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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010821
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】誘電加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/50 20060101AFI20240118BHJP
   H05B 6/60 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H05B6/50
H05B6/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112342
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 直
【テーマコード(参考)】
3K086
3K090
【Fターム(参考)】
3K086AA01
3K086BA09
3K086CB20
3K090AA01
3K090AB11
3K090BA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】誘電加熱装置において、メディアの搬送方向の下流でメディアが乾燥しすぎることを抑制する。
【解決手段】誘電加熱装置は、搬送方向にメディアを搬送する搬送部と、搬送部によって搬送されるメディアに対向する第1電極31および第2電極32を有し、メディアを誘電加熱によって乾燥させる電極ユニット30と、第1電極および第2電極に交流電圧を印加する電圧印加部80と、搬送部を制御する制御部250と、を備える。第2電極は、搬送方向において第1電極を互いに挟む第1部分と第2部分とを有し、第1部分は、搬送方向において、第2部分の上流に配置され、第1電極および第2電極は、第1電極と第1部分との間に形成される電界によるメディアの加熱量が、第1電極と第2部分との間に形成される電界によるメディアの加熱量に比べて大きくなるように形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向にメディアを搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記メディアに対向する第1電極および第2電極を有し、前記メディアを誘電加熱によって乾燥させる電極ユニットと、
前記第1電極および前記第2電極に交流電圧を印加する電圧印加部と、
前記搬送部を制御する制御部と、を備え、
前記第2電極は、前記搬送方向において前記第1電極を挟む第1部分と第2部分とを有し、
前記第1部分は、前記搬送方向において、前記第2部分の上流に配置され、
前記第1電極および前記第2電極は、前記第1電極と前記第1部分との間に形成される電界による前記メディアの加熱量が、前記第1電極と前記第2部分との間に形成される電界による前記メディアの加熱量に比べて大きくなるように形成されている、誘電加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の誘電加熱装置であって、
前記第1電極と前記第1部分との間の前記搬送方向における距離は、前記第1電極と前記第2部分との間の前記搬送方向における距離に比べて短い、誘電加熱装置。
【請求項3】
請求項1に記載の誘電加熱装置であって、
前記第1部分の前記第1電極および前記第2電極が前記メディアに対向する対向方向における厚みは、前記第2部分の前記対向方向における厚みに比べて厚い、誘電加熱装置。
【請求項4】
請求項1に記載の誘電加熱装置であって、
前記第1部分の前記搬送方向における幅は、前記第2部分の前記搬送方向における幅に比べて小さい、誘電加熱装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の誘電加熱装置であって、
前記電極ユニットは、前記電極ユニットの共振周波数の、前記第1電極と前記第1部分との間に形成される電界によって加熱される前記メディアの含水量の変化に対する感度が、前記第1電極と前記第2部分との間に形成される電界によって加熱される前記メディアの含水量の変化に対する感度に比べて高くなるように構成されている、誘電加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘電加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電加熱装置に関して、特許文献1には、複数の電極によって搬送物に高周波電界を印加することで、搬送物を誘電加熱方式で加熱して乾燥させる装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-9754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように搬送物を加熱して乾燥させる装置では、例えば、搬送速度が比較的遅い場合や電極のサイズが比較的大きい場合に、搬送方向の下流で搬送物が乾燥しすぎることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、誘電加熱装置が提供される。この誘電加熱装置は、搬送方向にメディアを搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送される前記メディアに対向する第1電極および第2電極を有し、前記メディアを誘電加熱によって乾燥させる電極ユニットと、前記第1電極および前記第2電極に交流電圧を印加する電圧印加部と、前記搬送部を制御する制御部と、を備える。前記第2電極は、前記搬送方向において前記第1電極を互いに挟む第1部分と第2部分とを有し、前記第1部分は、前記搬送方向において、前記第2部分の上流に配置され、前記第1電極および前記第2電極は、前記第1電極と前記第1部分との間に形成される電界による前記メディアの加熱量が、前記第1電極と前記第2部分との間に形成される電界による前記メディアの加熱量に比べて大きくなるように形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】誘電加熱装置の概略構成を示す模式図。
