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特開2024-108211ヘアドライヤーおよびヘアケア用フィルタユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108211
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ヘアドライヤーおよびヘアケア用フィルタユニット
(51)【国際特許分類】
   A45D 20/10 20060101AFI20240805BHJP
   A45D 20/12 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A45D20/10 Z
A45D20/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012457
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】523441315
【氏名又は名称】株式会社トランプ
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】太田 丈盛
【テーマコード(参考)】
3B040
【Fターム(参考)】
3B040CA01
3B040CA06
3B040CK02
(57)【要約】
【課題】ヘアケア効果をより一層高めることができるヘアドライヤーを実現する。
【解決手段】ヘアドライヤー100は、通風孔21cを有する格子状のマイナスイオン発生部材21(第1フィルタ)と、通風孔22cを有する格子状の遠赤外線発生部材22(第2フィルタ)と、通風孔33bを有するリング状のマグネット33(第3フィルタ)と、これらを保持する共通のホルダー23とを備えている。マイナスイオン発生部材21は、遠赤外線発生部材22よりも空気吹出し口3側に位置しており、マグネット33は、マイナスイオン発生部材21よりも空気吹出し口3側に位置している。ヘアドライヤー100を動作させると、空気吹出し口3から放出されるマイナスイオンと遠赤外線に加えて、マグネット33の発生する磁力線が毛髪に作用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に空気吹出し口を有する本体部と、
前記本体部に内蔵された送風ファンと、
前記送風ファンから送り出される風の通路に配置された発熱部と、
前記発熱部に対して前記空気吹出し口側に配置され、前記風が通過する第1通風孔を有する、マイナスイオン発生部材からなる第1フィルタと、
前記発熱部に対して前記空気吹出し口側に配置され、前記風が通過する第2通風孔を有する、遠赤外線発生部材からなる第2フィルタと、
前記発熱部に対して前記空気吹出し口側に配置され、前記風が通過する第3通風孔を有する、マグネットからなる第3フィルタと、を備え、
前記第1フィルタ、前記第2フィルタ、および前記第3フィルタは、前記空気吹出し口の近傍で互いに近接して設けられており、
前記第1フィルタは、前記第2フィルタよりも前記空気吹出し口側に位置しており、
前記第3フィルタは、前記第1フィルタよりも前記空気吹出し口側に位置している、ことを特徴とするヘアドライヤー。
【請求項2】
請求項1に記載のヘアドライヤーにおいて、
前記第1フィルタは、複数の前記第1通風孔が形成された格子状のフィルタであり、
前記第2フィルタは、複数の前記第2通風孔が形成された格子状のフィルタであり、
前記第3フィルタは、単一の前記第3通風孔が形成されたリング状のフィルタである、ことを特徴とするヘアドライヤー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のヘアドライヤーにおいて、
前記第1フィルタは、マイナスイオンを発生する物質のパウダーを含有するセラミックからなり、
前記第2フィルタは、遠赤外線を発生する物質のパウダーを含有するセラミックからなり、
前記第3フィルタは、前記空気吹出し口の前方に磁場を形成する永久磁石からなる、ことを特徴とするヘアドライヤー。
【請求項4】
請求項2に記載のヘアドライヤーにおいて、
前記空気吹出し口側からみて、全ての前記第1通風孔と、全ての前記第2通風孔とが重なり、
前記空気吹出し口側からみて、前記第3通風孔は、前記第1通風孔と前記第2通風孔のうち、前記マグネットの周縁部と対向する通風孔を除く全ての通風孔と重なる、ことを特徴とするヘアドライヤー。
【請求項5】
請求項1に記載のヘアドライヤーにおいて、
前記第3フィルタよりも前記空気吹出し口側に、磁性体からなる格子状のグリルが配置されており、
