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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010828
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】バーニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 21/12 20060101AFI20240118BHJP
   H02K 21/04 20060101ALI20240118BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20240118BHJP
   H02K 21/22 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H02K21/12 M
H02K21/04
H02K21/16 M
H02K21/22 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112358
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】川上 克之
【テーマコード(参考)】
5H621
【Fターム(参考)】
5H621BB10
5H621GA06
5H621HH01
(57)【要約】
【課題】連続出力トルクを向上させたバーニアモータを提供する。
【解決手段】バーニアモータ1は、所定角度間隔で径方向へ沿って突出する複数の第1ステータ突出磁極21に巻回されたステータ巻線23と、各第1ステータ突出磁極21の先端部27に形成された複数の第2ステータ突出磁極24と、各第2ステータ突出磁極24に隣接して形成された突出磁極溝部25と、各突出磁極溝部25に、径方向に対する磁極の方向が同一方向であるように設けられたステータ磁石26とを有する輪状ステータ20と、各第1ステータ突出磁極21の先端部に対向して形成された複数のロータ突出磁極31と、各ロータ突出磁極31に隣接したロータ溝部32と、各ロータ溝部32に、径方向に対する磁極の方向が同一方向且つステータ磁石26と同方向であるロータ磁石33とを有する輪状ロータ30とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度間隔で径方向へ沿って突出する複数の第1ステータ突出磁極(21)と、
前記各第1ステータ突出磁極(21)に巻回されたステータ巻線(23)と、
前記各第1ステータ突出磁極(21)の先端部(27)に所定角度間隔で径方向に沿って形成された複数の第2ステータ突出磁極(24)と、
前記各第2ステータ突出磁極(24)に隣接して形成された突出磁極溝部(25)と、
前記各突出磁極溝部(25)に、径方向に対する磁極の方向が同一方向であるように設けられた永久磁石であるステータ磁石(26)と
を有する輪状ステータ(20)と、
前記各第1ステータ突出磁極(21)の先端部(27)に対向して所定角度間隔で径方向に沿って形成された複数のロータ突出磁極(31)と、
前記各ロータ突出磁極(31)に隣接して形成されたロータ溝部(32)と、
前記各ロータ溝部(32)に、径方向に対する磁極の方向が同一方向且つ前記ステータ磁石(26)と同方向であるように設けられた永久磁石であるロータ磁石(33)と
を有する輪状ロータ(30)と
を備え、
極数が少なくとも2極であるバーニアモータ。
【請求項2】
前記第1ステータ突出磁極(21)の数がns個であり、
前記ロータ突出磁極(31)の数がNr個であるときに、
前記第1ステータ突出磁極(21)の数nsと前記ロータ突出磁極(31)の数Nrとの関係が、下記(1)式を満たす請求項1に記載のバーニアモータ。
Nr=(n±0.5)×ns±1 ・・・(1)
但し、前記(1)式において、nは1以上の整数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はバーニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバーニアモータとして、例えば特許文献1に記載されているようなバーニアモータが知られている。特許文献1に記載されたバーニアモータは、複数のスロットにそれぞれ収容されたステータ巻線を有するステータと、ステータの内側に設けられたロータとを有している。ロータは、ステータに対向している外周面の周方向に沿って配置された、複数の永久磁石を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-298922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなバーニアモータは、一般的なPMモータ等と比較すると、モータが連続駆動する場合の連続出力トルクが小さいという問題点があった。
