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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108213
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/08 20060101AFI20240805BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F04D29/08 F
F16J15/447
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012459
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 不学
【テーマコード(参考)】
3H130
3J042
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB47
3H130AB69
3H130AC30
3H130BA53D
3H130BA53F
3H130DA02Z
3H130DC12X
3H130EA06D
3H130EA06F
3H130EC17F
3J042AA04
3J042BA03
3J042CA01
3J042CA07
3J042CA10
3J042CA15
3J042DA13
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で回転軸とケーシングとの隙間におけるシール性を高める。
【解決手段】回転機械は、回転軸とケーシングとの間に形成される環状空間をシールガスによってシールするシール機構と、環状空間にシールガスを供給するシールガス供給ラインと、環状空間内のシールガスを、圧縮部の吸入口に導くガス導出ラインと、を備える。シール機構は、第一シール部と、第二シール部と、第三シール部と、を備え、第二シール部は、第一シール部及び第三シール部よりも高いシール性を有したカーボンリングシールを備え、第二シール部は、第一シール部と第三シール部との間で、環状空間を、高圧空間と低圧空間とに区画し、ガス導出ラインは、高圧空間と、低圧空間よりも圧力の低い圧縮部の吸入口とを接続している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転可能な回転軸、及び前記回転軸と一体に回転し、流体を圧縮する圧縮部を備えるロータと、
前記軸線を中心とした径方向の外側から前記ロータを覆うケーシングと、
前記回転軸と前記ケーシングとの間に形成される環状空間をシールガスによってシールするシール機構と、
前記環状空間にシールガスを供給するシールガス供給ラインと、
前記環状空間内の前記シールガスを、前記圧縮部の吸入口に導くガス導出ラインと、を備え、
前記シール機構は、
第一シール部と、
前記第一シール部に対して、前記圧縮部から離れるように軸方向に間隔をあけて配置された第二シール部と、
前記第二シール部に対して、前記軸方向で前記第一シール部とは反対側に間隔をあけて配置された第三シール部と、を備え、
前記第二シール部は、前記第一シール部及び前記第三シール部よりも高いシール性を有し、前記回転軸に対して前記径方向の外側に配置されて前記軸線回りの周方向に延びるカーボンリングシールを備え、
前記第二シール部は、前記第一シール部と前記第三シール部との間で、前記第二シール部に対して前記軸方向で前記第一シール部に近い高圧空間と、前記第二シール部に対して前記軸方向で前記第三シール部に近く、前記高圧空間よりも圧力の低い低圧空間とに前記環状空間を区画し、
前記ガス導出ラインは、前記高圧空間と、前記低圧空間よりも圧力の低い前記圧縮部の吸入口とを接続している圧縮機。
【請求項2】
前記第二シール部における前記径方向の内側の第二シール内周端と、前記回転軸の外周面とのクリアランスは、前記第一シール部における前記径方向の内側の第一シール内周端と前記回転軸の外周面とのクリアランス、及び前記第三シール部における前記径方向の内側の第三シール内周端と前記回転軸の外周面とのクリアランスよりも小さい請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記圧縮部は、前記回転軸の前記径方向の外側に配置されたインペラを備え、
前記ガス導出ラインは、前記高圧空間と前記インペラの吸入口とを接続している請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮部を複数備え
複数の前記圧縮部により前記流体を順次圧縮し、
前記シール機構は、複数の前記圧縮部のうち、最も圧力の低い前記圧縮部に対して前記軸方向で隣接する位置に配置され、
前記ガス導出ラインは、最も圧力の低い前記圧縮部の前記インペラの吸入口に接続されている請求項3に記載の圧縮機。
【請求項5】
最も圧力の低い前記圧縮部は、前記流体を100barG以下の圧力で圧縮する請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記第二シール部は、前記カーボンリングシールを複数備える請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記第一シール部は、前記回転軸に対して前記径方向の外側に配置されて前記軸線回りの周方向に延びるカーボンリングシールを備える請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項8】
前記低圧空間と前記ケーシングの外部とを接続するガス排出ラインをさらに備え、
前記ガス導出ラインの少なくとも一部と、前記ガス排出ラインの少なくとも一部と、前記シールガス供給ラインの少なくとも一部とが、前記軸方向で重なる位置に配置されている請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項9】
前記第一シール部は、前記軸方向に離れた複数のシールを有する請求項1又は2に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセスガス(流体)を圧縮する圧縮機において、回転軸に取り付けられたインペラを備えた構造がある。このような圧縮機は、ケーシング内に形成された流路を介して外部から供給された流体を、回転軸とともに回転するインペラによって圧縮する。
【0003】
