(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108221
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】金属材料加工装置および金属材料加工方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20240805BHJP
B24B 9/04 20060101ALI20240805BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240805BHJP
B24B 47/22 20060101ALI20240805BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20240805BHJP
B23Q 35/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
B24B9/04 Z
B24B49/12
B24B47/22
B23Q17/22 A
B23Q17/22 Z
B23Q35/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012471
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】520405617
【氏名又は名称】株式会社行田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】行田 正巳
(72)【発明者】
【氏名】千葉 義一
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C049
3C707
【Fターム(参考)】
3C029AA01
3C029AA21
3C034AA19
3C034BB93
3C034CA22
3C034CB20
3C049AA03
3C049AA12
3C049AA13
3C049AC02
3C049BA09
3C049BC02
3C049CB03
3C707AS12
3C707BT18
3C707KS36
3C707KV11
3C707LT06
3C707MT04
(57)【要約】
【課題】金属材料の加工面を自動的にかつ精度よく加工可能な金属材料加工装置および金属材料加工方法を提供する。
【解決手段】金属材料加工装置は、金属材料を削る削り手段を有する加工部と、前記加工部を移動させる移動機構と、前記加工部に固定され、前記金属材料上の加工面までの第1相対距離を計測する第1センサと、前記削り手段までの第2相対距離を計測する第2センサと、前記加工面上の凸部に前記削り手段を当接させつつ前記削り手段の最下点が前記加工面よりも下方に位置しないように、前記第1相対距離および前記第2相対距離に基づいて前記移動機構を制御して前記削り手段の位置を調整する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を削る削り手段を有する加工部と、
前記加工部を移動させる移動機構と、
前記加工部に固定され、前記金属材料上の加工面までの第1相対距離を計測する第1センサと、
前記削り手段までの第2相対距離を計測する第2センサと、
前記加工面上の凸部に前記削り手段を当接させつつ前記削り手段の最下点が前記加工面よりも下方に位置しないように、前記第1相対距離および前記第2相対距離に基づいて前記移動機構を制御して前記削り手段の位置を調整する制御部と、を備える、
金属材料加工装置。
【請求項2】
前記削り手段は、前記金属材料から受けた押圧力によってフローティングする、
請求項1に記載の金属材料加工装置。
【請求項3】
前記加工部は、前記削り手段を回転させる回転機構を有し、
前記第2センサは、前記削り手段を回転させたときの前記第2相対距離の変化を計測し、
前記制御部は、前記第2相対距離の最小値に基づいて、前記削り手段の位置を調整する、
請求項1または2に記載の金属材料加工装置。
【請求項4】
前記第2センサは、所定の時間間隔を空けて前記第2相対距離を複数回計測し、
前記制御部は、前記第2相対距離が計測されるたびに、前記第2相対距離に基づいて前記削り手段の位置を調整する、
請求項1または2に記載の金属材料加工装置。
【請求項5】
金属材料を研磨する削り手段を有する加工部と、
前記加工部を移動させる移動機構と、
前記加工部に固定され、前記金属材料上の加工面までの第1相対距離を計測する第1センサと、
前記削り手段までの第2相対距離を計測する第2センサと、
制御部と、を備える金属材料加工装置を用い、
前記第1センサが前記第1相対距離を計測する第1計測工程と、
前記第2センサが前記第2相対距離を計測する第2計測工程と、
前記加工面上の凸部に前記削り手段を当接させつつ前記削り手段の最下点が前記加工面よりも下方に位置しないように、前記制御部が、前記第1相対距離および前記第2相対距離に基づいて前記移動機構を制御して前記削り手段の位置を調整する調整加工工程と、を有する、