図2】第1実施形態における電極ユニットの概略構成を示す斜視図。
図3】第1電極および第2電極とメディアとを示す上面図。
図4】第1部分の厚みおよび第2部分の厚みを説明するための模式図。
図5】電極ユニットとメディアとによって形成される回路を説明する模式図。
図6】第2実施形態における電極ユニットの概略構成を示す斜視図。
図7】第1部分の幅および第2部分の幅を説明するための模式図。
図8】第3実施形態における電極ユニットの概略構成を示す斜視図。
図9】第1距離および第2距離を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態としての誘電加熱装置100の概略構成を示す模式図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、鉛直上向きに沿った方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、方向の向きを特定する場合には、各図において矢印が指し示す方向を「+」、その反対の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。また、本明細書中で、直交とは、90°±10°の範囲を含む。また、X方向およびY方向に沿った平面のことを「XY平面」とも呼ぶ。
【0008】
誘電加熱装置100は、メディアMdを搬送する搬送部320と、メディアMdを誘電加熱によって乾燥させる電極ユニット30と、電極ユニット30に交流電圧を印加する電圧印加部80と、制御部250とを備える。誘電加熱装置100は、搬送部320によってメディアMdを搬送しつつ、電極ユニット30から生じる交流電界によってメディアMdを加熱することで、メディアMdを乾燥させる。「メディアMdを交流電界によって加熱する」と言う場合、メディアMd自体を交流電界によって加熱することのみならず、メディアMd上に付着した液体や固体等の付着物を交流電界によって加熱することをも含む。電極ユニット30のことをヒーターとも呼ぶ。
【0009】
メディアMdとしては、例えば、紙や布、フィルム等が用いられる。メディアMdとして用いられる布は、例えば、綿や、麻、ポリエステル、絹、レーヨン等の繊維、または、これらが混紡された繊維を織って形成される。本実施形態では、メディアMdとして、シート状の綿布が用いられる。
【0010】
本実施形態では、誘電加熱装置100は、図示しない液体吐出装置によって吐出される液体が塗布されたメディアMdを乾燥させる。このような液体としては、例えば、水を主成分とする各種インクが用いられる。本実施形態では、液体として、水を主成分とする水性インクが用いられる。本明細書において、液体の主成分とは、液体に含まれる物質のうち、その質量分率が50%以上である物質のことを指す。他の実施形態では、液体として、インクの他に、例えば、種々の色材、電極材、生体有機物や無機物等の試料、潤滑油、樹脂液、エッチング液など、任意の液体が用いられてもよい。
【0011】
本実施形態において液体として用いられるインクは、樹脂を含有する顔料インクである。インクに含まれる樹脂は、自身を介して、メディアMd上に顔料を強固に定着させる作用を有する。このような樹脂は、例えば、水等の溶媒に難溶あるいは不溶である樹脂を、微粒子状にして溶媒に分散させた状態で、すなわち、エマルジョン状態あるいはサスペンジョン状態で用いられる。このような樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、フルオレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル- 酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル樹脂等を用いることができる。これらの樹脂を2種以上併用して用いてもよい。このような樹脂のことをレジンとも呼ぶ。
【0012】
搬送部320は、ローラー323を駆動させることによってメディアMdを搬送するローラー機構として構成されている。搬送部320は、制御部250による制御下で、モーター等によって構成された図示しない駆動部の駆動力によって、ローラー323を駆動させる。本実施形態では、搬送部320は、メディアMdを-Y方向に搬送する。他の実施形態では、搬送部320は、例えば、ベルトを駆動させることによってメディアMdを搬送するベルト機構として構成されていてもよい。
【0013】
制御部250は、1つまたは複数のプロセッサーと、記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。他の実施形態では、制御部250は、例えば、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0014】
電圧印加部80は、電極ユニット30に電気的に接続されており、後述する電極ユニット30の第1電極31および第2電極32に予め定められた駆動周波数fの交流電圧を印加する。本実施形態では、電圧印加部80は、高周波電圧発生回路を含む高周波電源として構成され、それぞれ図示しない水晶発振器、PLL(Phase Locked Loop)回路およびパワーアンプを有する。他の実施形態では、電圧印加部80は、例えば、トランジスター等のスイッチング素子を有するスイッチング回路を備えるインバーターとして構成されていてもよい。第1電極31又は第2電極32に印加される電位の一方は、基準電位であってもよい。基準電位とは、高周波電圧の基準となる定電位であり、例えば接地電位である。
【0015】
本実施形態では、電極ユニット30の各電極には、高周波電圧が印加される。本明細書において、「高周波」とは、1MHz以上の周波数のことを指す。より詳細には、本実施形態では、駆動周波数fとして、産業科学医療用(ISM:Industrial Scientific and Medical Band)バンドの1つである13.56MHzが用いられる。なお、水の誘電正接は20GHz付近で最大となるので、ISMバンドのうち2.45GHzや5.8GHzの高周波電圧を電極ユニット30の各電極に印加することで、より効率良くメディアMdを加熱できる。一方で、インクを加熱するという観点では、駆動周波数fが、例えば、13.56MHzや40.68MHzのように比較的低い場合であっても、良好な加熱効率を得ることができる。この理由は、駆動周波数fが13.56MHzや40.68MHzである場合、インク中の水の誘電正接は低い一方で、インク中の色素成分等を電気抵抗として生じるジュール熱が生じやすくなるためである。