【0005】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、連続出力トルクを向上させたバーニアモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明に係るバーニアモータは、所定角度間隔で径方向へ沿って突出する複数の第1ステータ突出磁極と、各第1ステータ突出磁極に巻回されたステータ巻線と、各第1ステータ突出磁極の先端部に所定角度間隔で径方向に沿って形成された複数の第2ステータ突出磁極と、各第2ステータ突出磁極に隣接して形成された突出磁極溝部と、各突出磁極溝部に、径方向に対する磁極の方向が同一方向であるように設けられた永久磁石であるステータ磁石とを有する輪状ステータと、各第1ステータ突出磁極の先端部に対向して所定角度間隔で径方向に沿って形成された複数のロータ突出磁極と、各ロータ突出磁極に隣接して形成されたロータ溝部と、各ロータ溝部に、径方向に対する磁極の方向が同一方向且つステータ磁石と同方向であるように設けられた永久磁石であるロータ磁石とを有する輪状ロータとを備え、極数が少なくとも2極である。
【0007】
また、第1ステータ突出磁極の数がns個であり、ロータ突出磁極の数がNr個であるときに、第1ステータ突出磁極の数nsとロータ突出磁極の数Nrとの関係が、下記(1)式を満たしてもよい。
Nr=(n±0.5)×ns±1 ・・・(1)
但し、(1)式において、nは1以上の整数である。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るバーニアモータは、所定角度間隔で径方向へ沿って突出する複数の第1ステータ突出磁極と、各第1ステータ突出磁極に巻回されたステータ巻線と、各第1ステータ突出磁極の先端部に所定角度間隔で径方向に沿って形成された複数の第2ステータ突出磁極と、各第2ステータ突出磁極に隣接して形成された突出磁極溝部と、各突出磁極溝部に、径方向に対する磁極の方向が同一方向であるように設けられた永久磁石であるステータ磁石とを有する輪状ステータと、各第1ステータ突出磁極の先端部に対向して所定角度間隔で径方向に沿って形成された複数のロータ突出磁極と、各ロータ突出磁極に隣接して形成されたロータ溝部と、各ロータ溝部に、径方向に対する磁極の方向が同一方向且つステータ磁石とは逆方向であるように設けられた永久磁石であるロータ磁石とを有する輪状ロータとを備え、極数が少なくとも2極であるため、連続出力トルクを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係るバーニアモータの概略図である。
図2図1に示す第1ステータ突出磁極の先端部と輪状ロータとの部分拡大図である。
図3】動作原理説明のためのバーニアモータの第1の状態を示す部分概略図である。
図4】動作原理説明のためのバーニアモータの第2の状態を示す部分概略図である。
図5】動作原理説明のためのバーニアモータの第3の状態を示す部分概略図である。
図6】動作原理説明のためのバーニアモータの第4の状態を示す部分概略図である。
図7図3図6に示す輪状ロータの回転角と、ステータ巻線の鎖交磁束との関係を示すグラフである。
図8】モータトルクの最大トルク条件を説明するためのバーニアモータの概略図である。
図9図1に示すバーニアモータの回転角と、バーニアモータ1の各相の回転トルクとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るバーニアモータを添付図面に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態に係るバーニアモータの構成を示す概略図である。バーニアモータ1は、輪状ステータ20と、輪状ステータ20の径方向外側に設けられた輪状ロータ30とを有している。輪状ステータ20は、約30度ずつの等角度間隔で径方向へ沿って外側に突出している合計12本の第1ステータ突出磁極21を有している。第1ステータ突出磁極21にはステータ巻線23が巻回されており、このステータ巻線23は各第1ステータ突出磁極21の間に形成されたステータ溝部22に収容されている。