前記グリルは、前記第3フィルタの磁力によって当該第3フィルタに吸着されている、ことを特徴とするヘアドライヤー。
【請求項6】
請求項1に記載のヘアドライヤーにおいて、
前記第1フィルタ、前記第2フィルタ、および前記第3フィルタは、共通のホルダーに保持されている、ことを特徴とするヘアドライヤー。
【請求項7】
請求項6に記載のヘアドライヤーにおいて、
前記ホルダーは、両端が開口した中空円筒体であって、柔軟な弾性材料から形成されており、
前記ホルダーの前記空気吹出し口側の開口には、当該開口を囲むように環状の第1リブが設けられており、
前記ホルダーの前記空気吹出し口と反対側の開口には、当該開口を囲むように環状の第2リブが設けられており、
前記ホルダーの内面には、周方向に沿って環状の第3リブが設けられており、
前記第1フィルタは、前記ホルダーの内部において、前記第1リブと前記第3リブとの間に保持されており、
前記第2フィルタは、前記ホルダーの内部において、前記第2リブと前記第3リブとの間に保持されており、
前記第3フィルタは、前記ホルダーの前記空気吹出し口側の開口において、前記第1リブに嵌め込まれて、当該第1リブに保持されている、ことを特徴とするヘアドライヤー。
【請求項8】
請求項7に記載のヘアドライヤーにおいて、
前記第1リブと前記第3リブとの間に、前記ホルダーの軸方向に延びる第4リブが形成されており、
前記第2リブと前記第3リブとの間に、前記ホルダーの軸方向に延びる第5リブが形成されており、
前記第1フィルタに、前記第4リブと係合する第1係合部が形成されており、
前記第2フィルタに、前記第5リブと係合する第2係合部が形成されている、ことを特徴とするヘアドライヤー。
【請求項9】
先端に空気吹出し口を有する本体部と、前記本体部に内蔵された送風ファンと、前記送風ファンから送り出される風の通路に配置された発熱部とを備えたヘアドライヤーに内蔵されるヘアケア用フィルタユニットであって、
前記発熱部に対して前記空気吹出し口側に配置され、前記風が通過する第1通風孔を有する、マイナスイオン発生部材からなる第1フィルタと、
前記発熱部に対して前記空気吹出し口側に配置され、前記風が通過する第2通風孔を有する、遠赤外線発生部材からなる第2フィルタと、
前記発熱部に対して前記空気吹出し口側に配置され、前記風が通過する第3通風孔を有する、磁気発生部材からなる第3フィルタと、
前記第1フィルタ、前記第2フィルタ、および前記第3フィルタを保持する共通のホルダーと、を備え、
前記第1フィルタ、前記第2フィルタ、および前記第3フィルタは、互いに近接して前記ホルダーに保持されており、
前記第1フィルタは、前記第2フィルタよりも前記空気吹出し口側に位置し、
前記第3フィルタは、前記第1フィルタよりも前記空気吹出し口側に位置する、ことを特徴とするヘアケア用フィルタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭や美容院・理髪店などで用いられるヘアドライヤーに関し、また、ヘアドライヤーに内蔵されるヘアケア用フィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヘアドライヤーは、ヒータや送風ファンなどを内蔵した筒状の本体部と、この本体部の後部に設けられた把持用のハンドル部とを備えている。そして、ハンドル部を手で把持した状態で、当該ハンドル部に設けられているスイッチを操作することで、本体部の先端の空気吹出し口から温風または冷風を吹き出して、毛髪を乾燥させる。
【0003】
ヘアドライヤーには、毛髪を乾燥させるだけでなく、たとえば特許文献1~5に記載されているような、空気吹出し口から風とともにマイナスイオンや遠赤外線を放出して毛髪をケアする機能を備えたものがある。このようなヘアドライヤーでは、マイナスイオン発生部材や遠赤外線発生部材が、本体部に内蔵されている。
【0004】
ところで、ヘアドライヤーでは、ヒータを発熱させ、送風ファンを回転させることで温風を生成するが、ヒータはかなりの高温となるため、送風ファンから送り出される風の流れが悪いと、ドライヤー内部に熱がこもった状態となる。そして、この熱によりドライヤー内部の温度が異常に高温になると、サーモスタットが作動してヒータへの通電が自動的に遮断され(オートリセット機能)、ヘアドライヤーが一時的に使用できなくなる。
【0005】
前述のマイナスイオン発生部材や遠赤外線発生部材は、風の流れる方向に向って送風ファンより前方に配置されるため、送風ファンから送り出される風の流れを阻害する要因となる。特に、マイナスイオン発生部材と遠赤外線発生部材の両方を設けた場合は、風の流れが悪くなって内部が高温となり、頻繁にオートリセット機能が働いてヘアドライヤーの使用に支障をきたすおそれがある。