【0016】
図2は、本実施形態における電極ユニット30の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態では、誘電加熱装置100は、X方向に沿って並んで配置された2つの電極ユニット30を有する。図1および図2に示すように、電極ユニット30は、第1電極31と、第2電極32とを有する。また、本実施形態における電極ユニット30は、コイル34を有している。他の実施形態では、電極ユニット30の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、各電極ユニット30は、X方向に沿って並んで配置されなくてもよく、任意に配置されてよい。
【0017】
第1電極31および第2電極32は、搬送方向に搬送されるメディアMdに対向している。本実施形態では、搬送方向は、-Y方向である。従って、本実施形態では、+Y方向側が搬送方向の上流側に相当し、-Y方向側が搬送方向の下流側に相当する。以下では、第1電極31および第2電極32がメディアMdに対応する方向のことを対向方向とも呼ぶ。対向方向は、同じ軸に沿う一方側の方向とその反対方向とを両方含み、本実施形態では、Z方向である。
【0018】
第1電極31および第2電極32は、導電体であり、例えば、金属、合金、導電性酸化物等によって形成される。第1電極31及び第2電極32は、互いに同じ材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。第1電極31および第2電極32は、例えば、その姿勢や強度の保持を目的として、誘電正接や導電性の低い材料によって形成された基板等の上に配置されてもよいし、他の部材によって支持されてもよい。
【0019】
第1電極31および第2電極32は、第1電極31と第2電極32との間の最短距離が、電極ユニット30から出力される電磁界の波長の10分の1以下となるように配置されている。図2に示すように、本実施形態における第1電極31は、Y方向を長手方向とし、X方向を短手方向とする舟形形状を有している。第1電極31の下面は、-Z方向に凸の曲面形状を有している。第1電極31は、Z方向に沿って見たときに、X方向に長尺な長円形状を有する。第2電極32は、X方向およびY方向に扁平で、かつ、X方向に長尺な長円形状の環状を有している。第2電極32は、Z方向に沿って見たときに、第1電極31の周囲を囲うように配置されている。第2電極32は、後述するように、搬送方向において第1電極31を互いに挟む第1部分36と第2部分37とを有している。
【0020】
図1および図2に示すように、第1電極31および第2電極32は、ともに、XY平面に平行に配置された基板110上に配置されている。より詳細には、第1電極31は、第1電極31の下面のX方向およびY方向における中央部が基板110の上面に接触するように配置されている。第2電極32は、第2電極32の下面が基板110の上面に接触するように配置されている。そのため、本実施形態では、第1電極31の下面の中央部と、第2電極32の下面とは、同一平面上に配置されている。
【0021】
図1に示すように、本実施形態では、第1電極31および第2電極32は、メディアMdの上方に配置されている。そのため、本実施形態では、第1電極31および第2電極32の下面が、メディアMdの上面に対向する。メディアMdと第1電極31および第2電極32との間には、上述した基板110が配置される。
【0022】
本実施形態では、基板110は、ガラスによって形成されている。基板110によって、メディアMdに塗布されたインク等の液体が第1電極31および第2電極32に付着することや、メディアMdが布である場合にメディアMdの毛羽が第1電極31および第2電極32に付着することが抑制される。他の実施形態では、基板110は、例えば、アルミナによって形成されてもよい。
【0023】
図2に説明を戻す。本実施形態では、第1電極31は、電線35と、コイル34と、同軸ケーブルの内部導体IC1とを介して電圧印加部80に電気的に接続されている。第2電極32は、第2電極32の上部に配置された接続部材33や、図示していない同軸ケーブルの外部導体等を介して電圧印加部80に電気的に接続されている。
【0024】
第1電極31および第2電極32に駆動周波数fの交流電圧が印加されることによって、第1電極31および第2電極32から、駆動周波数fに応じた波長を有する電磁界が生じる。この電磁界の強度は、第1電極31および第2電極32の近傍で非常に強く、遠方では非常に弱くなる。以下では、交流電圧の印加によって第1電極31および第2電極32の近傍に生じる電磁界を「近傍電磁界」とも呼ぶ。第1電極31および第2電極32の「近傍」とは、第1電極31および第2電極32からの距離が、発生する電磁界の波長の1/2π以下となる範囲のことを指す。「近傍」よりも遠い範囲のことを、「遠方」とも呼ぶ。交流電圧の印加によって第1電極31および第2電極32の遠方に生じる電磁界のことを「遠方電磁界」とも呼ぶ。遠方電磁界は、一般的な通信用アンテナ等による通信に用いられる電磁界に相当する。また、第1電極31と第2電極32との近傍領域に形成される電界のことを近傍電界とも呼ぶ。
【0025】
上述したように、第1電極31と第2電極32とは、両者の間の最短距離が電磁界の波長の10分の1以下となるように配置されている。これによって、第1電極31および第2電極32から生じる電磁界の密度を、第1電極31および第2電極32の近傍において減衰させることができる。そのため、メディアMdと、第1電極31および第2電極32との間の距離を適切に保つことで、メディアMdを、第1電極31および第2電極32の近傍で生じる電界によって効率的に加熱しつつ、第1電極31および第2電極32からの遠方電磁界の輻射を抑制できる。特に、本実施形態では、第2電極32が、Z方向に沿って見たときに第1電極31の周囲を囲うように配置されているため、第1電極31および第2電極32からの遠方電磁界の輻射をより抑制できる。