【0011】
各第1ステータ突出磁極21の先端部27には、約5度ずつの角度間隔で径方向に沿って外側に突出している5本の第2ステータ突出磁極24がそれぞれ形成されている。すなわち、第1ステータ突出磁極21は輪状ステータ20の大歯部を構成し、第2ステータ突出磁極24は輪状ステータ20の小歯部を構成している。また、各第1ステータ突出磁極21の先端部27には、各第2ステータ突出磁極24に隣接して突出磁極溝部25が6本形成されている。各第1ステータ突出磁極21に設けられた各突出磁極溝部25のうち、周方向において最外側の2本の突出磁極溝部25は、各第1ステータ突出磁極21の先端部27の周方向端部にそれぞれ設けられている。各突出磁極溝部25には、永久磁石であるステータ磁石26がそれぞれ挿入されている。
【0012】
輪状ロータ30の内径部には、第2ステータ突出磁極24及び突出磁極溝部25の角度間隔とほぼ等しい約5度ずつの等角度間隔で径方向に沿って内側に突出している合計67本のロータ突出磁極31が形成されている。ロータ突出磁極31は、輪状ロータ30の歯部を構成している。各ロータ突出磁極31には、これに隣接してロータ溝部32がそれぞれ形成されている。各ロータ溝部32には永久磁石であるロータ磁石33がそれぞれ挿入されている。
【0013】
図2は、図1に示す第1ステータ突出磁極21の先端部27と輪状ロータ30との部分拡大図である。第1ステータ突出磁極21の先端部27に形成された第2ステータ突出磁極24と輪状ロータ30のロータ突出磁極31とは、エアギャップを挟んで配置されている。輪状ステータ20の各突出磁極溝部25に挿入されている各ステータ磁石26は、径方向外側にN極が位置し、径方向内側にS極が位置するように配置されている。すなわち、各ステータ磁石26は、径方向に対する磁極の方向が同一方向であるように設けられている。なお、図2においてはステータ磁石26及び後述するロータ磁石33の磁極を、N極をN、S極をSとして示している。
【0014】
輪状ロータ30の各ロータ溝部32に挿入されている各ロータ磁石33は、径方向外側にN極が位置し、径方向内側にS極が位置するように配置されている。すなわち、各ロータ磁石33は、径方向に対する磁極の方向が同一方向であり且つステータ磁石26と磁極の方向が同方向であるように設けられている。
【0015】
次に、本実施の形態のバーニアモータ1の動作原理を、バーニアモータの動作原理説明のためのモデルである、バーニアモータ1aの動作を図3図6を参照して説明する。なお、図3図6において図1及び図2の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。
【0016】
図3は、動作原理説明のためのバーニアモータ1aの第1の状態を示す部分概略図である。バーニアモータ1aは、輪状ステータ20aと輪状ロータ30aとを有している。なお、説明の便宜のために輪状ステータ20a及び輪状ロータ30aは、直線状に記載している。すなわち、図3図6における第2ステータ突出磁極24及びロータ突出磁極31に対して垂直な長手方向は、実際には輪状ステータ20a及び輪状ロータ30aの周方向である。
【0017】
輪状ステータ20aには、第1ステータ突出磁極21a,21bと、各第1ステータ突出磁極21a,21bに巻回されたステータ巻線23と、各第1ステータ突出磁極21a,21bの先端部27に等角度間隔に形成された2本の第2ステータ突出磁極24と、第2ステータ突出磁極24に隣接して形成された3本の突出磁極溝部25と、突出磁極溝部25に設けられたステータ磁石26とが設けられている。第1ステータ突出磁極21a,21bは、第1ステータ突出磁極21a,21bの間の電気角が約180度位置であるように配置されている。
【0018】
輪状ロータ30aには、等角度間隔に形成されたロータ突出磁極31と、ロータ溝部32と、ロータ溝部32に設けられたロータ磁石33が設けられている。第2ステータ突出磁極24のピッチと、ロータ突出磁極31とのピッチとは、同じ角度間隔となるように形成されているため、図3図6においては輪状ステータ20a及び輪状ロータ30aの長手方向において同じ長さとして示している。
【0019】