金属材料加工方法。
【請求項6】
前記第2計測工程において、前記第2センサは、前記削り手段を回転させながら前記第2相対距離の変化を計測し、
前記調整加工工程において、前記制御部は、前記第2相対距離の最小値に基づいて、前記削り手段の位置を調整する、
請求項5に記載の金属材料加工方法。
【請求項7】
所定の時間間隔を空けて前記第2計測工程および前記調整加工工程を複数回繰り返す、
請求項5または6に記載の金属材料加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料加工装置および金属材料加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2以上の金属材料を接合させる溶接加工が広く行われている(例えば、特許文献1を参照)。金属材料の接合部には、凸部(いわゆるビード)が形成される。このような凸部は、例えば作業者がやすり等によって金属材料の表面(加工面)を加工することで、溶接加工後に除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような金蔵材料の表面(加工面)の加工は、精度よく行われることが望ましい。また、作業能率の向上等の観点からは、このような加工を、ロボット等による自動制御によって実行できることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、金属材料の加工面を自動的にかつ精度よく加工可能な金属材料加工装置および金属材料加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の態様1に係る金属材料加工装置は、金属材料を削る削り手段と、金属材料を削る削り手段を有する加工部と、前記加工部を移動させる移動機構と、前記加工部に固定され、前記金属材料上の加工面までの第1相対距離を計測する第1センサと、前記削り手段までの第2相対距離を計測する第2センサと、前記加工面上の凸部に前記削り手段を当接させつつ前記削り手段の最下点が前記加工面よりも下方に位置しないように、前記第1相対距離および前記第2相対距離に基づいて前記移動機構を制御して前記削り手段の位置を調整する制御部と、を備える。
【0007】
本発明の態様1によれば、削り手段による加工面の削り過ぎを防止することができる。これにより、加工面の加工を精度よく行うことができる。また、制御部による処理によって加工面の加工を自動化することができる。
【0008】
また、本発明の態様2は、態様1の金属材料加工装置において、前記削り手段は、前記金属材料から受けた押圧力によってフローティングする。
【0009】
また、本発明の態様3は、態様1または態様2の金属材料加工装置において、前記加工部は、前記削り手段を回転させる回転機構を有し、前記第2センサは、前記削り手段を回転させたときの前記第2相対距離の変化を計測し、前記制御部は、前記第2相対距離の最小値に基づいて、前記削り手段の位置を調整する。
【0010】
また、本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つの金属材料加工装置において、前記第2センサは、所定の時間間隔を空けて前記第2相対距離を複数回計測し、前記制御部は、前記第2相対距離が計測されるたびに、前記第2相対距離に基づいて前記削り手段の位置を調整する。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の態様5に係る金属材料加工方法は、金属材料を研磨する削り手段を有する加工部と、前記加工部を移動させる移動機構と、前記加工部に固定され、前記金属材料上の加工面までの第1相対距離を計測する第1センサと、前記削り手段までの第2相対距離を計測する第2センサと、制御部と、を備える金属材料加工装置を用い、前記第1センサが前記第1相対距離を計測する第1計測工程と、前記第2センサが前記第2相対距離を計測する第2計測工程と、前記加工面上の凸部に前記削り手段を当接させつつ前記削り手段の最下点が前記加工面よりも下方に位置しないように、前記制御部が、前記第1相対距離および前記第2相対距離に基づいて前記移動機構を制御して前記削り手段の位置を調整する調整加工工程と、を有する。
【0012】
本発明の態様5によれば、削り手段による加工面の削り過ぎを防止することができる。これにより、加工面の加工を精度よく行うことができる。また、制御部による処理によって加工面の加工を自動化することができる。
【0013】
また、本発明の態様6は、態様5の金属材料加工方法において、前記第2計測工程において、前記第2センサは、前記削り手段を回転させながら前記第2相対距離の変化を計測し、前記調整加工工程において、前記制御部は、前記第2相対距離の最小値に基づいて、前記削り手段の位置を調整する。