このような圧縮機は、ケーシングの内部で圧縮されるプロセスガスが、回転軸とケーシングとの隙間から外部へ漏れることを抑制する軸シール機構を備えている。軸シール機構は、回転軸と回転軸の外周側を覆うステータとの間の環状空間を、軸方向で高圧側と低圧側とに区画している。例えば、特許文献1には、封止対象の製品側(内部側)と大気側(外部)との間に並んで配置された第1シール、第2シール、及び第3シールを備えた構成が開示されている。この構成において、第2シールは、第1シールと第3シールとの間に配置されている。この構造では、第2シールに対して軸方向の一方側(製品側)に隣接する空間の圧力と、第2シールに対して軸方向の他方側(大気側)に隣接する空間の圧力とが等しくされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6513809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、第2シールに対して軸方向の一方側の空間と、軸方向の他方側の空間との圧力バランスを維持するための機構が必要となる。そのため、シール性を高めるための構造が複雑となっている。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、簡易な構成で回転軸とケーシングとの隙間におけるシール性を高めることができる圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る圧縮機は、軸線回りに回転可能な回転軸、及び前記回転軸と一体に回転し、流体を圧縮する圧縮部を備えるロータと、前記軸線を中心とした径方向の外側から前記ロータを覆うケーシングと、前記回転軸と前記ケーシングとの間に形成される環状空間をシールガスによってシールするシール機構と、前記環状空間にシールガスを供給するシールガス供給ラインと、前記環状空間内の前記シールガスを、前記圧縮部の吸入口に導くガス導出ラインと、を備え、前記シール機構は、第一シール部と、前記第一シール部に対して、前記圧縮部から離れるように軸方向に間隔をあけて配置された第二シール部と、前記第二シール部に対して、前記軸方向で前記第一シール部とは反対側に間隔をあけて配置された第三シール部と、を備え、前記第二シール部は、前記第一シール部及び前記第三シール部よりも高いシール性を有し、前記回転軸に対して前記径方向の外側に配置されて前記軸線回りの周方向に延びるカーボンリングシールを備え、前記第二シール部は、前記第一シール部と前記第三シール部との間で、前記第二シール部に対して前記軸方向で前記第一シール部に近い高圧空間と、前記第二シール部に対して前記軸方向で前記第三シール部に近く、前記高圧空間よりも圧力の低い低圧空間とに前記環状空間を区画し、前記ガス導出ラインは、前記高圧空間と、前記低圧空間よりも圧力の低い前記圧縮部の吸入口とを接続している。
【発明の効果】
【0008】
本開示の圧縮機によれば、簡易な構成で回転軸とケーシングとの隙間におけるシール性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る圧縮機の概略構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る圧縮機の回転軸、インペラ、及びシール機構を示す断面図である。
図3】本実施形態に係る低圧段側のシール機構の構成を示す断面図である。
図4】本実施形態に係る低圧段側に形成された、シールガス供給ライン、ガス導出ライン、ガス排出ラインの配置の一例を示す図である。
図5】本実施形態の変形例に係る低圧段側のシール機構の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示による圧縮機を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0011】
(圧縮機の構成)
図1に示すように、本実施形態に係る圧縮機10は、ケーシング11(図2参照)と、ロータ12と、ピニオンギア15、駆動歯車16と、低圧段シール機構(シール機構)50(図2参照)と、高圧段シール機構(シール機構)70と、を主に備えている。本実施形態の圧縮機10は、ギアド遠心圧縮機である。圧縮機10は、流体を圧縮する。ここで、圧縮機10で圧縮する流体としては、例えば、二酸化炭素、水素、空気、各種の腐食性ガス等の気体が挙げられる。
【0012】
図1に示すように、ロータ12は、回転軸13と、インペラ14と、を備えている。回転軸13は、軸線Oを中心とする柱状をなしている。回転軸13は、軸線O回りに回転可能とされている。回転軸13は、一対のラジアル軸受17と、スラスト軸受18とによって支持されている。ラジアル軸受17は、ケーシング11内において軸方向Da(回転軸13の軸線Oの延びる方向)に間隔をあけて一対が配置されている。ラジアル軸受17は、ケーシング11に保持されている。ラジアル軸受17によって、回転軸13は、径方向Drへの移動が規制されている。スラスト軸受18は、ピニオンギア15に対して軸方向Daに離れた位置に配置されている。スラスト軸受18によって、回転軸13は、軸方向Daへの移動が規制されている。
【0013】
インペラ14は、ラジアル軸受17から軸方向Daに離れた位置で回転軸13に固定されている。インペラ14は、回転軸13と一体に軸線O回りに回転する。本実施形態のインペラ14は、一対のラジアル軸受17よりも軸方向Daの外側で、回転軸13の端部に固定されている。具体的には、インペラ14として、ピニオンギア15に対して軸方向Daの第一側Da1に配置された第一インペラ14Aと、ピニオンギア15に対して軸方向Daの第二側Da2に配置された第二インペラ14Bと、が備えられている。
【0014】
図2に示すように、各インペラ14(第一インペラ14A及び第二インペラ14B)は、本実施形態において、ディスク部141とブレード部142を備えた、いわゆるオープンインペラである。なお、第一インペラ14Aと第二インペラ14Bとでは、互いに同様の構成を有している。そこで、以下では、代表的に第一インペラ14Aを例に説明する。
【0015】
第一インペラ14Aでは、ディスク部141は、軸線Oを中心とする円盤状をなしている。ディスク部141は、ディスク部141の軸方向Daの一方側(軸方向Daの第一側)の第一面141aから他方側(軸方向Daの第二側)の第二面141bに向かって、外径が漸次拡大する凹状湾曲面として形成されている。ディスク部141には、軸線Oを中心とする周方向に間隔をあけて複数のブレード部142が固定されている。複数のブレード部142は、ディスク部141の軸方向Daの一方側を向く面である第一面141aから軸方向Daの一方側に向かって延びている。
【0016】
