(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108216
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】音響システム、装着型音響出力装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20240805BHJP
G11B 20/10 20060101ALI20240805BHJP
G11B 27/00 20060101ALI20240805BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H04R1/10 101B
G11B20/10 301Z
G11B27/00 D
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012463
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】森高 冬毅
(72)【発明者】
【氏名】増井 英喜
(72)【発明者】
【氏名】小長井 裕介
【テーマコード(参考)】
5D005
5D044
5D110
5D220
【Fターム(参考)】
5D005BB08
5D044AB05
5D044DE48
5D044DE49
5D044DE54
5D044GK12
5D044JJ02
5D110AA27
5D110DA02
5D110DA11
5D110DA17
5D220AA50
5D220AB08
5D220DD03
(57)【要約】
【課題】OSや音楽プレーヤと連携させずに、利用者の耳を適切に保護する。
【解決手段】音響システムは、利用者の耳に装着可能な装着型音響出力装置と、前記装着型音響出力装置が出力する出力音を制御するホスト装置とを備え、前記装着型音響出力装置は、前記出力音によって前記利用者が受けた音響暴露量を算出する暴露量算出部と、前記暴露量算出部が算出した前記音響暴露量を、前記ホスト装置に送信する通信部とを備え、前記ホスト装置は、前記出力音の出力に関する基本制御を行うとともに、前記装着型音響出力装置から受信した前記音響暴露量に基づく情報を出力する基本制御部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の耳に装着可能な装着型音響出力装置と、前記装着型音響出力装置が出力する出力音を制御するホスト装置とを備え、
前記装着型音響出力装置は、
前記出力音によって前記利用者が受けた音響暴露量を算出する暴露量算出部と、
前記暴露量算出部が算出した前記音響暴露量を、前記ホスト装置に送信する通信部と
を備え、
前記ホスト装置は、
前記出力音の出力に関する基本制御を行うとともに、前記装着型音響出力装置から受信した前記音響暴露量に基づく情報を出力する基本制御部を備える
音響システム。
【請求項2】
前記暴露量算出部は、前記出力音の実効値に基づいて、前記音響暴露量を算出する
請求項1に記載の音響システム。
【請求項3】
前記暴露量算出部は、特定の単位期間ごとの前記実効値の積算値として、前記音響暴露量を算出する
請求項2に記載の音響システム。
【請求項4】
前記暴露量算出部は、前記出力音の音量設定値に基づいて、前記音響暴露量を算出する
請求項1に記載の音響システム。
【請求項5】
前記暴露量算出部は、特定の単位期間ごとの前記音量設定値の積算値として、前記音響暴露量を算出する
請求項4に記載の音響システム。
【請求項6】
前記基本制御部は、特定の期間あたりの前記音響暴露量を示す情報を出力する
請求項1に記載の音響システム。
【請求項7】
前記基本制御部は、特定の期間あたりの前記音響暴露量に応じて、前記装着型音響出力装置の利用に関する警告を示す警告メッセージを出力する
請求項1に記載の音響システム。
【請求項8】
前記基本制御部は、前記特定の期間あたりの前記音響暴露量が、閾値に達した場合に、前記警告メッセージを出力する
請求項7に記載の音響システム。
【請求項9】
前記基本制御部は、前記警告メッセージとして、前記利用者の耳を保護するための提案を示すメッセージを出力する
請求項7又は請求項8に記載の音響システム。
【請求項10】
前記基本制御部は、前記音響暴露量に基づく情報を表示部に表示させる
請求項1に記載の音響システム。
【請求項11】
利用者の耳に装着可能な装着型音響出力装置であって、
前記利用者の耳に出力する出力音によって前記利用者が受けた音響暴露量を算出する暴露量算出部と、
前記暴露量算出部が算出した前記音響暴露量を、前記出力音を制御するホスト装置に送信する通信部と
を備える装着型音響出力装置。
【請求項12】
利用者の耳に装着可能な装着型音響出力装置と、前記装着型音響出力装置が出力する出力音を制御するホスト装置とを備える音響システムの制御方法であって、
前記ホスト装置が、前記出力音の出力に関する基本制御を行い、
前記装着型音響出力装置が、前記出力音によって前記利用者が受けた音響暴露量を算出し、算出した前記音響暴露量を、前記ホスト装置に送信し、
前記ホスト装置が、前記装着型音響出力装置から受信した前記音響暴露量に基づく情報を出力する
制御方法。
【請求項13】
利用者の耳に装着可能な装着型音響出力装置が出力する出力音を制御するホスト装置としてのコンピュータに、
前記出力音の出力に関する基本制御を行うステップと、
前記出力音によって前記利用者が受けた音響暴露量を、前記装着型音響出力装置から受信するステップと、
前記装着型音響出力装置から受信した前記音響暴露量に基づく情報を出力するステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響システム、装着型音響出力装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、聴覚保護のために、単位時間あたり(例えば、1週間)の音響暴露量の積算値が閾値を上回った場合に、注意喚起を表示する技術が知られている(非特許文献1を参照)。また、音響暴露量を測定する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「iPhone、iPod touch、Apple Watch のヘッドフォン通知」、[online]、Apple Inc.