【0006】
また、特許文献1や特許文献2のヘアドライヤーでは、マイナスイオンを発生させる部分が、空気吹出し口から離れた奥の位置に設けられているため、空気吹出し口から放出されるマイナスイオンの数が減少し、マイナスイオンによる十分なヘアケア効果が得られないという問題がある。
【0007】
この対策として、本出願人は、特許文献6に記載されている新規な構造のヘアドライヤーを開発し、市場に提供している。このヘアドライヤーでは、格子状のマイナスイオン発生部材および格子状の遠赤外線発生部材が、空気吹出し口の近傍において互いに近接して設けられており、マイナスイオン発生部材は、遠赤外線発生部材よりも空気吹出し口側に位置している。
【0008】
この構造によると、送風ファンから送り出される風は、格子状のマイナスイオン発生部材および遠赤外線発生部材に形成された多数の通風孔を通って、円滑に流れる。このため、空気吹出し口から排出される風の量が増加するとともに、ドライヤー内部の風の流れが良くなって、熱が内部にこもるのが抑制される。その結果、マイナスイオン発生部材と遠赤外線発生部材の両方を設けた場合でも、内部温度が異常に高温になることはなく、オートリセット機能が頻繁に働いてドライヤーの使用に支障をきたすのを回避することができる。
【0009】
また、マイナスイオン発生部材が、遠赤外線発生部材よりも空気吹出し口側に位置しているので、マイナスイオン発生部材を遠赤外線発生部材の内側(空気吹出し口と反対側)に配置した場合に比べて、空気吹出し口から放出されるマイナスイオンの数が増加し、十分なヘアケア効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実用新案登録第3130650号公報
【特許文献2】実用新案登録第3110484号公報
【特許文献3】実用新案登録第3081732号公報
【特許文献4】特公平8-24606公報
【特許文献5】実公平3-54647公報
【特許文献6】特許第6053906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、上述した特許文献6のヘアドライヤーに更なる改良を加えることによって、ヘアケア効果をより一層高めることができるヘアドライヤーを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るヘアドライヤーは、先端に空気吹出し口を有する本体部と、この本体部に内蔵された送風ファンと、この送風ファンから送り出される風の通路に配置された発熱部と、この発熱部に対して空気吹出し口側に配置され、風が通過する第1通風孔を有するマイナスイオン発生部材からなる第1フィルタと、発熱部に対して空気吹出し口側に配置され、風が通過する第2通風孔を有する遠赤外線発生部材からなる第2フィルタと、発熱部に対して空気吹出し口側に配置され、風が通過する第3通風孔を有するマグネットからなる第3フィルタとを備えている。第1フィルタ、第2フィルタ、および第3フィルタは、空気吹出し口の近傍で互いに近接して設けられていて、第1フィルタは、第2フィルタよりも空気吹出し口側に位置しており、第3フィルタは、第1フィルタよりも空気吹出し口側に位置している。
【0013】
上記のような構成によると、空気吹出し口に配備された第3フィルタにより、空気吹出し口の前方に磁場が形成される。このため、マイナスイオンと遠赤外線に加えて、第3フィルタから発生した磁力線が、空気吹出し口より放射されて毛髪に作用する。その結果、後述するように、マイナスイオンと遠赤外線だけを毛髪に作用させた場合に比べて、髪の乾燥時間が短くなるとともに、髪により一層の艶を与えることができる。
【0014】
また、本発明では、発熱部から空気吹出し口に向って、第2フィルタと第1フィルタと第3フィルタとが、この順序で配置される。このため、第3フィルタと毛髪との距離が短くなって、第3フィルタから十分な磁力が毛髪に作用する。さらに、第3フィルタと発熱部との距離が長くなって、第3フィルタが熱の影響を受けにくくなるので、第3フィルタの磁力の低下が抑制され、第3フィルタと毛髪との距離が短くなることと相まって、毛髪に作用する磁力を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、空気吹出し口の前方に形成される磁場の作用によって、髪をより短時間で乾燥させることができ、また髪の艶出し効果を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によるヘアドライヤーの断面を示した側面図である。
図2】本発明によるヘアドライヤーの分解斜視図である。
