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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108267
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ゴムホース及びその運用方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/12 20060101AFI20240805BHJP
   E04G 21/04 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F16L11/12 J
E04G21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012546
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003465
【氏名又は名称】弁理士法人OHSHIMA&ASSOCIATES
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁
【テーマコード(参考)】
2E172
3H111
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA33
2E172CA44
2E172CA58
2E172CA59
3H111AA02
3H111BA11
3H111CB04
3H111CB14
3H111DA21
3H111DB07
(57)【要約】
【課題】 回転管継手を用いることなく、通常の配管ラインにおいて使用可能で、かつ、偏摩耗抑制に有用なゴムホースおよびその運用方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 ゴムホース本体2と、ゴムホース本体2の少なくとも一端部に取り付けられた口金具3とを備え、口金具3は、ゴムホース本体2に内嵌される基部4と、基部4の外周面の一部に全周にわたって環状に突出形成されたストップリング部5と、ゴムホース本体2の端部から露出する本体部6とを有するゴムホース1であって、口金具3の本体部6は、フランジ部7と、フランジ部7及び基部4を接続する中間部8とを備え、ゴムホース本体2及び/又は口金具3の本体部6に、ゴムホース1の回転度合いを確認可能な目印17が表示された構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムホース本体と、前記ゴムホース本体の少なくとも一端部に取り付けられた口金具とを備え、前記口金具は、前記ゴムホース本体に内嵌される基部と、前記基部の外周面の一部に全周にわたって環状に突出形成されたストップリング部と、前記ゴムホース本体の端部から露出する本体部とを有するゴムホースであって、
前記口金具の本体部は、フランジ部と、前記フランジ部及び前記基部を接続する中間部とを備え、
前記ゴムホース本体及び/又は前記口金具の本体部に、前記ゴムホースの回転度合いを確認可能な目印が表示されたゴムホース。
【請求項2】
前記目印は、前記ストップリング部から前記フランジ部の間に位置する前記ゴムホース本体及び前記中間部のうち少なくとも一方の外表面に、周方向に等間隔に複数表示された請求項1に記載のゴムホース。
【請求項3】
前記目印のそれぞれに順序情報が付された請求項2に記載のゴムホース。
【請求項4】
前記目印が4つ以上形成され、前記目印の順序情報は、下記(a)~(c)のルールに従って付されたものである請求項3に記載のゴムホース。
(a)2番目の順序情報は、1番目の順序情報が付された目印から最も離れた位置の目印に付する。
(b)3番目以降のn番目の順序情報は、まだ順序情報が付されていない目印のうち、1番目~n-1番目の目印からできるだけ離れた位置の目印に付する。
(c)上記(b)において、まだ順序情報が付されていない目印が1番目~n-1番目の目印から均等な位置にある場合は、n-1番目の目印からできるだけ離れた位置の目印に優先的に順序情報を付する。
【請求項5】
スラリー輸送用配管ラインにおいて、前記ゴムホースの上流側配管の下流側端部に形成された基準点と、前記複数の目印のうちの一つとを合わせた状態で、締結部材によって前記上流側配管に締結される請求項3に記載のゴムホースの運用方法であって、