ディスク部141とブレード部142とによってインペラ流路145が形成されている。インペラ流路145は、軸方向Daの一方側に向かって開口する吸入口145iと、インペラ14の軸線Oを中心とする径方向Drの外側に向かって開口する吐出口145oと、を有している。つまり、吸入口145iは、インペラ14において径方向Drの内側Driに形成されている。吐出口145oは、インペラ14において径方向Drの外側Droに形成されている。
【0017】
図1に示すように、ピニオンギア15は、回転軸13の一対のラジアル軸受17の間に配置されている。即ち、ピニオンギア15は、一対のラジアル軸受17よりも軸方向Daの内側に配置されている。駆動歯車16は、ピニオンギア15に噛み合っている。駆動歯車16は、外部の駆動源によって回転駆動される。駆動歯車16は、ピニオンギア15よりも外径寸法が大きく設定されている。したがって、ピニオンギア15を有する回転軸13の回転数は、駆動歯車16の回転数よりも大きくなる。
【0018】
このようなピニオンギア15と、駆動歯車16とによって、外部の駆動源による駆動歯車16の回転数を、ピニオンギア15を介して増速させて回転軸13に伝達する増速伝達部20が構成されている。
【0019】
図2に示すように、ケーシング11は、圧縮機10の外殻を形成する。ケーシング11は、ロータ12を径方向Drの外側Droから覆っている。本実施形態のケーシング11は、インペラ14の周囲に形成された吸気流路118及び排気流路119を有している。吸気流路118は、インペラ流路145の吸入口145iと連通している。吸気流路118は、インペラ流路145の吸入口145iに対して、軸方向Daに連続するように形成されている。排気流路119は、インペラ流路145の吐出口145oと連通している。排気流路119は、インペラ流路145の吐出口145oに対して径方向Drの外側Droに形成されている。
【0020】
流体Gfは、インペラ14が回転軸13と一体に回転することで、吸気流路118から吸入口145iを経てインペラ流路145に取り込まれる。流体は、インペラ流路145の吸入口145iから吐出口145oに向かって流れる間に圧縮される。圧縮された流体は、吐出口145oから径方向Drの外側Droに流出し、排気流路119に送り込まれる。排気流路119に送り込まれた流体は、排気流路119に沿って周方向Dc回りに旋回する間に、さらに圧縮される。
【0021】
このようなインペラ14、吸気流路118、及び排気流路119によって、流体を圧縮する圧縮部30が構成されている。これにより、図1に示すように、圧縮機10は、増速伝達部20を挟んだ軸方向Daの両側に配置される一対の圧縮部30を備えている。一対の圧縮部30は、増速伝達部20を挟んで軸方向Daの第一側Da1に配置された1段目の圧縮部30Aと、増速伝達部20を挟んで軸方向Daの第二側Da2に配置された2段目の圧縮部30Bと、を備える。すなわち、この圧縮機10は、1軸2段の圧縮機として構成されている。
【0022】
このような圧縮機10においては、1段目の圧縮部30Aの第一インペラ14Aによって圧縮された流体は、続いて2段目の圧縮部30Bに流入する。この2段目の圧縮部30Bの第二インペラ14Bを流通する過程で、この流体はさらに圧縮されて、より高圧の流体となる。つまり、圧縮機10は、複数の圧縮部30により流体Gfを段階的に圧縮する。したがって、本実施形態では、1段目の圧縮部30Aが、複数の圧縮部30のうち、最も圧力の低い圧縮部30である。さらに、2段目の圧縮部30Bが、複数の圧縮部30のうち、最も圧力の高い圧縮部30である。最も圧力の低い1段目の圧縮部30Aは、流体Gfを100barG以下の圧力で圧縮する。
【0023】
(低圧段シール機構の構成)
図2及び図3に示すように、低圧段シール機構50は、ケーシング11と回転軸13との間をシールガスによってシールするシール機構である。低圧段シール機構50は、複数の圧縮部30のうち、最も圧力の低い圧縮部30に対して軸方向Daで最も近い位置に配置されている。本実施形態では、低圧段シール機構50は、複数の圧縮部30のうちで最も圧力の低い1段目の圧縮部30Aに対して軸方向Daで隣接する位置に配置されている。
【0024】
低圧段シール機構50は、流体Gfがケーシング11内から外部に漏れることを抑えている。低圧段シール機構50は、ケーシング11と回転軸13との隙間に配置されている。回転軸13とケーシング11との間には、環状空間Sが形成されている。環状空間Sは、インペラ14に対し、軸方向Daにおいてインペラ14から離れた位置に形成されている。低圧段シール機構50は、環状空間SをシールガスGsによってシールしている。
【0025】
低圧段シール機構50は、第一低圧シール部(第一シール部)51と、第二低圧シール部(第二シール部)52と、第三低圧シール部(第三シール部)53と、を備えている。第一低圧シール部51、第二低圧シール部52、及び第三低圧シール部53は、それぞれケーシング11に固定されている。第一低圧シール部51、第二低圧シール部52、及び第三低圧シール部53は、軸方向Daに間隔をあけて配置されている。
【0026】
第一低圧シール部51は、軸方向Daにおいて、第一低圧シール部51、第二低圧シール部52、及び第三低圧シール部53のうちで、第一インペラ14Aに最も近い位置に配置されている。第二低圧シール部52は、第一低圧シール部51に対して、1段目の圧縮部30Aから離れるように、軸方向Daに間隔をあけて配置されている。つまり、第二低圧シール部52は、圧縮部30から離れるように、第一低圧シール部51に対して軸方向Daに離れている。第三低圧シール部53は、第二低圧シール部52に対して、軸方向Daで第一低圧シール部51とは反対側に間隔をあけて配置されている。つまり、第三低圧シール部53は、第一低圧シール部51、第二低圧シール部52、及び第三低圧シール部53のうちで、第一インペラ14Aから最も離れた位置に配置されている。
【0027】
第二低圧シール部52は、第一低圧シール部51と第三低圧シール部53との間で、環状空間Sを、高圧空間SHと、高圧空間SHよりも圧力の低い低圧空間SLとに区画している。高圧空間SHは、軸方向Daにおいて、第二低圧シール部52と第一低圧シール部51とで区画された空間である。高圧空間SHは、第二低圧シール部52に対して、軸方向Daで第一低圧シール部51に近い位置に形成されている。低圧空間SLは、軸方向Daにおいて、第二低圧シール部52と第三低圧シール部53とで区画された空間である。低圧空間SLは、第二低圧シール部52に対して軸方向Daで第三低圧シール部53に近い位置(第一インペラ14Aから遠い位置)に形成されている。
【0028】
図3に示すように、第一低圧シール部51は、環状となるように、軸線O回りの周方向Dcに延びている。第一低圧シール部51は、環状空間Sをシールしている。本実施形態において、第一低圧シール部51は、第一ベース部材511と、第一ラビリンス部515と、を備えている。