【0026】
本実施形態では、コイル34の一端は、電線35を介して第1電極31と電気的に直列に接続され、他端は、図1に示した電圧印加部80と電気的に直列に接続されている。本実施形態では、コイル34は、ソレノイドコイルによって構成され、その長さ方向がZ方向に沿うように配置されている。コイル34の形状、長さ、断面積、巻き数、材質等は、例えば、駆動周波数fに応じて、また、電極ユニット30と電圧印加部80とのインピーダンス整合を実現するように選択される。他の実施形態では、コイル34の一端は、第1電極31ではなく第2電極32と直列に接続されていてもよい。
【0027】
電圧印加部80が電極ユニット30に交流電圧を印加することによって、コイル34の一端には高電圧が発生する。これによって、第1電極31および第2電極32から生じる電界の強度を高めることができる。なお、コイル34は、コイル34の一端と第1電極31との間の距離ができるだけ小さくなるように配置されると好ましい。コイル34の一端と第1電極31との間の距離が遠い場合、コイル34の一端に生じる高電圧が、コイル34と第1電極31との間、もしくは、電線35と第2電極32との間に、メディアMdの加熱に寄与しない電界を発生させ、第1電極31および第2電極32から生じる近傍電界の強度を高める効果が低下する可能性がある。これに対して、コイル34の一端と第1電極31との間の距離を近くすることで、このようなメディアMdの加熱に寄与しない電界の発生を抑制できるため、メディアMdの加熱に寄与する電界の強度を効果的に高めることができる。なお、他の実施形態では、例えば、第1電極31をメアンダ形状に形成することによって、第1電極31にコイル34と同様の機能を発揮させてもよい。
【0028】
図3は、本実施形態における第1電極31および第2電極32とメディアMdとを示す上面図である。図3では、基板110は省略されている。図2および図3に示すように、上述した第2電極32の第1部分36は、搬送方向において、第2部分37の上流に配置されている。より詳細には、本実施形態では、第1部分36は、上述したように第1電極31を囲う環状に形成された第2電極32のうち、第1電極31の+Y方向側に位置する部分である。第2部分37は、第2電極32のうち、第1電極31の-Y方向側に位置する部分である。
【0029】
本実施形態では、第1部分36の厚みt1は、第2部分37の厚みt2に比べて厚い。本明細書において、厚みt1は、第1部分36の厚みの平均値を指し、厚みt2は、第2部分37の厚みの平均値を指す。ある部分における厚みの平均値は、その部分における10点以上の厚みを測定し、各厚みの算術平均を算出することによって測定される。なお、本実施形態では、第1部分36と第2部分37とは、それぞれ、そのZ方向における厚みが一様となるように形成されている。
【0030】
第1電極31および第2電極32は、電極ユニット30の第1加熱量が、電極ユニット30の第2加熱量に比べて大きくなるように形成されている。第1加熱量とは、第1電極31と第1部分36との間に形成される近傍電界を表す第1電界によるメディアMdの加熱量のことを指す。第2加熱量とは、第1電極31と第2部分37との間に形成される近傍電界を表す第2電界によるメディアMdの加熱量のことを指す。
【0031】
第1加熱量と第2加熱量とを比較する場合、例えば、全面に略一様の厚さで液体を付着させた綿布をメディアMdとして準備し、そのメディアMdを搬送せずに電極ユニット30によって加熱した場合の第1メディア部分Mp1における温度と第2メディア部分Mp2における温度とを比較する。より詳細には、第1加熱量が第2加熱量に比べて大きい場合には、このようにメディアMdを加熱した場合の第1メディア部分Mp1における温度が、第2メディア部分Mp2における温度に比べて高くなる。第1メディア部分Mp1とは、図3において一点鎖線およびハッチングによって示したように、メディアMdのうち、Z方向に沿って見たときに、第1電極31と第1部分36との間に位置する部分のことを指す。同様に、第2メディア部分Mp2とは、メディアMdのうち、Z方向に沿って見たときに、第1電極31と第2部分37との間に位置する部分のことを指す。
【0032】
メディアMdのある部分が電極ユニット30によって加熱される場合の加熱量は、その部分に作用する近傍電界の強度が大きいほど大きくなる。従って、第1メディア部分Mp1に付着した液体に作用する電界の強度をより大きくすることや、第2メディア部分Mp2に付着した液体に作用する電界の強度をより小さくすることによって、第1加熱量を第2加熱量に対して相対的に大きくできる。なお、メディアMdのある部分に付着した液体に作用する近傍電界の強度を大きくすることは、近傍電界を電気力線によって表した場合に、その液体を通る電気力線の密度を高くすることに相当する。特に、シート状のメディアMdに付着した液体は、通常、メディアMd上でメディアMdの面方向に沿って広がるように分布するので、メディアMdのある部分の付近においてメディアMdの面方向に沿う電気力線の密度を増やすことによって、その部分における加熱量を効果的に大きくできる。
【0033】
図4は、第1部分36の厚みt1および第2部分37の厚みt2を説明するための模式図である。図4は、メディアMd上に付着した液体Lqが電極ユニット30によって加熱されているときの様子を模式的に示している。図4では、第1メディア部分Mp1に付着した液体Lqに作用する電界Eq1と、第2メディア部分Mp2に付着した液体Lqに作用する電界Eq2とが破線によって表されている。図4において、破線の太さが太いほど、その破線が表す電界の強度がより強いことを表す。図2および図4に示すように、本実施形態では、第1部分36のZ方向における厚みt1が、第2部分37のZ方向における厚みt2に比べて厚くなるように第2電極32が形成されることによって、第1加熱量が第2加熱量に比べて大きいことが実現されている。より詳細には、図4に示すように、本実施形態では、厚みt1を厚みt2に比べて厚くすることによって、電界Eq1の強度が電界Eq2の強度に比べて強くなっている。