、[令和4年9月20日検索]、インターネット<URL: https://support.apple.com/ja-jp/HT211903>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した非特許文献1の従来技術では、ホスト装置のOSや、ホスト装置に接続される音楽プレーヤのソフトと連携する必要があり、自由度が低いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、OSや音楽プレーヤと連携させずに、利用者の耳を適切に保護することができる音響システム、装着型音響出力装置、制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、利用者の耳に装着可能な装着型音響出力装置と、前記装着型音響出力装置が出力する出力音を制御するホスト装置とを備え、前記装着型音響出力装置は、前記出力音によって前記利用者が受けた音響暴露量を算出する暴露量算出部と、前記暴露量算出部が算出した前記音響暴露量を、前記ホスト装置に送信する通信部とを備え、前記ホスト装置は、前記出力音の出力に関する基本制御を行うとともに、前記装着型音響出力装置から受信した前記音響暴露量に基づく情報を出力する基本制御部を備える音響システムである。
【0008】
また、本発明の一態様は、利用者の耳に装着可能な装着型音響出力装置であって、前記利用者の耳に出力する出力音によって前記利用者が受けた音響暴露量を算出する暴露量算出部と、前記暴露量算出部が算出した前記音響暴露量を、前記出力音を制御するホスト装置に送信する通信部とを備える装着型音響出力装置である。
【0009】
また、本発明の一態様は、利用者の耳に装着可能な装着型音響出力装置と、前記装着型音響出力装置が出力する出力音を制御するホスト装置とを備える音響システムの制御方法であって、前記ホスト装置が、前記出力音の出力に関する基本制御を行い、前記装着型音響出力装置が、前記出力音によって前記利用者が受けた音響暴露量を算出し、算出した前記音響暴露量を、前記ホスト装置に送信し、前記ホスト装置が、前記装着型音響出力装置から受信した前記音響暴露量に基づく情報を出力する制御方法である。
【0010】
また、本発明の一態様は、利用者の耳に装着可能な装着型音響出力装置が出力する出力音を制御するホスト装置としてのコンピュータに、前記出力音の出力に関する基本制御を行うステップと、前記出力音によって前記利用者が受けた音響暴露量を、前記装着型音響出力装置から受信するステップと、前記装着型音響出力装置から受信した前記音響暴露量に基づく情報を出力するステップとを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、OSや音楽プレーヤと連携させずに、利用者の耳を適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態による音響システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態におけるホスト装置の基本制御アプリによる表示例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態による音響システムの動作の一例を示す第1の図である。
【
図4】第1の実施形態による音響システムの動作の一例を示す第2の図である。
【
図5】第1の実施形態におけるヘッドホンの音響暴露量の算出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】第1の実施形態におけるホスト装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第2の実施形態におけるヘッドホンの音響暴露量の算出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第3の実施形態による音響システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態による音響システム、装着型音響出力装置、及び制御方法について、図面を参照して説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態による音響システム1の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、音響システム1は、ヘッドホン10と、ホスト装置20とを備える。
【0015】
ホスト装置20は、ヘッドホン10が出力する出力音を制御する装置であり、例えば、スマートホン、ミュージックプレーヤ、パーソナルコンピュータ、タブレット端末などの装置である。本実施形態では、ホスト装置20が、スマートホンであるものとして、説明する。
ホスト装置20は、無線通信部21と、入力部22と、表示部23と、ホスト記憶部24と、ホスト制御部25とを備える。
【0016】
無線通信部21(通信部の一例)は、例えば、Bluetooth(登録商標)などの無線通信デバイスであり、ヘッドホン10との間で、無線通信による通信を行う。
入力部22は、例えば、キーボードやタッチセンサなどの入力装置であり、利用者からの各種入力情報を受け付け、受け付けた各種入力情報をホスト制御部25に出力する。
【0017】
表示部23(出力部の一例)は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置である。表示部23は、ホスト制御部25から供給された各種情報を表示する。
ホスト記憶部24は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの記憶部である。ホスト記憶部24は、ホスト装置20が利用する各種情報を記憶する。ホスト記憶部24は、楽曲データ記憶部241と、音響暴露量記憶部242とを備える。
【0018】
楽曲データ記憶部241は、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶部により構成され、後述するプレーヤ処理部252によって、ヘッドホン10に再生出力される楽曲データを記憶する。
【0019】
音響暴露量記憶部242は、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶部により構成され、音響暴露量を記憶する。音響暴露量記憶部242は、ヘッドホン10から取得した音響暴露量及び前回のタイムスタンプ(音響暴露量の検出開始の日時情報)と、現在(今回)のタイムスタンプ(音響暴露量の検出終了の日時情報)とを対応付けて記憶する。
なお、音響暴露量記憶部242は、複数の音響暴露量を記憶しており、ヘッドホン10から取得した音響暴露量の履歴情報を記憶する。
【0020】
