(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108256
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】情報出力プログラム、情報出力方法及び情報出力装置
(51)【国際特許分類】
G06F 17/10 20060101AFI20240805BHJP
G16C 20/00 20190101ALI20240805BHJP
【FI】
G06F17/10 Z
G16C20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012525
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 公裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 睦世
(72)【発明者】
【氏名】河東 孝
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼久 淳師
【テーマコード(参考)】
5B056
【Fターム(参考)】
5B056BB64
5B056HH00
(57)【要約】
【課題】状態遷移の尤もらしい経路を出力することを課題とする。
【解決手段】情報出力プログラムは、対象の状態の存在確率分布内の第1の点と第2の点とを取得し、第1の点からの遷移先候補である複数の点を特定し、複数の点から、第1の点から複数の点のそれぞれまでの距離と遷移中の確率とに基づいて第3の点を選択し、第3の点を含む第1の点から第2の点の遷移経路を、対象の状態遷移情報として出力する、処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の状態の存在確率分布内の第1の点と第2の点とを取得し、
前記第1の点からの遷移先候補である複数の点を特定し、
前記複数の点から、前記第1の点から前記複数の点のそれぞれまでの距離と遷移中の確率とに基づいて第3の点を選択し、
前記第3の点を含む第1の点から前記第2の点の遷移経路を、前記対象の状態遷移情報として出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報出力プログラム。
【請求項2】
前記選択する処理は、前記複数の点のそれぞれについて前記距離が短くなるにしたがって高くなり、かつ前記遷移中の確率の平均が高くなるにしたがって高くなるスコアを算出し、前記複数の点のうち前記スコアが最大である点を前記第3の点として選択する処理を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報出力プログラム。
【請求項3】
前記特定する処理は、前記存在確率分布に極大値を与える点集合に基づいて前記複数の点を特定する処理を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報出力プログラム。
【請求項4】
前記存在確率分布は、混合ガウス分布に対応することを特徴とする請求項1に記載の情報出力プログラム。
【請求項5】
前記混合ガウス分布に含まれる平均ベクトルのうち前記第1の点が所属する第1の平均ベクトルを算出すると共に前記第2の点が所属する第2の平均ベクトルを算出する処理を前記コンピュータにさらに実行させ、
前記特定する処理は、前記第1の平均ベクトルからの遷移先候補である複数の点を特定する処理を含み、
前記選択する処理は、前記第1の平均ベクトルから前記複数の点のそれぞれまでの距離と遷移中の確率とに基づいて第3の点を選択する処理を含み、
前記出力する処理は、前記第1の点から前記第1の平均ベクトルへの遷移経路と、前記第3の点を含む第1の平均ベクトルから前記第2の平均ベクトルの遷移経路と、前記第2の平均ベクトルから前記第2の点への遷移経路とを、前記対象の状態遷移情報として出力する処理を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報出力プログラム。
【請求項6】
対象の状態の存在確率分布内の第1の点と第2の点とを取得し、
前記第1の点からの遷移先候補である複数の点を特定し、
前記複数の点から、前記第1の点から前記複数の点のそれぞれまでの距離と遷移中の確率とに基づいて第3の点を選択し、
前記第3の点を含む第1の点から前記第2の点の遷移経路を、前記対象の状態遷移情報として出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする情報出力方法。
【請求項7】
対象の状態の存在確率分布内の第1の点と第2の点とを取得し、
前記第1の点からの遷移先候補である複数の点を特定し、
前記複数の点から、前記第1の点から前記複数の点のそれぞれまでの距離と遷移中の確率とに基づいて第3の点を選択し、
前記第3の点を含む第1の点から前記第2の点の遷移経路を、前記対象の状態遷移情報として出力する、
処理を実行する制御部を含む情報出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報出力プログラム、情報出力方法及び情報出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質などの化合物の状態遷移の分析は、創薬等への応用などに貢献し得る。化合物の状態遷移は、実験等を通じて直接観測することは難しいが、特定の1シーンは様々な実験手法により集めることが可能である。このように集められた1シーンの情報から化合物の存在確率分布や化合物の形状を推定できる。
【0003】
例えば、化合物の存在確率分布をクラス数が2であるGMM(Gaussian Mixture Model)でモデル化し、GMMに極大値を与える点集合の数学的定義に基づいてクラス数が2であるGMMの平均ベクトル間の尤もらしい経路を構築する従来技術が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S. Ray and B. Lindsay: The topography of multivariate normal mixtures. Annals of Statistics 33 2042-2065 (2005).
