搬送されるとともに、第2繰出し部14から巻取り部16に向かって剥離フィルム3が連続的に搬送される。
【0029】
また、製造装置10は、ビーズ6が含まれる硬化前の紫外線硬化型樹脂Pを剥離フィルム2上に塗布する樹脂塗布装置17と、紫外線硬化型樹脂Pに紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂Pを硬化させる紫外線照射装置18と、剥離フィルム2、3と紫外線硬化型樹脂Pとを密着させるためのローラ対19とを備えている。樹脂塗布装置17は、剥離フィルム2上に塗布された硬化前の紫外線硬化型樹脂Pの厚さを一定にするためのドクターブレード20を備えている。ローラ対19は、上下方向で対向する一対のローラ21によって構成されている。
【0030】
光学シート1を製造するときには、まず、第1繰出しロール11から繰り出される剥離フィルム2の上に、ビーズ6が含まれる硬化前の紫外線硬化型樹脂Pを一定の厚さで塗布する(樹脂塗布工程)。樹脂塗布工程では、樹脂塗布装置17が剥離フィルム2の上に硬化前の紫外線硬化型樹脂Pを塗布する。
【0031】
その後、第2繰出しロール13から繰り出される剥離フィルム3を硬化前の紫外線硬化型樹脂Pの上に載せながら、積層される剥離フィルム2、3および紫外線硬化型樹脂Pをローラ対19の間を通過させて、剥離フィルム2、3と紫外線硬化型樹脂Pとを密着させる(第2剥離部材配置工程)。第2剥離部材配置工程では、積層される剥離フィルム2、3および紫外線硬化型樹脂Pがローラ対19の間を通過するときに、紫外線硬化型樹脂Pの厚さ方向である上下方向における多数のビーズ6の位置のばらつきが抑制されるように、紫外線硬化型樹脂Pが上下方向に圧縮される(図3参照)。
【0032】
図3に示す実施例では、圧縮後の紫外線硬化型樹脂Pの厚みとビーズ6の直径とがほぼ同一になるように、紫外線硬化型樹脂Pが圧縮されてビーズ6の位置のばらつきが抑制されている。そのため、ビーズ6の頂部は、樹脂部7の表面から露出する位に樹脂部7の表面に近接している。したがって、後述のように、紫外線硬化型樹脂Pの樹脂部7が黒色に着色されていても、樹脂フィルム4に入射する光の、ビーズ6内に入射する入射量を大きくすることができる。
【0033】
その後、剥離フィルム3の上側から紫外線を照射し、紫外線硬化型樹脂Pを硬化させて樹脂フィルム4を形成する(紫外線照射工程)。紫外線照射工程では、紫外線照射装置18が紫外線を照射する。紫外線照射工程が終わると、積層された剥離フィルム2、3と樹脂フィルム4とによって光学シート1が形成される。光学シート1は、巻取り部16で巻き取られて巻取りロール15になる。なお、紫外線照射工程の後に、光学シート1を所定の長さに切断しても良い。この場合には、巻取り部16が不要になる。
【0034】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、剥離フィルム2、3と重なる樹脂フィルム4の樹脂部7は、剥離フィルム2、3上に樹脂フィルム4を成膜可能な樹脂であって、剥離フィルム2、3から樹脂フィルム4を剥離可能な樹脂で形成されている。そのため、本形態では、上述のように、樹脂フィルム4を剥離フィルム2、3から剥離して任意の基材に取り付けることが可能になる。したがって、本形態では、樹脂フィルム4が取り付けられる基材をユーザが自由に選択することが可能になる。
【0035】
本形態では、樹脂フィルム4は、剥離フィルム2と剥離フィルム3との間に挟まれており、使用前の樹脂フィルム4の両側に剥離フィルム2、3が配置されている。そのため、本形態では、使用前の樹脂フィルム4を剥離フィルム2、3によって適切に保護することが可能になる。また、本形態では、樹脂部7が紫外線硬化型樹脂で形成されているため、剥離フィルム2上に樹脂フィルム4を成膜しやすくなる。また、本形態では、樹脂部7が透明な樹脂で形成されているため、ビーズ6の再帰反射機能を高めることが可能になる。
【0036】