所定量のスラリー組成物を輸送するごとに、前記順序情報の順番に従って前記基準点に合わせる目印を変更することで、偏摩耗領域を前記ゴムホースの内面の周方向に分散して発生させるようにしたゴムホースの運用方法。
【請求項6】
スラリー輸送用配管ラインにおいて使用される請求項3に記載のゴムホースの運用方法であって、
(A)前記ゴムホースの上流側配管の下流側端部に基準点を形成し、前記基準点と、前記ゴムホースに表示された目印のうち、1番目の順序情報が付された目印とを合わせて前記上流側配管と前記ゴムホースとを締結部材によって締結し、所定量のスラリー組成物を輸送する工程と、
(B)前記締結部材を緩めて前記配管の軸線回りに前記ゴムホースを回転させ、前工程で前記基準点に合わせていた目印に付された順序情報の次番目の順序情報が付された目印を前記基準点に合わせ、前記上流側配管と前記ゴムホースとを締結部材によって締結し、所定量のスラリー組成物を輸送する工程と、
を備え、前記(A)の工程の後に前記(B)の工程を実行し、さらに前記(B)の工程を繰りして実行する配管ラインにおけるゴムホースの運用方法。
【請求項7】
前記配管ラインがコンクリート組成物又はモルタル組成物輸送用であり、前記ゴムホースがドッキングホース又は先端ホースである請求項5又は6に記載のゴムホースの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンクリート組成物、モルタル組成物、土砂水など、摩耗性物質が混在する流体(スラリー)を輸送する用途に好適に使用可能なゴムホース及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンション、ビル等の建築現場におけるコンクリート組成物の打設作業は、ブームを備えたコンクリートポンプ車を使用して行われるのが一般的である。コンクリートポンプ車は、特許文献1の図7に示すように、折り畳み可能なブームを備えており、ブームに沿って金属製配管が配設されている。金属製配管の下流側には、ドッキングホースと、先端ホースとがこの順に接続されており、金属製配管、ドッキングホース及び先端ホースによって配管ラインが構成される。配管ラインの上流側には、ポンプ装置が接続されており、このポンプ装置で加圧されたコンクリート組成物が配管ラインを通って輸送され、先端ホースから吐出される。
【0003】
上記構成の配管ラインによってコンクリート組成物を輸送する場合、ドッキングホース及び先端ホースを適宜湾曲させながら先端ホースをコンクリート組成物の打設部位に導くようにしている。ところで、ゴムホースを常時同じ方向に湾曲させて使用していると、特許文献2の段落0002に記載されているように、ホース湾曲部分における半径方向外側に位置するホース内面部分が摩耗性物質の衝突により局所的に著しい摩耗(偏摩耗)が生じることが知られている。偏摩耗が生じると最終的にゴムホースが破損することになり、ゴムホースの使用可能な期間が通常想定されている使用期間より短くなるといった問題が生じていた。
【0004】
上記課題を解決するため、特許文献2では偏摩耗が発生した輸送管(耐摩耗ホース)を管軸回りに回転させ、摩耗箇所を異なった角度範囲に移動させる輸送管の運用方法が記載されている。具体的には、輸送管と、それを接続する配管との間に回転管継手を設け、輸送管を管軸回りに自由に回転できる構成を採用しつつ、回転管継手には、回転角度把握手段として回転角度を示すノッチや目盛等の目印を設けることで輸送管の回転角度を把握する方法が記載されている。これにより摩耗箇所を管軸回りに分散可能となり、輸送管全体としての寿命を延ばすことができるとされている(段落0043及び0110参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-080510号公報
