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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108249
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】コンバインのベルト伝動装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/06 20060101AFI20240805BHJP
   F16H 7/12 20060101ALI20240805BHJP
   F16H 7/18 20060101ALI20240805BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20240805BHJP
   A01F 12/46 20060101ALI20240805BHJP
   A01F 12/60 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A01D69/06
F16H7/12 C
F16H7/18 A
A01D41/12 A
A01F12/46
A01F12/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012518
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
【テーマコード(参考)】
2B074
2B076
2B396
3J049
【Fターム(参考)】
2B074AA02
2B074AB01
2B074AC02
2B074AD05
2B074AD06
2B074AF02
2B074BA04
2B074CE01
2B074CG05
2B074DA01
2B074DA02
2B074DA06
2B074DD03
2B074DE03
2B074DF03
2B074GH02
2B076AA03
2B076DA10
2B076DB02
2B076DB06
2B396JA04
2B396JC07
2B396JE01
2B396KE03
2B396KE04
2B396LA03
2B396LC07
2B396LN02
2B396LN12
2B396MA07
2B396MC02
2B396MC04
2B396MC07
2B396MC13
2B396ME04
2B396MG03
3J049AA02
3J049BB05
3J049BB10
3J049BB23
3J049BD01
3J049CA07
(57)【要約】
【課題】従動プーリから外されたベルトループ部をベルト保持部材に保持し、一連のメンテナンス作業や穀粒タンクの退避復帰移動などを能率よく行えるコンバインにおけるベルト伝動装置を提供する。
【解決手段】テンションクラッチ方式のベルト伝動装置15を介し穀粒タンク4のラセン体軸13を伝動すると共に、穀粒タンク4を脱穀装置3に近接した作業姿勢からメンテナンス作業姿勢に切換移動自在に構成するコンバイン1において、前記従動プーリ18の側方でベルト掛け替えスペースを有した位置に、外したベルト17を機体フレーム9側から支持するベルト保持部材16を設ける構造にした。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(8)を備える機体フレーム(9)に、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置(3)と、選別済みの穀粒を貯留する穀粒タンク(4)とを並列状に配設し、該穀粒タンク(4)の底部内に沿って軸支される穀粒排出用のラセン体軸(13)をエンジン(11)からテンションクラッチ方式のベルト伝動装置(15)を介して伝動するに、該ベルト伝動装置(15)をエンジン(11)側の駆動プーリ(22)と前記穀粒タンク(4)のラセン体軸(13)に設ける従動プーリ(18)とに巻き掛けられるベルト(17)をクラッチプーリ(25)の操作により伝動入り切り自在に構成すると共に、伝動切り操作をして緩められたベルト(17)を従動プーリ(18)からベルト外しをしたのち、前記穀粒タンク(4)を脱穀装置(3)に近接した作業姿勢から該脱穀装置(3)から離して退避移動させるメンテナンス作業姿勢に切換移動自在に構成するコンバイン(1)において、