【0029】
第一ベース部材511は、ケーシング11に固定されている。第一ベース部材511は、環状のブロック部材である。具体的には、第一ベース部材511は、基部511aと、延出部511bとを有している。基部511aは、ケーシング11にボルト等によって固定されている。延出部511bは、基部511aから回転軸13に向かうように径方向Drの内側に延びている。
【0030】
第一ラビリンス部515は、第一ベース部材511の先端に固定されている。第一ラビリンス部515は、延出部511bに対し、径方向Drの内側Driに固定されている。第一ラビリンス部515は、延出部511bから複数のフィン状をなすように突出したラビリンスシールである。第一ラビリンス部515の先端は、第一低圧シール部51において、最も径方向Drの内側Driに位置する第一シール内周端51sを形成している。第一シール内周端51sは、回転軸13の外周面13fに対して微小なクリアランスC1を形成するように配置されている。
【0031】
第一インペラ14Aで圧縮されて吐出口145oから吐出された圧力の高い流体Gfのうちの一部は、第一インペラ14Aの背面とケーシング11との隙間から漏れ出る。漏れ出た流体Gfは、第一シール内周端51sと回転軸13の外周面13fとのクリアランスC1から、高圧空間SHに流入する。
【0032】
第三低圧シール部53は、環状となるように、軸線O回りの周方向Dcに延びている。第三低圧シール部53は、環状空間Sをシールしている。第三低圧シール部53は、一対の第三ラビリンス部535A及び535Bを備えている。一対の第三ラビリンス部535A及び535Bは、軸方向Daにおいて間隔をあけて配置されている。一対の第三ラビリンス部535A及び535Bは、ケーシング11に固定されている。一対の第三ラビリンス部535A及び535Bは、複数のフィン状をなすように突出したラビリンスシールである。一対の第三ラビリンス部535A及び535Bの先端は、第三低圧シール部53において、最も径方向Drの内側Driに位置する第三シール内周端53sを形成している。第三シール内周端53sは、第一低圧シール部51と同程度となるように、回転軸13の外周面13fに対して微小なクリアランスC3を形成するように配置されている。
【0033】
第二低圧シール部52は、環状となるように、軸線O回りの周方向に延びている。第二低圧シール部52は、環状空間Sをシールしている。第二低圧シール部52は、第一低圧シール部51及び第三低圧シール部53よりも高いシール性を有している。本実施形態の第二低圧シール部52は、第二ベース部材521と、シールホルダ522と、カーボンリングシール55と、を備えている。
【0034】
第二ベース部材521は、ケーシング11にボルト等によって固定されている。第二ベース部材521は、環状のブロック部材である。シールホルダ522は、第二ベース部材521に固定されている。
【0035】
シールホルダ522は、第二ベース部材521よりも小さな環状のブロック部材である。シールホルダ522は、収容溝523を有している。収容溝523は、シールホルダ522において、径方向Drの外側Droを向く内周面から、径方向Drの外側Droに窪むように形成されている。収容溝523は、軸線O回りの周方向Dcに連続して延びている。本実施形態において、収容溝523は、軸方向Daに間隔をあけて一対が形成されている。
【0036】
カーボンリングシール55は、カーボン樹脂製の板状の部材である。カーボンリングシール55は、軸方向Daから見た際に、軸線O回りの周方向Dcに延びる円環状に形成されている。カーボンリングシール55は、ラビリンスシールよりも高いシール性を有している。第二低圧シール部52は、カーボンリングシール55を複数(本実施形態では二つ)備えている。複数のカーボンリングシール55は、軸方向Daに間隔をあけて配置されている。各カーボンリングシール55は、一つの収容溝523に収容されている。各カーボンリングシール55は、各収容溝523内で、径方向Drに変位可能に収容されている。このようなカーボンリングシール55は、回転軸13に対して径方向Drの外側Droに配置されている。カーボンリングシール55の先端は、第二低圧シール部52において、最も径方向Drの内側Driに位置する第二シール内周端52sを形成している。第二シール内周端52sは、第一低圧シール部51と同程度となるように、回転軸13の外周面13fに対して微小なクリアランスC2を形成するように配置されている。第二シール内周端52sは、収容溝523(第二ベース部材521の内周面)から径方向Drの内側Driに突出している。
【0037】
また、第二シール内周端52sと回転軸13の外周面13fとのクリアランスC2は、第一シール内周端51sと回転軸13の外周面13fとのクリアランスC1、及び第三シール内周端53sと回転軸13の外周面13fとのクリアランスC3よりも小さい。つまり、カーボンリングシール55は、第一ラビリンス部515と一対の第三ラビリンス部535A及び535Bとに比べて、径方向Drにおいて、回転軸13の外周面13fに近接した位置に配置されている。このようにして、第二低圧シール部52では、第一低圧シール部51及び第三低圧シール部53よりも高いシール性が確保されている。
【0038】
また、圧縮機10は、第一シールガス供給ライン61と、第一ガス導出ライン62と、第一ガス排出ライン63と、をさらに備えている。
【0039】
第一シールガス供給ライン61は、環状空間SにシールガスGsを供給する。第一シールガス供給ライン61は、第三低圧シール部53に接続されている。第一シールガス供給ライン61は、軸方向Daにおいて、第三ラビリンス部535Aと第三ラビリンス部535Bとの中間と連通している。第一シールガス供給ライン61は、ケーシング11を径方向Drに貫通する孔によって形成されている。第一シールガス供給ライン61の一端は、第三ラビリンス部535Aと第三ラビリンス部535Bとの間で、径方向Drの内側Driを向いて開口している。第一シールガス供給ライン61は、ケーシング11の外部に備えられたシールガス供給源(不図示)から、第三シール内周端53sと回転軸13の外周面13fとの間に、シールガスGsを供給する。本実施形態において、シールガスGsとして、例えば、窒素ガスやドライエア等が用いられる。第一シールガス供給ライン61を通して供給されたシールガスGsの一部は、第三シール内周端53sと回転軸13の外周面13fとのクリアランスC3から、低圧空間SLに流入する。また、第一シールガス供給ライン61を通して供給されたシールガスGsの一部は、第三シール内周端53sと回転軸13の外周面13fとのクリアランスC3から、ピニオンギア15や、駆動歯車16や、ラジアル軸受17やスラスト軸受18が配置されたケーシング11の内部の空間に流出する。