【特許文献2】特開2018-084327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された輸送管の運用方法においては、輸送管とそれを接続する配管との間に回転管継手を設けた上で、その回転管継手に目印を表示しておく必要があり、一般的な配管ラインを備えたコンクリートポンプ車に応用するのが難しいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明では、回転管継手を用いることなく、通常の配管ラインにおいて使用可能で、かつ、偏摩耗抑制に有用なゴムホースおよびその運用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様として、ゴムホース本体と、前記ゴムホース本体の少なくとも一端部に取り付けられた口金具とを備え、前記口金具は、前記ゴムホース本体に内嵌される基部と、前記基部の外周面の一部に全周にわたって環状に突出形成されたストップリング部と、前記ゴムホース本体の端部から露出する本体部とを有するゴムホースであって、
前記口金具の本体部は、フランジ部と、前記フランジ部及び前記基部を接続する中間部とを備え、
前記ゴムホース本体及び/又は前記口金具の本体部に、前記ゴムホースの回転度合いを確認可能な目印が表示された構成とする。
【0009】
前記目印は、前記ストップリング部から前記フランジ部の間に位置する前記ゴムホース本体の外表面及び前記中間部のうち少なくとも一方の外表面に、周方向に等間隔に複数表示された構成としてもよい。
【0010】
前記目印のそれぞれに順序情報が付された構成としてもよい。
【0011】
前記目印が4つ以上形成され、前記目印の順序情報は、下記(a)~(c)のルールに従って付された構成としてもよい。
(a)2番目の順序情報は、1番目の順序情報が付された目印から最も離れた位置の目印に付する。
(b)3番目以降のn番目の順序情報は、まだ順序情報が付されていない目印のうち、1番目~n-1番目の目印からできるだけ離れた位置の目印に付する。
(c)上記bにおいて、まだ順序情報が付されていない目印が1番目~n-1番目の目印から均等な位置にある場合は、n-1番目の目印からできるだけ離れた位置の目印に優先的に順序情報を付する。
【0012】
スラリー輸送用配管ラインにおいて、前記ゴムホースの上流側配管の下流側端部に形成された基準点と、前記複数の目印のうちの一つとを合わせた状態で、締結部材によって前記上流側配管に締結される、前記目印のそれぞれに順序情報が付されたゴムホースの運用方法として、
所定量のスラリー組成物を輸送するごとに、前記順序情報の順番に従って前記基準点に合わせる目印を変更することで、偏摩耗領域を前記ゴムホースの内面の周方向に分散して発生させるようにしてもよい。
【0013】
また、前記目印のそれぞれに順序情報が付されたゴムホースのスラリー輸送用配管ラインにおける運用方法として、
(A)前記ゴムホースの上流側配管の下流側端部に基準点を形成し、前記基準点と、前記ゴムホースに表示された目印のうち、1番目の順序情報が付された目印とを合わせて前記上流側配管と前記ゴムホースとを締結部材によって締結し、所定量のスラリー組成物を輸送する工程と、
(B)前記締結部材を緩めて前記配管の軸線回りに前記ゴムホースを回転させ、前工程で前記基準点に合わせていた目印に付された順序情報の次番目の順序情報が付された目印を前記基準点に合わせ、前記上流側配管と前記ゴムホースとを締結部材によって締結し、所定量のスラリー組成物を輸送する工程と、
を備え、前記(A)の工程の後に前記(B)の工程を実行し、さらに前記(B)の工程を繰り返して実行するようにしてもよい。
【0014】
前記配管ラインがコンクリート組成物又はモルタル組成物輸送用であり、前記ゴムホースがドッキングホース又は先端ホースであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係るゴムホースによれば、ゴムホース自体にゴムホースの回転度合いを確認可能な目印を表示したため、ゴムホースの上流側配管の下流側端部に基準点を形成しておくことで、回転角度を示す目盛を設けた回転管継手を用いずともゴムホースの回転角度を把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のゴムホースを示す半断面図
図2図1のゴムホースの正面図
図3】コンクリートポンプ車に配設された配管ラインを示す概略図
図4】配管ラインにおける第1実施形態のゴムホースの接続部分を示す拡大図
図5図3の円で囲まれた部分の拡大断面図
図6】配管ラインにおける第2実施形態のゴムホースの接続部分を示す拡大図