図3】本発明によるヘアドライヤーの正面図である。
図4】マイナスイオン発生部材の正面図である。
図5】遠赤外線発生部材の正面図である。
図6】マグネットの正面図である。
図7】通風孔の重なりを説明する図である。
図8】マグネットの温度特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図を通して、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0018】
図1図3に示すように、本実施形態に係るヘアドライヤー100は、円筒状の本体部1と、把持用のハンドル部2とを備えている。本体部1の先端には、空気吹出し口3が設けられている。本体部1は、ケース1aと、このケース1aに装着されるカバー1bとから構成されている。本体部1の空気吹出し口3と反対側には、キャップ5が着脱自在に装着されている。このキャップ5には、図1に示すように、本体部1内に空気を導入するための複数の透孔5aと、ハンドル部2を手で把持した状態で親指を受ける窪み9が形成されている。
【0019】
ハンドル部2は、本体部1の後部(空気吹出し口3と反対側)に設けられている。このハンドル部2には、図3に示すように、電源のオン・オフおよび運転モード(HIGH/LOW)の切り替えを行うための主操作ボタン7と、冷風吹出し用の補助操作ボタン8とが設けられている。また、ハンドル部2の下端にはコード用のブッシュ11が連結されており、このブッシュ11から図示しない電源コードが引き出される。本体部1の下面には、掌で把持可能な大きさの隆起部6が一体に設けられている。
【0020】
図2に示すように、ケース1aは合成樹脂製の分割された一対のケースからなり、各ケース1aに、ハンドル部2の半分が一体に形成されている。図3における符号10は、一対のケース1a(およびハンドル部2)の接合部を表している。図1図3では省略されているが、ケース1aに装着されるカバー1bの先端部1cには、図2に示すようなノズル40が着脱自在に装着される。ノズル40の開口40aは、カバー1bの空気吹出し口3と連通している。
【0021】
空気吹出し口3には、図2に示した格子状のグリル20が配設される。本実施形態では、このグリル20は、鉄などの磁性体から形成されている。図1に示すように、グリル20の内側には、ヘアケア用のフィルタユニットFが配設されている。このフィルタユニットFは、格子状のマイナスイオン発生部材21(第1フィルタ)と、格子状の遠赤外線発生部材22(第2フィルタ)と、リング状のマグネット33(第3フィルタ)と、これらを保持する共通のホルダー23とから構成されている。フィルタユニットFの詳細については後述する。
【0022】
図1に示すように、本体部1には、送風ファン27と、この送風ファン27を駆動するモータ32と、送風ファン27から送り出される風の通路に配置された発熱部25とが内蔵されている。送風ファン27の周囲には整流翼26が設けられ、発熱部25と本体部1(ケース1a)との間には遮熱板24が設けられている。また、ハンドル部2には、主操作ボタン7と連動して回路の開閉を行うスライドスイッチ29が内蔵されている。図1では表れていないが、ハンドル部2には、補助操作ボタン8と連動して回路の開閉を行うマイクロスイッチ30(図2参照)も内蔵されている。
【0023】
発熱部25は、送風ファン27と空気吹出し口3との間に設けられており、ヒータプレート25aを備えている。このヒータプレート25aは、図2に示すように、空気吹出し口3側からみて十字形となっている。ヒータプレート25aには、ニクロム線などからなるヒータ(図示省略)が装備される。
【0024】
図1および図2に示すように、マイナスイオン発生部材21は、発熱部25に対して空気吹出し口3側に配置されていて、遠赤外線発生部材22よりも外側(空気吹出し口3側)に位置している。図4に示すように、マイナスイオン発生部材21は、縦格子21aおよび横格子21bと、これらの格子21a、21bにより形成される複数の通風孔21c(第1通風孔)と、位置決め用の凹部からなる係合部21d(第1係合部)とを有している。このマイナスイオン発生部材21は、マイナスイオンを発生する酸化ジルコニウム等のパウダーを練り込んだ、円盤状のセラミックからなる。本実施形態では、パウダーの含有率は40%である。
【0025】
図1および図2に示すように、遠赤外線発生部材22は、発熱部25に対して空気吹出し口3側に配置されていて、マイナスイオン発生部材21よりも内側(空気吹出し口3と反対側)に位置している。図5に示すように、遠赤外線発生部材22は、縦格子22aおよび横格子22bと、これらの格子22a、22bにより形成される複数の通風孔22c(第2通風孔)と、位置決め用の凹部からなる係合部22d(第2係合部)とを有している。この遠赤外線発生部材22は、遠赤外線を発生する温光石のような天然鉱石のパウダーを練り込んだ、円盤状のセラミックからなる。本実施形態では、パウダーの含有率は40%である。