【非特許文献2】Hennig, C.: Ridgeline plot and clusterwise stability as tools for merging Gaussian mixture components. In Classification as a Tool for Research (pp.109-116)(2010).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術は、GMMのクラスが2である場面でしか状態遷移の尤もらしい経路を構築することが困難である。例えば、創薬等への応用上有用とされる状況では多くの場合、化合物の存在確率分布はGMMのクラス数が3以上で表現される。このようにGMMのクラスが3以上である場合、必ずしも極大値の個数と平均ベクトルの個数とが等しいとは限らない。なぜなら、平均ベクトルに対応する極大値と平均ベクトルに対応する極大値との重ね合わせの影響により、平均ベクトルに対応する極大値以外に別の極大値がGMMに生じ得るからである。このような平均ベクトルに対応する極大値の重ね合わせの影響が無視されるので、上記の従来技術により構築される状態遷移の尤もらしい経路には誤差が生じることになる。
【0006】
1つの側面では、本発明は、状態遷移の尤もらしい経路を出力できる情報出力プログラム、情報出力方法及び情報出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの側面にかかる情報出力プログラムは、対象の状態の存在確率分布内の第1の点と第2の点とを取得し、前記第1の点からの遷移先候補である複数の点を特定し、前記複数の点から、前記第1の点から前記複数の点のそれぞれまでの距離と遷移中の確率とに基づいて第3の点を選択し、前記第3の点を含む第1の点から前記第2の点の遷移経路を、前記対象の状態遷移情報として出力する、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
状態遷移の尤もらしい経路を出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、サーバ装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、情報出力処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、経路生成結果の事例を示す図である。
【
図5】
図5は、ハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本願に係る情報出力プログラム、情報出力方法及び情報出力装置の実施例について説明する。各実施例には、あくまで1つの例や側面を示すに過ぎず、このような例示により数値や機能の範囲、利用シーンなどは限定されない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【実施例0011】
図1は、サーバ装置10の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示すサーバ装置10は、化合物の存在確率分布がモデル化されたGMMおよびGMM上の任意の2点のペアを入力とし、2点のペア間の尤もらしい経路を算出して出力する情報出力機能を提供するものである。ここで言う「尤もらしい経路」は、尾根(Ridgeline)とも呼ばれる。「尤もらしい経路」は、例えば、他の経路と比較して、経路長が短く、経路上の確率密度の和が大きい経路であり、必ずしも経路長が最短かつ経路上の確率密度の和が最大とは限られない。
【0012】
以下、対象のあくまで一例として、タンパク質などの化合物の存在確率分布がGMM形式でモデル化される例を挙げるが、対象は化合物に限定されない。例えば、化合物以外の他の対象の例として、エネルギーの概念を持つネットワーク(例えば、批判などが集中する度合いを示す炎上度などでアカウントに対応するノードを表現可能なソーシャルネットワーク)が挙げられる。
【0013】
サーバ装置10は、上記の情報出力機能を提供するコンピュータの一例である。あくまで一例として、サーバ装置10は、PaaS(Platform as a Service)型、あるいはSaaS(Software as a Service)型のアプリケーションとして実現することで、上記の情報出力機能をクラウドサービスとして提供することができる。この他、サーバ装置10は、上記の情報出力機能をオンプレミスに提供するサーバとして実現することもできる。
【0014】
サーバ装置10は、
図1に示すように、ネットワークNWを介して、クライアント端末30と通信可能に接続され得る。例えば、ネットワークNWは、有線または無線を問わず、インターネットやLAN(Local Area Network)などの任意の種類の通信網であってよい。なお、
