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特開2024-108224電気刺激装置及び電気刺激条件の設定方法
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  • 特開-電気刺激装置及び電気刺激条件の設定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108224
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】電気刺激装置及び電気刺激条件の設定方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012475
(22)【出願日】2023-01-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和4年8月24日にアドレスhttps://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnhum.2022.937319/fullのウェブサイトに掲載された学術論文にて公開された。 (2)令和4年8月24日にアドレスhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9449584/のウェブサイトに掲載された学術論文にて公開された。 (3)令和4年8月24日にアドレスhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36092646/のウェブサイトに掲載された学術論文の概要にて公開された。 (4)令和4年8月25日にアドレスhttps://1post.jp/6722のウェブサイトに掲載された記事にて公開された。 (5)令和4年8月25日にアドレスhttps://www.kio.ac.jp/nrc/2022/08/25/press-5/のウェブサイトに掲載された記事にて公開された。 (6)令和4年8月25日にアドレスhttps://www.kio.ac.jp/topics_press/76076/のウェブサイトに掲載された記事にて公開された。 (7)令和4年8月26日にアドレスhttp://www2.am.nagasaki-u.ac.jp/pt/basic_pt/、http://www2.am.nagasaki-u.ac.jp/pt/basic_pt/nishi202200825.htmlのウェブサイトに掲載された記事にて公開された。 (8)令和4年8月26日にアドレスhttp://www.nishiyamato.net/2022/08/frontiers-in-human-neuroscience.htmlのウェブサイトに掲載された記事にて公開された。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (9)令和4年9月5日にアドレスhttps://univ-journal.jp/181603/、https://es.univ-journal.net/181603/、https://cn.univ-journal.net/181603/、https://tw.univ-journal.net/181603/、https://ko.univ-journal.net/181603/のウェブサイトに掲載された記事にて公開された。 (10)令和4年11月9日にアドレスhttps://univ-journal.net/181603/のウェブサイトに掲載された記事にて公開された。 (11)令和5年1月29日にアドレスhttps://www.jcbapt2023.com/_files/ugd/54a335_af429a3b3b6c4bd9a0d3106f2bdd6d44.pdfのウェブサイトに掲載された日本物理療法合同学術大会2023の抄録集(全体版)の44頁目の「J-4 助成演題」、及び、アドレスhttps://www.jcbapt2023.com/_files/ugd/54a335_9f85f7d1768446d08e9de1688b6e7b56.pdfのウェブサイトに掲載された同大会2023の抄録集(分冊版)一般演題の4頁目の「J-4 助成演題」にて公開された。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (12)令和5年1月29日にアドレスhttps://www.jcbapt2023.com/_files/ugd/54a335_af429a3b3b6c4bd9a0d3106f2bdd6d44.pdfのウェブサイトに掲載された日本物理療法合同学術大会2023の抄録集(全体版)の59頁目の「O-3-5 一般演題3 疼痛管理」、及び、アドレスhttps://www.jcbapt2023.com/_files/ugd/54a335_9f85f7d1768446d08e9de1688b6e7b56.pdfのウェブサイトに掲載された同大会2023の抄録集(分冊版)一般演題の19頁目の「O-3-5一般演題3 疼痛管理」にて公開された。 (13)令和5年1月29日にアドレスhttps://www.jcbapt2023.com/_files/ugd/54a335_af429a3b3b6c4bd9a0d3106f2bdd6d44.pdfのウェブサイトに掲載された日本物理療法合同学術大会2023の抄録集(全体版)の87頁目の「O-9-1 一般演題9 疼痛管理」、及び、アドレスhttps://www.jcbapt2023.com/_files/ugd/54a335_9f85f7d1768446d08e9de1688b6e7b56.pdfのウェブサイトに掲載された同大会2023の抄録集(分冊版)一般演題の47頁目の「O-9-1 一般演題9 疼痛管理」にて公開された。 (14)令和4年8月24日、同年8月25日、同年9月9日、同年9月10日にアドレスhttps://twitter.com/y_nishi_ptのTwitterに掲載された記事にて公開された。 (15)令和4年9月10日にアドレスhttps://youtube.com/live/-4Gf-sluC7sのウェブサイトにおけるライブ放送にて公開された。
(71)【出願人】
【識別番号】000103471
【氏名又は名称】オージー技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(71)【出願人】
【識別番号】508179637
【氏名又は名称】学校法人冬木学園
(72)【発明者】
【氏名】西 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】生野 公貴