第1ステータ突出磁極21aの各第2ステータ突出磁極24の位置はロータ突出磁極31と一致しているのに対し、第1ステータ突出磁極21bの第2ステータ突出磁極24の位置はロータ突出磁極31に対して1/2ピッチ分異なっている。このときの、ステータ巻線23の鎖交磁束の向きを矢印Mで示す。
【0020】
図4は、動作原理説明のためのバーニアモータ1aの第2の状態を示す部分概略図であり、図3に示す輪状ロータ30aを矢印A方向に、ロータ突出磁極31の1/4ピッチ分の角度移動させた状態を示している。
【0021】
図5は、動作原理説明のためのバーニアモータ1aの第3の状態を示す部分概略図であり、図4に示す輪状ロータ30aを矢印A方向に、ロータ突出磁極31の1/4ピッチ分の角度移動させた状態を示している。なお、図5に示す状態では、第1ステータ突出磁極21aの第2ステータ突出磁極24の位置はロータ突出磁極31に対して1/2ピッチ分異なっており、第1ステータ突出磁極21bの第2ステータ突出磁極24の位置はロータ突出磁極31に対して一致している。このときの、ステータ巻線23の鎖交磁束の向きを矢印Mで示す。図3に示す第1の状態と比較すると、図5に示す第3の状態においては矢印Mで示しているステータ巻線23の鎖交磁束の向きが逆方向となる。
【0022】
図6は、動作原理説明のためのバーニアモータ1aの第4の状態を示す部分概略図であり、図5に示す輪状ロータ30aを矢印A方向に、ロータ突出磁極31の1/4ピッチ分の角度移動させた状態を示している。
【0023】
図7は、図3図6に示すバーニアモータ1aの輪状ロータ30aの回転角と、ステータ巻線23の鎖交磁束との関係を示すグラフである。輪状ロータ30aの回転角とステータ巻線23の鎖交磁束との関係は、図3に示す輪状ロータ30aの回転角の場合は図7において符号a、図4に示す輪状ロータ30aの回転角の場合は図7において符号b、図5に示す輪状ロータ30aの回転角の場合は図7において符号c、図6に示す輪状ロータ30aの回転角の場合は図7において符号dとして示している。上述したように、ステータ巻線23の鎖交磁束の向きは、図3に示す第1の状態の矢印Mの方向に対して、図5に示す第3の状態の矢印Mの方向は逆方向である。そして、輪状ロータ30aの回転角が、図3図6に示すように矢印A方向に移動することで、図7に示すように符号a、符号b、符号c、符号dの順にステータ巻線の鎖交磁束が正弦波状に変化する。このような輪状ステータ20a及び輪状ロータ30aの構成を多相化することによりバーニアモータ1aがモータとして機能する。図1に示す本実施の形態に係るバーニアモータ1は、このような動作原理により動作する。
【0024】
次に、本実施の形態に係るバーニアモータ1のモータトルクを最大とするための最大トルク条件を説明する。モータトルクの最大トルク条件は輪状ロータ30を回転させたときに、第1ステータ突出磁極21を通過する鎖交磁束量が最大となる条件である。この条件では、隣り合う各第1ステータ突出磁極21の電気角の位相が約180度異なる位置となるように構成される。また、この条件では、1つの第1ステータ突出磁極21の径方向中心位置に対して輪状ロータ30のロータ突出磁極31の径方向中心位置が一致するときに、これに隣り合う第1ステータ突出磁極21の径方向中心位置に対して輪状ロータ30のロータ磁石33の径方向中心位置が一致する。すなわち、この条件では、一方の第1ステータ突出磁極21の第2ステータ突出磁極24の径方向位置に対してロータ突出磁極31の径方向位置が一致するときに、これに隣り合う第1ステータ突出磁極21の第2ステータ突出磁極24の径方向位置に対してロータ突出磁極31の径方向位置が1/2ピッチ分異なる。
【0025】
このとき、各第1ステータ突出磁極21の角度間隔をθt1、各第2ステータ突出磁極24の角度間隔をθt2とし、n=θt1/θt2(nは1以上の整数)の関係であって、1つの第1ステータ突出磁極21の第2ステータ突出磁極24の径方向中心位置とロータ突出磁極31の径方向中心位置を一致させたとき、隣り合う第1ステータ突出磁極21の第2ステータ突出磁極24の径方向中心位置に対して輪状ロータのロータ磁石33の径方向中心位置が一致する条件は、
θt2=(n±0.5)×θt1・・・(2)
である。
ここで、輪状ステータ20の第1ステータ突出磁極21の数をnsとし、輪状ロータ30のロータ突出磁極31の数をNrとすると、
ns=360/θt2・・・(3)
Nr=360/θt1・・・(4)
であり、式(3)及び式(4)を式(2)に代入すると、
360/ns=(n±0.5)×360/Nr・・・(5)