【0014】
また、本発明の態様7は、態様5または態様6の金属材料加工方法において、所定の時間間隔を空けて前記第2計測工程および前記調整加工工程を複数回繰り返す。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記態様によれば、金属材料の加工面を自動的にかつ精度よく加工可能な金属材料加工装置および金属材料加工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る金属材料加工装置を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態に係る削り手段の移動経路を示した図である。
【
図4A】本発明の実施形態に係る削り手段が加工面上の凸部を削る様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(金属材料加工装置)
以下、本発明の実施形態に係る金属材料加工装置について図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る加工装置(金属材料加工装置)1は、加工部10と、本体部11と、移動機構13と、制御部16と、第1センサ21と、第2センサ22と、を備える。加工部10は、削り手段12と、回転機構14と、フローティング検出部15と、を有する。削り手段12は、ワーク30の表面(加工面30s)と対向するように配置される。移動機構13は、例えばロボットである。
【0019】
加工装置1は、金属製のワーク(金属材料)30の加工面30sを加工する装置である。より具体的に、加工装置1は、加工面30s上の凸部31を、削り手段12によって削って取り除き、加工面30sを所望の形状に加工する装置である。凸部31は、例えば、2以上の金属材料を溶接した際に生じるビードである。
【0020】
以下、加工面30sに交差する(例えば、直交する)方向を、上下方向Zと称する。上下方向Zに交差する(例えば、直交する)一方向を、第1方向Xと称する。上下方向Zおよび第1方向Xの双方に交差する(例えば、直交する)方向を、第2方向Yと称する。第1方向Xおよび第2方向Yは、加工面30sに沿う方向でもある。また、上下方向Zに沿って、ワーク30から加工部10に向かう向きを、上方と称し、+Zの向きで表す。+Zの向きとは反対の向きを、下方と称し、-Zの向きで表す。また、第1方向Xに沿う2つの向きを、各々+Xの向きおよび-Xの向きで表す。第2方向Yに沿う2つの向きを、各々-Yの向きおよび+Yの向きで表す。また、以下では上下方向Zにおける位置を単に「高さ」と称する場合がある。
【0021】
本体部11は、移動機構13を支持する。本体部11は、例えばロボットの筐体である。
【0022】
削り手段12は、加工面30s上の凸部31を削って除去する手段である。削り手段12は、例えば、凸部31を研磨または研削することによって凸部31を除去する。削り手段12は、例えば、凸部31を研削するグラインダーや凸部31を研磨するサンダーである。本実施形態に係る削り手段12は、軸部12aと、回転削り部12bとを有する。
【0023】
軸部12aは、回転機構14から直線状に延出する部位である。回転削り部12bは、軸部12aの先端部に固定されている。回転削り部12bは、平面視で(上下方向Zから見て)例えば円形状を有する。回転削り部12bの下面には、凸部31に当接して凸部31を削る(研磨または研削する)ための砥粒が設けられている。軸部12aおよび回転削り部12bは、削り手段12の中心軸線O回りに回転可能に構成されている。中心軸線Oは、軸部12aに沿って延びている。軸部12aおよび回転削り部12bの回転は、例えば回転機構14によって駆動される。回転削り部12bが回転した状態で回転削り部12bの下面が凸部31に当接することにより、凸部31が削られ、加工面30s上から凸部31が除去される。削り手段12は、凸部31に対して例えば数グラム程度の荷重を印加するように構成されている。
【0024】
本実施形態に係る削り手段12は、ワーク30等から受けた押圧力によってフローティングするフローティング機構(フローティング検出部15)を有する。すなわち、外力が印加されていない状態において、回転削り部12bはある所定の自然位置に位置する。そして、回転削り部12bの下面から上方に向けた(例えば、数グラム程度の)押圧力を受けると、当該押圧力によって、回転削り部12bは自然位置から上方に浮上する。そして、このような押圧力の印加が解除されると、削り手段12は下降し、自然位置に戻る。また、削り手段12は、自然位置よりも下降しないように構成されている。
【0025】
移動機構13は、例えば制御部16からの指示に基づき、加工部10を移動させることで、削り手段12を移動させる。より具体的に、移動機構13は、削り手段12を、第1方向X、第2方向Y、および上下方向Zに移動させる。言い換えれば、移動機構13は、ワーク30(加工面30s)に対する削り手段12の相対位置を、第1方向X、第2方向Y、および上下方向Zにおいて変更する。