(72)【発明者】
【氏名】青木 仁
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ06
4C053JJ21
(57)【要約】
【課題】従来よりもしびれ感を軽減するための電気刺激の周波数と強度の設定を容易に行うことを可能にする。
【解決手段】被治療者の皮膚表面に当接される電極3と、電極3に電気刺激を出力する出力部9と、被治療者の動作に基づき操作される操作部5と、出力部9を制御する制御部12とを備え、制御部12は周波数設定部21と強度設定部22とを備える。周波数設定部21は、電気刺激の強度を固定した状態で電気刺激の周波数を自動で変化させ、その間の操作部5の操作に基づき、電気刺激の周波数を被治療者が感じるしびれ感の周波数と同等になるよう設定する。強度設定部22は、電気刺激の周波数を固定した状態で電気刺激の強度を自動で変化させ、その間の操作部5の操作に基づき、電気刺激の強度を被治療者が感じるしびれ感の強度と同等になるよう設定する。出力部9は、設定された周波数及び強度を有する電気刺激を電極3に出力する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被治療者の皮膚表面に当接される電極と、前記電極に電気刺激を出力する出力部と、前記被治療者の動作に基づき操作される操作部と、前記出力部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、
電気刺激の強度を固定した状態で前記電気刺激の周波数を自動で変化させ、前記電気刺激の周波数が変化している間の前記操作部の操作に基づき、前記電気刺激の周波数を前記被治療者が感じるしびれ感の周波数と同等になるよう設定する周波数設定部と、
電気刺激の周波数を固定した状態で前記電気刺激の強度を自動で変化させ、前記電気刺激の強度が変化している間の前記操作部の操作に基づき、前記電気刺激の強度を前記被治療者が感じるしびれ感の強度と同等になるよう設定する強度設定部と、を備え、
前記出力部は、前記周波数設定部により設定された周波数、及び、前記強度設定部により設定された強度を有する電気刺激を前記電極に出力する、
ことを特徴とする電気刺激装置。
【請求項2】
前記周波数設定部は、前記電気刺激の周波数を第1周波数から第2周波数に向けて自動で増加させている増加期間における前記操作部の操作によって特定される周波数と、前記電気刺激の周波数を第3周波数から第4周波数に向けて自動で減少させている減少期間における前記操作部の操作によって特定される周波数とを用いて前記電気刺激の周波数を設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の電気刺激装置。
【請求項3】
前記増加期間及び前記減少期間のそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値が同じとき、前記周波数設定部は、前記周波数の値を前記電気刺激の周波数として設定する、ことを特徴とする請求項2に記載の電気刺激装置。
【請求項4】
前記増加期間及び前記減少期間のそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値が異なるとき、前記周波数設定部は、前記増加期間及び前記減少期間のそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値の平均値を前記電気刺激の周波数として設定する、又は、前記増加期間及び前記減少期間のそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値の間で前記電気刺激の周波数を自動で変化させ、前記電気刺激の周波数が変化している間の前記操作部の操作に基づき前記電気刺激の周波数を設定する、ことを特徴とする請求項2に記載の電気刺激装置。
【請求項5】
前記周波数設定部により設定された周波数、及び、前記強度設定部により設定された強度を微調整する操作スイッチ部を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項6】
前記操作部はハンドスイッチであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項7】
被治療者の皮膚表面に当接され電気刺激が出力される電極と、前記被治療者の動作に基づき操作される操作部とを備えた電気刺激装置を用いた電気刺激条件の設定方法であって、
電気刺激の強度を固定した状態で前記電気刺激の周波数を自動で変化させ、前記電気刺激の周波数が変化している間の前記操作部の操作に基づき、前記電気刺激の周波数を前記被治療者が感じるしびれ感の周波数と同等になるよう設定する周波数設定ステップと、
電気刺激の周波数を固定した状態で前記電気刺激の強度を自動で変化させ、前記電気刺激の強度が変化している間の前記操作部の操作に基づき、前記電気刺激の強度を前記被治療者が感じるしびれ感の強度と同等になるよう設定する強度設定ステップと、を有する、
ことを特徴とする電気刺激条件の設定方法。
【請求項8】
前記周波数設定ステップは、前記電気刺激の周波数を第1周波数から第2周波数に向けて自動で増加する増加ステップと、前記電気刺激の周波数を第3周波数から第4周波数に向けて自動で減少する減少ステップとを備え、前記増加ステップ及び前記減少ステップのそれぞれにおける前記操作部の操作に基づき、前記電気刺激の周波数を設定する、ことを特徴とする請求項7に記載の電気刺激条件の設定方法。
【請求項9】
前記増加ステップ及び前記減少ステップのそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値が同じとき、前記周波数の値を前記電気刺激の周波数として設定する、ことを特徴とする請求項8に記載の電気刺激条件の設定方法。
【請求項10】
前記増加ステップ及び前記減少ステップのそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値が異なるとき、前記増加ステップ及び前記減少ステップのそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値の平均値を前記電気刺激の周波数として設定する、又は、前記増加ステップ及び前記減少ステップのそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値の間で前記電気刺激の周波数を自動で変化させ、前記電気刺激の周波数が変化している間の前記操作部の操作に基づき前記電気刺激の周波数を設定する、ことを特徴とする請求項8に記載の電気刺激条件の設定方法。
【請求項11】