【0026】
磁気発生部材であるマグネット33は、リング状の永久磁石からなり、図1および図2に示すように、発熱部25に対して空気吹出し口3側に配置されていて、マイナスイオン発生部材21よりもさらに外側(空気吹出し口3側)に位置している。図6に示すように、マグネット33は、周縁部33aと、この周縁部33aを除く部分に形成された単一の通風孔33b(第3通風孔)とを有している。マイナスイオン発生部材21や遠赤外線発生部材22に設けられている複数の通風孔21c、22cとは異なり、マグネット33に形成された通風孔33bは、単一で大径の通風孔となっている。本実施形態では、マグネット33は、フェライト磁石から構成されている。一例として、マグネット33の外径は40φ、通風孔33bの孔径は32φ、マグネット33の厚みは2.5mmである。
【0027】
図1に示すように、マイナスイオン発生部材21と遠赤外線発生部材22とマグネット33とは、空気吹出し口3の近傍に、互いに近接して配設されている。また、図2図4図5に示すように、マイナスイオン発生部材21と遠赤外線発生部材22とは、形状および寸法が同一となっている。そして、図1に示すように、マイナスイオン発生部材21、遠赤外線発生部材22、およびマグネット33は、1個の共通のホルダー23に保持されている。
【0028】
図2に示すように、ホルダー23は、両端が開口した中空円筒体であって、シリコンゴムのような柔軟な弾性材料から形成されている。ホルダー23の前側(空気吹出し口3側)の開口には、当該開口を囲むように環状のリブ23a(第1リブ)が設けられている。ホルダー23の後側(空気吹出し口3と反対側)の開口には、当該開口を囲むように環状のリブ23b(第2リブ)が設けられている。また、ホルダー23の内面には、周方向に沿って環状のリブ23c(第3リブ)が設けられているとともに、ホルダー23の軸方向に延びるリブ23d(第4リブ)とリブ23e(第5リブ)が設けられている。リブ23dは、リブ23aとリブ23cとの間に位置し、リブ23eは、リブ23bとリブ23cとの間に位置している。
【0029】
図1に示すように、マイナスイオン発生部材21は、ホルダー23の内部において、リブ23aとリブ23cとの間に保持されており、遠赤外線発生部材22は、ホルダー23の内部において、リブ23bとリブ23cとの間に保持されている。また、マグネット33は、ホルダー23の前側の開口において、リブ23aに嵌め込まれて、当該リブ23aに保持されている。そして、ホルダー23と、このホルダー23に保持されたマイナスイオン発生部材21、遠赤外線発生部材22、およびマグネット33とにより、フィルタユニットFが構成されている。
【0030】
このフィルタユニットFを組み立てるには、たとえば以下のような手順に従う。まず、ホルダー23の前側の開口からマイナスイオン発生部材21を挿入し、このマイナスイオン発生部材21をリブ23aとリブ23cとの間に位置させるとともに、係合部21d(図4参照)をホルダー23のリブ23d(図2参照)に係合させることにより、マイナスイオン発生部材21をホルダー23に位置決めして保持させる。
【0031】
次に、ホルダー23の後側の開口から遠赤外線発生部材22を挿入し、この遠赤外線発生部材22をリブ23bとリブ23cとの間に位置させるとともに、係合部22d(図5参照)をホルダー23のリブ23e(図2参照)に係合させることにより、遠赤外線発生部材22をホルダー23に位置決めして保持させる。
【0032】
最後に、ホルダー23の前側から、マグネット33を環状のリブ23aに嵌め込んで、マグネット33の外周がリブ23aの内周に密着した状態にすることで、マグネット33をホルダー23に位置決めして保持させる。このとき、マグネット33の磁力によって、磁性体のグリル20をマグネット33に吸着させた状態で、マグネット33をリブ23aに嵌合させてもよい。
【0033】
以上のようにして、マイナスイオン発生部材21、遠赤外線発生部材22、およびマグネット33は、図1に示したように、位置決めされた状態でホルダー23に保持される。マイナスイオン発生部材21と遠赤外線発生部材22とは、リブ23cの厚みに相当する一定間隔を隔てて、ホルダー23に保持されている。ホルダー23の外面には溝(図示省略)が形成されており、この溝とケース1aの内面に形成されたリブ(図示省略)とが係合することにより、ホルダー23がケース1aに位置決めされて固定される。なお、ホルダー23の外面にリブを設け、ケース1aの内面に溝を設けてもよい。