ホスト制御部25は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含むプロセッサであり、ホスト装置20を統括的に制御する。ホスト制御部25は、OS(Operating System)に基づいて各種処理を実行する。OSは、例えば、iOS(登録商標)や、Android(登録商標)、Windows(登録商標)などである。
ホスト制御部25は、OS処理部251と、プレーヤ処理部252と、基本制御部253とを備える。
【0021】
OS処理部251は、CPUに不図示の記憶部が記憶するOSプログラムを実行させることで実現される機能部である。OS処理部251は、OSが備える各種機能の処理を実行する。
【0022】
プレーヤ処理部252は、CPUに不図示の記憶部が記憶するオーディオプレーヤのアプリケーションプログラム(以下、アプリということがある)を実行させることで実現される機能部である。プレーヤ処理部252は、例えば、楽曲データ記憶部241が記憶する楽曲データを音信号の再生データに変換して、無線通信部21を介して、ヘッドホン10に送信する。
【0023】
また、プレーヤ処理部252は、入力部22を介した利用者の操作に応じて、ヘッドホン10のボリューム設定(音量設定)を実行する。プレーヤ処理部252は、例えば、ヘッドホン10のボリューム設定を行う際に、無線通信部21を介して、ヘッドホン10にボリューム設定情報を送信する。
【0024】
基本制御部253は、CPUに不図示の記憶部が記憶する基本制御アプリのプログラムを実行させることで実現される機能部である。基本制御アプリは、ヘッドホン10の基本制御である出力音の出力に関する基本制御を実行するアプリケーションプログラムであり、例えば、ヘッドホン10のバッテリ充電状態の表示、オートパワーオフ時間の設定、信号処理(例えば、ノイズキャンセル、環境音の透過、音信号調整など)の設定、及び音響暴露量の表示、等を実行する。
【0025】
基本制御部253は、例えば、音響暴露量の表示を行う場合に、ヘッドホン10から取得した音響暴露量に基づいて、特定の期間(例えば、1日、1週間など)あたりの音響暴露量を示す情報を出力する。基本制御部253は、例えば、
図2に示すように、音響暴露量を表示部23に表示する。ここで、
図2を参照して、基本制御部253(基本制御アプリ)による表示例について説明する。
【0026】
図2は、本実施形態におけるホスト装置20の基本制御アプリによる表示例を示す図である。
図2(a)は、基本制御アプリのメニュー画面G1の表示例を示している。
図2(a)に示すように、基本制御部253は、基本制御アプリのメニュー画面G1として、バッテリ充電状態、「LISTENING CARE」の指定ボタンBT1、「AMBIENT SOUND」の設定ボタンBT2、オートパワーオフ時間の設定ボタンBT3を表示部23に表示する。
【0027】
図2(a)に示す例では、基本制御アプリのメニュー画面G1は、「AMBIENT SOUND」の設定が、“OFF”(環境音の透過処理がオフ設定)状態であり、オートパワーオフ時間の設定が、“OFF”(オートパワーオフ時間の機能をオフ設定)状態であることを示している。
【0028】
また、
図2(a)において、利用者による入力部22の操作によって、「LISTENING CARE」の指定ボタンBT1が押下されると、基本制御部253は、
図2(b)に示すような音響暴露量の表示画面G2を、表示部23に表示する。
【0029】
図2(b)に示す例では、1日あたりの音響暴露量が、“110%”(1日の音響暴露量の許容量に対する現在の音響暴露量の割合が、110%)であり、1週間あたりの音響暴露量が、“72%”(1週間の音響暴露量の許容量に対する現在の音響暴露量の割合が、72%)であることを示している。ここで、1日あたりの音響暴露量が、“110%”、及び1週間あたりの音響暴露量が、“72%”は、特定の期間あたりの音響暴露量を示す情報の一例である。
【0030】
このように、基本制御部253は、出力音の出力に関する基本制御(例えば、ヘッドホン10の基本制御)を行うとともに、ヘッドホン10から受信した音響暴露量に基づく情報(例えば、特定の期間あたりの音響暴露量を示す情報)を出力する。
【0031】
また、基本制御部253は、ヘッドホン10から音響暴露量及び前回のタイムスタンプ(音響暴露量の検出開始の日時情報)を取得し、取得した音響暴露量及び前回のタイムスタンプと、現在(今回)のタイムスタンプ(音響暴露量の検出終了の日時情報)とを対応付けて、音響暴露量記憶部242に記憶させる。基本制御部253は、音響暴露量記憶部242に記憶されている音響暴露量及び前回のタイムスタンプと、現在(今回)のタイムスタンプとを用いて、特定の期間(例えば、1日、1週間など)あたりの音響暴露量を算出する。
【0032】
なお、音響暴露量の許容量(許容暴露量)は、例えば、音量80dBAの1週間あたりの聴取許容時間が、40h(時間)である場合に、下記の式(1)及び式(2)により算出される。
【0033】
週間許容暴露量 = 10^(80dBA/10)×40h ・・・ (1)
1日あたりの許容暴露量 = 週間許容暴露量/7日 ・・・ (2)
【0034】
また、基本制御部253は、特定の期間あたりの音響暴露量に応じて、ヘッドホン10の利用に関する警告を示す警告メッセージを出力する。基本制御部253は、例えば、特定の期間あたりの音響暴露量が、閾値に達した場合に、警告メッセージを出力する。
【0035】
具体的に、基本制御部253は、1日の音響暴露量が、1日あたりの許容暴露量に達した、或いは、達しそうになった場合に、「耳が休みを求めています!今日をお休みすれば、明日も楽しく聴けますよ!」、「今日は少し耳を休めましょう」などの警告メッセージを表示部23に表示する。なお、基本制御部253は、例えば、
図2(c)のメッセージ画面G3に示すように、親しみ易いキャラクタのコメントとして、警告メッセージを表示してもよい。
【0036】
また、基本制御部253は、警告メッセージとして、利用者の耳を保護するための提案(例えば、ヒント)を示すメッセージを出力するようにしてもよい。基本制御部253は、例えば、閾値をリスクのレベルに応じて段階的に設けて、リスクのレベルに応じて、複数パターンを表示するようにしてもよい。基本制御部253は、例えば、警告メッセージとして、「音量が大きいです!ボリュームを1段下げるだけで、音楽が2倍楽しめますよ!」、「イヤホンを外す時間も作ってあげましょう!外耳炎の予防にもなります!」、等を表示するようにしてもよい。