図1には、1つのサーバ装置10につき1つのクライアント端末30が接続される例を挙げたが、任意の台数のクライアント端末30が接続されることを妨げない。
【0015】
クライアント端末30は、上記の情報出力機能の提供を受けるコンピュータの一例に対応する。例えば、クライアント端末30は、デスクトップ型またはラップトップ型のパーソナルコンピュータなどにより実現されてよい。これはあくまで一例に過ぎず、クライアント端末30は、携帯端末装置やウェアラブル端末などの任意のコンピュータであってよい。
【0016】
なお、
図1には、上記の情報出力機能がクライアントサーバシステムで提供される例を挙げるが、これはあくまで一例であって、上記の情報出力機能はスタンドアロンで提供されることとしてもよい。
【0017】
次に、本実施例に係るサーバ装置10の機能構成例について説明する。
図1には、サーバ装置10が有する情報出力機能に関連するブロックが模式化されている。
図1に示すように、サーバ装置10は、通信制御部11と、記憶部13と、制御部15とを有する。なお、
図1には、上記の情報出力機能に関連する機能部が抜粋して示されているに過ぎず、図示以外の機能部がサーバ装置10に備わることとしてもよい。
【0018】
通信制御部11は、クライアント端末30などの他の装置との間の通信を制御する機能部である。あくまで一例として、通信制御部11は、LANカードなどのネットワークインタフェイスカードにより実現され得る。1つの側面として、通信制御部11は、クライアント端末30からGMM上の任意の2点間の尤もらしい経路に関する情報出力を要求するリクエストを受け付けたり、あるいは当該リクエストに対するレスポンスなどをクライアント端末30へ出力したりする。
【0019】
記憶部13は、各種のデータを記憶する機能部である。あくまで一例として、記憶部13は、サーバ装置10の内部、外部または補助のストレージにより実現される。例えば、記憶部13は、分布情報13Aを記憶する。なお、分布情報13Aの説明は、登録または参照が行われる場面で併せて説明することとする。
【0020】
制御部15は、サーバ装置10の全体制御を行う機能部である。例えば、制御部15は、ハードウェアプロセッサにより実現され得る。
図1に示すように、制御部15は、取得部15Aと、算出部15Bと、生成部15Cと、出力部15Dとを有する。なお、制御部15は、ハードワイヤードロジックなどにより実現されてもよい。
【0021】
取得部15Aは、化合物の存在確率分布がモデル化されたGMMおよびGMM上の任意の2点のペアを入力として取得する処理部である。あくまで一例として、取得部15Aは、クライアント端末30からGMM上の任意の2点間の尤もらしい経路に関する情報出力を要求するリクエストを受け付けた際、GMMおよびGMM上の2点のペアの指定を受け付けることができる。
【0022】
例えば、取得部15Aは、下記の式(1)に示すGMM、いわゆる混合ガウス分布P
ψ(z)を定義するパラメータπ
c、μ
cおよびΣ
cの指定を受け付けることにより、化合物の存在確率分布がモデル化されたP
ψ(z)を取得できる。なお、ここで挙げたψ、π
c、μ
cおよびΣ
cには、ハットが付されているものとする。このように指定されるガウス分布Nの数C、すなわちGMMのクラス数は、3以上であってよい。さらに、取得部15Aは、P
ψ(z)上の任意の2点、すなわち尤もらしい経路を定義したい2点の指定を受け付けることにより、2点のペア(z
(0),z
(1))を取得できる。ここで指定される2点は、いずれも平均ベクトルでなくともよい。このように取得されたガウス混合分布P
ψ(z)および2点のペア(z
(0),z
(1))は、分布情報13Aとして記憶部13に保存されてよい。
【数1】
【0023】
算出部15Bは、ペアとして指定された2点の各々が所属するクラスを算出する処理部である。あくまで一例として、算出部15Bは、下記の参考文献1に記載されたベイズの定理のアルゴリズム、すなわちc0=argmaxc=1,...,CPψ(C|z(0))=πcNc(z(0);μc,Σc)/Pψ(z(0))にしたがってz(0)が所属するクラスを算出できる。このz(0)と同様にして、算出部15Bは、z(1)が所属するクラスも算出できる。以下、z(0)が所属するクラスに対応する平均ベクトルをμiとし、z(1)が所属するクラスに対応する平均ベクトルをμjとする。なお、ここで挙げたμiおよびμjにもハットが付されているものとする。
参考文献1:James Joyce. Bayes’ theorem. The Stanford Encyclopedia of Philosophy, 2003.