【0026】
また、移動機構13は、削り手段12をワーク30(加工面30s)に対して傾ける傾動機構としての機能を有していてもよい。なお、削り手段12を加工面30sに対して傾ける必要のない場合等には、移動機構13は削り手段12を加工面30sに対して傾ける傾動機構としての機能を有していなくてもよい。移動機構13は、削り手段12をワーク30に対して複数の方向(例えば、3方向)に傾けることができてもよい。
【0027】
回転機構14は、例えば制御部16からの指示に基づき、削り手段12(軸部12aおよび回転削り部12b)を削り手段12の中心軸線Oまわりに回転させる。
【0028】
フローティング検出部15は、削り手段12のフローティング量を検出する。なお、「削り手段12のフローティング量」とは、削り手段12が回転削り部12bの自然位置からどの程度浮上しているかを示す量である。回転削り部12bが自然位置にある場合、削り手段12のフローティング量は0(ゼロ)である。フローティング検出部15は、検出した削り手段12のフローティング量を、制御部16に出力する。
【0029】
制御部16は、加工部10の動作を統括して制御する。例えば、制御部16は、後述する第1相対距離L1および第2相対距離L2に基づいて移動機構13を制御し、削り手段12の位置を調整する。より具体的に、制御部16は、加工面30s上の凸部31に削り手段12(回転削り部12b)を当接させつつ、削り手段12(回転削り部12b)の最下点Pが加工面30sよりも下方に位置しないように、移動機構13を制御する。制御部16は、フローティング検出部15やセンサ21、22の出力を記憶する記憶部を有していてもよい。あるいは、加工装置1は上記のような記憶部を制御部16とは別に備えており、制御部16が当該記憶部に記憶された情報を参照できるように構成されていてもよい。
【0030】
第1センサ21は、フローティング検出部15の下面に固定されている。第1センサ21は、第1センサ21から加工面30sまでの距離(以下、第1相対距離L1と称する)を計測する。より具体的に、第1相対距離L1は、上下方向Zにおける、第1センサ21と加工面30sとの間の距離である。なお、図示の例における第1センサ21は、加工面30sと同一平面上に配された基準面30s´までの距離を計測することで、第1相対距離L1を計測している。第1センサ21は、例えばレーザーセンサである。ただし、第1相対距離L1を測定可能であれば第1センサ21の種類は特に限定されず、適宜変更可能である。第1センサ21は、測定した第1相対距離L1を、制御部16に出力する。
【0031】
第2センサ22は、基準面30s´を有する計測用治具30´に固定されている。第2センサ22は、第2センサ22から削り手段12(回転削り部12b)までの距離(以下、第2相対距離L2と称する)を計測する。より具体的に、第2相対距離L2は、上下方向Zにおける、第2センサ22と削り手段12(回転削り部12b)との間の距離である。第2センサ22は、回転削り部12bの外周から1mm程度内径側までの範囲で第2相対距離L2の計測を行ってもよい。第2センサ22は、例えばレーザーセンサである。ただし、第2相対距離L2を測定可能であれば第2センサ22の種類は特に限定されず、適宜変更可能である。第2センサ22は、測定した第2相対距離L2を、制御部16に出力する。
【0032】
図示の例においては、基準面30s´上に比較用の補助板32を一時的に配置することで、第2センサ22が、第2センサ22から加工面30sと同等になる距離(以下、計測基準距離L3と称する)も計測できるように構成されている。図示の例における補助板32は、補助板32の少なくとも一部が上下方向Zにおいて第2センサ22と対向するように、基準面30s´から基準面30s´の面内方向に突出して配置されている。そして、第2センサ22は、補助板32の下面までの距離を計測することで、計測基準距離L3を計測している。測定した計測基準距離L3と第1相対距離L1を、制御部16に出力して記録する。
【0033】
なお、加工装置1の構成要素のうち、例えば、制御部16の機能は、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現されてもよい。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)またはフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDまたはCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0034】
(金属材料加工装置で行われる処理)
次に、本実施形態に係る加工装置1で行われる処理について説明する。