【0037】
図1の説明に戻り、ヘッドホン10(装着型音響出力装置の一例)は、利用者の耳に装着可能であり、例えば、ワイヤレスヘッドホンである。ヘッドホン10は、利用者の耳に挿入するイヤホンタイプでもよいし、利用者の頭部に装着するタイプであってもよい。ヘッドホン10は、ホスト装置20から供給された再生データに基づく音を出力(放音)する。
【0038】
ヘッドホン10は、無線通信部11と、HPアンプ12(ヘッドホンアンプ)と、スピーカ13と、記憶部14と、制御部15とを備える。
無線通信部11は、例えば、Bluetooth(登録商標)などの無線通信デバイスであり、ホスト装置20との間で、無線通信を行う。無線通信部11は、後述する暴露量算出部153が算出した音響暴露量を、ホスト装置20に送信する。
【0039】
HPアンプ12は、制御部15から取得した音データを増幅した音信号をスピーカ13に出力して、スピーカ13から音を出力させる。HPアンプ12は、制御部15からの制御指示に基づいて、音信号の出力、出力停止、音量変更(ボリューム設定変更)などの処理を実行する。
【0040】
記憶部14は、例えば、RAM、フラッシュメモリなどの記憶部である。記憶部14は、ヘッドホン10が利用する各種情報を記憶する。記憶部14は、ボリューム設定記憶部141と、タイムスタンプ記憶部142と、音響暴露量記憶部143と、情報格納記憶部144とを備える。
【0041】
ボリューム設定記憶部141は、例えば、RAMなどにより構成された記憶部であり、HPアンプ12において設定されているボリューム設定情報を記憶する。
【0042】
タイムスタンプ記憶部142は、例えば、RAMなどにより構成された記憶部であり、ホスト装置20から取得したタイムスタンプ(日時情報)を記憶する。タイムスタンプ記憶部142が記憶するタイムスタンプは、音響暴露量の検出開始の日時を示す情報であり、音響暴露量をホスト装置20に送信する際に、このタイムスタンプもホスト装置20に送信される。
【0043】
音響暴露量記憶部143は、例えば、RAMなどにより構成された記憶部であり、暴露量算出部153により算出された音響暴露量を記憶する。
【0044】
情報格納記憶部144は、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリにより構成された記憶部であり、ヘッドホン10を電源オフする際に、上述したタイムスタンプ記憶部142及び音響暴露量記憶部143が記憶する情報を退避して記憶する。すなわち、情報格納記憶部144は、ホスト装置20から取得したタイムスタンプ(日時情報)及び暴露量算出部153により算出された音響暴露量を格納する。
【0045】
制御部15は、例えば、CPUを含むプロセッサであり、ヘッドホン10を統括的に制御する。制御部15は、信号処理部151と、ボリューム制御部152と、暴露量算出部153とを備える。
【0046】
信号処理部151は、ホスト装置20から無線通信部11を介して受信した再生データに対して、例えば、音質調整などの信号処理を実行した音データを生成し、HPアンプ12に音データを出力する。また、信号処理部151は、音質調整などの信号処理を行わない設定である場合に、受信した再生データを音データとして、HPアンプ12に出力する。
【0047】
ボリューム制御部152は、無線通信部11を介して、ホスト装置20から受信したボリューム設定情報に基づいて、HPアンプ12のボリューム設定を行うとともに、ボリューム設定記憶部141にボリューム設定を記憶させる。
【0048】
暴露量算出部153は、ヘッドホン10の出力音によって利用者が受けた音響暴露量を算出する。暴露量算出部153は、出力音の実効値(例えば、RMS(Root Mean Square)値)に基づいて、音響暴露量を算出する。すなわち、暴露量算出部153は、特定の単位期間ごと(例えば、1秒ごと)のRMS値の積算値として、音響暴露量を算出する。
【0049】
暴露量算出部153は、例えば、下記の式(3)を用いて、RMS値の積算により、音響暴露量を算出する。
【0050】
音響暴露量 += RMS値×Const ・・・ (3)
【0051】
ここで、音響暴露量は、タイムスタンプ記憶部142が記憶するタイムスタンプの示す日時からの音響暴露量の積算値を示し、RMS値は、単位期間(例えば、1秒間隔)におけるRMS値を示している。また、Constは、正規化定数を示している。
【0052】
暴露量算出部153は、音響暴露量記憶部143が記憶する音響暴露量を取得した後に、上述した式(3)により、新たな音響暴露量を算出し、算出した新たな音響暴露量を音響暴露量記憶部143に記憶させて、音響暴露量を更新する。なお、音響暴露量は、信号処理部151により再生データの音をスピーカ13から出力している場合に、特定の単位期間ごとに算出される。
【0053】
また、暴露量算出部153は、無線通信部11を介して、ホスト装置20から音響暴露量の送信要求を受信した場合に、送信要求に応じて、音響暴露量記憶部143が記憶する音響暴露量及びタイムスタンプ記憶部142が記憶するタイムスタンプを、無線通信部11を介して、ホスト装置20に送信する。
【0054】
また、暴露量算出部153は、ホスト装置20からタイムスタンプを受信した場合に、タイムスタンプを受信したタイムスタンプ記憶部142に記憶させるとともに、音響暴露量記憶部143が記憶する音響暴露量をゼロクリアして初期化する。
【0055】
次に、図面を参照して、本実施形態による音響システム1の動作について説明する。
図3は、本実施形態による音響システム1の動作の一例を示す第1の図である。ここでは、音響システム1の音響暴露量に基づく情報の表示処理について説明する。また、音響システム1の初期状態は、ホスト装置20が、基本制御部253による基本制御アプリが起動状態であり、ヘッドホン10が、電源オフ状態であるものとする。
【0056】
図3に示すように、音響システム1のヘッドホン10は、まず、電源オンを検出したか否かを判定する(ステップS101)。ヘッドホン10の制御部15は、利用者の電源オンの操作によって、電源オンを検出した場合(ステップS101:YES)に、処理をステップS102に進める。また、制御部15は、電源オンを検出していない場合(ステップS101:NO)に、処理をステップS101に戻す。
【0057】
ステップS102において、ヘッドホン10は、タイムスタンプを情報格納記憶部144から取得する。ヘッドホン10の制御部15は、不揮発性メモリである情報格納記憶部144から前回のタイムスタンプを取得し、タイムスタンプをタイムスタンプ記憶部142に記憶させる。