【0040】
第一ガス排出ライン63は、低圧段シール機構50における低圧空間SLとケーシング11の外部とを接続する。第一ガス排出ライン63は、第一シールガス供給ライン61を通して低圧空間SLに流入したシールガスGsと、低圧空間SLに漏れ出た流体Gfとを、ケーシング11の外部に排出する。本実施形態の第一ガス排出ライン63は、第一排出ライン631と、第二排出ライン632と、第三排出ライン633と、を有している。
【0041】
第一排出ライン631は、ケーシング11の外部から径方向Drの内側Driに延びている。第一排出ライン631は、軸方向Daにおいて、第一シールガス供給ライン61と重なる位置に配置されている。図4に示すように、第一排出ライン631は、軸方向Daから見た際に、第一シールガス供給ライン61に対して周方向Dcで異なる位置に配置されている。
【0042】
図3に示すように、第二排出ライン632は、第一排出ライン631の径方向Drの内側の端部から、第二低圧シール部52に近づくように軸方向Daに延びている。第三排出ライン633は、第二排出ライン632から、径方向Drの内側Driに延びている。第三排出ライン633は、第三ラビリンス部535Aと第三ラビリンス部535Bとの間で開口し、クリアランスC3と連通している。
【0043】
第一ガス導出ライン62は、環状空間Sのシールガスを、圧縮部30の吸入口145iに導いている。第一ガス導出ライン62は、高圧空間SHと、低圧空間SLよりも圧力の低い圧縮部30の吸入口145iとを接続している。本実施形態の第一ガス導出ライン62は、最も圧力の低い1段目の圧縮部30Aの第一インペラ14Aの吸入口145iに接続されている。第一ガス導出ライン62は、高圧空間SH内に流入したシールガスGs及び流体Gfを、吸入口145iに排出する。第一ガス導出ライン62は、第一導出ライン621と、第二導出ライン622と、第三導出ライン623と、を有している。
【0044】
第一導出ライン621は、ケーシング11の外部から径方向Drの内側Driに延びている。第一導出ライン621は、ケーシング11の外部で、配管625の一端に接続されている。配管625の他端は、圧縮部30の吸入口145iに臨む位置に接続されている。これにより、第一ガス導出ライン62は、高圧空間SHと、低圧空間SLよりも圧力の低い1段目の圧縮部30Aとを接続している。第一ガス導出ライン62は、第一インペラ14Aの吸入口145iに接続されている。第一導出ライン621は、軸方向Daにおいて、第一シールガス供給ライン61、及び第一ガス排出ライン63の第一排出ライン631と重なる位置に配置されている。図4に示すように、第一導出ライン621は、軸方向Daから見た際に、第一シールガス供給ライン61及び第一排出ライン631に対し、周方向Dcで異なる位置に配置されている。
【0045】
図3に示すように、第二導出ライン622は、第一導出ライン621の径方向Drの内側の端部から、軸方向Daに沿って第一シール部51に近づくように、軸方向Daに延びている。第三導出ライン623は、第二導出ライン622から、径方向Drの内側Driに延びている。第三導出ライン623は、第一低圧シール部51と第二低圧シール部52との間で開口し、高圧空間SHと連通している。
【0046】
(高圧段シール機構の構成)
高圧段シール機構70は、低圧段シール機構50と同様に、ケーシング11と回転軸13との間の環状空間SをシールガスGsによってシールするシール機構である。図2に示すように、高圧段シール機構70は、複数の圧縮部30のうち、最も圧力の低い圧縮部30よりも圧力が高い2段目の圧縮部30Bに対して軸方向Daで隣接する位置に配置されている。つまり、本実施形態では、高圧段シール機構70は、複数の圧縮部30のうちで最も圧力の高い2段目の圧縮部30Bに対して軸方向Daで隣接する位置に配置されている。高圧段シール機構70は、軸方向Daに置いて配置されている向きが低圧段シール機構50と異なっている。
【0047】
高圧段シール機構70は、第一高圧シール部(第一シール部)71と、第二高圧シール部(第二シール部)72と、第三高圧シール部(第三シール部)73と、を備えている。第一高圧シール部71、第二高圧シール部72、及び第三高圧シール部73は、それぞれケーシング11に固定されている。第一高圧シール部71、第二高圧シール部72、及び第三高圧シール部73は、軸方向Daに間隔をあけて配置されている。
【0048】
第一高圧シール部71は、軸方向Daにおいて、第一高圧シール部71、第二高圧シール部72、及び第三高圧シール部73のうちで、第二インペラ14Bに最も近い位置に配置されている。また、第三高圧シール部73は第一高圧シール部71、第二高圧シール部72、及び第三高圧シール部73のうちで、第二インペラ14Bから最も離れた位置に配置されている。つまり、軸方向Daにおいて、第一高圧シール部71、第二高圧シール部72、及び第三高圧シール部73の並びは、第一低圧シール部51、第二低圧シール部52、及び第三低圧シール部53の並びと逆になっている。
【0049】
本実施形態において、第一高圧シール部71は、第二低圧シール部52と同様の構成を有したカーボンリングシール55を備えている。第一高圧シール部71では、カーボンリングシール55は、軸方向Daに間隔をあけて配置されて二つ配置されている。
【0050】
本実施形態の第二高圧シール部72及び第三高圧シール部73は、第二低圧シール部52及び第三低圧シール部53と同じ構成を有している。つまり、第二高圧シール部72は、カーボンリングシール55を備えている。また、第三高圧シール部73は、カーボンリングシール55を備えておらず、ラビリンスシールを備えている。
【0051】
圧縮機10は、第二シールガス供給ライン81と、第二ガス導出ライン82と、第二ガス排出ライン83と、をさらに備えている。
【0052】
第二シールガス供給ライン81は、環状空間SにシールガスGsを供給する。第二シールガス供給ライン81は、第三高圧シール部73に接続されている。第二シールガス供給ライン81は、第一シールガス供給ライン61と同様に、ケーシング11の外部に備えられたシールガス供給源(不図示)に接続されている。第二シールガス供給ライン81は、第三高圧シール部73に接続されている以外は、第一シールガス供給ライン61と同様の構成を有している。
【0053】
第二ガス排出ライン83は、高圧段シール機構70における低圧空間SL2とケーシング11の外部とを接続する。第二ガス排出ライン83は、接続先以外は、第一ガス排出ライン63と同様の構成を有している。
【0054】