【0024】
生成部15Cは、2つの平均ベクトル間の尤もらしい経路を生成する処理部である。あくまで一例として、生成部15Cは、平均ベクトルμ
iから平均ベクトルμ
jへの尤もらしい経路z
0=μ
i→z
1→z
2→・・・→z
K-1→z
K=μ
jを下記に挙げる2つの要請を満たすように確率的に構築する。例えば、1つ目の要請として、下記に例示される式(2)の経路長ができるだけ短いことが挙げられる。2つ目の要請として、下記に例示される式(3)の経路上の平均確率ができるだけ大きいことが挙げられる。
【数2】
【数3】
【0025】
より詳細には、尤もらしい経路z
0→z
1→z
2→・・・→z
K-1→z
Kは、以下の通り、帰納的に定義できる。
図2は、経路生成を説明する模式図である。
図2に示すように、平均ベクトルμ
iから平均ベクトルμ
jへの尤もらしい経路z
0は、K個の区間に分割される。以下、kは、1~Kの整数を示すインデックスを指すこととする。このようなK個の区間の各々でz
kから次に遷移するm個の候補点(z
(1)
k+1,・・・,z
(m)
k+1)は、下記の式(4)にしたがって確率的にサンプリングされる。このような式(4)の下、α
c≧0およびc≠i,jは、Σ
c≠i,jα
c=(1-δ(k))α
i(k)を満たすようにランダムに定義される。
【数4】
【0026】
ここで、ペア(αi(k),δ(k))は、kを引数とする関数であり、例えば、k=0で(0,0)を満たし、k=Kで(1,1)を満たし、kが0およびK以外である場合に0<αi(k)およびδ(k)<1を満たす関数が設定され得る。このようなペア(αi(k),δ(k))をm個の候補点のサンプリングに導入することにより、m個の候補点の各々をzkからμjへの経路上に設定できる。
【0027】
さらに、上記の式(4)には、上記の非特許文献1に記載された数学的定義が組み込まれる。例えば、非特許文献1では、dを次元とし、α=(α
1,…,α
c)(確率ベクトル)を引数とする関数x(α)∈R
dが下記の式(5)の通りに定義される。ここで、μ
iおよびΣ
iは、i番目のガウス分布の平均と分散行列を指す。このとき、x(α)はGMMに極大値を与える点である。このように非特許文献1に記載された極大点の制約をm個の候補点のサンプリングに導入することにより、m個の候補点の各々が極大性を有する点であることを保証できる。
【数5】
【0028】
このようにm個の候補点がサンプリングされた後、生成部15Cは、m個の候補点ごとにスコアを算出する。例えば、l番目の候補点z
(l)
k+1に対するスコアは、下記の式(6)に示す確率密度pおよび距離dを引数とする、下記の式(7)~下記の式(9)に示すs
0~s
2のいずれかの関数にしたがって算出することができる。ここで、下記の式(6)~下記の式(9)におけるpは、l番目の候補点z
(l)
k+1上の確率密度の値を指し、dは、点z
kと、l番目の候補点z
(l)
k+1との距離を指す。これらs
0~s
2の他、スコアの算出には、下記の式(10)に示すs
3を用いることもできる。
【数6】
s
0=p/d・・・(7)
s
1=p・exp(-d
2/var)・・・(8)
s
2=1/d・・・(9)
s
3=f(p)+rg(d)・・・(10)
f(p)=p
g(d)=exp(-d
2)
【0029】
その上で、生成部15Cは、m個の候補点のうちスコアが最大であるz(l)
k+1をzk+1に設定する。これにより、m個の候補点のうち上記2つの要請に適合する候補点の選択を実現することができる。
【0030】
出力部15Dは、指定の2点のペアの尤もらしい経路を含む状態遷移情報を出力する処理部である。あくまで一例として、出力部15Dは、生成部15Cにより生成された平均ベクトルμiから平均ベクトルμjへの尤もらしい経路に基づいて、z(0)からz(1)までの尤もらしい経路を下記の通りに定義する。すなわち、出力部15Dは、z(0)からz(1)までの尤もらしい経路をz(0)→z0→z1→z2→・・・→zK-1→zK→z(1)と設定する。このとき、z(0)からμi(=z0)までの区間と、μj(=zK)からz(1)までの区間との各々の経路には、直線が設定されてよい。そして、出力部15Dは、z(0)からz(1)までの尤もらしい経路をクライアント端末30へ出力する。例えば、出力部15Dは、GMMのマップ上に経路に含まれる点集合をプロットすることにより表示してもよいし、経路に含まる点集合の位置および確率密度の値を表示することとしてもよい。