【0058】
次に、制御部15は、音響暴露量を、情報格納記憶部144から取得する(ステップS103)。制御部15は、不揮発性メモリである情報格納記憶部144から音響暴露量を取得し、音響暴露量を音響暴露量記憶部143に記憶させる。
【0059】
次に、ヘッドホン10は、ホスト装置20との間で、ペアリング処理を実行する(ステップS104)。ホスト装置20は、ペアリング処理として、ヘッドホン10との間の無線通信の接続処理を実行する。
【0060】
次に、ホスト装置20は、楽曲再生処理を開始する(ステップS105)。ホスト装置20のプレーヤ処理部252は、利用者による入力部22の操作に応じて、楽曲データ記憶部241が記憶する楽曲データを読み出して、楽曲再生処理を開始する。
【0061】
次に、ホスト装置20は、再生データをヘッドホン10に送信する(ステップS106)。プレーヤ処理部252は、楽曲データ記憶部241が記憶する楽曲データを音信号の再生データに変換して、無線通信部21を介して、ヘッドホン10に送信する。その後、プレーヤ処理部252は、再生データの送信を継続する。
【0062】
次に、ヘッドホン10は、再生データの音出力を開始する(ステップS107)。
次に、暴露量算出部153は、音響暴露量の積算を開始する(ステップS108)。暴露量算出部153は、例えば、1秒ごとに、音響暴露量を算出する。なお、暴露量算出部153による音響暴露量の算出処理の詳細については後述する。
【0063】
また、ホスト装置20の基本制御部253は、音響暴露量の取得条件を満たすか否かを判定する(ステップS109)。音響暴露量の取得条件としては、例えば、上述した
図2(a)の示すメニュー画面G1において、指定ボタンBT1が押下されるか否かである。基本制御部253は、音響暴露量の取得条件を満たす(指定ボタンBT1が押下された)場合(ステップS109:YES)に、処理をステップS110に進める。また、基本制御部253は、音響暴露量の取得条件を満たしていない(指定ボタンBT1が押下されていない)場合(ステップS109:NO)に、処理をステップS109に戻す。
【0064】
ステップS110において、基本制御部253は、音響暴露量の送信要求を、無線通信部21を介して、ヘッドホン10に送信する。
【0065】
次に、ヘッドホン10の暴露量算出部153は、音響暴露量の送信要求に応じて、音響暴露量をホスト装置20に送信する(ステップS111)。暴露量算出部153は、音響暴露量記憶部143から音響暴露量を取得し、無線通信部11を介して、音響暴露量をホスト装置20に送信する。
【0066】
次に、基本制御部253は、前回のタイムスタンプの送信要求を、無線通信部21を介して、ヘッドホン10に送信する(ステップS112)。
【0067】
次に、暴露量算出部153は、前回のタイムスタンプの送信要求に応じて、前回のタイムスタンプをホスト装置20に送信する(ステップS113)。暴露量算出部153は、タイムスタンプ記憶部142からタイムスタンプを取得し、無線通信部11を介して、前回のタイムスタンプとして、ホスト装置20に送信する。
【0068】
次に、基本制御部253は、今回のタイムスタンプを、無線通信部21を介して、ヘッドホン10に送信する(ステップS114)。
次に、基本制御部253は、受信した音響暴露量に基づく情報を表示部23に表示する(ステップS115)。基本制御部253は、例えば、
図2(b)に示す音響暴露量の表示画面G2のように、1日あたりの音響暴露量及び1週間あたりの音響暴露量を、音響暴露量に基づく情報として、表示部23に表示させる。
【0069】
また、ヘッドホン10の暴露量算出部153は、無線通信部11を介して受信した今回のタイムスタンプを、タイムスタンプ記憶部142に記憶させる(ステップS116)。すなわち、暴露量算出部153は、タイムスタンプ記憶部142が記憶するタイムスタンプを更新する。
【0070】
次に、暴露量算出部153は、音響暴露量記憶部143の音響暴露量をゼロクリアし、音響暴露量の積算を再開する(ステップS117)。
【0071】
また、
図4は、本実施形態による音響システム1の動作の一例を示す第2の図である。
図4では、本実施形態による音響システム1の音出力の中断処理、及びヘッドホン10の電源オフの処理について説明する。ここで、
図4に示す処理は、
図3の処理の続きの処理である
【0072】
図4に示すように、ホスト装置20は、利用者の操作に応じて、再生データの送信を停止する(ステップS121)。ホスト装置20のプレーヤ処理部252は、利用者によって入力部22が再生停止(再生中断)の操作を受け付けた場合に、楽曲再生処理を停止し、再生データの送信を停止する。
【0073】
次に、ヘッドホン10は、ホスト装置20からの再生データの送信停止に応じて、再生データの音出力を中断する(ステップS122)。
次に、ヘッドホン10は、音響暴露量の積算を中断する(ステップS123)。ヘッドホン10の暴露量算出部153は、再生データの送信停止に応じて、定期的に行っていた音響暴露量の積算による算出処理を中断する。
【0074】
また、ホスト装置20は、利用者の操作に応じて、再生データの送信を再開する(ステップS124)。プレーヤ処理部252は、利用者によって入力部22が再生再開(再生開始)の操作を受け付けた場合に、楽曲再生処理を再開(開始)し、再生データの送信を再開(開始)する。
すなわち、プレーヤ処理部252は、無線通信部21を介して、再生データをヘッドホン10に送信する(ステップS125)。
【0075】
次に、ヘッドホン10は、ホスト装置20からの再生データの送信に応じて、再生データの音出力を開始(再開)する(ステップS126)。
次に、ヘッドホン10は、音響暴露量の積算を再開する(ステップS127)。暴露量算出部153は、ヘッドホン10の音出力の開始(再開)に応じて、定期的に行っている音響暴露量の積算による算出処理を再開する。
【0076】
次に、ヘッドホン10は、電源オフを検出したか否かを判定する(ステップS130)。ヘッドホン10の制御部15は、利用者の電源オフの操作によって、電源オフを検出した場合(ステップS130:YES)に、処理をステップS131に進める。また、制御部15は、電源オフを検出していない場合(ステップS130:NO)に、処理をステップS130に戻す。
【0077】
ステップS131において、ヘッドホン10は、ホスト装置20との間のペアリングを切断する。制御部15は、無線通信部11によるホスト装置20との無線通信による接続を切断する。