図2は、本実施形態に係る加工装置1を用いてワーク30の加工面30sを加工する際に、加工装置1で行われ処理の一例を示すフローチャートである。
【0035】
(ステップS1)まず、第1センサ21が第1相対距離L1を計測し(第1計測工程)、計測した第1相対距離L1を制御部16に出力する。また、第2センサ22が第2相対距離L2を計測し(第2計測工程)、計測した第2相対距離L2を制御部16に出力する。このとき、第2センサ22は、第3相対距離L3を計測して制御部16に出力してもよい。
【0036】
(ステップS2)次に、制御部16は、計測された第1相対距離L1および第2相対距離L2に基づき、加工面30sに対する削り手段12の高さ補正を行う。より具体的には、回転削り部12bが上述した自然位置にある場合に、削り手段12(回転削り部12b)の最下点Pが加工面30sと同じ高さにくるように、移動機構13を制御して削り手段12の位置を調整する。
【0037】
このように削り手段12の位置を調整することで、凸部31に削り手段12を当接させ、削り手段12によって凸部31を削ることができる。また、削り手段12の最下点Pが加工面30sよりも下方に位置することが規制される。これにより、削り手段12が加工面30sを必要以上に削ることが防止される。
【0038】
削り手段12に偏心や変形が生じている場合、削り手段12と第2センサ22との間の距離(第2相対距離L2)は、削り手段12の各箇所において異なる。このような場合には、回転機構14によって削り手段12を回転させながら、第2センサ22によって第2相対距離L2の変化を計測するとよい。そして、削り手段12が最もワーク30に向けて突出する点、すなわち、第2相対距離L2の最小値に基づいて削り手段12の位置を調整するとよい。この方法によれば、削り手段12に偏心や変形が生じている場合においても、削り手段12の最下点Pが加工面30sよりも下方に位置し、加工面30sの削り過ぎを防止することができる。
【0039】
一例としては、以下に式(1)に示す値Eが正の場合は削り手段12の位置を下方に補正し、値Eが負の場合が削り手段12の位置を上方に補正してもよい。なお、値Bは計測基準距離L3の測定値であり、値Aは計測基準距離L3測定時の第1相対距離L1の測定値であり、値Cは補正計測時の第1相対距離L1の測定値であり、値Dは補正計測時の第2相対距離L2の測定値の最小値である。
E=(A-B)-(C-D) …(1)
【0040】
(ステップS3)次に、制御部16は、移動機構13を制御して、所定の教示位置(基準位置)まで削り手段12を移動させる。
図3においては、所定の基準位置を(X,Y)=(0,0)として示している。教示位置は、例えば、削り手段12の中心軸線Oが凸部31の直上に来る位置である。そして、当該教示位置付近の凸部のない加工面30s直上まで第1センサ21を平行移動させる、第1センサ21は、加工面30sまでの距離、すなわち第1相対距離L1を計測する。第1センサ21は、計測した第1相対距離L1を制御部16に出力する。
【0041】
(ステップS4)次に、制御部16は、移動機構13を制御して、所定の加工開始位置まで削り手段12の加工点Pを移動させる。
図3においては、加工開始位置を(X,Y)の座標系で(X1,Y1)として示している。
図3に示す加工領域Aは、加工面30s上における、削り手段12による加工を行う範囲である。加工領域Aは、ユーザ等によって事前に設定される。加工領域Aは、例えば加工開始位置(X1,Y1)および加工終了位置(X2,Y2)によって規定される矩形状の領域である。加工領域Aの形状は図示の例に限られず、適宜変更可能である。通常は加工領域Aに教示位置(X,Y)=(0,0)が含まれる。
【0042】
(ステップS5)次に、制御部16は、移動機構13を制御して、削り手段12を下降させる。このとき、制御部16は、以上の工程で計測された第1相対距離L1および第2相対距離L2に基づいて移動機構13を制御する。これにより、凸部31に削り手段12を当接させつつ削り手段12の最下点Pが加工面30sよりも下方に位置しないように、削り手段12の位置(高さ)を規制する。より具体的に、制御部16は、削り手段12を、仮に削り手段12が自然状態にあるとしたならば削り手段12の最下点Pが加工面30sと同じ高さに位置するような位置まで下降させる。
【0043】
一例としては、以下の式(2)に基づいて算出される距離F(
図1左上参照)だけ削り手段12を下降させてもよい。なお、値EはステップS2において説明した値である。
F=E …(2)
【0044】
なお、制御部16は、移動機構13を制御して削り手段12を加工面30sに対して傾け(
図4A参照)、このように傾いた状態で削り手段12を下降させてもよい(
図4B参照)。つまり、削り手段12の中心軸線Oを上下方向Zに対して傾けてもよい。このように削り手段12を傾斜させる場合には、以下の式(3)に基づいて算出される距離Hだけ削り手段12を下降させてもよい。なお、値θは、削り手段12の中心軸線Oの、上下方向Zに対する傾斜角である。