【0031】
図3は、情報出力処理の手順を示すフローチャートである。
図3に示すように、取得部15Aは、GMM、いわゆる混合ガウス分布P
ψ(z)を定義するパラメータπ
c、μ
cおよびΣ
cを取得する(ステップS100)。
【0032】
続いて、算出部15Bは、下記の参考文献1に記載されたベイズの定理のアルゴリズムにしたがってz(0)が所属するガウス分布の平均ベクトルμjおよびz(1)が所属するガウス分布の平均ベクトルμjを算出する(ステップS101)。
【0033】
そして、生成部15Cは、平均ベクトルμiから平均ベクトルμjまでの区間がK分割された2点間の遷移を上記2つの要請を満たす度合いを示すスコアに基づいて算出する(ステップS102)。
【0034】
その上で、出力部15Dは、z(0)からz(1)までの尤もらしい経路をクライアント端末30などの任意の出力先へ出力し(ステップS103)、処理を終了する。
【0035】
上述してきたように、本実施例にかかる情報出力機能は、GMM上の2つの平均ベクトル間がK分割された2点間の遷移ごとに経路長が短く、かつ経路上の平均確率が大きくなる遷移を選択することにより得られる経路を出力する。これにより、3つ以上の平均ベクトルに対応する極大値の重ね合わせにより生じる誤差が抑制された経路を出力できる。例えば、GMMの平均ベクトルの次元数が8次元程度の高次元でもロバストな結果を得ることができる。したがって、本実施例にかかる情報出力機能によれば、状態遷移の尤もらしい経路を情報出力できる。このような情報出力により、化合物の尤もらしい変化やそのエネルギー遷移過程を表現することが可能になるため、化合物の反応機構の解析に貢献できる。
【0036】
図4は、経路生成結果の事例を示す図である。
図4には、化合物の存在確率分布の例として、クラス数が4であるGMMがマッピングされたグラフが示されている。例えば、
図4に示すグラフの縦軸および横軸は、z
1およびz
2を含む2次元のベクトルに対応する。さらに、
図4に示すグラフでは、2次元のベクトル平面上の各点の存在確率密度から算出される疑似自由エネルギー、すなわち-log(Pψ(z))が凡例に示すハッチングで描画されている。さらに、
図4には、平均ベクトルμ
j及び平均ベクトルμ
jの間の尤もらしい経路がスコア関数s
0、s
1、s
2および従来技術(2gmm)に基づいて生成される例が挙げられており、スコア関数s
0、s
1、s
2および2gmmごとの経路がGMM上にプロットされている。
図4に示すように、従来技術(2gmm)では、他の平均ベクトルに対応する極大値の山が無視された幾何学的な経路が生成される。その一方で、スコア関数s
0、s
1、s
2によれば、いずれであっても他の山の干渉が反映された経路が生成されていることが明らかであると言える。
さて、これまで開示の装置に関する実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、本発明に含まれる他の実施例を説明する。
上記実施例1の文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更されてもよい。
また、各装置の構成要素の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その構成要素の全部または一部は、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合されてもよい。さらに、各装置の各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