【0078】
次に、制御部15は、タイムスタンプを情報格納記憶部144に格納する(ステップS132)。すなわち、制御部15は、タイムスタンプ記憶部142が記憶する今回のタイムスタンプを、情報格納記憶部144に記憶させて、情報を不揮発性メモリに退避する。
【0079】
次に、制御部15は、音響暴露量を情報格納記憶部144に格納する(ステップS133)。すなわち、制御部15は、音響暴露量記憶部143が記憶する音響暴露量を、情報格納記憶部144に記憶させて、情報を不揮発性メモリに退避する。
【0080】
次に、制御部15は、電源オフ処理を実行する(ステップS134)。制御部15は、ヘッドホン10を待機状態(低消費電力状態)に移行させる処理を実行する。
【0081】
次に、
図5を参照して、ヘッドホン10の音響暴露量の算出処理の詳細について説明する。
図5は、本実施形態におけるヘッドホン10の音響暴露量の算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0082】
なお、
図5に示す処理は、特定の単位期間ごと(例えば、1秒ごと)に実行される音響暴露量の算出処理の一例を示しており、例えば、タイマー割り込み等の発生により実行される。
【0083】
図5に示すように、ヘッドホン10の暴露量算出部153は、まず、音再生中であるか否かを判定して(ステップS201)、音響暴露量の積算(ステップS202)を実行する。また、暴露量算出部153は、音再生中でない場合(ステップS201:NO)に、音響暴露量の算出処理を終了する。
【0084】
ステップS202において、暴露量算出部153は、出力音のRMS値に基づく音響暴露量を算出する。暴露量算出部153は、音響暴露量記憶部143が記憶する音響暴露量を取得した後に、上述した式(3)により、新たな音響暴露量を算出し、算出した新たな音響暴露量を音響暴露量記憶部143に記憶させて、音響暴露量を更新する。
【0085】
次に、
図6を参照して、本実施形態におけるホスト装置20の動作について説明する。
図6は、本実施形態におけるホスト装置20の動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、ホスト装置20が、音響暴露量に基づいて、警告メッセージを表示する処理の一例について説明する。
【0086】
図6に示すように、ホスト装置20は、まず、音響暴露量と前回のタイムスタンプとをヘッドホン10から取得する(ステップS211)。ホスト装置20の基本制御部253は、無線通信部21を介して、音響暴露量の送信要求及びタイムスタンプの送信要求を、ヘッドホン10に送信し、音響暴露量と前回のタイムスタンプと取得する。
【0087】
次に、基本制御部253は、今回のタイムスタンプをヘッドホン10に送信する(ステップS212)。基本制御部253は、無線通信部21を介して、今回(現在)のタイムスタンプを、無線通信部21を介して、ヘッドホン10に送信する。
【0088】
次に、基本制御部253は、音響暴露量と前回及び今回のタイムスタンプとを対応付けて、音響暴露量記憶部242に記憶させる(ステップS213)。なお、音響暴露量記憶部242には、過去の複数の音響暴露量と前回及び今回のタイムスタンプとが履歴として記憶される。
【0089】
次に、基本制御部253は、特定の期間の音響暴露量を生成する(ステップS214)。基本制御部253は、例えば、音響暴露量記憶部242が記憶する音響暴露量と前回及び今回のタイムスタンプとの履歴とを参照して、例えば、今日1日分の音響暴露量を算出する。
【0090】
次に、基本制御部253は、特定の期間の音響暴露量が閾値に達したか否かを判定する(ステップS215)。基本制御部253は、例えば、今日1日分の音響暴露量が、上述した1日あたりの許容暴露量に達したか否かを判定する。基本制御部253は、特定の期間の音響暴露量が閾値に達した場合(ステップS215:YES)に、処理をステップS216に進める。また、基本制御部253は、特定の期間の音響暴露量が閾値に達していない場合(ステップS215:NO)に、処理を終了する。
【0091】
ステップS216において、基本制御部253は、警告メッセージを表示部23に表示する。基本制御部253は、例えば、
図2(c)に示す「今日は少し耳をお休みしよう」のようなメッセージを、表示部23に表示させる。
なお、基本制御部253は、
図6に示す処理を、定期的に実行してもよい。
【0092】
以上説明したように、本実施形態による音響システム1は、利用者の耳に装着可能なヘッドホン10(装着型音響出力装置)と、ヘッドホン10が出力する出力音を制御するホスト装置20とを備える。ヘッドホン10は、暴露量算出部153と、無線通信部11(通信部)とを備える。暴露量算出部153は、出力音によって利用者が受けた音響暴露量を算出する。無線通信部11は、暴露量算出部153が算出した音響暴露量を、ホスト装置20に送信する。ホスト装置20は、基本制御部253(例えば、基本制御アプリによる機能部)を備える。基本制御部253は、出力音の出力に関する基本制御を行うとともに、ヘッドホン10から受信した音響暴露量に基づく情報を出力する。基本制御部253は、音響暴露量に基づく情報を表示部23に表示させる。
【0093】
これにより、本実施形態による音響システム1では、ヘッドホン10(装着型音響出力装置)が、音響暴露量を算出し、ホスト装置20の基本制御部253(基本制御アプリによる機能部)が、音響暴露量に基づく情報を出力するため、例えば、利用者の耳を適切に保護することができる。また、本実施形態による音響システム1は、ヘッドホン10と、基本制御部253(基本制御アプリによる機能部)との組み合わせで実現され、基本制御部253(基本制御アプリによる機能部)が、ヘッドホン10が算出した音響暴露量を利用するため、OSや音楽プレーヤ(プレーヤ処理部252)と連携させる必要がなく適用できる。よって、本実施形態による音響システム1は、OSや音楽プレーヤと連携させずに、利用者の耳を適切に保護することができ、自由度の高いシステムを提供することができる。
【0094】
また、本実施形態では、暴露量算出部153は、出力音の実効値(例えば、RMS値)に基づいて、音響暴露量を算出する。暴露量算出部153は、特定の単位期間ごと(例えば、1秒ごと)の実効値(例えば、RMS値)の積算値として、音響暴露量を算出する。
これにより、本実施形態による音響システム1は、出力音の実効値(例えば、RMS値)を用いることで、より正確に音響暴露量を算出することができる。
