(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108247
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】積層パネル
(51)【国際特許分類】
E04C 2/04 20060101AFI20240805BHJP
E04C 2/26 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
E04C2/04 E
E04C2/26 P
E04C2/26 Q
E04C2/26 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012516
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】南野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴祥
【テーマコード(参考)】
2E162
【Fターム(参考)】
2E162CA13
2E162FA01
2E162FA14
2E162FC03
2E162FD05
(57)【要約】
【課題】 従来品より大型の、軽量気泡コンクリートからなる積層パネルを提供する。
【解決手段】 本発明の積層パネル100は、積層方向に複数の層を積層させて構成された積層パネルであって、複数の層は、積層方向における積層パネル100の一端側に設けられた第1パネル層1と、積層方向における積層パネル100の他端側に設けられた第2パネル層2と、積層方向において第1パネル層1と第2パネル層2との間に挟まれた中間層3と、を含み、第1パネル層1は、軽量気泡コンクリートからなる複数の第1パネル14を、積層方向における中間層3の一方の表面に沿って並べることで構成され、第2パネル層2は、軽量気泡コンクリートからなる複数の第2パネル24を、積層方向における中間層3の他方の表面に沿って並べることで構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に複数の層を積層させて構成された積層パネルであって、
前記複数の層は、前記積層方向における前記積層パネルの一端側に設けられた第1パネル層と、前記積層方向における前記積層パネルの他端側に設けられた第2パネル層と、前記積層方向において前記第1パネル層と前記第2パネル層との間に挟まれた中間層と、を含み、
前記第1パネル層は、軽量気泡コンクリートからなる複数の第1パネルを、前記積層方向における前記中間層の一方の表面に沿って並べることで構成され、
前記第2パネル層は、軽量気泡コンクリートからなる複数の第2パネルを、前記積層方向における前記中間層の他方の表面に沿って並べることで構成された、積層パネル。
【請求項2】
前記第1パネル層において、隣り合う前記第1パネル同士の間には隙間が設けられており、
前記第2パネル層において、隣り合う前記第2パネル同士の間には隙間が設けられている、請求項1に記載の積層パネル。
【請求項3】
前記積層方向から見た場合の前記積層パネルの外形が矩形の形状であり、
前記積層パネルにおいて、矩形である前記外形の一辺の延出方向を第1方向とし、前記一辺と垂直な他辺の延出方向を第2方向とした場合に、
前記第1パネル層では、前記第1方向に並んだ2以上の前記第1パネルからなる第1パネル列が、前記第2方向に複数配置されており、
前記第2パネル層では、前記第1方向に並んだ2以上の前記第2パネルからなる第2パネル列が、前記第2方向に複数配置されている、請求項2に記載の積層パネル。
【請求項4】
前記第2方向において隣り合う複数の前記第1パネル列同士の間では、前記第1方向における前記隙間の位置が異なっており、
前記第2方向において隣り合う複数の前記第2パネル列同士の間では、前記第1方向における前記隙間の位置が異なっている、請求項3に記載の積層パネル。
【請求項5】
前記第2方向において同じ位置にある前記第1パネル列と前記第2パネル列の間では、前記第1方向における前記隙間の位置が異なっている、請求項4に記載の積層パネル。
【請求項6】
前記第1パネルのうち、前記隙間と隣り合う端部には、前記隙間と隣接する切り欠きが形成されており、
前記第2パネルのうち、前記隙間と隣り合う端部には、前記隙間と隣接する切り欠きが形成されている、請求項2に記載の積層パネル。
【請求項7】
バインダーが、前記隙間に充填されている、請求項2に記載の積層パネル。
【請求項8】
前記中間層が、バインダーによって構成された層である、請求項1に記載の積層パネル。
【請求項9】
前記バインダーが、リサイクル材を含む、請求項8に記載の積層パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層方向に複数の層を積層させて構成された積層パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