前記従動プーリ(18)の側方でベルト掛け替えスペースを有した位置に、機体フレーム(9)側から支持するベルト保持部材(16)を設けることにより、従動プーリ(18)から外したベルト(17)の縦向き姿勢にあるベルトループ部を姿勢維持してベルト保持部材(16)に保持して穀粒タンク(4)を切換移動可能にすることを特徴とするコンバインにおけるベルト伝動装置。
【請求項2】
前記ベルト保持部材(16)に、姿勢維持されるベルト(17)のベルトループ部が従動プーリ(18)側に傾倒することを規制する規制部(16d)を設けることを特徴とする請求項1に記載のコンバインにおけるベルト伝動装置。
【請求項3】
前記ベルト保持部材(16)をエンジン後部カバー(14)に設けると共に、該ベルト保持部材(16)に保持されるベルト(17)のベルトループ部の下部側を、機体フレーム(9)側に接当支持して規制することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバインにおけるベルト伝動装置。
【請求項4】
前記ベルト保持部材(16)を、従動プーリ(18)の上部高さより低くして設けることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のコンバインにおけるベルト伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインのベルト伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前処理部で刈取った刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置と選別済みの穀粒を貯留する穀粒タンクとを、走行装置を備える機体フレームに並列状に近接設置した作業姿勢から、該穀粒タンクを機体後部に立設される支柱部材を支点に外側方に退避回動して脱穀装置の側方を開放するメンテナンス作業姿勢に切換自在にするコンバインが周知である。
この種コンバインは、穀粒タンクとエンジンとの間に形成されるベルト掛け替えスペースに設けられるテンションクラッチ方式のベルト伝動装置を介し、穀粒タンクの底部内に沿って軸支される穀粒排出用のラセン体軸を伝動するように構成されている。(例えば、特許文献1参照)
前記コンバインは穀粒タンクを外側方に退避移動する際に、先ず、ベルト伝動装置のクラッチプーリを下方移動操作しベルトを緩め伝動切り状態にする。次に、伝動メンテナンススペース内に手を差し入れ、緩んだベルトを駆動プーリ側を外すことなく、従動プーリ側のベルトループ部のみを外し機体フレーム側の駆動プーリとの接続を断つ。
このあと、機体フレーム側のストッパー部材を解除操作した穀粒タンクを、前記支持部材を支点に前部側を従動プーリと共に外側方に回動し、脱穀装置の側方を大きく開放するメンテナンス作業姿勢に切換える。
これによりコンバインは、開放された広いスペースと床部を介し脱穀装置や機体フレーム側の点検修理及び掃除などのメンテナンス作業をすることができる。そして、メンテナンス作業を終えたのち、穀粒タンクを復帰回動移動し元の位置に固定すると共に、ベルト掛け替えスペースを介して外したベルトループ部を従動プーリに巻き掛けてコンバイン作業を再開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4856404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されるコンバインは、ベルト掛け替えスペース内で従動プーリから外されたベルトは、駆動プーリ側を巻き掛け支持した状態で自由端としてフリーになるベルトループ部がそのまま機体フレーム(床部)側に放置状態にされる。
このように外されたベルトループ部は、ベルト自身が製造時に付与される剛性と可撓性によってループ形状を不測に変形された状態でベルト掛け替えスペースや床面に捻じれて散乱した姿勢になる。
従って、穀粒タンクを側方回動しメンテナンス作業姿勢にする際や、床部を移動しておこなうメンテナンス作業をする時に、ベルトとの不測な接触による踏みつけや足への巻き付きなどの支障をきたすと共に、ループ形状が変形し乱されるのでベルト掛け替え作業を煩雑にし、メンテナンス作業を行い難く非能率するなどの問題を生じる。