【0095】
また、本実施形態では、基本制御部253は、特定の期間あたりの音響暴露量を示す情報(例えば、1日あたりの許容暴露量に対する音響暴露量の割合、等)を出力する(
図2(b)参照)。
これにより、本実施形態による音響システム1は、特定の期間あたりの音響暴露量を利用者に提示することで、音響暴露に関する注意喚起を促すことができる。
【0096】
また、本実施形態では、基本制御部253は、特定の期間あたりの音響暴露量に応じて、ヘッドホン10の利用に関する警告を示す警告メッセージを出力する。
これにより、本実施形態による音響システム1は、警告メッセージを利用者に提示することで、利用者の耳をより適切に保護することができる。
【0097】
また、本実施形態では、基本制御部253は、特定の期間あたりの音響暴露量が、閾値(例えば、音響暴露量の許容量など)に達した場合に、警告メッセージを出力する。
これにより、本実施形態による音響システム1は、特定の期間あたりの音響暴露量が、閾値(例えば、音響暴露量の許容量など)に達した場合に警告メッセージを利用者に提示することで、利用者の耳をより適切に保護することができる。
【0098】
また、本実施形態では、基本制御部253は、警告メッセージとして、利用者の耳を保護するための提案(例えば、ヒントなど)を示すメッセージを出力する。
これにより、本実施形態による音響システム1は、警告メッセージとして、利用者に耳を保護するための提案(例えば、ヒントなど)を提示することで、利用者の耳の保護に関する意識をより高めることができる。
【0099】
また、本実施形態によるヘッドホン10(装着型音響出力装置)は、利用者の耳に装着可能なヘッドホンであって、暴露量算出部153と、無線通信部11(通信部)とを備える。暴露量算出部153は、利用者の耳に出力する出力音によって利用者が受けた音響暴露量を算出する。無線通信部11は、暴露量算出部153が算出した音響暴露量を、出力音を制御するホスト装置20に送信する。
【0100】
これにより、本実施形態によるヘッドホン10(装着型音響出力装置)は、上述した音響システム1と同様の効果を奏し、OSや音楽プレーヤと連携させずに、利用者の耳を適切に保護することができる。
【0101】
また、本実施形態による制御方法は、利用者の耳に装着可能なヘッドホン10と、ヘッドホン10が出力する出力音を制御するホスト装置20とを備える音響システム1の制御方法であって、ホスト装置20が、出力音の出力に関する基本制御を行い、ヘッドホン10が、出力音によって利用者が受けた音響暴露量を算出し、算出した音響暴露量を、ホスト装置20に送信し、ホスト装置20が、ヘッドホン10から受信した音響暴露量に基づく情報を出力する。
これにより、本実施形態による制御方法は、上述した音響システム1と同様の効果を奏し、OSや音楽プレーヤと連携させずに、利用者の耳を適切に保護することができる。
【0102】
[第2の実施形態]
次に、図面を参照して、第2の実施形態による音響システム1について説明する。
第2の実施形態では、ヘッドホン10の音響暴露量の算出処理の変形例について説明する。なお、第2の実施形態による音響システム1の構成は、
図1に示す第1の実施形態と同様であるため、ここでは、その説明を省略する。
【0103】
なお、本実施形態では、暴露量算出部153の処理が異なっており、以下、暴露量算出部153の異なる点について説明する。
本実施形態における暴露量算出部153は、出力音の実効値(例えば、RMS値)の代わりに、出力音のボリューム値(音量設定値)に基づいて、音響暴露量を算出する。暴露量算出部153は、特定の単位期間ごと(例えば、1秒ごと)のボリューム値の積算値として、音響暴露量を算出する。
【0104】
なお、暴露量算出部153は、音響暴露量を算出する際のボリューム値(音量設定値)を、ボリューム設定記憶部141から取得して使用する。ここで、ボリューム値の単位は、例えば、dBである。
また、暴露量算出部153は、例えば、下記の式(4)を用いて、ボリューム値の積算により、音響暴露量を算出する。
【0105】
音響暴露量 += Log2Liner(ボリューム値)×Const ・・・ (4)
【0106】
ここで、音響暴露量は、タイムスタンプ記憶部142が記憶するタイムスタンプの示す日時からの音響暴露量の積算値を示し、ボリューム値は、単位期間(例えば、1秒間隔)における現在のボリューム設定値を示している。また、Log2Liner()は、ボリューム値の対数表現をリニア表現の変換する変換関数である。また、Constは、正規化定数を示している。
【0107】
暴露量算出部153は、音響暴露量記憶部143が記憶する音響暴露量を取得した後に、上述した式(4)により、新たな音響暴露量を算出し、算出した新たな音響暴露量を音響暴露量記憶部143に記憶させて、音響暴露量を更新する。なお、音響暴露量は、信号処理部151により再生データの音をスピーカ13から出力している場合に、特定の単位期間ごとに音響暴露量を算出する。
【0108】
本実施形態による音響システム1の基本的な動作は、上述した
図3及び
図4に示す第1の実施形態の動作と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0109】
また、本実施形態におけるホスト装置20の動作は、上述した
図6に示す第1の実施形態の動作と同様であるため、ここではその説明を省略する。
ここでは、
図7を参照して、本実施形態におけるヘッドホン10の音響暴露量の算出処理について説明する。
【0110】
図7は、本実施形態におけるヘッドホン10の音響暴露量の算出処理の一例を示すフローチャートである。
なお、
図7に示す処理は、特定の単位期間ごと(例えば、1秒ごと)に実行される音響暴露量の算出処理の一例を示しており、例えば、タイマー割り込み等の発生により実行される。
【0111】
図7に示すように、ヘッドホン10の暴露量算出部153は、まず、音再生中であるか否かを判定して(ステップS301)、音再生中である場合(ステップS301:YES)に、音響暴露量の積算(ステップS302)を実行する。また、暴露量算出部153は、音再生中でない場合(ステップS301:NO)に、音響暴露量の算出処理を終了し、割り込み前の処理に戻す。
【0112】
ステップS302において、暴露量算出部153は、出力音のボリューム値に基づく音響暴露量を算出する。暴露量算出部153は、音響暴露量記憶部143が記憶する音響暴露量を取得した後に、例えば、上述した式(4)を用いて、新たな音響暴露量を算出し、算出した新たな音響暴露量を音響暴露量記憶部143に記憶させて、音響暴露量を更新する。