軽量気泡コンクリート(Autoclaved Lightweight aerated Concreate:以下、ALCとも表記する)製のパネルは、多孔質で軽量、且つ、耐火性能及び遮音性能に優れる建材であり、建築業界において広く使用されている。
【0003】
特許文献1には、ALC床板の敷設構造が記載されている。特許文献1に記載されたALC床板によれば、効率よく、且つ、安全に床板を敷設することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のALCパネル建材については、サイズが比較的小さいために、ALCパネルを敷設する際には使用枚数が多くなり、この結果、敷設作業に手間が掛かる要因になっていた。以上の理由から、既製品のALCパネルよりもサイズが大きい、ALCを用いたパネルからなる建材が求められている。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す課題を解決することを目的とする。具体的には、本発明は、軽量気泡コンクリートにより構成されるパネルとして、従来品より大型のパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明の積層パネルは、積層方向に複数の層を積層させて構成された積層パネルであって、複数の層は、積層方向における積層パネルの一端側に設けられた第1パネル層と、積層方向における積層パネルの他端側に設けられた第2パネル層と、積層方向において第1パネル層と第2パネル層との間に挟まれた中間層と、を含み、第1パネル層は、軽量気泡コンクリートからなる複数の第1パネルを、積層方向における中間層の一方の表面に沿って並べることで構成され、第2パネル層は、軽量気泡コンクリートからなる複数の第2パネルを、積層方向における中間層の他方の表面に沿って並べることで構成されることにより解決される。
【0008】
本発明の積層パネルでは、積層方向における積層パネルの各端部に、複数の軽量気泡コンクリート製のパネルが並べて配置されている。そのため、軽量気泡コンクリートからなる従来のパネルよりもサイズが大きく、軽量気泡コンクリートのパネルが表層に配置された積層パネルを提供することができる。つまり、本発明によれば、軽量気泡コンクリートにより構成されるパネルとして、従来品より大型の積層パネルを提供することができる。
【0009】
また、本発明の積層パネルでは、第1パネル層において、隣り合う第1パネル同士の間には隙間が設けられており、第2パネル層において、隣り合う第2パネル同士の間には隙間が設けられているとよい。
上記の構成では、第1パネル層及び第2パネル層のそれぞれにおいて、パネル同士の間に隙間を設け、この隙間に充填剤(例えば、中間層を構成するバインダー)が入り込むことで、パネル同士を強固に固定することができる。
【0010】
また、本発明の積層パネルでは、積層方向から見た場合の積層パネルの外形が矩形の形状(矩形状)であり、積層パネルにおいて、矩形である外形の一辺の延出方向を第1方向とし、第1方向に延びる一辺と垂直な他辺の延出方向を第2方向とした場合に、第1パネル層では、第1方向に並んだ2以上の第1パネルからなる第1パネル列が、第2方向に複数配置されており、第2パネル層では、第1方向に並んだ2以上の第2パネルからなる第2パネル列が、第2方向に複数配置されているとよい。
上記の構成では、第1パネル層及び第2パネル層のそれぞれにおいて、複数のパネルを第1方向及び第2方向の各々に並べて配置することで、積層パネルの両面にパネルを好適に敷設することができる。
【0011】
また、本発明の積層パネルでは、第2方向において隣り合う複数の第1パネル列同士の間では、第1方向における隙間の位置が異なっており、第2方向において隣り合う複数の第2パネル列同士の間では、第1方向における隙間の位置が異なっているとよい。
上記の構成では、第1パネル層及び第2パネル層のそれぞれにおいて、隣り合うパネル列の間で、第1方向における隙間の位置が異なっているため、パネル列間で第1方向における隙間の位置が揃っている場合に比べて、積層パネルの強度を高めることができる。
【0012】
また、本発明の積層パネルでは、第2方向において同じ位置にある第1パネル列と第2パネル列の間では、第1方向における隙間の位置が異なっているとよい。
上記の構成では、積層パネルの第1パネル層と第2パネル層との間で、第1方向における隙間の位置が異なっているため、第1パネル層と第2パネル層との間で隙間の位置が揃っている場合に比べて、積層パネルの強度を高めることができる。
【0013】
また、本発明の積層パネルでは、第1パネルのうち、第1方向において隙間と隣り合う端部には、隙間と隣接する切り欠きが、形成されており、第2パネルのうち、第1方向において隙間と隣り合う端部には、隙間と隣接する切り欠きが、形成されているとよい。