一方、床部に不測に散乱した状態になるベルトは、穀粒タンクを復帰移動する際に、タンク底部に接触して挟み込まれたり奥側に押し込まれてベルト損傷を生じるなどの事態を発生するので、作業者はベルトループ部を片手で手繰り寄せて支持しながら、タンク移動に細心の注意を要し片手による復帰移動をしなければならないなど、タンク復帰移動操作を非能率にするなどの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明は、第1に、走行装置8を備える機体フレーム9に、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置3と、選別済みの穀粒を貯留する穀粒タンク4とを並列状に配設し、該穀粒タンク4の底部内に沿って軸支される穀粒排出用のラセン体軸13をエンジン11からテンションクラッチ方式のベルト伝動装置15を介して伝動するに、該ベルト伝動装置15をエンジン11側の駆動プーリ22と前記穀粒タンク4のラセン体軸13に設ける従動プーリ18とに巻き掛けられるベルト17をクラッチプーリ25の操作により伝動入り切り自在に構成すると共に、伝動切り操作をして緩められたベルト17を従動プーリ18からベルト外しをしたのち、前記穀粒タンク4を脱穀装置3に近接した作業姿勢から該脱穀装置3から離して退避移動させるメンテナンス作業姿勢に切換移動自在に構成するコンバイン1において、
前記従動プーリ18の側方でベルト掛け替えスペースを有した位置に、機体フレーム9側から支持するベルト保持部材16を設けることにより、従動プーリ18から外したベルト17の縦向き姿勢にあるベルトループ部を姿勢維持してベルト保持部材16に保持して穀粒タンク4を切換移動可能にすることを特徴としている。
第2に、前記ベルト保持部材16に、姿勢維持されるベルト17のベルトループ部が従動プーリ18側に傾倒することを規制する規制部16dを設けることを特徴としている。
第3に、前記ベルト保持部材16をエンジン後部カバー14に設けると共に、該ベルト保持部材16に保持されるベルト17のベルトループ部の下部側を、機体フレーム9側に接当支持して規制することを特徴としている。
第4に、前記ベルト保持部材16を、従動プーリ18の上部高さより低くして設けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明によれば、走行装置8を備える機体フレーム9に、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置3と、選別済みの穀粒を貯留する穀粒タンク4とを並列状に配設し、該穀粒タンク4の底部内に沿って軸支される穀粒排出用のラセン体軸13をエンジン11からテンションクラッチ方式のベルト伝動装置15を介して伝動するに、該ベルト伝動装置15をエンジン11側の駆動プーリ22と前記穀粒タンク4のラセン体軸13に設ける従動プーリ18とに巻き掛けられるベルト17をクラッチプーリ25の操作により伝動入り切り自在に構成すると共に、伝動切り操作をして緩められたベルト17を従動プーリ18からベルト外しをしたのち、前記穀粒タンク4を脱穀装置3に近接した作業姿勢から該脱穀装置3から離して退避移動させるメンテナンス作業姿勢に切換移動自在に構成するコンバイン1において、前記従動プーリ18の側方でベルト掛け替えスペースを有した位置に、機体フレーム9側から支持するベルト保持部材16を設けることにより、
従動プーリ18から外してベルト17が縦向きのベルトループ部姿勢になるループ部を、姿勢維持した状態でメンテナンス間隔を有した側方に設けられるベルト保持部材16に速やかに保持することができる。
従って、従動プーリ18から外されループ状の自由端になるベルトループ部は、従来のもののように機体フレーム9の上に倒れたり捻じれるなどの乱れ姿勢にならないので、床部やメンテナンス間隔Hを利用しておこなう脱穀装置の点検修理や穀粒タンク4の退避及び復帰移動などを、外したベルト17に支障されることなく一連のメンテナンス作業及びベルト掛け替え作業などを能率よく行うことができる。
請求項2に係る発明によれば、前記ベルト保持部材16に、姿勢維持されるベルト17のベルトループ部が従動プーリ18側に傾倒することを規制する規制部16dを設けることにより、