【0034】
図5は、本実施形態における電極ユニット30とメディアMdに付着した液体Lqとによって形成される回路を説明する模式図である。図5に示すように、電極ユニット30の第1電極31および第2電極32を、それぞれ、1つのコンデンサーを構成する電極板と見なすことができる。
【0035】
図5に示した抵抗Rは、電極ユニット30の抵抗を表す。抵抗Rには、電圧印加部80の内部抵抗、および、コイル34の寄生抵抗が含まれる。インダクタンスLは、電極ユニット30のインダクタンスを表す。インダクタンスLには、コイル34のインダクタンス、および、電極ユニット30の各電極の寄生インダクタンスが含まれる。キャパシタンスCは、電極ユニット30のキャパシタンスを表す。キャパシタンスCには、コイル34の寄生キャパシタンス、および、電極ユニット30の各電極同士の間のキャパシタンスが含まれる。抵抗Rは、メディアMd上に付着した液体Lqの電気抵抗を表す。キャパシタンスCb1は、第1電極31と液体Lqとの間の寄生キャパシタンスを表す。キャパシタンスCb2は、第2電極32と液体Lqとの間の寄生キャパシタンスを表す。キャパシタンスCは、キャパシタンスCb1およびCb2の和として表される。キャパシタンスCとキャパシタンスCとの和は、電極ユニット30のキャパシタンスに相当する。
【0036】
メディアMdに塗布された液体を乾燥させる際の電極ユニット30の共振周波数fは、図5に示した電極ユニット30とメディアMdに付着した液体Lqとによって形成される回路における電極ユニット30の共振周波数として表される。乾燥の進行に伴うメディアMdの含水量の減少によってキャパシタンスCが減少するので、共振周波数fは、乾燥の進行に伴って上昇する。以下では、このような乾燥の進行に伴う共振周波数fの変化のことを、共振周波数fのシフトとも呼ぶ。共振周波数fがシフトすることによって、駆動周波数fと共振周波数fとの差異が変化するので、電極ユニット30のインピーダンスが変化する。そのため、共振周波数fのシフトは、電極ユニット30全体の加熱量に影響する。例えば、駆動周波数fをメディアMdの含水量が十分大きいときの共振周波数fと一致するように設定した場合、共振周波数fのシフトによって、共振周波数fと駆動周波数fとの差異が大きくなり、電極ユニット30のインピーダンスが増大する。従って、この場合、共振周波数fのシフトは、電極ユニット30全体の加熱量の減少に寄与する。
【0037】
本実施形態では、電極ユニット30は、共振周波数fの第1感度が、第2感度に比べて高くなるように構成されている。第1感度とは、共振周波数fの、第1電極31と第1部分36との間におけるメディアMdの含水量の変化に対する感度のことを指す。第2感度とは、電極ユニット30の共振周波数fの、第2電極32と第2部分37との間におけるメディアMdの含水量の変化に対する感度のことを指す。より詳細には、第1感度は、共振周波数fの、第1メディア部分Mp1の含水量の変化に対する感度に相当する。また、第2感度は、共振周波数fの、第2メディア部分Mp2の含水量の変化に対する感度に相当する。上述したように、共振周波数fのシフトは、電極ユニット30全体の加熱量に影響する。そのため、第1感度を第2感度に比べて高くすることで、電極ユニット30全体の加熱量の、第1メディア部分Mp1の含水量の変化に対する感度を、第2メディア部分Mp2の含水量の変化に対する感度に比べて高くすることができる。
【0038】
本実施形態では、メディアMdのある部分における含水量は、その部分の単位体積あたりに含まれる水の質量として表される。他の実施形態では、例えば、ある部分における含水量は、その部分の単位体積あたりに含まれる水の体積として表されてもよいし、質量や体積の基準値に対する水の質量や体積の割合として表されてもよい。
【0039】
第1感度と第2感度とを比較する場合、まず、全面に略一様の厚さで液体を付着させた綿布を第1サンプルとして準備し、その第1サンプルを搬送せずに電極ユニット30によって加熱した場合の共振周波数ft0を測定する第1工程を実行する。次に、第1メディア部分Mp1に相当する部分を除く面に同様に略一様の厚さで液体を付着させた綿布を第2サンプルとして準備し、その第2サンプルを搬送せずに電極ユニット30によって加熱した場合の共振周波数ft1を測定する。この共振周波数ft1と共振周波数ft0との差が、第1感度に相当する。同様に、第2メディア部分Mp2に相当する部分を除く面に略一様に液体を付着させた綿布をメディアMdとして準備し、同様に電極ユニット30によって加熱した場合の共振周波数ft2を測定する。この共振周波数ft2と共振周波数ft0との差が、第2感度に相当する。なお、本実施形態のように液体Lqとしてインクを用いる場合、上述した第1サンプルを、例えば、インクジェットプリンターによって綿布の面全体に液体をベタ印刷することによって準備できる。ベタ印刷とは、画像を構成するすべての画素にドットを形成し、メディアMdの地色の部分が残らないように印刷することを指す。また、第2サンプルや第3サンプルを、同様に、綿布の第1メディア部分Mp1や第2メディア部分Mp2に相当する部分を除く面に液体をベタ印刷することによって準備できる。共振周波数ft0~ft2は、例えば、ネットワークアナライザーを用いて測定される電極ユニット30のインダクタンスおよびキャパシタンスに基づいて算出される。
【0040】
図4に示すように、第1電界のうち、第1メディア部分Mp1に作用しない電界En1の強度に対する、第1メディア部分Mp1に作用する電界Eq1の強度の比をより大きくすることによって、第1感度をより大きくできる。電界En1の強度に対する電界Eq1の比をより大きくすることは、第1電界を電気力線によって表した場合に、第1電界を表す電気力線のうち、第1メディア部分Mp1に付着した液体Lqを通る電気力線の割合を増やすことに相当する。また、第2電界のうち、第2メディア部分Mp2に作用しない電界En2の強度に対する、第2メディア部分Mp2に作用する電界Eq2の強度の比をより小さくすることによって、第2感度をより小さくできる。
【0041】