前記周波数設定ステップにおける前記電気刺激の強度は、前記電気刺激の強度を所定強度から自動で増加させている間に、前記被治療者が最初に刺激を知覚したことを前記操作部の操作によって特定したときの強度に固定される、ことを特徴とする請求項7~10のいずれかに記載の電気刺激条件の設定方法。
【請求項12】
前記強度設定ステップは前記周波数設定ステップの後に実行され、前記強度設定ステップにおける前記電気刺激の周波数は、前記周波数設定ステップで設定された周波数に固定される、ことを特徴とする請求項7~10のいずれかに記載の電気刺激条件の設定方法。
【請求項13】
前記周波数設定ステップは前記強度設定ステップの後に実行され、前記周波数設定ステップにおける前記電気刺激の強度は、前記強度設定ステップで設定された強度に固定される、ことを特徴とする請求項7~10のいずれかに記載の電気刺激条件の設定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気刺激装置及び電気刺激条件の設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳卒中や多発性硬化症、脊髄損傷、頚椎症性脊髄症等の中枢神経障害を呈する多くの患者において、ビリビリ、チクチク、ヒリヒリと表現されるしびれ感が生じる。リハビリテーションによるしびれ感の改善は困難とされており、しびれ感に対する体系的な介入は十分に確立されていないのが現状であった。
【0003】
本発明者らがTENS(経皮的神経刺激)を用いてしびれ感を改善する方法について検討した結果、被治療者に与える電気刺激の強度、周波数を、被治療者が感じるしびれ感の強度、周波数と同等になるよう設定することで、しびれ感を低減することができるという知見を得た。具体的には、しびれ感のビリビリ、チクチク、ヒリヒリといった主観的な感覚が患者内で一定していることを応用し、TENSの周波数および刺激強度を調整し、TENSを主観的なしびれ感に同調させる手続きを行う。加えて、しびれ感に同調したTENS(しびれ同調TENS)を行うことで、脊髄神経機能不全を呈した患者において、即時的にしびれ感の著明な改善が観察された。多くの症例は「しびれ感とTENSによる電気が流れる感覚が打ち消し合ってどちらもなくなった」と表現しており、感覚障害や触るだけで痛いアロディニアや痛覚過敏が有意に改善された。
【0004】
電気刺激の強度、周波数を設定する方法の具体例として、まず、治療者は、被治療者が感じることのできる一定強度の電気刺激の周波数を所定値に設定して被治療者に与え、電気刺激の周波数が、被治療者がしびれ感の周波数と同等であると感じるか否かについて被治療者に確認をする。確認の結果が否の場合(電気刺激の周波数と被治療者が感じるしびれ感の周波数とが同等ではない場合)、治療者はその時の周波数よりも所定周波数だけ増加した周波数を設定して電気刺激を被治療者に与え、被治療者に対し前記確認をするという周波数特定作業を行う。そして、電気刺激の周波数が、しびれ感の周波数と同等であると被治療者が感じるときまで周波数特定作業を繰り返し、電気刺激の周波数を特定する。
【0005】
次に、治療者は、この特定された周波数の電気刺激の強度を所定値に設定して被治療者に与え、電気刺激の強度が、被治療者がしびれ感の強度と同等であると感じるか否かについて被治療者に確認をする。確認の結果が否の場合(電気刺激の強度と被治療者が感じるしびれ感の強度とが同等ではない場合)、治療者はその時の強度よりも所定強度だけ増加した強度を設定して電気刺激を被治療者に与え、被治療者に対し前記確認をするという強度特定作業を行う。そして、電気刺激の強度が、しびれ感の強度と同等であると被治療者が感じるときまで強度特定作業を繰り返し、電気刺激の強度を特定する。このようにして特定された周波数及び強度を、被治療者のしびれ感を低減するために与える電気刺激の周波数及び強度として設定する。
【0006】
特許文献1にはTENSモードを備えた低周波治療器が記載されている。この低周波治療器は出力調節器と設定部を備えており、出力調節器により好適通電電流が得られるように出力を設定し、出力設定が完了した後には低周波の電流が流れる。また、設定部により低周波の電流の周波数を予め設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-196646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の低周波治療器では、電流の大きさ、周波数の設定は人(例えば治療者)が出力調節器、設定部を操作することで行っている。このため、被治療者に与える電気刺激の強度、周波数を、被治療者が感じるしびれ感の強度、周波数と同等になるよう設定する際に、前述の周波数特定作業及び強度特定作業のように、治療者が出力調節器、設定部を操作することで電気刺激の強度、周波数を変える必要があり、さらに電気刺激の周波数、強度と被治療者が感じるしびれ感の周波数、強度とが同等であるか否かについて被治療者に確認する必要があり、手間であった。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、従来よりもしびれ感を低減するための電気刺激の周波数と強度の設定を容易に行うことが可能な電気刺激装置及び電気刺激条件の設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電気刺激装置は、被治療者の皮膚表面に当接される電極と、前記電極に電気刺激を出力する出力部と、前記被治療者の動作に基づき操作される操作部と、前記出力部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、電気刺激の強度を固定した状態で前記電気刺激の周波数を自動で変化させ、前記電気刺激の周波数が変化している間の前記操作部の操作に基づき、前記電気刺激の周波数を前記被治療者が感じるしびれ感の周波数と同等になるよう設定する周波数設定部と、電気刺激の周波数を固定した状態で前記電気刺激の強度を自動で変化させ、前記電気刺激の強度が変化している間の前記操作部の操作に基づき、前記電気刺激の強度を前記被治療者が感じるしびれ感の強度と同等になるよう設定する強度設定部と、を備え、前記出力部は、前記周波数設定部により設定された周波数、及び、前記強度設定部により設定された強度を有する電気刺激を前記電極に出力する、ことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、周波数設定部は、操作部の操作に基づき電気刺激の周波数を設定する際に、電気刺激の周波数を自動で変化させる機能を有し、強度設定部は、操作部の操作に基づき電気刺激の強度を設定する際に、電気刺激の強度を自動で変化させる機能を有しているので、従来よりもしびれ感を低減するための電気刺激の周波数、強度の設定を容易かつ短時間に行うことができる。