外されてベルト保持部材16に保持されたベルトループ部が、機体の傾きや振動などで従動プーリ18側に外れようとすることを規制部16dが規制しながら保持するので、駆動プーリ22との間でベルト掛け待機姿勢を乱すことなく長時間にわたり保持することができる。
請求項3に係る発明によれば、ベルト保持部材16をエンジン後部カバー14に設けると共に、該ベルト保持部材16に保持されるベルト17のベルトループ部の下部側を機体フレーム9側に接当支持可能にすることにより、
ベルト保持部材16を簡単で安価な構造にしながら、ベルトループ部の姿勢保持とベルト掛け替え作業を能率よく簡単にすることができる。
請求項4に係る発明によれば、前記ベルト保持部材16を、従動プーリ18の上部高さより低くして設けることにより、
ベルト外し作業をする際に、手など身体とベルト保持部材16の接触を回避したベルト掛け替え作業を行いやすくすることができると共に、ベルト保持部材16に保持されるベルト17をベルト保持部材16から外した位置から大きく上げ下げすることなく、且つベルトループ部の形状を乱すことなくベルト掛け替え作業をシンプルな動作によって速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】コンバインの全体を示す右側面図である。
図2図1の平面図である。
図3】キャビンとエンジンと穀粒タンクを示す側面図である。
図4図3のキャビンとエンジンカバーを側方回動した状態を示す平面図である。
図5】穀粒タンクのベルト伝動装置を示し、(a)は伝動入り状態を示す前方斜視図、(b)は伝動切り状態でベルトを外した姿勢を示す前方斜視図である。
図6】第1実施形態に係るベルト保持部材を示す後方斜視図である。
図7図6の側面図である。
図8図6のベルト保持部材の拡大斜視図である。
図9】第2実施形態に係るベルト保持部材を示す側面図である。
図10図9のベルト保持部材の使用態様を示す後方斜視図である。
図11図9のベルト保持部材の使用態様を示す作用側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、コンバイン1は、穀稈を刈取る前処理部2と、刈取穀稈を脱穀し穀粒を選別する脱穀装置3と、選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク4と、脱穀済みの排稈を排出処理する後処理部5と、オペレータ着座用の運転座席と各種の操作具をキャビン6で囲う操縦部7と、左右一対のクローラ走行装置8を走行方向に沿わせて配設する機体フレーム9を備えている。
【0009】
穀粒タンク4に貯留された穀粒は、穀粒タンク4の底部側に構成される図示しないタンク樋と、該タンク樋に接続される縦パイプ4aと、該縦パイプ4aの上端に一体旋回可能で起伏動作可能に接続される穀粒排出オーガ4bを経由して機外に排出できるようになっている。(図3
実施形態の穀粒タンク4は、タンク後壁の上下を縦パイプ4aに回動可能に設けた複数の回動支持部材4cに取付支持すると共に、タンク前側下部を切換ストッパ9a(図6)を介し機体フレーム9に回動可能に位置決め固定するように構成している。
そして、タンク外側壁の下部に形成される底部側の空間及び切換ストッパ9aなどの部位は、着脱又は回動可能に取付けられる蓋カバー10で開閉自在に覆っている。
【0010】
この構成により穀粒タンク4は、蓋カバー10を開いて切換ストッパ9aをストッパ解除すると、図2に示すように穀粒回収作業姿勢から、前記縦パイプ4aを中心に回動支持部材4cを介し2点鎖線で示すように側方回動し、脱穀装置3と操縦部7などとの間に大きな作業スペースを形成することができる。
これによりコンバインは、広い作業スペースを介し脱穀装置3やエンジン11及びその伝動構造部など各所のメンテナンス作業を容易にすることができる。そして、メンテナンス作業終了後には、逆順の動作によって穀粒タンク4を元の作業姿勢に復帰固定することができる。
【0011】
一方、キャビン6は図3図4に示すように、後部外側寄りで機体フレーム9側に設けられる取付け支点軸6aを中心に側方回動することにより、操作具や前処理部2などのメンテナンス作業を容易にしている。