【0113】
以上説明したように、本実施形態による変形例の音響システム1では、暴露量算出部153は、出力音のボリューム値(音量設定値)に基づいて、音響暴露量を算出する。暴露量算出部153は、特定の単位期間ごと(例えば、1秒ごと)のボリューム値の積算値として、音響暴露量を算出する。
【0114】
これにより、本実施形態による音響システム1は、出力音のボリューム値(音量設定値)を用いることで、簡易処理により音響暴露量を算出できるとともに、ボリューム値による音響暴露量は、RMS値による音響暴露量に比べて大きめの値で算出されるため、安全マージンを確保できる。
【0115】
[第3の実施形態]
次に、図面を参照して、第3の実施形態による音響システム1aについて説明する。
第3の実施形態では、装着型音響出力装置として、ヘッドホン10の代わりに、左右に分離されたワイヤレスイヤホン10aを用いた場合の変形例について説明する。
【0116】
図8は、本実施形態による音響システム1aの一例を示すブロック図である。
図8に示すように、音響システム1aは、ワイヤレスイヤホン10aと、ホスト装置20とを備える。
【0117】
なお、
図8において、上述した
図1と同一の構成について、同一の符号を付与して、その説明を省略する。ここでは、第1の実施形態から変更になっている構成のみ説明する。
ワイヤレスイヤホン10a(装着型音響出力装置の一例)は、左右のイヤホンが独立したワイヤレス方式のイヤホンである。ワイヤレスイヤホン10aは、左イヤホン10a-Lと、右イヤホン10a-Rとを備える。
【0118】
左イヤホン10a-Lは、無線通信部11と、HPアンプ12aと、スピーカ13aと、記憶部14と、制御部15とを備える。
【0119】
HPアンプ12aは、制御部15から取得した音データを増幅した音信号をスピーカ13aに出力して、スピーカ13aから音を出力させる。HPアンプ12aは、モノラル出力である点を除いて、第1の実施形態におけるHPアンプ12と同様である。
【0120】
また、右イヤホン10a-Rの構成は、左イヤホン10a-Lと同様であるため、ここではその説明を省略する。
また、本実施形態による音響システム1aの動作は、ホスト装置20が、ヘッドホン10の代わりに、ワイヤレスイヤホン10aの左イヤホン10a-Lと右イヤホン10a-Rとの2つのイヤホンに対して無線通信で接続する点を除いて、第1の実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0121】
以上説明したように、本実施形態による音響システム1aは、ワイヤレスイヤホン10aと、ホスト装置20とを備える。ワイヤレスイヤホン10aは、左イヤホン10a-Lと、右イヤホン10a-Rとを備え、左イヤホン10a-Lと、右イヤホン10a-Rとのそれぞれが、暴露量算出部153と、無線通信部11(通信部)とを備える。
これにより、本実施形態による音響システム1aは、第1の実施形態と同様の効果を奏し、OSや音楽プレーヤと連携させずに、利用者の耳を適切に保護することができる。
【0122】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の各実施形態において、ヘッドホン10(ワイヤレスイヤホン10a)と、ホスト装置20との間を無線通信によって接続する例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、有線通信により接続してもよい。
【0123】
また、上記の各実施形態において、ヘッドホン10(ワイヤレスイヤホン10a)は、タイムスタンプ記憶部142、及び音響暴露量記憶部143をRAMで構成し、電源オフする際に、不揮発性メモリで構成された情報格納記憶部144に情報を退避する例を説明したが、これに限定されるものではない。ヘッドホン10(ワイヤレスイヤホン10a)は、タイムスタンプ記憶部142、及び音響暴露量記憶部143をフラッシュメモリなどの不揮発性メモリで構成し、情報格納記憶部144を備えない形態であってもよい。
また、ボリューム設定記憶部141についても、同様に、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリで構成してもよい。
【0124】
また、上記の各実施形態において、上記の第1の実施形態の音響暴露量の算出処理と、第2の実施形態の音響暴露量の算出処理とを切り替えて、或いは、組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0125】
また、上記の各実施形態において、ホスト装置20は、警告メッセージを表示部23に表示する例を説明したが、これに限定されるものではなく、警告メッセージを、音声出力してもよい。また、ホスト装置20は、警告メッセージの代わりに、警告音を出力するようにしてもよい。
【0126】
なお、上述した音響システム1(1a)が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した音響システム1(1a)が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した音響システム1(1a)が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0127】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に音響システム1(1a)が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0128】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個片にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1,1a…音響システム、10…ヘッドホン、10a…ワイヤレスイヤホン、10a-R…右イヤホン、10a-L…左イヤホン、11,21…無線通信部、12,12a…HPアンプ、13,13a…スピーカ、14…記憶部、15…制御部、20…ホスト装置、22…入力部、23…表示部、24…ホスト記憶部、25…ホスト制御部、141…ボリューム設定記憶部、142…タイムスタンプ記憶部、143…音響暴露量記憶部、151…信号処理部、152…ボリューム制御部、153…暴露量算出部、241…楽曲データ記憶部、251…OS処理部、252…プレーヤ処理部、253…基本制御部