第二ガス導出ライン82は、高圧段シール機構70における高圧空間SH2と、低圧空間SL2よりも圧力の低い2段目の圧縮部30Bの吸入口145iとを接続している。第二ガス導出ライン82は、高圧空間SH2内に流入したシールガスGs及び流体Gfを、吸入口145iに排出する。第二ガス導出ライン82は、接続先以外は、第一ガス導出ライン62と同様の構成を有している。
【0055】
(作用効果)
上述したような圧縮機10では、低圧段シール機構50で、回転軸13とケーシング11との間に形成される環状空間SをシールガスGsによってシールしている。第一インペラ14Aで圧縮されて流体Gfのうちの一部は、吐出口145oから吐出された後に、第一インペラ14Aの背面とケーシング11との隙間から環状空間Sに漏れ出る。漏れ出た流体Gfは、第一シール内周端51sと回転軸13の外周面13fとのクリアランスC1から、高圧空間SHに流入する。ここで、第二低圧シール部52がカーボンリングシール55を備えることで、第二低圧シール部52におけるシール性が、第一低圧シール部51及び第三低圧シール部53におけるシール性よりも高められている。したがって、高圧空間SHから第二低圧シール部52を超えて低圧空間SLへ流体Gfが漏出することが抑えられる。さらに、環状空間Sの低圧空間SLには、第一シールガス供給ライン61によって、シールガスGsが供給されている。そのため、第二低圧シール部52を超えて低圧空間SLに漏れ出た流体Gfが、低圧空間SLから第三低圧シール部53を超えて漏出することが抑えられる。また、第一ガス導出ライン62は、高圧空間SHと、第一インペラ14Aの吸入口145iとを接続している。これにより、高圧空間SH内のシールガスGs(流体Gf)は、圧力差によって、第一ガス導出ライン62を通して、低圧空間SLよりも圧力の低い圧縮部30の吸入口145iへと吸い出される。このため、高圧空間SH内の流体Gfを吸い出すために、エジェクタ等の吸引機構を備える必要性も低くなる。
【0056】
このように、環状空間Sを、高圧空間SHと低圧空間SLとに区画する第二低圧シール部52のシール性を高めることによって、ケーシング11内の流体Gfがケーシング11の外部に漏出することが抑えられる。さらに、第二低圧シール部52によって、シール性を高められた高圧空間SHと吸入口145iとが第一ガス導出ライン62で接続されていることで、簡易な構成で回転軸13とケーシング11との隙間におけるシール性を高めることができる。
【0057】
また、第二シール内周端52sと回転軸13の外周面13fとのクリアランスC2が、クリアランスC1及びクリアランスC3よりも小さくされている。これにより、第二低圧シール部52のシール性を、第一低圧シール部51及び第三低圧シール部53のシール性に対してより高めることができる。したがって、高圧空間SHから第二低圧シール部52を超えて低圧空間SLへ流体Gfが漏出することがより抑えられる。
【0058】
また、圧縮部30は、回転軸13の径方向Drの外側Droに配置された第一インペラ14Aを備えている。そして、第一ガス導出ライン62は、高圧空間SHと第一インペラ14Aの吸入口145iとを接続している。これにより、第一インペラ14Aを備えた圧縮機10において、高圧空間SHと、高圧空間SHよりも圧力の低く、流体Gfを排出しても損失を生じない第一インペラ14Aの吸入口145iとが接続される。したがって、高圧空間SH内の流体Gfを、第一ガス導出ライン62を通して、損失を抑えて、安定して排出することができる。
【0059】
また、低圧段シール機構50は、複数の圧縮部30のうち、最も圧力の低い1段目の圧縮部30Aに対して軸方向Daで隣接する位置に配置されている。加えて、第一ガス導出ライン62は、第一インペラ14Aの吸入口145iに接続されている。これにより、複数の圧縮部30を備える圧縮機10において、1段目の圧縮部30Aから流体Gfが漏出することが抑えられる。また、第一ガス導出ライン62が、第一インペラ14Aの吸入口145iに接続されているので、高圧空間SH内の流体Gfを、第一インペラ14Aの吸入口145iへと戻すことができる。したがって、高圧空間SHから戻された流体Gfを、第一インペラ14Aで再び圧縮することができる。したがって、高圧空間SHに漏れ出た流体Gfによる損失をより抑えることができる。
【0060】
また、複数の圧縮部30の中で最も圧力の低い1段目の圧縮部30Aは、流体Gfを100barG以下の圧力で圧縮する。つまり、1段目の圧縮部30Aの吐出口145oでは、圧縮された後の流体Gfは、100barG以下の圧力となっている。このように、100barG以下の1段目の圧縮部30Aに近い位置に配置された低圧段シール機構50において、第二低圧シール部52のシール性が高められていることで、複数の圧縮部30を備える圧縮機10の全体でのシール性を、コストを抑えたうえで高めることができる。
【0061】
また、第二低圧シール部52は、カーボンリングシール55を複数備えている。そのため、第二低圧シール部52におけるシール性をさらに高めることができる。このように、第二低圧シール部52でのカーボンリングシール55の数を増やすことで、カーボンリングシール55と回転軸13との間のクリアランスC2を維持しつつ、第二低圧シール部52におけるシール性を容易に高めることができる。
【0062】
また、第一シールガス供給ライン61の少なくとも一部と、第一ガス導出ライン62の少なくとも一部と、第一ガス排出ライン63の少なくとも一部と、が、軸方向Daで重なる位置に配置されている。これにより、第一シールガス供給ライン61、第一ガス導出ライン62、及び第一ガス排出ライン63の一部をケーシング11にそれぞれ形成する際に軸方向Daで必要なスペースが抑えられる。したがって、軸方向Daでのスペースを低減して、よりシンプルな構成で第一シールガス供給ライン61、第一ガス導出ライン62、及び第一ガス排出ライン63を形成することができる。
【0063】
また、上述したような低圧段シール機構50で得られる効果は、高圧段シール機構70でも得ることができる。さらに、高圧段シール機構70では、第二高圧シール部72だけでなく、第一高圧シール部71もカーボンリングシール55を備えている。そのため、第一高圧シール部71のシール性を高めることができる。したがって、1段目の圧縮部30Aよりも圧力の高い2段目の圧縮部30Bに、軸方向Daで隣接するように配置された高圧段シール機構70でも、安定したシール性を確保できる。
【0064】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0065】