【0012】
本発明の電気刺激装置において好ましい実施態様では、前記周波数設定部は、前記電気刺激の周波数を第1周波数から第2周波数に向けて自動で増加させている増加期間における前記操作部の操作によって特定される周波数と、前記電気刺激の周波数を第3周波数から第4周波数に向けて自動で減少させている減少期間における前記操作部の操作によって特定される周波数とを用いて前記電気刺激の周波数を設定する、ことを特徴とする。この構成によれば、増加期間、減少期間において自動で周波数を増加、減少させているので、従来よりもしびれ感を低減するための電気刺激の周波数の設定を容易かつ短時間に行うことができる。
【0013】
本発明の電気刺激装置において好ましい実施態様では、前記増加期間及び前記減少期間のそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値が同じとき、前記周波数設定部は、前記周波数の値を前記電気刺激の周波数として設定する、ことを特徴とする。この構成によれば、増加期間と減少期間における操作部の操作に基づき、電気刺激の周波数を、被治療者が感じるしびれ感の周波数と同程度に設定することができる。
【0014】
本発明の電気刺激装置において好ましい実施態様では、前記増加期間及び前記減少期間のそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値が異なるとき、前記周波数設定部は、前記増加期間及び前記減少期間のそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値の平均値を前記電気刺激の周波数として設定する、又は、前記増加期間及び前記減少期間のそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値の間で前記電気刺激の周波数を自動で変化させ、前記電気刺激の周波数が変化している間の前記操作部の操作に基づき前記電気刺激の周波数を設定する、ことを特徴とする。この構成によれば、増加期間と減少期間それぞれにおいて特定される周波数の値が異なる場合でも、電気刺激の周波数を、被治療者が感じるしびれ感の周波数と同程度に設定することができる。
【0015】
本発明の電気刺激装置において好ましい実施態様では、前記周波数設定部により設定された周波数、及び、前記強度設定部により設定された強度を微調整する操作スイッチ部を有することを特徴とする。この構成によれば、周波数設定部、強度設定部により設定され得た電気刺激の周波数、強度を微調整することができる。
【0016】
本発明の電気刺激装置において好ましい実施態様では、前記操作部はハンドスイッチであることを特徴とする。この構成によれば、操作部としてハンドスイッチを用いることで、その操作が容易となる。
【0017】
本発明の電気刺激条件の設定方法は、被治療者の皮膚表面に当接され電気刺激が出力される電極と、前記被治療者の動作に基づき操作される操作部とを備えた電気刺激装置を用いた電気刺激条件の設定方法であって、電気刺激の強度を固定した状態で前記電気刺激の周波数を自動で変化させ、前記電気刺激の周波数が変化している間の前記操作部の操作に基づき、前記電気刺激の周波数を前記被治療者が感じるしびれ感の周波数と同等になるよう設定する周波数設定ステップと、電気刺激の周波数を固定した状態で前記電気刺激の強度を自動で変化させ、前記電気刺激の強度が変化している間の前記操作部の操作に基づき、前記電気刺激の強度を前記被治療者が感じるしびれ感の強度と同等になるよう設定する強度設定ステップと、を有することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、周波数設定ステップでは電気刺激の周波数を自動で変化させ、強度設定ステップでは電気刺激の強度を自動で変化させているので、従来よりもしびれ感を低減するための電気刺激の周波数、強度の設定を容易に行うことができる。
【0019】
本発明の電気刺激条件の設定方法において好ましい実施態様では、前記周波数設定ステップは、前記電気刺激の周波数を第1周波数から第2周波数に向けて自動で増加する増加ステップと、前記電気刺激の周波数を第3周波数から第4周波数に向けて自動で減少する減少ステップとを備え、前記増加ステップ及び前記減少ステップのそれぞれにおける前記操作部の操作に基づき、前記電気刺激の周波数を設定する、ことを特徴とする。これによれば、増加ステップ、減少ステップにおいて自動で周波数を増加、減少させているので、従来よりもしびれ感を低減するための電気刺激の周波数の設定を容易に行うことができる。
【0020】
本発明の電気刺激条件の設定方法において好ましい実施態様では、前記増加ステップ及び前記減少ステップのそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値が同じとき、前記周波数の値を前記電気刺激の周波数として設定する、ことを特徴とする。これによれば、増加ステップと減少ステップに基づき、電気刺激の周波数を、被治療者が感じるしびれ感の周波数と同程度に設定することができる。
【0021】
本発明の電気刺激条件の設定方法において好ましい実施態様では、前記増加ステップ及び前記減少ステップのそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値が異なるとき、前記増加ステップ及び前記減少ステップのそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値の平均値を前記電気刺激の周波数として設定する、又は、前記増加ステップ及び前記減少ステップのそれぞれにおいて前記操作部の操作によって特定された前記周波数の値の間で前記電気刺激の周波数を自動で変化させ、前記電気刺激の周波数が変化している間の前記操作部の操作に基づき前記電気刺激の周波数を設定する、ことを特徴とする。これによれば、増加ステップと減少ステップそれぞれにおいて特定される周波数の値が異なる場合でも、電気刺激の周波数を、被治療者が感じるしびれ感の周波数と同程度に設定することができる。
【0022】
本発明の電気刺激条件の設定方法において好ましい実施態様では、前記周波数設定ステップにおける前記電気刺激の強度は、前記電気刺激の強度を所定強度から自動で増加させている間に、前記被治療者が最初に刺激を知覚したことを前記操作部の操作によって特定したときの強度に固定される、ことを特徴とする。これによれば、周波数設定ステップにおける電気刺激の強度を、感覚閾値程度の強度にすることができる。
【0023】