この構成において操縦部7の運転座席の下方に配設されるエンジン11は、外側方をエンジンカバー12で覆うと共に、該エンジンカバー12は後方側の蝶番部12aを支点に側方回動に設けることでエンジン部のメンテナンス作業を容易にしている。
【0012】
そして、穀粒タンク4は、その底部内に軸支されるラセン体軸13への伝動駆動を、穀粒タンク4の前側壁4dとその前部に配設されるエンジン後部カバー(立設部材)14(図6)と、両者の間で機体フレーム9側に設けられる床部14aとによって形成される伝動メンテナンススペースに設置される、ベルトテンションクラッチ方式のベルト伝動装置15(図5)によって、在来のコンバインと同様に伝動入り切り自在に伝動するようにしている。
【0013】
上記ベルト伝動装置15が設置される伝動メンテナンススペースは、タンク前側壁4dと立設部材14との間に、機外から手を差し入れてベルト掛け替え作業などのメンテナンスを可能にするメンテナンス間隔Hを有するベルト掛け替えスペースにしている。
そして、この作業スペースには本発明に係るベルト保持部材16を、前記エンジン後部カバーを立設部材14として利用しその所定位置に設けることにより、ベルト17の掛替作業や外したベルト17の保持、並びに穀粒タンク4の退避作動など一連のメンテナンス作業を整然と能率よくおこなえるようにしている。
【0014】
実施形態におけるベルト伝動装置15は図5に示すように、前記穀粒タンク4の前側壁4dから前方に向けて突出するラセン体軸(従動軸)13の端部に固設した従動プーリ18と、穀粒タンク4の左方で脱穀部3側寄りの機体フレーム9側に設置される駆動軸ケース20と、該駆動軸ケース20に軸支される駆動軸21と、該駆動軸21の軸端に固設される駆動プーリ22と、前記両プーリ18,22に掛け回したV字状断面をなすベルト17と、該ベルト17を緊緩する公知構造のテンションクラッチ機構23をなすクラッチアーム23aに軸支されるクラッチプーリ25等を備えて構成される。
【0015】
上記テンションクラッチ機構23は、タンク前側壁4dに軸支されるクラッチアーム23aが操縦部7側から操作ワイヤ23bを介し上下方向にクラッチ操作することができる。つまり、クラッチプーリ25dが上移動するとき、駆動プーリ22と従動プーリ18とに巻き掛けられたベルト17を図5(a)に示すように張り操作して伝動入り状態にすることができ、クラッチプーリ25dが下移動するとき、ベルト17を緩めて伝動切り状態にすることができる。
【0016】
一方、穀粒タンク4の側方移動操作時やベルト外しなどをする場合には、緩められたベルト17は図5(b)に示すように、駆動プーリ22側を巻き掛けて保持したまま、緩められた従動プーリ18側の巻き掛け部(ベルトループ部)を簡単に外すことができる。
そして、従動プーリ18側から外されてループ形状をなし自由端状になるベルトループ部は、外し直後の形状を大きく乱して変形することのない縦向きループ姿勢で、そのまま速やかな前方移動動作によってベルト保持部材16側に収納状態に安定よく保持するようにしている。
【0017】
次に、図6、7、8を参照しベルト保持部材16の構成及び作用について説明する。
実施形態のベルト保持部材16は、従動プーリ18から外したベルト17を前記メンテナンス間隔Hを有した前側上方位置で保持するように、機体フレーム9側から立設した状態で設けられる前記エンジン後部カバーを立設部材14となし所定位置に固設している。
【0018】
図8に示す第1実施形態のベルト保持部材16は、縦向きに長い帯状板を側面視で略コ字状に折り曲げることで形成される取付け脚16aを、ベルト17のベルト幅より大きいベルトガイド長さ(前後幅)を有して形成し、前記エンジン後部カバー14の所定の取付け位置に溶接固定又は位置決め調節可能なネジ止め手段などによって取付けられる。
図示例のベルト保持部材16は、従動プーリ18の上部高さより低くして設けている。
【0019】
そして、ベルト保持部材16は、従動プーリ18の側方において外径に収まる程度の大きさとなして前方のエンジン後部カバー(立設部材)14に取付けるようにしている。
またベルト保持部材16の上下の取付け脚16aは、ベルト外しされループ形状になったベルト内周側に入り込みした状態で、ベルト自重の支持と上下及び左右方向の姿勢規制をすることができる。