上記の構成では、第1パネル及び第2パネルにおいて、パネル同士の隙間と隣接する箇所に切り欠きを設け、切り欠き内にバインダーが入り込むことで、各パネルをより強固に固定することができる。
【0014】
また、本発明の積層パネルでは、バインダーが、隙間に充填されているとよい。
上記の構成では、バインダーが接着剤となり、各パネルを強固に固定することができる。
【0015】
また、本発明の積層パネルでは、中間層が、バインダーによって構成された層であるとよい。
上記の構成では、バインダーによって中間層を構成することにより、第1パネル層及び第2パネル層を強固に固定することができる。
【0016】
また、本発明の積層パネルでは、バインダーが、リサイクル材を含むとよい。
上記の構成では、リサイクル材(廃棄材及びガラス繊維を含む)を、バインダーへ混練させることにより、環境への負荷を低減させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層パネルは、複数の軽量気泡コンクリートのパネルを並べて構成されるパネル層を、表層及び裏層として備えた積層パネルである。これにより、軽量気泡コンクリートにより構成されるパネルとして、従来品より大型のパネルが提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る積層パネルの断面図であり、
図2のI-I断面を示す。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る積層パネルの上面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る積層パネルの下面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る積層パネルの隙間を拡大した斜視図である。
【
図5】従来品に係る軽量気泡コンクリートのパネルを示す外観図である。
【
図6】本発明に係る積層パネルの生産方法の一過程を示す図である。
【
図7】本発明に係る積層パネルの生産方法の一過程を示す図である。
【
図8】本発明に係る積層パネルの生産方法の一過程を示す図である。
【
図9】本発明に係る積層パネルの生産方法の一過程を示す図である。
【
図10】本発明に係る積層パネルを利用する際に使用する吊治具の模式図である。
【
図11】本発明の第二実施形態に係る積層パネルの上面図である。
【
図12】本発明の第二実施形態に係る積層パネルの下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
また、各図では、説明を分かり易くするために各部材を幾分簡略化及び模式化して図示しており、図中に示す各部材の寸法及び部材間の間隔等についても、実際のものとは異なっている場合がある。
また、以下の説明では、積層パネルを構成する複数の層が積層される方向を、「積層方向」と呼ぶ。
また、以下の説明では、積層方向と直交する平面を、「積層面」と呼ぶ。
また、以下の説明では、積層パネルの積層面の外形は矩形であることとし、積層面における一辺の延出方向を「第1方向」と呼び、積層面において第1方向と垂直な他辺の延出方向を「第2方向」と呼ぶ。
また、以下の説明では、「同様」、「等しい」、「一致」、及び「同じ」という文言には、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ得る。
【0020】
<<本発明に係る第一実施形態について>>
本発明の第一実施形態に係る積層パネル(以下、積層パネル100)の構成について、
図1~5を参照しながら、詳しく説明する。
【0021】
本発明に係る積層パネル100は、建築資材であり、主に建築物の内外壁、屋根、天井及び床等を構築するために使用され、ALCを用いた平坦な構造をなす積層体である。積層パネル100は、
図1に示すように、第1パネル層1と、第2パネル層2と、中間層3とを含む複数の層が積層方向に積層されている。なお、複数の層には、上述の第1パネル層1と第2パネル層2との間には、中間層3以外の層(すなわち、他の中間層)が含まれていてもよい。
【0022】
第1パネル層1は、
図1に示すように、積層方向における積層パネル100の一端側(表面側)に設けられ、第2パネル層2は、積層方向における積層パネル100の他端側(裏面側)に設けられる。中間層3は、積層方向において第1パネル層1と第2パネル層2との間に挟まれて設けられる。なお、
図1の紙面と垂直方向な方向が、第2方向である。
そして、上述の第1パネル層1と第2パネル層2とが、充填剤としての機能を有するバインダーによって固定され、湿気硬化したバインダーによって中間層3が構成される。これにより、複数の層が平坦状に積層された積層パネル100が作成される。積層パネル100では、