本実施形態では、図2および図4に示した厚みt1が厚みt2に比べて厚くなるように第2電極32が形成されることによって、共振周波数fの第1感度が第2感度に比べて高いことが実現されている。一般的には、厚みt1をより厚くすることによって、第1メディア部分Mp1上の液体Lqを通る電気力線の密度をより増やすことができ、電界En1の強度に対する電界Eq1の比をより大きくできる。ただし、厚みt1を厚くしすぎた場合、第1メディア部分Mp1上の液体Lqを通らない電気力線の本数が増えることで、電界En1の強度に対する電界Eq1の比が小さくなる場合がある。本実施形態では、厚みt1は、厚みt2の1.5倍以上であると好ましく、3倍以上であるとより好ましい。また、厚みt1は、厚みt2の10倍以下であると好ましく、厚みt2の8倍以下であるとより好ましい。
【0042】
以上で説明した第1実施形態における誘電加熱装置100によれば、電極ユニット30は、メディアMdの搬送方向において第1電極31を互いに挟む第1部分36と第2部分37とを有し、第1部分36は、搬送方向において第2部分37の上流に配置され、第1電極31および第2電極32は、第1電極31と第1部分36との間に形成される第1電界によるメディアMdの加熱量を表す第1加熱量が、第1電極31と第2部分37との間に形成される第2電界によるメディアMdの加熱量を表す第2加熱量に比べて大きくなるように形成されている。これによって、メディアMdの搬送方向の上流において電極ユニット30によるメディアMdの加熱量がより大きくなり、搬送方向の下流において電極ユニット30によるメディアMdの加熱量がより小さくなる。そのため、搬送方向の下流において、電極ユニット30による加熱によってメディアMdが乾燥しすぎることを抑制できる。また、メディアMdの含水量を測定することを要しないので、例えば、第1電極31や第2電極32の付近に含水量を測定するセンサーを設けなくても、搬送方向のより下流においてメディアMdが乾燥しすぎることを抑制できる。
【0043】
また、本実施形態では、電極ユニット30は、電極ユニット30の共振周波数fの、第1電極31と第1部分36との間に形成される電界によって加熱されるメディアMdの含水量の変化に対する第1感度が、第1電極31と第2部分37との間に形成される電界によって加熱されるメディアMdの含水量の変化に対する第2感度に比べて高くなるように構成されている。このような形態であれば、電極ユニット30全体の加熱量の、第1メディア部分Mp1の含水量の変化に対する感度を、第2メディア部分Mp2の含水量の変化に対する感度に比べて高くできる。これにより、例えば、駆動周波数fを、メディアMdの含水量が十分大きいときの共振周波数fと一致するように設定することで、第1メディア部分Mp1の含水量が比較的大きい場合には、第1メディア部分Mp1における加熱量をより大きくでき、第1メディア部分Mp1の含水量をより減少させることができる。逆に、第1メディア部分Mp1の含水量がより小さい場合には、第1メディア部分Mp1における加熱量をより小さくでき、第1メディア部分Mp1を乾燥させすぎることを抑制できる。メディアMdを搬送しながら加熱する場合、先に第1メディア部分Mp1として電極ユニット30によって加熱された部分が後の第2メディア部分Mp2となるので、上記のようにすることで、第1メディア部分Mp1の含水量が比較的多い場合であっても少ない場合であっても、第2メディア部分Mp2を過不足なく乾燥できる可能性が高まる。そのため、メディアMdをより均一に乾燥できる。
【0044】
また、本実施形態では、第1部分36の厚みt1は、第2部分37の厚みt2に比べて厚い。そのため、厚みt1を厚みt2に比べて厚くすることで、第1加熱量が第2加熱量に比べて大きいことを簡易に実現できる。また、厚みt1を厚みt2に比べて厚くすることで、共振周波数fの第1感度が第2感度に比べて高いことをも簡易に実現できる。
【0045】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態における電極ユニット30bの概略構成を示す斜視図である。図6では、電線35とコイル34と内部導体IC1とは省略されている。本実施形態では、第1実施形態とは異なり、第1部分36bの搬送方向における幅w1が、第2部分37bの搬送方向における幅w2に比べて小さくなるように、第2電極32bが形成されている。第2実施形態における電極ユニット30bや誘電加熱装置100の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0046】
上述したように、本実施形態では、幅w1は、幅w2に比べて小さい。本明細書において、幅w1は、第1部分36bの幅の平均値を指し、幅w2は、第2部分37bの幅の平均値を指す。ある部分における幅の平均値は、その部分における10点以上の幅を測定し、各幅の算術平均を算出することによって測定される。本実施形態では、幅w1が幅w2に比べて小さいことによって、第2電極32bは、Z方向に沿って見たときに、第1電極31をY方向に二等分するX方向に沿った直線に対して非線対称の形状、かつ、第1電極31のX方向およびY方向における中心点に対して非点対称の形状を有している。また、本実施形態では、幅w1が幅w2に比べて小さいことによって、第1加熱量が第2加熱量に比べて大きいことが実現されている。なお、本実施形態では、第1部分36bと第2部分37bとは、それぞれ、X方向に亘って一様の幅w1と幅w2とを有するように形成されている。また、本実施形態では、第1部分36の厚みt1と第2部分37の厚みt2とは、それぞれ同じである。
【0047】
図7は、第1部分36bの幅w1および第2部分37bの幅w2を説明するための模式図である。図7は、第1実施形態で説明した図4と同様に、メディアMd上に付着した液体Lqが電極ユニット30bによって加熱されているときの様子を模式的に示している。図7には、図4と同様に、電界Eq1,Eq2,En1,En2が破線によって示されている。図7に示すように、本実施形態では、幅w1を幅w2に比べて小さくすることにより、電界Eq1の強度が電界Eq2の強度に比べて強くなっている。より詳細には、幅w1がより小さいことで、第1部分36bから第1電極31に向かう、および、第1電極31から第1部分36bに向かう電気力線がより狭い範囲に集中することによって、電界Eq1の強度がより強まっている。本実施形態では、幅w1は、幅w2の1.5倍以上であると好ましく、2倍以上であるとより好ましい。また、幅w1は、幅w2の8倍以下であると好ましく、6倍以下であるとより好ましい。