本形態では、第2剥離部材配置工程において、剥離フィルム2、3と紫外線硬化型樹脂Pとを密着させている。そのため、本形態では、第2剥離部材配置工程後の紫外線照射工程において、剥離フィルム2、3と紫外線硬化型樹脂Pとを密着させた状態で、剥離フィルム3の上側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂Pを硬化させることが可能になる。したがって、本形態では、たとえば、窒素ガスが充填された空間内で紫外線硬化型樹脂Pに紫外線を照射しなくても、紫外線硬化型樹脂Pを硬化させるときの酸素阻害の発生を防止することが可能になる。その結果、本形態では、製造装置10の構成を簡素化することが可能になる。
【0037】
また、本形態では、第2剥離部材配置工程において、剥離フィルム2、3と紫外線硬化型樹脂Pとが密着するように、積層される剥離フィルム2、3および紫外線硬化型樹脂Pがローラ対19の間を通過するため、樹脂フィルム4の両面を滑らかにすることが可能になる。さらに、本形態では、第2剥離部材配置工程において、剥離フィルム2、3と紫外線硬化型樹脂Pとが密着するように、積層される剥離フィルム2、3および紫外線硬化型樹脂Pがローラ対19の間を通過するため、本願発明者の検討によれば、硬化前の粘度が比較的低い紫外線硬化型樹脂Pが使用されても、厚さが比較的薄い樹脂フィルム4を剥離フィルム2に成膜することが可能になる。
【0038】
また、本形態では、第2剥離部材配置工程において、剥離フィルム2、3と紫外線硬化型樹脂Pとが密着するように、積層される剥離フィルム2、3および紫外線硬化型樹脂Pがローラ対19の間を通過するため、上述のように、積層される剥離フィルム2、3および紫外線硬化型樹脂Pがローラ対19の間を通過するときに、紫外線硬化型樹脂Pを上下方向に圧縮して、紫外線硬化型樹脂Pの厚さ方向における多数のビーズ6の位置のばらつきを抑制することが可能になる。
【0039】
(他の実施の形態)
上述した形態において、樹脂フィルム4は、多数のビーズ6および樹脂部7に加えて、蓄光性を有する多数の蓄光性粒子26(図4参照)を備えていても良い。すなわち、樹脂フィルム4には、複数のビーズ6および複数の蓄光性粒子26が含まれていても良い。この場合には、蓄光性粒子26は細かなパウダー状の粒子であり、蓄光性粒子26の少なくとも一部分が樹脂部7に埋まっている。また、この場合には、樹脂フィルム4に含まれるビーズ6の数は、樹脂フィルム4に含まれる蓄光性粒子26の数に応じて上述した形態よりも減る。この場合には、樹脂塗布工程において、剥離フィルム2の上に、ビーズ6および蓄光性粒子26が含まれる硬化前の紫外線硬化型樹脂Pが一定の厚さで塗布される。
【0040】
また、上述した形態において、樹脂フィルム4は、多数のビーズ6に代えて、多数の蓄光性粒子26を備えていても良い。すなわち、樹脂フィルム4には、複数の蓄光性粒子26が含まれていても良い。この場合には、樹脂塗布工程において、剥離フィルム2の上に、蓄光性粒子26が含まれる硬化前の紫外線硬化型樹脂Pが一定の厚さで塗布される。
【0041】
また、上述した形態において、樹脂フィルム4は、多数のビーズ6に代えて、紫外線が当たると色が変わる光変色性を有する多数の光変色性粒子36(図5参照)を備えていて良い。すなわち、樹脂フィルム4には、複数の光変色性粒子36が含まれていても良い。光変色性粒子36は、いわゆるカラーチェンジングパウダーであり、細かなパウダー状の粒子である。また、光変色性粒子36は、たとえば、フォトクロミック顔料である。光変色性粒子36の少なくとも一部分は樹脂部7に埋まっている。この場合には、樹脂塗布工程において、剥離フィルム2の上に、光変色性粒子36が含まれる硬化前の紫外線硬化型樹脂Pが一定の厚さで塗布される。
【0042】
また、上述した形態において、樹脂フィルム4に、多数のビーズ6と多数の光変色性粒子36とが含まれていても良いし、多数の蓄光性粒子26と多数の光変色性粒子36とが含まれていても良いし、多数のビーズ6と多数の蓄光性粒子26と多数の光変色性粒子36とが含まれていても良い。すなわち、樹脂フィルム4には、複数のビーズ6、複数の蓄光性粒子26および複数の光変色性粒子36の少なくともいずれかが含まれている。また、樹脂塗布工程では、ビーズ6、蓄光性粒子26および光変色性粒子36の少なくともいずれかが含まれる硬化前の紫外線硬化型樹脂Pが剥離フィルム2の上に一定の厚さで塗布される。