図2及び3に示すように、積層面の外形が矩形状であり、積層方向における高さが、約100mmであり、積層面のサイズは、約1800mm×3600mmである。
【0023】
第1パネル層1は、
図2に示すように、ALCからなる複数の第1パネル14を、積層方向における中間層3の一方の表面に沿って隙間15を空けて並べることで構成されている。
第一実施形態に係る積層パネル100において、第1パネル層1を構成する複数の第1パネル14には、例えば6枚のALC製のパネル建材Xの既製品(すなわち、従来品)が用いられてもよい。なお、第1パネル層1を構成する6枚の第1パネル14のうちの1枚は、
図2に示すように、半幅にカットされて使用される。
【0024】
第1パネル層1では、
図2に示すように、積層面の外形が矩形状であり、積層方向における高さは、約30mmであり、積層面のサイズは、約1800mm×3600mmである。つまり、第1パネル層1の積層面のサイズは、積層パネル100の積層面のサイズと略一致する。
【0025】
そして、第1パネル層1を構成する各第1パネル14は、
図5に示すように平面視で矩形状であり、積層方向における第1パネル14の高さHは、約30mmであり、幅W、及び長さLは、それぞれ、約600mm、及び約1800mmである。さらに、隣り合う6枚の第1パネル14同士の間に設けられた隙間15には、
図2に示すように、バインダーが充填されることで、隙間15を介して隣り合う第1パネル14の各々の位置が固定される。
【0026】
また、第一実施形態では、第1パネル14同士の間に位置する隙間15と隣り合う端部に、
図4に示すように、隙間15と隣接する箇所に切り欠き6が形成されている。切り欠き6は、隙間15と隣り合う2つの第1パネル14のうち、一方の第1パネル14の端部と他方の第1パネル14の端部との間で交互に設けられるとよい。
切り欠き6の形状は、
図4に示すように、矩形の端部に半円が取り付けられた形状をしている。ただし、切り欠き6の形状は、上述の形状に特に限定されない。
【0027】
6枚の第1パネル14のそれぞれを並べて配置する際、
図2に示すように、第1パネル層1では、第1方向に並んだ3枚の第1パネル14からなる第1パネル列が、第2方向に2列配置されている。そして、第2方向において隣り合う2行の第1パネル列同士の間では、第1方向における隙間15の位置が異なっている。
つまり、第1パネル層1において、各第1パネル14は、第1パネル列ごとに第2方向にずらしながら配置されており、すなわち、千鳥状に配置されている。
【0028】
第2パネル層2は、
図3に示すように、第1パネル層1と同様に、ALCからなる複数の第2パネル24を、積層方向における中間層3の一方の表面に沿って隙間25を空けて並べることで構成されている。
第一実施形態に係る積層パネル100において、第2パネル層2を構成する複数の第2パネル24には、例えば6枚のALC製のパネル建材Xの既製品(すなわち、従来品)が用いられてもよい。なお、第2パネル層2を構成する6枚の第2パネル24のうちの1枚は、
図3に示すように、半幅にカットされて使用される。
【0029】
第2パネル層2では、
図3に示すように、積層面の外形が矩形状であり、積層方向における高さは、約30mmであり、積層面のサイズは、約1800mm×3600mmある。つまり、第2パネル層2の積層面のサイズは、積層パネル100の積層面のサイズと略一致する。
【0030】
そして、第2パネル層2を構成する各第2パネル24は、第1パネル14と同様に、
図5に示すように、平面視で矩形状であり、積層方向における第2パネル24の高さHは、約30mmであり、幅W及び長さLは、それぞれ、約600mm、約1800mmである。さらに、隣り合う6枚の第2パネル24同士の間に設けられた隙間25には、
図3に示すように、バインダーが充填されることで、隙間25を介して隣り合う第2パネル24同士が接合される。
【0031】
また、第一実施形態では、第2パネル24同士の間に位置する隙間25と隣り合う端部には、第1パネル層1における切り欠き6と同様の切り欠き6が、隙間25と隣接する箇所に形成されている。切り欠き6は、隙間25と隣り合う2つの第2パネル24のうち、一方の第2パネル24の端部と他方の第2パネル24の端部との間で交互に設けられるとよい。
切り欠き6の形状は、
図4に示すように、矩形の端部に半円が取り付けられた形状をしている。ただし、切り欠き6の形状は、上述の形状に特に限定されない。
【0032】
6枚の第2パネル24のそれぞれを並べて配置する際、
図3に示すように、第2パネル層2では、第1方向に並んだ3枚の第2パネル24からなる第2パネル列が、第2方向に2列配置されている。そして、第2方向において隣り合う2列の第2パネル列同士の間では、第1方向における隙間25の位置が異なっている。