【0034】
ホルダー23がケース1aに固定された状態では、マイナスイオン発生部材21の格子21a、21b(図4)と、遠赤外線発生部材22の格子22a、22b(図5)とが、空気吹出し口3側からみて重なる。また、マイナスイオン発生部材21の全ての通風孔21c(図4)と、遠赤外線発生部材22の全ての通風孔22c(図5)とが、空気吹出し口3側からみて重なる。さらに、図7に示すように、マグネット33の単一の通風孔33bは、マイナスイオン発生部材21の各通風孔21cと、遠赤外線発生部材22の各通風孔22cのうち、マグネット33の周縁部33aと対向する通風孔を除く全ての通風孔と重なる。
【0035】
また、マグネット33に隣接して配置されるグリル20も、横格子20a(図3参照)を有しており、マイナスイオン発生部材21の横格子21b(図4参照)と、遠赤外線発生部材22の横格子22b(図5参照)と、グリル20の横格子20aとが、空気吹出し口3側からみて重なる。
【0036】
さらに、発熱部25のヒータプレート25aは、図2に示すように、空気吹出し口3側からみて十字形であり、マイナスイオン発生部材21の格子21a、21bと、遠赤外線発生部材22の格子22a、22bと、グリル20の格子20aと、ヒータプレート25aとが、空気吹出し口3側からみて重なる。
【0037】
発熱部25には、遠赤外線を発生する物質の層が形成されている。詳しくは、ヒータプレート25aとヒータ(図示省略)の一方または両方の表面は、遠赤外線発生物質(たとえば温光石)のパウダーによりコーティングされている。また、遮熱板24にも、遠赤外線を発生する物質の層が形成されている。詳しくは、遮熱板24の内面、すなわち発熱部25側の面は、遠赤外線発生物質(たとえば温光石)のパウダーによりコーティングされている。
【0038】
遮熱板24は、図2に示すようにテーパ状の筒体からなり、発熱部25で発生した熱がケース1aに影響しないようにするため、発熱部25を包囲するように設けられる。遮熱板24の前端(空気吹出し口3側の端部)の外径は、ホルダー23の内径とほぼ同じであり、遮熱板24の前端はホルダー23に嵌合している。また、遮熱板24の後端(空気吹出し口3と反対側の端部)は、整流翼26と隙間無く接合されている。これらの構造により、送風ファン27から送り出される風が、遮熱板24とホルダー23との隙間や、遮熱板24と整流翼26の隙間から漏れるのを防止している。整流翼26とキャップ5との間には、フィルタ部材28が設けられている。
【0039】
なお、図示は省略しているが、ケース1aの内部の適宜箇所には、サーモスタットが配設されており、ケース内の温度が異常に高温になると、サーモスタットが作動して、ヒータへの通電が自動的に遮断されるようになっている(オートリセット機能)。
【0040】
次に、ヘアドライヤー100の動作について説明する。主操作ボタン7を操作して電源をオンにすると、発熱部25のヒータに通電が行われ、発熱部25が発熱するとともに、モータ32に通電が行われ、モータ32の作動に伴って送風ファン27が回転する。送風ファン27の回転により、キャップ5の透孔5aを介して外の空気が本体部1内に導入され、導入された空気は送風ファン27によって、空気吹出し口3へ向って送り出される。この過程で、空気は発熱部25で発生した熱により加熱されて温風となり、この温風は、遠赤外線発生部材22の通風孔22cと、マイナスイオン発生部材21の通風孔21cと、マグネット33の通風孔33bと、グリル20とを通過して、空気吹出し口3から排出される。
【0041】
また、発熱部25には、前述のように、遠赤外線を発生する物質がコーティングされているため、ヒータの発熱によって発熱部25から遠赤外線が発生する。また、遮熱板24の内面にも、遠赤外線を発生する物質がコーティングされているため、ヒータの発熱によって遮熱板24から遠赤外線が発生する。さらに、遠赤外線を発生する物質が練り込まれた遠赤外線発生部材22も、ヒータの発熱によって加熱され、遠赤外線を発生する。これらの遠赤外線は、温風とともに空気吹出し口3から放出され、毛髪に作用する。遠赤外線には、皮膚の奥深くまで浸透して血行を良くしたり、細胞を活性化したりする効能があることが知られている。
【0042】
一方、マイナスイオン発生部材21は、遠赤外線発生部材22に近接して配置されているので、遠赤外線発生部材22の加熱によって温度が上昇し、また、空気吹出し口3へ至る温風によっても温度が上昇する。その結果、マイナスイオン発生部材21からマイナスイオンが発生する。発生したマイナスイオンは、温風とともに空気吹出し口3から放出され、毛髪に作用する。マイナスイオンには、髪に潤いや艶を与えたり、髪の静電気を除去したりする効能があることが知られている。