本発明の電気刺激条件の設定方法において好ましい実施態様では、前記強度設定ステップは前記周波数設定ステップの後に実行され、前記強度設定ステップにおける前記電気刺激の周波数は、前記周波数設定ステップで設定された周波数に固定される、ことを特徴とする。これによれば、被治療者が感じるしびれ感の周波数と同程度の周波数の電気刺激を用いて、その電気刺激の強度を自動で変化させることで、電気刺激の強度を、被治療者が感じるしびれ感の強度と同程度に設定することができる。
【0024】
本発明の電気刺激条件の設定方法において好ましい実施態様では、前記周波数設定ステップは前記強度設定ステップの後に実行され、前記周波数設定ステップにおける前記電気刺激の強度は、前記強度設定ステップで設定された強度に固定される、ことを特徴とする。これによれば、強度設定ステップが周波数設定ステップの後に実行される場合に比べて、電気刺激の周波数としびれ感の周波数とが同程度になることを被治療者がより感じやすいと考えられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、しびれ感を低減するための電気刺激の周波数、強度の設定を容易かつ短時間に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施の形態による電気刺激装置の構成を示す図である。
図2】同電気刺激装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】同電気刺激装置の動作の一例における初期ステップのフローチャートである。
図4】同電気刺激装置の動作の一例における周波数設定ステップのフローチャートの一部である。
図5】同電気刺激装置の動作の一例における周波数設定ステップのフローチャートの一部である。
図6】同電気刺激装置の動作における実施の形態1による強度設定ステップと治療ステップのフローチャートである。
図7】同電気刺激装置の動作における実施の形態2による強度設定ステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係る電気刺激装置について図面を参照して説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1に示すように、本発明の一実施の形態による電気刺激装置1は、電気刺激を出力するための電気回路が内部に設けられた装置本体2、被治療者の皮膚表面に貼られて電気刺激の印加を行う2個の電極3、電極3を装置本体2に接続する電極コード4、操作部5、及び、操作部5を装置本体2に接続するスイッチコード6a、6bを有している。スイッチコード6aはスイッチコード6bに着脱可能に接続され、スイッチコード6bは装置本体2の上側面に着脱可能に接続される。操作部5は押しボタン式のハンドスイッチであり、例えば押しボタンを押している間はON状態になり、押した状態の押しボタンを離すとOFF状態になるスイッチを使用することができる。操作部5としてハンドスイッチを使用することで、被治療者による操作部5の操作が容易となる。
【0029】
電極3はホック式のゲル電極によって構成されており、電極3の裏面は被治療者の皮膚表面に貼り付けられる貼付面である。2個の電極3の各ホックは中途位置で二本に分岐した電極コード4の各先端側に係着され、電極コード4の基端側は装置本体2の上側面に着脱可能に接続される。
【0030】
装置本体2は操作スイッチ部7と表示部8を備えており、操作スイッチ部7は、回転可能なダイヤル7a、ダイヤル7aの中央に当接された押し込み可能な決定ボタン7bにより構成されている。治療条件の設定はダイヤル7aと決定ボタン7bを用いて行う。表示部8はタッチパネルになっており、このタッチパネルにも決定ボタン7bの機能が備えられている。表示部8は、装置本体2の長手方向に占める割合が大きく見やすくなっており、表示部8には治療条件や治療結果等が表示される。
【0031】
図2に示すように、装置本体2はさらに、出力部9、電源回路10、電池電圧検出回路11、制御部12、記憶部13、コネクタ14及び出力コネクタ15を有しており、これらは装置本体2の内部に設けられている。制御部12は表示部8、出力部9、記憶部13を制御するもので、マイクロコントローラ(マイコン)により構成される。記憶部13は設定された施療条件などを読み出し可能に記憶するもので、例えば不揮発性メモリ(EEPROM)で構成される。制御部12は操作スイッチ部7、タッチパネル(表示部8)からの信号を受けて施療条件(施療時間等)の設定を行い、設定された施療条件や施療結果のデータは例えば記憶部13に記憶される。
【0032】
出力部9は、電極3に電気刺激を供給する手段であり、電池電源16、電池電源16の電圧を昇圧し出力用電源として供給するDC-DCコンバータ17、DC-DCコンバータ17から入力された電圧を制御する出力制御回路18、出力制御回路18からの出力電圧を昇圧する出力トランス19、出力トランス19からの電気刺激(出力電流)を検出する電流検出回路20から構成されている。電流検出回路20で検出された出力電流信号は制御部12に入力され、制御部12は出力制御回路18を制御することで、例えば過電流の発生を防止している。
【0033】
電池電源16として、アルカリなどの乾電池を使用でき、リチウムイオン二次電池などの充電式電池を採用しても構わない。また、電池電源16の電圧値を検出する電池電圧検出回路11が設けられており、電池電圧検出回路11により電池電源16の電圧値が第一の閾値にまで低下したことが検出されると、制御部12は電圧値の低下を表示部8に画像表示して治療者等に報知する。また、電池電源16の電圧値が第一の閾値より低い第二の閾値に到達すると、制御部12は電気刺激装置1の電源を切断する。なお、電源回路10は電池電源16に接続され制御部12に制御用電源を供給するための回路である。
【0034】
制御部12は周波数設定部21と強度設定部22を有している。周波数設定部21は、電気刺激の強度を固定した状態で電気刺激の周波数を自動で変化させ、電気刺激の周波数が変化している間の被治療者による操作部5の操作に基づき、電気刺激の周波数を被治療者が感じるしびれ感の周波数と同等になるよう設定する機能を有している。強度設定部22は、電気刺激の周波数を固定した状態で電気刺激の強度を自動で変化させ、電気刺激の強度が変化している間の被治療者による操作部5の操作に基づき、電気刺激の強度を被治療者が感じるしびれ感の強度と同等になるよう設定する機能を有している。
【0035】