つまり、第2パネル層2において、各第2パネル24は、第2パネル列ごとに第2方向にずらしながら配置されており、すなわち、千鳥状に配置されている。
【0033】
また、第一実施形態では、
図2及び3に示すように、第1パネル層1と第2パネル層2との間で、第2方向において同じ位置にパネル列(第1パネル列、第2パネル列)が配置されている。その一方で、第2方向において同じ位置にある第1パネル列と第2パネル列の間では、
図1~3に示すように、第1方向における隙間15と隙間25との位置が異なるように配置されている。
具体的に説明すると、第1パネル層1と第2パネル層2との間では、積層方向を軸に180度回転され向きが異なっており、第1パネル列及び第2パネル列は、各パネル列の位置が第2方向へ異なっている。そのため、積層方向から見た際に第1方向における隙間15と隙間25との位置が重ならない。
【0034】
第1パネル14及び第2パネル24は、高温にて発泡した後に密度を低くして固めたALCから構成される。
第1パネル層1及び第2パネル層2の隙間15及び隙間25に充填されるバインダーの材料は、コンクリート、液状樹脂及び接着剤からなるバインダーにリサイクル材を混錬したものであるとよい。
【0035】
具体的に説明すると、バインダーは、コンクリート、液状樹脂及び接着剤の混合物中に、木材及びプラスチックをチップ化した廃棄材、並びにガラス繊維等のリサイクル材が混錬される。
【0036】
そして、コンクリートには、チップ化した木材廃棄材、チップ化したプラスチック廃棄材、及び、ガラス繊維等のリサイクル材が混錬されたものを使用するとよい。また、液状樹脂には、チップ化した木材廃棄材、チップ化したプラスチック廃棄材、及び、ガラス繊維等のリサイクル材が混錬されたものを使用するとよい。また、接着剤には、チップ化したプラスチック廃棄材、及び、ガラス繊維等のリサイクル材が混錬されたものを使用するとよい。
ただし、バインダーの材料は、上述の材料に限定されず、水等の汚れに強く、軽さ及び強度を両立させていれば、上述の材料以外の材料でもよい。
【0037】
中間層3は、
図1に示すように、第1パネル層1と第2パネル層2との間に挟まれるように設けられている。中間層3では、その積層面の外形が、積層パネル100と同じ矩形状をなしており、積層方向における中間層3の高さは、約40mmであり、積層面のサイズは、約1800mm×3600mmである。よって、中間層3の積層面のサイズは、積層パネル100の積層面のサイズと略一致する。
【0038】
中間層3の材料は、生産の都合上、隙間15及び隙間25に充填されるバインダーと同じ材料であるとよく、詳しくは、コンクリート、液状樹脂及び接着剤からなるバインダーにリサイクル材を混錬したものが湿気硬化したものであるとよい。ただし、バインダーの材料は、上述の材料に限定されず、水等の汚れに強く、軽さ及び強度を両立させていれば、上述の材料以外の材料でもよい。
【0039】
[本発明の第一実施形態に係る積層パネルの生産方法について]
第一実施形態に係る積層パネル100の生産方法について、
図6~9を参照しながら、詳しく説明する。
【0040】
本発明の第一実施形態に係る積層パネル100を生産する方法では、先ず、
図6に示すように、組立定盤の上にバインダーせき板8を組み立てる。
バインダーせき板8は、バインダーを湿気硬化させて、中間層3の両面に第1パネル層1と第2パネル層2とが形成されるまで、積層パネル100の形状を保つために使用される型枠である。
【0041】
バインダーせき板8の内部空間は、平面視で矩形の形状をなしており、空間の高さは、約100mmであり、空間の平面サイズは、約1800mm×3600mmある。
よって、バインダーせき板8の内部の外形は、積層パネル100の積層面の外形と、略一致する。なお、バインダーせき板8の材料は、特に限定されない。
【0042】
次に、
図7に示すように、組立定盤の上に組み立てられたバインダーせき板8の内部に、第1パネル層1を構成する第1パネル14を敷き詰める。
これにより、バインダーせき板8の内部に2列の第1パネル列が配置される。この際、2列の第1パネル列の間で、第1パネル14の間に形成される隙間15の位置が、第1パネル14の幅Wの約半分の長さだけずれるように、第1パネル14が敷き詰められる。
図7に示す構成では、2列の第1パネル列のうちの一方が、3つの第1パネル14を横並びに配置することで構成されている。もう一方の第1パネル列は、横並びに配置された2つの第1パネル14の両側に、半幅にカットされた第1パネル14の断片(すなわち、1/2サイズの第1パネル14)を配置することで構成されている。
【0043】
その後、
図8に示すように、バインダーせき板8の内部に、湿気硬化前の流動状バインダー9を適量充填する。
充填される流動状バインダー9の量は、中間層3、切り欠き6、並びに、隙間15、及び25の体積の合計値に応じた量である。