であり、式(5)を変形して、
Nr=(n±0.5)×ns・・・(6)
が得られる。
すなわち、この式(6)が、バーニアモータのモータトルクの最大トルク条件である。
【0026】
式(6)の条件をこの実施の形態のバーニアモータに適用すると、第1ステータ突出磁極21の数が12本のときのロータ突出磁極31の数を例えば66本とすることができる。図8は、バーニアモータのモータトルクの最大トルク条件を説明するために、この式(6)の条件を適用してロータ突出磁極31の数を66として構成したバーニアモータ1bの概略図である。このバーニアモータ1bは、輪状ステータ20に設けられた12本の第1ステータ突出磁極21と、輪状ロータ30bに設けられた66本のロータ突出磁極31とを有している。
【0027】
しかしながら、式(3)の条件を本実施の形態のバーニアモータに適用して図8に示すバーニアモータ1bを構成した場合、第1ステータ突出磁極21に巻回されたステータ巻線23の鎖交磁束が全て図7に示す同位相の波形となる。そのため、図8に示すバーニアモータ1は有限角モータとしては機能するが、回転モータとしては機能しない。
【0028】
よって、本実施の形態に係るバーニアモータを回転モータとして機能させるために、図1に示すバーニアモータ1を採用する。なお、図1の各第1ステータ突出磁極21には、説明のためにそれぞれ、各第1ステータ突出磁極21に巻回されたステータ巻線23の鎖交磁束の位相を示す符号U1~U4、V1~V4、W1~W4を付している。図1に示すバーニアモータ1は、図8に示すバーニアモータ1bと比較して、輪状ロータ30のロータ突出磁極31の数を1本増加させて67本とした点が相違点である。この図1に示すバーニアモータ1は、下記の式(1)の条件を適用して構成されている。
Nr=(n±0.5)×ns±1 ・・・(1)
この式(1)は、式(6)に対して、輪状ロータ30のロータ突出磁極31の数を1本変更したものである。
【0029】
図1に示すように、式(1)の条件を適用して、バーニアモータ1の第1ステータ突出磁極21の本数を12本とし、ロータ突出磁極31の数を67本とすることより、各第1ステータ突出磁極21に巻回されたステータ巻線23の鎖交磁束が異なる位相となる。
【0030】
図9は、図1に示すバーニアモータ1の、輪状ロータ30の回転角と、バーニアモータ1の各相の回転トルクとの関係を示すグラフである。図1に示す符号U1~U4、V1~V4、W1~W4の各第1ステータ突出磁極21のステータ巻線23に鎖交する各位相の鎖交磁束により、各第1ステータ突出磁極21に図9に示すように符号U1及び符号U3、符号U2及び符号U4、符号V1及び符号V3、符号V2及び符号V4、符号W1及び符号W3、符号W2及び符号W4で示すトルク波形が発生する。このトルク波形について、符号U1、U3と符号U2,U4とのトルク波形をU相のトルク波形とみなし、符号V1、V3と符号V2,V4とのトルク波形をV相のトルク波形とみなし、符号W1、W3とW2、W4とのトルク波形をW相のトルク波形とみなすことで、バーニアモータ1に生じるトルク波形がU、V、W相の120度位相差の3相の正弦波波形となるため、図1に示すバーニアモータ1はU、V、W相の3相の回転モータとして機能する。また、図1に示すバーニアモータは2極のモータであるため、単一極のバーニアモータと比較して連続出力トルクが向上する。
【0031】
このように、本実施の形態に係るバーニアモータ1は、所定角度間隔で径方向へ沿って突出する複数の第1ステータ突出磁極21と、各第1ステータ突出磁極21に巻回されたステータ巻線23と、各第1ステータ突出磁極21の先端部27に所定角度間隔で径方向に沿って形成された複数の第2ステータ突出磁極24と、各第2ステータ突出磁極24に隣接して形成された突出磁極溝部25と、各突出磁極溝部25に、径方向に対する磁極の方向が同一方向であるように設けられた永久磁石であるステータ磁石26とを有する輪状ステータ20と、各第1ステータ突出磁極21の先端部27に対向して所定角度間隔で径方向に沿って形成された複数のロータ突出磁極31と、各ロータ突出磁極31に隣接して形成されたロータ溝部32と、各ロータ溝部32に、径方向に対する磁極の方向が同一方向且つステータ磁石26と同方向であるように設けられた永久磁石であるロータ磁石33とを有する輪状ロータ30とを備え、極数が2極であるため、バーニアモータ1の連続出力トルクを向上することができる。
【0032】