電気刺激装置1は、施療モードとして、しびれ感を低減するためのしびれ低減モードを有しており、しびれ低減モードは、周波数設定ステップと強度設定ステップと治療ステップとを有している。周波数設定ステップは、電気刺激の周波数を被治療者が感じるしびれ感の周波数と同等になるよう設定するステップであり、周波数設定部21によって実行されるステップである。強度設定ステップは、電気刺激の強度を被治療者が感じるしびれ感の強度と同等になるよう設定するステップであり、強度設定部22によって実行されるステップである。治療ステップは、周波数設定ステップ及び強度設定ステップで設定された周波数及び強度の電気刺激を被治療者に印加するステップである。実施の形態1では周波数設定ステップを実行した後、強度設定ステップを実行している。強度設定ステップを実行した後、周波数設定ステップを実行する場合については、実施の形態2で説明する。なお、周波数設定ステップの前に被治療者が刺激として感じる電気刺激の強度を確認するための初期ステップを有している。
【0036】
次に、電気刺激装置1のしびれ低減モードによる動作について、図3~6のフローチャートを参照して説明する。なお、電極3は、被治療者のしびれ感を呈する領域の支配神経上に貼付しており、例えば被治療者がしびれ感を感じる手の内側、尺骨神経上又は正中神経上に位置する手首に当接される。図3は初期ステップを実行するためのフローチャートである。初期ステップでは、被治療者に印加する電気刺激を自動で強めていき、電気刺激を刺激として感じた時点で被治療者に操作部5を操作してもらうようにしている。電気刺激装置1のしびれ低減モードによる動作が開始すると、制御部12により、ステップS1においてt=1が設定され、ステップS2においてパルス幅PW=50μs、電気刺激の出力I=10mAが設定される。制御部12は、ステップS3において周波数1Hzの双方向性対称波形であってパルス幅PW、出力Iの電気刺激をts間(t秒間)出力する。1Hzの双方向性対称波形を使用することで、被治療者が感じるしびれ感の細かさと電気刺激の周波数を比較する上で、明らかにしびれ感の細かさと周波数が異なる電気刺激を与えることで理解を促すことができる。ここで、ステップS1におけるtの範囲の一例としてt=1~10秒とすることができる。例えば被治療者に認知面の低下等がある場合にはtの初期値を長くすることで、結果的に初期ステップを短縮できると考えられる。
【0037】
次のステップS4において、制御部12は操作部5が操作されたか(操作入力あり)、否か(操作入力なし)を判定し、操作入力があればステップS5に移行する。制御部12は、ステップS5において、I0、PW0をその時点でのI、PWの値に設定し、fmin=50Hz、fmax=120Hz、fs=10Hzに設定した後、ステップS12において次に周波数設定ステップを実行するか否かを判定し、周波数設定ステップを実行する場合には図4に示すフローチャートに移行し、そうでない場合(次に強度設定ステップを実行する場合)には図7に示すフローチャート(実施の形態2で説明する)に移行する。ここで、fmin、fmaxの範囲の一例として、fmin=10~60Hz、fmax=80~140Hzとすることができる。制御部12は、ステップS4において操作入力なしと判定すればステップS6に移行し、ステップS6において、電気刺激の出力Iが20mAを超えたか否かを判定し、超えていなければステップS7に移行し、ステップS7においてI=I+1mAとしてステップS3に戻る。制御部12は、ステップS6においてIが20mAを超えていればステップS8に移行し、ステップS8においてPW=PW+30μsとする。
【0038】
ステップS9において、制御部12は、PWが300μsを超えたか否かを判定し、超えていなければステップS10に移行し、ステップS10においてI=10mAとしてステップS3に戻る。制御部12は、ステップS9においてPWが300μsを超えていればステップS11に移行し、ステップS11においてtを変更(例えばt=t+1秒)してステップS2に戻る。この初期ステップによって、ステップS5で設定されるI0の値を、被治療者が感じる感覚閾値程度の強度にすることができる。
【0039】
次に、周波数設定ステップを実行するためのフローチャートの一例について、図4、5を参照して説明する。周波数設定ステップでは、電気刺激の周波数fをfmin(第1周波数)からfmax(第2周波数)まで周波数間隔fsずつ自動で増加させる増加ステップと、電気刺激の周波数fをfmax(第3周波数)からfmin(第4周波数)まで周波数間隔fsずつ自動で減少させる減少ステップを実行する。この一例では第1周波数と第4周波数を同じ値とし、第2周波数と第3周波数を同じ値としている。そして、増加ステップと減少ステップの実行中に、電気刺激の周波数が、被治療者が感じるしびれ感の周波数と同等になると、被治療者に操作部5を操作してもらう。これにより、増加ステップ及び減少ステップのそれぞれにおいて、電気刺激の周波数が自動で変化している間の被治療者による操作部5の操作に基づき、電気刺激の周波数を特定し、この特定された周波数に基づき、治療ステップで被治療者に与える電気刺激の周波数を設定する。なお、増加ステップが実行され、電気刺激の周波数を自動で増加させている期間を増加期間といい、減少ステップが実行され、電気刺激の周波数を自動で減少させている期間を減少期間という。
【0040】
ここで、図4又は図5のフローチャートにおいて使用されるパラメータについて説明する。Mu、Mdはそれぞれ増加ステップ、減少ステップにおける操作入力の有無を示すものであり、操作入力があった場合は「1」、操作入力がなかった場合は「0」となる。Nuは増加ステップを実行した回数であり、Ndは減少ステップを実行した回数である。fuは増加ステップにおいて操作入力によって特定される電気刺激の周波数であり、fdは減少ステップにおいて操作入力によって特定される電気刺激の周波数である。f0はfuとfdに基づいて設定される電気刺激の周波数である。
【0041】
図4に示すように、周波数設定部21は、ステップS21において、Mu=0、Md=0、Nu=0、Nd=0とし、ステップS22において、f=fmin、Nu=Nu+1とする。周波数設定部21は、次のステップS23においてNuが3より大きいか否かを判定し、3より大きい場合にはステップS24においてfmin、fmax、fsを変更した後ステップS21に戻り、Nuが3以下の場合にはステップS25に移行する。周波数設定部21は、ステップS25において、周波数fの双方向性対称波形であってパルス幅PW0、出力I0の電気刺激を4秒間出力し、ステップS26において操作入力ありと判定した場合、ステップS27においてfu=f、Mu=1とした後ステップS30に移行し、ステップS26において操作入力なしと判定した場合、ステップS28に移行する。
【0042】