【0044】
次に、
図9に示すように、バインダーが湿気硬化する前に、バインダーせき板8の内部の上側に、第2パネル層2を構成する第2パネル24を敷き詰める。
これにより、バインダーせき板8の内部に2列の第2パネル列が配置される。この際、2列の第2パネル列の間で、第2パネル24の間に形成される隙間25の位置が、第2パネル24の幅Wの約半分の長さだけずれるように、第2パネル24が敷き詰められる。
また、第1パネル層1と第2パネル層2との間では、第2方向において同じ位置にある第1パネル列と第2パネル列とを対比した際に、第1方向における隙間15の位置と隙間25の位置とが互いに異なっている。
【0045】
図7に示す構成では、2列の第2パネル列のうちの一方が、3つの第2パネル24を横並びに配置することで構成されている。もう一方の第2パネル列は、横並びに配置された2つの第2パネル24の両側に、半幅にカットされた第1パネル14の断片(すなわち、1/2サイズの第1パネル14)を配置することで構成されている。
【0046】
最後に、バインダーせき板8内の流動状バインダー9を湿気硬化させる。
これにより、バインダーせき板8内の下部では複数の第1パネル14がパネル間に隙間15を設けた状態で固定され、バインダーせき板8の上部では複数の第2パネル24がパネル間に隙間25を設けた状態で固定される。結果として、第1パネル層1及び第2パネル層2が形成される。また、第1パネル層1と第2パネル層2との間では、流動状バインダー9が湿気硬化することで得られる湿気硬化状態のバインダーにより中間層3が形成される。これにより、バインダーせき板8の内部で、積層パネル100が作成される。
そして、流動状バインダー9が完全に湿気硬化した後、バインダーせき板8は、積層パネル100から外されてもよい。
【0047】
[本発明の第一実施形態に係る積層パネルの使用方法について]
第一実施形態に係る積層パネル100の使用方法について、
図10を参照しながら詳しく説明する。
本発明の第一実施形態に係る積層パネル100は、前述の通り、建築資材として利用され、例えば、建築物の内壁又は外壁、屋根、天井及び床等を構築する目的で使用される。積層パネル100は、比較的大きいサイズを有し、多孔質で軽量、且つ、断熱性及び遮音性に優れるため、建材として高層ビルから木造住宅までの幅広い用途で使用することができる。
【0048】
積層パネル100を使用する場合には、例えば、複数の積層パネル100を並べて敷設し、積層パネル100同士の隙間に充填剤を充填する。また、積層パネル100を敷設する際には、
図10に示すように、専用の吊治具Jを用いて積層パネル100を吊りながら敷設位置まで搬送してもよい。吊治具Jは、積層パネル100を吊り上げた際に自重によって生じる積層パネル100の変形を拘束する突っ張り棒7が、積層パネル100を載置する箇所の下部に設けられている。
【0049】
[本発明の第一実施形態に係る積層パネル100の効果について]
そして、第一実施形態に係る積層パネル100が得られる効果について、
図1~5を参照しながら詳しく説明する。
【0050】
従来品として用いられていたALC製のパネル建材Xは、製造の制約上、製造可能なサイズが決まっており、そのサイズ以上のパネル建材を製造することが困難であった。具体的に説明すると、これまでのALC製のパネル建材Xは、
図5に示すように、通常、人が運搬可能なサイズ(例えば、高さHが約30mm、幅Wが約600mm、長さLが約1800mm)であった。かかるサイズのパネル建材Xを使用して床、天井又は壁を構成する場合には、複数のパネル建材Xを並べて敷設することになっていた。
【0051】
しかし、従来品のALC製のパネル建材Xは、上述の通り、建築資材としてのサイズが十分に大きいものではなく、複数のパネル建材Xを敷設する作業に手間を要していた。また、従来品のALC製のパネル建材Xは、上述の通り、人が運搬可能なサイズであるため、人力でパネル建材Xを運搬することが多く、作業者にとって負担であり、また、パネル運搬作業の安全性を確保しにくい場合があった。
【0052】
これに対して、第一実施形態に係る積層パネル100は、
図1に示すように、第1パネル層1、第2パネル層2及び中間層3を備える。第1パネル層1及び第2パネル層2のそれぞれには、ALC製のパネル建材X(詳しくは、既製品のALCパネル)が複数並べて配置されている。これにより、従来品よりも、大型なALC製のパネル(積層パネル)が提供可能となる。
【0053】
具体的には、積層パネル100では、ALC製の第1パネル14を複数並べてなる第1パネル層1と、ALC製の第2パネル24を複数並べてなる第2パネル層2とが、パネル層の間に設けられたバインダーからなる中間層3によって強固に固定されている。よって、第1パネル層1及び第2パネル層2の強度を十分に確保しつつ、従来のALC製のパネル建材Xよりもサイズが大きいパネル(積層パネル100)を得ることができる。