【0048】
また、本実施形態では、幅w1が幅w2に比べて小さくなるように第2電極32が形成されることによって、共振周波数fの第1感度が第2感度に比べて高いことが実現されている。より詳細には、上述したように、幅w1がより小さいことで、第1部分36bから第1電極31に向かう、および、第1電極31から第1部分36bに向かう電気力線が、第1部分36bにおけるより狭い範囲に集中することによって、電界En1の強度に対する電界Eq1の強度がより強まっている。
【0049】
以上で説明した第2実施形態によれば、第2電極32bの第1部分36bの幅w1は、第2部分37bの幅w2に比べて小さい。そのため、幅w1を幅w2に比べて小さくすることで、第1加熱量が第2加熱量に比べて大きいことを簡易に実現できる。また、幅w1を幅w2に比べて小さくすることで、共振周波数fの第1感度が第2感度に比べて高いことをも簡易に実現できる。
【0050】
C.第3実施形態:
図8は、第3実施形態における電極ユニット30cの概略構成を示す斜視図である。図8では、第2実施形態で説明した図2と同様に、電線35とコイル34と内部導体IC1とは省略されている。本実施形態では、第1実施形態および第2実施形態とは異なり、第1電極31と第2電極32cの第1部分36cとの間の搬送方向における第1距離d1が、第1電極31と第2部分37との間の搬送方向における第2距離d2に比べて短い。第3実施形態における電極ユニット30cや誘電加熱装置100の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0051】
上述したように、本実施形態では、第1距離d1は第2距離d2に比べて短い。本実施形態では、第1距離d1は、第1電極31と第1部分36cとの間の搬送方向における距離の平均値を指し、第2距離d2は、第1電極31と第2部分37との間の搬送方向における距離の平均値を指す。距離の平均値は、10点以上の距離を測定し、各距離の算術平均を算出することによって測定される。本実施形態では、第1距離d1が第2距離d2に比べて小さいことによって、第2電極32cは、Z方向に沿って見たときに、第1電極31をY方向に二等分するX方向に沿った直線に対して非線対称の形状、かつ、第1電極31のX方向およびY方向における中心点に対して非点対称の形状を有している。また、本実施形態では、第1距離d1が第2距離d2に比べて小さいことによって、第1加熱量が第2加熱量に比べて大きいことが実現されている。このように、第1加熱量が第2加熱量に比べて大きくなるように第1電極31および第2電極32cを形成することは、第1加熱量が第2加熱量に比べて大きくなるように第1電極31と第2電極32cとの相対的な位置を設定することをも含む。なお、本実施形態では、第1電極31と第1部分36cとは、X方向に亘って一定の第1距離d1を空けて配置されており、第1電極31と第2部分37とは、X方向に亘って一定の第2距離d2を空けて配置されている。また、本実施形態では、第1部分36cの厚みt1と第2部分37の厚みt2とは、それぞれ同じであり、第1部分36cの幅w1と第2部分37の幅w2とは、それぞれ同じである。
【0052】
図9は、第1距離d1および第2距離d2を説明するための模式図である。図9は、第1実施形態で説明した図4と同様に、メディアMd上に付着した液体Lqが電極ユニット30bによって加熱されているときの様子を模式的に示している。図9には、図4と同様に、電界Eq1,Eq2,En1,En2が破線によって示されている。図9に示すように、本実施形態では、第1距離d1を第2距離d2に比べて小さくすることによって、電界Eq1の強度が電界Eq2の強度に比べて強くなっている。
【0053】
また、本実施形態では、第1距離d1が第2距離d2に比べて小さいことによって、共振周波数fの第1感度が第2感度に比べて高いことが実現されている。一般的には、第1距離d1をより短くし、第2距離d2をより長くすることによって、第1メディア部分Mp1上の液体Lqを通る電気力線の密度をより増やすことができ、電界En1の強度に対する電界Eq1の比をより大きくできる。ただし、第1距離d1を第2距離d2に対して短くしすぎた場合、第1メディア部分Mp1のXY平面における面積が第2メディア部分Mp2のXY平面における面積に対して相対的に小さくなることによって、第1感度が第2感度に比べて低くなる場合がある。本実施形態では、第1距離d1は、第2距離d2の0.25倍以上であると好ましく、0.35倍以上であるとより好ましい。また、第1距離d1は、第2距離d2の0.75倍以下であると好ましく、0.6倍以下であるとより好ましい。
【0054】
以上で説明した第3実施形態によれば、第1電極31と第1部分36cとの間の第1距離d1は、第1電極31と第2部分37との間の第2距離d2に比べて短い。そのため、第1距離d1を第2距離d2に比べて短くすることで、第1加熱量が第2加熱量に比べて大きいことを簡易に実現できる。また、第1距離d1を第2距離d2に比べて短くすることで、共振周波数fの第1感度が第2感度に比べて高いことをも簡易に実現できる。
【0055】
D.他の実施形態:
(D-1)上記実施形態において、例えば、厚みt1を厚みt2に比べて厚くすること、幅w1を幅w2に比べて小さくすること、および、第1距離d1を第2距離d2に比べて短くすること、のうち、いずれか2つ以上を組み合わせることによって、第1加熱量が第2加熱量に比べて大きいことを実現してもよい。
【0056】
(D-2)上記実施形態において、例えば、第1電極31の厚みを調整することによって、第1加熱量が第2加熱量に比べて高いことを実現してもよい。例えば、第1電極31の+Y方向側半分における厚みを、第1電極31の-Y方向側半分における厚みに比べて大きくすることによって、第1加熱量が第2加熱量に比べて高いことを実現してもよい。