【0020】
尚、ベルト保持部材16は、取付け脚16a端に上下方向に屈曲した取付片16bを設けるとカバー面との接合剛性を高めて取付けることができる。
ベルト保持部材16の取付け脚16aは、帯状本体部のガイド側面部16cの幅より小さくし外方側(右側)から平面視L字状をなすように切欠しており、取付け脚16aの先端部でベルト周面(内面又は側面)に接当してベルト外れを規制する、上側の規制部16dと下側規制部16eとを突起状に形成している。
【0021】
この構成により従動プーリ18から外したベルト17は、その直後に把持して縦向き姿勢にあるベルトループ部を持ってそのまま前方移動し、該ベルトループ部をベルト保持部材16の上側の取付け脚16aに載せかけるだけで、ベルト17の内周面側をL字状の切欠部に入れることができ、且つ突起状の規制部16dと下側規制部16eとが外れ方向になる従動プーリ18側(後方側)へのベルト移動を規制する。
【0022】
以上のように構成されるコンバイン1は、穀粒タンク4を脱穀装置3に近接した作業姿勢において植立穀稈を刈取り脱穀処理して回収される穀粒を穀粒タンク4内に貯留しながらコンバイン作業を行うことができる。
そして、穀粒タンク4内の穀粒を排出する時は、図5(a)に示すようにテンションクラッチ方式のベルト伝動装置15のクラッチプーリ25を上方に向けて伝動入り状態にし、駆動プーリ22からベルト17を介しラセン体軸13を駆動し、縦パイプ4aと穀粒排出オーガ4bを介して機外に排出する。
【0023】
一方、穀粒タンク4を脱穀装置3から離間移動させメンテナンス作業姿勢にする際には、先ず、ベルト伝動装置15のクラッチプーリ25を下方に向けて伝動切り操作しベルト17を緩めた状態にする。
そして、ベルト掛け替えスペースのメンテナンス間隔H内に手を差し入れ、緩められたベルト17の従動プーリ18側のベルトループ部を持ち上げ、プーリ溝から外し側方(前方)に引き外す動作をしながら、従動プーリ18側のみベルト外しをする。
【0024】
次いで、従動プーリ18から外した直後の縦向きのベルトループ部を持ちベルト外し姿勢を維持したままベルト保持部材16に向けて移動し、ベルトループ部の内周側を規制部16dと下部規制部16eを有する取付け脚16aに接当させる。
この動作により従動プーリ18から外された直後のベルト17は自由端になるベルトループ部が、そのベルト剛性と可撓性により縦向きの、外し姿勢を維持したままベルト保持部材16に速やかに保持されるので、従来のもののように、機体フレーム9側で倒れて捻じれや乱れ姿勢の散乱状態で放置されることを防止することができる。
【0025】
そして、ベルト保持部材16に保持されたベルト17は、そのベルトループ部が機体の傾きや振動及び物との接当を受けた場合において、規制部16dと下規制部16eとが外れ方向の移動を規制するので、駆動プーリ22とベルト保持部材16との間でベルト掛け待機姿勢を乱すことなく安定よく保持することができる。
これにより、ベルト保持部材16に保持されるベルト17は、駆動プーリ22側からエンジン後部カバー14側に向けて平面視で斜め方向にきれいに支持されるので、前記穀粒タンク4を退避移動及び復帰移動をするときタンク前部とベルト17との接触を回避でき、タンク移動操作を能率よくスムーズにできる。
【0026】
そして、コンバイン作業を再開する際には、穀粒タンク4を退避位置から元位置に復帰移動した状態でストッパ9aを再セットしたのち、ベルト保持部材16から前記ベルトループ部を外し従動プーリ18に巻き掛けるベルト掛け作業をする。
次いで、クラッチプーリ25の適正セットを確認し穀粒タンク復帰作業を完了しコンバイン作業状態にする。
【0027】
上記ベルト掛け作業は、ベルト掛け替えスペース内でベルト保持部材16を従動プーリ18の上部高さより低い位置に設けているので、ベルト保持部材16に保持されるベルト17をベルト保持部材16から外した位置から大きく上げ下げすることなく、ベルトループ部を略水平方向の移動によってループ形状を乱すことなく維持したまま、従動プーリ18に乗せ掛けるだけのシンプルな動作によって楽に速やかに巻き掛けることができる利点がある。
【0028】
次に、図9、10、11を参照し第2実施形態のベルト保持部材16について説明する。尚、前記第1実施形態のものと同様な構成については説明を省略する。