図7】第2実施形態のゴムホースの正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を基に説明する。図1は、本実施形態のゴムホースを示す半断面図であり、図2図1のゴムホースの正面図である。なお、本実施形態では、本発明に係るゴムホースをコンクリートポンプ車の配管ラインにおける先端ホースとして使用する場合について説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施形態のゴムホース(先端ホース)1は、ゴムホース本体2と、ゴムホース本体2の一端部に取り付けられた口金具3とを備える。なお、ゴムホース本体2の他端部には口金具3は取りつけられていない。口金具3は、ゴムホース本体2に内嵌される基部4と、基部の外周面の一部に全周にわたって環状に突出形成されたストップリング部5と、ゴムホース本体2の端部から露出する本体部6とを有する。口金具3の本体部6は、フランジ部7と、フランジ部7及び基部4を接続する中間部8とを備えており、フランジ部7が口金具3の先端部とされる。
【0019】
ゴムホース本体2は、内面ゴム層9と、内面ゴム層9の半径方向外側に形成された外側ゴム層11を有する。外側ゴム層11として、螺旋状に巻回された線材によって補強された線材補強ゴム層12と、線材補強ゴム層12の内面及び外面に形成されたコード補強ゴム層13とから構成される補強層14と、補強層14の半径方向外側に形成された最外層としての外面ゴム層15とを備える。線材補強ゴム層12は、線材としての硬鋼線と、線材を被覆する被覆ゴムとから構成されており、これにより耐圧性、耐座屈性に優れたゴムホースを得ることが可能となる。
【0020】
コード補強ゴム層13は、繊維からなるすだれ織布(コード)に公知の未加硫ゴムをトッピング処理したシート状物からなる。コードに使用される繊維としては、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド、カーボンなどの有機繊維及びガラス、スチールなどの無機、金属繊維などが挙げられる。
【0021】
内面ゴム層9、コード補強ゴム層13、線材補強ゴム層12及び外面ゴム層15で用いられる未加硫ゴムのベース配合としては特に限定は無く、従来からこの分野において公知の配合であればいずれも使用可能であり、例えば、耐摩耗性、耐水性、加工性において優れる天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)或いはNRとシス-1,4-ポリブタジエンゴム(BR)及び/又はSBRとのブレンド配合組成物等を挙げることができる。
【0022】
口金具3は、基部4がゴムホース本体2に内嵌された形でゴムホース本体2に固定される。より詳しく説明すると、補強層14のうちのコード補強ゴム層13がストップリング部5を越えた位置でビードリング16に掛けるようにして折り返され、これによりゴムホース本体2からの口金具3の抜け出しを防止している。
【0023】
本発明のゴムホース1は、ゴムホース1の回転度合いを確認可能な目印17を備える。具体的には、図3図4に示すように、ゴムホース1を上流側配管24に締結して使用した時に、ゴムホース1の内面に発生する偏摩耗領域Tの位置を、上流側配管24に対してゴムホース1を軸線C回りに回転させることで周方向に移動させる際に、上流側配管24に対するゴムホース1の相対的な回転角度を把握するためにゴムホース1の外周面に複数の目印17が周方向に等間隔に設けられる。目印17を表示する位置は、ストップリング部5からフランジ部7の間に位置するゴムホース本体2及び中間部8のうち少なくとも一方の外表面とされる。すなわち、目印17は、ゴムホース本体2の外表面又は中間部8の外表面のいずれか一方に設けてもよいし、両方の外表面に設けてもよい。
【0024】
図1に示すように、口金具3を備えたゴムホース1においては、ストップリング部5まわりの径が最大径部となる。したがって、ゴムホース1を取り扱う際に、ゴムホース1が地表面や他の部材と接触するのは主に最大径部となり、それよりも先端側のストップリング部5からフランジ部7の間の領域に目印17を表示すれば、目印17が擦れて消えるおそれがなく、ゴムホース1の使用期間の全期にわたって明瞭に視認することができる。これにより、偏摩耗抑制に有用なゴムホースを得ることができる。