【0057】
(D-3)上記実施形態では、電極ユニット30は、共振周波数fの第1感度が第2感度に比べて高くなるように構成されているが、このように構成されていなくてもよい。
【0058】
(D-4)上記実施形態では、第1電極31は、舟形形状を有しているが、舟形形状を有していなくてもよく、例えば、平板形状や棒状を有していてもよい。また、上記実施形態では、第1電極31は、Z方向に沿って見たときに、長円形状を有しているが、長円形状を有していなくてもよく、例えば、円形状や矩形状、他の多角形状等を有していてもよい。
【0059】
(D-5)上記実施形態では、第2電極32は、Z方向に沿って見たときに第1電極31の周囲を囲うように配置されている。これに対して、第2電極32は、Z方向に沿って見たときに第1電極31の周囲を囲うように配置されていなくてもよい。例えば、第2電極32は、搬送方向において第1電極31を互いに挟む、それぞれ同じ電位の2つの棒状の電極や2つの平板状の電極によって構成されてもよい。この場合、第2電極32を構成する各電極の、搬送方向において第1電極31を互いに挟む部分のうち、搬送方向の上流側に位置する部分が第1部分36に相当し、下流側に位置する部分が第2部分37に相当する。
【0060】
(D-6)上記実施形態では、電極ユニット30は、例えば、X方向に往復移動可能に構成されていてもよい。例えば、電極ユニット30を、ベルト機構やボールネジ機構によって構成された図示しない駆動部によって支持するとともに、X方向に往復移動させてもよい。
【0061】
(D-7)上記実施形態では、駆動周波数fとして13.56MHzの周波数が用いられている。これに対して、駆動周波数fとして13.56MHzの周波数が用いられなくてもよく、例えば、他のISMバンドである、40.68MHzや2.45GHz、5.8GHz等の周波数が用いられてもよい。また、駆動周波数fは、電極ユニット30によってメディアMdに付着した液体を加熱できる周波数であれば高周波でなくてもよい。この場合、駆動周波数fは、例えば、100kHz以上1MHz未満であると好ましい。
【0062】
E.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0063】
(1)本開示の一形態によれば、誘電加熱装置が提供される。この誘電加熱装置は、搬送方向にメディアを搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送される前記メディアに対向する第1電極および第2電極を有し、前記メディアを誘電加熱によって乾燥させる電極ユニットと、前記第1電極および前記第2電極に交流電圧を印加する電圧印加部と、前記搬送部を制御する制御部と、を備える。前記第2電極は、前記搬送方向において前記第1電極を互いに挟む第1部分と第2部分とを有し、前記第1部分は、前記搬送方向において、前記第2部分の上流に配置され、前記第1電極および前記第2電極は、前記第1電極と前記第1部分との間に形成される電界による前記メディアの加熱量が、前記第1電極と前記第2部分との間に形成される電界による前記メディアの加熱量に比べて大きくなるように形成されている。
このような形態によれば、メディアの搬送方向の上流において電極ユニットによるメディアの加熱量がより大きくなり、搬送方向の下流において電極ユニットによるメディアの加熱量がより小さくなる。そのため、搬送方向の下流において、電極ユニットによる加熱によってメディアが乾燥しすぎることを抑制できる。
【0064】
(2)上記形態では、前記第1電極と前記第1部分との間の前記搬送方向における距離は、前記第1電極と前記第2部分との間の前記搬送方向における距離に比べて短くてもよい。このような形態によれば、第1電極と第1部分との間の搬送方向における距離を第1電極と第1部分との間の搬送方向における距離に比べて短くすることで、第1電極と第1部分との間に形成される電界によるメディアの加熱量が、第1電極と第2部分との間に形成される電界によるメディアの加熱量に比べて大きいことを簡易に実現できる。
【0065】
(3)上記形態では、前記第1部分の前記第1電極および前記第2電極が前記メディアに対向する対向方向における厚みは、前記第2部分の前記対向方向における厚みに比べて厚くてもよい。このような形態によれば、第1部分の厚みを第2部分の厚みに比べて厚くすることで、第1電極と第1部分との間に形成される電界によるメディアの加熱量が、第1電極と第2部分との間に形成される電界によるメディアの加熱量に比べて大きいことを簡易に実現できる。
【0066】
(4)上記形態では、前記第1部分の前記搬送方向における幅は、前記第2部分の前記搬送方向における幅に比べて小さくてもよい。このような形態によれば、第1部分の幅を第2部分の幅に比べて小さくすることで、第1電極と第1部分との間に形成される電界によるメディアの加熱量が、第1電極と第2部分との間に形成される電界によるメディアの加熱量に比べて大きいことを簡易に実現できる。
【0067】
(5)上記形態では、前記電極ユニットは、前記電極ユニットの共振周波数の、前記第1電極と前記第1部分との間に形成される電界によって加熱される前記メディアの含水量の変化に対する感度が、前記第1電極と前記第2部分との間に形成される電界によって加熱される前記メディアの含水量の変化に対する感度に比べて高くなるように構成されていてもよい。このような形態によれば、電極ユニット全体の加熱量の、第1電極と第1部分との間に形成される電界によって加熱されるメディアの含水量の変化に対する感度を、第1電極と第2部分との間に形成される電界によって加熱されるメディアの含水量の変化に対する感度に比べて高くすることができる。そのため、メディアをより均一に乾燥できる可能性が高まる。
【符号の説明】
【0068】
30,30b,30c…電極ユニット、31…第1電極、32,32b,32c…第2電極、33…接続部材、34…コイル、35…電線、36,36b,36c…第1部分、37,37b…第2部分、80…電圧印加部、100…誘電加熱装置、110…基板、250…制御部、320…搬送部、323…ローラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9