【0054】
また、第1パネル層1では、
図2に示すように、第1方向に並んだ複数の第1パネル14からなる第1パネル列が、第2方向に2列配置されている。また、第2パネル層2では、
図3に示すように、第1方向に並んだ複数の第2パネル24からなる第2パネル列が、第2方向に2列配置されている。
これにより、よりサイズが大きい積層パネル100を得ることができる。
【0055】
さらに、第2方向において隣り合う2列の第1パネル列の間では、
図2に示すように、第1方向における隙間15の位置が異なっており、第2方向において隣り合う2列の第2パネル列の間では、
図3に示すように、第1方向における隙間25の位置が異なっている。
すなわち、第1パネル層1及び第2パネル層2では、隙間15、25が千鳥状に配置されている。これに加えて、第2方向において同じ位置にある第1パネル列と第2パネル列との間では、
図1に示すように、第1方向における隙間15及び隙間25の位置が異なっている。
【0056】
上述の構成により、第1パネル層1及び第2パネル層2のそれぞれにおいて、第1方向における隙間15及び隙間25の位置が異なっている。そのため、各パネル層において、強度が十分でない隙間15及び隙間25に位置する部分の強度を、第1方向において当該部分と隣り合う第1パネル14又は第2パネル24によって補うことができる。また、第1パネル層1及び第2パネル層2において、第1方向における隙間15及び隙間25の位置が異なっている。そのため、各パネル層において強度が十分でない隙間15及び隙間25に位置する部分の強度を、積層方向において当該部分とは反対側に位置するパネルによって補うことができる。
以上のように、より高い強度を確保しつつ、積層パネル100のサイズを大きくすることができる。
【0057】
また、第1パネル層1では、隣り合う第1パネル14同士の間に隙間15が設けられ、第2パネル層2では、隣り合う第2パネル24同士の間には隙間25が設けられ、隙間15及び隙間25にはバインダーが充填されている。よって、複数の第1パネル14、及び複数の第2パネル24が、それぞれバインダーによって連結される。これにより、複数のALC製のパネルを並べて構成される積層パネル100のサイズを、より大きくすることができる。
【0058】
また、第1パネル14及び第2パネル24のうち、隙間15及び隙間25と隣り合う端部には、
図4に示すように、隙間15及び隙間25と隣接する切り欠き6が形成され、切り欠き6にはバインダーが充填されている。このように隙間15及び隙間25と隣接する箇所に切り欠き6を設けることにより、第1パネル14及び第2パネル24がバインダーと接する表面積が大きくなため、第1パネル14や第2パネル24を強固に固定することができる。この結果、第1パネル層1及び第2パネル層2の強度を十分に確保しつつ、積層パネル100のサイズを大きくすることができる。
【0059】
また、本発明に係る積層パネル100、より大型なALCからなるパネル建材として利用できる。そのため、比較的サイズが小さいALC製のパネルを施工現場で複数配置する場合に比べて、パネル敷設作業における作業負荷を低減することができ、さらに、施工時間をより短くできる。
また、コンクリート、液状樹脂及び接着剤からなるバインダーに、廃棄材及びガラス繊維等のリサイクル材を混錬させることにより、環境への負荷を低減させることができる。
また、ALC製のパネル建材の1枚当たりの重さを重くすることにより、人力による運搬が不可能になるため、施工者は、揚重機を確実に使用することになり、安全性が向上する。
【0060】
また、リサイクル材を含むバインダーは、ALCよりも体積当たりの重さが軽いため、結果として積層パネル100を、ALCのみで生産した場合の重さより軽くすることができる。
また、本発明に係る積層パネル100は、従来品であるALC製のパネル建材Xに対して簡単な二次加工を実施することで比較的容易に生産できる。そのため、少ない初期投資費用によって、本発明に係る積層パネル100を生産する環境を整えることができる。
【0061】
<<本発明に係る第二実施形態について>>
本発明の第二実施形態に係る積層パネル(以下、積層パネル101)の構成について、
図11及び12を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、第二実施形態に関して、第一実施形態との相違点を中心に説明する。
【0062】
第二実施形態では、積層パネル101の基本構成、生産方法、及び、使用方法が第一実施形態と共通する。一方、第二実施形態では、
図11及び12に示すように、積層面の外形及びサイズが第一実施形態と異なる。具体的には、第二実施形態に係る積層パネル101では、積層面が方形であり、サイズが約3600mm×3600mmになっている。なお、第二実施形態において、積層パネル101の積層方向の高さは、約100mmと、第一実施形態と同じである。