【0025】
目印17は、ドット状、線状、楔状等の任意の形状とすることができる。また、目印17を形成する方法としては、塗料を塗布したり、シールを貼付して形成することができるほか、ゴムホース本体2の外表面及び中間部8の外表面のうち少なくとも一方の外表面に凸状又は凹状に立体的に形成することで目印17の耐摩耗性を高めることができる。その中でも特に、外表面に凹状に形成した目印17は、より耐摩耗性に優れるとともに、成形が容易である点で好ましい。
【0026】
形成する目印17の数は、複数であれば特に制限はないが、偏摩耗領域をゴムホース1の内面の周方向に分散して発生させる観点からいえば、周方向に等間隔に3個以上とすればよく、4個以上とするのが好ましく、6個以上とするのがより好ましい。また、後述するように、締結部材を緩めてゴムホースを軸線回りに回転させた後、再度、締結部材によって上流側配管と締結する手間を考慮すれば、目印17の数は、12個以下とするのが好ましく、10個以下とするのがより好ましい。
【0027】
なお、本実施形態では、ゴムホース本体2の外面ゴム層15に刻設する形で凹状かつ線状の目印17が8個形成されている。また、目印17のそれぞれには、後述するように、基準点18に合わせる順番がわかる順序情報19を付すのが好ましい(図6及び図7参照)。順序情報19としては順番が認識できるものであれば特に制限はなく、例えば、「1」、「2」等のアラビア数字を含む各種数字のほか、「A」、「B」、「C」、「あ」、「い」、「う」、「イ」、「ロ」、「ハ」等の文字や、ドット等の記号(数を変化させて表示)を用いることができる。
【0028】
上記構成のゴムホース1を配管ライン20において運用する方法について説明する。図3は、コンクリートポンプ車に配設された配管ライン20を示す概略図である。コンクリートポンプ車21は、折り畳み可能なブーム22を備えており、ブーム22に沿って金属製配管23が配設されている。金属製配管23の下流側には、ドッキングホース24と、先端ホース1とがこの順に接続されており、金属製配管23、ドッキングホース24及び先端ホース1によって配管ライン20が構成される。配管ライン20の上流側には、ポンプ装置25が接続されており、このポンプ装置25で加圧されたコンクリート組成物が配管ライン20を通って輸送され、先端ホース1から吐出される。
【0029】
本実施形態のゴムホースである先端ホース1と、先端ホース1の上流側配管であるドッキングホース24とは締結部材(カップリング)26によって締結される。より具体的には、図4に示すように、先端ホース1の口金具3先端のフランジ部7と、ドッキングホース24の下流側端部のフランジ部24aとを突き合せた状態で、両フランジ部7、24aが締結部材26によって締結される。このとき、ドッキングホース24のフランジ部24a近傍に基準点18を設けておき、この基準点18と、先端ホース1に形成された複数の目印17のうちの一つとを合せるように、すなわち、配管ライン20の軸線C方向から見たときに基準点18と目印17の一つとが重なるようにして、ドッキングホース24と先端ホース1とを締結部材26によって連結する。なお、ドッキングホース24を含む配管ライン20の軸線Cと、先端ホース1の軸線Cは一致している。
【0030】
図3に示すように、ドッキングホース24に締結された先端ホース1は、先端ホース1の中間部分が地表面付近で水平方向に湾曲した状態でコンクリート組成物の打設部位に導かれる。上述した状態のままで長時間にわたって先端ホース1からコンクリート組成物を吐出させる作業を続けると、先端ホース1の湾曲部において偏摩耗が生じる。偏摩耗の発生について、以下、図面を基に詳述する。
【0031】
図5は、図4の円Aで囲まれた部分の拡大断面図である。ここでは、先端ホース1が地表面付近において、中心点Oを中心とする半径Rの円弧状に湾曲した場合を想定する。この場合、先端ホース1内を通過するコンクリート組成物中の砂利等の摩耗性物質が、円弧状に湾曲した半径方向外側に位置する内面に激しく衝突し、図中、領域Tに偏摩耗が発生する。すなわち、領域Tが偏摩耗領域とされる。
【0032】