図4Aにおいて、加工面30sと線PRが平行の時の加工点Pと、中心点Qより∠θ傾けた時の加工点Pの座標Pの差より補正値を求める。
計算に必要な情報として以下の条件が存在する。
・点QRは削り手段12の回転機構14の中心線Oの直線上である。
・PRとQRは直角である。
・面PQRは座標面(X,Z)と平行である。
計算に必要な情報として以下のパラメータが設定される。
・QR=線分QR
・PR=線分PR
・θ=傾け角度(deg)
中間計算式は以下の通りとなる。
・線分QPの長さ=QP=√(QR
2+PR
2)
・∠PQR=arctan(PR/QR) 基準となるP点角度
・∠P3=∠PQR-90(deg) 傾け前の実際のP点角度
・∠P4=∠PQR-90(deg)+θ 傾け後の実際のP点角度
(∠P3と、∠P4は中間計算の変数なので
図4Aには記載していない。)
傾け時の下降距離Hの計算式は以下の通りとなる。
・H=F-(sin(∠P4)-sin(∠P3))×QP ・・・(3)
・X軸は(cos(∠P4)-cos(∠P3))×QPぶんマイナス方向に移動する。
【0045】
(ステップS6)凸部31に削り手段12が当接すると、削り手段12は、凸部31から受けた押圧力によって、上方にフローティング状態になる(
図4B参照)。そして、削り手段12によって凸部31が徐々に削れていくのに伴って、削り手段12は下降していく。削り手段12の下降は、前述した自然状態で停止する(
図4C参照)。上述したステップS5において、第1相対距離L1および第2相対距離L2を用いて削り手段12の位置を適切に調整することで、凸部31の高さを計測せずとも、削り手段12の最下点Pを、丁度加工面30s上で停止させることができる(調整加工工程)。
【0046】
この過程において、フローティング検出部15は、削り手段12のフローティング量を所定の時間間隔で計測し続け、計測値を制御部16に出力し続ける。制御部16は、フローティング検出部15の出力値に基づき、フローティング量が0になったか否かを判断する。制御部16が、フローティング量が0でないと判断した場合(ステップS6;NO)、制御部16は当該判断を継続する。制御部16が、フローティング量が0になったと判断した場合(ステップS6;YES)、ステップS7の処理が行われる。
【0047】
(ステップS7)制御部16は、削り手段12の加工点Pの現在位置のX座標が加工終了位置のX座標(X2)に到達しているか否かを判断する。制御部16が、削り手段12の加工点Pの現在位置のX座標が加工終了位置のX座標(X2)に到達していないと判断した場合(ステップS7;NO)、ステップS8の処理が行われる。制御部16が、削り手段12の加工点Pの現在位置のX座標が加工終了位置のX座標(X2)に到達したと判断した場合(ステップS7;YES)、ステップS9の処理が行われる。
【0048】
(ステップS8)制御部16は、移動機構13を制御して、削り手段12の加工点Pを第1方向Xに所定距離移動させる(
図3参照)。そして、再度ステップS6の処理が行われる。このようにステップS6~ステップS8の処理が繰り返されることで、削り手段12の加工点Pが、凸部31を加工面30sに沿って削りながら、第1方向Xに移動していく。
【0049】
(ステップS9)制御部16は、削り手段12の加工点Pの現在位置のY座標が加工終了位置のY座標(Y2)に到達しているか否かを判断する。制御部16が、削り手段12の加工点Pの現在位置のY座標が加工終了位置のY座標(Y2)に到達していないと判断した場合(ステップS9;NO)、ステップS10の処理が行われる。制御部16が、削り手段12の加工点Pの現在位置のY座標が加工終了位置のY座標(Y2)に到達したと判断した場合(ステップS9;YES)、加工装置1による処理が終了する。
【0050】
(ステップS10)(
図3参照)制御部16は、移動機構13を制御して、削り手段12の加工点Pを上昇させ、削り手段12の加工点PのX座標を加工開始位置のX座標を(X1)にリセットし、第2方向Yは所定距離移動させる。これにより、削り手段12の移動中に削り手段12とワーク30とが意図せず干渉してしまうことを防ぐ。このようにステップS5~ステップS10の処理が繰り返すことで、削り手段12によって、凸部31を、加工領域Aの全体にわたって、加工面30sに沿って削ることができる。
【0051】
なお、
図2に示すフローチャートのステップS1において、第2相対距離L2の計測(第2計測工程)は一度のみ行われているが、当該計測は所定の時間間隔を空けて複数回繰り返されてもよい。そして、当該計測の度に制御部16による削り手段12の位置の調整(調整加工工程)が行われてもよい。この場合、凸部31を削った際の摩耗等によって削り手段12が変形しても、当該変形に応じて削り手段12の加工点Pの位置を調整しなおし、加工の精度を維持することができる。また、制御部16は、削り手段12を回転させたときの第2センサ22の最大値L4と最小値L2との差が所定値以上である場合に、削り手段12が故障していると判定し、加工装置1の動作を停止するように構成されていてもよい。この場合、加工装置1の安全性を高めることができる。