【0063】
つまり、積層パネル101に係る第1パネル層1、第2パネル層2、及び、中間層3についても、積層面の外形が方形の形状を成しており、約3600mm×3600mmのサイズを有し、積層パネル100の積層面の外形と略一致する。
【0064】
第1パネル層1は、
図11に示すように、12枚のALCからなる第1パネル14を、積層方向における中間層3の一方の表面に沿って隙間15を空けて規則的に並べて配置することで構成されている。
具体的には、第1パネル層1には、第1実施形態と同様、第2方向において隣り合う2列の第1パネル列が形成されており、各第1パネル列には、6枚の第1パネル14が第1方向に並べて配置されている。
【0065】
同様に、第2パネル層2も、
図12に示すように、12枚のALCからなる第2パネル24を、積層方向における中間層3の一方の表面に沿って隙間25を空けて規則的に並べて配置することで構成されている。
具体的には、第2パネル層2には、第1実施形態と同様、第2方向において隣り合う2列の第2パネル列が形成されており、各第2パネル列には、6枚の第2パネル24が第1方向に並べて配置されている。
【0066】
なお、第1パネル層1における2列の第1パネル列のうちの一方を構成する6枚の第1パネル14のうちの1枚は、
図11に示すように、半幅にカットされており1/2のサイズで使用される。同様に、第2パネル層2における第2パネル列のうちの一方を構成する6枚の第2パネル24のうちの1枚は、
図12に示すように、半幅にカットされており1/2のサイズで使用される。
【0067】
また、
図11に示すように、第2方向において隣り合う2列の第1パネル列同士の間では、第1方向における隙間15の位置が異なっている。
具体的に説明すると、一方の第1パネル列における隙間15の位置は、他方の第1パネル列における隙間15の位置から、第1方向において第1パネル14の幅Wの半分の長さだけずれており、第1パネル層1を全体的に見た際、隙間15が千鳥状に配置されている。
【0068】
同様に、第2パネル層2でも、
図12に示すように、一方の第2パネル列における隙間25の位置は、他方の第2パネル列における隙間25の位置から、第1方向において第2パネル24の幅Wの半分の長さだけずれている。よって、第2パネル層2を全体的に見た際、隙間25が千鳥状の配置をなしている。
中間層3は、第1パネル層1と第2パネル層2との間に挟まれるように設けられており、積層方向において、40mm程度の高さを有する。
【0069】
第1パネル層1をなす複数の第1パネル14のそれぞれと、第2パネル層2をなす複数の第2パネル24のそれぞれは、
図11及び12に示すように、平面視での外形が矩形状をなし、約30mmの高さと、平面視で約1800mm×600mmのサイズを有する。なお、12枚の第1パネル14と12枚の第2パネル24としては、既製品であるALC製のパネル建材Xを用いることができる。
【0070】
図11及び12に示すように、第1パネル層1と第2パネル層2との間では、第2方向において同じ位置にある第1パネル列と第2パネル列との間で、第1方向における隙間15と隙間25との位置が異なるように配置されている。
具体的に説明すると、第1パネル層1における第1パネル14の配置パターンと、第2パネル層2における第2パネル24の配置パターンとが、積層方向に沿う軸を中心に180度回転させた関係にある。そのため、積層方向から見た際に第1方向における隙間15と隙間25との位置が重ならない。
【0071】
上述の構成により、第1パネル層1及び第2パネル層2のそれぞれでは、第1方向における隙間15及び隙間25の位置が千鳥状に異なっているため、強度が十分でない隙間15及び隙間25の部分の強度を、第2方向の位置に配置されたパネルによって補える。また、第1パネル層1及び第2パネル層2において、第1方向における隙間15及び隙間25の位置が異なっているため、強度が十分でないパネル同士の隙間15及び隙間25部分の強度を、積層方向において対向する反対側のパネルによって補うことができる。
【0072】
以上までに、本発明の積層パネルに関して、幾つかの実施形態を例に挙げて説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、又は改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
X 従来品
J 吊治具
1 第1パネル層
2 第2パネル層
3 中間層
6 切り欠き
7 突っ張り棒
8 バインダーせき板
9 液状のバインダー
14 第1パネル
15 第1パネル層の隙間
24 第2パネル
25 第2パネル層の隙間
100 積層パネル(第一実施形態)
101 積層パネル(第二実施形態)