そこで、本発明では、先端ホース1の偏摩耗が進行する前に、所定量のコンクリート組成物(スラリー)を輸送した時点で締結部材26を緩めて軸線C回りに先端ホース1を回転させ、新たな目印17を基準点18に合わせ、所定量のコンクリート組成物の輸送を実行する。以降、この手順を繰り返すようにして先端ホース1を運用する。これによって、偏摩耗領域をゴムホース内面の周方向に分散させることができ、先端ホース1の使用期間を延ばすことが可能となる。上述したコンクリート組成物(スラリー)の所定量については、以下のようにして求めることができる。目印の数がn個の場合、ゴムホースを偏摩耗の発生を抑制してゴム内面が均等に摩耗するようにした状態(たとえば、ゴムホースを真っすぐに伸ばした状態)で輸送可能なスラリー量をXとすると、Xをnで除した値(X/n)を所定量のスラリー輸送量とすることができる。
【0033】
また、ゴムホース1の目印17のそれぞれに順序情報19が付された場合に、スラリー輸送用配管ライン20において、ゴムホース1の上流側配管24の下流側端部に形成された基準点18と、複数の目印17のうちの一つとを合わせた状態で、締結部材26によって上流側配管24に締結されるゴムホース1の運用方法として、所定量(X/n)のスラリー組成物を輸送するごとに、順序情報19の順番に従って基準点18に合わせる目印17を変更することができる。これにより、すでに基準点17に合わせてスラリー輸送済の目印17の位置で重複してスラリーを輸送することを抑止しつつ、偏摩耗領域Tをゴムホース1の内面の周方向に分散して発生させることができる。
【0034】
[第2実施形態]
本実施形態では、目印に順序情報が付されている点、及び、順序情報が一定のルールに従って付されている点が特徴とされる。その他の構成は第1実施形態と同様とされる。なお、本実施形態では第1実施形態と同じ名称の部材には便宜上同じ符号を付している。
【0035】
図6は、コンクリートポンプ車21の配管ライン20を構成するドッキングホース24と、本実施形態のゴムホース(先端ホース)1との接続部分を示す拡大図であり、図示のごとく、本実施形態では先端ホース1に形成された8個の目印17のそれぞれに順序情報19として1~8までの数字が付されている。なお、順序情報19は、目印17と同様にゴムホース本体2の外面ゴム層15に刻設する形で凹状に形成されている。
【0036】
8個の目印17の順序情報19は下記(a)~(c)のルールに従って付される。
(a)2番目の順序情報19は、1番目の順序情報19が付された目印17から最も離れた位置の目印17に付する。
(b)3番目以降のn番目の順序情報19は、まだ順序情報19が付されていない目印17のうち、1番目~n-1番目の目印17からできるだけ離れた位置の目印17に付する。
(c)上記bにおいて、まだ順序情報19が付されていない目印17が1番目~n-1番目の目印17から均等な位置にある場合は、n-1番目の目印17からできるだけ離れた位置の目印17に優先的に順序情報を付する。
【0037】
図7は、本実施形態の先端ホース1を示す正面図である。図中、<1>~<8>の数字は対応する位置の目印17に付された順序情報19としての数字を表している。図示のごとく、上記ルールに従って8個の目印17に順序情報19として1~8の数字を付した場合、連続する2つの数字は互いに離れた位置の目印に付されることになる。
【0038】
目印17のそれぞれに順序情報19が付された先端ホース1は、スラリー輸送用配管ライン20において、下記(A)の工程の後に下記(B)の工程を実行し、さらに下記(B)の工程を繰り返して実行するようにして運用することができる。
(A)先端ホース1の上流側配管であるドッキングホース24の下流側端部に基準点18を形成し、基準点18と、先端ホース1に表示された目印17のうち、1番目の順序情報19が付された目印17とを合わせてドッキングホース24と先端ホース1とを締結部材26によって締結し、所定量のスラリー組成物を輸送する工程。
(B)締結部材26を緩めて軸線C回りに先端ホース1を回転させ、前工程で基準点18に合わせていた目印17に付された順序情報19の次番目の順序情報19が付された目印17を基準点18に合わせ、ドッキングホース24と先端ホース1とを締結部材26によって締結し、所定量のスラリー組成物を輸送する工程。
【0039】