周波数設定部21は、ステップS28においてfがfmax以上か否かを判定し、fがfmax未満であれば、ステップS29においてf=f+fsとした後ステップS25に戻り、fがfmax以上であればステップS30に移行する。ここで、ステップS25~S29は、周波数fが自動で増加する増加ステップに相当する。
【0043】
周波数設定部21は、ステップS30においてMuが1か否かを判定し、Muが1でなければステップ31に移行し、Muが1であればステップ32に移行する。周波数設定部21は、ステップS31においてMdが1か否かを判定し、Mdが1であればステップS22に戻り、Mdが1でなければステップS33に移行する。また周波数設定部21は、ステップS32においてMdが1か否かを判定し、Mdが1であれば図5に示すフローチャートに移行し、Mdが1でなければステップS33に移行する。
【0044】
周波数設定部21は、ステップS33においてf=fmax、Nd=Nd+1とし、次のステップS34においてNdが3より大きいか否かを判定し、Ndが3より大きい場合にはステップS35においてfmin、fmax、fsを変更した後ステップS21に戻り、Ndが3以下の場合にはステップS36に移行する。周波数設定部21は、ステップS36において、周波数fの双方向性対称波形であってパルス幅PW0、出力I0の電気刺激を4秒間出力し、ステップS37において操作入力ありと判定した場合、ステップS38においてfd=f、Md=1とした後ステップS41に移行し、ステップS37において操作入力なしと判定した場合、ステップS39に移行する。
【0045】
周波数設定部21は、ステップS39においてfがfmin以下か否かを判定し、fがfminより大きければ、ステップS40においてf=f-fsとした後ステップS36に戻り、fがfmin以下であればステップS41に移行する。ここで、ステップS36~S40は、周波数fが自動で減少する減少ステップに相当する。
【0046】
周波数設定部21は、ステップS41においてMdが1か否かを判定し、Mdが1でなければステップ42に移行し、Mdが1であればステップ43に移行する。周波数設定部21は、ステップS42においてMuが1か否かを判定し、Muが1であればステップS33に戻り、Muが1でなければステップS22に戻る。また周波数設定部21は、ステップS43においてMuが1か否かを判定し、Muが1であれば図5に示すフローチャートに移行し、Muが1でなければステップS22に戻る。
【0047】
図5に示すように、周波数設定部21は、ステップS51においてfuとfdが等しいか否かを判定し、等しい場合にはステップS52でf0=fuとした後、図6に示すフローチャートに移行する。周波数設定部21は、fuとfdが異なる場合にはステップS53において、fuとfdのうち小さい方、大きい方をそれぞれfmin、fmaxとし、fs=(fmax-fmin)/5としてステップS54に移行する。周波数設定部21は、ステップS54においてfsが2Hzより小さいか否かを判定し、fsが2Hz以上であれば図4に示すフローチャートに戻り、fsが2Hzより小さい場合にはステップS55でf0=(fmax+fmin)/2とした後、図6に示すフローチャートに移行する。ステップS55では、増加ステップと減少ステップのそれぞれにおいて特定された周波数fuとfdの平均値を周波数f0としている。図5に示すフローチャートによれば、増加ステップと減少ステップそれぞれにおいて被治療者によって特定される周波数の値が異なる場合でも、電気刺激の周波数を、被治療者が感じるしびれ感の周波数と同程度に設定することができる。
【0048】
次に、強度設定ステップと治療ステップを実行するためのフローチャートの一例について、図6を参照して説明する。ステップS61~S65が強度設定ステップであり、ステップS66が治療ステップである。強度設定ステップの実行中に電気刺激の強度が、被治療者が感じるしびれ感の強度と同等になると、被治療者に操作部5を操作してもらう。これにより、強度設定ステップにおいて電気刺激の強度が自動で変化している間の被治療者による操作部5の操作に基づき、治療ステップで被治療者に与える電気刺激の強度を設定することができる。強度設定部22は、ステップS61においてI=10mAとした後、ステップS62において周波数f0の双方向性対称波形であってパルス幅PW0、出力Iの電気刺激を1秒間出力する。強度設定部22は、ステップS63において操作入力なしと判定した場合、ステップS64においてI=I+1mAとした後ステップS62に戻り、ステップS63において操作入力ありと判定した場合、ステップS65においてI0=Iとした後ステップS66に移行する。制御部12は、ステップS66において周波数f0の双方向性対称波形であってパルス幅PW0、出力I0の電気刺激を設定された治療時間にわたり出力した後、電気刺激装置1の動作は終了する。
【0049】
本実施の形態による電気刺激装置1のしびれ低減モードでは、TENSで使用される双方向性対称波形によって電気刺激を行うものであり、被治療者に与える電気刺激の周波数及び強度を、被治療者が感じるしびれ感の周波数及び強度と同等になるように設定することができる。このため、前述した本発明者らが得た知見によれば、しびれ低減モードによって設定された条件(周波数及び強度)の電気刺激を被治療者に与えることで、被治療者が感じるしびれ感を低減することができると考えられる。
【0050】
図4、5のフローチャートを用いて説明した周波数設定ステップでは、電気刺激の周波数を自動で変化させており、周波数が自動で変化している間の被治療者による操作部5の操作に基づき電気刺激の周波数を設定している。このため、従来よりもしびれ感を低減するための電気刺激の周波数の設定を容易に行うことができる。図6のフローチャートを用いて説明した強度設定ステップでは、電気刺激の強度を自動で変化させており、強度が自動で変化している間の被治療者による操作部5の操作に基づき電気刺激の強度を設定している。このため、従来よりもしびれ感を低減するための電気刺激の強度の設定を容易に行うことができる。なお、周波数設定ステップ及び強度設定ステップで設定された電気刺激の周波数、強度について、治療ステップの実行前又は治療ステップの実行中に操作スイッチ部7の操作により微調整できるようにしてもよい。
【0051】
図4のフローチャートを用いて説明した周波数設定ステップでは、増加ステップにおいて周波数を変化させる範囲(第1周波数~第2周波数)と、減少ステップにおいて周波数を変化させる範囲(第3周波数~第4周波数)とは、fminとfmaxの間の範囲で同じであるが、それらの範囲が異なっていてもよい。例えば、fmin(第1周波数)=50Hz、fmax(第2周波数)=120Hzとして図4のフローチャートの増加ステップ(ステップS25~S29)を実行し、被治療者の操作入力(ステップS26でのYES)によって、被治療者が感じるしびれ感の周波数と同等になる電気刺激の周波数として80Hzが特定されたとする。この場合、例えばfmax(第3周波数)=100Hz、fmin(第4周波数)=60Hzとし、100Hzから60Hzに周波数を自動で減少させる減少ステップ(ステップS36~S40)を実行してもよい。これにより、周波数設定ステップの実行に要する時間を短縮することができる。