【0043】
さらに、本発明では、空気吹出し口3に配備されたマグネット33により、空気吹出し口3の前方に磁場が形成される。このため、マイナスイオンと遠赤外線に加えて、マグネット33から発生した磁力線が、空気吹出し口3より放射されて毛髪に作用する。実験によれば、マイナスイオンと遠赤外線だけを毛髪に作用させた場合に比べて、マイナスイオンと遠赤外線と磁力線を毛髪に作用させた場合は、髪の乾燥時間が短くなるとともに、髪の艶がより顕著になることが確認された。
【0044】
毛髪に与える磁気の影響については、まだ十分に解明されていない点も多いが、液体の水は、水素結合によるクラスター構造をとり、磁場を印加するとクラスター構造が変化することが報告されている(正田誠:「生物に及ぼす磁気の影響」日本醸造協会誌,第89巻第9号710-716頁,1994年)。したがって、濡れた毛髪に磁気を作用させると、水分子のクラスターを形成する水素結合が磁気により破壊されて、水分が飛散・蒸発しやすくなり、これが髪の乾燥時間の短縮要因になっていると考えられる。
【0045】
また、毛髪は、中心部にあるメデュラと、メデュラを包囲するコルテックスと、コルテックスを被覆するキューティクルとから構成されるが、髪の艶を左右するのはキューティクルである。キューティクルは、半透明のうろこ状の薄片がタケノコのように積層された多層構造を有しており、積層部分に隙間が無ければ、光をよく反射して髪に十分な艶を与えるが、積層部分に隙間があると、光の一部が隙間に吸収される結果、髪の艶が低下する。
【0046】
ところで、生体を構成する大部分の物質は、磁界の方向と逆方向に磁化される性質を持つ反磁性物質であり、直流磁界下に置かれると、生体組織に磁気トルク作用による配向(分子の向きが揃う現象)が生じることが知られている(上野照剛:「生体に及ぼす磁界の影響」RADIOISOTOPES,Vol.47,No.9,27-36頁,日本アイソトープ協会,1998年)。そして、キューティクルの構成物質の大部分は蛋白質であり、蛋白質は反磁性物質であることから、キューティクルに磁気が作用すると、蛋白質に配向が生じて組織が整列する。その結果、キューティクルの積層部分に隙間が生じなくなって光が反射しやすくなるので、これが髪の艶出し効果を高める要因になっていると考えられる。
【0047】
なお、本発明においては、マグネット33を配置する位置が重要な意味を持つ。マグネット33の磁力を必要以上に強くすると、人体へ悪影響を及ぼす可能性があるため、マグネット33の磁力は一定値以下に抑える必要がある。また一方で、マグネット33の磁力は温度に依存し、温度が高くなると磁力が減少するという問題がある。図8は、永久磁石の温度特性の一例を示している。低温から高温になるにつれて磁束量は減少してゆき、ある温度Tc(キュリー温度)で磁束量がゼロとなって、磁石の磁性が失われる。
【0048】
したがって、図1において、もしマグネット33を遠赤外線発生部材22の後方に配置したとすると、マグネット33の磁力が距離的に毛髪に届きにくくなるばかりか、マグネット33が発熱部25に近接することで、熱の影響によりマグネット33の磁力そのものが低下するため、前述した乾燥時間の短縮や髪の艶出しといった効果が期待できなくなる。
【0049】
また、マグネット33をマイナスイオン発生部材21と遠赤外線発生部材22との間に配置したとすると、マグネット33の磁力は幾分毛髪に届きやすくなるが、もともとの磁力がそれほど強力ではないため、効果は十分とは言えない。また、マグネット33と発熱部25との距離は幾分広がるものの、依然として熱の影響を受けることは避けられない。
【0050】
そこで、本発明では、図1に示したように、発熱部25から空気吹出し口3に向って、遠赤外線発生部材22とマイナスイオン発生部材21とマグネット33とを、この順序で配置している。このような配置により、マグネット33と毛髪との距離がより短くなって、マグネット33から十分な磁力が毛髪に作用するので、髪を短時間で乾燥させることができるとともに、髪の艶出し効果を高めることができる。また、マグネット33と発熱部25との距離がより長くなって、マグネット33が熱の影響を受けにくくなる。このため、マグネット33の磁力の低下が抑制され、マグネット33と毛髪との距離が短くなることと相まって、毛髪に作用する磁力を十分に確保することができる。
【0051】