上記運用方法においては、目印に順序情報を付することにより、基準点18に合わせるべき目印17が明確化される。したがって、すでに基準点17に合わせてスラリー輸送済の目印17の位置で重複してスラリーを輸送することを抑止可能であるとともに、軽度の偏摩耗領域をゴムホース内面の周方向に分散させることが可能となる。さらに、本実施形態における上記(a)~(c)のルールに従って順序情報19を付することにより、軽度の偏摩耗領域がゴムホースの軸線Cを中心としてできるだけ対称位置に分散して生じるように制御することが可能となる。これにより、偏摩耗領域の偏在による局所的なゴムホースの強度低下を抑制し、ひいてはゴムホースの座屈の発生を抑止することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。具体的に、本実施形態ではゴムホース1を、配管ライン20を構成する先端ホースとして使用する場合について説明したが、これに限らず、ドッキングホース24として使用することも可能である。
【0041】
この場合、ドッキングホース24のホース本体の軸線方向の両端部に口金具3が取り付けられる。基準点18はドッキングホース24の上流側配管である金属製配管23の下流側端部に設けて、目印17はドッキングホース24の上流側端部の口金具3のストップリング部5からフランジ部7の間に位置するゴムホース本体2及び中間部8のうち少なくとも一方の外表面に設ければよい。このとき、先端ホースはドッキングホース24に接続したままとすることができる。これにより、ドッキングホース24と一体的に先端ホースを回転させることが可能となり、ドッキングホース24及び先端ホース両者における偏摩耗を抑制することができる。
【0042】
また、上記実施形態ではゴムホース1の上流側配管の下流側端部に基準点を別途設けていたが、本発明のゴムホース1に基準点18として使用可能なシールを付属させておくことも可能である。これにより、本発明のゴムホース1と上流側配管とを締結部材26によって締結する際に、上流側配管に基準点のシールを貼着することで容易に基準点18を設けることが可能となる。
【0043】
また、上記実施形態では目印17及び順序情報19ともゴムホース本体2の外面ゴム層15に刻設する形で凹状に形成されているが、これに限らず、外面ゴム層15が一部盛り上がるように凸状に形成してもよいし、塗料を塗布することで表示してもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、順序情報19として、直接的に順番が認識できる、数字、文字、記号等について説明したが、これに限らず、例えば、1番目の矢印17を0°とし、1番目の矢印17を基準とした回転角度(0°~360°の間の角度)を表示することができる。この場合、順序情報は直接の順番を表示しているわけではないものの、角度が大きくなる順に矢印17を基準点18に合わせればよいと認識可能であることから順序情報の1種といえる。
【0045】
さらに、上記実施形態と同様に、周方向に8個の矢印17を等間隔に表示する場合、上記(a)~(c)のルールに従って、0°の表示が付された矢印の次は、180°、90°、270°、45°、225°、315°、135°の表示が付された矢印の順に基準点に合わせるように、ゴムホース1に説明文を添付するか、ゴムホース1に直接表示しておくことも可能である。この場合には、軽度の偏摩耗領域がゴムホースの軸線Cを中心としてできるだけ対称位置に分散して生じるように制御することが可能となり、これも順序情報の1種といえることは勿論である。
【0046】
本実施形態に開示されている構成要件は互いに組合せ可能であり、組み合せることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ゴムホース
2 ゴムホース本体
3 口金具
4 基部
5 ストップリング部
6 本体部
7 フランジ部
8 中間部
9 内面ゴム層
11 外側ゴム層
12 線材補強ゴム層
13 コード補強ゴム層
14 補強層
15 外面ゴム層
16 ビードリング
17 目印
18 基準点
19 順序情報
20 配管ライン
21 コンクリートポンプ車
22 ブーム
23 金属製配管
24 ドッキングホース
25 ポンプ装置
26 締結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7