このベルト保持部材16は、従動プーリ18の直径と同程度の横幅をなす帯状板を側面視で逆L字状に折り曲げて取付け脚16aと規制部16dとを一体的に形成するだけの簡単な構造にしている。
【0029】
そして、このベルト保持部材16は、立設部材としてベルト掛け替えスペース有して前方に立設されるエンジン後部カバー14を利用し、該エンジン後部カバー14に従動プーリ18の上高さよりやや低い高さ位置になるように取付けることにより、簡潔で安価に製作でき且つ使用し易い構造にしていると共に、ベルト掛け替え作業において特にベルト外し作業をする際に、手など身体との接触を回避した作業を容易にしている。
【0030】
図示例の取付け脚16aは、ベルト17のベルト幅より大きいベルトガイド長さ(前後幅)を有して形成し、前記エンジン後部カバー14の所定取付け位置に前記第1実施形態のものと同様な溶接固定又は位置決め調節可能なネジ止め手段によって固設する。
規制部16dは、取付け脚16aから下向きに屈曲形成される規制部長さを、前記エンジン後部カバー14との間に挿入されるベルト17を受け入れ、ベルトループ部が前後方向に大きく傾倒しない幅と上下長さのベルト保持間隔を形成するようにしている。
【0031】
つまり、第2実施形態の逆L字状のベルト保持部材16は、立設部材としてのエンジン後部カバー14に従動プーリ18の直径内の高さに設けているため、穀粒タンク4の前側壁4dとエンジン後部カバー14と機体フレーム9側の床部14aとによって形成されるベルト掛け替えスペースを利用し、従動プーリ18から外されたベルト17のベルトループ部の下側を床部14aに接地させて支持した状態で、左右方向の移動を自由にしながら前後方向の傾動を規制して安定よく保持できる構造にしている。
【0032】
この構成により、ベルト17は従動プーリ18から外した直後のベルトループ部姿勢をそのまま維持できエンジン後部カバー14と床部14aとで形成されるコーナー部に移動して位置決めした安定姿勢にしたのち、前記規制部16dとエンジン後部カバー14とで形成されるベルト保持間隔内に、図11に実線で示すように、ベルトループ部の上部をベルト剛性(弾性力)や可撓性を利用し押し入れる動作によって、外されたベルト17の巻き掛け姿勢の維持を可能にして安定的に保持することができる。
【0033】
従って、このベルト保持部材16は、エンジン後部カバー14に設けると共に、該ベルト保持部材16に保持されるベルト17のベルトループ部の下部側を床部(機体フレーム9側)14aに接当支持可能にするので、ベルト保持部材16を簡単で安価な構造にすることができる。
また従動プーリ18から外したベルトループ部をそのまま床部14aに置いた姿で、上部側を前記ベルト保持間隔内にいれるだけの動作で速やかに姿勢維持することができ、ベルトループ部の姿勢保持とベルト掛け替え作業を能率よく簡単にすることができる。
【0034】
尚、ベルト保持部材16は、エンジン後部カバーを立設部材14として利用したが、機体フレーム9側ら立設される任意部材に設けることができると共に、上下及び左右方向に位置調節可能に設けてもよい。また図示例のベルト保持部材16は、帯状板によって形成したが、棒状部材を屈曲形成することによっても製作することができる。
また穀粒タンク4は、前記縦パイプ4aを回動支持部としてメンテナンス作業をする構造にしたが、穀粒タンク4の全体を例えばスライド機構を介し、脱穀装置3に近接した作業姿勢と退避移動させたメンテナンス作業姿勢に切換移動自在に構成してもよい。
またベルト保持部材16には必要により、ベルト17の保持の有無と状態を報知するセンサ構造を付設することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 コンバイン
2 機体フレーム
3 脱穀装置
4 穀粒タンク
8 走行装置
9 機体フレーム
11 エンジン
13 ラセン体軸
14 エンジン後部カバー(立設部材)
14a 床部
15 ベルト伝動装置
16 ベルト保持部材
16a 取付け脚
16d 規制部
17 ベルト
18 従動プーリ
22 駆動プーリ
25 クラッチプーリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11