そして、本発明では、空気吹出し口3から放出される遠赤外線およびマイナスイオンと、マグネット33による磁気とが毛髪に作用する。この磁気は、前述した機能のほかにも、遠赤外線と同様の血行を良くする機能や、マイナスイオンと同様の髪に潤いを与える機能を備えている。このため、遠赤外線とマイナスイオンと磁気の三者による相乗効果が発揮されて、ヘアケア効果を飛躍的に高めることができる。
【0052】
また、本発明では、空気吹出し口3側からみて、マイナスイオン発生部材21の全ての通風孔21cと、遠赤外線発生部材22の全ての通風孔22cとが重なっており、マグネット33の単一の通風孔33bが、上記の通風孔21c、22cのうち、周縁部33aと対向する通風孔を除く全ての通風孔と重なっている(図7参照)。これにより、送風ファン27からの風の流れが良好となるので、送風ファン27の回転数を必要以上に上げなくても、十分な風量を確保することができる。その結果、モータ32の消費電力を低減して、省電力化をはかることができる。
【0053】
また、本発明では、マイナスイオン発生部材21と遠赤外線発生部材22とマグネット33とが、共通のホルダー23に保持されており、これらによって、ヘアドライヤー100に内蔵されるヘアケア用フィルタユニットFが構成されている。このため、フィルタユニットFをあらかじめ組み立てておき、これをヘアドライヤー100のケース1aにセットするだけで、各部材21、22、33をケース1aに容易に取り付けることができる。さらに、前述したようにグリル20をマグネット33に吸着させておくことで、ケース1aにフィルタユニットFを取り付ける際に、グリル20も同時に取り付けることができ、組立工数を低減することができる。
【0054】
また、本発明では、マイナスイオン発生部材21はホルダー23のリブ23a、23cで保持され、遠赤外線発生部材22は、ホルダー23のリブ23b、23cで保持され、さらに各部材21、22の係合部21d、22dがホルダー23のリブ23d、23eと係合している。このため、マイナスイオン発生部材21と遠赤外線発生部材22は、ホルダー23に正確に位置決めされた状態で保持される。これにより、マイナスイオン発生部材21の通風孔21cと、遠赤外線発生部材22の通風孔22cとの間に位置ずれが生じるのを回避することができ、風の円滑な流れが保証される。
【0055】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0056】
前記の実施形態では、マイナスイオン発生部材21と遠赤外線発生部材22に、それぞれ係合部21d、22dを1つだけ設けた例を挙げたが、マイナスイオン発生部材21と遠赤外線発生部材22に、それぞれ2つ以上の係合部を設けてもよい。この場合、ホルダー23には、各係合部と係合するリブが設けられる。
【0057】
前記の実施形態では、マグネット33としてフェライト磁石を用いたが、マグネット33は、ネオジウム磁石やアルニコ磁石などであってもよい。また、マグネット33は永久磁石に限らず、電磁石であってもよい。
【0058】
前記の実施形態では、マグネット33の通風孔33bを単一の通風孔としたが、マグネット33に複数の通風孔を形成してもよい。
【0059】
前記の実施形態では、マイナスイオン発生部材21、遠赤外線発生部材22、およびマグネット33をホルダー23に保持させた例を挙げたが、ホルダー23を省略して、各部材21、22、33を直接ケース1aに取り付けてもよい。
【0060】
前記の実施形態では、マイナスイオン発生部材21と遠赤外線発生部材22の形状を、空気吹出し口3からみて円形としたが、両部材21、22の形状を、空気吹出し口3からみて多角形としてもよい。同様に、マグネット33の形状も、空気吹出し口3からみて多角形としてもよい。
【0061】
前記の実施形態では、マイナスイオン発生部材21と遠赤外線発生部材22の形状および寸法が同一であったが、両部材21、22の形状と寸法は異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 本体部
3 空気吹出し口
20 グリル
21 マイナスイオン発生部材(第1フィルタ)
21c 通風孔(第1通風孔)
21d 係合部(第1係合部)
22 遠赤外線発生部材(第2フィルタ)
22c 通風孔(第2通風孔)
22d 係合部(第2係合部)
23 ホルダー
23a リブ(第1リブ)
23b リブ(第2リブ)
23c リブ(第3リブ)
23d リブ(第4リブ)
23e リブ(第5リブ)
25 発熱部
27 送風ファン
33 マグネット(第3フィルタ)
33a 周縁部
33b 通風孔(第3通風孔)
100 ヘアドライヤー
F ヘアケア用フィルタユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8