【0052】
(実施の形態2)
実施の形態2では初期ステップ、強度設定ステップ、周波数設定ステップ、治療ステップの順に実行する点が実施の形態1と異なる。電気刺激装置1のしびれ低減モードによる動作が開始すると初期化ステップが実行され、初期化ステップは実施の形態1で図3を用いて説明した各ステップS1~S12と同じである。制御部12は、ステップS12において次に周波数設定ステップを実行するか否かを判定し、判定結果がNOの場合には図7に示すフローチャートに移行する。
【0053】
図7は実施の形態2による強度設定ステップを実行するためのフローチャートである。強度設定部22により、ステップS71においてt=1が設定され、ステップS72においてI=I0、f=fminが設定される。強度設定部22は、ステップS73において周波数fの双方向性対称波形であってパルス幅PW0、出力Iの電気刺激をts間(t秒間 )出力する。
【0054】
次のステップS74において、強度設定部22は操作入力ありと判定した場合ステップS75に移行し、ステップS75においてI0をその時点でのIの値に設定した後、図4に示すフローチャートに移行する。強度設定部22は、ステップS74において操作入力なしと判定した場合ステップS76に移行し、ステップS76において電気刺激の出力Iが20mAを超えたか否かを判定し、超えていなければステップS77に移行し、ステップS77においてI=I+1mAとしてステップS73に戻る。強度設定部22は、ステップS76においてIが20mAを超えていればステップS78に移行し、ステップS78においてf=f+fsとしてステップS79に移行する。
【0055】
ステップS79において、強度設定部22は、fがfmaxを超えているか否かを判定し、fがfmax以下であればステップS80に移行し、ステップS80においてI=I0としてステップS73に戻る。強度設定部22は、ステップS79においてfがfmaxを超えていればステップS81に移行し、ステップS81においてtを変更(例えばt=t+1秒)してステップS72に戻る。
【0056】
上記のようにステップS75ではI0=Iとしており、実施の形態2の強度設定ステップにより、電気刺激の強度を、被治療者が感じるしびれ感の強度と同程度に設定することができる。ステップS75の次に図4に示すフローチャートに移行することで、実施の形態1で説明した周波数設定ステップ(図4、5に示すフローチャート)が実行され、電気刺激の周波数を、被治療者が感じるしびれ感の周波数と同程度に設定することができる。周波数設定ステップの次には実施の形態1で説明した図6のステップS66である治療ステップを実行した後(図6のステップS61~S65は実行を省略)、電気刺激装置1の動作は終了する。
【0057】
実施の形態2では、強度設定ステップで電気刺激の強度を被治療者が感じるしびれ感の強度と同程度にした後、周波数設定ステップを行っており、これにより、実施の形態1の場合に比べて電気刺激の周波数としびれ感の周波数とが同程度になることを被治療者がより感じやすいと考えられる。なお、周波数によって知覚強度が異なるため、周波数設定ステップで設定された周波数によっては電気刺激の強度を再調整する必要がある。この場合、前述した作スイッチ部7の操作により強度を微調整する機能を用いることができる。
【0058】
上記実施の形態では、周波数設定ステップ及び強度設定ステップによって電気刺激の周波数及び強度を設定した後、治療ステップを実行しているが、1度周波数設定ステップ及び強度設定ステップを実行した後ではこれらのステップの実行を省略することも可能である。例えば、周波数設定ステップ及び強度設定ステップによって設定された電気刺激の周波数及び強度を、電気刺激装置1の記憶部13に被治療者名に紐づけて記憶させておけば、次の治療ステップを実行する際には、電気刺激の周波数及び強度を記憶部13から読み出して設定することができる。また、周波数設定ステップ及び強度設定ステップによって設定された電気刺激の周波数及び強度を、被治療者のカルテ等に記録しておき、次の治療ステップを実行する際には、カルテ等の記録を参照して電気刺激装置1の操作スイッチ部7により電気刺激の周波数及び強度を設定することができる。このとき、被治療者の体調などによって電気刺激の周波数、強度の微調整が必要な場合には、例えば前述した作スイッチ部7の操作により微調整する機能を用いることができる。
【0059】
上記実施の形態では操作部5を被治療者が操作する場合について説明したが、例えば被治療者が感じるしびれ感の周波数と電気刺激の周波数が同等になったとき被治療者が治療者に合図を送り(例えば発声)、その合図に応じて治療者が操作部5を操作するようにしてもよい。すなわち、操作部5は被治療者の動作に基づき操作されるものであり、被治療者が操作部5を操作する場合と、被治療者の合図に応じて治療者が操作部5を操作する場合とを含む。また、操作部5がハンドスイッチの例を説明したが、ハンドスイッチの代わりに、足で操作するフットスイッチや装置本体2に設けた決定ボタン7bを使用することができ、装置本体2に別途操作ボタンを設けることもできる。
【0060】
上記実施の形態では片側(例えば左側)の上肢に電極3を配置して電気刺激を行う例を説明したが、両側の上肢にしびれ感を呈している場合は、両側の上肢に対して同時に治療ステップを行うようにしてもよい。このとき、初期ステップ、周波数設定ステップ及び強度設定ステップは、上肢の片側ずつ行って電気刺激の周波数と強度を設定すればよく、上記実施の形態の電気刺激装置を2台使用することで実施することができる。また、電極コードを接続する端子が複数設けられた電気刺激装置を用いれば、1台の電気刺激装置で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
TENSモードを実施可能な電気刺激装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 電気刺激装置
2 装置本体
3 電極
5 操作部(ハンドスイッチ)
7 操作スイッチ部
9 出力部
12 制御部
21 周波数設定部
22 強度設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7