例えば、上記実施形態において、低圧段シール機構50は、第一低圧シール部51、第二低圧シール部52、及び第三低圧シール部53のうち、第二低圧シール部52のみにカーボンリングシール55を備えるようにしたが、このような構成に限定されるものではない、例えば、図5に示すように、低圧段シール機構50は、高圧段シール機構70と同様に、第二低圧シール部52に加えて、第一低圧シール部51にもカーボンリングシール55を備えるようにしても良い。その際、第一低圧シール部51では、カーボンリングシール55は、軸方向Daに間隔をあけて配置されて二つ配置されていてもよい。
【0066】
このような構成とすることで、第一低圧シール部51のシール性を高めることができる。したがって、1段目の圧縮部30Aに、軸方向Daで隣接するように配置された低圧段シール機構50で、より安定したシール性を確保できる。
【0067】
また、第一低圧シール部51は、カーボンリングシール55を備えていない場合であっても、軸方向Daに離れた複数のシールを有していてもよい。つまり、第一低圧シール部51では、カーボンリングシール55の代わりに、例えばラビリンスシールのような他のシールが、軸方向Daに間隔をあけて配置されて複数配置されていてもよい。このような構成としても、第一低圧シール部51のシール性を高めることができる。
【0068】
また、第一低圧シール部51は、第一ベース部材511を有する構造であることに限定されるものではない。第一低圧シール部51は、第一ベース部材511を有さず、ケーシング11に第一ラビリンス部515やカーボンリングシール55が配置された構造であってもよい。
【0069】
さらに、第二低圧シール部52は、第二ベース部材521及びシールホルダ522をする構造であることに限定されるものではない。第二低圧シール部52は、第二ベース部材521及びシールホルダ522を有さず、ケーシング11にカーボンリングシール55が配置された構造であってもよい。
【0070】
また、第二低圧シール部52や第二高圧シール部72に配置されるカーボンリングシール55の数は、二つであることに限定されるものではない。第二低圧シール部52や第二高圧シール部72に配置されるカーボンリングシール55の数は、一つのみであってもよく、三つ以上であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、圧縮機10は、1軸2段の圧縮部30を備える構成としたが、これに限るものではない。例えば、2軸以上で、3段以上の圧縮部30を備える構成において、低圧段側の1段、又は2段以上の圧縮部30に、上記と同様のシール機構50を備えるようにしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、圧縮機10として、ギアド遠心圧縮機を例示したが、これに限られない。例えば、圧縮機10は、1軸多段圧縮機、軸流圧縮機等であってもよい。圧縮機10が、1軸多段圧縮機、軸流圧縮機等である場合、回転軸の軸方向の両端部に備えたシール機構の双方において、上記と同様の構成を有しているようにしてもよい。
【0073】
<付記>
各実施形態に記載の圧縮機10は、例えば以下のように把握される。
【0074】
(1)第1の態様に係る圧縮機10は、軸線O回りに回転可能な回転軸13、及び前記回転軸13と一体に回転し、流体Gfを圧縮する圧縮部30を備えるロータ12と、前記軸線Oを中心とした径方向Drの外側Droから前記ロータ12を覆うケーシング11と、前記回転軸13と前記ケーシング11との間に形成される環状空間SをシールガスGsによってシールするシール機構50と、前記環状空間SにシールガスGsを供給するシールガス供給ライン61と、前記環状空間S内の前記シールガスGsを、前記圧縮部30の吸入口145iに導くガス導出ライン62と、を備え、前記シール機構50は、第一シール部51と、前記第一シール部51に対して、前記圧縮部30から離れるように軸方向Daに間隔をあけて配置された第二シール部52と、前記第二シール部52に対して、前記軸方向Daで前記第一シール部51とは反対側に間隔をあけて配置された第三シール部53と、を備え、前記第二シール部52は、前記第一シール部51及び前記第三シール部53よりも高いシール性を有し、前記回転軸13に対して前記径方向Drの外側Droに配置されて前記軸線O回りの周方向Dcに延びるカーボンリングシール55を備え、前記第二シール部52は、前記第一シール部51と前記第三シール部53との間で、前記第二シール部52に対して前記軸方向Daで前記第一シール部51に近い高圧空間SHと、前記第二シール部52に対して前記軸方向Daで前記第三シール部53に近く、前記高圧空間SHよりも圧力の低い低圧空間SLとに前記環状空間Sを区画し、前記ガス導出ライン62は、前記高圧空間SHと、前記低圧空間SLよりも圧力の低い前記圧縮部30の吸入口145iとを接続している。
【0075】
圧縮機10の例としては、ギアド遠心圧縮機、多段遠心圧縮機、軸流圧縮機が挙げられる。
【0076】
これにより、高圧空間SHから第二シール部52を超えて低圧空間SLへ流体Gfが漏出することが抑えられる。さらに、環状空間Sの低圧空間SLには、シールガス供給ライン61によって、シールガスGsが供給されている。そのため、第二シール部52を超えて低圧空間SLに漏れ出た流体Gfが、低圧空間SLから第三シール部53を超えて漏出することが抑えられる。また、ガス導出ライン62は、高圧空間SHと、インペラ14Aの吸入口145iとを接続している。これにより、高圧空間SH内のシールガスGs(流体Gf)は、圧力差によって、ガス導出ライン62を通して、低圧空間SLよりも圧力の低い圧縮部30の吸入口145iへと吸い出される。このため、高圧空間SH内の流体Gfを吸い出すために、エジェクタ等の吸引機構を備える必要性も低くなる。このように、環状空間Sを、高圧空間SHと低圧空間SLとに区画する第二シール部52のシール性を高めることによって、ケーシング11内の流体Gfがケーシング11の外部に漏出することが抑えられる。さらに、第二シール部52によって、シール性を高められた高圧空間SHと吸入口145iとがガス導出ライン62で接続されていることで、簡易な構成で回転軸13とケーシング11との隙間におけるシール性を高めることができる。
【0077】
(2)第2の態様に係る圧縮機10は、(1)の圧縮機10であって、前記第二シール部52における前記径方向Drの内側Driの第二シール内周端52sと、前記回転軸13の外周面13fとのクリアランスC2は、前記第一シール部51における前記径方向Drの内側Driの第一シール内周端51sと前記回転軸13の外周面13fとのクリアランスC1、及び前記第三シール部53における前記径方向Drの内側Driの第三シール内周端53sと前記回転軸13の外周面13fとのクリアランスC3よりも小さい。