なお、上記の情報出力プログラム170aは、必ずしも最初からHDD170やROM160に記憶されておらずともかまわない。例えば、コンピュータ100に挿入されるフレキシブルディスク、いわゆるFD、CD-ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」に情報出力プログラム170aを記憶させる。そして、コンピュータ100がこれらの可搬用の物理媒体から情報出力プログラム170aを取得して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータ100に接続される他のコンピュータまたはサーバ装置などに情報出力プログラム170aを記憶させておく。このように記憶された情報出力プログラム170aをコンピュータ100にダウンロードさせた上で実行させるようにしてもよい。
(付記2)前記選択する処理は、前記複数の点のそれぞれについて前記距離が短くなるにしたがって高くなり、かつ前記遷移中の確率の平均が高くなるにしたがって高くなるスコアを算出し、前記複数の点のうち前記スコアが最大である点を前記第3の点として選択する処理を含む、
ことを特徴とする付記1に記載の情報出力プログラム。
(付記5)前記混合ガウス分布に含まれる平均ベクトルのうち前記第1の点が所属する第1の平均ベクトルを算出すると共に前記第2の点が所属する第2の平均ベクトルを算出する処理を前記コンピュータにさらに実行させ、
前記特定する処理は、前記第1の平均ベクトルからの遷移先候補である複数の点を特定する処理を含み、
前記選択する処理は、前記第1の平均ベクトルから前記複数の点のそれぞれまでの距離と遷移中の確率とに基づいて第3の点を選択する処理を含み、
前記出力する処理は、前記第1の点から前記第1の平均ベクトルへの遷移経路と、前記第3の点を含む第1の平均ベクトルから前記第2の平均ベクトルの遷移経路と、前記第2の平均ベクトルから前記第2の点への遷移経路とを、前記対象の状態遷移情報として出力する処理を含む、
ことを特徴とする付記4に記載の情報出力プログラム。
(付記7)前記選択する処理は、前記複数の点のそれぞれについて前記距離が短くなるにしたがって高くなり、かつ前記遷移中の確率の平均が高くなるにしたがって高くなるスコアを算出し、前記複数の点のうち前記スコアが最大である点を前記第3の点として選択する処理を含む、
ことを特徴とする付記6に記載の情報出力方法。
(付記10)前記混合ガウス分布に含まれる平均ベクトルのうち前記第1の点が所属する第1の平均ベクトルを算出すると共に前記第2の点が所属する第2の平均ベクトルを算出する処理を前記コンピュータがさらに実行し、
前記特定する処理は、前記第1の平均ベクトルからの遷移先候補である複数の点を特定する処理を含み、
前記選択する処理は、前記第1の平均ベクトルから前記複数の点のそれぞれまでの距離と遷移中の確率とに基づいて第3の点を選択する処理を含み、
前記出力する処理は、前記第1の点から前記第1の平均ベクトルへの遷移経路と、前記第3の点を含む第1の平均ベクトルから前記第2の平均ベクトルの遷移経路と、前記第2の平均ベクトルから前記第2の点への遷移経路とを、前記対象の状態遷移情報として出力する処理を含む、
ことを特徴とする付記9に記載の情報出力方法。
(付記12)前記選択する処理は、前記複数の点のそれぞれについて前記距離が短くなるにしたがって高くなり、かつ前記遷移中の確率の平均が高くなるにしたがって高くなるスコアを算出し、前記複数の点のうち前記スコアが最大である点を前記第3の点として選択する処理を含む、
ことを特徴とする付記11に記載の情報出力装置。
(付記15)前記混合ガウス分布に含まれる平均ベクトルのうち前記第1の点が所属する第1の平均ベクトルを算出すると共に前記第2の点が所属する第2の平均ベクトルを算出する処理を前記制御部がさらに実行し、
前記特定する処理は、前記第1の平均ベクトルからの遷移先候補である複数の点を特定する処理を含み、
前記選択する処理は、前記第1の平均ベクトルから前記複数の点のそれぞれまでの距離と遷移中の確率とに基づいて第3の点を選択する処理を含み、
前記出力する処理は、前記第1の点から前記第1の平均ベクトルへの遷移経路と、前記第3の点を含む第1の平均ベクトルから前記第2の平均ベクトルの遷移経路と、前記第2の平均ベクトルから前記第2の点への遷移経路とを、前記対象の状態遷移情報として出力する処理を含む、
ことを特徴とする付記14記載の情報出力装置。