【0052】
また、本実施形態における加工装置1の機能の全てまたは一部を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより加工装置1が行う処理の全てまたは一部を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0053】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る加工装置1(金属材料加工装置)は、ワーク30(金属材料)を削る削り手段12を有する加工部10と、加工部10を移動させる移動機構13と、加工部10に固定され、ワーク30上の加工面30sまでの第1相対距離L1を計測する第1センサ21と、削り手段12までの第2相対距離L2を計測する第2センサ22と、加工面30s上の凸部31に削り手段12を当接させつつ削り手段12の最下点Pが加工面30sよりも下方に位置しないように、第1相対距離L1および第2相対距離L2に基づいて移動機構13を制御して削り手段12の位置を調整する制御部16と、を備える。また、本実施形態に係る金属材料加工方法は、第1センサ21が第1相対距離L1を計測する第1計測工程と、第2センサ22が第2相対距離L2を計測する第2計測工程と、加工面30s上の凸部31に削り手段12を当接させつつ削り手段12の最下点Pが加工面30sよりも下方に位置しないように、第1相対距離L1および第2相対距離L2に基づいて削り手段12の位置を調整する調整加工工程と、を備える。
【0055】
この構成により、削り手段12による加工面30sの削り過ぎを防止することができる。これにより、加工面30sの加工を精度よく行うことができる。また、制御部16による処理によって加工面30sの加工を自動化することができる。
【0056】
また、削り手段12は、ワーク30から受けた押圧力によってフローティングする。この構成により、過負荷による削り手段12の破損を確実に防止することができる。
【0057】
また、加工部10は、削り手段12を回転させる回転機構14を有し、第2センサ22は、削り手段12を回転させたときの第2相対距離L2の変化を計測し、制御部16は、第2相対距離L2の最小値に基づいて、削り手段12の位置を調整する。この構成によれば、削り手段12に偏心や変形が生じている場合においても、加工面30sの加工を精度よく行うことができる。
【0058】
また、第2センサ22は、所定の時間間隔を空けて第2相対距離L2を複数回計測し、制御部16は、第2相対距離L2が計測されるたびに、第2相対距離L2に基づいて削り手段12の位置を調整してもよい。この構成によれば、摩耗等によって削り手段12が変形しても、当該変形に応じて削り手段12の位置を調整しなおし、加工の精度を維持することができる。
【0059】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態で説明した加工装置1および加工方法は、凸部31を大きく削り取る研削工程、加工面30sを平坦にする仕上げ工程、その他の加工工程のいずれに適用されてもよい。
【0061】
また、加工装置1は、削り手段12が交換可能に構成されていてもよい。この構成によれば、各加工工程において最適な削り手段12を用いて加工面30sの加工を行うことができる。また、削り手段12の交換を適切に行うことで、1つの加工装置1によって複数の(例えば、全ての)加工工程を行うことも可能である。削り手段12を交換しても、上記実施形態のように第1相対距離L1および第2相対距離L2に基づいて削り手段12の位置を調整することで、加工面30sを精度よく加工することができる。
【0062】
また、加工工程ごとに、削り手段12を加工面30sに対して傾けるか否か切り替えてもよい。例えば、研削工程においては削り手段12を加工面30sに対して垂直に押し当て、仕上げ工程においては削り手段12を加工面30sに対して傾けて(非垂直に)押し当ててもよい。加工工程ごとに削り手段12の傾斜角を異ならせてもよい。
【0063】
また、加工面30sは平坦面であってもよいし、第1相対距離L1の計測点と加工範囲(X1,Y1)‐(X2、Y2)が1直線上にあるならば、その直線の垂直方向の面が曲面であってもよい。
【0064】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…加工装置 10…加工部 11…本体部 12…削り手段 13…移動機構 14…回転機構 15…フローティング検出部 16…制御部 21…第1センサ 22…第2センサ 30…ワーク(金属材料) 31…凸部 L1…第1相対距離 L2…第2相対距離