また、本実施の形態に係るバーニアモータ1は、第1ステータ突出磁極21の数がns個であり、ロータ突出磁極31の数がNr個であるときに、第1ステータ突出磁極21の数nsとロータ突出磁極31の数Nrとの関係が、下記(1)式を満たし、
Nr=(n±0.5)×ns±1 ・・・(1)
但し、(1)式において、nは1以上の整数であるため、バーニアモータ1は回転モータとして機能する。
【0033】
なお、本実施の形態に係るバーニアモータ1は、径方向内側に輪状ステータ20が設けられ、径方向外側に輪状ロータ30が設けられているアウターロータ型モータのバーニアモータであったが、径方向外側に輪状ステータ20が設けられ、径方向内側に輪状ロータ30が設けられるインナーロータ型のバーニアモータであってもよい。
【0034】
また、本実施の形態に係るバーニアモータ1は、図1に示すように第1ステータ突出磁極21の本数を12本とし、ロータ突出磁極31の数を67本として構成されていたが、これに限定されるものではない。上述した式(1)の条件が適用されていれば、バーニアモータ1の第1ステータ突出磁極21の数のnsと、ロータ突出磁極31の数のNrとは任意の数であってもよい。また、本実施の形態に係るバーニアモータ1は、各第1ステータ突出磁極21に5本の第2ステータ突出磁極24と6本の突出磁極溝部25とを有していたが、第2ステータ突出磁極24及び突出磁極溝部25の角度間隔がモータ突出磁極31及びロータ溝部32の角度間隔とほぼ等しければ、第2ステータ突出磁極24及び突出磁極溝部25はこれ以外の任意の数であってもよい。
【0035】
また、本実施の形態に係るバーニアモータ1は、最大トルク条件を示す式(1)に基づいて構成されていたが、この式(1)に代えて、下記の式(1’)に基づいて構成されてもよい。
Nr=(n±0.5)×ns±2 ・・・(1’)
この式(1’)は、式(6)に対して、輪状ロータ30のロータ突出磁極31の数を2本変更したものである。この条件であっても、図1に示すバーニアモータ1はU、V、W相の3相2極の回転モータとして機能する。
【0036】
また、本実施の形態に係るバーニアモータ1は、U、V、W相の3相2極の回転モータとして機能するようにステータ巻線23を構成していたが、ステータ巻線23の構成はこれに限定されるものではない。ステータ巻線23の構成を適宜調整することにより、3相以外の相数を有するバーニアモータを構成してもよいし、少なくとも2極以上であればこれ以上の極数を有するバーニアモータを構成してもよい。
【0037】
また、本実施の形態に係るバーニアモータ1は、径方向に沿って設けられ径方向外側にN極を有し径方向内側にS極を有するステータ磁石26及びロータ磁石33を有していたが、ステータ磁石26及びロータ磁石33の方向は逆であってもよい。すなわち、径方向に沿って設けられ径方向外側にS極を有し径方向内側にN極を有するステータ磁石26及びロータ磁石33を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のバーニアモータ1によると、所定角度間隔で径方向へ沿って突出する複数の第1ステータ突出磁極21と、各第1ステータ突出磁極21に巻回されたステータ巻線23と、各第1ステータ突出磁極21の先端部27に所定角度間隔で径方向に沿って形成された複数の第2ステータ突出磁極24と、各第2ステータ突出磁極24に隣接して形成された突出磁極溝部25と、各突出磁極溝部25に、径方向に対する磁極の方向が同一方向であるように設けられた永久磁石であるステータ磁石26とを有する輪状ステータ20と、各第1ステータ突出磁極21の先端部27に対向して所定角度間隔で径方向に沿って形成された複数のロータ突出磁極31と、各ロータ突出磁極31に隣接して形成されたロータ溝部32と、各ロータ溝部32に、径方向に対する磁極の方向が同一方向且つステータ磁石26と同方向であるように設けられた永久磁石であるロータ磁石33とを有する輪状ロータ30とを備えるため、バーニアモータの連続出力トルクを向上させることができ、連続出力トルクを要求される用途のバーニアモータにおいて使用する用途に適している。
【符号の説明】
【0039】
20 輪状ステータ
21 第1ステータ突出磁極
23 ステータ巻線
24 第2ステータ突出磁極
25 突出磁極溝部
26 ステータ磁石
27 先端部
30 輪状ロータ
31 ロータ突出磁極
32 ロータ溝部
33 ロータ磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9