【0078】
これにより、第二シール部52のシール性を、第一シール部51及び第三シール部53のシール性に対してより高めることができる。したがって、高圧空間SHから第二シール部52を超えて低圧空間SLへ流体Gfが漏出することがより抑えられる。
【0079】
(3)第3の態様に係る圧縮機10は、(1)又は(2)の圧縮機10であって、前記圧縮部30は、前記回転軸13の前記径方向Drの外側Droに配置されたインペラ14Aを備え、前記ガス導出ライン62は、前記高圧空間SHと前記インペラ14Aの吸入口145iとを接続している。
【0080】
これにより、インペラ14Aを備えた圧縮機10において、高圧空間SHと、高圧空間SHよりも圧力の低く、流体Gfを排出しても損失を生じないインペラ14Aの吸入口145iとが接続される。したがって、高圧空間SH内の流体Gfを、ガス導出ライン62を通して、損失を抑えて、安定して排出することができる。
【0081】
(4)第4の態様に係る圧縮機10は、(3)の圧縮機10であって、前記圧縮部30を複数備え、複数の前記圧縮部30により前記流体Gfを順次圧縮し、前記シール機構50は、複数の前記圧縮部30のうち、最も圧力の低い前記圧縮部30に対して前記軸方向Daで隣接する位置に配置され、前記ガス導出ライン62は、最も圧力の低い前記圧縮部30の前記インペラ14Aの吸入口145iに接続されている。
【0082】
これにより、複数の圧縮部30を備える圧縮機10において、最も圧力の低い圧縮部30Aから流体Gfが漏出することが抑えられる。また、ガス導出ライン62が、最も圧力の低い圧縮部30Aのインペラ14Aの吸入口145iに接続されているので、高圧空間SH内の流体Gfを、最も圧力の低い圧縮部30Aのインペラ14Aの吸入口145iへと戻すことができる。したがって、高圧空間SHから戻された流体Gfを、最も圧力の低い圧縮部30Aのインペラ14Aで再び圧縮することができる。したがって、高圧空間SHに漏れ出た流体Gfによる損失をより抑えることができる。
【0083】
(5)第5の態様に係る圧縮機10は、(1)から(4)の何れか一つの圧縮機10であって、最も圧力の低い前記圧縮部30は、前記流体Gfを100barG以下の圧力で圧縮する。
【0084】
このような構成によれば、100barG以下の最も圧力の低い圧縮部30Aに近い位置に配置されたシール機構50において、第二シール部52のシール性が高められていることで、複数の圧縮部30を備える圧縮機10の全体でのシール性を、コストを抑えたうえで高めることができる。
【0085】
(6)第6の態様に係る圧縮機10は、(1)から(5)の何れか一つの圧縮機10であって、前記第二シール部52は、前記カーボンリングシール55を複数備える。
【0086】
このような構成によれば、第二シール部52におけるシール性をさらに高めることができる。このように、第二シール部52でのカーボンリングシール55の数を増やすことで、カーボンリングシール55と回転軸13との間のクリアランスC2を維持しつつ、第二シール部52におけるシール性を容易に高めることができる。
【0087】
(7)第7の態様に係る圧縮機10は、(1)から(6)の何れか一つの圧縮機10であって、前記第一シール部51は、前記回転軸13に対して前記径方向Drの外側Droに配置されて前記軸線O回りの周方向Dcに延びるカーボンリングシール55を備える。
【0088】
このような構成によれば、第一シール部51のシール性を高めることができる。したがって、圧縮部30Aに、軸方向Daで隣接するように配置されたシール機構50で、より安定したシール性を確保できる。
【0089】
(8)第8の態様に係る圧縮機10は、(1)から(7)の何れか一つの圧縮機10であって、前記低圧空間SLと前記ケーシング11の外部とを接続するガス排出ライン63をさらに備え、前記ガス導出ライン62の少なくとも一部と、前記ガス排出ライン63の少なくとも一部と、前記シールガス供給ライン61の少なくとも一部とが、前記軸方向Daで重なる位置に配置されている。
【0090】
このような構成によれば、シールガス供給ライン61、ガス導出ライン62、及びガス排出ライン63の一部をケーシング11にそれぞれ形成する際に軸方向Daで必要なスペースが抑えられる。したがって、軸方向Daでのスペースを低減して、よりシンプルな構成でシールガス供給ライン61、ガス導出ライン62、及びガス排出ライン63を形成することができる。
【0091】
(9)第9の態様に係る圧縮機10は、(1)から(8)の何れか一つの圧縮機10であって、前記第一シール部51は、前記軸方向Daに離れた複数のシールを有していてもよい。
【0092】
これにより、第一シール部51のシール性を高めることができる。
【符号の説明】
【0093】
10…圧縮機
11…ケーシング
11f~11h…面
118…吸気流路
119…排気流路
12…ロータ
13…回転軸
13f…外周面
14…インペラ
14A…第一インペラ
14B…第二インペラ
141…ディスク部
141a…第一面
141b…第二面
142…ブレード部
145…インペラ流路
145i…吸入口
145o…吐出口
15…ピニオンギア
16…駆動歯車
17…ラジアル軸受
18…スラスト軸受
20…増速伝達部
30…圧縮部
30A…1段目の圧縮部
30B…2段目の圧縮部
50…低圧段シール機構(シール機構)
51…第一低圧シール部(第一シール部)
51s…第一シール内周端
511…第一ベース部材
511a…基部
511b…延出部
515…第一ラビリンス部
52…第二低圧シール部(第二シール部)
52s…第二シール内周端
521…第二ベース部材
522…シールホルダ
523…収容溝
53…第三低圧シール部(第三シール部)
53s…第三シール内周端
535A、535B…第三ラビリンス部
55…カーボンリングシール
61…第一シールガス供給ライン(シールガス供給ライン)
62…第一ガス導出ライン(ガス導出ライン)
621…第一導出ライン
622…第二導出ライン
623…第三導出ライン
625…配管
63…第一ガス排出ライン(ガス排出ライン)
631…第一排出ライン
632…第二排出ライン
633…第三排出ライン
70…高圧段シール機構(シール機構)
71…第一高圧シール部
72…第二高圧シール部
73…第三高圧シール部
81…第二シールガス供給ライン
82…第二ガス導出ライン
83…第二ガス排出ライン
C1~C3…クリアランス
Da…軸方向
Da1…第一側
Da2…第二側
Dc…周方向
Dr…径方向
Dri…内側
Dro…外側
Gf…流体
Gs…シールガス
O…軸線
S…環状空間
SH、SH2…高圧空間
SL、SL2…低圧空間
図1
図2
図3
図4
図5