【0043】
上述した形態において、図6に示すように、光学シート1は、剥離フィルム3を備えていなくても良い。すなわち、光学シート1は、剥離フィルム2と樹脂フィルム4とによって構成されていても良い。この場合には、樹脂フィルム4は、ビーズ6に加えて、あるいは、ビーズ6に代えて、蓄光性粒子26および光変色性粒子36の少なくともいずれか一方を備えていても良い。また、上述した形態において、光学シート1は、剥離フィルム3に代えて、剥離性を有しない非剥離部材を備えていても良い。この場合、非剥離部材は、たとえば、樹脂フィルム、繊維生地、紙または金属箔膜等であり、樹脂フィルム4と重なっている。また、上述した形態において、樹脂部7は、アクリル樹脂以外の樹脂で形成されていても良い。たとえば、樹脂部7は、ウレタン樹脂や塩化ビニール樹脂で形成されていても良い。また、樹脂部7は、紫外線硬化型樹脂以外の樹脂で形成されていても良い。
【0044】
また、樹脂部7は、半透明または不透明な樹脂で形成されていても良い。すなわち、樹脂部7を形成する樹脂に顔料が含まれていて、樹脂部7が着色されていても良い。なお、上述した形態では、第2剥離部材配置工程において、紫外線硬化型樹脂Pの厚さ方向における多数のビーズ6の位置のばらつきが抑制されるように、紫外線硬化型樹脂Pが上下方向に圧縮されるため(図3参照)、たとえば、樹脂部7が黒色に着色されていても、樹脂フィルム4に入射する光がビーズ6の反射層に届きやすくなる。したがって、樹脂部7が黒色に着色されていても、樹脂フィルム4の再帰反射機能を確保することが可能になる。
【0045】
これに対して、剥離フィルム2の上に、ビーズ6が含まれる硬化前の紫外線硬化型樹脂Pを一定の厚さで塗布した後、そのまま、紫外線硬化型樹脂Pの上側から紫外線を照射して樹脂フィルム4を形成すると、図3の、ローラ対19の間を通過する前の紫外線硬化型樹脂Pのように、樹脂フィルム4の厚さ方向における多数のビーズ6の位置がばらつく。そのため、この場合には、樹脂部7が黒色に着色されていていると、樹脂フィルム4に入射する光がビーズ6の反射層に達する前に黒色の樹脂部7に吸収されやすくなり、その結果、樹脂フィルム4の再帰反射機能が低下する。
【0046】
上述した形態において、樹脂フィルム4は、粘着性を有する粘着性樹脂フィルムであっても良い。すなわち、樹脂部7は、粘着性を有していても良い。この場合には、たとえば、樹脂フィルム4から剥離フィルム2を剥離せずに剥離フィルム3のみを剥離して、剥離フィルム2と重なっている状態の樹脂フィルム4を所定の基材に貼り付けても良い。すなわち、樹脂フィルム4と一緒に剥離フィルム2を利用しても良い。また、仮に、樹脂フィルム4が伸縮性に優れるものであれば、樹脂フィルム4とともに利用する剥離フィルム2も伸縮性に優れていることが好ましい。樹脂フィルム4が粘着性樹脂フィルムである場合には、両面テープや接着剤を使用することなく、樹脂フィルム4を基材に貼り付けることができる。
【0047】
上述した形態において、剥離フィルム2、3は、透明でなくても良い。また、上述した形態において、剥離部材2、3は、紙で形成された剥離紙であっても良い。さらに、上述した形態において、剥離フィルム2、3で使用される剥離剤は、非シリコーン系の剥離剤であっても良い。この場合には、たとえば、樹脂部7は、シリコーン樹脂で形成されている。
【0048】
上述した形態において、樹脂塗布工程で塗布される硬化前の紫外線硬化型樹脂Pは、紫外線硬化型樹脂Pの粘度を低下させるための溶剤によって希釈されていても良い。この場合には、剥離フィルム2の上に塗布された硬化前の紫外線硬化型樹脂Pから溶剤を除去するために、硬化前の紫外線硬化型樹脂Pを加熱する加熱工程が光学シート1の製造方法に含まれている。
【符号の説明】
【0049】
1 光学シート
2 剥離フィルム(剥離部材)
3 剥離フィルム(第2剥離部材)
4 樹脂フィルム
6 ビーズ
7 樹脂部
11 第1繰出しロール
13 第2繰出しロール
19 ローラ対
26 蓄光性粒子
36 光変色性粒子
P 紫外線硬化型樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6